以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1に示すように、本発明の実施の形態に係る制御装置を搭載したハイブリッド車両(以下、単に「車両」という)1は、内燃機関型のエンジン2と、第1モータジェネレータ4と、第2モータジェネレータ5と、駆動輪6と、駆動輪6に動力を伝達可能に連結された駆動軸7と、第1遊星歯車機構8と、第2遊星歯車機構9と、第1インバータ19と、第2インバータ20と、ハイブリッドECU(Electronic Control Unit)32と、エンジンECU(Electronic Control Unit)33と、モータECU(Electronic Control Unit)34と、バッテリECU(Electronic Control Unit)35とを含んで構成される。
エンジン2は、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行う4サイクルのエンジンによって構成されている。エンジン2の出力軸3は、第1遊星歯車機構8と第2遊星歯車機構9とに連結されている。
第1モータジェネレータ4は、ロータ軸13と、ロータ14と、ステータ15とを有している。ロータ14には、複数の永久磁石が埋め込まれている。ステータ15は、ステータコア及びステータコアに巻き掛けられた三相コイルを有している。ステータ15の三相コイルは、第1インバータ19に接続されている。
このように構成された第1モータジェネレータ4において、ステータ15の三相コイルに三相交流電力が供給されると、ステータ15によって回転磁界が形成される。この回転磁界にロータ14に埋め込まれた永久磁石が引かれることにより、ロータ14がロータ軸13周りに回転駆動される。すなわち、第1モータジェネレータ4は、電動機として機能し、車両1を駆動する駆動力を生成することができる。
また、ロータ14がロータ軸13周りに回転すると、ロータ14に埋め込まれた永久磁石によって回転磁界が形成され、この回転磁界によりステータ15の三相コイルに誘導電流が流れることにより、三相の交流電力が発生する。すなわち、第1モータジェネレータ4は、発電機としても機能する。
第1インバータ19は、モータECU34の制御により、バッテリ21などから供給された直流の電力を三相の交流電力に変換する。この三相の交流電力は、第1モータジェネレータ4のステータ15の三相コイルに供給される。
第1インバータ19は、モータECU34の制御により、第1モータジェネレータ4によって生成された三相の交流電力を直流の電力に変換する。この直流の電力は、例えば、バッテリ21を充電する。
第2モータジェネレータ5は、ロータ軸16と、ロータ17と、ステータ18とを有している。ロータ17には、複数の永久磁石が埋め込まれている。ステータ18は、ステータコア及びステータコアに巻き掛けられた三相コイルを有している。ステータ18の三相コイルは、第2インバータ20に接続されている。
このように構成された第2モータジェネレータ5において、ステータ18の三相コイルに三相交流電力が供給されると、ステータ18によって回転磁界が形成される。この回転磁界にロータ17に埋め込まれた永久磁石が引かれることにより、ロータ17がロータ軸16周りに回転駆動される。すなわち、第2モータジェネレータ5は、電動機として機能し、車両1を駆動する駆動力を生成することができる。
また、ロータ17がロータ軸16周りに回転すると、ロータ17に埋め込まれた永久磁石によって回転磁界が形成され、この回転磁界によりステータ18の三相コイルに誘導電流が流れることにより、三相の交流電力が発生する。すなわち、第2モータジェネレータ5は、発電機としても機能する。
第2インバータ20は、モータECU34の制御により、バッテリ21などから供給された直流の電力を三相の交流電力に変換する。この三相の交流電力は、第2モータジェネレータ5のステータ18の三相コイルに供給される。
第2インバータ20は、モータECU34の制御により、第2モータジェネレータ5によって生成された三相の交流電力を直流の電力に変換する。この直流の電力は、例えば、バッテリ21を充電する。
第1遊星歯車機構8は、サンギヤ22と、サンギヤ22に噛み合う複数のプラネタリギヤ23と、複数のプラネタリギヤ23に噛み合うリングギヤ25と、プラネタリギヤ23を自転可能に支持するプラネタリキャリア24とを備えている。
第2遊星歯車機構9は、サンギヤ26と、サンギヤ26に噛み合う複数のプラネタリギヤ27と、複数のプラネタリギヤ27に噛み合うリングギヤ29と、プラネタリギヤ27を自転可能に支持するプラネタリキャリア28とを備えている。
第1遊星歯車機構8のサンギヤ22は、第1モータジェネレータ4のロータ14と一体に回転するように、中空のロータ軸13に連結されている。第1遊星歯車機構8のプラネタリキャリア24と、第2遊星歯車機構9のサンギヤ26とは、エンジン2の出力軸3と一体に回転するように連結されている。
第1遊星歯車機構8のリングギヤ25には、第2遊星歯車機構9のプラネタリギヤ27がロータ軸16周りに公転するようにプラネタリキャリア28を介して連結されている。また、第1遊星歯車機構8のリングギヤ25は、図示しないデファレンシャルギヤ及びその他のギヤを含むギヤ機構31を介して駆動軸7を回転させるように設けられている。第2遊星歯車機構9のリングギヤ29は、第2モータジェネレータ5のロータ17と一体に回転するようにロータ軸16に連結されている。
第1遊星歯車機構8及び第2遊星歯車機構9は、動力伝達機構10を構成する。動力伝達機構10は、エンジン2の出力軸3と、第1モータジェネレータ4のロータ軸13と、第2モータジェネレータ5のロータ軸16と、駆動軸7とが連結された遊星歯車機構を構成する。
このように、動力伝達機構10は、エンジン2と、第1モータジェネレータ4と、第2モータジェネレータ5と、駆動軸7との間で駆動力を授受させるようになっている。例えば、動力伝達機構10は、エンジン2と、第1モータジェネレータ4と、第2モータジェネレータ5とによって生成された動力を駆動軸7に伝達するようになっている。
ハイブリッドECU32、エンジンECU33、モータECU34及びバッテリECU35は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによってそれぞれ構成されている。
これらのコンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをハイブリッドECU32、エンジンECU33、モータECU34及びバッテリECU35としてそれぞれ機能させるためのプログラムが格納されている。
すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、これらのコンピュータユニットは、本実施の形態におけるハイブリッドECU32、エンジンECU33、モータECU34及びバッテリECU35としてそれぞれ機能する。
車両1には、CAN(Controller Area Network)等の規格に準拠した車内LAN(Local Area Network)を形成するためのCAN通信線39が設けられている。ハイブリッドECU32、エンジンECU33、モータECU34及びバッテリECU35は、CAN通信線39を介して制御信号等の信号の送受信を相互に行う。
ハイブリッドECU32は、主として、エンジンECU33、モータECU34及びバッテリECU35などの各種ECUを統括的に制御する。エンジンECU33は、主として、エンジン2を制御する。
モータECU34は、主として、第1インバータ19及び第2インバータ20を介して第1モータジェネレータ4と、第2モータジェネレータ5を制御する。バッテリECU35は、主として、バッテリ21の状態を管理する。
また、モータECU34は、第1インバータ19及び第2インバータ20を介して第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5の回転速度を算出し、第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5の回転速度から第1遊星歯車機構8のリングギヤ25の回転速度(以下、「駆動回転速度」とする。)を算出する。リングギヤ25の回転速度は、駆動回転速度にギヤ機構31のギヤ比(定数)を乗算した値であり、駆動回転速度に比例する値である。
ハイブリッドECU32は、モータECU34によって算出された駆動回転速度に速度変換係数を乗算して車速を算出する。速度変換係数は、駆動回転速度を車速に変換するための定数であり、具体的には、タイヤ外径とギヤ機構31のギヤ比の乗算値である。速度変換係数は、ハイブリッドECU32のROMまたはフラッシュメモリに格納されている。ここで車速とは、車両1が前進方向に進んでいる場合は正の値であり、車両1が後進方向に進んでいる場合は負の値であるものとする。
本実施形態において、ハイブリッドECU32の入力ポートには、アクセル開度センサ41を含む各種センサ類が接続されている。
アクセル開度センサ41は、運転者による図示しないアクセルペダルの踏み込み量(以下、アクセル踏み込み量ともいう)を検出する。
エンジンECU33は、ハイブリッドECU32からのトルク指令信号により、エンジン2の発生するエンジントルクがトルク指令信号に設定されたトルク指令値になるようにエンジン2を制御する。エンジンECU33は、不図示のインジェクタやスロットルバルブを制御することにより燃料噴射量や吸入空気量を制御する。そして、エンジンECU33は、燃料噴射量や吸入空気量を制御することにより、エンジン2の発生するエンジントルクを制御する。
バッテリECU35の入力ポートには、バッテリ状態検出センサ45が接続されている。バッテリ状態検出センサ45は、バッテリ21の充放電電流、電圧及びバッテリ温度を検出する。バッテリECU35は、バッテリ状態検出センサ45から入力される充放電電流の値、電圧の値及びバッテリ温度の値に基づき、バッテリ21の充電状態(以下SOCという)などを検出する。
バッテリ状態検出センサ45は、バッテリ21の充放電電流を検出する電流センサに、電圧を検出する電圧センサ及びバッテリ温度を検出するバッテリ温度センサを付設したものから構成されている。なお、電流センサと電圧センサとバッテリ温度センサとを別に設けてもよい。
このような車両1において、ハイブリッドECU32は、図2に示す過程を経て目標エンジン回転速度および目標エンジントルクを算出する。
図2において、ハイブリッドECU32は、車速と、アクセル踏み込み量とに基づいて、目標駆動力を算出する。本実施形態では、ハイブリッドECU32は、図4に示す目標駆動力検索マップを参照して目標駆動力を算出する。
また、ハイブリッドECU32は、この目標駆動力と車速とに基づいて目標駆動パワーを算出する。また、ハイブリッドECU32は、SOCに基づいて目標充放電パワーを算出する。本実施形態では、ハイブリッドECU32は、図5に示す目標充放電パワー検索マップを参照して目標充放電パワーを算出する。なお、目標充放電パワーは、放電側を正とする値である。
また、ハイブリッドECU32は、この目標充放電パワーと目標駆動パワーと第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5、第1インバータ19、第2インバータ20のロスパワー(以下、単に「ロスパワー」とする。)とに基づいて目標エンジンパワーを算出する。具体的には、目標駆動パワーから目標充放電パワーを減算し、さらにロスパワーを加算した値を目標エンジンパワーとする。このとき、算出された目標エンジンパワーが、車両の運転状態に応じたエンジンパワーの最大値より大きい値である場合は、車両の運転状態に応じたエンジンパワーの最大値を目標エンジンパワーとする。さらに、ハイブリッドECU32は、この目標エンジンパワーと車速とに基づいて目標エンジン動作点を算出し、目標エンジン回転速度および目標エンジントルクを算出する。
ここで、第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5による発電や力行(動力を車輪(駆動輪)に伝えて加速、または上り勾配で均衡速度を保つこと)を行う場合、第1インバータ19、第2インバータ20や第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5での発熱による損失が発生する。このため電気エネルギと機械的エネルギとの間で変換を行う場合の効率は100%ではない。このため、これらの損失(ロスパワー)を考慮して目標MGトルクを算出している。例えば、ハイブリッドECU32は、損失により失われるエネルギの分だけ余分に目標エンジンパワーを算出する。
本実施形態では、ハイブリッドECU32は、図6に示す動作点決定マップを参照して、目標エンジン動作点、目標エンジン回転速度および目標エンジントルクを算出する。
一方、ハイブリッドECU32は、図3に示す過程を経て第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5のモータトルク指令値(図中、MGトルク指令値と記す)を算出する。なお、第1モータジェネレータ4と第2モータジェネレータ5のモータトルクの総称をMGトルクともいい、第1モータジェネレータ4と第2モータジェネレータ5の回転速度の総称をMG回転速度ともいう。以下、第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5のことをMG1、MG2ともいう。また、第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5の総称をモータジェネレータまたはMGともいう。
図3において、ハイブリッドECU32は、目標電力と目標エンジントルクとに基づいて、基本MGトルクを算出する。ここで、目標電力とは、目標エンジンパワーと目標駆動パワーとの偏差を示すものである。また、ハイブリッドECU32は、実エンジン回転速度と目標エンジン回転速度とに基づいて、これらの間の差異を補正するためのモータトルクであるMG回転フィードバックトルクを算出する。
そして、ハイブリッドECU32は、基本MGトルクと、MG回転フィードバックトルクとに基づいて、目標MGトルクを算出する。具体的には、基本MGトルクにMG回転フィードバックトルクを加算した値を目標MGトルクとして算出する。
また、ハイブリッドECU32は、目標エンジン回転速度に基づいてエンジンイナーシャトルクを算出し、このエンジンイナーシャトルクに基づいてエンジンイナーシャ補正用トルクを算出する。
また、ハイブリッドECU32は、目標MG回転速度と駆動回転速度とに基づいて、第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5のイナーシャを補正するためのモータジェネレータイナーシャ補正用トルク(図中、MGイナーシャ補正用トルクと記す)を算出する。以下、モータジェネレータイナーシャ補正用トルクのことを、MGイナーシャ補正用トルクともいう。
そして、ハイブリッドECU32は、エンジンイナーシャ補正用トルクとMGイナーシャ補正用トルクとに基づいて、エンジン2のイナーシャと第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5のイナーシャの両方を補正するためのモータトルクを、イナーシャ補正用トルクとして算出する。
その後、ハイブリッドECU32は、目標MGトルクとイナーシャ補正用トルクとに基づいて、第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5のモータトルクの指令値を、MGトルク指令値として算出する。
図7、図9は、車両1の共線図である。この共線図において、各縦軸は、図中、左から第1モータジェネレータ4(図中、MG1と記す)の回転速度、エンジン2(図中、ENGと記す)のエンジン回転速度、駆動軸7(図中、OUTと記す)の回転速度、第2モータジェネレータ5(図中、MG2と記す)の回転速度をそれぞれ表している。
なお、共線図上では、エンジン2の回転方向を正方向とし、各軸に入出力されるトルクはエンジン2のトルクと同じ向きのトルクが入力される方向を正として定義する。従って駆動軸7の駆動軸トルクが正の場合は車両1を後方へ駆動しようとするトルクが出力されている状態(前進時であれば減速、後進時であれば駆動)であり、駆動軸トルクが負の場合は車両1を前方へ駆動しようとするトルクが出力されている状態(前進時であれば駆動、後進時であれば減速)である。
ここで、エンジン回転速度をNeng、駆動回転速度をNout、第1モータジェネレータ4の回転速度をNmg1、第2モータジェネレータ5の回転速度をNmg2としたとき、Nmg1、Nmg2は以下のように定義される。なお、エンジン2と第1遊星歯車機構8のリングギヤ25の間のレバー長を1とし、エンジン2と第1モータジェネレータ4の間のレバー長をk1とし、駆動軸7と第2モータジェネレータ5の間のレバー長をk2としている。
Nmg1=(1+k1)Neng−k1・Nout
Nmg2=(1+k2)Nout−k2・Neng
また、図7、図9の共線図において、横軸における各軸間の距離比(レバー長の比)は、第1遊星歯車機構8及び第2遊星歯車機構9の各ギヤの歯数の比により定まる。
ここで、第1遊星歯車機構8のリングギヤ歯数Zr1とサンギヤ歯数Zs1の比(Zr1/Zs1)をk1とする。また、第2遊星歯車機構9のサンギヤ歯数Zs2とリングギヤ歯数Zr2の比(Zs2/Zr2)をk2とする。すなわち、k1=ZR1/ZS1が成立し、k2=ZS2/ZR2が成立する。
本実施形態の車両1では、エンジン2と動力伝達機構10との間にクラッチ等の断続機構が設けられていない。言い換えると、動力伝達機構10に対して、第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5、エンジン2、駆動軸7が常時連結されている。このため、図7、図9の共線図が常に成り立つので、エンジン回転速度Neng、駆動回転速度Nout、第1モータジェネレータ4の回転速度Nmg1、第2モータジェネレータ5の回転速度Nmg2のうち、何れか2つの回転速度が決定すれば、残りの2つの回転速度も一意に定まる。
このように、本実施形態の車両1は、4つの回転要素を有する動力伝達機構10の各回転要素に、エンジン2の出力軸3、第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5、駆動軸7を接続し、エンジン2の動力と第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5の動力を動力伝達機構10で合成して駆動軸7に出力する構成(いわゆる4軸式)を備えている。
図7において、L11で示す共線図は、駆動軸の回転速度の変化を考慮しない場合、すなわちL1の共線図に対して車速(駆動軸の回転速度)が変わらない場合の共線図である。L12で示す共線図は、駆動軸の回転速度の変化を考慮した場合、すなわちL1の共線図に対して車速(駆動軸の回転速度)が変化(加速)する場合の共線図である。
より詳しくは、L11で示す共線図は、L1で示す共線図から車速が一定のままエンジン2を始動させた場合を示している。また、L12で示す共線図は、L1で示す共線図から車速が増加しながらエンジン2を始動させた場合を示している。
車速が増加しながらエンジン2を始動させる際に実エンジン回転速度を目標エンジン回転速度に追従させようとする場合、エンジン2の回転速度の変化だけでなく、駆動軸7の回転速度の変化も考慮して、第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5を制御する必要がある。
図7から分かるように、L11とL12とで第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5の回転速度に差がある。このため、駆動軸の回転速度の変化を考慮せずに、従来のようにMG目標回転速度に基づいたイナーシャ分のみで第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5のMGイナーシャを計算した場合、L11とL12の差の分だけ、算出されるMGイナーシャと実際のMGイナーシャとが異なってしまう。
本実施形態では、駆動軸の回転速度の変化によるMG回転速度変化分を考慮してMGイナーシャ補正用トルクを算出しているため、図8に実線で示すように、制御を開始した時刻t1以降の何れの時刻においても、目標エンジン回転速度に実エンジン回転速度を追従させることができ、実エンジン回転速度がオーバーシュートすることを防止できる。
一方、従来技術では、駆動軸の回転速度の変化によるMG回転速度変化分を考慮していないため、図8に破線で示すように、時刻t1以降で目標エンジン回転速度と実エンジン回転速度との差が暫時増大し、時刻t2ではエンジン回転速度がオーバーシュートしている。
図9おいて、Lt1は図8の時刻t1における共線図である。また、Lt2は図8の時刻t2における共線図である。本実施形態では、駆動軸の回転速度の変化によるMG回転速度変化分を考慮してMGイナーシャ補正用トルクを算出しているため、Lt2の共線図において、エンジン回転速度が目標エンジン回転速度に一致しており、実エンジン回転速度がオーバーシュートすることを防止できる。
一方、従来技術では、駆動軸の回転速度の変化によるMG回転速度変化分を考慮していないため、図9に破線で示すように、時刻t2において目標エンジン回転速度に対してエンジン回転速度がオーバーシュートしている。
以上のように構成された本実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置においてハイブリッドECU32が実施するモータトルク指令値算出動作について、図10のフローチャートを参照して説明する。なお、図10に示す動作は、ハイブリッドECU32の起動とともに開始され、所定の制御周期で繰り返し実行される。
図10のフローチャートにおいて、ハイブリッドECU32は、まず目標電力、目標エンジントルクより基本MGトルクを算出する(ステップS11)。
次いで、ハイブリッドECU32は、実エンジン回転速度、目標エンジン回転速度より、MG回転フィードバックトルクを算出する(ステップS12)。
次いで、ハイブリッドECU32は、基本MGトルクと、MG回転フィードバックトルクとから、目標MGトルクを算出する(ステップS13)。
次いで、ハイブリッドECU32は、目標エンジン回転速度よりエンジンイナーシャ補正用トルクを算出する(ステップS14)。
次いで、ハイブリッドECU32は、目標MG回転速度、駆動軸の回転速度よりMGイナーシャ補正用トルクを算出する(ステップS15)。
次いで、ハイブリッドECU32は、エンジンイナーシャ補正用トルク、MGイナーシャ補正用トルクよりイナーシャ補正用トルクを算出する(ステップS16)。
次いで、ハイブリッドECU32は、目標MGトルクにイナーシャ補正用トルクを加算してMGトルク指令値を算出する(ステップS17)。
次に、目標とする駆動力を車両1が出力しつつ、バッテリ21の充放電量を目標値とする場合の、第1モータジェネレータ4と第2モータジェネレータ5の目標モータトルクの演算過程について、計算式等を用いて詳しく説明する。
先ず、ハイブリッドECU32は、モータECU34によって算出された現在の駆動回転速度Noを取得する。
そして、ハイブリッドECU32は、実エンジン回転速度が目標エンジン回転速度Netとなった場合の、第1モータジェネレータ4のMG1回転速度Nmg1tと、第2モータジェネレータ5のMG2回転速度Nmg2tを次の式(1)、(2)により算出する。
Nmg1t=(Net−No)×k1+Net・・・(1)
Nmg2t=(No−Net)×k2+No・・・(2)
この式(1)、(2)は動力伝達機構10の各ギヤの回転速度の関係から求められる。ここで、(1)、(2)のk1、k2は後述するように動力伝達機構10の各ギヤのギヤ比により定まる値である。
次に、ハイブリッドECU32は、第1モータジェネレータ4のMG1回転速度Nmg1tと第2モータジェネレータ5のMG2回転速度Nmg2t、及び、目標電力Pbatt、目標エンジントルクTet、から第1モータジェネレータ4の基本トルクTmg1iを算出する。ここでは、ハイブリッドECU32は、第1モータジェネレータ4の基本トルクTmg1iを次の式(3)により算出する。
Tmg1i=(Pbatt×60/2π−Nmg2t×Tet/k2)/{Nmg1t+Nmg2t×(1+k1)/k2}・・・(3)
この式(3)は、以下に示す動力伝達機構10の各ギヤに入力されるトルクのバランスを表す式(4)、及び、第1モータジェネレータ4と第2モータジェネレータ5とで発電又は消費される電力と、目標電力Pbattが等しいことを表す式(5)から成る連立方程式を解くことにより導き出せる。なお、目標電力は、目標エンジンパワーと目標駆動パワーとの偏差であり、ロスパワーによる電力損失分が考慮された値である。
Tet+(1+k1)×Tmg1=k2×Tmg2・・・式(4)
Nmg1×Tmg1×2π/60+Nmg2×Tmg2×2π/60=Pbatt・・・(5)
式(4)は本発明におけるトルクバランス式である。また、式(5)は、本発明における電力バランス式である。
そして、ハイブリッドECU32は、第1モータジェネレータ4の基本トルクTmg1iを算出し、その後、第1モータジェネレータ4の基本トルクTmg1i、目標エンジントルクから第2モータジェネレータ5の基本トルクTmg2iを算出する。ここでは、ハイブリッドECU32は、第2モータジェネレータ5の基本トルクTmg2iを次の式(6)により算出する。
Tmg2i={Tet+(1+k1)×Tmg1i}/k2・・・(6)
この式(6)は上記の式(4)から導き出したものである。また、ハイブリッドECU32は、第2モータジェネレータ5の基本トルクTmg2iを算出した後に、第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5のフィードバック補正トルクTmg1fb、Tmg2fbをそれぞれ算出する。
ここでは、ハイブリッドECU32は、実エンジン回転速度を目標エンジン回転速度に近づけるために、目標エンジン回転速度と実エンジン回転速度の偏差に、予め設定した所定のフィードバックゲインを乗算することで、第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5のフィードバック補正トルクTmg1fb、Tmg2fbをそれぞれ算出する。この演算で用いるフィードバックゲインは、その比が次の式(7)の関係を満たすように設定しておく。
MG2フィードバックゲイン=k1/(1+k2)×MG1フィードバックゲイン・・・(7)
こうすることによりフィードバック補正トルクの比が、次の式(8)のようになる。
Tmg2fb={k1/(1+k2)}×Tmg1fb・・・(8)
このため、エンジントルクが変動しても駆動軸トルクが変動しないようにすることができる。
ここで、駆動軸トルクが変動しない理由について説明する。比較のため、仮に実エンジン回転速度を目標エンジン回転速度に近づけるために第1モータジェネレータ4のみフィードバックを行った場合を想定する。
トルクの変化量に着目して、トルクバランス式に基づき実エンジントルクが目標エンジントルクに対してΔTeだけ変化した場合のMG1トルクのフィードバック補正トルクTmg1fbを計算すると、
Tmg1fb=−ΔTe/(1+k1)・・・(9)
となる。ただし、ΔTeは不明であるため、実際には前述のようにMG1トルクのフィードバック補正トルクTmg1fbは回転速度フィードバックにより算出している。そして、駆動軸トルクの変化量ΔToは、
ΔTo=−ΔTe×k1/(1+k1)・・・(10)
となり、エンジントルクの変化により駆動軸トルクが変化してしまう。そこで、本実施形態では、第1モータジェネレータ4のフィードバック補正に加えて第2モータジェネレータ5もフィードバック補正している。
また、図7のように、駆動軸7を支点として共線図が変化する際のトルクの変化量に着目したトルクバランス式は、次の式(11)で表される。この式(11)は本発明におけるトルクバランス式である。
k2×Tmg2fb=ΔTe+(1+k1)×Tmg1fb・・・(11)
このように、駆動軸トルクの変化量は各トルクの変化量の和に等しい。このため、次の式(12)が成立する。
ΔTo=Tmg1fb+ΔTe+Tmg2fb・・・(12)
この式(12)において、駆動軸トルクの変化量が無い場合にはΔTo=0となるため、次の式(13)が成立する。
Tmg1fb+ΔTe+Tmg2fb=0・・・(13)
上記の式(11)と式(13)を解くと前述の式(8)となり、この関係が成立すればエンジントルクが変化しても駆動軸トルクは変化しないことが判る。
ハイブリッドECU32は、第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5のフィードバック補正トルクTmg1fb、Tmg2fbを算出した後、第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5の制御用トルク指令値Tmg1、Tmg2を算出する。
ここでは、ハイブリッドECU32は、各フィードバック補正トルクを各基本トルクに加算して、第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5の制御用トルク指令値Tmg1、Tmg2を算出する。
そして、ハイブリッドECU32は、この制御用トルク指令値Tmg1、Tmg2に従って第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5を制御する。これにより、エンジントルクが外乱によって変動しても、目標とする駆動力を出力することができる。
ここで、車両1の各種の走行状態における第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5の制御について説明する。
(A)LOWギヤ比状態
LOWギヤ比状態は、エンジン2により走行し、第2モータジェネレータ5の回転速度が0の状態である。この場合、第2モータジェネレータ5の回転速度は0であるため電力は消費しない。従って、バッテリ21への充放電が無い場合には、第1モータジェネレータ4で発電を行う必要はないため、第1モータジェネレータ4のトルク指令値Tmg1は0となる。また、エンジン回転速度と駆動回転速度の比は(1+k2)/k2となる。
(B)中間ギヤ比状態
中間ギヤ比状態は、エンジン2により走行し、第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5の回転速度が正の状態である。この場合、バッテリ21への充放電が無い場合、第1モータジェネレータ4は回生となり、この回生電力を用いて第2モータジェネレータ5を力行させる。
(C)HIGHギヤ比状態
HIGHギヤ比状態は、エンジン2により走行し、第1モータジェネレータ4の回転速度が0の状態である。この状態では、第1モータジェネレータ4の回転速度は0であるため回生はしない。従って、バッテリ21への充放電が無い場合には、第2モータジェネレータ5での力行や回生は行わず、第2モータジェネレータ5のトルク指令値Tmg2は0となる。またエンジン回転速度と駆動回転速度の比は、k1/(1+k1)となる。
(D)動力循環が発生している状態
この状態は、HIGHギヤ比状態よりさらに車速が高い状態では、第1モータジェネレータ4が逆回転する状態となる。この状態では、第1モータジェネレータ4は力行となり電力を消費する。従ってバッテリ21への充放電がない場合には第2モータジェネレータ5が回生となり発電を行う。
つまり、実エンジン回転速度を目標エンジン回転に近づけるようにするための、第1モータジェネレータ4と第2モータジェネレータ5の回転フィードバックトルクを、実エンジン回転速度と目標エンジン回転速度との偏差に基づき算出するとともに、第1モータジェネレータ4と第2モータジェネレータ5のフィードバックトルクの比を、駆動軸トルクに影響を与えないような動力伝達機構10のギヤ比に基づく所定の比となるようにする。
そして、本実施形態では、MG2フィードバックトルク=k1/(1+k2)*MG1フィードバックトルク、となるように制御する。また、MG2フィードバックゲイン=k1/(1+k2)*MG1フィードバックゲイン、となるようにフィードバックゲインを設定する。これにより、実エンジントルクが目標エンジントルクに対して変化しても、駆動力が変動しないようにできる。
また、ハイブリッドECU32は、アクセル踏み込み量、車速、SOC、目標エンジン回転速度、目標エンジン回転速度前回値などの各種信号の取り込みを行う。なお、目標エンジン回転速度前回値とは、一周期前の演算時の目標エンジン回転速度である。
この各種信号の取り込みを行った後、ハイブリッドECU32は、目標エンジン回転速度、目標エンジン回転速度前回値から次の式(14)を用いて目標エンジン回転加速度Netaを算出する。
Neta=(Net−Neto)/Tc・・・(14)
Neta:目標エンジン回転加速度
Net:目標エンジン回転速度
Neto:目標エンジン回転速度前回値
Tc:本ルーチン実行周期
そして、ハイブリッドECU32は、目標エンジン回転加速度Netaと予め設定されたエンジン2のイナーシャから、次の式(15)を用いてエンジンイナーシャトルクTieを算出する。
Tie=−Ie×2π/60×Neta・・・(15)
Tie:エンジンイナーシャトルク
Ie:エンジンイナーシャ
Neta:目標エンジン回転加速度
その後、ハイブリッドECU32は、エンジンイナーシャトルクTieから、次の式(16)、式(17)を用いてエンジンイナーシャ補正用MG1トルクTmg1ie、エンジンイナーシャ補正用MG2トルクTmg2ieを算出する。
なお、本実施形態の車両1は4軸式のハイブリッド車両であるため、エンジンイナーシャトルクをMG1とMG2の両方で補正することにより、駆動軸7のトルク変動を抑制することが可能である。
Tmg1ie=(k2+k1)/(k1+k2+1)×Tie・・・(16)
Tmg1ie:エンジンイナーシャ補正用MG1トルク
Tie:エンジンイナーシャトルク
k1:エンジン−駆動軸間を1とした場合のMG1−エンジン間のレバー比
k2:エンジン−駆動軸間を1とした場合の駆動軸−MG2間のレバー比
Tmg2ie=k1/(k1+k2+1)×Tie・・・(17)
Tmg2ie:エンジンイナーシャ補正用MG2トルク
Tie:エンジンイナーシャトルク
k1:エンジン−駆動軸間を1とした場合のMG1−エンジン間のレバー比
k2:エンジン−駆動軸間を1とした場合の駆動軸−MG2間のレバー比
次に、ハイブリッドECU32は、駆動回転速度、駆動回転速度前回値から次の式(18)を用いて、第1遊星歯車機構8のリングギヤ25の回転加速度(以下、「駆動回転加速度Noa」とする。)を算出する。
Noa=(No−Noo)/Tc・・・(18)
Noa:駆動転加速度
No:駆動回転速度
Noo:駆動回転速度前回値
Tc:本ルーチン実行周期
その後、ハイブリッドECU32は、目標エンジン回転加速度Netaから、次の式(19)、式(20)を用いて目標MG1回転加速度Nmg1ta、目標MG2回転加速度Nmg2taを算出する。
このとき、目標MG1回転加速度Nmg1ta、目標MG2回転加速度Nmg2taは、目標エンジン回転加速度Neta、駆動回転加速度Noaからレバー比を用いて求めることができる。
Nmg1ta=(k1+1)Neta−k1×Noa・・・(19)
Nmg1ta:目標MG1回転加速度
Neta:目標エンジン回転加速度
Noa:駆動回転加速度
k2:エンジン−駆動軸間を1とした場合の駆動軸−MG2間のレバー比
Nmg2ta=−k2Neta+(1+k2)×Noa・・・(20)
Nmg2ta:目標MG2回転加速度
Neta:目標エンジン回転加速度
Noa:駆動回転加速度
k2:エンジン−駆動軸間を1とした場合の駆動軸−MG2間のレバー比
その後、ハイブリッドECU32は、目標MG1回転加速度Nmg1ta、目標MG2回転加速度Nmg2taから、次の式(20)、式(21)を用いてMG1イナーシャ補正用MG1トルクTmg1img1、MG2イナーシャ補正用MG2トルクTmg2img2を算出する。
Tmg1img1=Img1×2π/60×Nmg1ta・・・(20)
Tmg1Iimg1:MG1イナーシャ補正用MG1トルク
Img1:MG1イナーシャ
Nmg1ta:目標MG1回転加速度
Tmg2img2=Img2×2π/60×Nmg2ta・・・(21)
Tmg2img2:MG2イナーシャ補正用MG2トルク
Img2:MG2イナーシャ
Nmg2ta:目標MG2回転加速度
その後、ハイブリッドECU32は、エンジンイナーシャ補正用MG1トルクTmg1ie、エンジンイナーシャ補正用MG2トルクTmg2ie、及び、MG1イナーシャ補正用MG1トルクTmg1img1、MG2イナーシャ補正用MG2トルクTmg2img2から、次の式(22)、式(23)を用いてイナーシャ補正用MG1トルクTmg1in、イナーシャ補正用MG2トルクTmg2inを算出する。
Tmg1in=Tmg1ie+Tmg1img1・・・(22)
Tmg1in:イナーシャ補正用MG1トルク
Tmg1ie:エンジンイナーシャ補正用MG1トルク
Tmg1img1:MG1イナーシャ補正用MG1トルク
Tmg2in=Tmg2ie+Tmg2img・・・(23)
Tmg2in:イナーシャ補正用MG2トルク
Tmg2ie:エンジンイナーシャ補正用MG2トルク
Tmg2img2:MG2イナーシャ補正用MG2トルク
この式(22)、(23)を用いた処理では、エンジン2を始動(上昇)させる際のイナーシャトルクおよびイナーシャ補正トルクの方向と大きさは、図7、図9の通りとなる。この図7、図9に示す通り、動力源のイナーシャトルクを補正することにより、駆動軸7のトルク変動は発生しない。
その後、ハイブリッドECU32は、一周期後の演算用に、今回の演算で使用した目標エンジン回転速度を目標エンジン回転速度前回値として保存する。
その後、ハイブリッドECU32は、第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5の制御用トルク指令値Tmg1、Tmg2に、イナーシャ補正用MG1トルクTmg1in、イナーシャ補正用MG2トルクTmg2inをそれぞれ加算し、第1モータジェネレータ4の制御用最終トルク指令値Tmg1_finalと、第2モータジェネレータ5の制御用最終トルク指令値Tmg2_finalを算出する。
このように、本実施形態では、エンジン2、第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5、駆動軸7のイナーシャトルクを全て考慮して、駆動軸にトルク変動が発生しないように、第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5のモータトルクを補正している。
すなわち、この車両1では、MG1のイナーシャをMG1で補正し、MG2のイナーシャをMG2で補正するとともに、エンジン2と駆動軸7のイナーシャを考慮して、駆動軸7にトルク変動が発生しないように、第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5のモータトルクを補正している。
これにより、エンジン2の回転速度の変化と駆動軸7の回転速度の変化に起因する駆動軸のトルク変動を抑制できる。
このように、上述の実施形態では、ハイブリッドECU32は、少なくともエンジン2と第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5とのトルクの関係と、第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5の動作によって消費される電力とバッテリ21に入出力される電力との関係とに基づいて、第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5の目標モータトルクを算出する。
そして、ハイブリッドECU32は、駆動軸7の回転速度の変化を考慮したモータジェネレータイナーシャ補正用トルクを駆動回転速度に基づいて算出する。
そして、ハイブリッドECU32は、目標モータトルクにモータジェネレータイナーシャ補正用トルクを加算して、第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5に指令するモータトルク指令値を算出する。
上記構成によれば、駆動軸の回転速度に基づいて算出されるモータジェネレータイナーシャ補正用トルクを目標モータトルクに加算して、モータトルク指令値を算出するため、駆動軸の回転速度が変化することによるモータジェネレータのイナーシャトルクを補償して、エンジン回転速度が影響を受けることを抑制することができる。
この結果、駆動軸の回転速度の変化によりエンジン回転速度が影響を受けることを抑制できる。
具体的には、図11に示すように、駆動軸の回転速度が一定のときだけでなく増加する場合(車両加速時)も、駆動軸の回転速度の変化率を考慮した適切なMG1イナーシャ補正用トルク、MG2イナーシャ補正用トルクを算出できる。これにより、車両1の一定速時および加速時で、実エンジン回転速度を目標エンジン回転速度に追従させることができる。
また、上述の実施形態では、ハイブリッドECU32は、駆動軸の回転速度とエンジン2の目標エンジン回転速度とに基づいて、モータジェネレータイナーシャ補正用トルクを算出する。
上記構成によれば、駆動軸の回転速度と目標エンジン回転速度とに基づいてモータジェネレータイナーシャ補正用トルクを算出するため、駆動軸の回転速度が変化することによる影響を考慮してモータジェネレータのイナーシャトルクを補償でき、エンジン回転速度が影響を受けることを抑制することができる。
また、上述の実施形態では、ハイブリッドECU32は、エンジン2のイナーシャトルクを補償するためのモータトルクであるエンジンイナーシャ補正用トルクを目標エンジン回転速度に基づいて算出する。そして、ハイブリッドECU32は、目標モータトルクにエンジンイナーシャ補正用トルクを加算して、モータトルク指令値を算出する。
上記構成によれば、駆動軸の回転速度と目標エンジン回転速度とに基づいて算出されたモータジェネレータイナーシャ補正用トルクと、目標エンジン回転数に基づいて算出されるエンジンイナーシャ補正用トルクとを、目標モータトルクに加算してモータトルク指令値が算出される。このため、エンジンのイナーシャによって駆動軸7に出力されるトルクが変動することを抑制しつつ、駆動軸の回転速度変動によってエンジン回転速度が影響を受けることを抑制することができる。
また、上述の実施形態では、ハイブリッドECU32は、エンジン2と第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5とのトルクの関係を示すトルクバランス式と、第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5の動作によって消費される電力とバッテリ21に入出力される電力との関係を示す電力バランス式と、目標エンジン回転速度と実エンジン回転速度との偏差とに基づいて、目標モータトルクを算出する。
上記構成によれば、トルクバランス式と、電力バランス式と、目標エンジン回転速度と実エンジン回転速度との偏差と、に基づいて、目標モータトルクが算出される。そして、目標モータトルクにモータジェネレータイナーシャ補正用トルクが加算されることでモータトルク指令値が算出される。このため、第1モータジェネレータ4、第2モータジェネレータ5の回転フィードバックトルクにより実エンジン回転速度を目標エンジン回転速度に追従させつつ、駆動軸の回転速度が変化することによるエンジン回転速度の変動を抑制することができる。
本発明の実施形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
例えば、本発明は、本実施形態のように4軸式のハイブリッド車両だけでなく、3つの回転要素を有する差動歯車機構と2つの電動機を用いてエンジンの動力を発電機と駆動軸に分割し、発電機で発電した電力を用いて駆動軸に設けた電動機を駆動することにより、エンジンの動力をトルク変換する方式(いわゆる3軸式)のハイブリッド車両にも適用することができる。
また、本発明は、本実施形態のように、第1モータジェネレータ4及び第2モータジェネレータ5の回転速度から駆動回転速度を算出するものであるが、図示しない車速センサから駆動軸7の回転速度を検出し、タイヤ外径やギヤ機構31のギヤ比を用いて車速及び駆動回転速度を算出するものであってもよい。