以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。
(射出成形機)
図1は、一実施形態による射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。図2は、一実施形態による射出成形機の型締時の状態を示す図である。図1〜図2において、X方向、Y方向およびZ方向は互いに垂直な方向である。X方向およびY方向は水平方向を表し、Z方向は鉛直方向を表す。型締装置100が横型である場合、X方向は型開閉方向であり、Y方向は射出成形機10の幅方向である。図1〜図2に示すように、射出成形機10は、型締装置100と、エジェクタ装置200と、射出装置300と、移動装置400と、制御装置700と、フレーム900とを有する。以下、射出成形機10の各構成要素について説明する。
(型締装置)
型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(図1および図2中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(図1および図2中左方向)を後方として説明する。
型締装置100は、金型装置800の型閉、型締、型開を行う。型締装置100は例えば横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定プラテン110、可動プラテン120、トグルサポート130、タイバー140、トグル機構150、型締モータ160、運動変換機構170、および型厚調整機構180を有する。
固定プラテン110は、フレーム900に対し固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に固定金型810が取付けられる。
可動プラテン120は、フレーム900に対し型開閉方向に移動自在とされる。フレーム900上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に可動金型820が取付けられる。
固定プラテン110に対し可動プラテン120を進退させることにより、型閉、型締、型開が行われる。固定金型810と可動金型820とで金型装置800が構成される。
トグルサポート130は、固定プラテン110と間隔をおいて連結され、フレーム900上に型開閉方向に移動自在に載置される。尚、トグルサポート130は、フレーム900上に敷設されるガイドに沿って移動自在とされてもよい。トグルサポート130のガイドは、可動プラテン120のガイド101と共通のものでもよい。
尚、本実施形態では、固定プラテン110がフレーム900に対し固定され、トグルサポート130がフレーム900に対し型開閉方向に移動自在とされるが、トグルサポート130がフレーム900に対し固定され、固定プラテン110がフレーム900に対し型開閉方向に移動自在とされてもよい。
タイバー140は、固定プラテン110とトグルサポート130とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本(例えば4本)用いられてよい。各タイバー140は、型開閉方向に平行とされ、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられてよい。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
尚、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、タイバー歪検出器141が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪ゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
トグル機構150は、可動プラテン120とトグルサポート130との間に配設され、トグルサポート130に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、クロスヘッド151、一対のリンク群などで構成される。各リンク群は、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152および第2リンク153を有する。第1リンク152は可動プラテン120に対しピンなどで揺動自在に取付けられ、第2リンク153はトグルサポート130に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152および第2リンク153が屈伸し、トグルサポート130に対し可動プラテン120が進退する。
尚、トグル機構150の構成は、図1および図2に示す構成に限定されない。例えば図1および図2では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152および第2リンク153を屈伸させ、トグルサポート130に対し可動プラテン120を進退させる。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されてもよい。
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸171と、ねじ軸171に螺合するねじナット172とを含む。ねじ軸171と、ねじナット172との間には、ボールまたはローラが介在してよい。
型締装置100は、制御装置700による制御下で、型閉工程、型締工程、型開工程などを行う。
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型820を固定金型810にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、クロスヘッド151の位置を検出するクロスヘッド位置検出器、およびクロスヘッド151の速度を検出するクロスヘッド速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。また、可動プラテン120の位置を検出する可動プラテン位置検出器、および可動プラテン120の速度を検出する可動プラテン速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。
型締工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。型締時に可動金型820と固定金型810との間にキャビティ空間801が形成され、射出装置300がキャビティ空間801に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。キャビティ空間801の数は複数でもよく、その場合、複数の成形品が同時に得られる。
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定速度で型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型820を固定金型810から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型820から成形品を突き出す。
型閉工程および型締工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程および型締工程におけるクロスヘッド151の速度や位置(型閉開始位置、速度切替位置、型閉完了位置、および型締位置を含む)、型締力は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型閉開始位置、速度切替位置、型閉完了位置、および型締位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、速度が設定される。速度切替位置は、1つでもよいし、複数でもよい。速度切替位置は、設定されなくてもよい。型締位置と型締力とは、いずれか一方のみが設定されてもよい。
型開工程における設定条件も同様に設定される。例えば、型開工程におけるクロスヘッド151の速度や位置(型開開始位置、速度切替位置、および型開完了位置)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型開開始位置、速度切替位置、および型開完了位置は、前側から後方に向けて、この順で並び、速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、速度が設定される。速度切替位置は、1つでもよいし、複数でもよい。速度切替位置は、設定されなくてもよい。型開開始位置と型締位置とは同じ位置であってよい。また、型開完了位置と型閉開始位置とは同じ位置であってよい。
尚、クロスヘッド151の速度や位置などの代わりに、可動プラテン120の速度や位置などが設定されてもよい。また、クロスヘッドの位置(例えば型締位置)や可動プラテンの位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
金型装置800の交換や金型装置800の温度変化などにより金型装置800の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば可動金型820が固定金型810にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
型締装置100は、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、タイバー140の後端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
ねじ軸181およびねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転は、回転伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。尚、回転伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
回転伝達部185は、例えば歯車などで構成される。この場合、各ねじナット182の外周に受動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の受動歯車および駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。尚、回転伝達部185は、歯車の代わりに、ベルトやプーリなどで構成されてもよい。
型厚調整機構180の動作は、制御装置700によって制御される。制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させることで、ねじナット182を回転自在に保持するトグルサポート130の固定プラテン110に対する位置を調整し、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
尚、本実施形態では、ねじナット182がトグルサポート130に対し回転自在に保持され、ねじ軸181が形成されるタイバー140が固定プラテン110に対し固定されるが、本発明はこれに限定されない。
例えば、ねじナット182が固定プラテン110に対し回転自在に保持され、タイバー140がトグルサポート130に対し固定されてもよい。この場合、ねじナット182を回転させることで、間隔Lを調整できる。
また、ねじナット182がトグルサポート130に対し固定され、タイバー140が固定プラテン110に対し回転自在に保持されてもよい。この場合、タイバー140を回転させることで、間隔Lを調整できる。
さらにまた、ねじナット182が固定プラテン110に対し固定され、タイバー140がトグルサポート130に対し回転自在に保持されてもよい。この場合、タイバー140を回転させることで間隔Lを調整できる。
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。尚、トグルサポート130の位置を検出するトグルサポート位置検出器、および間隔Lを検出する間隔検出器は、型厚調整モータエンコーダ184に限定されず、一般的なものを使用できる。
型厚調整機構180は、互いに螺合するねじ軸181とねじナット182の一方を回転させることで、間隔Lを調整する。複数の型厚調整機構180が用いられてもよく、複数の型厚調整モータ183が用いられてもよい。
尚、本実施形態の型厚調整機構180は、間隔Lを調整するため、タイバー140に形成されるねじ軸181とねじ軸181に螺合されるねじナット182とを有するが、本発明はこれに限定されない。
例えば、型厚調整機構180は、タイバー140の温度を調節するタイバー温調器を有してもよい。タイバー温調器は、各タイバー140に取付けられ、複数本のタイバー140の温度を連携して調整する。タイバー140の温度が高いほど、タイバー140は熱膨張によって長くなり、間隔Lが大きくなる。複数本のタイバー140の温度は独立に調整することも可能である。
タイバー温調器は、例えばヒータなどの加熱器を含み、加熱によってタイバー140の温度を調節する。タイバー温調器は、水冷ジャケットなどの冷却器を含み、冷却によってタイバー140の温度を調節してもよい。タイバー温調器は、加熱器と冷却器の両方を含んでもよい。
尚、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。竪型の型締装置は、下プラテン、上プラテン、トグルサポート、タイバー、トグル機構、および型締モータなどを有する。下プラテンと上プラテンのうち、いずれか一方が固定プラテン、残りの一方が可動プラテンとして用いられる。下プラテンには下金型が取付けられ、上プラテンには上金型が取付けられる。下金型と上金型とで金型装置が構成される。下金型は、ロータリーテーブルを介して下プラテンに取付けられてもよい。トグルサポートは、下プラテンの下方に配設され、タイバーを介して上プラテンと連結される。タイバーは、上プラテンとトグルサポートとを型開閉方向に間隔をおいて連結する。トグル機構は、トグルサポートと下プラテンとの間に配設され、可動プラテンを昇降させる。型締モータは、トグル機構を作動させる。型締装置が竪型である場合、タイバーの本数は通常3本である。尚、タイバーの本数は特に限定されない。
尚、本実施形態の型締装置100は、駆動源として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(図1および図2中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(図1および図2中左方向)を後方として説明する。
エジェクタ装置200は、金型装置800から成形品を突き出す。エジェクタ装置200は、エジェクタモータ210、運動変換機構220、およびエジェクタロッド230などを有する。
エジェクタモータ210は、可動プラテン120に取付けられる。エジェクタモータ210は、運動変換機構220に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構220に連結されてもよい。
運動変換機構220は、エジェクタモータ210の回転運動をエジェクタロッド230の直線運動に変換する。運動変換機構220は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
エジェクタロッド230は、可動プラテン120の貫通穴において進退自在とされる。エジェクタロッド230の前端部は、可動金型820の内部に進退自在に配設される可動部材830と接触する。エジェクタロッド230の前端部は、可動部材830と連結されていても、連結されていなくてもよい。
エジェクタ装置200は、制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。
突き出し工程では、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定速度で待機位置から突き出し位置まで前進させることにより、可動部材830を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定速度で後退させ、可動部材830を元の待機位置まで後退させる。エジェクタロッド230の位置や速度は、例えばエジェクタモータエンコーダ211を用いて検出する。エジェクタモータエンコーダ211は、エジェクタモータ210の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、エジェクタロッド230の位置を検出するエジェクタロッド位置検出器、およびエジェクタロッド230の速度を検出するエジェクタロッド速度検出器は、エジェクタモータエンコーダ211に限定されず、一般的なものを使用できる。
(射出装置)
射出装置300の説明では、型締装置100の説明やエジェクタ装置200の説明とは異なり、充填時のスクリュ330の移動方向(図1および図2中左方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(図1および図2中右方向)を後方として説明する。
射出装置300は、フレーム900に対し進退自在なスライドベース301に設置され、金型装置800に対し進退自在とされる。射出装置300は、金型装置800にタッチし、金型装置800内のキャビティ空間801に成形材料を充填する。射出装置300は、例えば、シリンダ310、ノズル320、スクリュ330、計量モータ340、射出モータ350、圧力検出器360などを有する。
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。成形材料は、例えば樹脂などを含む。成形材料は、例えばペレット状に形成され、固体の状態で供給口311に供給される。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの加熱器313と温度検出器314とが設けられる。
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(図1および図2中左右方向)に複数のゾーンに区分される。各ゾーンに加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ゾーン毎に、温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置800に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
スクリュ330は、シリンダ310内において回転自在に且つ進退自在に配設される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置800内に充填される。
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(図2参照)までスクリュ330に対し相対的に後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(図1参照)までスクリュ330に対し相対的に前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
尚、射出装置300は、スクリュ330に対し逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどでもよい。
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。
圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される圧力を検出する。圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の力の伝達経路に設けられ、圧力検出器360に作用する圧力を検出する。
圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。圧力検出器360の検出結果は、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
射出装置300は、制御装置700による制御下で、充填工程、保圧工程、計量工程などを行う。
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置800内のキャビティ空間801に充填させる。スクリュ330の位置や速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切替(所謂、V/P切替)が行われる。V/P切替が行われる位置をV/P切替位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
尚、充填工程においてスクリュ330の位置が設定位置に達した後、その設定位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切替が行われてもよい。V/P切替の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。また、スクリュ330の位置を検出するスクリュ位置検出器、およびスクリュ330の速度を検出するスクリュ速度検出器は、射出モータエンコーダ351に限定されず、一般的なものを使用できる。
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置800に向けて押す。金型装置800内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。
保圧工程では金型装置800内のキャビティ空間801の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間801の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間801からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間801内の成形材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮のため、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転数で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転数は、例えば計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、スクリュ330の回転数を検出するスクリュ回転数検出器は、計量モータエンコーダ341に限定されず、一般的なものを使用できる。
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
尚、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内にはスクリュが回転自在にまたは回転自在に且つ進退自在に配設され、射出シリンダ内にはプランジャが進退自在に配設される。
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であるが、シリンダ310の軸方向が上下方向である竪型であってもよい。竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。同様に、横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。
(移動装置)
移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、充填時のスクリュ330の移動方向(図1および図2中左方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(図1および図2中右方向)を後方として説明する。
移動装置400は、金型装置800に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置800に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430などを含む。
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切り替えることにより、第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。尚、液圧ポンプ410はタンクから作動液を吸引して第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出することもできる。
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、制御装置700からの制御信号に応じた回転方向および回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、およびピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型810に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型810から離間される。
尚、本実施形態では移動装置400は液圧シリンダ430を含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、液圧シリンダ430の代わりに、電動モータと、その電動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構とが用いられてもよい。
(制御装置)
制御装置700は、例えばコンピュータで構成され、図1〜図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェース703と、出力インターフェース704とを有する。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置700は、入力インターフェース703で外部からの信号を受信し、出力インターフェース704で外部に信号を送信する。
制御装置700は、型閉工程や型締工程、型開工程などを繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し製造する。また、制御装置700は、型締工程の間に、計量工程や充填工程、保圧工程などを行う。成形品を得るための一連の動作、例えば計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」または「成形サイクル」とも呼ぶ。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル時間」とも呼ぶ。
一回の成形サイクルは、例えば、計量工程、型閉工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、型開工程、および突き出し工程をこの順で有する。ここでの順番は、各工程の開始の順番である。充填工程、保圧工程、および冷却工程は、型締工程の開始から型締工程の終了までの間に行われる。型締工程の終了は型開工程の開始と一致する。尚、成形サイクル時間の短縮のため、同時に複数の工程を行ってもよい。例えば、計量工程は、前回の成形サイクルの冷却工程中に行われてもよく、この場合、型閉工程が成形サイクルの最初に行われることとしてもよい。また、充填工程は、型閉工程中に開始されてもよい。また、突き出し工程は、型開工程中に開始されてもよい。ノズル320の流路を開閉する開閉弁が設けられる場合、型開工程は、計量工程中に開始されてもよい。計量工程中に型開工程が開始されても、開閉弁がノズル320の流路を閉じていれば、ノズル320から成形材料が漏れないためである。
制御装置700は、操作装置750や表示装置760と接続されている。操作装置750は、ユーザによる入力操作を受け付け、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。表示装置760は、制御装置700による制御下で、操作装置750における入力操作に応じた操作画面を表示する。
操作画面は、射出成形機10の設定などに用いられる。操作画面は、複数用意され、切り替えて表示されたり、重ねて表示されたりする。ユーザは、表示装置760で表示される操作画面を見ながら、操作装置750を操作することにより射出成形機10の設定(設定値の入力を含む)などを行う。
操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネルで構成され、一体化されてよい。尚、本実施形態の操作装置750および表示装置760は、一体化されているが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。
(射出成形システム)
図3は、一実施形態による射出成形システムを示す平面図である。射出成形システム1は、射出成形機10および金型装置800に加えて、搬送機500、ゲートカット機550、冷却台600、アライメント機630、完成品搬送機660を備える。搬送機500、ゲートカット機550、冷却台600、アライメント機630、および完成品搬送機660は、例えば射出成形機10を基準としてY方向正側に配設される。Y方向正側を「反操作側」、Y方向負側を「操作側」とも呼ぶ。操作装置750が図3に示すように固定プラテン110のY方向負側に配設されるためである。
搬送機500は、金型装置800の内部で成形された成形品を、金型装置800、ゲートカット機550、冷却台600、アライメント機630、および完成品搬送機660に搬送する。搬送機500の搬送ベース501を取り囲むように、金型装置800、ゲートカット機550、冷却台600、アライメント機630、および完成品搬送機660が配設される。搬送機500の詳細は、後述する。
ゲートカット機550は、成形品を不用品から切り離す。不用品は、例えば、金型装置800の成形材料を注入する注入口812(スプルー811の上流端)からキャビティ空間801の入口までの流路において成形材料が固化したものである。不用品は、粉砕され、成形材料としてリサイクルされてもよいし、廃棄されてもよい。ゲートカット機550、アライメント機630および搬送ベース501は、この順でX方向正側からX方向負側に向けて一列に並ぶように、射出成形機10に隣設される。ゲートカット機550の詳細は、後述する。
冷却台600は、成形品を冷却する。冷却台600は、詳しくは後述するが、一次成形品および二次成形品を冷却する。一次成形品は、二次成形品を成形するためのインサート材(以下、「二次成形品用インサート材」とも呼ぶ。)として用いられ、金型装置800の内部にインサートされる。同様に、二次成形品は、三次成形品を成形するためのインサート材(以下、「三次成形品用インサート材」とも呼ぶ。)として用いられ、金型装置800の内部にインサートされる。つまり、冷却台600は、インサート材を冷却する。冷却台600は、アライメント機630を基準としてY方向正側(射出成形機10とは反対側)に配設される。冷却台600の詳細は、後述する。
アライメント機630は、金型装置800の内部へのインサート前に、インサート材の位置合わせを行う。位置合わせは、例えば、芯出しと、芯周りの回転とを含む。芯出しでは、インサート材の中心線を予め設定された位置に合わせる。芯周りの回転では、インサート材の中心線を中心にインサート材を回転させることにより、インサート材の向きを予め設定された向きに一致させる。アライメント機630は、上述の如く、射出成形機10に隣設される。アライメント機630の詳細は、後述する。
完成品搬送機660は、完成品(例えば三次成形品)を射出成形システム1の外部に搬送する。完成品搬送機660は、例えばベルトコンベアで構成される。完成品搬送機660は、X方向に延びる搬送路を形成し、X方向正側からX方向負側に向けて完成品を搬送する。完成品搬送機660および冷却台600は、この順でX方向正側からX方向負側に向けて一列に並ぶように配設される。
制御装置700は、射出成形機10の一部として設けられてもよいし、射出成形機10とは別に設けられてもよい。制御装置700は、射出成形機10を制御する成形機制御部710と、射出成形機10の周辺機器を制御する周辺機器制御部720とを備える。周辺機器制御部720は、ゲートカット機550、冷却台600、アライメント機630および完成品搬送機660などを制御する。なお、成形機制御部710と、周辺機器制御部720とは独立したコンピュータとして構成されてもよい。
(射出成形システムで製造される成形品)
図4は、一実施形態による射出成形システムで製造される一次成形品を示す図である。図4(A)は図4(C)のA−A線に沿った一次成形品の断面図、図4(B)は図4(C)のB−B線に沿った一次成形品の断面図、図4(C)は一次成形品の平面図である。なお、一次成形品20の構成は、図4に示す構成には限定されない。
一次成形品20は、詳しくは後述するが、金型装置800の第1キャビティ空間831(図9参照)において成形される。一次成形品20は、例えば、レンズ部21と、フランジ部24とを有する。レンズ部21は、円状の平坦面22と、平坦面22の片側に突出するドーム状の凸曲面23とを有する。レンズ部21は、線対称に形成される。その対称中心線は、円状の平坦面22の中心を通る、平坦面22に対し垂直な線である。
フランジ部24は、円環状に形成され、レンズ部21から径方向外方に突出する。フランジ部24は、レンズ部21の平坦面22と面一とされる第1板面25と、第1板面25を基準として凸曲面23と同じ側(図4(A)および図4(B)において上側)に配される第2板面26とを有する。第1板面25と第2板面26とは平行とされる。フランジ部24の外周には、第1切欠き27、第2切欠き28および第3切欠き29が周方向に間隔をおいて形成される。第1切欠き27と第2切欠き28とは、例えば180°ピッチで形成される。
一次成形品20は、金型装置800の内部で徐々に冷却され、金型装置800と接する表面から内部に向って徐々に固化される。本明細書では、最初に固化する部位から最後に固化する部位までの距離を、冷却距離と呼ぶ。冷却距離は、冷却時間の設定に用いられる。冷却距離が長いほど、冷却時間が長く設定される。
一次成形品20の冷却距離D1は、例えば、一次成形品20の体積がゼロに達するまで、一次成形品20の表面全体を均等に削ったときの深さとして求める。一次成形品20の表面全体を均等に徐々に削ると、一次成形品20は最終的に例えば面20Pになる(図4(A)および図4(B)参照)。この面20Pが、最後に固化する部位である。
一次成形品20の体積がゼロに達したときに、一次成形品20が面20Pになる場合、その面20Pを線や点にする作業は行わない。面20Pの全体が、一次成形品20の最後に固化する部位のためである。尚、一次成形品20の体積がゼロに達するときに、本実施形態では一次成形品20が面20Pになるが、一次成形品20が線または点になってもよい。
一次成形品20の冷却距離D1を求めるときに一次成形品20の表面を削る方向は、一次成形品20の表面に対し直交する方向である。
一次成形品20の冷却距離D1は、レンズ部21の厚さT1の半分と等しい。
図5は、一実施形態による射出成形システムで製造される二次成形品を示す図である。図5(A)は図5(C)のA−A線に沿った二次成形品の断面図、図5(B)は図5(C)のB−B線に沿った二次成形品の断面図、図5(C)は二次成形品の平面図である。なお、二次成形品30の構成は、図5に示す構成には限定されない。
二次成形品30は、詳しくは後述するが、一次成形品20をインサート材として金型装置800の第2キャビティ空間833(図10参照)の一部に配すると共に、第2キャビティ空間833の他の一部に液状の成形材料を充填することにより成形される。二次成形品30は、例えば、一次成形品20に加えて、一次成形品20の表面に積層される二次積層部31を有する。二次積層部31は、一次成形品20と同じ種類の樹脂で成形されてよく、一次成形品20と一体化されてよい。
二次積層部31の厚さT2は、一定である。本明細書において、厚さT2が一定であるとは、厚さT2の最大値が厚さT2の平均値の105%以下であり且つと厚さT2の最小値が厚さT2の平均値の95%以上であることを意味する。
二次積層部31は、レンズ部21の凸曲面23の全体を覆う。また、二次積層部31は、フランジ部24の第2板面26の内周部26aを覆う。第2板面26の外周部26bは、二次積層部31によって覆われない。第2板面26の外周部26bには、第1切欠き27、第2切欠き28および第3切欠き29などが形成されているためである。
二次積層部31は、レンズ部21の凸曲面23に接する凹曲面32と、金型装置800に接する凸曲面33とを有する。二次積層部31の凸曲面33は、レンズ部21の凸曲面23と同一の形状を有する。つまり、二次積層部31の凸曲面33は、レンズ部21の凸曲面23を相似拡大したものである。
二次積層部31は、金型装置800に接する凸曲面33と、一次成形品20に接する凹曲面32の両側から徐々に冷却される。凸曲面33と凹曲面32との距離T2は一定であるため、その距離T2の半分が冷却距離D2(D2=T2/2)となる。
二次成形品30の冷却距離D2は、二次成形において液体から固体になる部分(ここでは二次積層部31)の体積がゼロに達するまで、二次積層部31の表面全体を均等に削ったときの深さとして求める。
二次積層部31の表面全体を均等に徐々に削ると、二次積層部31は最終的に例えば面31Pになる(図5(A)および図5(B)参照)。この面31Pが、二次成形において最後に固化する部位である。
二次成形品30の冷却距離D2(D2=T2/2)は、一次成形品20の冷却距離D1よりも小さい。つまり、二次積層部31の厚さT2は、一次成形品20の冷却距離D1の2倍よりも小さい。
図6は、一実施形態による射出成形システムで製造される三次成形品を示す図である。図6(A)は図6(C)のA−A線に沿った三次成形品の断面図、図6(B)は図6(C)のB−B線に沿った三次成形品の断面図、図6(C)は三次成形品の平面図である。なお、三次成形品40の構成は、図6に示す構成には限定されない。
三次成形品40は、詳しくは後述するが、二次成形品30をインサート材として金型装置800の第3キャビティ空間835(図10参照)の一部に配すると共に、第3キャビティ空間835の他の一部に液状の成形材料を充填することにより成形される。三次成形品40は、例えば、二次成形品30に加えて、二次成形品30の表面に積層される三次積層部41等を有する。三次積層部41は、二次成形品30と同じ種類の樹脂で成形されてよく、二次成形品30と一体化されてよい。
三次積層部41の厚さT3は、一定である。本明細書において、厚さT3が一定であるとは、厚さT3の最大値が厚さT3の平均値の105%以下であり且つと厚さT3の最小値が厚さT3の平均値の95%以上であることを意味する。
三次積層部41は、図5に示す二次成形品30のうちレンズ部21の平坦面22およびフランジ部24の第1板面25の全体を覆うように形成される。三次積層部41は、例えば円盤状に形成される。三次積層部41は、二次成形品30に接する平坦面42と、金型装置800に接する平坦面43とを有する。これらの平坦面42、43は、平行とされる。
三次成形品40は、金型装置800に接する平坦面43と、二次成形品30に接する平坦面42との両側から冷却される。これらの平坦面42、43の距離T3は一定であるため、その距離T3の半分が冷却距離D3(D3=T3/2)となる。
三次成形品40の冷却距離D3は、三次成形において液体から固体になる部分(ここでは三次積層部41)の体積がゼロに達するまで、三次積層部41の表面全体を均等に削ったときの深さとして求める。
三次積層部41の表面全体を均等に徐々に削ると、三次積層部41は最終的に例えば平面41Pになる。この平面41Pは、三次積層部41の厚さ方向中心面であって、三次成形において最後に固化する部位である。
三次成形品40の冷却距離D3(D3=T3/2)は、一次成形品20の冷却距離D1よりも小さい。つまり、三次積層部41の厚さT3は、一次成形品20の冷却距離D1の2倍よりも小さい。
三次成形品40は、三次積層部41の他に、第1位置決め部44、第2位置決め部46および第3位置決め部48を有してよい。これらは、三次積層部41よりも小さいため、三次積層部41よりも先に固化する。第1位置決め部44、第2位置決め部46および第3位置決め部48は、三次積層部41と同様に、二次成形品30と同じ種類の樹脂で成形されてよく、二次成形品30と一体化されてよい。
第1位置決め部44は、二次成形品30の第1切欠き27の内部に形成され、円柱状の第1位置決めピン挿入孔45を有する。第1位置決めピン挿入孔45は、第1切欠き27よりも小さい。第1位置決めピン挿入孔45には、後述の第1位置決めピン82(図7参照)が嵌められる。
第2位置決め部46は、二次成形品30の第2切欠き28の内部に形成され、円柱状の第2位置決めピン挿入孔47を有する。第2位置決めピン挿入孔47は、第2切欠き28よりも小さい。第2位置決めピン挿入孔47には、後述の第2位置決めピン83(図7参照)が嵌められる。
第3位置決め部48は、二次成形品30の第3切欠き29の内部に形成され、平面視U字状の第3位置決めピン挿入溝49を有する。第3位置決めピン挿入溝49は、第3切欠き29よりも小さく形成される。第3位置決めピン挿入溝49には、後述の第3位置決めピン84(図7参照)が嵌められる。
図7は、一実施形態による三次成形品を含むヘッドライトユニットを示す断面図である。図7(A)は図6(A)に示す三次成形品の取付け状態を示し、図7(B)は図6(B)に示す三次成形品の取付け状態を示す。図7において、矢印は、光の伝播方向を示す。図7に示す三次成形品40は、自動車のヘッドライトユニット80の一部(具体的にはレンズ)として用いられる。以下、三次成形品40を、完成品40またはレンズ40とも呼ぶ。
レンズ40は、完成品レンズ部51と、完成品フランジ部54とを有する。完成品レンズ部51は、レンズ部21、フランジ部24の内周部24a、二次積層部31、および三次積層部41の一部を含む。一方、完成品フランジ部54は、フランジ部24の外周部24b、三次積層部41の残部、第1位置決め部44、第2位置決め部46および第3位置決め部48を含む。
完成品レンズ部51は、円状の平坦面52と、平坦面52の片側に突出するドーム状の凸曲面53とを有する。完成品レンズ部51は、線対称に形成される。その対称中心線は、円状の平坦面52の中心を通る、平坦面52に対し垂直な線である。
一方、完成品フランジ部54は、円環状に形成され、完成品レンズ部51から径方向外方に突出する。完成品フランジ部54は、完成品レンズ部51の平坦面52と面一とされる第1板面55と、第1板面55を基準として凸曲面53と同じ側(図7(A)および図7(B)において左側)に配される第2板面56とを有する。完成品フランジ部54には、第1位置決めピン挿入孔45、第2位置決めピン挿入孔47および第3位置決めピン挿入溝49が周方向に間隔をおいて形成される。第1位置決めピン挿入孔45と第2位置決めピン挿入孔47とは、例えば180°ピッチで形成される。
自動車のヘッドライトユニット80は、レンズ40と、レンズ40が取り付けられる円筒状の筒状部材81と、光源としてのLED89とを有する。レンズ40は、筒状部材81の軸方向一端面に取り付けられる。なお、筒状部材81はレンズ40と同様に樹脂で成形されてよく、レンズ40と筒状部材81とは溶着されてよい。
筒状部材81のレンズ40が取り付けられる面には、第1位置決めピン82、第2位置決めピン83および第3位置決めピン84が周方向に間隔をおいて設けられる。第1位置決めピン82と第2位置決めピン83とは、例えば180°ピッチで形成される。
第1位置決めピン82がレンズ40の第1位置決めピン挿入孔45に嵌められ、第2位置決めピン83がレンズ40の第2位置決めピン挿入孔47に嵌められ、第3位置決めピン84がレンズ40の第3位置決めピン挿入溝49に嵌められる。これにより、筒状部材81とレンズ40との位置決めがなされ、筒状部材81に対するレンズ40の向き(例えば軸周りの回転角度)が予め設定された向きになる。
完成品フランジ部54の第1板面55は、筒状部材81の軸方向一端面に当接される面であるため、高精度に成形される。また、完成品フランジ部54の第1位置決めピン挿入孔45、第2位置決めピン挿入孔47および第3位置決めピン挿入溝49は、位置決めに用いられるため、高精度に成形される。
LED89からの光は、筒状部材81の内部を通り、完成品レンズ部51の平坦面52に入射し、完成品レンズ部51の凸曲面53から出射する。完成品レンズ部51の平坦面52は、光の入射面であるため、高精度に成形される。また、完成品レンズ部51の凸曲面53は、光の出射面であるため、高精度に成形される。完成品レンズ部51の凸曲面53(つまり、二次積層部31の凸曲面33)は、その凸曲面53から出射する光の強度分布を調整するための光学パターンを有してもよい。
一方、完成品フランジ部54の第2板面56は、低精度に成形されても問題ない。そのため、本実施形態では、完成品フランジ部54の第2板面56において、一次成形品20の一部(詳細にはフランジ部24の外周部24b)が露出する(図7(B)参照)。
(金型装置)
図8は、一実施形態による可動金型を固定金型側から見た図である。図9は、図8のIX−IX線に沿った金型装置の断面図である。図10は、図8のX−X線に沿った金型装置の断面図である。なお、金型装置800の構成は、図8〜図10等に示す構成には限定されない。なお、本実施形態の金型装置800は第1キャビティ空間831、第2キャビティ空間833および第3キャビティ空間835を1つずつ有するが、第1キャビティ空間831、第2キャビティ空間833および第3キャビティ空間835の数は、1つには限定されず複数でもよいし、また、同数ではなくてもよい。
可動金型820は、固定金型810との分割面821に、固定金型810に形成されるスプルー811(図1および図2参照)の下流端から放射状に延びる第1ランナー822、第2ランナー823および第3ランナー824を有する(図8参照)。スプルー811は、図1および図2に示すように固定金型810の注入口812からX方向に真っ直ぐ延びる。第1ランナー822、第2ランナー823および第3ランナー824は、周方向に等ピッチ(例えば120°ピッチ)で配設される。
第1ランナー822の下流端には、図8に示すように第1ゲート825が設けられる。第1ゲート825は、第1キャビティ空間831の入口である。第1キャビティ空間831は、図9に示すように可動金型820と固定金型810との間に形成される。第1キャビティ空間831は、一次成形品20を成形する空間であり、一次成形品20と同じ形状、同じ寸法を有する。
第2ランナー823の下流端には、図8に示すように第2ゲート826が設けられる。第2ゲート826は、第2キャビティ空間833の入口である。第2キャビティ空間833は、図10に示すように可動金型820と固定金型810との間に形成される。第2キャビティ空間833は、二次成形品30を成形する空間であり、二次成形品30と同じ形状および同じ寸法を有する。
第2キャビティ空間833は、図10に示すように固定金型810に形成される吸引路814を介して真空ポンプ815と接続される。真空ポンプ815を作動させると、吸引路814の気圧が負圧になり、二次成形品用インサート材としての一次成形品20が固定金型810に吸着される。固定金型810は、一次成形品20のフランジ部24のみと接触し、一次成形品20のレンズ部21との間に僅かな隙間を形成する。一次成形品20は、レンズ部21の凸曲面23を可動金型820に向けて、固定金型810に吸着される。このとき、吸引路814の気圧を気圧検出器816によって検出し、その検出値に基づき吸着の成否を判定してもよい。その後、真空ポンプ815の作動を解除すると、吸引路814の気圧が大気圧に戻り、固定金型810への一次成形品20の吸着が解除される。
第2キャビティ空間833の一部は、一次成形品20で占められる。一次成形品20は型開時に固定金型810に吸着され、その状態で型閉および型締がなされる。型締時に、一次成形品20と可動金型820との間には、二次積層部31を成形するための空間31Sが形成される。この空間31Sに充填された成形材料は、可動金型820に密着する。そのため、二次成形品30は、型開工程において可動金型820と共に移動する。二次成形品30が可動金型820と共に確実に移動するように、固定金型810への一次成形品20の吸着は型開工程の開始前に解除される。
第2キャビティ空間833の壁面834(図10参照)は、二次成形品30において一次成形品20の一部が露出するように、一次成形品20の表面の一部に接触する。完成品において、一次成形品20の一部を露出できる。例えば、完成品フランジ部54の第2板面56は、上述の如く、低精度に成形されても問題ない。そのため、完成品フランジ部54の第2板面56において、一次成形品20の一部(詳細にはフランジ部24の外周部24b)が露出する(図7(B)参照)。一方、完成品レンズ部51の凸曲面53は、光の出射面であって精度が必要な面であるため、二次積層部31の凸曲面33によって構成する。なお、本実施形態では三次成形品40が完成品であるが、二次成形品30が完成品であってもよい。
第3ランナー824の下流端には、図8に示すように第3ゲート827が設けられる。第3ゲート827は、第3キャビティ空間835の入口である。第3キャビティ空間835は、図10に示すように可動金型820と固定金型810との間に形成される。第3キャビティ空間835は、三次成形品40を成形する空間であり、三次成形品40と同じ形状および同じ寸法を有する。
第3キャビティ空間835は、図10に示すように固定金型810に形成される吸引路817を介して真空ポンプ818と接続される。真空ポンプ818を作動させると、吸引路817の気圧が負圧になり、三次成形品用インサート材としての二次成形品30が固定金型810に吸着される。固定金型810は、二次成形品30のフランジ部24のみと接触し、二次成形品30の二次積層部31との間に僅かな隙間を形成する。二次成形品30は、レンズ部21の平坦面22を可動金型820に向けて、固定金型810に吸着される。このとき、吸引路817の気圧を気圧検出器819によって検出し、その検出値に基づき吸着の成否を判定してもよい。その後、真空ポンプ818の作動を解除すると、吸引路817の気圧が大気圧に戻り、固定金型810への二次成形品30の吸着が解除される。
第3キャビティ空間835の一部は、二次成形品30で占められる。二次成形品30は型開時に固定金型810に吸着され、その状態で型閉および型締がなされる。型締時に、二次成形品30と可動金型820との間には、三次積層部41等を成形するための空間41Sが形成される。この空間41Sに充填された成形材料は、可動金型820に密着する。そのため、三次成形品40は、型開工程において可動金型820と共に移動する。三次成形品40が可動金型820と共に確実に移動するように、固定金型810への二次成形品30の吸着は型開工程の開始前に解除される。
第3キャビティ空間835の壁面836(図10参照)は、三次成形品40において一次成形品20の一部が露出するように、一次成形品20の表面の一部に接触する。完成品において、一次成形品20の一部を露出できる。例えば、完成品フランジ部54の第2板面56は、上述の如く、低精度に成形されても問題ない。そのため、完成品フランジ部54の第2板面56において、一次成形品20の一部(詳細にはフランジ部24の外周部24b)が露出する(図7(B)参照)。一方、完成品レンズ部51の平坦面52は、光の入射面であって精度が必要な面であるため、三次積層部41の平坦面43によって構成する。
以上説明したように、本実施形態によれば、図5に示すように、一次成形品20の表面に二次積層部31を積層成形して二次成形品30を成形する。二次積層部31が一定の厚さT2を有することで、一次成形品20の二次積層部31が積層成形される表面(例えば凸曲面23)と、二次積層部31の一次成形品20に接する表面(例えば凹曲面32)とは反対側の表面(例えば凸曲面33)とが同じ表面形状を有する。これにより、下記(1)〜(2)の効果が得られる。
(1)二次積層部31は一定の厚さT2を有するため、二次積層部31が成形される空間31S(図10参照)も一定の厚さを有する。従って、空間31Sの入口から先の成形材料の流路の厚さが一定である。仮に流路の厚さが不均一である場合、厚さの薄い方向よりも厚さの厚い方向に成形材料が流れやすい。本実施形態によれば流路の厚さが一定であるため、成形材料の流動先端を制御しやすく、成形不良の発生を抑制できる。
(2)二次積層部31は一定の厚さT2を有するため、二次積層部31を厚さ方向両側から均一に冷却できる。そのため、二次成形において成形材料の冷却収縮を均一に生じさせることができ、シワの発生を抑制できる。従って、シワの少ない外表面が得られる。また、二次積層部31が一次成形品20の表面の少なくとも一部(例えば凸曲面23)を覆うため、一次成形品20の凸曲面23には精度が不要になる。そのため、一次成形品20の急冷が可能になり、一次成形品20の冷却時間を大幅に短縮できる。一次成形品20の急冷によって冷却収縮のムラが生じ、シワが発生したとしても、発生したシワを二次積層部31で覆うことができるためである。
本実施形態によれば、一次成形品20はレンズ40の一部を構成するものであって、一次成形品20のレンズ面(例えば凸曲面23)に二次積層部31が積層成形される。一次成形品20のレンズ面には精度が不要になる。そのため、厚いレンズ部21の急冷が可能になる。レンズ部21の急冷によって冷却収縮のムラが生じ、シワが発生したとしても、発生したシワを二次積層部31で覆うことにより、完成品レンズ部51のレンズ面(例えば凸曲面53)の精度を改善できる。
ところで、二次積層部31は、一次成形品20とは異なり、精度が要求される部分を有するため、急冷することができない。そのため、金型装置800の内部で成形品を冷却する冷却工程の時間は、一次成形品20の冷却距離D1ではなく、二次積層部31の冷却距離D2で決まる。二次積層部31の冷却距離D2が短いほど、冷却工程の時間を短縮できる。
本実施形態によれば、二次積層部31は、一次成形品20の冷却距離D1の2倍よりも小さく且つ一定の厚さT2を有する。従って、急冷できない二次成形品30の冷却距離D2(D2=T2/2)が、急冷できる一次成形品20の冷却距離D1よりも小さい。そのため、金型装置800の内部で成形品を冷却する冷却工程の時間を短縮できる。
本実施形態によれば、同じ金型装置800の内部で一次成形品20(図4参照)および二次成形品30(図5参照)を同時に成形する間に、予め成形した一次成形品20を金型装置800の外部で冷却する。金型装置800の内部で成形品を冷却する冷却工程の時間を、比較的小さい冷却距離D2を有する二次成形品30に合わせて設定できる。比較的大きい冷却距離D1を有する一次成形品20は、型開時に金型装置800からの取り出しが可能な程度に固化していればよい。一次成形品20の残りの固化を金型装置800の外部で行うことにより、上記冷却工程の時間を短縮でき、成形サイクルを短縮できる。また、金型装置800の内部で一次成形品20を成形する処理と、予め成形された一次成形品20を金型装置800の外部で冷却する処理とを同時に行うことにより、完成品の生産速度を向上できる。
なお、本実施形態では、同じ金型装置800の内部で一次成形品20および二次成形品30を同時に成形するが、異なる金型装置を用いて一次成形品20と二次成形品30とを別々に成形してもよい。例えば、一次成形専用の金型装置を用いて一次成形品20を成形した後、一次成形品20を一次成形専用の金型装置から取り出し、二次成形専用の金型装置の内部に一次成形品20をインサートしてもよい。この場合も、少なくとも上記(1)〜(2)の効果は得られる。
本実施形態によれば、図6に示すように、二次成形品30の二次積層部31が積層成形される表面(例えば凸曲面23)とは反対側の表面(例えば平坦面22および第1板面25)に三次積層部41を積層成形して三次成形品40を成形する。三次積層部41が一定の厚さT3を有することで、一次成形品20の三次積層部41が積層成形される表面と、三次積層部41の一次成形品20に接する表面(例えば平坦面42)とは反対側の表面(例えば平坦面43)とが同じ表面形状を有する。これにより、下記(3)〜(4)の効果が得られる。
(3)三次積層部41は一定の厚さT3を有するため、三次積層部41が成形される空間41S(図10参照)も一定の厚さを有する。従って、空間41Sの入口から先の成形材料の流路の厚さが一定である。仮に流路の厚さが不均一である場合、厚さの薄い方向よりも厚さの厚い方向に成形材料が流れやすい。本実施形態によれば流路の厚さが一定であるため、成形材料の流動先端を制御しやすく、成形不良の発生を抑制できる。
(4)三次積層部41は一定の厚さT3を有するため、三次積層部41を厚さ方向両側から均一に冷却できる。そのため、三次成形において成形材料の冷却収縮を均一に生じさせることができ、シワの発生を抑制できる。従って、シワの少ない外表面が得られる。また、三次積層部41が一次成形品20の表面の少なくとも一部(例えば平坦面22および第1板面25)を覆うため、一次成形品20の平坦面22および第1板面25には精度が不要になる。そのため、一次成形品20の急冷が可能になり、一次成形品20の冷却時間を大幅に短縮できる。一次成形品20の急冷によって冷却収縮のムラが生じ、シワが発生したとしても、発生したシワを三次積層部41で覆うことができるためである。三次積層部41は、一次成形品20の二次積層部31が積層成形される表面とは反対側の表面に積層成形されるため、二次積層部31で覆うことができない部分のシワを覆うことができる。
ところで、三次積層部41は、一次成形品20とは異なり、精度が要求される部分を有するため、急冷することができない。そのため、金型装置800の内部で成形品を冷却する冷却工程の時間は、一次成形品20の冷却距離D1ではなく、三次積層部41の冷却距離D3で決まる。三次積層部41の冷却距離D3が短いほど、冷却工程の時間を短縮できる。
本実施形態によれば、三次積層部41は、一次成形品20の冷却距離D1の2倍よりも小さく且つ一定の厚さT3を有する。従って、急冷できない三次成形品40の冷却距離D3(D3=T3/2)が、急冷できる一次成形品20の冷却距離D1よりも小さい。そのため、金型装置800の内部で成形品を冷却する冷却工程の時間を短縮できる。
本実施形態によれば、同じ金型装置800の内部で一次成形品20および三次成形品40を同時に成形する間に、予め成形した一次成形品20を金型装置800の外部で冷却する。金型装置800の内部で成形品を冷却する冷却工程の時間を、比較的小さい冷却距離D3を有する三次成形品40に合わせて設定できる。比較的大きい冷却距離D1を有する一次成形品20は、型開時に金型装置800からの取り出しが可能な程度に固化していればよい。一次成形品20の残りの固化を金型装置800の外部で行うことにより、上記冷却工程の時間を短縮でき、成形サイクルを短縮できる。また、金型装置800の内部で一次成形品20を成形する処理と、予め成形された一次成形品20を金型装置800の外部で冷却する処理とを同時に行うことにより、完成品の生産速度を向上できる。
なお、本実施形態では、同じ金型装置800の内部で一次成形品20および三次成形品40を同時に成形するが、異なる金型装置を用いて一次成形品20と三次成形品40とを別々に成形してもよい。例えば、一次成形専用の金型装置を用いて一次成形品20を成形した後、一次成形品20を一次成形専用の金型装置から取り出し、三次成形専用の金型装置の内部に一次成形品20をインサートしてもよい。この場合も、少なくとも上記(3)〜(4)の効果は得られる。
ところで、本実施形態の完成品(例えばレンズ40)は、複数回(例えば3回)の射出成形によって製造される。ここで、2回目以降の射出成形では、前回の射出成形で得られた成形品をインサート材として金型装置800のキャビティ空間の一部に配すると共にキャビティ空間の他の一部に液状の成形材料を充填することにより、成形品を成形する。射出成形の回数が増える度に、キャビティ空間の容積が大きくなり、成形品の体積が大きくなる。
例えば、2回目の射出成形では、図10に示すように、一次成形品20をインサート材として第2キャビティ空間833の一部に配すると共に、第2キャビティ空間833の他の一部(例えば空間31S)に液状の成形材料を充填することにより、二次成形品30を成形する。二次成形品30は一次成形品20に加えて二次積層部31を有するため、第2キャビティ空間833の容積は第1キャビティ空間831(図9参照)の容積よりも大きい。
また、3回目の射出成形では、図10に示すように、二次成形品30をインサート材として第3キャビティ空間835の一部に配すると共に、第3キャビティ空間835の他の一部(例えば空間41S)に液状の成形材料を充填することにより、三次成形品40を形成する。三次成形品40は二次成形品30に加えて三次積層部41を有するため、第3キャビティ空間835の容積は第2キャビティ空間833の容積よりも大きい。
このように、m回目の射出成形では、m−1回目の射出成形で得られた成形品をインサート材としてキャビティ空間の一部に配すると共に、キャビティ空間の他の一部に液状の成形材料を充填する。mは、2以上n以下の自然数である。nは、完成品40が得られるまでの射出成形の合計回数であって、2以上の自然数である。m回目の射出成形で用いられるキャビティ空間の容積はm−1回目の射出成形で用いられるキャビティ空間の容積よりも大きく、n回目の射出成形で用いられるキャビティ空間が最も大きい容積を有する。
インサート材は、キャビティ空間の内部において、液状の成形材料からの熱を受け、液状の成形材料との境界の近傍において軟化する。軟化した部分は、応力によって変形しうる。インサート材を変形させる応力としては、液状の成形材料の充填圧の他、型締力による圧縮応力等が挙げられる。インサート材は、キャビティ空間の内部での位置ずれを防止するため、型開閉方向視でキャビティ空間よりも僅かに大きい輪郭を有し、型締力によって圧縮されキャビティ空間の壁面に押付けられる。
例えば、二次成形品用インサート材としての一次成形品20のフランジ部24は、第2キャビティ空間833の内部での位置ずれを防止するため、型開閉方向視で第2キャビティ空間833よりも僅かに大きい輪郭を有する。フランジ部24の外周部24bは、型締力によって圧縮され、第2キャビティ空間833の壁面に押付けられる。
同様に、三次成形品用インサート材としての二次成形品30のフランジ部24は、第3キャビティ空間835の内部での位置ずれを防止するため、型開閉方向視で第3キャビティ空間835よりも僅かに大きい輪郭を有する。フランジ部24の外周部24bは、型締力によって圧縮され、第3キャビティ空間835の壁面に押付けられる。
位置決め部の変形を抑制するため、複数回の射出成形のうちいずれか1回の射出成形において、1以上の位置決め部の全体が成形される。本明細書において、位置決め部とは、n回目の射出成形において得られる成形品(すなわち完成品)に備えられるものであって、完成品が装着される相手部品の凸部または凹部に嵌められ相手部品との位置を決めるものである。位置決め部は、相手部品の凸部が嵌められる凹部、および相手部品の凹部が嵌められる凸部の少なくとも一方を有する。
本実施形態では、レンズ40(図7参照)が完成品であり、nが3である。第1位置決め部44、第2位置決め部46および第3位置決め部48は、相手部品の凸部が嵌められる凹部(具体的には孔または溝)を有する。なお、位置決め部の数は、3つには限定されず、1つまたは2つでもよいし、4つ以上でもよい。
また、本実施形態では筒状部材81(図7参照)が相手部品である。第1位置決めピン82、第2位置決めピン83および第3位置決めピン84が相手部品の凸部である。なお、凸部の数は、位置決め部の数に応じたものであればよく、3つには限定されない。
なお、本実施形態では、凸部が筒状部材81に設けられ、凹部がレンズ40に設けられるが、凸部と凹部の配置は逆でもよい。つまり、凸部がレンズ40に設けられ、凹部が筒状部材81に設けられてもよい。また、凸部と凹部がレンズ40に設けられ、凹部と凸部が筒状部材81に設けられてもよい。
本実施形態によれば、複数回の射出成形のうちの1回の射出成形において、例えば第1位置決め部44の全体が成形される。そのため、第1位置決め部44の全体を複数回に分けて成形する場合とは異なり、第1位置決めピン挿入孔45の全体を1回で成形できる。第1位置決めピン挿入孔45の全体を固化した成形材料で保護でき、その後に仮に射出成形が行われたとしても、溶融した成形材料からの熱が第1位置決めピン挿入孔45まで伝達することを抑制できる。従って、第1位置決めピン挿入孔45の変形を抑制でき、第1位置決めピン挿入孔45を精度良く成形できる。
第2位置決め部46は、第1位置決め部44と同様に成形できる。具体的には、複数回の射出成形のうちの1回の射出成形において、第2位置決め部46の全体が成形される。そのため、第2位置決めピン挿入孔47の全体を1回で成形でき、その後に仮に射出成形が行われたとしても、溶融した成形材料からの熱が第2位置決めピン挿入孔47まで伝達することを抑制できる。従って、第2位置決めピン挿入孔47の変形を抑制でき、第2位置決めピン挿入孔47を精度良く成形できる。
第3位置決め部48は、第1位置決め部44と同様に成形できる。具体的には、複数回の射出成形のうちの1回の射出成形において、第3位置決め部48の全体が成形される。そのため、第3位置決めピン挿入溝49の全体を1回で成形でき、その後に仮に射出成形が行われたとしても、溶融した成形材料からの熱が第3位置決めピン挿入溝49まで伝達することを抑制できる。従って、第3位置決めピン挿入溝49の変形を抑制でき、第3位置決めピン挿入溝49を精度良く成形できる。
ここでは、2回目以降の射出成形において、インサート成形が行われる場合の効果(熱変形の抑制)について説明した。但し、本発明はこれに限定されない。例えば、複数回の射出成形で別々に成形された複数の成形品を接着剤で組み立てる場合にも、1回の射出成形において一の位置決め部の全体が成形されれば、一の位置決め部が接着剤で組み立てられる場合とは異なり、接着ずれなどの不具合を防止できる。
なお、本実施形態では、複数回の射出成形のうちの1回の射出成形において、複数の位置決め部の全体が成形されるが、1つ以上の位置決め部の全体が成形されればよい。例えば1回目の射出成形において第1位置決め部44の全体が成形され、2回目の射出成形において第2位置決め部46の全体が成形され、3回目の射出成形において第3位置決め部48の全体が成形されてもよい。各位置決め部は、各位置決め部の場所における最後の射出成形で成形されればよい。
本実施形態によれば、第1切欠き27を有する二次成形品30(図5参照)を成形し、その後、第1切欠き27を有する二次成形品30をインサート材として金型装置800の第3キャビティ空間835に配する。第3キャビティ空間835において第1切欠き27に成形材料を充填することにより、第1切欠き27に第1位置決め部44(図6(C)参照)が成形される。完成品40の欠損部に第1位置決め部44を成形するため、完成品40の欠損部を第1位置決め部44で埋めることができ、完成品40の形状や寸法を変更することなく第1位置決め部44を成形できる。
第2位置決め部46(図6(C)参照)は、第1位置決め部44と同様に成形できる。具体的には、第2切欠き28を有する二次成形品30(図5参照)を成形し、その後、第2切欠き28を有する二次成形品30をインサート材として金型装置800の第3キャビティ空間835に配する。第3キャビティ空間835において第2切欠き28に成形材料を充填することにより、第2切欠き28に第2位置決め部46の全体が成形される。そのため、第1位置決め部44と同様に、完成品40の形状や寸法を変更することなく第2位置決め部46を成形できる。
第3位置決め部48(図6(C)参照)は、第1位置決め部44と同様に成形できる。具体的には、第3切欠き29を有する二次成形品30(図5参照)を成形し、その後、第3切欠き29を有する二次成形品30をインサート材として金型装置800の第3キャビティ空間835に配する。第3キャビティ空間835において第3切欠き29に成形材料を充填することにより、第3切欠き29に第3位置決め部48の全体が成形される。そのため、第1位置決め部44と同様に、完成品40の形状や寸法を変更することなく第3位置決め部48を成形できる。
完成品40を成形する最終回(n回目)よりも前の回の射出成形において第1位置決め部44の全体が成形されてもよいが、本実施形態では最終回(n回目)の射出成形において第1位置決め部44の全体が成形される。n−1回目の射出成形までに成形される成形品は、第1位置決め部44を全く有しない。そのため、1回目からn回目までの射出成形においてインサート材の任意の部位が変形したとしても、その変形によって第1位置決め部44が変形することはない。従って、インサート材の変形による、第1位置決め部44の変形を防止できる。
同様に、完成品40を成形する最終回(n回目)よりも前の回の射出成形において第2位置決め部46の全体が成形されてもよいが、本実施形態では最終回(n回目)の射出成形において第2位置決め部46の全体が成形される。そのため、第1位置決め部44と同様に、インサート材の変形による、第2位置決め部46の変形を防止できる。
同様に、完成品40を成形する最終回(n回目)よりも前の回の射出成形において第3位置決め部48の全体が成形されてもよいが、本実施形態では最終回(n回目)の射出成形において第3位置決め部48の全体が成形される。そのため、第1位置決め部44と同様に、インサート材の変形による、第3位置決め部48の変形を防止できる。
なお、本実施形態では完成品40を成形する最終回(n回目)の射出成形において全ての位置決め部の全体を液状の成形材料から成形するが、n回目の射出成形において1つ以上の位置決め部の全体を液状の成形材料から成形すればよい。例えば1回目の射出成形において第1位置決め部44の全体を成形し、2回目の射出成形において第2位置決め部46の全体を成形し、3回目の射出成形において第3位置決め部48の全体を成形してもよい。少なくとも第3位置決め部48については、インサート材の変形による変形を防止できる。
なお、本実施形態では同一の金型装置800を用いて一次成形品20(図4参照)、二次成形品30(図5参照)および三次成形品40(図6参照)を成形するが、本発明はこれに限定されない。例えば、一次成形専用の金型装置を用いて一次成形品20を成形した後、一次成形品20を一次成形専用の金型装置から取り出し、二次成形専用の金型装置の内部に一次成形品20をインサートしてもよい。また、二次成形専用の金型装置を用いて二次成形品30を成形した後、二次成形品30を二次成形専用の金型装置から取り出し、三次成形専用の金型装置の内部に二次成形品30をインサートしてもよい。但し、同一の金型装置800を用いて一次成形品20、二次成形品30および三次成形品40を成形すると、射出成形機10の数が1つで済むため、射出成形システム1の設置面積が小さくて済む。
(金型装置の温度調整)
図11は、一実施形態による金型装置の温調流路を示す斜視図である。金型装置800は、第1キャビティ空間831と第2キャビティ空間833と第3キャビティ空間835の温度を調整する温度調整部850を有する。温度調整部850は、第1キャビティ空間831の温度を、第2キャビティ空間833の温度および第3キャビティ空間835の温度よりも低く調整する。温度調整部850は、電気ヒータなどで構成されてもよいが、本実施形態では温調流路などで構成される。
温度調整部850は、例えば、第1キャビティ空間831の温度を調整する第1温調流路860と、第2キャビティ空間833および第3キャビティ空間835の温度を調整する第2温調流路870と、第1温調流路860及び第2温調流路870に温調流体を供給する温調流体供給部855とを有する。
温調流体供給部855は、第1温調流路860に供給する温調流体の温度を調節する第1温調器851と、第2温調流路870に供給する温調流体の温度を調節する第2温調器852とを備える。以下、第1温調器851によって温調される温調流体を「第1温調流体」とも呼び、第2温調器852によって温調される温調流体を「第2温調流体」とも呼ぶ。第1温調流体および第2温調流体としては、例えば水が用いられる。
第1温調器851は、第1温調流体を、予め設定された第1温度に調節したうえで、可動金型820の内部に形成される第1温調流路860に供給する。第1温調流体は、第1温調流路860を流れながら可動金型820の温度を調整し、可動金型820の外部に設けられる排出管853に排出される。
一方、第2温調器852は、第2温調流体を、予め設定された第2温度に調節したうえで、可動金型820の内部に形成される第2温調流路870および第3温調流路880に供給する。第2温調流体は、第2温調流路870および第3温調流路880を流れながら可動金型820の温度を調整し、可動金型820の外部に設けられる排出管854に排出される。
第1温調流路860の一部(例えば後述の分割面温調部861)、第2温調流路870および第3温調流路880は、X方向に垂直な同一の平面890(図9および図10参照)上に配される。この平面890は、可動金型820の固定金型810との分割面821に対し平行とされる。つまり、第1温調流路860の一部、第2温調流路870および第3温調流路880は、可動金型820の分割面821から等距離の位置に配される。
一方、第1温調流路860の残部(例えば後述の供給部862および排出部863)は、平面890を基準として分割面821とは反対側に配される。つまり、第1温調流路860の残部は、第1温調流路860の一部、第2温調流路870および第3温調流路880よりも、可動金型820の分割面821から遠くに配される。従って、分割面821の温度分布は、第1温調流路860の一部(例えば分割面温調部861)、第2温調流路870および第3温調流路880の配置に応じた温度分布となる。
第1キャビティ空間831、第2キャビティ空間833および第3キャビティ空間835は、可動金型820の分割面821に形成される。この分割面821の温度分布は、上述の如く、第1温調流路860の一部(例えば分割面温調部861)、第2温調流路870および第3温調流路880の配置に応じた温度分布となる。
第1温調流路860は、図8に示すようにX方向視で、第1キャビティ空間831と重なる分割面温調部861を有する。この分割面温調部861と、第2温調流路870と第3温調流路880とが、同一の平面890(図9および図10参照)上に配される。第1温調流体は、第1温調流路860の分割面温調部861を流れながら可動金型820の温度を調整することにより、第1キャビティ空間831の温度を調整する。分割面温調部861は、例えばY方向に真っ直ぐ延びる。
第1温調流路860は、平面890(図9および図10参照)を基準として分割面821とは反対側に、分割面温調部861に第1温調流体を供給する供給部862(図11参照)と、分割面温調部861から第1温調流体を排出する排出部863(図11参照)とを有する。
供給部862は、Y方向視で例えばL字状に形成され、分割面温調部861の一端からX方向負側に延び、途中からZ方向正側に延びる。供給部862は、第1温調流体による二次成形品30や三次成形品40の温度調整を抑制するため、図8に示すようにX方向視で第2キャビティ空間833および第3キャビティ空間835とは重ならないように配される。
排出部863は、供給部862と同様に、Y方向視で例えばL字状に形成され、分割面温調部861の他端からX方向負側に延び、途中からZ方向正側に延びる。排出部863は、第1温調流体による二次成形品30や三次成形品40の温度調整を抑制するため、図8に示すようにX方向視で第2キャビティ空間833および第3キャビティ空間835とは重ならないように配される。
第2温調流路870は、図8に示すようにX方向視で、第2キャビティ空間833および第3キャビティ空間835と重なり、且つ第1キャビティ空間831と重ならないように配される。第2温調流体は、第2温調流路870を流れながら可動金型820の温度を調整することにより、第2キャビティ空間833および第3キャビティ空間835の温度を調整する。第2温調流路870は、可動金型820のY方向一端面から、可動金型820のY方向他端面にかけて、例えばY方向に真っ直ぐ延びる。
一方、第3温調流路880は、図8に示すようにX方向視で、第1キャビティ空間831、第2キャビティ空間833および第3キャビティ空間835のいずれにも重ならないように配される。第3温調流路880は、図8に示すようにX方向視で、第2温調流路870との間に、第1温調流路860の分割面温調部861を挟むように配され、分割面温調部861を迂回するように配される。第2温調流体は、第3温調流路880を流れながら可動金型820の温度を調整することにより、第1キャビティ空間831の周囲の温度を調整する。
第3温調流路880は、例えば、可動金型820のY方向一端面からY方向正側に延びる第1平行部881と、可動金型820のY方向他端面からY方向負側に延びる第2平行部882とを有する。第1平行部881と第2平行部882とは、同一直線上に配される。第3温調流路880は、第1平行部881と第2平行部882との間に、X方向視でU字状に形成されるU字状部883を有する。U字状部883は、第1平行部881と第2平行部882とを結ぶ直線を基準として、第2温調流路870とは反対側に配される。X方向視で、U字状部883の内部に、第1キャビティ空間831が配される。
なお、本実施形態の第2温調流体は、第2キャビティ空間833および第3キャビティ空間835の両方の温度を調整するが、第2キャビティ空間833のみの温度を調整してもよい。この場合、温調流体供給部855は、第3キャビティ空間835の温度を調整する第3温調流体を、金型装置800の内部に供給する。温調流体供給部855は、第2温調流体の温度と第3温調流体の温度とを独立に調節するため、第2温調流体の温度を調節する第2温調器と、第3温調流体の温度を調節する第3温調器とを有してもよい。
以上説明したように、本実施形態によれば、温度調整部850によって第1キャビティ空間831の温度が第2キャビティ空間833の温度よりも低く調整される。比較的低温の第1キャビティ空間831で一次成形品20が成形され、比較的高温の第2キャビティ空間833で二次成形品30が成形される。そのため、比較的大きい冷却距離D1を有する一次成形品20を、比較的小さい冷却距離D2を有する二次成形品30に比べて急冷できる。一次成形品20が金型装置800から取り出し可能な程度に固化するまでの待ち時間を短縮でき、成形サイクルを短縮できる。また、比較的高温の第2キャビティ空間833で徐冷される二次成形品30の冷却距離D2が小さいため、冷却工程の時間を短縮できる。二次成形品30の冷却距離D2が小さいほど、冷却工程の時間を短縮できる。
なお、本実施形態では第1キャビティ空間831で成形される第1成形品が一次成形品20であり、第2キャビティ空間833で成形される第2成形品が二次成形品30であるが、本発明はこれに限定されない。第1成形品の冷却距離が、第2成形品の冷却距離よりも大きければよい。例えば、第1成形品と第2成形品とは、金型装置800の外部で組み立てられてもよい。また、第1成形品と第2成形品とは、異なる用途の商品として、分離された状態で出荷されてもよい。いずれにしても、成形サイクルを短縮できる。
本実施形態によれば、温度調整部850によって第1キャビティ空間831の温度が第2キャビティ空間833の温度のみならず第3キャビティ空間835のよりも低く調整される。比較的低温の第1キャビティ空間831で一次成形品20が成形され、比較的高温の第3キャビティ空間835で三次成形品40が成形される。そのため、比較的大きい冷却距離D1を有する一次成形品20を、比較的小さい冷却距離D3を有する三次成形品40に比べて急冷できる。一次成形品20が金型装置800から取り出し可能な程度に固化するまでの待ち時間を短縮でき、成形サイクルを短縮できる。また、比較的高温の第3キャビティ空間835で徐冷される三次成形品40の冷却距離D3が小さいため、冷却工程の時間を短縮できる。三次成形品40の冷却距離D3が小さいほど、冷却工程の時間を短縮できる。
なお、本実施形態では第1キャビティ空間831で成形される第1成形品が一次成形品20であり、第3キャビティ空間835で成形される第3成形品が三次成形品40であるが、本発明はこれに限定されない。第1成形品の冷却距離が、第3成形品の冷却距離よりも大きければよい。例えば、第1成形品と第3成形品とは、金型装置800の外部で組み立てられてもよい。また、第1成形品と第3成形品とは、異なる用途の商品として、分離された状態で出荷されてもよい。いずれにしても、成形サイクルを短縮できる。
可動金型820は、可動金型本体と、第1キャビティ空間831を形成する第1キャビティ金型部と、第2キャビティ空間833を形成する第2キャビティ金型部と、第3キャビティ空間835を形成する第3キャビティ金型部とを有する。第1キャビティ金型部、第2キャビティ金型部、第3キャビティ金型部は、それぞれ、可動金型本体に交換可能に取り付けられ、破損時に交換することができる。可動金型本体から第1キャビティ金型部への熱の伝達を抑制するため、可動金型本体と第1キャビティ金型部との間には所定の隙間(つまり空気層)が形成されてよい。空気層が断熱層として機能する。
(搬送機)
図12は、一実施形態による搬送機の全体を示す図である。図13は、図12の搬送機の先端部である保持ユニットを示す斜視図である。図14は、図13に示す保持ユニットをx方向負側から見た図である。図15は、図13に示す保持ユニットをx方向正側から見た図である。図13〜図15において、x方向、y方向およびz方向は互いに直交する方向である。y方向は回転軸部511の軸方向である。保持ユニット510がインサート材を固定金型810に引き渡す時、図16(A)に示すようにx方向とX方向とが同じ方向とされ、y方向とY方向とが同じ方向とされ、且つz方向とZ方向とが同じ方向とされる。図16は、図13に示す保持ユニットの動作を示す図である。図16(A)は、図13に示す保持ユニットがインサート材を固定金型に引き渡す時の状態を示す側面図である。図16(B)は、図13に示す保持ユニットが固定金型に吸着されているインサート材を加熱する時の状態を示す側面図である。なお、保持ユニット510の構成は、図13〜図16に示す構成には限定されない。
搬送機500は、例えば図12に示すように、多関節ロボットで構成される。多関節ロボットは、例えば搬送ベース501と、搬送ベース501から伸びる複数のアーム502〜504を有する。搬送ベース501とアーム502の基端部とが連結され、アーム502の先端部とアーム503の基端部とが連結され、アーム503の先端部とアーム504の基端部とが連結される。アーム504の先端部には保持ユニット510が設けられる。保持ユニット510は、搬送ベース501に対し、X方向、Y方向、Z方向に移動自在とされる。また、保持ユニット510は、水平軸周りに回転自在とされると共に、鉛直軸周りに回転自在とされる。なお、搬送機500はパラレルリンクロボットなどで構成されてもよく、そのロボットの構成は特に限定されない。
保持ユニット510は、図16に示すように、可動金型820から取り出される成形品を保持する成形品保持部520、および固定金型810に引き渡すインサート材を保持するインサート材保持部530を含む。そのため、例えば、インサート材保持部530がインサート材を保持した状態で、成形品保持部520が可動金型820から成形品を受け取ることができる。また、成形品保持部520が成形品を保持した状態で、インサート材保持部530が固定金型810に成形品を引き渡すことができる。成形品とインサート材とを同時に保持できるため、成形品とインサート材とを持ち替える動作を省略でき、成形サイクルを短縮できる。また、保持ユニット510は、固定金型810と可動金型820との間から退出することなく、成形品の取り出しと、インサート材の設置とを順番に実施できる。ここで、成形品の取り出しと、インサート材の設置とは、どちらが先でもよい。
なお、成形品保持部520がインサート材保持部530を兼ねてもよい。この場合、保持ユニット510は成形品を可動金型820から受け取った後、一旦、可動金型820と固定金型810との間から退出する。その後、保持ユニット510は、射出成形機10の外部(例えばゲートカット機550)に成形品を置き、次いで射出成形機10の外部(例えばアライメント機630)に置かれたインサート材を保持し、続いて可動金型820と固定金型810との間に再び戻る。このようにして、成形品とインサート材とを持ち替える動作が行われる。この場合、成形サイクルが長くなるが、搬送機500の構成を簡易化でき、搬送機500の製造コストを低減できる。
成形品保持部520は、図16に示すように、例えば、一次成形品20を保持する第1成形品保持部521、二次成形品30を保持する第2成形品保持部524、および三次成形品40を保持する第3成形品保持部527を有する。第1成形品保持部521、第2成形品保持部524および第3成形品保持部527は、x方向に垂直な同一平面上に、成形品を吸着する吸着面(以下、単に「吸着面」とも呼ぶ。)を有する。その吸着面に対し直交する方向(例えばx方向)から見たとき、図14に示すように、第1成形品保持部521の中心点521Pと、第2成形品保持部524の中心点524Pと、第3成形品保持部527の中心点527Pとは、予め定められた一点P1から等距離に配置され、予め定められた一点P1の周りに120°ピッチで配設される。
第1成形品保持部521は、図14に示すように、例えば円筒部522と、円筒部522の軸方向片面にリング状に配置される複数の吸着ノズル523とを有する。複数の吸着ノズル523は、それぞれの先端に、一次成形品20を吸着する吸着面を有する。複数の吸着ノズル523は、1つの真空ポンプ(不図示)と接続される。1つの真空ポンプを作動させると、全ての吸着ノズル523に負圧が生じ、負圧によって一次成形品20(図4参照)が吸着される。具体的には、一次成形品20のフランジ部24が複数の吸着ノズル523に吸着される。
複数の吸着ノズル523は、図14では等角度で配置されているが、フランジ部24に形成される第1切欠き27、第2切欠き28および第3切欠き29を避けるように配置されてもよい。つまり、第1切欠き27、第2切欠き28および第3切欠き29と同じ角度には、吸着ノズル523が配置されなくてもよい。真空リークを防止でき、負圧を確実に発生できる。尚、複数の吸着ノズル523を等角度に配置したうえで、第1切欠き27、第2切欠き28および第3切欠き29と同じ角度に配置される吸着ノズル523の吸引孔に栓をしてもよい。栓で吸引孔を塞いだ吸着ノズル523には負圧は生じない。
複数の吸着ノズル523がフランジ部24を吸着するとき、一次成形品20のレンズ部21は、円筒部522の外部に配置される(図16参照)が、円筒部522の内部に挿入されてもよい。レンズ部21の接触傷の発生を防止するため、レンズ部21が第1成形品保持部521に接触しなければよく、レンズ部21の凸曲面23の向きはどちら向きでもよい。その後、真空ポンプの作動を停止させると、複数の吸着ノズル523の気圧が大気圧に戻り、一次成形品20の吸着が解除される。
同様に、第2成形品保持部524は、図14に示すように、円筒部525と、円筒部525の軸方向片面にリング状に配置される複数の吸着ノズル526とを有する。複数の吸着ノズル526は、それぞれの先端に、二次成形品30を吸着する吸着面を有する。複数の吸着ノズル526は、1つの真空ポンプ(不図示)と接続される。1つの真空ポンプを作動させると、全ての吸着ノズル526に負圧が生じ、負圧によって二次成形品30(図5参照)が吸着される。具体的には、二次成形品30のフランジ部24が複数の吸着ノズル526に吸着される。
複数の吸着ノズル526は、図14では等角度で配置されているが、フランジ部24に形成される第1切欠き27、第2切欠き28および第3切欠き29を避けるように配置されてもよい。つまり、第1切欠き27、第2切欠き28および第3切欠き29と同じ角度には、吸着ノズル526が配置されなくてもよい。真空リークを防止でき、負圧を確実に発生できる。尚、複数の吸着ノズル526を等角度に配置したうえで、第1切欠き27、第2切欠き28および第3切欠き29と同じ角度に配置される吸着ノズル526の吸引孔に栓をしてもよい。栓で吸引孔を塞いだ吸着ノズル526には負圧は生じない。
複数の吸着ノズル526がフランジ部24を吸着するとき、二次成形品30のレンズ部21は、円筒部525の外部に配置される(図16参照)が、円筒部525の内部に挿入されてもよい。二次積層部31の接触傷の発生を防止するため、二次積層部31が第2成形品保持部524に接触しなければよく、レンズ部21の凸曲面23の向きはどちら向きでもよい。その後、真空ポンプの作動を停止させると、複数の吸着ノズル526の気圧が大気圧に戻り、二次成形品30の吸着が解除される。
同様に、第3成形品保持部527は、図14に示すように、円筒部528と、円筒部528の軸方向片面にリング状に配置される複数の吸着ノズル529とを有する。複数の吸着ノズル529は、それぞれの先端に、三次成形品40を吸着する吸着面を有する。複数の吸着ノズル529は、1つの真空ポンプ(不図示)と接続される。1つの真空ポンプを作動させると、全ての吸着ノズル529に負圧が生じ、負圧によって三次成形品40(図6参照)が吸着される。具体的には、三次成形品40のフランジ部24(より正確には完成品フランジ部54)が複数の吸着ノズル529に吸着される。
複数の吸着ノズル529は、図14では等角度で配置されているが、完成品フランジ部54に形成される第1位置決めピン挿入孔45、第2位置決めピン挿入孔47および第3位置決めピン挿入溝49を避けるように配置されてもよい。つまり、第1位置決めピン挿入孔45、第2位置決めピン挿入孔47および第3位置決めピン挿入溝49と同じ角度には、吸着ノズル529が配置されなくてもよい。真空リークを防止でき、負圧を確実に発生できる。尚、複数の吸着ノズル529を等角度に配置したうえで、第1位置決めピン挿入孔45、第2位置決めピン挿入孔47および第3位置決めピン挿入溝49と同じ角度に配置される吸着ノズル529の吸引孔に栓をしてもよい。栓で吸引孔を塞いだ吸着ノズル529には負圧は生じない。
複数の吸着ノズル529が完成品フランジ部54を吸着するとき、三次成形品40のレンズ部21は、円筒部528の内部に挿入される(図16参照)が、円筒部528の外部に配置されてもよい。二次積層部31の接触傷の発生を防止するため、二次積層部31が第3成形品保持部527に接触しなければよく、レンズ部21の凸曲面23の向きはどちら向きでもよい。その後、真空ポンプの作動を停止させると、複数の吸着ノズル529の気圧が大気圧に戻り、三次成形品40の吸着が解除される。
一方、インサート材保持部530は、図13に示すように、回転軸部511の回転中心線を挟んで成形品保持部520とは反対側に設けられる。従って、例えば図16(A)に示すように、成形品保持部520の成形品を吸着する吸着面が可動金型820に対向するとき、インサート材保持部530のインサート材を吸着する吸着面が固定金型810に対向する。そのため、成形品保持部520が可動金型820から成形品を受け取ってから、インサート材保持部530が固定金型810にインサート材を引き渡すまでの動作を短時間で行うことができる。
インサート材保持部530は、図15に示すように、例えば、二次成形品用インサート材としての一次成形品20を保持する第1インサート材保持部531、および三次成形品用インサート材としての二次成形品30を保持する第2インサート材保持部534を有する。第1インサート材保持部531および第2インサート材保持部534は、x方向に垂直な同一平面上に、インサート材を吸着する吸着面(以下、単に「吸着面」とも呼ぶ)を有する。その吸着面に対し直交する方向(例えばx方向)から見たとき、第1インサート材保持部531の中心点531Pと、第2インサート材保持部534の中心点534Pとは、予め定められた一点P2から等距離に配置され、予め定められた一点P2の周りに180°ピッチで配設される。
第1インサート材保持部531は、例えば円筒部532と、円筒部532の軸方向片面にリング状に配置される複数の吸着ノズル533とを有する。複数の吸着ノズル533は、それぞれの先端に、二次成形品用インサート材を吸着する吸着面を有する。複数の吸着ノズル533は、1つの真空ポンプ(不図示)と接続される。1つの真空ポンプを作動させると、全ての吸着ノズル533に負圧が生じ、負圧によって二次成形品用インサート材としての一次成形品20(図4参照)が吸着される。具体的には、一次成形品20のフランジ部24が複数の吸着ノズル533に吸着される。
複数の吸着ノズル533は、図15では等角度で配置されているが、フランジ部24に形成される第1切欠き27、第2切欠き28および第3切欠き29を避けるように配置されてもよい。つまり、第1切欠き27、第2切欠き28および第3切欠き29と同じ角度には、吸着ノズル533が配置されなくてもよい。真空リークを防止でき、負圧を確実に発生できる。尚、複数の吸着ノズル533を等角度で配置したうえで、第1切欠き27、第2切欠き28および第3切欠き29と同じ角度に配置される吸着ノズル533の吸引孔に栓をしてもよい。栓で吸引孔を塞いだ吸着ノズル533には負圧は生じない。
複数の吸着ノズル533がフランジ部24を吸着するとき、一次成形品20のレンズ部21は、円筒部532の内部に挿入されるが、円筒部532の外部に配置されてもよい。レンズ部21の接触傷の発生を防止するため、レンズ部21が第1インサート材保持部531に接触しなければよく、レンズ部21の凸曲面23の向きはどちら向きでもよい。その後、真空ポンプの作動を停止させると、複数の吸着ノズル533の気圧が大気圧に戻り、一次成形品20の吸着が解除される。
同様に、第2インサート材保持部534は、図15に示すように、円筒部535と、円筒部535の軸方向片面にリング状に配置される複数の吸着ノズル536とを有する。複数の吸着ノズル536は、それぞれの先端に、三次成形品用インサート材を吸着する吸着面を有する。複数の吸着ノズル536は、1つの真空ポンプ(不図示)と接続される。1つの真空ポンプを作動させると、全ての吸着ノズル536に負圧が生じ、負圧によって三次成形品用インサート材としての二次成形品30(図5参照)が吸着される。具体的には、二次成形品30のフランジ部24が複数の吸着ノズル536に吸着される。
複数の吸着ノズル536は、図15では等角度で配置されているが、フランジ部24に形成される第1切欠き27、第2切欠き28および第3切欠き29を避けるように配置されてもよい。つまり、第1切欠き27、第2切欠き28および第3切欠き29と同じ角度には、吸着ノズル536が配置されなくてもよい。真空リークを防止でき、負圧を確実に発生できる。尚、複数の吸着ノズル536を等角度で配置したうえで、第1切欠き27、第2切欠き28および第3切欠き29と同じ角度に配置される吸着ノズル536の吸引孔に栓をしてもよい。栓で吸引孔を塞いだ吸着ノズル536には負圧は生じない。
複数の吸着ノズル536がフランジ部24を吸着するとき、二次成形品30のレンズ部21は、円筒部535の外部に配置されるが、円筒部535の内部に挿入されてもよい。二次積層部31の接触傷の発生を防止するため、二次積層部31が第2インサート材保持部534に接触しなければよく、レンズ部21の凸曲面23の向きはどちら向きでもよい。その後、真空ポンプの作動を停止させると、複数の吸着ノズル536の気圧が大気圧に戻り、二次成形品30の吸着が解除される。
保持ユニット510は、図13等に示すように、回転軸部511および加熱部540をさらに有してよい。回転軸部511は、回転軸部511の軸方向(y方向)に延びる中心線を中心に回転自在とされる。成形品保持部520、インサート材保持部530および加熱部540は、回転軸部511の回転中心線の周りに配設され、回転軸部511と共に回転する。回転軸部511を基準として、x方向負側に成形品保持部520が配設され、x方向正側にインサート材保持部530が配設され、z方向正側に加熱部540が配設される。
回転軸部511を回転させることによって、インサート材保持部530の吸着面が固定金型810に対向する状態と、加熱部540が固定金型810に対向する状態とに保持ユニット510の状態を切り替えることができる。図16(A)に示すようにインサート材保持部530が固定金型810にインサート材を引き渡した後、回転軸部511が90°回転されることにより、図16(B)に示すように加熱部540が固定金型810に対向配置される。そのため、加熱部540が固定金型810に吸着されているインサート材の表面を加熱できる。インサート材の表面が溶融し、表面張力が生じるため、表面のシワ(所謂ヒケ)を除去することができる。ヒケは、インサート材としての成形品を冷却する時に冷却収縮のムラによって生じるものである。また、インサート材の加熱された表面には、シリンダ310内で溶融された成形材料が積層される。そのため、インサート材の加熱された表面とシリンダ310内で溶融された成形材料とを溶け合わせることができ、その境界に視認可能な不連続面が形成されることを抑制できる。
図16(B)に示すように加熱部540が固定金型810に対向するとき、成形品保持部520の吸着面は上向きとされ、インサート材保持部530の吸着面は下向きとされる。なお、成形品保持部520の吸着面が下向きとされ、インサート材保持部530の吸着面が上向きとされてもよい。
加熱部540がインサート材を加熱する間、加熱部540が成形品を加熱しないように、成形品保持部520の吸着面は上向きとされる。吸着面が上向きとされるため、その上に成形品を安定して保持できる。なお、上述の如く、成形品保持部520の吸着面は下向きとされてもよい。この場合、搬送機500は、成形品を重力に逆らって保持することにより、加熱部540による成形品の加熱を抑制できる。
加熱部540は、例えば電気ヒータを有する。電気ヒータとしては、例えばハロゲンヒータが用いられる。加熱部540は、時間短縮のため、二次成形品用インサート材としての一次成形品20と、三次成形品用インサート材としての二次成形品30とを同時に加熱してよい。また、一次成形品20と二次成形品30とを同時に加熱することにより、いずれか一方が先に冷えることを防止できる。
なお、搬送機500は、一次成形品20、二次成形品30および三次成形品40のうち少なくとも1つの品質を検査する検査器を有してもよい。検査器としては、例えば、成形品を撮像するカメラ、成形品の温度を検出する温度検出器、成形品の重量を測定する重量測定器から選ばれる少なくとも1つが用いられる。カメラで撮像した画像データは、成形品の寸法や形状、異物の混入の有無などの検査に用いられる。検査器の検査結果は、成形品の良否を判定するために用いられる。不良品は、後述の図30のステップS501〜図31のステップS529の一連の処理が行われる途中で廃棄されてよい。例えば、三次成形品40は、良品であると判定されたものだけが搬送機500によって完成品搬送機660に搬送され、不良品であると判定されたものは搬送機500によって回収箱に搬送されてよい。
尚、本実施形態の搬送機500は積層成形に用いられるが、搬送機500の用途は特に限定されない。搬送機500の用途は、一般的な射出成形であってよい。
(ゲートカット機)
図17は、一実施形態によるゲートカット機の動作を示す平面図である。図17(A)は、ゲートカット機が搬送機から一次成形品、二次成形品および三次成形品を受け取る時の状態を示す図である。図17(B)は、ゲートカット機が一次成形品、二次成形品および三次成形品から切断された不用品を落下させる時の状態を示す図である。なお、ゲートカット機550の構成は、図17等に示す構成には限定されない。
一次成形品20、二次成形品30および三次成形品40は、金型装置800から取り出された後、搬送機500によって金型装置800からゲートカット機550に搬送される。ゲートカット機550は、一次成形品20、二次成形品30および三次成形品40を、不用品60から切り離す。不用品60は、スプルー811(図1および図2参照)、第1ランナー822(図8参照)、第1ゲート825、第2ランナー823、第2ゲート826、第3ランナー824および第3ゲート827において成形材料が固化したものである。ゲートカット機550によって不用品60から切り離された一次成形品20、二次成形品30および三次成形品40は、搬送機500によってピックアップされる。
ゲートカット機550は、一次成形品20を支持する第1支持部560、および第1支持部560に支持されている一次成形品20と第1ゲート成形品61とを切断するカッター(不図示)を有する。第1ゲート成形品61は、第1ゲート825において成形材料が固化したものである。第1支持部560には、搬送機500の第1成形品保持部521から一次成形品20が載置される。不用品60から切り離された一次成形品20は、第1成形品保持部521によってピックアップされる。
第1支持部560は、例えば、本体561と、本体561の上面に突設される複数(例えば3つ)の支持爪562とを有する。複数の支持爪562は、一次成形品20のフランジ部24を、周方向に間隔をおいて支持する。各支持爪562は、フランジ部24の外周面に接触する円弧面と、フランジ部24の下面に接触する平坦面とを有する。フランジ部24は、複数の支持爪562によって水平に支持される。一方、レンズ部21は、その凸曲面23を下に向けて支持される(図18(A)の2点鎖線参照)。レンズ部21の凸曲面23が本体561の上面と接触しないように、複数の支持爪562の高さが設定される。なお、レンズ部21は、詳しくは後述するが、第1ゲート成形品61から切り離された後、その凸曲面23を上に向けて支持される(図18(B)の2点鎖線参照)。
また、ゲートカット機550は、図17に示すように、二次成形品30を支持する第2支持部570、および第2支持部570に支持されている二次成形品30と第2ゲート成形品62とを切断するカッター(不図示)を有する。第2ゲート成形品62は、第2ゲート826において成形材料が固化したものである。第2支持部570には、搬送機500の第2成形品保持部524から二次成形品30が載置される。不用品60から切り離された二次成形品30は、第2成形品保持部524によってピックアップされる。第2支持部570は、第1支持部560と同様に、例えば、本体571と、本体571の上面に突設される複数(例えば3つ)の支持爪572とを有する。複数の支持爪572は、二次成形品30のフランジ部24を、周方向に間隔をおいて支持する。各支持爪572は、フランジ部24の外周面に接触する円弧面と、フランジ部24の下面に接触する平坦面とを有する。フランジ部24は、複数の支持爪572によって水平に支持される。一方、レンズ部21等は、その凸曲面23を下に向けて支持される。下に凸の凸曲面23に積層された二次積層部31が本体571の上面と接触しないように、複数の支持爪572の高さが設定される。
さらに、ゲートカット機550は、図17に示すように、三次成形品40を支持する第3支持部580、および第3支持部580に支持されている三次成形品40と第3ゲート成形品63とを切断するカッター(不図示)を有する。第3ゲート成形品63は、第3ゲート827において成形材料が固化したものである。第3支持部580には、搬送機500の第3成形品保持部527から三次成形品40が載置される。不用品60から切り離された三次成形品40は、第3成形品保持部527によってピックアップされる。第3支持部580は、第1支持部560と同様に、例えば、本体581と、本体581の上面に突設される複数(例えば3つ)の支持爪582とを有する。複数の支持爪582は、三次成形品40のフランジ部24を、周方向に間隔をおいて支持する。各支持爪582は、フランジ部24の外周面に接触する円弧面と、フランジ部24の下面に接触する平坦面とを有する。フランジ部24は、複数の支持爪582によって水平に支持される。一方、レンズ部21等は、その凸曲面23を上に向けて支持される。
ゲートカット機550は、図17に示すように、第1支持部560を案内する一対の第1ガイド565と、第2支持部570を案内する一対の第2ガイド575と、第3支持部580を案内する一対の第3ガイド585とを有する。一対の第1ガイド565、一対の第2ガイド575および一対の第3ガイド585は、鉛直方向から見たとき、放射状に設けられ、例えば180°ピッチで配設される。第1支持部560は一対の第1ガイド565に沿って移動自在とされ、第2支持部570は一対の第2ガイド575に沿って移動自在とされ、第3支持部580は一対の第3ガイド585に沿って移動自在とされる。第1支持部560、第2支持部570および第3支持部580は同時に同じ方向に移動されてよく、その移動量も同じとされてよい。
搬送機500が一次成形品20、二次成形品30および三次成形品40をゲートカット機550に載せる時に、第1支持部560、第2支持部570および第3支持部580は図17(A)に示す成形品搬入位置に位置する。一方、ゲートカット機550が一次成形品20、二次成形品30および三次成形品40から切断された不用品60を落下させる時に、第1支持部560、第2支持部570および第3支持部580は鉛直方向視で不用品60と重ならないように図17(B)に示す不用品落下位置に位置する。3つの不用品落下位置は、3つの成形品搬入位置の外側に設定される。また、搬送機500が不用品60から切り離された一次成形品20、二次成形品30および三次成形品40をゲートカット機550からピックアップする時に、第1支持部560、第2支持部570および第3支持部580は図19に示す成形品搬出位置に位置する。成形品搬出位置と、成形品搬入位置とは、同じ位置であってよい。
図18は、一実施形態による反転機の動作を示す図である。図18(A)は、反転機が第1支持部から一次成形品を持ち上げる動作を示す図である。図18(A)において、二点鎖線は一次成形品20の持ち上げ開始時の昇降スライダ594等の状態を示し、実線は一次成形品20の持ち上げ完了時の昇降スライダ594等の状態を示す。図18(B)は、第1支持部から持ち上げて反転させた一次成形品を第1支持部に降ろす動作を示す図である。図18(B)において、実線は一次成形品20の反転完了時の昇降スライダ594等の状態を示し、二点鎖線は一次成形品20の降下完了時の昇降スライダ等の状態を示す。図19は、一実施形態による搬送機が不用品から切り離された成形品をゲートカット機からピックアップする時のゲートカット機の状態を示す平面図である。
ゲートカット機550は、第1支持部560に支持される一次成形品20を反転させる反転機590を有する。一次成形品20を上下反転させるのは、詳しくは後述するが、図21(A)に示すようにレンズ部21の凸曲面23が上向きになるように一次成形品20を冷却台600に載置するためである。また、冷却済みの一次成形品20(二次成形品用インサート材)を固定金型810に吸着するときに、図16(B)に示すようにレンズ部21の凸曲面23を可動金型820に向けるためである。
なお、一次成形品20を上下反転させる反転機590は、本実施形態ではゲートカット機550に備えられるが、冷却台600に備えられてもよい。つまり、一次成形品20は、本実施形態ではゲートカット機550において上下反転されるが、冷却台600において上下反転されてもよい。
一方、二次成形品30は、上下反転されることなく、レンズ部21の平坦面22が上向きになるように第2支持部570に載置される。詳しくは後述するが、図21(B)に示すようにレンズ部21の平坦面22が上向きになるように二次成形品30を冷却台600に載置するためである。また、冷却済みの二次成形品30(三次成形品用インサート材)を固定金型810に吸着するときに、図16(B)に示すようにレンズ部21の平坦面22を可動金型820に向けるためである。
また、三次成形品40は、上下反転されることなく、レンズ部21の平坦面22が下向きになるように第3支持部580に載置される。詳しくは後述するが、レンズ部21の平坦面22を下に向けて、三次成形品40を完成品搬送機660の上面に載置するためである。
反転機590は、例えば、一次成形品20を吸着する一対の吸着パッド591と、吸着パッド591がそれぞれの先端に1つずつ設けられる一対のアーム592と、一対のアーム592が固定される回転板593と、回転板593を回転自在に支持する昇降スライダ594と、昇降スライダ594を鉛直方向に案内する一対の昇降ガイド595とを有する。
一対の昇降ガイド595は、鉛直に設けられる。一対の昇降ガイド595に沿って昇降スライダ594が昇降自在とされる。油圧シリンダ等の駆動源によって昇降スライダ594を昇降させることにより、回転板593が昇降される。回転板593は、昇降スライダ594と共に昇降する。回転モータ等の駆動源によって回転板593を180°回転させる度に、一対の吸着パッド591の一次成形品20を吸着する吸着面が、上向きの状態と、下向きの状態とに切り替えられる。一対の吸着パッド591は、配管を介して真空ポンプに接続される。真空ポンプを作動させると、一対の吸着パッド591に負圧が生じ、負圧によって一次成形品20が一対の吸着パッド591に吸着される。その後、真空ポンプの作動を停止させると、一対の吸着パッド591の気圧が大気圧に戻り、一次成形品20の吸着が解除される。
第1支持部560が図17(A)に示す成形品搬入位置から図17(B)に示す不用品落下位置に移動することにより、第1支持部560の本体561と一次成形品20のフランジ部24との間に一対の吸着パッド591が挿し込まれる。その後、昇降スライダ594が、図18(A)に二点鎖線で示す待機位置から図18(A)に実線で示す反転位置まで上昇される。このとき、一対の吸着パッド591は、一次成形品20のフランジ部24を下方から吸着保持する。続いて、回転板593が図18(A)に実線で示す反転開始位置から図18(B)に実線で示す反転完了位置まで180°回転させられ、一次成形品20が上下反転される。一次成形品20の反転完了時に、一対の吸着パッド591は一次成形品20のフランジ部24を上方から吸着保持する。その後、昇降スライダ594が、図18(B)に実線で示す反転位置から図18(B)に二点鎖線で示す載せ替え位置まで降下される。続いて、一対の吸着パッド591による一次成形品20の吸着が解除され、一次成形品20は第1支持部560に載置される。
その後、昇降スライダ594が図18(B)に実線で示す反転完了位置に上昇されると、第1支持部560、第2支持部570および第3支持部580が図17(B)に示す不用品落下位置から図19に示す成形品搬出位置まで移動させられる。続いて、回転板593は、図18(B)に実線で示す反転完了位置から、図18(A)に実線で示す反転開始位置まで180°逆回転させられる。なお、回転板593の回転方向は特に限定されない。その後、昇降スライダ594が、図18(A)に二点鎖線で示す待機位置まで戻される。
尚、本実施形態のゲートカット機550は積層成形に用いられるが、ゲートカット機550の用途は特に限定されない。ゲートカット機550の用途は、一般的な射出成形であってよい。
(冷却台)
図20は、一実施形態による冷却台を示す平面図である。図21は、一実施形態による冷却台の要部を示す断面図である。図21(A)は、図20のA−A線に沿った一次成形品冷却部の断面図である。図21(B)は、図20のB−B線に沿った二次成形品冷却部の断面図である。なお、冷却台600の構成は、図20〜図21に示す構成には限定されない。
一次成形品20や二次成形品30は、ゲートカット機550によって不用品60から切り離された後、搬送機500によってゲートカット機550から冷却台600に搬送される。冷却台600は、一次成形品20および二次成形品30を冷却する。冷却台600によって冷却された一次成形品20および二次成形品30は、搬送機500によってピックアップされる。
冷却台600は、冷却水などの冷媒が流れる流路を内部に有する。冷却台600の内部に供給された冷媒は、冷却台600の温度を調整し、冷却台600の外部に排出される。これにより、冷却台600に載置されている一次成形品20や二次成形品30の熱を冷却台600の外部に排出でき、一次成形品20や二次成形品30を冷却できる。冷却台600の内部に供給される冷媒の温度は、金型装置800の内部に供給される第1温調流体や第2温調流体の温度よりも低くてよい。冷却台600の温度を金型装置800の温度よりも低くでき、冷却効率を高めることができる。
冷却台600は、一次成形品20が載置される一次成形品冷却部610を有する。一次成形品冷却部610には、搬送機500の第1成形品保持部521から一次成形品20が載置される。一次成形品20は、例えば図21(A)に示すようにレンズ部21の凸曲面23を上に向けて、一次成形品冷却部610に載置される。冷却台600は、複数の一次成形品20を同時に冷却できるように、複数(例えば10個)の一次成形品冷却部610を有してよい。一次成形品冷却部610によって冷却された一次成形品20は、搬送機500の第1インサート材保持部531によってピックアップされる。
一次成形品冷却部610は、冷却台600の上面に、凹状に形成される。一次成形品冷却部610は、例えば、冷却台600の上面に凹状に形成される第1凹部611と、第1凹部611の内底面(下面)に凹状に形成される第2凹部612とを有する。第1凹部611は、内部に円盤状の空間を形成し、その内周面で一次成形品20のフランジ部24の外周面を押さえると共に、その内底面でフランジ部24の下面(第1板面25)を支える。第2凹部612は、第1凹部611の内底面に当該内底面よりも小さく形成され、内部に円盤状の空間を形成する。第2凹部612の直径は、レンズ部21の平坦面22の直径よりも大きくてよい。レンズ部21の平坦面22の冷却台600との接触を防止できるため、接触傷の発生を防止できる。
冷却台600は、二次成形品30が載置される二次成形品冷却部620を有する。二次成形品冷却部620には、搬送機500の第2成形品保持部524から二次成形品30が載置される。二次成形品30は、例えば図21(B)に示すようにレンズ部21の平坦面22を上に向けて、二次成形品冷却部620に載置される。冷却台600は、複数の二次成形品30を同時に冷却できるように、複数(例えば10個)の二次成形品冷却部620を有してよい。二次成形品冷却部620によって冷却された二次成形品30は、搬送機500の第2インサート材保持部534によってピックアップされる。
二次成形品冷却部620は、冷却台600の上面に、凹状に形成される。二次成形品冷却部620は、例えば、冷却台600の上面に凹状に形成される第1凹部621と、第1凹部621の内底面(下面)に凹状に形成される第2凹部622とを有する。第1凹部621は、内部に円盤状の空間を形成し、その内周面で二次成形品30のフランジ部24の外周面を押さえると共に、その内底面でフランジ部24の下面(第2板面26)を支える。第2凹部622は、第1凹部621の内底面に当該内底面よりも小さく形成され、内部に円盤状の空間を形成する。第2凹部622の直径は、レンズ部21の平坦面22の直径よりも大きくてよい。また、第2凹部622の内底面と第1凹部621の内底面との高低差は、第2凹部622の内底面が二次積層部31と接触しないように設定される。二次積層部31と冷却台600との接触を防止できるため、接触傷の発生を防止できる。
尚、本実施形態の冷却台600は積層成形に用いられるが、冷却台600の用途は特に限定されない。冷却台600の用途は、一般的な射出成形であってよい。
(アライメント機)
図22は、一実施形態によるアライメント機を示す平面図である。アライメント機630は、金型装置800の内部へのインサート前に、インサート材の位置合わせを行うものである。位置合わせは、芯出しと、芯周りの回転とを含む。予めインサート材の位置合わせを行うことにより、インサート材を予め設定された向きで固定金型810の予め設定された位置に吸着できる。なお、アライメント機630の構成は、図22に示す構成には限定されない。例えば、アライメント機630の機能を、搬送機500のインサート材保持部530が有してもよい。
一次成形品20や二次成形品30は、冷却台600によって冷却された後、二次成形品用インサート材や三次成形品用インサート材として、搬送機500によって冷却台600からアライメント機630に搬送される。アライメント機630は、一次成形品20および二次成形品30の位置合わせを行う。位置合わせは、芯出しと、芯周りの回転とを含む。アライメント機630によって位置合わせされた一次成形品20および二次成形品30は、搬送機500によってピックアップされる。
アライメント機630は、二次成形品用インサート材(例えば一次成形品20)を支持する第1チャック640を有する。第1チャック640は、円盤状のチャック本体641と、チャック本体641の上面に突設される複数(例えば4つ)の支持ピン642と、チャック本体641の上面に移動可能に設けられる複数(例えば3つ)の可動爪643とを有する。また、第1チャック640は、複数の可動爪643をチャック本体641の径方向に案内する複数(例えば3つ)のガイド644をさらに有する。複数のガイド644は、鉛直方向から見たとき、放射状に設けられ、例えば120°ピッチで配設される。複数の可動爪643は同時に同じ方向に移動されてよく、その移動量も同じとされてよい。
複数の可動爪643が図22に二点鎖線で示す受け入れ位置に位置するときに、搬送機500が一次成形品20を、レンズ部21の凸曲面23を上に向けて、4つの支持ピン642の上面に載置する。4つの支持ピン642は、レンズ部21と接触しないように、レンズ部21から径方向外方に突出するフランジ部24と接触する。続いて、搬送機500は、一次成形品20の吸着を解除し、アライメント機630から離れる。その後、複数の可動爪643が図22に二点鎖線で示す受け入れ位置から図22に実線で示す芯出し位置に移動される。3つの可動爪643の高さは3つの支持ピン642の高さよりも高く、3つの可動爪643はフランジ部24の外周面を押さえる。これにより、一次成形品20の芯出しがなされる。具体的には、鉛直方向視において、一次成形品20の中心と、チャック本体641の中心とが一致させられる。
アライメント機630は、第1チャック640を回転させる回転台645を有する。回転台645は、チャック本体641を回転させる回転モータ等の駆動源を有する。この駆動源によってチャック本体641を回転させると、チャック本体641と共に支持ピン642や可動爪643が回転する。その回転中心は、チャック本体641の中心と一致する。チャック本体641の回転は、図22に実線で示すように3つの可動爪643によってフランジ部24の外周面を押さえた状態で行われる。これにより、一次成形品20の芯周りの回転がなされ、フランジ部24に形成された第1切欠き27、第2切欠き28および第3切欠き29が予め定められた角度に向けられる。その後、搬送機500が一次成形品20をアライメント機630から受け取ると、3つの可動爪643は図22に実線で示す芯出し位置から図22に二点鎖線で示す受け入れ位置に戻される。
アライメント機630は、三次成形品用インサート材(例えば二次成形品30)を支持する第2チャック650を有する。三次成形品用インサート材を支持する第2チャック650と、二次成形品用インサート材を支持する第1チャック640とが別々に設けられる。これにより、二次成形品用インサート材の位置合わせと三次成形品用インサート材の位置合わせとを同時に実施できるため、インサート材の位置合わせのための待ち時間を短縮できる。
なお、第1チャック640が第2チャック650を兼ねてもよい。この場合、搬送機500は二次成形品用インサート材と三次成形品用インサート材とを順番にアライメント機630に引き渡す。引き渡す順番は、どちらが先でもよい。アライメント機630が二次成形品用インサート材の位置合わせを行う間、搬送機500が三次成形品用インサート材を保持する。一方、アライメント機630が三次成形品用インサート材の位置合わせを行う間、搬送機500が二次成形品用インサート材を保持する。この場合、待ち時間が長くなるが、アライメント機630のチャックの数を低減でき、アライメント機630の製造コストを低減できる。
第2チャック650は、第1チャック640と同様に構成され、円盤状のチャック本体651と、チャック本体651の上面に突設される複数(例えば4つ)の支持ピン652と、チャック本体651の上面に移動可能に設けられる複数(例えば3つ)の可動爪653とを有する。また、第2チャック650は、複数の可動爪653をチャック本体651の径方向に案内する複数(例えば3つ)のガイド654をさらに有する。複数のガイド654は、鉛直方向から見たとき、放射状に設けられ、例えば120°ピッチで配設される。複数の可動爪653は同時に同じ方向に移動されてよく、その移動量も同じとされてよい。
複数の可動爪653が図22に二点鎖線で示す受け入れ位置に位置するときに、搬送機500が二次成形品30を、レンズ部21の平坦面22を上に向けて、4つの支持ピン652の上面に載置する。4つの支持ピン652は、レンズ部21や二次積層部31と接触しないように、レンズ部21から径方向外方に突出するフランジ部24と接触する。また、4つの支持ピン652は、二次積層部31がチャック本体651の上面と接触しないように、フランジ部24を支える。続いて、搬送機500は、二次成形品30の吸着を解除し、アライメント機630から離れる。その後、複数の可動爪653が図22に二点鎖線で示す受け入れ位置から図22に実線で示す芯出し位置に移動される。3つの可動爪653の高さは3つの支持ピン652の高さよりも高く、3つの可動爪653はフランジ部24の外周面を押さえる。これにより、二次成形品30の芯出しがなされる。具体的には、鉛直方向視において、二次成形品30の中心と、チャック本体651の中心とが一致させられる。
アライメント機630は、第2チャック650を回転させる回転台655を有する。回転台655は、チャック本体651を回転させる回転モータ等の駆動源を有する。この駆動源によってチャック本体651を回転させると、チャック本体651と共に支持ピン652や可動爪653が回転する。その回転中心は、チャック本体651の中心と一致する。チャック本体651の回転は、図22に実線で示すように3つの可動爪653によってフランジ部24の外周面を押さえた状態で行われる。これにより、二次成形品30の芯周りの回転がなされ、フランジ部24に形成された第1切欠き27、第2切欠き28および第3切欠き29が予め定められた角度に向けられる。その後、搬送機500が二次成形品30をアライメント機630から受け取ると、3つの可動爪653は図22に実線で示す芯出し位置から図22に二点鎖線で示す受け入れ位置に戻される。
尚、本実施形態のアライメント機630は積層成形に用いられるが、アライメント機630の用途は特に限定されない。アライメント機630の用途は、一般的な射出成形であってよい。
(射出成形システムの動作)
図23は、一実施形態による射出成形機、搬送機およびゲートカット機の動作フローを示すフローチャートである。図24は、図23に続く、射出成形機、搬送機およびゲートカット機の動作フローを示すフローチャートである。図23および図24に示す射出成形機10の動作は成形機制御部710(図3参照)による制御下で行われ、図23および図24に示す搬送機500の動作およびゲートカット機550の動作は周辺機器制御部720(図3参照)による制御下で行われる。なお、図23のステップS101の開始時に、アライメント機630には位置合わせ済みのインサート材(例えば一次成形品20および二次成形品30)が存在する。また、図23のステップS101の開始時に、型締状態の金型装置800の内部には、予め成形された一次成形品20、二次成形品30および三次成形品40が存在する。
先ず、射出成形機10が、金型装置800の型開を完了させる(図23のステップS101)。なお、金型装置800の型開完了は、下記ステップS202(型開状態の固定金型810と可動金型820との間への搬送機500の侵入)の前に行われればよく、下記ステップS201(搬送機500によるインサート材の受け取り)の後に行われてもよい。
次に、搬送機500の保持ユニット510が、アライメント機630からインサート材を受け取る(図23のステップS201)。インサート材は、搬送機500のインサート材保持部530に吸着される。具体的には、二次成形品用インサート材としての一次成形品20が第1インサート材保持部531に吸着され、三次成形品用インサート材としての二次成形品30が第2インサート材保持部534に吸着される。
二次成形品用インサート材としての一次成形品20は、レンズ部21が円筒部532の内部に挿入されるように、フランジ部24が複数の吸着ノズル533に吸着される。下記ステップS102において一次成形品20を固定金型810に吸着するときに、図16(B)に示すようにレンズ部21の凸曲面23を可動金型820に向けるためである。
一方、三次成形品用インサート材としての二次成形品30は、一次成形品20とは、レンズ部21の向きが逆向きになるように吸着される。下記ステップS102において二次成形品30を固定金型810に吸着するときに、図16(B)に示すようにレンズ部21の平坦面22を可動金型820に向けるためである。二次成形品30は、レンズ部21が円筒部535の外部に配置されるように、フランジ部24が複数の吸着ノズル536に吸着される。
次に、搬送機500の保持ユニット510が、型開状態の固定金型810と可動金型820の間に侵入する(図23のステップS202)。インサート材保持部530が固定金型810に向けて配置され、成形品保持部520が可動金型820に向けて配置される。
次に、搬送機500の保持ユニット510が、可動金型820から成形品を取り出す(図23のステップS203)。成形品は、搬送機500の成形品保持部520に吸着される。具体的には、一次成形品20が第1成形品保持部521に吸着され、二次成形品30が第2成形品保持部524に吸着され、三次成形品40が第3成形品保持部527に吸着される(図16(A)等参照)。
図9および図10に示すように一次成形品20および二次成形品30と、三次成形品40とは、レンズ部21の向きが逆向きになるように成形される。そのため、一次成形品20および二次成形品30と、三次成形品40とは、レンズ部21の向きが逆向きになるように吸着される(図6(A)参照)。
具体的には、一次成形品20は、レンズ部21が円筒部522の外部に配置されるように、フランジ部24が複数の吸着ノズル523に吸着される。二次成形品30は、一次成形品20と同様に、レンズ部21が円筒部525の外部に配置されるように、フランジ部24が複数の吸着ノズル526に吸着される。一方、三次成形品40は、レンズ部21が円筒部528の内部に挿入されるように、フランジ部24が複数の吸着ノズル529に吸着される。
次に、搬送機500の保持ユニット510が、インサート材を固定金型810に当接させる(図23のステップS204)。
二次成形品用インサート材としての一次成形品20は、レンズ部21の凸曲面23を可動金型820に向けて、固定金型810に当接される(図16(B)参照)。型締時に、図10に示すように、レンズ部21の凸曲面23と可動金型820との間に、二次積層部31を成形する空間31Sを形成するためである。
一方、三次成形品用インサート材としての二次成形品30は、レンズ部21の平坦面22を可動金型820に向けて、固定金型810に当接される(図16(B)参照)。型締時に、図10に示すように、レンズ部21の平坦面22と可動金型820との間に、三次積層部41を成形する空間41Sを形成するためである。
次に、射出成形機10が、インサート材を固定金型810に吸着させる(図23のステップS102)。
次に、搬送機500の保持ユニット510が、インサート材の吸着を解除する(図23のステップS205)。なお、上記ステップS203と、上記ステップS204〜S205とは、順序が逆であってもよい。つまり、搬送機500から固定金型810へのインサート材の引き渡しが先に行われ、可動金型820からの成形品の取り出しが後に行われてもよい。
次に、搬送機500が、回転軸部511を90°回転させることにより、図16(B)に示すように加熱部540を固定金型810に向け、加熱部540によって固定金型810に吸着されているインサート材を加熱する(図23のステップS206)。加熱部540は、時間短縮のため、二次成形品用インサート材としての一次成形品20と、三次成形品用インサート材としての二次成形品30とを同時に加熱してよい。また、一次成形品20と二次成形品30とを同時に加熱することにより、いずれか一方が先に冷えることを防止できる。
加熱部540は、一次成形品20の二次積層部31を積層する面(例えばレンズ部21の凸曲面23)を加熱する。レンズ部21の凸曲面23が溶融し、表面張力が生じるため、一次成形品20の冷却時に生じたシワを除去することができる。また、溶融された凸曲面23と溶融された成形材料とを溶け合わせることができ、その境界に視認可能な不連続面が形成されることを抑制できる。
また、加熱部540は、二次成形品30の三次積層部41を積層する面(例えばレンズ部21の平坦面22)を加熱する。レンズ部21の平坦面22が溶融し、表面張力が生じるため、一次成形品20の冷却時に生じたシワを除去することができる。また、溶融された平坦面22と溶融された成形材料とを溶け合わせることができ、その境界に視認可能な不連続面が形成されることを抑制できる。
回転軸部511の回転に伴い、加熱部540のみならず、成形品保持部520やインサート材保持部530も回転される。その結果、図16(B)に示すように、成形品保持部520の成形品を吸着する吸着面は上向きとされ、インサート材保持部530のインサート材を吸着する吸着面は下向きとされる。なお、成形品保持部520の吸着面が下向きとされ、インサート材保持部530の吸着面が上向きとされてもよい。
加熱部540がインサート材を加熱する間、加熱部540が成形品を加熱しないように、成形品保持部520の吸着面は上向きとされる。吸着面が上向きとされるため、その上に成形品を安定して保持できる。なお、上述の如く、成形品保持部520の吸着面は下向きとされてもよい。この場合、搬送機500は、成形品を重力に逆らって保持することにより、加熱部540による成形品の加熱を抑制できる。
次に、搬送機500の保持ユニット510が、固定金型810と可動金型820との間から退出する(図23のステップS207)。
次に、射出成形機10が、金型装置800の型閉を開始する(図23のステップS103)。その後、射出成形機10は、金型装置800の型締(図24のステップS104)、射出装置300による成形材料の充填(図24のステップS105)、射出装置300による成形材料の保圧(図24のステップS106)、金型装置800の内部での成形材料の冷却(図24のステップS107)、および金型装置800の型開開始(図24のステップS108)を行う。型閉の開始(図23のステップS103)から型開の開始(図24のステップS108)までの間に、搬送機500およびゲートカット機550は、下記の動作を行う。
先ず、搬送機500の保持ユニット510は、可動金型820から取り出した成形品を保持しながらゲートカット機550に移動する(図23のステップS208)。この間、成形品は、搬送機500の成形品保持部520に吸着されている。
次に、搬送機500の保持ユニット510が、成形品の吸着を解除する(図23のステップS209)。これにより、図17(A)に示すように、成形品がゲートカット機550に載置される。具体的には、一次成形品20が第1支持部560に載置され、二次成形品30が第2支持部570に載置され、三次成形品40が第3支持部580に載置される。
一次成形品20は、レンズ部21の凸曲面23が下向きになるように、フランジ部24が複数の支持爪562に載置される。二次成形品30は、一次成形品と同様に、レンズ部21の凸曲面23が下向きになるように、フランジ部24が複数の支持爪572に載置される。三次成形品40は、一次成形品20や二次成形品30とは異なり、レンズ部21の凸曲面23が上向きになるように、フランジ部24が複数の支持爪582に載置される。
次に、搬送機500の保持ユニット510は、ゲートカット機550から冷却台600に移動する(図24のステップS210)。なお、搬送機500がゲートカット機550から離れることが、ゲートカット機550によるゲートカット(図24のステップS301)の開始条件である。ゲートカット機550の動作については、後述する。
次に、搬送機500の保持ユニット510は、冷却台600によって冷却済みのインサート材を吸着する(図24のステップS211)。インサート材は、搬送機500のインサート材保持部530に吸着される。具体的には、二次成形品用インサート材としての一次成形品20(図21(A)参照)が第1インサート材保持部531に吸着され、三次成形品用インサート材としての二次成形品30(図21(B)参照)が第2インサート材保持部534に吸着される。
二次成形品用インサート材としての一次成形品20は、第1インサート材保持部531に吸着される。具体的には、一次成形品20は、レンズ部21が円筒部532の内部に挿入されるように、フランジ部24が複数の吸着ノズル533に吸着される。
一方、三次成形品用インサート材としての二次成形品30は、第2インサート材保持部534に吸着される。具体的には、二次成形品30は、レンズ部21が円筒部535の外部に配置されるように、フランジ部24が複数の吸着ノズル536に吸着される。
次に、搬送機500の保持ユニット510は、インサート材を保持しながら冷却台600からアライメント機630に移動する(ステップS212)。この間、インサート材は、搬送機500のインサート材保持部530に吸着されている。
次に、搬送機500の保持ユニット510が、インサート材の吸着を解除する(図23のステップS213)。これにより、図22に示すように、インサート材がアライメント機630に載置される。
二次成形品用インサート材としての一次成形品20は、レンズ部21の凸曲面23が上向きになるように第1チャック640に載置される。一次成形品20を固定金型810に吸着するときに、図16(B)に示すようにレンズ部21の凸曲面23を可動金型820に向けるためである。
三次成形品用インサート材としての二次成形品30は、レンズ部21の平坦面22が上向きになるように、第2チャック650に載置される。二次成形品30を固定金型810に吸着するときに、図16(B)に示すようにレンズ部21の平坦面22を可動金型820に向けるためである。
次に、搬送機500の保持ユニット510は、アライメント機630からゲートカット機550に移動する(図24のステップS214)。なお、搬送機500がアライメント機630から離れると、アライメント機630がインサート材の位置合わせを行う。
ところで、搬送機500の保持ユニット510が上記ステップS210においてゲートカット機550から離れてから上記ステップS214においてゲートカット機550に戻るまでの間に、ゲートカット機550は下記の動作を行う。
先ず、ゲートカット機550は、成形品を不用品から切り離すゲートカットを行う(図24のステップS301)。ゲートカット機550は、搬送機500から受け取った一次成形品20、二次成形品30および三次成形品40を、不用品60から切り離す(図17参照)。
次に、ゲートカット機550は、不用品60から切り離された一次成形品20を、図18(A)に実線で示すように第1支持部560から持ち上げ、図18(B)に実線で示すように上下反転させる(図24のステップS302)。その後、ゲートカット機550は、図18(B)に二点鎖線で示すように一次成形品20を第1支持部560に再び載置する。一次成形品20は、レンズ部21の凸曲面23が上向きになるように第1支持部560に載置される。
一次成形品20を上下反転させるのは、下記ステップS219において、図21(A)に示すようにレンズ部21の凸曲面23が上向きになるように一次成形品20を冷却台600に載置するためである。また、冷却済みの一次成形品20(二次成形品用インサート材)を固定金型810に吸着するときに、図16(B)に示すようにレンズ部21の凸曲面23を可動金型820に向けるためである。
なお、一次成形品20を上下反転させる反転機590は、本実施形態ではゲートカット機550に備えられるが、冷却台600に備えられてもよい。つまり、一次成形品20は、本実施形態ではゲートカット機550において上下反転されるが、冷却台600において上下反転されてもよい。
一方、二次成形品30は、上下反転されることなく、レンズ部21の平坦面22が上向きになるように第2支持部570に載置される。下記ステップS219において、図21(B)に示すようにレンズ部21の平坦面22が上向きになるように二次成形品30を冷却台600に載置するためである。また、冷却済みの二次成形品30(三次成形品用インサート材)を固定金型810に吸着するときに、図16(B)に示すようにレンズ部21の平坦面22を可動金型820に向けるためである。
また、三次成形品40は、上下反転されることなく、レンズ部21の平坦面22が下向きになるように第3支持部580に載置される。下記ステップS217において、レンズ部21の平坦面22を下に向けて、三次成形品40を完成品搬送機660の上面に載置するためである。
ゲートカット機550によるゲートカット(上記ステップS301)および一次成形品20の上下反転(上記ステップS302)が行われる間に、搬送機500の保持ユニット510は上記ステップS211〜S213の動作を行い、ゲートカット機550に戻る(上記ステップS214)。
次に、搬送機500の保持ユニット510は、ゲートカット機550によって切断済みの成形品を吸着する(図24のステップS215)。成形品は、搬送機500の成形品保持部520に吸着される。具体的には、一次成形品20が第1成形品保持部521に吸着され、二次成形品30が第2成形品保持部524に吸着され、三次成形品40が第3成形品保持部527に吸着される。
一次成形品20は、レンズ部21が円筒部522の内部に挿入されるように、フランジ部24が複数の吸着ノズル523に吸着される。一方、二次成形品30は、一次成形品20とはことなり、レンズ部21が円筒部525の外部に配置されるように、フランジ部24が複数の吸着ノズル526に吸着される。三次成形品40は、一次成形品20と同様に、レンズ部21が円筒部528の内部に挿入されるように、フランジ部24が複数の吸着ノズル529に吸着される。
次に、搬送機500の保持ユニット510は、一次成形品20、二次成形品30および三次成形品40を吸着しながら、ゲートカット機550から完成品搬送機660に移動する(図24のステップS216)。
次に、搬送機500の保持ユニット510は、三次成形品40の吸着を解除する(図24のステップS217)。これにより、三次成形品40は、レンズ部21の平坦面22を下に向けて、完成品搬送機660の上面に載置される。なお、一次成形品20および二次成形品30の吸着は解除されない。
次に、搬送機500の保持ユニット510は、一次成形品20および二次成形品30を吸着しながら、完成品搬送機660から冷却台600に移動する(図24のステップS218)。なお、搬送機500が完成品搬送機660から離れると、完成品搬送機660が三次成形品40を射出成形システム1の外部に搬出する。
次に、搬送機500の保持ユニット510は、一次成形品20および二次成形品30の吸着を解除する(図24のステップS219)。これにより、一次成形品20および二次成形品30が冷却台600に載置される。一次成形品20は、図21(A)に示すように、レンズ部21の凸曲面23を上に向けて、冷却台600の一次成形品冷却部610に載置される。一方、二次成形品30は、図21(B)に示すように、レンズ部21の平坦面22を上に向けて、冷却台600の二次成形品冷却部620に載置される。
なお、三次成形品40の完成品搬送機660への搬送(上記ステップS216、S217)と、一次成形品20および二次成形品30の冷却台600への搬送(上記ステップS218、S219)とは、順序が逆でもよい。つまり、搬送機500の保持ユニット510は、一次成形品20、二次成形品30および三次成形品40を吸着しながらゲートカット機550から冷却台600に移動し、冷却台600に一次成形品20および二次成形品30を置いた後、冷却台600から完成品搬送機660に移動してもよい。
次に、射出成形機10が、金型装置800の型開を開始する(図24のステップS108)。その後、射出成形システム1は、今回の処理を終了する。なお、射出成形システム1は、図24のステップS108の後に、図23のステップS101を行ってもよい。つまり、射出成形システム1は、図23および図24に示す動作を繰り返し行ってもよい。
(成形条件の設定変更)
射出成形システム1は、一次成形品20、二次成形品30および三次成形品40を製造する。一次成形品20は、図9に示す第1キャビティ空間831の内部に成形材料を充填することにより製造される。
一方、二次成形品30は、図10に示す第2キャビティ空間833の一部に二次成形品用インサート材としての一次成形品20を配すると共に、第2キャビティ空間833の他の一部(例えば空間31S)に成形材料を充填することにより製造される。そのため、二次成形品用インサート材としての一次成形品20の在庫が不足している場合、射出成形システム1は二次成形品30を成形できない。
なお、第2キャビティ空間833の全体に成形材料を充填することにより、二次成形品30と同じ形状、同じ寸法の成形品を1回の射出成形で得ることは可能である。但し、ヒケの無い良品を得ようとすると、冷却時間が長くなる。
同様に、三次成形品40は、図10に示す第3キャビティ空間835の一部に三次成形品用インサート材としての二次成形品30を配すると共に、第3キャビティ空間835の他の一部(例えば空間41S)に成形材料を充填することにより製造される。そのため、三次成形品用インサート材としての二次成形品30の在庫が不足している場合、射出成形システム1は三次成形品40を成形できない。
なお、第3キャビティ空間835の全体に成形材料を充填することにより、三次成形品40と同じ形状、同じ寸法の成形品を1回の射出成形で得ることは可能である。但し、ヒケの無い良品を得ようとすると、冷却時間が長くなる。
そこで、本実施形態の射出成形システム1は、完成品40の品質を向上すると共に成形材料の無駄を低減するため、成形材料が充填されるキャビティ空間を切り替える。以下、成形材料が充填されるキャビティ空間の切り替えについて説明する。
図25は、一実施形態による金型装置のバルブを示す断面図である。図25に示すように、金型装置800は、成形材料の注入口812(図1等参照)に対し、第1キャビティ空間831を開閉する第1バルブ841を有する。第1バルブ841は、例えば第1ゲート825に設けられ、第1ゲート825を開閉する。図25に二点鎖線で示すように第1バルブ841が第1ゲート825を閉塞すると、第1キャビティ空間831が注入口812に対し閉塞される。一方、図25に実線で示すように第1バルブ841が第1ゲート825を開放すると、第1キャビティ空間831が注入口812に対し開放される。
同様に、金型装置800は、注入口812に対し第2キャビティ空間833を開閉する第2バルブ843を有する。第2バルブ843は、例えば第2ゲート826に設けられ、第2ゲート826を開閉する。
また、金型装置800は、注入口812に対し第3キャビティ空間835を開閉する第3バルブ845を有する。第3バルブ845は、例えば第3ゲート827に設けられ、第3ゲート827を開閉する。
なお、本実施形態の金型装置800は第1バルブ841、第2バルブ843、第3バルブ845を有するが、本発明はこれに限定されない。例えば、金型装置800は第1バルブ841を有しなくてもよく、第1キャビティ空間831が注入口812に対し常に開放されてもよい。三次成形品40を得るためには、一次成形品20の製造から始めるためである。
図26は、一実施形態による制御装置の構成要素を機能ブロックで示す図である。図26に図示される各機能ブロックは概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。各機能ブロックの全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUにて実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
図26に示すように、制御装置700は、金型装置800および射出装置300の制御に用いる設定を記憶する設定記憶部731と、金型装置800および射出装置300の制御に用いる設定を選択する設定選択部732とを有する。制御装置700は、予め定められた時からの成形品の総生産数を検出する総生産数検出部733、金型装置800の外部に存在するインサート材の在庫数を監視する在庫数監視部734、および搬送機500から金型装置800へのインサート材の引き渡しを検出する引渡検出部735のうち少なくとも1つをさらに有してよい。
設定記憶部731は、金型装置800および射出装置300の制御に用いる設定を複数種類記憶する。金型装置800の設定としては、第1バルブ841、第2バルブ843および第3バルブ845の開閉が挙げられる。射出装置300の設定としては、スクリュ330の計量完了位置、V/P切替位置が挙げられる。計量完了位置からV/P切替位置までの前進距離は、1回のショットで金型装置800の内部に充填される成形材料の充填量を表す。前進距離が長いほど、充填量が多い。
V/P切替位置が同じ場合、成形材料を充填するキャビティ空間の数が少ないほど、充填量が少なくて済むため、計量完了位置が前方に設定される。V/P切替位置が設定変更されないため、充填工程の完了時にシリンダ310の内部に残留する成形材料の量が保圧工程に必要な最小限の量で済む。その結果、成形材料がシリンダ310の内部で滞留する時間を短縮でき、成形材料の劣化を抑制できる。計量完了位置が設定変更される場合、計量工程の完了までに成形材料を充填するキャビティ空間の選択が行われる。
一方、計量完了位置が同じ場合、成形材料を充填するキャビティ空間の数が少ないほど、充填量が少なくて済むため、V/P切替位置が後方に設定される。計量完了位置が設定変更されずに、V/P切替位置が設定変更されるため、充填工程の開始までに、成形材料を充填するキャビティ空間の選択が行われればよい。従って、成形材料を充填するキャビティ空間の選択を、計量工程の完了後、充填工程の開始までに行うことも可能であり、計量工程の完了後の状況の変化に対応可能である。なお、第1バルブ841、第2バルブ843および第3バルブ845の設定変更は充填工程の開始までに行われるが、V/P切替位置の設定変更は充填工程の終了までに行われればよい。
その他の射出装置300の設定としては、例えば保圧工程における保持圧力が挙げられる。
設定記憶部731は、例えば下記の第1設定、第2設定、第3設定を記憶してよい。第1設定は、第1キャビティ空間831、第2キャビティ空間833および第3キャビティ空間835のうち第1キャビティ空間831のみに成形材料を充填する制御に用いる。第1設定では、第1バルブ841のみが開放とされ、第2バルブ843および第3バルブ845が閉塞とされる。第1設定は、一次成形品20のみを製造するのに用いられる。
第2設定は、第1キャビティ空間831、第2キャビティ空間833および第3キャビティ空間835のうち、第1キャビティ空間831および第2キャビティ空間833のみに成形材料を充填する制御に用いる。第2設定では、第1バルブ841および第2バルブ843が開放とされ、第3バルブ845が閉塞とされる。第2設定は、例えば第1設定の後に用いられ、一次成形品20および二次成形品30のみを製造するのに用いられる。
第3設定は、第1キャビティ空間831、第2キャビティ空間833および第3キャビティ空間835の全てに成形材料を充填する制御に用いる。第3設定では、第1バルブ841、第2バルブ843および第3バルブ845が開放とされる。第3設定は、例えば第2設定の後に用いられ、一次成形品20、二次成形品30および三次成形品40を製造するのに用いられる。
設定選択部732は、詳しくは後述するが、総生産数検出部733の検出結果、在庫数監視部734の監視結果、および引渡検出部735の検出結果のうち少なくとも1つに基づき、金型装置800および射出装置300の制御に用いる設定を選択する。なお、総生産数検出部733の検出結果、在庫数監視部734の監視結果、および引渡検出部735の検出結果は、単独で用いられてもよいし、任意の組合せで用いられてよい。
先ず、総生産数検出部733、および総生産数検出部733の検出結果に基づく設定選択部732の処理について説明する。
総生産数検出部733は、予め設定された時からの一次成形品20の総生産数N1を検出する。予め設定された時としては、例えば射出成形システム1の立ち上げ時、または三次成形品40の総生産数N3の目標数N30を設定した時などが挙げられる。
一次成形品20の総生産数N1は、ショット数などに基づき検出される。一次成形品20の総生産数N1は、良品の総生産数のみを含み、不良品の総生産数を含まなくてよい。一次成形品20の良否の判定には、例えば搬送機500に取り付けられる検査器が用いられる。なお、検査器の取付け場所は特に限定されない。
総生産数検出部733は、一次成形品20の総生産数N1を検出することで、総生産数N1とその目標数N10との差分(N1−N10)を検出してよい。一次成形品20の目標数N10は、三次成形品40の目標数N30と、三次成形において生じた不良品の数と、二次成形において生じた不良品の数との和に等しい。
同様に、総生産数検出部733は、予め設定された時からの二次成形品30の総生産数N2を検出する。予め設定された時としては、例えば射出成形システム1の立ち上げ時、または三次成形品40の総生産数N3の目標数N30を設定した時などが挙げられる。
二次成形品30の総生産数N2は、ショット数などに基づき検出される。二次成形品30は、一次成形品20を消費することで生産される。そのため、二次成形品30の総生産数N2は、一次成形品20の消費数以上になる。二次成形品30の総生産数N2は、良品の総生産数のみを含み、不良品の総生産数を含まなくてよい。二次成形品30の良否の判定には、例えば搬送機500に取り付けられる検査器が用いられる。なお、検査器の取付け場所は特に限定されない。
総生産数検出部733は、二次成形品30の総生産数N2を検出することで、総生産数N2とその目標数N20との差分(N2−N20)を検出してよい。二次成形品30の目標数N20は、三次成形品40の目標数N30と、三次成形において生じた不良品の数と和に等しい。
同様に、総生産数検出部733は、予め設定された時からの三次成形品40の総生産数N3を検出する。予め設定された時としては、例えば射出成形システム1の立ち上げ時、または三次成形品40の総生産数N3の目標数N30を設定した時などが挙げられる。
三次成形品40の総生産数N3は、ショット数などに基づき検出される。三次成形品40は、二次成形品30を消費することで生産される。そのため、三次成形品40の総生産数N3は、二次成形品30の消費数以上になる。三次成形品40の総生産数N3は、良品の総生産数のみを含み、不良品の総生産数を含まなくてよい。三次成形品40の良否の判定には、例えば搬送機500に取り付けられる検査器が用いられる。なお、検査器の取付け場所は特に限定されない。
総生産数検出部733は、三次成形品40の総生産数N3を検出することで、総生産数N3とその目標数N30との差分(N3−N30)を検出してよい。三次成形品40の目標数N30は、射出成形機10のユーザ等によって設定される。
図27は、一実施形態による総生産数検出部の検出結果に基づく設定選択部の処理を示すフローチャートである。図27に示すステップS411以降の処理は、例えば射出成形システム1の立ち上げ時に開始される。射出成形システム1の立ち上げ時には、冷却台600の上に一次成形品20および二次成形品30は存在しない。図27に示すステップS411以降の処理は、三次成形品40の総生産数N3が目標数N30に達するまで繰り返し行われてよい。
先ず、設定選択部732は、一次成形品20の総生産数N1が予め定めた数(例えば、後述のM10)以上であるか否かをチェックする(ステップS411)。M10は、冷却台600における一次成形品20の在庫数M1の目標値である。一次成形品20は、冷却台600で冷却された後、二次成形品用インサート材として用いられ、消費される。
一次成形品20の総生産数N1がM10未満である場合(ステップS411、No)、二次成形品用インサート材の在庫数M1が目標数M10に達しておらず、二次成形品30の製造が不可であるため、設定選択部732は第1設定を選択する(ステップS412)。第1設定は、上述の如く、第1キャビティ空間831のみに成形材料を充填する制御に用いる。
一方、一次成形品20の総生産数N1がM10以上である場合(ステップS411、Yes)、二次成形品用インサート材の在庫数M1が目標数M10に達しており、二次成形品30の製造が可能である。この場合、設定選択部732は、二次成形品30の総生産数N2が予め定めた数(例えば、後述のM20)以上であるか否かをチェックする(ステップS413)。M20は、例えば冷却台600における二次成形品30の在庫数M2の目標数M20である。二次成形品30は、冷却台600で冷却された後、三次成形品用インサート材として用いられ、消費される。
二次成形品30の総生産数N2がM20未満である場合(ステップS413、No)、三次成形品用インサート材の在庫数M2が目標数M20に達しておらず、三次成形品40の製造が不可であるため、設定選択部732は第2設定を選択する(ステップS414)。第2設定は、上述の如く、第1キャビティ空間831および第2キャビティ空間833のみに成形材料を充填する制御に用いる。
一方、二次成形品30の総生産数N2がM20以上である場合(ステップS413、Yes)、三次成形品用インサート材の在庫数M2が目標数M20に達しており、三次成形品40の製造が可能である。この場合、設定選択部732は第3設定を選択する(ステップS415)。第3設定は、上述の如く、第1キャビティ空間831、第2キャビティ空間833および第3キャビティ空間835に成形材料を充填する制御に用いる。
このように、設定選択部732は、金型装置800および射出装置300の制御に用いる設定を選択する。選択される設定は、設定記憶部731に予め記憶されたものを読み出して用いる。成形機制御部710は、設定選択部732によって選択された設定に基づき、ショットを1回実行する。その後、三次成形品40の総生産数N3が目標数N30に達するまで、図27に示すステップS411以降の処理が繰り返し行われてよい。
次に、在庫数監視部734、および在庫数監視部734の監視結果に基づく設定選択部732の処理について説明する。
在庫数監視部734は、金型装置800の外部に存在する二次成形品用インサート材としての一次成形品20の在庫数M1を検出する。一次成形品20の在庫数M1の検出には、例えば冷却台600を監視する監視カメラ602が用いられる。在庫数監視部734は、監視カメラ602によって撮像された画像を画像処理することにより、一次成形品冷却部610に置かれた一次成形品20の在庫数M1を検出する。一次成形品20の在庫数M1は、例えば一次成形品20の総生産数N1から一次成形品20の消費数を差し引いた数に等しい。
なお、一次成形品20の在庫数M1は、冷却済みの一次成形品20の在庫数のみを含み、冷却中の一次成形品20の在庫数を含まなくてもよい。冷却中の一次成形品20は、二次成形品用インサート材として使用できる程度に固化されていないためである。一次成形品20が冷却中か冷却済みかの判定には、例えば一次成形品20の一次成形品冷却部610による冷却開始からの経過時間、一次成形品20の温度などが用いられる。一次成形品20の温度は、例えば赤外線サーモグラフィカメラなどで測定される。監視カメラ602が、赤外線サーモグラフィカメラを兼ねてよい。
同様に、在庫数監視部734は、金型装置800の外部に存在する三次成形品用インサート材としての二次成形品30の在庫数M2を検出する。二次成形品30の在庫数M2の検出には、例えば冷却台600を監視する監視カメラ602が用いられる。在庫数監視部734は、監視カメラ602によって撮像された画像を画像処理することにより、二次成形品冷却部620に置かれた二次成形品30の在庫数M2を検出する。二次成形品30の在庫数M2は、例えば二次成形品30の総生産数N2から二次成形品30の消費数を差し引いた数に等しい。
なお、二次成形品30の在庫数M2は、冷却済みの二次成形品30の在庫数のみを含み、冷却中の二次成形品30の在庫数を含まなくてもよい。冷却中の二次成形品30は、三次成形品用インサート材として使用できる程度に固化されていないためである。二次成形品30が冷却中か冷却済みかの判定には、例えば二次成形品30の二次成形品冷却部620による冷却開始からの経過時間、二次成形品30の温度などが用いられる。二次成形品30の温度は、例えば赤外線サーモグラフィカメラなどで測定される。監視カメラ602が、赤外線サーモグラフィカメラを兼ねてよい。
図28は、一実施形態による在庫数監視部の監視結果に基づく設定選択部の処理を示すフローチャートである。図28に示すステップS421以降の処理は、例えば射出成形システム1の立ち上げ時に開始される。射出成形システム1の立ち上げ時には、冷却台600の上に一次成形品20および二次成形品30は存在しない。図28に示すステップS421以降の処理は、三次成形品40の総生産数N3が目標数N30に達するまで繰り返し行われてよい。
先ず、設定選択部732は、二次成形品用インサート材の在庫数M1が目標数M10未満であるか否かをチェックする(ステップS421)。目標数M10は、例えば二次成形品用インサート材が挿入される第2キャビティ空間833の数に基づき設定され、第2キャビティ空間833の数以上に設定される。また、目標数M10は、例えば一次成形品冷却部610の数に基づき設定され、一次成形品冷却部610の数以下に設定される。さらに、目標数M10は、二次成形品用インサート材としての一次成形品20の総生産数N1とその目標数N10との差分(N1−N10)に基づき設定されてもよく、例えば差分(N1−N10)以下に設定されてもよい。三次成形品40の総生産数N3が目標数N30に達したときに余る一次成形品20の数を低減できる。
二次成形品用インサート材の在庫数M1が目標数M10未満である場合(ステップS421、Yes)、二次成形品用インサート材の在庫数M1が不足している。この場合、二次成形品用インサート材となる一次成形品20が製造されるように、設定選択部732は成形材料を充填する空間に第1キャビティ空間831を指定する(ステップS422)。
一方、二次成形品用インサート材の在庫数M1が目標数M10以上である場合(ステップS421、No)、二次成形品用インサート材の在庫数M1が足りている。この場合、二次成形品用インサート材となる一次成形品20が製造されないように、設定選択部732は成形材料を充填しない空間に第1キャビティ空間831を指定する(ステップS423)。
次に、設定選択部732は、三次成形品用インサート材の在庫数M2が目標数M20未満であるか否かをチェックする(ステップS424)。目標数M20は、例えば三次成形品用インサート材が挿入される第3キャビティ空間835の数に基づき設定され、第3キャビティ空間835の数以上に設定される。また、目標数M20は、例えば二次成形品冷却部620の数に基づき設定され、二次成形品冷却部620の数以下に設定される。さらに、目標数M20は、三次成形品用インサート材としての二次成形品30の総生産数N2とその目標数N20との差分(N2−N20)に基づき設定されてもよく、例えば差分(N2−N20)以下に設定されてもよい。三次成形品40の総生産数N3が目標数N30に達したときに余る二次成形品30の数を低減できる。
三次成形品用インサート材の在庫数M2が目標数M20未満である場合(ステップS424、Yes)、三次成形品用インサート材の在庫数M2が不足しており、三次成形品用インサート材となる二次成形品30を製造する必要がある。但し、二次成形品30の製造には、二次成形品用インサート材の在庫数M1が第2キャビティ空間833の数(例えば1)以上である必要がある。
そこで、三次成形品用インサート材の在庫数M2が目標数M20未満である場合(ステップS424、Yes)、設定選択部732は二次成形品用インサート材の在庫数M1が第2キャビティ空間833の数(例えば1)以上であるか否かをチェックする(ステップS425)。M1が1以上である場合(ステップS425、Yes)、二次成形品30の製造が可能であるので、設定選択部732は成形材料を充填する空間に第2キャビティ空間833を指定する(ステップS426)。一方、M1が1未満である場合(ステップS425、No)、二次成形品30の製造が不可であるので、設定選択部732は成形材料を充填しない空間に第2キャビティ空間833を指定する(ステップS427)。
一方、三次成形品用インサート材の在庫数M2が目標数M20以上である場合(ステップS424、No)、三次成形品用インサート材の在庫数M2が足りている。この場合、三次成形品用インサート材となる二次成形品30が製造されないように、設定選択部732は成形材料を充填しない空間に第2キャビティ空間833を指定する(ステップS427)。
次に、設定選択部732は、三次成形品用インサート材の在庫数M2が第3キャビティ空間835の数(例えば1)以上であるか否かをチェックする(ステップS428)。
三次成形品用インサート材の在庫数M2が第3キャビティ空間835の数(例えば1)以上である場合(ステップS428、Yes)、三次成形品40の製造が可能であるので、設定選択部732は成形材料を充填する空間に第3キャビティ空間835を指定する(ステップS429)。
一方、三次成形品用インサート材の在庫数M2が第3キャビティ空間835の数(例えば1)未満である場合(ステップS428、No)、三次成形品40の製造が不可であるので、設定選択部732は成形材料を充填しない空間に第3キャビティ空間835を指定する(ステップS430)。
最後に、設定選択部732は、指定の結果に基づき、金型装置800および射出装置300の制御に用いる設定を選択する(ステップS431)。選択される設定は、設定記憶部731に予め記憶されたものを読み出して用いる。成形機制御部710は、設定選択部732によって選択された設定に基づき、ショットを1回実行する。その後、三次成形品40の総生産数N3が目標数N30に達するまで、図28に示すステップS421以降の処理が繰り返し行われてよい。
なお、設定記憶部731に予め記憶される設定は、上記の第1設定、第2設定および第3設定には限定されない。例えば、下記の第4設定および第5設定が設定記憶部731に予め記憶されてよい。
第4設定は、第1キャビティ空間831、第2キャビティ空間833および第3キャビティ空間835のうち第2キャビティ空間833および第3キャビティ空間835のみに成形材料を充填する制御に用いる。第4設定では、第1バルブ841が閉塞とされ、第2バルブ843および第3バルブ845が開放とされる。第4設定は、二次成形品30および三次成形品40のみを製造するのに用いられる。
第5設定は、第1キャビティ空間831、第2キャビティ空間833および第3キャビティ空間835のうち第3キャビティ空間835のみに成形材料を充填する制御に用いる。第5設定では、第1バルブ841および第2バルブ843が閉塞とされ、第3バルブ845のみが開放とされる。第5設定は、三次成形品40のみを製造するのに用いられる。
上記の第1設定、第2設定、第3設定、第4設定、および第5設定は、通常、この順で用いられる。なお、下記の第6設定および第7設定が、設定記憶部731に予め記憶されてもよい。
第6設定は、第1キャビティ空間831、第2キャビティ空間833および第3キャビティ空間835のうち第2キャビティ空間833のみに成形材料を充填する制御に用いる。第6設定では、第1バルブ841および第3バルブ845が閉塞とされ、第2バルブ843のみが開放とされる。第6設定は、二次成形品30のみを製造するのに用いられる。
第7設定は、第1キャビティ空間831、第2キャビティ空間833および第3キャビティ空間835のうち第1キャビティ空間831および第3キャビティ空間835のみに成形材料を充填する制御に用いる。第7設定では、第1バルブ841および第3バルブ845が開放とされ、第2バルブ843のみが閉塞とされる。第7設定は、一次成形品20および三次成形品40のみを製造するのに用いられる。
次に、引渡検出部735、および引渡検出部735の監視結果に基づく設定選択部732の処理について説明する。
引渡検出部735は、搬送機500から金型装置800への二次成形品用インサート材(例えば一次成形品20)の引き渡しを検出する。二次成形品用インサート材の引き渡しの検出には、例えば固定金型810の吸引路814の気圧を検出する気圧検出器816(図10参照)が用いられる。二次成形品用インサート材の引き渡しが成功しており、二次成形品用インサート材が固定金型810に吸着されている場合、真空リークが生じないため、吸引路814の気圧が閾値以下に下がる。一方、二次成形品用インサート材の引き渡しが失敗しており、二次成形品用インサート材が固定金型810から外れた場合、真空リークが生じるため、吸引路814の気圧が閾値以下に下がらない。従って、引渡検出部735は、吸引路814の気圧が閾値以下か否かで、引き渡しの成否を検出できる。
なお、二次成形品用インサート材の引き渡しの検出に、本実施形態では金型装置800の気圧検出器816が用いられるが、搬送機500の気圧検出器が用いられてもよく、両者が用いられてもよい。搬送機500の気圧検出器は、吸着ノズル533(図15参照)の吸引路の気圧を検出する。二次成形品用インサート材の引き渡しが成功しており、固定金型810に吸着された二次成形品用インサート材から搬送機500が離れる場合、吸着ノズル533の吸引路が大気開放されるため、その吸引路の気圧が大気圧に戻る。一方、二次成形品用インサート材の引き渡しが失敗し、固定金型810に吸着された二次成形品用インサート材が搬送機500と共に移動し固定金型810から外れる場合、吸着ノズル533の吸引路が塞がれているため、その吸引路の気圧が大気圧よりも低い。引渡検出部735は、吸着ノズル533の吸引路の気圧が大気圧に戻っているか否かで、引き渡しの成否を検出できる。
同様に、引渡検出部735は、搬送機500から金型装置800への三次成形品用インサート材(例えば二次成形品30)の引き渡しを検出する。三次成形品用インサート材の引き渡しの検出には、例えば固定金型810の吸引路817の気圧を検出する気圧検出器819(図10参照)が用いられる。三次成形品用インサート材の引き渡しが成功しており、三次成形品用インサート材が固定金型810に吸着されている場合、真空リークが生じないため、吸引路817の気圧が閾値以下に下がる。一方、三次成形品用インサート材の引き渡しが失敗しており、三次成形品用インサート材が固定金型810から外れた場合、真空リークが生じるため、吸引路817の気圧が閾値以下に下がらない。従って、引渡検出部735は、吸引路817の気圧が閾値以下か否かで、引き渡しの成否を検出できる。
なお、三次成形品用インサート材の引き渡しの検出に、本実施形態では金型装置800の気圧検出器819が用いられるが、搬送機500の気圧検出器が用いられてもよく、両者が用いられてもよい。搬送機500の気圧検出器は、吸着ノズル536(図15参照)の吸引路の気圧を検出する。三次成形品用インサート材の引き渡しが成功しており、固定金型810に吸着された三次成形品用インサート材から搬送機500が離れる場合、吸着ノズル536の吸引路が大気開放されるため、その吸引路の気圧が大気圧に戻る。一方、三次成形品用インサート材の引き渡しが失敗し、固定金型810に吸着された三次成形品用インサート材が搬送機500と共に移動し固定金型810から外れる場合、吸着ノズル536の吸引路が塞がれているため、その吸引路の気圧が大気圧よりも低い。引渡検出部735は、吸着ノズル536の吸引路の気圧が大気圧に戻っているか否かで、引き渡しの成否を検出できる。
図29は、一実施形態による引渡検出部の検出結果に基づく設定選択部の処理を示すフローチャートである。図29に示すステップS441以降の処理は、例えば射出成形システム1の立ち上げ時に開始される。射出成形システム1の立ち上げ時には、冷却台600の上に一次成形品20および二次成形品30は存在しない。図29に示すステップS441以降の処理は、三次成形品40の総生産数N3が目標数N30に達するまで繰り返し行われてよい。
先ず、設定選択部732は、搬送機500から金型装置800への二次成形品用インサート材の引き渡しが成功したか否かをチェックする(ステップS441)。
二次成形品用インサート材の引き渡しが成功した場合(ステップS441、Yes)、二次成形品用インサート材が第2キャビティ空間833に挿入される。そのため、設定選択部732は成形材料を充填する空間に第2キャビティ空間833を指定する(ステップS442)。
一方、二次成形品用インサート材の引き渡しが失敗した場合(ステップS441、No)、二次成形品用インサート材が第2キャビティ空間833に挿入されない。そのため、設定選択部732は成形材料を充填しない空間に第2キャビティ空間833を指定する(ステップS443)。
次に、設定選択部732は、搬送機500から金型装置800への三次成形品用インサート材の引き渡しが成功したか否かをチェックする(ステップS444)。
三次成形品用インサート材の引き渡しが成功した場合(ステップS444、Yes)、三次成形品用インサート材が第3キャビティ空間835に挿入される。そのため、設定選択部732は成形材料を充填する空間に第3キャビティ空間835を指定する(ステップS445)。
一方、三次成形品用インサート材の引き渡しが失敗した場合(ステップS444、No)、三次成形品用インサート材が第3キャビティ空間835に挿入されない。そのため、設定選択部732は成形材料を充填しない空間に第3キャビティ空間835を指定する(ステップS446)。
最後に、設定選択部732は、指定の結果に基づき、金型装置800および射出装置300の制御に用いる設定を選択する(ステップS447)。選択される設定は、設定記憶部731に予め記憶されたものを読み出して用いる。成形機制御部710は、設定選択部732によって選択された設定に基づき、ショットを1回実行する。その後、三次成形品40の総生産数N3が目標数N30に達するまで、図28に示すステップS441以降の処理が繰り返し行われてよい。
なお、図29に示す処理において、設定選択部732は、第1キャビティ空間831を、常に成形材料を充填する空間に指定してもよいし、図28に示すように在庫数監視部734の監視結果に基づき、成形材料を充填する空間、成形材料を充填しない空間のいずれかに指定してもよい。
以上説明したように本実施形態によれば、金型装置800は、一次成形品20が成形される第1キャビティ空間831と、二次成形品30が成形される第2キャビティ空間833とを有する。設定記憶部731には、(1)第1キャビティ空間831のみに成形材料を充填する制御の設定と、(2)第1キャビティ空間831及び第2キャビティ空間833に成形材料を充填する制御の設定とが記憶される。そのため、二次成形品30の量産開始時に、第1キャビティ空間831に成形材料を充填すると共に、第2キャビティ空間833への成形材料の充填を禁止することができる。二次成形品30の量産開始時には、第2キャビティ空間833に挿入される二次成形品用インサート材としての一次成形品20が存在しないため、二次成形品30が成形できないためである。本実施形態によれば、二次成形品30の量産開始時に、先ずは一次成形品20を生産する。一次成形品20は、冷却された後、二次成形品用インサート材として第2キャビティ空間833の一部に配される。第2キャビティ空間833の他の一部に成形材料を充填することで、二次成形品30が生産される。よって、ヒケの少ない二次成形品30を生産でき、二次成形品30の品質を向上できる。また、成形材料の無駄を低減できる。
本実施形態によれば、設定記憶部731には、上記(1)の設定、上記(2)の設定に加えて、(3)第2キャビティ空間833のみに成形材料を充填する制御に用いる設定が記憶される。そのため、二次成形品30の量産終了時に、第2キャビティ空間833に成形材料を充填すると共に、第1キャビティ空間831への成形材料の充填を禁止することができる。つまり、二次成形品30の量産終了時に、二次成形品30を生産すると共に、一次成形品20の生産を禁止することができる。従って、二次成形品30の量産終了時に、一次成形品20が余ることを回避できる。
本実施形態によれば、冷却台600の一次成形品冷却部610が、金型装置800から取り出された一次成形品20を冷却する。また、搬送機500が、一次成形品冷却部610で冷却された一次成形品20を、第2キャビティ空間833に挿入すべく一次成形品冷却部610から金型装置800に搬送する。一次成形品20は、型開時に金型装置800からの取り出しが可能な程度に固化していればよい。一次成形品20の残りの固化を金型装置800の外部で行うことにより、金型装置800の内部で一次成形品20を冷却する冷却工程の時間を短縮でき、成形サイクルを短縮できる。また、金型装置800の内部で一次成形品20を成形する処理と、予め成形された一次成形品20を金型装置800の外部で冷却する処理とを同時に行うことにより、完成品の生産速度を向上できる。
本実施形態によれば、在庫数監視部734が、第2キャビティ空間833に挿入すべく一次成形品冷却部610から金型装置800に搬送可能な一次成形品20の在庫数M1を監視する。また、設定選択部732は、一次成形品20の在庫数M1に基づき、金型装置800および射出装置300の制御に用いる設定を選択する。例えば、二次成形品30の量産開始時に、一次成形品20の在庫数M1に基づき、第2キャビティ空間833を、成形材料を充填する空間、成形材料を充填しない空間のいずれかに指定できる(図28のステップS425〜S427)。二次成形品30の量産開始時に、第1キャビティ空間831に成形材料を充填すると共に、第2キャビティ空間833への成形材料の充填を禁止することができる。また、二次成形品30の量産終了時に、二次成形品用インサート材の在庫数M1に基づき、第1キャビティ空間831を、成形材料を充填する空間、成形材料を充填しない空間のいずれかに指定できる(図28のステップS421〜S423)。二次成形品30の量産終了時に、第2キャビティ空間833に成形材料を充填すると共に、第1キャビティ空間831への成形材料の充填を禁止することができる。
本実施形態によれば、引渡検出部735が、一次成形品冷却部610で冷却された一次成形品20の、搬送機500から金型装置800への引き渡しを検出する。その引き渡しの成否に基づき、設定選択部732は、金型装置800および射出装置300の制御に用いる設定を選択する。一次成形品20の引き渡しが失敗した場合、一次成形品20が第2キャビティ空間833に挿入されないため、設定選択部732は成形材料を充填しない空間に第2キャビティ空間833を指定する(図29のステップS443)。これにより、第2キャビティ空間833に一次成形品20が配されていない状態で第2キャビティ空間833の全体に成形材料を充填することを禁止でき、無駄な成形材料の使用を防止できる。
本実施形態によれば、総生産数検出部733が、予め設定された時からの一次成形品20の総生産数N1を検出する。設定選択部732は、一次成形品20の総生産数N1に基づき、金型装置800および射出装置300の制御に用いる設定を選択する。二次成形品30の量産開始時に、一次成形品20の総生産数N1を一次成形品20の在庫数M1の管理に利用でき、第1キャビティ空間831に成形材料を充填すると共に第2キャビティ空間833への成形材料の充填を禁止することができる(図27のステップS411、S412)。また、二次成形品30の量産終了時に、一次成形品20の総生産数N1とその目標数N10との差分(N1−N10)を目標数M10の管理に利用でき、第2キャビティ空間833に成形材料を充填すると共に第1キャビティ空間831への成形材料の充填を禁止することができる(図28のステップS421、S423)。
本実施形態によれば、金型装置800は、一次成形品20が成形される第1キャビティ空間831と、二次成形品30が成形される第2キャビティ空間833と、三次成形品40が成形される第3キャビティ空間835とを有する。設定記憶部731には、(A)第1キャビティ空間831のみに成形材料を充填する制御に用いる設定、(B)第1キャビティ空間831および第2キャビティ空間833のみに成形材料を充填する制御に用いる設定、ならびに(C)第1キャビティ空間831、第2キャビティ空間833および第3キャビティ空間835に成形材料を充填する制御に用いる設定を記憶する。三次成形品の量産開始時に、上記(A)の設定、上記(B)の設定、および上記(C)の設定は、この順で用いられる。
先ず、上記(A)の設定が用いられる。そのため、第1キャビティ空間831に成形材料を充填すると共に、第2キャビティ空間833および第3キャビティ空間835への成形材料の充填を禁止することができる。三次成形品40の量産開始時には、第2キャビティ空間833に挿入される二次成形品用インサート材としての一次成形品20が存在しないため、二次成形品30が成形できない。同様に、三次成形品40の量産開始時には、第3キャビティ空間835に挿入される三次成形品用インサート材としての二次成形品30が存在しないため、三次成形品40が成形できない。
本実施形態によれば、三次成形品40の量産開始時に、第1キャビティ空間831に成形材料を充填すると共に、第2キャビティ空間833および第3キャビティ空間835への成形材料の充填を禁止することができる。そのため、先ずは一次成形品20が生産される。一次成形品20は、冷却された後、二次成形品用インサート材として第2キャビティ空間833の一部に配される。第2キャビティ空間833の他の一部に成形材料を充填することで、二次成形品30が生産される。よって、ヒケの少ない二次成形品30を生産でき、二次成形品30の品質を向上できる。また、成形材料の無駄を低減できる。なお、この段階では、上記(B)の設定が用いられる。この段階では、第3キャビティ空間835に挿入される三次成形品用インサート材としての二次成形品30が存在しないためである。
上記(B)の設定を用いて二次成形品30が生産される。二次成形品30は、冷却された後、三次成形品用インサート材として第3キャビティ空間835の一部に配される。第3キャビティ空間835の他の一部に成形材料を充填することで、三次成形品40が生産される。よって、ヒケの少ない三次成形品40を生産でき、三次成形品40の品質を向上できる。また、成形材料の無駄を低減できる。なお、この段階では、上記(C)の設定が用いられる。
本実施形態によれば、冷却台600の二次成形品冷却部620が、金型装置800から取り出された二次成形品30を冷却する。また、搬送機500が、二次成形品冷却部620で冷却された二次成形品30を、第3キャビティ空間835に挿入すべく二次成形品冷却部620から金型装置800に搬送する。金型装置800の内部で二次成形品30を成形する処理と、予め成形された二次成形品30を金型装置800の外部で冷却する処理とを同時に行うことにより、完成品の生産速度を向上できる。
本実施形態によれば、在庫数監視部734が、第3キャビティ空間835に挿入すべく二次成形品冷却部620から金型装置800に搬送可能な二次成形品30の在庫数M2を監視する。また、設定選択部732は、二次成形品30の在庫数M2に基づき、金型装置800および射出装置300の制御に用いる設定を選択する。例えば、三次成形品40の量産開始時に、二次成形品30の在庫数M2に基づき、第3キャビティ空間835を、成形材料を充填する空間、成形材料を充填しない空間のいずれかに指定できる(図28のステップS428〜S430)。三次成形品40の量産開始時に、第1キャビティ空間831に成形材料を充填すると共に、第3キャビティ空間835への成形材料の充填を禁止することができる。また、三次成形品40の量産終了時に、二次成形品30の在庫数M2に基づき、第2キャビティ空間833を、成形材料を充填する空間、成形材料を充填しない空間のいずれかに指定できる(図28のステップS424、S427)。三次成形品40の量産終了時に、第3キャビティ空間835に成形材料を充填すると共に、第2キャビティ空間833への成形材料の充填を禁止することができる。
本実施形態によれば、引渡検出部735が、二次成形品冷却部620で冷却された二次成形品30の、搬送機500から金型装置800への引き渡しを検出する。その引き渡しの成否に基づき、設定選択部732は、金型装置800および射出装置300の制御に用いる設定を選択する。二次成形品30の引き渡しが失敗した場合、二次成形品30が第3キャビティ空間835に挿入されないため、設定選択部732は成形材料を充填しない空間に第3キャビティ空間835を指定する(図29のステップS446)。これにより、第3キャビティ空間835に二次成形品30が配されていない状態で第3キャビティ空間835の全体に成形材料を充填することを禁止でき、無駄な成形材料の使用を防止できる。
本実施形態によれば、総生産数検出部733が、予め設定された時からの二次成形品30の総生産数N2を検出する。設定選択部732は、二次成形品30の総生産数N2に基づき、金型装置800および射出装置300の制御に用いる設定を選択する。三次成形品40の量産開始時に、二次成形品30の総生産数N2を二次成形品30の在庫数M2の管理に利用でき、第1キャビティ空間831および第2キャビティ空間833に成形材料を充填すると共に第3キャビティ空間835への成形材料の充填を禁止することができる(図27のステップS413、S414)。また、三次成形品40の量産終了時に、二次成形品30の総生産数N2とその目標数N20との差分(N2−N20)を目標数M20の管理に利用でき、第3キャビティ空間835に成形材料を充填すると共に第2キャビティ空間833への成形材料の充填を禁止することができる(図28のステップS424、427)。
本実施形態によれば、金型装置800は、射出装置300によって成形材料が注入される注入口812と、注入口812に対し第2キャビティ空間833を開閉する第2バルブ843とを有する。第2バルブ843は、制御装置700による制御下で、注入口812に対し第2キャビティ空間833を開閉する。よって、金型装置800の内部における成形材料の流れ方向を自動で切り替えることができる。なお、注入口812に対する第2キャビティ空間833の開閉は、手動で行われてもよい。
本実施形態によれば、金型装置800は、射出装置300によって成形材料が注入される注入口812と、注入口812に対し第1キャビティ空間831を開閉する第1バルブ841とを有する。第1バルブ841は、制御装置700による制御下で、注入口812に対し第1キャビティ空間831を開閉する。よって、金型装置800の内部における成形材料の流れ方向を自動で切り替えることができる。なお、注入口812に対する第1キャビティ空間831の開閉は、手動で行われてもよい。
本実施形態によれば、金型装置800は、射出装置300によって成形材料が注入される注入口812と、注入口812に対し第3キャビティ空間835を開閉する第3バルブ845とを有する。第3バルブ845は、制御装置700による制御下で、注入口812に対し第3キャビティ空間835を開閉する。よって、金型装置800の内部における成形材料の流れ方向を自動で切り替えることができる。なお、注入口812に対する第3キャビティ空間835の開閉は、手動で行われてもよい。
なお、本実施形態では第1キャビティ空間831で成形される第1成形品が一次成形品20であり、第2キャビティ空間833で成形される第2成形品が二次成形品30であるが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1キャビティ空間831で成形される第1成形品が二次成形品30であり、第2キャビティ空間833で成形される第2成形品が三次成形品40であってもよい。
(射出成形方法)
図30および図31は、一実施形態による一次成形品の成形から三次成形品の搬出までの工程を示すフローチャートである。図30は一次成形品の成形から二次成形品のゲートカット直前までの工程を示し、図31は二次成形品のゲートカットから三次成形品の搬出までの工程を示す。
先ず、射出成形機10が、型締状態の金型装置800の内部で一次成形品20を成形する(ステップS501)。その後、射出成形機10が、金型装置800の型開を行う。このとき、一次成形品20は、可動金型820に密着しており、可動金型820と共に移動する。
次に、搬送機500が、型開状態の可動金型820と固定金型810との間に侵入し、可動金型820から一次成形品20を受け取る。これにより、搬送機500が、可動金型820から一次成形品20を取り出す(ステップS502)。一次成形品20は、搬送機500の第1成形品保持部521に吸着される(図16(A)参照)。具体的には、一次成形品20は、レンズ部21が円筒部522の外部に配置されるように、フランジ部24が複数の吸着ノズル523に吸着される。
次に、搬送機500が、一次成形品20を射出成形機10からゲートカット機550に搬送する(ステップS503)。その後、搬送機500は、第1成形品保持部521による一次成形品20の吸着を解除し、図17(A)に示すように一次成形品20をゲートカット機550の第1支持部560に載置する。具体的には、一次成形品20のレンズ部21の凸曲面23が下向きになるように、一次成形品20のフランジ部24が複数の支持爪562に載置される(図18(A)二点鎖線参照)。
次に、ゲートカット機550が、一次成形品20と不用品60との境界を切断し、図17(B)に示すように一次成形品20を不用品60から切り離す(ステップS504)。この間、一次成形品20は、ゲートカット機550の第1支持部560によって支持される。
次に、反転機590が、不用品60から切り離された一次成形品20を、図18(A)に実線で示すように第1支持部560から持ち上げ、図18(B)に実線で示すように上下反転させる(ステップS504)。その後、反転機590は、図18(B)に二点鎖線で示すように一次成形品20を第1支持部560に再び載置する。一次成形品20は、レンズ部21の凸曲面23が上向きになるように第1支持部560に載置される。
一次成形品20を上下反転させるのは、下記ステップS507において、図21(A)に示すようにレンズ部21の凸曲面23が上向きになるように一次成形品20を冷却台600に載置するためである。また、下記ステップS511において、冷却済みの一次成形品20(二次成形品用インサート材)を固定金型810に吸着するときに、図16(B)に示すようにレンズ部21の凸曲面23を可動金型820に向けるためである。
次に、搬送機500が、一次成形品20をゲートカット機550から受け取り、ゲートカット機550から冷却台600に搬送する(ステップS506)。この間、一次成形品20は、搬送機500の第1成形品保持部521に吸着される。具体的には、一次成形品20は、レンズ部21が円筒部522の内部に挿入されるように、フランジ部24が複数の吸着ノズル523に吸着される。その後、搬送機500は、第1成形品保持部521による一次成形品20の吸着を解除し、一次成形品20を冷却台600に載置する。
次に、冷却台600が、一次成形品20を冷却する(ステップS507)。一次成形品20は、予め設定された時間以上、冷却台600に載置される。このとき、一次成形品20は、図21(A)に示すようにレンズ部21の凸曲面23を上に向けて、一次成形品冷却部610に載置される。冷却台600の上で、一次成形品20の全体が固化され、二次成形品用インサート材としての使用が可能になる。
次に、搬送機500が、一次成形品20を冷却台600から受け取り、冷却台600からアライメント機630に搬送する(ステップS508)。この間、一次成形品20は、搬送機500の第1インサート材保持部531に吸着される。具体的には、一次成形品20は、レンズ部21が円筒部532の内部に挿入されるように、フランジ部24が複数の吸着ノズル533に吸着される。その後、搬送機500は、第1インサート材保持部531による一次成形品20の吸着を解除し、一次成形品20をアライメント機630に載置する(図22参照)。
一次成形品20は、レンズ部21の凸曲面23を上に向けて、第1チャック640に載置される。下記ステップS511において、一次成形品20を固定金型810に吸着するときに、図16(B)に示すようにレンズ部21の凸曲面23を可動金型820に向けるためである。
次に、アライメント機630が、一次成形品20の位置合わせを行う(ステップS509)。位置合わせは、芯出しと、芯周りの回転とを含む。芯出しでは、鉛直方向視で、一次成形品20の中心と、チャック本体641の中心とが一致させられる。また、芯周りの回転では、鉛直方向視で、フランジ部24に形成された第1切欠き27、第2切欠き28および第3切欠き29が予め定められた角度に向けられる。金型装置800の内部にインサートされる一次成形品20の位置合わせを予め行うことにより、一次成形品20を予め設定された向きで固定金型810の予め設定された位置に吸着できる。
次に、搬送機500が、一次成形品20をアライメント機630から受け取り、アライメント機630から射出成形機に搬送する(ステップS510)。この間、一次成形品20は、搬送機500の第1インサート材保持部531に吸着される。具体的には、一次成形品20は、レンズ部21が円筒部532の内部に挿入されるように、フランジ部24が複数の吸着ノズル533に吸着される。その後、搬送機500は、型開状態の固定金型810に一次成形品20を当接させる。このとき、第1インサート材保持部531は、固定金型810に対向配置される(図16(A)参照)。
次に、射出成形機10が、型開状態の固定金型810に一次成形品20を吸着させる(ステップS511)。その後、搬送機500は、第1インサート材保持部531による一次成形品20の吸着を解除し、一次成形品20を固定金型810に引き渡す。一次成形品20は、レンズ部21の凸曲面23を可動金型820に向けて、固定金型810に吸着される。型締時に、図10に示すように、レンズ部21の凸曲面23と可動金型820との間に、二次積層部31を成形する空間31Sを形成するためである。その後、第1インサート材保持部531および加熱部540が回転軸部511と共に90°回転され、加熱部540が固定金型810に対向配置される(図16(B)参照)。
次に、加熱部540が、一次成形品20の二次積層部31を積層する面(例えばレンズ部21の凸曲面23)を加熱する(ステップS512)。レンズ部21の凸曲面23が溶融し、表面張力が生じるため、一次成形品20の冷却時に生じたシワを除去することができる。その後、搬送機500が型開状態の固定金型810と可動金型820の間から退出し、射出成形機10が金型装置800の型閉および型締を行う。
次に、射出成形機10が型締状態の金型装置800の内部で二次成形品30を成形する(ステップS513)。二次成形品30は、一次成形品20に加えて、一次成形品20に積層される二次積層部31を有する。二次積層部31は、レンズ部21の凸曲面23の全体を覆うように形成される。その後、射出成形機10が、金型装置800の型開を行う。このとき、二次成形品30は、可動金型820に密着しており、可動金型820と共に移動する。
次に、搬送機500が、型開状態の可動金型820と固定金型810との間に侵入し、可動金型820から二次成形品30を受け取る。これにより、搬送機500が、可動金型820から二次成形品30を取り出す(ステップS514)。二次成形品30は、搬送機500の第2成形品保持部524に吸着される(図16(A)参照)。具体的には、二次成形品30は、レンズ部21が円筒部525の外部に配置されるように、フランジ部24が複数の吸着ノズル526に吸着される。
次に、搬送機500が、二次成形品30を射出成形機10からゲートカット機550に搬送する(ステップS515)。その後、搬送機500は、第2成形品保持部524による二次成形品30の吸着を解除し、図17(A)に示すように二次成形品30をゲートカット機550の第2支持部570に載置する。具体的には、二次成形品30のレンズ部21の凸曲面23が下向きになるように、二次成形品30のフランジ部24が複数の支持爪572に載置される。
次に、ゲートカット機550が、二次成形品30と不用品60との境界を切断し、図17(B)に示すように二次成形品30を不用品60から切り離す(ステップS516)。この間、二次成形品30は、ゲートカット機550の第2支持部570によって支持される。
二次成形品30は、一次成形品20とは異なりゲートカット機550において上下反転されることなく、レンズ部21の平坦面22が上向きになるように第2支持部570に載置される。下記ステップS518において、図21(B)に示すようにレンズ部21の平坦面22が上向きになるように二次成形品30を冷却台600に載置するためである。また、下記ステップS522において、冷却済みの二次成形品30(三次成形品用インサート材)を固定金型810に吸着するときに、図16(B)に示すようにレンズ部21の平坦面22を可動金型820に向けるためである。
次に、搬送機500が、二次成形品30をゲートカット機550から受け取り、ゲートカット機550から冷却台600に搬送する(ステップS517)。この間、二次成形品30は、搬送機500の第2成形品保持部524に吸着される。具体的には、二次成形品30は、レンズ部21が円筒部525の外部に配置されるように、フランジ部24が複数の吸着ノズル526に吸着される。その後、搬送機500は、第2成形品保持部524による二次成形品30の吸着を解除し、二次成形品30を冷却台600に載置する。
次に、冷却台600が、二次成形品30を冷却する(ステップS518)。二次成形品30は、予め設定された時間以上、冷却台600に載置される。このとき、二次成形品30は、図21(B)に示すようにレンズ部21の平坦面22を上に向けて、二次成形品冷却部620に載置される。冷却台600の上で、二次成形品30の全体が固化され、三次成形品用インサート材としての使用が可能になる。
次に、搬送機500が、二次成形品30を冷却台600から受け取り、冷却台600からアライメント機630に搬送する(ステップS519)。この間、二次成形品30は、搬送機500の第2インサート材保持部534に吸着される。具体的には、二次成形品30は、レンズ部21が円筒部535の外部に配置されるように、フランジ部24が複数の吸着ノズル536に吸着される。その後、搬送機500は、第2インサート材保持部534による二次成形品30の吸着を解除し、二次成形品30をアライメント機630に載置する(図22参照)。
二次成形品30は、レンズ部21の平坦面22を上に向けて、第2チャック650に載置される。下記ステップS522において、二次成形品30を固定金型810に吸着するときに、図16(B)に示すようにレンズ部21の平坦面22を可動金型820に向けるためである。
次に、アライメント機630が、二次成形品30の位置合わせを行う(ステップS520)。位置合わせは、芯出しと、芯周りの回転とを含む。芯出しでは、鉛直方向視で、二次成形品30の中心と、チャック本体651の中心とが一致させられる。また、芯周りの回転では、鉛直方向視で、フランジ部24に形成された第1切欠き27、第2切欠き28および第3切欠き29が予め定められた角度に向けられる。金型装置800の内部にインサートされる二次成形品30の位置合わせを予め行うことにより、二次成形品30を予め設定された向きで固定金型810の予め設定された位置に吸着できる。
次に、搬送機500が、二次成形品30をアライメント機630から受け取り、アライメント機630から射出成形機に搬送する(ステップS521)。この間、二次成形品30は、搬送機500の第2インサート材保持部534に吸着される。具体的には、二次成形品30は、レンズ部21が円筒部535の外部に配置されるように、フランジ部24が複数の吸着ノズル536に吸着される。その後、搬送機500は、型開状態の固定金型810に二次成形品30を当接させる。このとき、第2インサート材保持部534は、固定金型810に対向配置される(図16(A)参照)。
次に、射出成形機10が、型開状態の固定金型810に二次成形品30を吸着させる(ステップS522)。その後、搬送機500は、第2インサート材保持部534による二次成形品30の吸着を解除し、二次成形品30を固定金型810に引き渡す。二次成形品30は、レンズ部21の平坦面22を可動金型820に向けて、固定金型810に吸着される。図10に示すように、レンズ部21の平坦面22と可動金型820との間に、三次積層部41を成形する空間41Sを形成するためである。その後、第2インサート材保持部534および加熱部540が回転軸部511と共に90°回転され、加熱部540が固定金型810に対向配置される(図16(B)参照)。
次に、加熱部540が、二次成形品30の三次積層部41を積層する面(例えばレンズ部21の平坦面22)を加熱する(ステップS523)。レンズ部21の平坦面22が溶融し、表面張力が生じるため、一次成形品20の冷却時に生じたシワを除去することができる。その後、搬送機500が型開状態の固定金型810と可動金型820の間から退出し、射出成形機10が金型装置800の型閉および型締を行う。
次に、射出成形機10が型締状態の金型装置800の内部で三次成形品40を成形する(ステップS524)。三次成形品40は、二次成形品30に加えて、二次成形品30に積層される三次積層部41等を有する。三次積層部41は、二次成形品30のうちレンズ部21の平坦面22およびフランジ部24の第1板面25の全体を覆うように形成される。その後、射出成形機10が、金型装置800の型開を行う。このとき、三次成形品40は、可動金型820に密着しており、可動金型820と共に移動する。
次に、搬送機500が、型開状態の可動金型820と固定金型810との間に侵入し、可動金型820から三次成形品40を受け取る。これにより、搬送機500が、可動金型820から三次成形品40を取り出す(ステップS525)。三次成形品40は、搬送機500の第3成形品保持部527に吸着される(図16(A)参照)。具体的には、三次成形品40は、レンズ部21が円筒部528の内部に挿入されるように、フランジ部24が複数の吸着ノズル529に吸着される。
次に、搬送機500が、三次成形品40を射出成形機10からゲートカット機550に搬送する(ステップS526)。その後、搬送機500は、第3成形品保持部527による三次成形品40の吸着を解除し、図17(A)に示すように三次成形品40をゲートカット機550の第3支持部580に載置する。具体的には、三次成形品40のレンズ部21の凸曲面23が上向きになるように、三次成形品40のフランジ部24が複数の支持爪582に載置される。
次に、ゲートカット機550が、三次成形品40と不用品60とを境界で切断し、図17(B)に示すように三次成形品40を不用品60から切り離す(ステップS527)。この間、三次成形品40は、ゲートカット機550の第3支持部580によって支持される。
三次成形品40は、一次成形品20とは異なりゲートカット機550において上下反転されることなく、レンズ部21の平坦面22が下向きになるように第3支持部580に載置される。下記ステップS528において、レンズ部21の平坦面22を下に向けて、三次成形品40を完成品搬送機660の上面に載置するためである。
次に、搬送機500が、三次成形品40をゲートカット機550から受け取り、ゲートカット機550から完成品搬送機660に搬送する(ステップS528)。この間、三次成形品40は、搬送機500の第3成形品保持部527に吸着される。具体的には、三次成形品40は、レンズ部21が円筒部528の内部に挿入されるように、フランジ部24が複数の吸着ノズル529に吸着される。その後、搬送機500は、第3成形品保持部527による三次成形品40の吸着を解除し、三次成形品40を完成品搬送機660に載置する。
次に、完成品搬送機660が、三次成形品40を射出成形システム1の外部に搬出する(ステップS529)。このようにして、三次成形品40が製造される。
以上、射出成形方法、射出成形システム、金型装置等の実施形態等について説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。