以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図1に示されるように、本実施形態に係る超伝導サイクロトロン1は、イオン源(不図示)から荷電粒子を加速空間G内に供給し、加速空間G内の荷電粒子を加速して荷電粒子ビームを出力する横置きの円形加速器である。荷電粒子としては、例えば陽子、重粒子(重イオン)などが挙げられる。超伝導サイクロトロン1は、例えば荷電粒子線治療用の加速器として用いられる。
この超伝導サイクロトロン1では、加速空間G内で円軌道を描く荷電粒子ビームを継続的に加速するため、等時性(円軌道の半径の大きさに関係なく一周にかかる時間が等しいこと)を確保するように磁束密度を制御する必要がある。
超伝導サイクロトロン1は、イオン源の他に、超伝導電磁石5を備えている。超伝導電磁石5は、ポール3,4と、ヨーク6と、超伝導コイル7,8と、コイル支持枠(コイル支持体)9と、真空容器10と、を有する。
ポール3,4は、超伝導コイル7,8の中心軸(超伝導コイル7,8の巻き中心軸)C方向に離間して配置されている。なお、超伝導サイクロトロン1では、中心軸C方向は、上下方向に沿って配置されている。従って、本実施形態では、請求項における「第1方向」を「中心軸C方向」又は「上下方向」と称する場合がある。また、「第1方向と直交する第2方向」を「水平方向」と称する場合がある。ポール3は、加速空間Gより上方に配置された上ポールであり、ポール4は、加速空間Gより下方に配置された下ポールである。また、ポール3,4間には、電極(ディ電極、不図示)が設けられている。この電極に高周波を付与することで、電場が形成される。
ヨーク6は、中空の円盤型のブロックであり、その内部にポール3,4及び真空容器10が配置されている。ヨーク6は、円筒部6aと、円筒部6aの一方の開口を閉じるように形成された天部6bと、円筒部6aの他方の開口を閉じるように形成された底部6cと、を備える。ヨーク6は、超伝導コイル7,8及びポール3,4で生成した磁力線が外部に漏れないようにするためのものである。
ポール3,4は、図2に示されるように、中心軸Cの近傍から径方向外側へ向けて螺旋を描くようなスパイラル状に設けられた四つのヒル11を有する。ヒル11は、加速空間Gを挟んで上下に対向し、加速空間G内の荷電粒子ビームを上下方向に収束させるものである。
ヒル11は、中心軸Cの周方向に等間隔で配置され、周方向に隣り合うヒル11の間には、空隙であるバレー12が形成されている。すなわち、ポール3,4には、周方向においてヒル11及びバレー12が交互に形成されている。超伝導サイクロトロン1では、ヒル11において磁束密度が強められ、バレー12において磁束密度が弱まることで、荷電粒子ビームを垂直方向及び水平方向に収束させる。このように、周方向に強弱のある磁束密度を形成する超伝導サイクロトロンはAVF[Azimuthally Varying Field]サイクロトロンと呼ばれる。
AVFサイクロトロンにおいて、4つのヒル11は径方向外側ほど、磁束密度が強くなるように形成されている。ヒル11では、荷電粒子ビームの垂直方向の収束力を強くするためにスパイラル状に形成されている。径方向外側に行くほど、磁束密度が弱くなると、荷電粒子ビームに垂直方向の発散力が働いてしまうことになる。なお、バレー12は空隙に限られず、ヒル11の厚さよりも薄い厚さの金属であってもよい。
超伝導コイル7,8は、図1に示されるように、ポール3,4の外周を覆うように巻かれている。超伝導コイル7および超伝導コイル8は、中心軸C方向に並んで配置されている。上側の超伝導コイル7は、ポール3の外周を覆うように巻かれ、下側の超伝導コイル8は、ポール4の外周を覆うように巻かれている。超伝導コイル7,8は、例えば、内周側に内枠(または内巻枠)が設けられておらず、コイル(線材及び線材を固着する接着材)の内周面が他の部材によって接着・固定されていない空芯コイルである。
コイル支持枠9は、超伝導コイル7の外周面を覆う側板部9aと、超伝導コイル7の上面を覆う上リング部材9bと、超伝導コイル8の外周面を覆う側板部9cと、超伝導コイル8の下面を覆う下リング部材9dと、上下の側板部9a,9cを連結する中間部9eと、を備える。コイル支持枠9は、超伝導コイル7,8の周方向において全周に亘って形成されている。
上リング部材9bは、側板部9aの上端部から径方向内側に張り出すように形成されている。上リング部材9bは、円環板状を成し、上リング部材9bの板厚方向は、中心軸C方向に沿うように配置されている。
下リング部材9dは、側板部9cの下端部から径方向内側に張り出すように形成されている。下リング部材9dは、円環板状を成し、下リング部材9dの板厚方向は、中心軸C方向に沿うように配置されている。
中間部9eは、中間リング部9fと、上側張出部9gと、下側張出部9hとを有する。中間リング部9fの径方向の幅は、超伝導コイル7,8の径方向の幅に対応している。中間リング部9fの断面は、例えば矩形を成している。中間リング部9fの上面は、超伝導コイル7の下面に当接し、中間リング部9fの下面は、超伝導コイル8の上面に当接している。上側張出部9g及び下側張出部9hは、中間リング部9fの外周面から径方向外側に張り出している。上側張出部9g及び下側張出部9hは、中心軸C方向に離間して配置されている。上側張出部9gは、側板部9aに接合され、下側張出部9hは、側板部9aに接合されている。具体的には、上側張出部9gの上面は、側板部9aの下面に当接し、下側張出部9hの下面は、側板部9cの上面に当接している。上側張出部9gと側板部9aとの接合は、ボルト接合でもよく、溶接などその他の接合方法でもよい。同様に、下側張出部9hと側板部9cとの接合は、ボルト接合でもよく、溶接などその他の接合方法でもよい。
真空容器10は、超伝導コイル7,8及びコイル支持枠9を収容している。真空容器は、超伝導コイル及びコイル支持枠9を収容するコイル収容部10aと、コイル収容部10aに連通し、上下方向に延びる連通部10bと、水平方向に延びる連通部10cとを有する。コイル収容部10aは、超伝導コイル7,8の径方向内側に配置された内壁10dと、超伝導コイル7,8の径方向外側に配置された外壁10eと、を有する。内壁10dは、超伝導コイル7,8及びコイル支持枠9の内周側を覆うように配置され、外壁10eは、超伝導コイル7,8及びコイル支持枠9の外周側を覆うように配置されている。すなわち、内壁10d及び外壁10eによって挟まれた収容空間内に、超伝導コイル7,8及びコイル支持枠9が配置されている。
また、真空容器10は、収容空間の上側を閉じる上面壁と、収容空間の下側を閉じる下面壁とを有する。上面壁は、中心軸C方向において、上リング部材9bと対向して配置され、下面壁は、中心軸C方向において、下リング部材9dと対向して配置されている。上面壁には、開口部が設けられ、この開口部に対応して連通部10bが配置されている。同様に、下面壁には、開口部が設けられ、この開口部に対応して連通部10bが配置されている。
連通部10bは、例えば円筒形状を成し、中心軸C方向に延びている。連通部10bは、後述する上下方向荷重支持体21,22を収容している。連通部10cは、例えば円筒形状を成し、中心軸Cと直交する直交方向に延びている。連通部10cは、後述する水平方向荷重支持体31,32を収容している。また、真空容器10には、超伝導コイル7,8を冷却するための冷凍機(冷却部)13が接続されている。冷凍機13は、例えば、GM冷凍機であり、超伝導コイル7,8を例えば4Kに冷却することができる。冷凍機は、GM冷凍機(Gifford-McMahon cooler)に限定されず、例えばスターリング冷凍機を始めその他の冷凍機でもよい。
ここで、超伝導サイクロトロン1及び超伝導電磁石5は、コイル支持枠9を支持すると共にコイル支持枠9の中心軸C方向の位置を調整する上下方向荷重支持体(第1方向支持部)21,22と、コイル支持枠9を支持すると共にコイル支持枠9の径方向の位置を調整する水平方向荷重支持体(第2方向支持部)31,32と、を有する。なお、径方向は、中心軸Cに直交する直交方向である。
上下方向荷重支持体21、22は、ヨーク6及び真空容器10に接続され、上下方向においてヨーク6及び真空容器10に対してコイル支持枠9を支持するものである。上下方向荷重支持体21,22は、上下一対としてコイル支持枠9を挟むように配置され、互いに反対方向にコイル支持枠9を引っ張ることでコイル支持枠9を支持している。上下方向荷重支持体21,22は、コイル支持枠9の周方向において、複数配置されている。複数の上下方向荷重支持体21,22は、コイル支持枠9の周方向において、等間隔で配置されている。
上下方向荷重支持体21の下端部は、上リング部材9bに連結されている。なお、上下方向荷重支持体21の下端部は、上下方向において、連結構造100を介してコイル支持枠9に連結されている。連結構造100の詳細な説明は後述する。上下方向荷重支持体21は、上リング部材9bから上方に延在し、真空容器10の壁体を貫通し、ヨーク6の外側まで張り出している。上下方向荷重支持体21の上端部には、ヨーク6及び真空容器10に対して上下方向荷重支持体21を位置決めする上下方向位置調整部(第1方向位置調整部)78が設けられている。上下方向位置調整部78は、上下方向荷重支持体21を介してヨーク6及び真空容器10に対するコイル支持枠9の位置を調整する部分である。この上下方向位置調整部78によって上下方向荷重支持体21を中心軸C方向に変位させることができる。上下方向位置調整部78としては、ねじによる位置調整が挙げられる。ねじに取り付けられたナットを回転させることで、ねじを中心軸C方向に移動させ、上下方向荷重支持体21を変位させる。上下方向荷重支持体21のヨーク6に対する取付部及び上下方向位置調整部78は、後述する水平方向荷重支持体31と同様の構成とすることができる。
上下方向荷重支持体22の上端部は、下リング部材9dに連結されている。なお、上下方向荷重支持体22の上端部は、上下方向において、連結構造100を介してコイル支持枠9に連結されている。連結構造100の詳細な説明は後述する。上下方向荷重支持体22は、下リング部材9dから下方に延在し、真空容器10の壁体を貫通し、ヨーク6の外側まで張り出している。上下方向荷重支持体22の下端部には、ヨーク6及び真空容器10に対して上下方向荷重支持体22を位置決めする上下方向位置調整部78が設けられている。上下方向位置調整部78は、上下方向荷重支持体22を介してヨーク6及び真空容器10に対するコイル支持枠9の位置を調整する部分である。この上下方向位置調整部78によって上下方向荷重支持体22を中心軸C方向に変位させることができる。上下方向位置調整部78としては、ねじによる位置調整が挙げられる。ねじに取り付けられたナットを回転させることで、ねじを中心軸C方向に移動させ、上下方向荷重支持体22を変位させる。上下方向荷重支持体22のヨーク6に対する取付部及び上下方向位置調整部78は、後述する水平方向荷重支持体31と同様の構成とすることができる。
複数の上下方向荷重支持体21,22を用いて、適宜、位置調整を行うことで、超伝導コイル7,8のポール3,4に対する位置を変更することができる。具体的には、超伝導コイル7,8を上方に変位させたり、超伝導コイル7,8を下方に変位させたり、または、鉛直方向に対して超伝導コイル7,8の中心軸Cが傾斜するように、超伝導コイル7,8を変位させることができる。
水平方向荷重支持体31,32は、ヨーク6及び真空容器10に接続され、径方向外側から水平方向において、ヨーク6及び真空容器10に対してコイル支持枠9を支持するものである。水平方向荷重支持体31,32は、一部が真空容器10に進入して、コイル支持枠9に接続される。また、水平方向荷重支持体31,32は、コイル支持枠9の位置を調整可能である。水平方向荷重支持体31,32は、複数(例えば4本)設けられている。ここで、上下方向をZ軸とし、Z軸に直交すると共に互いに直交する軸をX軸(第1方向)及びY軸(第2方向)とする(図3〜図5参照)。超伝導コイル7,8の中心軸CがZ軸に沿って配置されている場合には、X軸及びY軸は、中心軸Cに直交している。図1に示されるように、一対の水平方向荷重支持体31は、コイル支持枠9を挟んで対向して配置され、一対の水平方向荷重支持体32は、コイル支持枠9を挟んで対向して配置されている。なお、一対の水平方向荷重支持体31が延在する方向X1(X軸方向)と、一対の水平方向荷重支持体32が延在する方向X2(X軸方向)とは、直交していてもよく、所定の角度で交差していてもよい。
一対の水平方向荷重支持体31は、互いに反対方向にコイル支持枠9を引っ張ることでコイル支持枠9を支持している。同様に、一対の水平方向荷重支持体32は、互いに反対方向にコイル支持枠9を引っ張ることでコイル支持枠9を支持している。
図3は、水平方向荷重支持体31,32を示す斜視図である。図4は、水平方向荷重支持体31,32を示す断面図である。図5は、水平方向荷重支持体31,32を示す側面図である。図3〜図5に示されるように、水平方向荷重支持体31,32は、コイル支持枠取付部33と、内側リンク部34と、中間連結部35と、外側リンク部36と、ヨーク取付部37と、を有する。以下、水平方向荷重支持体31について説明する。水平方向荷重支持体32は、配置されている方向が異なるだけであり、水平方向荷重支持体31と同一の構成であるので、水平方向荷重支持体32の説明を省略する。
コイル支持枠取付部33は、コイル支持枠9に取り付けられる部分である。コイル支持枠取付部33は、コイル支持枠9に固定されるフランジ部41と、フランジ部41から延出する延出部42とを有する。フランジ部41は円盤状を成し、一方の面がコイル支持枠9に接続される。フランジ部41は、ボルト接合により、コイル支持枠9の中間部9eに接続される。なお、フランジ部41は、コイル支持枠9の中間部9e以外のその他の部位に接続される構成でもよい。コイル支持枠取付部33及び内側リンク部34は、例えばチタンから形成されている。コイル支持枠取付部33及び内側リンク部34は、例えばステンレス鋼など、チタン以外の材質から形成されていてもよい。
延出部42は、フランジ部41の他方の面からX軸方向の外側(超伝導コイル7,8の径方向外側)に延出している。延出部42のX軸方向の外側の端部には、連結ブロック部43が設けられている。連結ブロック部43には、Y軸方向に貫通する貫通孔43aが形成されている。また、連結ブロック部43のY軸方向に対向する側面は、平坦面となっている。
内側リンク部34は、Y軸方向に離間して配置された一対の連結板(第1方向部材)44,45と、一対の連結板44,45の一方の端部同士を連結するピン部材46と、一対の連結板44,45の他方の端部同士を連結する球面軸47と、を有する。
連結板44,45は、X軸方向に所定の長さを有する。連結板44,45の板厚方向はY軸方向に沿うよう配置されている。連結板44,45のX軸方向の両端部には、板厚方向に貫通する貫通孔44a,44b,45a,45bがそれぞれ設けられている。また、一対の連結板44,45は、Y軸方向において、連結ブロック部43を挟むように配置されている。連結板44,45の内面(連結ブロック部43の側面に対向する面)は、平坦面として形成されている。連結板44,45の内面は、連結ブロック部43の側面と当接している。
ピン部材46は、円柱状を成し、連結ブロック部43の貫通孔41aに挿通されている。ピン部材46の外周面は、貫通孔41aの内周面に当接している。ピン部材46は、連結ブロック部43に対して、ピン部材46の軸線回りに回転可能に支持されている。また、ピン部材46の両端部は、Y軸方向において、連結ブロック部43の側面より外方に張り出している。
ピン部材46のX軸方向の両端部は、一対の連結板44,45の一端側の貫通孔44a,45aにそれぞれ挿通されている。ピン部材46の両端部において、ピン部材46の外周面は、一対の連結板44,45の一端側の貫通孔45aの内周面に当接している。ピン部材46は、一対の連結板44,45に対して、ピン部材46の軸線回りに回転可能に支持されている。これにより、一対の連結板44,45は、コイル支持枠取付部33に対して、Y軸回りに回転可能に支持されている。
球面軸47は、Y軸方向の両端部に設けられた円柱部47aと、この円柱部47aの間に配置された球体部分47bと、を有する。円柱部47aは、一対の連結板44,45の他端側の貫通孔44b,45bにそれぞれ挿通されている。円柱部47aの外周面は、一対の連結板44,45の他端側の貫通孔44b,45bの内周面に当接している。
球体部分47bは、円柱部47aの外径よりも大きな外径を有する。また、球体部分47bのY軸方向における幅は、球体部分47bの外径より小さく、例えば、連結ブロック部43のY軸方向における幅(厚さ)よりも小さくなっている。また、球体部分47bの中心は、一対の連結板44,45間の中央に配置されている。
中間連結部35は、内側リンク部34と外側リンク部36とを連結する部分である。中間連結部35は、一端側に設けられ、内側リンク部34の球面軸47を保持する軸受け部(球面軸受け部)48と、他端側に設けられ、外側リンク部36の球面軸47を保持する軸受け部(球面軸受け部)49と、両方の軸受け部48,49を連結するストラップ部50と、を有する。
軸受け部48はブロック体を有し、このブロック体には球面軸47の球体部分47bを受ける球体受容部が形成されている。球体受容部は、球体部分47bを保持する開口である。球体受容部の内面形状は、球体部分47bの外面形状に対応し、球体受容部の内面48aは、球体部分47bの外面に当接する当接面である。また、軸受け部48のY軸方向に対向する側面は、Y軸方向において、一対の連結板44,45の内面に対向して配置されている。軸受け部48の側面と、一対の連結板44,45の内面との間には、所定の隙間が形成されている。軸受け部48は、球面軸47の球体部分47bの外面(球面)に沿って摺動可能である。
なお、球面軸47及び軸受け部48に代えて、ピン部材及び球面滑り軸受けを備える構成でもよい。この構成の場合には、球面滑り軸受けに保持されたピン部材が、一対の連結板44,45の他端側の貫通孔44b,45bに挿通されて保持される。
軸受け部49はブロック体を有し、このブロック体には外側リンク部36の後述する球面軸53の球体部分53bを受ける球体受容部が形成されている。球体受容部は、球体部分53bを保持する開口である。球体受容部の内面形状は、球体部分53bの外面形状に対応し、球体受容部の内面49aは、球体部分53bの外面に当接する当接面である。また、軸受け部49のY軸方向に対向する側面は、Y軸方向において、一対の連結板51,52の内面に対向して配置されている。軸受け部49の側面と、一対の連結板51,52の内面との間には、所定の隙間が形成されている。軸受け部49は、球面軸53の球体部分53bの外面(球面)に沿って摺動可能である。
なお、球面軸53及び軸受け部49に代えて、ピン部材及び球面滑り軸受けを備える構成でもよい。この構成の場合には、球面滑り軸受けに保持されたピン部材が、外側リンク部36の後述する一対の連結板51,52の他端側の貫通孔51a,52aに挿通されて保持される。
ストラップ部50は、図5に示されるように上下方向に離間して、X軸方向に延在する一対の帯状部50a,50bを有する。帯状部50a,50bの厚み方向は、Z軸方向に沿って配置されている。また、帯状部50a,50bの幅方向は、例えば、軸受け部48,49のY軸方向の幅に対応している。このストラップ部50は、例えば、CFRP(carbon-fiber-reinforced plastic)により形成されている。
帯状部50a,50bの一端側は、軸受け部48に連結され、帯状部50a,50bの他端部は、軸受け部49に連結されている。帯状部50a,50bは、帯状部を固定するための留め具によって、軸受け部48,49のブロック体に固定されていてもよく、例えば、接着により接合されているものでもよく、ブロック体の部分と一体成形されているものでもよい。また、ストラップ部50は、一対の帯状部50a,50bの端部同士が接続されて無端状に形成されているものでもよい。
このストラップ部50は、内側リンク部34に対して、Y軸回りに揺動可能(回転可能)に支持されている。また、ストラップ部50は、内側リンク部34に対して、X軸回りに傾倒可能(回転可能)に支持されている。ストラップ部50は、内側リンク部34に対して、Z軸回りに揺動可能(回転可能)に支持されている。
同様に、このストラップ部50は、外側リンク部36に対して、Y軸回りに揺動可能(回転可能)に支持されている。また、ストラップ部50は、外側リンク部36に対して、X軸回りに傾倒可能(回転可能)に支持されている。ストラップ部50は、外側リンク部36に対して、Z軸回りに揺動可能(回転可能)に支持されている。
また、中間連結部35は、ストラップ部50に代えて、所定の長さを有する板状部材を備えるものでもよく、所定の長さを有る棒状部材を備えるものでもよい。また、中間連結部35は、リンク機構を介して接続された複数のストラップ部を備える構成でもよい。
外側リンク部36は、Y軸方向に離間して配置された一対の連結板(第1方向部材)51,52と、一対の連結板51,52の一方の端部同士を連結する球面軸53と、一対の連結板51,52の他方の端部同士を連結するピン部材54と、を有する。
連結板51,52は、X軸方向に所定の長さを有する。連結板51,52の板厚方向はY軸方向に沿うよう配置されている。連結板51,52のX軸方向の両端部には、板厚方向に貫通する貫通孔51a,51b,52a,52bがそれぞれ設けられている。また、一対の連結板51,52は、Y軸方向において、ヨーク取付部37の後述する連結ブロック部55を挟むように配置されている。連結板51,52の内面(連結ブロック部55の側面に対向する面)は、平坦面として形成されている。連結板51,52の内面は、連結ブロック部55の側面と当接している。
球面軸53は、軸線方向の両端部に設けられた円柱部53aと、この円柱部53aの間に配置された球体部分53bと、を有する。円柱部53aは、一対の連結板51,52の一端側の貫通孔51a,52aにそれぞれ挿通されている。円柱部53aの外周面は、一対の連結板51,52の一端側の貫通孔51a,51bの内周面に当接している。
球体部分53bは、円柱部53aの外径よりも大きな外径を有する。また、球体部分のY軸方向における幅は、球体部分53bの外径より小さく、例えば、連結ブロック部55のY軸方向における幅(厚さ)よりも小さくなっている。また、球体部分53bの中心は、一対の連結板51,52間の中央に配置されている。
ピン部材54は、円柱状を成し、ヨーク取付部37の連結ブロック部55の貫通孔55aに挿通されている。ピン部材54の外周面は、連結ブロック部55の貫通孔55aの内周面に当接している。ピン部材54は、連結ブロック部55に対して、ピン部材54の軸線回りに回転可能に支持されている。また、ピン部材54の両端部は、Y軸方向において、連結ブロック部55の側面より外方に張り出している。
ピン部材54の長手方向の両端部は、一対の連結板51,52の他端側の貫通孔51b,52bにそれぞれ挿通されている。ピン部材54の両端部において、ピン部材54の外周面は、一対の連結板51,52の他端側の貫通孔51b,52bの内周面に当接している。ピン部材54は、一対の連結板51,52に対して、ピン部材54の軸線回りに回転可能に支持されている。これにより、一対の連結板51,52は、ヨーク取付部37に対して、Y軸回りに回転可能に支持されている。
ヨーク取付部37は、ヨーク6に対して取り付けられる部分である。ヨーク取付部37は、連結ブロック部55と、べローズ56と、ロッド部57と、水平方向位置調整部(第2方向位置調整部)58と、を有する。
連結ブロック部55には、ピン部材54が挿通される貫通孔55aが形成されている。貫通孔55aは、Y軸方向に貫通している。また、連結ブロック部55のY軸方向に対向する側面は、平坦面となっている。連結ブロック部55は、一対の連結板51,52に挟まれるように配置され、貫通孔55aに挿通されたピン部材54が、一対の連結板51,52の貫通孔51b,52bに挿通されている。また、連結ブロック部55の側面は、一対の連結板51,52の内面と当接している。
連結ブロック部55には、X軸方向の外側の端面から外方に張り出す張出部55bが設けられている。この張出部55bから、外側へ向かって延びるロッド部57が設けられている。ロッド部57は、真空容器10及びヨーク6を貫通して、ヨーク6の側面よりも外方に突出している。ロッド部57の外側の端部の外周面にはねじ部59が形成されている。また、ロッド部57には、ベローズ56が接続されている。
水平方向位置調整部58は、ヨーク6に対して固定されると共に、ヨーク6に対して位置決めする位置決め部である。水平方向位置調整部58は、水平方向において、ヨーク6及び真空容器10に対するコイル支持枠9の位置を調整する部分である。水平方向位置調整部58は、ヨーク6の外周面から外方に突出する荷重支持体固定部60と、ロッド部57の外側の端部の外周面に形成されたねじ部59と、このねじ部59に取り付けられたナット61,62と、を有する。
荷重支持体固定部60は、ヨーク6に固定されたブロック体である。荷重支持体固定部0は、ヨーク6に対して例えば溶接等により接合されている。荷重支持体固定部60には、ロッド部57を挿通させる貫通孔60aが形成されている。ロッド部57は、この貫通孔60aに挿通されて、ヨーク6の外側まで延出している。また、荷重支持体固定部60のX軸に直交する面である座面60bは、平坦面となっている。また、貫通孔60aの内周面には、キー溝が形成されており、ロッド部57の軸回りの回転が防止される。
ねじ部59は、ロッド部57の外側の端部の外周面に形成されている。ねじ部59は、真空容器10及びヨーク6の外部に配置されている。ねじ部59は、ロッド部57の貫通孔60aに配置されている部分から、貫通孔60aより外側に配置されている部分にかけて形成されている。ロッド部57のねじ部59には、ワッシャー63及びナット61,62が取り付けられている。ワッシャー63は、荷重支持体固定部60の座面60bとナット61との間に配置されている。ナット61を締め付けることで、ワッシャー63は荷重支持体固定部60の座面60bに押し当てられる。すなわち、ナット61は、ロッド部57のねじ部59に嵌め込まれ、嵌め込み量を変更することでロッド部57を真空容器10に対して進退させる部材である。ナット62は、位置調整を行った後のナット61の移動を拘束するロックナットとして機能する。
そして、ナット61を締め付けることにより、ロッド部57がX軸方向の外側(図示右側)に移動し、水平方向荷重支持体31に引張力を作用することができる。水平方向荷重支持体31に引張力が発生することで、ナット61及びワッシャー63は、荷重支持体固定部60の座面60bに押し当てられる。これにより、ロッド部57は、ナット61及びワッシャー63を介して荷重支持体固定部60に固定される。すなわち、水平方向荷重支持体31のヨーク取付部37は、ヨーク6に対して固定され、ポール3,4に対して相対的に固定される。
なお、図1に示すように、上下方向位置調整部78は、水平方向位置調整部58と同様の構成を有する荷重支持体固定部60と、ロッド部57の外側の端部の外周面に形成されたねじ部59と、このねじ部59に取り付けられたナット61,62と、を有する。上下方向位置調整部78は、上下方向荷重支持体21,22を介してコイル支持枠9を上下方向に移動させる点以外は、水平方向位置調整部58と同趣旨の構成を有する。
次に、図6を参照して、連結構造100の詳細な構造について説明する。なお、図6には上下方向荷重支持体22に対する連結構造100を示しているが、上下方向荷重支持体21に対する連結構造100は、図6に示す構造の上下を逆にした点以外は図6と同趣旨の構成を有するため、説明を省略する。
連結構造100は、上下方向荷重支持体22とコイル支持枠9とを連結する構造である。連結構造100は、上下方向荷重支持体22と、コイル支持枠9に形成された保持部103と、を備えている。また、図6には、上下方向荷重支持体22に対して中心軸CLを設定して説明する。
保持部103は、コイル支持枠9の下リング部材9dの下面108側に形成される。保持部103は、断面L字状の形状を有しており、中心軸CL周りに全周にわたって設けられている。保持部103は、下リング部材9dの下面108から下方へ向かって延びる延伸部104と、延伸部104の下端部から中心軸CL側へ向かって突出する突出部106と、を備える。延伸部104の内周面109は、水平方向において後述の対向部110と隙間GPを介して対向する面(第2方向面)である。突出部106の先端部106aは、中心軸CLから外周側へ離間しているため、保持部103の下端部には、突出部106の先端部106aによって取り囲まれた開口部107が形成される。突出部106と下リング部材9dの下面108と、延伸部104の内周面109との間には、後述の対向部110の外周縁部を収容するための空間が形成されている。ここで、下リング部材9dの下面108は、上下方向において超伝導コイル8と対向する面(第1方向面)である。この下面は、後述の対向部110を摺動させる受け面として機能する。従って、下面108の表面には、対向部110を滑りやすくするために、摩擦係数の低い部材が設けられてもよく、摩擦係数を低下させる表面処理がなされてよい。
上下方向荷重支持体22は、上下方向に延びる棒状部材101と、姿勢変化部102と、を備えている。棒状部材101は、真空容器10内に進入してコイル支持枠9側へ延びる部材である。棒状部材101は、真空容器10の連通部10b内を上下方向に直線状に延びて、下端側にて真空容器10を貫通している。姿勢変化部102は、棒状部材101の上端部に設けられ、コイル支持枠9の保持部103に保持されている。すなわち、棒状部材101は、姿勢変化部102を介してコイル支持枠9の保持部103に連結される。
姿勢変化部102は、上下方向位置調整部78(図1参照)によるコイル支持枠9の上下方向への移動に追従して、姿勢変化する部分である。また、姿勢変化部102は、水平方向位置調整部58(図1参照)によるコイル支持枠9の水平方向への移動に追従して、姿勢変化可能である。姿勢変化部102は、対向部110と、球面軸受120と、を備える。
対向部110は、保持部103の下面108と突出部106との間に形成される空間に収容される略円板状の部材である。対向部110の外径は突出部106の先端部106aの内径よりも大きい。従って、対向部110の外周縁部は、突出部106に支持される。対向部110は、コイル支持枠9の下面108に対向する対向面110aを有する。対向面110aは、コイル支持枠9の下面108に向かって凸状をなして湾曲してよい。本実施形態では、対向面110aは、上方向かって突出する球面によって構成されている。これにより、対向面110aは、コイル支持枠9の下面108と点接触する。対向面110aは、中心軸CLを中心軸とした球面である。従って、対向面110aは、中心軸CLの位置にて、コイル支持枠9の下面108と点接触する。なお、対向面110aの球面の曲率は、図6に示すものより緩やかにしてよい。また、対向面110aは、コイル支持枠9の下面108と点接触、または略点接触する形状であれば特に形状は限定されず、例えば下面108に向かって凸状をなして傾斜するような、テーパー面であってもよい。なお、対向部110の下面110bと突出部106の上面との間には、僅かな隙間が設けられている。
球面軸受120は、対向部110と棒状部材101との間に設けられ、対向部110を回動可能に支持する部材である。球面軸受120は、対向部110と共にコイル支持枠9の動きに追従して動く可動部121と、棒状部材101に対して固定されて可動部121を支持する固定部122と、を備える。
可動部121は、対向部110の下方に配置された球体部123と、球体部123と対向部110とを連結する連結部124と、を備える。球体部123は、中心が中心軸CL上に配置される球体によって構成される部材である。球体部123の中心は、少なくともコイル支持枠9の保持部103の突出部106よりも下側に配置されている。なお、球体部123の下端部側には平面123aが形成されてよい。連結部124は、球体部123の上端部側から上方へ向かって延びる柱状部材である。連結部124の外径は、保持部103の開口部107の内径よりも小さい。連結部124は、球体部123及び対向部110に固定されている。すなわち、対向部110は、連結部124を介して球体部123に固定されている。
固定部122は、球体部123を取り囲んで、可動部121を回動可能に支持する筒状の部材である。固定部122は、その中心軸が中心軸CLと一致するように配置される。固定部122の内周面は球体部123を摺動可能に受ける受け面122aとして構成されている。受け面122aは、球体部123の球面に沿って径方向外側へ向かって湾曲する形状を有する。固定部122の下端部122bは、平面状に構成されており、棒状部材101の上端部に固定されている。なお、棒状部材101の内部には、回動する可動部121の球体部123(図8参照)との干渉を防止する空間が形成されている。固定部122の上端部122cは、保持部103の突出部106の下端部106bよりも下方へ離間した位置に配置される。これによって、固定部122と保持部103との間には隙間が形成され、当該隙間によってコイル支持枠9が移動する際に、固定部122と突出部106が干渉することを抑制できる(図8参照)。
次に、本実施形態に係る超伝導サイクロトロン1、及び超伝導電磁石5の作用・効果について説明する。
この超伝導サイクロトロン1では、超伝導電磁石5の超伝導コイル7,8が通電されて、超伝導コイル7,8の周囲に磁束が発生する。この磁束がヨーク6及びポール3,4を通り超伝導コイル7,8周りに磁気回路を形成し、対向する一対のポール3,4間の加速空間Gに磁場が形成される。そして、加速空間Gに供給された荷電粒子は、磁場及び電場によって加速されて、荷電粒子ビームとして出射される。
この超伝導サイクロトロン1では、上下方向荷重支持体21,22を用いて、コイル支持枠9の上下方向の位置を調整することができる。また、複数の上下方向荷重支持体21,22による位置調整により、コイル支持枠9の傾きを変えるように、位置調整を行うことができる。これにより、超伝導コイル7,8の位置及び傾きを調整することができ、加速空間Gにおける磁場を調整して、荷電粒子ビームを調整することができる。
超伝導サイクロトロン1では、コイル支持枠9が水平方向荷重支持体31,32によって支持されているので、水平方向荷重支持体31,32を用いて、中心軸C方向と直交する方向にコイル支持枠9を移動させて、位置調整することができる。
また、水平方向荷重支持体31,32では、水平方向位置調整部58を備えているので、ナット61を回転操作することで、ロッド部57を荷重支持体固定部60に対して、X軸方向に移動させることができる。複数の水平方向荷重支持体31,32の位置を適宜移動させることで、コイル支持枠9を、中心軸Cと直交する方向に移動して位置調整することができる。これにより、超伝導コイル7,8を中心軸Cと直交する方向に移動させて、超伝導コイル7,8による磁場を調整して、荷電粒子ビームを調整することができる。
また、水平方向位置調整部58は、ナット61を回転させることで、ロッド部57を変位させることができるので、ナット61の1回転に対するロッド部57の変位量を一定とすることができる。そのため、位置調整の管理を容易とすることができる。上下方向位置調整部78についても、同様の作用・効果を得ることができる。
また、超伝導サイクロトロン1は、上下方向において、真空容器10に対してコイル支持枠9を支持する、コイル支持枠9の周方向に沿って複数設けられた上下方向荷重支持体21,22と、上下方向において、それぞれの上下方向荷重支持体21,22を介して真空容器10に対するコイル支持枠9の位置を調整する複数の上下方向位置調整部78と、を備えている。従って、真空容器10に対するコイル支持枠9の位置は、上下方向位置調整部78によって位置調整可能である。ここで、上下方向荷重支持体21,22は、上下方向位置調整部78によるコイル支持枠9の上下方向への移動に追従して、姿勢変化する姿勢変化部102を有する。このように、超伝導コイル7,8と共にコイル支持枠9が上下方向へ位置調整されると、上下方向荷重支持体21,22は、姿勢変化部102にてコイル支持枠9の上下方向への移動へ追従するように姿勢変化する。従って、上下方向荷重支持体21,22は、コイル支持枠9及び超伝導コイル7,8の位置調整を広い範囲で許容することができる。以上により、超伝導コイル7,8の位置調整範囲を広くすることができる。
超伝導サイクロトロン1において、コイル支持枠9は、上下方向において超伝導コイル7,8と対向する下面108を有し、上下方向荷重支持体21,22は、真空容器10に対して接続された棒状部材101を備え、姿勢変化部102は、コイル支持枠9の下面108に対向すると共に、下面108に向かって凸状をなして湾曲する対向面110aを有する対向部110と、対向部110と棒状部材101との間に設けられ、対向部110を回動可能に支持する球面軸受120と、を備えてよい。複数の上下方向荷重支持体21,22のうち、いずれかの上下方向荷重支持体21,22に対する上下方向位置調整部78の調整を行った場合、コイル支持枠9は、超伝導コイル7,8と共に上下方向に対して傾斜するように移動する。このようなコイル支持枠9の動きに対して、姿勢変化部102は、コイル支持枠9の下面108に対向すると共に、下面108に向かって凸状をなして湾曲する対向面110aを有する対向部110を備えている。これにより、当該対向面110aと下面108とが摺動し易い構成となっている。また、姿勢変化部102は、対向部110と棒状部材101との間に設けられ、対向部110を回動可能に支持する球面軸受120を備えている。これにより、コイル支持枠9の傾斜に応じて球面軸受120で対向部110を回動させることができる。従って、姿勢変化部102は、コイル支持枠9の上下方向への移動に追従して、適切に姿勢変化することができる。
ここで、超伝導コイル7,8の上下方向への位置調整に伴う姿勢変化部102の姿勢変化の態様について説明する。前述のように、上下方向荷重支持体21,22は、コイル支持枠9の周方向において、複数配置されている。それらの上下方向荷重支持体21,22に対応して、上下方向位置調整部78もコイル支持枠9の周方向において複数配置されている。超伝導コイル7,8の上下方向の位置調整を行う場合は、複数の上下方向位置調整部78を一つずつ調整する。すなわち、一つの上下方向位置調整部78の調整を行い、対応する一つの上下方向荷重支持体21,22の上下方向の位置を変化させているとき、周方向における他の上下方向荷重支持体21,22の上下方向の位置は変化しない。従って、コイル支持枠9は、位置調整に係る上下方向荷重支持体21,22に対応する箇所に対してのみ、上下方向へ移動する力が作用する。従って、上下方向位置調整部78で上下方向の位置調整を行う場合、コイル支持枠9は、水平方向に対する角度が一定に保たれたまま上下方向へ移動するのではなく、水平方向に対する角度が変化するように移動する。
例えば、図6に示すように、コイル支持枠9の下面108が水平となっている状態から、上下方向位置調整部78の調整によって上下方向荷重支持体22を上側へ僅かに移動させる。この場合、図8に示すように、コイル支持枠9は、下面108が水平方向に対して僅かに傾斜するような態様で、上方向へ移動する。このとき、上下方向荷重支持体22に対するコイル支持枠9の角度が僅かに変化する。姿勢変化部102の球面軸受120は、コイル支持枠9の移動に伴って移動する対向部110を回動させる。対向部110に連結された可動部121は、固定部122に対して、回動方向D1へ回動する(図8参照)。これにより、姿勢変化部102の球面軸受120は、上下方向荷重支持体22とコイル支持枠9との連結状態を維持したままで、コイル支持枠9の移動を許容することができる。また、対向部110の対向面110aは、コイル支持枠9の下面108に向かって凸状をなして湾曲するような球面である。従って、コイル支持枠9の下面108は、対向面110aに対してスムーズに摺動することができる。コイル支持枠9の下面108は、対向面110aの湾曲形状に沿って、対向部110に対して僅かに回動することができる。なお、図8において、下面110bと突出部106の上面との間の隙間は、紙面においてX軸方向の正側及び負側の両側で維持された状態を示しているが、X軸方向の正側の隙間、または負側の隙間が狭まるように、対向面110aに対してコイル支持枠9が摺動してよい。また、コイル支持枠9の下面108は、対向面110aにガイドされて、対向部110に対して横方向にスライドすることもできる。これによって、姿勢変化部102は、上下方向荷重支持体22とコイル支持枠9との連結状態を維持したままで、コイル支持枠9の移動を許容することができる。
また、超伝導サイクロトロン1において、水平方向において、真空容器10に対するコイル支持枠9の位置を調整する水平方向位置調整部58を更に備え、コイル支持枠9は、水平方向において対向部110と隙間GP(図6参照)を介して対向する内周面109を有し、水平方向位置調整部58の位置調整によってコイル支持枠9が水平方向に移動するとき、コイル支持枠9の下面108は、対向部110の対向面110aに沿って摺動可能に構成されてよい。これにより、水平方向位置調整部58によって水平方向へのコイル支持枠9の位置調整がなされるとき、コイル支持枠9は、対向部110と内周面109との間の隙間GPの寸法の範囲内で、水平方向へスムーズに移動することができる。例えば、図7に示すように、コイル支持枠9が外周側へ向かって水平方向(図においてD2で示す)へ移動する場合、仮想線で示されるように、下面108が対向面11aでガイドされるように、コイル支持枠9が水平方向へスライドする。
本実施形態に係る超伝導電磁石5は、磁場を発生する超伝導電磁石5であって、中心軸C周りに巻かれた超伝導コイル7,8と、超伝導コイル7,8を支持するコイル支持枠9と、超伝導コイル7,8及びコイル支持枠9を内部に収容する真空容器10と、上下方向において、コイル支持枠9を支持する、コイル支持枠9の周方向に沿って複数設けられた上下方向荷重支持体21,22と、それぞれの上下方向荷重支持体21,22を介してコイル支持枠9の位置を調整する複数の上下方向位置調整部78と、を備え、上下方向荷重支持体21,22は、上下方向位置調整部78によるコイル支持枠9の上下方向への移動に追従して、姿勢変化する姿勢変化部102を有する。
この超伝導電磁石5によれば、上述の超伝導サイクロトロン1と同様の作用・効果を得ることができる。
本発明は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で下記のような種々の変形が可能である。
超伝導電磁石5の超伝導コイル7,8は、2個の超伝導コイル7,8を有する場合に限られず、1個または3個以上の超伝導コイルを有してもよい。
また、本発明に係る超伝導電磁石は、サイクロトロンに限られず、MCZ法によるシリコン単結晶引き上げ装置に適用することもできる。超伝導電磁石は、高磁場が求められる装置であれば、どのような装置にでも適用可能である。
また、上記実施形態では、4本の水平方向荷重支持体31,32を備える構成としているが、1本の水平方向荷重支持体を備える構成でもよく、2本以上の水平方向荷重支持体を備える構成でもよい。
また、上記実施形態では、超伝導コイル7,8の中心軸Cは、上下方向に沿うように配置されているが、中心軸Cが水平方向に沿うように配置された超伝導コイル7,8でもよく、中心軸Cが上下方向に対して傾斜して配置された超伝導コイル7,8でもよい。
上述の実施形態では、連結構造100がコイル支持枠9と上下方向荷重支持体21,22との間に設けられていた。これに代えて、連結構造100が、真空容器10側に設けられてもよい。例えば、図9に示すように、上下方向荷重支持体222の中途位置に連結構造200が設けられてもよい。上下方向荷重支持体222は、真空容器10内に進入してコイル支持枠9に接続される棒状部材201を備える。また、棒状部材201の上下方向における中途位置には、保持部203及び姿勢変化部102を有する。棒状部材201のうち上側の部分を上側棒状部材201Aとし、下側の部分を下側棒状部材201Bとする。下面208は、上側棒状部材201Aの下端に設けられた保持部203の下面208は、上下方向において超伝導コイル7,8と対向する第1方向面として形成される。上側棒状部材201Aの上端はコイル支持枠9に固定される。姿勢変化部102は、保持部203と下側棒状部材201Bの上端との間に設けられる。姿勢変化部102自体は、前述の連結構造100と同様の構成を有する。
このような構成によれば、複数の上下方向荷重支持体222に対する上下方向位置調整部78の調整を行った場合、コイル支持枠9は、超伝導コイル7,8と共に上下方向に対して傾斜するように移動する。このようなコイル支持枠9の動きに対して、姿勢変化部102は、上側棒状部材201Aの下面208に対向すると共に、下面108に向かって凸状をなして湾曲する対向面110aを有する対向部110を備えている。これにより、当該対向面110aと下面208とが摺動し易い構成となっている。また、姿勢変化部102は、対向部110Aと下側棒状部材201Bとの間に設けられ、対向部110を回動可能に支持する球面軸受120を備えている。これにより、コイル支持枠9の傾斜に応じて球面軸受120で対向部110を回動させることができる。従って、姿勢変化部102は、コイル支持枠9及び上側棒状部材201Aの上下方向への移動に追従して、適切に姿勢変化することができる。なお、保持部203が下側棒状部材201Bの上端に設けられ、姿勢変化部102を上下逆にして上側棒状部材201Aの下端に設けてもよい。
なお、超電導サイクロトロンの支持構造は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、上述の実施形態では、上下方向荷重支持体は、上側と下側の双方に設けられていた。これに代えて、上側の四本の上下方向荷重支持体21を省略し、下側の四本の上下方向荷重支持体22のみで支持してもよい。あるいは、上側の四本の上下方向荷重支持体21のみで吊り下げるように支持し、下側の四本の上下方向荷重支持体22を省略してもよい。また、上下方向位置調整部78は、ヨーク6に取り付けられていたが、ヨーク6の内側に配置し、真空容器10に取り付けてもよい。