以下に、図面を参照して、本願に係る発明を実施するための形態について説明する。図1は本発明の一実施形態である腰掛式水洗便器の概略斜視図、図2(a)はその腰掛式水洗便器の概略正面図、図2(b)はその腰掛式水洗便器の概略平面図、図3はその腰掛式水洗便器の概略側面図である。ここで、図1乃至図3では、後述のオムツ収納容器を便器本体に装着した状態の腰掛式水洗便器を示している。また、図4(a)はオムツ収納容器を取り除いた状態の腰掛式水洗便器の概略側面図、図4(b)はオムツ収納容器を取り除いて蓋部を装着した状態の腰掛式水洗便器の概略側面図である。
本実施形態の腰掛式水洗便器は、通常の便器として機能するだけでなく、紙オムツを使用している大人がオムツ交換時に利用することを目的に開発されたものである。この腰掛式水洗便器の主な利用者としては、紙オムツを使用している者であって、自分でトイレに行くことができる者、又は介助があればトイレに行って便座に座ったり立ったりすることができる者を想定している。このため、本実施形態の腰掛式水洗便器は、例えば、特別養護老人ホーム、病院、公共施設等のトイレに設置される。また、利用者が使用している紙オムツは、パンツタイプの紙オムツ、テープタイプの紙オムツのいずれであってもよい。特に、本実施形態では、パンツタイプの紙オムツを使用する者がこの腰掛式水洗便器を利用してオムツ交換を行う場合を説明する。
本実施形態の腰掛式水洗便器は、水洗式のものであり、図1乃至図4に示すように、便器本体10と、便座20と、便器開口部30と、蓋部40と、局部洗浄装置(不図示)と、オムツ収納容器60と、容器載置台70と、支持手段80とを備える。また、この腰掛式水洗便器は、便器本体10の洗浄に用いられる洗浄水を貯水するタンクや、便座20を上から覆う便蓋等をも備えている。これらタンクや便蓋等は、通常の便器に用いられるものと同様であるので、ここでは、その詳細な説明を省略すると共に図面においてもその図示を省略する。
図5は本実施形態の腰掛式水洗便器に用いられる便器本体10の概略斜視図である。図5に示すように、便器本体10は、この便器を利用する者の排泄物を受けるボウル部11を有する。このボウル部11には、一定水位の溜水が溜められている。この溜水は、排水管とボウル部11との連絡を遮断し、臭気が排水管の側から上がっているのを防ぐ役割を有している。便器本体10のサイズについては、図2に示すように、例えば、横幅W1が約37cm、奥行きD1が約47cm、高さH1が約38cmである。本実施形態の腰掛式水洗便器では、便器本体10内の排泄物をタンクからの洗浄水により流して排水管に排出する。
また、図1乃至図4に示すように、便器本体10の上側には便座20が設けられている。利用者は便座20に着座して排便やオムツ交換を行う。特に、本実施形態では、便座20として、利用者の臀部が載置される後部分の高さがその後部分の前側に位置する前部分の高さよりも低くなるように形成したものを用いている。具体的には、例えば図1、図2(b)及び図3に示すように、便座20の前側約3分の1の部分を前部分20a、便座20の後側約3分の2の部分を後部分20bとしたときに、前部分20aの高さh1を約4cmとし、一方、後部分20bの高さh2を約2cmとしている。
便器本体10の所定の側面上部には、図5に示すように、便器開口部30が形成されている。具体的に、便器本体10を正面から見たときの便器本体10の右側の部分は、上端から下方向に約11cm、横方向に約20cmの範囲が切り欠いたような状態になっており、この範囲が便器開口部30である。すなわち、本実施形態では、便器開口部30は便器本体10の右側面の上端部に形成された、上方が開放されている切欠き部である。この便器開口部30にオムツ収納容器60を挿入したときの様子を示しているのが、図1乃至図3である。尚、便器開口部30は、上方が開放されている切欠き部ではなく、便器本体10の側面上部に形成された、上方が開放されていない開口部であってもよい。但し、この場合、この上方が開放されていない開口部はなるべく便器本体10の上端に近い箇所に形成することが望ましい。便器開口部30にオムツ収納容器60を装着したときに、オムツ収納容器60の上面が便座20の近くに配置されるようにするためである。
蓋部40は、便器開口部30を塞いで便器本体10内の排泄物や洗浄水が外部に漏れるのを防止する役割を果たすものであり、便器本体10に着脱自在に装着される。蓋部40を便器本体10に装着したときの様子が図4(b)に示されている。図6(a)は蓋部40の概略斜視図、図6(b)はその蓋部40の概略正面図、図6(c)はその蓋部40の概略側面図である。図6(b)に示すように、正面から見たときの蓋部40の形状は略長方形である。この蓋部40のサイズは便器開口部30のサイズと略同じである。本実施形態では、蓋部40をシリコンゴムで作製している。蓋部40の正面中央には、蓋部40を掴むための取っ手41が設けられている。また、蓋部40の左右の側部及び底部には溝42が形成されている。この溝42内に便器開口部30の周囲に位置する便器本体10の端部が入り込むようにして蓋部40を便器本体10に装着する。これにより、蓋部40と便器本体10とが密着するので、蓋部40は便器開口部30を隙間なく塞ぐことができる。実際、蓋部40を便器本体10に装着するには、例えば、便座20を上げて、蓋部40を便器本体10の上方から便器開口部30内に差し込めばよい。あるいは、シリコンゴムは柔軟性を有しているので、便座20を上げなくても、蓋部40を湾曲させて、蓋部40を便器本体10の側面から便器開口部30内に嵌め込むようにすればよい。図4(b)に示すように蓋部40を便器開口部30に装着すると、本実施形態の腰掛式水洗便器を通常の水洗便器として使用することができ、タンクからの洗浄水を流すことができる。
局部洗浄装置は、利用者が排泄した後に洗浄水(温水)を便器本体10内の洗浄水口へ供給し、その洗浄水口から利用者の局部に噴射させるものであり、便器本体10の後部に取り付けられている。この局部洗浄装置としては、通常の水洗便器に設けられているものと同じものを用いることができる。このため、本実施形態では、局部洗浄装置についての詳細な説明を省略すると共に図面においてもその図示を省略する。
オムツ収納容器60は、便座20に着座した利用者の紙オムツを収納するためのものである。このオムツ収納容器60は、図1乃至図3に示すように、蓋部40を取り外して便器開口部30から水平方向に沿って便器本体10内に部分的に挿入することにより便器本体10に装着される。図7(a)はオムツ収納容器60の概略斜視図、図7(b)はそのオムツ収納容器60の概略平面図、図8(a)はそのオムツ収納容器60の概略側面図、図8(b)はそのオムツ収納容器60の概略背面図である。また、図9は図7(b)に示すオムツ収納容器60のA−A矢視方向概略拡大部分断面図である。
オムツ収納容器60は、図7及び図8に示すように、便器本体10内に挿入される部分である容器先端部610と、その容器先端部610に水平方向に連なる容器本体部620とを備えている。このオムツ収納容器60は、可燃性材料で作製されている。具体的に、例えば本実施形態では、オムツ収納容器60をダンボールで作製している。オムツ収納容器60の形状は略直方体形状である。その内部は空洞になっている。オムツ収納容器60の横幅W2は約20cm、その奥行き(長手方向の長さ)D2は約52cm、その高さH2は約10cmである。また、容器先端部610の奥行きD21は約19cm、容器本体部620の奥行きD22は約33cmである。
容器先端部610の上面には、紙オムツを内部に取り込むためのオムツ取込口611が形成されている。具体的に、カッター等で容器先端部610の上面に略円形状又は略楕円形状の図形を切り抜くことにより、オムツ取込口611が作製される。本実施形態では、オムツ取込口611の形状を、直径約17cmの円形状としている。また、このオムツ取込口611の周囲におけるダンボールの端縁部には、環状部材612が取り付けられている。この環状部材612は、断面が略円形状であってその長さがオムツ取込口611の周囲の長さと略同じであるものを用いている。例えば、環状部材612としては、直径約2cmの水道用ホースを用いることができる。この環状部材612にはその長手方向に沿って切り込みが入れられている。そして、図9に示すように、環状部材612の切り込みを入れた部分で、オムツ取込口611の周囲におけるダンボールの端縁部を挟み込むことにより、環状部材612をそのダンボールの端縁部に取り付けている。尚、本実施形態では、環状部材612を取り付けた状態のオムツ収納容器60の高さは約11cmである。
また、図7及び図8に示すように、オムツ収納容器60は、紙部材63と、粘着テープ64と、L型管状部材65と、孔部66と、第一紐状部材67と、第二紐状部材68とを有する。紙部材63としては、例えば、6cm×26cmの長方形状の紙を用いている。この紙部材63は、環状部材612の下側においてオムツ取込口611の略中央部を通るように互いに対向する容器先端部610の部位の間にピンと張った状態で配置され、紙部材63の両端部は対応する容器先端部610の部位に貼り付けられている(図9参照)。紙部材63の略中央部の上面には、粘着テープ64が貼り付けられている。この粘着テープ64としては両面粘着テープを用いている。粘着テープ64の表面の剥離紙は、オムツ収納容器60を使用するまで剥がさないでおく。尚、紙部材63は、環状部材612の上側に配置するようにしてもよい。
図10はL型管状部材65の概略斜視図である。このL型管状部材65は、図10に示すように、L字状に曲がった形状に形成されている。本実施形態では、L型管状部材65として、プラスチック又は硬質塩化ビニール製のものであって、外径が1cmで長さが2cm×3cmであるものを用いている。このL型管状部材65の表面には、一方の開口端からL字に折曲した内側頂部を通って他方の開口端に向かう切れ目651が形成されている。すなわち、L型管状部材65の表面には、一方の開口端と他方の開口端とを最短距離で結ぶ線上に切れ目651が形成されている。この切れ目651の幅は約1mmである。ここで、両方の開口端における切れ目651に対応する角部には、丸みを付けている。L型管状部材65は、図8(a)に示すように、当該一方の開口端が粘着テープ64の側を向き当該他方の開口端が容器本体部620の側を向くように容器先端部610の底部に固定されている。また、L型管状部材65の当該他方の開口端に対向する容器本体部620の所定部位には、孔部66が形成されている。この孔部66の形状は直径約2cmの円である。
図7(a)及び図8(a)に示すように、第一紐状部材67は、その一端が粘着テープ64(又は紙部材63)に取り付けられている。この第一紐状部材67の直径は、L型管状部材65の切れ目651よりも小さい。例えば、第一紐状部材67としては、直径約0.5mmで長さ約7cmの釣り糸を用いることができる。また、第二紐状部材68は、その一端が第一紐状部材67の他端に繋がれている。第二紐状部材68は、L型管状部材65内を通り容器本体部620から孔部66を介して外部に引き出されている。この第二紐状部材68の直径は、L型管状部材65の切れ目651よりも大きい。例えば、第二紐状部材68の直径は約5mmで、その長さは約100cmである。
容器載置台70は、オムツ収納容器50を載せるためのものであり、図1乃至図3に示すように、便器開口部30が形成された便器本体10の外側に設けられている。ここでは、容器載置台70を、便器本体10を正面から見たときの便器本体10の右側に設けている。この容器載置台70の高さは、便器開口部30の下端の高さと略同じである。このため、オムツ収納容器60を容器載置台70の上に置き、オムツ収納容器60を便器開口部30に向けて押せば、オムツ収納容器60の容器先端部610を、便器開口部30を介して便器本体10内にスムースに挿入することができる。また、容器載置台70上には支持手段80が設けられている。この支持手段80は、オムツ収納容器を支持するものであり、オムツ収納容器60が便器開口部30に向かう方向及びそれと反対方向以外の方向に移動するのを規制すると共に上方向又は下方向に回転して傾くのを規制する役割を果たす。本実施形態では、支持手段80として、オムツ収納容器60がギリギリ通過することができるような大きさの枠体を用いている。これにより、オムツ収納容器60を支持手段80である枠体の中に通しておけば、便器開口部30を介して容器先端部610を便器本体10内に挿入したときには、容器本体部620のすぐ上側に支持手段80の枠体上部が位置しているため、オムツ収納容器60が上下方向に傾くような動きが規制されるので、オムツ収納容器60は略水平状態を維持することができる。
次に、本実施形態の腰掛式水洗便器を利用して紙オムツを使用する者がその紙オムツを交換する方法を説明する。ここでは、紙オムツを使用している要介護者が本実施形態の腰掛式水洗便器を利用し、介護者の介助を受けて紙オムツを交換する場合を説明する。図11は紙オムツを交換する際の要介護者の姿勢を説明するための図、図12は紙オムツがオムツ収納容器60に収納されるときの様子を説明するための図である。
まず、要介護者又は介護者は、便器本体10にオムツ収納容器60を装着する。具体的には、要介護者又は介護者は、便器本体10から蓋部40を取り外す(図4(a)参照)。そして、オムツ収納容器60を容器載置台70に載せる。その後、要介護者又は介護者は、オムツ収納容器60を支持手段80の中に通し、容器先端部610を、便器開口部30を介して便器本体10内に挿入する。このとき、オムツ取込口611又は粘着テープ64が便器本体10の略中央に位置するように、オムツ収納容器60の位置を調整する(図2(b)参照)。こうして、図1乃至図3に示すように、オムツ収納容器60は便器本体10に装着される。ここで、本実施形態の腰掛式水洗便器では、容器本体部610を支持する支持手段80を便器開口部30の外側に設けたことにより、容器先端部610を便器本体10内に挿入したときに容器先端部610が便器本体10内において傾いてしまうのを確実に防止することができる。また、要介護者又は介護者は、この時点で、オムツ収納容器60に設けられた粘着テープ64の表面の剥離紙を剥がす。
次に、介護者は、図11に示すように、要介護者の紙オムツ100の底部に両面粘着テープ(粘着部材)210を貼り付ける。その後、要介護者は便座20に腰掛ける。すると、紙オムツ100の両面粘着テープ210と、オムツ収納容器60の粘着テープ64とはくっ付くようになる。介護者はこれら二つの粘着テープがしっかりとくっ付いていることを確認した後、介護者又は要介護者は、紙オムツ100の両側部を手で又はハサミを使って切断する。通常、紙オムツ100の両側部を切っても、紙オムツ100は身体にフィットしており、自然に落ちることはない。尚、紙オムツがパンツタイプのものではなく、テープタイプのものであれば、その紙オムツのテープを剥がすだけでよい。
次に、介護者は、要介護者の前に、図11に示すような上半身レスト(rest)台220を持ってくる。上半身レスト台220とは、要介護者が自分の肘を付いて体重を前方に移動し、前かがみの状態になるための支持台のことである。このため、上半身レスト台220は簡単に動かないように設置することが望ましい。こうして、要介護者は、図11に示すように、この上半身レスト台220を用いて前かがみの状態になる。また、便器本体10の近傍の壁に介護用の手すり等が設けられている場合には、上半身レスト台220を使用せずとも、その手すり等を使って、要介護者は前かがみの状態になってもよい。更に、要介護者は自ら前かがみの状態になることができるのであれば、上半身レスト台220や手すり等は使用しなくてもよい。こうして、要介護者が前かがみの状態になると、お尻が少し浮くようになり、紙オムツ100はお尻と便座20との間で圧迫されないようになる。特に、本実施形態の腰掛式水洗便器では、便座20の後部分20bの高さが便座20の前部分20aの高さよりも低くなるように形成された便座20を用いたことにより、要介護者が便座20に着座すれば、要介護者のお尻は自然に便座20から少し浮いた状態になるので、紙オムツ100を身体から取り外し易くなる。
こうして、介護者は、紙オムツ100の両面粘着テープ210とオムツ収納容器60の粘着テープ64とがしっかりとくっ付いていること、及び、要介護者のお尻が少し浮いた状態になっていることを確認した後に、容器本体部620の孔部66から外に出ている第二紐状部材68を引っ張ることにより、紙オムツ100をオムツ収納容器60の容器本体部620にまで引き込んで収納する。
いま、紙オムツ100がどのようにしてオムツ収納容器60に収納されるかについて、図12を参照して詳しく説明する。具体的に、介護者が第二紐状部材68を引っ張ると、その第二紐状部材68に繋がれた第一紐状部材67による下向きの力により、その粘着テープ64が貼られている紙部材63が破れる(もしくは容器先端部610から剥がれる)。この時点では、第二紐状部材68の一部はL型管状部材65の中にあり、両面粘着テープ210を介して粘着テープ64とくっ付いている紙オムツ100は第一紐状部材67及び第二紐状部材68により下方に引っ張られる。こうして、図12(a)に示すように、紙オムツ100はオムツ取込口611から真下に向かって容器先端部610内に引き込まれる。ここで、本実施形態では、オムツ取込口611の周囲におけるダンボールの端縁部に、断面が略円形状である環状部材612を取り付けているので、紙オムツ100は環状部材612にひっかかることなくその環状部材612の表面をスムースに滑り落ちることでき、したがって、紙オムツ100を容器先端部610内に確実に取り込むことができる。実際、ダンボールのエッジである切り口は摩擦が大きいので、上記環状部材612のような何らかの手段を講じないと、紙オムツ100はダンボールのエッジに引っかかってしまう。
紙オムツ100が容器先端部610の底部に落ちた後も、介護者は引き続き第二紐状部材68を引っ張ると、第二紐状部材68はL型管状部材65から離れてしまい、第一紐状部材67だけがL型管状部材65の中に含まれるようになる。第一紐状部材67の太さはL型管状部材65の切れ目651の幅よりも細いので、介護者が第二紐状部材68を引っ張り続けると、第一紐状部材67はその切れ目651を通り抜けてL型管状部材65から外れてしまう。ここで、本実施形態では、L型管状部材65の両開口端における切れ目651に対応する角部には丸みを付けているので、第一紐状部材67は容易に切れ目651に入り込むことができる。これにより、図12(b)に示すように、紙オムツ100は第一紐状部材67及び第二紐状部材68により横方向に引っ張られる。介護者がさらに第二紐状部材68を引っ張り続けると、図12(c)に示すように、紙オムツ100は容器本体部620の奥に到達することになる。こうして、介護者は、第二紐状部材68を引っ張るだけで、要介護者が着用している紙オムツ100に触れることなく、その紙オムツ100をオムツ収納容器60内に容易に収納することができる。尚、第二紐状部材68を引っ張るのは、介護者ではなく要介護者本人が行ってもよい。但し、この場合、オムツ収納容器60は動かないように一時的に固定しておくことが望ましい。
次に、介護者は、オムツ収納容器60を便器本体10から取り外す。この取り出したオムツ収納容器60はそのまま廃棄される。すなわち、本実施形態では、衛生上の観点から、オムツ収納容器60を使い捨てとしている。このため、ダンボールを用いてオムツ収納容器60を作製することで、オムツ収納容器60の製造コストの低下を図っている。その後、介護者は、要介護者が便座に着座したまま、蓋部40を便器本体10の横から便器本体10に装着して、便器開口部30を塞ぐ。本実施形態の腰掛式水洗便器では、シリコンゴムで作製された蓋部40を用いているので、介護者は蓋部40を便器本体10の側面側から便器開口部30に容易に嵌め込むことができる。
次に、要介護者は、局部洗浄装置を操作して自らの局部を洗浄する。これにより、介護者は要介護者のお尻を拭き取る等の作業を行う必要がなくなる。このため、介護者の負担を軽減することができると共に、要介護者も自らの尊厳を保つことができる。その後、要介護者は、新しい紙オムツに履き替える。
本実施形態の腰掛式水洗便器では、紙オムツを使用する者(例えば、要介護者)が紙オムツを交換する場合、便器本体から蓋部を取り外し、オムツ収納容器を便器本体に装着した後、要介護者が便座に着座した状態で要介護者本人又は介護者が紙オムツを便器本体内に落下させることにより、紙オムツはオムツ取込口から容器先端部内に入り込んで、オムツ収納容器に収納される。この紙オムツを収納したオムツ収納容器はそのまま可燃ゴミとして廃棄することができるので、取り外した紙オムツの処分が簡単である。また、要介護者又は介護者はその取り外した紙オムツを直接手で触れる必要がないので、紙オムツ処分の作業は衛生的である。
また、本実施形態の腰掛式水洗便器は局部洗浄装置を更に備えていることにより、紙オムツがオムツ収納容器に収納された後、オムツ収納容器を便器本体から取り外し、蓋部で便器開口部を塞げば、要介護者は局部洗浄装置を使って自らの局部を洗浄することができる。したがって、介護者は要介護者のお尻を拭き取る等の作業を行う必要がなくなり、介護者の負担を軽減することができると共に、要介護者にとっても尊厳が保たれるという効果がある。
更に、本実施形態の腰掛式水洗便器では、オムツ収納容器として、上述のように、紙部材、粘着テープ、L型管状部材、孔部、第一紐状部材、第二紐状部材を備えるものを用いたことにより、要介護者又は介護者は、第二紐状部材を引っ張るだけで、要介護者が着用している紙オムツに触れることなく、その紙オムツをオムツ収納容器内に容易に収納することができる。
尚、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変形が可能である。
例えば、上記の実施形態では、便器本体の所定の側面上部に、上下方向の長さが約11cmである便器開口部を形成した場合について説明したが、便器開口部の上下方向の長さはなるべく短くするのが好ましい。便器開口部の下端はボウル部内の溜水の水位よりもできるだけ高い位置にあるのが望ましいからである。例えば、便器開口部の上下方向の長さは少なくとも5cm〜6cmとすることができる。オムツ収納容器についても便器開口部の上下方向の長さに対応した高さにする必要があるが、オムツ収納容器の高さを5cmよりも小さくしたのでは、紙オムツがオムツ収納容器内に入りにくくなってしまうからである。
また、上記の実施形態では、オムツ収納容器のオムツ取込口の周囲におけるダンボールの端縁部に、環状部材を取り付けた場合について説明したが、オムツ取込口の周囲におけるダンボールの端縁部には、環状部材を取り付ける代わりに、紙オムツが直接、そのダンボールの端縁部に接触しないような手段を講じるようにしてよい。例えば、環状部材を取り付けずに、オムツ取込口の周囲におけるダンボールの端縁部を内側に折り曲げるようにしてもよい。これによっても、紙オムツをオムツ取込口からオムツ収納容器内に取り込んだときに、紙オムツがダンボールの端縁に引っかかってしまうのを防止することができる。
また、上記の実施形態では、L型管状部材として、プラスチック又は硬質塩化ビニール製のものであって、一方の開口端からL字の隅部を通って他方の開口端に向かう切れ目が形成されているものを用いた場合について説明したが、本発明はこれに限定されものではなく、L型管状部材は、紐状部材を案内することができるものであればどのような構成であってもよい。例えば、L型管状部材としては、L字状に曲げられた、中空のダンボール製のものであって、上記切れ目が形成されていないものを用いることができる。この場合、このダンボール製のL型管状部材は、紙オムツをオムツ取込口から容器先端部内に引き込んだ後に紐状部材を強く引っ張ったときに、そのL型管状部材が紙オムツからの力を受けて容器先端部の底部から外れるように、容器先端部に貼り付けておくことが望ましい。また、L型管状部材の代わりに、所定の補強を施した、断面が例えばL字状又は口字状であるように形成されたダンボール製案内部材を用いてもよい。ここで、このダンボール製案内部材は、ダンボール製案内部材と容器先端部の底部との間に紐状部材を通すことができる空間が維持できるように当該底部に貼り付けておく。この場合も、ダンボール製案内部材は、紙オムツをオムツ取込口から容器先端部内に引き込んだ後に紐状部材を強く引っ張ったときに、そのダンボール製案内部材が紙オムツからの力を受けて容器先端部の底部から外れるように、容器先端部に貼り付けておくことが望ましい。
また、上記の実施形態では、紙オムツをオムツ収納容器に収納する際に、要介護者の紙オムツの底部に両面粘着テープを貼り付け、その両面粘着テープと、オムツ収納容器の粘着テープとをくっ付ける場合について説明したが、要介護者の紙オムツの底部には必ずしも両面粘着テープを貼り付ける必要はない。例えば、オムツ収納容器の粘着テープとして、強力な粘着剤を有するものを用いるような場合には、要介護者の紙オムツの底部に両面粘着テープを貼り付けなくても、そのオムツ収納容器の粘着テープを紙オムツにしっかりとくっ付けることができるからである。
上記の実施形態では、介護者又は要介護者が手で第二紐状部材を引っ張ることにより紙オムツをオムツ収容容器に収納する場合について説明したが、例えば、電動モーターを有する紐巻取り装置を用いて、第二紐状部材を自動で巻き取ることにより、紙オムツをオムツ収納容器に収納するようにしてもよい。
また、上記の実施形態において、オムツ収納容器は、紙部材、粘着テープ、L型管状部材、孔部、第一紐状部材、第二紐状部材を備えていなくてもよい。この場合であっても、要介護者が便座に着座した状態で要介護者本人又は介護者が紙オムツを落下させて、容器先端部内に入れることができれば、紙オムツを簡単に廃棄することができる。
また、上記の実施形態では、オムツ収納容器を便器本体内に部分的に挿入することにより便器本体に装着する場合について説明したが、オムツ収納容器は、そのほぼ全体を便器本体に挿入して便器本体に装着されるものであってもよい。この場合、例えば、便器本体に装着されたオムツ収納容器の端部に、例えばゴム部材を引っ掛けることにより、そのオムツ収納容器が便器本体内で動かないように固定することが望ましい。
更に、上記の実施形態では、支持手段として、容器載置台上に設けられた枠体を用いた場合について説明したが、支持手段としては、オムツ収納容器を容器載置台に一時的に固定するためのゴムバンド等を用いるようにしてもよい。
また、上記の実施形態では、容器載置台及び支持手段を、便器本体を正面から見たときの便器本体の右側に設けた場合について説明したが、便器本体を正面から見たときの便器本体の左側に設けるようにしてもよい。更に、上記の実施形態では、支持手段を容器載置台上に設けた場合について説明したが、支持手段は便器本体に取り付けるようにしてもよい。
また、上記の実施形態の腰掛式水洗便器は、オムツ収納容器を便器開口部に挿入して便器本体に装着した場合に、オムツ収納容器の容器先端部が上方に少し回転するような機構を備えていてもよい。要介護者が便座に着座したときに、オムツ収納容器の容器先端部を上方に回転させることにより、オムツ収納容器の粘着テープを紙オムツに確実に接着させることができる。
また、上記の実施形態の腰掛式水洗便器は、例えば、操作ボタンを押すことによりオムツ収納容器を自動で便器開口部内に進行させて便器本体に装着する機構や、操作ボタンを押すことによりオムツ収納容器を自動で便器本体から取り外す機構を備えていてもよい。これにより、要介護者は自分一人でオムツ収納容器の収納を容易に行うことができる。
更に、上記の実施形態では、介護者又は要介護者が手で第二紐状部材を引っ張ることにより紙オムツをオムツ収納容器に収納する場合について説明したが、紙オムツをオムツ収納容器に収納する方法はこれに限られず、例えば、要介護者が紙オムツをオムツ取込口から容器先端部内に落下させたときに、所定の機器でオムツ収納容器内の空気を吸引することにより、その落下した紙オムツを容器本端部の奥にまで引き込むようにしてもよい。
また、上記の実施形態では、蓋部として着脱自在に構成されたものを用い、介護者又は要介護者がその蓋部で便器開口部を塞ぐ場合について説明したが、蓋部としては開閉自在に構成されたものを用いてもよい。例えば、本発明の腰掛式水洗便器に、蓋部が自動で便器開口部を塞ぐような機構を設けるようにしてもよい。一例として、蓋部を便器開口部に対応する便器本体の内側の位置に回転自在に設けることが考えられる。この蓋部にはバネを取り付け、通常、蓋部がバネの付勢力で便器開口部を押圧するようにしておく。この場合、オムツ収納容器をバネの付勢力に抗して便器開口部内に押し込むと、蓋部が開き、オムツ収納容器が便器本体に装着される。その後、オムツ収納容器を便器本体から引き出すと、バネの付勢力により蓋部が自動的に便器開口部を塞ぐ。尚、この場合、蓋部に溝を設ける必要はないが、代わりに、蓋部と便器とが接触する箇所には、洗浄水が漏れないようにシールするシール部材を設けることが望ましい。
更に、上記の実施形態では、本発明の腰掛式水洗便器を、特別養護老人ホーム、病院、公共施設等のトイレに設置される便器に適用した場合について説明したが、本発明の腰掛式水洗便器は、移動用便器にも適用することができる。