JP6887149B2 - 発酵阻害物質への耐性を有する新規ピキア属酵母 - Google Patents

発酵阻害物質への耐性を有する新規ピキア属酵母 Download PDF

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Description

本発明は、セルロース系バイオマス由来の糖化液を原料とする有用物質の生産に利用可能な、発酵阻害物質への耐性を有する新規ピキア属酵母に関する。
近年、地球温暖化対策や廃棄物の有効利用の観点から、植物資源いわゆるバイオマスの利用が注目されている。加水分解等の糖化処理によってバイオマスを糖類に分解した後、微生物を用いて種々の発酵生産物を製造し、燃料や化学原料として利用する研究が進められている。
バイオマス原料としてはサトウキビ等の糖質やトウモロコシ等のデンプン質が多く利用されているが、これらは有用な可食性資源でもあるため、長期的かつ安定的に工業用資源として利用することは、今後の人口増加問題と拮抗するため好ましくない。
以上の観点から、可食性資源ではなく、例えばバガス・稲わら・トウモロコシの非可食部、木材チップその他のセルロース系バイオマスが、次世代の工業用植物資源として注目されている。
セルロース系バイオマスは、種々の物理化学的又は酵素的な前処理法によって、微生物が炭素源として利用し得る糖化液に加工される。前記処理法として、硫酸を使用する方法(特許文献1又は2)、亜臨界水を使用する方法(特許文献3)等が開示されている。
しかし、このような処理で得られる糖化液の多くは、発酵生産物の収率を著しく低下させる発酵阻害という問題を抱えている。一般に、セルロース系バイオマス由来の糖化液に含まれるリグニン、酢酸その他の有機酸等が、発酵阻害の原因物質(発酵阻害物質)と考えられている。
例えば、エタノールの発酵生産にはサッカロマイセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、それらの育種株又は組換え株が利用されることが多いが、S.セレビシエは発酵阻害物質への耐性が低く、セルロース系バイオマス由来の糖化液に適用することは困難である。
上記問題に対して、発酵阻害物質の除去によって発酵生産物の収率低下を防止する方法が検討されている。例えば、金属水酸化物のエタノール水溶液を用いて糖化液中のリグニン成分を除去する方法(特許文献4)、アンモニア処理と酵素処理を組み合わせることによりリグニン成分を除去する方法(特許文献5)等が報告されている。また、糖化液を精密ろ過して発酵阻害物質を除去する糖化装置も報告されている(特許文献6)。しかしながら、いずれの方法においても処理工程の複雑化は免れず、最終生産物のコスト増加に直結する。
一方、微生物に発酵阻害耐性を付与する方法も検討されている。例えば、酢酸の存在下でも増殖し得る微生物として、転写制御因子HAA1を組換え的に過剰発現させた70mMの酢酸に耐性を示すS.セレビシエ(非特許文献1)、Y0L046C遺伝子を導入した130mMの酢酸に耐性を示すS.セレビシエ等が報告されている(特許文献7)。しかし、セルロース系バイオマス由来の糖化液には、その原料や製造方法によって上記の濃度を上回る酢酸を含むものもあり、上記組換えS.セレビシエの利用には限界がある。
特表平11−506934号公報 特開2005−229821号公報 特開2003−212888号公報 特開2013−042727号公報 特開2013−162777号公報 特開2012−200183号公報 特開2013−34448号公報
Tanaka K.,et al,Applied Environmental Microbiology,2012,vol.78,pp.8161−8163
本発明は、セルロース系バイオマス由来の糖化液に含まれる発酵阻害物質の影響を受けにくく、有用物質の発酵生産に利用可能な微生物を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、セルロース系バイオマス由来の糖化液中でも良好に増速する微生物株を見いだし、本発明を完成させた。
(1)セルロース系バイオマス由来の糖化液に含まれる発酵阻害物質に耐性を有するピキア・メンブレニファシエンス(Pichia membranifaciens)。
(2)発酵阻害物質が100mM以上の酢酸である、(1)に記載のピキア・メンブレニファシエンス。
(3)26SリボソームRNA遺伝子のD1/D2領域が配列番号1に示される塩基配列と97%以上の同一性を、及び/又は26SリボソームRNA遺伝子のITS領域が配列番号2に示される塩基配列と97%以上の同一性を有する、(1)又は(2)に記載のピキア・メンブレニファシエンス。
(4)以下の形態学的特徴及び生理学的性状を有する、(1)から(3)のいずれかに記載のピキア・メンブレニファシエンス。
<形態学的特徴>
YM寒天培地上で25℃、2日間の培養で直径2〜3mm程度のコロニー(形:円形、隆起状態:半レンズ状、周縁:スムーズ、表面の形状:スムーズ、透明度:半透明、粘ちょう度:粘ちょう性)を形成する。また、子嚢胞子の形成が確認できる。
<生理学的性状>
Figure 0006887149
(5)受託番号NITE P−02257として寄託されているピキア メンブレニファシエンス(Pichia membranifaciens)KS47−1株。
(6)発酵阻害物質を含む培養液中で(1)から(5)のいずれかに記載のピキア・メンブレニファシエンスを培養することを含む、有用物質の生産方法。
本発明の微生物は、セルロース系バイオマス由来の糖化液中で増殖するので、該糖化液に含まれる発酵阻害物質の除去処理を不要としたり、糖化液の品質管理の許容度を大幅に増加させたりすることができ、セルロース系バイオマス由来の糖化液を利用した有用物質の発酵生産におけるコストダウンに寄与することができる。また、セルロース系バイオマス由来の糖化液を原料として様々な有用物質を製造する際の遺伝子組換え宿主としても有用である。
P.メンブレニファシエンス KS47−1株の細胞を光学顕微鏡を用いて撮影した写真である。 S.セレビシエ BY4742株(パネルA)及びP.メンブレニファシエンス KS47−1株(パネルB)のYM培地及び糖化液それぞれにおける増殖特性を示す図である。 P.メンブレニファシエンス KS47−1株、S.セレビシエ BY4727、P.メンブレニファシエンスの基準株であるP.メンブレニファシエンス NBRC10215株及びその近縁基準株の糖化液中での増殖特性を示す図である。 P.メンブレニファシエンス KS47−1株、S.セレビシエ BY4727及びP.メンブレニファシエンス NBRC10215株の酢酸存在下の相対増殖量を示す図である。 P.メンブレニファシエンス KS47−1株、S.セレビシエ BY4727及びP.メンブレニファシエンス NBRC10215株の酢酸存在下のエタノール産生を示す図である。(A)はOD600、(B)は酢酸濃度、(C)はグルコース濃度、(D)はエタノール濃度の推移を示している。
本発明は、セルロース系バイオマス由来の糖化液に含まれる発酵阻害物質、特に100mM以上の酢酸に耐性を有するピキア・メンブレニファシエンスに関する。本発明の微生物は、好ましくは、26SリボソームRNA遺伝子のD1/D2領域が配列番号1に示される塩基配列と97%以上の同一性を、及び/又は26SリボソームRNA遺伝子のITS領域が配列番号2に示される塩基配列と97%以上の同一性を有する。
また、本発明の微生物は、次のような形態学的特徴及び上記の表1に示される生理学的性状を有する。
<形態学的特徴>
YM寒天培地上で25℃、2日間の培養で直径2〜3mm程度のコロニー(形:円形、隆起状態:半レンズ状、周縁:スムーズ、表面の形状:スムーズ、透明度:半透明、粘ちょう度:粘ちょう性)を形成する。また、子嚢胞子の形成が確認できる。
本発明の微生物の特に好ましい例は、2016年5月31日付で日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8、独立行政法人製品評価技術基盤機構、特許微生物寄託センターに受託番号NITE P−02257(識別の表示:KS47−1)として寄託されている、P.メンブレニファシエンス KS47−1株(以下、KS47−1株と表す)である。KS47−1株は、自然界から採集された植物サンプルより分離された微生物であり、上述の形態学的特徴及び生理学的性状を有する。
また、KS47−1株の26SリボゾームRNA(26SrRNA)遺伝子のD1/D2領域及びITS領域の各塩基配列は、配列番号1及び2にそれぞれ示されるとおりである。両塩基配列は、DNAデータベース(DDBJ)を対象としたBLAST相同性検索の結果、P.メンブレニファシエンスの基準株であるP.メンブレニファシエンス NBRC10215の26SrRNA遺伝子の各領域に対していずれも97%以上の同一性を有することが確認された。
本発明の微生物は、セルロース系バイオマス由来の糖化液に含まれる発酵阻害物質に耐性を示し、該糖化液中で増殖する。本発明にいう発酵阻害物質への耐性とは、発酵阻害や増殖阻害を引き起こす発酵阻害物質、例えば有機酸、フルフラール、バニリン、ヒドロキシメチルフルフラール等を含むセルロース系バイオマス由来の糖化液中で生育できる能力のことをいう。これは、例えば、粉砕乾燥させたコーンの芯を希硫酸で加熱処理後、水酸化ナトリウムでpHを5付近になるように調整し、次いでセルラーゼ処理して得られる糖化液を培地とした場合でも増殖する、特に発酵阻害物質を含まない糖化液又はこれに類似した組成の培地中で培養したときと同程度以上に増殖する能力を意味する。
発酵阻害物質への耐性はまた、発酵阻害物質を適当量添加した一般的な栄養培地又は合成培地、例えばYM培地等において、発酵阻害物質を含まない条件下で培養したときと同程度以上に増殖する能力と表すこともできる。本発明の微生物は、好ましくは、発酵阻害物質の一種である有機酸、特に酢酸を100mM以上含むYM培地中で良好に増殖し、酢酸耐性を示す。本発明にいう酢酸耐性は、酢酸を100〜1000mM、好ましくは100〜500mM、より好ましくは100〜300mM含む培地中でも増殖する、特に酢酸を含まない条件下で培養したときと同程度に増殖する能力を意味する。本発明の微生物が増殖可能な培地中の酢酸濃度は、培地のpHや浸透圧を著しく変化させないかぎり制限はなく、例えば100mM以上、好ましくは150mM以上、より好ましくは200mM以上、さらにより好ましくは250mM以上、最も好ましくは300mM以上であればよく、また1000mM以下、好ましくは700mM以下、より好ましくは500mM以下であればよい。また、本発明の微生物は、別の発酵阻害物質であるフルフラール25mM、バニリン10mM、ヒドロキシメチルフルフラール80mM、ギ酸10mMそれぞれの存在下でも増殖することが確認されている。
本発明には、上記のKS47−1株の他に、これと同等の特性を有するピキア・メンブレニファシエンスも包含される。そのようなピキア・メンブレニファシエンスは、自然界から採集される各種試料から、セルロース系バイオマス由来の糖化液中で増殖する微生物を選択し、26SrRNA遺伝子の塩基配列を確認することで、入手することができる。具体的には、土壌、河川・湖沼・海洋の水・樹液・花・葉・果実等の試料を、セルロース系バイオマス由来の糖化液に加え、20℃〜37℃で3〜7日間培養し、濁度の上昇が認められたものを適当な栄養成分を含む寒天培地(例えば、YM寒天培地、ポテトデキストロース寒天培地等)に播種し、単一コロニーを形成する菌株を分離した後、DNAを抽出し、26SrRNA遺伝子の特定領域のシークエンス解析を行って配列番号1及び又は2との同一性を確認すればよい。
また、26SrRNA遺伝子塩基配列の確認に代えて、分離された単一コロニー形成菌株の形態学的特徴及び生化学的性状を、慣用的な方法(Barnett et al,Yeasts:Characteristics and identification 3rd edition. Cambridge:Cambridge University Press,2000;Kurtzman et al,The Yeasts,a taxonomic study,5th edition,Amsterdam:Elsevier,2011等)を用いて確認することで、本発明の微生物を入手することができる。
本発明の微生物は、発酵阻害物質を含む培養液、特にセルロース系バイオマス由来の糖化液を用いた有用物質の発酵生産に利用することができ、発酵阻害物質を含む培養液中で該微生物を培養することを含む有用物質の生産方法もまた、本発明の一態様である。例えば、ピキア・メンブレニファシエンスはエタノール生産能を有するので、セルロース系バイオマス由来の糖化液を原料とするエタノール生産に利用することができる。
糖化液には、必要に応じて微生物培養に用いる炭素源、窒素源、硫黄源、無機塩類、ビタミン類その他必要な栄養源を添加してもよい。炭素源としては、炭水化物(グルコース、マンノース、グリセロール、マンニトール等の単糖、ショ糖、麦芽糖、乳糖等のオリゴ糖、デンプン等)、有機酸(酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸等)、アルコール類(エタノール、プロパノール等)、中長鎖脂肪族炭化水素(ヘキサデカン、テトラデカン等)を用いることができる。窒素源としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸又は有機酸のアンモニウム塩、尿素、ペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、肉エキス、コーンスチープリカー、カザミノ酸等の含窒素化合物を用いることができる。無機塩類としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等を用いることができる。ビタミン類としては、パントテン酸又はその塩、ニコチン酸、ピリドキサル酸、イノシトール、ビタミンB12等を用いることができる。
発酵生産における培養条件はピキア・メンブレニファシエンスが増殖する範囲であれば、任意の条件を設定することができる。温度条件は15℃〜37℃。好ましくは25℃〜34℃、さらに好ましくは28℃〜30℃である。pHは3.0〜8.0、好ましくは4.0〜5.0である。培養は、好気的条件又は微好気的条件で行うことが好ましい。
本発明の微生物は、糖化液を用いた本培養の前に、適当な栄養培地(例えばYM培地又はPDA培地)で前培養を行うことが望ましい。前培養の培養条件は、本培養における培養条件に準ずる方法が適用される。雑菌汚染等を防ぐ目的で、任意の濃度の酢酸を培地に添加してもよい。
菌体の接種量は、本培養の培地1L当たり、上記前培養を行った培地10〜100mL、好ましくは30〜50mL程度を接種すればよい。
また、本発明の微生物は、セルロース系バイオマスを原料とした有用物質の製造を行うときの遺伝子組換え宿主としても利用可能である。ピキア・メンブレニファシエンスの形質転換及び形質転換されたピキア属酵母を用いた外来物質の生産については、例えば杉村ら(生物工学会誌、2011年、第89巻、第10号、第570−583ページ)に記載された方法に従って、又は市販のピキア属酵母用発現キット例えばMulti−Copy Pichia Expression Kit(Thermo Fisher Scientific)等を用いて行うことができる。
以下に、実施例を示すことで本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
1)菌株の分離
破砕乾燥したコーンコブ200gに3%(w/v)硫酸を1L添加し、オートクレーブにて121℃、60分間加熱処理した後、10mol/Lの水酸化ナトリウムを用いて、pH5に調整した。これに5gのメイセラーゼ(株式会社明治)を加え、40℃で3日間酵素糖化処理を行い、ろ過により残渣を取り除いたろ液を糖化液とした。ボトルトップフィルターを用いた除菌処理又はオートクレーブ処理を行った糖化液を、以下の実験に用いた。
糖化液中の280nmにおける紫外吸収、糖組成ならびに発酵阻害物質の組成を下の表2に示す。
Figure 0006887149
糖化液2mLを入れた15mL容量のディスポーザブルチューブに自然界から採集したサンプルを入れ、150rpm、25℃で1週間の振とう培養を行った。濁度が上昇したサンプルから0.1mLの培養液を採取し、YM寒天プレートに播種し、コロニー分離法により、分離株を得た。試験管に入れたYM培地に分離株を接種し、150rpm、25℃で振とう培養を行った培養液に25%(w/v)のグリセリンを添加したものを−80℃で保存し、フリーズストックとした。
2)26SrRNA遺伝子のシークエンス
200mL容量のバッフル付フラスコに用意した20mLのYM培地にフリーズストックを播種し、28℃、200rpmで2日間培養した。培養後、遠心分離機を用いて回収した菌体から、PCR Template Prepalation Kit(ロッシュ社)を用いて、ゲノムDNAを抽出した。
抽出したゲノムDNAを鋳型として、配列番号3及び4にそれぞれ示される塩基配列からなるプライマーセットを用いて26SrRNA遺伝子のD1/D2領域を、配列番号5及び6にそれぞれ示される塩基配列からなるプライマーセットを用いて26SrRNA遺伝子のITS領域を、それぞれPCR法で増幅した。サイクルシークエンス反応には、Life Technologies社のBigDye terminator V3.1を用いた。サーマルサイクラーはBioRad社のT−100を用いて、BigDye terminatorのマニュアルに従い、サイクルシークエンス反応を行った。
エタノール沈殿法で生成した反応産物をホルムアミドに再溶解し、95℃、5分間の熱変性処理を行った後、キャピラリーシークエンサー(ABI3100 Genetic Analyzer、Applied Biosystems)を用いて、塩基配列を決定した。
その結果、26SrRNA遺伝子のD1/D2領域の塩基配列が配列番号1に、ITS領域の塩基配列が配列番号2にそれぞれ示されるとおりであることが確認された。両塩基配列についてDNAデータベース(DDBJ)に対してBLAST解析を行った結果、各塩基配列はP.メンブレニファシエンスの基準株であるP.メンブレニファシエンス NBRC10215の26SrRNA遺伝子の各領域の塩基配列に対して97%以上の相同性を示すことが確認された。
3)分離株の生理性状試験
生理性状試験はバーネットら(Barnett et al,Yeasts:Characteristics and identification 3rd edition. Cambridge:Cambridge University Press,2000)及びクルツマンら(Kurtzman et al,The Yeasts,a taxonomic study,5th edition,Amsterdam:Elsevier,2011)に記載の方法に準拠し、温度耐性試験を除き25℃で7日間培養した。
糖類発酵試験はグルコース及びガラクトースについて検討した。また、炭素源資化試験は、炭素源を含まない酵母最小培地に以下の糖類を添加した寒天培地上で、コロニーを形成する能力の有無を試験した。炭素源資化性試験に用いた炭素源は、グルコース、ガラクトース、L−ソボース、D−ガラクトサミン、D−リボース、D−キシロース、D−アラビノース、L−ラムノース、スクロース、マルトース、トレハロース、α−メチル−Dグルコース、セロビオース、サリシン、メリビオース、ラクトース、ラフィノース、メレジトース、イヌリン、可溶性でんぷん、グリセロール、エリスリトール、リビトール、D−グルチオール、D−マンニトール、ガラクチトール、イノシトール、2−ケト−D−グルコン酸、5‐ケト‐D‐グルコン酸、D−グルコン酸、DL−乳酸、コハク酸、クエン酸、メタノール、エタノール、サッカリン、N−アセチル−D−グルコサミン、ヘキサデカンである。
窒素源を含まない最小培地に硝酸を添加した寒天培地上でコロニーを形成する能力(窒素源資化性)を試験した。また、YM寒天培地に分離株を播種し、30℃、37℃、45℃でそれぞれ培養して増殖するか否かで温度耐性を判断した。さらに、10%塩化ナトリウム及び5%グルコースを含むYM寒天培地、及びビタミンを含まないYM寒天培地での増殖能力を試験した。
結果として、分離株は、グルコースを発酵し、グルコース、ソボース、D−グルコサミン、D−キシロース、グリセロール、DL−乳酸、エタノール、N−アセチル−D‐グルコサミンを炭素源として利用でき、またビタミンを含まない培地中で増殖できる一方、硝酸を利用できないという、表1に示される生理学的性状を有していた。また、37℃及び45℃では生育できないことが確認された。
4)分離株の形態観察
Difco YM brothに寒天を加えたYM寒天培地、BBLコーンミール寒天培地、及び5%麦芽エキス寒天培地で27℃、10日間分離株を培養して、出現したコロニーの目視観察、顕微鏡観察を行なった。
YM寒天培地上のコロニーは、周縁の形状は全縁から菌糸状、隆起状態はクッション形、表面は平滑、輝光性、湿性、バター様、色調は薄橙色からクリーム色であり、コーンミール寒天培地上のコロニーは、周縁が全縁から菌糸状、隆起状態は周縁部が扁平で、中央はクッション形、表面は平滑で湿性、バター様、色調は白から黄白色であり、5%麦芽エキス培地上のコロニーは、周縁が全縁から菌糸状、隆起状態はクッション形、表面は平滑で輝光性があり、湿性、バター様で、色調は薄橙色からクリーム色であった。
顕微鏡観察では、栄養細胞は亜球形から卵型、楕円形であり、増殖は多極出芽によることが確認できた。培養10日目に子嚢内に4個の球形から亜球形の子嚢胞子の形成が観察され、偽菌糸の形成が認められた。これらの形態的特長は、P.メンブレニファシエンスに一致する。
以上の結果から、分離株をP.メンブレニファシエンスと判断し、KS47−1株と命名した。本分離株を、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8、独立行政法人製品評価技術基盤機構、特許微生物寄託センター(NPMD)に寄託し、2016年5月31日付で受託番号NITE P−02257(識別の表示:KS47−1)として受託された。
5)KS47−1株の発酵阻害耐性試験
200mL容量のバッフル付フラスコに20mLのYM培地を入れてオートクレーブ処理したものに、KS47−1株及び対照菌株であるS.セレビシエ BY4742株をそれぞれ植菌し、28℃、200rpm、2日間前培養した。200mL容量のバッフル付フラスコに20mLの糖化液を入れてオートクレーブ処理したものに、前培養したKS47−1株及びS.セレビシエ BY4742株をそれぞれ植菌し、28℃、200rpmの条件で2日間培養した。培養中に無菌的に培養液をサンプリングし、分光光度計を用いて600nmの濁度を測定することで、微生物量を推定した。濁度の経時変化を図2に示す。
YM培地ではS.セレビシエ BY4742株及びKS47−1株ともに良好に増殖する一方、糖化液ではS.セレビシエ BY4742株は濁度が増加しないが、KS47−1株はYM培地を用いた場合と同様、培養時間に伴い濁度が増加し、良好な増殖が可能であった。以上の実験により、エタノール生産性酵母S.セレビシエが増殖不可能な糖化液中で、KS47−1株は良好に増殖できることが確認された。
6)近縁基準株の発酵阻害耐性試験
前記5)と同様にして、P.メンブレニファシエンスの基準株であるP.メンブレニファシエンス NBRC10215、近縁種であるP.manshurica NBRC10726、P.kluyveri NBRC1165、P.deserticola NBRC10716、及びKregervanrija fluxuum NBRC0773の糖化液中の増殖試験を行った。各株の濁度の経時変化を図3に示す。
その結果、KS47−1株のみが糖化液中で濁度が上昇する一方、その他の株は全て濁度上昇は認められなかった。
7)酢酸耐性能の確認
酢酸を0〜300mMとなるように加えたYM培地(pH5.0)を用いて、KS47−1株、P.メンブレニファシエンス NBRC10215株、S.セレビシエ BY4742株を30℃で48時間培養した。培養後、分光光度計を用いて波長600nmの濁度を測定し、酢酸を含まない培地における濁度を基準として、相対増殖量を算出した。その結果を図4に示す。
P.メンブレニファシエンス NBRC10125株の増殖能は、200mMの酢酸で著しく低下し、250mMの酢酸で失われた。またS.セレビシエ BY4742株の増殖能も、250mMで著しく低下した。一方、KS47−1株の増殖能は300mMの酢酸でも実質的な低下は認められず、48時間後の相対増殖量は112%であった。このように、KS47−1株は、酢酸耐性を有するとされたS.セレビシエ BY4742株の増殖能が著しく低下する酢酸濃度でも、殆ど変化しない増殖能を持つことが示された。
酢酸以外の発酵阻害物質に対する耐性を同様に評価したところ、25mMのフルフラール存在下でP.メンブレニファシエンス NBRC10215株はほとんど増殖しなかったのに対し、KS47−1株は若干の増殖遅延はあるものの増殖能を示した。また、10mMのギ酸存在下でS.セレビシエ BY4742株は増殖しなかったのに対し、KS47−1株は若干の増殖遅延があるものの増殖能を示した。さらに、バニリン10mM又はヒドロキシメチルフルフラール80mMの存在下でも、KS47−1株は増殖能を示した。
8)エタノール生産能
200mL容量バッフル付三角フラスコに用意したYM改変培地培地40mL(10%グルコース、250mM酢酸緩衝液(pH5.0)、酵母エキス3.0g/L、麦芽エキス3.0g/L、ペプトン5.0g/L)に、前培養したKS47−1株、P.メンブレニファシエンス NBRC10125株及びS.セレビシエ BY4742株を1mL植菌した。培養温度は30℃とし、培養開始24時間目までは200rpmで、24時間目以降は70rpmで振盪させた。
菌体増殖は分光光度計により、600nmの濁度を指標にした。培地中のグルコース、エタノールおよび酢酸濃度は、高速液体クロマトグラフィーにより測定した。カラムは東ソーTSKgel SCX−Hを用い、カラム温度40℃、移動相は10mM過塩素酸とし、グルコースとエタノールは示差屈折計検出器を、酢酸は紫外可視分光検出器を用いて220nmで検出した。それぞれの菌株に対して3連の実験を行なった。菌体濁度ならびに培地中の各成分の濃度変化を図5に示す。
KS47−1株(●)は培養開始後24時間で酢酸を100mM消費し、OD600=8.7±0.3まで増殖した。その後、グルコースを消費し、徐々にアルコールを生産した。培養開始120時間でエタノール濃度は5.8±1.0 g/Lに達した。エタノール発酵の際、酢酸はほとんど消費しなかった。一方、NBRC10125株(○)は培養開始後60時間までほとんど増殖せず、60時間後に徐々に増殖し、OD600=5.2±3.0まで増殖した。120時間の培養中、エタノール生産は確認できなかった。BY4742株(▲)は培養期間中増殖せず、エタノールは検出されなかった。
KS47−1株は高濃度酢酸存在下で増殖することができ、好気から微好気条件の2段階培養を行うことでエタノール生産が可能であることがわかる。また、好気条件における菌体増殖では、酢酸を優先的に消費しており、グルコースはエタノール発酵に優先的に利用されるため、バイオマス糖化液中の糖の利用効率(歩留まり)の向上が期待できることがわかる。
配列番号1:KS47−1株の26SrRNA遺伝子のITS領域
配列番号2:KS47−1株の26SrRNA遺伝子のD1/D2領域
配列番号3:26SrRNA遺伝子のD1/D2領域増幅用フォワードプライマー
NL1:5’gcatatcaataagcggaggaaaag−3’
配列番号4:26SrRNA遺伝子のD1/D2領域増幅用リバースプライマー
NL4:5’−ggtccgtgtttcaagacgg−3’
配列番号5:26SrRNA遺伝子のITS増幅用フォワードプライマー
ITS1FS:5’−cttgttcatttagaggaataa−3’
配列番号6:26SrRNA遺伝子のITS増幅用リバースプライマー
ITS4:5’−tcctccgcttattgatatgc−3’

Claims (2)

  1. 受託番号NITE P−02257として寄託されているピキア メンブレニファシエンス(Pichia membranifaciens)KS47−1株。
  2. 発酵阻害物質を含む培養液中で請求項1に記載のピキア・メンブレニファシエンスを培養することを含む、エタノールの生産方法。
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