JP6893801B2 - 保水性ポーラスコンクリート及び耐熱構造物 - Google Patents
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Description
このため、これらの熱源の周辺の構造物に用いられるコンクリート等の水硬性組成物には、優れた耐熱性が求められている。
耐熱性に優れた水硬性組成物として、特許文献1には、ポルトランドセメント、フライアッシュ、火成岩からなる細骨材、火成岩からなる粗骨材、ポリプロピレン繊維、水、及び、減水剤を含むことを特徴とする水硬性組成物が記載されている。
一方、大きな透水性と、一定以上の強度を有するポーラスコンクリートとして、特許文献2には、セメント及び必要に応じて添加されるその他の材料からなる粉体と、該粉体に対する重量比が0〜300%となるような粒径が5mm未満の細骨材と、該粉体に対する重量比が8〜30%の水と、該粉体に対する重量比が1〜5%の界面活性剤とからなる未固化状態のペーストを、粗骨材100%に対してその容積比が30〜50%となるように、粒径が5mm以上の粗骨材に被覆させてなる粒体を用い、該粒体を相互に付着させて硬化したものからなり、透水係数が1.7cm/sec以上、圧縮強度が120kgf/cm2 以上であることを特徴とするポーラスコンクリートが記載されている。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[7]を提供するものである。
[1] ポルトランドセメント、フライアッシュ、火成岩からなる細骨材、火成岩からなる粗骨材、水、及び、セメント分散剤を含む混合物からなるポーラスコンクリート本体、並びに、上記ポーラスコンクリート本体の連続空隙内に存在する保水性セメントミルクを含むことを特徴とする保水性ポーラスコンクリート。
[2] 上記細骨材は、最大粒度が2.5mm未満の骨材であり、上記粗骨材は、2.5mm以上の粒度を有する骨材であって、かつ、5〜15mmの粒度範囲内の骨材の割合が50質量%以上である粒度分布を有する骨材であり、上記ポルトランドセメント100質量部に対して、上記フライアッシュの量が10〜80質量部、上記細骨材の量が40〜110質量部、上記水の量が35〜45質量部、上記セメント分散剤の量が0.5〜3.0質量部であり、上記粗骨材100体積%に対する上記粗骨材以外の材料からなるモルタルの容積比が、25〜50%であり、空隙率が25〜35体積%である、前記[1]に記載の保水性ポーラスコンクリート。
[3] 保水量が0.1g/cm3以上である前記[1]又は[2]に記載の保水性ポーラスコンクリート。
[4] 上記細骨材及び上記粗骨材を構成する各火成岩が、玄武岩または安山岩である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の保水性ポーラスコンクリート。
[5] 上記保水性セメントミルクが、セメント、水、並びに、パーライト及び軽量気泡コンクリートからなる群より選ばれる1種以上からなる保水材を含む前記[1]〜[4]のいずれかに記載の保水性ポーラスコンクリート。
[7] 前記[1]〜[5]のいずれかに記載の保水性ポーラスコンクリートを製造するための方法であって、上記ポーラスコンクリート本体を構成する各材料を混練して、上記粗骨材に、粗骨材以外の材料からなるモルタルを被覆させてなる未硬化の粒体を得る混練工程と、上記未硬化の粒体に振動を加えて、上記未硬化の粒体を相互に付着させて、未硬化のポーラスコンクリート本体を得る振動工程と、上記未硬化のポーラスコンクリート本体を養生して、硬化したポーラスコンクリート本体を得る養生工程と、上記硬化したポーラスコンクリート本体の連続空隙内に上記保水性セメントミルクを充填させて、上記保水性ポーラスコンクリートを得る充填工程、を含むことを特徴とする保水性ポーラスコンクリートの製造方法。
以下、各原料について詳しく説明する。
本発明において、ポルトランドセメント100質量部に対するフライアッシュの量は、好ましくは10〜80質量部、より好ましくは25〜70質量部、特に好ましくは40〜60質量部である。該量が10質量部以上であれば、保水性ポーラスコンクリートの耐熱性がより向上する。また、保水性ポーラスコンクリートのアルカリ骨材反応が起こりにくくなる。該量が80質量部以下であれば、強度発現性が向上する。
火成岩としては、例えば、玄武岩、安山岩、流紋岩、斑レイ岩、閃緑岩、及び花崗岩等が挙げられる。中でも、保水性ポーラスコンクリートの耐熱性の観点から、玄武岩または安山岩が好ましく、玄武岩がより好ましい。
本発明において、ポルトランドセメント100質量部に対する細骨材の量は、好ましくは40〜110質量部、より好ましくは50〜100質量部、特に好ましくは60〜90質量部である。該量が上記数値範囲内であれば、ポーラスコンクリート本体の硬化前の施工性、並びに、保水性ポーラスコンクリートの耐熱性及び強度が向上する。
なお、本明細書中、「粒度」とは、ふるいの目開き寸法に対応する大きさを意味する。
本発明において、ポルトランドセメント100質量部に対する粗骨材の量は、特に限定されるものではなく、粗骨材100体積%に対する粗骨材以外の材料からなるモルタルの容積比が25〜50%(後述)となる量であればよいが、好ましくは500〜1,500質量部、より好ましくは600〜1,300質量部、特に好ましくは700〜1,200質量部である。該量が上記数値範囲内であれば、ポーラスコンクリート本体の硬化前の施工性、並びに、保水性ポーラスコンクリートの耐熱性及び強度がより向上する。
本発明において、ポルトランドセメント100質量部に対する水の量は、好ましくは35〜45質量部、より好ましくは36〜44質量部、特に好ましくは37〜43質量部である。該量が35質量部以上であれば、ポーラスコンクリートの混練時の作業性がより向上する。該量が45質量部以下であれば、強度発現性がより向上する。また、粗骨材以外の材料からなるモルタルの量が、保水性ポーラスコンクリート上部において不足するため、該上部の強度が低下する。
また、水の量と、ポルトランドセメントとフライアッシュの合計量の質量比(水/(ポルトランドセメント+フライアッシュ)の質量比)は、好ましくは0.10〜0.40、より好ましくは0.15〜0.35、特に好ましくは0.20〜0.30である。該比が0.10以上であれば、ポーラスコンクリートの混練時の作業性がより向上する。該比が0.40以下であれば、強度発現性がより向上する。
本発明において、ポルトランドセメント100質量部に対するセメント分散剤(通常、液状)の量は、好ましくは0.5〜3.0質量部、より好ましくは1.0〜2.8質量部、特に好ましくは1.5〜2.5質量部である。該量が0.5質量部以上であれば、減水性能がより向上し、ポーラスコンクリートの混練時及び打設時の作業性がより向上する。該量が3.0質量部以下であれば、強度発現性がより向上する。
本明細書中、「空隙率」とは、ポーラスコンクリート本体の体積に占める連続空隙の割合をいう。また、「連続空隙」とは、ポーラスコンクリート本体の表面から内部にまで連続的に形成されている空隙を意味する。本発明の保水性ポーラスコンクリートは、多数の連続空隙を有しているポーラスコンクリート本体を含むものであり、ポーラスコンクリート本体の連続空隙内に保水性セメントミルクを蓄えることで、耐熱性が向上したものである。
空隙率は、硬化したポーラスコンクリート本体について、公益社団法人日本コンクリート工学協会「ポーラスコンクリートの設計・施工法の確立に関する研究委員会」報告書(2003.5)の「ポーラスコンクリートの空隙率試験方法(案)」に準拠して測定することができる。
なお、ポーラスコンクリートの表面から連続的に形成されておらず、保水性セメントミルクが浸入できない空洞(独立空隙)は、上記空隙率には含まれないものとする。
保水量は、円柱状の供試体(例えば、φ10×20cmの供試体)の湿潤質量(Wt)と乾燥質量(Wd)を測定し、下記式(1)を用いて算出することができる。
保水量(g/cm3)=(Wt−Wd)/(供試体の直径×高さ) ・・・(1)
ここで、湿潤質量(Wt)とは、供試体を、20℃の条件下で24時間水中に浸漬させた後、供試体の表面に付着した水滴を除去した状態で測定された供試体の質量をいう。乾燥質量(Wd)とは、湿潤質量(Wt)の測定後に、供試体を60℃の条件下で24時間乾燥させて得られる供試体の質量をいう。
セメントとしては、上述した各種ポルトランドセメントや、エコセメント等を使用することができる。
保水性セメントミルクにおける、水とセメントの質量比(水/セメント)は、好ましくは1.0〜4.0、より好ましくは1.5〜3.0、特に好ましくは2.0〜2.5である。該質量比が1.0以上であれば、ポーラスコンクリート本体の連続空隙内に、保水性セメントミルクを充填することがより容易になる。該質量比が4.0以下であれば、充填した保水性セメントミルクがポーラスコンクリート本体の連続空隙内から流出しにくくなる。
セメント分散剤としては、上述したセメント分散剤と同様のものを使用することができる。
保水性セメントミルクにおいて、セメント100質量部に対するセメント分散剤(通常、液状)の量は、好ましくは0.1〜2.0質量部、より好ましくは0.15〜1.0質量部、特に好ましくは0.2〜0.5質量部である。該量が0.1質量部以上であれば、保水性セメントミルクを充填する作業性が向上する。該量が3.0質量部以下であれば、過剰な使用によるコストの上昇を抑えることができる。
保水性セメントミルクの製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、各材料を一括してミキサに投入して混練する方法等が挙げられる。
また、各材料の混練方法は、特に限定されるものではなく、例えば、水とセメント分散剤以外の材料をミキサ内に一括して投入して空練りし、次いで、水とセメント分散剤を添加して混練してもよく、各材料を一括してミキサに投入して混練してもよい。混練によって、粗骨材の表面部分が、該粗骨材以外の材料からなるモルタルによって被覆された未硬化の粒体を得ることができる。
振動工程において、モルタルを被覆させてなる未硬化の粒体に振動を加えることで、未硬化の粒体が相互に付着し、未硬化のポーラスコンクリート本体を得ることができる。
充填工程において、保水性セメントミルクを充填させる方法としては、例えば、以下の(a)〜(c)の方法が挙げられる。
(a)保水性セメントミルクを、型枠内の硬化したポーラスコンクリート本体の上面から連続空隙内に、振動を付与しつつ流し込む方法(b)保水性セメントミルクを、型枠内の硬化したポーラスコンクリート本体の上面から連続空隙内に流し込む方法(c)保水性セメントミルクの中に、脱型したポーラスコンクリート本体を沈降させる方法
使用材料は、以下に示すとおりである。
[使用材料]
(1)普通ポルトランドセメント:太平洋セメント社製(比重:3.16)
(2)フライアッシュ:フライアッシュI種(ブレーン比表面積:3,840cm2/g、比重:2.3)
(3)細骨材:玄武岩砕砂(比重:2.7;最大粒度:2.5mm未満)
(4)保水材A:パーライト廃材粉体(ブレーン比表面積:17,970cm2/g)
(5)保水材B:軽量気泡コンクリート(ALC)廃材粉体(ブレーン比表面積:2,020cm2/g)
(6)粗骨材A:玄武岩砕石6号(比重2.7、粒度5〜13mmの粒度範囲内の骨材の割合が95質量%以上のもの)
(7)粗骨材B:玄武岩砕石2005(比重2.7、粒度5〜15mmの粒度範囲内の骨材の割合が70質量%のもの)
(8)高性能AE減水剤(表1中、「減水剤」と示す。):マスターグレニウムSP8SV(BASFジャパン社製)
(9)高性能減水剤:マイティ100(花王社製)
(10)水:上水道水
普通ポルトランドセメント、フライアッシュ、細骨材、及び粗骨材Aを、強制練りミキサ水平2軸形に投入し、15秒間空練りを行った後、水及び高性能AE減水剤を投入して2分間混練を行った。
上記各材料の配合を表1に示す。また、粗骨材100体積%に対する粗骨材以外の材料(普通ポルトランドセメント、フライアッシュ、細骨材、水及び高性能AE減水剤)からなるモルタルの容積比を表1に示す。
混練後、得られたポーラスコンクリートをφ10×20cmの型枠に投入し、3,000rpmのバイブレーターを用いて振動締め固めを行った後、20℃の環境下で7日間静置した。
作製した保水性セメントミルクAを、型枠内のポーラスコンクリートの上面から流し込み、ポーラスコンクリートの連続空隙内に充填させた。24時間後、脱型し、20℃で28日間水中養生し、供試体を得た。
得られた供試体に対して、以下の(a)〜(c)に記載された試験を行った。
得られた供試体を、20℃の恒温水槽において24時間水中に浸漬させた後、供試体の表面に付着した水滴を、ウエスを用いて軽く拭き取り、供試体の湿潤質量(Wt)を測定した。その後、供試体を乾燥炉に入れて、60℃で24時間乾燥させた後、供試体の乾燥質量(Wd)を測定した。次いで、下記式(1)を用いて供試体の保水量を算出した。
保水量(g/cm3)=(Wt−Wd)/(供試体の直径×高さ) ・・・(1)
(b)高温度履歴繰り返し試験
得られた供試体を耐火炉に入れて、供試体の周辺温度を40℃から980℃となるまで1分程度で昇温した後、980℃の温度を15分間維持した。次いで、供試体の周辺温度が40℃となるまで自然冷却した。冷却後、水中に120分間浸漬した。これを、表3に示す回数となるまで繰り返した後、供試体の表面の損傷について目視観察によって評価を行った。
また、得られた供試体の内部に熱電対を埋設し、供試体の中心における最高温度を測定した。
(c)圧縮強度試験
高温度履歴繰り返し試験を行う前の供試体、および高温度履歴繰り返し試験を1,000回行った後の供試体について、「JIS A 1108(コンクリートの圧縮強度試験方法)」に準拠して、コンクリートの圧縮強度を測定した。
得られた測定結果から、残存圧縮強度比({(高温度履歴繰り返し試験を行った後の供試体の圧縮強度/高温度履歴繰り返し試験を行う前の供試体の圧縮強度)×100}(%))を算出した。
結果を表3〜4に示す。
保水材Aの代わりに保水材Bを使用した保水性セメントミルクBを用いる以外は実施例1と同様にして供試体を得た。
得られた供試体に対して、実施例1と同様に(a)〜(c)に記載された試験を行った。
[実施例3]
粗骨材Aの代わりに粗骨材Bを使用し、表1に示す配合に従う以外は実施例1と同様にして供試体を得た。
得られた供試体に対して、実施例1と同様に(a)〜(c)に記載された試験を行った。
[実施例4]
保水材Aの代わりに保水材Bを使用した保水性セメントミルクBを用いる以外は実施例3と同様にして供試体を得た。
得られた供試体に対して、実施例1と同様に(a)〜(c)に記載された試験を行った。
保水性セメントミルクAを使用しない以外は実施例1と同様にして供試体を得た。
得られた供試体に対して、実施例1と同様に(a)〜(c)に記載された試験を行った。
[比較例2]
保水性セメントミルクAを使用しない以外は実施例3と同様にして供試体を得た。
得られた供試体に対して、実施例1と同様に(a)〜(c)に記載された試験を行った。
結果を表3〜4に示す。
また、本発明の保水性ポーラスコンクリート(実施例1〜4)は、残存圧縮強度比が95〜97%であり、強度の低下が起こりにくいことがわかる。
Claims (4)
- ポルトランドセメント、フライアッシュ、火成岩からなる細骨材、火成岩からなる粗骨材、水、及び、セメント分散剤を含む混合物の硬化体からなるポーラスコンクリート本体、並びに、上記ポーラスコンクリート本体の連続空隙内に存在する保水性セメントミルクの硬化体を含む保水性ポーラスコンクリートであって、
上記ポーラスコンクリート本体の材料が、以下の条件(a)〜(e)を満たすものであり、
上記保水性ポーラスコンクリートの空隙率が、25〜35体積%であり、
上記保水性セメントミルクは、セメント、水、並びに、パーライト粉体及び軽量気泡コンクリート粉体からなる群より選ばれる1種以上からなる保水材を含み、かつ、上記セメント100質量部に対する上記保水材の量が50〜300質量部のものであることを特徴とする保水性ポーラスコンクリート。
(a)上記細骨材は、最大粒度が2.5mm未満の骨材であること
(b)上記粗骨材は、2.5mm以上の粒度を有する骨材であって、かつ、5〜15mmの粒度範囲内の骨材の割合が50質量%以上である粒度分布を有する骨材であること
(c)上記ポルトランドセメント100質量部に対して、上記フライアッシュの量が10〜80質量部、上記細骨材の量が40〜110質量部、上記水の量が35〜45質量部、及び、上記セメント分散剤の量が0.5〜3.0質量部であること
(d)上記粗骨材100体積%に対する上記粗骨材以外の材料からなるモルタルの容積比が、25〜50%であること
(e)上記細骨材及び上記粗骨材を構成する各火成岩が、玄武岩または安山岩であること - 保水量が0.1g/cm3以上である請求項1に記載の保水性ポーラスコンクリート。
- 請求項1又は2に記載の保水性ポーラスコンクリートによって、表面を含む部分が形成されていることを特徴とする耐熱構造物。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の保水性ポーラスコンクリートを製造するための方法であって、
上記ポーラスコンクリート本体を構成する各材料を混練して、上記粗骨材に、粗骨材以外の材料からなるモルタルを被覆させてなる未硬化の粒体を得る混練工程と、
上記未硬化の粒体に振動を加えて、上記未硬化の粒体を相互に付着させて、未硬化のポーラスコンクリート本体を得る振動工程と、
上記未硬化のポーラスコンクリート本体を養生して、硬化体であるポーラスコンクリート本体を得る養生工程と、
上記硬化体であるポーラスコンクリート本体の連続空隙内に上記保水性セメントミルクを充填させて、上記保水性セメントミルクを含む保水性ポーラスコンクリートを得る充填工程と、
上記保水性セメントミルクを硬化させて、上記保水性セメントミルクの硬化体を含む保水性ポーラスコンクリートを得る硬化工程、
を含むことを特徴とする保水性ポーラスコンクリートの製造方法。
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