JP6889897B2 - Frp製ミラー構造体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、FRP製ミラー構造体、FRP製ミラー構造体の製造方法、および、望遠鏡に関する。
FRP製ミラー構造体が知られている。FRP製ミラー構造体は、強度が高く、かつ、軽量である。
関連する技術として、特許文献1(特開昭61−238001号公報)には、繊維強化プラスチック製反射鏡が記載されている。特許文献1に記載の繊維強化プラスチック製反射鏡では、繊維強化プラスチック板の表面に、反射膜が形成されている。そして、繊維強化プラスチック板の表面に形成される反射膜は、蒸着膜または蒸着フィルムである。
特開昭61−238001号公報
本発明の目的は、FRP(繊維強化プラスチック)の表面において凹凸がある場合であっても、鏡面において凹凸が生じにくいFRP製ミラー構造体、FRP製ミラー構造体の製造方法、および、望遠鏡を提供することにある。
この発明のこれらの目的とそれ以外の目的と利益とは以下の説明と添付図面とによって容易に確認することができる。
第1の態様におけるFRP製ミラー構造体の製造方法は、第1のFRP製ミラー構造体を製造する工程と第2のFRP製ミラー構造体を製造する工程とを有する。第1のFRP製ミラー構造体を製造する工程と第2のFRP製ミラー構造体を製造する工程とは、樹脂フィルムを準備する樹脂フィルム準備工程と、鏡面を備えた鏡面層が、樹脂フィルムに直接的に接するように、あるいは、第1接着剤層を介して樹脂フィルムに間接的に接するように、鏡面層を配置する鏡面層配置工程と、FRP層を準備するFRP層準備工程と、樹脂フィルムと、FRP層とを、第2接着剤層を介して接着する接着工程と、を含む。樹脂フィルム準備工程は、第1型材の表面である第1型材表面上に樹脂フィルムを配置する工程と、第1型材表面上に配置された樹脂フィルムを熱成形する工程と、を含む。FRP層準備工程は、第3型材の表面である第3型材表面上にFRP層を配置する工程と、第3型材表面上に配置されたFRP層を熱成形する工程と、を含む。第1のFRP製ミラー構造体を製造する際に用いる第1型材表面の形状と、第2のFRP製ミラー構造体を製造する際に用いる第1型材表面の形状とは、互いに同一である。第1のFRP製ミラー構造体を製造する際に用いる第3型材表面の形状と、第2のFRP製ミラー構造体を製造する際に用いる第3型材表面の形状とは、互いに異なる。
本発明により、FRPの表面において凹凸がある場合であっても、鏡面において凹凸が生じにくいFRP製ミラー構造体、FRP製ミラー構造体の製造方法、および、望遠鏡が提供できる。
図1は、蒸着フィルムをFRP層に接着することを模式的に示す図である。 図2は、蒸着フィルムをFRP層に接着する際に皺が発生した様子を、模式的に示す図である。 図3は、望遠鏡の一部を模式的に示す図である。 図4は、実施形態におけるFRP製ミラー構造体の断面図である。 図5は、FRP製ミラー構造体の鏡面層の一例を示す断面図である。 図6は、FRP製ミラー構造体の適用例を示す機能ブロック図である。 図7は、電磁波検出機器の光学系の一部を模式的に示す図である。 図8は、電磁波検出機器の光学系の一部を模式的に示す図である。 図9は、FRP製ミラー構造体の製造方法を示すフローチャートである。 図10は、FRP製ミラー構造体の製造方法における1つの工程を示す図である。 図11は、FRP製ミラー構造体の製造方法における1つの工程を示す図である。 図12は、FRP製ミラー構造体の製造方法における1つの工程を示す図である。 図13は、FRP製ミラー構造体の製造方法における1つの工程を示す図である。 図14は、FRP製ミラー構造体の製造方法における1つの工程を示す図である。 図15は、FRP製ミラー構造体の製造方法における1つの工程を示す図である。 図16は、FRP製ミラー構造体の製造方法における1つの工程を示す図である。 図17は、FRP製ミラー構造体の製造方法における1つの工程を示す図である。 図18は、FRP製ミラー構造体の製造方法における1つの工程を示す図である。 図19は、FRP製ミラー構造体の製造方法における1つの工程を示す図である。 図20は、製造対象物と、第2型材と、第1型材と、第3型材との関係を示すテーブルである。 図21は、FRP製ミラー構造体の作製手順を模式的に示す図である。 図22は、FRP製ミラー構造体の作製手順を模式的に示す図である。 図23は、FRP製ミラー構造体の作製手順を模式的に示す図である。
以下、実施形態に係るFRP製ミラー構造体、FRP製ミラーの製造方法、および、望遠鏡に関して、添付図面を参照して説明する。なお、添付図面において、同一の機能を有する構成要素には、同一の符号が付与されている。同一の符号が付された構成要素についての繰り返しとなる説明は省略される。
(発明者によって認識された事項)
FRPの表面には、一般的に、凹凸(凹凸は、「プリントスルー」と呼ばれることもある)が存在する。例えば、FRPを構成する樹脂(マトリックス)と、繊維とは、互いに熱膨張係数が異なるため、FRPを加熱成形する際の樹脂の熱収縮および/または樹脂の硬化収縮によって、FRPの表面に凹凸が発生する。このため、FRPの表面に、薄い鏡面層を配置する場合、鏡面層にも凹凸が発生することとなる。なお、FRPと鏡面層とを接着剤を介して接合する場合、接着剤の表面を平滑にすれば、原理的には、鏡面層における凹凸の発生を抑制することが可能である。しかし、この場合であっても、接着剤を硬化する時に、鏡面層における凹凸が顕在化する。さらに、FRPの使用時に、FRPが吸湿または脱湿すると、FRPの表面の凹凸が増幅される。その結果、FRP表面の凹凸の増幅が、鏡面における凹凸の発生を助長する。
ミラーの光学性能を維持するためには、鏡面における凹凸の発生は好ましくない。特に、ミラーを、赤外線波長以下の波長の電磁波(電磁波には、光も包含される。)のように短波長の電磁波を反射するために用いる場合には、短波長に対応して、鏡面における高い平滑性が要求される。ミラーを、紫外線波長より短い波長の電磁波(例えば、X線)を反射するために用いる場合には、鏡面において、非常に高い平滑性が要求される。FRP製ミラー構造体においては、FRPの表面に凹凸が存在するため、鏡面を平滑に維持することが難しい。このため、赤外線波長以下の波長用のFRP製ミラー構造体(特に、X線波長以下の波長用のFRP製ミラー構造体)は、実用化されていないのが実情である。
FRPの表面の凹凸とは異なる観点として、蒸着フィルムにおける皺の発生の問題がある。図1に示されるように、蒸着フィルム1をFRP層2に接着することを想定する。FRP層2の表面形状が、平面形状、あるいは、円筒表面に対応する形状のように単純な曲面形状である場合には、皺を発生させることなく、蒸着フィルム1をFRP層2に接着することが可能である。しかし、FRP層2の表面形状が、例えば、皿の表面に対応する形状、または、複曲面形状のように複雑な曲面形状を有する場合には、蒸着フィルム1の形状を、FRP層2の表面形状に追従させることが困難となる。このため、FRP層2の表面形状が、複雑な曲面形状を有する場合には、蒸着フィルム1をFRP層2に接着する時に、蒸着フィルムに皺が発生したり、あるいは、蒸着フィルムが破れたりするリスクが高い。図2には、蒸着フィルム1をFRP層2に接着する際に、皺3が発生した様子が模式的に示されている。
図2に示される皺の発生を回避するために、蒸着フィルム1を準備するに際して、FRP層の表面形状に対応した成形型を用いて、蒸着フィルム1を成形することも考えられる。しかし、1つのFRP層の表面形状に対応して、少量の蒸着フィルム1しか生産しない場合(換言すれば、少量多品種生産の場合)には、成形型の使用に伴うコストの増加は無視できない。例えば、図3に示されるようなX線望遠鏡4を想定する。図3に記載のX線望遠鏡4は、検出器5と、複数のミラー構造体6とを備える。複数のミラー構造体6の表面形状は、互いに異なっている。このため、成形型を用いて蒸着フィルム1を形成する場合には、異なる表面形状を有する複数のミラー構造体6に対応して、異なる表面形状を有する複数の成形型を用意する必要がある。このため、成形型の使用に伴うコストの増加は無視できない。
(実施形態におけるFRP製ミラー構造体)
図4および図5を参照して、実施形態におけるFRP製ミラー構造体7について説明する。図4は、FRP製ミラー構造体7の断面図である。図5は、FRP製ミラー構造体7の鏡面層10の一例を示す断面図である。
FRP製ミラー構造体7は、鏡面11を備えた鏡面層10と、樹脂フィルム20と、FRP層30と、樹脂フィルム20とFRP層30との間に配置された接着剤層(より具体的には、第2接着剤層44)とを備える。樹脂フィルム20は、鏡面層10と、接着剤層(第2接着剤層44)との間に配置されている。なお、図4に記載の例では、FRP製ミラー構造体7は、付加的に、鏡面層10と樹脂フィルム20との間に配置された第1接着剤層42を備えている。
鏡面11は、光、X線等の電磁波が入射する側のミラーの表面である。鏡面11は、平滑な表面である。鏡面11の表面粗さは、例えば、0.4mm×0.4mmの正方形の面積内で0.8nm以下の二乗平均平方根表面粗さ(RMS表面粗さ)を有する。鏡面層10は、電磁波を反射する層である。換言すれば、鏡面層10は、反射層として機能する。鏡面層10は、例えば、アルミニウム、プラチナ等の金属層である。鏡面層10は、樹脂フィルム20およびFRP層30よりも外側に配置される外層である。鏡面層10は、例えば、蒸着により形成される蒸着膜である。
鏡面層10は、アルミニウム、プラチナ等の金属の単層であってもよいし、多層であってもよい。図5には、多層を有する鏡面層10の例が示されている。図5に記載の例では、鏡面層10は、第1材料層13と第2材料層15との繰り返し構造を含む。第1材料層
13としてプラチナ層を用い、第2材料層15として炭素層が用いられてもよい。図5に記載の例では、鏡面層10は、第1プラチナ層13−1と、第1炭素層15−1と、第2プラチナ層13−2と、第2炭素層15−2とを含む。多層を有する鏡面層10は、例えば、高エネルギーの電磁波の反射のために用いることが可能である。図5に記載の例では、各プラチナ層において電磁波が反射される。図5に記載の例では、第1プラチナ層13−1の厚さと第2プラチナ層13−2の厚さとが互いに等しく、第1炭素層15−1の厚さと第2炭素層15−2の厚さとが互いに等しい。代替的に、第1プラチナ層13−1の厚さと第2プラチナ層13−2の厚さとが、互いに異なっていてもよい。代替的に、あるいは、付加的に、第1炭素層15−1の厚さと第2炭素層15−2の厚さとが互いに異なっていてもよい。
図4を参照して、樹脂フィルム20は、FRP層30の表面の凹凸形状が、鏡面層10に反映されにくくするための形状伝達抑制層として機能するフィルムである。樹脂フィルム20は、形状伝達抑制に適する厚さを有する。樹脂フィルム20の厚さは、例えば、5μm以上125μm以下である。樹脂フィルム20の厚さが5μmより小さいと、形状伝達抑制層としての機能が十分に発揮できないおそれがある。なお、樹脂フィルム20が、比較的硬い材料(あるいは、剛性の大きい材料)を含む時には、樹脂フィルム20の厚さを相対的に薄くしてもよい。硬い材料としては、例えば、ポリイミドが例示される。樹脂フィルム20が硬い材料を含む場合には、樹脂フィルム20の厚さを、例えば、5μm以上50μm以下としてもよい。代替的に、樹脂フィルム20が比較的柔らかい材料によって構成される場合には、樹脂フィルム20の厚さを相対的に厚くすればよい。この場合、樹脂フィルム20の厚さを、例えば、20μm以上125μm以下としてもよい。樹脂フィルム20の曲げ剛性は、当該樹脂フィルム20と同一表面形状を有し、厚さが12.5μmのポリイミドフィルム(宇部興産製ユーピレックスS 12.5SN)の曲げ剛性の0.1倍以上、より好ましくは、0.3倍以上であってもよい。
図4を参照して、FRP層30は、繊維強化プラスチック層である。繊維は、例えば、炭素繊維であるが、炭素繊維以外の繊維を用いることも可能である。プラスチックは、マトリックス(換言すれば、母材)として機能する。FRP層30の厚さは、例えば、0.05mm以上10mm以下である。FRP層30の厚さを10mmより大きくすることも可能であるが、その場合は、FRP製ミラー構造体7の重量が重くなる。また、FRP層30の裏面に、構造強化のためのリブを設けてもよい。代替的に、あるいは、付加的に、FRP層30の裏面に、芯材層、および、他のFRP層を配置したサンドイッチ構造が構造材として採用されてもよい。
図4を参照して、第1接着剤層42は、鏡面層10と、樹脂フィルム20とを接着する層である。すなわち、第1接着剤層42の一方側の面は、鏡面層10の裏面(鏡面11とは反対側の面)に接着し、第1接着剤層42の他方側の面は、樹脂フィルムの第1面21に接着している。第1接着剤層42は、例えば、エポキシ系(エポキシ樹脂)の接着剤、または、ビニルエステル系(ビニルエステル樹脂)の接着剤を含む。なお、FRP製ミラー構造体7を人工衛星に搭載する場合には、接着剤としては、アウトガス特性が、要求値を満たす接着剤が選択される。
第1接着剤層42は、例えば、常温で硬化する常温硬化接着剤層、または、低温(本明細書では、低温は、「摂氏70度以下」を意味する。)で硬化する低温硬化接着剤層である。ただし、鏡面層10と樹脂フィルム20とを第1接着剤層42を介して接着することにより積層体を作製し、その後、積層体とFRP層30とを第2接着剤層44を介して接着するような場合には、第1接着剤層42の硬化時に、第1接着剤層42は、FRP層30の表面の凹凸形状の影響を受けない。このような場合には、第1接着剤層42として、高温(摂氏70度より高い温度)で硬化する接着剤を用いてもよい。第1接着剤層42の厚さは、例えば、50μm以下、より好ましくは、20μm以下である。
なお、樹脂フィルム20の第1面21に、金属材料を直接蒸着することにより鏡面層10を形成するような場合には、第1接着剤層42を省略することが可能である。ただし、第1接着剤層42が存在しないことにより、相対的に、FRP層30から鏡面層10への形状伝達抑制機能が低下する。
図4を参照して、第2接着剤層44は、樹脂フィルム20と、FRP層30とを接着する層である。すなわち、第2接着剤層44の一方側の面は、樹脂フィルム20の第2面22に接着し、第2接着剤層44の他方側の面は、FRP層30の上面であるFRP層第1表面31に接着している。第2接着剤層44は、例えば、エポキシ系(エポキシ樹脂)の接着剤、または、ビニルエステル系(ビニルエステル樹脂)の接着剤を含む。
第2接着剤層44は、例えば、常温で硬化する常温硬化接着剤層、または、低温で硬化する低温硬化接着剤層である。常温硬化接着剤層または低温硬化接着剤層(より具体的には、摂氏70度以下、より好ましくは、摂氏50度以下、更により好ましくは、摂氏30度以下で硬化する接着剤層)を用いる場合、樹脂フィルム20とFRP層30との接着に際し、第2接着剤層44およびFRP層30を過度に加熱する必要がない。このため、第2接着剤層44の熱収縮が抑制される。また、FRP層30の熱変形が抑制される。その結果、第2接着剤層44の熱収縮に伴い、第2接着剤層44に凹凸が形成されることが抑制される。すなわち、FRP層30の上面における凹凸に応じて、第2接着剤層44に凹凸が形成されることが抑制される。なお、第2接着剤層44の厚さは、例えば、50μm以下、より好ましくは、20μm以下である。
第2接着剤層44の成分構成は、第1接着剤層42の成分構成と同じ成分構成であってもよいし、異なる成分構成であってもよい。
実施形態におけるFRP製ミラー構造体では、鏡面層とFRP層との間に、接着剤層(第2接着剤層)および樹脂フィルムが介在する。このため、FRP層の上面に凹凸が存在する場合であっても、鏡面に凹凸が発生しにくい。また、実施形態では、FRP層の吸湿または脱湿に伴い、FRP層の上面の凹凸が大きくなった場合であっても、鏡面層とFRP層との間に、接着剤層(第2接着剤層)および樹脂フィルムが介在するため、鏡面における凹凸の増加は抑制される。なお、FRP層における吸湿または脱湿に伴う悪影響を避けるために、FRP層の少なくとも一部(例えば、下面32、または、下面32および側面33)を、防湿層で覆ってもよい。防湿層としては、例えば、金属箔層、めっき層、あるいは、コーティング層が例示される。
(実施形態におけるFRP製ミラー構造体の第1適用例)
図6および図7を参照して、FRP製ミラー構造体7の第1適用例について説明する。図6は、FRP製ミラー構造体7の適用例を示す機能ブロック図である。図7は、図6に示された望遠鏡102の光学系103の一部を模式的に示す一部切欠き図である。
FRP製ミラー構造体7は、例えば、望遠鏡等の電磁波検出機器(電磁波観測機器)の光学系103において用いられるミラー構造体である。なお、本明細書において、「光学系」は、電磁波を検出部に導く機構を意味する。図6には、FRP製ミラー構造体7を含む望遠鏡102が、人工衛星100に搭載されている例が示されている。
図7を参照して、望遠鏡102の光学系103は、FRP製ミラー構造体7と、検出器105とを備える。図7に記載の例では、4つのFRP製ミラー構造体7(すなわち、第1のFRP製ミラー構造体7−1乃至第4のFRP製ミラー構造体7−4)が記載されている。しかし、FRP製ミラー構造体7の数は、3つ以下であってもよいし、5つ以上であってもよい。FRP製ミラー構造体7の数は、例えば、50以上500以下であってもよい。図7に記載の例では、複数のFRP製ミラー構造体7が、長手方向に沿う中心軸Xの回りに、同心状に配置されている。
複数のFRP製ミラー構造体7の各々は、複曲面を備えていてもよい。複曲面は、直線エレメントを有さない曲面と定義され、複曲面には、球面、球面の一部、円弧回転面、円弧回転面の一部、一般複曲面等が包含される。図7に記載の例では、複数のFRP製ミラー構造体7の各々は、2つの鏡面、すなわち、第1鏡面11−1および第2鏡面11−2を備えている。図7に記載の例では、第1鏡面11−1は、回転放物面(複曲面の一種)であり、第2鏡面11−2は、回転双曲面(複曲面の一種)である。回転放物面は、中心軸X回りに、放物線(曲線の一種)を仮想的に回転させることにより得られる曲面であり、回転双曲面は、中心軸X回りに、双曲線(曲線の一種)を仮想的に回転させることにより得られる曲面である。図7に記載の例では、望遠鏡102に入射した電磁波(例えば、X線)が、第1鏡面11−1で反射され、第1鏡面11−1で反射された電磁波が、さらに、第2鏡面11−2で反射され、第2鏡面11−2で反射された電磁波が検出器105に導入される。検出器105は、電磁波(例えば、X線)を検出する検出器である。
(実施形態におけるFRP製ミラー構造体の第2適用例)
図8を参照して、FRP製ミラー構造体7の第2適用例について説明する。図8は、望遠鏡等の電磁波検出機器の光学系103の一部を模式的に示す図である。
図8を参照して、光学系103は、FRP製ミラー構造体7と、第2ミラー構造体8と、検出器105とを備える。図8に記載の例では、FRP製ミラー構造体7は、第2ミラー構造体8の鏡面9に対向配置される鏡面11を備えている。図8に記載の例では、鏡面11は、曲線を中心軸Xまわりに仮想的に回転することによって得られる回転対称面である。図8に記載の例では、電磁波検出機器に入射した電磁波(例えば、赤外線、可視光、紫外線等)が、鏡面11で反射され、鏡面11で反射された電磁波が、さらに、第2ミラー構造体8の鏡面9で反射され、鏡面9で反射された電磁波が検出器105に導入される。検出器105は、電磁波(例えば、赤外線、可視光、紫外線等)を検出する検出器である。なお、図8に記載の例では、FRP製ミラー構造体7の中央部には、電磁波が通過可能な孔70が設けられている。
図8に記載の光学系103は、望遠鏡に搭載されてもよい。また、光学系103を含む望遠鏡が人工衛星に搭載されてもよい。
実施形態におけるFRP製ミラー構造体では、鏡面における凹凸の発生が抑制される。このため、実施形態におけるFRP製ミラー構造体が、望遠鏡に搭載される場合、望遠鏡の光学性能が維持される。さらに、実施形態におけるFRP製ミラー構造体を含む望遠鏡が人工衛星に搭載される場合、ミラー構造体がFRP製であるため、人工衛星の重量が軽減される。このため、人工衛星の打ち上げコストが低減される。さらに、人工衛星に搭載された望遠鏡のメンテナンスは、困難な場合が多い。しかし、実施形態におけるFRP製ミラー構造体は、高強度であるとともに、鏡面に凹凸が発生するリスクが小さい。このため、FRP製ミラー構造体(および望遠鏡)のメンテナンスを行う必要がないか、あるいは、メンテナンス負担が軽減される。
(実施形態のFRP製ミラー構造体の製造方法)
図9乃至図19を参照して、実施形態におけるFRP製ミラー構造体の製造方法について説明する。図9は、FRP製ミラー構造体7の製造方法を示すフローチャートである。
第1ステップS1において、樹脂フィルム20が準備される。樹脂フィルム20を準備する工程は、図10に示されるように、第1型材200の表面である第1型材表面201上に樹脂フィルム20を配置する工程と、第1型材表面201上に配置された樹脂フィルム20を熱成形する工程とを含んでいてもよい。第1型材表面201上に配置される樹脂フィルム20は、硬化前の樹脂フィルムであってもよいし、半硬化後の樹脂フィルムであってもよいし、硬化後の樹脂フィルムであってもよい。なお、製造するFRP製ミラー構造体7の鏡面の形状が、単純形状である場合には、第1型材200を用いて樹脂フィルム20を熱成形する工程は、省略することが可能である。単純形状には、平面形状、および、直線エレメントを含む曲面形状(例えば、円筒表面に対応する形状)が含まれる。
第2ステップS2において、鏡面11を備えた鏡面層10が、樹脂フィルム20に直接的に接するように、あるいは、第1接着剤層42を介して樹脂フィルム20に間接的に接するように、鏡面層10が樹脂フィルム20上に配置される。
第2ステップS2(鏡面層配置工程)は、図11に示されるように、鏡面層10と、樹脂フィルム20とを、第1接着剤層42を介して接着する工程を含んでいてもよい。図11に記載の例では、まず、樹脂フィルム20上に接着剤を適用して第1接着剤層42が形成される。その後、鏡面層10と、樹脂フィルム20とが、第1接着剤層42を介して接着される。
第2ステップS2の具体例について、図12乃至図14を参照して、更に詳細に説明する。図12乃至図14に記載の例では、第2ステップS2は、ステップS2−1、ステップS2−2、および、ステップS2−3を含む。
図12に示されるように、ステップS2−1は、第2型材300の平滑表面である第2型材表面301上に、鏡面層10を設ける工程である。図12に記載の例では、第2型材表面301上に、金属材料(蒸着素材)を蒸着することにより、鏡面層10および鏡面11が形成される。第2型材300は、例えば、ガラス基板である。また、金属材料は、例えば、プラチナ、アルミニウム、金、銀等である。
図13に示されるように、ステップS2−2は、鏡面層10の裏面12、または、樹脂フィルム20の第1面21に、接着剤を適用する工程である。接着剤の適用は、接着剤を適用すべき表面に接着剤をスプレーすることにより実行されてもよい。なお、図13に記載の例では、樹脂フィルム20の第1面21に接着剤が適用され、その結果、第1面21上に第1接着剤層42が形成されている。代替的に、あるいは、付加的に、鏡面層10の裏面12に接着剤が適用され、その結果、裏面12に第1接着剤層42が形成されてもよい。
図13および図14に示されるように、ステップS2−3は、第2型材表面301上の鏡面層10を、樹脂フィルム20に転写する工程である。図13に示されるように、ステップS2−3において、まず、鏡面層10と樹脂フィルム20とが互いに接近するように、鏡面層10が樹脂フィルム20に対して相対移動する。当該相対移動は、第2型材300を第1型材200に対して相対移動させることにより実行されてもよい。相対移動の結果、鏡面層10の裏面12と第1接着剤層42とが接触し、かつ、第1接着剤層42と樹脂フィルム20とが接触する。次に、図14に示されるように、第2型材300と、樹脂フィルム20(あるいは、第1型材200)との間の距離が大きくなるように、第2型材300を、樹脂フィルム20(あるいは、第1型材200)に対して相対移動する。その結果、第1接着剤層42による接着力により、鏡面層10が、樹脂フィルム20に転写される。
なお、図13および図14に記載の例では、型材上の層を、接着剤を用いて別の部材に転写する方法(具体的には、第2型材300上の鏡面層10を、第1接着剤層42を用いて樹脂フィルム20に転写する方法)、すなわち、レプリカ法を用いて、鏡面層10と樹脂フィルム20との間の接着が実行されている。レプリカ法では、第2型材300の平滑表面を利用することにより、直接表面加工が困難な薄層(鏡面層10)に鏡面11を形成することが可能である。このため、レプリカ法を用いる場合には、平滑度の高い鏡面11を有する鏡面層10を形成することが可能である。
第2ステップS2(鏡面層配置工程)の変形例について説明する。図15に示されるように、変形例では、第1ステップS1(樹脂フィルム準備工程)によって準備された樹脂フィルム20上に、鏡面層10が直接蒸着される。代替的に、樹脂フィルム20上に第1接着剤層42を適用し、当該第1接着剤層42上に、鏡面層10が直接蒸着されてもよい。なお、変形例では、図12に記載の例のように、鏡面11の形成に際して平滑表面(第2型材表面301)が利用できない。このため、鏡面11の平滑度向上の観点からは、変形例よりも、レプリカ法の使用の方が好ましい。
第3ステップS3において、FRP層30が準備される。FRP層30は、繊維と母材(マトリックス)とを含む。FRP層30の母材が熱硬化性樹脂である場合には、FRP層30は、オートクレーブ、オーブン成形、あるいは、プレス成形を用いて、母材を硬化させることにより準備されてもよい。他方、FRP層30の母材が熱可塑性樹脂である場合には、母材を溶融させて固化させることにより、FRP層30が準備されてもよい。
なお、図16に示されるように、FRP層30の形成に際しては、第3型材400を用いることが可能である。この場合、FRP層準備工程(第3ステップS3)は、第3型材400の表面である第3型材表面401上にFRP層30を配置する工程と、第3型材表面401上に配置されたFRP層30を熱成形する工程とを含む。なお、第3型材400の表面である第3型材表面401の形状は、作製すべきFRP製ミラー構造体の鏡面11の形状と一致している。なお、本明細書において「一致」には、「概ね一致」が包含される。成形前のFRP層30を、第3型材表面401上に載置した状態で、加熱することにより、鏡面11の形状と一致する表面(すなわち、鏡面11の形状と一致するFRP層第1表面31)を有するFRP層30が形成される。
なお、第3ステップS3は、第2ステップS2の後に実行される代わりに、第1ステップS1の前に実行されてもよいし、第1ステップS1と第2ステップS2との間に実行されてもよい。
第4ステップS4において、樹脂フィルム20と、FRP層30とが、第2接着剤層44を介して接着される。図17および図18を参照して、第4ステップS4の具体例について説明する。
図17および図18に記載の例では、第4ステップS4は、ステップS4−1、ステップS4−2、および、ステップS4−3を含む。
図17に示されるように、ステップS4−1は、FRP層30の表面であるFRP層第1表面31、または、樹脂フィルム20の第2面22に、接着剤を適用する工程である。接着剤の適用は、接着剤を適用すべき表面に接着剤をスプレーすることにより実行されてもよい。なお、図17に記載の例では、FRP層第1表面31に接着剤が適用され、その結果、FRP層第1表面31上に第2接着剤層44が形成されている。代替的に、あるいは、付加的に、樹脂フィルム20の第2面22に接着剤が適用され、その結果、第2面22上に第2接着剤層44が形成されてもよい。
図17に示されるように、ステップS4−2では、まず、樹脂フィルム20とFRP層30とが互いに接近するように、樹脂フィルム20を、FRP層30に対して相対移動する。その結果、樹脂フィルム20と第2接着剤層44とが互いに接触し、かつ、第2接着剤層44とFRP層30とが互いに接触する。図18には、相対移動後の状態が模式的に示されている。
ステップS4−3は、第2接着剤層44を硬化させる工程である。なお、第2接着剤層44の硬化は、常温環境下、または、低温環境下(摂氏70度以下の環境下)で実行されることが好ましい。第2接着剤層44が、常温または低温で硬化される場合には、硬化に際して、第2接着剤層44が熱収縮することが抑制される。その結果、第2接着剤層44の熱収縮に伴い、第2接着剤層44に凹凸が形成されることが抑制される。
以上の工程により、FRP製ミラー構造体が製造できる。
なお、FRP製ミラー構造体の製造方法(より具体的には、鏡面層配置工程である第2ステップS2)が、鏡面層10と、樹脂フィルム20とを、第1接着剤層42を介して接着する工程を含む場合には、第1接着剤層42と第2接着剤層44とが同時に硬化されてもよい。この場合、例えば、図19に示されるように、まず、FRP層30と第2接着剤層44とが接触し、第2接着剤層44と樹脂フィルム20とが接触し、樹脂フィルム20と第1接着剤層42とが接触し、第1接着剤層42と鏡面層10とが接触し、鏡面層10と第2型材300とが接触するように、FRP層30、第2接着剤層44、樹脂フィルム20、第1接着剤層42、鏡面層10、および、第2型材300を配置する。次に、第1接着剤層42と第2接着剤層44とを同時に硬化させる。なお、第1接着剤層42および第2接着剤層44の硬化は、常温環境下、または、低温環境下(摂氏70度以下の環境下、より好ましくは、摂氏50度以下の環境下、更により好ましくは、摂氏30度以下の環境下)で実行されることが好ましい。続いて、第2型材300を、鏡面層10から離すことにより、FRP製ミラー構造体7が得られる。
実施形態におけるFRP製ミラー構造体の製造方法では、製造されるFRP製ミラー構造体において、鏡面層とFRP層との間に、接着剤層(第2接着剤層)および樹脂フィルムが介在する。このため、FRP層の上面に凹凸が存在する場合であっても、鏡面に凹凸が生じにくい。なお、実施形態におけるFRP製ミラー構造体の製造方法において、FRP層の少なくとも一部(例えば、FRP層の下面、または、FRP層の下面および側面)を、防湿層で覆う工程を含んでいてもよい。防湿層としては、例えば、金属箔層、めっき層、あるいは、コーティング層が例示される。この場合、FRP層による吸湿が抑制されるため、鏡面に凹凸が形成されることがより一層抑制される。なお、FRP層の表面に樹脂フィルムを張り付けることによりFRP製ミラー構造体7に変形が生じる可能性がある。この場合、FRP層の裏面にもフィルム(FRP層の表面に張り付ける樹脂フィルムと同じ材質のフィルムであってもよいし、異なる材質のフィルムであってもよい)を張り付けることにより、FRP製ミラー構造体7の変形を抑制するようにしてもよい。
(鏡面が複雑な形状を有する場合)
鏡面層10は、曲線を仮想的な軸まわりに仮想的に回転することによって得られる曲面(以下、「第1曲面」という。)を含んでいてもよい。当該仮想的な回転は、仮想的な軸まわりの360度の回転であってあってもよいし、360度未満の回転であってもよい。鏡面層10が第1曲面を備える場合には、第1型材200の第1型材表面201の形状を、第1曲面に対応する曲面形状(例えば、第1曲面に一致する曲面形状)とすればよい。この場合、樹脂フィルム20として、第1曲面に対応する曲面形状を有する樹脂フィルムが得られる。また、第2型材300の第2型材表面301の形状を、第1曲面に対応する曲面形状(例えば、第1曲面に一致する曲面形状)とすればよい。この場合、鏡面層10として、第1曲面に対応する鏡面形状を有する鏡面層が得られる。また、第3型材400の第3型材表面401の形状を、第1曲面に対応する曲面形状(例えば、第1曲面に一致する曲面形状)とすればよい。この場合、FRP層30として、第1曲面に対応する曲面形状を有するFRP層が得られる。
上述のような第1型材、第2型材、あるいは、第3型材を採用することにより、実施形態におけるFRP製ミラー構造体、および、FRP製ミラー構造体の製造方法では、鏡面が複雑な鏡面形状である第1曲面を有する場合にも、好適に対応可能である。そして、上述のような第1型材、第2型材、あるいは、第3型材を採用することにより、鏡面層に皺が発生するリスクが低減される。その結果、実施形態におけるFRPミラー構造体は、高い平滑度が要求される赤外線以下の波長の電磁波を観測するためのミラーとして用いることが可能である。なお、第1曲面としては、図7に例示される複曲面(例えば、回転放物面または回転放物面)、あるいは、図8に例示される皿型表面(凹面状の皿表面)等が例示される。
(複数の異なる形状のFRPミラー構造体を有する場合)
次に、図7、および、図20を参照して、複数の異なる形状のFRP製ミラー構造体を有する場合におけるFRP製ミラー構造体の製造方法について説明する。
一例として、図7に示された第1のFRP製ミラー構造体7−1、第2のFRP製ミラー構造体7−2、第3のFRP製ミラー構造体7−3、および、第4のFRP製ミラー構造体7−4を製造する場合について想定する。第1のFRP製ミラー構造体7−1は、上述のFRP製ミラー構造体7の製造方法を用いて製造することが可能である。同様に、第NのFRP製ミラー構造体7−Nは、上述のFRP製ミラー構造体7の製造方法を用いて製造することが可能である。なお、ここでは、「N」は、1以上4以下の任意の自然数である。しかし、5個以上のFRP製ミラー構造体を製造する場合には、「N」は、5以上の自然数であってもよい。
(第3型材の個数について)
各FRP製ミラー構造体(FRP製ミラー構造体7−N)に関し、上述の第3型材400を用いて、FRP層30を準備することを想定する。この場合、K個(ここでは、K=4)の異なる形状のFRP層30を製作するために、表面形状の異なるK個の第3型材400が準備される。換言すれば、鏡面形状の種類の総数に対応する数の第3型材400が準備される。
(第1型材の個数について)
各FRP製ミラー構造体(FRP製ミラー構造体7−N)に関し、上述の第1型材200を用いて、樹脂フィルム20を準備することを想定する。この場合、一例として、K個(ここでは、K=4)の異なる形状の樹脂フィルム20を製作するために、表面形状の異なるK個の第1型材200が準備されてもよい。すなわち、第NのFRP製ミラー構造体7−Nの製造に際し、第Nの鏡面11の形状に一致する表面形状を有する第Nの第1型材200が準備されてもよい。この場合、第Nの第1型材200の第1型材表面201の形状と、第Nの第3型材400の第3型材表面401の形状とは、互いに一致することとなる。
しかし、K個の第1型材200を準備することは、コストの増加を意味する。そこで、第1型材200の個数を減らすことを想定する。図7を参照して、第1のFRP製ミラー構造体7−1の鏡面の形状と、第2のFRP製ミラー構造体7−2の鏡面の形状とは、互いに類似している。このため、1つの第1型材200−Aを準備し、当該第1型材200−Aを、第1のFRP製ミラー構造体7−1の樹脂フィルム20作製用と、第2のFRP製ミラー構造体7−2の樹脂フィルム20作製用とに用いることが可能である。なお、第1型材200−Aの表面形状は、第1のFRP製ミラー構造体7−1の鏡面の形状に一致していてもよいし、第2のFRP製ミラー構造体7−2の鏡面の形状に一致していてもよいし、あるいは、第1のFRP製ミラー構造体7−1の鏡面の形状と第2のFRP製ミラー構造体7−2の鏡面の形状との間の形状であってもよい。
同様に、第3のFRP製ミラー構造体7−3の鏡面の形状と、第4のFRP製ミラー構造体7−4の鏡面の形状とは、互いに類似している。このため、1つの第1型材200−Bを準備し、当該第1型材200−Bを、第3のFRP製ミラー構造体7−3の樹脂フィルム20作製用と、第4のFRP製ミラー構造体7−4の樹脂フィルム20作製用とに用いることが可能である。なお、第1型材200−Bの表面形状は、第3のFRP製ミラー構造体7−3の鏡面の形状に一致していてもよいし、第4のFRP製ミラー構造体7−4の鏡面の形状に一致していてもよいし、あるいは、第3のFRP製ミラー構造体7−3の鏡面の形状と第4のFRP製ミラー構造体7−4の鏡面の形状との間の形状であってもよい。
以上のようにして、第1型材200の数をK個よりも少なくすることが可能となる。なお、樹脂フィルム20は、FRP層30と比較して、成形後の柔軟性が高い。このため、樹脂フィルム20の形状と、作製されたFRP層30の表面形状との間に小さな相違があったとしても、樹脂フィルム20の柔軟性により、樹脂フィルム20の形状を、FRP層30の表面形状に追従させることが可能である。すなわち、第1型材200を用いて成形された樹脂フィルム20を、成形時の形状から変化させつつ、樹脂フィルム20を第2接着剤層44を介してFRP層30に接着させることが可能である。
上述のように、第1型材200の数を減らす例では、少なくとも一部の第1型材に関し、第1型材200の表面形状(第1型材表面201の形状)と、第3型材400の表面形状(第3型材表面401の形状)とが互いに異なることとなる。
(第2型材の個数について)
各FRP製ミラー構造体(FRP製ミラー構造体7−N)に関し、上述の第2型材300を用いて、鏡面層10を準備することを想定する。この場合、一例として、K個(ここでは、K=4)の異なる形状の鏡面層10を製作するために、表面形状の異なるK個の第2型材300が準備されてもよい。すなわち、第NのFRP製ミラー構造体7−Nの製造に際し、第Nの鏡面11の形状に一致する表面形状を有する第Nの第2型材300が準備されてもよい、この場合、第Nの第2型材300の第2型材表面301の形状と、第Nの第3型材400の第3型材表面401の形状とは、互いに一致することとなる。
しかし、K個の第2型材300を準備することは、コストの増加を意味する。特に、第2型材300は、平滑度の高い平滑表面を備えるため、第2型材300の個数の増加は、大幅なコストの増加を意味する。そこで、第2型材300の個数を減らすことを想定する。例えば、第1のFRP製ミラー構造体7−1の鏡面の形状と、第2のFRP製ミラー構造体7−2の鏡面の形状とは、互いに類似している。このため、1つの第2型材300−Aを準備し、当該第2型材300−Aを、第1のFRP製ミラー構造体7−1の鏡面層10作製用と、第2のFRP製ミラー構造体7−2の鏡面層10作製用とに用いることが可能である。なお、第2型材300−Aの表面形状は、第1のFRP製ミラー構造体7−1の鏡面の形状に一致していてもよいし、第2のFRP製ミラー構造体7−2の鏡面の形状に一致していてもよいし、あるいは、第1のFRP製ミラー構造体7−1の鏡面の形状と第2のFRP製ミラー構造体7−2の鏡面の形状との間の形状であってもよい。
同様に、第3のFRP製ミラー構造体7−3の鏡面の形状と、第4のFRP製ミラー構造体7−4の鏡面の形状とは、互いに類似している。このため、1つの第2型材300−Bを準備し、当該第2型材300−Bを、第3のFRP製ミラー構造体7−3の鏡面層10作製用と、第4のFRP製ミラー構造体7−4の鏡面層10作製用とに用いることが可能である。なお、第2型材300−Bの表面形状は、第3のFRP製ミラー構造体7−3の鏡面の形状に一致していてもよいし、第4のFRP製ミラー構造体7−4の鏡面の形状に一致していてもよいし、あるいは、第3のFRP製ミラー構造体7−3の鏡面の形状と第4のFRP製ミラー構造体7−4の鏡面の形状との間の形状であってもよい。
以上のようにして、第2型材300の数をK個よりも少なくすることが可能となる。なお、鏡面層10は、FRP層30と比較して、成形後の柔軟性が高い。このため、鏡面層10の形状と、作製されたFRP層30の表面形状との間に小さな相違があったとしても、鏡面層10の柔軟性により、鏡面層10の形状を、FRP層30の表面形状に追従させることが可能である。すなわち、第2型材300を用いて作製された鏡面層10の形状を、作製時の形状から変化させつつ、鏡面層10を、樹脂フィルム20および接着剤層を介してFRP層30に接着させることが可能である。
上述のように、第2型材300の数を減らす例では、少なくとも一部の第2型材に関し、第2型材300の表面形状(第2型材表面301の形状)と、第3型材400の表面形状(第3型材表面401の形状)とが互いに異なることとなる。
図20は、第1型材200の数、および/または、第2型材300の数を減らす場合における、製造対象物と、第2型材300と、第1型材200と、第3型材400との関係を示すテーブルである。図20を参照して、第1のFRP製ミラー構造体7−1を製造する際に用いる第1型材200−A(換言すれば、第1型材表面の形状)と、第2のFRP製ミラー構造体7−2を製造する際に用いる第1型材200−A(換言すれば、第1型材表面の形状)とは、互いに同一であることが把握される。また、第1のFRP製ミラー構造体7−1を製造する際に用いる第3型材400−A(換言すれば、第3型材表面の形状)と、第2のFRP製ミラー構造体7−2を製造する際に用いる第3型材400−B(換言すれば、第3型材表面の形状)とは、互いに異なることが把握される。
さらに、図20を参照して、第1のFRP製ミラー構造体7−1を製造する際に用いる第2型材300−A(換言すれば、第2型材表面の形状)と、第2のFRP製ミラー構造体7−2を製造する際に用いる第2型材300−A(換言すれば、第2型材表面の形状)とは、互いに同一であることが把握される。
以上のとおり、図20に記載の例では、第1型材200の数、および/または、第2型材300の数を、製造するFRP製ミラー構造体の種類数を示す数(図20に記載の例では「4」)よりも少なくすることが可能である。その結果、製造コストの削減が可能となる。なお、FRP層は、成形後の柔軟性が低いため、FRP層の作製に用いる第3型材の種類数を示す数は、製造するFRP製ミラー構造体の種類数を示す数と一致していることが好ましい。図7および図20に記載の例では、製造するFRP製ミラー構造体の種類数が、「4」である。しかし、製造するFRP製ミラー構造体の種類数が、10以上、50以上、あるいは、100以上である場合には、製造コスト低減の効果は大きい。
(FRP製ミラー構造体についての作製例)
図21乃至図23を参照して、FRP製ミラー構造体についての作製例について説明する。図21乃至図23は、FRP製ミラー構造体の作製手順を模式的に示す図である。
図21を参照して、まず、鏡面層10を第2型材300上で成膜することにより得られる鏡面層10付きの第2型材300と、第1型材200に固定された樹脂フィルム20とが、真空チャンバー500中に配置された。なお、作製例では、鏡面層10上に第1接着剤層42としてエポキシ接着剤(厚さ20μm)が適用された。
なお、鏡面層10は、X線反射膜であった。第2型材300は、フロートガラス(融解金属上に融解ガラスを浮かべることで製造した板状のガラス)であった。また、第1型材200は、ガラスであった。第1型材200上への樹脂フィルム20の固定は、テープ501(ここでは、ポリイミドテープ)により行われた。また、樹脂フィルム20は、厚さ12.5μmのポリイミドフィルムであった。
鏡面層10と、第1接着剤層42と、樹脂フィルム20との圧着は真空雰囲気中で行われた。圧着後、第1接着剤層42が、常温で硬化された。その結果、鏡面層10と第1接着剤層42と樹脂フィルム20とを含む積層体が得られた。なお、第1接着剤層42の硬化後、テープ501が外され、第1型材200が積層体から分離された。
続いて、積層体50(作製例では、第2型材300に載置された積層体)と、FRP層30(作製例では、炭素繊維強化プラスチック)とが、真空チャンバー600中に配置された。なお、真空チャンバー600は、真空チャンバー500と同一の真空チャンバーであってもよい。作製例では、FRP層30上に第2接着剤層44としてエポキシ接着剤(厚さ20μm)が適用された。
FRP層30と、第2接着剤層44と、積層体50との圧着は真空雰囲気中で行われた。圧着後、第2接着剤層44が、常温で硬化された。その結果、FRP製ミラー構造体が得られた。なお、第2接着剤層44の硬化後、第2型材300がFRP製ミラー構造体から分離された。
その後、図23に示されるように、任意のベース700に固定されたFRP製ミラー構造体7について、余分な部分が切断加工により除去された。すなわち、鏡面層10、第1接着剤層42、および、樹脂フィルム20のうち、FRP層30よりも外側に突出する部分が切断加工により除去された(図23において、破線で示された矢印を参照)。
得られたFRP製ミラー構造体7と、ガラス基板上に直接鏡面層10を設けた比較例のミラー構造体とを用いて、X線反射率を測定したところ、FRP製ミラー構造体7におけるX線反射率は、比較例のミラー構造体におけるX線反射率と概ね一致した。よって、実施形態におけるFRP製ミラー構造体7の鏡面は、FRP層の表面の凹凸の影響を受けておらず、高い性能を有していることが確認された。
本発明は上記各実施形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施形態は適宜変形又は変更され得ることは明らかである。また、各実施形態又は変形例で用いられる種々の技術は、技術的矛盾が生じない限り、他の実施形態又は変形例にも適用可能である。
1 :蒸着フィルム
2 :FRP層
3 :皺
4 :X線望遠鏡
5 :検出器
6 :ミラー構造体
7 :FRP製ミラー構造体
7−1 :第1のFRP製ミラー構造体
7−2 :第2のFRP製ミラー構造体
7−3 :第3のFRP製ミラー構造体
7−4 :第4のFRP製ミラー構造体
8 :第2ミラー構造体
9 :鏡面
10 :鏡面層
11 :鏡面
11−1 :第1鏡面
11−2 :第2鏡面
12 :裏面
13 :第1材料層
13−1 :第1プラチナ層
13−2 :第2プラチナ層
15 :第2材料層
15−1 :第1炭素層
15−2 :第2炭素層
20 :樹脂フィルム
21 :第1面
22 :第2面
30 :FRP層
31 :FRP層第1表面
32 :下面
33 :側面
42 :第1接着剤層
44 :第2接着剤層
50 :積層体
70 :孔
100 :人工衛星
102 :望遠鏡
103 :光学系
105 :検出器
200 :第1型材
201 :第1型材表面
300 :第2型材
301 :第2型材表面
400 :第3型材
401 :第3型材表面
500 :真空チャンバー
501 :テープ
600 :真空チャンバー
700 :ベース

Claims (1)

  1. 第1のFRP製ミラー構造体を製造する工程と第2のFRP製ミラー構造体を製造する工程とを有し、
    前記第1のFRP製ミラー構造体を製造する工程と前記第2のFRP製ミラー構造体を製造する工程とは、
    樹脂フィルムを準備する樹脂フィルム準備工程と、
    鏡面を備えた鏡面層が、前記樹脂フィルムに直接的に接するように、あるいは、第1接着剤層を介して前記樹脂フィルムに間接的に接するように、前記鏡面層を配置する鏡面層配置工程と、
    FRP層を準備するFRP層準備工程と、
    前記樹脂フィルムと、前記FRP層とを、第2接着剤層を介して接着する接着工程と、
    を含み、
    前記樹脂フィルム準備工程は、
    第1型材の表面である第1型材表面上に前記樹脂フィルムを配置する工程と、
    前記第1型材表面上に配置された前記樹脂フィルムを熱成形する工程と、
    を含み、
    前記FRP層準備工程は、
    第3型材の表面である第3型材表面上に前記FRP層を配置する工程と、
    前記第3型材表面上に配置された前記FRP層を熱成形する工程と、
    を含み、
    前記第1のFRP製ミラー構造体を製造する際に用いる前記第1型材表面の形状と、前記第2のFRP製ミラー構造体を製造する際に用いる前記第1型材表面の形状とは、互いに同一であり、
    前記第1のFRP製ミラー構造体を製造する際に用いる前記第3型材表面の形状と、前記第2のFRP製ミラー構造体を製造する際に用いる前記第3型材表面の形状とは、互いに異なる
    FRP製ミラー構造体の製造方法。
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