以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
本実施形態では、薄膜トランジスター(Thin Film Transistor;TFT)を画素のスイッチング素子として備えたアクティブマトリックス型の液晶装置を例に挙げて説明する。この液晶装置は、例えば後述する投射型表示装置(液晶プロジェクター)の光変調手段(液晶ライトバルブ)として好適に用いることができるものである。
(第1実施形態)
<液晶装置>
まず、本実施形態の液晶装置について、図1〜図3を参照して説明する。図1は第1実施形態の液晶装置の構成を示す概略平面図、図2は図1に示すH−H’線に沿う概略断面図、図3は第1実施形態の液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図である。
図1及び図2に示すように、本実施形態の液晶装置100は、対向配置された一対の基板としての素子基板10及び対向基板20と、これら一対の基板によって挟持された液晶層50とを有する。素子基板10の基材10s及び対向基板20の基材20sは、それぞれ透明な例えば石英基板やガラス基板が用いられている。
素子基板10は対向基板20よりも大きく、両基板は、対向基板20の外縁に沿って配置されたシール部40を介して間隔を置いて貼り合わされている。シール部40において途切れた部分が注入口41となっており、真空注入法により注入口41から上記間隔に正又は負の誘電異方性を有する液晶が注入され、封止剤42を用いて注入口41が封入されている。なお、上記間隔に液晶を封入する方法は、真空注入法に限定されるものではなく、例えば、額縁状に配置されたシール部40の内側に液晶を滴下して、減圧下で素子基板10と対向基板20とを貼り合わせるODF(One Drop Fill)法を採用してもよい。
シール部40は、例えば熱硬化性又は紫外線硬化性のエポキシ樹脂などの接着剤が採用されている。シール部40には、一対の基板の上記間隔を一定に保持するためのスペーサー(図示省略)が混入されている。
シール部40の内側には、マトリックス状に配列した複数の画素Pを含む表示領域E1が設けられている。また、シール部40と表示領域E1との間の周辺領域E2に表示領域E1を取り囲んで見切り部21が設けられている。見切り部21は、例えば遮光性の金属あるいは金属酸化物などからなる。
素子基板10には、複数の外部接続用端子104が配列した端子部が設けられている。該端子部に沿った第1の辺部とシール部40との間にデータ線駆動回路101が設けられている。また、第1の辺部に対向する第2の辺部に沿ったシール部40と表示領域E1との間に検査回路103が設けられている。さらに、第1の辺部と直交し互いに対向する第3及び第4の辺部に沿ったシール部40と表示領域E1との間に走査線駆動回路102が設けられている。第2の辺部のシール部40と検査回路103との間に、2つの走査線駆動回路102を繋ぐ複数の配線105が設けられている。
これらデータ線駆動回路101、走査線駆動回路102に繋がる配線は、第1の辺部に沿って配列した複数の外部接続用端子104に接続されている。なお、検査回路103の配置はこれに限定されず、データ線駆動回路101と表示領域E1との間のシール部40の内側に沿った位置に設けてもよい。
以降、第1の辺部に沿った方向をX方向とし、第3の辺部に沿った方向をY方向として説明する。また、対向基板20側から素子基板10側に向かう方向に沿って見ることを「平面視」または「平面的に」と言う。
図2に示すように、素子基板10の液晶層50側の表面には、画素Pごとに設けられた透光性の画素電極15及びスイッチング素子である薄膜トランジスター(以降、TFTと呼称する)30と、信号配線と、これらを覆う配向膜18とが形成されている。また、TFT30における半導体層に光が入射してスイッチング動作が不安定になることを防ぐ遮光構造が採用されている。素子基板10は、基材10sと、基材10s上に形成された画素電極15、TFT30、信号配線、配向膜18を含むものである。
素子基板10に対向配置される対向基板20は、基材20sと、基材20s上に形成された見切り部21と、これを覆うように成膜された平坦化層22と、平坦化層22を覆い、少なくとも表示領域E1に亘って設けられた対向電極としての共通電極23と、共通電極23を覆う配向膜24とを含むものである。
見切り部21は、図1に示すように表示領域E1を取り囲むと共に、平面的に走査線駆動回路102、検査回路103と重なる位置に設けられている。これにより対向基板20側からこれらの回路に入射する光を遮蔽して、これらの回路が光によって誤動作することを防止する役目を果たしている。また、不必要な迷光が表示領域E1に入射しないように遮蔽して、表示領域E1の表示における高いコントラストを確保している。
平坦化層22は、例えば酸化シリコンなどの無機材料からなり、光透過性を有して見切り部21を覆うように設けられている。このような平坦化層22の形成方法としては、例えばプラズマCVD法などを用いて成膜する方法が挙げられる。
共通電極23は、例えばITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電膜からなり、平坦化層22を覆うと共に、図1に示すように対向基板20の下方側の隅に設けられた上下導通部106に電気的に接続されている。上下導通部106は、素子基板10側の配線に電気的に接続している。
画素電極15を覆う配向膜18及び共通電極23を覆う配向膜24は、液晶装置100の光学設計に基づいて選定される。配向膜18,24は、例えば、ポリイミドなどの有機材料を成膜して、その表面をラビングすることにより、正の誘電異方性を有する液晶分子に対して略水平配向処理が施された有機配向膜や、気相成長法を用いてSiOx(酸化シリコン)などの無機材料を成膜して、負の誘電異方性を有する液晶分子に対して略垂直配向させた無機配向膜が挙げられる。
このような液晶装置100は透過型であって、電圧無印加状態で画素Pの透過率が最大となるノーマリーホワイトモードや、電圧無印加状態で画素Pの透過率が最小となるノーマリーブラックモードの光学設計が採用される。素子基板10と対向基板20とを含む液晶パネル110の光の入射側と射出側とにそれぞれ偏光素子が光学設計に応じて配置されて用いられる。
本実施形態では、以降、配向膜18,24として前述した無機配向膜と、負の誘電異方性を有する液晶とを用い、ノーマリーブラックモードの光学設計が適用された例について説明する。
次に図3を参照して、液晶装置100の電気的な構成について説明する。液晶装置100は、少なくとも表示領域E1において互いに絶縁されて直交する信号配線としての複数の走査線3a及び複数のデータ線6aと、データ線6aに沿って平行に配置された容量線3bとを有する。走査線3aが延在する方向がX方向であり、データ線6aが延在する方向がY方向である。
走査線3a、データ線6a及び容量線3bと、これらの信号線類により区分された領域に、画素電極15と、TFT30と、蓄積容量16とが設けられ、これらが画素Pの画素回路を構成している。
走査線3aはTFT30のゲートに電気的に接続され、データ線6aはTFT30のソースに電気的に接続されている。画素電極15はTFT30のドレインに電気的に接続されている。
データ線6aはデータ線駆動回路101(図1参照)に接続されており、データ線駆動回路101から供給される画像信号D1,D2,…,Dnを画素Pに供給する。走査線3aは走査線駆動回路102(図1参照)に接続されており、走査線駆動回路102から供給される走査信号SC1,SC2,…,SCmを画素Pに供給する。
データ線駆動回路101からデータ線6aに供給される画像信号D1〜Dnは、この順に線順次で供給してもよく、互いに隣り合う複数のデータ線6a同士に対してグループごとに供給してもよい。走査線駆動回路102は、走査線3aに対して、走査信号SC1〜SCmを所定のタイミングでパルス的に線順次で供給する。
液晶装置100は、スイッチング素子であるTFT30が走査信号SC1〜SCmの入力により一定期間だけオン状態とされることで、データ線6aから供給される画像信号D1〜Dnが所定のタイミングで画素電極15に書き込まれる構成となっている。そして、画素電極15を介して液晶層50に書き込まれた所定レベルの画像信号D1〜Dnは、画素電極15と液晶層50を介して対向配置された共通電極23との間で一定期間保持される。画像信号D1〜Dnの周波数は例えば60Hzである。
保持された画像信号D1〜Dnがリークするのを防止するため、画素電極15と共通電極23との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量16が接続されている。蓄積容量16は、TFT30のドレインと容量線3bとの間に設けられている。
なお、図1に示した検査回路103には、データ線6aが接続されており、液晶装置100の製造過程において、上記画像信号を検出することで液晶装置100の動作欠陥などを確認できる構成となっているが、図3の等価回路では図示を省略している。
本実施形態における画素回路を駆動制御する周辺回路は、データ線駆動回路101、走査線駆動回路102、検査回路103を含んでいる。また、周辺回路は、上記画像信号をサンプリングしてデータ線6aに供給するサンプリング回路、データ線6aに所定電圧レベルのプリチャージ信号を上記画像信号に先行して供給するプリチャージ回路を含むものとしてもよい。
次に、本実施形態の液晶装置100(液晶パネル110)における画素Pの構造について説明する。図4は、第1実施形態の液晶装置の画素の構造を示す概略断面図である。
図4に示すように、素子基板10の基材10s上には、まず走査線3aが形成される。走査線3aは、例えばTi(チタン)、Cr(クロム)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)などの金属のうちの少なくとも1つを含む金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、ナイトライド、あるいはこれらが積層されたものを用いることができ、遮光性を有している。
走査線3aを覆うように例えば酸化シリコンなどからなる第1絶縁膜(下地絶縁膜)11aが形成され、第1絶縁膜11a上に島状に半導体層30aが形成される。半導体層30aは例えば多結晶シリコン膜からなり、不純物イオンが注入されて、第1ソース・ドレイン領域、接合領域、チャネル領域、接合領域、第2ソース・ドレイン領域を有するLDD(Lightly Doped Drain)構造が形成されている。
半導体層30aを覆うように第2絶縁膜(ゲート絶縁膜)11bが形成される。さらに第2絶縁膜11bを挟んでチャネル領域に対向する位置にゲート電極30gが形成される。
ゲート電極30gと第2絶縁膜11bとを覆うようにして第3絶縁膜11cが形成され、半導体層30aのそれぞれの端部と重なる位置に第2絶縁膜11b、第3絶縁膜11cを貫通する2つのコンタクトホールCNT1,CNT2が形成される。
そして、2つのコンタクトホールCNT1,CNT2を埋めると共に第3絶縁膜11cを覆うようにAl(アルミニウム)やその合金などの遮光性の導電材料を用いて導電膜を成膜し、これをパターニングすることにより、コンタクトホールCNT1を介して第1ソース・ドレイン領域に繋がるソース電極31及びデータ線6aが形成される。同時にコンタクトホールCNT2を介して第2ソース・ドレイン領域に繋がるドレイン電極32(第1中継電極6b)が形成される。
次に、データ線6a及び第1中継電極6bと第3絶縁膜11cを覆って第1層間絶縁膜12が形成される。第1層間絶縁膜12は、例えばシリコンの酸化物や窒化物からなる。そして、TFT30が設けられた領域を覆うことによって生ずる表面の凹凸を平坦化する平坦化処理が施される。平坦化処理の方法としては、例えば化学的機械的研磨処理(Chemical Mechanical Polishing:CMP処理)やスピンコート処理などが挙げられる。
第1中継電極6bと重なる位置に第1層間絶縁膜12を貫通するコンタクトホールCNT3が形成される。このコンタクトホールCNT3を被覆すると共に第1層間絶縁膜12を覆うように例えばAl(アルミニウム)やその合金などの遮光性の金属からなる導電膜が成膜され、これをパターニングすることにより、配線7aと、コンタクトホールCNT3を介して第1中継電極6bに電気的に接続される第2中継電極7bとが形成される。配線7aは、平面的にTFT30の半導体層30aやデータ線6aと重なるように形成され、固定電位が与えられてシールド層として機能するものである。
配線7aと第2中継電極7bとを覆うように第2層間絶縁膜13aが形成される。第2層間絶縁膜13aも、例えばシリコンの酸化物や窒化物あるいは酸窒化物を用いて形成することができる。
第2層間絶縁膜13aの第2中継電極7bと重なる位置にコンタクトホールCNT4が形成される。このコンタクトホールCNT4を被覆すると共に第2層間絶縁膜13aを覆うように例えばTiN(窒化チタン)などの遮光性の金属からなる導電膜が形成され、これをパターニングすることにより、第1容量電極16aと第3中継電極16dとが形成される。
第1容量電極16aのうち、後に形成される誘電体層16bを介して第2容量電極16cと対向する部分の外縁を覆うように絶縁膜13bがパターニング形成される。また、第3中継電極16dのうちコンタクトホールCNT5と重なる部分を除いた外縁を覆うように絶縁膜13bがパターニング形成される。
絶縁膜13bと第1容量電極16aを覆って誘電体層16bが成膜される。誘電体層16bとしては、シリコン窒化膜や、酸化ハウニュウム(HfO2)、アルミナ(Al2O3)、酸化タンタル(Ta2O5)などの単層膜、又はこれらの単層膜のうち少なくとも2種の単層膜を積層した多層膜を用いてもよい。平面的に第3中継電極16dと重なる部分の誘電体層16bはエッチング等により除かれる。誘電体層16bを覆うように例えばTiN(窒化チタン)などの導電膜が形成され、これをパターニングすることにより、第1容量電極16aに対向配置され、第3中継電極16dに繋がる第2容量電極16cが形成される。誘電体層16bと、誘電体層16bを挟んで対向配置された第1容量電極16aと第2容量電極16cとにより蓄積容量16が構成される。
次に、第2容量電極16cと誘電体層16bとを覆う第3層間絶縁膜14が形成される。第3層間絶縁膜14も例えばシリコンの酸化物や窒化物からなり、CMP処理などの平坦化処理が施される。第2容量電極16cのうち第3中継電極16dと接する部分に至るように第3層間絶縁膜14を貫通するコンタクトホールCNT5が形成される。
このコンタクトホールCNT5を被覆し、第3層間絶縁膜14を覆うようにITOなどの透明導電膜(電極膜)が成膜される。この透明導電膜(電極膜)をパターニングしてコンタクトホールCNT5を介して第2容量電極16c及び第3中継電極16dと電気的に繋がる画素電極15が形成される。
第2容量電極16cは第3中継電極16d、コンタクトホールCNT4、第2中継電極7b、コンタクトホールCNT3、第1中継電極6bを介してTFT30のドレイン電極32と電気的に接続すると共に、コンタクトホールCNT5を介して画素電極15と電気的に接続している。
第1容量電極16aは複数の画素Pに跨るように形成され、等価回路(図3参照)における容量線3bとして機能している。第1容量電極16aには固定電位が与えられる。これにより、TFT30のドレイン電極32を介して画素電極15に与えられた電位を第1容量電極16aと第2容量電極16cとの間において保持することができる。
このように素子基板10の基材10s上には、複数の配線が形成されており、配線間を絶縁する絶縁膜や層間絶縁膜の符号を用いて配線層を表すこととする。すなわち、第1絶縁膜11a、第2絶縁膜11b、第3絶縁膜11cを括って配線層11と呼ぶ。配線層11の代表的な配線は走査線3aである。配線層12の代表的な配線はデータ線6aである。第2層間絶縁膜13a、絶縁膜13b、誘電体層16bを括って配線層13と呼び、代表的な配線は配線7aである。同じく、配線層14の代表的な配線は、容量線3bとして機能する第1容量電極16aである。なお、素子基板10における配線構造はこれに限定されるものではない。
画素電極15を覆うように配向膜18が形成され、液晶層50を介して素子基板10に対向配置される対向基板20の共通電極23を覆うように配向膜24が形成される。前述したように、配向膜18,24は無機配向膜であって、酸化シリコンなどの無機材料を所定の方向から例えば斜め蒸着して柱状に堆積させたカラム(柱状体)18a,24aの集合体からなる。このような配向膜18,24に対して負の誘電異方性を有する液晶分子LCは、配向膜面の法線方向に対してカラム18a,24aの傾斜方向に3度〜5度のプレチルト角度θpを有して略垂直配向(VA;Vertical Alignment)する。画素電極15と共通電極23との間に交流電圧(駆動信号)を印加して液晶層50を駆動することによって液晶分子LCは画素電極15と共通電極23との間に生ずる電界方向に傾くように挙動(振動)する。言い換えれば、液晶分子LCはプレチルトの方向において振動する。
図5は無機材料の斜め蒸着方向とイオン性不純物に起因する表示不具合との関係を示す概略平面図である。カラム18a,24aを形成するところの無機材料の斜め蒸着方向は、図5に示すように、例えば、素子基板10側では、破線の矢印で示したように右上から左下に向かって所定の方位角度θaでY方向と交差する方向である。素子基板10に対して対向配置される対向基板20側では、実線の矢印で示したように左下から右上に向かって所定の方位角度θaでY方向と交差する方向である。所定の角度θaは例えば45度である。なお、図5に示した斜め蒸着方向は、液晶装置100を対向基板20側から見たときの方向であり、図5に示した方位に限定されない。
液晶層50を駆動することにより、液晶分子LCの挙動(振動)が生じ、液晶層50と配向膜18,24との界面近傍に図5に示した破線あるいは実線の矢印で示した斜め蒸着方向に液晶分子LCのフロー(流れ)が生ずる。仮に液晶層50に正極性または負極性のイオン性不純物が含まれていると、イオン性不純物は液晶分子LCのフロー(流れ)に沿って表示領域E1の角部に向かって移動し偏在(凝集)するおそれがある。イオン性不純物の偏在により角部に位置する画素Pにおいて液晶層50の絶縁抵抗が低下すると、当該画素Pにおいて駆動電位の低下を招き、図5に示すような表示のムラや通電による焼き付き現象が顕著となる。特に、配向膜18,24に無機配向膜を用いた場合には、無機配向膜がイオン性不純物を吸着し易いので、有機配向膜に比べてイオン性不純物の偏在による表示のシミ、ムラや焼き付き現象が目立ち易い。
イオン性不純物は、液晶パネル110を製造する工程で用いられる例えば接着剤や封止剤42などの部材に含まれていたり、工程の環境から侵入したりすることが考えられる。また、本実施形態の液晶装置100は後述する投射型表示装置(液晶プロジェクター)の光変調手段(液晶ライトバルブ)として用いられることから、直視型の液晶装置に比べて入射する照明光の強度が強い。液晶層50に強い強度の照明光が入射することにより有機化合物である液晶分子LCの末端基が外れてイオン性不純物となるおそれがある。
<イオントラップ機構と液晶装置の駆動方法>
本実施形態の液晶装置100では、イオン性不純物の偏在による表示のシミ、ムラや焼き付き現象などの不具合を改善するため、表示領域E1以外の周辺領域E2に、表示領域E1からイオン性不純物を引き付けて捕集するイオントラップ機構を設けている。以降、本実施形態におけるイオントラップ機構と液晶装置の駆動方法について、図6〜図10を参照して説明する。
まず、本実施形態のイオントラップ機構について図6〜図8を参照して説明する。
図6は表示領域及び周辺領域とシール部の配置を示す概略平面図、図7はイオントラップ機構の配置を示す概略平面図、図8はイオントラップ機構の構造を示す概略断面図(詳しくは、図6のA−A’線に沿って切断したときの概略断面図)である。
図6に示すように、表示領域E1には、X方向とY方向とに複数の画素Pが配置されている。表示領域E1を囲むようにシール部40が配置されている(なお、図6では図1に示した注入口41及び封止剤42の図示を省略している)。また、表示領域E1とシール部40との間には、前述したように遮光性の見切り部21が配置されている。つまり、表示領域E1とシール部40との間の周辺領域E2は見切り領域となっている。
図7に示すように、本実施形態のイオントラップ機構130は、周辺領域E2において、表示領域E1を囲むようにリング状に設けられた一対の電極としての第1電極131及び第2電極132を含んで構成されている。詳しくは後述するが、第1電極131と第2電極132とは、液晶層50を挟んで対向するように配置されている。第1電極131は素子基板10側に設けられており、イオントラップ用の交流信号(ES1)が供給される外部接続用端子104(ES1)に引き回し配線を介して電気的に接続されている。第2電極132は対向基板20側に設けられ、上下導通部107を介して素子基板10側に導かれ、イオントラップ用の交流信号(ES2)が供給される外部接続用端子104(ES2)に引き回し配線を介して電気的に接続されている。なお、図7では、第1電極131及び第2電極132を太い実線で示し、引き回し配線を細い実線で示している。
表示領域E1には、画素電極15を有する画素PがX方向とY方向とにマトリックス状に配置されている。また、表示領域E1に配置された複数の画素Pは、ダミー画素を含んでいる。ダミー画素は、表示に寄与する複数の画素Pを囲むように、表示領域E1の外縁部に沿って配置されている。
対向基板20の共通電極23は、表示領域E1に亘って複数の画素電極15と対向するように配置されている。共通電極23は上下導通部106を介して素子基板10側に導かれ、固定電位(LCCOM)が供給される外部接続用端子104(LCCOM)に引き回し配線を介して電気的に接続されている。
本実施形態では、第1電極131、第2電極132、共通電極23は、それぞれ一対の外部接続用端子104に電気的に接続している。一対の外部接続用端子104は、素子基板10の端子部においてX方向の両端側に設けられている。これにより、第1電極131、第2電極132、共通電極23のそれぞれに所定の信号が安定的に供給される構成となっている。
図8に示すように、液晶装置100の液晶パネル110において、素子基板10の表示領域E1には、画素電極15及びダミー画素電極15dが配置されている。画素電極15及びダミー画素電極15dのそれぞれには、基材10s上に設けられたTFT30が配線層11〜14を介して電気的に接続されている。シール部40と表示領域E1との間の周辺領域E2には、ダミー画素電極15dと隣り合って第1電極131が配置されている。画素電極15及びダミー画素電極15d並びに第1電極131を覆うように配向膜18が設けられている。
対向基板20の表示領域E1には、液晶層50を挟んで画素電極15及びダミー画素電極15dと対向するように共通電極23が配置されている。シール部40と表示領域E1との間の周辺領域E2には、共通電極23と隣り合って第2電極132が配置されている。共通電極23及び第2電極132を覆うように配向膜24が設けられている。また、周辺領域E2において、基材20sと第2電極132との間には遮光性を有する見切り部21が設けられている。
本実施形態において、イオントラップ機構130の第1電極131は、画素電極15及びダミー画素電極15dと同じITOやIZOなどの透明導電膜からなり、膜厚も同じである。同様に、イオントラップ機構130の第2電極132は、共通電極23と同じITOやIZOなどの透明導電膜からなり、膜厚も同じである。なお、画素電極15の膜厚と共通電極23の膜厚は必ずしも同じではない。
第1電極131を覆う配向膜18の膜厚と、第2電極132を覆う配向膜24の膜厚は基本的に同じであり、例えば50nm〜200nm(ナノメーター)である。
配向膜18と配向膜24とに挟まれた液晶層50の厚みd1は、数μm以下であって、例えばおおよそ2.0μmである。したがって、本実施形態における第1電極131と第2電極132との間の距離d2も数μm以下であって、例えばおおよそ2.0μmである。
周辺領域E2における第1電極131及び第2電極132のX方向の幅L1は、例えば10μmである。第1電極131とダミー画素電極15dとの間あるいは第2電極132と共通電極23との間の距離L2は、例えば4μmである。なお、表示領域E1における画素電極15及びダミー画素電極15dのX方向の幅は、例えば4μm〜8μm程度である。図8はこのような各部の寸法を必ずしも正確に反映して各部を表示しているものではないが、液晶層50を挟んで対向配置された第1電極131と第2電極132との間の距離d2は、距離L2に比べて小さいことが好ましい。これによって、第1電極131と第2電極132との間に発生させた電界によって、液晶層50中の正極性(+)または負極性(−)のイオン性不純物を、表示領域E1から第1電極131あるいは第2電極132に引き付け易くなる。第1電極131及び第2電極132のX方向の幅L1は、10μmに限定されるものではないが、第1電極131と第2電極132との間にどの程度の量のイオン性不純物を引き付けて保持できるかは、幅L1の長さに比例すると考えられることから、液晶パネル110の大きさを考慮して決定される。
次に、液晶装置100の駆動方法について、図9及び図10を参照して説明する。図9はイオントラップ機構の第1電極、第2電極に印加される交流信号を示すタイミングチャート、図10はイオントラップ機構におけるイオントラップの基本概念図である。
本実施形態の液晶装置100の駆動方法は、図9に示すように、第1電極131と第2電極132とに、それぞれ同じ周波数で基準電位に対して振幅し、位相が異なる交流信号を印加する。具体的には、周波数が例えば1Hzで、基準電位を0V(ボルト)として、5Vと−5Vとの間で電位が変位する矩形波を第1電極131と第2電極132とに印加する。第1電極131に印加される交流信号ES1と、第2電極132に印加される交流信号ES2とは位相が180度ずれている。したがって、時間t0〜時間t1を半周期とし、時間t0〜時間t2を1周期とすると、例えば、時間t0〜時間t1における第1電極131の電位が5Vのとき、第2電極132の電位は−5Vとなる。また、時間t1〜時間t2における第1電極131の電位が−5Vのとき、第2電極132の電位は5Vとなる。これによれば、半周期ごとに第1電極131と第2電極132とにおける基準電位(0V)に対する極性が反転し、第1電極131と第2電極132との電位差は最大の10Vとなる。
図10に示すように、第1電極131と第2電極132との間に周期的に最大10Vの電位差が生じて電界が発生すると、液晶層50中の正極性(+)または負極性(−)のイオン性不純物は、一対の電極間に引き寄せられる。第1電極131の電位が−5Vのときには正極性のイオン性不純物が第1電極131に引き付けられ、このとき第2電極132の電位が5Vであることから第2電極132に負極性のイオン性不純物が引き付けられる。第1電極131の電位が−5Vから5Vに変位すると、第2電極132の電位は5Vから−5Vに変位する。このとき、第1電極131に引き付けられていた正極性のイオン性不純物は、電位が−5Vに変位した第2電極132に引き付けられる。一方で、第2電極132に引き付けられていた負極性のイオン性不純物は、電位が5Vに変位した第1電極131に引き付けられる。さらに、第1電極131の電位が5Vから−5Vに変位すると、第2電極132の電位は−5Vから5Vに変位する。このとき、第1電極131に引き付けられていた負極性のイオン性不純物は、電位が5Vに変位した第2電極132に引き付けられる。一方で、第2電極132に引き付けられていた正極性のイオン性不純物は、電位が−5Vに変位した第1電極131に引き付けられる。
このように、基準電位(0V)に対する第1電極131及び第2電極132のそれぞれの電位が5Vと−5Vとの間で周期的に変化することで、一対の電極間に生じた電界によって一対の電極に引き付けられた正極性または負極性のイオン性不純物は、一対の電極間に捕集(トラップ)された状態が維持され、再び表示領域E1へ拡散することが抑制される。
前述したように第1電極131及び第2電極132は、それぞれ無機配向膜で覆われていることから、第1電極131及び第2電極132に引き付けられたイオン性不純物の一部が無機配向膜に吸着することがある。そうすると、一対の電極に交流信号を印加せず、一対の電極間に電界が生じていない状態となっても、一対の電極間に捕集されたイオン性不純物は再び表示領域E1へ拡散し難くなる。
なお、本実施形態では、第1電極131及び第2電極132のそれぞれを無機配向膜で覆う構成としたが、有機配向膜で覆っても同様に一対の電極間にイオン性不純物を捕集することが可能である。なお、有機配向膜に比べて無機配向膜のほうがイオン性不純物を吸着し易い。
一方で、一対の電極を覆う配向膜にイオン性不純物が吸着されて集積された状態になると、一対の電極間に生ずる電界の大きさ(強さ)に影響して、イオン性不純物を引き付ける電界効果が低下するおそれがある。それゆえに、第1電極131及び第2電極132のそれぞれは、配向膜で覆われることに限定されず、第1電極131及び第2電極132のうち少なくとも一方と液晶層50との間に配向膜を設けなくてもよい。これによれば、一対の電極間に捕集されたイオン性不純物が増加しても、配向膜に吸着されることを防ぎ、イオン性不純物を引き付ける電界効果を維持し易くなる。
第1電極131に印加される交流信号ES1及び第2電極132に印加される交流信号ES2は、三角波やサイン(sin)波であってもよいが、一対の電極間の電位差が最大となる時間が長いほど上記電界効果が働くことになるため、交流信号ES1,ES2は矩形波であることが好ましい。
また、交流信号ES1と交流信号ES2との位相差は、180度であることに限定されず、例えば90度であってもよく、上記電界効果を周期的に働かせる期間を調整してもよい。
また、本実施形態では、基準電位を0Vとして5Vと−5Vとの間で変位する交流信号の形態としたが、基準電位に対して第1電極131と第2電極132の極性が周期的に変化すればよいので、基準電位が0Vであり、一対の電極に印加される電位が5V〜−5Vであることに限定されない。例えば、基準電位を共通電極23に印加される固定電位(LCCOM)とし、固定電位(LCCOM)に対して液晶層50を交流駆動する際の最小電位と最大電位とを一対の電極に印加してもよい。これによれば、表示領域E1の画素電極15と共通電極23との間に印加される時間平均電位と、周辺領域E2の一対の電極の間に印加される時間平均電位とが共に固定電位(LCCOM)となるため、表示領域E1と周辺領域E2との間で横電界が生じ難くなる。したがって、横電界に起因する表示不具合の発生を抑制できると共に、横電界のDC(直流)成分で液晶が分解するなどの不具合の発生を抑制できる。また、液晶装置100を駆動する駆動回路から出力される電位を利用できることから、イオントラップ機構130用の交流信号ES1,ES2を生成するための回路構成を簡略化できる。
上記第1実施形態の液晶装置100とその駆動方法によれば、イオントラップ機構130の一対の電極としての第1電極131と第2電極132とに、同じ周波数で180度位相が異なる交流信号を印加して電界を発生させ、その電界効果により、表示領域E1の液晶層50中の正極性または負極性のイオン性不純物を一対の電極間に捕集(トラップ)することができる。
液晶層50を挟んだ第1電極131と第2電極132との間の距離d2は、液晶層50の厚みd1とほぼ同じであることから、数μm以下とすることができ、液晶層50中における移動度が低いイオン性不純物であっても、一対の電極間に効率的に捕集(トラップ)することができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の液晶装置について、図11を参照して説明する。図11は第2実施形態の液晶装置におけるイオントラップ機構を示す概略断面図である。第2実施形態の液晶装置は、上記第1実施形態の液晶装置100に対して、イオントラップ機構130の一対の電極間の距離を異ならせたものである。したがって、上記第1実施形態の液晶装置100と同じ構成には同じ符号を付して詳細な説明は省略する。なお、図11は上記第1実施形態で用いた図8に対応する概略断面図である。
図11に示すように、本実施形態の液晶装置200は、素子基板10と対向基板220との間に挟持された液晶層50を有する液晶パネル210を備えている。素子基板10の周辺領域E2には、イオントラップ機構230の一対の電極のうち第1電極231が配置されている。第1電極231は、配向膜18で覆われている。
対向基板220は、基材20sと、基材20s上に設けられた、見切り部21と、平坦化層22と、共通電極23と、配向膜24とを含んで構成されている。表示領域E1において、共通電極23は、液晶層50を挟んで素子基板10の画素電極15及びダミー画素電極15dと対向するように対向基板220に設けられている。周辺領域E2において、基材20s上に見切り部21が設けられると共に、見切り部21に対して平坦化層22と下地層25とを介して、イオントラップ機構230の一対の電極のうち第2電極232が設けられている。
イオントラップ機構230における第1電極231及び第2電極232の基本的な材料構成などは、上記第1実施形態のイオントラップ機構130における第1電極131及び第2電極132と同じである。
見切り部21と第2電極232との間に設けられる下地層25は、絶縁性材料を用いて形成されていてもよいし、導電性材料を用いて形成されていてもよい。本実施形態では、感光性樹脂材料を塗布して露光・現像することにより、周辺領域E2に下地層25を形成した。なお、配向膜24は、共通電極23と、第2電極232とを覆うように形成されている。
イオントラップ機構230において、液晶層50を挟んで対向配置された第1電極231と第2電極232との間の距離d2は、液晶層50の厚みd1よりも下地層25の厚みの分だけ小さくなっている。例えば液晶層50の厚みd1はおおよそ2.0μmであり、第1電極231と第2電極232との間の距離d2は、おおよそ1.0μmである。
液晶装置200の駆動方法は、基本的に上記第1実施形態の液晶装置100の駆動方法と同じであって、イオントラップ機構230の一対の電極に、同じ周波数で基準電位に対して振幅し、位相が例えば180度ずれた交流信号ES1,ES2を印加する。
上記第2実施形態の液晶装置200とその駆動方法によれば、液晶層50を挟んで対向配置された第1電極231と第2電極232との間の距離d2が液晶層50の厚みd1よりも小さくなっているので、表示領域E1の液晶層50中のイオン性不純物に対してイオントラップ機構230の電界効果が強く働くことになる。したがって、上記第1実施形態の液晶装置100に比べて、移動度が低いイオン性不純物であってもより効率的に一対の電極間に捕集(トラップ)することができる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の液晶装置について、図12を参照して説明する。図12は第3実施形態の液晶装置におけるイオントラップ機構を示す概略断面図である。第3実施形態の液晶装置は、上記第1実施形態の液晶装置100に対して、イオントラップ機構の一対の電極を覆う膜の構成を異ならせたものである。したがって、上記第1実施形態の液晶装置100と同じ構成には同じ符号を付して詳細な説明は省略する。なお、図12は上記第1実施形態で用いた図8に対応する概略断面図である。
図12に示すように、本実施形態の液晶装置300は、素子基板10Tと対向基板20Tとの間に挟持された液晶層50を有する液晶パネル310を備えている。素子基板10Tは、基材10sと、基材10s上に画素ごとに設けられたTFT30と、表示領域E1に設けられた画素電極15及びダミー画素電極15dと、周辺領域E2に設けられた、イオントラップ機構330の一対の電極のうち第1電極331とを有している。また、画素電極15及びダミー画素電極15d並びに第1電極331は、配向膜18で覆われている。
対向基板20Tは、基材20sと、基材20s上に設けられた、見切り部21と、平坦化層22と、共通電極23と、イオントラップ機構330の一対の電極のうち第2電極332とを有している。見切り部21及び第2電極332は、周辺領域E2に設けられている。共通電極23及び第2電極332は、配向膜24で覆われている。
本実施形態では、無機配向膜である配向膜18,24のそれぞれに対してシランカップリング処理を施すことによって、配向膜18の液晶層50側に反応膜19が形成され、配向膜24の液晶層50側に反応膜26が形成されている。
イオントラップ機構330における第1電極331及び第2電極332の基本的な材料構成などは、上記第1実施形態のイオントラップ機構130における第1電極131及び第2電極132と同じである。
つまり、本実施形態の液晶装置300における液晶パネル310は、上記第1実施形態の液晶装置100における液晶パネル110の素子基板10及び対向基板20に対してシランカップリング処理が施されたものである。
シランカップリング処理は、例えば特開2007−25529号公報に示されているように、配向膜18が形成された素子基板10、配向膜24が形成された対向基板20のそれぞれに対して、下記式(1)に示すシラン化合物を溶媒に溶解させたシラン化合物溶液を塗布した後に、不純物を含まない溶媒のみで洗浄して乾燥する方法が挙げられる。
A−(CmH2m)−Si−(OCnH2n+1)x ・・・(1)
(式中Aは置換基であり、m及びnは0〜2の整数、xは1〜3の整数である。)
代表的なシラン化合物としては、下記式(2)に示すn−デシルトリメトキシシランが挙げられる。
n−C10H21−Si−(OCH3)3 ・・・(2)
このようなシランカップリング処理を施すことにより、無機配向膜である配向膜18,24の液晶層50側の表面における水酸基がシラン化合物で置換されて反応膜19,26が形成される。これによって、配向膜18,24の液晶層50側の表面における極性が低下するので、配向膜18,24にイオン性不純物が吸着され難くなる。なお、シランカップリング処理が施された後の、素子基板10の符号を10Tとし、対向基板20の符号を20Tとした。
イオントラップ機構330によって捕集(トラップ)されたイオン性不純物の濃度が高まり、一対の電極を覆う無機配向膜に固着すると、一対の電極間に生ずる実効的な電界が弱まるおそれがある。本実施形態では、表示領域E1と周辺領域E2とに亘って形成された無機配向膜である配向膜18,24にシランカップリング処理が施されているため、一対の電極に位相が異なる交流信号ES1,ES2を印加すると、安定した電界効果が得られる。すなわち、移動度が低いイオン性不純物であっても、一対の電極間に効率的且つ安定的に捕集することが可能な液晶装置300を提供することができる。
なお、このようなシランカップリング処理は、表示領域E1と周辺領域E2とに亘って施されることに限定されず、配向膜18,24のうち一対の電極を覆う部分にのみ選択的に実施してもよい。
(第4実施形態)
<電子機器>
次に、上記各実施形態の液晶装置を適用可能な電子機器として、投射型表示装置を例に挙げ、図13を参照して説明する。図13は電子機器としての投射型表示装置の構成を示す概略図である。
図13に示すように、本実施形態の電子機器としての投射型表示装置1000は、システム光軸Lに沿って配置された偏光照明装置1100と、光分離素子としての2つのダイクロイックミラー1104,1105と、3つの反射ミラー1106,1107,1108と、5つのリレーレンズ1201,1202,1203,1204,1205と、3つの光変調手段としての透過型の液晶ライトバルブ1210,1220,1230と、光合成素子としてのクロスダイクロイックプリズム1206と、投射レンズ1207とを備えている。
偏光照明装置1100は、超高圧水銀灯やハロゲンランプなどの白色光源からなる光源としてのランプユニット1101と、インテグレーターレンズ1102と、偏光変換素子1103とから概略構成されている。
ダイクロイックミラー1104は、偏光照明装置1100から射出された偏光光束のうち、赤色光(R)を反射させ、緑色光(G)と青色光(B)とを透過させる。もう1つのダイクロイックミラー1105は、ダイクロイックミラー1104を透過した緑色光(G)を反射させ、青色光(B)を透過させる。
ダイクロイックミラー1104で反射した赤色光(R)は、反射ミラー1106で反射した後にリレーレンズ1205を経由して液晶ライトバルブ1210に入射する。
ダイクロイックミラー1105で反射した緑色光(G)は、リレーレンズ1204を経由して液晶ライトバルブ1220に入射する。
ダイクロイックミラー1105を透過した青色光(B)は、3つのリレーレンズ1201,1202,1203と2つの反射ミラー1107,1108とからなる導光系を経由して液晶ライトバルブ1230に入射する。
液晶ライトバルブ1210,1220,1230は、クロスダイクロイックプリズム1206の色光ごとの入射面に対してそれぞれ対向配置されている。液晶ライトバルブ1210,1220,1230に入射した色光は、映像情報(映像信号)に基づいて変調されクロスダイクロイックプリズム1206に向けて射出される。このプリズムは、4つの直角プリズムが貼り合わされ、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が合成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ1207によってスクリーン1300上に投写され、画像が拡大されて表示される。
液晶ライトバルブ1210は、上述したイオントラップ機構130を有する上記第1実施形態の液晶装置100が適用されたものである。液晶パネル110の色光の入射側と射出側とにクロスニコルに配置された一対の偏光素子が隙間を置いて配置されている。他の液晶ライトバルブ1220,1230も同様である。
このような投射型表示装置1000によれば、液晶ライトバルブ1210,1220,1230として、上記液晶装置100が用いられているので、イオン性不純物に起因する表示不具合が改善され、優れた表示品質を有する投射型表示装置1000を提供することができる。なお、液晶ライトバルブ1210,1220,1230として、前述した他の実施形態の液晶装置200,300のいずれかを用いても同様な効果が得られる。
本発明は、上記した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う液晶装置及び該液晶装置の駆動方法並びに該液晶装置を適用する電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
(変形例1)イオントラップ機構において、液晶層50を挟んで対向配置される一対の電極の周辺領域E2における平面的な配置は、表示領域E1を囲むようにリング状に配置されることに限定されない。図14及び図15は変形例1の一対の電極の配置を示す概略平面図である。
例えば、図14に示すように、変形例の液晶装置400は、イオントラップ機構430の一対の電極である第1電極431及び第2電極432を二組有している。二組の一対の電極は、それぞれ液晶層50を挟んで対向配置されており、表示領域E1の対角における角部に沿って配置されている。当該角部は、図5に示したように、液晶分子LCのプレチルトの方向に位置しており、液晶装置400の駆動によってイオン性不純物が集まり易い場所になっている。すなわち、液晶分子LCのプレチルトの方向に対して抗する方向に第1電極431及び第2電極432を配置することにより、イオン性不純物を効率的に捕集することができる。
また例えば、図15に示すように、変形例の液晶装置500は、周辺領域E2において、表示領域E1の端部と、シール部40の注入口41との間に配置された一対の電極としての第1電極531及び第2電極532を有するイオントラップ機構530を備えている。第1電極531と第2電極532とは液晶層50を挟んで対向配置されている。
注入口41は、シール部40によって囲まれた領域に液晶が真空注入された後に、封止剤42(図1参照)によって封止される。封止剤42としては例えば紫外線硬化型の接着剤などが用いられる。当該接着剤にイオン性不純物が含まれていたとしても、イオントラップ機構530が設けられていることから、イオン性不純物が注入口41から表示領域E1へと拡散することを抑制することができる。すなわち、イオン性不純物の偏在に起因して表示不具合が生ずる箇所が特定される場合、該表示不具合が生ずる箇所に対応させて一対の電極を配置してもよい。
なお、図14に示した一対の電極の配置と、図15に示した一対の電極の配置とを組み合わせてもよい。
(変形例2)イオントラップ機構において、液晶層50を挟んで対向配置される一対の電極間の距離d2は一定であることに限定されない。図16は変形例2の一対の電極の配置を示す概略断面図である。
例えば図16に示すように、変形例の液晶装置600は、素子基板10と対向基板620とに挟持された液晶層50を有する液晶パネル610を備えている。液晶パネル610は、周辺領域E2において液晶層50を挟んで対向配置された一対の電極としての第1電極631及び第2電極632を有するイオントラップ機構630を備えている。
第1電極631は、素子基板10において、画素電極15やダミー画素電極15dと同層に設けられている。周辺領域E2には、平面視で見切り部21と重なる位置に下地層625が設けられている。一対の電極のうち第2電極632は、シール部40側の一部が下地層625と重なるように配置されている。下地層625と平面視で重ならない表示領域E1側の部分における第1電極631と第2電極632との間の距離d2は液晶層50の厚みd1とほぼ同じである。下地層625と平面視で重なるシール部40側の部分における第1電極631と第2電極632との間の距離d3は、上記距離d2よりも下地層625の厚み分だけさらに小さい。つまり、一対の電極のシール部40側の間隔が表示領域E1側の間隔に比べて小さくなっている。したがって、一対の電極間に生ずる電界の強度は表示領域E1からシール部40に向かうほど強くなるので、イオン性不純物を電界効果によって表示領域E1からより離れたシール部40側に捕集することができる。すなわち、捕集されたイオン性不純物の表示領域E1側への再拡散をより確実に抑制することができる。なお、図16では、第1電極631と第2電極632との間隔が階段状となっているが、間隔が徐々に狭くなるように一対の電極を配置してもよい。
(変形例3)上記実施形態に示した液晶装置100,200,300では、表示領域E1にダミー画素電極15dを有するダミー画素を含んでいたが、ダミー画素は必須な構成ではない。
(変形例4)上記各実施形態のイオントラップ機構を適用可能な液晶装置は、VA方式に限定されず、IPS(In Plane Switching)方式、FFS(Fringe Field Switching)方式、OCB(Optically Compensated Birefringence)方式にも適用することができる。また、透過型に限定されず、光反射性を有する導電材料を用いて画素電極15が形成された反射型の液晶装置にも適用することができる。言い換えれば、イオントラップ機構の一対の電極のうち、画素電極15と同層に形成される第1電極と、共通電極23と同層に形成される第2電極とは、同じ導電材料を用いて形成されることに限定されず、異なる導電材料を用いて形成してもよい。また、一対の電極は周辺領域E2に設けられることから、遮光性の導電材料を用いて形成してもよい。
(変形例5)上記実施形態の液晶装置100〜300、あるいは変形例の液晶装置400〜600を適用可能な電子機器は、上記第4実施形態の投射型表示装置1000に限定されない。例えば、液晶装置として画素に着色層を有するカラーフィルターを備える構成とすることで、投射型のHUD(ヘッドアップディスプレイ)や直視型のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)、電子ブック、パーソナルコンピューター、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダー型あるいはモニター直視型のビデオレコーダー、カーナビゲーションシステム、電子手帳、POSなどの情報端末機器の表示部として好適に用いることができる。