JP6905443B2 - デバイス - Google Patents

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Description

本開示は、医療用途に用いるデータを取得する等を目的として人間の身体に直接装着されるウェアラブルのデバイスに関し、特に、動作電源として空気電池を用いたデバイスに関する。
近年、皮膚の表面に直接貼り付けることで体温や心拍数などの生体情報を取得できる、パッチタイプの医療用生体情報取得デバイスが普及し始めている。
このようなデバイスは、樹脂製の基材の表面に、皮膚に触れることで生体情報を取得可能な機能素子であるセンサ電極と、センサ電極からの情報を取得するとともに、例えばスマートフォンなどの別の機器に取得した情報を伝送する送信装置を含む駆動回路部と、駆動回路部の動作電源となる電池とが配置され、センサ電極部分以外の皮膚に面した部分に接着層が形成されることで、皮膚に貼り付けることができるパッチとして構成され、身体に直接貼り付けて使用されるウェアラブルの医療機器となっている。
例えば、特許文献1には、アノードとカソードとが印刷により形成された電源としての電気化学セルと、可撓性を有するセンサを含む電気回路とが、表面に接着剤層が形成された2つの樹脂製の基板層の間に配置されて構成され、スマートフォンとの間でデータ通信が可能な体温測定用パッチが開示されている。
また、特許文献2には、ユーザの心拍数や呼吸、身体の移動状況などを各種センサで測定可能な生体計測パッチとして、センサ、プロセッサ、アプリケーション、送信機などを有する再利用可能なセンサデバイスと亜鉛空気電池として例示される電池とを、気泡層や接着層を含む複数の層が積層された廃棄可能なパッチデバイスに収容するものが開示されている。
特許文献3には、樹脂製基板に、センサや半導体装置を含む電子部品と、この電子部品の動作電源としてのコイン型の空気電池とが実装された医療用の絆創膏型の計測モジュールについて、基板を人体に接着させるための接着層を覆う保護シートが空気電池収容部の正極側を覆うシール部材を兼ねることで、保護シートを剥がして計測モジュールを人体に装着する際に、空気電池の正極に空気が接触して電力を供給し始めるものが開示されている。
特表2016−505808号公報 特表2016−515022号公報 特開2017− 370号公報
医療用のパッチをはじめとする、ウェアラブルなデバイスでは、人体の皮膚に貼り付けて使用するものであることから、小型、かつ、軽量であることが求められる。一方で、例えば心拍数の計測や、睡眠時間中の呼吸数の変動などを測定する場合には、長時間継続して動作することが求められる。
このため、特にデバイスの動作電源となる電池には、パッチとして使用できるだけの可撓性を有することを前提として、長時間の連続使用に耐えうるだけの容量を、小型、軽量の形態を保ったままで実現することが求められる。また、デバイスの全体の配置構成を工夫することも必要となる。
本開示は、上記従来の課題を解決し、一定の時間連続して動作することができ、人体に装着するウェアラブルなデバイスとしての小型、軽量性を有するデバイスを提供することを目的とする。
上記課題を解決するため本願で開示するデバイスは、身体に直接装着されるデバイスであって、皮膚に接触する機能素子と、前記機能素子を動作させる駆動回路部と、電源としてのシート状の空気電池とを備え、前記駆動回路部と前記空気電池とが、前記空気電池の正極側の外装体が前記デバイスの前記機能素子が配置されている側とは反対側の表面に位置するようにして積層されていることを特徴とする。
本願で開示するデバイスは、人体の皮膚に接触する機能素子を用いて動作する駆動回路部と、この駆動回路部の動作電源であるシート状の空気電池とが、空気電池の正極側の外装体がデバイスの表面側に位置するようにして積層されている。このため、シート状空気電池の面積をデバイス全体の面積と略同じとすることができて空気電池の容量を増大できるとともに、空気電池の正極活物質である空気を容易に取り込むことができる簡素な構成を実現できる。
第1の実施形態にかかるデバイスの構成を説明する断面構成図である。 第1の実施形態にかかるデバイスの構成を説明する平面図である。 第2の実施形態にかかるデバイスの構成を説明する断面構成図である。
本開示にかかるデバイスは、身体に直接装着されるデバイスであって、皮膚に接触する機能素子と、前記機能素子を動作させる駆動回路部と、電源としてのシート状の空気電池とを備え、前記駆動回路部と前記空気電池とが、前記空気電池の正極側の外装体が前記デバイスの前記機能素子が配置されている側とは反対側の表面に位置するようにして積層されている。
本開示にかかるデバイスは、上記の構成を備えることで、医療用の計測デバイスや投薬デバイスとして、また、被装着者の各種の身体情報を取得するウェアラブルデバイスとして、被装着者の身体に直接装着されてもなるべく違和感が少ないような、小型、軽量化が可能である。特に、デバイスの動作電源となるシート状の空気電池をデバイスの駆動回路部に積層して配置されているために、デバイスの面積とシート状電池の面積とを略同じとすることができ、電池容量の拡大を実現できる。さらに、シート状の空気電池の正極側の外装体をデバイスの機能素子が配置されている側とは反対側の表面に位置するようにすることで、デバイスを装着した状態で空気電池の正極活物質である空気を容易に取り込める簡易な構成のデバイスを実現することができる。
本開示のデバイスにおいて、前記機能素子と前記駆動回路部とが積層されていることが好ましい。このようにすることで、特に、機能素子が薄い構造体の場合には、機能素子の配置位置が、駆動回路部の形状に影響を与えることが無く、デバイス全体の小型化が実現できる。
なお、前記機能素子が、皮膚に接触して人体の状態を計測するセンサとすることができる。小型軽量化が可能で、かつ、必要に応じて連続した動作が可能である本願で開示するデバイスの用途として好適である。
また、前記駆動回路部に、外部から前記機能素子の動作を制御する通信手段を備えることが好ましい。このようにすることで、駆動回路部の構成を簡素化することができ、デバイス全体のさらなる小型化が実現できる。
さらに、前記デバイスの皮膚と接触する側の表面の、前記機能素子が配置されている部分以外の部分に粘着層が形成されていることが好ましい。このようにすることで、接着層の接着剤によって皮膚に容易に装着できる、パッチタイプ、絆創膏タイプのデバイスとすることができる。
以下、本開示にかかるデバイスにについて、図面を参照して説明する。
なお、本実施形態の説明で用いるデバイスの構造を説明するための各図面は、デバイスを構成する各部材の形状とその配置位置の相互関係とをわかりやすく説明するものであり、各図に示した部材の大きさは、必ずしも実際の大きさを反映するものではない。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態にかかるデバイスの全体の構成を説明するための断面構成図である。
図2は、本実施形態にかかるデバイスを上面から見た図である。
図1は、図2において、A−A’で示す部分の断面を示している。また、便宜上、図1の上下方向を、本実施形態で示すデバイス100の上下方向として説明する。
本実施形態で説明するデバイス100は、例えば被装着者の体温を検出する医療用パッチであり、直接皮膚に貼り付けて使用するものである。
図1に示すように、本実施形態にかかるデバイス100は、シート状の空気電池10と、駆動回路部20と、被装着者の皮膚に接触する機能素子30と、デバイス100の機能素子30側の表面に形成された接着層40とを備えている。
空気電池10は、正極1と負極2とを含む発電要素をはじめとする各部材をシート状に形成することで全体として可撓性を有するシート状に構成されている。本実施形態にかかるデバイスでは、空気電池10の正極1側の外装体6が、デバイス100の機能素子30が配置されている下側とは反対側の上側の表面に配置されている。このようにすることで、デバイス100を被装着者が装着した状態で、正極1に正極活物質である空気を供給するための外装体6に形成されている空気孔7が外側に露出する。このため、例えばシート状空気電池をデバイス全体の外殻を構成する外殻部材の内部に配置した場合などと比較して、外殻部材が不要となることに加えて、空気電池の空気孔とデバイスの外部とを連通する開口などを外殻部材に形成する必要が無く、デバイス全体を簡易な構成とすることができ、デバイスの小型軽量化と、低コスト化とを実現できる。
また、本実施形態に示すデバイス100では、駆動回路部20に空気電池10を積層する構成としているため、デバイス100の面積に対する空気電池10の面積の比率を100%に近づけることができる。このため、空気電池10と駆動回路部20とを並べて配置する場合と比較して、デバイス100の面積が同じ場合では空気電池10の面積をより大きくすることができ、電池容量の大容量化を実現できる。また、空気電池10の面積が同じ場合であれば、デバイス100の面積を小さくすることができる。
さらに、本実施形態にかかるデバイス100では、機能素子30として、たとえば被装着者の体温を検出するためのセンサプレートなどの、薄板、または、薄膜などで構成された厚さの薄い部材を備えている。図1に示すように、厚さの薄い機能素子30を備える場合には、機能素子30を駆動回路部20と積層して配置することができる。
このように、機能素子30を駆動回路部20と積層配置することによって、後述する駆動回路部20と機能素子30とを並べて配置する場合と比較して、駆動回路部20の面積をデバイス100の面積全体まで広げることができるため、駆動回路部20における各種回路部品の配置位置における設計裕度が広がり、例えば接続配線を短くしたり太くしたりすることで抵抗値成分を減らして、より低消費電力で動作する駆動回路部20を実現することができる。また、アンテナ素子を備える場合には、面積を大きくしてアンテナ特性を向上することや、比較的面積が大きくてもより厚さの薄い回路部品を選択するなどして、駆動回路部20、ひいては、デバイス100全体の薄型化を実現できる。
また、機能素子30を駆動回路部20と積層して配置する構成であるため、図2に示すように、センサプレートである機能素子30を、平面視したときにデバイス100の略中心部に配置することができる。このようにすることで、機能素子30の周囲に接着層40を形成することができるため、接着層40の接着剤によってデバイス100をしっかりと皮膚に装着することができ、被装着者の動きや発汗、デバイス100の装着部分に水がかかってしまった場合などでも、センサプレートである機能素子30が被装着者の皮膚に密着した状態を維持することができる。
以下、本実施形態にかかるデバイス100を構成する各部材の詳細について順次説明する。なお、以下の説明はあくまでも例示であって、本実施形態にかかるデバイスのそれぞれの構成部材は、以下の説明に記載されたものに限定されない。
[空気電池]
図1にその断面を示すように、本実施形態にかかるデバイス100に用いられているシート状の空気電池10は、それぞれがシート状に形成された、正極1と負極2、正極1と負極2との間に配置されたセパレータ3と、図示を省略する電解液とが、その周囲部分がシールされたいずれもシート状に形成された正極1側の外装体6と、負極2側の外装体5との間に密閉されて構成されている。また、正極1と、正極1側の外装体6との間には、空気を透過するが水分(電解液)は透過しない撥水膜4が配置されていて、正極1側の外装体6に形成された空気穴7から撥水膜4を介して、正極1に正極活物質である空気(酸素)が供給される。
(正極)
正極1は、触媒層を有するもの、例えば、触媒層と集電体とを積層した構造のものを使用することができる。
触媒層には、触媒やバインダなどを含有させることができる。
触媒層に係る触媒としては、例えば、銀、白金族金属またはその合金、遷移金属、Pt/IrO2などの白金/金属酸化物、La1-xCaxCoO3などのベロブスカイト酸化物、WCなどの炭化物、Mn4Nなどの窒化物、二酸化マンガンなどのマンガン酸化物、カーボン[黒鉛、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなど)、木炭、活性炭など]などが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上が使用される。
なお、触媒層は、電解液の成分を除く重金属の含有量が、1質量%以下であることが好ましい。重金属の含有量が前記のように少ない触媒層を有する正極の場合、特別な処理などを経ずに廃棄しても環境負荷が小さい電池とすることができる。この点からも、触媒としては前述のカーボンを使用することがより好ましい。
また、正極の反応性をより高める観点からは、触媒として使用するカーボンの比表面積は、200m2/g以上であることが好ましく、300m2/g以上であることがより好ましく、500m2/g以上であることが更に好ましい。なお、カーボンの比表面積は、JIS K 6217に準じたBET法によって求められる値であり、例えば、窒素吸着法による比表面積測定装置を用いて測定することができる。なお、カーボンの比表面積の 上限値は、通常、2000m2/g程度である。
触媒層における触媒の含有量は、20〜70質量%であることが好ましい。
触媒層に係るパインダとしては、PVDF、PTFE、フッ化ビニリデンの共重合体やテトラフルオロエチレンの共重合体[フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF−HEP)、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(PVDF−CTFE)、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体(PVDF−TFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体(PVDF−HEP−TFE)など]などのフッ素樹脂バインダなどが挙げられる。これらの中でもテトラフルオロエチレンの重合体(PTFE)または共重合体が好ましく、PTFEがより好ましい。触媒層におけるパインダの含有量は、3〜50質量%であることが好ましい。
触媒層を有する正極の場合、例えば、前記触媒、バインダなどを水と混合してロールで圧延し、集電体と密着させることにより製造することができる。また前記の触媒や必要に応じて使用するバインダなどを、水や有機溶媒に分散させて調製した触媒層形成用組成物(スラリー、ペーストなど)を、集電体の表面に塗布し乾燥した後に、必要に応じてカレンダ処理などのプレス処理を施す工程を経て製造することもできる。
正極合剤層を有する正極や触媒層を有する正極に係る集電体には、例えば、チタン、ニッケル、ステンレス鋼、銅などの金属の網、箔、エキスパンドメタル、パンチングメタル;カーボンの網、多孔質シート;などを用いることができる。正極に係る集電体の厚みは、10μm以上300μm以下であることが好ましい。
また、正極の集電体には、シート状外装体を構成する樹脂製フィルムや、樹脂製フィルムと金属フィルムとの積層体の一部を利用することもできる。この場合、例えば、樹脂製フィルムや前記積層体の、シート状外装体の内面となることが予定される面にカーボンペーストを塗布して集電体としたり、前記積層体の金属層を集電体としたりし、この表面に前記と同様の方法で正極合剤層や触媒層を形成することで、正極とすることができる。前記のカーボンペースト層の厚みは、30〜300μmであることが好ましい。
(負極)
負極2には、亜鉛系材料やマグネシウム系材料(マグネシウム材料とマグネシウム合金材料とを纏めてこのように称する)、アルミニウム系材料(アルミニウム材料とアルミニウム合金材料とを纏めてこのように称する)などの金属材料を含有するものが使用される。このような負極では、亜鉛やマグネシウムやアルミニウムといった金属が、活物質として作用する。
金属材料を含有する負極の具体例としては、亜鉛系粒子(亜鉛粒子と亜鉛合金粒子とを纏めてこのように称する)やマグネシウム系粒子(マグネシウム粒子とマグネシウム合金粒子とを纏めてこのように称する)やアルミニウム系粒子(アルミニウム粒子とアルミニウム合金粒子とを纏めてこのように称する)などを含有する負極が挙げられる。
亜鉛合金粒子の合金成分としては、例えば、インジウム(例えば含有量が質量基準で0.005〜0.05%)、ビスマス(例えば含有量が質量基準で0.005〜0.05%)、 アルミニウム(例えば含有量が質量基準で0.001〜0.15%)などが挙げられる。
また、マグネシウム合金粒子の合金成分としては、例えば、カルシウム(例えば含有量が質量基準で1〜3%)、マンガン(例えば含有量が質量基準で0.1〜0.5%)、亜鉛(例えば含有量が質量基準で0.4〜1%)、アルミニウム(例えば含有量が質量基準で8〜10%)などが挙げられる。
さらに、アルミニウム合金粒子の合金成分としては、例えば、亜鉛(例えば含有量が質量基準で0.5〜10%)、スズ(例えば含有量が質量基準で0.04〜1.0%)、ガリウム(例えば含有量が質量基準で0.003〜1.0%)、ケイ素(例えば含有量が質量基準で0.05%以下)、鉄(例えば含有量が質量基準で0.1%以下)、マグネシウム(例えば含有量が質量基準で0.1〜2.05%)、マンガン(例えば含有量が質量基準で0.01〜0.5%)などが挙げられる。
金属粒子を含有する負極の場合、その金属粒子は、1種単独でもよく、2種以上であってもよい。
なお、電池の廃棄時の環境負荷の低減を考慮すると、負極に使用する金属材料は、水銀、カドミウム、鉛およびクロムの含有量が少ないことが好ましく、具体的な含有量が、質量基準で、水銀:0.1%以下、カドミウム:0.01%以下、鉛:0.1%以下、およびクロム:0.1%以下であることがより好ましい。
亜鉛系粒子の粒度としては、例えば、全粒子中、粒径が75μm以下の粒子の割合が50質量%以下のものが好ましく、30質量%以下のものがより好ましく、また、粒径が100〜200μmの粒子の割合が、50質量%以上、より好ましくは90質量%以上であるものが挙げられる。
また、マグネシウム系粒子およびアルミニウム系粒子の粒度としては、例えば、全粒子中、粒径が30μm以下の粒子の割合が50質量%以下のものが好ましく、30質量%以下のものがより好ましく、また、粒径が50〜200μmの粒子の割合が、50質量%以上、より好ましくは90質量%以上であるものが挙げられる。
なお、上記説明における金属粒子の粒度は、レーザー散乱粒度分布計を用い、粒子を溶解しない媒体に、これらの粒子を分散させて測定した、体積基準での累積頻度50%における粒径(D50)である。
金属粒子を含有する負極の場合には、必要に応じて添加されるゲル化剤(ポリアクリル酸ソーダ、カルボキシメチルセルロースなど)やバインダを含んでもよく、これに電解液を加えることで構成される負極剤(ゲル状負極など)を使用することができる。負極中のゲル化剤の量は、例えば、0.5〜1.5質量%とすることが好ましく、バインダの量は、0.5〜3質量%とすることが好ましい。
金属粒子を含有する負極に係る電解液には、電池に注入するものと同じものを使用することができる。
負極における金属粒子の含有量は、例えば、60質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、また、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。
金属粒子を含有する負極は、酸化インジウム、水酸化インジウムなどのインジウム化合物を含有していることが好ましい。負極がインジウム化合物を含有することによって、金属粒子と電解液との腐食反応による水素ガス発生をより効果的に防ぐことができる。
負極に使用するインジウム化合物の量は、質量比で、金属粒子:100に対し、0.03〜1であることが好ましい。
また、負極には、前記亜鉛系粒子と同じ組成の亜鉛系シート(亜鉛箔や亜鉛合金箔など)や、前記マグネシウム系粒子と同じ組成のマグネシウム系シート(マグネシウム箔やマグネシウム合金箔など)といった金属シートを用いることもできる。このような負極の場合、その厚みは、10〜500μmであることが好ましい。
また、金属材料を含有する負極には、必要に応じて集電体を用いてもよい。金属材料を含有する負極の集電体としては、ニッケル、銅、ステンレス鋼などの金属の網、箔、エキスパンドメタル、パンチングメタル;カーボンのシート、網;などが挙げられる。負極の集電体の厚みは、10μm以上300μm以下であることが好ましい。
負極の集電体には、前記正極の場合と同様に、シート状外装体の内面となることが予定される面にカーボンベーストを塗布して用いたり、シート状外装体を構成する金属層を用いたりすることができる。カーボンベースト層の厚みは、50〜200μmであることが好ましい。
(セパレータ)
セパレータ3としては、樹脂製の多孔質膜(微多孔膜、不織布など)や、セロファンフィルムに代表される半透膜などの、各種電池で一般的に採用されているセパレータが挙げられる。なお、シート状電池の短絡防止および負荷特性を向上させる観点からは、半透膜をセバレータに使用することが好ましい。
樹脂製の多孔質膜からなるセパレータを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィンなどが挙げられる。
樹脂製のセバレータの場合、空孔率は30〜80%であることが好ましく、また、厚みは10〜100μmであることが好ましい。
また、セロファンフィルムなどの半透膜をセパレータに使用する場合、半透膜のみでセパレータを構成してもよい。しかしながら、半透膜は強度が小さいため、電池組み立て時の破損などの問題が発生しやすい。よって、特定の重合体で構成されるグラフトフィルムと、半透膜とを積層した積層体でセパレータを構成することも推奨される。
グラフトフィルムを構成するグラフト重合体は、例えば、幹ポリマーであるポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)に、(メタ)アクリル酸またはその誘導体が、グラフト重合した形態を有するものである。ただし、グラフト重合体は前記の形態を有していればよく、ポリオレフィンに、(メタ)アクリル酸やその誘導体をグラフト重合させる方法により製造されたものでなくともよい。
前記グラフト重合体を構成する(メタ)アクリル酸またはその誘導体とは、下記一般式(1)によって表されるものである。なお、下記一般式(1)のうち、R1はHまたはCH3であり、R2はHまたはNH4、Na、K、Rb、Csなどの親水性置換基を意味している。
Figure 0006905443
前記のグラフトフィルムやセロファンフィルムは、これらのフィルムを構成する重合体自身が、電解液を吸収してイオンを透過する機能を有するものである。
前記グラフトフィルムを構成するグラフト重合体は、下記式(2)で定義されるグラフト率が、160%以上であることが好ましい。グラフト重合体のグラフト率とグラフトフィルムの電気抵抗には相関関係があるため、グラフト率が上記のような値のグラフト重合体を用いることで、グラフトフィルムの電気抵抗が、20〜120mΩ・in2の好適値となるように制御することができる。なお、グラフトフィルムの電気抵抗は交流式電圧降下法(1kHz)により得られる値である。雰囲気温度を20〜25度とし、25プラスマイナス1度の40%KOH(比重:1.400プラスマイナス0.005)水溶液中にフィルムを浸潰し、5〜15時間後に取り出して、電気抵抗を測定すればよい。
グラフト率(%)=100×(A−B)/B (2)
式(2)中、A:グラフト重合体の質量(g)、B:グラフト重合体中の幹ポリマーの質量(g)である。
なお、前記式(2)の「B(グラフト重合体中の幹ポリマーの質量)」は、例えば、グラフト重合体を、幹ポリマーであるポリオレフィンに、(メタ)アクリル酸やその誘導体をグラフト重合させる方法で形成する場合には、このグラフト重合に用いる幹ポリマーの質量を予め測定しておけばよい。また、前記グラフト重合体において、グラフト率が100%を超える場合があるのは、グラフト重合に用いるモノマー[(メタ)アクリル酸やその誘導体]同士が重合して、グラフト分子が長鎖となる場合があるからである。前記式(2)で定義されるグラフト重合体のグラフト率の上限値は、400%であることが好ましい。なお、前記の「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸と メタクリル酸とを纏めて表現したものである。
セロファンフィルムのみで構成されるセパレータの場合、その厚みは、例えば、15μm以上であることが好ましく、また、40μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。
さらに、グラフトフィルムとセロファンフィルムとの積層体で構成されるセパレータの場合、グラフトフィルムとセロファンフィルムとの合計厚みで、例えば、30μm以上であることが好ましく、40μm以上であることがより好ましく、また、70μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましい。
さらに、グラフトフィルムとセロファンフィルムの積層体で構成されるセバレータの場合、グラフトフィルムの厚みは、例えば、15μm以上であることが好ましく、25μm以上であることがより好ましく、また、30μm以下であることが好ましい。
セパレータを構成するためのグラフトフィルムとセロファンフィルムとの積層体としては、例えば、株式会社ユアサメンブレンシステムから「YG9132」や「YG9122」、「YG2152」の名称で市販されているものが挙げられる。
また、セロファンフィルムや、セロファンフィルムおよびグラフトフィルムと、ビニロン−レーヨン混抄紙のような吸液層(電解液保持層)とを組み合わせてセパレータを構成しでもよい。このような吸液層の厚みは20〜500μmであることが好ましい。
(外装体)
シート状の外装体5、6を構成する樹脂フィルムとしては、ナイロンフィルム(ナイロン66フィルムなど)、ポリエステルフィルム[ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなど]などが挙げられる。樹脂フィルムの厚みは、20〜100μmであることが好ましい。
シート状外装体5、6の封止は、正極1側のシート状外装体6の端部と負極2側の外装体5の端部との熱融着によって行うことが一般的であるが、この熱融着をより容易にする目的で、樹脂フィルムに熱融着樹脂層を積層してシート状外装体5、6として用いてもよい。熱融着樹脂層を構成する熱融着樹脂としては、変性ポリオレフィンフィルム(変性ポリオレフィンアイオノマーフィルムなど)、ポリプロピレンおよびその共重合体などが挙げられる。熱融着樹脂層の厚みが20〜100μmであることが好ましい。
また、樹脂フィルムには金属層を積層してもよい。金属層は、アルミニウムフィルム(アルミニウム箔。アルミニウム合金箔を含む。)、ステンレス鋼フィルム(ステンレス鋼箔。)などにより構成することができる。金属層の厚みが10〜150μmであることが好ましい。
また、シート状外装体5、6を構成する樹脂フィルムは、前記の熱融着樹脂層と前記の金属層とが積層された構成のフィルムであってもよい。
シート状外装体の形状は、図2に示すデバイス100の形状に合わせて、平面視で四角形としている。しかし、本実施形態で説明するデバイス100に用いられるシート状外装体5、6の平面視形状は四角形には限られず、デバイス100の形状に合わせて、三角形、五角形、六角形、七角形、八角形などの多角形や、円形や楕円形であってもよい。また、絆創膏型のデバイス100の場合を含め、全体としては略四角形状として、各コーナ部を丸く形成したもの、長手方向の両端部をそれぞれ半円形としたものなど、デバイス100を皮膚に貼着する際などの取り扱い時に被装着者が保持しやすい形状とすることができる。
図1、図2に示したように、本実施形態にかかるデバイス100に用いられる空気電池10では、正極1側の外装体6の正極1と重なる部分に、空気穴7が形成されている。
空気穴7を介して、デバイス100外部の空気が取り込まれて、空気中の酸素が正極活物質として機能し、電力が供給される。なお、空気穴7は、一例として直径が50μmから1mm程度の円形の開口で、正極1側の外装体6にレーザー照射法や機械的なパンチング法などによって形成される。
図2では、空気穴7として、縦方向と横方向とにそれぞれ3個ずつ、合わせて9個の空気孔7がマトリクス状に形成されている例を示したが、空気孔7の個数や配置形状には制約はなく、正極1で必要とされる量の酸素が供給できる範囲で、平面視したときになるべく均等に分散させた形で配置することが好ましい。また、空気穴7の形状も、例示した円形のものに限らず、矩形や、楕円形状などでもよい。
また本実施形態で説明する空気電池10では、正極1側の外装体6の一つの辺近傍の内側面、すなわち、負極2側の外装体5と対向する側の表面に、2つの電極端子9が形成されている。
電極端子9は、蒸着や印刷法などによって形成された金属薄膜やカーボンペーストなどの導電体で構成され、図2では上側に位置する一方が正極1とリード線8などによって接続されている。また、図示は省略するが、他方の電極端子9は、負極2と電気的に接続されている。図1、図2に示すように、負極2側の外装体5の端部を電極端子9の略中間部分に位置するようにシールすることで、電極端子9の一部を空気電池10の下側面に露出させることができ、電極端子9を空気電池10の下方に配置される駆動回路部20の電源端子21と接触させることができる。さらに、正極1側の外装体6において、電極端子9が形成されている部分に対向する負極2側の外装体5に開口部を設けることによって、電極端子9を空気電池10の下方側に露出させる構成とすることもできる。このようにして、駆動回路20の上に空気電池10が積層された状態で、空気電池10から駆動回路部20に駆動電力が供給できる。
なお、空気電池10の電極端子は、図示したように正極1側の外装体6の内側面に形成する方法の他に、負極2側の外装体5を貫通するようにビア構造で形成することによっても、空気電池10の下側に配置される駆動回路部の電源端子と接触させることができる。また、空気電池10の側方から、外方へ延出する電極端子を形成して、この電極端子に駆動回路部の電源端子を接続する構成とすることもできる。この場合には、空気電池10の側方からの電極端子の延出量をなるべく小さくして、デバイス100の面積の増大を最小限にする必要がある。
また、上記実施形態では、空気電池10の2つの電極端子9を、空気電池10の一辺の近傍に並べて配置した例を示したが、空気電池10の2つの電極端子9の形成位置を離すことも可能であり、例えば、図1、図2における左側の辺の近傍に、2つめの電極端子9を配置する構成とすることもできる。
(撥水膜)
シート状の空気電池10の正極1と正極1側の外装体6との間には、撥水膜4が配置されている。撥水膜には、撥水性がある一方で空気を透過できる膜が使用される。このような撥水膜の具体例としては、PTFEなどのフッ素樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン;などの樹脂で構成された膜などが挙げられる。撥水膜の厚みは、50〜250μmとすることができる。
なお、正極1側の外装体6と接水膜4との聞に、外装体6内に取り込んだ空気を正極に供給するための空気拡散膜を配置してもよい。空気拡散膜には、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ナイロンなどの樹脂で構成された不織布を用いることができる。空気拡散膜の厚みは、100〜250μmとすることができる。
(電解液)
2つのシート状外装体5、6内に収容される電解液の電解質塩としては、特に限定はされないが、塩酸、硫酸および硝酸などより選択される強酸と、アンモニアや、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなど金属元素の水酸化物に代表される弱塩基との塩が好ましく用いられ、そのうち、アンモニウム塩または特定の金属元素の塩がより好ましく用いられる。
より具体的には、Cl-、SO4 2-、HSO4 -、および、NO3 -より選択される少なくとも1種のイオンと、Alイオン、Mgイオン、Feイオンおよびアンモニウムイオンより選択される少なくとも1種のイオンとの塩であり、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム[(NH4)HSO4]、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムなどのアンモニウム塩;硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムなどのアルミニウム塩;硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化水酸化マグネシウム[MgCl(OH)]、硝酸マグネシウムなどのマグネシウム塩;硫酸鉄(II)、硫酸アンモニウム鉄(II)[(NH42Fe(SO42]、硫酸鉄(III)、塩化鉄(II)、硝酸鉄(II)などの鉄塩;が例示される。
このように、強酸と弱塩基との塩を含有する水溶液は、負極活物質である金属材料を腐食させる作用が比較的小さく、また、比較的高い導電率を有している。よって、良好な放電特性を実現することができる。
電解液のpHとしては、3以上12未満とすることで、安全性を向上させた、環境負荷が小さく、かつ、放電特性が良好な空気電池を実現することができる。なお、電解液のpHは、3以上、好ましくは5以上であって、12未満、好ましくは10以下、より好ましくは7未満である。前記の電解質塩を用いることにより、電解液のpHを前記範囲に調整しやすくなるだけでなく、皮膚への刺激性が比較的低い電解液を構成することができるので、例えば、電池の外装体が傷ついて電解液が漏出しデバイスの被装着者の皮膚などに付着した場合でも、トラブルを生じる可能性が低いため、身体に直接装着されるデバイスの電源として好適な電池とすることができる。
電解液として使用する水溶液は、電解質として、Cl-、SO4 2-、HSO4 -、および、NO3 -より選択される少なくとも1種のイオンと、Alイオン、Mgイオン、Feイオンおよびアンモニウムイオンより選択される少なくとも1種のイオンとの塩のうちの1種のみを含有していればよいが、2種以上を含有していてもよい。
ただし、Cl-イオンとFe3+イオンとの塩[塩化鉄(III)]については、その他のイオンの組み合わせによる塩に比べて負極活物質である金属材料を腐食させる作用が強いため、塩化鉄(III)以外の塩を用いることが好ましく、負極活物質である金属材料を腐食させる作用がより低いことから、アンモニウム塩を用いることがより好ましい。
なお、前記した強酸と弱塩基との塩であっても、過塩素酸塩は、加熱や衝撃により燃焼や爆発の危険を生じることから、環境負荷や廃棄時の安全性の観点から、電解液として使用する前記水溶液に含有させないか、あるいは含有しても過塩素酸イオンの量がわずかであること(具体的には100ppm未満、より好ましくは10ppm未満)が好ましい。
また、前記強酸と弱塩基との塩のうち、塩化亜鉛や硫酸銅などに代表される重金属塩(鉄の塩を除く)は、有害であるものが多いため、環境負荷や廃棄時の安全性の観点からは、電解液として使用する前記水溶液に含有させないか、あるいは含有しても鉄イオンを除く重金属イオンの量がわずか(具体的には100ppm未満、より好ましくは10ppm未満)であることが好ましい。
電解液の導電率は、80mS/cm以上であることが好ましい。よって、電解液として使用する前記水溶液における前記電解質の濃度(1種のみを用いる場合は、その濃度であり、2種以上を用いる場合は、それらの合計濃度)は、このような導電率を確保できるような濃度とすればよく、通常は、5〜50質量%である。なお、電解液の導電率の上限値は、通常700mS/cm程度である。
電解液には、インジウム化合物が溶解していることが好ましい。電解液中にインジウム化合物が溶解している場合には、電池内での水素ガスの発生をより良好に抑制することができる。
電解液に溶解させるインジウム化合物としては、水酸化インジウム、酸化インジウム、硫酸インジウム、硫化インジウム、硝酸インジウム、臭化インジウム、塩化インジウムなどが挙げられる。
インジウム化合物の電解液中の濃度は、質量基準で0.005%以上であることが好ましく、0.01%以上であることがより好ましく、0.05%以上であることが特に好ましい。また、1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、0.1%以下であることが特に好ましい。
また、電解液には前記の各成分の他に、必要に応じて公知の各種添加剤を添加してもよい。例えば、負極に用いる金属材料の腐食(酸化)を防止するために、酸化亜鉛を添加するなどしてもよい。なお、酸化亜鉛は、負極に添加することもできる。
(空気電池の諸元)
上述した各部材で構成されるシート状の空気電池10の全体形状は、一例として、長辺が30〜50mm、短辺が20〜35mmとすることができる。なお、空気電池10の厚みは、より薄く構成することが好ましく、例えば1mm以下とすることが好ましい。なお、空気電池10の取り扱い上必要となる剛性を考慮すると、厚みの最小値は一例として0.2mmとすることができる。
次に、4種類の電解液を用いて、実施例としての4つのシート状空気電池を実際に作成して放電容量を確認した。
それぞれのシート状空気電池において、正極、負極、電解液、セパレータ、撥水膜、外装体は以下の材料を用いた。
<正極>
DBP吸油量495cm3/100g、比表面積1270m2/gのカーボン(ケッチェンブラックEC600JD(商品名:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製)):30質量部と、アクリル系分散剤:15質量部と、SBR:60質量部と、水:500質量部とを混合して触媒層形成用組成物を作製した。
集電体として多孔性のカーボンシート〔厚み:0.25mm、空孔率:75%、透気度(ガーレー):70秒/100ml〕を用い、前記触媒層形成用組成物を、乾燥後の塗布量が10mg/cm2となるよう前記基材の表面にストライプ塗布し、乾燥することにより、触媒層が形成された部分と形成されていない部分とを有する集電体を得た。この集電体を、触媒層の大きさが15mm×15mmで、その一端に、触媒層が形成されていない5mm×15mmの大きさのリードとなる部分を有する形状に打ち抜いて、全体の厚みが0.27mmの正極(空気極)を作製した。
<負極>
添加元素としてIn:0.05%、Bi:0.04%およびAl:0.001%含有する亜鉛合金箔(厚み:0.05mm)を、活物質として機能する15mm×15mmの大きさの部分と、その一端にリードとなる5mm×15mmの部分とを有する形状に打ち抜いて負極を作製した。
<電解液>
電池1 20質量%の硫酸アンモニウム水溶液(pH=5.3)
電池2 20質量%の塩化アンモニウム水溶液(pH=4.3)
電池3 20質量%の塩化ナトリウム水溶液(pH=7)
電池4 30質量%の水酸化カリウム水溶液(pH=14)。
<セパレータ>
ポリエチレン主鎖にアクリル酸をグラフト共重合させた構造を有するグラフト共重合体で構成された2枚のグラフトフィルム(1枚当たりの厚み:15μm)を、セロハンフィルム(厚み:20μm)の両側に配置したものを用いた。
<撥水膜>
厚みが200μmのPTFE製シートを用いた。
<外装体>
アルミニウム箔の外面にPETフィルムを有し、内面に熱融着樹脂層としてポリプロピレンフィルムを有する2.5cm×2.5cmの大きさのアルミラミネートフィルム2枚を用いた。
<電池の組み立て>
上記した2枚の外装体であるラミネートフィルムにおいて、正極側に配置される一方のラミネートフィルムには、正極の触媒層の配置位置に対応して、直径0.5mmの空気孔9個を、縦4.5mm×横4.5mmの等間隔(空気孔同士の中心間距離は5mm)でマトリクス状に形成し、その内面側に、ホットメルト樹脂を用いて撥水膜を熱溶着させた。また、負極側に配置されるもう一方のラミネートフィルムには、正極および負極のリードが配置される部分に、リードと外装体との熱溶着部の封止性を高めるため、外装体の辺と平行に、変性ポリオレフィンアイオノマーフィルムを取り付けた。
撥水膜を有するラミネートフィルムを下にして、その撥水膜の上に、前記正極、前記セパレータおよび前記負極を順に積層し、さらに、もう1枚のラミネートフィルムを、前記正極および前記負極のリードの上に前記変性ポリオレフィンアイオノマーフィルムが位置するようにして重ねた。次に、2枚のラミネートフィルムの周囲3辺を互いに熱溶着して袋状にし、その開口部から電解液を注液した後、開口部を熱溶着して封止してシート状空気電池とした。作製した電池の厚みは、ほぼ1mmであった。
このようにして作製した空気電池を大気中で10分間放置した後、電池の設計容量に対して100時間率相当の電流で0.5Vまで放電した時の放電容量を測定した。その結果を表1に示す。
Figure 0006905443
市販のボタン型空気電池の電解液として用いられている高濃度のアルカリ電解液を用いた空気電池(電池4)に対し、より安全性の高い電解液を用いた空気電池(電池1〜3)においても、十分な放電容量を得ることができた。特に、強酸と弱塩基との塩を電解質塩とした電池1および電池2では、市販のボタン型空気電池の電解液と同様の構成とした電池4と同程度の優れた特性が得られた。
以上の結果より、本実施形態で説明した空気電池は、薄型で取り扱いの容易性や安全性が高く、しかも、比較的大容量の空気電池となり、身体に直接装着されるデバイスの電源として好適であることがわかる。
[駆動回路部]
駆動回路部20は、例えばフィルム基板上に銅などの金属薄膜で形成された配線と、メモリ、プロセッサ、送受信回路などとして機能する薄膜チップ化された、1つ、または複数の電子回路、外部との通信のために用いられる金属薄膜で形成されたアンテナ素子など、既知の薄膜電子回路部品として実現できる。なお、図面が煩雑となることを回避するため、駆動回路部20における各構成要素部材の図示は省略する。
駆動回路部20の機能は、当然ながらデバイス100の目的に沿うように設計されていて、例えば、被装着者の体温を測定する場合には、後述する機能素子30であるセンサプレートの温度を、例えばセンサプレートを流れる電流値の変化などで検出するとともに、測定された体温の数値を、連携するスマートフォンなどの外部の機器からの制御信号によって、または、駆動回路部20自体が備えるロジック回路による制御にしたがって、アンテナ素子から外部機器へと送信する。
また、後述するように、機能素子が薬液を被装着者に注射するユニットである場合には、駆動回路部20自体が備えるタイマー機能によって、または、外部機器からの操作信号にしたがって、所定の時間に、被験者の皮膚から所定量の薬液が注射されるように制御する。
なお、駆動回路部20における、空気電池10の接続電極9の配置位置に積層される部分には、空気電池10からの電力を駆動回路部20に伝達するための電源端子21が形成されていて、電源端子21と各種の薄膜電子回路部品との間を接続する配線によって空気電池10からの電力が電子回路部品に供給される。
[機能素子]
本実施形態にかかるデバイス100における機能素子30は、薄膜、または、薄板状のセンサプレートであり、被装着者の皮膚に直接触れることで、体温や脈拍、呼吸数などの生体情報を検知可能な部材である。
機能素子30は、デバイス100の目的とする機能を果たす限りにおいて、例えば金属箔、樹脂膜の表面に金属やカーボン等の導電性部材を等形成したもの、または、駆動回路部20を構成する樹脂製基板の空気電池10が積層される側の面とは異なる面に形成された薄膜など、各種の形態で実現できる。機能素子30と駆動回路部20との間は、駆動回路部20を構成する電気回路部品の少なくとも一部の突出部分に直接接触して、または、駆動回路部20の機能素子30が配置される面に形成された配線等の導電手段を介して接続される。
[接着層]
本実施形態にかかるデバイスでは、図1、図2に示すように、駆動回路部20の内の機能性素子30が配置されていない部分に接着層40が設けられている。
接着層40は、直接皮膚に接触するものであるため、一定以上の時間貼着していてもかぶれなどが生じないことが確認された医療用として認証された接着剤で形成されている。
なお、接着層40は、大きさや厚さ、重量などのデバイス100の諸元と、デバイス100が装着されることが想定される人体の部分の可動性との両面から、その接着力が検討されて、材料の選択と、形成場所とその面積が決定される。
以上のように、第1の実施形態にとして示すデバイス100は、被装着者の皮膚に直接接触する機能素子30と、駆動回路部20と、シート状の空気電池10とが積層して構成されているため、デバイス100としての面積の小型が実現でき、特に、パッチタイプ、絆創膏タイプの医療用デバイスとして、被装着者の各種の身体データを取得することができる。
(第2の実施形態)
図3に、本願で開示するデバイスの第2の実施形態の断面構成を示す。
第2の実施形態のデバイス200は、皮膚に直接接触する機能素子130の厚さが、図1に断面構成を示した第1の実施形態のデバイス100の機能素子30と比較して厚い点が異なっている。なお、デバイス200では、シート状の空気電池110として、図1に断面を示した第1の実施形態にかかるデバイス100の空気電池10と同じ構成のものを用いることができる。また、配置位置が異なるものの、駆動回路部120も、第1の実施形態として示したデバイス100の駆動回路部120と同じ構成のものを用いることができる。このため、本実施形態にかかるデバイス200の説明において、空気電池110と駆動回路部120との詳細な説明と、デバイス200の平面図を用いての説明は省略する。
例えば、被装着者に薬液を注射する医療デバイスとして、所定の時間間隔で薬液を注射するもの、または、被装着者の身体状態を把握していて、必要となったときにすぐに薬液を注射するものなどが想定できる。このような医療用デバイスを構成する場合には、機能素子130として、少なくとも、薬液を収容する容器部分と薬液を注射するための圧力印加部分とが必要となるため、第1の実施形態として示したデバイスの場合のような、センサプレートとしての機能素子30と比較してその厚みが厚くなる。
このような場合には、機能素子130と駆動回路120とを積層する構成とすると、デバイス200の厚さが厚くなってしまって、皮膚への装着が困難になったり、被装着者に強い違和感を与えたりする原因となることが懸念される。このため、第2の実施形態にかかるデバイス200では、機能素子130と駆動回路部120とを積層せずに横に並べて配置する構成として、デバイス200の厚さが厚くなることを防止している。
なお、図3に示すように、デバイス200では、機能素子130と駆動回路部120とを並べた構成全体を覆うように、シート状の空気電池110を積層配置することで、空気電池110の面積を大きく維持して電池容量を確保している。また、空気電池110の正極側の外装体を、駆動回路部120や機能素子130の配置されている側とは反対の側に配置することで、正極活物質である空気を容易に取得できる構成とすることができる。
ただし、空気電池110で機能素子130と駆動回路部120との両方を覆う構成とすることは、本実施形態にかかるデバイス200において必須の構成ではなく、機能素子130の厚さが厚い場合には、機能素子130と、駆動回路部120と空気電池110との積層体とを横に並べた構成とすることができる。この場合においても、空気電池110の正極側の外装体を、被装着者がデバイスを装着したときにデバイスの表面側に位置するように配置することは言うまでもない。
なお、機能素子130の配置されていない領域の空気電池110と駆動回路部120との下方側の表面には、接着層140を形成して、デバイス200を容易に被装着者の皮膚に貼着できる構成としている。接着層140として、医療用に認可された接着剤を用いることは、第1の実施形態のデバイス100と同様である。
図3に示すように、機能素子130と駆動回路部120とを横に並べた構成としているために、機能素子130において駆動回路部120が配置された側とは反対の側(図3における左側)では接着層140を形成するスペースが小さくなっているが、図3に示すように空気電池110の下面に接着剤層140を形成して、デバイス200の一方(図中左側)の端部に接着層140が形成されていないという事態を回避している。
このように、第2の実施形態に示すデバイス200では、機能素子130として比較的厚さが厚い部材を用いた場合でも、シート状の空気電池110と駆動回路部120とを積層することで、空気電池110の面積をデバイス200全体の面積において大きな比率で確保することができ、比較的容量の大きな空気電池110を備えたデバイス200を実現することができる。
なお、比較的厚い機能素子としては、上述の薬液を注射するユニット以外にも、例えば、2次元、3次元の加速度センサを備える構成などが考えられ、被装着者の動作を検知することができるものが考えられる。さらに、上述したように、第1の実施形態における薄板状のセンサプレートが有していた機能を、厚さのある機能素子に併せ持つことも考えられる。
以上のように、本実施形態で示すデバイスは、身体に直接装着されるデバイスであって、皮膚に接触する機能素子と、駆動回路部と、電源としての空気電池とを備え、空気電池が駆動回路部と積層されるとともに、空気電池の正極側の外装体が、機能素子が配置されている側とは異なる側であるデバイスの表面側に位置している。
このため、被装着者がデバイスを装着している状態で、空気電池の正極側の外装体が皮膚などで覆われることがなく、正極活物質を正極に安定して供給することができる。
さらに、デバイスの面積に対する空気電池の面積比を大きくすることができ、小型、軽量でかつ長時間の動作が可能なデバイスを実現することができる。
なお上記実施形態の説明において、空気電池の外装体としてアルミ箔などの金属薄膜を積層した樹脂フィルムを用いる例を示した。このようにすることで、外装体の内部に封入される電解液の漏れをより確実に防ぐことができるが、駆動回路部に積層して配置された外装体を樹脂フィルムと金属薄膜の積層体として形成した場合には、駆動回路部に形成されるアンテナ素子をシールドしてしまい、駆動回路部と外部の機器との通信を妨げる恐れがある。
このため、駆動回路部のアンテナ素子の上には、外装体の金属薄膜などの金属成分が配置されないよう、外装体およびリードの形状や配置を調整し、外部との通信を妨げないようにすることが好ましい。
たとえば、駆動回路部のアンテナ素子部分を他の回路部分とは離して配置して、空気電池の外装体の少なくとも金属箔が形成されている部分以外に設けたり、外装体に切り欠きを設けることにより、アンテナ素子部分を露出させたりすることなどによって電波がシールドされないようにすることができる。さらに、駆動回路部と外部機器との間の通信手段が赤外線通信である場合には、空気電池の外装体の一部を透明にして、赤外線が透過できる構成とすることが好ましい。
以上の実施形態の説明においては、デバイスの機能素子が配置されている側の表面に接着層を形成する例について説明したが、本願で開示するデバイスにおいて、接着層を設けることは必須ではない。例えば、機能素子と駆動回路部とシート状の空気電池とを積層した構成を腕時計に用いられるようなバンド部材によって、機能素子を皮膚に接触させた状態で装着させることができる。また、サポータなどの伸縮性のある環状の布部材、包帯や、テーピング用テープなどによっても、被装着者の皮膚に機能素子が接触した状態でデバイスを装着することができる。ただし、この場合は、デバイスの上面に配置されている空気電池の正極側の外装体に形成された空気孔を塞がないように、サポータには開口部を設ける、包帯やテープの位置を考慮するといった対応が必要である。
また、以上の説明では省略したが、デバイスを動作させる前の状態で空気電池の空気孔を覆う保護シート、接着層の表面を覆う剥離シートが必要となる。これら保護シートや剥離シートとしては、既知の部材を好適に用いることができる。
本開示のデバイスは、装着者の皮膚に直接接触する機能素子を動作させる駆動回路部と、動作電源であるシート状の空気電池を積層する構成であるため、簡単、かつ、コンパクトな構成でありながら比較的長時間の動作が可能なデバイスとして、特に医療分野を中心に有用である。
1 正極
2 負極
6 外装体(正極側)
10 空気電池
20 駆動回路部
30 センサプレート(機能素子)
40 接着層
100 デバイス

Claims (5)

  1. 身体に直接装着されるデバイスであって、
    皮膚に接触する機能素子と、
    前記機能素子を動作させる駆動回路部と、
    電源としてのシート状の空気電池とを備え、
    前記駆動回路部と前記空気電池とが、前記空気電池の正極側の外装体が前記デバイスの前記機能素子が配置されている側とは反対側の表面に位置するようにして積層されていることを特徴とする、デバイス。
  2. 前記機能素子と前記駆動回路部とが積層されている、請求項1に記載のデバイス。
  3. 前記機能素子が、皮膚に接触して人体の状態を計測するセンサである、請求項1または2に記載のデバイス。
  4. 前記駆動回路部に、外部から前記機能素子の動作を制御する通信手段を備えた、請求項1〜3のいずれかに記載のデバイス。
  5. 前記デバイスの皮膚と接触する側の表面の、前記機能素子が配置されている部分以外の部分に粘着層が形成されている、請求項1〜4のいずれかに記載のデバイス。
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