JP6895286B2 - 車輪用軸受装置 - Google Patents
車輪用軸受装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP6895286B2 JP6895286B2 JP2017059468A JP2017059468A JP6895286B2 JP 6895286 B2 JP6895286 B2 JP 6895286B2 JP 2017059468 A JP2017059468 A JP 2017059468A JP 2017059468 A JP2017059468 A JP 2017059468A JP 6895286 B2 JP6895286 B2 JP 6895286B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- ring
- bearing device
- rolling surface
- wheel bearing
- tapered
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Images
Landscapes
- Rolling Contact Bearings (AREA)
Description
本発明は、車輪用軸受装置に関する。詳しくは、円すいころ軸受であって、内方部材に耐久性を向上したぬすみ部を備える車輪用軸受装置に関する。
従来、自動車等の懸架装置において車輪を回転自在に支持する車輪用軸受装置が知られている。例えば、大型のピックアップトラックやバンなど比較的車体重量の大きい車両の軸受には、その負荷荷重に耐えうるように転動体が円すいころであるテーパベアリング(円すいころ軸受)と呼ばれる軸受装置が使用される。テーパベアリングにおいても、ユニット化の要求があり、第2世代型、第3世代型の車輪用軸受装置がある。
例えば、特許文献1には、複列円すいころ軸受形式で、第3世代型の車輪用軸受装置が記載されている。この車輪用軸受装置は、車輪取付け用のフランジ部を有する内方部材と、内方部材に外挿した外方部材と、内方部材および外方部材間に介装された複列の円すいころとで構成される。この車輪用軸受装置は、2つの円すいころ軸受をユニット化してコンパクト化を図ったものである。
また、特許文献2に記載の円すいころ軸受は、テーパ状の内方軌道面を有する外輪と、テーパ状の外方軌道面を有し、この外方軌道面の大径側端部にころ係止大鍔部が形成された第1内輪及び第2内輪と、前記両軌道面間に転動自在に配された複数の円錐ころとを備える。円錐ころ軸受は、玉軸受に比べて動摩擦係数が大きい。これは玉軸受の摩擦が転がり抵抗のみによって発生するのに対し、円錐ころ軸受はころ転走面と軌道面との間の転がり抵抗に加え、ころ頭部と大鍔部との間に滑り摩擦損失が存在するためである。そして、軸受の摩擦損失は熱に変わるため、円錐ころ軸受ではころ頭部と大鍔部との間で焼付きを発生するおそれがある。そのため、ころ係止大鍔部及び円錐ころのころ頭部の少なくとも一方に、非鉄のショット材を用いたショットピーニングによる金属皮膜を形成することで、円すいころ軸受のころ頭部と大鍔部との間の滑り摩擦損失を低減する技術が提案されている。
特許文献1に記載の複列円すいころ軸受形式における第3世代型の車輪用軸受装置では、内方部材が有する車輪取付け用のフランジ部のインナー側根元部に設けられたぬすみ部(特許文献1の図3において大鍔部1a4の根元部に形成された符号14で示された部分)に応力が集中し、引張応力が高くなる。対策としては、ぬすみ部の曲率半径Rを大きくすることが考えられるが、その場合、ぬすみ部が大きくなり、軌道面や大鍔部が狭くなってしまい面圧が高くなるなどの別の問題に繋がってしまうため、対策として好ましくない。そのため、要求性能に対して過大性能(例えば寿命等が過大)となるサイズの大きな軸受を選定し、ぬすみ部の曲率半径Rを相対的に大きくして該部分の応力を下げる必要があった。
本発明は、以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、ぬすみ部の曲率半径R等の形状を変更せずに、内方部材に形成されるぬすみ部の耐久性の向上を図った車輪用軸受装置の提供を目的とする。
即ち、本発明は、内周に外向きに開いたテーパ状の複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、少なくとも一つの内輪からなり、外周に前記複列の外側転走面に対向するテーパ状の内側転走面が形成された内方部材と、前記外方部材と前記内方部材のそれぞれの転走面間に転動自在に収容された複列の円すいころと、を備えた車輪用軸受装置において、前記内方部材は、前記内側転走面の大径側に設けられた大鍔部と、前記内側転走面と前記大鍔部との間に設けられたぬすみ部を有し、少なくともアウター側の前記ぬすみ部は、表層に圧縮残留応力を付与するレーザーピーニングによる表面処理が施された表面処理層を有する、ものである。
本発明は、前記表面処理層に研削加工が施された、ものである。
本発明は、前記レーザーピーニングによる表面処理が少なくとも前記内側転走面と前記大鍔部をマスキングした状態で施された、ものである。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明に係る車輪用軸受装置は、ぬすみ部がレーザーピーニング処理により表層に圧縮残留応力を付与する処理がされた表面処理層を有している。かかる発明により、ぬすみ部の曲率半径R等の形状を変更せずに、ぬすみ部表面に発生する応力を緩和して、ぬすみ部の耐久性を向上することができる。
本発明に係る車輪用軸受装置は、前記表面処理層に研削加工が施されたものである。かかる発明により、ぬすみ部の表面にレーザーピーニング処理により形成される微小な凹凸を平滑化して、金属磨耗粉が発生することを防ぐことができる。
本発明に係る車輪用軸受装置は、前記レーザーピーニングによる表面処理が少なくとも前記アウター側の内側転走面と前記大鍔部をマスキングした状態で施されたものである。かかる発明により、表面処理したい部分だけ表面処理を施すことができる。
以下に、図1から図6を用いて、本発明の一実施形態に係る車輪用軸受装置1について説明する。
図1と図2に示すように、車輪用軸受装置1は、自動車等の車両の懸架装置において車輪を回転自在に支持するものである。車輪用軸受装置1は、複列円すいころ軸受形式で、第3世代型の駆動輪支持用の車輪用軸受装置である。車輪用軸受装置1は、外方部材である外輪2、内方部材であるハブ輪3、内輪4、外輪2と内輪4の間に介装されるインナー側の円すいころ5a、外輪2とハブ輪3の間に介装されるアウター側の円すいころ5b、インナー側シール部材6、アウター側シール部材9を具備する。なお、本明細書において、インナー側とは、車輪用軸受装置1を車体に取り付けた際の車輪用軸受装置1の車体側を表し、アウター側とは、車輪用軸受装置1を車体に取り付けた際の車輪用軸受装置1の車輪側を表す。
外方部材である外輪2は、内方部材であるハブ輪3と内輪4とを支持するものである。外輪2は、略円筒状に形成されている。外輪2において、車載時に車体側に配置される外輪2のインナー側端部には、インナー側シール部材6が嵌合可能なインナー側開口部2aが形成されている。外輪2において、車載時に車輪側に配置されるアウター側端部には、アウター側シール部材9が嵌合可能なアウター側開口部2bが形成されている。
外輪2の内周面には、外向きに開いたテーパ状に形成されているインナー側の外側転走面2cとアウター側の外側転走面2dとが周方向に互いに平行になるように形成されている。アウター側の外側転走面2dとインナー側の外側転走面2cとは、ころピッチ円直径が同等になるように形成されている。外輪2の外周面には、図示しない懸架装置のナックルに取り付けるための車体取り付けフランジ2eが一体に形成されている。
内方部材は、ハブ輪3と内輪4とによって構成されている。内方部材を構成するハブ輪3は、図示しない車両の車輪を回転自在に支持するものである。ハブ輪3は、略円筒状に形成され、例えば、S53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で構成されている。ハブ輪3において、車載時に車体側に配置されるインナー側端部には、外周面に縮径された小径段部3aが形成されている。ハブ輪3において、車載時に車輪側に配置されるアウター側端部には、車輪を取り付けるための車輪取り付けフランジ3bが一体的に形成されている。車輪取り付けフランジ3bには、円周等配位置にハブボルト3dが設けられている。また、ハブ輪3のアウター側の外周面には、周方向に環状でテーパ状の内側転走面3cが外輪2のアウター側の外側転走面2dに対向するように配置されている。
ハブ輪3は、インナー側の小径段部3aからアウター側の内側転走面3cまでを高周波焼入れにより表面硬さを58〜64HRCの範囲で硬化処理されている。これにより、ハブ輪3は、車輪取り付けフランジ3bに付加される回転曲げ荷重に対して充分な機械的強度を有し、ハブ輪3の耐久性が向上する。ハブ輪3のインナー側端部の小径段部3aには、内方部材の一部である内輪4が圧入されている。ハブ輪3は、インナー側端部の内輪4の外周面に形成されている内側転走面4aが外輪2のインナー側の外側転走面2cに対向し、アウター側に形成されている内側転走面3cが外輪2のアウター側の外側転走面2dに対向するように配置されている。ハブ輪3の内周は、トルク伝達用のセレーション(またはスプライン)が形成されている連結孔3eとして構成されている。
図3に示すように、ハブ輪3の内側転走面3cの大径側端部には大鍔部3fが形成され、円すいころ5bを案内している。ハブ輪3は、車輪取り付けフランジ3bのインナー側の根元部にぬすみ部13を有している。すなわち、ぬすみ部13は、断面視凹状であって、内側転走面3cと大鍔部3fの間に隅部に形成されている。ぬすみ部13は、断面視円弧状のぬすみ本体部13aと、このぬすみ本体部13aに連設されるテーパ面部13bと、ぬすみ部13の少なくとも一部の表層に圧縮残留応力を付与するレーザーピーニングによる表面処理が施された表面処理層13cとから構成される。
なお、本実施形態では、アウター側の内側転走面である内側転走面3cのアウター側に隣接するぬすみ部13がレーザーピーニングによる表面処理が施された表面処理層13cを有する構成としているが、特に限定するものではない。例えば、インナー側の内側転走面である内側転走面4aのインナー側に隣接するぬすみ部にレーザーピーニングによる表面処理が施された表面処理層を有する構成としてもよい。
なお、本実施形態では、アウター側の内側転走面である内側転走面3cのアウター側に隣接するぬすみ部13がレーザーピーニングによる表面処理が施された表面処理層13cを有する構成としているが、特に限定するものではない。例えば、インナー側の内側転走面である内側転走面4aのインナー側に隣接するぬすみ部にレーザーピーニングによる表面処理が施された表面処理層を有する構成としてもよい。
内輪4は、略円筒状に形成されている。内輪4は、例えば、SUJ2等の高炭素クロム軸受鋼からなり、ズブ焼入れにより芯部まで58〜64HRCの範囲で硬化処理されている。これにより、内輪4は、車体取り付けフランジ2eに付加される回転曲げ荷重に対して十分な機械的強度と耐久性を有している。内輪4の外周面には、周方向に環状で外向きに開いたテーパ状の内側転走面4aが形成されている。内輪4は、圧入によりハブ輪3のインナー側端部に固定されている。つまり、内輪4は、ハブ輪3の小径段部3aに圧入嵌合され、ハブ輪3のインナー側には、内輪4によって内側転走面4aが構成されている。
二列の転動体であるインナー側の円すいころ5aとアウター側の円すいころ5bとは、ハブ輪3と内輪4を回転自在に支持するものである。複数のインナー側の円すいころ5aとアウター側の円すいころ5bとは、保持器によって環状に保持されている。インナー側の円すいころ5aは、内輪4の内側転走面4aと、外輪2のインナー側の外側転走面2cとの間に転動自在に挟まれている。アウター側の円すいころ5bは、ハブ輪3の内側転走面3cと、外輪2のアウター側の外側転走面2dとの間に転動自在に挟まれている。つまり、インナー側の円すいころ5aとアウター側の円すいころ5bとは、外輪2に対してハブ輪3と内輪4とを回転自在に支持している。
インナー側シール部材6は、外輪2のインナー側開口部2aと内輪4との隙間を塞ぐものである。インナー側シール部材6は、円環状のシールリング7と円環状のスリンガ8で構成されている。インナー側シール部材6は、シールリング7とスリンガ8とが対向するように配置される。シールリング7は、外方部材の外輪2のインナー側開口部2aに嵌合されて外輪2と一体的に構成される。スリンガ8は、内方部材の外周(内輪4の外周)に嵌合されて内輪4と一体的に構成される。このようにして、インナー側シール部材6は、砂塵等の侵入やグリースの漏出を防止している。
アウター側シール部材9は、外輪2のアウター側開口部2bとハブ輪3との隙間を塞ぐものである。アウター側シール部材9は、円環状のシールリング10で構成されている。アウター側シール部材9は、シールリング10とハブ輪4とが対向するように配置される。アウター側シール部材9は、外輪2のアウター側開口部2bに嵌合されて外輪2と一体的に構成される。このようにして、アウター側シール部材9は、砂塵等の侵入やグリースの漏出を防止している。
このように構成される車輪用軸受装置1は、ハブ輪3と内輪4とがインナー側の円すいころ5aとアウター側の円すいころ5bとを介して外輪2に回転自在に支持されている。また、車輪用軸受装置1は、外輪2のインナー側開口部2aと内輪4との隙間をインナー側シール部材6で塞がれ、外輪2のアウター側開口部2bとハブ輪3との隙間をアウター側シール部材9で塞がれている。これにより、車輪用軸受装置1は、内部からのグリースの漏れおよび外部からの雨水や粉塵等の入り込みを防止しつつ外輪2に支持されているハブ輪3と内輪4とが回転可能に構成されている。
次に、図3から図6を用いて、ハブ輪3のぬすみ部13及びぬすみ部13へのレーザーピーニング処理について詳細に説明する。
図3に示すように、ハブ輪3には、アウター側の円すいころ5bとの干渉を回避するため、円すいころ5bの大端面5b1を受けて案内する大鍔部3fが設けられ、この大鍔部3fと、アウター側の内側転走面3cとの隅部に周方向に沿って凹湾曲状のぬすみ部13が形成されている。
ぬすみ部13は、円すいころ5bの外周縁部5b2と接触しないように所定の隙間14を設けるように形成することによって、ハブ輪3が円すいころ5bの外周縁部5b2と干渉しないようにしている。ここで、ぬすみ部13とは、その底面(ぬすみ本体部13aの底面)が所定曲率半径の円弧面を有するものである。
ぬすみ部13は、ぬすみ部13(ぬすみ本体部13a)の底面と、円すいころ5bの外周縁部5b2との間に隙間14が形成されるように、ぬすみ本体部13aが所定の曲率半径となるように形成される。この場合、ぬすみ本体部13aの曲率半径Rは0.8mmから3mmの範囲内とするのが好ましいが、より好ましくは1.2mmから2mmの範囲内とするのが好ましい。具体的には、円すいころ5bの外周縁部5b2のアールの曲率半径よりも大きい曲率半径とすることが好ましい。
なお、ぬすみ部13の断面形状は、ぬすみ部13が円すいころ5bの外周縁部5b2と接触しないように所定の隙間14を設けられる形状であればよく、本実施形態のように断面円弧状に限らず、例えば、断面三角形状や断面矩形状であってもよい。また、ぬすみ部13は、ぬすみ本体部13aに連設するテーパ面部13bを設けない構成であってもよい。
なお、ぬすみ部13の断面形状は、ぬすみ部13が円すいころ5bの外周縁部5b2と接触しないように所定の隙間14を設けられる形状であればよく、本実施形態のように断面円弧状に限らず、例えば、断面三角形状や断面矩形状であってもよい。また、ぬすみ部13は、ぬすみ本体部13aに連設するテーパ面部13bを設けない構成であってもよい。
ぬすみ部13は、その少なくとも一部の表層に形成される表面処理層13c(図3の薄墨部分)を有している。図3に示す表面処理層13cは、ぬすみ部13(ぬすみ本体部13a、テーパ面部13b)の表層全体に亘って形成されている。
表面処理層13cは、表面改質処理としてぬすみ部13の少なくとも一部の表層に圧縮残留応力を付加する処理が行われることで形成することができる。圧縮残留応力を付加する処理としては、レーザーピーニング処理が挙げられる。レーザーピーニング処理は、液体(例えば、水)を付与した処理対象部分である処理前のぬすみ部13に対してレーザービームを照射して表面に圧縮残留応力を付与する処理である。レーザーピーニング処理は、公知のレーザーピーニング装置を用いて行うことができる。具体的には、レーザーピーニング装置からの出射ビームは、レンズによって、均一な強度分布を有するトップハット状、又はビーム中央部に最大値を持つガウス分布状に、単一の集光スポットを有するように集光される。その集光されたビームL(図5参照)は処理対象物に照射され、その表面でそのエネルギーが吸収される。すると、その表面が瞬間的に加熱されて蒸発し、高温高圧のプラズマが発生する。このプラズマの噴出を水等の透明体が抑えそれに伴う反力として、衝撃力が処理対象物に与えられる。この衝撃力によりぬすみ部13の表面が圧縮されることによってぬすみ部13の表層に表面処理層13cが形成され、その表層に圧縮残留応力が付与されたぬすみ部13を得ることができる。すなわち、処理前のぬすみ部13にレーザーピーニング処理の表面改質処理を施すことにより、ぬすみ部13の表層に圧縮残留応力が付与された表面処理層13cを形成することができる。ぬすみ部13の表層に圧縮残留応力を付与することで耐久性を向上させることができる。
なお、上記レーザーピーニング処理の表面改質処理によって、図3に示すようにぬすみ部13の表層の所定領域(薄墨部分)が表面改質される。表面処理層13cの深さとしては0.2mm以下である。
また、図3に示すぬすみ部13の断面図おいては表面処理層13cが形成された領域を模式的に示しているため、実際の厚さとは異なる。
なお、上記レーザーピーニング処理の表面改質処理によって、図3に示すようにぬすみ部13の表層の所定領域(薄墨部分)が表面改質される。表面処理層13cの深さとしては0.2mm以下である。
また、図3に示すぬすみ部13の断面図おいては表面処理層13cが形成された領域を模式的に示しているため、実際の厚さとは異なる。
また、車輪用軸受装置1においては、レーザーピーニング処理によりぬすみ部13の耐久性を向上することができるので、ぬすみ部13の曲率半径Rを大きくして耐久性を向上する必要がなくなり、ぬすみ部13の形状の最適設計ができるようになる。また、特許文献2の表面処理では、非鉄のショット材を用いたショットピーニングを用いているが本実施形態のようにレーザーピーニングによる表面処理では、以下(1)〜(3)に挙げるメリットがある。
(1)ぬすみ部13に圧縮残留応力を付与する表面処理を施す際には、内側転走面3cと大鍔部3fが削られるため、発生する引張応力を緩和するためにも圧縮残留応力はある程度深くまで入れる必要があるが、圧縮残留応力の付与方法としてはショットピーニング処理よりレーザーピーニング処理の方が深さ管理が容易である。
すなわち、図4に示すように、レーザーピーニング処理によって金属材料に付与される圧縮残留応力の最大値は、ショットピーニング処理によって金属材料に付与される圧縮残留応力と近似している。一方、レーザーピーニング処理によって金属材料に付与される圧縮残留応力の深さは、ショットピーニング処理によって金属材料に付与される圧縮残留応力の数倍に到達する。つまり、レーザーピーニング処理は、ショットピーニング処理よりも深い位置までエネルギーが伝達されてピーニング効果を奏する。こうして、圧縮残留応力の付与方法としてはショットピーニング処理よりレーザーピーニング処理の方が深さ管理が容易となるのである。
(2)ショットピーニング処理は粒子がぬすみ部13内にきれいに入らず、ぬすみ部13内で表面処理されていない箇所が発生する。一方、レーザーピーニング処理はレーザー光による照射であるためぬすみ部13内を均一に処理可能である。
(3)ショットピーニング処理では粒子がぬすみ部13内に残ってしまう可能性があり、この粒子による不具合の懸念がある。
以上のことから、ぬすみ部13に圧縮残留応力を付与する表面処理としては、ショットピーニング処理よりもレーザーピーニング処理が好ましい。
以上のことから、ぬすみ部13に圧縮残留応力を付与する表面処理としては、ショットピーニング処理よりもレーザーピーニング処理が好ましい。
また、ぬすみ部13の表面処理層13cにおいては、その表面にレーザーピーニング処理により微小な凹凸が形成されるが、この凹凸は研削加工を施すことで平滑化することが好ましい。
また、図5に示すように、レーザーピーニングによる表面処理は、ぬすみ部13周囲(少なくとも大鍔部3f及び内側転走面3c)をマスク部材20によりマスキングした状態で施されることが好ましい。
以上のように、車輪用軸受装置1では、ぬすみ部13が表層に圧縮残留応力を付与する処理がされた表面処理層13cを有している。
これにより、ぬすみ部13の曲率半径R等の形状を変更せずに、ぬすみ部13表面に発生する応力を緩和して、ぬすみ部13の耐久性を向上することができる。すなわち、表面処理層13cの圧縮残留応力(図6の白塗り矢印参照)がぬすみ部13の表面に発生する引張応力(ぬすみ部13を押し広げようとする力、図6の黒塗り矢印参照)を緩和するため、例えば、ぬすみ部13の割れや亀裂等を防ぎ、ぬすみ部13の耐久性を向上することができる。すなわち、ぬすみ部13にあらかじめレーザーピーニングによる表面処理を施すことでぬすみ部13で発生する引張応力を緩和することができる。
これにより、ぬすみ部13の曲率半径R等の形状を変更せずに、ぬすみ部13表面に発生する応力を緩和して、ぬすみ部13の耐久性を向上することができる。すなわち、表面処理層13cの圧縮残留応力(図6の白塗り矢印参照)がぬすみ部13の表面に発生する引張応力(ぬすみ部13を押し広げようとする力、図6の黒塗り矢印参照)を緩和するため、例えば、ぬすみ部13の割れや亀裂等を防ぎ、ぬすみ部13の耐久性を向上することができる。すなわち、ぬすみ部13にあらかじめレーザーピーニングによる表面処理を施すことでぬすみ部13で発生する引張応力を緩和することができる。
また、車輪用軸受装置1においては、ぬすみ部13の表面処理層13cに研削加工が施されたものである。
これにより、ぬすみ部13の表面にレーザーピーニング処理により形成される微小な凹凸を平滑化して、金属磨耗粉が発生することを防ぐことができる。
これにより、ぬすみ部13の表面にレーザーピーニング処理により形成される微小な凹凸を平滑化して、金属磨耗粉が発生することを防ぐことができる。
また、車輪用軸受装置1においては、ぬすみ部13に対するレーザーピーニングによる表面処理が少なくともアウター側の内側転走面3cと大鍔部3fをマスキングした状態で施される。これにより、表面処理したい部分だけ表面処理を施すことができる。
なお、本実施形態の車輪用軸受装置1では、ハブ輪3の外周にアウター側の円すいころ5bの内側転走面3cが直接形成されている第3世代構造の車輪用軸受装置であるがこれに限定するものではなく、ハブ輪に一対の内輪が圧入固定された第2世代構造や、ハブ輪を備えずに外方部材である外輪と内方部材である内輪とから構成される第1世代構造であってもよい。また、本発明は、従動輪用や駆動輪用の車輪用軸受装置に適用することができる。
1 車輪用軸受装置
2 外輪(外方部材)
2c インナー側外側転走面
2d アウター側外側転走面
3 ハブ輪
3c アウター側内側転走面
3f 大鍔部
4 内輪
4a インナー側内側転走面
5a インナー側円すいころ
5b アウター側円すいころ
13 ぬすみ部
13c 表面処理層
2 外輪(外方部材)
2c インナー側外側転走面
2d アウター側外側転走面
3 ハブ輪
3c アウター側内側転走面
3f 大鍔部
4 内輪
4a インナー側内側転走面
5a インナー側円すいころ
5b アウター側円すいころ
13 ぬすみ部
13c 表面処理層
Claims (3)
- 内周に外向きに開いたテーパ状の複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、
少なくとも一つの内輪からなり、外周に前記複列の外側転走面に対向するテーパ状の内側転走面が形成された内方部材と、
前記外方部材と前記内方部材のそれぞれの転走面間に転動自在に収容された複列の円すいころと、を備えた車輪用軸受装置において、
前記内方部材は、前記内側転走面の大径側に設けられた大鍔部と、前記内側転走面と前記大鍔部との間に設けられたぬすみ部を有し、
少なくともアウター側の前記ぬすみ部は、表層に圧縮残留応力を付与するレーザーピーニングによる表面処理が施された表面処理層を有する、ことを特徴とする車輪用軸受装置。 - 前記表面処理層に研削加工が施された、ことを特徴とする請求項1に記載の車輪用軸受装置。
- 前記レーザーピーニングによる表面処理は、少なくとも前記内側転走面と前記大鍔部をマスキングした状態で施された、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車輪用軸受装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017059468A JP6895286B2 (ja) | 2017-03-24 | 2017-03-24 | 車輪用軸受装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017059468A JP6895286B2 (ja) | 2017-03-24 | 2017-03-24 | 車輪用軸受装置 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2018162817A JP2018162817A (ja) | 2018-10-18 |
JP6895286B2 true JP6895286B2 (ja) | 2021-06-30 |
Family
ID=63860542
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2017059468A Active JP6895286B2 (ja) | 2017-03-24 | 2017-03-24 | 車輪用軸受装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP6895286B2 (ja) |
Family Cites Families (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH11223222A (ja) * | 1998-02-05 | 1999-08-17 | Nippon Seiko Kk | ころ軸受 |
JP4399905B2 (ja) * | 1999-07-16 | 2010-01-20 | 日本精工株式会社 | ころ軸受 |
JP2008051180A (ja) * | 2006-08-23 | 2008-03-06 | Nsk Ltd | ハブユニット軸受 |
JP2008298143A (ja) * | 2007-05-30 | 2008-12-11 | Ntn Corp | 転がり接触面の表面加工方法 |
JP2008298121A (ja) * | 2007-05-29 | 2008-12-11 | Ntn Corp | 円すいころ軸受 |
JP2011149530A (ja) * | 2010-01-25 | 2011-08-04 | Ntn Corp | 車輪用軸受装置 |
-
2017
- 2017-03-24 JP JP2017059468A patent/JP6895286B2/ja active Active
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2018162817A (ja) | 2018-10-18 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5183358B2 (ja) | 車輪用軸受装置 | |
JP3989168B2 (ja) | 車輪軸受装置 | |
JP4812376B2 (ja) | 車輪用軸受装置の製造方法 | |
JP5890636B2 (ja) | 車輪用軸受装置 | |
JP2008115949A (ja) | 車輪用軸受装置 | |
JP6895286B2 (ja) | 車輪用軸受装置 | |
JP5025137B2 (ja) | 車輪用軸受装置 | |
JP2006036112A (ja) | 車輪用軸受装置 | |
JP4268793B2 (ja) | 円すいころ軸受用内輪部材の製造方法、円すいころ軸受用内輪部材、車軸用円すいころ軸受装置 | |
JP2004182127A (ja) | 車輪用軸受装置 | |
JP2009191902A (ja) | 車輪用軸受装置 | |
JP2015028372A (ja) | 車輪支持用転がり軸受ユニット | |
JP2013076424A (ja) | 車輪用軸受装置 | |
JP2012020676A (ja) | 車輪用軸受装置 | |
JP7021844B2 (ja) | 車輪用軸受装置およびその製造方法 | |
WO2013035756A1 (ja) | 車輪用軸受装置 | |
JP2011240857A (ja) | 車輪用軸受装置 | |
JP2010058575A (ja) | 車輪用軸受装置 | |
WO2023139994A1 (ja) | 車輪用軸受装置 | |
WO2023286771A1 (ja) | 車輪用軸受装置 | |
CN101432540B (zh) | 车轮用轴承装置 | |
JP2018054052A (ja) | 車輪用軸受装置 | |
WO2022202530A1 (ja) | 車輪用軸受装置 | |
JP2009255644A (ja) | 車輪用軸受装置 | |
JP2010006198A (ja) | 車輪用軸受装置 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20200226 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20210511 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20210607 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 6895286 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |