JP6882816B1 - リン酸アルミニウム化合物およびその製造方法、並びに、タンパク質精製用担体およびそれを用いたタンパク質精製方法 - Google Patents

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Abstract

精製能力に優れたリン酸アルミニウム化合物およびその製造方法、並びに、タンパク質精製用担体およびそれを用いたタンパク質精製方法が提供される。上記リン酸アルミニウム化合物は、水銀圧入法により得られるLog微分細孔容積分布(dV/dlogD)において、細孔直径(D)が2000nm以下の範囲に現れるピークに対応する細孔モード径が100nm〜300nmの範囲にある。

Description

本発明は、リン酸アルミニウム化合物およびその製造方法、並びに、タンパク質精製用担体およびそれを用いたタンパク質精製方法に関する。
タンパク質の精製技術として、従来より、塩析法、遠心法、カラムクロマトグラフィー法等の精製法が広く用いられている。タンパク質の中でも医薬品用抗体タンパク質やワクチン用抗原タンパク質については、ヒトに接種した場合の副作用の軽減や昨今の製剤基準の厳格化により、特に高度な精製技術が要求される。
特許文献1では、ワクチン等のタンパク質の精製に有用なタンパク質精製用担体として、無機化合物の中からリン酸アルミニウムに着目し、リン酸アルミニウムの構成元素ではない特定のイオンを更に含む水溶液を用いてリン酸アルミニウム化合物を製造する方法を開示している。
日本国特許第6677428号公報
本発明者等による鋭意研究の結果、特許文献1に開示された製造方法を用いて得られるリン酸アルミニウム化合物は、タンパク質に対する吸着力は強いものの、高い回収率においてタンパク質を精製することは困難であり、タンパク質精製用担体として用いるためには精製能力の更なる改善が必要なことがわかった。
そこで本発明は、精製能力に優れたリン酸アルミニウム化合物およびその製造方法、並びに、タンパク質精製用担体およびそれを用いたタンパク質精製方法を提供することを目的とする。
本発明の実施形態(以下において、「本実施形態」という。)は、例えば、以下の通りである。
[1] 水銀圧入法により得られるLog微分細孔容積分布(dV/dlogD)において、細孔直径(D)が2000nm以下の範囲に現れるピークに対応する細孔モード径が100nm〜300nmの範囲にあるリン酸アルミニウム化合物。
[2] 上記細孔モード径が100nm〜200nmの範囲にある、[1]に記載のリン酸アルミニウム化合物。
[3] 平均粒子径(D50)が50μm〜80μmの範囲にある、[1]又は[2]に記載のリン酸アルミニウム化合物。
[4] 平均粒子径(D50)が55μm〜70μmの範囲にある、[1]又は[2]に記載のリン酸アルミニウム化合物。
[5] 非晶質である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載のリン酸アルミニウム化合物。
[6] 硫黄とカリウムを含有する、[1]〜[5]のいずれか1項に記載のリン酸アルミニウム化合物。
[7] マグネシウムを含有しないか、含有する場合にはその含有率が0.01質量%未満である、[1]〜[6]のいずれか1項に記載のリン酸アルミニウム化合物。
[8] [1]〜[7]のいずれか1項に記載のリン酸アルミニウム化合物を含むタンパク質精製用担体。
[9] タンパク質が吸着した[8]に記載のタンパク質精製用担体を含む溶液をカラム、クロスフローフィルターまたはデッドエンドフィルターを用いて濾過する工程を含むタンパク質精製方法において用いられるタンパク質精製用担体。
[10] タンパク質を含む溶液を[8]又は[9]に記載のタンパク質精製用担体に接触させて、上記タンパク質を上記タンパク質精製用担体に吸着させること、
タンパク質が吸着した上記タンパク質精製用担体をカラム、クロスフローフィルターおよびデッドエンドフィルターのいずれかを用いた濾過により分離すること、および
分離された上記タンパク質精製用担から上記タンパク質を溶出剤で溶出すること
を含むタンパク質精製方法。
[11] リン酸イオンを含む水溶液Aと、アルミニウムイオン、硫酸イオンおよびカリウムイオンを含む水溶液Bとを混合し、リン酸アルミニウム化合物を含む混合液を得ることを含むリン酸アルミニウム化合物の製造方法であって、上記水溶液A中の前記リン酸イオンの濃度が0.6mol/L超であり、上記水溶液B中の前記アルミニウムイオンの濃度が0.3mol/L超であり、上記カリウムイオンの濃度が0.2mol/L超である製造方法。
[12] 上記リン酸アルミニウム化合物が[1]〜[7]のいずれか1項に記載のリン酸アルミニウム化合物である、[11]に記載の製造方法。
[13] 前記混合液から前記リン酸アルミニウム化合物を分離すること、分離した前記リン酸アルミニウム化合物を洗浄すること、および、洗浄した前記リン酸アルミニウム化合物をスプレードライヤーを用いて乾燥することを更に含む、[11]または[12]に記載の製造方法。
本発明により、精製能力に優れたリン酸アルミニウム化合物およびその製造方法、並びに、タンパク質精製用担体およびそれを用いたタンパク質精製方法を提供することが可能となった。
図1は、実施例1、2及び比較例1、2のリン酸アルミニウム化合物の水銀圧入法によるLog微分細孔容積分布を示すグラフである。 図2は、実施例1のリン酸アルミニウム化合物の粉末X線回折スペクトルを示すグラフである。 図3は、実施例1のリン酸アルミニウム化合物の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。 図4は、比較例1のリン酸アルミニウム化合物の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<第1実施形態:リン酸アルミニウム化合物>
・細孔モード径
本実施形態に係るリン酸アルミニウム化合物は、Log微分細孔容積分布(dV/dlogD)の細孔モード径が100nm〜300nmの範囲にあるという特定の細孔分布を有する非晶質のリン酸アルミニウム化合物である。
本実施形態において、Log微分細孔容積分布の細孔モード径は、水銀圧入法により測定する。具体的には、水銀圧入法による測定結果に基づき、試料の細孔直径(D)を横軸に、Log微分細孔容積(dV/dlogD)を縦軸にプロットした分布曲線を得る。縦軸のLog微分細孔容積(dV/dlogD)は、測定点間の細孔容積の差分(差分細孔容積(dV))が、細孔直径(D)の差分の対数値(dlogD)で除された値である。このLog微分細孔容積分布において、細孔直径が2000nm以下の範囲に現れるピークのピークトップ(dV/dlogDの最大値であり、最大頻度を表す。)に対応する細孔直径を細孔モード径と称する。
後述の比較例1および比較例2はそれぞれ、特許文献1の実施例1および2に記載のリン酸アルミニウム化合物の製造方法をほぼ同様の条件で追試したものであるが、得られたリン酸アルミニウム化合物における細孔モード径はそれぞれ42.9nm、48.3nmと小さい。本発明者等による鋭意研究により、特許文献1に開示された製造方法を用いて得られるリン酸アルミニウム化合物は、細孔モード径が小さいために、タンパク質に対する吸着力が強く、担体からのタンパク質の溶出に用いられる一般的な溶出剤では目的タンパク質を溶出できないため、高い回収率においてタンパク質を精製することが困難であることが見いだされた。
本実施形態に係るリン酸アルミニウム化合物は、細孔直径が制御された特定の細孔分布を有するものであり、前述のとおり、Log微分細孔容積分布(dV/dlogD)の細孔モード径が100nm〜300nmの範囲にあることを第一の特徴とする。リン酸アルミニウム化合物の細孔モード径が100nm〜300nmの範囲にあるとき、タンパク質などの被精製物に対する吸着力が適正化され、被精製物に対する吸着力と、溶出剤に対する溶出性の双方に優れたリン酸アルミニウム化合物が得られるため、高い回収率で目的被精製物を精製することができる。リン酸アルミニウム化合物の細孔モード径は、好ましくは200nm〜300nmである。
・平均粒子径(D50
本実施形態に係るリン酸アルミニウム化合物は、平均粒子径(D50)が好ましくは50μm〜80μmであり、より好ましくは55μm〜70μmである。平均粒子径(D50)は、粒子径と小粒子側からの積算頻度との関係を示す積算分布曲線において、積算頻度50体積%に対する粒子直径(体積メジアン径)であり、本実施形態においてはレーザー回折散乱法により求められる。
本実施形態に係るリン酸アルミニウム化合物をタンパク質精製用担体として用いた後述するタンパク質精製方法においては、溶液中のタンパク質との接触によりタンパク質が吸着したリン酸アルミニウム化合物は、他の成分からの分離のために濾過される。リン酸アルミニウム化合物の平均粒子径(D50)が上記範囲にある場合、タンパク質が吸着したリン酸アルミニウム化合物の濾過性が向上し、生産性も向上する。
・累積細孔容積、平均細孔直径、嵩密度、見かけ密度、気孔率、および骨格密度
本実施形態に係るリン酸アルミニウム化合物は、タンパク質等の被精製物に対する吸着性をより良好にするなどの観点から、累積細孔容積が好ましくは1.5〜3.0mL/g、より好ましくは2.0〜2.5mL/gであり、平均細孔直径が好ましくは150〜500nm、より好ましくは250〜400nmであり、嵩密度が好ましくは0.2〜1.0g/mL、より好ましくは0.3〜0.5g/mLであり、見かけ密度(真密度)が好ましくは0.3〜1.0g/mL、より好ましくは0.5〜0.7g/mLであり、気孔率が好ましくは30〜70%、より好ましくは40〜50%であり、骨格密度が好ましくは1.0〜3.0g/mL、より好ましくは1.5〜2.5g/mLである。累積細孔容積、平均細孔直径、嵩密度、見かけ密度、気孔率、および骨格密度は、細孔モード径と同様、水銀圧入法によって測定することができる。
・リン酸アルミニウム化合物の組成
本実施形態に係るリン酸アルミニウム化合物は、後述するリン酸イオンを含む水溶液Aと、硫酸イオン、アルミニウムイオンおよびカリウムイオンを含む水溶液Bとを用いた製造方法により製造されるため、リン酸アルミニウムだけでなく、硫黄とカリウムを更に含む。リン酸アルミニウム化合物が硫黄とカリウムを含んで構成されることでタンパク質等の被精製物に対する吸着性が向上し、精製用担体として有用な物質となる。
リン酸アルミニウム化合物中の硫黄(硫黄原子)の含有率は特に限定されないが、タンパク質吸着性をより良好にするなどの観点から、好ましくは0.3〜5.0質量%であり、より好ましくは1.0〜2.0質量%である。
リン酸アルミニウム化合物中のカリウム(カリウム原子)の含有率は、タンパク質吸着性をより良好にするなどの観点から、好ましくは0.3〜5.0質量%であり、より好ましくは0.5〜2.0質量%である。
リン酸アルミニウム化合物は、更に他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、水分およびカルシウム等が挙げられる。
ただし、特許文献1に開示された製造方法では、水溶液Bとして上記イオンに加え更にマグネシウムイオンを必須成分として含有する水溶液が使用され、得られるリン酸アルミニウム化合物はマグネシウムを0.01質量%以上の含有率において含有するが(特許文献1の請求項1、3、6等参照)、本実施形態に係るリン酸アルミニウム化合物はマグネシウムを実質的に含有しないことが好ましい。そのメカニズムは定かではないが、マグネシウムが存在すると本実施形態に係るリン酸アルミニウム化合物の精製能力に悪影響を及ぼすためである。
ここで「マグネシウムを実質的に含有しない」とは、リン酸アルミニウム化合物を製造する過程で不可避的に不純物として混入するマグネシウムを含有する場合まで除くものではないことを意味する。具体的には、本実施形態に係るリン酸アルミニウム化合物は、マグネシウムを含有しないか、含有する場合には0.01質量%未満であることが好ましく、0.003質量%以下であることがより好ましい。
リン酸アルミニウム化合物中のアルミニウムの含有率は、上述の他の成分を含むことを限度として特に限定されないが、タンパク質吸着性をより良好にするなどの観点から、好ましくは8〜35質量%であり、より好ましくは10〜16質量%である。
リン酸アルミニウム化合物中のリンに対するアルミニウムのモル比(Al(mol)/P(mol))としては、好ましくは0.3〜1.5であり、より好ましくは0.5〜1.0である。
<第2実施形態:リン酸アルミニウム化合物の製造方法>
細孔モード径が100nm〜300nmの範囲にあり、特定の細孔分布を有する本実施形態のリン酸アルミニウム化合物は、リン酸イオンを含む水溶液Aと、硫酸イオン、アルミニウムイオンおよびカリウムイオンを含む水溶液Bとを混合することを含むリン酸アルミニウム化合物の製造方法において、水溶液A中のリン酸イオン濃度、および、水溶液B中のアルミニウムイオン濃度およびカリウムイオン濃度を高濃度に設定することにより得ることができる。
・水溶液A
水溶液Aは、リン酸イオンを含む。水溶液Aは、リン酸含有化合物が溶解された水性溶液として調製することができる。リン酸含有化合物としては、リン酸、リン酸無水素塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩等が挙げられる。
リン酸は、オルトリン酸である。リン酸無水素塩は、水素塩ではないリン酸塩であり、リン酸アンモニウム((NHPO)、リン酸三ナトリウム(NaPO)、リン酸三カリウム(KPO)、ヒドロキシアパタイト(Ca10(PO(OH))等が挙げられる。リン酸一水素塩は、一水素塩のリン酸塩であり、リン酸水素二アンモニウム((NHHPO)、リン酸水素二ナトリウム(NaHPO)、リン酸水素二カリウム(KHPO)、リン酸一水素カルシウム(CaHPO)等が挙げられる。リン酸二水素塩は、二水素塩のリン酸塩であり、リン酸二水素アンモニウム(NHPO)、リン酸二水素ナトリウム(NaHPO)、リン酸二水素カリウム(KHPO)等が挙げられる。
リン酸含有化合物は、無水和物であってもよいし、水和物であってもよい。また、水和物の水和数は特に限定されない。これらリン酸含有化合物は、一種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
上述のリン酸含有化合物の中でも、リン酸アルミニウム化合物のタンパク質吸着性をより良好にするなどの観点から、好ましくはリン酸一水素塩が挙げられ、より好ましくはリン酸水素二ナトリウム(NaHPO)が挙げられる。
水溶液A中のリン酸イオン濃度は、細孔モード径を上記範囲に制御する観点から、水溶液Aの調製に用いた上述のリン酸含有化合物を構成するリン酸イオンの総量として、0.6mol/L超であり、好ましくは0.7mol/L以上であり、より好ましくは0.8mol/L以上である。水溶液A中のリン酸イオン濃度の上限値は、リン酸イオンの総量として、例えば1.5mol/L以下であってよい。
水溶液Aの液性としては特に限定されないが、例えば塩基性溶液として調製することができる。塩基性溶液としての水溶液Aは、上述のリン酸含有化合物を水に溶解させることで調製してもよいし、上述のリン酸化合物を水に溶解させるとともに、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどの金属水酸化物の1種又は複数種を用いてpHを調整することにより調製してもよいし、あらかじめ調製した上記金属水酸化物の塩基性水溶液に上述のリン酸化合物を溶解させることで調製してもよい。
水溶液Aの具体的なpH(23℃、以下において同様)としては、好ましくは、後述の水溶液Bと混合して得られる混合物のpHが2.0〜4.0となるように、水溶液BのpHを考慮して決定することができる。具体的には、水溶液AのpHは、例えば7.5〜10.5であってよく、8.5〜9.5であってよい。
リン酸含有化合物を溶解させる方法としては、特に限定されず、例えば、撹拌、振とう、超音波溶解等が挙げられる。また、リン酸含有化合物を溶解させるときの温度及び圧力の条件も特に限定されず、例えば、常温常圧下及び加温常圧下等の条件が挙げられる。
水溶液Aは、調製された溶液をフィルターろ過したものであることが好ましい。用いるフィルターの孔径としては、例えば0.2〜3μmであってよく、0.45〜1μmであってよい。
・水溶液B
水溶液Bは、アルミニウムイオン、硫酸イオン、およびカリウムイオンを含む。このように、リン酸アルミニウムの構成元素でないカリウムイオンを含む水溶液を用いることによって、得られるリン酸アルミニウム化合物を、特にタンパク質に対する優れた吸着作用を有するタンパク質精製用担体として有用な物質として得ることができる。
水溶液Bは、アルミニウムイオン、硫酸イオンおよびカリウムイオンを含む1種または2種以上の塩が溶解された水溶液として調製することができる。当該塩としては、単塩であってもよいし複塩であってもよい。
水溶液Bを調製するための塩としては、アルミニウムイオン、硫酸イオンおよびカリウムイオンをそれぞれ単独で含む塩が複数種組み合わされてもよいし、複数種のイオンを含む塩が単独又は複数種組み合わされてもよい。水溶液Bを調製するための塩を2種以上用いる場合、リン酸アルミニウム化合物のタンパク質吸着性をより良好に得る等の観点から、いずれの塩も、硫酸イオンをアニオンとして有するものであることが好ましい。
アルミニウムイオンを含む塩としては、例えば、水酸化アルミニウム(Al(OH))、酸化アルミニウム(Al)、硫酸アルミニウム(Al(SO)、塩化アルミニウム(AlCl)、硝酸アルミニウム(Al(NO)、硫酸カリウムアルミニウム(AlK(SO)等が挙げられ、好ましくは、硫酸アルミニウム(Al(SO)、硫酸カリウムアルミニウム(AlK(SO)が挙げられ、より好ましくは、硫酸カリウムアルミニウム(AlK(SO)が挙げられる。
硫酸イオンを含む塩としては、例えば、上述の硫酸アルミニウム(Al(SO)、硫酸カリウムアルミニウム(AlK(SO)に加え、硫酸カリウム等が挙げられ、より好ましくは、硫酸カリウムアルミニウム(AlK(SO)が挙げられる。
カリウムイオンを含む塩としては、上述の硫酸カリウムアルミニウム(AlK(SO)、硫酸カリウムに加え、水酸化カリウム(KOH)、塩化カリウム(KCl)、硝酸カリウム(KNO)等が挙げられ、好ましくは、硫酸カリウムアルミニウム(AlK(SO)、硫酸カリウムが挙げられ、より好ましくは、硫酸カリウムアルミニウム(AlK(SO)が挙げられる。
上述の塩は、無水和物であってもよいし、水和物であってもよい。また、水和物の水和数は特に限定されない。
水溶液B中のアルミニウムイオン濃度は、細孔モード径を上記範囲に制御する観点から、水溶液Bの調製に用いた上述の塩を構成するアルミニウムイオンの総量として、0.3mol/L超であり、好ましくは0.4mol/L以上であり、より好ましくは0.5mol/L以上である。水溶液B中のアルミニウムイオン濃度の上限値は、アルミニウムイオンの総量として、例えば2.4mol/L以下であってよい。
また、水溶液Bにおけるアルミニウムイオンの量としては、リン酸アルミニウム化合物のタンパク質吸着性をより良好にするなどの観点から、水溶液Bの調製に用いた上述の塩を構成するアルミニウムイオンの総量の下限として、水溶液Aの調製に用いたリン酸含有化合物を構成するリン酸イオン1mol当たり、好ましくは0.1mol以上であり、より好ましくは0.2mol以上である。上限として、水溶液Aの調製に用いたリン酸含有化合物を構成するリン酸イオン1mol当たり、好ましくは0.5mol以下であり、より好ましくは0.3mol以下である。
水溶液B中のカリウムイオン濃度は、細孔モード径を上記範囲に制御する観点から、水溶液Bの調製に用いた上述の塩を構成するカリウムイオンの総量の下限として、0.2mol/L超であり、好ましくは0.3mol/L以上であり、より好ましくは0.5mol/L以上である。水溶液B中のカリウムイオン濃度の上限値は、カリウムイオンの総量として、例えば2.4mol/L以下であってよい。
水溶液B中の硫酸イオンの濃度としては、細孔モード径を上記範囲に制御する観点、及び/又は、水溶液Aと反応させて効率的にリン酸アルミニウム化合物を得る観点、及び/又は、リン酸アルミニウム化合物のタンパク質吸着性をより良好に得る等の観点から、水溶液Bの調製に用いた上述の塩を構成する硫酸イオンの総量の下限として、例えば1.0mol/L以上であり、好ましくは1.3mol/L以上であり、上限として、例えば4.8mol/L以下であり、好ましくは3.0mol/L以下であり、より好ましくは2.0mol/L以下である。
水溶液Bの液性としては特に限定されないが、例えば酸性溶液として調製することができる。酸性溶液としての水溶液Bは、上述の塩を水に溶解させることで調製してもよいし、上述の塩を水に溶解させるとともに、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の鉱酸の1種又は複数種を用いてpHを調整することにより調製してもよいし、あらかじめ調製した上記鉱酸の酸性水溶液に上述の塩を溶解させることで調製してもよい。水溶液Bの具体的なpHとしては、好ましくは、前述の水溶液Aと混合して得られる混合物のpHが2.0〜4.0となるように、水溶液AのpHを考慮して決定することができる。具体的には、水溶液BのpHは、例えば1.5〜4.0であってよく、2.0〜3.5であってよい。
上述の塩を溶解させる方法としては、特に限定されず、例えば、撹拌、振とう、超音波溶解等が挙げられる。また、上述の塩を溶解させるときの温度及び圧力の条件も特に限定されず、例えば、常温常圧下及び加温常圧下等の条件が挙げられる。
水溶液Bは、調製された溶液をフィルターろ過したものであることが好ましい。用いるフィルターの孔径としては、例えば0.2〜3μmであってよく、0.4〜1μmであってよい。
・混合
水溶液A及び水溶液Bは、混合することで、リン酸アルミニウム化合物を生じる。リン酸アルミニウム化合物のタンパク質吸着性をより良好にするなどの観点から、好ましくは、水溶液Aに対して水溶液Bを添加することで混合することができる。添加方法としては特に限定されず、一括添加、滴下添加、分割添加、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、リン酸アルミニウム化合物のタンパク質吸着性をより良好にするなどの観点から、好ましくは、滴下添加、分割添加、及びそれらの組み合わせが挙げられ、より好ましくは滴下添加が挙げられる。
得られた水溶液Aと水溶液Bとの混合物のpHは特に限定されないが、リン酸アルミニウム化合物のタンパク質吸着性をより良好にするなどの観点から、好ましくは2.0〜4.0である。水溶液Aと水溶液Bとの混合によって、リン酸アルミニウム化合物は、沈殿物またはゲルとして得ることができる。
・後処理
生成したリン酸アルミニウム化合物は、混合物からの分離、洗浄、乾燥等の後処理に供される。混合物からの分離、洗浄、乾燥の方法としては特に限定されない。混合物からの分離の方法としては、例えば、ろ過や遠心分離が挙げられる。分離されたリン酸アルミニウム化合物は、沈殿物またはゲルの状態で得ることができる。洗浄の方法としては、水洗、あるいは水溶液への懸濁および遠心分離が挙げられる。このような洗浄操作は、1回又は複数回行うことができる。洗浄されたリン酸アルミニウム化合物は、沈殿物またはゲルの状態で得ることができる。乾燥の方法としては、スプレードライヤー、棚式乾燥機を用いた方法等が挙げられる。なかでもスプレードライヤーによれば、リン酸アルミニウム化合物を、50μm〜80μmの平均粒子径(D50)を有する略球状に造粒することができ、後述のろ過性能力が向上するため好ましい。
本実施形態に係るリン酸アルミニウム化合物は、例えば固体触媒、触媒担体、吸着材、分離材などの材料として幅広い分野において好適に使用することができる。
<第3実施形態:タンパク質精製用担体>
本実施形態に係るリン酸アルミニウム化合物は、タンパク質精製用担体として好適に用いられる。上述の通り、本実施形態に係るリン酸アルミニウム化合物はタンパク質に対する吸着力が適正化され、タンパク質に対する吸着力と、溶出剤に対する溶出性の双方に優れるため、高い回収率で目的タンパク質を精製することができる。
本実施形態に係るリン酸アルミニウム化合物は、例えば、無細胞系により合成したタンパク質、及び/又は、細菌、酵母、藻類、昆虫細胞、哺乳類細胞、及び動物培養細胞等を宿主として発現させたタンパク質の精製用担体として用いることができる。
タンパク質の種類としては特に限定されないが、例えば、医薬品用抗体タンパク質、ワクチン用抗原タンパク質等が挙げられる。
医薬品用抗体タンパク質としては、例えば、抗腫瘍抗体(例えば、トラスツズマブ、ベルツズマブ、リツキシマブ、オファツムマブ、セツキシマブ、バニツムマブ、アレムツズマブ、ゲムツズマブ、イブリツモマブ、ブレンツキシマブ)、免疫調節抗体(例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブ、トシリズマブ、オマリズマブ、エクリズマブ、バシリキシマブ、ナタリズマブ、モガムリズマブ、ニボルマブ)、抗インターロイキン抗体(例えば、ウステキヌマブ、カナキヌマブ、セクキヌマブ)、抗心血管系調節抗体(例えば、ベバシズマブ)、抗骨関連分子抗体(例えば、デノスマブ)、抗ウイルス抗体(例えば、バリビズマブ)等が挙げられる。
ワクチン用抗原タンパク質としては、例えば以下のワクチン向けのものが挙げられる。具体的には、インフルエンザワクチン、コレラワクチン、狂犬病ワクチン、ジフテリアワクチン、髄膜炎菌ワクチン、ダニ媒介性脳炎ワクチン、炭素菌ワクチン、腸チフスワクチン、肺炎球菌ワクチン、破傷風ワクチン、ヒトパピローマウイルスワクチン、百日咳ワクチン、ポリオワクチン、A型肝炎ウイルスワクチン、B型肝炎ウイルスワクチン、コロナウイルスワクチン等が挙げられる。
その他医薬品等に用いられるタンパク質としては、例えばアルブミン、アンチトロンビン、インスリン類、インターフェロン類、インターロイキン、エリスロポエチン類、顆粒球コロニー刺激因子類、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、グルカゴン、血液凝固第VII因子、血液凝固第VIII因子、血液凝固第IX因子、成長因子類、トロンビン、トロンボモジュリン、尿酸分解酵素、フィブリノゲン、フィブリン、副甲状腺ホルモン、卵胞刺激ホルモン、リソソーム酵素、レプチン、DNA分解酵素等が挙げられる。
また、その他研究用途に用いられるタンパク質としては、例えばCBDタグ、CBPタグ、FLAGタグ、GFPタグ、GSTタグ、HAタグ、Hisタグ、MBPタグ、mycタグ、RFPタグ、Thioredoxinタグが挙げられる。
<第4実施形態:タンパク質の精製方法>
本実施形態に係るリン酸アルミニウム化合物は、上述の通り、タンパク質精製用担体として好適に用いることができる。この本実施形態に係るタンパク質精製用担体を用いたタンパク質の精製方法としては、公知の方法を用いることができる。
本実施形態に係るタンパク質精製用担体を用いたタンパク質精製方法は、一形態において、タンパク質を含有する溶液をタンパク質精製用担体に接触させて、上記タンパク質を上記タンパク質精製用担体に吸着させること、タンパク質が吸着した上記タンパク質精製用担体をカラム、クロスフローフィルターおよびデッドエンドフィルターのいずれかを用いた濾過により分離すること、および、分離された上記タンパク質精製用担から上記タンパク質を溶出剤で溶出することを含む。
本実施形態に係るタンパク質精製用担体はタンパク質に対する吸着力が適正化され、吸着力だけでなく溶出剤に対する溶出性にも優れるため、タンパク質精製方法においては溶出剤として汎用されているものを使用することができる。また、タンパク質精製方法が含む濾過工程では、市販のカラム、クロスフローフィルター又はデッドエンドフィルターを使用することができるため、本実施形態に係るタンパク質精製用担体を用いたタンパク質精製方法は簡便でありながらタンパク質の精製能力に優れている。
<リン酸アルミニウム化合物の製造>
実施例1
リン酸水素二ナトリウム12水和物56.4kgに精製水を加えて撹拌し、60℃に加温して溶解し、全体で135Lの水溶液(リン酸イオン濃度:1.2mol/L)を調製した。この水溶液を孔径1μmのフィルターでろ過し、リン酸水素二ナトリウム水溶液(水溶液A)を得た。
次に硫酸カリウムアルミニウム12水和物44.8kgに精製水を加えて撹拌し、60℃に加温して溶解し、全体で123Lの水溶液(アルミニウムイオン濃度:0.77mol/L、硫酸イオン濃度:1.5mol/L、カリウムイオン濃度:0.77mol/L)を調製した。この液を孔径1μmのフィルターでろ過し、硫酸カリウムアルミニウム水溶液(水溶液B)を得た。
上記リン酸水素二ナトリウム水溶液(水溶液A)を60℃に維持し150rpmで撹拌しながら、上記硫酸カリウムアルミニウム水溶液(水溶液B)を1時間かけて滴下した。得られた混合物をフィルタープレスでろ過した。さらにろ過ケーキを、ろ液導電率が5mS/cmになるまで精製水で水洗した。
得られたケーキを固形分率10質量%になるよう懸濁し、スプレードライヤー(大川原化工機製OUDL‐16)にて入口温度250℃、出口温度100℃、アトマイザー回転数11000rpmの条件で乾燥・造粒し、リン酸アルミニウム化合物aを得た。
実施例2
実施例1に示した製造方法に対し、リン酸水素二ナトリウム水溶液(水溶液A)中のリン酸イオン濃度を変更し(リン酸イオン濃度:0.82mol/L)、硫酸カリウムアルミニウム水溶液(水溶液B)中のアルミニウムイオン濃度、硫酸イオン濃度、およびカリウムイオン濃度を変更(アルミニウムイオン濃度:0.52mol/L、硫酸イオン濃度:1.0mol/L、カリウムイオン濃度:0.52mol/L)した以外は、実施例1と同様の方法でリン酸アルミニウム化合物bを得た。
比較例1
リン酸水素二ナトリウム12水和物35.9gに水を加えて撹拌して溶解し、全体で1000mLの水溶液(リン酸イオン濃度:0.25mol/L)を調製した。この水溶液を孔径0.22μmのフィルターでろ過し、リン酸水素二ナトリウム水溶液(水溶液A)を得た。
次に硫酸カリウムアルミニウム12水和物28.4g及び硫酸マグネシウム7水和物9.86gに水を加えて撹拌して溶解し、全体で1000mLの水溶液(アルミニウムイオン濃度:0.06mol/L、硫酸イオン濃度:0.2mol/L、カリウムイオン濃度:0.06mol/L、マグネシウムイオン濃度:0.08mol/L)を調製した。この水溶液を孔径0.22μmのフィルターでろ過し、上記組成の水溶液(水溶液B)を得た。
上記リン酸水素二ナトリウム水溶液(水溶液A)を700rpmで撹拌しながら、上記組成の水溶液(水溶液B)を1時間かけて滴下した。得られた混合物を2070×gで15分間遠心分離し、ゲル状の沈殿物を回収した。回収したゲル状物を0.9mass/v%生理食塩水に投入し、超音波発生装置を用いて懸濁させて洗浄した。その後、2070×gで15分間遠心分離を行って、ゲル状物を回収した。ゲル状物の生理食塩水への懸濁及び遠心分離を同じ条件でもう1回行った。得られたゲル状物をトレーに広げて1晩、60℃で乾燥させた。これによって、白色結晶である乾燥ゲルを得た。乾燥ゲルを、手作業で破砕・粉末化し、リン酸アルミニウム化合物cを得た。
比較例2
リン酸水素二ナトリウム12水和物35.9gに水を加えて撹拌して溶解し、全体で1000mLの水溶液(リン酸イオン濃度:0.25mol/L)を調製した。この水溶液を孔径0.22μmのフィルターでろ過し、リン酸水素二ナトリウム水溶液(水溶液A)を得た。
次に硫酸カリウムアルミニウム12水和物28.4g及び硫酸マグネシウム7水和物9.86gに水を加えて撹拌して溶解し、全体で1000mLの水溶液(アルミニウムイオン濃度:0.06mol/L、硫酸イオン濃度:0.2mol/L、カリウムイオン濃度:0.06mol/L、マグネシウムイオン濃度:0.08mol/L)を調製した。この水溶液を孔径0.22μmのフィルターでろ過し、上記組成の水溶液(水溶液B)を得た。
上記リン酸水素二ナトリウム水溶液(水溶液A)を200rpmで撹拌しながら、約2秒で上記組成の水溶液(水溶液B)を添加した。得られた混合物を2070×gで15分間遠心分離し、ゲル状の沈殿物を回収した。回収したゲル状物を0.9mass/v%生理食塩水に投入し、超音波発生装置を用いて懸濁させて洗浄し、その後、2070×gで15分間遠心分離を行って、ゲル状物を回収した。ゲル状物の生理食塩水への懸濁及び遠心分離を同じ条件でもう1回行った。得られたゲル状物をトレーに広げて1晩、60℃で乾燥させた。これによって、白色結晶である乾燥ゲルを得た。乾燥ゲルを、手作業で破砕・粉末化し、リン酸アルミニウム化合物dを得た。
なお、上掲の比較例1および2はそれぞれ、特許文献1(日本国特許第6677428号)の実施例1および2に記載のリン酸アルミニウム化合物の製造方法をほぼ同様の条件で追試したものである。
実施例1、2、および比較例1、2で得られたリン酸アルミニウム化合物a〜dについて、以下に示す方法で物性を測定し、性能を評価した。実施例1及び比較例1については外観も観察した。
<水銀圧入法による細孔特性>
実施例1、2および比較例1、2で得られたリン酸アルミニウム化合物a〜dを、水銀圧入法による細孔特性の測定サンプルとして用いた。水銀圧入法により、細孔直径約3.6nm〜200000nmの範囲について各サンプルの細孔分布を測定し、細孔モード径、累積細孔容積、平均細孔直径、嵩密度、見かけ密度、気孔率、および骨格密度を得た。装置には、Poremaster60GT(Quantachrome社製)を使用した。
[細孔モード径]
各サンプル0.1〜0.3gを正確に量り、測定セルに封入し、水銀の接触角を140°、水銀の表面張力を480dyn/cmとして、水銀圧入法により得られた各サンプルの測定結果に基づき、横軸を細孔直径(D)(nm)、縦軸をLog微分細孔容積分布(dV/dlogD)(cc/g)としてプロットしたLog微分細孔容積分布を図1に示す。図1に示されるLog微分細孔容積分布において、細孔直径(D)が3.6nm〜2000nm以下の範囲に現れる第1ピークのピークトップ(dV/dlogDの最大値)に対応するモード径を、リン酸アルミニウム化合物の細孔モード径として求めた。結果を後掲の表2に示す。
なお、図1に示す細Log微分細孔容積分布(dV/dlogD)において、細孔直径Dが2000nm超〜200000nmの範囲に現れる第2ピークのピークトップに対応するモード径は、粒子間の隙間の空隙モード径である。
各リン酸アルミニウム化合物の細孔モード径、累積細孔容積、平均細孔直径、嵩密度、見かけ密度、気孔率および骨格密度の測定結果を後掲の表2に示す。
<平均粒子径(D50)>
各リン酸アルミニウム化合物を、レーザー回折法による平均粒子径(D50)の測定サンプルとして用いた。各サンプルをレーザー回折式粒度分布計(MT3300EXII:Microtrac社製)にDV値0.1〜0.6になるように投入し、流速32.5mL/秒で10秒間循環させた後、測定時間20秒、測定回数2回の条件で、精製水中で測定を行い、2回測定したD50値の平均を平均粒子径として算出した。平均粒子径(D50)の測定結果を後掲の表2に示す。
<粉末X線回折(XRD)>
実施例1のリン酸アルミニウム化合物aをメノウ乳鉢で粉砕した後、試料セル(ガラス製)に充填し、以下の測定条件で粉末X線回折スペクトルを測定した。得られた粉末X線回折スペクトルを表すグラフを図2に示す。図2からリン酸アルミニウム化合物aは非晶質と判断される。
[測定条件]
X線管球 :CuKα
光学系 :集中法
管電圧・管電流 :40kV−30mA
スキャン範囲 :5−90deg
スキャンステップ:0.02deg
スキャンスピード:40deg/分
検出器 :1次元半導体検出器
測定装置:X線回折分析装置 SmartLab(Rigaku製)
<電子顕微鏡観察>
実施例1のリン酸アルミニウム化合物a及び比較例1のリン酸アルミニウムcについて、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)法により外観を観察した。各試料を採取し、1000倍視野をFE−SEMにて観察及び撮影した。装置には、FE−SEM SU8220(日立ハイテク製)を使用した。実施例1のリン酸アルミニウム化合物aのSEM写真を図3に、比較例1のリン酸アルミニウム化合物cのSEM写真を図4に示す。
図3に示される通り、実施例1のリン酸アルミニウム化合物aの粒子形状は略球形であるのに対し、図4に示される通り、粉砕物である比較例1のリン酸アルミニウム化合物cの粒子形状は不定形(非球形)であることが確認された。
<元素分析>
実施例1のリン酸アルミニウム化合物a、比較例1のリン酸アルミニウムcおよび比較例2のリン酸アルミニウムdについて、酸分解/ICP−OES法により元素分析を行った。装置にはSPECTRO ARCOS(SPECTRO Analytical Instruments社製)を使用した。測定結果を表1に示す。
Figure 0006882816
試験例1 [GFPタンパク質の精製能力評価]
大腸菌(E.coli HB101 K−12株:BIO‐RAD社製)にGFP(Green Fluorescent protein)を発現させた後、BactYeast Lysis Buffer(ATTO社製)に懸濁して菌体を溶解し、遠心上清を回収した。これによって、粗タンパク質液を得た。この粗タンパク質液50μLと、担体として実施例1、2および比較例1、2で作製した各リン酸アルミニウム化合物6.5mgを混合して、タンパク質を吸着させた。
各担体を懸濁したタンパク質液を2000×gで5分の遠心操作で担体と上清に分離し、上清を取り除いた。各担体を、洗浄液(BactYeast Lysis Buffer)を50μLずつ用いて3回洗浄した。その後、各担体を、溶出液(80mM EDTA−2NAを添加したBactYeast Lysis Buffer)を50μLずつ用いて2回洗浄し、その液を回収し、溶出画分とした。粗タンパク質液及び回収した溶出画分のタンパク質濃度を、BCA法により定量した。さらに、粗タンパク質液及び回収した溶出画分を、同量の2×サンプルバッファーと混和し、95℃で3分ボイリングした。この液をSDS−ポリアクリルアミド電気泳動法(SDS−PAGE)で分離した。ゲルとしては、アクリルアミドの濃度が均一なゲル(15%ゲル)を用い、粗タンパク質液4μLおよび溶出画分8μLをそれぞれアプライした。
得られたゲルをCBB染色液で染色した後脱色し、デンシトメトリーによって各レーンのGFP濃度を算出し、以下の計算式によってGFPの回収率を計算した。結果を表2に示す。
GFPの回収率(%)=[溶出画分のGFP濃度×2/粗タンパク質液のGFP濃度]×100
試験例2 [ろ過性評価]
実施例1および2で作製した各リン酸アルミニウム化合物5gを、500mLの水に懸濁した。メンブレンフィルター(Advantec社製Mixed Cellulose Ester φ47mm 孔径0.2μm)をフィルターホルダーにセットし、吸引ろ過鐘とアスピレーター(Advantec社製 PSA152AB)を用いて懸濁液を吸引ろ過し、全量をろ過するのにかかった時間を記録した。結果を表2に示す。
Figure 0006882816
Figure 0006882816
表2から、例えば、細孔モード径が100nm〜300nmの範囲にある実施例1及び2は、細孔モード径が100nm未満である比較例1及び2に比べ、GPFの回収率(%)が高いことがわかる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。

Claims (12)

  1. 水銀圧入法により得られるLog微分細孔容積分布(dV/dlogD)において、細孔直径(D)が2000nm以下の範囲に現れるピークに対応する細孔モード径が100nm〜200nmの範囲にあるリン酸アルミニウム化合物。
  2. 平均粒子径(D50)が50μm〜80μmの範囲にある、請求項1に記載のリン酸アルミニウム化合物。
  3. 平均粒子径(D50)が55μm〜70μmの範囲にある、請求項1に記載のリン酸アルミニウム化合物。
  4. 非晶質である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリン酸アルミニウム化合物。
  5. リン酸アルミニウム化合物を含むタンパク質精製用担体であって、前記リン酸アルミニウム化合物は、水銀圧入法により得られるLog微分細孔容積分布(dV/dlogD)において、細孔直径(D)が2000nm以下の範囲に現れるピークに対応する細孔モード径が100nm〜300nmの範囲にあるリン酸アルミニウム化合物であるタンパク質精製用担体。
  6. 前記リン酸アルミニウム化合物における前記細孔モード径が100nm〜200nmの範囲にある、請求項5に記載のタンパク質精製用担体。
  7. 前記リン酸アルミニウム化合物における平均粒子径(D50)が50μm〜80μmの範囲にある、請求項5又は6に記載のタンパク質精製用担体。
  8. 前記リン酸アルミニウム化合物における平均粒子径(D50)が55μm〜70μmの範囲にある、請求項5又は6に記載のタンパク質精製用担体。
  9. 前記リン酸アルミニウム化合物は非晶質である、請求項5〜8のいずれか1項に記載のタンパク質精製用担体。
  10. タンパク質が吸着した請求項5〜9のいずれか1項に記載のタンパク質精製用担体を含む溶液をカラム、クロスフローフィルターまたはデッドエンドフィルターを用いて濾過する工程を含むタンパク質精製方法において用いられるタンパク質精製用担体。
  11. タンパク質を含む溶液を請求項5〜10のいずれか1項に記載のタンパク質精製用担体に接触させて、前記タンパク質を前記タンパク質精製用担体に吸着させること、
    タンパク質が吸着した前記タンパク質精製用担体をカラム、クロスフローフィルターおよびデッドエンドフィルターのいずれかを用いた濾過により分離すること、および
    分離された前記タンパク質精製用担体から前記タンパク質を溶出剤で溶出すること
    を含むタンパク質精製方法。
  12. 銀圧入法により得られるLog微分細孔容積分布(dV/dlogD)において、細孔直径(D)が2000nm以下の範囲に現れるピークに対応する細孔モード径が100nm〜300nmの範囲にあるリン酸アルミニウム化合物の製造方法であって、
    リン酸イオンを含む水溶液Aと、アルミニウムイオン、硫酸イオンおよびカリウムイオンを含む水溶液Bとを混合し、リン酸アルミニウム化合物を含む混合液を得ることを含み、前記水溶液A中の前記リン酸イオンの濃度が0.6mol/L超であり、前記水溶液B中の前記アルミニウムイオンの濃度が0.3mol/L超であり、前記カリウムイオンの濃度が0.2mol/L超である製造方法。
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