以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係るステアリング装置の概略を示す模式図である。図2は、本実施形態に係るステアリング装置の斜視図である。図1に示すように、ステアリング装置80は、操作者から与えられる力が伝達する順に、ステアリングホイール81と、ステアリングシャフト82と、操舵力アシスト機構83と、第1ユニバーサルジョイント84と、中間シャフト85と、第2ユニバーサルジョイント86と、を備えピニオンシャフト87に接合されている。以下の説明においては、ステアリング装置80が搭載された車両における前方は単に前方と記載され、車両における後方は単に後方と記載される。
図1に示すように、ステアリングシャフト82は、入力軸82aと、出力軸82bとを備える。入力軸82aの一方の端部がステアリングホイール81に連結され、入力軸82aの他方の端部が出力軸82bに連結される。また、出力軸82bの一方の端部が入力軸82aに連結され、出力軸82bの他方の端部が第1ユニバーサルジョイント84に連結される。
図1に示すように、中間シャフト85は、第1ユニバーサルジョイント84と第2ユニバーサルジョイント86とを連結している。中間シャフト85の一方の端部が第1ユニバーサルジョイント84に連結され、他方の端部が第2ユニバーサルジョイント86に連結される。ピニオンシャフト87の一方の端部が第2ユニバーサルジョイント86に連結され、ピニオンシャフト87の他方の端部がステアリングギヤ88に連結される。第1ユニバーサルジョイント84及び第2ユニバーサルジョイント86は、例えばカルダンジョイントである。ステアリングシャフト82の回転が中間シャフト85を介してピニオンシャフト87に伝わる。すなわち、中間シャフト85はステアリングシャフト82に伴って回転する。
図1に示すように、ステアリングギヤ88は、ピニオン88aと、ラック88bとを備える。ピニオン88aは、ピニオンシャフト87に連結される。ラック88bは、ピニオン88aに噛み合う。ステアリングギヤ88は、ピニオン88aに伝達された回転運動をラック88bで直進運動に変換する。ラック88bは、タイロッド89に連結される。ラック88bが移動することで車輪の角度が変化する。
図1に示すように、操舵力アシスト機構83は、減速装置92と、電動モータ93とを備える。減速装置92は、例えばウォーム減速装置である。電動モータ93で生じたトルクは、減速装置92の内部のウォームを介してウォームホイールに伝達され、ウォームホイールを回転させる。減速装置92は、ウォーム及びウォームホイールによって、電動モータ93で生じたトルクを増加させる。そして、減速装置92は、出力軸82bに補助操舵トルクを与える。すなわち、ステアリング装置80はコラムアシスト方式である。
図1に示すように、ステアリング装置80は、ECU(Electronic Control Unit)90と、トルクセンサ94と、車速センサ95と、を備える。電動モータ93、トルクセンサ94及び車速センサ95は、ECU90と電気的に接続される。トルクセンサ94は、入力軸82aに伝達された操舵トルクをCAN(Controller Area Network)通信によりECU90に出力する。車速センサ95は、ステアリング装置80が搭載される車体の走行速度(車速)を検出する。車速センサ95は、車体に備えられ、車速をCAN通信によりECU90に出力する。
ECU90は、電動モータ93の動作を制御する。ECU90は、トルクセンサ94及び車速センサ95のそれぞれから信号を取得する。ECU90には、イグニッションスイッチ98がオンの状態で、電源装置99(例えば車載のバッテリ)から電力が供給される。ECU90は、操舵トルク及び車速に基づいて補助操舵指令値を算出する。ECU90は、補助操舵指令値に基づいて電動モータ93へ供給する電力値を調節する。ECU90は、電動モータ93から誘起電圧の情報又は電動モータ93に設けられたレゾルバ等から出力される情報を取得する。ECU90が電動モータ93を制御することで、ステアリングホイール81の操作に要する力が小さくなる。
図3は、本実施形態に係る中間シャフトの斜視図である。図4は、第2カバーの図示を省略した中間シャフトの斜視図である。図5は、第2カバー及び第1カバーの図示を省略した中間シャフトの斜視図である。図6は、本実施形態に係る中間シャフトの側面図である。図7は、図6におけるA−A断面図である。図8は、アッパーシャフト及びロアシャフトの分解斜視図である。図9は、図6におけるB−B断面図である。図10は、図6におけるC−C断面図である。図11は、図7におけるD部拡大図である。図12は、本実施形態に係るアッパーシャフトの側面図である。図13は、本実施形態に係る中間シャフトの製造方法のフローチャートである。図14は、本実施形態に係る中間シャフトの製造方法に用いられる切削工具の斜視図である。図15及び図17は、本実施形態に係る中間シャフトの製造方法の第1ステップを説明するための側面図である。図16は、本実施形態に係る中間シャフトの製造方法の第1ステップを説明するための正面図である。図18及び図19は、本実施形態に係る中間シャフトの製造方法の第2ステップを説明するための側面図である。図20は、本実施形態に係る中間シャフトの製造方法の第3ステップを説明するための側面図である。図21は、図12におけるE部拡大図である。図22は、本実施形態に係るアッパーシャフトの展開図である。
図6及び図7に示すように、中間シャフト85は、アッパーシャフト1と、ロアシャフト2と、ストッパー6と、第1カバー3と、第2カバー4と、を備える。アッパーシャフト1及びロアシャフト2は、機械構造用炭素鋼(SC材(Carbon Steel for Machine Structural Use))又は機械構造用炭素鋼鋼管(いわゆるSTKM材(Carbon Steel Tubes for Machine Structural Purposes))等で形成される。アッパーシャフト1及びロアシャフト2の強度は、第1ユニバーサルジョイント84側又は第2ユニバーサルジョイント86側から伝わるトルクによって変形しないように設計される。
図12に示すように、アッパーシャフト1は筒状部材である。アッパーシャフト1は、ジョイント嵌合部11と、第1テーパー部12と、衝撃吸収部13と、第2テーパー部14と、円筒部15と、第3テーパー部16と、アッパー嵌合部17と、を備える。
ジョイント嵌合部11は、アッパーシャフト1の後方の端部に配置される。ジョイント嵌合部11は、第1ユニバーサルジョイント84に連結される。ジョイント嵌合部11の外径は一定である。例えば、ジョイント嵌合部11の外径は23mmである。ジョイント嵌合部11の厚みは2mm以上3.5mm以下であることが好ましい。例えば、ジョイント嵌合部11の厚みは3mmである。例えば、ジョイント嵌合部11は、図12に示すように外周面にセレーション11aを備える。セレーション11aは、第1ユニバーサルジョイント84に設けられたセレーションと噛み合う。ジョイント嵌合部11は、第1ユニバーサルジョイント84に対して溶接によって固定されている。
第1テーパー部12は、ジョイント嵌合部11の前方に配置される。第1テーパー部12の後方端部における外径は、ジョイント嵌合部11の外径に等しい。第1テーパー部12の外径は、前方に向かって大きくなっている。第1テーパー部12の厚みは、ジョイント嵌合部11の厚みに等しい。
衝撃吸収部13は、第1テーパー部12の前方に配置される。衝撃吸収部13の外径は一定である。例えば、衝撃吸収部13の外径は34mmである。衝撃吸収部13の厚みは0.8mm以上1.5mm以下であることが好ましい。例えば、衝撃吸収部13の厚みは1.2mmである。衝撃吸収部13の厚みは第1テーパー部12の厚みより小さい。
図12に示すように衝撃吸収部13は、外周面に設けられる複数のスリット5と、後方表面131と、前方表面132と、を備える。スリット5の長手方向は、衝撃吸収部13の周方向に沿っている。衝撃吸収部13の周方向は、衝撃吸収部13の回転軸Zを中心とした円の接線方向である。スリット5は、例えば図14に示す切削工具10によって衝撃吸収部13の外周面を切削することで形成される。図14に示すように、切削工具10は、棒状であって、複数の刃101を備える。スリット5は、ブローチ加工によって形成される。ブローチと呼ばれる切削工具10が、衝撃吸収部13の回転軸Zを中心とした円の接線の1つに沿う方向に移動させられる。具体的には、図12に示す最も後方に位置するスリット5を形成する場合、衝撃吸収部13の外周面に当てられた切削工具10が紙面の奥行き方向に移動させられる。スリット5は、衝撃吸収部13の放射方向から見て楕円状である。衝撃吸収部13の放射方向は、衝撃吸収部13の回転軸Zに対する直交方向である。また、以下の説明において衝撃吸収部13の回転軸Zに沿う方向は、単に軸方向と記載される。
例えば本実施形態における中間シャフト85の製造方法は、図13に示すように、第1ステップS1と、第1ステップS1の後の第2ステップS2と、第2ステップS2の後の第3ステップS3と、を含む。第1ステップS1においては、図15及び図16に示すように衝撃吸収部13の外周面が切削工具10によって切削されることにより、図17に示すようにスリット5が形成される。切削工具10が衝撃吸収部13の回転軸Zを中心とした円の接線の1つに沿う方向に移動することで、スリット5が形成される。第1ステップS1において、中間シャフト85は、移動しないように固定されている。第2ステップS2においては、図18及び図19に示すように、衝撃吸収部13の回転軸Zを中心に中間シャフト85が回転させられ、且つ中間シャフト85が軸方向にずらされる。その後、中間シャフト85は、移動しないように固定される。第3ステップS3においては、図20に示すように、衝撃吸収部13の外周面が切削工具10によって切削されることにより2つめのスリット5が形成される。その後、第2ステップS2及び第3ステップS3が繰返されることにより、複数のスリット5が形成される。
図12に示すように、後方表面131は、スリット5に面する衝撃吸収部13の表面である。後方表面131は、スリット5の中心Cより後方に位置する。前方表面132は、スリット5に面する衝撃吸収部13の表面である。前方表面132は、スリット5の中心Cより前方に位置する。
図21に示すように、後方表面131は、平面部131aと、曲面部131bと、を含む。図21は、周方向から見たスリット5の周辺を示す図である。言い換えると、図21は周方向におけるスリット5の両端を通る直線に沿う方向から見た図である。図21において平面部131aは線分を描く。平面部131aは、衝撃吸収部13の外周面に繋がる。図21において平面部131aと衝撃吸収部13の外周面とがなす角度θ1は鈍角である。図21において曲面部131bは円弧を描く。曲面部131bの一端が平面部131aに繋がり、曲面部131bの他端が前方表面132に繋がる。
図21に示すように、前方表面132は、平面部132aと、曲面部132bと、を含む。図21において平面部132aは線分を描く。平面部132aは、衝撃吸収部13の外周面に繋がる。図21において平面部132aと衝撃吸収部13の外周面とがなす角度θ2は鈍角である。例えば角度θ2は角度θ1に等しい。図21において曲面部132bは円弧を描く。曲面部132bの一端が平面部132aに繋がり、曲面部132bの他端が後方表面131の曲面部131bに繋がる。
図22に示すように、複数のスリット5(スリット51からスリット59)は、軸方向で互いに異なる位置に配置されている。すなわち、軸方向に並んだ9つの列にスリット5が1つずつ配置されている。隣接する列にある2つのスリット5の中心C間の、軸方向の距離P1は一定である。隣接する列にある2つのスリット5の中心C間の、周方向の距離P2は一定である。このため、軸方向に並んだ列の順にスリット5の中心を繋いだ線は螺旋を描く。例えば、距離P2は衝撃吸収部13の外周Lの3/8倍である。
図12に示すように、第2テーパー部14は、衝撃吸収部13の前方に配置される。第2テーパー部14の後方端部における外径は、衝撃吸収部13の外径に等しい。第2テーパー部14の外径は、前方に向かって小さくなっている。第2テーパー部14の厚みは、2mm以上3.5mm以下であることが好ましい。例えば、第2テーパー部14の厚みは2.5mmである。第2テーパー部14の厚みは、衝撃吸収部13の厚みより大きい。
円筒部15は、第2テーパー部14の前方に配置される。円筒部15の外径は一定である。円筒部15の厚みは、第2テーパー部14の厚みに等しい。
第3テーパー部16は、円筒部15の前方に配置される。第3テーパー部16の後方端部における外径は、円筒部15の外径に等しい。第3テーパー部16の外径は、前方に向かって小さくなっている。第3テーパー部16の厚みは、第2テーパー部14の厚みに等しい。
アッパー嵌合部17は、アッパーシャフト1の前方の端部に配置される。アッパー嵌合部17はロアシャフト2に連結される。アッパー嵌合部17の外径は一定である。例えば、アッパー嵌合部17の外径は23mmである。アッパー嵌合部17の厚みは、第2テーパー部14の厚みに等しい。アッパー嵌合部17は、図8に示すように内周面にセレーション17aを備える。
図7に示すように、ロアシャフト2は中実部材である。ロアシャフト2は、ロア嵌合部21と、円柱部22と、ジョイント嵌合部23と、を備える。
ロア嵌合部21は、ロアシャフト2の後方の端部に配置される。ロア嵌合部21は、アッパーシャフト1のアッパー嵌合部17に挿入されている。ロア嵌合部21は、図8に示すように外周面にセレーション21aを備える。セレーション21aは、セレーション17aと噛み合う。また、ロア嵌合部21は、図7に示すように後方側の端面に凹部210を有する。
図9に示すように、軸方向に対して直交する断面においてアッパー嵌合部17の外形が楕円を描く。図9に示す断面において、ロア嵌合部21の外形は円を描く。図10に示すように、軸方向に対して直交する断面のうち図9とは異なる断面において、アッパー嵌合部17の外形が円を描く。図10に示す断面において、ロア嵌合部21の外形は楕円を描く。なお、図9のアッパー嵌合部17及び図10のロア嵌合部21の形状は、説明のために誇張して描かれており、実際の形状とは異なる。実際には、セレーション17aの全ての歯は、それぞれセレーション21aの2つの歯の間に位置する。すなわち、図9の左側及び右側に位置するセレーション17aの歯は、セレーション21aの歯に接していないが、セレーション21aの2つの歯の間に位置する。図10の上側及び下側に位置するセレーション17aの歯は、セレーション21aの歯に接していないが、セレーション21aの2つの歯の間に位置する。
中間シャフト85を組み立てる時、ロア嵌合部21の一部がアッパー嵌合部17に挿入される。そして、アッパー嵌合部17及びロア嵌合部21が凹部210に対応する位置で2方向からプレスされる。その後、ロア嵌合部21がアッパー嵌合部17の中にさらに押し込まれる。これにより、図9及び図10に示す断面形状が形成される。なお、アッパー嵌合部17及びロア嵌合部21のこのような連結方法は、楕円嵌合と呼ばれることがある。
アッパー嵌合部17のロア嵌合部21との接触部分に生じる摩擦により、アッパー嵌合部17に対するロア嵌合部21の移動が規制されている。すなわち、通常使用時(衝突が生じていない時)において、ロア嵌合部21はアッパー嵌合部17に対して移動しない。一方、衝突時においてロアシャフト2に軸方向の所定荷重が加わった場合、ロア嵌合部21がアッパー嵌合部17に対して移動する。所定荷重は、例えば1kN以上3kN以下程度である。すなわち、ロアシャフト2は、衝突時にアッパーシャフト1から離脱できるようにアッパーシャフト1に連結されている。ロア嵌合部21とアッパー嵌合部17との間の摩擦により衝撃が吸収される。衝撃吸収部13の強度は、ロアシャフト2に所定荷重が加わった場合でも座屈しないように設計されている。
円柱部22は、ロア嵌合部21の前方に配置される。円柱部22の外径は一定である。円柱部22の外径は、ロア嵌合部21の外径に等しい。
ジョイント嵌合部23は、円柱部22の前方の端部に配置される。ジョイント嵌合部23は、第2ユニバーサルジョイント86に連結される。ジョイント嵌合部23の外径は一定である。例えば、ジョイント嵌合部23は、外周面にセレーションを備える。ジョイント嵌合部23のセレーションは、第2ユニバーサルジョイント86に設けられたセレーションと噛み合う。ジョイント嵌合部23は、第2ユニバーサルジョイント86に対して溶接によって固定されている。
ストッパー6は、アッパーシャフト1に対してロアシャフト2が移動できる距離の最大値を決めるための部材である。例えば、ストッパー6は、図3に示すように第2ユニバーサルジョイント86の後方端部に設けられる。衝突時にアッパーシャフト1に対してロアシャフト2が所定距離移動すると、アッパーシャフト1の前方端部がストッパー6に当たる。これにより、ロアシャフト2の移動が停止する。
図7に示すように、第1カバー3は衝撃吸収部13に取り付けられる。図11に示すように第1カバー3は、衝撃吸収部13の外周面に接し且つスリット5を塞ぐ。第1カバー3は、例えば熱収縮チューブである。熱収縮チューブは、合成樹脂で形成されており、熱を加えられることで収縮する。このため、第1カバー3は衝撃吸収部13の外周面に密着する。図11に示すように、第1カバー3の一部はスリット5の内部に位置する。第1カバー3がスリット5を覆うので、スリット5への水の侵入が防止される。
図7に示すように、第2カバー4は、アッパーシャフト1に取り付けられる。第2カバー4は、例えば合成樹脂で形成されており、蛇腹状である。第2カバー4の厚みは第1カバー3の厚みより大きい。例えば、第2カバー4の厚みは1.2mmである。例えば、第2カバー4の最大外径は42mmである。第2カバー4は第1カバー3を覆う。第2カバー4と第1カバー3との間には隙間が設けられている。第2カバー4の一端は第1テーパー部12に接する。第2カバー4の他端は円筒部15に接する。
第2カバー4は、図6及び図7に示すように、複数の水抜き穴41と、ノッチ42と、溝48と、を備える。水抜き穴41は、第2カバー4の軸方向の中央より前方に設けられた穴である。水抜き穴41は、第1カバー3と第2カバー4との間に侵入した水を外部に排出する。ノッチ42は、第2カバー4の後方端部に設けられた切欠きである。ノッチ42は、軸方向に沿っている。ノッチ42があることで、第2カバー4の後方端部における内径を拡げることが容易である。水抜き穴41だけでなくノッチ42からも水が排出される。溝48は、第2カバー4の後方端部の外周面に設けられた溝である。溝48は周方向に沿っており、ノッチ42に繋がっている。溝48には図6に示す止め輪49が取り付けられる。第2カバー4は、止め輪49によって第1テーパー部12に固定されている。
図23は、ロアシャフトがアッパーシャフトの中に入った時の中間シャフトの斜視図である。図24は、アッパーシャフトが曲がった時の中間シャフトの斜視図である。
車両が衝突するとステアリングギヤ88に荷重が加わる。ステアリングギヤ88に加わった荷重は、第2ユニバーサルジョイント86を介してロアシャフト2に伝わる。車両の前面の全てが衝突対象物に当たった場合(フルラップ衝突の場合)、ロアシャフト2には軸方向の荷重が加わることが多い。フルラップ衝突の場合には、図23に示すようにロアシャフト2がアッパーシャフト1に対して移動することで衝撃が吸収される。その結果、ステアリングホイール81に伝わる衝撃が低減する。
一方、車両の前面の一部が衝突対象物に当たった場合(オフセット衝突の場合)、ロアシャフト2には軸方向でない荷重が加わることが多い。このため、ロアシャフト2がアッパーシャフト1に対して真っ直ぐに移動できない。オフセット衝突の場合には、図24に示すようにアッパーシャフト1の衝撃吸収部13が曲がる。これにより、衝撃がステアリングシャフト82側に伝わりにくくなる。その結果、ステアリングホイール81に伝わる衝撃が低減する。衝撃吸収部13は、スリット5を起点として曲がる。一部のスリット5が軸方向に伸び、伸びるスリット5に対して反対側にあるスリット5が軸方向に縮む。衝撃吸収部13が曲がった場合、ロアシャフト2は周辺部品の隙間に入り込む。
衝突時において、ロアシャフト2がアッパーシャフト1に対して移動し、且つ衝撃吸収部13が曲がることもある。図23に示すようにアッパーシャフト1がストッパー6に当たった状態において、ロアシャフト2の後方端部は、1つのスリット5の中心より前方に位置する。具体的には、ロアシャフト2の後方端部が、最も後方に配置されたスリット5の中心より前方にあればよい。これにより、ロアシャフト2がアッパーシャフト1に対して移動した後に、衝撃吸収部13がスリット5を起点に曲がることができる。
上述した特許文献1においては、衝突時にロールパイプ(スリーブ)の曲がりやすい方向が4方向に限定されやすい。曲がりやすい方向が限定される場合、ロールパイプ(スリーブ)が曲がる方向に障害物(例えば中間シャフトの周辺部材又は衝突時に後方に移動する部材)があると、ロールパイプ(スリーブ)の曲げが阻害される。これに対して、本実施形態においては、図22で示したように8つのスリット5(スリット51からスリット58)の周方向の位置が互いに異なる。このため、衝撃吸収部13は少なくとも8つの方向に曲がりやすい。本実施形態においては、特許文献1に比較して衝撃吸収部13の曲がる方向が限定されにくい。このため、衝撃吸収部13の曲げが阻害されにくい。
また、特許文献1においては、長孔を形成するためにロールパイプ(スリーブ)の放射方向外側から加工が施されることになる。放射方向から行う加工は比較的難しい。これに対して、本実施形態に係るスリット5はブローチ加工によって形成される。このため、特許文献1に比較してスリット5の形成が容易である。
なお、中間シャフト85において、必ずしもロアシャフト2がアッパーシャフト1の内側に配置されていなくてもよい。例えば、ロアシャフト2が筒状であって、アッパーシャフト1がロアシャフト2の内側に配置されていてもよい。この場合、アッパー嵌合部17の外周面にセレーション17aが設けられ、筒状であるロア嵌合部21の内周面にセレーション21aが設けられる。
なお、衝撃吸収部13は、必ずしもアッパーシャフト1に設けられなくてもよい。アッパーシャフト1及びロアシャフト2の少なくとも一方が衝撃吸収部13を備えていればよい。この場合、アッパーシャフト1又はロアシャフト2がストッパー6に当たった時、アッパーシャフト1の前方の端部は、スリット5の中心Cより後方に位置することが好ましい。これにより、ロアシャフト2が最大限移動した後でも、ロアシャフト2が容易に曲がることができる。このため、ステアリング装置80の衝撃吸収能力が向上する。
なお、スリット5の数及び形状は、上述したものに限られない。スリット5の数は1つであってもよいし、10個以上であってもよい。また、スリット5は規則的に配列されていなくてもよい。
なお、第1カバー3及び第2カバー4は、必ずしも合成樹脂で形成されていなくてもよい。例えば、第1カバー3及び第2カバー4は、合成ゴムで形成されていてもよい。
以上で説明したように、ステアリング装置80は、第1ユニバーサルジョイント84と、第2ユニバーサルジョイント86と、中間シャフト85と、を備える。第2ユニバーサルジョイント86は、第1ユニバーサルジョイント84より前方側に配置される。中間シャフト85は、第1ユニバーサルジョイント84と第2ユニバーサルジョイント86とを連結する。中間シャフト85は、外周面にスリット5を有する筒状の衝撃吸収部13を備える。スリット5の長手方向は、中間シャフト85の周方向に沿う。衝撃吸収部13は、スリット5に面し且つスリット5の中心Cより後方に位置する後方表面131と、スリット5に面し且つスリット5の中心Cより前方に位置する前方表面132と、を備える。周方向からスリット5を見た場合、衝撃吸収部13の外周面と後方表面131とがなす角度θ1、及び衝撃吸収部13の外周面と前方表面132とがなす角度θ2が鈍角である。
これにより、衝突時において後方表面131と前方表面132との間の境界部分に応力が集中する。応力が集中するスリット5の両端を起点として、中間シャフト85が容易に曲がる。したがって、ステアリング装置80は、衝突時に中間シャフト85を容易に変形させることができる。また、後方表面131と前方表面132との間の最大距離が大きくなりやすいので、中間シャフト85が曲がる時の中間シャフト85の変位が大きくなりやすい。
また、衝撃吸収部13は、複数のスリット5を備える。複数のスリット5は、第1スリット(例えばスリット51)と、第1スリットに対して中間シャフト85の軸方向で異なる位置にある第2スリット(例えばスリット52)と、を少なくとも含む。第2スリットの中心Cは、第1スリットの中心Cに対して周方向にずれている。
これにより、衝撃吸収部13の曲がる方向が限定されにくくなる。
また、中間シャフト85は、第1ユニバーサルジョイント84に連結されるアッパーシャフト1と、第2ユニバーサルジョイント86に連結され且つアッパーシャフト1に離脱可能に連結されるロアシャフト2と、を備える。
これにより、衝突時にロアシャフト2がアッパーシャフト1に対して移動する。また、衝突時において後方表面131と前方表面132との間の境界部分に応力が集中する。応力が集中するスリット5の両端を起点として、中間シャフト85が容易に曲がる。したがって、ステアリング装置80は、衝突時にロアシャフト2及びアッパーシャフト1が相対的に移動し且つ中間シャフト85を容易に変形させることができる。
また、アッパーシャフト1は、セレーション17aを有するアッパー嵌合部17を備える。ロアシャフト2は、セレーション21aを有するロア嵌合部21を備える。ロア嵌合部21がアッパー嵌合部17に嵌まる。アッパーシャフト1の軸方向に対して直交する断面において、アッパー嵌合部17の外形及びロア嵌合部21の外形のうち一方が円を描き、且つ他方が楕円を描く。
これにより、ロアシャフト2が移動する時、アッパー嵌合部17とロア嵌合部21との間に摩擦が生じる。アッパー嵌合部17とロア嵌合部21との間の摩擦により衝撃が吸収される。
また、アッパーシャフト1は、衝撃吸収部13を備える。中間シャフト85は、アッパーシャフト1に対してロアシャフト2が移動できる距離の最大値を決めるストッパー6を備える。アッパーシャフト1又はロアシャフト2がストッパー6に当たった時、ロアシャフト2の後方の端部は、スリット5の中心Cより前方に位置する。
これにより、ロアシャフト2が最大限移動した後でも、アッパーシャフト1が容易に曲がることができる。このため、ステアリング装置80の衝撃吸収能力が向上する。
また、中間シャフト85は、第1カバー3と、第2カバー4と、を備える。第1カバー3は、衝撃吸収部13の外周面に接し且つスリット5を塞ぐ。第2カバー4は、第1カバー3に対して隙間を空けて配置され且つ第1カバー3を覆う。第2カバー4の厚みは、第1カバー3の厚みより大きい。
これにより、スリット5を起点として中間シャフト85が容易に曲がることに加え、第1カバー3がスリット5への水の侵入を阻む。さらに、第2カバー4が第1カバー3を守る。石が中間シャフト85に向かって飛んできても、石は第2カバー4で跳ね返される。このため、第1カバー3の破損が防止される。したがって、ステアリング装置80は、衝突時に中間シャフト85を変形させることができ且つ中間シャフト85の錆びを防止できる。
また、第1カバー3は、熱収縮チューブである。
これにより、第1カバー3が衝撃吸収部13に密着する。このため、スリット5へ水がより侵入しにくくなる。また、第1カバー3を衝撃吸収部13に取り付ける作業が容易になる。
また、第2カバー4は、端部に中間シャフト85の軸方向に沿うノッチ42を備える。
これにより、第2カバー4の端部における内径を拡げることが容易である。このため、第2カバー4を衝撃吸収部13に取り付ける作業が容易になる。
また、第2カバー4は、水抜き穴41を備える。
これにより、第1カバー3と第2カバー4との間に侵入した水が水抜き穴41を介して排出される。このため、第1カバー3と第2カバー4との間の空間に水が溜まりにくくなる。
また、中間シャフト85の製造方法は、第1ステップS1と、第2ステップS2と、第3ステップS3と、を含む。第1ステップS1においては、中間シャフト85の筒状の衝撃吸収部13の外周面に、衝撃吸収部13の回転軸Zを中心とした円の接線の1つに沿う方向に移動する切削工具10により1つのスリット5(例えばスリット51)を形成する。第2ステップS2においては、第1ステップS1の後、中間シャフト85を回転させ、中間シャフト85を軸方向にずらす。第3ステップS3においては、第2ステップS2の後、切削工具10により他のスリット5(例えばスリット52)を形成する。スリット5の長手方向は、中間シャフト85の周方向に沿う。衝撃吸収部13は、スリット5に面し且つスリット5の中心Cより後方に位置する後方表面131と、スリット5に面し且つスリット5の中心Cより前方に位置する前方表面132と、を備える。周方向からスリット5を見た場合、衝撃吸収部13の外周面と後方表面131とがなす角度θ1、及び衝撃吸収部13の外周面と前方表面132とがなす角度θ2が鈍角である。
これにより、衝突時において後方表面131と前方表面132との間の境界部分に応力が集中する。応力が集中するスリット5の両端を起点として、中間シャフト85が容易に曲がる。したがって、中間シャフト85は、衝突時に容易に変形することができる。さらに、第1ステップS1から第3ステップS3によって、衝撃吸収部13の軸方向及び周方向で異なる位置に同じ形状を有する複数のスリット5が形成される。このため、衝撃吸収部13の曲がる方向が限定されにくくなる。
(第1変形例)
図25は、第1変形例に係る衝撃吸収部の側面図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図25に示すように、第1変形例に係る衝撃吸収部13Aは、外周面に設けられる複数のスリット5Aと、後方表面131Aと、前方表面132Aと、を備える。
図25に示すように、後方表面131Aは、第1曲面部131cと、第2曲面部131dと、を含む。図25は、周方向から見たスリット5Aの周辺を示す図である。言い換えると、図25は周方向におけるスリット5Aの両端を通る直線に沿う方向から見た図である。図25において第1曲面部131cは円弧を描く。第1曲面部131cは、衝撃吸収部13Aの外周面に繋がる。図25において第1曲面部131cと衝撃吸収部13Aの外周面とがなす角度θ1Aは鈍角である。角度θ1Aは、接線T1と衝撃吸収部13Aの外周面とがなす角度である。接線T1は、第1曲面部131cと衝撃吸収部13Aの外周面との交点における第1曲面部131cの接線である。図25において第2曲面部131dは円弧を描く。第2曲面部131dの一端が第1曲面部131cに繋がり、第2曲面部131dの他端が前方表面132Aに繋がる。第2曲面部131dの曲率半径は、第1曲面部131cの曲率半径より小さい。
図25に示すように、前方表面132Aは、第1曲面部132cと、第2曲面部132dと、を含む。図25において第1曲面部132cは円弧を描く。第1曲面部132cは、衝撃吸収部13Aの外周面に繋がる。図25において第1曲面部132cと衝撃吸収部13Aの外周面とがなす角度θ2Aは鈍角である。角度θ2Aは、接線T2と衝撃吸収部13Aの外周面とがなす角度である。接線T2は、第1曲面部132cと衝撃吸収部13Aの外周面との交点における第1曲面部132cの接線である。例えば角度θ2Aは角度θ1Aに等しい。図25において第2曲面部132dは円弧を描く。第2曲面部132dの一端が第1曲面部132cに繋がり、第2曲面部132dの他端が後方表面131Aの第2曲面部131dに繋がる。第2曲面部132dの曲率半径は、第1曲面部132cの曲率半径より小さい。
(第2変形例)
図26は、第2変形例に係る中間シャフトの断面図である。図27は、図26におけるF−F断面図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
第2変形例に係る中間シャフト85Bは、アッパーシャフト1Bと、ロアシャフト2Bと、シェアピン19を、を備える。図26は、軸方向に沿う平面で中間シャフト85Bを切った断面を示す。図27に示すように、アッパーシャフト1Bのアッパー嵌合部17Bは筒状部材である。アッパー嵌合部17Bには、ロアシャフト2Bのロア嵌合部21Bが挿入される。アッパー嵌合部17Bは、図27に示すように第1平面部171と、第2平面部172と、第1曲面部173と、第2曲面部174と、を備える。第2平面部172は第1平面部171に平行である。第1曲面部173及び第2曲面部174は、第1平面部171及び第2平面部172を繋ぐ。
ロアシャフト2Bは中実部材である。ロアシャフト2Bは、アッパーシャフト1Bの内周面に沿う形状を有する。ロアシャフト2Bは周方向に沿う溝211を備える。溝211は環状である。
シェアピン19は、例えば合成樹脂で形成される。シェアピン19は、アッパー嵌合部17Bに設けられた孔179及び溝211を埋めている。このため、通常使用時においては、ロア嵌合部21Bはアッパー嵌合部17Bに対して移動しない。
なお、中間シャフト85Bにおいて、必ずしもロアシャフト2Bがアッパーシャフト1Bの内側に配置されていなくてもよい。例えば、ロアシャフト2Bが筒状であって、アッパーシャフト1Bがロアシャフト2Bの内側に配置されていてもよい。この場合、ロアシャフト2Bが、第1平面部171、第2平面部172、第1曲面部173、第2曲面部174に相当する構成を備える。アッパーシャフト1Bが、溝211に相当する構成を備える。
上述したように、アッパーシャフト1B及びロアシャフト2Bの一方は、第1平面部171と、第1平面部171に平行な第2平面部172と、第1平面部171及び第2平面部172を繋ぐ曲面部(第1曲面部173及び第2曲面部174)と、を備える。アッパーシャフト1B及びロアシャフト2Bの他方は、外周面に周方向に沿う溝211を備える。中間シャフト85Bは、第1平面部171に設けられた孔179及び溝211を埋めるシェアピン19を備える。なお、アッパー嵌合部17B及びロア嵌合部21Bのこのような連結方法は、二平面嵌合と呼ばれることがある。
衝突時にはシェアピン19が切断される。これにより、ロアシャフト2Bがアッパーシャフト1Bに対して移動できるようになる。シェアピン19の切断面に摩擦が生じる。これにより、衝撃が吸収される。
(第3変形例)
図28は、第3変形例に係る中間シャフトの断面図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図28に示すように、第3変形例に係る中間シャフト85Cは、第1カバー3Cを備える。第1カバー3Cは、第1テーパー部12から第2テーパー部14に亘って配置される。第1カバー3Cの一端は第1テーパー部12の外周面に接している。第1カバー3Cの他端は第2テーパー部14に接している。
上述したように、中間シャフト85Cは、衝撃吸収部13の後方に配置される第1テーパー部12と、衝撃吸収部13の前方に配置される第2テーパー部14と、を備える。第1テーパー部12の外径は、後方に向かって小さくなっている。第2テーパー部14の外径は、前方に向かって小さくなっている。第1カバー3Cの一端は第1テーパー部12に接する。第1カバー3Cの他端は第2テーパー部14に接する。
上述した第1カバー3は、図11で示すようにスリット5の縁に接する。第1カバー3が動くと、第1カバー3がスリット5の縁に引っ掛かって破損する可能性がある。これに対して第3変形例においては、第1カバー3Cが第1テーパー部12及び第2テーパー部14に接することで第1カバー3Cが移動しにくくなる。したがって、第1カバー3Cの破損が防止される。