図面を参照して実施例の電源システムを説明する。図1に、実施例の電源システムを搭載した電気自動車の駆動系のブロック図を示す。実施例の電源システムは、例えば、電気自動車の駆動系に用いられる。このような電気自動車2は、駆動源である走行用モータ10が発生する駆動力を利用して走行する電動車両である。走行用モータ10が発生した駆動力は、ドライブシャフト11を介してディファレンシャルギア12に入力されて駆動輪15、16に伝達される。制動時は、走行用モータ10が発電機として機能する。走行用モータ10には、燃料電池3とメインバッテリ4から、PCU6を介して駆動電力が供給される。PCUは、パワーコントロールユニットの略称である。
燃料電池3は、複数の燃料電池セルを積層した燃料電池スタックであり、例えば、不図示の水素タンクから供給される水素と外部から取り込まれる酸素との電気化学反応により直流電圧を出力する直流電源である。燃料電池3は、FC(フューエルセル)と称される場合もある。メインバッテリ4は、例えば、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などの二次電池を直列及び並列に多数接続した電池スタックである。燃料電池3及びメインバッテリ4は、いずれも、出力電圧が100ボルト以上である。
これに対して、走行用モータ10は、数100ボルト以上の三相交流電力で駆動する。そのため、電気自動車2では、FC用昇圧コンバータ(FDC)20や昇圧コンバータ(BDC)7を備えることにより、電源の電力を走行用モータ10に適した電圧に昇圧した後、不図示の平滑用コンデンサを介して接続されるインバータ(INV)8によって走行用モータ10を駆動可能な交流電力に変換している。
PCU6の昇圧コンバータ7は、メインバッテリ4からシステムメインリレー5を介して供給される電力の電圧を走行用モータ10の駆動に適した電圧まで昇圧する機能と、走行用モータ10が発電した電力の電圧をメインバッテリ4の充電に適した電圧まで降圧する機能を有するものである。また昇圧コンバータ7は、燃料電池3からFC用昇圧コンバータ20を介して供給される電力の電圧をメインバッテリ4の充電に適した電圧まで降圧する機能も有する。本明細書では、当該電気自動車2の駆動に際しては昇圧機能を主に使用するため、便宜的に昇圧コンバータと称している。
昇圧コンバータ7は、例えば、コンデンサとリアクトルと2個のスイッチング素子とダイオードで構成される。コンデンサは、システムメインリレー5の正極側と負極側に並列に接続される。リアクトルは、一端がコンデンサの正極側に接続される。2個のスイッチング素子は直列に接続されており、その中点にリアクトルの他端が接続される。各スイッチング素子にはダイオードが逆並列に接続される。スイッチング素子の直列接続の両端が、昇圧コンバータ7の高電圧側の入出力端に相当する。スイッチング素子は、トランジスタであり、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。これらのスイッチング素子は、PCU6が有する不図示のコントローラによりオンオフ制御される。
インバータ8は、昇圧コンバータ7から供給される直流電力をU相、V相、W相の交流電力に変換して走行用モータ10を駆動する三相交流電力を供給したり、走行用モータ10が発電した三相交流電力を直流電力に変換して昇圧コンバータ7へ供給したりする。インバータ8は、典型的には、2個のスイッチング素子の直列接続が3組並列に接続された構成を有している。各スイッチング素子にはダイオードが逆並列に接続されている。スイッチング素子の直列接続の中点から交流が出力される。3組の直列接続の夫々の中点から、走行用モータ10の三相(U相、V相、W相)のコイルに対して交流が出力される。インバータ8のスイッチング素子も、PCU6が有する不図示のコントローラによりオンオフ制御される。
システムメインリレー5は、正極側をスイッチングするスイッチと、負極側をスイッチングするスイッチと、により構成されている。これらのスイッチは、HVコントローラ30により夫々個別に制御可能に構成されている。
なお、FC用昇圧コンバータ20とPCU6の間には、両者の電気的な接続をオンオフ可能なFCリレー(不図示)が介在している場合がある。FC用昇圧コンバータ20とPCU6の間は、不図示のパワーケーブルにより接続されている。
FC用昇圧コンバータ20は、燃料電池3から供給される電力の電圧を走行用モータ10の駆動に適した電圧まで昇圧する機能を有するものである。図2に、FC用昇圧コンバータ20の回路図を示す。ここからは図2も参照しながら説明する。
FC用昇圧コンバータ20は、いわゆる多相コンバータである。本実施例では、異なった位相でオンオフ制御される4つのスイッチング素子23a、23b、23c、23dを備えている、4相構成のマルチフェーズコンバータである。これらのスイッチング素子23a−23dは、トランジスタであり、例えば絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)である。スイッチング素子23a−23dは、FC用昇圧コンバータ20が有するコントローラ29によりスッチング制御(オンオフ制御)される。スイッチング素子23a−23dは、例えば、水冷仕様のIPM(Intelligent Power Module)に収容されている。スイッチング素子23a−23dには、IGBTに代えてパワーMOSFETを用いてもよい。本実施例では、FC用昇圧コンバータ20は筐体21に収容されており、またIPMは、不図示の冷却水路により冷却可能に構成されている。
筐体21には、入力側の正極端子21a、負極端子21b、出力側の正極端子21c、負極端子21dが設けられている。本実施例では、例えば、燃料電池3の正極や負極の各端子に接続された不図示のパワーケーブルが入力側の正極端子21a及び負極端子21bに接続されており、またPCU6の正極や負極の入力端子に接続された不図示のパワーケーブルが出力側の正極端子21c及び負極端子21dに接続されている。
FC用昇圧コンバータ20が有する4相分の昇圧回路は、いずれも同じ構成を有している。そのため、ここでは、そのうちの1相分の構成を代表して説明する。1相分の昇圧回路は、例えば、リアクトル22a、スイッチング素子23a、ダイオード24a、ダイオード25a、温度センサ26a及び電流センサ27aにより構成されている。
リアクトル22aは、その一端が入力側の正極端子21aに接続され、またその他端がスイッチング素子23aのコレクタ端子に接続されている。また、リアクトル22aにはダイオード25aのアノード側も接続されており、このダイオード25aのカソード端子は出力側の正極端子21cに接続されている。スイッチング素子23aのエミッタ端子は、入力側の負極端子21b及び出力側の負極端子21dに接続されている。スイッチング素子23aには、還流用のダイオード24aが逆並列に接続されている。
温度センサ26aは、スイッチング素子23aの温度を計測する温度検知素子である。本実施例では、温度センサ26aはIPMに内蔵されている。なお、IPMには、スイッチング素子23aに印加される電圧を計測する電圧センサ(不図示)も含まれている。電流センサ27aは、リアクトル22aに流れる電流を計測する電流検知素子である。電流センサ27aは、例えば、リアクトル22aの他端側の配線に隣接して実装されたり、同他端側の配線途中に実装されたりする。本実施例では、温度センサ26aや電流センサ27aはコントローラ29に接続されており、夫々の計測データ(温度情報や電流値情報)をコントローラ29に出力する。
FC用昇圧コンバータ20は、上記の通りに構成される1相分の昇圧回路の他に、3相分の昇圧回路を備えている。説明の便宜上、リアクトル22a、スイッチング素子23a、ダイオード24a、ダイオード25a、温度センサ26a及び電流センサ27aにより構成されている昇圧回路をPa相の昇圧回路と称する。同様に、リアクトル22b、スイッチング素子23b、ダイオード24b、ダイオード25b、温度センサ26b及び電流センサ27bにより構成されている昇圧回路をPb相の昇圧回路と称する。リアクトル22c、スイッチング素子23c、ダイオード24c、ダイオード25c、温度センサ26c及び電流センサ27cにより構成されている昇圧回路をPc相の昇圧回路と称する。そして、リアクトル22d、スイッチング素子23d、ダイオード24d、ダイオード25d、温度センサ26d及び電流センサ27dにより構成されている昇圧回路をPd相の昇圧回路と称する。
コントローラ29は、典型的にはマイクロコンピュータを備えた制御装置(電子制御ユニット、ECU)であり、スイッチング素子23a−23dを制御する。そのため、コントローラ29は、スイッチング素子23a−23dの夫々のゲート端子と接続されており、これらのスイッチング素子23a−23dを個別にオンオフ制御する駆動信号を生成して送信する。また、コントローラ29は、前述の温度センサ26a、26b、26c、26dや、電流センサ27a、27b、27c、27dにも接続されており、さらにHVコントローラ30にも接続されている。
コントローラ29には、温度センサ26a−26dから出力される計測データ(温度情報)や、電流センサ27a−27dから出力される計測データ(電流値情報)が入力されると共に、HVコントローラ30から制御情報も入力される。コントローラ29は、これらの計測データや制御情報に基づいて、後述するように、スイッチング素子23a−23dのスイッチング制御を行う。
HVコントローラ30も、典型的には、マイクロコンピュータを備えた制御装置であり、車載LANなどを介してFC用昇圧コンバータ20のコントローラ29やPCU6のコントローラ、システムメインリレー5などにも接続されている。また、IPMを冷却する冷却水路の冷却水温を計測可能な水温センサもHVコントローラ30に接続されている。なお、この水温センサによる水温情報は、例えば、冷却水を圧送するポンプの駆動制御などに用いられたり、後述するコントローラ29による制御処理に用いられたりする。
HVコントローラ30は、例えば、電気自動車2の運転席に設けられている車両のスタートスイッチのオン信号を受けて、システムメインリレー5をオンに切り換える。また、HVコントローラ30は、電気自動車2の車速やアクセル開度などの運転操作情報に基づいて、駆動系が出力すべき走行トルクを算出し、適切な指令をPCU6のコントローラに出力する。さらに、HVコントローラ30は、FC用昇圧コンバータ20を制御して、所要の走行トルクを得るために必要な直流電力やメインバッテリ4の充電に必要な直流電力をFC用昇圧コンバータ20からPCU6に出力させる。
ところで、FC用昇圧コンバータ20のコントローラ29は、電流センサ27a−27dから出力される計測データ(電流値情報)に基づいて、夫々のリアクトル22a−22dに流れている電流値を得たり、これらの電流値の合計から燃料電池3の出力電流を得たりして、各相(Pa相、Pb相、Pc相、Pd相)の昇圧回路を制御している。図3に、FC用昇圧コンバータ20の各リアクトル22a−22dに流れる夫々の電流波形の概念を説明する図を示す。図3(A)に示すように、コントローラ29は、Pc相→Pd相→Pa相→Pb相→Pc相→Pd相→…というように、スイッチング素子23a−23dを順番にオンオフ制御する。
例えば、これらの電流センサ27a−27dのうちの1つ(例えば、電流センサ27d)に異常が検知された場合、異常のある電流センサ27dの計測対象電流が流れるスイッチング素子23dは、そのままでは制御できなくなる。FC用昇圧コンバータ20のコントローラ29がスイッチング素子23dの制御を停止すると、各リアクトル22a−22dに流れる電流波形は、図3(B)に示すように歯抜け状態になる。つまり、異常のある相(異常相)のリアクトル22dには電流が流れないことから、当該異常相からは出力電流を得ることができない。そのため、電源システム全体としては、出力電流が減少する結果、電気自動車2の性能が低下してしまう。
そこで、本実施例の電源システムでは、次に説明する制御処理をコントローラ29が行うことにより、例えば、電流センサ27dに異常が生じた場合においても、図3(C)に示すように、当該スイッチング素子23dに流れる電流(同図に示す電流波形Pd)を推定してスイッチング素子23dをオンオフ制御可能にしている。ここで、コントローラ29が行う当該制御処理を、図4及び図5に基づいて説明する。図4に、FC用昇圧コンバータ20のコントローラ29が実行する制御処理のフローチャートを示す。また、図5に、図4のステップS20の電流値推定処理のフローチャートを示す。
図4のフローチャートから説明する。コントローラ29は、図4の制御処理の実行を開始すると、まずステップS10により電流センサ異常検知処理を行う。例えば、各電流センサ27a−27dから出力される計測データ(電流値情報)に基づいて、所定期間内(例えば、スイッチング素子23a−23dの夫々をオンオフするのに必要な最小時間内)に計測された夫々の電流値が、予め定められた範囲内(例えば、±30%以内)に収まっているか否かを判断し、当該範囲内から外れている電流センサは異常があると判定する。これは一例に過ぎないため、電流センサの異常を検知可能なものであれば、他のアルゴリズムによるソフトウェア処理やハードウェア構成によって電流センサの異常を検知してもよい。
次のステップS12では、ステップS10の情報に基づいて、電流センサ27a−27dの異常の有無に応じて処理を分岐させる。コントローラ29は、異常がないと判定した場合には(S12;NO)、続くステップS14により電流センサ27a−27dから電流値情報を取得する処理を行う。これに対して、異常があると判定した場合には(S12;YES)、ステップS15により、例えば、電気自動車2のインストルメントパネルに電流センサに異常がある旨の表示を行ったうえで、電流値推定処理を行う(S20)。
図5を参照して電流値推定処理を説明する。ステップS21では、異常相(異常のある相)を特定する処理が行われる。この処理では、電流センサ27a−27dの異常がどの電流センサに生じているのかを特定する。前述のステップS10により異常のある電流センサ27a−27dが特定できている場合にはその情報を用いる。特定できていない場合には、例えば、所定期間内にスイッチング素子23a−23dに対して順次オンオフ制御を行うことにより、電流センサ27a−27dから出力される計測データに基づいて異常のある電流センサを特定する。
続くステップS23では、他のセンサ情報を取得する処理が行われる。他のセンサ情報は、次のステップS25による算出処理に必要な情報である。例えば、電流センサ27dに異常がある場合には、電流センサ27dが計測した温度TIGBT、HVコントローラ30を介して得られる水温センサによる水温(IPMを冷却する冷却水路の冷却水温)Twtの情報や不図示の電圧センサが計測したスイッチング時のスイッチング素子23dの印加電圧などである。
スイッチング素子23dのオン抵抗による電力損失(以下、オン損失と称する)は、スイッチング素子23dがオンである場合にスイッチング素子23dに流れる電流(通電電流)に支配される。また、スイッチング素子23dのスイッチング期間中(オンオフ間の遷移途中)に発生するスイッチング損失は、スイッチング時にスイッチング素子23dに流れる電流(通電電流)に支配されるとともに、スイッチング時のスイッチング素子23dの印加電圧やスイッチング素子23dのスイッチング周波数の影響も受ける。このようなオン損失及びスイッチング損失は、その大半が、スイッチング素子23dが発する熱に変換される。
ところで、通電によるスイッチング素子23dの温度上昇値ΔTIGBTは、温度センサ26dの計測データ(温度情報)より得られるスイッチング素子23dの温度TIGBTから、HVコントローラ30を介して得られる水温センサによる水温情報の水温Twtを減算することにより求めることが可能である(ΔTIGBT=TIGBT−Twt)。また、ΔTIGBTは、「ΔTIGBT=ΔTon×kwt+ΔTsw×kcar×kvh×kwt」の式で得られる。ここで、ΔTonは、スイッチング素子23dのオン損失により生じ得る温度上昇値を意味する。kwtは、温度上昇値ΔTonを水温Twtにより補正する係数を意味する。ΔTswは、スイッチング素子23dのスイッチング損失により生じ得る温度上昇値を意味する。kcarは、温度上昇値ΔTswをスイッチング素子23dのスイッチング周波数により補正する係数を意味する。kvhは、温度上昇値ΔTswを昇圧した出力電圧により補正する係数を意味する。
そして、スイッチング素子23dのオン損失により生じ得る温度上昇値ΔTonは、前述したようにオン損失を支配するスイッチング素子23dのオン時の通電電流に左右され易いため、「ΔTon=a×IIGBT+b」の式により得られる(a、bは、比例係数)。また、スイッチング素子23dのスイッチング損失により生じ得る温度上昇値ΔTswも、前述のようにスイッチング損失を支配するスイッチング素子23dのスイッチング時の通電電流に左右され易いため、ΔTsw=c×IIGBT+dの式により得られる(c、dは、比例係数)。これらの比例係数a、b、c、dは、ステップS23により取得したスイッチング時のスイッチング素子23dの印加電圧や、コントローラ29によるスイッチング素子23dのスイッチング周波数などを用いて定められる。
上記した式をまとめて以下に示す。
ΔTIGBT=ΔTon×kwt+ΔTsw×kcar×kvh×kwt …式1
ΔTon=a×IIGBT+b …式2
ΔTsw=c×IIGBT+d …式3
これらの式1、式2、式3から導かれる次の式4によって、異常相の推定電流値、すなわちスイッチング素子23dの通電電流値IIGBTは、スイッチング素子23dの温度上昇値ΔTIGBTから算出可能であることがわかる。
IIGBT=(ΔTIGBT−b×kwt−d×kcar×kvh×kwt)/
(a×kwt+c×kcar×kvh×kwt) …式4
なお、温度上昇値ΔTIGBTは、温度センサ26a−26dにより得られる。なお、温度センサ26a−26dは、スイッチング素子23a−23dの温度を直接計測可能であるタイプが好ましいが、スイッチング素子23a−23dのチップが実装された基板の温度を計測可能なタイプであってもよい。スイッチング素子のチップが実装された基板の温度を計測するタイプの温度センサは、例えば、IPMの放熱プレートなどに接触させて温度を計測するタイプの温度センサに比べ、スイッチング素子23a−23dの通電電流の変動に追従した温度変化を計測可能な高い応答性能を有することが確認されている。
図5の説明に戻る。ステップS25において、上記の式4を用いて異常相の推定電流値を算出する処理が行われる。先の例では、スイッチング素子23dの通電電流の推定値が算出される。この推定値は、本来であれば電流センサ27dにより計測される電流値の推定値(異常相の推定電流値)である。続くステップS27では、ステップS25により算出した異常相の推定電流値を異常相の計測値に置き換える。そうして、図5の電流値推定処理は終了する。その後、図4に示すステップS16の処理に移行する。
図4のステップS16では、コントローラ29は、計測された電流値(あるいは、推定された電流値)に基づいて、スイッチング素子23a−23dを制御する(スイッチング素子を駆動する)。電流センサ27dに異常があり、その他の電流センサ27a、27b、27cに異常がない場合には、スイッチング素子23a、23b、23cについては、夫々に対応する電流センサ27a、27b、27cから出力された計測データ(電流値情報)に基づいて制御される。他方、スイッチング素子23dについては、電流センサ27dによる計測データ(電流値情報)に代えて推定電流値に基づいて制御される。
以上のとおり、本実施例の電気自動車2の電源システムでは、FC用昇圧コンバータ20のコントローラ29は、4相分の電流センサ27a−27dのいずれかに異常がある(故障が発生している)と判定した場合には、例えば、当該異常(故障)の電流センサ27dの計測対象電流が流れるスイッチング素子23dの温度TIGBTを用いて当該スイッチング素子23dに流れる電流IIGBTを推定し(S25)、この推定電流値を用いて当該スイッチング素子23dを制御する(S16)。これにより、このような4相分の電流センサ27a−27dのいずれかに故障が発生した場合においても、故障した相についてはスイッチング素子23a−23dの温度TIGBTを用いて当該スイッチング素子23a−23dに流れる電流IIGBTを推定して制御するので、故障した相からも出力電流を得ることが可能になる。したがって、電流センサ27a−27dが故障しても出力電流の減少を抑制し得る。そのため、例えば、電流センサ27a−27dの故障時における退避走行用の駆動力を増加させることが可能になる。「退避走行」とは、車両のシステムに何等かの異常が検知されたが走行可能である場合に、最高出力を抑えるなどして負荷を抑えて走行することを意味する。
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。上述した例では、FC用昇圧コンバータ20が有する4相分(Pa相、Pb相、Pc相、Pd相)の昇圧回路のうち、Pd相の電流センサ27dが故障した場合を例にして説明した。Pa相の電流センサ27aが故障した場合、Pb相の電流センサ27bが故障した場合、Pc相の電流センサ27cが故障した場合においても、Pd相の場合と同様に、故障した相のIGBTの温度TIGBTを用いて当該IGBTに流れる電流IIGBTを推定して当該スイッチング素子を制御することが可能である。
本実施例では、FC用昇圧コンバータ20として、4相分の昇圧回路を有するものを例示して説明したが、複数相の昇圧回路を有するものであれば、2相分や3相分の昇圧回路を有するものや、5相分以上の昇圧回路を有するものでもよい。
また、本実施例では、FC用昇圧コンバータ20が有する4相分の昇圧回路のうち、1相(Pd相)の電流センサ27dが故障した場合を例示して説明したが、2相(例えば、Pa相とPd相)の電流センサ27a、27dが同時に故障した場合においても、1相の場合と同様に、故障した2相の夫々のスイッチング素子23a、23dの温度TIGBTを用いてこれらのスイッチング素子23a、23dに流れる電流IIGBTを推定してスイッチング素子23a、23dを制御することが可能である。また、3相(例えば、Pa相とPb相とPd相)が同時に故障した場合についても同様である。
燃料電池3が直流電源の一例に相当する。直流電源は燃料電池に限られない。FC用昇圧コンバータ20が多相コンバータの一例に相当する。コントローラ29が制御装置の一例に相当する。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書又は図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。