以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施例において同一の構成については、同一の符号を付し、最初の実施例においてのみ説明し、以後の実施例においてはその構成の説明を省略する。
図1は本実施例に係るプリンターの外観斜視図であり、図2は本実施例に係るプリンターの媒体搬送経路を示す側断面図であり、図3は本実施例に係るプリンターの構成を示すブロック図であり、図4はキャリッジ、規制部材、切替機構及び駆動モーターの関係を示す斜視図であり、図5は規制部材を示す斜視図であり、図6は規制部材を示す斜視図であり、図7は回動部材の被規制部と規制部材の第1規制部とが係合した状態における平面図である。
図8は図7におけるB−B断面線における断面図であり、図9は図4におけるA−A断面線における断面斜視図であり、図10は切り替え機構における第1動力伝達状態を示す図であり、図11は切り替え機構における第2動力伝達状態を示す図であり、図12は回動部材の被規制部と第1規制部とが係合した状態を示す斜視図であり、図13は回動部材の被規制部が動作許容部に位置する状態を示す平面図である。
図14は回動部材の被規制部と第2規制部とが係合した状態を示す平面図であり、図15は切り替え機構における第3動力伝達状態を示す図であり、図16は切り替え機構における第4動力伝達状態を示す図であり、図17は回動部材の被規制部と第2規制部とが係合した状態を示す斜視図であり、図18は記録ヘッドに対してキャップが離間した状態を示す側断面図であり、図19は記録ヘッドに対してキャップが当接した状態を示す側断面図であり、図20はキャリッジ、規制部材、切替機構、駆動モーター及びインクシステムの関係を示す斜視図であり、図21は動作許容部を設けない切り替え機構における動力伝達状態の切り替え動作の模式図である。
図22はキャリッジ及びキャリッジ駆動手段を示す斜視図であり、図23はキャリッジ、規制部材、切替機構、駆動モーター及び給送ローラー駆動歯車の関係を示す斜視図であり、図24は媒体搬送経路において給送ローラーと搬送ローラー対との間における撓み制御の一例を示す側断面図である。
図25は面圧解除時における駆動モーターの逆転駆動量を説明するグラフであり、図26は媒体の記録動作実行時における第1動力伝達状態の面圧解除の制御のフローチャートであり、図27はリトライ動作のフローチャートであり、図28、図29及び図30はリトライ動作を説明する模式図である。
図31はたわみを減少させる制御における給送ローラー及び搬送ローラー対の駆動状態を示すタイムチャートであり、図32はプリンターにおいてスキャナー部を装置本体に対して開いた状態の斜視図であり、図33は装置本体を斜め後方側かつ上方側から見た斜視図である。
図34はスキャナー部の左側端部の下部を示す斜視図であり、図35はスキャナー部の右側端部の下部を示す斜視図であり、図36は装置本体にスキャナー部を閉じた状態を示す側断面図である。
また、各図において示すX−Y−Z座標系はX方向が記録媒体の幅方向、すなわち装置幅方向を示し、Y方向が記録装置内の搬送経路における記録媒体の搬送方向、すなわち装置奥行き方向を示し、Z方向が装置高さ方向を示している。
■■■第1の実施例■■■■
<<<プリンターの概要>>>
図1を参照して、プリンター10の全体構成について説明する。プリンター10は、記録装置の一例として、インクジェットプリンターとして構成されている。プリンター10は、装置本体12と、スキャナー部14とを備える複合機として構成されている。装置本体12の装置前面側には操作部16が装置本体12に対して回動可能に設けられている。操作部16には表示パネル等の表示手段18が設けられている。
装置本体12の装置前面側において操作部16の下方にはカバー20が配置されている。また、装置本体12には排紙トレイ22が設けられている。排紙トレイ22は、装置本体12内に収容された状態(図2)と装置本体12の装置前面側に展開した状態(不図示)とを切換え可能に構成されている。
本実施例において、スキャナー部14は、装置本体12の装置奥行き方向背面側端部に回動可能に接続されており、図示しないがスキャナー部14を装置背面側に回動させることで、装置本体12の上部を露呈させるように構成されている。また、スキャナー部14の上部にはカバー24がスキャナー部14に対して回動可能に取り付けられている。そして、カバー24をスキャナー部14に回動させることで、スキャナー部14に設けられた原稿載置面14g(図36)を露出させることができ、原稿載置面14gに原稿をセットすることができる。本実施例では、原稿載置面14gは、一例として平坦なガラス板により形成されている。
次いで、図2を参照するに装置本体12の下部には、媒体を収容する媒体収容部26が設けられている。本実施例において、媒体収容部26は、装置前面側から装置本体12に着脱可能に構成されている。また、カバー20は媒体収容部26に対して回動可能に取り付けられている。
そして、装置本体12内の背面側において媒体収容部26の上方には、ピックアップローラー28が設けられている。ピックアップローラー28は回動軸30を支点に回動可能に構成されている。ピックアップローラー28は、媒体収容部26に収容された媒体Pと接することにより、媒体収容部26に収容された媒体の最上位の媒体Pを媒体搬送経路32に沿って搬送方向下流側に搬送する。尚、図2における符号Pが付された太線は、媒体搬送経路32に沿って搬送される媒体Pの経路を示している。
媒体搬送経路32においてピックアップローラー28の下流側には、給送ローラー34が設けられている。給送ローラー34の周囲には従動ローラー36a、36b、36c、36dがそれぞれ給送ローラー34に対して従動回転可能に設けられている。
そして、ピックアップローラー28により送られた媒体Pは、給送ローラー34及び従動ローラー36a、36b及び36cを介して搬送方向下流側に設けられた搬送ローラー対38(図3及び図4)に送られる。本実施例において搬送ローラー対38は、ローラー駆動モーター55(図3)から駆動力を受けて回転駆動する搬送駆動ローラー38a(図2)と、搬送駆動ローラー38aに対して従動回転する搬送従動ローラー38b(図4)とを備えている。
また、搬送ローラー対38の搬送方向下流側にはキャリッジ40(図2の二点鎖線部及び図4)が設けられている。キャリッジ40は、キャリッジ駆動手段42により装置幅方向、すなわち第1方向である装置幅方向右方及び第2方向である装置幅方向左方に往復動可能に構成されている。
キャリッジ駆動手段42は、図22に示すように一例としてキャリッジ駆動モーター98と、無端ベルト100とを備えている。キャリッジ駆動モーター98は、装置幅方向左側端部に配置されている。キャリッジ駆動モーター98には不図示の駆動プーリーが取り付けられている。一方、装置本体12の装置幅方向右側端部には不図示の従動プーリーが設けられている。無端ベルト100は、不図示の駆動プーリー及び従動プーリーに掛けまわされている。無端ベルト100の一部は、キャリッジ40の背面側においてキャリッジ40に把持されている。
そして、キャリッジ40の下部には、記録ヘッド44(図18及び図19)が設けられている。本実施例において記録ヘッド44は装置高さ方向下方側に向けてインクを吐出するように構成されている。
また、図2、図4、図7及び図18等を参照するに、キャリッジ40の背面側端部には装置幅方向に沿って延びるガイド軸46が挿入されている。ガイド軸46は、キャリッジ40を支持している。キャリッジ駆動モーター98を駆動させると、無端ベルト100が回転駆動される。その結果、キャリッジ40は、ガイド軸46に案内されて、キャリッジ駆動手段42により装置幅方向に移動させられる。尚、本実施例では、キャリッジ駆動モーター98を所定の第1回転方向に回転させると、キャリッジ40は装置幅方向左方から右方に移動し、キャリッジ駆動モーター98を所定の第2回転方向に回転させると、キャリッジ40は装置幅方向右方から左方に移動するように設定されている。
また、記録ヘッド44の下方において、記録ヘッド44と対向する領域に媒体支持部48(図2及び図4)が設けられている。媒体支持部48は、搬送ローラー対38により記録ヘッド44と対向する領域に搬送されてきた媒体Pの下面(記録面と反対側の面)を支持する。そして、記録ヘッド44は、媒体支持部48により支持された媒体Pに対してインクを吐出し、媒体Pの記録面に記録を実行する。
そして、記録が実行された媒体Pは、記録ヘッド44の搬送方向下流側に設けられた排出ローラー対50にニップされて、装置前面側に突出する排紙トレイ22に向けて排紙される。
次いで、図3を参照するに、「制御手段」としての制御部52は、操作部16からの入力に応じて、或いはプリンター10と接続された外部コンピューター(不図示)から送られるプリンタドライバの指示に応じて、キャリッジ駆動手段42、記録ヘッド44、「駆動源」としての駆動モーター54、及び装置本体12内に配置されたローラー駆動モーター55(図3)を介して搬送ローラー対38及び排出ローラー対50を制御する。制御部52は、一例として複数の電子部品を備える電気回路として構成され、装置本体12内に設けられている。
また、制御部52により制御される駆動モーター54は、後述する切り替え機構56を介して、ピックアップローラー28、給送ローラー34、後述するギャップ調整手段58及びインクシステム60に適宜駆動力を供給する。
<<<規制部材について>>>
図4を参照するに、装置奥行き方向においてキャリッジ40の背面側には装置本体12を構成するメインフレーム62が装置幅方向に沿って延設されている。そして、図5及び図6を参照するに、メインフレーム62には、規制部材64が装置幅方向に沿ってスライド移動可能に取り付けられている。図5において、規制部材64の装置奥行き方向前面側において装置幅方向右方側端部には係合部64aが設けられている。規制部材64において係合部64aは、装置奥行き方向前面側に突出している。係合部64aは、キャリッジ40の装置奥行き方向背面側端部に設けられた被係合部40a(図7、図13及び図14)と係合可能に構成されている。
また、図6を参照するに、メインフレーム62の装置奥行き方向背面側の規制部材64において装置幅方向左方側端部には、付勢部材掛止部64bが設けられている。また、メインフレーム62にも付勢部材掛止部62aが設けられている。そして、規制部材64の付勢部材掛止部64bに付勢手段66の一端部が掛止され、メインフレーム62の付勢部材掛止部62aに付勢手段66の他端部が掛止されている。本実施例において、付勢手段66は、一例としてコイルばねとして構成されている。そして、付勢手段66は、規制部材64を装置幅方向左方(第2方向)に向けて付勢している。
また、規制部材64において装置幅方向右方側端部には、装置幅方向右方(第1方向)から装置幅方向左方(第2方向)に向かって順に第1規制部64c、動作許容部64d及び第2規制部64eが設けられている。
第1規制部64cは、装置奥行き方向背面側に突出し、装置奥行き方向に沿って延びる板状部として構成されている。同様に第2規制部64eも装置奥行き方向背面側に突出し、装置奥行き方向に沿って延びる板状部として構成されている。また、動作許容部64dは、装置幅方向において第1規制部64cと第2規制部64eとの間で凹部として構成されている。
<<<駆動モーター及び切り替え機構について>>>
再度、図4を参照するに、装置奥行き方向においてメインフレーム62の背面側には、駆動モーター54及び切り替え機構56が配置されている。図2に示すように、駆動モーター54は、装置奥行き方向においてキャリッジ40の記録ヘッド44よりも装置奥行き方向背面側に配置されている。また、駆動モーター54は、装置高さ方向において記録ヘッド44の下面、すなわちヘッド面44aよりも上側に位置している。また、図14を参照するに、符号X1が付された装置奥行き方向に延びる直線は、媒体搬送経路32において搬送される最大サイズの媒体Pの通過領域の装置幅方向右端部を示している。そして、駆動モーター54は、装置幅方向における位置X1よりも装置幅方向左方、すなわち、媒体搬送経路32における最大サイズの媒体Pの通過領域内に配置されている。
また、図8を参照するに、駆動モーター54は、「フレーム」としての駆動モーター支持フレーム68に取り付けられている。駆動モーター支持フレーム68は、後述する太陽歯車70を回転可能に支持する軸72に回転可能に取り付けられている。そして、駆動モーター支持フレーム68には、軸72の中心位置から距離R1の位置に駆動モーター54が取り付けられるように構成されている。そして、軸72を回転中心として駆動モーター支持フレーム68を回転させると、駆動モーター54の駆動軸は軸72を中心とした半径R1の円状(一点鎖線の円)の軌跡を描いて軸72の周りを移動する。
また、駆動モーター支持フレーム68は、装置本体12に対して固定手段74により固定される。これにより、駆動モーター支持フレーム68の軸72を中心にした回転も止められる。尚、固定手段74は、一例としてネジとして構成されている。
また、本実施例において、駆動モーター支持フレーム68は軸72の周りを回転可能に構成されているので、駆動モーター支持フレーム68を装置本体12に固定手段74で固定する際、所定の取り付け位置(取り付け角度)から組立誤差の範囲内で取り付け位置がずれたとしても、駆動モーター支持フレーム68に取り付けられる駆動モーター54の駆動軸と軸72との距離R1は、一定に維持される。その結果、駆動モーター54に設けられた駆動歯車76(図7)と太陽歯車70との軸間距離が精度よく決まるので、歯車同士の噛み合いを安定させることができる。これにより、駆動モーター54の回転時に発生する歯車の駆動音(歯車の歯同士が衝突する音)を小さくすることができる。
図4、図20及び図22に示すように、駆動モーター54において駆動歯車76が設けられた側と反対の側には、ロータリースケール102が取り付けられている。装置本体12には、ロータリースケール102の一部を受け入れてロータリースケール102の回転量を検出するエンコーダーセンサー104が設けられている。本実施例において、制御部52は、エンコーダーセンサー104を介してロータリースケール102の回転量、つまり駆動モーター54の駆動量を監視している。
次に、図7及び図9を参照するに、装置幅方向において駆動モーター支持フレーム68の右方には、切り替え機構56が設けられている。切り替え機構56は、太陽歯車70と、「遊星歯車」としての第1遊星歯車78Aと、「遊星歯車」としての第2遊星歯車78Bと、回動部材80と、規制部材64とを備えている。
図10を参照するに、太陽歯車70は、軸72に回転可能に取り付けられている。そして、図7に示すように、太陽歯車70は、駆動モーター54の駆動軸に設けられた駆動歯車76と噛み合っている。すなわち、太陽歯車70は、駆動歯車76を介して駆動モーター54により回転駆動させられる。尚、本実施例において太陽歯車70は、複合歯車として構成され、一例として、軸線方向に沿って駆動歯車76と噛合する歯車と、第1遊星歯車78A及び第2遊星歯車78Bと噛合する歯車とを備えている。
また、軸72には、回動部材80が挿入されている。そして、回動部材80は、軸72に対して回転可能である。また、回動部材80の上端部には、第1遊星歯車78Aが回転可能に取り付けられている。そして、第1遊星歯車78Aは、太陽歯車70と噛み合っている。同様に、回動部材80の下端部には、第2遊星歯車78Bが回転可能に取り付けられている。そして、第2遊星歯車78Bも、太陽歯車70と噛み合っている。また、回動部材80には、回動部材80から突出する被規制部80aが設けられている。
また、図10を参照するに、第1遊星歯車78Aと噛合可能な位置には、第1被噛合歯車82が設けられている。第1被噛合歯車82は、第1遊星歯車78Aと噛み合った状態で、駆動モーター54の駆動力が伝達される。また、図15を参照するに、第2遊星歯車78Bと噛合可能な位置には、第2被噛合歯車84が設けられている。第2被噛合歯車84は、第2遊星歯車78Bと噛み合った状態で、駆動モーター54の駆動力が伝達される。
図23において、第1被噛合歯車82から給送ローラー34への動力伝達経路について説明する。第1被噛合歯車82は、第1遊星歯車78Aと噛合した状態において、歯車106、歯車108、歯車110、歯車112、歯車114の順に駆動モーター54の駆動力を伝達する。歯車114は、遊星歯車ユニット116の太陽歯車116aと噛み合っている。遊星歯車ユニット116は、太陽歯車116aと、遊星歯車116bと、遊星歯車116cとを備えている。遊星歯車116b及び遊星歯車116cは、太陽歯車116aの周りを回動可能に構成されている。尚、一例として歯車108と歯車110とは同軸かつ同じ方向に回転するように構成されている。
本実施例において、遊星歯車116b及び遊星歯車116cが太陽歯車116aの周りを図23における反時計回り方向に回動すると、遊星歯車116cは、歯車120と噛合する。歯車120は歯車118と噛合しており、歯車120に伝達された駆動モーター54の駆動力を歯車118に伝達する。ここで、第1被噛合歯車82が図23における反時計回り方向に回転駆動させられている場合(後述する第1動力伝達状態)、歯車118は遊星歯車116c及び歯車120により図23における時計回り方向に回転駆動させられる。尚、この状態では遊星歯車116bは歯車118と噛合していない状態である。
一方、遊星歯車116b及び遊星歯車116cが太陽歯車116aの周りを図23における時計回り方向に回動すると、遊星歯車116bは、歯車118と噛合し、歯車118に駆動モーター54の駆動力を伝達する。尚、この状態では遊星歯車116cは歯車120と噛合していない状態である。
ここで、第1被噛合歯車82が図23における時計回り方向に回転駆動させられている場合(後述する第2動力伝達状態)、歯車118は遊星歯車116bにより図23における時計回り方向に回転駆動させられる。
したがって、歯車118は、第1被噛合歯車82の回転方向に関係なく、遊星歯車116b、あるいは歯車120を介して遊星歯車116cから駆動力を伝達された場合、所定の方向に回転する。本実施例では、歯車118は、給送ローラー34に駆動力を伝達するように構成されている。これにより、給送ローラー34は、後述する第1動力伝達状態及び第2動力伝達状態のいずれの場合においても、媒体Pを搬送方向下流側に送る方向(図2における反時計回り方向)に回転させられる。
<<<切り替え機構における動力伝達状態の切り替えについて>>>
次いで、図7、図10ないし図19を参照して、切り替え機構56による駆動モーター54の動力切り替えについて説明する。尚、本実施例では、切り替え機構56により駆動モーター54の動力は、第1動力伝達状態、第2動力伝達状態、第3動力伝達状態及び第4動力伝達状態のいずれかに選択的に切り替えることができる。
<<<第1動力伝達状態について>>>
まず、第1動力伝達状態について説明する。図7を参照するに、キャリッジ40は、被係合部40aが規制部材64の係合部64aと係合しない位置に位置した状態にある。この状態では、規制部材64は付勢手段66の付勢力により装置幅方向左方に付勢され、装置幅方向において規制部材64のスライド可能領域の左端部に位置している。そして、装置幅方向において規制部材64の第1規制部64cは、回動部材80の被規制部80aと係合可能な位置に位置している。規制部材64の装置幅方向におけるこの位置を第3位置とする。尚、第1位置及び第2位置については、前後するが後述する。
図10を参照するに、第1遊星歯車78Aと第1被噛合歯車82とが噛合した状態にある。尚、本実施例では、第1遊星歯車78Aと第1被噛合歯車82とが噛合した状態を第1噛合状態とする。そして、規制部材64が第3位置に位置する状態で、駆動モーター54により太陽歯車70が時計回り方向への回転(以下、正転という)を始めると、第1遊星歯車78Aは太陽歯車70に対して逆方向へ回転、つまり反時計回り方向へ回転する。ここで、本実施例では、一例として遊星歯車78B内に不図示の付勢手段が設けられており、遊星歯車78Bは回動部材80から側圧を受けるように構成されている。これにより、太陽歯車70を正転させると、遊星歯車78Bは不図示の付勢手段による側圧(負荷)を受けて反時計回り方向に回転しつつ、回動部材80とともに時計回り方向に回動する。つまり、回動部材80は太陽歯車70の回転方向と同じ方向に回動するように構成されている。
その結果、回動部材80は軸72に対して時計回り方向に回動する。これにより、回動部材80の被規制部80aは第1規制部64cの上面に押し当たる(図10及び図12)。そして、第1規制部64cが、回動部材80の時計回り方向への回動を規制する。
そして、第1規制部64cにより回動部材80の回動が規制されるので、第1遊星歯車78Aと第1被噛合歯車82との噛合状態が維持される。そして、第1被噛合歯車82は、第1遊星歯車78Aから動力を受けて時計回り方向に回転させられる。そして、第1被噛合歯車82は、図示しない複数の歯車を介して、駆動モーター54の動力を給送ローラー34に伝達する。これにより、給送ローラー34は、媒体Pを搬送方向下流側に送る方向(図2における反時計回り方向)に回転させられる。そして、切り替え機構56により給送ローラー34に動力を伝達する状態を第1動力伝達状態とする。
<<<第2動力伝達状態について>>>
次いで、第3位置(図12)において、図11に示すように駆動モーター54により太陽歯車70が反時計回り方向への回転(以下、逆転という)を始めると、第1遊星歯車78A及び第2遊星歯車78Bは太陽歯車70に対して逆方向へ回転、つまり時計回り方向へ回転する。そして、第1遊星歯車78A及び第2遊星歯車78Bの時計回り方向への回転により、回動部材80は軸72に対して反時計回り方向に回動する。これにより、回動部材80の被規制部80aは第1規制部64cから離間する方向に回動する。
回動部材80の反時計回り方向への回動により、第1遊星歯車78Aは、第1被噛合歯車82に向けて押圧される。そして、第1被噛合歯車82は、第1遊星歯車78Aから動力を受けて反時計回り方向に回転させられる。そして、第1被噛合歯車82は、図示しない複数の歯車を介して、駆動モーター54の動力をピックアップローラー28及び給送ローラー34に伝達する。これにより、ピックアップローラー28及び給送ローラー34は、媒体Pを搬送方向下流側に送る方向(図2における反時計回り方向)に回転させられる。そして、切り替え機構56によりピックアップローラー28及び給送ローラー34に動力を伝達する状態を第2動力伝達状態とする。尚、第2動力伝達状態では、第1遊星歯車78Aが第1被噛合歯車82に向けて押圧されるので、噛合が深くなり、第1動力伝達状態に比べてより重い動力伝達負荷に耐えることができる。
次いで、図13を参照するに、キャリッジ40を装置幅方向右方(第1方向)に移動させる。これにより、キャリッジ40の被係合部40aが規制部材64の係合部64aと係合する。そして、被係合部40aが係合部64aと係合した状態において、キャリッジ40を装置幅方向右方に移動させると、規制部材64は付勢手段66の付勢力に抗して装置幅方向右方にスライド移動する。そして、図13に示すように、規制部材64を装置幅方向右方に移動させると、装置幅方向において規制部材64の動作許容部64dが回動部材80の被規制部80aの位置と重なる位置まで移動した状態となる。規制部材64の装置幅方向におけるこの位置を第2位置とする。
そして、第2位置において、第1噛合状態の切り替え機構56の太陽歯車70を正転させると、回動部材80は、図10における時計回り方向に回動する。この際、回動部材80の被規制部80aは動作許容部64dに位置しているので、規制部材64に規制されることなく、被規制部80aは装置高さ方向において第1規制部64cの上方側から下方側へと変位する。
そして、被規制部80aが装置高さ方向において第1規制部64cの下方側へと変位した状態において、さらにキャリッジ40を装置幅方向右方(第1方向)に移動させると、規制部材64も第2位置から装置幅方向右方に移動する。これにより、図14に示すように装置幅方向において規制部材64の第2規制部64eの位置が回動部材80の被規制部80aと係合可能な位置となる。規制部材64の装置幅方向におけるこの位置を第1位置とする。尚、図14においてキャリッジ40は、キャリッジ40の装置幅方向における移動領域の右端部、すなわちホームポジションに位置している状態である。
<<<第3動力伝達状態について>>>
次に、図15を参照して、第3動力伝達状態について説明する。図15では、回動部材80が時計回り方向に回動して第2遊星歯車78Bが第2被噛合歯車84と噛み合っている状態を示している。尚、本実施例では、第2遊星歯車78Bと第2被噛合歯車84とが噛合した状態を第2噛合状態とする。
そして、第2噛合状態(図15)、かつ規制部材64が第1位置に位置する状態(図14)で、駆動モーター54により太陽歯車70が正転(時計回り方向への回転)を始めると、第1遊星歯車78A及び第2遊星歯車78Bは太陽歯車70に対して逆方向へ回転、つまり反時計回り方向へ回転する。そして、第1遊星歯車78A及び第2遊星歯車78Bの反時計回り方向への回転により、回動部材80は軸72に対して時計回り方向に回動する。これにより、回動部材80の被規制部80aは第2規制部64eの下面から離間する。
そして、回動部材80の時計回り方向への回動により、第2遊星歯車78Bは、第2被噛合歯車84に向けて押圧される。そして、第2被噛合歯車84は、第2遊星歯車78Bから動力を受けて時計回り方向に回転させられる。そして、第2被噛合歯車84は、図示しない複数の歯車を介して、駆動モーター54の動力をギャップ調整手段58に伝達する。本実施例では、切り替え機構56によりギャップ調整手段58に動力を伝達する状態を第3動力伝達状態とする。尚、第3動力伝達状態では、第2遊星歯車78Bが第2被噛合歯車84に向けて押圧されるので、噛合が深くなり、後述する第4動力伝達状態に比べてより重い動力伝達負荷に耐えることができる。
尚、ギャップ調整手段58について説明すると、第2被噛合歯車84から複数の歯車を介してガイド軸46(図4及び図14)に動力が伝達されると、ガイド軸46が回転させられる。ここで、ガイド軸46の装置幅方向における両端部には、偏芯カム部材(不図示)が取り付けられている。そして、一対の偏芯カム部材(不図示)は装置本体12に設けられた支持部材(不図示)にそれぞれ支持されている。つまり、ガイド軸46を回転させると、偏芯カム部材(不図示)により装置高さ方向においてガイド軸46の中心と支持部材(不図示)との距離が変化する。その結果、ガイド軸46が挿通されているキャリッジ40の装置高さ方向における位置(高さ)が変化する。これにより、キャリッジ40の下部に設けられた記録ヘッド44のヘッド面44aと媒体支持部48との間の距離、すなわちギャップが変化する。
<<<第4動力伝達状態について>>>
次に図16及び図17を参照して、第4動力伝達状態について説明する。第2噛合状態(図16)、かつ規制部材64が第1位置に位置する状態(図14)で、駆動モーター54により太陽歯車70が逆転(反時計回り方向への回転)を始めると、第1遊星歯車78A及び第2遊星歯車78Bは太陽歯車70に対して逆方向へ回転、つまり時計回り方向へ回転する。そして、第1遊星歯車78A及び第2遊星歯車78Bの時計回り方向への回転により、回動部材80は軸72に対して反時計回り方向に回動する。これにより、回動部材80の被規制部80aは第2規制部64eの下面に押し当たる(図16及び図17)。そして、第2規制部64eが、回動部材80の反時計回り方向への回動を規制する。
そして、第2規制部64eにより回動部材80の回動が規制されるので、第2遊星歯車78Bと第2被噛合歯車84との噛合状態が維持される。そして、第2被噛合歯車84は、第2遊星歯車78Bから動力を受けて反時計回り方向に回転させられる。そして、第2被噛合歯車84は、図示しない複数の歯車を介して、駆動モーター54の動力をインクシステム60に伝達する。そして、切り替え機構56によりインクシステム60に動力を伝達する状態を第4動力伝達状態とする。
ここで、図18ないし図20を参照してインクシステム60について説明する。インクシステム60は吸引ポンプ86と、キャップ駆動手段88と、キャップ90と、ワイパー92とを備えている。図20に示すようにインクシステム60は装置幅方向右方端部に配置されている。そして、図18に示すようにインクシステム60は、装置高さ方向において装置本体12の下部に配置されている。
また、インクシステム60において、装置奥行き方向背面側に吸引ポンプ86が配置され、吸引ポンプ86の装置奥行き方向前面側にキャップ駆動手段88、キャップ90及びワイパー92が配置されている。そして、キャップ90は、廃インクチューブ94により吸引ポンプ86に接続されている。また、装置高さ方向において吸引ポンプ86の上方側には、キャリッジ40を案内するガイド軸46が配置されている。
また、キャップ90は、装置幅方向においてキャリッジ40のホームポジションに配置されており、記録ヘッド44の下方側において記録ヘッド44のヘッド面44aと対向するように配置されている。そして、キャップ90は、キャップ駆動手段88により記録ヘッド44のヘッド面44aから離間した非キャップ状態(図18)と、ヘッド面44aに当接したキャップ状態(図19)とを切り替え可能に構成されている。
また、図20を参照するにワイパー92はキャップ90の装置幅方向左方に配置されている。そして、ワイパー92は、キャップ90のキャップ状態と非キャップ状態との切り替え動作に応じて、装置高さ方向において記録ヘッド44に向けて突出する状態(不図示)と、記録ヘッド44から離間する状態(図20)とを切り替えるように構成されている。尚、本実施例では、ワイパー92の動作は、キャップ90の動作とずれるようにタイムラグが生じるように構成されている。
図18は、第3動力伝達状態を示している。この状態では、インクシステム60には、駆動モーター54の動力が伝達されていない。このため、キャップ90は記録ヘッド44のヘッド面44aから離間した状態、すなわち非キャップ状態にある。一方で、ギャップ調整手段58に動力が供給されているので、ガイド軸46は、ギャップを調整すべく時計回り方向に回転する。
次いで、図19に示すようにインクシステム60に駆動モーター54の動力が伝達される(第4動力伝達状態)と、キャップ駆動手段88はキャップ90を記録ヘッド44に対して離間した状態である非キャップ状態(図18)から装置高さ方向上方側に変位させ、キャップ90を記録ヘッド44に当接させたキャップ状態(図19)へと移行する。これにより、記録ヘッド44のヘッド面44aが、キャップ90により覆われる。
そして、吸引ポンプ86が駆動モーター54の動力により駆動させられると、キャップ90と吸引ポンプ86とを繋ぐ廃インクチューブ94を介してキャップ90に負圧を生じさせる。この負圧により、記録ヘッド44のノズルからインクの吸引が行われ、ノズルの目詰まりや気泡混入を解消できるようになっている。また、キャップ90で生じた廃インクは、吸引ポンプ86により廃インクチューブ94を介して吸引される。
上述の説明をまとめると、本実施例では、切り替え機構56の動力伝達状態を切り替えることにより、1つの駆動モーター54の動力を複数の駆動対象に供給することができるので、駆動モーターの個数を削減することができ、コストダウンを図ることができる。また、本実施例では、媒体Pを給送する際、ピックアップローラー28及び給送ローラー34を駆動させる第2動力伝達状態と、給送ローラー34を駆動させる第1動力伝達状態との切り替えが太陽歯車70、ひいては駆動モーター54の回転方向を切り替えるだけで行うことができるので、媒体Pの給送時における動力切り替え動作における機械音を低減することができる。
<<<面圧解除動作について>>>
<<<第1動力伝達状態における面圧解除動作について>>>
次に、第1動力伝達状態(図10)及び第4動力伝達状態(図16)における面圧解除動作について説明する。まず、第1動力伝達状態における面圧解除動作について説明する。図24に示すように、制御部52は、媒体Pの記録動作を開始する際、第2動力伝達状態、つまり、ピックアップローラー28及び給送ローラー34を回転駆動させて、媒体収容部26に収容された媒体Pを搬送方向下流側に送る。制御部52は、一例として媒体Pを搬送方方向下流側に所定量(少なくとも媒体Pの先端が給送ローラー34と従動ローラー36aとにニップされる搬送量)送った後、第2動力伝達状態(ピックアップローラー28と給送ローラー34の双方が回転駆動される状態)から第1動力伝達状態(ピックアップローラー28が停止し、給送ローラー34が回転駆動される状態)に切り換えて媒体Pを搬送する。
さらに、制御部52は、媒体Pに対して撓み制御を含むスキュー矯正制御を行う。具体的には、制御部52は、媒体Pの先端が搬送ローラー対38に達すると、搬送ローラー対38を停止させた状態で給送ローラー34の回転を継続し、媒体Pの先端を搬送ローラー対38に押しつける。これにより、媒体Pは、図24に示すように媒体搬送経路32において給送ローラー34と搬送ローラー対38との間で撓みが形成された状態(図24における符号P−1が付された実線の状態)となる。その結果、媒体Pにおける斜行状態、いわゆるスキュー状態を抑制できる。
尚、媒体Pに撓みを形成した状態において給送ローラー34は、媒体Pの撓み状態から元の状態に戻ろうとする力に抗して、媒体Pの撓み状態を維持している。このため、給送ローラー34には負荷が掛かった状態となっている。ここで、給送ローラー34に掛かる負荷は、歯車118(図23)及び第1被噛合歯車82を介して第1遊星歯車78A及び回動部材80に作用する。その結果、回動部材80の被規制部80aが第1規制部64cの上面に押し当たる力、つまり面圧(例えば図10において被規制部80aが第1規制部64cに押し当たる際に両者の間に生じる力)が大きくなる。
この状態で、制御部52は、搬送ローラー対38を回転駆動させて、媒体Pを記録ヘッド44と対向する領域に送り、記録を実行する。この際、キャリッジ40が媒体Pに対する記録動作実行中にホームポジションまで戻り、キャップ90に向けて記録ヘッド44のノズルからインクを吐出させるフラッシング動作を行うことがある。
キャリッジ40の記録動作実行中では、給送ローラー34(図2)が記録ヘッド44のノズル列からのインク吐出動作に応じて媒体Pを搬送方向下流側に送るため、切り替え機構56は、給送ローラー34に動力を伝達する第1動力伝達状態(図10)にある。この状態で、装置幅方向においてキャリッジ40を記録動作実行領域(図7)からホームポジション(図14)まで移動させようとすると、規制部材64も第3位置(図7)から第1位置(図14)まで移動する。
ここで、第1動力伝達状態(図10)では、回動部材80の被規制部80aは、第1規制部64cの上面を押圧している。この状態で、規制部材64が装置幅方向左方から右方、すなわちホームポジション側に移動すると、被規制部80aが動作許容部64d内に入り込み、規制部材64、ひいてはキャリッジ40の移動を妨げ、あるいは最悪の場合には、規制部材64及び被規制部80aが損傷する場合がある。
したがって、記録動作実行中にフラッシングを行う場合、最初に駆動モーター54の回転を逆転させて、正転している太陽歯車70の回転を逆転させる。これにより、回動部材80は図10において反時計回り方向に回動を開始する。その結果、第1規制部64cの上面を押圧していた被規制部80aは、第1規制部64cの上面から離間し、第1規制部64cに作用していた面圧が解除される。
そして、キャリッジ40を記録動作実行領域(図7)からホームポジション(図14)まで移動させる。この際、被規制部80aは第1規制部64cの上面から離間し、図10における反時計周り方向に回動しているので、規制部材64が第3位置(図7)から第2位置(図13)に移行した際、被規制部80aが動作許容部64d内に入り込むことがない。これにより規制部材64は第3位置(図7)から第1位置(図14)まで移動することができる。
その結果、記録ヘッド44のヘッド面44aがキャップ90と対向する位置に位置するので、記録ヘッド44からインクを吐出してフラッシングを行うことができる。尚、この例では、切り替え機構56は第1噛合状態を維持しているので、吸引ポンプ86に動力が供給されず、キャップ90を介した吸引ポンプ86による吐出されたインクの吸引が行われていない。フラッシング時にキャップ90に向けて吐出されたインクの吸引を行う場合には、規制部材64が第2位置に位置する際、被規制部80aを回動させて、切り替え機構56を第1噛合状態から第2噛合状態に切り替えて第4動力伝達状態とすることで吸引ポンプ86を駆動させることができる。
また、媒体Pが媒体搬送経路32内においてジャムを生じさせた場合、上述したように第1動力伝達状態において面圧解除動作を行った後、規制部材64を第1位置(図14)に移動させ、再度駆動モーター54の回転を逆転させて、逆転している太陽歯車70の回転を逆転させて正転させる。これにより、回動部材80は図10において時計回り方向に回動を開始する。その結果、被規制部80aは第1位置において第2規制部64eの上面を押圧する。そして、この状態では、給送ローラー34に駆動モーター54の動力が伝達され、給送ローラー34が回転する。これにより、媒体搬送経路32内でジャムを生じさせた媒体Pの排出を促すことができる。
<<<第4動力伝達状態における面圧解除動作について>>>
次に、第4動力伝達状態における面圧解除動作について説明する。キャリッジ40がホームポジションに位置し、切り替え機構56が第4動力伝達状態にある状態において、ワイパー92によるワイピング動作が開始される。そして、ワイピング動作後にキャリッジ40がワイピング終了位置に位置する状態で、吸引ポンプ86を作動させてキャップ90内に残ったインクを吸引させる場合がある。
より詳細に説明すると、切り替え機構56が第4動力伝達状態(図16)において太陽歯車70を正転(図16における時計周り方向への回転)させると、キャップ90は、キャップ状態(図19)から装置高さ方向下方側に変位して非キャップ状態(図18)となる。この際、キャップ90の動作に連動してワイパー92も記録ヘッド44側に突出した状態から装置高さ方向下方側に下降した状態となる。その後、再度、太陽歯車70を逆転(図16における反時計周り方向への回転)させて第4動力伝達状態とすると、タイムラグによりキャップ90より先にワイパー92が上昇し、記録ヘッド44側に突出した状態となる。
この状態、すなわち第4動力伝達状態では、被規制部80aが第2規制部64eの下面に押し当たっている。この状態で、キャリッジ40をホームポジションから装置幅方向左方に移動させると、規制部材64も第1位置(図14)から第2位置(図13)に向けて移動し、被規制部80aが動作許容部64dに入り込む場合がある。したがって、これを避けるべく、太陽歯車70の回転を正転させて被規制部80aを第2規制部64eの下面から離間させる。すなわち面圧解除動作を行う。
そして、記録ヘッド44のヘッド面44aにワイパー92が接触した状態で、キャリッジ40をホームポジションから装置幅方向左方(第2方向)に移動させることで、ワイパー92により記録ヘッド44のヘッド面44aのワイピング動作(ヘッド面44aのクリーニング)が行われる。また、この動作に伴い規制部材64は、第1位置(図14)から第3位置(図7)に移動する。
そして、ワイピング動作終了後において、被規制部80aの面圧が解除されている状態であるので、太陽歯車70を逆転(図16における反時計周り方向への回転)させて被規制部80aを第1規制部64cの下面に押し当てる。これにより、再度切り替え機構56において第4動力伝達状態となるので、吸引ポンプ86を作動させて、キャップ90内に残ったインクの吸引を行うことができる。尚、キャップ90内の残インクを吸引する状態において、キャリッジ40は、キャップ90の対向位置から装置幅方向左方にずれた位置に位置している。
<<<面圧解除の制御について>>>
ここで、面圧解除時における制御部52の制御について説明すると、制御部52は、駆動モーター54の回転量をエンコーダーセンサー104で監視するととともにその回転量を制御している。本実施例では、上述のように第1動力伝達状態或いは第2動力伝達状態において面圧を解除すべく、各状態での駆動モーター54の回転を逆方向に切り換える。この際、例えば第1動力伝達状態において駆動モーター54を必要以上に逆転駆動させると、遊星歯車116cと歯車120との噛み合い状態が解除され、給送ローラー34が自由回転可能な状態(ニュートラル状態)となる。その結果、給送ローラー34が媒体Pに押されて、搬送方向と逆方向に回転してしまい、給送ローラー34と搬送ローラー対38との間での媒体Pの撓みを維持できず、媒体Pの撓み状態が減少、あるいは消失状態となる。その結果、媒体Pの送り速度に乱れが生じ、媒体Pの送り精度が悪化する。
また、駆動モーター54の逆転駆動量が大きくなると第1動力伝達状態から第2動力伝達状態に切り換わり、ピックアップローラー28も回転状態となり、媒体Pを搬送経路上流側から押すような状態となり、媒体Pの搬送精度が悪化する。
ここで、面圧解除に必要な駆動モーター54の逆転駆動量をA(以下、面圧解除必要逆転駆動量という)とする。尚、面圧解除必要逆転駆動量Aは、媒体Pが記録動作に伴って搬送方向下流側に搬送されるにつれて、減少する。これは、媒体Pの搬送に応じて給送ローラー34と搬送ローラー対38との間における撓み量が減少し、面圧も減少するためである。
一方、遊星歯車116cと歯車120との噛み合い状態が解除され、給送ローラー34が自由回転可能な状態(ニュートラル状態)となる逆転駆動量をB(以下、給送ローラーニュートラル駆動量という)とする。本実施例では、面圧解除必要逆転駆動量Aと給送ローラーニュートラル駆動量Bとは、A<Bの関係にある。
図25において符号Bが付された曲線は、給送ローラー34の給送ローラーニュートラル駆動量Bの変化を模式的に示している。また、図25において符号Aが付された曲線は、面圧解除必要逆転駆動量Aの変化を模式的に示している。尚、図25の横軸は、記録を開始した後の媒体Pの搬送量を示しており、1パス目、2パス目のパスとは、キャリッジ40の1回の移動動作(片道或いは往復)を意味している。また縦軸は、駆動モーター54の逆転駆動量を示している。
逆転駆動量C−1は、媒体Pの記録動作中において駆動モーター54を逆転させて面圧を解除する駆動モーター54の駆動量として設定する値である。本実施例では、一例として逆転駆動量C−1は、図25に示すように記録動作実行中における給送ローラーニュートラル駆動量Bの最低値B−2を越えない範囲で設定されている。さらに、逆転駆動量C−1は、面圧解除必要逆転駆動量Aよりも大きく、駆動モーター54における第1動力伝達状態から第2動力伝達状態への切換駆動量(ピックアップローラー28及び給送ローラー34が回転状態となる駆動量)を越えない範囲で設定されている。
しかしながら、媒体Pの記録動作開始時の最初のパス、つまり1パス目では、媒体Pの撓み量が大きいので、面圧解除必要逆転駆動量Aも大きくなる。図25では、1パス目における面圧解除必要逆転駆動量AはA−1となる。このため、記録動作実行中において最適な逆転駆動量である逆転駆動量C−1では、1パス目において面圧解除を十分に行えない虞がある。従って、本実施例では、記録動作開始時の1パス目における逆転駆動量を、逆転駆動量C−1よりも大きい逆転駆動量C−2に設定している。尚、逆転駆動量C−2は、給送ローラー34がニュートラル状態とならないように、1パス目における給送ローラーニュートラル駆動量B−1よりも小さく設定されている。より具体的には、図25に示すように、逆転駆動量C−2は、1パス目における面圧解除必要逆転駆動量A−1以上の値に設定されている。さらに逆転駆動量C−2が、給送ローラーニュートラル駆動量Bを越えない範囲で、面圧解除必要逆転駆動量A−1より大きい値、つまり面圧解除必要逆転駆動量A−1に対して余裕を持った値であることが好ましい。
制御部52は、一例として媒体Pの記録動作が終了した場合には、面圧解除の為の逆転駆動量をC−1及びC−2よりも大きいC−3に設定してもよい。即ち、媒体Pを排出する場合、給送ローラー34がニュートラル状態となっても、媒体Pに対する記録が終了しており、媒体Pの記録品質には影響が生じないことから、面圧解除を優先すべく面圧解除の逆転駆動量を給送ローラーニュートラル駆動量Bよりも大きくすることができる。これにより、より確実に面圧解除を行うことができる。
図26において、記録動作時の面圧解除の流れを説明する。尚、以下の説明では、一例として第1動力伝達状態における面圧解除を前提として説明する。制御部52は、記録動作を開始した後(ステップS1)、動作許容部64dが被規制部80aの位置を通過する位置までキャリッジ40をホームポジション(HP)側、即ち−X方向に移動させる必要があるか否かを監視する(ステップS2)。
尚、ステップS1における記録動作とは、制御部52が撓み制御を含むスキュー矯正制御後の記録ヘッド44と対向する領域へ媒体Pを搬送する媒体搬送動作(頭出し動作)等の、記録ヘッド44における媒体Pへの1パス目におけるインク吐出前の動作も含むものとする。
制御部52は、動作許容部64dが被規制部80aの位置を通過する位置までキャリッジ40をホームポジション側に移動させる必要があると判断した場合(ステップS2においてYes)、その際のキャリッジ40のパスがどの様なパスであるかを判断する(ステップS3)。
キャリッジ40のパスが1パス目の場合、逆転駆動量をC−2(図25)に設定する(ステップS4)。キャリッジ40のパスが2パス目以降で記録中の場合、逆転駆動量をC−1(図25)に設定する(ステップS5)。キャリッジ40のパスが2パス目以降で記録終了後の場合、逆転駆動量をC−3(図25)に設定する(ステップS6)。
尚、動作許容部64dが被規制部80aの位置を通過する位置までキャリッジ40をホームポジション側に移動させる場合とは、一例として、媒体Pにおいて縁無し記録を行う場合、媒体Pのホームポジション側のサイドエッジを検出するための動作や、キャップ90(図19)に対してインクを吐出することでノズルの目詰まり防止を行うフラッシング動作などが挙げられる。これらの動作を行う際、切り替え機構56における第1動力伝達状態の面圧解除が必要となる。
次いで、制御部52は設定された逆転駆動量C−1、C−2、C−3のいずれかに基づいて面圧解除動作を実行する(ステップS7)。具体的には、制御部52は駆動モーター54の回転方向を正転方向から逆転方向に切り替え、設定された逆転駆動量C−1、C−2、C−3のいずれかの駆動量分だけ、駆動モーター54を駆動させて、面圧を解除する。
次いで、制御部52は面圧解除後、キャリッジ40をホームポジション側に移動させる(ステップS8)。このとき制御部52は、キャリッジ駆動モーター98の駆動負荷、例えば、キャリッジ駆動モーター98の電圧値、または電流値が予め定めた閾値未満であるかを監視する(ステップS9)。
キャリッジ駆動モーター98の駆動負荷が予め定めた閾値未満の場合(ステップS9においてYes)、制御部52はキャリッジ40のホームポジション側への移動を継続し、その後、所定の動作(上述したサイドエッジ検出やフラッシング動作等)を行う(ステップS10)。
制御部52は、所定の動作実行後に、ステップS11としてキャリッジ40をホームポジション側から記録実行領域に戻して、記録が終了していない場合(ステップS12においてNo)には記録動作を再開する。尚、記録が終了している場合(ステップS12においてYes)にはキャリッジ40をそのままホームポジションに保持しても良い。
ここでステップS9においてキャリッジ駆動モーター98の駆動負荷が予め定めた閾値を超えている場合(ステップS9においてNo)、制御部52はステップS13としてロック解除動作を実行する。ロック解除動作については後述するが、ステップS13のロック解除動作と、その後に再度実行するステップS8とが、本発明の「リトライ動作」を構成する。
制御部52はロック解除動作実行後にステップS14としてロック解除動作の実行回数を確認する。ロック解除動作の実行回数が所定回数(n回)以下である場合には(ステップS14においてNo)、ステップS8に戻る。
ロック解除動作の実行回数が所定の回数(n回)を超える場合には(ステップS14においてYes)、制御部52はエラーとして動作を終了させる。
<<<リトライ動作について>>>
次いで、図27ないし図30において、一例として第1動力伝達状態において面圧解除動作に失敗した場合(図26のステップS9でNoの場合)におけるロック解除動作について説明する。以下、図28の上の図において第1動力伝達状態(被規制部80aが第1規制部64cを押圧している状態)における面圧解除動作において面圧解除が十分されなかった状態(被規制部80aの第1規制部64cへの押圧が維持されている状態)でキャリッジ40をホームポジション側に移動させるとする。尚、図28の上の図は、規制部材64の第3位置を示している。
これにより、例えば、図29の上の図に示すように、回動部材80の被規制部80aが面圧により規制部材64の動作許容部64d内に入り込んだ状態となる。この状態のまま、キャリッジ40をホームポジション側へ移動させると、図28の真中の図に示すように被規制部80aが、第2規制部64eと当接した状態となる。この様な状態でキャリッジ40のホームポジション側への移動が継続されると、被規制部80aは第2規制部64eに押圧された状態となるとともにキャリッジ40のホームポジション側への移動が規制された状態(ロック状態)となる。その結果、キャリッジ駆動モーター98の駆動負荷が所定の負荷を超える状態(予め定めた閾値を越える状態)となる。
この場合制御部52は、一旦キャリッジ40を少し戻してから正常な状態への復帰を試みる。具体的には、図27のステップS15においてキャリッジ駆動モーター98を第2回転方向に所定量回転させる。これにより、図28の下の図に示すように、キャリッジ40は、ホームポジションとは反対の記録領域側に所定量移動し、被規制部80aと第2規制部64eとの当接状態(ロック状態)が解除される。
次いで、制御部52は、ステップS16において駆動モーター54の回転方向を逆転方向(第1動力伝達状態における面圧解除動作時の回転方向)から正転方向に切り替えて、正転方向に所定の第1駆動量分回転させる。ここで、第1駆動量は、切り替え機構56において第1遊星歯車78Aが第1被噛合歯車82と噛み合った状態(第2動力伝達状態)から第2遊星歯車78Bが第2被噛合歯車84と噛み合った状態(第3動力伝達状態)まで動力伝達状態を切り替える場合の駆動モーター54の駆動量である。
これにより、図29の真中の図に示すように、回動部材80が時計回り方向に回動し、被規制部80aが動作許容部64d内に入り込んだ状態から、動作許容部64dを抜け出し、被規制部80aの位置が第3動力伝達状態となった場合における位置まで変位する。
次いで、制御部52は、ステップS17として、図29の下の図に示すように駆動モーター54の回転方向を正転方向から逆転方向に切り替えて、逆転方向に所定の第2駆動量分回転させる。ここで、第2駆動量は、回動部材80の被規制部80aの位置が第3動力伝達状態における位置から、被規制部80aが動作許容部64dから抜け出し、第1動力伝達状態における面圧が解除される位置までの駆動量に設定されている。制御部52は、ステップS18として、キャリッジ駆動モーター98の回転方向を第2回転方向から第1回転方向に切り替えて回転駆動させる。これにより、キャリッジ40のホームポジション側への移動(図26のステップS8)が再開できる状態となる。
その結果、規制部材64は図30の上の図から下の図への変化で示す様に、第3位置から第1位置へと切り替えることができる。
<<<動作許容部を設ける意義について>>>
次いで、規制部材64において動作許容部64dを設ける意義について説明する。図21を参照するに、規制部材96は、装置幅方向右方(第1方向)端部にキャリッジ40と係合する係合部96aが設けられている。また、規制部材96は、装置幅方向に沿って延設され、装置幅方向左方(第2方向)端部に、回動部材80の被規制部80aを規制する規制部96bが設けられている。すなわち、規制部材96は動作許容部が設けられていない構成である。
そして、図21において紙面上方の図は、キャリッジ40がホームポジションよりも装置幅方向左方(第2方向)側に位置している状態を示している。この状態では、被規制部80aは規制部96bにより規制されている。また、紙面中央の図は、キャリッジ40がホームポジションに位置している状態を示している。この状態においても被規制部80aは規制部96bにより規制されている。そして、紙面下方の図は、キャリッジ40がホームポジションからさらに装置幅方向右方(第1方向)側に移動し、キャリッジ40が規制部材96の係合部96aと係合し、係合部96aを装置幅方向右方(第1方向)に押圧することで、規制部材96が装置幅方向右方(第1方向)に移動した状態を示している。
規制部材96が装置幅方向右方に移動することにより、規制部96bの被規制部80aの規制状態が解除される。これにより、規制部材96を用いた切り替え機構においても第1噛合状態と第2噛合状態との切り替えができ、ひいては駆動モーター54の回転を正転あるいは逆転させることにより第1動力伝達状態、第2動力伝達状態、第3動力伝達状態及び第4動力伝達状態の切り替えが行うことができる。
しかしながら、規制部材96を用いた切り替え機構では、キャリッジ40をホームポジションから更に装置幅方向右方(第1方向)、すなわちホームポジションに対して外側の位置に移動させないと、動力伝達の切り替えを行うことが出来ず、キャリッジ40の移動領域が装置幅方向において大きくなる。その結果、装置幅方向での装置サイズが大きくなる。
これに対して、本実施例では、規制部材64において第1規制部64cと第2規制部64eとの間に凹状の動作許容部64dを設けたことにより、キャリッジ40の移動領域内においてホームポジションよりも内側の位置で切り替え機構56の第1噛合状態と第2噛合状態とを切り替えることができる。その結果、キャリッジ40をホームポジションの外側に移動させる必要がなくなり、装置幅方向での装置サイズの小型化を図ることができる。
<<<実施例の変更例>>>
(1)本実施例では、規制部材64において、第1噛合状態における被規制部80aの規制に第1規制部64cの上面を利用し、第2噛合状態における被規制部80aの規制に第2規制部64eの下面を利用する構成としたが、この構成に変えて、第1噛合状態における被規制部80aの規制に第1規制部64cの下面を利用し、第2噛合状態における被規制部80aの規制に第2規制部64eの上面を利用してもよく、さらに、第1規制部64cの上面および第2規制部64eの下面に加えて第1規制部64cの下面及び第2規制部64eの上面を利用して駆動モーター54の駆動対象を増やしてもよい。
(2)本実施例では、面圧解除のために駆動モーター54の逆転駆動量の値をC−1、C−2及びC−3に設定し、媒体Pの記録動作時及び排出動作時にそれぞれ設定した値で駆動モーター54の回転を制御することで面圧解除動作を行ったが、これらに加えて、例えば、媒体Pの撓み量を調整することで、面圧を下げる制御を行ってもよい。面圧が高いと、駆動モーター54における面圧解除必要逆転駆動量Aが大きくなるからである。
ここで、媒体Pのたわみを小さくすることで、面圧を下げることができる。本変更例では、スキュー矯正制御において撓み制御を行い、媒体Pに撓みを発生させ、媒体Pの斜行を低減させる。その後、当該撓みを小さくすることで、面圧を下げる。具体的には、給送ローラー34を停止させた状態で搬送駆動ローラー38aを駆動させて撓みを低減する方法と、給送ローラー34及び搬送駆動ローラー38aにおける媒体搬送速度に差を付ける方法と、双方を併用する方法と、がある。
図31において、給送ローラー34及び搬送駆動ローラー38aにおける媒体搬送速度に差を付ける方法について説明する。尚、図31の横軸はローラーの駆動時間を示しており、縦軸は紙面上方に延びる座標軸は媒体搬送速度を示している。
最初に、搬送駆動ローラー38aを速度V1で回転駆動させる。次いで、給送ローラー34を搬送駆動ローラー38aに対して時間t1遅れて速度V2で駆動させる。本変更例では、速度V1>V2の関係にある。ここで、給送ローラー34が停止している間に搬送駆動ローラー38aが回転駆動していることから、媒体Pの先端が搬送ローラー対38により搬送方向下流側に送られ、撓みが小さくなる。さらに、時間t1後に給送ローラー34が回転駆動しても給送ローラー34の媒体搬送速度V2は搬送駆動ローラー38aの媒体搬送速度V1よりも遅いので、さらに撓みが小さくなる。その結果、媒体Pの記録動作開始時における媒体Pの撓みが低減された状態となるので、面圧解除必要逆転駆動量Aを小さくでき、より確実に面圧を解除することができる。
(3)本実施例において、第1動力伝達状態の面圧解除における制御方法を、第4動力伝達状態における面圧解除において用いてもよい。
上記説明をまとめると、プリンター10は、媒体Pに記録を行う記録ヘッド44を備えるとともに、第1方向である装置幅方向右方及びその反対方向である第2方向である装置幅方向左方に移動するキャリッジ40と、複数の駆動対象の共通の動力源である駆動モーター54と、駆動モーター54からの動力伝達状態を切り替える切り替え機構56と、を備え、切り替え機構56は、駆動モーター54により駆動される太陽歯車70と、太陽歯車70の周囲を遊星運動する遊星歯車74A、74Bと、遊星歯車74A、74Bを備えるとともに回動することにより遊星歯車74A、74Bを遊星運動させる回動部材80と、回動部材80に設けられた被規制部80aと係合して回動部材80の回動を規制する、第1方向である装置幅方向右方及び第2方向である装置幅方向左方に移動可能な規制部材64と、を備え、規制部材64は、第1方向である装置幅方向右方側から第2方向である装置幅方向左方に向かって順に、被規制部80aと係合可能な第1規制部64cと、被規制部80aの動作を許容する動作許容部64dと、被規制部80aと係合可能な第2規制部64eと、を備え、キャリッジ40は、規制部材64と係合可能に設けられるとともに、キャリッジ40の移動に従って規制部材64を変位させ、規制部材64は、キャリッジ40が第1方向である装置幅方向右方の端部に位置する際に第2規制部64eが被規制部80aと係合可能な第1位置に位置決めされ、キャリッジ40が第1方向である装置幅方向右方の端部から第2方向である装置幅方向左方に移動するに従い、動作許容部64dが被規制部80aを受け入れ可能な第2位置、第1規制部64cが被規制部80aと係合可能な第3位置、の順に変位する。
上記構成によれば、規制部材64は、キャリッジ40が第1方向である装置幅方向右方の端部に位置する際に第2規制部64eが被規制部80aと係合可能な第1位置に位置決めされ、キャリッジ40が第1方向である装置幅方向右方の端部から第2方向である装置幅方向左方に移動するに従い、動作許容部64dが被規制部80aを受け入れ可能な第2位置(即ち動力伝達状態を切り換え可能な位置)、第1規制部64cが被規制部80aと係合可能な第3位置、の順に変位する構成である。即ち動力伝達状態を切り換え可能な規制部材64の第2位置は、キャリッジ40が第1方向である装置幅方向右方端部から第2方向である装置幅方向左方側に移動した際に取りうる位置であるので、動力伝達状態を切り換える際に、キャリッジ40が第1方向の端部より更に外側に移動する必要がなく、キャリッジ40の移動領域の拡大を抑制できる。
規制部材64を第2方向である装置幅方向左方に付勢する付勢手段66を備える。この構成によれば、規制部材64がキャリッジ40との係合を解除した状態、換言すれば、キャリッジ40が第1方向である装置幅方向右方の端部から第2方向である装置幅方向左方側に移動した状態でも、規制部材64が第1位置を確実に維持できる。即ち、動力伝達状態を確実に維持できる。
遊星歯車78A、78Bとして第1遊星歯車78A及び第2遊星歯車78Bを備え、第1遊星歯車78Aと噛合して動力を得る第1被噛合歯車82と、第2遊星歯車78Bと噛合して動力を得る第2被噛合歯車84と、を備え、回動部材80の回動により、第1遊星歯車78Aが第1被噛合歯車82と噛合する第1噛合状態と、第2遊星歯車78Bが第2被噛合歯車84と噛合する第2噛合状態と、を切り換え可能であり、第1噛合状態において太陽歯車70が正転した場合、動力伝達状態として第1動力伝達状態となり、第1噛合状態において太陽歯車70が逆転した場合、動力伝達状態として第2動力伝達状態となり、第2噛合状態において太陽歯車70が正転した場合、動力伝達状態として第3動力伝達状態となり、第2噛合状態において太陽歯車70が逆転した場合、動力伝達状態として第4動力伝達状態となる。
上記構成によれば、第1、第2、第3、第4、のこれら動力伝達状態を切り換え可能であるので、一の駆動モーター54によって多様な動力伝達状態を形成できる。
第1動力伝達状態及び第4動力伝達状態での太陽歯車70の回転方向は、被規制部80aが第1規制部64c或いは第2規制部64eに押し当たる回転方向であり、駆動モーター54を制御する制御部52は、第1動力伝達状態及び第4動力伝達状態の少なくともいずれかにおいて動作許容部64dが被規制部80aの位置を通る方向に規制部材64が変位する場合、駆動モーター54の回転方向を逆方向に切り換える。
第1動力伝達状態及び第4動力伝達状態では、被規制部80aが第1規制部64c或いは第2規制部64eに押し当たるので、この状態で規制部材64を変位させると、被規制部80aが動作許容部64dに入り込み、その状態でロックされた状態となったり、或いは被規制部80aが動作許容部64dを抜けて別の動力伝達状態に意図せず切り換わってしまう虞がある。
上記構成によれば、駆動モーター54を制御する制御部52は、第1動力伝達状態及び第4動力伝達状態の少なくともいずれかにおいて動作許容部64dが被規制部80aの位置を通る方向に規制部材64が変位する場合、駆動モーター54の回転方向を逆方向に切り換えるので、面圧を軽減し或いは消失させることができる。
複数の駆動対象は、媒体Pを記録ヘッド44による記録位置に送る搬送ローラー対38の上流側に設けられた、媒体Pを搬送ローラー対38に向けて搬送する給送ローラー34を含み、給送ローラー34は、少なくとも第1動力伝達状態において媒体Pを下流側に送る回転方向に駆動され、制御部52は、給送ローラー34と搬送ローラー対38との間で媒体Pに撓みを形成する撓み制御を実行可能であるとともに、少なくとも第1動力伝達状態において駆動モーター54を逆方向に回転させる際の駆動量である逆転駆動量を、撓みの程度が大きいほど増やす。
給送ローラー34と搬送ローラー対38との間で媒体Pに撓みを形成すると、給送ローラー34を駆動する際のトルクが増え、面圧が増えることとなり、面圧を消失させる為に必要な逆転駆動量(面圧解除必要逆転駆動量)Aも増えることとなる。
そこで上記構成によれば、制御部52は、撓みの程度が大きいほど、逆転駆動量C−1を増やすので、面圧を適切に消失させることができる。
制御部52は、媒体Pへの記録が終了した後の逆転駆動量C−3を、媒体Pに記録を実行中における逆転駆動量C−1よりも増やす。本構成によれば、より確実に面圧を消失させることができる。加えて、媒体Pへの記録が終了した後の逆転駆動量C−3を増やすことから、記録品質に悪影響を及ぼすこともない。
キャリッジ40の駆動源であるキャリッジ駆動モーター98を備え、制御部52は、キャリッジ駆動モーター98を第1回転方向に駆動してキャリッジ40を移動させることにより、動作許容部64dが被規制部80aの位置を通る方向に規制部材64を変位させる場合、キャリッジ駆動モーター98の駆動負荷を監視し、駆動負荷が予め定められた閾値を超えた場合、キャリッジ駆動モーター98を第1回転方向とは逆の第2回転方向に所定量駆動した上でリトライ動作を行う。
キャリッジ40を移動させることにより規制部材64を変位させる際、被規制部80aが動作許容部64dに入り込むと、それ以上キャリッジ40が移動できずにロック状態となり、以降の記録動作が行えなくなる虞がある。
上記構成によれば、制御部52は、キャリッジ駆動モーター98の駆動負荷を監視し、駆動負荷が予め定められた閾値を超えた場合、リトライ動作を行うので、正常な状態への復帰、即ち被規制部80aが動作許容部64dに入り込んでロックされた状態の解消が期待できる。
第1動力伝達状態にある際に行うリトライ動作は、第3動力伝達状態に切り換わる方向に駆動モーター54を駆動した後に、キャリッジ駆動モーター98を逆転させる動作を含む。
被規制部80aが動作許容部64dに入り込んだ状態から、駆動モーター54を逆転させると、第1動力伝達状態を越えて第2動力伝達状態に切り換わってしまう虞がある。記録実行中に第1動力伝達状態から第2動力伝達状態に切り換わると媒体Pの搬送に悪影響が生じる構成では、その様な事態は好ましくない。そして第3動力伝達状態が媒体Pの搬送に影響が生じない構成では、それを利用することが好適である。
そこで制御部52は、リトライ動作を行う場合、直ちに駆動モーター54を逆転させるのではなく、一旦第3動力伝達状態に切り換えてから、駆動モーター54を逆転させる。動力伝達状態が一旦第3動力伝達状態に切り換われば、第2動力伝達状態に切り換わらずに、正常に被規制部80aを動作許容部64dから抜け出させる為の適切な逆転駆動量を設定できる。その結果、リトライ動作を適切に実行することができる。
プリンター10において、駆動モーター54を支持する駆動モーター支持フレーム68を備え、駆動モーター支持フレーム68は、太陽歯車70を回転可能に支持する軸72を中心に回転可能に設けられるとともに、固定手段74によって軸72を中心にした回転が止められることにより固定されている。この構成によれば、駆動モーター54と太陽歯車70との位置関係が安定する。従って駆動モーター54に駆動歯車76を設けるとともに当該駆動歯車76を太陽歯車70と噛合させる構成にあっては、駆動歯車76と太陽歯車70との位置関係が安定し、ひいては回転時の騒音を抑制できる等の作用効果が得られる。
駆動モーター54は、装置奥行き方向において記録ヘッド44に対し背面側に位置し、装置高さ方向において記録ヘッド44のヘッド面44aよりも上側に位置し、装置幅方向において最大サイズの媒体の通過領域X1内に位置している。
<<<スキャナー部の構成について>>>
次いで、図32ないし図36において装置本体12とスキャナー部14との関係について説明する。図32において、スキャナー部14は装置本体12の背面側を支点として装置本体12に対して回動可能であり、閉じた状態(図1)と開いた状態(図32)とを切り替え可能に構成されている。
装置本体12において装置奥行き方向背面側には、装置幅方向に間隔をおいてヒンジ部12aが複数設けられている。さらに、装置本体12内において、装置奥行き方向前面側には、前方側上部ハウジング122が設けられている。前方側上部ハウジング122には、一例として装置高さ方向下方側に凹む、2箇所の凹部122aが形成されている。
装置本体12において、前方側上部ハウジング122の装置奥行き方向背面側、より具体的にはキャリッジ40の移動領域の背面側にメインフレーム62が設けられている。装置奥行き方向において前方側上部ハウジング122とメインフレーム62の間には、庇状部12bが設けられている。庇状部12bは、装置本体12の装置幅方向右側端部及び左側端部において装置奥行き方向に延設されている。
次いで、図34及び図35において、スキャナー部14の装置奥行き方向前面側(自由端側)の下面には、装置幅方向に間隔をおいて2箇所の凸部14aが形成されている。さらに、装置奥行き方向において凸部14aの背面側には、第1の受け面14bが形成されている。第1の受け面14bの装置奥行き方向背面側において、スキャナー部14の装置幅方向左側端部及び右側端部には、装置奥行き方向に延びるリブ14cが形成されている。
装置奥行き方向においてリブ14cの背面側には、第2の受け面14dが形成されている。さらに、スキャナー部14の装置奥行き方向背面側端部において装置幅方向左側端部には、回動軸14e(図34)が設けられ、装置幅方向右側端部には、回動軸14f(図35)が設けられている。回動軸14e、14fはそれぞれ、装置本体12の装置奥行き方向背面側のヒンジ部12aに受け入れられている。
図36は、スキャナー部14を装置本体12に対して閉じた状態を図示している。閉じた状態において、スキャナー部14の凸部14aは、装置本体12の前方側上部ハウジング122の凹部122aに受け入れられている。この状態で凸部14aは凹部122aと当接し、凹部122aに支持されている。スキャナー部14が装置本体12に対して閉じた状態では、スキャナー部14は、凹部122aと当接する凸部14aと、ヒンジ部12aに支持される回動軸14e、14fの4点により支持されている。
一方、この状態において、前方側上部ハウジング122と第1の受け面14bとは、所定の間隔をおいて互いに対向した状態にある。さらに、リブ14cも装置本体12の庇状部12bと所定の間隔をおいて互いに対向した状態にある。加えて、第2の受け面14dもメインフレーム62と所定の間隔をおいて互いに対向した状態にある。
ここで、スキャナー部14に対して装置高さ方向上方側から押圧力が作用した場合、スキャナー部14が凸部14a及び回動軸14e、14fのみで支持されている状態では、スキャナー部14は装置奥行き方向において両端支持梁の撓み状態となる。その結果、スキャナー部14は、押圧力により下方側に撓ませられた状態となる。この撓み量が大きいと、平坦なガラス板で形成された原稿載置面14gが破損する場合がある。
本実施例では、スキャナー部14に対して所定の大きさ以上の押圧力が作用した場合、スキャナー部14が撓む。その結果、第1の受け面14bが前方側上部ハウジング122と当接し、前方側上部ハウジング122により支持される。同様に、リブ14cも装置本体12の庇状部12bと当接し、庇状部12bに支持される。加えて、第2の受け面14dもメインフレーム62と当接し、メインフレーム62に支持される。その結果、スキャナー部14は、装置本体12に対して多点で支持されるので、スキャナー部14の撓み量を低減でき、原稿載置面14gの破損を抑制、あるいは防止できる。
また、本実施形態では本発明に係る切り替え機構56を記録装置の一例としてのインクジェットプリンターに適用したが、その他液体噴射装置一般に適用することも可能である。
ここで、液体噴射装置とは、インクジェット式記録ヘッドが用いられ、該記録ヘッドからインクを吐出して被記録媒体に記録を行うプリンター、複写機及びファクシミリ等の記録装置に限らず、インクに代えてその用途に対応する液体を前記インクジェット式記録ヘッドに相当する液体噴射ヘッドから被記録媒体に相当する被噴射媒体に噴射して、前記液体を前記被噴射媒体に付着させる装置を含むものである。
液体噴射ヘッドとして、前記記録ヘッドの他に、液晶ディスプレー等のカラーフィルター製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレーや面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料噴射ヘッド等が挙げられる。
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。