JP6904739B2 - 樹脂被覆ハニカム構造体、樹脂被覆ハニカム構造体の製造方法、及びハニカム構造型触媒の製造方法 - Google Patents

樹脂被覆ハニカム構造体、樹脂被覆ハニカム構造体の製造方法、及びハニカム構造型触媒の製造方法 Download PDF

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本発明は樹脂被覆ハニカム構造体、ハニカム構造型触媒それらの製造方法に関し、さらに詳しくは、表面に有色樹脂被覆を備えることにより、外壁部の外側表面への被覆の完了およびハニカム構造体外壁部への適切な深さへの浸入を確認することが容易であり、また、ウォッシュコート法の適用時には触媒スラリーが外壁部に浸出することを防止でき、ガソリンパティキュレートフィルター(GPF)の担体として外壁部の通気性を確保できる樹脂被覆ハニカム構造体、これを用いたハニカム構造型触媒その製造方法に関する。
自動車の排ガスには様々な有害成分が含まれ、その浄化にあたっては従来から様々な手法が提案され実施されてきた。このような自動車の排ガスに含まれる有害成分としては、NOxとして表される窒素酸化物、HCとして表される燃料由来の未燃焼の炭化水素、COとして表される一酸化炭素が知られている。
排ガスの発生原因である自動車には、ガソリンを燃料とした自動車の他、軽油を燃料として使用したディーゼルエンジンを搭載したディーゼル自動車がある。ディーゼル自動車から排出される排ガスについては、前記のNOx、HC、COの他に、微粒子成分としてのPM(Particulate matter)も知られており、そのようなPMの浄化に使用する装置としてDPF(Diesel Particulate Filter)が広く使われてきた。
DPFはウォールフローハニカムフィルターとも呼ばれる排ガス浄化用フィルター装置の総称であるが、その構造は入口端部から出口端部に向けて隔壁に仕切られた複数のセルからなり、このセルは入口端部と出口端部で交互に目封じされたハニカム構造である。セルを構成する隔壁は通気性を有し、この通気性を利用して排ガス中からPMを濾し取ることによってPMを除去している。DPFによって排ガス中から濾し取られたPMは、そのままであるとDPFに堆積し続けて目詰まりを起こしてしまうことから、排ガスの熱や、エンジンの燃焼室や排ガス中への燃料の噴射によってPMを燃焼させてPMの堆積したDPFを再生している。このような再生を促進する目的で、DPFのセルの隔壁に触媒成分を被覆することがあり、触媒成分を被覆したDPFをCSF(Catalyzed Soot Filter)ということがある。本出願人も、そうしたシステムを提案している(例えば、特許文献4参照)。
従来、排ガス中のPMの浄化が求められてきた自動車の多くはディーゼル自動車であったが、それはガソリンに比べて燃焼し難い軽油を燃料として使用することから発生するものであり、ガソリンの様に燃焼し易く、発生するPMの量も少ない自動車については、環境問題として今まで特に注目されることはなかった。
しかし、環境問題への関心が高まる中、排ガス中の有害成分への規制も厳しさを増し、ガソリン自動車から排出されるPMについてもその排出量を規制する動きが有る。特に近年は燃費についても市場の関心が高く、ガソリンエンジンにおいては緻密な制御のもと燃焼室内にガソリンを直接噴霧供給する直噴型エンジンが主流になりつつある。しかし、このような直噴型ガソリンにおいては噴霧されたガソリンの一部が微粒子の状態を保ったまま燃焼室内が燃焼状態となることから、粒子状の燃料に由来した不完全燃焼によって、従来のインテークマニホールドから燃料と空気の混合ガスを供給するガソリン自動車に比べて多くのPMが発生することあり、排出規制の必要性もより現実味を増す様になってきた。
このようなガソリン自動車から排出されるPMについても、ディーゼル自動車に使用されるDPFと同様にウォールフローハニカムフィルターを使用することが考えられるが、ガソリン自動車の特性から安易にディーゼル自動車に使用されるDPFをそのまま転用することは以下のような理由により難しかった。
ガソリン自動車とディーゼル自動車の大きな違いの一つとして排ガスの流速が挙げられる。ディーゼルエンジンは高圧力で圧縮された空気に対し燃料を噴射し、その圧力の作用により燃料を着火しそして爆発させることで運動エネルギーを取り出している。高圧縮であることから効率の良いエンジンではあるが、高圧縮な状態を作る必要があることからエンジンの回転数がガソリン自動車に比べて低く、そのため排気ガスの流速も遅い。この様に流速の遅い排ガス用に設計されたDPFでは、ハニカム構造の側面である外壁部にまで通気性を求める必要が無く、従来DPFではハニカム構造体の強度を向上するために外壁部は緻密な高強度セラミックス材料で構成されていた。
しかし、ガソリンエンジンから排出される排ガスでは、ディーゼルエンジンの場合とは状況が異なる。ガソリンエンジンは点火プラグによって混合気に着火するため、一般的なディーゼルエンジンに比べて圧縮比が小さい。そのため、エンジンを高回転で稼働させ、高出力を得ることができる。更に、近年の燃費向上に関する市場からの要求により、車両の軽量化を目的に高出力エンジンも小型化する傾向がある。小型エンジンで高出力を得るためにはエンジンを高回転で稼働させたり、過給器により多量の空気をシリンダー内に供給する必要があるが、高回転や過給状態で稼働させたエンジンから排出される排ガスの流速は更に速くなる。このような流速の早い排ガスに従来のようなDPFを使用したのでは背圧が上がりエンジンの出力向上にとっては障害になってしまう。
従って、ガソリンエンジンから排出される排ガス中のPMを除去するために使用されるフィルターでは、DPFのように強度を求めて通気性の無い緻密な外壁部を設けずに、外壁部にも通気性を持たせたハニカムフィルタが検討されている。このようなガソリンエンジン用のPMフィルターをGPF(Gasoline Particulate Filter)ということがある(例えば、特許文献3参照)。
GPFであれば、いたずらに背圧の上昇を招かずに排ガス中のPMを除去することが可能である一方、触媒としての製造上、新たな課題が生じていた。
また、DPFとは異なりGPFではその使用される温度が異なる。一般に、ディーゼルエンジン排ガスとガソリンエンジン排ガスとでは温度に大きな隔たりがある。比較的低回転で使用されるディーゼルエンジンに比べて、ガソリンエンジンは高回転で使用されることから排ガスが高温になる。そのため、ガソリンエンジン排ガスに対して従来のDPFのように強度を求めて通気性の無い緻密な外壁部を設けたハニカムフィルタを使用した場合、セルの隔壁と外壁部の材質における熱膨張率の差でクラックの発生が懸念される。このような熱履歴によるクラックの発生は、サーマルショックということがある。
サーマルショックは、緻密な外壁部を設けていないGPFを触媒化した際にも発生する懸念がある。一般に触媒組成物には様々な無機微粒子が使用されるが、このような無機微粒子が外壁部に浸入した場合、高温の排ガスに触れた無機微粒子が熱膨張するためである。このような触媒化に伴うサーマルショックは、ガソリンエンジンの使用時の他、GPFを触媒化する際の加熱条件下でも発生する恐れが有る。
一般的にガソリンエンジンの排ガスの浄化には白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属を含有した三元触媒(TWC:Three way Catalyst)という、NOx、HC、COを同時に浄化するために貴金属を使用した成分で触媒化したハニカム構造体が使用されている。従来のTWCは、DPFのようにセルの両端面で互いに目封じをしたハニカム構造体ではなく、フロースルーハニカムと言われるセルの両端面が解放されたハニカムのセルの隔壁に触媒成分を被覆して使用されてきた。なお、このようなフロースルーハニカムは背圧の上昇も少なく、ガソリンエンジンのように高流速の排ガスへの使用に適している。
フロースルーハニカムに限らず、DPFをTWCのような触媒組成物で触媒化するにあたっては、一般にウオッシュコート法が適用される(例えば、特許文献2参照)。ウオッシュコート法については、従来から多様な手法が提案されて実施もされているが、その基本原理は「ハニカムセル内部にスラリー化した触媒成分を供給する工程」、「供給されたセル内の触媒スラリーを空気圧で払い出す工程」からなる。「供給されたセル内の触媒ス
ラリーを空気圧で払い出す工程」において、フロースルーハニカムであれば特段の支障なく余剰なスラリーの除去が可能である。また、従来のDPFにおいても緻密な外壁部を有することから、この場合もセル内部に供給されたスラリーの余剰は支障なく除去が可能である。
しかしながら、GPFでは背圧の上昇抑制という課題があることから、その外壁部はセルの隔壁と同様に通気性のある多孔質から構成され、排ガスは外壁部からも通気可能である必要がある。しかし、GPFに使用するハニカムではセルの端部が目封じされていることから、ウオッシュコート法における「供給されたセル内の触媒スラリーを空気圧で払い出す工程」において目封じ部分が障害になり、空気圧で払い出されるスラリーが外壁部から浸出してしまうという問題が有った。
このように外壁部からスラリーが浸出してしまうと、ウオッシュコート法に使用する装置が汚れるのみならず、高価な貴金属を無駄にしてしまうことになる。また、自動車触媒においては成分として高価な貴金属を使用することから、コスト管理の目的からその成分量は厳密に管理されることが要求されており、外壁部からのスラリーの浸出は、そのような要求を満たす必要性からも製造上の不具合とみなされる。また、自動車触媒の性能は、適切な触媒量の管理によって初めて工業的に実施可能となるものであるが、スラリーが外壁部に浸出してしまうことで、大量生産時における各ハニカムが担持する触媒量の管理が困難になり、安定した浄化性能を実現することは極めて困難であった。
このように、GPFの外壁部からスラリーが浸出することを防止する手段が望まれていた。ただし、そのような手段としては、ウォッシュコート法の適用時に外壁部からスラリーが浸出することを防止するとともに、触媒適用後の製品において悪影響を与えないものでなければならないといった、相反するともいえる目的を同時に達成できる手段であることが望ましい。また、安定的に安価に適用でき、大量生産が可能な手段であることも望まれる。
これに対して、ハニカムフィルタの外壁部に触媒成分含有液が滲み出るのを抑制するには、外周部に被覆を形成することが考えられる。例えば、特許文献1では、触媒識別のために無機フィラーによりマーキングすることが提案されている。また、特許文献5では、ハニカム構造体外周壁の外周内にコート層を前記外周壁の厚さの1〜90%の厚さで浸入させると、触媒スラリーが外周壁の該表面に染み出すことを防止でき、外周壁の強度だけでなく構造体全体のアイソスタティック強度も向上しうることが開示されている。
再公表2003−078064号公報 特表2003−506211号公報 特表2015−528868号公報 再公表2013−172128号公報 特開2016−055282号公報
しかし、特許文献1における無機フィラーを含むハニカム構造体では、無機フィラーが外皮の細孔をふさぎ、圧損を上昇させるのでGPF用に適用することはできない。
一方、特許文献5のようにハニカム構造体外周壁の外周内にコート層が前記外周壁の厚さの1〜90%の厚さで浸入していれば、ウォッシュコート法の適用時に外壁部からスラリーが浸出することをある程度防止でき、焼成時にコート層が焼失するので圧損上昇をある程度抑制できるとはいえ、触媒調製時に、樹脂がどの程度ハニカム基材へコートされているのかの確認が容易ではなかった。すなわち、特許文献5の場合、コート層の厚さが小さいと樹脂被覆が不均一になりがちなので、外壁部からスラリーが浸出すること、焼成時にコート層が焼失し圧損上昇を抑制することを確実に実現できているとはいえなかった。
また、無機微粒子を含む組成物で触媒化することにより外壁部で生じるサーマルショック発生の懸念も解決できてはいなかった。
本発明の目的は、上記した従来技術の問題点に鑑み、表面に有色樹脂被覆を備えることにより、外壁部の外側表面への被覆の完了およびハニカム構造体外壁部への適切な深さへの浸入を確認することが容易であり、また、ウォッシュコート法の適用時には触媒スラリーが外壁部に浸出することを防止できる、ガソリンパティキュレートフィルター(GPF)の担体として外壁部の通気性を確保できる樹脂被覆ハニカム構造体、ハニカム構造型触媒それらの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、多孔質無機酸化物から構成され隔壁と外壁部とを有するハニカム構造体が、有色の樹脂被覆を備えることにより、外壁部の外側表面への樹脂被覆の完了およびハニカム構造体外壁部への適切な深さへの樹脂の浸入を確認することが容易となり、また、ウォッシュコート法の適用時には、樹脂被覆が触媒スラリーの外壁部への浸出を防止できるとともに、GPFとして使用する際には外壁部の通気性を確保できるようになることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の態様によれば、多孔質無機酸化物から構成され、流体の入口側となる入口端面から流体の出口側となる出口端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁と、側面である外壁部とを有するハニカム基材と、該外壁部の外側表面に形成された着色樹脂被覆を備えることを特徴とする樹脂被覆ハニカム構造体が提供される。
本発明の第2の態様によれば、第1の態様において、前記着色樹脂被覆は、前記外壁部の外側表面全体を被覆する、樹脂被覆ハニカム構造体が提供される。
また、本発明の第3の態様によれば、第1または第2の態様において、前記樹脂被覆が形成された外壁部の外側表面において、該樹脂被覆が形成される前の孔の少なくとも一部が、該樹脂被覆により封孔または孔の開口サイズが絞孔されていることを特徴とする樹脂被覆ハニカム構造体が提供される。
また、本発明の第態様によれば、第1〜3のいずれか態様において、前記ハニカム基材が、所定のセルの前記入口端面側の開口端部及び残余のセルの前記出口端面側の開口端部を目封止する目封止部を有するフィルター構造であることを特徴とする樹脂被覆ハニカム構造体が提供される。
また、本発明の第5の態様によれば、第1〜4のいずれかの態様において、ガソリンパティキュレートフィルター(GPF)の担体として用いることを特徴とする樹脂被覆ハニカム構造体が提供される。
また、本発明の第態様によれば、第1〜のいずれかの態様樹脂被覆ハニカム構造体であって、多孔質無機酸化物から構成され、流体の入口側となる入口端面から流体の出口側となる出口端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁と、側面である外壁部とを有するハニカム基材に、着色剤を含む樹脂溶液を塗布した後、乾燥・硬化させて樹脂被覆を形成することを特徴とする樹脂被覆ハニカム構造体の製造方法が提供される。
また、本発明の第態様によれば、第態様において、前記樹脂溶液が、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含むことを
特徴とする樹脂被覆ハニカム構造体の製造方法が提供される。
また、本発明の第8の態様によれば、第1〜のいずれかの態様の樹脂被覆ハニカム構造体を用いて、加圧工程を含むウオッシュコート法で、該ハニカム構造体のセル隔壁に触媒組成物スラリーを被覆することを特徴とするハニカム構造型触媒の製造方法が提供される。
本発明の樹脂被覆ハニカム構造体は、表面に有色樹脂被覆を備えることにより、外壁部の外側表面への被覆が完了したかどうかの識別が容易になり、また、樹脂がハニカム基材外壁部への適切な深さへ十分に浸入したかどうかの確認も容易になるため、触媒担体としての樹脂被覆ハニカム構造体を安定的に安価に製造でき、大量生産が可能であるという効果がある。
また、本発明の樹脂被覆ハニカム構造体は、これを用いてハニカム構造型触媒を製造する際、ウォッシュコート法の適用時には触媒スラリーが外壁部に浸出することを防止できるとともに、GPFとして使用する際には外壁部の通気性を確保できる効果がある。また、外壁部へ触媒組成物が浸入しづらくなることから、外壁部におけるサーマルショックの発生も抑制される。
したがって、本願発明によるハニカム構造型触媒は、特にGPF用のハニカム構造体として特に好適に用いることができる。
本発明の樹脂被覆ハニカム構造体を製造する工程で、着色剤を含む樹脂組成 物を塗布後の表面状態を示した写真と、その後の乾燥工程を経た表面状態を示した写 真である。左(A列)が樹脂により十分に被覆された場合、右(B列)が樹脂による 被覆が不十分であった場合の写真である。 比較用の樹脂被覆ハニカム構造体を製造する工程で、樹脂組成物を着色せず に塗布した後の表面状態を示した写真と、その後の乾燥工程を経た表面状態を示した 写真である。左(A列)が樹脂により十分に被覆された場合、右(B列)が樹脂によ る被覆が不十分であった場合の写真である。 樹脂被覆ハニカム構造体を製造する工程で、樹脂組成物の塗布装置とその使 用を模式的に示す説明図である。 図3とは異なる塗布装置とその使用を模式的に示す説明図である。
本発明の樹脂被覆ハニカム構造体は、多孔質無機酸化物から構成され隔壁と外壁部とを有するハニカム構造体と、該外壁部の外側表面の少なくとも一部に形成される有色樹脂被覆とを備えている。本発明は、この樹脂被覆ハニカム構造体の製造方法、および該樹脂被覆ハニカム構造体のセル隔壁に触媒組成物スラリーをウオッシュコート法により被覆する工程を有するハニカム構造型触媒の製造方法、得られるハニカム構造型触媒に関するものである。
以下、本発明を、項目毎に詳細に説明する。
1.ハニカム基材
本発明に使用されるハニカム基材(触媒担体としての「ハニカム構造体」)は、多孔質無機酸化物から構成され、流体の入口側となる入口端面から流体の出口側となる出口端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁と側面である外壁部とを有するものである。隔壁によって、一方の端面から他方の端面へ向かって伸びる多数の通孔であるセルが形成されており、これらが集まってハニカム形状を形成している。
ハニカム構造体は、その構造の特徴から、フロースルー型(フロースルーハニカム)とウォールフロー型(ウォールフローハニカム)に大別されている。フロースルー型は、一方の開放端面から他方の開口端面に向けて開口する多数の通孔端部が封止されておらず、酸化触媒、還元触媒、三元触媒に広く用いられている。これに対し、ウォールフロー型は、通孔の一端が、互い違いに封止されているもので、排気ガス中の煤やSOF(Soluble Organic Fraction:可溶性有機成分)等、固形成分を濾し取ることができるため、DPFとして用いられている。本発明は、そのどちらにも使用できるが、GPF製造時に触媒スラリーが外壁部に浸出することを防止できることから、特にウォールフローハニカムに好適に使用できる。
隔壁および外周壁には多数の細孔が存在していることが好ましい。このような細孔の特性は細孔容積、細孔径としてもあらわされ、ガス吸着法、アルキメデス法、水銀圧入法 など様々な手法によって測定できるが、本発明においては特にことわりの無い限り、水銀圧入法により圧入圧力400MPaで測定し得られた値のことをいう。
本発明におけるハニカム構造体は、セルの隔壁、外周壁の細孔容積は0.3〜1.6 ml/gである場合に有効であり、0.8〜1.6 ml/gであることが好ましく、1.0〜1.6 ml/gであるとより好ましい。また、ハニカム基材(隔壁及び外周壁)の平均細孔径は10〜25μmである場合に有効であり、15〜25μmであることが好ましく、20〜25μmであるとより好ましい。
また、このような細孔の特性は、気孔率(細孔容積率)として表すこともできる。本発明におけるハニカム構造体の気孔率とは、セルの隔壁と外周壁の厚みと長さ、セルの密度から求められる多孔質体の幾何学的な体積における細孔容積の占める割合を意味するものであり、本発明においては50〜80%であり、60〜80%が好ましく、60〜70%がより好ましい。
細孔容積、細孔系、気孔率が大きすぎるとハニカム担体の圧力損失が高くなりすぎて、GPFとして用いた場合に、エンジンの出力低下を招くことがある。また、細孔容積、細孔系、気孔率が小さすぎると十分な強度が得られないことがある。
ハニカム基材の隔壁の厚さは、150〜350μmであることが好ましく、200〜310μmであることが特に好ましい。隔壁の厚さが150μm未満であると、十分な強度が得られないことがある。また、隔壁の厚さが350μmを超えると、ハニカム構造体の圧力損失が高くなりすぎて、GPFとして用いた場合に、エンジンの出力低下を招くことがある。
ハニカム基材の外周壁の厚さは、300〜1000μmであることが好ましく、500〜800μmであることが特に好ましい。外周壁の厚さが300μm未満であると、十分な強度が得られないことがある。また、外周壁の厚さが1000μmを超えると、ハニカム構造体の圧力損失が高くなりすぎて、GPFとして用いた場合に、エンジンの出力低下を招くことがある。
隔壁によって形成されるセルは、通常、直径あるいは一辺が凡そ0.8〜2.5mmであり、その密度は、単位断面積あたりの孔の数で表され、これはセル密度とも言われる。ハニカム構造体のセル密度は、特に制限されないが、100〜1200セル/inch(15.5〜186セル/cm)が好ましく、150〜600セル/inch(23〜93セル/cm)がより好ましく、200〜400セル/inch(31〜62セル/cm)である事が特に好ましい。セル密度が1200セル/inch(186セル/cm)を超えると、触媒成分や、排気ガス中の固形分で目詰まりが発生しやすく、圧力損失が高くなりすぎて、GPFとして用いた場合に、エンジンの出力低下を招くことがある。
100セル/inch(15.5セル/cm)未満では幾何学的表面積が小さくなるため、触媒の有効使用率が低下してしまい排気ガス浄化触媒としての有用性がなくなるおそれがある。また、GPFとして用いた場合に、フィルターとしての有効面積が不足して、PM堆積後の圧力損失が高くなり、エンジンの出力低下を招くことがある。
また、セル壁である隔壁の厚みは、1〜18mil(0.025〜0.47mm)が好ましく、6〜12mil(0.16〜0.32mm)がより好ましい。隔壁が薄すぎると構造的に脆くなり、厚すぎるとセルの幾何学的表面積が小さくなるため、触媒の有効使用率が低下してしまうおそれがある。また、隔壁が厚すぎると圧損が高くなるおそれがある。
本発明に使用されるハニカム構造体は、多孔質無機酸化物により形成されていることが必要である。GPF製造時には、被覆によって触媒スラリーが外壁部に浸出することを防止できるとともに、フィルターとして使用する際には、外壁部に通気性を持たせることが必要だからである。
また、特にガソリン車用のGPFでは、ハニカムを構成する隔壁から排気ガスを外部に逃がす必要から、隔壁も、多孔質体により形成され、セル壁および外壁部に多数の細孔が存在していることが好ましい。
また、隔壁と外壁部とは、同一材料により形成されることが好ましく、さらに、同一材料による一体成型であることが好ましい。効率的な製造が可能であり、材料の違いによる問題を回避できるためである。
ハニカム基材の材料としては、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、アルミニウムチタネート等のセラミック材料が好ましい。これらの中でも、コージェライトが特に好ましい。ハニカム基材の材料がコージェライトであると、熱膨張係数が小さく、耐熱衝撃性に優れたハニカム構造体を得ることができるためである。
ハニカム構造体の形状は、特に限定されるものではなく、一般的に知られている円柱形、円柱状に類する楕円柱状のほか、多角柱なども含まれる。好ましいのは、円柱形あるいは楕円柱状のものである。
すなわち、ハニカム構造体は、複数のローラーを用いて、樹脂組成物を外皮部分に塗布して製造するのが好ましいため、断面形状が円形であると均一に被覆を形成しやすいが、楕円形でも皮膜形成が可能である。また、あらかじめハニカム構造体の外皮部分表面を粗雑化したり、表面を化学的処理して、被覆を形成しやすくしておくこともできる。
また、セルのハニカム基材の長さ方向に対して垂直な断面における形状(以下、「セル形状」という。)も特に限定されないが、四角形、六角形、八角形等の多角形あるいはそれらを組み合わせたもの、例えば四角形と八角形を組み合わせたもの等が好ましい。
2.樹脂被覆ハニカム構造体
本発明の樹脂被覆ハニカム構造体は、ハニカム構造体外壁部の外側表面の少なくとも一部に形成された有色樹脂被覆を備えている。また、該樹脂被覆は、着色された樹脂溶液を塗布し乾燥させて形成されているのが好ましい。
上記樹脂被覆は、ハニカム構造型触媒製造時に、外壁部への触媒スラリーの浸入を抑制するために、樹脂溶液(以下、「シーラー」ということもある。)は、ハニカム構造体の外壁部を万遍無く均一に含浸被覆することが求められる。
しかし、シーラーに使用する樹脂が無色であると、シーラーで被覆されていない個所が分かり難いという場合がある。さらにシーラー塗工後に乾燥してしまうと、塗られた場所と塗られていない場所の区別がつかなくなってしまうという場合もある。特にセラミックスの焼成体からなるハニカムでは、その表面は平滑ではなく粗面でありかつ吸水性を有することから、被覆形成後の反射も無く、無色透明のシーラーであると塗工の有無・良否の判別はより難しくなりがちである。
また、シーラーが外壁部より内側に著しく深く浸入しすぎると、その部分のセル壁ではウオッシュコート時に触媒組成物がセル壁表面へ密着することや、セル壁内部に浸入することが出来なくなり、ハニカムにおける触媒化面積の減少に繋がるおそれがある。透明なシーラーであると、シーラーがどの程度まで浸入したかも識別が難しくなり、適切な製造管理(実施)が困難になるおそれがある。
したがって、着色された樹脂組成物を用いることでハニカム基材が着色樹脂により被覆されれば、被覆形成の際だけでなく乾燥後においても、また、セラミックスの焼成体からなるハニカムであっても、塗られた場所と塗られていない場所の区別がつき、この時点で塗工の良・不良を判別可能でき、製造の歩留まりを向上できることになる。
また、樹脂被覆が形成された外壁部の外側表面において、該樹脂被覆が形成される前の孔の少なくとも一部が、該樹脂被覆により封孔または孔の開口サイズが絞孔されていることが好ましい。封孔とは開口サイズがゼロ、絞孔は、開口サイズが前の孔よりも小さくなっていることを言い、絞孔は前の孔で形成される空隙率の1/3以下になる事が好ましく1/10以下になることがより好ましい。
また、シーラーの浸入深さは適宜決定できるが、概ね外壁部直近の1セルに達していることが好ましく、さらに2セル目に達すれば強度上の向上も期待される。サイズが大きなGPFでは3セル以上とすることもできるが、サイズが小さい場合、浸入深さが深くなるほど触媒担持量が低減することにも留意すべきである。
3.樹脂被覆ハニカム構造体の製造
本発明の樹脂被覆ハニカム構造体は、ハニカム構造体の外壁部の外側表面の少なくとも一部に着色樹脂被覆を形成できる方法であれば、制限なく適用可能である。例えば、ローラーを用いて樹脂被覆を形成する方法が採用でき、一例として、二本以上のローラーを用いた方法が挙げられる。
ローラーとしては、例えば、駆動機能および塗布機能を有するローラー(「駆動および塗布ローラー」ともいう。)、塗布機能を有するローラー(「塗布ローラー」ともいう。)のいずれかが使用され、該塗布ローラーは駆動機能を有するローラー(「駆動ローラー」ともいう。)と併用されうる。このようなローラーを用いることにより、ハニカム構造体の外壁部に、樹脂被覆することができ、ウォッシュコート法を適用した触媒製造時には触媒スラリーが外壁部に浸出することを防止できる。
なお、こういった被覆は、必ずしも、上記外壁部の多孔質体による細孔を、被覆によってすべて埋める必要があるものではなく、上記したとおり、例えばウォッシュコート法を適用する場合に触媒スラリーが外壁部に浸出することを防止できる程度に、被覆により縮孔されていれば良い。
ローラーは材質によって制限されず、ハニカムと同様なセラミックを使用でき、そのほか、木材や金属でもよい。これらの表面には、エマルジョンで湿潤されやすくハニカム構造体との接触時に傷を生じさせないために、ウレタンフォーム、ポリビニルアルコール、セルロース系、ゴム系、シリコン系または不織布などのスポンジ状材料を取り付けることもできる。
駆動ローラーとしては、ハニカム構造体に少なくとも一部が接触して回転させることができるものであれば、好適に用いることができる。その最外面は、ウレタンフォームのようなスポンジ状材料で形成されているものが好ましい。
駆動ローラーの形状は、ハニカム構造体の形状との関係もあるが、通常、断面形状が円状のものであると比較的均一に回転させやすく、楕円状のものでも使用が可能である。また、駆動ローラーの大きさは、装置の制約等を考慮して適宜選択する。
また、駆動ローラーは、その円周方向にリブが形成されたものであると、駆動ローラーとハニカム構造体との接触面積が少なくなり、駆動ローラーに塗布液が粘着するといった問題を防ぐことができるため好ましい。
塗布ローラーとしては、ハニカム構造体の外壁部の少なくとも一部に塗布液の塗布により被覆を形成することができるものであればよい。その最外面は、スポンジ状材料で形成されているのが好ましい。以下、「駆動および塗布ローラー」も同様である。
塗布ローラーに塗布液を供給する方法としては、塗布ローラーの最外面がスポンジ状で形成されている場合は、例えば、塗布ローラーの少なくとも最外面のスポンジ状材料部分を、塗布液が満たされた容器に浸漬させることが好ましい。また、塗布ローラー自体が、側面に穴が開けられたパイプ形状の芯部を有する構造とし、この芯部に塗布液を供給することができる。
また、ハニカム構造体は、塗布機能を有するローラーと連動して回転することが好ましい。また、ハニカム構造体は、塗布機能を有するローラーに押し付けられて塗布されることが好ましい。塗布液の種類等の状況にあわせて、塗布量、塗布圧力等をコントロールして、好ましい被覆を形成できるためである。
また、塗布ローラーの大きさは、通常、ハニカム構造体と同程度か、長さ50〜300mm、好ましくは80〜200mmのもの、かつ直径30〜500mmのものが好ましい。その長さは、塗布ローラーがハニカム構造体よりも短尺である場合は、ハニカム表面の一部に塗布され一方、塗布ローラーがハニカム構造体よりも長尺である場合は、ハニカム全表面に塗布できるため、好ましい。
また、塗布ローラーの直径は制限されないが、塗布ローラーの直径をハニカム構造体の直径と異ならせると、塗布液の飛沫が飛び散るのを防ぐといった効果を奏することがある。
また、塗布ローラーは、塗布液の種類等によっては、ローラー末端部に前記ハニカム構造体の塗布部の過剰塗布液を除去するための部材を取り付けることができる。この部材としては、例えば、金属の円柱、表面を厚さ数ミリのゴムで覆った、回転自在の部材とすることができる。
本発明では、着色された樹脂成分を含む塗布液が使用される。塗布液の樹脂成分としては、有機系材料が好ましく、例えば、二重結合や反応性官能基を有し、コート後の加熱によりアクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、アクリルスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂またはポリウレタン樹脂となる、熱硬化性のモノマーを水溶媒に分散または溶解させたエマルジョンの形態で用いるのが好ましい。
また、乾燥などによって固化するポリビニルアルコール、(超)低密度ポリエチレン、ポリエチレングリコール(PEG)、寒天、ゼラチン、でんぷん、スクロース等も好ましく挙げられる。これらも、低分子量のポリマーを水溶媒に分散または溶解させたエマルジョンの形態で用いるのが好ましい。有機系材料は、水溶性高分子を用いて形成され、原料としては、溶媒としての水に樹脂のモノマーあるいは低分子量樹脂を分散または溶解させた水性エマルジョンが好ましい。有機樹脂は、エマルジョン全体の1〜50質量%、好ましくは3〜40質量%を必要とする。
これに対して、常温で固体の有機樹脂を主成分としたもの、例えば高分子量で親水性のないワックス、有機系顔料なども使用できるが、そのままではハニカムへの塗布が難しくなることがある。ハニカムの外皮からマクロな細孔内に被覆成形成分が浸入しにくい場合には塗りむらが生じ、スラリーの滲みを抑制しにくいが、このような成分であっても、水や有機溶剤などの媒体に分散または溶解させるなどの工夫により使用できることがある。 また、樹脂溶液は、平均重合度:1500〜3000、濃度:3〜10質量%のポリビニルアルコール(PVA)を含む水溶液からなることが好ましい。より好ましいのは、平均重合度:1700〜2100、濃度:4〜6質量%のポリビニルアルコール(PVA)を含む水溶液である。
一方、特許文献5には無機系のシリコーンオイルが記載されている。これは、高粘度のものや水・アルコールなどの溶剤に溶解しにくいものも多く、ハニカム外皮部分に含浸されにくいので、セル内壁にまで達しないことが多い。
有機系材料は、上記の有機樹脂を主成分とし、無機フィラーを含んでもよい。すなわち、有機樹脂の量は、ハニカム外表面への付着量とセル外皮のマクロポアへの封入量の合計が、材料全体の少なくとも90質量%であるのが好ましい。
無機フィラーとして、チタニア、アルミナ、シリカなどを含有してもよいが、その量は10質量%以下とするのが好ましく、5質量%以下がより好ましい。無機フィラーが10質量%を超えるほどの多量であると、セル内のマクロポアに浸入したものが、触媒担持後にも残存して細孔を小さくすることがあり圧損やクラックを招く要因ともなるため含有しない方が望ましい
溶媒は水であれば、安全かつ低コストであるが、有機溶媒のアルコールなどを用いても良い。その後の乾燥工程を考慮すれば、沸点の低いエタノールがより好ましい。
樹脂水溶液は、さらに、着色剤を必須成分として含有する。着色とは染料や顔料を樹脂中に溶解または分散させた状態をいう。染料は溶解性が比較的高いのでそのまま樹脂や溶剤に添加されることが多い。しかし、粉末顔料は樹脂に溶解しにくいので凝集せず混和できるよう、ビヒクル(展色材)、金属せっけん、ステアリン酸金属塩などの分散剤が配合される。
着色剤の色は基本的には化学構造によって決まり、結晶構造や粒子の大きさ、形状などの要因で変化する。ハニカム基材はセラミック特有の黄色系、黄白色、黄褐色のものが多い。したがって本発明で使用するには、赤色、青色、緑色、黒色、紫色、あるいはこれらの中間色の着色剤が好ましい。
染料、顔料は分散剤などを配合しただけのドライカラーで使用されることもあるが、顆粒状に加工して飛散性、汚染性などを改良した顆粒状カラーとしたり、樹脂の表面に分散処理した状態で付着させたマスターパウダーとして用いたり、樹脂をビヒクルとして顔料を高濃度に分散させたマスターバッチとする場合もある。
着色剤、すなわち色材(色素)は染料と顔料に大別され、染料は水溶性のもので塩基系のものと酸系のものがあり、また油溶性のものに、アゾ系、アントラキノン系、ペリレン系のものなどがある。
アゾ系染料としては、CIアシドブラック1、CIアシドブラック63、CIアシドオレンジ7、CIアシドオレンジ92、CIアシドレッド2、CIアシドレッド8、CIソルベントブラウン3、CIソルベントオレンジ1、CIソルベントレッド1、CIソルベントイエロー7、CIソルベントイエロー21等が挙げられる。
アントラキノン系染料としては、例えば、トルイジンブルー、C.I.ソルベントブルー11、12、35、59、74、1−アミノアントラキノン、2−アミノアントラキノン、ヒドロキシエチルアミノアントラキノン、C.I.ソルベントバイオレット47が挙げられる。ペリレン系染料であるC.I.Solvent Orange55から成る大日精化工業(株)製「DIMIC MBR 120830 オレンジ」、同じくペリレン系染料であるBASF社製「Lumogen F Yellow 083」、「Lumogen F Yellow 170」、ペリレンイミド系染料であるBASF社製「Lumogen F Orange 240」、「Lumogen F Red 305」、ベンゾピラン系染料であるC.I.Solvent Red197から成る大日精化工業(株)製「MBR D−75」等が挙げられる。
着色用染料の添加量は、任意であるが、組成物全体に対して0.01〜5質量%の範囲で使用される。着色用染料の種類にもよるが、添加量が少ないと樹脂の透明度が保たれ、多いと不透明さが強くなる。
また、食品用の食用色素を用いてもよく、タール色素、カラメル色素、クチナシ色素、アントシアニン色素、アナトー色素、パプリカ色素、紅花色素、紅麹色素、フラボノイド色素、コチニール色素などがある。
一方、顔料は無機顔料と有機顔料に分類される。有機樹脂には前記したとおり多くの種類があり、それぞれの樹脂の特性・物性に応じて適切な着色剤を選定する必要がある。本発明の場合、無機顔料の使用は触媒性能への影響を考慮すれば好ましくなく、有機顔料の使用が望ましい。
有機顔料は、アニリンブラック、アゾ顔料と多環系顔料に分類され、アゾ顔料は、アゾレーキ、ハンザ系、ベンズイミダゾロン系といったモノアゾ顔料と、ジアリライド系、ビラゾロン系といったジスアゾ系顔料、さらにエロー系、レッド系といった縮合アゾ顔料がある。一方、多環系顔料には、フタロシアニン系、キナクリドン系、ペリレン系、ペリノン系、ジオキサジン系、アントラキノン系、ピロール系、およびイソインドリノン系などの顔料があげられる。
アニリンブラックは黒、アゾレーキは赤、ベンズイミダゾロン系は赤黄色、ビラゾロン系は赤黄色のものが多くレッド系は赤色である。また、フタロシアニン系は青緑、キナクリドン系は赤、ペリレン系は赤、ペリノン系は橙、ジオキサジン系は紫、アントラキノン系は紫・赤・青、ピロール系は赤のものが多いので、好ましく使用できる。その他のものは黄色なので、樹脂被覆の形成を識別するには不十分な場合もあるが、ハニカムの地肌と色が異なりすぎると商品価値を損なうとみなされる場合もあることから、あえて同系色を選定することも可能であり、そのほうが好ましい場合もある。
着色剤の選定にあたって、考慮すべきは、熱安定性である。本発明では、樹脂組成物を塗布した後、ハニカムを乾燥・固化し、さらに触媒スラリーをセル内に導入し、引き続き乾燥・焼成する工程が加わる。着色剤は、樹脂被覆がハニカムに塗布された後では識別のため被覆中に存在しなければならないが、最後の焼成後には高温に晒され分解し、消色することが望まれる場合もある。
全般に、有機系顔料は、金属元素が含まれることもあって耐熱性が染料よりも低いものが多く、無機顔料やカーボンブラックと比べてもより低いものが多い。アニリンブラック、ベンズイミダゾロン系、ジアリライド系、ビラゾロン系、エロー系、レッド系、ペリノン系、ジオキサジン系は比較的熱分解性が高く、アゾレーキ、ハンザ系はさらに熱分解性が高いとされている(「やさしいプラスチック配合剤」(社)日本合成樹脂技術協会 監修、株式会社 三光出版社 平成8年3月30日 発行、第43ページ参照)。
アゾレーキ顔料とは、スルホン酸基、カルボン酸基等の親水性基を有するアゾ染料を、ナトリウム、バリウム、カルシウム、ストロンチウム、マンガン、アルミニウム、その他の金属イオンにより水不溶化したものであり、例えば、C.I.ピグメントレッド57、同じく53、52、49、64、50、63、60、58、151、243等、C.I.ピグメントオレンジ17等、C.I.ピグメントイエロー168等のオキシナフトエ酸系、ナフトール系、アセト酢酸アニライド系等のアゾレーキ顔料であり、このようなアゾレーキ顔料自体の製造方法は公知である。
アゾレーキ顔料は、フェノール・ナフトール類からなるカップラー成分を含む水溶液と、芳香族アミン類のジアゾニウム塩成分を含む水溶液とを用い、カップリングと金属塩によるレーキ化を行うことで製造される。また、前記製造方法において、各反応開始前、反応中、反応後の任意段階においてロジン類の金属塩を系に含ませて、ロジン類で処理されたアゾレーキ顔料を得ることも行われている。
顔料系着色剤の使用量は、その種類にもよるが、識別効果が確認できれば良いため、樹脂組成物に対して1質量%以下とするのが好ましい。それよりも多いと触媒化した後、ハニカム表面の美観を損なうことがある。より好ましいのは0.1質量%以下である。
樹脂成分には水、および着色剤のほかに、樹脂ワニス、増粘剤、湿潤剤、硬化剤、安定剤等を適宜含むことができる。
樹脂ワニスとしては、例えば、水性シェラックワニス、水性カゼインワニス、水性ロジンマレイン酸樹脂ワニス、水性ポリエステル樹脂ワニス、水溶性セルロースワニス等が挙げられる。
増粘剤としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びウレタン樹脂等が挙げられ、湿潤剤としては、例えば、アルキルアルコールエチレンオキサイド付加物等が挙げられ、造膜助剤としては、例えば、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
以下、ハニカム基材への着色樹脂被覆について、具体的な実施形態を説明する。
図3は、駆動・塗布ローラーを2つ並べ、その上に、ハニカム基材を載置して、ローラーにより回転させ円周側面に塗布液を付着させる例を模式的に示している。
まず、ハニカム構造体(2)を、有機系材料を含む塗布液が蓄えられた液浴(3)に下端部を漬けた駆動・塗布ローラー(1)上に載置して、ハニカム構造体(2)の円周側面に接触させる。駆動・塗布ローラーとしては、ローラーの最外面がスポンジ状で形成されているものが好ましい。
駆動・塗布ローラーに塗布液を供給するには、例えば、ローラーの少なくとも最外面のスポンジ状材料部分を、塗布液が満たされた容器に浸漬させることが好ましい。なお、駆動・塗布ローラーを2つ以上用いる場合は、どれか1つのみに塗布液を供給してもよいし、両方に塗布液を供給してもよい。
また、図4の実施態様においては、駆動ローラー(6)を2つ用い、その上にハニカム構造体(2)を載置する。そして、ハニカム構造体(2)を下方の駆動ローラー(6)で回転させるとともに、ハニカム構造体(2)の上部から塗布ローラ(5)にて塗布液を付着させる。
本態様は、前記態様とは異なり塗布液が上方から供給され、ハニカム構造体に付着した後、余剰物が駆動ローラー下方へと落ちていく。したがって、図示しないが、塗布ローラーの上方には、ローラーに沿ってシャワー状に塗布液を降らせるパイプ等を配置して塗布液を供給し、底部には塗布液の受け皿が設けられる。流動性が高い塗布液の場合は、受け皿にたまった液を上部に循環することができる。前記パイプをローラーの芯部に内蔵させたものを用いても良い。
また、液浴を別に設けて置き、塗布ローラーは、そのつど液浴に移動させ必要な塗布量を湿潤した後、上部に位置するようにしてもよい。
その後、駆動・塗布ローラー(1)又は駆動ローラー(6)を駆動回転させると、ハニカム構造体(2)も回転し、少なくとも一回転したとき駆動・塗布ローラー(1)又は塗布ローラ(5)に付着した有機系被覆液がハニカム構造体(1)の外周全体に被覆される。エマルジョン液に含まれた有機樹脂成分は回転時の遠心力を受け、外皮部分からマクロポアにも浸入してゆく部分もある。
この場合、駆動・塗布ローラーの回転速度は、用いるローラーのサイズ・樹脂材料の種類にもよるが、例えば、0.1〜100rpmが好ましい。回転速度が小さいほどハニカム構造体外皮部分への塗布液の付着量、細孔内への浸透量も増え、外皮部分を貫通するマクロポアにも十分に封入される。本発明では、回転速度を小さくするか、ローラーをハニカム基材に押し当てて、ハニカム構造体表皮部分からセル内への浸透量を増し、液が細孔からあふれ内部のセル壁深くにも付着するようにするのが好ましい。
塗布液に溶剤に溶解または分散させた樹脂成分を使用した場合、塗布液を塗布されたハニカム構造体は、次に乾燥(硬化)工程へと移動させる。乾燥(硬化)工程は特に限定されるものではないが、大気圧もしくは減圧下、0〜200℃の温度で行ってもよく、室温で行うことが好ましい。必要により空気や不活性ガスを表面に当てたり、減圧しても良い。加熱は、樹脂の種類によっても異なるが、50〜200℃の温度が好ましく、100〜180℃で行うことがより好ましい。
これにより、アクリル系などの熱硬化性樹脂モノマーであれば、モノマーが重合して硬化物となり、ポリビニルアルコールなどでは、水分の減少によって固化し、被覆付ハニカム構造体となる。
本発明のハニカム構造体と、ローラーおよび塗布液を組み合わせて用いる本発明の方法を採用することにより、ウォッシュコート時にスラリーが外皮部分から浸出しない程度に外皮部分の多孔質体の孔が縮孔されると同時に、触媒製造時の熱によって消失するも触媒に悪影響を与えない被覆とすることができる。
4.樹脂被覆ハニカム構造体
本発明における樹脂被覆ハニカム構造体は、該外壁部の外側表面の少なくとも一部に、有色樹脂被覆が形成されたものである。
着色樹脂は、ハニカム構造体の外皮表面の全体にわたって設けることができ、かつ、少なくとも一部は外壁を貫通する大きな細孔内にも封入されているのが好ましい。
外皮表面の有機系材料の被覆は、厚さによって制限されないが、0.1mm以下が好ましい。薄すぎると大きな細孔内への封入量も減って触媒成分含有液が外周へ滲み出しやすくなることがある。厚すぎるとハニカム構造体に触媒を担持する焼成工程で材料が残って表面状態が悪くなる。ただ、適度に厚いと被覆形成時に、触媒成分を含むスラリーが、外壁を貫通する大きな細孔内にも封入する際に、液材料がセル内側にあふれ出て内壁を覆うようになるので触媒が担持されにくくなるものの、最外部か、さらに内側セルに留まれば、むしろハニカム外皮の強度を高めるために好ましい。
本発明では、有機系材料がハニカムの外表面に一様に薄膜が形成されているのが望ましい。むらがあって薄すぎるところは、大きな細孔への封入量が不足して内部からスラリーが滲みでてしまうし、厚すぎる部分があると、その後の焼成で樹脂が残って外観を悪くする。
被覆は、主成分である有機樹脂が触媒製造時の焼成により消失し、しかも、触媒における外皮からの排ガスの流出に悪影響を与えない。
樹脂溶液としては、触媒製造時の焼成により消失し、しかも、触媒に悪影響を与えないものであることが必要である。そのために有機系材料が好ましく用いられ、着色剤として、耐熱性の比較的低いもの、例えば低温で分解して逸散するものが有用である。
本発明で着色剤を樹脂組成物に配合することで、ハニカム基材への樹脂組成物の塗布の程度を把握でき、樹脂被覆の過不足を推定できるから、次の触媒化工程でのスラリーの浸出やサーマルショックの発生という懸念を回避することができる。
本発明の樹脂被覆ハニカム構造体は、例えば、自動車用排気ガス浄化触媒として好適に使用され、ウォッシュコート法を適用する場合には触媒スラリーが外壁部に浸出することを防止できるとともに、ガソリンパティキュレートフィルター(GPF)として使用する際には悪影響を及ぼすこと無く外壁部の通気性を確保できる。
5.ガソリン車排気ガス浄化触媒の製造方法
本発明は、前記樹脂被覆ハニカム構造体を用い、触媒組成物スラリーを、加圧工程を含むウオッシュコート法で前記セル隔壁に被覆する工程を有するハニカム構造型触媒の製造方法である。
例えば、樹脂被覆ハニカム構造体を用いたガソリン車排気ガス浄化触媒では、ハニカム構造体担体のセル内に、NOx、CO、炭化水素を浄化する三元触媒(TWC)の触媒成分を担持する。三元触媒(TWC)は、プラチナ、パラジウム、ロジウム等の貴金属を主とする活性成分を無機酸化物粒子に担持させた排気ガス浄化触媒であって、排気ガス中に含まれる有害物質である炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物(NOx)について、炭化水素は水と二酸化炭素に酸化し、一酸化炭素は二酸化炭素に酸化し、窒素酸化物は窒素に還元して一度に浄化する。このような触媒成分を含む組成物をスラリー化し公知のウォッシュコート法を用いて本発明の樹脂被覆ハニカム構造体に被覆し、乾燥、焼成することで触媒成分を担持することができる。
ウォッシュコート法においては、前記ハニカムフィルタ担体の外周部を弾性把持治具(「バルーン」ともいう)で把持し、三元触媒(TWC)の触媒成分を含むスラリー液浴を被覆担持する。ディーゼル車用のフィルター触媒(DPF)では、排ガスの速度があまり高速にならないために、外皮としてフィルターのセルを構成する素材とは異なる緻密な構造のものを用い、ハニカム構造体の機械的強度を図ることが多い。そのため、本発明で課題とするようなスラリー液の滲みと、バルーンを用いた場合の固着という問題は生じない。
ところが、GPFでは、ガソリン車の排気ガスに含まれる微細な粒子状物質を除去するために、ハニカム状のフィルターを用いるため、外壁に大きな細孔が存在し、それらにはセル内から外部へと連通した箇所も存在する。このような箇所では、外皮の空隙からスラリー液が染み出しやすい構造になっている。本発明は、上述したハニカム構造体を用いるので、セル内に三元触媒(TWC)の触媒成分を被覆する工程で、該ハニカム構造体の外周に触媒成分含有液が滲み出にくくし、粘着成分を含む液による弾性把持治具との固着を抑制し、脱離作業に支障をきたさない。
貴金属はアルミナなどの粒子に担持され、それを含むスラリーによって、一層または二層でハニカムに担持される。スラリーの粒度は、小さいものが好ましく、90%が5μm以下のものが好ましく、より好ましくは3μm以下になるように粉砕したものが用いられる。そして、三元触媒(TWC)の量は、ハニカムの体積1Lあたりの被覆量で、40〜150g/Lの範囲であることが好ましく、50〜100g/Lがより好ましい。
このほか、耐熱性を向上させる成分、酸素を吸蔵し放出する成分として、ジルコニア、セリア、La,NdやPrなどの元素を含む酸化物なども配合できる。
スラリーの成分には、触媒材料をセル内に被着しやすくする粘着性の物質も含まれており、それが、ウォッシュコート法においてハニカム構造体の把持にバルーンを用いる場合に固着する原因ともなっている。本発明により得られる樹脂被覆ハニカム構造体であれば、そのような固着を回避できる。
また、本発明により得られる樹脂被覆ハニカム構造体を使用してウォッシュコート、乾燥(硬化)焼成によって得られたハニカム構造型触媒であれば、その製造過程において、400℃以上の加熱で外皮部分の樹脂被覆が焼失することで、外皮部分に含まれる無機酸化物粒子を減らす事も可能になり、触媒製造時、また実車として走行時の熱履歴を一因としたサーマルショックの発生を抑制することもできる。
以下に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、これらの実施例に制約されるものではない。
ハニカム基材として、NGK社製のコージェライト製ウォールフローハニカム構造体を用意した。その詳細は以下のとおりである。
・気孔率:外周壁、隔壁共に65体積%
・平均細孔径:水銀圧入法による体積平均で20μm
・隔壁厚さ:10[mil(約0.3mm)]
・セル密度:300[cel/inch2(約46.5cel/cm2)]
・直径:4.66[inch(118.4mm)]
・長さ:5[inch(127mm)]
[比較例1]
平均重合度1900のポリビニルアルコール(PVA)を水に溶かし、5質量%の樹脂組成物溶液を樹脂被覆形成用液として調製した。
この樹脂被覆形成用液を、図3のようにローラーを配置した装置を用いて、ハニカム基材の外周壁の外側表面に10g/Lとなるように塗布し、その後、乾燥させた。
塗布後のハニカム基材の表面には、図2右上(B・C)の写真で示されるように、樹脂の付着による変色が確認されたが、乾燥後は図2右下(B・D)の写真のように、退色してハニカムの地肌になっていた。
塗布時間が短かったためか、樹脂付着箇所がハニカム基材の全域とならず、樹脂被覆が不均一になったことから、このようなものを用いると触媒製造工程で、樹脂被覆されていないところから触媒スラリーが染み出ることが懸念された。
そのため、上記よりもハニカム基材への樹脂組成物の塗布量が多くなるように、ローラーをハニカム基材の外周壁に押し付ける圧力や、ローラーの回転数等を制御した。塗布量(外周壁側からの含浸深さ)をハニカムの両端面から目視で確認し、外周壁軸線方向の内側の1セルの深さまで外皮層形成用液が含浸していることを確認し、ハニカム構造体を乾燥させた。
塗布後のハニカム基材の表面には、図2左上(A・C)の写真で示されるように、表面全域で変色が確認されたが、乾燥後は図2左下(A・D)の写真のように、退色してハニカムの地肌になっていた。
上記いずれの場合も乾燥後のハニカム基材を目視しただけでは、次の触媒製造工程で使用するに適したものかどうか識別できないという問題がある。
[実施例1]
(ハニカム基材への樹脂組成物の含浸)
まず、平均重合度1900のポリビニルアルコール(PVA)を紫色色素(商品名:粉末食用色素 紫、メーカー:(株)私の台所)と共に水に溶かし、5質量%の樹脂組成物溶液を樹脂被覆形成用液として調製した。
この樹脂被覆形成用液を、ハニカム基材の外周壁の外側表面の全域に15g/Lとなるように塗布した。
塗布量(外周壁側からの含浸深さ)をハニカムの両端面から目視で確認し、外周壁軸線方向の内側の1セルの深さまで外皮層形成用液が含浸していることを確認し、ハニカム構造体を乾燥させた。尚、被覆形成用液の塗布は、ローラーを用いて行い、ローラーをハニカム基材の外周壁に押し付ける圧力や、ローラーの回転数等によって、塗布量を制御した。
塗布後のハニカム基材の表面には、図1右上(B・C)の写真で示されるように、着色が確認され、乾燥後でも図1右下(B・D)の写真のように、青色を呈していた。これにより触媒製造工程で使用するハニカム基材であるとの識別が容易となった。
ただ、着色箇所がハニカム基材の局所であったため、樹脂被覆が不均一になったと推測でき、これを用いると触媒製造工程で、樹脂被覆されていないところから触媒スラリーが染み出ることが懸念された。
そのため、上記と同様ではあるがハニカム基材への樹脂組成物の塗布量が多くなるようにローラーとの接触条件を制御した。樹脂組成物であるPVAは、全て外周壁、並びに隔壁に含浸しており外周壁表面上にPVA単独の層を形成していなかった。しかし、塗布後のハニカム基材の表面には、図1左上(A・C)の写真で示されるように、全体的に均一な着色がされていることが確認でき、乾燥後のハニカム基材の表面にも、図1左下(A・D)の写真のように、全体的にほぼ均一な着色が確認できた。
なお、樹脂組成物であるPVAは、外周壁の全域、並びに隔壁の一部に含浸しており外周壁表面上に顕著なPVA単独の層を形成していなかったが、これを用いれば触媒製造工程で、樹脂被覆により触媒スラリーの染み出しを抑制しうると判断できた。
(ハニカム構造型触媒の製造)
その後、こうして適切な被覆層が設けられたウォールフローハニカム構造体に、ウオッシュコート法をもって、下記の条件で、三元触媒であるRh,Pd、アルミナ、セリア、ジルコニアを含む触媒組成物スラリーを被覆した。
・粒度分布における小粒径側からの累積分布が90%となるときのD90:3μm
・ハニカム単位体積あたりのウオッシュコート量:60[g/L]
・スラリー除去工程におけるエアブロー圧力:15(0.1)[psi(MPa)]
・エアブロー時間:3[秒]
得られた触媒の外観をみると、外周壁への触媒組成物スラリーの浸出とクラックの発生は完全に抑制されていた。
また、樹脂組成物であるPVAは、焼成工程での加熱によって消失し、それとともに着色剤の大半が分解し、外周壁表面上の着色はかなり薄いものとなって商品価値を損なうことはなかった。
[実施例2]
実施例1において使用したウォールフローハニカム構造体に、塗布する樹脂組成物として、アクリル樹脂の水エマルジョンタイプを用い、着色剤を配合して、実施例1と同様にハニカム基材に青色の樹脂皮膜を形成した。
塗布条件は同様としたが、塗布後のハニカム基材の表面には、全体的に鮮明に着色されていた。樹脂成分のアクリル樹脂が乾燥により重合して、全て外周壁、並びに隔壁内に含浸したためと考えられる。
これを用いれば触媒製造工程で、樹脂被覆により触媒スラリーの染み出しを抑制しうると判断できた。
その後、こうして樹脂被覆層が設けられたウォールフローハニカム構造体に、ウオッシュコート法をもって、実施例1と同じ条件で、三元触媒であるRh,Pd、アルミナ、セリア、ジルコニアを含む触媒組成物スラリーを被覆した。
得られた触媒の外観、すなわち外周壁への触媒組成物スラリーの浸出とクラックの発生状況を観察したが、触媒組成物スラリーの浸出とクラックの発生は完全に抑制されていた。また、樹脂組成物であるPVAは、焼成工程での加熱によってほぼ消失し、外周壁表面上の着色がわずかに残ったが、商品価値を低下させるほどではなかった。
[実施例3]
実施例1において使用したウォールフローハニカム構造体に、塗布する樹脂組成物を茶色のアクリル樹脂(「水性ニス マホガニー」:和信ペイント株式会社製)8g/L となるようにした以外は実施例1と同様にしてハニカム構造型触媒を得た。
得られた触媒の外観、すなわち外周壁への触媒組成物スラリーの浸出とクラックの発生状況を観察したが、触媒組成物スラリーの浸出とクラックの発生は完全に抑制されていた。また、樹脂組成物であるアクリル樹脂は、焼成工程での加熱によってほぼ消失し、外周壁表面上の着色がわずかに残ったが、商品価値を低下させるほどではなかった。
[実施例4]
実施例1において使用したウォールフローハニカム構造体に、塗布する樹脂組成物を黒色のロウ(「is-fit(登録商標)液体靴クリーム」:モリト株式会社製)15g/L となるようにした以外は実施例1と同様にして外皮部分に樹脂組成物を有する触媒製造用のハニカム構造体を得た。
得られた触媒の外観、すなわち外周壁への触媒組成物スラリーの浸出とクラックの発生状況を観察したが、触媒組成物スラリーの浸出とクラックの発生は完全に抑制されていた。また、樹脂組成物であるロウは、焼成工程での加熱によってほぼ消失し、外周壁表面上の着色がわずかに残ったが、商品価値を低下させるほどではなかった。
本発明の樹脂被覆ハニカム構造体は、着色樹脂被覆を備えることにより、外壁部の外側表面への被覆の完了およびハニカム構造体外壁部への適切な深さへの樹脂の浸入を確認することが容易であるため、樹脂被覆ハニカム構造体を安定的に安価に製造でき、大量生産が可能である。
また、樹脂被覆ハニカム構造体の被覆によって、特にウォッシュコート法の適用時には触媒スラリーが外壁部に浸出することを防止できる。したがって、ガソリン車のGPFのハニカム担体として使用すると外壁部の通気性を確保できる。
1 駆動・塗布ローラー
2 ハニカム基材
5 塗布ローラー
6 駆動ローラー

Claims (8)

  1. 多孔質無機酸化物から構成され、流体の入口側となる入口端面から流体の出口側となる出口端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁と、側面である外壁部とを有するハニカム基材と、
    該外壁部の外側表面に形成された着色樹脂被覆を備えることを特徴とする樹脂被覆ハニカム構造体。
  2. 前記着色樹脂被覆は、前記外壁部の外側表面全体を被覆する、請求項1に記載の樹脂被覆ハニカム構造体。
  3. 前記樹脂被覆が形成された外壁部の外側表面において、該樹脂被覆が形成される前の孔の少なくとも一部が、該樹脂被覆により封孔または孔の開口サイズが絞孔されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂被覆ハニカム構造体。
  4. 前記ハニカム基材が、所定のセルの前記入口端面側の開口端部及び残余のセルの前記出口端面側の開口端部を目封止する目封止部を有するフィルター構造であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の樹脂被覆ハニカム構造体。
  5. ガソリンパティキュレートフィルター(GPF)の担体として用いることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の樹脂被覆ハニカム構造体。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の樹脂被覆ハニカム構造体の製造方法であって、
    多孔質無機酸化物から構成され、流体の入口側となる入口端面から流体の出口側となる出口端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁と、側面である外壁部とを有するハニカム基材に、着色剤を含む樹脂溶液を塗布した後、乾燥・硬化させて樹脂被覆を形成することを特徴とする、樹脂被覆ハニカム構造体の製造方法。
  7. 前記樹脂溶液が、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含むことを特徴とする請求項に記載の樹脂被覆ハニカム構造体の製造方法。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂被覆ハニカム構造体を用いて、加圧工程を含むウオッシュコート法で、該ハニカム構造体のセル隔壁に触媒組成物スラリーを被覆することを特徴とするハニカム構造型触媒の製造方法。
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