JP2008178888A - 金属物体のレーザピーニング処理方法 - Google Patents

金属物体のレーザピーニング処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】金属製部品等の表面に残留圧縮応力を発生させるレーザピーニング処理において、被加工物表面付近の残留圧縮応力が十分に大きく、かつ、残留圧縮応力の分布領域を被加工物表面に厚く形成する方法を提供すること。
【解決手段】被加工材の表面にパルスレーザビームを集光、照射して得るビームスポットで該表面の被加工面を走査して、該表面に残留圧縮応力を発生させるレーザピーニング処理方法において、前記パルスレーザビームの重畳照射処理により圧縮応力の導入深さを確保した後に、前記重畳照射処理よりもパルスエネルギーを小さくしたレーザビームで第2回目の重畳照射処理を行なう。第1回目の重畳照射処理により、十分な残留圧縮応力の導入深さを得た後に、第2回目の重畳照射処理を行なうことで、内部に比べ低下している被加工材表面付近の残留圧縮応力を補強しさらに強化する。
【選択図】図6

Description

本発明は、金属物体の表面にレーザピーニング処理を施すことにより金属物体に残留圧縮応力を発生させて、金属物体の疲労強度を向上するのに好適な技術に関する。
一般に溶接構造物における溶接部及びその近傍は溶接後の熱収縮により引張残留応力が生じやすいと同時に、その形状が急峻な角度を有する切欠形状となりやすいことに起因して繰返し応力付加時に応力集中部となりやすい。また、冷間プレス成形などにより強い引張応力が付与される金属部品の塑性変形領域にも、同様に引張残留応力が生じる。特に、橋梁の橋桁、自動車の足回り部品などの溶接構造物、自動車ホイールなど成形部品などでは、繰り返し荷重を受ける環境下で使用されるため、引張残留応力が生じやすい溶接部や塑性変形部位が疲労亀裂の発生箇所となり、疲労特性を低下させる主要な原因となっている。
ピーニング処理は金属製部品や金属製構造物(まとめて金属物体または構造用部材と呼ぶ)の表面に衝撃力を印加することで残留圧縮応力を発生させる技術であり、疲労特性を改善させるための方法として、従来から、ショットピーニング、超音波ピーニング等の方法が知られている。ピーニング処理により、繰り返し荷重を受ける金属物体における疲労亀裂の発生および進展の防止(疲労強度の向上)や応力腐食割れの防止といった効果が得られる。
近年開発が進められているレーザピーニング法は、金属物体の表面へのパルスレーザビームの照射により発生するプラズマの膨張反力を利用して、金属物体に残留圧縮応力を付与する技術であり、例えば特許文献1にその方法が開示されている。また、参考文献1に開示されているように、原子炉の炉内構造物等の応力腐食割れの予防保全技術として実プラントへの適用も始まっている。レーザピーニング法は、従来のショットピーニング法と比較して、(1)残留圧縮応力の分布領域を被加工物表面に厚く形成できる、(2)加工に伴う表面の荒れが小さく抑えられる、等の特徴を持つため、より大きな疲労強度の向上が得られる。
特許第3373638号公報 日本原子力学会誌, Vol. 42, No. 6 (2000) pp.567-573
図7に、ピーニング処理により得られる被加工材表面からの深さに対する残留応力分布を模式的に示す(本願では残留応力が引張であるときに「+」の符号を、圧縮であるときに「−」の符号をつける)。レーザピーニング処理を金属物体(以下では被加工材とも呼ぶ)へ適用し疲労強度を向上させるためには、被加工材表面付近の残留圧縮応力を十分に大きく、すなわち図中σsを大きくする必要がある。また、残留圧縮応力の分布領域を被加工材表面に厚く形成するほど効果的である。すなわち図7中Dを大きくするほど効果が大きい。本願では、Dを残留応力が圧縮から引張へ変化する深さと定義し、以下残留圧縮応力の導入深さと呼ぶ。
レーザピーニング処理に関してこれまで行なわれてきた検討では、残留圧縮応力の導入深さを1mm程度まで拡大できるものの、表面付近の残留圧縮応力を十分に高めることができなかった。例えば、参考文献1に開示されたステンレス材への圧縮応力導入実験例では、表面からの深さ20〜30μmでは−700MPaの圧縮応力が導入されているが、被加工材表面での残留応力は-600MPaに留まっており、表面から深い位置に残留圧縮応力を持たせようとすると、表面での残留応力はむしろ低下する傾向にあった。
本発明は、金属物体の表面近傍に残留圧縮応力を発生させるレーザピーニング処理方法において、被加工材に残留圧縮応力の導入深さが大きく残留圧縮応力が深部でも大きくて、かつ、表面でも低下することのない強力で厚い残留圧縮応力分布領域を形成する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、レーザピーニング処理における被加工材表面へのパルスレーザビームの重畳照射方法を鋭意検討した結果、被加工材表面付近の残留圧縮応力が十分に大きく、かつ、残留圧縮応力の導入深さを十分に大きくできる本発明に至った。すなわち、本発明は、以下に示すものである。
本発明のレーザピーニング処理方法は、被加工材の表面にパルスレーザビームを集光、照射して得るビームスポットで該表面の被加工面を走査して、被加工材に残留圧縮応力を発生させるレーザピーニング処理方法において、前記パルスレーザビームを重畳照射しながら走査する第1の重畳照射処理を行なった後に、重畳照射処理加工材表面に対し第2の重畳照射処理を行ない、かつ、第1の重畳照射処理により被加工材内部に極大を有する残留圧縮応力分布領域を形成した後、第2の重畳照射処理におけるパルスレーザビームのエネルギーを前記第1の重畳照射処理におけるパルスエネルギー以下として第1の重畳照射処理表面付近の残留圧縮応力を向上することを特徴とする。
また、前記第2の重畳照射処理におけるパルスレーザビームのエネルギーは表面付近に極大を有する残留圧縮応力分布領域を形成するパルスエネルギーであることを特徴とする。
また、前記第1の重畳照射におけるレーザのパルスエネルギーが10mJ〜100Jであることを特徴とする。
また、前記第2の重畳照射におけるレーザのパルスエネルギーが0.1mJ以上であり、かつ、前記第1の重畳照射におけるレーザのパルスエネルギーの50%以下であることを特徴とする。
さらにまた、前記第1の重畳照射処理における平均重畳回数が2回以上であり、かつ、前記第2の重畳照射処理における平均重畳回数が4回以上であることを特徴とする。
本発明の方法では、金属物体に対するレーザピーニング処理において、レーザビームの照射スポットの重畳照射処理を2回に分けて行なう。第1回目の重畳照射処理により、十分な残留圧縮応力の導入深さを得た後に、第2回目の重畳照射処理を行なうことで、内部に比べ低下している被加工材表面付近の残留圧縮応力を補強しさらに強化する。したがって、寿命が長い金属物体を製造することが可能である。
本発明の本旨とするところをより詳らかとするため、以下、添付の図面に基づき詳細な説明を行なう。
まず、レーザピーニング処理に必要な条件を説明する。図1及び図2に、平面状の金属物体(被加工材)に対してレーザピーニング処理を施すための装置の一例を示す。図1は装置を上から見た平面図であり、図2は装置を横から見た立面図である。被加工材7は水槽5中に浸漬されている。レーザ光発振装置1から出射されたパルスレーザビーム2を集光レンズ3で集光し、水槽5に取り付けられた光学窓4を通して被加工材7の表面に照射する。ビームスポットの形状は円形や楕円形であることが多いが、矩形等の形状であっても良い。以下では、円形のビームスポットを例として説明する。
パルスレーザビームの被加工材7表面上でのピークパワー密度は1〜100TW/m程度が望ましい。このピークパワー密度を得るために、レーザ光発振装置1は、パルス時間幅が10ps〜100ns程度、パルスエネルギーが0.1mJ〜100J程度で間欠的に発振するパルスレーザを用いる。
上記の高いピークパワー密度をもつパルスレーザビームの照射により、照射スポットからプラズマが発生するが、被加工材7表面に接している水の慣性によってプラズマの膨張が抑えられるため、プラズマの圧力が高まり、その反力によってレーザビーム照射スポットの表面近傍に塑性変形を与えることが可能となる。この結果、被加工材7の表面に圧縮応力を付与することができる。
図1(平面図)及び図2(立面図)に示すようなレーザビームが水中を透過する距離が比較的長い装置では、レーザビームの波長は水中透過性が良い可視波長等が好ましい。このようなレーザ光発振装置1としては、例えばNd:YAGレーザの第2高調波(波長:532nm)が挙げられる。なお、処理は必ずしも水中で行なう必要は無く、水の噴流を加工面に吹き付ける、被加工材7の表面に水膜を形成する、およびアクリル板などのレーザ光を透過させる媒質を用いる等の方法を用いても、プラズマの膨張が抑えられてその圧力を高める効果が得られるため、被加工材7への残留圧縮応力の導入が可能である。被加工材7の表面に1mm程度以下の水膜を形成して処理を行なう場合は、1μm帯の近赤外波長を持つレーザビームを用いることもできる。
次に、図1(平面図)及び図2(立面図)に示す装置において、被加工材7の表面に順次パルスレーザビームを重畳照射するのに必要となるビームスポットの移動方法について説明する。被加工材7は、走査装置13の支持部8、9、11によって水槽5中に浸漬・保持されている。支持部9は、支持部11に取り付けられたガイド10に沿って図2(立面図)中に矢印で示す高さ方向Bに動くことができる。また支持部11は、走査装置13の基部上面に設けられたガイド12に沿って図1(平面図)中に矢印で示す横方向Aに動くことができる。これらの支持部8、9、11の動きにより、被加工材7の表面に照射されるパルスレーザビーム2のスポットをA、B両方向に二次元的に走査することができる。
図3に点線で示す矩形領域PQRSをレーザピーニング処理する場合を例に取り、パルスレーザビームの重畳照射方法を説明する。1回の重畳照射処理は、P点から始まりR点で終わるものとする。被加工材7の表面の線分PSの方向に直線的にビームスポットを走査して(以下、この走査方向をX方向とする)、かつ該X方向への走査を、該X方向と直交する方向(以下、Y方向)に位置をずらしながら複数回行なう。同じ走査領域(Li:i=1、2、・・・)内の隣接するビームスポットは互いに重なりあうように、ビームスポットを走査する。また、隣接する走査領域のビームスポットも互いに重なりあうように、処理を行なう。本願においては、被加工材7の処理すべき部分全部に対して、ビームスポットを重畳させて走査(重畳照射)する一連の処理を「1回の重畳照射処理」とする。本発明のレーザピーニング処理方法では、図3に示すようなパルスレーザビームの走査による一連の重畳照射処理を2回繰り返して行なう。
また本願においては、1個当たりのビームスポットの面積をS0としてN回のパルスレーザビームの照射によって面積S1の領域を重畳照射したとき、同一点に対するパルスレーザビームの照射回数の平均値を、S0×N/S1で定義し、照射領域における平均重畳回数と呼ぶ。
一般的に平均重畳回数を増加させるほど、残留圧縮応力の導入深さ(D)は大きくなり、また、被加工材7表面の残留圧縮応力(σs)は大きくなってゆくが、これらの効果は飽和する。Dやσsの飽和レベルは、鋼材の引張強度の他、後で説明するように、レーザビームのパルスエネルギー、ビーム径、パルス幅にも依存する。
ここでまず比較例として、上記重畳照射処理を1回行なう効果を実験で調べた結果について説明する。実験では、図3に示す重畳照射処理を1回行なうことで導入される残留圧縮応力を調べた。被加工材である試験片は引張強度が1000MPaの鋼材を用いて作成した。レーザピーニング処理には図1(平面図)及び図2(立面図)に示した装置を用い、水槽中に浸漬した試験片にレーザビームを照射した。レーザビームの発振装置は、Nd:YAGレーザまたはNd:YVO4レーザを用いた。いずれの装置においても、水中透過性の良い第二高調波(波長:532nm)を用いた。レーザビームは焦点距離100mmの凸レンズで集光した。試験片上でのビームスポットの形状は円形とした。なお以下で説明するスポット直径は、ビーム全体のパワーの86%が入る直径である。一般的に鋼材の引張強度が大きくなるほど、残留圧縮応力導入のために必要なピークパワー密度は大きくなる。本実験では引張強度1000MPaの鋼材に残留圧縮応力を導入するため、ピークパワー密度は40TW/mとした。
本実験の重畳照射処理では、処理域は5mm×10mmの矩形とした(図3中でPS=5mm, PQ=10mm)。平均重畳回数は25回に設定し、同一走査領域Li内の隣接するビームスポットの間隔と、隣接する走査領域(例えば図3中のL1とL2)の中心線間の距離が等しくなるように処理した。また走査領域の形成は図3において「L1→L2→L3→…」のように連続的に行なった。ここで説明した重畳照射処理法では、図3中Y方向が選択的に残留圧縮応力の導入が強化される。以下では、処理した試験片の中央部のY方向について、残留応力の深さ方向分布を測定した結果を示す。残留応力測定は、X線残留応力測定装置を用いて行なった。また深さ方向の応力分布の測定は、電解研磨により逐次鋼材を除去しながら行なった。
(条件1)
下記レーザビーム条件にて重畳照射処理を行なった。
・使用レーザ Nd:YAGレーザ
・パルスエネルギー 200mJ
・ビームスポット直径 0.8mmφ
・パルス時間幅 10ns
・パルス繰り返し周波数 30Hz
深さ方向に残留応力を測定した結果を図4に◆で示す。残留圧縮応力の導入深さは0.6mmとなった。なお、ここで残留圧縮応力の導入深さとは、前述の通り、残留応力が圧縮から引張へ変化する被加工材表面からの深さDで定義される(以下、同様)。これは従来のショットピーニング法で得られる深さ(0.3mm程度)よりも大きい。残留応力は、深さ30μmにおいて-783MPaとなり残留圧縮応力は最大となった。しかし、被加工材表面の残留応力は-656MPaにとどまっており、表面の残留応力を十分に強化できているとは言えない。
(条件2)
条件1よりパルスエネルギーを落として処理を行なった。ビームスポット径は条件1よりも小さくなっている。
・使用レーザ Nd:YAGレーザ
・パルスエネルギー 30mJ
・ビームスポット直径 0.3mmφ
・パルス時間幅 10ns
・パルス繰り返し周波数 30Hz
深さ方向に残留応力を測定した結果を図4に■で示す。被加工材表面の残留応力は-804MPaとなり残留圧縮応力を高めることができた。残留圧縮応力が最大となるのは、上記条件1と同様に深さ30μmにおいてであり、このとき残留応力は−842MPaである。しかしながら、残留圧縮応力の導入深さは0.4mm程度と条件1(0.6mm)よりも浅くなった。
(条件3)
さらにパルスエネルギーを落とした条件で処理を行なった。条件1、条件2よりもパルス幅を短くするため、処理にはNd:YVO4レーザを用いた。本条件では、条件1、条件2に比べ、ビームスポット径も小さくなっている。
・使用レーザ Nd:YVO4レーザ
・パルスエネルギー 2mJ
・ビームスポット直径 0.08mmφ
・パルス時間幅 1ns
・パルス繰り返し周波数 100Hz
深さ方向に残留応力を測定した結果を図4に△で示す。被加工材表面の残留応力は-985MPaとなり残留圧縮応力を高めることができた。しかしながら、残留圧縮応力の導入深さは0.2mm程度と条件2よりもさらに浅くなった。
残留圧縮応力の導入深さは、条件1、条件2、条件3の順に大きかった。これは、被加工材表面から投入されたレーザパルスエネルギーが3次元的に拡がって行くことを考慮すると、パルスエネルギーが大きくなるほど導入深さが大きくなるためである。
一方、条件1で表面の残留応力が十分に強化できないのは、パルスエネルギーが大きいために表面近傍の溶融の影響が大きいからである。パルスレーザビーム2のエネルギーに起因する熱とレーザビームの照射に伴って発生するプラズマからの熱により、照射スポット部の表層近傍が溶融し、該スポット部表層近傍の残留圧縮応力が減少する。この残留圧縮応力の減少量はパルスエネルギーが大きいほど大きくなる。
条件2及び条件3は条件1よりもパルスエネルギーが小さいために、表面の残留圧縮応力は条件1よりも大きくなるが、残留圧縮応力の導入深さは条件1よりも小さくなる。
以上の比較例で説明したように、1回の重畳照射処理では、表面の残留圧縮応力を十分に大きくすることと残留圧縮応力の導入深さを大きくすることを両立させることが困難であった。
一方、本発明の方法では、以上で説明した一連の処理であるレーザパルス重畳照射処理を2回行なう。前述のように、レーザピーニング処理においてはパルスエネルギーを0.1mJ〜100J程度とするが、本発明の方法では、第1回目の重畳照射処理と第2回目の重畳照射処理におけるパルスエネルギーの大きさを変え、1回目の処理により十分な残留圧縮応力の導入深さを確保し深部でも大きな残留圧縮応力を確保した後に、2回目の処理を行なうことで、被加工物表面付近で低下している残留圧縮応力を補強しさらに強化する。
1回目の重畳照射処理は、圧縮応力導入深さを大きくし深部でも大きな残留圧縮応力を確保することを目的とする。このためには、パルスエネルギーが大きいほど効果的である。したがって、処理に用いるレーザ装置で決まるパルスエネルギーの上限値付近で処理することが好ましい。前述の実験結果より、ショットピーニング法と同等以上の導入深さ(0.3mm以上)を得るためには、パルスエネルギーは10mJ以上必要であることが判る。また1回目の処理では、残留圧縮応力の導入深さを確保するために、平均重畳回数を2回以上とすることが効果的である。
2回目の処理は、表面の圧縮応力を大きくすることを目的とする。溶融の影響を小さくするために、1回目の処理よりもパルスエネルギーが小さい条件で処理を行なう。1回目の処理におけるパルスエネルギーよりも小さければ表面の圧縮応力を向上させる効果が得られるが、その効果を大きくするためには1回目の処理におけるパルスエネルギーの50%以下とすることが好ましい。また、平均重畳回数を大きくするほど溶融の影響が小さくなり、表面の圧縮応力が強化される。このため、2回目の処理では平均重畳回数を4回以上とすることが効果的である。
重畳照射処理を2回行なう本発明の効果を実際に実験で調査した結果を示す。なお実験は上記比較例で述べたのと同じ装置を用い、照射域、平均重畳回数等の重畳照射方法は前記重畳照射方法を用いた。1回目の処理で、図3に示すようにP点からR点まで重畳照射した後、レーザ条件を変え、2回目処理として再度P点から同様の重畳照射を行なった。以下では、処理した試験片の中央部のY方向について、残留応力の深さ方向分布を測定した結果を示す。
(条件1+条件2)
まず、1回目処理を上述の条件1で行なった後、2回目処理を同条件2で処理を行なった。残留応力の測定結果を図5に示す。図4の条件1に示す1回目処理のみの応力分布と比較すると、2回目処理を行なうことで表面の残留応力が−656MPa→−800MPaとなっており、被加工材の引張強度(1000MPa)に対して10%以上の改善効果が得られた。また、導入深さは1回目処理と同じ0.6mm程度が維持されている。
(条件1+条件3)
次に、1回目処理を同条件1で、2回目処理を同条件3で行なった。残留応力の測定結果を図6に示す。1回目処理のみと比較すると、導入深さを維持したまま表面の残留応力が−656MPa→−1000MPaとなっており、引張強度に対し34%の改善効果が得られた。条件1の1回目処理ではNd:YAGレーザを、条件3の2回目処理ではNd:YVO4レーザを用いたため、レーザ装置の切り替えが必要となったが、上述(条件1+条件2)の場合よりもさらに大きな効果が得られた。
以上の2例で示したように、本発明の方法によれば、被加工物表面付近の残留圧縮応力を十分に大きくし、かつ、残留圧縮応力の導入深さを大きくすることができる。この方法を用いれば、寿命が長い金属物体を製造することが可能である。
ところで、ここで用いた重畳照射処理では、図3中でレーザ送り方向であるY方向が選択的に強化される。一方向または限られた方向へ繰り返し荷重が作用する被加工材に対しては、その荷重によって発生する応力の最大主応力方向へ強力な圧縮応力を付与することが疲労強度の向上に効果的である。よって、そのような被加工材に対しては最大主応力方向をレーザの送り方向(図3中Y方向)とすることが好ましい。
本発明は,例えば金属物体の疲労強度を向上させるレーザピーニング処理において有用である。
本発明のレーザピーニング方法の実施の形態におけるレーザビーム照射装置の概略構成を示す平面図である。 本発明のレーザピーニング方法の実施の形態におけるレーザビーム照射装置の概略を示す立面図である。 本発明のレーザピーニング方法におけるビームスポットの走査を説明する図である。 一回の重畳照射処理を施したサンプルの残留応力分布を示すグラフである。 二回の重畳照射処理を施したサンプルの残留応力を示すグラフである(その1)。 二回の重畳照射処理を施したサンプルの残留応力を示すグラフである(その2)。 ピーニング処理により得られる残留応力分布を模式的に示すグラフである。
符号の説明
1…レーザ光発振装置
2…パルスレーザビーム
3…集光レンズ
4…光学窓
5…水槽
6…レーザビームを吸収する材料層
7…被加工材
8、9、11…支持部
10、12…ガイド
13…走査装置

Claims (5)

  1. パルスレーザビームを集光、照射して被加工材の表面にビームスポットを形成すると共に該表面上の隣接するビームスポットの一部が重畳するようにパルスレーザビームを走査して、被加工材に残留圧縮応力を発生させるレーザピーニング処理方法において、前記パルスレーザビームを重畳照射しながら走査する第1の重畳照射処理を行なった後に、該重畳照射処理加工材表面に対し第2の重畳照射処理を行ない、かつ、
    前記第1の重畳照射処理により被加工材内部に極大を有する残留圧縮応力分布領域を形成した後、前記第2の重畳照射処理におけるパルスレーザビームのエネルギーを前記第1の重畳照射処理におけるパルスエネルギー以下として前記第1の重畳照射処理表面付近の残留圧縮応力を向上することを特徴とするレーザピーニング処理方法。
  2. 前記第2の重畳照射処理におけるパルスレーザビームのエネルギーは被加工材表面付近に極大を有する残留圧縮応力分布領域を形成するパルスエネルギーであることを特徴とする請求項1に記載のレーザピーニング処理方法。
  3. 前記第1の重畳照射処理におけるレーザのパルスエネルギーが10mJ〜100Jであることを特徴とする請求項1または2に記載のレーザピーニング処理方法。
  4. 前記第2の重畳照射処理におけるレーザのパルスエネルギーが0.1mJ以上であり、かつ、前記第1の重畳照射処理におけるレーザのパルスエネルギーの50%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザピーニング処理方法。
  5. 前記第1の重畳照射処理における平均重畳回数が2回以上であり、かつ、前記第2の重畳照射処理における平均重畳回数が4回以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーザピーニング処理方法。
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