JP6884392B2 - クリーンベンチ機能付きインキュベータおよびインキュベータシステム - Google Patents

クリーンベンチ機能付きインキュベータおよびインキュベータシステム Download PDF

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Description

本発明は、本発明は、開放空間系で作業するクリーンベンチとしての機能と、密閉空間系で培養するインキュベータとしての機能とを併せ持つインキュベータに関する。
一般に、細胞や組織培養を行う場合は、作業者が細胞等を操作するための無菌空間を提供するクリーンベンチと、細胞を培養するためのインキュベータとが用いられる。クリーンベンチは、無菌気体を作業空間に送気し、これにより無菌の作業空間を形成する。作業者は、作業空間に空けられた窓から作業空間に手を挿入し、作業空間に置かれた細胞を操作する。インキュベータは、密閉された内部を有し、内部の気体の組成や温度を任意に制御可能であって、実験条件に応じて気体組成および温度を調節し、インキュベータの内部に置かれた細胞を培養する(特許文献1)。これらを用いる実験では、作業者は、クリーンベンチを用いて細胞を操作した後、細胞をインキュベータに移動させて培養する。
しかし、クリーンベンチとインキュベータとは互いに異なる装置であるため、作業者は、クリーンベンチでの作業後、培養容器をクリーンベンチ外に出して、インキュベータに移動させる必要があった。また、細胞は、実験内容によっては例えば所定のpH値を有する培養液中に浸されている必要があるが、時間の経過と共にpH値が変化して目的の培養条件を満たさなくなる場合がある。このため、培養液のpH値を常時観察して、所定のpH値まで変化したときに交換する必要がある。このように培養条件を常時観察することは煩雑であり、また、密閉されて所定の気体成分比率に保たれているインキュベータを開閉して培養液を交換することは、細胞を適切に培養できなくなるおそれが生じるため、好ましくない。
特許文献1:特開2012−90612号公報
本発明はこれらの課題に鑑みてなされたものであり、細胞を操作および培養可能なクリーンベンチ機能付きインキュベータおよびインキュベータシステムを提供することを目的とする。
本願第1の発明によるクリーンベンチ機能付きインキュベータは、密閉および開放可能なボックスと、複数の種類の気体をボックスに供給する気体供給部と、ボックス内における複数の種類の気体の濃度を制御する濃度制御部と、ボックス内の温度を制御する温度制御部とを備えることを特徴とする。ボックスは開口部を有し、開口部全体を塞ぐ内扉と、内扉に設けられた操作カバーとをさらに備えることが好ましい。内扉は、操作カバーが取り付けられる操作カバー固定穴をさらに備えることが好ましい。操作カバーは、円形固定具を用いて操作カバー固定穴に取り付けられ、円形固定具は2つの半円環を備え、2つの半円環の一方の端部どうしは、互いに旋回可能となるように接続され、2つの半円環の他方の端部は引っ張りバネで繋がれることが好ましい。操作カバーは、滅菌済みあるいは滅菌可能なもので、先端を切断していないグローブ、先端を切断した筒状のグローブ、不布紙製・布製あるいはシリコン製等の腕カバーなど、腕カバー及び/又はグローブなどである。また、ボックスは開口部を有し、開口部全体を塞ぎ、かつボックスの内部を外気から遮断する密閉用扉を備えることが好ましい。そして、ボックスの外部から内部に管を引き込むライン導入部をさらに備えることが好ましい。さらに、ボックスは、開口部と、開口部全体を塞ぐ内扉と、開口部全体を塞ぎ、かつボックスの内部を外気から遮断する密閉用扉と、内扉と開口部との間および密閉用扉と開口部との間に設けられる弾性部材を備え、弾性部材は、弾性部材の幅方向に延びる溝を有し、溝は、ボックスの外部から内部に管を引き込むライン導入部を成すことが好ましい。
ボックスは、開口部と、開口部全体を塞ぐ内扉と、開口部全体を塞ぎ、かつボックスの内部を外気から遮断する密閉用扉と、内扉と開口部との間であってボックスに取り付けられる第1の弾性部材と、密閉用扉と開口部との間であって密閉用扉に取り付けられる第2の弾性部材と、密閉用扉と開口部との間であってボックスに取り付けられる第3の弾性部材とを備え、第1の弾性部材、第2の弾性部材、および第3の弾性部材は、弾性部材の幅方向に延びる第1の溝、第2の溝、および第3の溝を各々有し、第1の溝、第2の溝、および第3の溝は、ボックスの外部から内部に管を引き込むライン導入部を成してもよい。
第1の溝、第2の溝、または第3の溝に沿って延びる直線が、隣接する他の溝の端部と交わらないように、第1の溝、第2の溝、および第3の溝の位置が決定されてもよい。複数の種類の気体は酸素ガスを含んでもよい。また、複数の種類の気体は二酸化炭素ガスを含み、気体供給部は二酸化炭素ボンベを備えてもよい。複数の種類の気体は窒素ガスを含み、気体供給部は窒素を生成する装置または窒素ボンベを備えてもよい。さらに、複数の種類の気体は酸素ガスおよび二酸化炭素ガスを含み、濃度制御部は、酸素の濃度を25%以下に制御し、二酸化炭素の濃度を20%以下に制御してもよい。そして、複数の種類の気体は窒素ガスを含み、クリーンベンチ機能付きインキュベータがクリーンベンチとして使用されるとき、ボックスの内部が外部に対して陽圧となるように気体供給部がボックス内へ窒素ガスを供給し、クリーンベンチ機能付きインキュベータがインキュベータとして使用されるとき、気体供給部がボックスへ窒素ガスを供給しなくてもよい。
温度制御部は、ボックス内の温度が摂氏4度以上50度以下の範囲となるように制御してもよい。ボックスは開口部を有し、開口部全体を塞ぐ内扉と、内扉に設けられた操作カバーと、ボックスの内部に設けられ、操作カバーを引っかけることが可能なフックをさらに備えてもよい。フックは、ボックスの内側側面から突出し、内側背面に向けて湾曲する棒状部材であってもよい。また、ボックスの内側に設けられた殺菌灯をさらに備えてもよい。
本願第2の発明によるインキュベータシステムは、前記クリーンベンチ機能付きインキュベータと、クリーンベンチ機能付きインキュベータ内部よりも低い温度に内部温度を保つ低温チャンバーと、低温チャンバー内に設けられる作業チャンバーと、作業チャンバー内部の気体の濃度を制御する気体制御部とを備えることを特徴とする。濃度制御部は、クリーンベンチ機能付きインキュベータの内部に含まれる気体の成分と同じになるように、作業チャンバーの内部に含まれる気体の成分を制御してもよい。濃度制御部は、クリーンベンチ機能付きインキュベータの内部に含まれる気体を、作業チャンバーの内部に含まれる気体と交換してもよい。気体制御部は、作業チャンバー内における複数の種類の気体の濃度を制御してもよい。また、気体制御部は、クリーンベンチ機能付きインキュベータの内部に含まれる気体の成分と異なるように、作業チャンバーの内部に含まれる気体の成分を制御してもよい。
本発明によれば、細胞を操作および培養可能なクリーンベンチ機能付きインキュベータおよびインキュベータシステムが提供される。
第1の実施形態によるクリーンベンチ機能付きインキュベータを概略的に示した図である。 クリーンベンチ機能付きインキュベータのブロック図である。 第1の弾性部材および第3の弾性部材の斜視図である。 第2の弾性部材の正面図である。 第1の弾性部材、第2の弾性部材、および第3の弾性部材に管を通した状態の正面図である。 内扉、フック、およびグローブの斜視図である。 他の形状を有するフックの斜視図である。 第2の実施形態によるインキュベータシステムを概略的に示した図である。 第4の弾性部材および第5の弾性部材の斜視図である。 インキュベータシステムのブロック図である。 円周固定具の正面図である。 操作カバーを円形固定具に取り付ける手法を示した図である。 操作カバーを円形固定具に取り付ける手法を示した図である。 操作カバーを円形固定具に取り付ける手法を示した図である。 操作カバーを円形固定具に取り付ける手法を示した図である。 操作カバーを内扉の外側から見た図である。
100 クリーンベンチ機能付きインキュベータ
110 ボックス
111 開口部
114 第1のフック
116 殺菌灯
117 密閉扉
118 内扉
119 操作カバー固定穴
120 第3の弾性部材
121 第2の弾性部材
122 第1の弾性部材
136 操作カバー
140 濃度制御部
160 温度制御部
170 二酸化炭素ボンベ
180 窒素ボンベ
190 窒素ガス生成装置
300 円形固定具
まず、本発明の一実施形態によるクリーンベンチ機能付きインキュベータ100について図1から7を用いて説明する。
図1は、クリーンベンチ機能付きインキュベータ100の概略図である。クリーンベンチ機能付きインキュベータ100は、ボックス110と、濃度制御部140と、温度制御部160と、二酸化炭素ボンベ170と、窒素ボンベ180と、窒素ガス生成装置190とを主に備える。二酸化炭素ボンベ170、窒素ボンベ180、または窒素ガス生成装置190が気体供給部を成す。なお、説明のため、ボックス110の側面は内部を透過するように図示される。
ボックス110は、直方体形状であって、その正面が開放されて成す開口部111と、開口部111に取り付けられる密閉扉117および内扉118と、センサ161とを有する。開口部111は、ボックス110の正面の一部であって、開放された部位の周囲に設けられた周縁部112を備える。ボックス110の2つの内側側面113には第1のフック114およびセンサ161が各々取り付けられる。なお、説明の簡略化のため第1のフック114の一方は図1において省略されている。第1のフック114の詳細な形状については後述される。ボックス110の内側背面115には、滅菌に適した波長の紫外線を発光する殺菌灯116が取り付けられる。ボックス110の内部には、複数の棚板124が取り付け可能になっている。殺菌灯116に近接する2枚の棚板124の奥行きは、ボックス110内部の奥行きの半分程度であって、殺菌灯116が発する紫外線がボックス110内部の任意の場所に容易に届くように調整される。これにより、ボックス110内部の任意の場所が適切に滅菌される。棚板124の上面には、閉鎖系灌流型の培養容器125等を置くことが可能である。なお、ボックス110の天井面、内側背面115、内側側面113、および底面には、図示されない断熱材が設けられる。
センサ161は、温度センサ、二酸化炭素センサ、および酸素センサを備え、ボックス110内の温度、二酸化炭素濃度、および酸素濃度を測定する。
開口部111には、旋回可能なヒンジを用いて、密閉扉117と内扉118とが取り付けられる。内扉118は、開口部111を完全に塞ぐ程度の大きさを持つ透明なポリカーボネート平板から成り、鉛直方向中央よりも下側でポリカーボネート板を厚さ方向に貫通する2つの腕カバー・グローブ固定穴(操作カバー固定穴)119を備える。腕カバー及び/又はグローブを操作カバーとよぶ。2つの操作カバー固定穴119は、各々同じ直径を有する円形である。これらの直径は、人間の腕が容易に貫通し、かつボックス110内部の随所に容易に手が届いて容易に作業できる程度の長さである。周縁部112において、内扉118が閉じられたときに重なる位置に第1の弾性部材122(図3参照)が設けられる。密閉扉117は、開口部111を完全に塞ぎ、かつ正面から見たときに内扉118よりも大きい面積を持つ金属から成る略平板状の扉であって、密閉扉117が閉じられたときに周縁部112と重なる位置に第2の弾性部材121(図4参照)を備える。周縁部112において、密閉扉117が閉じられたときに重なる位置に第3の弾性部材120(図3参照)が設けられる。内扉118、密閉扉117、第3の弾性部材120、第2の弾性部材121、および第1の弾性部材122の詳細については後述される。
濃度制御部140は、ボックス110、二酸化炭素ボンベ170、窒素ボンベ180、および窒素ガス生成装置190と管を介して各々接続され、二酸化炭素ボンベ170から供給された二酸化炭素ガスと、窒素ボンベ180および窒素ガス生成装置190から供給された窒素ガスとを各々所定の濃度となるよう調整して混合した後に、混合したガスをボックス110内部に供給する。二酸化炭素ガスと窒素ガスの濃度は、ボックス110内部の二酸化炭素、窒素、および酸素の濃度が所定の値になるように調整される。濃度制御部140の詳細については後述される。
温度制御部160はヒータおよび冷凍機を備え、ボックス110の内部に取り付けられたセンサ161が検出した温度に基づいて、ボックス110の内部を予め設定した温度、例えば摂氏4度以上50度以下の範囲に保つ。
二酸化炭素ボンベ170は、密閉容器であって、内部に二酸化炭素ガスを貯蔵する。二酸化炭素ボンベ170には、レギュレータ171を介して管が取り付けられる。レギュレータ171は、二酸化炭素ボンベ170から流出する二酸化炭素ガスの流量を調節する。管は、二酸化炭素ボンベ170と濃度制御部140とを接続する。二酸化炭素ガスは、管を介して二酸化炭素ボンベ170から濃度制御部140に送られる。窒素ボンベ180は、密閉容器であって、内部に窒素ガスを貯蔵する。窒素ボンベ180には、レギュレータ181を介して管が取り付けられる。レギュレータ181は、窒素ボンベ180から流出する窒素ガスの流量を調節する。管は、窒素ボンベ180と濃度制御部140とを接続する。窒素ガスは、管を介して窒素ボンベ180から濃度制御部140に送られる。
窒素ガス生成装置190は、大気から窒素を分離して窒素ガスを生成する。管が窒素ガス生成装置190と濃度制御部140とを接続する。窒素ガスは、管を介して窒素ガス生成装置190から濃度制御部140に送られる。
ボックス110の外部から内部には、管(図5参照)を用いて、培養液が還流される。ボックス110の外部、例えば低温チャンバー210内に設けられる作業チャンバー220、230の内部等に設置される図示されない装置に蓄えられた培養液は、ボックス110の外部から内部に流入して培養容器125等に流し込まれ、培養容器125等から流出する培養液は管を介して外部に排出される。排出された培養液は、ボックス110の外部に設けられる作業チャンバー220、230の内部等に設置される図示されない装置によって回収される。
次に、図2を用いて、窒素ボンベ180と濃度制御部140およびボックス110とを接続する管、並びに濃度制御部140について詳細に説明する。
窒素ボンベ180から延びる管182は、分岐カプラ183を介して、濃度制御部140とボックス110とに接続される。分岐カプラ183とボックス110との間には、手動弁184が設けられる。手動弁184を作業者がオンにすると窒素がフィルタ151を介してボックス110内部に供給され、オフにすると窒素はボックス110内部に供給されない。
濃度制御部140は、管が着脱自在に接続される第1から第4のコネクタ141−144と、複数のガスを混合する第1から第3の混合部145−147と、ガスの圧力を調整する第1および第2の電磁弁148、149と、ボックス110に接続されるコネクタ150とを主に備える。第1および第2の混合部145、146は、三方切り替え式の電磁弁であり、第3の混合部147は三方合流管である。
第1のコネクタ141は、窒素ガス生成装置190から延びる管と接続され、第2のコネクタ142は、窒素ボンベ180から延びる管と接続される。第1の混合部145は、第1のコネクタ141および第2のコネクタ142を介して窒素ガス生成装置190および窒素ボンベ180から受けた窒素ガスを混合し、混合したガスを第1の電磁弁148に送る。クリーンベンチ機能付きインキュベータ100をクリーンベンチまたはグローブボックスとして使用するとき、第1の電磁弁148は、センサ161を用いて測定された二酸化炭素濃度および酸素濃度に基づいて、ボックス110内部の窒素濃度が予め設定された濃度になるような圧力で窒素ガスを第3の混合部147に送る。他方、インキュベータとして使用するとき、第1の電磁弁148は、窒素ガスを第3の混合部147に送らない。
第3のコネクタ143は、二酸化炭素ボンベ170から延びる管が接続される。図2では、第4のコネクタ144に管が接続されていないが、必要に応じて適宜二酸化炭素ボンベ170や二酸化炭素生成装置、あるいは他の気体を供給する装置やボンベが接続されうる。第2の混合部146は、第3のコネクタ143を介して二酸化炭素ボンベ170から受けた二酸化炭素ガスと、第4のコネクタ144を介して受けた気体とを混合し、混合したガスを第2の電磁弁149に送る。第2の電磁弁149は、センサ161を用いて測定された二酸化炭素濃度に基づいて、ボックス110内部の二酸化炭素濃度が予め設定された濃度になるような圧力で二酸化炭素ガスを第3の混合部147に送る。ボックス110内部の二酸化炭素濃度は、クリーンベンチ機能付きインキュベータ100をクリーンベンチまたはグローブボックスとして使用する場合と、インキュベータとして使用する場合とで、適宜決定される。
第3の混合部147は、クリーンベンチ機能付きインキュベータ100をクリーンベンチまたはグローブボックスとして使用するとき、窒素ガスと二酸化炭素ガスとを混合し、混合したガスをコネクタ150およびフィルタ151を介してボックス110内部に送る。これにより、ボックス110内部において、窒素、二酸化炭素、および酸素の濃度が一定に保たれる。他方、インキュベータとして使用するとき、第3の混合部147は、二酸化炭素ガスをコネクタ150およびフィルタ151を介してボックス110内部に送る。これにより、ボックス110内部において、二酸化炭素および酸素の濃度が一定に保たれる。二酸化炭素の濃度は、例えば0%以上20%以下であり、酸素の濃度は、例えば1%以上25%以下である。すなわち、低酸素分圧を設定条件として設定可能である。これらの濃度の範囲は、実験に応じて適宜選択される。
次に、図3を用いて第3の弾性部材122および第1の弾性部材120について説明する。
第3の弾性部材120は、独立発泡スポンジから成り、周縁部112において、密閉扉117が閉じられたときに重なる位置、すなわち周縁部112の外縁の全周に渡って設けられる。独立発泡スポンジの原材料は、ポリウレタン、クロロブレン、またはエチレン・プロピレン・ジエン・ゴム等の柔軟な素材である。第3の弾性部材120は、ライン導入部の一部を成す複数の第3の溝126a−126dを有する。第3の溝126a−126dは、第3の弾性部材120の幅方向、言い換えると密閉扉117が閉じられたときにボックス110の外部と内部とを貫通する方向に延びる。第3の溝126a−126dは、互いに平行となるように設けられる。
第1の弾性部材122は、ポリウレタン、塩化ビニル、またはエチレン・プロピレン・ゴム等の柔軟な素材から成り、周縁部112において、内扉118が閉じられたときに重なる位置、すなわち周縁部112の内縁の全周に渡って設けられる。第1の弾性部材122は、ライン導入部の一部を成す複数の第1の溝127a−127dを有する。第1の溝127a−127dは、第1の弾性部材122の幅方向、言い換えると内扉118が閉じられたときにボックス110の外部と内部とを貫通する方向に延びる。第1の溝127a−127dは、互いに平行に設けられる。
第3の溝126a−126dと第1の溝127a−127dとは、互いに平行に設けられる。また、第3の溝126aと第1の溝127a、第3の溝126bと第1の溝127b、第3の溝126cと第1の溝127c、第3の溝126dと第1の溝127は、それぞれ同じ直線上に位置する。
次に、図4を用いて第2の弾性部材121について説明する。
第2の弾性部材121は、好ましくはポリウレタン等の柔軟な素材から成り、密閉扉117が閉じられたときに周縁部112と重なる位置、すなわち密閉扉117の背面の外縁に全周に渡って設けられる。第2の弾性部材121は、ライン導入部の一部を成す複数の第2の溝128a−128dを有する。第2の溝128a−128dは、第2の弾性部材121の幅方向、言い換えると密閉扉117が閉じられたときにボックス110の外部と内部とを貫通する方向に延びる。第2の溝128a−128dは、互いに平行に設けられる。
内扉118および密閉扉117を閉じ、かつ第3の溝126a−126d、第2の溝128a−128d、および第1の溝127a−127dに管129a−129dを通した状態を図5に示す。管129a−129dは、ボックス110の外部に設けられた培養液タンクに接続されており、培養液をシャーレに流入および流出するために用いられる。なお、図5の上下方向における第3の溝126a−126d、第2の溝128a−128d、および第1の溝127a−127dの位置関係は誇張して示されている。
第3の溝126a、第2の溝128a、または第1の溝127aに沿って延びる直線が、隣接する他の溝の端部と交わらないように、第3の溝126a、第2の溝128a、および第1の溝127aの位置が決定される。すなわち、第3の溝126aに沿って延びる直線は、隣接する第2の溝128aの端部と交わらず、第2の溝128aに沿って延びる直線は、隣接する第3の溝126aおよび第1の溝127aの端部と交わらず、第1の溝127aに沿って延びる直線は、隣接する第2の溝128aの端部と交わらないように、第3の溝126a、第2の溝128a、および第1の溝127aの位置が決定される。第3の溝126b−126d、第2の溝128b−128d、および第1の溝127b−127dについても同様であるため、説明を省略する。これにより、第3の溝126a−126d、第2の溝128a−128d、および第1の溝127a−127dの端部は互いに近接しないため、これらの溝を介してボックス110の内部と外部との間を気体が容易に行き来することがない。すなわち、気体の流入または漏出が防止される。
管129aは、第3の溝126a、第2の溝128a、および第1の溝127aにはめ込まれ、ボックス110の外部から内部に進入する。同様に、管129b−129dも、第3の溝126b−126d、第2の溝128b−128d、および第1の溝127b−127dを介してボックス110の外部から内部に進入する。第3の弾性部材120、第2の弾性部材121、および第1の弾性部材122に溝が設けられているため、管129a−129dは第3の弾性部材120、第2の弾性部材121、および第1の弾性部材122に潰されることなくボックス110の内部に進入して、ボックス110の外部と内部との間に液体を容易に流すことができる。
シャーレに入れられた細胞を培養するとき、ボックス110内にシャーレを設置する前に管がシャーレに無菌状態で既に取り付けられ、無菌状態を保持するために管を取り外せないことがある。この場合、本実施形態のように第3の溝126a−126d、第2の溝128a−128d、および第1の溝127a−127dが設けられていれば、管をシャーレから取り外すことなく、ボックス110内にシャーレを設置することができる。
次に、図6、11、及び12A−12Dを用いて第1のフック114および操作カバー136について説明する。これらの図の操作カバー136は、先端の手指の部分を切断していないグローブを用いた場合の一例で、操作カバー136を一重構造で用いる場合の設置操作例である。
腕カバー・グローブなどの操作カバー136の固定穴119(図1参照)の内周部には、シリコーンから成る円形の枠130が取り付けられる。枠130は、操作カバー固定穴119の内周面を覆う内周部と、内周部の円周端から操作カバー固定穴119の径方向にわずかに突出する縁部131とを有する。枠130の縁部131には、内扉118とわずかな間隔を置いて内周部から操作カバー固定穴119の径方向に突出する円盤形状のフランジ132が取り付けられる。フランジ132と枠130とは同軸であって、フランジ132の最大直径は、枠130の最大直径よりも大きい。
ボックス110がグローブボックスとして使用されていないとき、操作カバー固定穴119の内周部、より詳しく説明すると、枠130の内周部にシリコーンゴムから成る栓133がはめ込まれる。栓133は、円錐台形状を有し、直径の小さい面から枠130の内周部に挿入され、円錐面が枠130の内周部と密着して、枠130の内周部からボックス110内部に気体が流入、またはボックス110外部に気体が流出しにくくする。
また、操作カバー固定穴119の外側には、膜134が固定プレート134a、134bを用いて取り付けられる。固定プレート134a、134bは金属から成る板状部材である。固定プレート134aは、図3において操作カバー固定穴119の上方に設けられ、固定プレート134bは、図3において操作カバー固定穴119の下方に設けられる。固定プレート134aは、固定プレート134aと内扉118との間に膜134を挟みながら、複数のボルトおよびナットを用いて内扉118に固定される。固定プレート134bは、固定プレート134bと内扉118との間に膜134を挟みながら、複数のボルトおよびナットを用いて内扉118に固定される。これにより、図3において膜134の上下辺が内扉118に固定される。膜134は、シリコーン素材あるいはテフロン(登録商標)素材などからなる長方形であって、矢印状のスリット135を有する。膜134のいずれの一辺も操作カバー固定穴119の直径よりも長い。これにより、膜134は、操作カバー固定穴119の全体を覆う。スリット135は、図6において下方に向いた矢印形状等であって、膜134の厚さ方向に貫通する。なお、スリット135の形状は用途に応じて適宜変更可能であり、膜134を上方の固定プレート134aのみで固定して下方の固定プレート134bを用いずにスリットなしで用いてもよい。作業者は、スリット135を介して、あるいは、スリットなしの場合は膜134の固定されていない下側から、滅菌済みグローブをはめた手および滅菌した部材・試料等をボックス110内部に出入りさせることができる。図3において膜134の上下辺が内扉118に固定されるため、手および部材をスリット135に出入りさせても、膜134が手および部材にまとわりつくことがない。そのため、作業性が向上する。
フランジ132には、滅菌したシリコーン素材などからなるグローブまたは先端を切断した筒状のグローブあるいは筒状の滅菌済みあるいは使い捨ての不布紙製等の操作カバー136が取り付けられる。操作カバー136の一端は、フランジ132に巻き付け、かつ、グローブ及び/又は腕カバーの固定及び取り外し可能器具付属の円形固定具300で挟むことにより、フランジ132に固定される。図11を参照すると、円形固定具300は、オートクレーブ滅菌が可能な金属から成り、2つの半円環301、302と、ヒンジ303と、引っ張りバネ304とから主に構成される。2つの半円環301、302は、互いにヒンジ303周りに旋回可能となるようにその端部でヒンジ303を用いて取り付けられる。2つの半円環301、302の他方の端部は引っ張りバネ304で繋がれる。引っ張りバネ304は、他方の端部どうしが接触する方向に力を加える。2つの半円環301、302が旋回し、他方の端部どうしが離れると、他方の端部どうしは引っ張りバネ304により引っ張られ、他方の端部どうしが接触する。これにより、2つの半円環301、302は旋回自在かつ1つの円環を成すように保持される。2つの半円環301、302は旋回自在かつ1つの円環を成すように保持されるため、作業者は、片手でボックス110内部から円形固定具300を容易に固定及び取り外しできる。
図12A―12Dを参照して、操作カバー136を操作カバー固定穴119に取り付ける手法について説明する。図12Aを参照すると、まず、操作カバー136を円形固定具300の内周に通す。次に、図12Bを参照すると、操作カバー136の口を裏返し、円形固定具300の外周から円周固定具300を覆う。次に、図12Cを参照すると、円形固定具300が取り付けられた操作カバー136を、円形固定具300を開きながら、フランジ132に被せる。次に図12Dを参照すると、作業者が円形固定具300から手を離すと、円形固定具300が閉じ、フランジ132と係合する。これにより、操作カバー136及び円形固定具300が操作カバー固定穴119に取り付けられる。なお、円形固定金具の形状は、図11に示される形状に限定されず、材質も金具でなくても良い。ガス滅菌あるいはアルコール滅菌が可能であれば、袋物の口紐の開閉時に用いられるコードストッパーのような器具の付属したシリコーンゴム製あるいは布製などの紐状で円形形状が可能なもの等でもよい。操作カバー136において、フランジ132に取り付けられる端部の大きさは、他方の端部よりも大きい。すなわち、操作カバー136は、内扉118側から先端に向かうにつれて先細りとなる方が好ましい。クリーンベンチとしてクリーンベンチ機能付きインキュベータ100を使用するとき、フランジ132に操作カバー136が取り付けられ、作業者は、先端が切断されていない滅菌済みグローブをはめた手を、先端を切断した筒状のグローブや腕カバーの操作カバー136に挿入する。前述のように、操作カバー136が先細りとなっているため、手に装着した先端が切断されていないグローブと、操作カバー136とが密着し、手に装着した先端が切断されていないグローブと、操作カバー136との間を気体が流れにくくなる。ボックス110がグローブボックスとして使用されていないとき、操作カバー136の他端は第1のフック114に掛け置かれうる。操作カバー136の他端が第1のフック114に掛け置かれると、操作カバー136が重力により折れ曲がる。これにより、操作カバー136の内部を介してボックス110内部に気体が流入、またはボックス110外部に気体が流出しにくくなる。
第1のフック114は、円形断面を有する金属棒から成り、角部が円弧を描くL字形状を有する。フックの形状は、後述の第2のフック138と同様の板状のものでもよく、L字形の角部は円弧ではなく直角でもよい。第1のフック114の一端は、内側側面113にナット137を用いて取り付けられる。内側側面における第1のフック114の位置は、グローブまたは操作カバー136を掛けて保持しうる位置であって、かつ後述するように、作業者が操作カバー136の一端付近を第1のフック114に引っかけて操作カバー136をクリーンベンチ内部に残しながら、手に装着した内側のグローブや手を容易にボックス100の外に出すことができる程度の位置である。
図13を用いて、操作カバー136を二重構造で用いる場合について説明する。操作カバー136は、外筒から成る。外筒は、先端を切断したグローブ、あるいは不布紙製、布製、シリコーン素材あるいはテフロン(登録商標)素材などの腕カバー等からなり、円筒形状を有する。円筒形状は、その一端から他方の端部に向けて直径が短くなる先細り形状を有することが好ましい。操作カバー136は、前述の円形固定具300を用いて操作カバー固定穴119に取り付けられる。円形固定具300は、直径が長い端部に取り付けられる。操作カバー136の内周に、グローブ305が挿入される。グローブ305は、先端が切断されていないグローブである。グローブ305を操作カバー136の内周に挿入することにより、二重構造が達成される。後述のように、多量の窒素ガスがボックス110内部に流入されて、ボックス110の内部が陽圧に保たれているため、グローブ305が操作カバー136の内周に密着していなくても、ボックス110の外部から内部に外気が進入しない。
次に、図1、2、および6を用いてクリーンベンチおよびクリーンベンチ機能併用グローブボックスとして使用されるクリーンベンチ機能付きインキュベータ100について説明する。ここでは、先端を切断した筒状のグローブ(ボックス110の固定穴119に設置)と先端を切断していないグローブ(作業者の手に着用)の両方を重ねて二重グローブとして使用する。また、開放系と閉鎖系を組み合わせたグローブボックスとして、クリーンベンチ機能併用グローブボックスを使用する。先端を切断した筒状のグローブは、筒状の腕カバーを使用する場合もあり、操作カバー136である。
まず、フランジ132に操作カバー136が取り付けられ、殺菌灯116が点灯され、あるいはアルコール消毒が行われてボックス110内部が滅菌される。その後、作業者は、濃度制御部140から二酸化炭素ガスおよび窒素ガスを流入させるとともに、手動弁184を解放して、窒素ボンベ180から窒素ガスをボックス110内部に流入させる。これにより、多量の窒素ガスがボックス110内部に流入し、ボックス110内部の圧力が大気圧と比較して陽圧になり、ボックス110内部に雑菌を含む大気が流入することを防止する。この状態を維持しながら、作業者は内扉118あるいは操作カバー固定穴119の膜134の下方あるいはスリット135から培養容器や器具・試料をボックス110内部に出し入れする。試料は、例えば細胞等である。培養容器や器具・試料の入った容器がボックス110内部に格納された後、内扉118あるいは操作カバー固定穴119が閉じられ、殺菌灯116を点灯し、手動弁184を閉じて、準備作業中の庫内滅菌をする。この準備作業中に、試料に培養液を供給・排出する管が、内扉118と第1の溝127a−127dとの間に通される(図5参照)。そして、作業者は、作業時に、また、手動弁184の開放、殺菌灯116の消灯を行い、先端の切断されていない滅菌済みグローブをはめた手を、操作カバー136に挿入し、試料や培地などを操作する。操作終了後、作業者は、手に装着したグローブの培地および試料などに触れた指の部分がグローブの手の平部分に来るように、グローブのまま握り拳を作り、手の甲の部分が上に来るようにして、操作カバー136の端付近をフック114に指が触れないように腕や肘を動かして引掛け、操作カバー136の内側周囲に、培地および試料などに触れた手に装着したグローブの指の部分が付着しないように気をつけながら、手に装着したグローブごと引き抜く。そして、手に装着したグローブをボックス100の外で新しい滅菌済みグローブと交換した後、操作カバー固定穴119をアルコール滅菌した栓133で閉じ、殺菌灯116を点灯し、手動弁184を閉じる。
クリーンベンチ作業時には、作業開始直前に手動弁184を解放し、多量の窒素ガスがボックス110内部に流入した状態で、内扉118の開閉の時間や幅、頻度を最小限に留め、主に、操作カバー固定穴119に設置した膜134の下方あるいはスリット135からの培養容器や器具・試料の入った容器の出し入れをする。これにより、クリーンベンチとして使用時のボックス110内部の酸素や二酸化炭素の濃度や温度の変化が最小限に抑えられる。
なお、培養容器や器具・試料の入った容器の出し入れの際の容器の持ち方も、同様に、手に装着したグローブの指の部分が内側になるようにグローブのまま握り拳様の状態で持って出し入れするか、あるいは、茶道で抹茶をいれる棗などの容器を持つ時の様に、手の甲の部分が弧を描くように上から容器や器具を持って、膜134の下方あるいはスリット135から、操作カバー136を通って、ボックス110の内部に設置する。また、ボックス110の外に手に装着したグローブと一緒に器具や容器を出す時は、操作カバー136の端付近をフック114などに指先を使わずに腕や肘を動かして引っ掛けて、同様の手つきで作業を行う。
また、もし、培養操作終了時などに、手に装着したグローブをボックス100から引き抜く際に、操作カバー136の内側に、培地および試料などに触れたグローブの手指の部分が付着した場合や、その可能性のある場合、長期の培養時などは、殺菌灯116を点灯して殺菌後、新しい滅菌済みのグローブを装着して、再度、手動弁184を開放し、培地および試料などに触れたグローブの手指に接触していない方(片側)の操作カバー136の固定穴119および操作カバー136から、新しい滅菌済みのグローブを装着した手を庫内に入れ、培地および試料などに触れたグローブの手指に接触した方の操作カバー136をフランジ132に固定していた円形固定具を外して、事前に、ボックス110の庫内に用意して置いた滅菌済みの新しい操作カバー136などと交換する。なお、膜134およびそのスリット部分135に付着した場合も、同様に、固定金具134aを外して滅菌済みの新しい膜134に容易に交換が可能である。従来のグローブボックスでは難しかった作業中のあるいは培養を継続しながらのグローブ交換が容易であるだけでなく、膜134や操作カバー136などボックス110の庫内から内扉の外までの器具や試料容器などの通る全ての経路での交換が可能になっている。
前述の構成は一例で、培養条件により、培養液を供給・排出する管が不要な場合や、酸素や二酸化炭素濃度が大気圧に近い状態や、出し入れの時間や頻度が少ない作業時などは、操作カバー136が不要で、固定穴119に設置した膜134やスリット135と、手動弁184の開放による多量の窒素ガスのボックス110への流入だけで充分な場合もある。
次に、図1、2、および6を用いてグローブボックスとして使用されるクリーンベンチ機能付きインキュベータ100について説明する。ここでは、先端を切断していない一重のグローブを使用し、かつ、培養中にグローブや器具の交換・補充などを必要としない閉鎖系のグローブボックスとしてクリーンベンチ機能付きインキュベータ100を使用する実施形態について説明する。
まず、フランジ132に先端を切断していないグローブが操作カバー136として操作カバー固定穴119に取り付けられ、殺菌灯116が点灯され、アルコール消毒が行われてボックス110内部が滅菌される。手動弁184を解放して、窒素ボンベ180から多量の窒素ガスをボックス110内部に流入させる。そして、殺菌灯116を消灯し、ボックス110内に培養容器や器具・試料が置かれた後に、内扉118あるいは操作カバー固定穴119の栓133が閉じられ、培養対象に影響がない場合は殺菌灯116を点灯し、手動弁184を閉じる。培養容器や器具・試料設置時に、試料に培養液を供給・排出する管が、内扉118と第1の溝127a−127dとの間に通される(図5参照)。培地の灌流が不要な場合は、この培養液を供給・排出する管を通さない場合もある。
培養開始前や培養後の内扉118の開閉時には、手動弁184を解放したままで多量の窒素ガスをボックス110内部に流入した状態で、内扉118の開閉の時間、幅、頻度を最小限に抑えることにより、前述のように二酸化炭素および酸素の濃度や温度が保たれる。この状態を維持しながら、作業者は、作業時に殺菌灯116を消灯し作業を行う。他方、気相による外部への流出を避けたい細菌や人体への影響が懸念される試薬などを扱う場合には、封入密閉容器から試料や試薬を取り出す際は、手動弁184は閉じたままで、後述の第一の作業チャンバー220とボックス110の気相の交換ポンプ154のスイッチを止めて遮断し、先端を切断していないグローブ136の外側からボックス110内部での作業を行い、作業後に殺菌灯116を点灯し、ボックス110内部を殺菌する。このとき、試料や試薬を封入した容器をボックス110内への設置や内扉118への培地の供給・排出する管の設置と、庫内の殺菌灯116による容器外側の滅菌までの操作は、前述の作業と同様である。
これにより、培地交換の際、本装置100の内扉118や固定穴119を開閉することなく、酸素・二酸化炭素分圧や温度などの培養環境を維持しながら培地の灌流を行い、装置100の外部からの培地の補充および排出が可能となる。
さらに作業者の安全が心配な場合などは、先端の切断されていない滅菌済みグローブをはめた手を、ボックス110に固定された先端を切断していないグローブ136に挿入し、先端を切断していないグローブの二重グローブ構造として試料を操作する事も可能である。
次に、図1、2、および6を用いてインキュベータとして使用されるクリーンベンチ機能付きインキュベータ100について説明する。このとき、クリーンベンチ機能およびグローブボックス機能を用いて操作された試料がボックス110内部に既に置かれ、内扉118が閉じられている。この状態において、操作カバー固定穴119に内周部栓133がはめ込まれ、密閉扉117が閉じられている。このとき、試料に培養液を供給・排出する管が、第3の溝126a−126d、第2の溝128a−128d、および第1の溝127a−127dの間に通されている(図5参照)。必要に応じて、窒素ガス・二酸化炭素ガスがボックス110内部に流入され、前述のように二酸化炭素および酸素の濃度、および温度が一定に保たれている。この状態を維持しながら、管を介して培養液が試料に還流され、試料が培養される。培養中の状態は、透明の内扉118の外側から観察角度を変更可能な顕微鏡を用いて、ボックス110内部に設置した状態のままで培養容器内部を観察する。内扉118および操作カバー固定穴119の栓133などを開かずに顕微鏡観察が可能であるため、培養中の経時的な観察時にも、インキュベータの外に培養容器を出す必要がなく、二酸化炭素および酸素の濃度や温度が一定に保たれ、培養試料への侵襲が少ない。あるいは、手動弁184を解放して窒素ボンベ180から多量の窒素ガスをボックス110内部に流入させるクリーンベンチ機能を併用して、操作カバー固定穴119に設置した膜134の下方あるいはスリット135から、フランジ132に設置された操作カバー136を介して、内視鏡検査等に用いられるファイバーケーブル状等の顕微鏡の対物レンズ等を挿入し、ボックス110内部の培養容器内の培養の状態を観察することも可能である。
次に、図7を用いて他の形状を有する第2のフック138について説明する。第2のフック138は、板状の金属から成り、角部が直角であるS字形状を有する。このフックは第一のフック114と用途が同じであるため、フックの形状は第1のフック114と同様の形状のものでもよい。第2のフック138の一端は、内側側面113にボルト139を用いて取り付けられる。内側側面113における第2のフック138の位置は、第1のフック114の位置と同様であるため、説明を省略する。
本実施形態によれば、細胞を操作した後に、培養容器125をクリーンボックス、すなわちボックス110の外に移動させることなく培養できる。また、低温または低酸素条件を満たす培養環境を容易に形成できる。
次に、図8から10を用いて、第2の実施形態によるインキュベータシステム200について説明する。第1の実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。インキュベータシステム200は、低温チャンバー210、第1の作業チャンバー220、第2の作業チャンバー230、および気体制御部240をさらに備える点が第1の実施形態と異なる。以下、これらについて主に説明する。
図8は、インキュベータシステム200の概略図である。インキュベータシステム200は、クリーンベンチ機能付きインキュベータ100と、低温チャンバー210と、第1の作業チャンバー220と、第2の作業チャンバー230と、気体制御部240とを主に備える。なお、説明のため、ボックス110、低温チャンバー210、第1の作業チャンバー220、および第2の作業チャンバー230は内部を透過するように図示される。
低温チャンバー210は、直方体形状であって、その正面に取り付けられた透明なポリカーボネート板からなる左開きの前扉211と、ヒータおよび冷凍機213とを備える。ヒータおよび冷凍機213は、低温チャンバー210の内部に取り付けられた図示されない温度センサが検出した温度に基づいて、低温チャンバー210の内部を予め設定した温度、例えば摂氏4度以上50度以下の範囲に保つ。例えば摂氏4度以上室温付近までの範囲では冷凍機が用いられ、例えば室温付近から50度以下の範囲ではヒータが用いられる。室温は、例えば摂氏25度から27度である。低温チャンバー210の内部には、1以上の棚板212が設けられる。棚板212の上に第1の作業チャンバー220および第2の作業チャンバー230が設置される。
第1の作業チャンバー220は、直方体形状であって、その正面が開放されて成す開口部261と、旋回可能なヒンジを用いて開口部261に取り付けられる右開きの前扉225と、殺菌灯226と、センサ269とを主に備える。前扉225は、開口部111を完全に塞ぐ程度の大きさを持つ透明なポリカーボネート平板から成り、鉛直方向中央よりも下側でポリカーボネート板を厚さ方向に貫通する矩形穴228と、鉛直方向中央よりも上側でポリカーボネート板を厚さ方向に貫通する2つの腕カバー・グローブ固定穴229とを備える。矩形穴228は、培養容器125を通すことができる程度の幅および高さを有する。矩形穴228には、上開きの矩形扉227が取り付けられる。矩形扉227には、図示されないロック機構が設けられ、意図せずに矩形扉227が開くことを防ぐ。センサ269は、温度センサ、二酸化炭素センサ、および酸素センサを備え、第1の作業チャンバー220内の温度、二酸化炭素濃度、および酸素濃度を測定する。
2つの操作カバー固定穴229の構成については、第1の実施形態による操作カバー固定穴119と同様であるため、説明を省略する。殺菌灯226は、第1の作業チャンバー220の内側背面に取り付けられ、滅菌に適した波長の紫外線を発光する。第1の作業チャンバー220の内部には、第1のフック114または第2のフック138と同様のフックが取り付けられるとともに、複数の棚板265(図9参照)が取り付け可能になっている。第1のフック114、第2のフック138、殺菌灯226、および棚板265の構成については、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。また、第1のフック114または第2のフック138は、説明の簡単のため、図において省略される。第1の作業チャンバー220の天井面、内側背面、内側側面、および底面には、図示されない断熱材が設けられる。周縁部262において、前扉211が閉じられたときに重なる位置に、第4の弾性部材263および第5の弾性部材264(図9参照)が設けられる。
第1の作業チャンバー220には、管が着脱自在に接続される第17−19のコネクタ221−223と、ガスの圧力を調整する第5の電磁弁224と、複数のガスを混合する第7の混合部268とを主に備える。第7の混合部268は三方合流管である。これらの動作については後述される。
次に、図9を用いて第4の弾性部材263および第5の弾性部材264について説明する。
第4の弾性部材263は、好ましくはポリウレタン、またはクロロブレンもしくはエチレン・プロピレン・ジエン・ゴム等の柔軟な素材を用いた独立発泡スポンジから成り、周縁部262において前扉225が閉じられたときに重なる位置であって、周縁部262の外縁の全周に渡って設けられる。第4の弾性部材263は、ライン導入部の一部を成す複数の第4の溝266a−266dを有する。第4の溝266a−266dは、第4の弾性部材263の幅方向、言い換えると前扉225が閉じられたときに第1の作業チャンバー220の外部と内部とを貫通する方向に延びる。第4の溝266a−266dは、互いに平行となるように設けられる。
第5の弾性部材264は、好ましくはポリウレタン、または塩化ビニルもしくはエチレン・プロピレン・ゴム等の柔軟な素材から成り、周縁部262において、前扉225が閉じられたときに重なる位置であって、周縁部262の内縁の全周に渡って設けられる。第5の弾性部材264は、ライン導入部の一部を成す複数の第5の溝267a−267dを有する。第5の溝267a−267dは、第5の弾性部材264の幅方向、言い換えると前扉225が閉じられたときに第1の作業チャンバー220の外部と内部とを貫通する方向に延びる。第5の溝267a−267dは、互いに平行に設けられる。第4の溝266a−266dと第5の溝267a−267dとは、互いに平行に設けられる。また、第4の溝266aと第5の溝267a、第4の溝266bと第5の溝267b、第4の溝266cと第5の溝267c、第4の溝266dと第5の溝267は、それぞれ異なる直線上に位置する。これにより、第4の溝266a−266dおよび第5の溝267a−267dの端部は互いに近接しないため、これらの溝を介して第1の作業チャンバー220の内部と外部との間を気体が容易に行き来することがない。すなわち、気体の流入または漏出が防止される。
第2の作業チャンバー230は、上開きの前扉235と、殺菌灯236とを主に備え、前扉235は、矩形穴238と、2つの操作カバー固定穴239と、センサ279を備える。第2の作業チャンバー230の構成は、第1の作業チャンバー220と同様であるため、説明を省略する。第2の作業チャンバー230には、管が着脱自在に接続される第20−22のコネクタ231−233と、ガスの圧力を調整する第6の電磁弁234と、複数のガスを混合する第8の混合部278とを主に備える。第8の混合部278は三方合流管である。これらの動作については後述される。センサ279は、温度センサ、二酸化炭素センサ、および酸素センサを備え、第2の作業チャンバー230内の温度、二酸化炭素濃度、および酸素濃度を測定する。
次に、図10を用いて、各部材を接続する管および気体制御部240について詳細に説明する。
窒素ボンベ180から延びる管182は、分岐カプラ185、183、および186を介して気体制御部240に接続され、分岐カプラ185および214を介して第1の作業チャンバー220および第2の作業チャンバー230に接続され、分岐カプラ185および183を介してボックス110に接続され、分岐カプラ185、183、および186を介して濃度制御部140に接続される。
窒素ガス生成装置190から延びる管192は、分岐カプラ191を介して濃度制御部140および気体制御部240に接続される。
二酸化炭素ボンベ170から延びる管172は、分岐カプラ173を介して濃度制御部140および気体制御部240に接続される。
濃度制御部140は、管が着脱自在に接続される第5および第6のコネクタ152、153と、第1のポンプ154と、第1のポンプ154とボックス110とを接続する第7および第8のコネクタ155、156とを主に備える。
第5および第6のコネクタ152、153は、第1の作業チャンバー220から延びる管と接続される。第1のポンプ154は、第19のコネクタ223および第5のコネクタ152を介して第1の作業チャンバー220の内部から気体を吸い出し、吸い出した気体を第8のコネクタ156を介してボックス110の内部に送り出す。他方、第1のポンプ154は、第7のコネクタ155を介してボックス110の内部から気体を吸い出し、吸い出した気体を第6のコネクタ153を介して第1の作業チャンバー220に送り出す。第1の作業チャンバー220では、第18のコネクタ222が第1のポンプ154から気体を受けて第7の混合部268に送る。第7の混合部268は、フィルタ151を介して気体を第1の作業チャンバー220内に送り出す。これにより、第1の作業チャンバー220は、ボックス110の内部の気体と同じ構成の気体を内部に有する。第1の作業チャンバー220をクリーンベンチまたはグローブボックスとして使用するとき、さらに、分岐カプラ185および214を介して窒素ボンベ180から窒素ガスを第1の作業チャンバー220に供給する。第1の作業チャンバー220では、第17のコネクタ221が窒素ボンベ180から窒素ガスを受けて第5の電磁弁224に送る。第5の電磁弁224は、第1の作業チャンバー220内部に設けられたセンサ269を用いて測定された二酸化炭素濃度および酸素濃度に基づいて、第1の作業チャンバー220内部の窒素濃度が予め設定された濃度になるような圧力で窒素ガスを第7の混合部268に送る。第7の混合部268は、フィルタ151を介して窒素ガスを第1の作業チャンバー220内に送り出す。これにより、第1の作業チャンバー220内部を大気圧と比較して陽圧にして、第1の作業チャンバー220内部に雑菌を含む大気が流入することを防止する。
気体制御部240は、管が着脱自在に接続される第9から第12のコネクタ241−244と、複数のガスを混合する第4から第6の混合部245−247と、ガスの圧力を調整する第3および第4の電磁弁248、249と、第2のポンプ250と、気体を貯留するサブタンク256と、第2のポンプ250と第2の作業チャンバー230とを接続する第13および第14のコネクタ251、252と、第2のポンプ250とサブタンク256とを接続する第15および第16のコネクタ254、255とを主に備える。第4および第5の混合部245、246は、三方切り替え式の電磁弁であり、第6の混合部247は三方合流管である。サブタンク256内には、センサ257が取り付けられる。センサ257は、二酸化炭素センサおよび酸素センサを備え、サブタンク256内の二酸化炭素濃度および酸素濃度を測定する。
第9のコネクタ241は、窒素ガス生成装置190から延びる管と接続され、第10のコネクタ242は、窒素ボンベ180から延びる管と接続される。第4の混合部245は、第9のコネクタ241および第10のコネクタ242を介して窒素ガス生成装置190および窒素ボンベ180から受けた窒素ガスを混合し、混合したガスを第3の電磁弁248に送る。第2の作業チャンバー230をクリーンベンチまたはグローブボックスとして使用するとき、第3の電磁弁248は、第2の作業チャンバー230内部に設けられたセンサ279を用いて測定された二酸化炭素濃度および酸素濃度に基づいて、第2の作業チャンバー230内部の窒素濃度が予め設定された濃度になるような圧力で窒素ガスを第6の混合部247に送る。窒素ボンベ180は、分岐カプラ185、分岐カプラ214、および第20のコネクタ231を介して第2の作業チャンバー230に窒素ガスを供給する。第2の作業チャンバー230では、第20のコネクタ231が窒素ガスを受けて第6の電磁弁234に送る。第6の電磁弁234は、第2の作業チャンバー230内部に設けられたセンサ279を用いて測定された二酸化炭素濃度および酸素濃度に基づいて、第2の作業チャンバー230内部の窒素濃度が予め設定された濃度になるような圧力で窒素ガスを第8の混合部278に送る。第8の混合部278は、フィルタ151を介して窒素ガスを第2の作業チャンバー230内に送り出す。これにより、第2の作業チャンバー230内部を大気圧と比較して陽圧にして、第2の作業チャンバー230内部に雑菌を含む大気が流入することを防止する。他方、インキュベータとして使用するとき、第3の電磁弁248は、窒素ガスを第6の混合部247に送らない。
第11のコネクタ243は、二酸化炭素ボンベ170から延びる管が接続される。図10では、第12のコネクタ244に管が接続されていないが、必要に応じて適宜二酸化炭素ボンベ170や二酸化炭素生成装置、あるいは他の気体を供給する装置やボンベが接続されうる。第5の混合部246は、第11のコネクタ243を介して二酸化炭素ボンベ170から受けた二酸化炭素ガスと、第12のコネクタ244を介して受けた気体とを混合し、混合したガスを第4の電磁弁249に送る。第4の電磁弁249は、第2の作業チャンバー230内部に設けられたセンサ279を用いて測定された二酸化炭素濃度に基づいて、第2の作業チャンバー230内部の二酸化炭素濃度が予め設定された濃度になるような圧力で二酸化炭素ガスを第6の混合部247に送る。第2の作業チャンバー230内部の二酸化炭素濃度は、クリーンベンチ機能付きインキュベータ100をクリーンベンチまたはグローブボックスとして使用する場合と、インキュベータとして使用する場合とで、適宜決定される。
第6の混合部247は、第2の作業チャンバー230をクリーンベンチまたはグローブボックスとして使用するとき、窒素ガスと二酸化炭素ガスとを混合し、混合したガスを分岐カプラ253に送る。
第2のポンプ250は、第22のコネクタ233および第13のコネクタ251を介して第2の作業チャンバー230の内部から気体を吸い出し、吸い出した気体を第15のコネクタ254を介してサブタンク256の内部に送り出す。他方、第2のポンプ250は、第16のコネクタ255を介してサブタンク256の内部から気体を吸い出し、吸い出した気体を分岐カプラ253に送り出す。このとき、第6の混合部247が混合したガスが分岐カプラ253に送り出されている。そのため、第6の混合部247によって混合された気体およびガスサブタンク256の内部から吸い出された気体が、分岐カプラ253で混合され、第14のコネクタ252および第21のコネクタ232を介して、第2の作業チャンバー230に送られる。第2の作業チャンバー230では、第21のコネクタ232が受けた気体を第8の混合部278に送る。第8の混合部278は、第6の電磁弁234から受けた窒素ガスと、第21のコネクタ232から受けた気体とを混合し、混合した気体をフィルタ151を介して第2の作業チャンバー230内に送り出す。
これにより、第2の作業チャンバー230をクリーンベンチまたはグローブボックスとして使用するとき、第2の作業チャンバー230内部において、窒素、二酸化炭素、および酸素の濃度が一定に保たれるとともに、第2の作業チャンバー230内部を大気圧と比較して陽圧にして、第2の作業チャンバー230内部に雑菌を含む大気が流入することを防止する。
他方、第2の作業チャンバー230をインキュベータとして使用するとき、第6の混合部247は、二酸化炭素ガスを分岐カプラ253を介して第2の作業チャンバー230内部に送る。これにより、第2の作業チャンバー230内部において、二酸化炭素および酸素の濃度が一定に保たれる。二酸化炭素の濃度は、例えば0%以上20%以下であり、酸素の濃度は、例えば1%以上25%以下である。これらの濃度の範囲は、実験に応じて適宜選択される。
本実施形態によれば、ボックス110と同じ成分の気体を内部に有する第1の作業チャンバー220を得る。また、ボックス110と異なる成分の気体を内部に有する第2の作業チャンバー230を得る。
第2の作業チャンバー230内に培地を保存し、操作および培養を第1の作業チャンバー220内で行うことにより、培地を無菌状態に保持したまま培地の保存、並びに細胞の操作および培養を行うことができる。
なお、殺菌灯116が取り付けられる位置は、内側背面115に限定されない。ボックス110、第1の作業チャンバー220、および第2の作業チャンバー230の内部を滅菌するに適した位置が適宜選択されうる。
なお、ボックス110内部の温度は、摂氏4度以上摂氏50度以下に限定されず、温度の範囲は、実験に応じて適宜選択される。
なお、窒素ガス生成装置190を用いずに、窒素ボンベ180のみを用いてもよい。また、窒素ガスと二酸化炭素ガスとをボックス110内部に供給および制御する構成について説明したが、これらのうち1つのガスのみ、あるいはこれらに加えて酸素ガス等の他のガスを、あるいは一以上の任意のガスをボックス110内部に供給および制御することも可能である。この場合、コネクタ、混合部、および電磁弁が適宜設置される。
なお、第3の溝126a−126d、第2の溝128a−128d、および第1の溝127a−127dは、図3−5に示されるように幅のある溝ではなく、幅のない、いわゆるスリット状であってもよい。また、第3の溝126a−126d、第2の溝128a−128d、および第1の溝127a−127dが延びる方向は、前述の方向に限定されず、内扉118または密閉扉117の正面と平行であって、内扉118または密閉扉117の旋回軸と交わる方向であればよい。また、第3の溝126a−126dは互いに平行でなくてもよく、同様に、第2の溝128a−128dも互いに平行でなくてもよく、第1の溝127a−127dも互いに平行でなくてもよい。さらに、第3の溝126a−126d、第2の溝128a−128d、および第1の溝127a−127dは互いに平行でなくてもよい。
第3の溝126aと第1の溝127a、第3の溝126bと第1の溝127b、第3の溝126cと第1の溝127c、第3の溝126dと第1の溝127は、それぞれ異なる直線上に位置してもよい。
また、図5の上下方向における第3の溝126a−126d、第2の溝128a−128d、および第1の溝127a−127dの位置関係は、図5に示されるよりも近い位置であってもよい。管129a−129dがなだらかに曲げられ、培養液が管129a−129dの内部を容易に流れることができる。さらに、図5において、管129a−129dは階段状となるように、第3の溝126a−126d、第2の溝128a−128d、および第1の溝127a−127dに設置されても良い。すなわち、例えば管129dは、第3の溝126d、第2の溝128d、および第1の溝127cに設置される。これにより、管129a−129dがなだらかに曲げられ、培養液が管129a−129dの内部を容易に流れることができる。
なお、第4の溝266a−266dおよび第5の溝267a−267dは、図9に示されるように幅のある溝ではなく、幅のない、いわゆるスリット状であってもよい。また第4の溝266a−266dおよび第5の溝267a−267dが延びる方向は、前述の方向に限定されず、前扉225および235の正面と平行であって、前扉225および235の旋回軸と交わる方向であればよい。また、第4の溝266a−266dは互いに平行でなくてもよく、同様に、第5の溝267a−267dも互いに平行でなくてもよい。さらに、第4の溝266a−266dおよび第5の溝267a−267dは互いに平行でなくてもよい。
第4の溝266aと第5の溝267a、第4の溝266bと第5の溝267b、第4の溝266cと第5の溝267c、第4の溝266dと第5の溝267は、それぞれ同じ直線上に位置してもよい。
第1の溝127a−127d、第2の溝128a−128d、第3の溝126a−126d、第4の溝266a−266d、および第5の溝267a−267dの位置は、前述の位置に限定されず、第1の弾性部材122、第2の弾性部材121、第3の弾性部材120、第4の弾性部材263、および第5の弾性部材264の全周に渡って設けられてもよい。
なお、腕カバー・グローブ固定穴119の位置は、内扉118の鉛直方向中央よりも下側に限定されず、腕カバー・グローブ固定穴229、239の位置は、内扉118の鉛直方向中央よりも上側に限定されない。
培養容器125は、試験管、タッパ、ボトル、シャーレ、フラスコ、およびその他の様々な形状の容器であってもよい。本実施形態では、灌流液を用いた閉鎖系の培養形態について主に説明したが、灌流液を用いない培養形態、開放系を用いた培養形態、または開放系と閉鎖系とを組み合わせた培養形態においても、本装置を用いることは可能である。また、これらの培養形態であっても培養容器の形状は前述のものに限定されない。
センサ161は窒素センサをさらに備え、ボックス110内の窒素濃度を測定してもよい。クリーンベンチ機能付きインキュベータ100をクリーンベンチまたはグローブボックスとして使用するとき、第1の電磁弁148は、センサ161を用いて測定された窒素濃度に基づいて、ボックス110内部の窒素濃度が予め設定された濃度になるような圧力で窒素ガスを第3の混合部147に送ってもよい。
なお、センサ269は窒素センサをさらに備え、第1の作業チャンバー220内の窒素濃度を測定してもよい。第5の電磁弁224は、第1の作業チャンバー220内部に設けられたセンサ269を用いて測定された窒素濃度に基づいて、第1の作業チャンバー220内部の窒素濃度が予め設定された濃度になるような圧力で窒素ガスを第7の混合部268に送ってもよい。
なお、センサ279は窒素センサをさらに備え、第2の作業チャンバー230内の窒素濃度を測定してもよい。第3の電磁弁248は、第2の作業チャンバー230内部に設けられたセンサ279を用いて測定された窒素濃度に基づいて、第2の作業チャンバー230内部の窒素濃度が予め設定された濃度になるような圧力で窒素ガスを第6の混合部247に送ってもよい。また、第6の電磁弁234は、第2の作業チャンバー230内部に設けられたセンサ279を用いて測定された窒素濃度に基づいて、第2の作業チャンバー230内部の窒素濃度が予め設定された濃度になるような圧力で窒素ガスを第8の混合部278に送ってもよい。
なお、前述の各要素を構成する素材は、前述のものに限定されない。
操作カバー136は、滅菌済みあるいは滅菌可能なもので、先端を切断していないグローブ、先端を切断した筒状のグローブ、不布紙製・布製あるいはシリコーン製等の腕カバーなどが好ましい。先端を切断した筒状のグローブおよび腕カバーは、ボックス内部の方がやや先細りになっている方が好ましいが、先細りになっていなくてもよい。不布紙製・布製あるいはシリコーン製等の腕カバーは、筒の両方及び/又は片側の先端あるいは筒の途中がゴムなどで絞られた形状でもよい。
なお、作業者は、滅菌状態が厳しくなくてもよい場合は、外筒のみを操作カバー136として使用し、内側のグローブ305を使用せず、アルコール等で消毒・殺菌した素手を庫内に挿入してもよい。さらに、インキュベータ機能が不必要か、大気圧に近い状態でも良い場合は、操作カバー136も使用せず、多量の窒素ガスをボックス110内部に流入させて、内部を陽圧とするクリーンベンチ機能だけとして用いてもよい。
なお、本明細書および図中に示した各部材の大きさを表す数字は例示であって、これらの値に限定されない。
ここに付随する図面を参照して本発明の実施形態が説明されたが、記載された発明の範囲と精神から逸脱することなく、変形が各部の構造と関係に施されることは、当業者にとって自明である。

Claims (20)

  1. 密閉および開放可能なボックスと、
    複数の種類の気体を前記ボックスに供給する気体供給部と、
    前記ボックス内における前記複数の種類の気体の濃度を制御する濃度制御部と、
    前記ボックス内の温度を制御する温度制御部と、
    を備える、クリーンベンチ機能付きインキュベータであって、
    前記気体供給部は、前記ボックスの内部が外部に対して陽圧となることも可能なように窒素ガスを生成する装置または窒素ボンベを備え
    前記ボックスは開口部を有し、前記開口部全体を塞ぎ、かつ前記ボックスの内部を外気から遮断する密閉用扉と、前記開口部全体を塞ぐ内扉と、前記内扉に設けることが可能な操作カバーとをさらに備え、
    前記内扉は、前記操作カバーを取り付けることが可能な操作カバー固定穴をさらに備え、
    前記操作カバーは、円形固定具を用いて前記操作カバー固定穴に取り付けられ、前記円形固定具は2つの半円環を備え、前記2つの半円環の一方の端部どうしは、互いに旋回可能となるように接続され、前記2つの半円環の他方の端部は引っ張りバネで繋がれることも可能な前記クリーンベンチ機能付きインキュベータ。
  2. クリーンベンチ機能付きグローブボックスのインキュベータとしても使用が可能な請求項1に記載クリーンベンチ機能付きインキュベータ。
  3. 前記ボックスの外部から内部に管を引き込むライン導入部をさらに備える請求項1または2に記載のクリーンベンチ機能付きインキュベータ。
  4. 前記ボックスは、
    開口部と、
    前記開口部全体を塞ぐ内扉と、
    前記開口部全体を塞ぎ、かつ前記ボックスの内部を外気から遮断する密閉用扉と、
    前記内扉と前記開口部との間および前記密閉用扉と前記開口部との間に設けられる弾性部材とを備え、
    前記弾性部材は、前記弾性部材の幅方向に延びる溝を有し、
    前記溝は、前記ボックスの外部から内部に管を引き込むライン導入部を成す請求項1からのいずれかに記載のクリーンベンチ機能付きインキュベータ。
  5. 前記ボックスは、
    開口部と、
    前記開口部全体を塞ぐ内扉と、
    前記開口部全体を塞ぎ、かつ前記ボックスの内部を外気から遮断する密閉用扉と、
    前記内扉と前記開口部との間であって前記ボックスに取り付けられる第1の弾性部材と、
    前記密閉用扉と前記開口部との間であって前記密閉用扉に取り付けられる第2の弾性部材と、
    前記密閉用扉と前記開口部との間であって前記ボックスに取り付けられる第3の弾性部材とを備え、
    前記第1の弾性部材、前記第2の弾性部材、および前記第3の弾性部材は、前記弾性部材の幅方向に延びる第1の溝、第2の溝、および第3の溝を各々有し、
    前記第1の溝、前記第2の溝、および前記第3の溝は、前記ボックスの外部から内部に管を引き込むライン導入部を成す請求項1から4のいずれかに記載のクリーンベンチ機能付きインキュベータ。
  6. 前記第1の溝、前記第2の溝、または前記第3の溝に沿って延びる直線が、隣接する他の溝の端部と交わらないように、前記第1の溝、前記第2の溝、および前記第3の溝の位置が決定される請求項5に記載のクリーンベンチ機能付きインキュベータ。
  7. 前記複数の種類の気体は酸素ガスを含む請求項1から6のいずれかに記載のクリーンベンチ機能付きインキュベータ。
  8. 前記複数の種類の気体は二酸化炭素ガスを含み、前記気体供給部は二酸化炭素ボンベを備える請求項1から7のいずれかに記載のクリーンベンチ機能付きインキュベータ。
  9. 前記複数の種類の気体は酸素ガスおよび二酸化炭素ガスを含み、前記濃度制御部は、前記酸素の濃度を25%以下に制御し、前記二酸化炭素の濃度を20%以下に制御する請求項1からのいずれかに記載のクリーンベンチ機能付きインキュベータ。
  10. 前記複数の種類の気体は窒素ガスを含み、前記クリーンベンチ機能付きインキュベータまたはクリーンベンチ機能付きグローブボックスがクリーンベンチとして使用されるとき、前記ボックスの内部が外部に対して陽圧となるように前記気体供給部が前記ボックス内へ窒素ガスの供給を増加させ、前記クリーンベンチ機能付きインキュベータがクリーンベンチ機能を使用せずにインキュベータとして使用されるとき、前記気体供給部が前記ボックスへ窒素ガスの供給を増加させない切り替えが可能である、請求項1からのいずれかに記載のクリーンベンチ機能付きインキュベータ。
  11. 前記温度制御部は、前記ボックス内の温度が摂氏4度以上50度以下の範囲の設定温度となるように制御する請求項1から10のいずれかに記載のクリーンベンチ機能付きインキュベータ。
  12. 前記ボックスは開口部を有し、前記開口部全体を塞ぐ内扉と、前記内扉に設けられた操作カバーと、前記ボックスの内部に設けられ、クリーンベンチとして使用するときに前記操作カバーを引っかけて、操作カバーがボックス外に出るのを防ぐことが可能なフックとをさらに備える請求項1から11のいずれかに記載のクリーンベンチ機能付きインキュベータ。
  13. 前記フックは、前記ボックスの内側側面から突出し、内側背面に向かって曲がっている棒状部材である請求項12に記載のクリーンベンチ機能付きインキュベータ。
  14. 前記ボックスの内側に設けられた殺菌灯をさらに備える請求項1から13のいずれかに記載のクリーンベンチ機能付きインキュベータ。
  15. 請求項1から14のいずれかに記載のクリーンベンチ機能付きインキュベータと、
    予め設定した温度に保たれる低温チャンバーと、
    前記低温チャンバー内に設けられる作業チャンバーと、
    前記作業チャンバー内部の気体の濃度を制御する気体制御部とを備えるクリーンベンチ機能付きインキュベータシステム。
  16. 前記作業チャンバーは、クリーンベンチおよび/またはグローブボックスとして使用される、請求項15に記載のクリーンベンチ機能付きインキュベータシステム。
  17. 前記気体制御部は、前記チャンバー内における前記複数の種類の気体の濃度を制御する請求項15または16に記載のクリーンベンチ機能付きインキュベータシステム。
  18. 前記濃度の制御は、前記クリーンベンチ機能付きインキュベータまたはクリーンベンチ機能付きグローブボックスの内部に含まれる気体の成分と同じになるように、前記チャンバーの内部に含まれる気体の成分を制御するものである請求項17に記載のクリーンベンチ機能付きインキュベータシステム。
  19. 前記濃度の制御は、前記クリーンベンチ機能付きインキュベータまたはクリーンベンチ機能付きグローブボックスの内部に含まれる気体を、前記チャンバーの内部に含まれる気体と交換するものである請求項17に記載のクリーンベンチ機能付きインキュベータシステム。
  20. 前記気体制御部は、前記クリーンベンチ機能付きインキュベータの内部に含まれる気体の成分と異なるように、前記チャンバーの内部に含まれる気体の成分を制御する請求項15から17のいずれかに記載のクリーンベンチ機能付きインキュベータシステム。
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