ところで,従来の光ファイバ保持具では,光ファイバの束の中から,特定の光ファイバのみを取り出すことや,その束の中に別の光ファイバを追加することが容易ではなかった。また,ラックや測定機器などの高さのある入出力端から光学定盤などへ光ファイバを導く場合には,光ファイバが空間中を通り,宙吊り状態となるため,光ファイバに身体の一部や衣服が引っ掛かり,それを原因として光ファイバの断線や,ラックの傾倒,測定機器の故障などの事故を惹き起こすおそれがあった。さらに,空間中に光ファイバが浮いた状態になると,空調等による風や周辺の振動の影響を受けて光ファイバが揺れることで,光ファイバ内を通る光の偏光状態が変化し,実験の妨げになるという問題が懸念される。特許文献1では,光ファイバの余長処理を行うためリール構造が提案されているが,柔軟かつ安定的に光ファイバを保持する構成や機能は有していない。
そこで,本発明は,光ファイバを容易に挿脱でき,しかも柔軟かつ安定的に保持することのできる光ファイバ保持具を提供することを目的とする。
本発明の発明者らは,上記従来技術の課題を解決する手段について鋭意検討した結果,上部に配線挿脱用の開口を持つ複数のユニットを連結して配線保持具を構成し,各ユニットの連結部を上下に折り曲げできるようにするとともに,各ユニットの側壁の間に間隙を設けることとした。このように,各ユニットの連結部を折り曲げ可能に構成することで,光ファイバ保持具を立体的に配置することが可能となるため,柔軟かつ安定的に光ファイバ束を保持できる。また,各ユニットの上部に設けられた開口からだけでなく,各ユニットの左右の側壁の間の間隙を通じて光ファイバの挿脱を行うことができる。そして,本発明らは,このような知見に基づけば従来技術の課題を解決できることに想到し,本発明を完成させた。具体的に説明すると,本発明は以下の構成を有する。
本発明は,光ファイバ収納用の複数のユニット10を備える光ファイバ保持具100に関する。なお,本発明は,公知の光ファイバを保持することが可能であり,光ファイバの種類は特に限定されない。光ファイバの外径の例は,φ0.08mm〜φ3.0mmである。ユニット10のそれぞれは,底面部11と,この底面部11の左右両側に立設された左右の側壁12,13を有する。隣接するユニット10の底面部11は,当該ユニット10同士の間を折り曲げることができるように連結部20を介して連結されている。連結部20は,ユニット10同士の間を上下に折り曲げることができるものであればよく,ユニット10同士を分離不能に連結していてもよいし,分離可能に連結していてもよい。連結部20は,例えば,隣接するユニット10の底面部11が一体になっておりその境界に溝が形成されたものであってもよいし,底面部11同士をゴムなどの可撓性材料で連結したものであってもよいし,ユニット10とは別の固定部材で連結したものであってもよいし,あるいは永久磁石や磁性を持つ金属の組み合わせによってユニット10の底面部11同士を磁力によって連結するものであってもよい。さらに,隣接するユニット10の側壁12,13の間には間隙30が形成されている。
上記構成のように,隣接するユニット10の側壁12,13の間に間隙30を設けることにより,各ユニット10の上部に設けられた開口だけでなく,この左右の間隙30を通じて,ユニット10内に光ファイバを挿脱することができる。これにより,光ファイバの挿脱を容易にすることができる。なお,「挿脱」とは,ユニット10内に光ファイバを挿入することや,ユニット10内から光ファイバを取り出すことの他に,ユニット10内の光ファイバ束に別の一又は複数の光ファイバを合流させることや,ユニット10内の光ファイバ束から一又は複数の光ファイバを分岐することを含む。さらに,各ユニット10が上下に折り曲げ可能な連結部20によって連結され,かつ,左右の側壁12,13の間に間隙30が形成されているため,例えば,各ユニット10を連結した光ファイバ保持具100を水平な床から垂直に立ち上げて床と壁を這うように固定することができる。また,複数の光ファイバ保持具100を立体的に交差させることも可能である。従来技術では光ファイバが宙吊り状態になりそれにより様々な問題が生じていたが,本発明の光ファイバ保持具100によればこれらの問題を一挙に解決できる。これにより,光ファイバなどの光ファイバを柔軟かつ安定的に保持することが可能である。
本発明の光ファイバ保持具において,ユニット10の少なくとも一つは,左右の側壁12,13の上端から当該ユニット10の内側に向かって延出した左右の上面部14,15をさらに有し,左右の上面部14,15の間に開口16が形成されていることが好ましい。このように,ユニット10の上部に光ファイバ挿脱用の開口16を設けつつ,この開口16の左右両脇に上面部14,15を形成することで,ユニット10内に挿入した光ファイバが開口16から不用意に離脱することを防止できる。
本発明の光ファイバ保持具において,ユニット10の少なくとも一つは,左右の上面部14,15の内端から開口16の内部に向かって突出した左右の突起部17,18を一又は複数箇所にさらに有することが好ましい。なお,左右の突起部17,18は,ゴムやシリコーンなどの可撓性材料で形成されていることが好ましく,また,光ファイバ保持具100の長手方向(前後方向)に沿って互い違いに配置されていることが好ましい。このように,上部の開口16の左右両脇に突起部17,18を設けておくことで,この突起部17,18によってユニット10内の光ファイバを押さえることができるため,これらの光ファイバが不用意に離脱することをさらに効果的に防止できる。
本発明の光ファイバ保持具において,左右の上面部14,15及び左右の突起部17,18は可撓性材料で形成されていることが好ましい。このように,少なくとも上面部14,15と突起部17,18を可撓性材料で形成しておくことで,開口16を通じて光ファイバを挿入したときに,上面部14,15と突起部17,18が弾性変形するため,光ファイバが断線しにくくなる。
本発明の光ファイバ保持具において,ユニット10の少なくとも一つは,底面部11に上方に向かって立ち上がる起立突起部19を一又は複数箇所にさらに有することが好ましい。特に,起立突起部19は,表面の摩擦によって光ファイバを捕捉できる素材(例えばシリコーンやゴムなど)で形成されていることが好ましい。底面部11に起立突起部19を設けておくことで,ユニット10内に挿入されている光ファイバが少ない又は細い場合のように,仮にユニット10の内壁と光ファイバの間に隙間が生じている場合であっても,ユニット10の内部で光ファイバの位置がずれたり姿勢が変動することを抑制できる。
本発明の光ファイバ保持具において,底面部11は,一又は複数の穴部11aを有することが好ましい。底面部11の穴部11aは,ネジ挿入用の穴や,あるいは永久磁石又は磁性金属のような固定具を収容するための穴として機能する。例えば,底面部11の穴部11aにネジを挿入して,光学定盤に光ファイバ保持具100の一部又は全部を固定することができる。
本発明の光ファイバ保持具において,底面部11は,固定具を収容するための一又は複数の窪み部11bを有することが好ましい。窪み部11bに収容可能な固定具の例は,永久磁石,磁性金属,フック,粘着テープ,及びファスニングテープなどである。このように,底面部11に固定具を取り付けることができるようにしておくことで,光ファイバ保持具の配置方法の自由度が高くなる。
本発明の光ファイバ保持具は,底面部11の穴部11aに収容可能な永久磁石60と,この永久磁石60に吸着する磁性金属70(例えば鉄板)をさらに備えることが好ましい。この場合,分離した2つのユニット10の永久磁石60に磁性金属70を吸着させることで,分離した2つのユニット10を連結させることができる。このように磁力を利用して2つのユニット10を連結可能にすることで,着脱や連結を自由に行うことができる。
本発明の光ファイバ保持具において,連結部20は,隣接するユニット10の底面部11を磁力によって連結するように構成されたものであってもよい。例えば,あるユニット10の端部に永久磁石を取り付け,別のユニット10の端部に極性の異なる永久磁石か磁性金属を取り付けておくことで,2つのユニット10を磁力によって連結できる。このようにすれば,光ファイバ保持具100を構成するユニット10の数を自由に増減させることができるため,より柔軟に光ファイバ保持具100の配置することができる。
本発明の光ファイバ保持具において,左右の側壁12,13は,連結部20において折り曲げたときに,互いに当接するストッパ部12a,13aを有することが好ましい。このように,所定角度で折り曲げたときに,左右の側壁12,13のストッパ部12a,13a同士が当接することで,その折り曲げ角度を規制することができる。これにより,光ファイバに大きな曲げ負荷が加わるのを防止でき,その断線及び伝送する光の過剰損失を回避できる。
本発明の光ファイバ保持具は,さらに,カーブ用ユニット40を備えていてもよい。カーブ用ユニット40は,ユニット10に連結されており,光ファイバ保持具の経路をカーブさせるための部材である。カーブ用ユニット40は,円弧状にカーブした形状の底面部41と,底面部41の左右両側に立設された左右の側壁42,43とを有する。また,左右の側壁42,43には切欠き部50が形成されている。このように,光ファイバ保持具100にカーブ用ユニット40を組み込むことで,光ファイバ保持具100の経路をカーブさせることができるため,例えば室内の隅にも光ファイバ保持具100を配置することができる。また,カーブ用ユニット40の側壁42,43にも切欠き部50を設けておくことで,この切欠き部50を通じて光ファイバを挿脱できる。
本発明によれば,光ファイバを容易に挿脱でき,しかも柔軟かつ安定的に保持することができる。
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
図1は,本発明の一実施形態に係る光ファイバの保持具100を示している。また,図2(a)は,保持具100を構成するユニット10を正面側から示しており,図2(b)は,ユニット10を平面側から示している。また,図3は,ユニット10を底面側から示している。図1から図3に示されるように,保持具100は,直線的に連結された複数のユニット10によって構成されている。各ユニット10には,一本又は複数本光ファイバを挿入することができる。は,各ユニット10によって少なくとも下側と左右両側を覆われることによって,各ユニット10の内部に保持される。
本発明において,保持具100によって保持可能な光ファイバの種類は特に制限されず,公知の光ファイバを保持することができる。例えば,保持具100は,直径3mmの光ファイバを10本程度(例えば8〜15本)同時に保持することができるように設計するとよい。
図1に示されるように,複数のユニット10は,一方向に直線的に連結されている。このため,あるユニット10の前後には,1つずつ他のユニット10が隣接していることとなる。各ユニット10は,合成ゴムや合成樹脂などの可撓性材料で形成されていることが好ましい。合成ゴムの例は,シリコーンゴム,ウレタンゴム,エチレンプロピレンゴム,及びフッ素ゴムであり,合成樹脂の例は,ポリエチレン,ポリプロピレン,及びポリ塩化ビニルである。各ユニット10は,すべて同じ材料で形成されていることが好ましいが,別の材料で形成することもできる。ユニット10を形成する可撓性材料は,例えばショア硬度が60〜80のものを利用することが特に好ましい。可撓性材料が硬いと保持性は高まるが,保持具自体が変形しないため光ファイバの挿脱時にファイバにストレスを与えてしまう。反対に,可撓性が柔らかすぎると光ファイバ挿入時に光ファイバの引っ張り応力等で変形してしまい保持できず抜け出てしまう。それら相反する特性を満たす適度な高度として,ショア硬度60〜80,特にショア硬度70を選択することができる。
各ユニット10は,底面部11と,この底面部11の左右両側に立設された左右の側壁12,13(左側壁12,右側壁13)とを有しており,左右の側壁12,13は互いに対向している。このため,各ユニット10は,断面略U次字状に構成される。より詳しく説明すると,各ユニット10は,左右の側壁12,13の上端から当該ユニット10の内側に向かって延出した左右の上面部14,15(左上面部14,右上面部15)を有しており,左右の上面部14,15の間に開口16が形成されている。この上部に設けられた開口16を介して,光ファイバを挿入したり離脱したりすることができる。光ファイバの挿脱を容易にするために,例えば,開口16の幅(すなわち左右の上面部14,15の間の間隔)は,3〜30mm又は5〜15mmとすることが好ましい。
また,図2(a)に示されるように,各ユニット10は,底面部11,左右の側壁12,13,及び左右の上面部14,15によって囲われた収容空間を持つ。この収容空間には,例えば直径3mmの光ファイバを10本程度収容することができる。例えば,収容空間の幅(左右の側壁12,13の内面間の距離)は,15〜25mm又は18〜23mmとすればよい。また,収容空間の高さ(底面部11と上面部14,15の内面間の距離)は,5〜15mm又は8〜13mmとすればよい。また,図2(a)に示されるように,収容空間の角にはR加工が施されていることが好ましい。角部のRは,例えばR=3〜10mm程度が好ましい。このように角部にR加工を施すことで,直径3mm程度の一般的な光ファイバを効果的に保護できる。
また,各ユニットの左右の側壁12,13は,底面部11に対して垂直に起立する平面を持つことが好ましい。このように側壁12,13を平面にすることで,保持具100を横倒しに配置することも可能となる。また,保持具100を横倒しにしても,左右の上面部14,15が光ファイバ全体を包み込むように保持するため,開口16から光ファイバが抜け出ることを防止できる。
また,各ユニット10の底面部11は,ある程度の厚みを持つことが好ましい。例えば,底面部11の厚みは,3〜20mm,5〜18mm以上,又は6.5〜15であることが好ましい。このように,底面部11に一定以上(好ましくは5mm以上)の厚みを持たせることで,保持具100に歪みや捻れが生じにくくなり,光ファイバを安定的に保持できる。また,後述するように,底面部11に設けられた穴部11aには,ネジや永久磁石を挿入することができるが,底面部11が一定以上の厚みを持たない場合,穴部11aに差し込まれたネジや永久磁石が光ファイバの収容空間に突出するという懸念がある。この場合,収容空間に突出したネジ等が光ファイバを傷つける恐れもある。そこで,底面部11が一定以上の厚みを持たせることで,穴部11aの内部にネジや永久磁石が十分に収まるようにすることが好ましい。
図1から図3に示されるように,ユニット10の左右の上面部14,15には,その内端から開口16の内部に向かって突出した左右の突起部17,18(左突起部17,右突起部18)が複数箇所に設けられている。左上面部14に設けられた左突起部17と右上面部15に設けられた右突起部18は,各ユニット10の連結方向(前後方向)に沿って互い違いに配置されており,互いに干渉しない様になっている。このように,開口16の左右両側に複数の突起部17,18を設けることで,ユニット10の内部に収容されている光ファイバを押さえることができ,この開口16から光ファイバが不用意に飛び出るのを防止できる。また,開口16の幅をWとした場合に,各突起部17,18の突出長さは,例えば1/2W以上,W以下であることが好ましい。このように,各突起部17,18を開口16の幅の半分を超えて突出させることで,より安定的に光ファイバをユニット10の内部に保持しておくことができる。また,各突起部17,18は,ユニット10を構成する材料と同様に一定の弾性を持つ可撓性材料で形成されていることが好ましい。突起部17,18が弾性を持つことで,ユニット10の内部に光ファイバを挿脱しやすくなる。
各ユニット10の底面部11の内面側には,上方に向かって立ち上がる複数の起立突起部19が設けられている。起立突起部19は,各ユニット10に1つずつ設けられていてもよいが,少なくとも2つずつ以上設けられていることが好ましい。図1及び図2(a)に示した例では,各ユニット10は,3つの起立突起部19を有する。図2(a)に示されるように,3つの起立突起部19をそれぞれ左起立突起部19L,中央起立突起部19C,及び右起立突起部19Rとした場合に,これらの起立突起部19L,19C,19Rは,保持具100の幅方向(ユニット10の連結方向と直交する方向)にずれた位置に設けられていることが好ましい。また,3つの起立突起部19L,19C,19Rは,ユニット10の連結方向においてもずれた位置に設けられていることが好ましい。すなわち,複数の起立突起部19は,互いに前後及び左右にずれた位置に設けられていることとなる。このように,底面部11に起立突起部19を設けておくことで,ユニット10内に挿入されている光ファイバが少ない又は細い場合のように,仮にユニット10の内壁と光ファイバの間に隙間が生じている場合であっても,ユニット10の内部で光ファイバの位置がずれたり姿勢が変動することを抑制できる。
また,起立突起部19をゴムやシリコーンなどの素材で形成することで,その表面部に一定の摩擦力が発生する。特に,起立突起部19は,光ファイバを補足できる程度の摩擦係数を持つ素材で形成されていることが好ましい。起立突起部19によって,ユニット19内に収容された光ファイバを補足できるようにすることで,例えばユニット10内に挿入する光ファイバの数が1本であるか或いは少ない場合であっても,その収容空間内で光ファイバに位置ズレやヨレが発生することを防止できる。また,起立突起部19は,突起部17,18と同様に,弾性を持つ可撓性材料で形成することが好ましい。
また,各ユニット10の内部空間の高さ(底面部11の内面から突起部17,18の内面までの距離)をHとした場合に,各起立突起部19の突出高さは,例えば1/4H以上,1/2H以下であることが好ましい。このように,ユニット10に収容された光ファイバの姿勢を安定化させるためには,起立突起部19の突出高さを1/4H以上することが好ましい。他方で,起立突起部19の突出高さが1/2Hを超えると,却ってユニット10の内部に光ファイバを挿入しにくくなる。このため,起立突起部19の突出高さは1/4H〜1/2Hが適切である。
図1や図2(a)に示されるように,ユニット10の底面部11には,厚み方向に貫通した穴部11aが形成されている。この穴部11aには,ネジやピンなどの固定具を挿入することができるようになっている。例えば,穴部11aにネジを挿入することで,ユニット10を光学定盤や床,壁などに自由に固定することができる。また,穴部11aには,永久磁石や,鉄又はコバルトなどの磁性を持つ金属を嵌合させることもできる。穴部11aに永久磁石を嵌合させておけば,鉄板などの金属板にユニット10を取り付けることができるし,穴部11aに金属を嵌合させておけば,マグネット板などにユニット10を取り付けることができる。
また,ユニット10の底面部11の外面には,永久磁石や磁性金属などの固定具を収容するための窪み部11bが設けられていてもよい。前述した穴部11aと同様に,底面部11の窪み部11bに固定具を収容しておくことで,様々な場所にユニット10を取り付けることができるため,保持具100の配置の自由度が高まる。なお,窪み部11bには,接着剤や粘着テープ等によって固定具を取り付けてもよいし,固定具を保持するための溝が設けられていてもよい。
本発明の保持具100において,前後に隣接するユニット10は,互いに連結部20を介して連結されている。図4は,連結部20によるユニット10同士の連結状態を示している。図4に示されるように,連結部20は,ユニット10の間を同士の間を上下に折り曲げることができるように,隣接する2つのユニット10の底面部11を連結している。図4に示した例では,連結部20は,2つのユニット10の底面部11の境界線上に形成された上スリット21及び下スリット22により構成されており,これらのスリット21,22に沿ってユニット10の間を上下に折り曲げることが可能となっている。すなわち,ユニット10同士の境界線上において,上スリット21は底面部11の上面側に形成され,下スリット22は底面部11の下面側に形成されている。これらのスリット21,22は,保持具100の幅方向(ユニット10の連結方向と直交する方向)に延びる直線状の溝である。このように,2つのユニットの境界線上において,底面部11の上下にスリット21,22を形成することで,各ユニット10の間において保持具100を上下に折り曲げることができるようになる。このような構成をとることにより,この保持具100を立体的に配置することができる。例えば,保持具100を水平な床から垂直に立ち上げて床と壁を這うように固定することも可能である。これにより,本発明の保持具100を利用すれば,が宙吊りとなって不安定に浮いているような状態を解消できる。
また,隣接するユニット10は,連結部20において切離し可能であることが好ましい。すなわち,図4に示した実施形態では,各ユニット10の連結部20は,底面部11に形成された上下のスリット21,22により構成されているため,この連結部20において底面部11の厚みは他の部分と比べて薄くなっている。例えば,連結部20における底面部11の厚みは,1〜5mm又は2〜4mmであることが好ましい。この程度の厚みであれば,カッターや鋏を利用して連結部20を切断することで,隣接するユニット10を切り離すことが可能となる。特に,ユニット10がゴムやシリコーンなどの可撓性部材で形成されていれば,連結部20の切断はより容易になる。このように,ユニット10を自由に切り離すことできるようにしておくことで,保持具100の長さ調節などが容易になり,保持具100を設置する自由度が向上する。
なお,図面に示した実施形態では,連結部20の一例として,各ユニット10の底面部11が一体的に成型されており,底面部11同士の境界にスリット21が形成されている構成を採用しているが,連結部20はこれに限定されない。例えば,連結部20はゴムやシリコーンなどの可撓性材料で形成されており,ユニット10同士の間を可撓性材料の弾性によって折り曲げることできるようになっていてもよい。また,ユニット10が別個独立して,各ユニット10同士の間を別の固定部材(連結部20)を利用して,折り曲げ可能に連結してもよい。この場合,ユニット10は分離可能なものとすることができる。さらに,連結部20は,各ユニット10の底面部11を磁力によって分離可能に連結するものであってもよい。この場合,例えば,各ユニット10の一端部に第1の磁性物を設け,他端部にこの第1の磁性物に吸着する第2の磁性物を設けることとしてもよい。磁性物の例は,永久磁石やこれに吸着する磁性金属である。このように,各ユニット10を磁力によって連結することで,保持具100を構成するユニット10の数を容易に増減させることができる。
また,図4においては,連結部20が設けられた部分の側面を一部拡大して示している。図4の拡大図に示されるように,各ユニット10の左右の側壁12,13は,その前後の先端部分に,ユニット10同士の間を連結部20において所定角度θで上下に折り曲げたときに互いに当接するストッパ部12a,13a(左ストッパ部12a,右ストッパ部13a)が設けられている。図4に示された実施形態において,各ストッパ部12a,13aは,左右の側壁12,13から部分的に突出した部位となっている。各ストッパ部12a,13aが存在することで,ユニット10同士の間を所定角度θを超えて折り曲げることが出来ないか,あるいは困難になる。ここにいう所定角度θの例は,20〜90度,25〜60度,又は30〜40度であり,ユニット10内に収納する光ファイバの特性に応じて適宜調整すればよい。すなわち,光ファイバの種類によっては折り曲げに弱いものが存在し,所定角度θを超えて折り曲げてしまうと断線や導光状態に異常が生じるなどの問題が発生するおそれがある。例えば光ファイバの最小曲げ半径がR=30mm以下にならないように,保持具100の曲げ角度θが規制されていることが好ましい。そこで,このようなストッパ部12a,13aによって曲げ角度を規制することで,このような問題が発生するのを防止できる。
図1及び図4に示されるように,隣接するユニット10の左右の側壁12,13の間には,間隙30が形成されている。間隙30は,左右の側壁12,13の間に設けられた隙間である。間隙30は,上記したユニット10同士の間の連結部20の左右両側に形成されていることとなる。間隙30の幅は特に制限されないが,連結部20においてユニット10の間を少なくとも上記の角度θで上下に折り曲げたときに,ユニット10の左右の側壁12,13が干渉しないように,間隙30の幅が調整されていることが好ましい。間隙30の幅(隣接するユニット10の側壁間の距離)は,ある程度自由に設計することができるが,例えば5mm〜20mm,又は10〜15mm程度とすることが好ましい。
隣接するユニット10の側壁12,13の間に間隙30を設けることで,上部の開口46だけでなく,この間隙30からも,ユニット10の内部に光ファイバを挿脱することができる。このため,ユニット10の内部に光ファイバを挿入したり,ユニット10の内部から特定の光ファイバを取り出したり,ユニット10の内部の光ファイバ束に別の光ファイバを合流させたり,あるいはユニット10の内部の光ファイバ束から特定の光ファイバを分岐させたりすることが容易になり,光ファイバを柔軟に配置することができる。また,連結部20の左右両側に間隙30を設けておくことで,保持具100の折り曲げが容易になる。
また,図2(b)に示されるように,側壁12,13及び上面部14,15の間隙30に対面する端面(すなわち,側壁及び上面部の前後方向の端面)は,ユニット10の内側に向かって傾斜したテーパー状の斜面になっている。このため,光ファイバの動線が図2(b)示した点線のように,光ファイバが間隙30から挿脱される場合であっても,光ファイバが側壁12,13や上面部14,15の端面に接触しにくくなる。例えば光ファイバが直角に形成された側壁12,13の端面に接触する場合,光ファイバに断線が生じる恐れがあるが,図2(b)に示した例のように,側壁12,13の端面にテーパーを付けることで,このような事態を回避できる。
また,図示は省略するが,2つの保持具100を磁力によって着脱自在に連結できるように構成することもできる。具体的に説明すると,ある保持具100の一端部に第1の磁性物を設けて,その他端部に第1の磁性物に吸着する第2の磁性物を設けることとすればよい。磁性物の例は,永久磁石やこれに吸着する磁性金属である。これにより,保持具100を2つ並べて配置する場合に,2つの保持具が磁力によって吸着されるため,容易に両者を連結することが可能となる。
図5は,カーブ用ユニット40の一例を示している。図1から図4に例示したユニット10は直線状であり,基本的には光ファイバを直線的に導く用途で利用されるが,図5に示したカーブ用ユニット40は,光ファイバの経路をカーブさせる用途で利用される。カーブ用ユニット40は,オプションパーツであり,保持具100に組み入れるか否かは任意である。
カーブ用ユニット40は,図5に示されるように2つの直線用ユニット10の間に連結することができる。あるいは,カーブ用ユニット40は,保持具100の端部に位置する直線用ユニット10に連結することもできる。さらに,2つのカーブ用ユニット40を直接連結することも可能である。カーブ用ユニット40は,底面部41が円弧状にカーブした形状を呈しており,この点において直線用ユニット10とは異なる。他方で,カーブ用ユニット40は,直線用ユニット10と同様に,底面部41の左右両側に立設された左右の側壁42,43と,左右の側壁42,43の上端から当該ユニット40の内側に向かって延出した左右の上面部44,45とを有し,これら左右の上面部44,45の間に開口46が形成されている。また,カーブ用ユニット40は,左右の上面部44,45の内端から開口46)の内部に向かって突出した左右の突起部47,48)を一又は複数箇所に有する点,及び,底面部41に上方に向かって立ち上がる起立突起部49を一又は複数箇所に有する点においても,直線用ユニット10と同様である。
また,カーブ用ユニット40は,左右の側壁42,43のそれぞれに切欠き部50が形成されている。この切欠き部50において,左右の側壁42,43は部分的に不連続となる。このため,この切欠き部50を通じて,カーブ用ユニット40の内部に光ファイバを挿脱することができる。なお,カーブ用ユニット40の切欠き部50は,前述した直線用ユニット10の間隙30と略同様の効果を持つ。
カーブ用ユニット40は,直線用ユニット10(又は別のカーブ用ユニット40)と折り曲げ可能に連結されていてもよいし,折り曲げ不能に連結されていてもよい。図5に示した例では,カーブ用ユニット40と直線用ユニット10とが折り曲げ不能に連結されている。また,カーブ用ユニット40は,直線用ユニット10(又は別のカーブ用ユニット40)に対して,着脱可能に連結されていてもよいし,着脱不能に連結されていてもよい。カーブ用ユニット40と直線用ユニット10と着脱可能に連結する際には,両者の連結部として別の固定具を用いるか,あるいは両者を磁力によって連結できるように構成すればよい。
図6は,永久磁石60と磁性金属70(例えば鉄板)を利用して,2つの別の保持具100を連結する例を示している。図6に示されるように,2つの保持具100を連結する際には,各保持具100の端部に位置するユニット10の穴部11aに永久磁石60をそれぞれ収容しておく。そして,各ユニット10を連結するための連結具として,鉄板などの磁性金属70を利用する。磁性金属70は,2つのユニット10内に収容された磁性金属60に吸着するため,この磁性金属70を介して,2つのユニット10が連結される。磁性金属70は,薄い板状であることが好ましい。このようにすれば,保持具100を極めて容易に連結したり分離したりすることが可能となり,また保持具100の連結数も自由に調整することができる。
図7及び図8は,複数の保持具100を光学定盤上に配置した例を示している。図7に示されるように,直線用ユニット10の間隙30やカーブ用ユニット40の切欠き部50を利用すれば,配線保持具100に収容されている配線を交差させることもできる。また,このように配線を交差させても,複数の配線が互いに絡み合うことがないため,配線を整理する際に有益である。また,図8に示されるように,配線保持具100の連結部20を利用して,直線用ユニット10の間において部分的に上下に折り曲げることで,複数の配線保持具100を立体的に交差させることもできる。さらに,各ユニット10に保持されている配線束の中から特定の配線を分岐させたり合流させたりすることも容易に行うことができる。
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。