以下、図面を参照しながら本発明の作業車両の一実施の形態にかかる8条植えの乗用田植機について説明する。
図1及び図2は本実施の形態にかかる乗用田植機の側面図と平面図である。
同図に示す通り、本実施の形態の乗用田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して植付装置52が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分(ホッパー)が設けられている。
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にトランスミッションケース12が配置され、そのトランスミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10,10が各々取り付けられている。
また、トランスミッションケース12の背面部に車体メインフレーム15の前端部が固着されており、他方、その車体メインフレーム15の後端左右中央部に水平に設けた後輪上下動支点軸181を支点にして左右後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その左右後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸17に後輪11,11が取り付けられている。
尚、左右後輪ギヤケース18,18には、トランスミッションケース12の後壁から平面視(図2参照)で斜め後方に向けて突出して設けられた、左右後輪ギヤケース18,18に連結した左右後輪伝動軸18a,18aにて動力が伝達される構成となっている(図2参照)。
エンジン20は車体メインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及びHST(静油圧式無段階変速機)23を介してトランスミッションケース12に伝達される。トランスミッションケース12に伝達された回転動力は、トランスミッションケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが左右後輪ギヤケース18,18に伝達されて左右後輪11,11を駆動する。
尚、トランスミッションケース12内には、HST23からの回転動力を高速用(路上走行モード)と中立停止用と低速用(植付作業モード)の三段に切り替えるギヤシフト式の副変速装置(図示省略)が設けられており、その副変速装置は副変速レバー33を作業者が操作することにより、上記三段の何れかに切り替えられる構成である。なお、副変速レバー33は、ハンドル34の下方において、作業者の足下から立設する様に配置されている。
また、トランスミッションケース12の右側側面より取出された外部取出動力は、植付クラッチ(図示省略)を介して植付伝動軸26によって植付装置52へ伝動される。
施肥装置5の肥料繰出し機構へは、右後輪ギヤケース18から動力が駆動軸にて取出されて伝動される。
また、図1、図2に示す通り、植付装置52の下部には、中央にセンターフロート53aと、その左右両側にサイドフロート53b、53cがそれぞれ設けられている。これらフロートが泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に、第1苗植付部55a、第2苗植付部55b、第3苗植付部55c、第4苗植付部55dにより2条ずつで、合計8条の苗が圃場に植え付けられる。
4つの苗植付部55a〜55dのそれぞれには、苗を植付ける爪を有する植付具55−1が、左右両側に2つずつ、植付伝動軸26からの駆動力により回動可能に配置されている。
また、植付伝動軸26からの駆動力は、畦クラッチ機構100(図3参照)を介して第1苗植付部55a〜第4苗植付部55dのそれぞれに対して個別に入り切り可能に構成されている。
即ち、本実施の形態の乗用田植機1の畦クラッチ機構100は、第1苗植付部55a、第2苗植付部55b、第3苗植付部55c、第4苗植付部55dのそれぞれに対応して設けられた第1畦クラッチ装置110、第2畦クラッチ装置120、第3畦クラッチ装置130、第4畦クラッチ装置140により構成されている。畦クラッチ機構100の具体的な構成については、図5、図6を用いて更に後述する。
また、ハンドル34の下方において各種計器類等が配置されたモニターパネル40には、上述した第1畦クラッチ装置110、第2畦クラッチ装置120、第3畦クラッチ装置130、第4畦クラッチ装置140のそれぞれを個別に入り切り操作するための第1畦クラッチ入/切スイッチ41、第2畦クラッチ入/切スイッチ42、第3畦クラッチ入/切スイッチ43、第4畦クラッチ入/切スイッチ44(図3参照)が設けられており、それぞれのスイッチから出力される信号は制御部400(図3参照)に送られる構成である。
また、図1に示す通り、エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵し、座席31側の上面において各種操作ボタン(図示省略)や、後述する自動直進モードの入り切りを行うための自動直進モード入/切スイッチ60、後述する畦位置取得モードの入り切りを行うための畦位置取得モード入/切スイッチ70、後述するブザー80、及び後述する表示ランプ90等を配置した上記モニターパネル40が設けられたフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。
また、ハンドルポスト35の右側面(又は、左側面)には、右手(又は左手)の指先で上下方向への操作が可能なフィンガアップレバー65が設けられている。
ハンドル34の右側には、走行車体2の前進走行と後進走行の切り替え、及び走行速度などを設定したり、植付装置52の昇降及び植付作業の入切を操作することが出来る作業操作レバー36が設けられている。作業操作レバー36の操作位置に連動して、モータ電動操作によるHST23のトラニオン軸(図示省略)の角度調節が行われることで走行速度が変更される。また、作業操作レバー36に設けられた昇降スイッチ(図示省略)、及び植付入切スイッチ(図示省略)により、植付装置52の昇降、及び植付クラッチ(図示省略)の入切が行われる。
また、植付装置52の左右両側には、植付作業を行う際に、現在植付を行っている列の次の列の植付条になる予定の場所の中央位置に、進行方向の目安になる線を予め形成する左右一対の線引きマーカ(図示省略)が備えられている。即ち、左右一対の線引きマーカは、乗用田植機1が圃場内において、ハンドル34の手動操作による直進前進時(マニュアル走行時)に、圃場の畦際で転回した後に直進前進する際の目印としてのラインを圃場上に線引きすることが出来る構成である。
尚、上記マニュアル走行時に限らず、自動直進走行時の場合でも、線引マーカによる線引を行っておくことで、実際の機体の進行方向が直進予定ラインからずれていることを作業者が見分けやすくなるので、自動直進走行時にも旋回のたびに左右交互に圃場に接地出来る構成である。
また、本実施の形態の乗用田植機1は、図3に示す様に、自動操舵装置200と、位置情報取得装置300と、走行車体2の車速を検出するための後輪回転センサ510と、を備えており、これらは後述する制御部400(図3参照)に電気的に接続されている。
図3は、制御部400と各種装置及び各種センサとの接続関係を示すブロック図である。
自動操舵装置200は、ハンドル34を自動で操作して、走行車体2を直進方向に維持することが可能な構成である。
即ち、自動操舵装置200は、任意の回転力を自動でハンドル34に付与することにより、ハンドル34を回転させる操舵モータ210と、ハンドル34の回転角度(ハンドル切れ角)を検知するハンドルポテンショメータ220と、を有している。
また、位置情報取得装置300は、GNSS(Global Navigation Satellite System)に基づいて地球上での乗用田植機1の位置情報(即ち、座標情報)を取得する構成であり、人工衛星からの信号を所定間隔で受信する為の受信アンテナ310を備え、位置情報取得装置300により取得された位置情報は、制御部400に送られる構成である。
制御部400に送られた位置情報は、メモリ部410(図3参照)に記録可能に構成されている。位置情報の記録については、更に後述する。
また、受信アンテナ310は、図1、図2に示す通り、正面視で門型のアンテナ固定部材320の上面中央部に固定されており、アンテナ固定部材320の左右の下端部321L、321Rは、フロアステップ37の前端部左右両側面に固定されている。
なお、本実施の形態の走行車体2は、本発明の走行車体の一例にあたる。また、本実施の形態の位置情報取得装置300は、本発明の位置情報取得装置の一例にあたり、本実施の形態の制御部400は、本発明の制御部の一例にあたる。また、本実施の形態の後輪回転センサ510は、本発明の車速検出部の一例にあたり、本実施の形態のハンドル34は、本発明の操作ハンドルの一例にあたる。また、本実施の形態のハンドルポテンショメータ220は、本発明の切れ角検出部の一例にあたる。また、本実施の形態の植付具55−1は、本発明の植付具の一例にあたり、本実施の形態の植付装置52は、本発明の植付装置の一例にあたる。また、本実施の形態の畦クラッチ機構100は、本発明の植付具入り切り機構の一例にあたる。
以上の構成において、本実施の形態の乗用田植機1に搭乗した作業者は、直進目標ラインに基づく自動直進走行を行うための準備作業として、圃場において第1列目の植付作業をマニュアルによる直進走行により行うと共に、基準点となる第1基準点Paと第2基準点Pb(図4参照)の位置情報(位置座標値)を得るためにフィンガアップレバー65を操作する。
以下、主として、図3、図4を用いて、本実施の形態の乗用田植機1における、第1基準点Paと第2基準点Pbの位置情報の取得について具体的に説明する。
図4は、本実施の形態の乗用田植機1における、第1基準点Paと第2基準点Pbの位置情報の取得について説明するために圃場600の平面模式図である。
ここで、図4の圃場600は略長方形を成しており、圃場600の四方を囲む畦の内、図中の上側の畦を上側畦610、図中の下側の畦を下側畦620とする。
なお、本実施の形態の乗用田植機1のメモリ部410には、圃場600における第1基準点Paと第2基準点Pbの位置情報は予め記録されておらず、圃場600の四方を囲む畦の位置情報は予め記録されているものとする。
また、ここでは、乗用田植機1は、圃場600の左端の列を第1列目として植付作業の開始列としているが、枕地植えでの走行経路を考慮して、図4に示す第2列目を植付作業の開始列としても、下記の説明は同様に適用出来る。また、この場合、乗用田植機1は、圃場600の左端の第1列目において、植付作業を行わずに、以下に説明する第1基準点Paと第2基準点Pbの位置情報を取得するためのマニュアル走行を実施して、第2列目を植付作業の開始列としても良い。
作業者は、まず、乗用田植機1を、圃場600の下側畦620の左端に位置させて、エンジン20を起動させて、自動直進モード入/切スイッチ60を「入り」にする。自動直進モード入/切スイッチ60からの「入り」信号をトリガーとして、第1基準点Paと第2基準点Pbの位置情報がまだメモリ部410に記録されていないと判定した制御部400は、第1基準点Paと第2基準点Pbの位置情報を取得するためのマニュアル走行を受け付ける制御を開始する。
次に、作業者は、圃場600の左端の第1列目において下側畦620の側からマニュアル走行による植付作業を開始して、作業者がフィンガアップレバー65を上方に持ち上げる様に(又は、下方に下げる様に)操作することで制御部400に第1ON信号が出力される。
第1ON信号を受信した制御部400は、後輪回転センサ510とハンドルポテンショメータ220の検出結果から、車速とハンドル切れ角の判定を開始し、車速が所定速度(例えば、0.11m/sec)以上であると判定し、且つ、ハンドル切れ角が直進状態(例えば、概ね0°)であると判定すると第1基準点Paの位置情報を取得し、メモリ部410に記録する。
その後、上側畦610の側に向けてしばらくマニュアル走行した後、作業者がフィンガアップレバー65を下方に下げる様に(又は、上方に持ち上げる様に)操作することで制御部400に第2ON信号が出力される。
第2ON信号を受信した制御部400は、上記と同様に車速とハンドル切れ角の判定を開始して、車速が上記所定速度以上であると判定し、且つハンドル切れ角が上記直進状態であると判定すると第2基準点Pbの位置情報を取得し、メモリ部410に記録する。
これにより、制御部400は、第1基準点Paと第2基準点Pbの2点を通る直線である直進基準ラインLsの位置情報を演算し、メモリ部410に記録する。
また、制御部400は、演算された直進基準ラインLsと平行で且つ乗用田植機1の車幅W(図4参照)に相当する距離を隔てた、第2列目以降の自動直進走行に用いるための複数の直進目標ラインLmの位置情報を演算し、メモリ部410に記録する。
なお、マニュアル走行による第1列目の乗用田植機1の軌跡を走行軌跡Ltとして、図4では、幅太の白抜き矢印で表した。
以上説明した様に、本実施の形態の乗用田植機1では、車速が所定速度(例えば、0.11m/sec)以上であること、及び、ハンドル切れ角が直進状態(例えば、概ね0°)であることが、同時に満足されていることを、第1基準点Paと第2基準点Pbの位置情報を取得する際の判定条件としたことで、これらの基準点の位置情報を取得する際の、GNSSに基づく位置情報の精度が低下することを防止することが出来ると共に、直進基準ラインLsの位置情報の精度が低下することを防止することが出来る。
これにより、本実施の形態の乗用田植機1によれば、圃場600の第2列目から第8列目までの自動直進走行による植付作業は、直進基準ラインLsに基づいて演算された直進目標ラインLmの精度が低下することを防止出来るので、植付作業の精度の向上を図ることが出来る。
なお、上記の構成では、作業者が、第1基準点Pa又は第2基準点Pb(図4参照)の位置情報を得るためにフィンガアップレバー65を操作した際、車速とハンドル切れ角が予め定められた条件を満たさなければ、制御部400は、それらの条件が満たされるまで待機状態をとる構成について説明したが、これに限らず例えば、作業者が、第1基準点Pa又は第2基準点Pb(図4参照)の位置情報を得るためにフィンガアップレバー65を操作した時から、予め定められた所定時間が経過しても、車速とハンドル切れ角が予め定められた条件を満たさないと制御部400が判定すると、制御部400は、位置情報の取得作業が出来なかった旨を作業者に伝えるための音声メッセージを出力すると共に、第1基準点Pa又は第2基準点Pb(図4参照)の位置情報を得るためにフィンガアップレバー65の再度の操作を促す旨の音声メッセージを出力する構成としても良い。
これにより、音声メッセージを聞いた作業者は、車速を上げたり、ハンドル切れ角が大きくならない様にして上記条件を満たす様に意識してマニュアル走行を行うことが出来るので、第1基準点Pa又は第2基準点Pbの位置情報を第1列目において確実に取得することが出来る。
次に、本実施の形態の乗用田植機1の自動直進モード入/切スイッチ60を「入り」状態にして、圃場600で上述した植付作業を行う際に、乗用田植機1が各列を走行中において、位置情報取得装置300による乗用田植機1の現実の位置情報とメモリ部410に予め記録されている畦の位置情報とに基づいて、前方の上側畦610、及び前方の下側畦620に接近していることを制御部400が検出して、ブザー80により、作業者に注意を喚起する警告音を発生させる構成及び動作について、主として図3、図4を用いて説明する。
本実施の形態では、乗用田植機1が、前方の畦に接近している旨を伝えるための警告音を発するか否かの判定基準として、乗用田植機1と畦との距離が一律に所定値(例えば、8m)に達したか否かに着目するのではなく、その判定基準を、乗用田植機1の車速に応じて変更する構成である。
即ち、警告音を発するか否かの判定基準としての乗用田植機1と畦との距離は、乗用田植機1の車速が速い場合の方が車速が遅い場合の方より、遠くなる様に予め設定されて、車速と判定基準としての上記距離とが互いに対応付けられてメモリ部410に記録されている。
警告音が発せられた際、作業者は、自動直進走行モードを解除してマニュアル走行により旋回して、乗用田植機1を隣の列に移動させる。
これにより、警告音が発せられる時の乗用田植機1の位置は、車速が速い場合の方が車速が遅い場合よりも、前方の畦から遠いので、自動直進走行モードを手動で解除するための時間として、車速が低速の場合と同程度の十分な時間又はそれ以上の時間を確保することが出来る。
また、警告音が発せられても作業者が自動直進走行モードを解除しなければ、乗用田植機1が更に直進走行し第2判定基準としての畦手前の所定距離(例えば、概ね1m)にまで接近したことを制御部400が判定した時に、制御部400は強制的に自動直進走行モードを解除すると共に、HST23を中立位置に戻し、前輪10、後輪11への動力の伝達を強制停止させる。
この様に、自動直進走行モードが手動で解除されない場合でも、畦の手前で一定距離に達した時点で、HST23を強制停止させるので、タイヤのスリップ等があっても畦の手前で走行を確実に停止させることが出来る。
次に、乗用田植機1が各列を走行中において、制御部400が、位置情報取得装置300による乗用田植機1の現実の位置情報とメモリ部410に予め記録されている畦の位置情報とに基づいて、前方の上側畦610、及び前方の下側畦620に接近していることをどの様にして検出するのかについて更に説明する。
ここでは、本実施の形態の乗用田植機1の自動直進モード入/切スイッチ60を「入り」状態にして、圃場600で上述した植付作業を行う際に、制御部400による第2基準点Pbの取得は、上側畦610との距離が上述した警告音を発するべきであると判定する判定基準の距離に達するよりも手前の位置で行われるものとする。
これにより、マニュアル走行による第1列目では、乗用田植機1が上側畦610に近接したことで警告音を発する旨の判定を行うタイミングより前の時点において、第1基準点Paは勿論のこと、第2基準点Pbの位置情報も既に取得されており、直進基準ラインLsの位置情報が演算されて、それぞれメモリ部410に記録されているものとする。
また、上述した通り、メモリ部410には、圃場600の四方の畦の位置情報が予め記録されているので、例えば、上側畦610に対応する上側畦ラインLαの位置情報や、下側畦620に対応する下側畦ラインLβの位置情報等が予め記録されている。
以上のことから、制御部400は、第1列目の直進基準ラインLsと上側畦ラインLαとの第1交点Psαの位置情報を演算することが出来て、それをメモリ部410に記録する。
これにより、制御部400は、位置情報取得装置300により定期的に取得される乗用田植機1の現実の位置情報と、上述のようにしてメモリ部410に記録された第1交点Psαの位置情報とから、第1列目においてマニュアル走行中の乗用田植機1と上側畦610との距離を逐次に演算することが出来る。
この演算結果を検出することにより、制御部400は、第1列目においてマニュアル走行中の乗用田植機1が前方にある上側畦610に近接して上記判定基準の距離まで達したか否かを判定することが出来る。
また、制御部400は、第1列目の場合と同様にして、第2列目以降の偶数列目の各直進目標ラインLmと下側畦ラインLβとの交点である下側交点Pmβの位置情報と、第2列目以降の奇数列目の各直進目標ラインLmと上側畦ラインLαとの交点である上側交点Pmαの位置情報と、をそれぞれ演算し、それらをメモリ部410に記録する。
これにより、制御部400は、位置情報取得装置300により定期的に取得される乗用田植機1の現実の位置情報と、上述のようにしてメモリ部410に記録された上側交点Pmαの位置情報とから、第2列目以降の奇数列目において自動直進走行中の乗用田植機1と上側畦610との距離を逐次に演算することが出来る。
また、制御部400は、位置情報取得装置300により定期的に取得される乗用田植機1の現実の位置情報と、上述のようにしてメモリ部410に記録された下側交点Pmβの位置情報とから、第2列目以降の偶数列目において自動直進走行中の乗用田植機1と下側畦620との距離を逐次に演算することが出来る。
よって、上記演算結果を検出することにより、制御部400は、第1列目以降において自動直進走行中の乗用田植機1が前方にある上側畦610、又は下側畦620に近接して上記判定基準の距離まで達したか否かを判定することが出来る。
なお、本実施の形態の乗用田植機1の自動直進モード入/切スイッチ60を「入り」状態にして、圃場600で上述した植付作業を行う際に、制御部400による第2基準点Pbの取得が、上側畦610との距離が上述した警告音を発するべきであると判定する判定基準の距離以下になっても実行されない場合は、直進基準ラインLsの位置情報が演算出来ないので、第1交点Psαの位置情報を演算することが出来ない。よって、この場合は、制御部400は、第1列目において警告音を発することは行わない。
また、上述した様に、乗用田植機1が圃場で走行中において、前方の畦に近接したことを判定すると警告音を発する構成は、例えば、少なくとも、上述した第1基準点Paと第2基準点Pbの位置情報、及び上側畦ラインLαと下側畦ラインLβの位置情報とが、予めメモリ部410に記録されておれば、乗用田植機1の自動直進モード入/切スイッチ60を「入り」状態にして走行する場合に限らず、乗用田植機1の自動直進モード入/切スイッチ60を「切り」状態にしてマニュアル走行で植付作業する場合にも適用出来て、作業者に注意を喚起することが出来る。
なお、ここでは、乗用田植機1の前方に畦が近接した場合に警告音を発する構成について説明したが、これに限らず例えば、乗用田植機1の前方に壁等の障害物が近接した場合に、それ以上、障害物に接近する走行動作の継続を規制させるための警告音を注意喚起のために発する構成としても良い。
また、ここでは、メモリ部410には、圃場600の四方を囲む畦の位置情報は予め記録されているものとして説明したが、畦の位置情報についてはどの様にして取得されたものでも良い。例えば、圃場600の上側畦610と下側畦620が概ね直線であれば、上述した直進基準ラインLsを取得する手順と同様の手順で畦と平行にマニュアル走行することで畦基準ラインを取得して、その取得した畦基準ラインを車幅W(図4参照)を考慮して平行移動させることで、上側畦ラインLαの位置情報や、下側畦620に対応する下側畦ラインLβの位置情報を取得しても良い。
次に、主として図5、図6を用いて、畦クラッチ機構100の構成と入り切り制御について説明する。
図5(a)は、第1苗植付部55aの駆動力の伝達構造を示す概略側断面図であり、図5(b)は、第1苗植付部55aにおける畦クラッチ部150周辺の概略側断面図である。
また、図6(a)は、畦クラッチ部150を構成するクラッチ可動部材151であり、畦クラッチ部150に取り付けられた状態を左側から見た概略側面図であり、図6(b)は、畦クラッチ部150を構成するクラッチ可動部材151であり、畦クラッチ部150に取り付けられた状態を後側から見た概略背面図である。
畦クラッチ機構100は、上述した通り、第1苗植付部55a、第2苗植付部55b、第3苗植付部55c、第4苗植付部55dのそれぞれに対応して設けられた第1畦クラッチ装置110、第2畦クラッチ装置120、第3畦クラッチ装置130、第4畦クラッチ装置140により構成されている(図4参照)。
なお、第1苗植付部55a〜第4苗植付部55dは互いに同じ構造であり、また、第1畦クラッチ装置110〜第4畦クラッチ装置140は互いに同じ構造であるので、ここでは、第1苗植付部55aとそれに対応して設けられた第1畦クラッチ装置110を中心に説明する。
まず、第1苗植付部55aにおける駆動力の伝達構造について説明する。
即ち、第1苗植付部55aにおける駆動力の伝達構造としては、図5(a)、図6(b)に示す様に、(1)大元の植付クラッチ(図示省略)が「入り」状態の場合、常に回動する植付駆動軸550と、(2)植付駆動軸550に対して遊嵌接続されて軸方向にスライド移動可能に設けられたクラッチ可動部材151と、(3)第1苗植付部55aの左右両側に回動可能に配置された植付具55−1(図2参照)を回動させる植付具回動軸560と、(4)クラッチ可動部材151に形成された第1ギヤ部151aと、植付具回動軸560に連結された第2ギヤ部561との間に架けられたチェーンベルト570とにより構成されている。
なお、第1苗植付部55a〜第4苗植付部55dのそれぞれの植付駆動軸550は、同
状に互いに連結されている。
第1畦クラッチ装置110は、図3、図5(a)〜図6(b)に示す様に、
(1)第1苗植付部55aに設けられた、植付駆動軸550との連結を入り切りするためのクラッチ可動部材151と可動ピン152とを有する畦クラッチ部150と、
(2)可動ピン152を、当該可動ピン152の外周部に設けられた第1圧縮バネ153(図5(b)参照)の復元力に対抗して当該可動ピン152の軸方向に移動させるトルク・スプリング160であって、可動ピン152の後端部152aにその一端部161が連結されていると共に第1苗植付部55aの外壁部側に回動可能に取り付けられたトルク・スプリング160と、
(3)トルク・スプリング160の他端部162に、内包するインナーケーブル171の一端部171aが連結されている、トルク・スプリング160を回動させるためのケーブル部
材170と、
(4)インナーケーブル171の他端部(図示省略)が連結されていることによりインナーケーブル171を矢印C方向に引っ張ることが可能な、走行車体側に設けられたソレノイド180(図3参照)と、を備えている。
また、クラッチ可動部材151は、上述した通り、植付駆動軸550に対してスライド
移動可能(図6(b)の矢印A、矢印B参照)に遊嵌接続された部材であり、図6(a)、図6(b)に示す様に、外周縁部に略扇形状の凸部151b1を有するカム部151bと、第1ギヤ部151aと、テーパ部151cとが、形成されている。
また、カム部151bの凸部151b1は、植付駆動軸550の外周部に形成された嵌合用凹部(図示省略)と嵌合可能に形成されている。
また、植付駆動軸550の外周部には、クラッチ可動部材151を常に矢印B方向に押圧するための第2圧縮バネ(図示省略)が配置されている。
また、可動ピン152は、植付駆動軸550の中心軸に対して直交する方向(図5(b)の矢印D参照)に摺動可能となる様に、第1苗植付部55aのケーシング部55a1に斜めに設けられた貫通孔部に収納されている。なお、可動ピン152の後端部152a側は、貫通孔部から外側に突き出している。
上記構成により、可動ピン152が矢印D(図5(b)参照)方向に移動させられると、可動ピン152の先端部152b(図5(b)参照)が、クラッチ可動部材151のテーパ部151cに当接しながら、植付駆動軸550の中心軸の方向に挿入されていくので、クラッチ可動部材151は、上述した第2圧縮バネ(図示省略)の矢印B方向への押圧力に対抗して矢印A方向に移動する。クラッチ可動部材151が矢印A方向に移動することで、植付駆動軸550の外周部に形成された嵌合用凹部と嵌合していたカム部151bも矢印A方向に移動するので、その嵌合状態が解除される。
即ち、可動ピン152が矢印D(図5(b)参照)方向に移動させられると、植付駆動軸550の嵌合用凹部とカム部151bが嵌合状態にあって植付駆動軸550からの駆動力が植付具回動軸560側に伝達可能な状態(即ち、畦クラッチが「入り」の状態)から、植付駆動軸550の嵌合用凹部とカム部151bとの嵌合状態が解除されて植付駆動軸550からの駆動力が植付具回動軸560側に伝達されない状態(即ち、畦クラッチが「切り」の状態)に変わる。
本実施の形態では、クラッチが「入り」状態のときは、動力の伝達が行われており、クラッチが「切り」状態のときは、動力の伝達が停止されているという関係にあるものとする。
次に、制御部400による、畦クラッチ機構100の入り切り制御について説明する。
作業者が、乗用田植機1の走行中において、例えば、第1苗植付部55aによる苗の植付作業を停止、又は開始させるために、第1畦クラッチ入/切スイッチ41(図3参照)を「切り」側に、又は、「入り」側に操作した場合について説明する。
この場合、制御部400は、第1畦クラッチ入/切スイッチ41からの「切り」信号、又は、「入り」信号を受信すると、後輪回転センサ510の検知結果から車速が所定値(例えば、1.60m/sec)以下であるか否かを調べ、所定値を超えていると判定すると、作業者による第1畦クラッチ入/切スイッチ41の上記操作を受け付けないで、且つ、上記操作を受け付けないことを知らせるための所定音をブザー80から発する。この場合、制御部400は、第1苗植付部55aによる苗の植付作業の変更(停止又は開始の何れも)を行わせない。
一方、制御部400は、後輪回転センサ510の検知結果から車速が所定値以下であると判定すると、第1畦クラッチ装置110のソレノイド180に対して所定の指令を出力して、(1)第1畦クラッチ入/切スイッチ41(図3参照)を「切り」側に操作した場合は、ソレノイド180を「OFF」状態から「ON」状態に切り替え、(2)第1畦クラッチ入/切スイッチ41(図3参照)を「入り」側に操作した場合は、ソレノイド180を「ON」状態から「OFF」状態)に切り替える。
次に、上記の(1)と(2)のそれぞれの場合に分けて説明する。
(1)第1畦クラッチ入/切スイッチ41(図3参照)を「切り」側に操作した場合において、ソレノイド180が、「OFF」状態から「ON」状態に切り替えられると、ソレノイド180のON動作によりインナーケーブル171が矢印C(図5(b)参照)方向へ引っ張られるので、トルク・スプリング160が回動し、可動ピン152は矢印D方向に移動する。
可動ピン152が矢印D(図・BR>T(b)参照)方向に移動させられると、車速が所定値以下であるので、上述した通り、クラッチ可動部材151は、矢印A方向(図6(b)参照)にスムーズに移動する。これにより、上述した通り、植付駆動軸550の外周部に形成された嵌合用凹部と嵌合していたカム部151bも矢印A方向に移動するので、その嵌合状態が解除される。
ところで、高速走行の場合、カム部151bと植付駆動軸550の嵌合用凹部との嵌合状態が低速走行時よりも強くなる。そのため、第1畦クラッチ入/切スイッチ41(図3参照)を「切り」側に操作した場合において、仮に、車速が所定値を超えて高速で走行しているにも関わらず、ソレノイド180を「ON」状態に切り替えることで、トルク・スプリング160の他端部162が矢印C方向に引っ張られたとしても、そのトルク・スプリング160の一端部161による可動ピン152の矢印D方向への押え付け荷重では、クラッチ可動部材151を矢印A方向(図6(b)参照)に移動させることが出来ず、可動ピン152が矢印D方向と反対の矢印D’方向に弾かれてしまい、結果的に、カム部151bと植付駆動軸550の嵌合用凹部との嵌合状態を解除することが出来ず、第1苗植付部55aによる植付を停止させることが出来ないという問題が生じ得る。
しかし、本実施の形態の様に、制御部400が、車速を調べて、所定値以下であると判定した場合にのみ、第1畦クラッチ入/切スイッチ41〜第4畦クラッチ入/切スイッチ44の何れについてもその「切り」操作を受け付ける構成としたことにより、畦クラッチ機構100の作動の確実化を図ることが出来る。
次に、(2)第1畦クラッチ入/切スイッチ41(図3参照)を「入り」側に操作した場合において、ソレノイド180が、「ON」状態から「OFF」状態に切り替えられると、ソレノイド180による矢印C(図5(b)参照)方向への引っ張り力が解除されるので、第1圧縮バネ153(図5(b)参照)の復元力により可動ピン152が矢印Dと反対方向の矢印D’(図5(b)参照)方向に移動すると共にトルク・スプリング160が回動し、インナーケーブル171が矢印Cと反対方向の矢印C’方向に引っ張られる。
可動ピン152が矢印D’方向に移動させられると、可動ピン152の先端部152bのテーパ部151cへの当接が解除されるので、植付駆動軸550との遊嵌接続により直前の時点まで回動を停止していたクラッチ可動部材151が、第2圧縮バネ(図示省略)の矢印B(図6(b)参照)方向への押圧力の作用により、矢印B方向に移動し、その時点で低速走行により低速回転している植付駆動軸550の嵌合用凹部(図示省略)に対して、カム部151bがスムーズに嵌合する。
ところで、高速走行の場合、植付駆動軸550も高速で回転しているので、高速回転している植付駆動軸550の嵌合用凹部に対して、矢印B方向に移動してきたカム部151bが嵌合しようとしても、矢印A方向に弾かれてしまい嵌合させることが困難になる。そのため、第1畦クラッチ入/切スイッチ41(図3参照)を「入り」側に操作した場合において、仮に、車速が所定値を超えて高速で走行しているにも関わらず、ソレノイド180を「OFF」状態に切り替えることで、可動ピン152を矢印D’方向に移動させたとしても、第2圧縮バネの矢印B方向への復元力では、高速回転している植付駆動軸550の嵌合用凹部に対して、カム部151bが嵌合することが出来ず、結果的に、第1苗植付部55aによる植付を開始させることが出来ないという問題が生じ得る。
しかし、本実施の形態の様に、制御部400が、車速を調べて、所定値以下であると判定した場合にのみ、第1畦クラッチ入/切スイッチ41〜第4畦クラッチ入/切スイッチ44の何れについてもその「入り」操作を受け付ける構成としたことにより、畦クラッチ機構100の作動の確実化を図ることが出来る。
なお、上記構成では、制御部400が、作業者による第1畦クラッチ入/切スイッチ41(又は、第2畦クラッチ入/切スイッチ42〜第4畦クラッチ入/切スイッチ44の何れのスイッチでも良い)の上記操作を受け付けない場合、上記操作を受け付けないことを知らせるための所定音をブザー80から発する構成について説明したが、これに限らず例えば、第1畦クラッチ入/切スイッチ41〜第4畦クラッチ入/切スイッチ44のそれぞれについて、「入り」状態にあるか否かを表示する第1畦クラッチランプ〜第4畦クラッチランプ(図示省略)を設けて、第1畦クラッチ入/切スイッチ41〜第4畦クラッチ入/切スイッチ44のそれぞれに対する作業者による「入り」又は「切り」の操作について、制御部400が受け付けないことを知らせるために、対応する畦クラッチランプを複数回点滅(例えば、3回点滅)させる構成としても良い。
また、上記構成では、制御部400は、例えば第1畦クラッチ入/切スイッチ41からの信号を受信した場合、車速が所定値(例えば、1.60m/sec)を超えていると判定すると、作業者による第1畦クラッチ入/切スイッチ41の上記操作を受け付けない構成について説明したが、これに限らず例えば、制御部400が、車速が上記所定値以下になる様に、モータ電動操作によるHST23のトラニオン軸(図示省略)の角度調節を自動で行わせる構成としても良い。また、この構成の場合、自動で車速を落としたことを作業者に知らせるための所定音をブザー80から発する構成としても良い。また、この構成の場合、所定音をブザー80から発する構成に代えて、畦クラッチランプを複数回点滅(例えば、3回点滅)させる構成としても良い。
また、制御部400は、例えば第1畦クラッチ入/切スイッチ41からの信号を受信した場合、車速が所定値(例えば、1.60m/sec)を超えていると判定すると、車速が上記所定値以下になる様に、HST23を自動で制御する構成について説明したが、この構成の場合において、更に、例えば第1畦クラッチ入/切スイッチ41からの「入り」信号、又は「切り」信号に対応して、嵌合用凹部にカム部151bが嵌合(植付開始)したことを、又は嵌合が解除(植付停止)されたことを検知できる畦クラッチセンサ(図示省略)を設け、その畦クラッチセンサの検知結果に基づいて、例えば第1畦クラッチ入/切スイッチ41からの「入り」信号、又は「切り」信号に対応して、第1苗植付部55aが適切に植付を開始したと、又は、適切に植付を停止したと、制御部400が判定した場合は、制御部400が、HST23のトラニオン軸の角度調節を行い、作業操作レバー36の設定位置に対応する走行速度にまで自動で戻す構成としても良い。これにより操作性が向上出来る。
次に、本実施の形態の乗用田植機1における自動作業の作業開始条件を中心に説明する。
即ち、以下に、本実施の形態の乗用田植機1の植付作業の自動作業開始条件を列挙する。
これにより、機体が異常状態であったり、往復作業の途中で植付作業が続行できない可能性がある場合は、圃場の真ん中で立ち往生することがないように自動作業を開始させない様に出来る。
チャージ(充電)切れでない場合に、自動作業開始が可能な構成とする。
エンジン始動を検出している際に、自動作業開始が可能な構成とする。
苗切れを検出していない場合に、自動作業開始が可能な構成とする。
ラジエターの水温異常を検出していない場合に、自動作業開始が可能な構成とする。
ハンドルセンサの異常がない場合、自動作業開始が可能な構成とする。
HSTレバーセンサに異常がない場合、自動作業開始が可能な構成とする。
HSTトラニオンアームセンサに異常がない場合、自動作業開始が可能な構成とする。
植付部傾斜センサに異常がない場合、自動作業開始が可能な構成とする。
水平制御用の角速度センサに異常がない場合、自動作業開始が可能な構成とする。
マーカセンサ(線引きマーカの動作を検知するセンサ)に異常がない場合、自動作業開始が可能な構成とする。
フロートセンサ(圃場面の凹凸を検知するセンサ)に異常がない場合、自動作業開始が可能な構成とする。
植付け高さを検知するリンクセンサに異常がない場合、自動作業開始が可能な構成とする。
電動アクセル用のアクセルセンサに異常がない場合、自動作業開始が可能な構成とする。
植付の入/切を判断する植付クラッチセンサに異常がない場合、自動作業開始が可能な構成とする。
植付の入/切を判断する植付クラッチセンサに異常がない場合、自動作業開始が可能な構成とする。
畦クラッチセンサに異常がない場合、自動作業開始が可能な構成とする。更に、この構成において、次の1往復の行程中に畦クラッチを操作する場面がないと制御部が判定した場合は、畦クラッチセンサに異常があっても、自動作業開始が可能な構成とする。これにより、センサに異常があったとしても、次の往復作業に支障が無ければ自動作業を開始可能となる。
施肥用の畦クラッチセンサに異常がない場合、自動作業開始が可能な構成とする。更に、この構成において、次の1往復の行程中に施肥用の畦クラッチを操作する場面がないと制御部が判定した場合は、施肥用の畦クラッチセンサに異常があっても、自動作業開始が可能な構成とする。これにより、センサに異常があったとしても、次の往復作業に支障が無ければ自動作業を開始可能となる。
ロータセンサ(整地ロータの駆動を検知するセンサ)に異常がない場合、自動作業開始が可能な構成とする。
ハンドル操作を制御するモータに異常がない場合、自動作業開始が可能な構成とする。
また、乗用田植機1により自動作業が実行されている状況で、次の1往復の行程中に畦クラッチを操作する場面がないと制御部が判定した場合は、畦クラッチセンサに異常があっても、自動作業を中断させない構成とする。これにより、センサに異常があったとしても、現在の往復作業に支障が無ければ自動作業を中断しない。
また、乗用田植機1により自動作業が実行されている状況で、次の1往復の行程中に施肥用の畦クラッチを操作する場面がないと制御部が判定した場合は、施肥用の畦クラッチセンサに異常があっても、自動作業を中断させない構成とする。これにより、センサに異常があったとしても、現在の往復作業に支障が無ければ自動作業を中断しない。
なお、上記実施の形態では、乗用田植機1の車速が所定速度以上であり、且つ、ハンドル切れ角が直進状態であると制御部が判定した場合において、第1基準点Pa及び第2基準点Pbの位置情報を取得する構成について説明したが、これに限らず例えば、乗用田植機1の車速が所定速度以上であると制御部が判定した場合において、第1基準点Pa及び第2基準点Pbの位置情報を取得する構成であっても良い。
また、上記実施の形態では、乗用田植機1の車速が所定速度以上であり、且つ、ハンドル切れ角が直進状態であると制御部が判定した場合において、第1基準点Pa及び第2基準点Pbの位置情報を取得する構成について説明したが、これに限らず例えば、乗用田植機1が停止していない(即ち、走行中である)と制御部が判定した場合において、第1基準点Pa及び第2基準点Pbの位置情報を取得する構成としても良い。
また、上記実施の形態では、制御部400が、車速を調べて、所定値以下であると判定した場合にのみ、第1畦クラッチ入/切スイッチ41〜第4畦クラッチ入/切スイッチ44の何れについてもその「入り」操作を受け付けて、所定値を超えていると判定した場合は、その「入り」操作を受け付けない構成としたが、これに限らず例えば、所定値未満であると判定した場合にのみ、第1畦クラッチ入/切スイッチ41〜第4畦クラッチ入/切スイッチ44の何れについてもその「入り」操作を受け付けて、所定値以上であると判定した場合は、その「入り」操作を受け付けない構成としても良い。
また、上記実施の形態では、乗用田植機1が、前方の畦に接近している旨を伝えるための警告音を発するか否かの判定基準を、乗用田植機1の車速に応じて変更する構成であって、且つ、その判定基準としての乗用田植機1と畦との距離は、乗用田植機1の車速が速い場合の方が車速が遅い場合の方より、遠くなる様に予め設定されて、車速と判定基準としての上記距離とが互いに対応付けられてメモリ部410に記録されている構成について説明したが、これに限らず例えば、判定基準としての乗用田植機1と畦との距離を、車速をパラメータとして含む関数とした構成であっても良い。
即ち、この構成の場合、例えば、判定基準としての乗用田植機1と畦との距離を、下記の関数Fで表す。
F=車速(m/秒)×4(秒)+車速に応じた制動距離(m)+3(m)
そして、乗用田植機1の畦からの現実の距離をH(m)と表して、H≦Fが満たされたと制御部が判定した場合にブザー80により警告音を発する構成としても良い。これにより、車速に応じて判定基準(関数F参照)が変化することにより、作業者が自動直進制御を手動で切るための十分な時間を確保することが出来る。ここで、上記の関数Fでは、警告音の発生期間を最低4秒以上確保させ、畦の3m手前で機体が停止する様に設定したが、これに限定されるものではない。
また、上記実施の形態では、車速に応じて判定基準(関数F参照)が変化する構成について説明したが、この構成において、車速が低速であった場合に関数Fの値が所定距離(例えば、8m)未満となった場合には、F=所定距離(例えば、8m)に固定する構成としても良い。これにより、関数Fの値が計算上において所定距離(例えば、8m)未満となった場合は、制御部はその計算結果を採用せず、Fを予め定めた上記所定距離に固定することで、乗用田植機1の畦からの現実の距離H(m)が、所定距離(例えば、8m)になったことを検出した場合は必ず警告音を発することが出来る。
また、上記実施の形態では、乗用田植機1の畦からの現実の距離が、判定基準の距離に達したと判定された場合に警告音が発せられても、作業者が手動で自動直進走行モードを解除しなければ、即ち、自動直進制御を切らなければ、乗用田植機1が更に直進走行し第2判定基準としての畦手前の所定距離(例えば、概ね1m)にまで接近したことを制御部が判定した時に、制御部は強制的に自動直進走行モードを解除し、前輪10、後輪11への動力の伝達を強制停止させる構成について説明したが、これに限らず例えば、自動直進制御を切るための第2判定基準としての畦手前の所定距離を、例えば、制御部が、警告音を発すると判定した時の車速に応じて変更する構成としても良い。例えば、この構成の場合、車速が1.0m/secであれば、第2判定基準の所定距離は1mとし、車速が1.5m/secであれば、第2判定基準の所定距離は1.5mとする。これにより、第2判定基準としての距離を車速に応じて変更することで、自動直進制御をより一層適切なタイミングで切ることができ、精度が向上する。
また、上記実施の形態では、乗用田植機1の畦からの現実の距離が、所定の判定基準の距離に達したと判定された場合に警告音を発生させ、その後、乗用田植機1が更に直進走行し第2判定基準としての畦手前の所定距離(例えば、概ね1m)にまで接近したことを制御部が判定した時に、制御部は強制的に自動直進走行モードを解除し、停止させる構成について説明したが、これに限らず例えば、所定の判定基準の距離に達したと判定された場合に警告音を発生させるという制御は維持するが、第2判定基準により自動直進制御を強制的に切って停止させるという制御モードを、実行させるか否かを予め選択的に切り替え可能に構成されていても良い。この構成の場合、例えば、機体のチェッカ、あるいは機体のチェックモードにおいて、当該制御モードの入り切りを行う構成としても良い。これにより、畦のぎりぎり手前まで自動直進走行モードで直進走行制御が行える。
また、上記実施の形態では、乗用田植機1が、前方の畦に接近している旨を伝えるための警告音を発するか否かの判定基準を、乗用田植機1の車速に応じて変更する構成について説明したが、これに限らず例えば、判定基準としての乗用田植機1と畦との距離を、一律に所定値(例えば、8m)に固定しても良い。この構成の場合、乗用田植機1の畦からの現実の距離が一律に所定値(例えば、8m)に達したことを制御部が判定した時に警告音が発せられるので、作業者は手動で自動直進制御を切ることが出来る。また、作業者が警告音が発せられているのに自動直進制御を切らなかった場合、乗用田植機1が更に畦に接近し、畦の一定距離(例えば、1m)手前に達したと制御部が判定した時には、制御部は自動直進制御を強制的に切る構成である。また、この構成の場合、更に、乗用田植機1が上記判定基準を超えた後の畦からの現実の距離に応じて、制御部が断続的な警告音の発生間隔を変更する構成としても良い。この構成の場合、例えば、乗用田植機1が上記判定基準を超えた後の畦からの現実の距離が、(1)6m〜8mの場合、警告音の発生周期を500ms、オンタイムを100msとし、(2)4m〜6mの場合、警告音の発生周期を400ms、オンタイムを100msとし、(3)2m〜4mの場合、警告音の発生周期を300ms、オンタイムを100msとし、(4)2m未満の場合、警告音の発生周期を200ms、オンタイムを100msとしても良い。これにより、距離に応じて断続的な警告音の発生間隔を変更することで、あとどれくらいで自動直進制御が自動で切れるかが作業者に分かる。また、畦との距離が近づくにつれて、警告音を頻繁に鳴らすことで、自動直進制御を手動で切る様に作業者に促すことが出来る。
また、上記実施の形態では、乗用田植機1が上記判定基準を超えた後の畦からの現実の距離に応じて、制御部が断続的な警告音の発生間隔を変更する構成について説明したが、これに限らず例えば、乗用田植機1が上記判定基準を超えた後、制御部により自動直進制御が強制的に切られるまでの時間に応じて、制御部が断続的な警告音の発生間隔を変更する構成としても良い。この構成の場合、例えば、乗用田植機1が上記判定基準を超えた後、自動直進制御が強制的に切られるまでの時間が、(1)10秒以上の場合、警告音の発生周期を500ms、オンタイムを100msとし、(2)6〜10秒の場合、警告音の発生周期を400ms、オンタイムを100msとし、(3)2〜6秒の場合、警告音の発生周期を300ms、オンタイムを100msとし、(4)2秒未満の場合、警告音の発生周期を200ms、オンタイムを100msとしても良い。これにより、自動直進制御が強制的に切られるまでの時間に応じて、断続的な警告音の発生間隔を変更することで、あとどれくらいで自動直進制御が自動で切れるかが作業者に分かる。また、上記時間が短くなるにつれて、警告音を頻繁に鳴らすことで、自動直進制御を手動で切る様に作業者に促すことが出来る。
また、上記実施の形態において、制御部400が、第1基準点Paと第2基準点Pbの位置情報を取得後、枕地植えを検出した場合に、メモリ部410に記録されている第1基準点Paと第2基準点Pbの位置情報を消去する構成としても良い。また、この構成の場合、第1基準点Paと第2基準点Pbの位置情報を消去するという制御モードを、実行させるか否かを予め選択的に切り替え可能に構成されていても良い。この構成の場合、例えば、機体のチェッカ、あるいは機体のチェックモードにおいて、当該制御モードの入り切りを行う構成としても良い。これにより、変形田で自動で第1基準点Paと第2基準点Pbの位置情報が消去されるのを防止出来る。
また、上記実施の形態では、本発明の作業車両の一例として、作業装置として植付装置52が設けられた乗用田植機1について説明したが、これに限らず例えば、作業装置として播種装置、或いはロータリ等が設けられた作業車両であっても良い。
また、上記実施の形態では、本発明の作業車両の一例として8条型の乗用田植機1について説明したが、これに限らず例えば、4条植え或いは6条植えの構成であっても良く、条数に限定されない。