JP6886188B2 - 白血病細胞増殖抑制用組成物 - Google Patents
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Description
・糖質:32〜39%
・蛋白質:10〜12%
・リグニン:32〜39%
なお、上記抽出物中の糖質、蛋白質、及びリグニンの組成は、例えば、それぞれフェノール硫酸法、セミミクロケルダール法、アセチルブロマイド法で測定して求めることができる。
50であることが好ましく、30:70〜40:60であることがより好ましい。
(1)シイタケ菌糸体培養培地抽出物(以下「LEM」という。)の調製
バガス90質量部と、脱脂米糠10質量部とを配合し、水分70%となるように調製して固形培地を作り、常法通り高圧蒸気滅菌した。この固体培地にシイタケ菌糸を接種し、25℃に温度調節した培養室内で3か月培養し、培地中に菌糸体が蔓延した後、温度処理室に移して35℃で24時間加温し、次いで10℃の低温室で3日間処理した。その後、上記培養室で3日間培養し、培地を破砕機で親指程度の大きさに破砕した。
図1にLEM中に含まれる脂溶性成分の調製方法の工程図を示した。
得られた画分mL361610とmL1001610について、HPLCによる含有成分の分析を行った。
カラムはWakosil-II 5C18 HG(製品名、富士フィルム和光純薬株式会社)を用い、機器はLC-2010C(製品名、株式会社島津製作所)を使用した。移動相はアセトニトリル、流速0.5ml/min、カラム温度は40℃、1−51%のグラジエントにて逆相クロマトグラフィーを行った。検出波長は254、280、350nmで行った。
図2に、逆相カラムを用いたHPLCによる成分分析の結果を示した。クロマトチャートの通り、mL361610とmL1001610の間に、明確な違いが存在する。メジャーピークとして、mL361610では7物質が含有されており、mL1001610では6物質が含有されている。mL1001610では、検出波長254nmにおける1物質(図2(B))が完全に消失しており、検出波長350nmにおける1物質(図2(A)が1/4以下にまで減少している。従って、この2物質は36%エタノール/酢酸エチル混合溶媒の極性に溶解した物質であり、残りの物質はエタノールに溶解可能な物質であると結論できる。
LEMの、白血病細胞に対する細胞増殖抑制効果を検証した。
サンプルとしては、上記で製造したLEM、mL361610の他に、イマチニブ(製品名:Imatinib (mesylate)、Cayman Chemical)(薬効分類名が抗悪性腫瘍剤の分子標的薬、作用機序はBcr-Ablキナーゼの阻害剤)、アダホスチン(製品名:Adaphostin、SIGMA)分子間相互作用としての作用機序は明確になっていないが、アポトーシスを誘導する薬剤)、LY294002(製品名Cell Signaling Technology)(PI3K阻害剤)、及びNutlin-3a(製品名、AdooQ Bioscience)(野生型p53とMDM2の結合阻害剤)を用いた。
細胞生存率(%)=(S−SB)/(C−CB)×100
図3にLEM(A)、各種薬剤(B)〜(D)、及びmL361610(E)の、K562細胞に対する細胞増殖抑制解析結果を示す。横軸は添加濃度、縦軸は生細胞の割合を示しており、縦軸の値が小さければ小さいほど効果が高いことを示す。図3(A)〜(C)、(E)において、丸は添加24時間後、四角は添加48時間後を示し、図3(D)において、白菱形はLY294002、黒菱形はNutlin-3a(ネガティブコントロール)を添加して、いずれも48時間後を示す。
LEM及びmL361610は、白血病細胞の生細胞数に影響を与えるかを検証した。
サンプルとしては、1mg/mL LEM、0.125mg/mL mL361610、1μMイマチニブ、10μMアダホスチンを用いた。
生細胞数割合(%)=(全細胞数−トリパンブルー陽性細胞数)/全細胞数×100
図4に、LEM、各種薬剤、及びmL361610による、K562細胞に対する細胞数の推移を示す。その結果、LEM及びmL361610は添加24時間後から、細胞はほとんど増加しないことが判明した。一方イマチニブは、添加後24時間までは細胞増殖抑制効果が弱く、細胞が増殖しやすい状況が存在すると考えられる。アダホスチンは、アポトーシスを引き起こすことが知られており、添加後から明確に細胞が減少している理由は、細胞死によるものであると考えられる。
細胞は細胞周期によって制御されており、細胞増殖のブレーキ役であるp27が細胞内に存在すると、細胞は増殖を停止する。正常細胞では、このp27が分解されずに細胞内で蓄積することで、異常な細胞増殖が発生しない。一方癌細胞では、遺伝子変異や増殖因子等の物質により、細胞増殖を正に動かすシグナル伝達が恒常的に生じ、その結果p27の分解が引き起こされ、無秩序に細胞が増殖する。また、癌の悪性度とp27には相関があり、細胞内p27量が少なければ悪性度が高い。さらに、術後の予後もp27と相関があり、細胞内p27量が少なければ、癌治療を行っても予後不良により短命であることが知られている。
K562細胞を、それぞれ1mg/mL LEM、0.125mg/mL mL361610、1μMイマチニブ、10μMアダホスチン存在下で培養した。24時間後、細胞を500×gで3分間遠心回収し、2回PBSで細胞を洗浄した。細胞からタンパク質溶液を調整後、DC Protein Assay(製品名、Bio−Rad社)を用いてBSAをスタンダードとしてタンパク定量を行った。p27量の定量を行うそれぞれのサンプルは、全タンパク質量として全てのサンプルを揃えた。p27定量の実験手法はELISAで行った。
図6に、LEM、mL361610、イマチニブ、アダホスチンによる細胞内p27量への影響の解析結果を示す。この結果から、何も添加していないコントロールと比較し、LEMは約2倍、mL361610は約3.6倍、細胞内p27量を増加させることがわかった。
既存抗癌剤であるイマチニブは2000年初頭に開発され、分子標的薬として注目を集めた一方、癌細胞による薬剤耐性も獲得しやすい。研究室レベルでは、半年かからずに耐性細胞の樹立が可能である。また、受容体のキナーゼ阻害剤であるため、徐々に薬剤の効果が減少するだけでなく、癌細胞の細胞増殖を正に動かすシグナル伝達が増加してしまう一因となる。現在のところ、イマチニブ耐性癌細胞に対する、効果的な抗癌剤は存在しない。
0.2μMイマチニブ存在下で、K562細胞を1ヶ月培養した。1ヶ月培養後の生存細胞を用い、0.25μMイマチニブ存在下で1週間培養した。その後、濃度を0.05μM増加させる毎に、1週間ずつ培養した。最終的に、0.5μMイマチニブ存在下で2ヶ月間培養し、生存したK562細胞をイマチニブ耐性K562細胞(以下、K562−SRm細胞という)として実験に使用した。
図7に、通常のK562細胞及びK562−SRm細胞に対する、細胞増殖抑制解析結果を示す。四角は通常のK562細胞で、丸はK562−SRm細胞を示す。アダホスチンは細胞死を引き起こすため、イマチニブ耐性細胞にも効果がある薬剤として学術的に使用されており、LEM及びmL361610との比較として用いた。その結果LEM及びmL361610は、K562−SRm細胞であっても細胞増殖抑制効果を示し、また、細胞増殖抑制の比活性は悪化しないことが判明した。一方アダホスチンは、K562−SRm細胞であっても細胞増殖抑制を示すが、その比活性は悪化し、抑制の活性は通常のK562と比較して半分に低下することが判明した。
イマチニブは添加時間が短い場合は比活性が弱く、また、癌細胞が抵抗性を獲得しやすい。そこでLEMとの併用により、K562細胞に対する細胞増殖抑制効果があるか解析した。
細胞数推移の解析は、サンプルを添加後24時間後に行った。詳細には、上記実験例2と同様の方法で行った。
図8にLEMをとイマチニブとを併用した場合のK562細胞に対する細胞増殖抑制解析結果を示す。LEMの濃度をIC50の80%として添加した。その結果、いずれの濃度でもLEMによる相乗効果が確認できた。特に、0.5μMイマチニブ単独の効果が、0.25mg/mL LEMと0.125μMイマチニブとの併用と同等の効果が得られることが判明した。学術的にイマチニブ耐性細胞を作製する場合、0.2μMイマチニブ以下では耐性化が発生しない。以上の結果から、LEMは、耐性細胞であっても効果を発揮するだけでなく、通常の癌細胞であっても、耐性化が発生しない濃度のイマチニブ併用により、より強力に細胞増殖抑制効果を示すと結論する。
Claims (4)
- イマチニブ耐性白血病細胞に対する増殖抑制用組成物であって、シイタケ菌糸体培養培地の熱水抽出物中に含まれる脂溶性成分を有効成分とすることを特徴とする白血病細胞増殖抑制用組成物。
- イマチニブと、シイタケ菌糸体培養培地の熱水抽出物中に含まれる脂溶性成分とを有効成分とすることを特徴とする白血病細胞増殖抑制用組成物。
- イマチニブと併用投与するための白血病細胞増殖抑制用組成物であって、シイタケ菌糸体培養培地の熱水抽出物中に含まれる脂溶性成分を有効成分とすることを特徴とする白血病細胞増殖抑制用組成物。
- 前記脂溶性成分はバガス及び米糠を含む培地を用いて培養されたシイタケ菌糸体培養培地の熱水抽出物中に含まれるものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の白血病細胞増殖抑制用組成物。
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