以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1に示すように、本発明の実施の形態に係る制御装置を搭載したハイブリッド車両(以下、単に「車両」という)1は、内燃機関型のエンジン2と、第1モータジェネレータ4と、第2モータジェネレータ5と、駆動輪6と、駆動輪6に動力を伝達可能に連結された駆動軸7と、第1遊星歯車機構8と、第2遊星歯車機構9と、第1インバータ19と、第2インバータ20と、ハイブリッドECU(Electronic Control Unit)32と、エンジンECU(Electronic Control Unit)33と、モータECU(Electronic Control Unit)34と、バッテリECU(Electronic Control Unit)35とを含んで構成される。
エンジン2は、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行う4サイクルのエンジンによって構成されている。エンジン2の出力軸3は、第1遊星歯車機構8と第2遊星歯車機構9とに連結されている。
第1モータジェネレータ4は、ロータ軸13と、ロータ14と、ステータ15とを有している。ロータ14には、複数の永久磁石が埋め込まれている。ステータ15は、ステータコア及びステータコアに巻き掛けられた三相コイルを有している。ステータ15の三相コイルは、第1インバータ19に接続されている。
このように構成された第1モータジェネレータ4において、ステータ15の三相コイルに三相交流電力が供給されると、ステータ15によって回転磁界が形成される。この回転磁界にロータ14に埋め込まれた永久磁石が引かれることにより、ロータ14がロータ軸13周りに回転駆動される。すなわち、第1モータジェネレータ4は、電動機として機能し、車両1を駆動する駆動力を生成することができる。
また、ロータ14がロータ軸13周りに回転すると、ロータ14に埋め込まれた永久磁石によって回転磁界が形成され、この回転磁界によりステータ15の三相コイルに誘導電流が流れることにより、三相の交流電力が発生する。すなわち、第1モータジェネレータ4は、発電機としても機能する。
第1インバータ19は、モータECU34の制御により、バッテリ21などから供給された直流の電力を三相の交流電力に変換する。この三相の交流電力は、第1モータジェネレータ4のステータ15の三相コイルに供給される。
第1インバータ19は、モータECU34の制御により、第1モータジェネレータ4によって生成された三相の交流電力を直流の電力に変換する。この直流の電力は、例えば、バッテリ21を充電する。
第2モータジェネレータ5は、ロータ軸16と、ロータ17と、ステータ18とを有している。ロータ17には、複数の永久磁石が埋め込まれている。ステータ18は、ステータコア及びステータコアに巻き掛けられた三相コイルを有している。ステータ18の三相コイルは、第2インバータ20に接続されている。
このように構成された第2モータジェネレータ5において、ステータ18の三相コイルに三相交流電力が供給されると、ステータ18によって回転磁界が形成される。この回転磁界にロータ17に埋め込まれた永久磁石が引かれることにより、ロータ17がロータ軸16周りに回転駆動される。すなわち、第2モータジェネレータ5は、電動機として機能し、車両1を駆動する駆動力を生成することができる。
また、ロータ17がロータ軸16周りに回転すると、ロータ17に埋め込まれた永久磁石によって回転磁界が形成され、この回転磁界によりステータ18の三相コイルに誘導電流が流れることにより、三相の交流電力が発生する。すなわち、第2モータジェネレータ5は、発電機としても機能する。
第2インバータ20は、モータECU34の制御により、バッテリ21などから供給された直流の電力を三相の交流電力に変換する。この三相の交流電力は、第2モータジェネレータ5のステータ18の三相コイルに供給される。
第2インバータ20は、モータECU34の制御により、第2モータジェネレータ5によって生成された三相の交流電力を直流の電力に変換する。この直流の電力は、例えば、バッテリ21を充電する。
第1遊星歯車機構8は、サンギア22と、サンギア22に噛み合う複数のプラネタリギア23と、複数のプラネタリギア23に噛み合うリングギア25と、プラネタリギア23を自転可能に支持するプラネタリキャリア24とを備えている。
第2遊星歯車機構9は、サンギア26と、サンギア26に噛み合う複数のプラネタリギア27と、複数のプラネタリギア27に噛み合うリングギア29と、プラネタリギア27を自転可能に支持するプラネタリキャリア28とを備えている。
第1遊星歯車機構8のサンギア22は、第1モータジェネレータ4のロータ14と一体に回転するように、中空のロータ軸13に連結されている。第1遊星歯車機構8のプラネタリキャリア24と、第2遊星歯車機構9のサンギア26とは、エンジン2の出力軸3と一体に回転するように連結されている。
第1遊星歯車機構8のリングギア25には、第2遊星歯車機構9のプラネタリギア27がロータ軸13周りに公転するようにプラネタリキャリア28を介して連結されている。また、第1遊星歯車機構8のリングギア25は、図示しないデファレンシャルギア及びその他のギアを含むギア機構31を介して駆動軸7を回転させるように設けられている。第2遊星歯車機構9のリングギア29は、第2モータジェネレータ5のロータ17と一体に回転するようにロータ軸16に連結されている。
第1遊星歯車機構8及び第2遊星歯車機構9は、動力伝達機構10を構成する。動力伝達機構10は、エンジン2の出力軸3と、第1モータジェネレータ4のロータ軸13と、第2モータジェネレータ5のロータ軸16と、駆動軸7とが連結された遊星歯車機構を構成する。
このように、動力伝達機構10は、エンジン2と、第1モータジェネレータ4と、第2モータジェネレータ5と、駆動軸7との間で駆動力を授受させるようになっている。例えば、動力伝達機構10は、エンジン2と、第1モータジェネレータ4と、第2モータジェネレータ5とによって生成された動力を駆動軸7に伝達するようになっている。
ハイブリッドECU32、エンジンECU33、モータECU34及びバッテリECU35は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによってそれぞれ構成されている。
これらのコンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをハイブリッドECU32、エンジンECU33、モータECU34及びバッテリECU35としてそれぞれ機能させるためのプログラムが格納されている。
すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、これらのコンピュータユニットは、本実施の形態におけるハイブリッドECU32、エンジンECU33、モータECU34及びバッテリECU35としてそれぞれ機能する。
車両1には、CAN(Controller Area Network)等の規格に準拠した車内LAN(Local Area Network)を形成するためのCAN通信線39が設けられている。ハイブリッドECU32、エンジンECU33、モータECU34及びバッテリECU35は、CAN通信線39を介して制御信号等の信号の送受信を相互に行う。
ハイブリッドECU32は、主として、エンジンECU33、モータECU34及びバッテリECU35などの各種ECUを統括的に制御する。エンジンECU33は、主として、エンジン2を制御する。
モータECU34は、主として、第1インバータ19及び第2インバータ20を介して第1モータジェネレータ4と、第2モータジェネレータ5を制御する。バッテリECU35は、主として、バッテリ21の状態を管理する。
本実施形態において、ハイブリッドECU32の入力ポートには、アクセル開度センサ41、シフトポジションセンサ42、車速センサ43を含む各種センサ類が接続されている。
アクセル開度センサ41は、運転者による図示しないアクセルペダルの踏み込み量をアクセル開度として検出する。シフトポジションセンサ42は、運転者によるシフトレバーの操作により選択されたシフト位置を検出する。
本実施形態では、車両1は、シフト位置として、Pレンジ(駐車位置)、Rレンジ(後進位置)、Nレンジ(ニュートラル位置)、Dレンジ(前進の通常走行位置)、Bレンジ(エンジンブレーキ発生位置)を備えている。なお、Bレンジは、Dレンジよりも大きなエンジンブレーキを発生させるシフト位置である。シフトポジションセンサ42は本発明におけるシフト位置検出部を構成する。
車速センサ43は、例えば、駆動軸7の回転速度から車速を検出する。車速センサ43は、車両1が前進方向に進んでいる場合は正の車速を出力し、車両が後進方向に進んでいる場合は負の車速を出力する。
エンジンECU33は、ハイブリッドECU32からのトルク指令信号により、エンジン2の発生するエンジントルクがトルク指令信号に設定されたトルク指令値になるようにエンジン2を制御する。エンジンECU33は、不図示のインジェクタやスロットルバルブを制御することにより燃料噴射量や吸入空気量を制御する。そして、エンジンECU33は、燃料噴射量や吸入空気量を制御することにより、エンジン2の発生するエンジントルクを制御する。
バッテリECU35の入力ポートには、バッテリ状態検出センサ45が接続されている。バッテリ状態検出センサ45は、バッテリ21の充放電電流、電圧及びバッテリ温度を検出する。バッテリECU35は、バッテリ状態検出センサ45から入力される充放電電流の値、電圧の値及びバッテリ温度の値に基づき、バッテリ21の充電状態(以下SOCという)などを検出する。
バッテリ状態検出センサ45は、例えば、バッテリ21の充放電電流を検出する電流センサに、電圧を検出する電圧センサ及びバッテリ温度を検出するバッテリ温度センサを付設した構成を用いることができる。なお、電流センサと電圧センサとバッテリ温度センサとを別に設けてもよい。
このような車両1において、ハイブリッドECU32は、アクセル開度センサ41により検出されたアクセル開度と、シフトポジションセンサ42により検出されたシフト位置と、車速センサ43により検出された車速などに基づいて目標駆動パワーを算出し、目標駆動パワーを駆動軸7に出力させるようにエンジン2、第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5を制御する。
なお、本実施形態において、パワーとは、トルクに回転速度を乗算した値に比例する動力のことを示し、エンジン2、第1モータジェネレータ4,第2モータジェネレータ5、駆動軸7それぞれの回転体におけるトルク及び回転速度の組み合わせによって一意に決まる。
ハイブリッドECU32は、例えば、アクセル開度と、シフト位置と、車速とに対する目標駆動トルクの相関を定めたトルクマップを参照して、目標駆動トルクを決定する。そして、ハイブリッドECU32は、目標駆動トルクと車速とから目標駆動パワーを決定する。トルクマップは、予め実験等により求められ、ハイブリッドECU32のROMに記憶されている。
ハイブリッドECU32は、目標駆動パワーを満たすように、車両状態等に応じた適切な配分で、目標エンジンパワーと目標モータパワーを算出する。そして、ハイブリッドECU32は、目標エンジンパワーに基づいて目標エンジン回転速度と目標エンジントルクを算出し、目標モータパワーに基づいて目標モータ回転速度と目標モータトルクを算出する。
ハイブリッドECU32により目標エンジン回転速度と目標エンジントルクが決定されると、エンジンECU33は、これらの目標値をスロットルバルブ開度や点火時期等の制御量に変換し、目標エンジン回転速度と目標エンジントルクを実現するようにエンジン2を制御する。
ハイブリッドECU32により目標モータ回転速度と目標モータトルクが決定されると、モータECU34は、これらの目標値を第1モータジェネレータ4および第2モータジェネレータ5の制御量に変換し、目標モータ回転速度と目標モータトルクを実現するように第1モータジェネレータ4および第2モータジェネレータ5を制御する。
ハイブリッドECU32は、例えば、エンジントルクとエンジン回転速度とに対するエンジンパワーの相関を定めたパワーマップを参照して、目標エンジン回転速度と目標エンジントルクを決定する。ハイブリッドECU32は、図示しないパワーマップの最適燃費ラインに基づいて、目標エンジン回転速度と目標エンジントルクを決定する。このパワーマップは、予め実験等により求められ、ハイブリッドECU32のROMに記憶されている。ハイブリッドECU32は、パワーマップの最適燃費ライン上を推移するようにエンジン2の動作点を制御する。
図2、図3は、車両1の共線図である。図2は車両停止時の共線図である。図3は、車両1の急減速前と急減速中の共線図である。図2、図3の共線図において、各縦軸は、図中、左から第1モータジェネレータ4(図中、MG1と記す)の回転速度、エンジン2(図中、engineと記す)の回転速度(エンジン回転速度)、駆動軸7(図中、outputと記す)の回転速度、第2モータジェネレータ5(図中、MG2と記す)の回転速度をそれぞれ表している。
なお、共線図上では、第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5、駆動軸7の回転速度は、車両1を前進させる方向の回転を正としている。
ここで、エンジン回転速度をNeng、駆動軸7の回転速度をNout、第1モータジェネレータ4の回転速度をNmg1、第2モータジェネレータ5の回転速度をNmg2としたとき、これらの各回転速度の間には、次の式(1)、式(2)の関係が成り立っている。
なお、式(1)、式(2)では、エンジン2と駆動軸7の間のレバー長を1とし、エンジン2と第1モータジェネレータ4の間のレバー長をk1とし、駆動軸7と第2モータジェネレータ5の間のレバー長をk2としている。
Nmg1=(1+k1)Neng−k1・Nout...(1)
Nmg2=(1+k2)Nout−k2・Neng...(2)
また、図2の共線図において、横軸における各軸間の距離比(レバー長の比)は、第1遊星歯車機構8及び第2遊星歯車機構9の各ギアの歯数の比により定まる。ここで、k1は、第1遊星歯車機構8のリングギア歯数Zr1とサンギア歯数Zs1の比、Zr1/Zs1である。k2は、第2遊星歯車機構9のサンギア歯数Zs2とリングギア歯数Zr2の比、Zs2/Zr2である。
図3に実線で示すように、車両1の急減速前の状態では、第1モータジェネレータ4の回転速度(Nmg1)、エンジン2の回転速度(Neng)、第2モータジェネレータ5の回転速度(Nmg2)、駆動軸7の回転速度(Nout)が正の値となっている。
この状態では、エンジン2が運転しており、エンジン2のエンジントルクと、第1モータジェネレータ4および第2モータジェネレータ5の両方のモータトルクと、によって車両1が走行している。
その後、ドライバの急制動操作により車両1が急減速したため、図3に破線で示すように、駆動軸7の回転速度(Nout)が減少する。図3の共線図では、第2モータジェネレータ5のイナーシャが大きいことにより、駆動軸7の回転速度が減少しても、第2モータジェネレータ5の回転速度(Nmg2)が急減速前から変化していない。一方、第2モータジェネレータ5を支点にするように、第1モータジェネレータ4の回転速度、駆動軸7の回転速度、エンジン回転速度が低下する。
このように車両1が急減速する場合、共振領域までエンジン回転速度(Neng)が低下してしまうことがあり得る。共振領域とは、エンジン2が共振するエンジン回転速度の領域である。より詳しくは、共振領域は、アイドル回転速度以上の低いエンジン回転速度の領域である。
エンジン回転速度が低下してエンジン2が共振した場合、乗員に違和感を与えてしまう。このため、本実施形態では、ハイブリッドECU32が次のような各種の制御を実施することでエンジン2の共振を防止している。ハイブリッドECU32は、本発明における制御部を構成している。
ハイブリッドECU32は、エンジン2のエンジン回転速度が低下して第1の所定値以下になった場合に、モータトルクによりエンジン2を停止させるように第1モータジェネレータ4および第2モータジェネレータ5を制御する。第1の所定値は、共振領域の上限値よりも大きい値である。
ハイブリッドECU32は、エンジン自律制御を実施可能である。エンジン自律制御とは、第1モータジェネレータ4および第2モータジェネレータ5がモータトルクを発生せず、かつ、エンジン2のエンジントルクによりエンジン回転速度を自律的に調整する制御である。
ハイブリッドECU32は、このエンジン自律制御として、自律アイドルスピード制御を実施する。自律アイドルスピード制御は、第1モータジェネレータ4および第2モータジェネレータ5がモータトルクを発生せず、かつ、エンジン2のエンジントルクによりアイドル回転速度を自律的に調整する制御である。
ハイブリッドECU32は、エンジン自律制御の実行中に、エンジン回転速度が低下して第1の所定値よりも大きい第2の所定値以下になった場合に、エンジン自律制御を禁止する。
また、ハイブリッドECU32は、エンジン自律制御を禁止する場合、モータトルクによりエンジン回転速度を上昇させるように第1モータジェネレータ4および第2モータジェネレータ5を制御する。
また、ハイブリッドECU32は、シフト位置がPレンジまたはNレンジであることがシフトポジションセンサ42により検出されており、かつ、エンジン回転速度が低下して第2の所定値以下となった場合に、エンジン自律制御を禁止する。
また、ハイブリッドECU32は、シフト位置がRレンジであることがシフトポジションセンサ42により検出されており、かつ、エンジン回転速度が上昇して共振領域の下限値よりも小さい値である第3の所定値以上になった場合、モータトルクによりエンジン回転速度を低下させるように第1モータジェネレータ4および第2モータジェネレータ5を制御する。
また、ハイブリッドECU32は、エンジン2のエンジン回転速度が低下して第1の所定値以下になった場合に、HEV走行モードからEV走行モードに走行モードを変更する。HEV走行モードは、エンジン2のエンジントルク、第1モータジェネレータ4のモータトルク、第2モータジェネレータ5のモータトルクの3つのトルクのうち、少なくとも2つのトルクにより車両1を走行可能なモードである。EV走行モードは、エンジン2が停止した状態でモータトルクにより走行するモードである。
以上のように構成された本実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置においてハイブリッドECU32が実施する共振防止制御について、図4、図5、図6のフローチャートを参照して説明する。なお、図4、図5、図6に示す動作は、ハイブリッドECU32の起動とともに開始される。
図4のフローチャートにおいて、ハイブリッドECU32は、シフト位置がPレンジまたはNレンジであるか否かを判別する(ステップS11)。
ステップS11でシフト位置がPレンジまたはNレンジであると判別した場合、ハイブリッドECU32は、エンジン回転速度(図中、Negと記す)が第2の所定値以下であるか否かを判別する(ステップS12)。
ステップS11でシフト位置がPレンジまたはNレンジではないと判別した場合、ハイブリッドECU32は、後述するステップS15に処理を進める。
ステップS12の判別がYESの場合(エンジン回転速度が第2の所定値以下の場合)、ハイブリッドECU32は、エンジン自律制御を禁止し(ステップS13)、ステップS15に処理を進める。
エンジン回転速度フィードバック制御が有効のときは、ハイブリッドECU32は、エンジン2がストールしそうになったときに、エンジン回転速度を上昇させてエンジン2が自律回転を継続するように、モータECU34を介して第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5を制御する。
ステップS12の判別がNOの場合(エンジン回転速度が第2の所定値より大きい場合)、ハイブリッドECU32は、エンジン自律制御を許可し(ステップS14)、今回の動作を終了する。
ステップS15では、ハイブリッドECU32は、エンジン回転速度が第1の所定値以下であるか否かを判別する。第1の所定値は、第2の所定値より小さい値に設定されている。また、第1の所定値は、エンジン2の共振領域の上限より大きい値に設定されている。したがって、エンジン回転速度が第1の所定値以下である場合は、エンジン回転速度が共振領域の近くまで低下していることを意味する。
ステップS15でエンジン回転速度が第1の所定値以下であると判別した場合、ハイブリッドECU32は、エンジン2を停止し(ステップS16)、今回の動作を終了する。
ステップS16では、ハイブリッドECU32は、エンジン2を停止させるためのモータトルクを第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5に発生させる。これにより、第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5のモータトルクによってエンジン回転速度が急低下し、エンジン2は、共振領域を速やかに通過して停止する。
ステップS15でエンジン回転速度が第1の所定値より大きいと判別した場合、ハイブリッドECU32は、今回の動作を終了する。
図5のフローチャートにおいて、ハイブリッドECU32は、シフト位置がRレンジであるか否かを判別する(ステップS21)。
ステップS21でシフト位置がRレンジであると判別した場合、ハイブリッドECU32は、エンジン回転速度(図中、Negと記す)が第3の所定値以下であるか否かを判別する(ステップ22)。
ステップS21でシフト位置がRレンジではないと判別した場合、ハイブリッドECU32は、今回の動作を終了する。
ステップS22でエンジン回転速度が第3の所定値以下であると判別した場合、ハイブリッドECU32は、エンジン2を停止し(ステップS23)、今回の動作を終了する。
具体的には、ハイブリッドECU32は、第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5のモータトルクによってエンジン2を停止させる。このため、エンジン回転速度が共振領域に入ることが回避される。
ステップS22でエンジン回転速度が第3の所定値より大きいと判別した場合、ハイブリッドECU32は、今回の動作を終了する。
図6のフローチャートにおいて、ハイブリッドECU32は、シフト位置がDレンジであるか否かを判別する(ステップS31)。
ステップS31でシフト位置がDレンジであると判別した場合、ハイブリッドECU32は、目標駆動力が既定値より小さく、かつ、SOCが既定値より大きいか否かを判別する(ステップS32)。
ステップS31でシフト位置がDレンジではないと判別した場合、ハイブリッドECU32は、今回の動作を終了する。
ステップS32の判別がNOの場合(目標駆動力が既定値より大きい、または、SOCが既定値より小さい場合)ハイブリッドECU32は、車両1の減速度が既定値より大きいか否かを判別する(ステップS33)。
ステップS32の判別がYESの場合(目標駆動力が既定値より小さい、かつ、SOCが既定値より大きい場合)ハイブリッドECU32は、ステップS35に処理を進める。
ステップS33の判別がYESの場合(車両1の減速度が既定値より大きい場合)、ハイブリッドECU32は、エンジン回転速度(図中、Negと記す)が第1の所定値以下であるか否かを判別する(ステップS34)。
ステップS34でエンジン回転速度が第1の所定値以下であると判別した場合、ハイブリッドECU32は、ステップS35を実行し、その後、今回の動作を終了する。ステップS35では、ハイブリッドECU32は、走行モードをEV走行モードに変更する(ステップS35)。
ステップS33の判別がNOの場合、およびステップS34の判別がNOの場合、ハイブリッドECU32は、走行モードをHEV走行モードに維持したまま、今回の動作を終了する。
次に、図4、図5、図6の共振防止制御が行われたときの車両状態および制御状態の推移について、図7、図8、図9、図10のタイムチャートを参照して説明する。図中、実線で示すエンジン回転速度は本実施形態の制御による遷移を示している。また、破線で示すエンジン回転速度は従来技術の制御による遷移を示している。
図7、図8は、シフト位置がPレンジまたはNレンジでありエンジン自律制御(図中、ISC制御と記す)を実施しているときに、ドライバの急ブレーキ操作によりエンジン回転速度が急減少した場合を示している。
図7において、時刻t11では、アクセル開度およびブレーキ踏み込み量がともに0であり、車両1が惰性走行している。この時刻t11では、車速が緩やかに低下している。
その後、時刻t12では、ドライバにより急ブレーキ操作が行われてブレーキ踏み込み量が増加したため、車速およびエンジン回転速度が急減少し始める。
その後、時刻t13では、エンジン回転速度が第2の所定値より小さくなったことに応じて、本実施形態では、エンジン自律制御が禁止される。そして、エンジン自律制御が禁止されたことにより、エンジン回転速度フィードバック制御が行われる。その後、エンジン回転速度フィードバック制御が行われたことで、エンジン回転速度は、上昇を開始し、時刻t11でのエンジン回転速度と同等の回転速度まで復帰する。
一方、従来技術では、時刻t13でエンジン自律制御を禁止していないため、破線で示すように時刻t3以降もエンジン回転速度が0に向かって低下し続ける。エンジン回転速度が0まで低下する過程で、エンジン回転速度が共振領域を通過してしまう。
図8において、時刻t21では、アクセル開度およびブレーキ踏み込み量がともに0であり、車両1が惰性走行している。この時刻t21では、車速が緩やかに低下している。
その後、時刻t22では、ドライバにより急ブレーキ操作が行われてブレーキ踏み込み量が増加したため、車速およびエンジン回転速度が急減少し始める。
その後、時刻t23では、エンジン回転速度が第2の所定値より小さくなったことに応じて、本実施形態では、エンジン自律制御が禁止される。そして、エンジン自律制御が禁止されたことにより、エンジン回転速度フィードバック制御が行われる。図8では、エンジン回転速度の減速度が大きい等の理由により、エンジン回転速度フィードバック制御が行われたにも関わらず、時刻t23以降もエンジン回転速度が低下し続けている。
その後、時刻t24では、エンジン回転速度が第1の所定値よりも小さくなったことに応じて、本実施形態では、エンジン2を停止させるためのモータトルクを第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5に発生させる。これにより、時刻t24から時刻t25において、第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5のモータトルクによってエンジン回転速度が急低下し、エンジン2は、共振領域を速やかに通過して停止する。
一方、従来技術では、破線で示すように時刻t24以降も車速の低下に伴ってエンジン回転速度が低下し続ける。このため、エンジン回転速度が0に低下する過程で、本実施形態と比較してエンジン回転速度が共振領域に長い時間留まってしまう。
図9は、シフト位置がDレンジまたはBレンジでありエンジン自律制御(図中、ISC制御と記す)を実施していないときに、ドライバの急ブレーキ操作によりエンジン回転速度が急減少した場合を示している。
図9において、時刻t31でアクセル開度が0になり、時刻t32でドライバにより急ブレーキ操作が行われてブレーキ踏み込み量が増加している。これにより、時刻t33以降で、車速およびエンジン回転速度が急減少し始める。
その後、時刻t33では、エンジン回転速度が第1の所定値より小さくなったことに応じて、本実施形態では、走行モードがHEV走行モードからEV走行モードに切り替わり、エンジン2を停止させるためのモータトルクを第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5に発生させる。これにより、時刻t33から時刻t34において、第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5のモータトルクによってエンジン回転速度が急低下し、エンジン2は、共振領域を速やかに通過して停止する。
その後、時刻t35ではアクセル開度や車速に応じて、本実施形態では、走行モードがEV走行モードからHEV走行モードに切り替わり、エンジン2が燃料噴射を行って再始動を行い、エンジン2の回転速度を上昇させるためのモータトルクを第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5に発生させる。
これにより、時刻t35から時刻t36において、エンジン回転速度が急上昇し、エンジン2は、共振領域を速やかに通過する。
一方、従来技術では、破線で示すように時刻t33以降も車速の低下に伴ってエンジン回転速度が0に向かって低下し続ける。このため、エンジン回転速度が0に低下する過程で、本実施形態と比較してエンジン回転速度が共振領域に長い時間留まってしまう。
また、従来技術では、破線で示すようにHEV走行モードである状態において時刻t35でエンジン2が再始動される。このため、本実施形態と比較してエンジン回転速度が上昇する過程で、エンジン回転速度が共振領域に長い時間留まってしまう。
図10は、シフト位置がRレンジでありエンジン自律制御(図中、ISC制御と記す)を実施しているときに、ドライバの急ブレーキ操作によりエンジン回転速度が急減少した場合を示している。
図10において、時刻t41以前は、アクセル開度が0の状態で車速が一定になっている。また、エンジン回転速度は、共振領域より低い一定の回転速度となっている。
その後、時刻t41では、アクセル開度が増加したことで、エンジン回転速度および車速が増加し始める。
その後、時刻t42では、エンジン回転速度が第3の所定値まで増加したことに応じて、本実施形態では、エンジン回転速度を低下させるためのモータトルクを第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5に発生させる。
これにより、時刻t42から時刻t43において、第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5のモータトルクによってエンジン回転速度が時刻t41以前の回転速度まで低下する。このため、エンジン回転速度が共振領域に入ることが回避される。
一方、従来技術では、破線で示すように時刻t42以降も車速の増加に伴ってエンジン回転速度が増加し続ける。このため、エンジン回転速度が増加する過程で、本実施形態と比較してエンジン回転速度が共振領域に長い時間留まってしまう。
ここで、エンジン2のエンジントルクをTeg、第1モータジェネレータ4のモータトルクをTmg1、第2モータジェネレータ5のモータトルクをTmg2としたとき、これらのトルクの間には、次の式(3)が成り立つ。
Tmg1×(k1+1)+Teg×1=Tmg2×k2...(3)
第1モータジェネレータ4のモータトルクTmg1、および第2モータジェネレータ5のモータトルクTmg2は、式(3)においてエンジン停止またはエンジン回転速度が低下した場合にTegが減少するように制御される。また、エンジン回転速度が増加した場合にTegが増加するように制御される。
ここで、エンジントルク式(3)を満たすように第1モータジェネレータ4および第2モータジェネレータ5がそれぞれモータトルクを発生し、かつ、エンジントルクが負の値になった場合であっても、エンジン2のイナーシャの影響によってエンジン回転速度を速やかに減少させることができない場合がある。
そこで、エンジン2のイナーシャ分を第1モータジェネレータ4および第2モータジェネレータ5が負担する必要がある。このため、ハイブリッドECU32は、第1モータジェネレータ4がTmg1+エンジンのイナーシャ分のモータトルクを発生し、第2モータジェネレータ5がTmg2+エンジンのイナーシャ分のモータトルクを発生するように制御している。
具体的には、ハイブリッドECU32は、エンジン2のイナーシャ分を補正するため、次の式(4)で示すモータトルクを発生するように第1モータジェネレータ4を制御する。また、ハイブリッドECU32は、次の式(5)で示すモータトルクを発生するように第2モータジェネレータ5を制御する。
なお、式(4)、式(5)において、エンジン2の慣性モーメントをIeとし、エンジン2の角加速度をωとしている。このωは、エンジン2を停止させるときの回転速度の変化率に相当する。また、式(4)、式(5)において、第1モータジェネレータ4の慣性モーメントをImg1とし、第2モータジェネレータ5の慣性モーメントをImg2としている。
Tmg1+{(1+k2)/(1+k1+k2)×Ie×ω+Img1×(1+k1)×ω}...(4)
Tmg2+{k1/(1+k1+k2)×Ie×ω−Img2×k2×ω}...(5)
すなわち、ハイブリッドECU32は、式(4)で示す値を第1モータジェネレータ4の目標モータトルクに設定し、式(5)で示す値を第2モータジェネレータ5の目標モータトルクに設定する。
このように、上述の実施形態では、ハイブリッドECU32は、エンジン2のエンジン回転速度が低下して第1の所定値以下になった場合に、モータトルクによりエンジン2を停止させるように第1モータジェネレータ4および第2モータジェネレータ5を制御している。
これにより、エンジン回転速度が低下して第1の所定値以下になった場合、モータトルクによりエンジン2を停止させるように第1モータジェネレータ4および第2モータジェネレータ5が制御される。このため、エンジン回転速度の低下中にエンジン2が共振領域に留まって振動することを防止することができる。
また、上述の実施形態では、第1の所定値は、エンジン2が共振するエンジン回転速度の領域である共振領域の上限値よりも大きい値である。
これにより、エンジン回転速度が、共振領域よりも大きい第1の所定値以下に低下した場合に、エンジン2を停止させるよう第1モータジェネレータ4および第2モータジェネレータ5の各モータトルクが制御されるため、エンジン回転速度が共振領域に留まってエンジン2が振動することを防止することができる。
また、上述の実施形態では、ハイブリッドECU32は、第1モータジェネレータ4および第2モータジェネレータ5がモータトルクを発生せず、かつ、エンジン2のエンジントルクによりエンジン回転速度を自律的に調整するエンジン自律制御を実行可能である。そして、ハイブリッドECU32は、エンジン自律制御の実行中に、エンジン回転速度が低下して第1の所定値よりも大きい第2の所定値以下になった場合に、エンジン自律制御を禁止している。
これにより、エンジン自律制御の実行中に、エンジン回転速度が低下して第2の所定値以下になった場合にエンジン自律制御が禁止されるため、モータトルクによりエンジン回転速度を調整するときにエンジン自律制御が介入してしまうのを防止できる。このため、エンジン回転速度が低下して共振領域に留まることのないように、モータトルクによってエンジン回転速度を速やかに調整できる。
また、上述の実施形態では、ハイブリッドECU32は、エンジン自律制御を禁止する場合、モータトルクによりエンジン回転速度を上昇させるように第1モータジェネレータ4および第2モータジェネレータ5を制御している。
これにより、エンジン自律制御を禁止する場合、モータトルクによりエンジン回転速度を上昇させるように第1モータジェネレータ4および第2モータジェネレータ5が制御されるため、エンジン回転速度が共振領域まで低下してエンジン2が振動することを防止することができる。
また、上述の実施形態では、シフト位置を検出するシフトポジションセンサ42を車両1が備え、ハイブリッドECU32は、シフト位置がPレンジまたはNレンジであることがシフトポジションセンサ42により検出されており、かつ、エンジン回転速度が低下して第2の所定値以下となった場合に、エンジン自律制御を禁止している。
これにより、シフト位置がPレンジまたはNレンジの場合、エンジン回転速度が第2の所定値以下になった場合にエンジン自律制御が禁止されるため、エンジン回転速度が共振領域まで低下してエンジン2が振動することを防止することができる。
また、上述の実施形態では、ハイブリッドECU32は、シフト位置がRレンジであることがシフトポジションセンサ42により検出されており、かつ、エンジン回転速度が上昇して共振領域の下限値よりも小さい値である第3の所定値以上になった場合、モータトルクによりエンジン回転速度を低下させるように第1モータジェネレータ4および第2モータジェネレータ5を制御している。
これにより、シフト位置がRレンジの場合、エンジン回転速度が上昇して第3の所定値以上になった場合にモータトルクによりエンジン回転速度を低下させるように第1モータジェネレータ4および第2モータジェネレータ5が制御されるため、エンジン回転速度が共振領域まで上昇してエンジン2が振動することを防止することができる。
また、上述の実施形態では、ハイブリッドECU32は、エンジン2のエンジン回転速度が低下して第1の所定値以下になった場合に、エンジン2が停止した状態でモータトルクにより走行するEV走行モードに走行モードを変更している。
これにより、エンジン回転速度が第1の所定値以下となった場合に、EV走行モードに変更するため、エンジン2が共振領域で回転し続けて振動することを防止することができる。また、エンジン2の再始動が必要になった場合に、EV走行モードからHEV走行モードに切り替わる過程でエンジン2が再始動されるため、エンジン回転速度が緩やかに上昇してエンジン2が共振領域に昇時間留まって振動してしまうのを防止できる。
すなわち、Dレンジにおいて、エンジン回転速度が急降下する状況では、エンジン2を停止させる動作が間に合わずに勝手にエンジン2が停止する可能性が高いため、エンジン2を停止させるだけでなく走行モードをHEV走行モードからEV走行モードに変更することが好ましい。
また、仮に、走行モードをHEV走行モードからEV走行モードに変更しないままエンジン2を停止した場合、Nレンジのときはエンジン2が停止し続けるが、Dレンジのときはエンジン2が再始動されることがある。HEV走行モードでエンジン2が再始動された場合、エンジン回転速度が緩やかに上昇するため、エンジン回転速度が共振領域に滞在する時間が長くなってしまう。
そこで、本実施形態では、EV走行モードに変更することで、エンジン2が再始動する際に始動モードとして振る舞うことになり、HEV走行モードでエンジン2が再始動される時と比較してエンジン回転速度が素早く上昇し、共振領域に滞在する時間を短くできる。
本発明の実施形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。