JP6884568B2 - 防振機構 - Google Patents
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このような振動障害を回避するための一般的な防振対策として、振動源となる人や機器を載せた床や基礎を構造体に一体化するのではなく、浮き床や浮き基礎として構造体に柔らかいバネ要素を介して支持する防振機構が採用されている(例えば、特許文献1および2参照)。
具体的な実施例として、浮き床の適用した際の振動モデルを図10(a)に示す。
図10(b)に加振力に対する反力の倍率を振動数伝達関数として示す。振動数1Hz(共振時)の倍率は減衰が大きいほど低減するが、高振動数域では減衰が小さいほど小さくなる(防振性能が向上する)ため、減衰定数h=0.05程度に設定されることが多い。一般に、共振振動数は防振対象振動数の1/3〜1/5程度となるよう設定されるため、共振振動数で大きな加振入力が生じる可能性は小さい。しかしながら、万一1Hzで加振された際には加振力の10倍もの反力が生じて、バネ要素が損傷したり浮き床が構造床に衝突したりする虞がある。特許文献1では、特定の加振振動数に対する防振性能を高めるようにしているが、これと同時に共振域での応答低減も対象としたものはない。
また、従来の防振機構と比較して付加バネ要素を付加した構成であるため、特殊な装置・技能や施工法は不要となり、付加バネ要素の設置以外においては、従来の防振機構の施工方法を採用することができる。
このような構成とすることにより、共振時における変位量が所定値以下に留まり、共振時に生じる反力(支持バネ要素と付加バネ要素の合計)を低減させることができる。
小型軽量で大きな復元力を有する皿バネを使用することにより、共振時の振幅の大きい応答に対して加振力に対する反力を効率よく低減させることができる。
積層ゴムのもつ復元力と履歴減衰により、共振時の振幅の大きい応答に対して加振力に対する反力を効率よく低減させることができる。
支持バネ要素に非線形バネが用いられた場合と、線形バネが用いられた場合とでは、支持バネ要素に自重が作用した際の沈下量が同じとすると、支持バネ要素に非線形バネが用いられた場合の方が、線形バネが用いられた場合よりも、自重が作用した際の剛性(接線剛性)を小さくすることができる。このため、例えば、支持バネ要素に複数の皿バネを採用する場合、線形皿バネを用いるより非線形皿バネを用いた方が皿バネ1枚当たりの剛性が小さくなり、直列配置する皿バネの枚数を減らすことができる。これにより、防振機構のコンパクト化およびローコスト化を図ることができる。
図1に示す本実施形態による防振機構1は、共振振動数における応答低減効果を飛躍的に向上させるために、図10(a)に示す従来のバネマス系の振動モデルの防振機構100に所定変位以上となった場合のみに剛性を有して作用する付加バネ要素14を付加している。
図1に示すように、本実施形態による防振機構1は、構造体床(構造体)11と構造体床11と相対変位可能に設けられた質量Mの浮き床(振動体)12との間に設けられており、バネ剛性Kの支持バネ要素13と、バネ剛性K1の付加バネ要素14と、減衰係数Cの減衰機構15と、を有している。支持バネ要素13および減衰機構15は、公知の形態となっている。
支持バネ要素13、付加バネ要素14、および減衰機構15は、構造体床11と浮き床12との間に並列に設けられている。
x0=(0.4〜2.0)xS=(0.4〜2.0)F/K
構造体床11と浮き床12とが軸線方向に相対変位すると、ロッド5とシリンダ6とが軸線方向に相対変位するように構成されている。
一対の押板3,3は、複数の皿バネ2,2…と略同じ外径に形成され、中央部にロッド5が挿通される孔部31が形成されている。一対の押板3,3のうちの一方を第1押板32とし、他方を第2押板33とする。第1押板32は、複数の皿バネ2,2…の軸線方向の一方側に配置され、第2押板33は、複数の皿バネ2,2…の軸線方向の他方側に配置されている。
複数の皿バネ2,2…および一対の押板3,3は、ロッド5と軸線方向に相対変位可能に構成されている。一対の加力ナット4,4は、ロッド5に固定されている。
また、第1加力ナット42と第2加力ナット43との間隔は、初期状態における複数の皿バネ2,2…を介して配置された第1押板32と第2押板33との互いに離間する側の面を結ぶ寸法と略同じ寸法に形成されている。
複数の皿バネ2,2…および第1押板32および第2押板33がシリンダ6の内部に配置されると、第1押板32がシリンダ6の第1円板部62の軸線方向の他方側に配置され、第2押板33がシリンダ6の第2円板部63の軸線方向の一方側に配置される。
そして、構造体床11と浮き床12とが互いに離間する方向にさらに引っ張られるように相対変位し、図4(b)に示すように相対変位量がギャップ寸法x0を超えると、第1押板32と第1円板部62とが互いに押し合うため、第1押板32を介して複数の皿バネ2,2…が加力される。これにより、複数の皿バネ2,2…に構造体床11と浮き床12とを互いに近接させる方向の復元力が生じるため、変位振幅を抑制することができる。
そして、構造体床11と浮き床12とが互いに近接する方向にさらに圧縮されるように相対変位し、図4(d)に示すように相対変位量がギャップ寸法x0を超えると、第2押板33が第2円板部63とが互いに押し合うため、第2押板33を介して複数の皿バネ2,2…が加力される。これにより複数の皿バネ2,2…に構造体床11と浮き床12とが互いに離間させる方向の復元力が生じるため、変位振幅を抑制することができる。
想定される振動が生じた際の加振力は、支持バネ要素13に作用する自重に対して数%にすぎない。このため、支持バネ要素13は、想定される振動が生じた際の加振力の範囲で概ね線形であればよいことになる。
固有振動数1Hzの防振機構に線形バネを適用すると、自重による沈下量は約250mmとなる。皿バネ131の1枚当たりの変形量は数mmしかないため、大量の枚数の皿バネ131,131…が必要となる。一方、固有振動数1Hzの防振機構に非線形バネを適用すると、自重作用時の剛性(図5(b)の矢印Cで示す使用範囲における接線剛性に相当)に対し自重による沈下量が250mmとなればよいため、接線剛性が線形時のβ倍なら沈下量は250βとなる。また、このとき皿バネ131の1枚当たりの荷重は線形バネのα倍となる。したがって、必要な皿バネ131の枚数は、β/α倍となる。
試算例として、浮き床12の上に設けられたスタジオで利用客が運動し、3〜4Hzで卓越する加振によって振動障害が懸念される構造床を対象とする。振動源の加振振動数を3〜4Hzとし、防振機構1,100の固有振動数を1Hzとして検討する。
従来の防振機構100は、本実施形態による防振機構1と同様に、構造体床11と構造体床11と相対変位可能に設けられた質量Mの浮き床12との間に設けられており、バネ剛性Kの支持バネ要素13と、減衰係数Cの減衰機構15と、を有している。従来の防振機構100には、本実施形態による防振機構1のような付加バネ要素14は、設けられていない。この防振機構による反力応答倍率を図11に示すが、減衰定数h=0.05とすれば加振振動数3〜4Hzでは応答倍率が1/10程度と小さくなり、振動障害の恐れは生じない。しかし、万一固有振動数(共振振動数)で加振された場合には応答倍率が10倍にもなり振動障害が懸念されることから、共振振動数で加振された場合について時刻歴応答解析で検討を行う。
加振力の加振波形を図6(a)に示す。
振動モデルA、Bの諸元は以下とする。
図6(b)に示すように、従来の防振機構100の振動モデルBでは、最大反力が699938N≒700KNとなり、加振力Fの約10倍となることがわかる。また、図6(c)に示すように、従来の防振機構100の振動モデルBでは、浮き床12の最大変位が0.157m=157mmとなり、静的変位の10倍となることがわかる。
このように、本実施形態による防振機構1では、付加バネ要素14を備えていない従来の防振機構100と比べて、加振時の最大反力および最大変位を抑えることができる。
また、図7(c)に示すように、本実施形態による防振機構1では、付加バネ要素14には変位量がギャップ寸法x0(16mm)を超えた場合のみに反力が生じ、浮き床12の変位を抑制することがわかる。
また、付加バネ要素14のギャップ寸法x0は、防振対象となる振動数領域における変位より大きな値を設定する。一般的に防振対象振動数域は、防振機構の固有振動数(共振振動数)の3倍以上であり、この振動数域で防振機構にバネ剛性を追加することは防振性能を低下させることとなるからである。
図8および図10(b)では、最大応答変位xと静的支持バネ要素変位xSとの比を変位応答倍率と称している。変位応答倍率は、減衰定数をhとすると1/(2h)で表され、h=0.05ならば10となる。
ギャップ寸法x0の設定:0.4xS≦x0≦2.0xS
上述した本実施形態による防振機構1では、構造体床11と浮き床12との相対変位の絶対値が所定値以上となった際に作用する付加バネ要素14を有することにより、共振時の振幅の大きい応答に対して付加バネ要素14が作用してバネ剛性が大きくなり共振を外れるため、加振力に対する反力を低減させることができる。また、付加バネ要素14は、構造体床11と浮き床12との相対変位のギャップ寸法x0以上とならないと機能しないことにより、高振動数域の振幅の小さい応答しては、付加バネ要素14が設けられず支持バネ要素13のみが設けられている場合と同じ防振機構となる。このため、防振対象となる振動数領域(高振動数域)においては、付加バネ要素14を追加しても剛性が大きくならないため、固有振動数が増加せず、高振動数域で防振性能が低下することを防止できる。
また、従来の防振機構100と比較して付加バネ要素14を付加した構成であるため、特殊な装置・技能や施工法は不要となり、付加バネ要素14の設置以外においては、従来の防振機構100の施工方法を採用することができる。
例えば、上記の実施形態では、防振機構1を構造体となる構造体床11と振動体となる浮き床12との間に設けているが、例えば地盤と浮き基礎との間など、構造体床と浮き床12との間以外の相対移動可能な構造体と振動体との間に設けてもよい。
また、上記の実施形態では、付加バネ要素14のロッド5が構造体床11に固定され、シリンダ6が浮き床12に固定されているが、ロッド5が浮き床12に固定され、シリンダ6が構造体床11に固定されていてもよい。
2つの積層ゴム141,141は、それぞれフランジ142,142に挟まれていて、振動方向に変形可能に構成されている。2つの積層ゴム141,141は、振動方向に直交する方向に板材5Bを介して配列された状態でそれぞれ筐体6Bに固定されている。
板材5Bには、2つの積層ゴム141,141の振動方向の両側にギャップ寸法x0をあけて積層ゴム141,141が設けられている側にそれぞれ突出する一対の加力部材4B,4Bが設けられている。
このような積層ゴム141,141を用いた付加バネ要素14Bが設けられた防振機構の場合も、皿バネ2,2…を用いた付加バネ要素14が設けられた上記の実施形態による防振機構1と同様の効果を奏することができる。
2 皿バネ(弾性体)
11 構造体床(構造体)
12 浮き床(振動体)
13 支持バネ要素
14,14B 付加バネ要素
15 減衰機構
141 積層ゴム(弾性体)
Claims (5)
- 構造体に支持バネ要素を介して設置された振動体が加振された際に前記構造体へ作用する反力を低減させるための防振機構において、
前記構造体と前記振動体との間に前記支持バネ要素と並列に設置され、前記構造体と前記振動体との相対変位の絶対値が所定値以上となった際に作用する付加バネ要素を有し、
前記付加バネ要素は、前記構造体と前記振動体との相対変位の絶対値が所定値以上となり、前記構造体と前記付加バネ要素とが相対変位した場合、および前記振動体と前記付加バネ要素とが相対変位した場合のいずれの場合でも作用することを特徴とする防振機構。 - 前記付加バネ要素は、前記構造体および前記振動体のいずれか一方に連結された第1部材と、
前記構造体および前記振動体のいずれか他方に連結されて、前記第1部材と相対変位可能に構成された第2部材と、
前記第1部材と第2部材との間に設けられた弾性体と、を有し、
前記第1部材と第2部材との相対変位の絶対値が所定値以上になると前記弾性体が変形して復元力が生じることを特徴とする請求項1に記載の防振機構。 - 前記弾性体は、皿バネであることを特徴とする請求項2に記載の防振機構。
- 前記弾性体は、積層ゴムであることを特徴とする請求項2に記載の防振機構。
- 前記支持バネ要素は、非線形バネであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の防振機構。
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