JP7021844B2 - 車輪用軸受装置およびその製造方法 - Google Patents

車輪用軸受装置およびその製造方法 Download PDF

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本発明は車輪用軸受装置およびその製造方法に関する。詳しくはレーザーピーニング処理が施された車輪用軸受装置およびその製造方法に関する。
従来、自動車等の懸架装置において車輪を回転自在に支持する車輪用軸受装置が知られている。車輪用軸受装置は、車輪に接続されるハブ輪が転動体を介して外輪に回転自在に支持されている。車輪用軸受装置は、車両のナックルに外輪の取り付けフランジを介して固定されている。つまり、車輪用軸受装置は、外輪が車両のナックルに固定された状態で車輪が接続されているハブ輪を回転自在に支持している。ハブ輪には、転動体に予圧をあたえるための内輪が嵌合されている。内輪は、ハブ輪に圧入嵌合され、かつハブ輪の端部が径方向外側に塑性変形されることでハブ輪にかしめられている。
このような車輪用軸受装置において、内輪は、内周にハブ輪に圧入されるために内周の角部に面取り加工(またはR面取り加工)が施されるとともに内周面が研磨されている。同様に、内輪は、外周にシール部材が圧入されるために外周の角部に面取り加工(またはR面取り加工)が施されるとともに外周面が研磨されている。この際、面取り加工された部分は、研磨されていない。このため、内輪は、面取り加工された部分に傷等が生じた場合、内周面および外周面の研磨によって生じている残留引っ張り応力や、ハブ輪への圧入嵌合によって発生している引っ張り応力(フープ応力)によって、その傷を起点とする割れや疲労破壊が生じる可能性がある。そこで、かしめ加工によって外力が付加される部分にショットピーニング加工を施して圧縮残留応力を付与し、面取り加工された部分からの割れや疲労破壊の発生を抑制している車輪用軸受装置およびその製造方法が知られている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
特許文献1に記載の車輪用軸受装置は、内輪にハブ輪が圧入嵌合されるとともに、ハブ輪の端部が径方向外側に塑性変形されて内輪がハブ輪にかしめられている。内輪は、ハブ輪によってかしめられる側の内周角部にショットピーニング加工が施されている。これにより、内輪の内周角部には、圧縮残留応力が付与されている。内輪は、ハブ輪にかしめられる際、ハブ輪から径方向外側に外力が作用することによって内周角部に引っ張り応力が発生するが、内周角部に付与されている圧縮残留応力が引っ張り応力を打ち消すように作用する。従って、内輪の内周には、傷等を起点とする割れや疲労破壊が生じる可能性が低減される。しかし、特許文献1の技術では、圧縮残留応力が数十μm程度の深さまでしか生じていない。このため、内輪の圧縮残留応力が生じている範囲よりも深い位置まで傷等が到達し易く、傷等を起点とする割れや疲労破壊の発生を抑制できない場合があった。
特開2008-256019号公報
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、傷等を起点とする割れの発生を抑制し、疲労強度を向上させることができる車輪用軸受装置およびその製造方法の提供を目的とする。
即ち、車輪用軸受装置においては、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取り付けフランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されるハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪からなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、この内方部材と前記外方部材のそれぞれの転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、を備えた車輪用軸受装置において、前記内輪の内周の角部と前記内輪の外周の角部とのうち少なくとも一つの角部にレーザーピーニング処理によって圧縮残留応力が付与されているものである。
車輪用軸受装置においては、前記内輪の内周面と前記内輪の外周面とのうち少なくとも一方にレーザーピーニング処理によって圧縮残留応力が付与されているものである。
車輪用軸受装置においては、前記内輪に付与されている圧縮残留応力の深さが端面において最大であるものである。
車輪用軸受装置の製造方法においては、前記内輪にレーザーピーニング処理用のレーザーを1mm以下の間隔で照射するものである。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明によれば、傷等がつきやすい角部において、圧入嵌合時やかしめ加工時に発生する引っ張り応力が圧縮残留応力によって打ち消される。これにより、傷等を起点とする割れの発生を抑制し、疲労強度を向上させることができる。
本発明によれば内周面や外周面に生じた傷等が開かないように圧縮残留応力が作用するる。これにより、傷等を起点とする割れの発生を抑制し、疲労強度を向上させることができる。
本発明によれば、傷等がつきやすい角部において、圧入嵌合時やかしめ加工時に内輪の端面に発生する最大の引っ張り応力が圧縮残留応力によって打ち消される。これにより、傷等を起点とする割れの発生を抑制し、疲労強度を向上させることができる。
本発明によれば、圧縮残留応力がむらなく均一に付与される。これにより、傷等を起点とする割れの発生を抑制し、疲労強度を向上させることができる。
本発明に係る車輪用軸受装置の一実施形態における全体構成を示す斜視図。 本発明に係る車輪用軸受装置の一実施形態における全体構成を示す断面図。 本発明に係る車輪用軸受装置に施されるレーザーピーニング処理と従来のショットピーニング処理との加工深さの差異を表すグラフを示す図。 本発明に係る車輪用軸受装置における内輪の形状およびレーザーピーニング処理の範囲を示す断面図。 (a)本発明に係る車輪用軸受装置の内輪に施されるレーザーピーニング処理の照射角度の範囲を示す図、(b)同じくレーザーピーニング処理のピッチと処理範囲を示す拡大部分断面図。 (a)本発明に係る車輪用軸受装置の位置実施形態における内輪に生じている引っ張り応力と残留圧縮応力の態様を示す拡大部分断面図、(b)同じく図6(a)におけるC矢視端面図。 本発明に係る車輪用軸受装置の他の実施形態における内輪のレーザーピーニング処理の範囲を示す断面図。
以下に、図1と図2とを用いて、本発明に係る車輪用軸受装置1の一実施形態である車輪用軸受装置1について説明する。
図1に示すように、車輪用軸受装置1は、自動車等の車両の懸架装置において車輪を回転自在に支持するものである。車輪用軸受装置1は、外方部材である外輪2、内方部材を構成するハブ輪3、内方部材を構成する内輪4、転動列である二列の一側ボール列5a(図2参照)、他側ボール列5b(図2参照)、一側(インナー側)シール部材6、他側(アウター側)シール部材7(図2参照)を具備する。
図2に示すように、外方部材である外輪2は、内方部材(ハブ輪3と内輪4)を支持するものである。外輪2は、略円筒状に形成されたS53C等の炭素0.40~0.80wt%を含む中高炭素鋼で構成されている。外輪2の一側(インナー側)端部には、一側シール部材6が嵌合可能な一側開口部2aが形成されている。外輪2の他側(アウター側)端部には、他側シール部材7が嵌合可能な外方部材開口部である他側開口部2bが形成されている。
外輪2の内周面には、環状に形成されている一側の外側転走面2cと他側の外側転走面2dとが周方向に互いに平行になるように形成されている。一側の外側転走面2cと他側の外側転走面2dとのピッチ円直径は、等しい大きさに構成されている。なお、一側の外側転走面2cと他側の外側転走面2dとのピッチ円直径は、異なる大きさに構成してもよい。一側の外側転走面2cと他側の外側転走面2dとには、高周波焼入れによって表面硬さを58~64HRCの範囲とする硬化層が形成されている。外輪2の外周面には、図示しない懸架装置のナックルに取り付けられるための車体取り付けフランジ2eが一側開口部2aの近傍に一体に形成されている。車体取り付けフランジ2eは、外輪2の一側の外側転走面2cに対向する部分を含む範囲に形成されている。
内方部材を構成するハブ輪3は、図示しない車両の車輪を回転自在に支持するものである。ハブ輪3は、円筒状に形成されたS53C等の炭素0.40~0.80wt%を含む中高炭素鋼で構成されている。ハブ輪3の一側端部(インナー側)には、一側端から軸方向に所定の範囲だけ外径が小さい部分である小径段部3aが形成されている。つまり、小径段部3aの一側端は、ハブ輪3の一側端であり、後述するかしめ部3bが形成されている。ハブ輪3の他側端部(アウター側)には、車輪を取り付けるための車輪取り付けフランジ3cが一体的に形成されている。車輪取り付けフランジ3cには、円周等配位置にハブボルト3dが設けられている。ハブ輪3の他側(車輪取り付けフランジ3c側)の外周面には、周方向に環状のシール摺動面3eと環状の内側転走面3fとが形成されている。ハブ輪3は、他側に形成されている内側転走面3fが外輪2の他側の外側転走面2dに対向するように配置されている。
ハブ輪3は、一側の小径段部3aから他側の内側転走面3fまでを高周波焼入れにより表面硬さを58~64HRCの範囲に硬化処理されている。これにより、ハブ輪3は、車輪取り付けフランジ3cに付加される回転曲げ荷重に対して充分な機械的強度を有し、ハブ輪3の耐久性が向上する。ハブ輪3は、小径段部3aに内輪4が嵌合されるとともに、内輪4を固定するために一側端部が径方向外側に塑性変形されたかしめ部3bが形成されている。ハブ輪3の内周は、トルク伝達用のセレーション(またはスプライン)が形成されている連結孔3gとして構成されている。
内輪4は、転動列である一側ボール列5aと他側ボール列5bとに予圧を与えるものである。内輪4は、円筒状に形成されている。内輪4は、SUJ2等の高炭素クロム軸受鋼からなり、ズブ焼入れにより芯部まで58~64HRCの範囲で硬化処理されている。内輪4の外周面には、周方向に環状の内側転走面4aが形成されている。内輪4の内周は、ハブ輪3の小径段部3aが圧入される嵌合孔4bが形成されている。内輪4は、嵌合孔4bにハブ輪3の小径段部3aが圧入嵌合されるとともに、一側(インナー側)端が小径段部3aのかしめ部3bによってハブ輪3に固定されている。内輪4は、ハブ輪3の小径段部3aに固定されることでハブ輪3の一側に内側転走面4aを構成している。内輪4は、内側転走面4aが外輪2の一側の外側転走面2cに対向するように配置されている。
転動列である一側ボール列5aと他側ボール列5bとは、ハブ輪3を回転自在に支持するものである。一側ボール列5aと他側ボール列5bとは、転動体である複数のボールが保持器によって環状に保持されている。一側ボール列5aと他側ボール列5bとは、SUJ2等の高炭素クロム軸受鋼からなり、ズブ焼入れにより芯部まで58~64HRCの範囲で硬化処理されている。一側ボール列5aは、内輪4に形成されている内側転走面4aと、それに対向している外輪2の一側の外側転走面2cとの間に転動自在に挟まれている。他側ボール列5bは、ハブ輪3に形成されている内側転走面3fと、それに対向している外輪2の他側の外側転走面2dとの間に転動自在に挟まれている。つまり、一側ボール列5aと他側ボール列5bとは、外輪2に対してハブ輪3と内輪4とを回転自在に支持している。
車輪用軸受装置1は、外輪2とハブ輪3と内輪4と一側ボール列5aと他側ボール列5bとから複列アンギュラ玉軸受が構成されている。なお、本実施形態において、車輪用軸受装置1には、複列アンギュラ玉軸受が構成されているがこれに限定されるものではなく、複列円錐ころ軸受等で構成されていても良い。
一側(インナー側)シール部材6は、外輪2と内輪4との隙間を塞ぐものである。一側シール部材6は、略円筒状のシール板と略円筒状のスリンガとを具備する。一側シール部材6は、フェライト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS430系等)等から構成されているシール板に、NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)等の合成ゴムからなる複数の一側シールリップが加硫接着されている。スリンガは、シール板と同等の鋼板から構成されている。一側シール部材6は、シール板が外輪2の一側開口部2aに嵌合され、スリンガの円筒部分が内輪4に嵌合され、パックシールを構成している。スリンガは、その鍔部分が外側(インナー側)に向くようにして内輪4に固定されている。一側シール部材6は、シール板が外輪2の一側開口部2aに嵌合され、スリンガが内輪4に嵌合され、パックシールを構成している。一側シール部材6は、シール板の一側シールリップが油膜を介してスリンガと接触することでスリンガに対して摺動可能に構成されている。これにより、一側シール部材6は、外輪2の一側開口部2aからのグリースの漏れ、および外部からの雨水や粉塵等の侵入を防止する。
他側(アウター側)シール部材7は、外輪2とハブ輪3との隙間を塞ぐものである。他側シール部材7はニトリルゴム等の合成ゴムからなる複数の他側シールリップが加硫接着によって略円筒状に形成された芯金に一体に接合されている。他側シール部材7は、外輪2の他側開口部2bに円筒部分が嵌合され、ハブ輪3の外周面に複数の他側シールリップが接触している。他側シール部材7は、他側シールリップが油膜を介してハブ輪3の外周面と接触することでハブ輪3に対して摺動可能に構成されている。これにより、他側シール部材7は、外輪2の他側開口部2bからのグリースの漏れ、および外部からの雨水や粉塵等の侵入を防止する。
このように構成される車輪用軸受装置1は、外輪2とハブ輪3と内輪4と一側ボール列5aと他側ボール列5bとから複列アンギュラ玉軸受が構成され、ハブ輪3が一側ボール列5aと他側ボール列5bを介して外輪2に回転自在に支持されている。また、車輪用軸受装置1は、外輪2の一側開口部2aと内輪4との隙間を一側シール部材6で塞がれ、外輪2の他側開口部2bとハブ輪3との隙間を他側シール部材7で塞がれている。これにより、車輪用軸受装置1は、内部からのグリースの漏れ、および外部からの雨水や粉塵等の侵入を防止しつつ外輪2に支持されているハブ輪3が回転可能に構成されている。
次に、図3から図6を用いて、車輪用軸受装置1における内輪4のレーザーピーニング処理およびハブ輪3への組み付けについて詳細に説明する。
レーザーピーニング処理とは、短パルスレーザーL照射によって発生する衝撃波を用いて金属材料の表面近傍に圧縮残留応力を付与するものである。レーザーピーニング処理は、水中においてアブレーションできる強度のパルスレーザーLを金属材料に照射することで金属表面にプラズマを生成させる。金属材料には、水中でプラズマ膨張が抑制されることでプラズマ圧力が急激に上昇して衝撃波が伝播される。金属材料は、衝撃波による動的応力が金属の降伏応力を超えることで塑性変形が生じ、圧縮残留応力が付与される。
図3に示すように、レーザーピーニング処理によって金属材料に付与される圧縮残留応力の最大値は、ショットピーニング処理によって金属材料に付与される圧縮残留応力と近似している。一方、レーザーピーニング処理によって金属材料に付与される圧縮残留応力の深さは、ショットピーニング処理によって金属材料に付与される圧縮残留応力の数倍に到達する。つまり、レーザーピーニング処理は、ショットピーニング処理よりも深い位置までエネルギーが伝達されてピーニング効果を奏する。
図4に示すように、内輪4は、内周の一側(インナー側)端の角部(以下、単に「内周一側角部4c」と記す)に面取り加工の一種であるR面取り加工によってR面取りが形成されている。また、内輪4は、内周の一側端から内周一側角部4cを含む所定の軸方向の範囲を内周処理範囲Aとしてレーザーピーニング処理(薄墨部分)が施されている。内輪4は、内周処理範囲Aのうち内輪4の一側端面の径方向の処理深さが最も深く、内輪4の他側(アウター側)に向かうにつれて浅くなるようにレーザーピーニング処理が施されている。つまり、内輪4は、傷等がつきやすく圧入嵌合時やかしめ加工時に最大の引っ張り応力(フープ応力)が発生する端面近傍で最も深い加工深さである深さdまで残留圧縮応力が付与されるように構成されている。フープ応力とは、円筒形容器等で内圧によって発生する円周方向の引っ張り応力であって円筒形容器を長手の方向に裂こうとする応力をいう。
同様に、内輪4は、外周の一側(インナー側)端の角部(以下、単に「外周一側角部4d」と記す)に面取り加工の一種であるR面取り加工によってR面取りが形成されている。また、内輪4は、外周の一側端から外周一側角部4dを含む所定の軸方向の範囲を外周処理範囲Bとしてレーザーピーニング処理が施されている。内輪4は、外周処理範囲Bのうち内輪4の一側端面の径方向の処理深さが最も深い加工深さである深さdとし、内輪4の他側(アウター側)に向かうにつれて浅くなるようにレーザーピーニング処理が施されている。
図5(a)に示すように、内周処理範囲Aには、内周面から径方向外側に向かってレーザーピーニング処理のためのレーザーLが照射される。同様に、外周処理範囲Bには、外周面から径方向内側に向かってレーザーピーニング処理のためのレーザーLが照射される。この際、レーザーLの照射角度θは、照射面に対して90°±45°の範囲になるように設定されている。これにより、内輪4は、レーザーLからエネルギーが効率的に伝達され、残留圧縮応力が適切に付与される。
図5(b)に示すように、レーザーLの照射ピッチは、1mm以下になるように設定されている。つまり、レーザーピーニング処理は、レーザーLの照射毎の処理範囲が重複するように施されている。これにより、内輪4は、内周処理範囲Aと外周処理範囲Bの全域に渡って均一にレーザーピーニング処理が施される。さらに、内周処理範囲Aと外周処理範囲Bとには、レーザーピーニング処理による残留圧縮応力の処理深さが1mm程度になるように調整されている。これにより、内輪4は、深さが1mmを超える傷でなければ傷を起点とする割れが発生し難い。つまり、内輪4は、割れが発生する可能性が高い傷の割合が低減される。
図6に示すように、内周一側角部4cと外周一側角部4dとに残留圧縮応力が付与された内輪4は、ハブ輪3の小径段部3aに圧入嵌合される。この際、内輪4には、内周がハブ輪3によって径方向外側に押し広げられ(黒塗矢印参照)、内周一側角部4cと外周一側角部4dとにフープ応力が発生する。さらに、内輪4は、ハブ輪3の小径段部3aに圧入嵌合された状態で、ハブ輪3の一側端部が径方向外側に塑性変形されてかしめられる。この際、内輪4には、内周一側角部4cと外周一側角部4dとがハブ輪3によって径方向外側に押し広げられ(黒塗矢印参照)、内周一側角部4cと外周一側角部4dとにフープ応力が更に発生する。
内輪4の内周一側角部4cと外周一側角部4dとに発生したフープ応力は、内周一側角部4cと外周一側角部4dとに付与されている残留圧縮応力によって打ち消される。つまり、内輪4は、ハブ輪3の圧入嵌合やハブ輪3のかしめ加工により内周を押し広げる力(黒塗矢印参照)を残留圧縮応力によって発生している内周を縮小する力(白塗矢印参照)が打ち消している。これにより、車輪用軸受装置1の製造方法において、内輪4にレーザーピーニング処理を施すことで、ハブ輪3の圧入嵌合工程、かしめ工程等による内輪4の疲労強度の低下が抑制される。
このように構成することで、車輪用軸受装置1は、内輪4の内周一側角部4cや外周一側角部4dに傷等がついてもレーザーピーニング処理によって付与された残留圧縮応力によって傷等を起点とする割れの発生が抑制される。さらに、車輪用軸受装置1は、ハブ輪3から径方向外側の外力が加わることにより内輪4の一側端部に生じるフープ応力が残留圧縮応力によって打ち消される。この際、内輪4には、フープ応力の分布に基づいて残留圧縮応力が付与されているので、内輪4の端面に発生する最大のフープ応力が適切に圧縮残留応力によって打ち消される。加えて、車輪用軸受装置1は、内輪4の内周処理範囲Aおよび外周処理範囲Bにおいて外力による応力の変動が圧縮残留応力によって打ち消される。これにより、傷等を起点とする割れの発生を抑制し、疲労強度を向上させることができる。
なお、本実施形態において、内輪4は、内周一側角部4cと外周一側角部4dとにレーザーピーニング処理が施されているがこれに限定するものではなく、内周一側角部4cと外周一側角部4dとに加えて、内輪4の内周の他側(アウター側)端の角部および外周の他側端の角部とのうち少なくとも一つの角部にレーザーピーニング処理を施す構成でもよい。
また、車輪用軸受装置1の製造方法において、内輪4の内周処理範囲Aおよび外周処理範囲Bは、レーザーLの照射領域が重複するようにレーザーLの照射ピッチが1mm以下に設定され、圧縮残留応力が均一に付与されるようにレーザーピーニング処理が施されている。これにより、傷等を起点とする割れの発生を抑制し、疲労強度を向上させることができる。
なお、図7に示すように、本発明に係る車輪用軸受装置1の他の実施形態として、内輪4の内周一側角部4cと外周一側角部4dとに加えて、内輪4の嵌合孔4bの内周面と外周面との全面にレーザーピーニング処理をしてもよい。内輪4は、内周面全体を内周処理範囲Aとし、外周面全体を外周処理範囲Bとしてレーザーピーニング処理により残留圧縮応力が付与されている。つまり、内輪4は、ハブ輪3が圧入される嵌合孔4b、ハブ輪3にかしめられる内周一側角部4cを含む内周面全面、および外周一側角部4d、一側ボール列5aが転動する内側転走面4aを含む外周面全面に残留圧縮応力が付与されている。これにより、車両用軸受装置1は、内輪4にハブ輪3が圧入嵌合され、内輪4がハブ輪3にかしめられる際に発生するフープ応力を原因とする割れおよび一側ボール列5aの転動により内側転走面4aに生じる損傷を起点とする割れを抑制し、疲労強度を向上させることができる。
なお、本実施形態において、内輪4は、内周面と外周面との両方にレーザーピーニング処理が施されているがこれに限定するものではなく、内周面と外周面とのうち少なくとも一方にレーザーピーニング処理を施す構成であればよい。
以上、発明の実施の形態について、車輪用軸受装置1は、ハブ輪3の外周に一側ボール列5bの内側転走面3fが直接形成されている第3世代構造の車輪用軸受装置1として構成されているがこれに限定するものではなく、ハブ輪3に一対の内輪4が圧入固定された第2世代構造であっても良い。また、本発明は各実施形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
1 車輪用軸受装置
2 外輪
2e 車体取り付けフランジ
2b 他側開口部
3 ハブ輪
3a 小径段部
3c 車輪取り付けフランジ
4 内輪
4c 内周一側角部
4d 外周一側角部
5a 一側ボール列
5b 他側ボール列

Claims (3)

  1. 内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、
    一端部に車輪を取り付けるための車輪取り付けフランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されるハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪からなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、
    この内方部材と前記外方部材のそれぞれの転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、を備えた車輪用軸受装置において、
    圧縮残留応力が生じているレーザーピーニング処理部を、前記内輪の内周の角部と前記内輪の外周の角部とのうち少なくとも一つの角部に有し
    前記レーザーピーニング処理部の深さが前記車輪取り付けフランジとは反対側の端面において最大である車輪用軸受装置。
  2. 前記内輪の内周面と前記内輪の外周面とのうち少なくとも一方に前記レーザーピーニング処理部を有する請求項1に記載の車輪用軸受装置。
  3. 前記内輪にレーザーピーニング処理用のレーザーを1mm以下の間隔で照射する請求項1または請求項2に記載の車輪用軸受装置の製造方法。
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