JP6897583B2 - 鋳片の中心固相率の測定方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、凝固末期の鋳片の中心固相率が0.1〜0.7に相当する位置において、凝固収縮に見合う量の軽圧下を行う技術が開示されている。また、特許文献2には、凝固完了点近傍に複数配置した軽圧下ロールの圧下量を制御しながら軽圧下する技術が開示されている。
(1)鋳型内に溶鋼を注入し、該溶鋼を冷却して形成した凝固シェルを前記鋳型の下方から引き抜きながら冷却し、前記凝固シェル内の未凝固部分を凝固させて製造される連続鋳造の鋳片の中心固相率の測定方法であって、
前記鋳片の厚み方向に対向配置されたロールの間隔を予め設定した周期と振幅で可変させて前記鋳片を圧下する際の前記鋳型内の溶鋼の湯面レベルの上昇量を計測し、下式により前記鋳片の中心部の固相率fSを求めることを特徴とする鋳片の中心固相率の測定方法。
fS=1−XR/XT
ここで、XRは鋳型内の溶鋼の計測された湯面上昇量、XTは鋳型内の溶鋼の理論的な湯面上昇量、である。
まず、図1〜図3を参照しながら、本発明の一実施の形態に係る鋳片の中心固相率の測定方法を適用する連続鋳造機10について説明する。
これにより、取鍋14からタンディッシュ11へロングノズル15を介して供給された溶鋼16を、浸漬ノズル12を介して鋳型13内に連続的に供給(注入)して冷却することができ、鋳型13内面との接触側(外周部)に凝固シェルを形成できる。
これにより、鋳型13内で形成された凝固シェルを、鋳型13の下方から引き抜きながら冷却手段によって冷却し、凝固シェル内の未凝固部分を凝固させて鋳片(連続鋳造鋳片:例えばスラブ)18を製造できる。なお、ロール群17を構成するロールには、製造する鋳片18の厚み方向に間隔を有し、かつ、鋳造方向に渡って複数配置された、サポートロール19、ガイドロール20、軽圧下ロール(ロールの一例)21、及び、駆動ロール22、がある。
軽圧下装置23は、図1、図3(A)に示すように、鋳片18の厚み方向(上下方向)に間隔を有して対向配置された対となる支持フレーム24、25を有し、各支持フレーム24、25に複数本(ここでは4本)の軽圧下ロール21が軸受け部26を介して回転可能に設けられている。
これにより、一対の油圧シリンダー27を同期駆動させ、対向する支持フレーム24と支持フレーム25の間隔を調整(接近又は離間)することで、凝固完了点近傍の鋳片18を軽圧下ロール21で軽圧下できる。なお、対となる支持フレーム24、25の間隔調整は、鋳片18の軽圧下が可能であれば、例えば、空圧シリンダーでもよい。
本発明の鋳片の中心固相率の測定方法は、モールド湯面変動量の事前測定工程、ロール加振工程、モールド湯面レベルの測定工程、モールド湯面レベルの測定結果の解析工程、湯面変動量の理論値算出工程、及び、中心固相率の算出工程、を有している。以下、詳しく説明する。
連続鋳造の通常操業時においては、例えば、鋳型オシレーション(振動)や鋳型13内の溶鋼16の撹拌等により、鋳型13内の溶鋼16の湯面が変動(以下、モールド湯面変動ともいう)している。このため、通常操業時における鋳型13内の溶鋼16の湯面レベル(以下、モールド湯面レベルともいう)を計測し、通常操業時におけるモールド湯面レベルの時系列データの周波数解析を行う。
なお、モールド湯面レベルの測定は、例えば、渦流式湯面レベルセンサー等により実施できるが、モールド湯面レベルを測定可能な機器であれば、渦流式湯面レベルセンサーに限定されるものではない。
前記した軽圧下装置23において、油圧シリンダー27を駆動させ、鋳片18の厚み方向に対向配置された支持フレーム24と支持フレーム25の間隔、即ち、軽圧下ロール21の間隔を、予め設定した周波数(周期)と振幅で可変させる(軽圧下ロール21を加振する)。
ここで、軽圧下ロール21の間隔の可変対象となる軽圧下装置23は、鋳片18の凝固末期(中心固相率が0%超)と推定される箇所(領域)に配置された装置である。なお、鋳片の凝固末期は、例えば、鋳片の温度計算等により推定できる。
周波数は、0.1Hz以上1Hz以下の範囲内で、一定周波数となるように設定することが好ましい。
ここで、周波数の下限を0.1Hzとしたのは、通常操業時におけるモールド湯面変動の周波数と共振させないためであり、上限を1Hzとしたのは、通常操業時における鋳型の振動周波数や鋳型内の溶鋼の電磁撹拌周波数域との共振回避のためである。
ここで、変動量を20mm以下としたのは、鋳型内の湯面変動量が大きくなった場合、湯面上のモールドパウダーの鋳片内への巻き込み等が発生し、鋳片品質に異常が発生し易くなるためである。なお、変動量が20mm以下であれば、本発明の効果が得られるため、下限については特に限定しないが、例えば、5mm程度である。
なお、ロール加振工程では、軽圧下装置23の動作時の油圧シリンダー27の推力測定(鋳片18の押圧力測定)も並行して実施する。
上記したロール加振工程の実施と同時に、前記した渦流式湯面レベルセンサーにより、モールド湯面レベルの上昇量の測定も行う。
図1に示すように、鋳片18のうち、中心部に未凝固部分が存在する部分(未凝固鋳片)に対して、前記したロール加振工程を行った場合(図1の左側)、軽圧下ロール21が鋳片18を圧下する周波数に対応してモールド湯面レベルが周期的に変化する。一方、中心部に未凝固部分が存在しない部分(完全凝固鋳片)に対して、前記したロール加振工程を行った場合(図1の右側)、軽圧下ロール21が鋳片18を圧下してもモールド湯面レベルは変化しない。
上記したモールド湯面レベルの測定工程で得られたモールド湯面レベルの時系列データの周波数解析を実施して、モールド湯面変動と周波数との関係を得る。
これにより、上記したロール加振工程での周波数におけるモールド湯面レベル変動量δが得られる。このモールド湯面レベル変動量δは、前記したモールド湯面変動量の事前測定工程で得られたベースモールド湯面レベル変動量γも含む変動量である。
なお、解析を行うに際しては、解析精度を担保するためデータ点数を2048点以上としたが、上記したロール加振工程での周波数に応じて種々変更できる。
鋳型13内の溶鋼16の理論的な湯面上昇量(以下、モールド湯面理論押し上げ量ともいう)XTの算出に際し、以下のように定義する(図3(B)参照)。
鋳片幅:W(mm)、鋳片厚み:t(mm)、設定振幅(片振幅):A(mm)、軽圧下装置の支持フレームの鋳造方向の長さ:L(mm)、軽圧下ロールのたわみ:y(mm)、鋳片の短辺側の凝固厚み:St(mm)、とする。
ここで、鋳片の短辺側の凝固厚みStは、鋳片が凝固末期であることを考慮すると、t/2に近似できる(St≒t/2)。なお、鋳片の短辺側の凝固厚みは、例えば、鋳片の温度計算から推定することもできる。
ここで、鋳型内の溶鋼の湯面上昇体積Vは、下式により算出できる。
V={W−2×(t/2)}×L×(2A−y)
また、鋳型の開口面積Sは、下式により算出できる。
S=W×t
y=a×F+b
ここで、Fは軽圧下ロールの負荷荷重、aとbは定数(剛性テストにより決定)、である。
なお、オフラインにおいては、対向する軽圧下ロールの間隔変動時における油圧シリンダーの推力測定値をz、シリンダー本数をcとすると、下式により求まる。
F=z×c
鋳型13内の溶鋼16の計測された湯面上昇量XRは、モールド湯面レベル変動量δ(モールド湯面レベルの測定結果の解析工程で計測)と、ベースモールド湯面レベル変動量γ(モールド湯面変動量の事前測定工程で計測)との差(=δ−γ)により得られる。
前記したモールド湯面理論押し上げ量XT(mm)に対して、上記した湯面上昇量XRは鋳片18の中心部の半凝固状態に比例するため、下式により鋳片18の中心部の固相率fSが求まる。
fS=1−XR/XT
従って、固相率fSの数値が大きいほど、即ち1(100%)に近づくほど、鋳片が完全凝固に近づくことを意味する。
なお、算出した鋳片18の中心部の固相率fSは、軽圧下装置23の鋳造方向中心位置に対応する鋳片18位置の固相率である。
なお、鋳片18の中心部の固相率fSの算出は、例えば、取鍋(チャージ)ごとに、また、鋼種ごとに、実施することができる。更に、予め算出した固相率fSに基づいて、連続鋳造の鋳造条件を設定することもできる。
ここでは、スラブ(鋳片)の凝固完了点近傍に配置された、連続する4台の軽圧下装置を用いて、スラブの中心部の固相率fSを算出した結果について説明する。
軽圧下装置の軽圧下ロールの可変条件を、周波数:0.1Hz、振幅:0.15mm、に設定して、スラブを軽圧下した。なお、スラブの寸法は、幅W:1100mm、厚みt:250mm、軽圧下装置1台あたりの鋳造方向の長さL:2500mm、軽圧下ロールのたわみ量y:0.16mm、である。
モールド湯面変動量の事前測定工程で算出したベースモールド湯面レベル変動量γは、0.3mmであった。
湯面変動量の理論値算出工程で算出したモールド湯面理論押し上げ量XTは、1.08mmであった。
従って、本発明の鋳片の中心固相率の測定方法を用いることで、従来のように、中心固相率測定のための新たな機器を設けることなく、中心固相率を安定に得ることができるため、経済的に作業性よく鋳片の内部品位をコントロールできる。
例えば、前記実施の形態においては、鋳片の中心部の固相率fSの算出に際し、軽圧下ロールのたわみも考慮した場合について説明したが、例えば、軽圧下ロールのたわみが無視できる程度に小さい場合(例えば、たわみyが0.015mm以下、更には0.01mm以下の場合)には、軽圧下ロールのたわみを考慮することなく、固相率fSを算出することもできる。なお、軽圧下ロールのたわみを無視するか否かは、例えば、製造する鋳片の成分や、軽圧下ロールの特性(材質や長さ等)等に基づいて判断すればよい。
Claims (2)
- 鋳型内に溶鋼を注入し、該溶鋼を冷却して形成した凝固シェルを前記鋳型の下方から引き抜きながら冷却し、前記凝固シェル内の未凝固部分を凝固させて製造される連続鋳造の鋳片の中心固相率の測定方法であって、
前記鋳片の厚み方向に対向配置されたロールの間隔を予め設定した周期と振幅で可変させて前記鋳片を圧下する際の前記鋳型内の溶鋼の湯面レベルの上昇量を計測し、下式により前記鋳片の中心部の固相率fSを求めることを特徴とする鋳片の中心固相率の測定方法。
fS=1−XR/XT
ここで、XRは鋳型内の溶鋼の計測された湯面上昇量、XTは鋳型内の溶鋼の理論的な湯面上昇量、である。 - 請求項1記載の鋳片の中心固相率の測定方法において、前記鋳型内の溶鋼の理論的な湯面上昇量XTは、前記ロールのたわみも考慮して算出される溶鋼の湯面上昇体積を、前記鋳型の開口面積で除して算出することを特徴とする鋳片の中心固相率の測定方法。
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