以下、添付図面を参照して本願の開示する作業車両の実施形態を詳細に説明する。なお、以下では、作業車両としてトラクタを例に説明する。また、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
図1は、実施形態に係るトラクタの左側面視による説明図、図2Aは、実施形態に係る作業機を連結した状態のトラクタの説明図、図2Bは、他の実施形態に係る作業機を連結した状態のトラクタの説明図である。トラクタ1は、エンジンEの動力により路上や圃場を走行可能であり、複数種類の作業機Wを着脱自在に取付けて、圃場において所定の作業を行うことができる。
例えば、図2Aにおいては、本実施形態に係る作業機Wとしてロータリ作業機を連結している。また、図2Bにおいては、他の実施形態に係る作業機Wとして、転動輪W1を備える機枠W2上に、例えばラッピングマシンのような装置本体を搭載した作業機Wを連結している。なお、図2Aおよび図2Bにおいて、符号Fは圃場面を示している。
なお、以下の説明において、前後方向とは、トラクタ1の直進時における進行方向であり、進行方向前方側を前後方向の「前」、後方側を前後方向「後」と規定する。ここで、トラクタ1の進行方向とは、トラクタ1直進時において、後述する操縦席7からステアリングハンドル8に向かう方向である。また、左右方向とは、前後方向に対して水平に直交する方向である。ここでは、前後方向「前」側に向けて左右を規定する。すなわち、オペレータが操縦席7に着いて前方を向いた状態で、左手側が「左」、右手側が「右」である。さらに、鉛直方向とは、前後方向および左右方向に対して直交する方向である。したがって、前後方向、左右方向および鉛直方向は、互いに3次元で直交するようになる。
図1、図2Aおよび図2Bに示すように、作業車両としてのトラクタ1は、機体前部のボンネット2内にエンジンEを搭載している。エンジンEからの回転動力は、変速装置であるトランスミッション3の走行伝動装置へ伝達され、走行伝動装置で減速されて車輪、すなわち、トラクタ1の前輪4や後輪5へ伝達される。
機体後部のキャビン6内には操縦席7が設けられている。操縦席7の前方には前輪4を操舵するステアリングハンドル8が設けられている。ステアリングハンドル8の前方にはメータパネル9が設けられている。また、機体における操縦席7の下方位置には、傾斜センサ129(図2Aおよび図2B参照)が設けられており、機体の前後方向への傾斜や左右への傾斜を検出可能としている。
トラクタ1は、機体の後方にロータリ作業機(図2A)などの作業機Wが連結される。このような作業機Wは、トランスミッション3のケーシング(ミッションケース)から後方へ突出しているPTO軸111によって駆動される。
また、キャビン6内における操縦席7の周りには、前述のステアリングハンドル8やメータパネル9の他、アクセルペダル10、クラッチペダル11、ブレーキペダル12などの各種操作ペダルや、前後進切替操作部材としての前後進レバー14、さらには主変速レバー15、副変速レバー(図示省略)などの各種操作レバーが設けられている。なお、操縦席7の周りの各種操作機器については、図6を用いて後述する。
本実施形態に係るトラクタ1は、エンジンEの回転数に応じて変速装置であるトランスミッション3を制御して自動変速を行うことができるようになっている。すなわち、アクセルペダル10や主変速レバー15の操作のみでも主変速の切替えが可能になっている。このときの変速タイミングについては、後述する制御部120(図7参照)が、少なくともエンジン回転数の指示値と、実際のエンジン回転数と、車速から判断して決定する。
かかる構成において、詳しくは後述するが、作業機Wの重量に応じて、エンジンEからの動力を伝達する伝動経路中に設けられるトランスミッション3における変速条件を設定することができるようになっている。
作業機Wの重量は、例えばタブレット端末200(図7参照)を介して作業者が外部からマニュアル操作により入力してもよいし、図2Bに示すように、機体側コネクタ125aを設けておき、作業機Wの側から延在するケーブルの先端に設けられた作業機側コネクタ125bと接続することで、制御部120により作業機Wの重量を自動的に取得することができる。すなわち、作業機判別装置125は、それぞれ作業機判別装置が設けられた機体側コネクタ125aおよび作業機側コネクタ125bを備えている。
このように、コネクタ式の構成とすることで、作業者によるワンタッチ作業で、トラクタ1が作業機Wの種別、ひいては作業機Wの重量に関するデータを自動的に取得することが可能となる。
なお、作業機判別装置125の構成としては、ケーブルを有するコネクタ式を採用するだけではなく、トラクタ1の側と作業機Wの側との間を、例えば、近距離無線通信などを用いて通信可能に構成し、作業機Wの種別を制御部120が取得できるようにすることもできる。その場合、例えば作業機WがPTO軸111に接続されたことを検出したことをトリガーとして無線通信が行われるようにすることもできる。
次に、図3を参照して、トランスミッション3(変速装置)に設けられた走行伝動装置について説明する。図3は、トランスミッション3における伝動経路図である。図3に示すように、トランスミッション3では、動力上手側となるエンジンEの出力軸20の回転動力が入力軸21へ伝達される。
入力軸21に入力された回転動力は、入力軸21の第1入力ギヤ22および第2入力ギヤ23が第1Hi−Loクラッチ24の第1低速ギヤ26、第2Hi−Loクラッチ25の第2低速ギヤ27および第1Hi−Loクラッチ24の第1高速ギヤ30、第2Hi−Loクラッチ25の第2高速ギヤ31と噛合することで、動力下手側へ伝達される。
第1Hi−Loクラッチ24を介して動力伝達される低速伝動軸34および第2Hi−Loクラッチ25を介して動力伝達される高速伝動軸32の回転動力は、それぞれ第1シンクロチェンジ42および第2シンクロチェンジ36へ伝達される。そして、第1シンクロ小ギヤ43および第2シンクロ小ギヤ37が第1伝動軸の第5ギヤ40と噛合し、第1シンクロ大ギヤ44および第2シンクロ大ギヤ38が第1伝動軸39の第6ギヤ41と噛合することで、さらに動力下手側へ伝達される。
これにより、入力軸21の回転動力は、第1伝動軸39によって大きく低速4段および高速4段に変速される。かかる構成によってトラクタ1の主変速部が構成される。この主変速部は、オペレータが操作する主変速レバー15(図1および図2A,2B参照)の変速位置が検出されると、後述する走行系ECU121(図7参照)によって自動的に第1Hi−Loクラッチ24、第2Hi−Loクラッチ25、第1シンクロチェンジ42および第2シンクロチェンジ36が制御され、低速4段から高速4段まで変速可能となる。
また、図3に示すように、第1伝動軸39は、ギヤ46,47が設けられた第2伝動軸45に連結されている。そして、ギヤ46,ギヤ47が正逆クラッチ(以下、「走行クラッチ」という)48の正転クラッチギヤ49および逆転軸52の逆転ギヤ51と噛合し、さらに、逆転ギヤ51が逆転クラッチギヤ50と噛合している。
したがって、第1伝動軸39の回転動力は、走行クラッチ48が正転クラッチギヤ49に接続されると、走行クラッチ48に連結された副変速軸53へ正転状態で伝達され、走行クラッチ48が逆転クラッチギヤ50に接続されると、逆転状態で副変速軸53へ伝達される。
副変速軸53にはギヤ54およびギヤ55が設けられており、ギヤ54およびギヤ55がそれぞれ第3シンクロチェンジ58の第3シンクロ小ギヤ56および第3シンクロ大ギヤ59と噛合している。
第3シンクロチェンジ58が第3シンクロ小ギヤ56側へ接続されると、ギヤ54から第3シンクロ小ギヤ56へ伝達された回転動力によって、第5伝動軸60が増速して高速で回転駆動される。一方、第3シンクロチェンジ58が第3シンクロ大ギヤ59側へ接続されると、ギヤ55から第3シンクロ大ギヤ59へ伝動された回転動力によって、第5伝動軸60が減速して中速で回転駆動される。
また、第3シンクロチェンジ58が中立状態となると、ギヤ55の回転動力が第3シンクロ大ギヤ59へ伝達されるとともに、第3シンクロ大ギヤ59に連動する連動ギヤ57から第4シンクロ小ギヤ69へ伝動される。
そして、第4シンクロチェンジ71が第4シンクロ小ギヤ69側へ接続されると、第4シンクロ小ギヤ69の回転動力が、より小径のギヤ74の回転となることで低速となる。他方、第4シンクロチェンジ71が第4シンクロ大ギヤ72側へ接続されると、第4シンクロ小ギヤ69の回転動力は、ギヤ70から第1前輪駆動軸78のギヤ75およびギヤ76を介して第4シンクロ大ギヤ72へ伝達され、ギヤ74は超低速となる。
また、ギヤ74が第5伝動軸60に設けられたギヤ61と噛合することで、第5伝動軸60が回転駆動され、この第5伝動軸60の軸端に設けられた第1ベベルギヤ62がリアベベルギヤケース64の第2ベベルギヤ63と噛合し、リアベベルギヤケース64のベベル出力軸65からギヤ66およびギヤ67を介して後輪出力軸68が回転駆動される。これにより、後輪5が回転駆動される。
また、第5伝動軸60に設けられたギヤ117と、副変速軸53の第3筒軸119に設けられたギヤ118およびギヤ148とが選択的に噛合し、ギヤ117の回転動力は、第1前輪駆動軸78のギヤ77へ伝達される。こうして、第5伝動軸60の低速16段および高速16段の回転動力が第1前輪駆動軸78へ伝達される。
さらに、回転動力は、第1前輪駆動軸78から4WDクラッチ79を介して第2前輪駆動軸85へ伝達され、第3前輪駆動軸86、第4前輪駆動軸87、前輪駆動ベベル軸88へ引き継いで伝達される。
前輪駆動ベベル軸88の軸端に設けられた第1フロントベベルギヤ89がフロントベベルケース90の第2フロントベベルギヤ115と噛合し、フロントベベルケース90のフロントベベル出力軸91から第1フロント出力ベベルギヤ組92、前輪駆動軸116、第2フロント出力ベベルギヤ組93を介して前輪出力軸94が回転駆動される。その結果、前輪4が回転駆動される。
なお、4WDクラッチ79が前輪等速ギヤ82側へ接続されると、第1前輪駆動軸78の回転動力が第2前輪駆動軸85へそのまま伝達されて通常の四輪駆動となる。他方、4WDクラッチ79が前輪増速ギヤ84側へ接続されると、第1前輪駆動軸78の回転動力が前輪等速ギヤ82から第1増速ギヤ81、第2増速ギヤ83を介して増速された回転動力が第2前輪駆動軸85へ伝達されることになり、前輪倍速の四輪駆動となる。さらに、4WDクラッチ79が中立状態となると、前輪4に回転動力が伝達されないため、後輪5の二輪駆動となる。
また、入力軸21の第2入力ギヤ23がPTOクラッチ97のメインクラッチギヤ96と噛合することで、PTOクラッチ97によってPTO軸111へ回転動力を断続(接続/遮断、すなわち、接続解除)することができる。
すなわち、第1PTO軸95にはPTO変速部157が設けられている。また、第1PTO軸95は、第1PTOギヤ98と、第5シンクロチェンジ151と、第5シンクロ小ギヤ100と、第5シンクロ大ギヤ101とを備える。また、第2PTO軸107は、ギヤ102と、ギヤ152と、ギヤ103と、ギヤ153とを備え、カウンタ軸106にPTO逆転ギヤ105を取付けている。
ここで、第1PTOギヤ98が第2PTO軸107のギヤ102と噛合すると、第2PTO軸107が2速になる。また、第1PTOギヤ98がスライドして、第2PTOギヤ99と第2PTO軸107のギヤ152とが噛合すると、第1PTO軸95の回転動力が第2PTOギヤ99およびギヤ152を介して第2PTO軸107へ伝達され、第2PTO軸107が4速となる。
また、第5シンクロチェンジ151が第5シンクロ小ギヤ100へ接続されることで、第5シンクロ小ギヤ100の回転動力がギヤ103へ伝達されて1速となる。さらに、第5シンクロチェンジ151が第5シンクロ大ギヤ101へ接続されることで、第5シンクロ大ギヤ101の回転動力がギヤ153へ伝達されて3速となる。なお、PTO逆転ギヤ105が第1PTOギヤ98およびギヤ102と噛合すると、第1PTO軸95の回転動力が第1PTOギヤ98、PTO逆転ギヤ105を介してギヤ102へ伝達されて第2PTO軸107が逆回転となる。
そして、第2PTO軸107の回転動力は、第3PTO軸156を介して第4PTO軸108へ伝達され、第1PTO出力ギヤ109および第2PTO出力ギヤ110によってさらに減速されてPTO軸111が回転駆動する。
ここで、図4を参照して走行クラッチ48について詳細に説明する。図4は、走行クラッチ48の模式的な平断面図である。走行クラッチ48は、正逆クラッチであり、上述したように、第1伝動軸39の回転動力を正転または逆転させて副変速軸53へと伝達する(図3参照)。
図4に示すように、走行クラッチ48は、正転クラッチギヤ49と一体的に設けられたクラッチ軸48aを備えている。クラッチ軸48aは、第2軸受B1および第3軸受B2によって副変速軸53に回動自在に支持されている。また、クラッチ軸48aの後方には複数の内側クラッチ板48bが配置されている。さらに、クラッチ軸48aは、後部がクラッチケース48dで覆われており、クラッチケース48dの前部内側に設けられた押え板48eが複数の内側クラッチ板48bの前端の前方に位置して配置されている。
クラッチケース48d内の内側には複数の外側クラッチ板48cが隣り合う内側クラッチ板48bの間に挟まれるように交互に配置されている。なお、内側クラッチ板48bは、内側に複数の歯を有しているため、クラッチ軸48aと一体となって回転し、外側クラッチ板48cは、外側に複数の歯を有しているため、クラッチケース48dと一体となって回転する。
クラッチケース48d内にはクラッチ軸48aの後方にバネ48gで後方へ付勢されたクラッチピストン48fが設けられている。クラッチピストン48fの後部には作動油が供給されるシリンダ部48hの空間が形成されている。走行クラッチ48は、シリンダ部48hに作動油が供給され、供給された作動油の圧力がバネ48gの弾性力を上回るとクラッチピストン48fが前進し、内側クラッチ板48b、外側クラッチ板48cを押え板48eの間で挟圧する。
挟圧された内側クラッチ板48bおよび外側クラッチ板48cは、摩擦によって互いに動力を伝達するようになり、正転クラッチギヤ49から伝達されてきた回転動力がクラッチケース48dへ伝達され、クラッチケース48dにスプライン嵌合している副変速軸53が回転する。
また、シリンダ部48hに作動油(圧油)が供給されず圧力が付与されていない状態では、クラッチピストン48fがバネ48gの弾性力によって後方に押されるため、内側クラッチ板48bおよび外側クラッチ板48cは挟圧されない。このような状態の場合、内側クラッチ板48bおよび外側クラッチ板48cが互いに動力を伝達しないので、PTOクラッチ97が動力伝達を遮断した状態となり、正転クラッチギヤ49が回転しても副変速軸53は回転しない。
なお、クラッチケース48dを挟んで副変速軸53とは反対側のクラッチ軸48aには逆転クラッチギヤ50が設けられており、上述した構成と同様の構成で後進側の動力が伝達(および遮断)される。また、図3における第1Hi−Loクラッチ24、第2Hi−Loクラッチ25および4WDクラッチ79においても、上述した構成と同様のものが用いられている。また、PTOクラッチ97においては、上述した構成の片側半分の構成のものが用いられている。
次に、図5を参照してトラクタ1の油圧回路について説明する。図5は、トラクタ1の油圧回路図である。図5に示すように、トラクタ1は、エンジンE(図1参照)の回転動力により作動するメインポンプ250およびサブポンプ251がサクションフィルタ252を通じてミッションケース内の潤滑油を吸い上げ、油圧回路内に、作動油として圧油を供給している。
サブポンプ251は、パワーステアリング装置253へ圧油を供給する。これにより、前輪4(図1〜図3参照)が操作される。なお、パワーステアリング装置253から排出された作動油は、前述の第1Hi−Loクラッチ24、第2Hi−Loクラッチ25および正逆クラッチ(走行クラッチ)48の潤滑や冷却用の油としても利用され、トランスミッション3内へ戻される。
メインポンプ250は、作業機系油圧装置254、走行系油圧装置255へ圧油を供給する。また、メインポンプ250は、走行系油圧装置255へ供給する経路から分離した経路で走行系油圧装置255内のPTO系および2WD/4WD切替系油圧装置258へ圧油を供給する。
このようなメインポンプ250によれば、主変速レバー15(図1参照)が1速に操作されると、第1主変速ソレノイド207,208のうち第1主変速ソレノイド207に電流が流れてバルブが動作し、第1主変速シリンダ256のLo側油室256Lから圧油が抜けて第1シンクロチェンジ42が第1シンクロ小ギヤ43(いずれも、図3参照)側に接続される。また、第1Lo側ソレノイド211aおよび第1Hi側ソレノイド211bのうち第1Lo側ソレノイド211aに電流が流れてバルブが動作し、第1Hi−Loクラッチ24のLo側油室に圧油が供給され、第1低速ギヤ26(図3参照)側に接続される。
また、主変速レバー15が1速から2速に操作されると、第1主変速ソレノイド207の状態はそのまま、第1シンクロチェンジ42が第1シンクロ小ギヤ43側に接続された状態で、第1Lo側ソレノイド211aへの電流供給が停止して、第1Hi側ソレノイド211bに電流が流されてそれぞれのバルブが動作し、第1Hi−Loクラッチ24のHi側油室に圧油が供給され、第1高速ギヤ30(図3参照)側に接続される。
次に主変速レバー15が2速から3速に操作されると、第1主変速ソレノイド207への電流供給が停止して、第2主変速ソレノイド209,210のうち一方のソレノイド209に電流が流れ、第1シンクロチェンジ42の接続が切れて第2シンクロチェンジ36が第2シンクロ小ギヤ37(いずれも、図3参照)側に接続される。
さらに、第1Hi側ソレノイド211bの電流が停止するとともに、第2Lo側ソレノイド212aに電流が流れてそれぞれのバルブが動作し、第2Hi−Loクラッチ25のLo側油室へ圧油が供給され、第2低速ギヤ27(いずれも図3参照)側に接続される。
以降同様に、4速では、第2シンクロ小ギヤ37および第2高速ギヤ31、5速では、第1シンクロ大ギヤ44および第1低速ギヤ26、6速では、第1シンクロ大ギヤ44および第1高速ギヤ30、7速では、第2シンクロ大ギヤ38および第2低速ギヤ27、8速では、第2シンクロ大ギヤ38および第2高速ギヤ31がそれぞれ接続される(図3参照)。このような変速時やトラクタ1の発進時にはクラッチ接続圧が調整されて変速ショックや発進時のショックが抑制される。
また、前後進レバー14(図1参照)が前進または後進に操作されると、前後進センサ128(図7参照)によって前後進レバー14の操作位置が検出され、前進切替ソレノイド141Fまたは後進切替ソレノイド141Rに電流が流れてバルブが動作し、油路が選択される。
なお、図5に例示したような回路構成では、比例ソレノイドである前後進昇圧ソレノイド142に流れる電流の大きさによって前後進リリーフバルブ142aのリリーフ圧を決める流量が調節される。これにより、前後進油路142bの圧力を任意に調整することで走行クラッチ48(図3および図4参照)の接続圧力を任意に調整することができる。これらの構成および機能を含めてトラクタ1の前後進切替機構が構築される。
なお、図5中、符号256Hは、第1主変速シリンダ256のHi側油室を示し、符号257は第2主変速シリンダを示し、符号257L、257Hは、同シリンダ257のLo側油室、Hi側油室をそれぞれ示す。また、符号212bは第2Hi側ソレノイドを示す。
次に、図6を参照して操縦席7(図1参照)の周りに設けられた各種操作機器について説明する。図6は、操縦席7の前方にある操作機器の説明図である。なお、図示した操作機器の種類や配置などは一例であり、これに限定されるものではない。
図6に示すように、操縦席7の前方には、上述したように、ステアリングハンドル8が設けられている。また、ステアリングハンドル8が取り付けられたハンドルポスト350の下部左方にはクラッチペダル11が設けられ、ハンドルポスト350の下部右方にアクセルペダル10およびブレーキペダル12が設けられている。なお、ブレーキペダル12は、左右それぞれのブレーキペダル12L,12Rを備えている。
ハンドルポスト350の上部左方には前後進レバー14が設けられている。また、ハンドルポスト350の上部右方にはアクセルレバー351、ウィンカレバー352およびワンタッチ昇降レバー353が設けられている。なお、ワンタッチ昇降レバー353は、機体に作業機Wを連結するリフトアームを、不図示のポジションレバーの操作位置または最上位置へワンタッチで操作するものである。また、ハンドルポスト350の中央にはPTO変速レバー354が設けられている。
アクセルペダル10やアクセルレバー351は、エンジンEの回転数を、それぞれの操作量に応じて調整可能なアクセル操作部材として機能し、作業者は、トラクタ1の走行速度を、これらアクセルペダル10やアクセルレバー351の操作により調節することができる。
また、図6に示すように、ステアリングハンドル8の前方にはダッシュボードカバー355が設けられている。また、ダッシュボードカバー355には、操縦席7のオペレータから見えるようにメータパネル9が設けられている。また、メータパネル9には表示部(液晶モニタ)356やエンジン回転計(タコメータ)357などが設けられている。なお、液晶モニタ356では、たとえば、現在の変速段を表示する変速段表示、燃料消費率表示および走行速度表示などの各種表示がなされる。
なお、操縦席7の右方には、図1に示した主変速レバー15の他、例えば、ポジションレバーなどの操作レバー(不図示)が設けられている。なお、ポジションレバーは、上述したリフトアームの昇降を操作するものである。さらに、操縦席7の右方には、図示しないが、PTO入り切りスイッチ、PTO自動/手動切替スイッチ、変速感度ダイヤル、エンジン回転指示スイッチ、回転数増加調整スイッチ、回転数減少調整スイッチなどの操作スイッチが設けられている。なお、各操作スイッチのうちPTO自動/手動切替スイッチでは、上述したリフトアームが一定以上の高さまで上昇すると、自動でPTOクラッチ97(図3参照)を遮断する。さらに、操縦席7の右方には、その他の操作スイッチなどが配置された操作パネルを収納するボックスが設けられている。
次に、図7および図8を参照してトラクタ1の制御部の構成の一例について説明する。図7は、本実施形態に係るトラクタ1の制御部120のブロック図、図8は、トラクタ1のエンジンEの性能曲線図である。
制御部120は、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置や、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置、さらには入出力装置が設けられたコンピュータ等である。そして、図7に示すように、制御部120は、走行系を制御する走行系ECU(Electronic Control Unit)121、エンジンE(図1〜図3参照)を制御するエンジン制御部としてのエンジン系ECU122、例えばロータリ作業機(図2A参照)のような作業機Wを昇降する作業機系ECU123とを有する。各ECU121,122,123は、やはりコンピュータの一種であり、CAN通信ライン(不図示)を介して交互に接続されている。なお、制御部120が備える記憶装置には、トラクタ1の制御に必要な各種コンピュータプログラムや必要なデータが記憶されている。
走行系ECU121は、作業機判別装置125を構成する作業機判定部124を有し、例えば、後述する作業機判別装置125からの判別信号を受けて、あるいは、ユーザによるタブレット端末200を介して入力された作業機種別情報に基づいて、装着された作業機Wの種別を判定するとともに、作業機Wの種別に応じた重量からトラクタ1への負荷を判定する。
また、走行系ECU121は、車速センサ140が所定速度(たとえば、10km/h)以上の走行速度を検出した場合に、メータパネル9の液晶モニタ356(図6参照)に、速度警報を表示させるように制御することができる。
エンジン系ECU122には、例えば、エンジン回転数センサ126からエンジン回転数や、アクセル操作位置検出センサ127からのアクセルペダル10(図6参照)のペダル操作位置およびアクセルレバー351の操作位置がそれぞれ入力される。そして、取得したエンジン回転数が走行系ECU121に受け渡されて、走行系ECU121がトランスミッション3を制御して自動変速することができる。
また、その他にも各種センサ150に含まれるエンジン排気温度センサから排気の温度、エンジンオイル圧力センサからエンジン潤滑オイルの圧力、エンジン水温センサから冷却水の温度などが入力される。
かかる走行系ECU121とエンジン系ECU122とが協働して、エンジンEの回転数に応じてトランスミッション3を制御するとともに、作業機Wの重量に応じて、前述のトランスミッション3(変速装置)による変速タイミングを変更可能としている。
すなわち、走行系ECU121がトランスミッション3(図3参照)を制御して自動変速する場合、例えば作業機Wを装着している状態であれば、作業機Wを装着していない状態よりも、エンジンEの最大トルク時における回転数に近づけるようにしている。すなわち、実際のエンジン回転数が最大トルク時の回転数を所定値αだけ超えたときに変速タイミングを設定している。
例えば、走行系ECU121では、副変速装置による変速が高速時の変速タイミングについては、実際のエンジン回転数が最大トルク時の回転数を前述の所定値αだけ超えたときに設定する。したがって、変速後にエンジンドロップが生じることを軽減することができる。なお、このときの所定値αは、主変速位置によって伝達トルクが異なるため、少なくとも変速前の主変速位置と変速後の主変速位置によって設定可能にしておくことが好ましい。
具体的には、図8に示すように、最大トルクとなるエンジン回転数が毎分1600回転の場合において、エンジン回転数が毎分2000回転のタイミングT1でシフトダウンあるいはシフトアップするように制御部120で設定されていたとする。
このとき、本実施形態では、例えば作業機Wが装着されて重量負荷が増加した場合、作業機系ECU123は、変速タイミング変更指令をエンジン系ECU122に出力して、エンジン回転数が毎分1800回転のタイミングT2で変速するように制御して、変速タイミングを、エンジンEの最大トルク時における回転数に近づけるようにしている。すなわち、所定値αを200に設定し、その分、エンジンEの最大トルク時における回転数に近づけている。
なお、変化させる回転数の変化量である所定値αは、例えば、増加重量に応じて予め定めておき、これを設定テーブルとして制御部120内の記憶装置に記憶させておくとよい。これにより、制御部120は、取得した作業機Wの重量に応じて、変速装置であるトランスミッション3の変速条件として、シフトダウンあるいはシフトアップのタイミングをエンジンEの回転数がどのような値のときとするかを設定することができる。
このように制御することで、トルクが下がる前に変速することができるため、負荷によるエンジンドロップ及び減速感を抑え、変速フィーリングが良好になることを期待できるようになる。なお、ここでエンジンドロップとは、エンジン制御のために用いている目標回転数と実回転数との差、あるいは無負荷時のエンジン回転数である基準回転数からのエンジン回転数の低下量を指す。
こうして、走行系ECU121は、トランスミッション3に含まれる主変速装置、副変速装置、前後進切替機構などを制御して、作業機Wによる荷重増加を勘案してトラクタ1の走行を制御する。
また、走行系ECU121には、例えば左右のブレーキペダル12L,12R(図6参照)などの操作部材の操作信号が入力される。また、走行系ECU121には、走行クラッチ48における前進クラッチ圧力センサなどを含む各種センサ150からの検出結果が入力される。さらに、走行系ECU121には、主変速レバー15(図1〜図2B参照)の操作位置を検出する主変速レバー位置センサや副変速レバーの操作位置を検出する副変速位置センサやミッションオイルの油温を検出する油温センサなどを含む各種センサ150からの検出結果が入力される。
なお、作業機系ECU123には、各種センサ150に含まれるセンサからの要求信号に応じて、作業機昇降機構170などの駆動を制御する。
なお、上述したように、制御部120においてトラクタ1の制御を行う場合、上述したコンピュータプログラムを用いて演算し、演算結果に応じて各種のアクチュエータ類を制御することでトラクタ1を走行制御する。
また、制御部120には、前述したように傾斜センサ129(図2Aおよび図2B参照)が接続されている。そして、走行系ECU121では、傾斜センサ129による検出結果に基づき、機体が進行方向に対して上り傾斜の姿勢である場合、エンジンEの回転数に基づくトランスミッション3(変速装置)による変速タイミングを、前述したようにエンジンEの最大トルク時における回転数に所定値αだけ近づけることもできる。
この場合も、所定値αの設定については、傾斜センサ129によって得られる機体の傾きの程度によって設定することができる。例えば、機体の前方が上がって傾いている状態では、傾いていない場合よりもαの値は小さくするとよい。すなわち、登り坂であれば、通常よりもさらに最高トルクに近い位置で変速することで、機体が減速されることを抑えることが可能となる。
したがって、この場合であっても、トルクが下がる前に変速することができるため、負荷によるエンジンドロップ及び減速感を抑え、変速フィーリングが良好になることを期待できる。
また、制御部120には、通信部190を介してタブレット端末200が接続されている。タブレット端末200は、作業者が携行可能な小型コンピュータの一種であるが、スマートフォンなどで代用することもできる。また、制御部120には、様々な部位を動作させる各種アクチュエータ180や、かかるアクチュエータなどを含む装置類を作動させるための各種スイッチ160が接続されている。
上述した実施形態を通して、以下の農業用のトラクタ1が実現し、各構成に応じた特有な効果を奏する。
(1)エンジンEの動力により走行可能であり、複数種類の作業機Wを着脱自在に取付け可能であって、エンジンEの回転数を、操作量に応じて調整可能なアクセルペダル10やアクセルレバー351と、エンジンEの回転数を検出するエンジン回転数センサ126と、エンジンEから入力された動力を変速するトランスミッション3と、エンジン回転数センサ126により検出されたエンジンEの回転数に応じてトランスミッション3を制御する制御部120と、を備え、制御部120は、取得した作業機Wの重量に応じて、トランスミッション3における変速条件を設定するトラクタ1。
(2)上記(1)において、装着された作業機Wの種類を判別する作業機判別装置125を備え、制御部120は、作業機判別装置125による判別結果に基づき、作業機Wの種類に応じた重量を取得するトラクタ1。
トラクタ1。
(3)上記(2)において、作業機判別装置125は、作業機側コネクタ125bに対応する機体側コネクタ125aを備えるトラクタ1。
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、制御部120は、取得した作業機Wの重量が重いほど、トランスミッション3による変速タイミングを、エンジンEの最大トルク時における回転数に近づけるトラクタ1。
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、前後進レバー14を含む前後進切替機構と、前後進レバー14の操作位置を検出する前後進センサ128と、機体の傾斜を検出する傾斜センサ129とを備え、制御部120は、進行方向に対して上り傾斜の姿勢である場合、エンジンEの回転数に基づくトランスミッション3による変速タイミングを、エンジンEの最大トルク時における回転数に近づけるトラクタ1。
なお、上述してきた実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。例えば、上述してきた例では、アクセルペダル10や主変速レバー15の操作のみで自動変速可能な構成としたが、かかる自動変速モードと、手動変速モードの切替えが可能な構成とすることもできる。
また、各構成や、形状、表示要素等のスペック(構造、種類、方向、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。