JP6879136B2 - 二次電池の充放電制御装置 - Google Patents

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Description

本開示は、リチウムイオン二次電池の充放電制御に関する。
リチウムイオン二次電池の負極としては、たとえば、ケイ素や酸化ケイ素などを含むSi系材料と炭素材料の複合体負極が用いられることが公知である。炭素材料としては、たとえば、グラファイト(黒鉛)が用いられる。
たとえば、特開2017−050203号公報には、Si系材料と黒鉛とを含む負極を備えたリチウムイオン二次電池が開示される。
特開2017−050203号公報
しかしながら、Si系材料と炭素材料とを混合して負極として用いられる場合には、比較的低SOC領域における電池反応の主をSi系材料が担うことになる。その一方で、Si系材料が負極の材料として用いられる場合には、炭素材料と比較して、充放電における活物質の体積変化が大きいため、活物質割れや、導電ネットワークから活物質が孤立化するなど、機械的な劣化が進みやすい。そのため、比較的低SOC領域において電池の充放電が継続される場合には、電池の劣化が促進される場合がある。上述した特許文献1には、このような問題について考慮されていない。
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、Si系材料と炭素材料とを含む負極を備える二次電池の劣化を抑制する二次電池の充放電制御装置を提供することである。
本開示のある局面に係る二次電池の充放電制御装置は、Si系材料と炭素材料とを含む負極を備えるリチウムイオン二次電池の充放電を制御する二次電池の充放電制御装置である。この充放電制御装置は、二次電池の充放電電流を検出する電流検出部と、充放電電流を制御する制御部とを備える。制御部は、二次電池のSOCに対するOCVとの関係において充放電によるヒステリシスを有する第1SOC領域と、第1SOC領域よりもヒステリシスの小さい第2SOC領域とのうちの第1SOC領域における充放電期間が長い場合には、充放電期間が短い場合よりも第1SOC領域における充放電の頻度を低下させる。
負極がSi系材料を含む場合には、第1SOC領域における充放電期間が長くなるほど電池の劣化が進行しやすくなる。そのため、第1SOC領域における充放電期間が長くなるほど第1SOC領域における充放電の頻度を低下させることにより、電池の劣化の進行を緩やかにすることができる。その結果、二次電池の寿命の悪化を抑制することができる。
本開示の他の局面に係る二次電池の充放電制御装置は、Si系材料と炭素材料とを含む負極を備えるリチウムイオン二次電池の充放電を制御する二次電池の充放電制御装置である。この充放電制御装置は、二次電池の充放電電流を検出する電流検出部と、充放電電流を制御する制御部とを備える。制御部は、二次電池のSOCに対するOCVとの関係において充放電によるヒステリシスを有する第1SOC領域と、第1SOC領域よりもヒステリシスの小さい第2SOC領域とのうちの第1SOC領域における充放電期間が長い場合には、充放電期間が短い場合よりも第1SOC領域においてSOCの制御上限値と制御下限値との差、二次電池の入力電力の許容値の大きさおよび二次電池の出力電力の許容値の大きさのうちの少なくともいずれかを小さくする。
負極がSi系材料を含む場合には、第1SOC領域における充放電期間が長くなるほど電池の劣化が進行しやすくなる。そのため、第1SOC領域における充放電期間が長くなるほどSOCの制御上限値と制御下限値との差、二次電池の入力電力の許容値の大きさおよび二次電池の出力電力の許容値の大きさのうちの少なくともいずれかを小さくすることにより、SOCの変化が緩やかになり電池の劣化の進行を緩やかにすることができる。その結果、二次電池の寿命の悪化を抑制することができる。
本開示によると、Si系材料と炭素材料とを含む負極を備える二次電池の劣化を抑制する二次電池の充放電制御装置を提供することができる。
本実施の形態におけるハイブリッド車両の全体構成を概略的に示すブロック図である。 CDモードとCSモードとを説明するための図である。 組電池のSOCとOSVとの関係を示す図である。 ECUで実行される制御処理を示すフローチャートである。 満充電容量の時間変化を示すタイミングチャートである。 変更前後におけるSOCの使用範囲を説明するための図である。 変形例におけるECUで実行される制御処理を示すフローチャートである。 変形例における満充電容量とΔSOCと入力電力の許容値Winと出力電力の許容値Woutの変化を示すタイミングチャートである。
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
以下では、本開示の実施の形態に係る二次電池の充放電制御装置がハイブリッド車両に搭載される構成を例に説明するが、以下に説明する二次電池を搭載した車両であればよく、特にハイブリッド車両に搭載されるものに限定されるものではない。車両は、たとえば、駆動源として駆動用電動機のみを搭載した電動車両であってもよい。また、二次電池の用途は車両用に限定されるものではなく、定置用であってもよい。
図1は、本実施の形態におけるハイブリッド車両1(以下、単に車両1と記載する)の全体構成を概略的に示すブロック図である。車両1は、モータジェネレータ(MG:Motor Generator)10,12と、エンジン14と、動力分割機構16と、充電リレー(以下、CHRと記載する)18と、充電装置20と、インレット22と、駆動輪28と、電力制御ユニット(PCU:Power Control Unit)40と、システムメインリレー(以下、SMR(System Main Relay)と記載する)50と、組電池100と、電圧センサ210と、電流センサ220と、温度センサ230と、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)300とを備える。
MG10,12の各々は、たとえば三相交流回転電機である。MG10は、動力分割機構16を介してエンジン14のクランク軸に連結される。MG10は、エンジン14を始動させる際には組電池100から供給される電力を用いてエンジン14のクランク軸を回転させる。また、MG10は、エンジン14の動力を用いて発電することも可能である。MG10によって発電された交流電力は、PCU40により直流電力に変換されて組電池100に供給される。また、MG10によって発電された交流電力は、MG12に供給される場合もある。
MG12は、組電池100から供給される電力およびMG10から供給される電力のうちの少なくとも一方を用いて駆動軸を回転させる。また、MG12は、回生制動によって発電することも可能である。MG12によって発電された交流電力は、PCU40により直流電力に変換されて組電池100に供給される。
なお、図1の車両1としては、モータジェネレータが2つ設けられる構成が示されるが、モータジェネレータの数はこれに限定されず、モータジェネレータを1つ設ける構成としてもよい。
PCU40は、たとえば、ECU300からの制御信号に基づいて動作するインバータとコンバータとを含み、組電池100とMG10,12との間で電力を変換することが可能に構成される。
たとえば、組電池100の放電時において、コンバータは、組電池100から供給された電圧を昇圧してインバータに供給する。インバータは、コンバータから供給された直流電力を交流電力に変換してMG10,12の少なくともいずれかに供給する。
一方、組電池100の充電時において、インバータは、MG10,12の少なくともいずれかによって発電された交流電力を直流電力に変換してコンバータに供給する。コンバータは、インバータから供給された電圧を所定の充電電圧に降圧して組電池100に供給する。また、PCU40は、ECU300からの制御信号に基づいてインバータおよびコンバータの動作を停止することによって充放電を休止する。なお、PCU40は、コンバータを省略した構成であってもよい。
SMR50は、組電池100とPCU40とを結ぶ電力線に電気的に接続されている。SMR50がECU300からの制御信号に応じて閉成されている場合、組電池100とPCU40との間で電力の授受が行なわれ得る。
組電池100は、再充電が可能な直流電源であり、リチウムイオン電池を含んで構成される。組電池100は、複数個(n個)のリチウムイオン電池(単セル)110(以下、セル110と記載する)が直列に接続されることによって構成される。組電池100は、PCU40を介してMG10,12の少なくともいずれかへの電力の供給を可能とする。セル110は、正極と負極とセパレータとを所定の順序で積層して構成される。本実施の形態において、セル110の負極は、たとえば、SiやSiOなどのSi系材料と炭素材料とを含んで構成される。以下の説明においては、炭素材料として、たとえば、グラファイト(黒鉛)が用いられる場合を一例として説明する。
より具体的には、負極は、負極集電体と、負極集電体の表面に設けられた負極活物質を含む負極合材層とを有する。負極集電体は、たとえば、銅(Cu)箔等が用いられる。負極合材層は、負極集電体の両面または片面に設けられる。負極合材層は、負極活物質に加えてバインダ、導電材などを含み得る。負極活物質は、Si系材料とグラファイトとからなる。Si系材料とグラファイトとは、所定の比率で混合され負極集電体の表面に負極合材層として形成される。
インレット22は、車外の外部電源26に接続される電力ケーブルのプラグ24を連結することが可能に構成されている。充電装置20は、たとえばAC/DCコンバータであって、外部電源26から供給される電力の電圧を、組電池100に充電に適した電圧に変換することが可能に構成されている。CHR18は、プラグ24がインレット22に接続されたときにECU300からの制御信号に応じてオン状態にされる。このとき、インレット22および充電装置20を介して組電池100に電力の供給が可能な状態になる。一方、CHR18は、プラグ24がインレット22から取り外されたときやインレット22および充電装置20を介した組電池100の充電が完了したときにECU300からの制御信号に応じてオフ状態にされる。
電圧センサ210は、複数のセル110の各々の端子間の電圧Vb(1)〜Vb(n)を検出する。電流センサ220は、組電池100に入出力される電流Ibを検出する。温度センサ230は、複数のセル110の各々の温度Tb(1)〜Tb(n)を検出する。以下の説明において各セル110の電圧Vb(1)〜Vb(n)を電圧Vbと記載し、温度Tb(1)〜Tb(n)を温度Tbと記載する場合がある。各センサは、その検出結果をECU300に出力する。
ECU300は、CPU(Central Processing Unit)301と、メモリ(ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory))302と、入出力バッファ(図示せず)とを含む制御装置である。ECU300は、各センサから受ける信号、ならびにメモリ302に記憶されたマップおよびプログラム等の情報に基づいて、車両1が所望の状態となるように各機器を制御する。また、ECU300は、組電池100の電圧、電流および温度を監視するとともに充電装置20あるいはPCU40を用いて組電池100の充放電を制御する。
以上のような構成を有する車両1の運転中において、ECU300は、CD(Charge Depleting)モードおよびCS(Charge Sustaining)モードのいずれかを選択し、選択されたモードに応じてエンジン14およびPCU40を制御する。CDモードとは、組電池100のSOC(State Of Charge)を消費する制御モードである。CSモードとは、組電池100のSOCを所定範囲に維持する制御モードである。
ECU300は、たとえば、外部充電によって組電池100の充電が完了した後であって、組電池100のSOCがCSモードにおけるSOCの制御中心に低下するまではCDモードを選択し、SOCがCSモードにおけるSOCの制御中心まで低下した後はCSモードを選択する。
図2は、CDモードとCSモードとを説明するための図である。図2において、横軸は時間を示し、縦軸はSOCの変化の一例を示す。図2に示す例では、外部充電により組電池100が満充電状態(SOC=MAX)となり、外部充電が完了した後、時刻t(0)で走行が開始された場合が示されている。
CDモードにおいては、基本的には、組電池100に蓄えられた電力(主には外部充電によって充電された電力)が消費される。CDモードでの走行中においては、SOCを維持するためにはエンジン14は作動しない。したがって、減速中のMG12の回生電力等により一時的にSOCが増加することはあるものの、結果的に充電よりも放電の割合の方が大きくなり、全体としてはSOCが徐々に減少する。
一方、CSモードにおいては、通常SOCは、SOC_aを制御中心とし、制御上限値SOC(2)と制御下限値SOC(1)とによって規定される所定範囲(ΔSOC)内に維持される。一例として、時刻t(1)において、SOCがCSモードでの制御中心であるSOC_aまで低下すると、ECU300は、エンジン14を始動させ、制御モードをCDモードからCSモードへ移行させる。その後、ECU300は、SOCが所定範囲内で維持されるようにエンジン14を間欠的に作動する。具体的には、ECU300は、SOCが所定範囲の制御下限値SOC(1)まで低下するとエンジン14を作動させ、SOCが所定範囲の制御上限値SOC(2)に達するとエンジン14を停止させることによって、SOCを所定範囲内に維持する。すなわち、CSモードにおいては、SOCを所定範囲に維持するためにエンジン14が作動する。さらに、ECU300は、SOCが制御中心よりも高い場合には、組電池100の放電を促進し、SOCが制御中心よりも低い場合には、組電池100の充電を促進するようにエンジン14の出力を制御する。
上述したようにCDモードからCSモードに移行すると、組電池100のSOCのうちのSOC(1)〜SOC(2)の範囲内で充放電が継続されることとなる。
ところで、上述したように、組電池100を構成するセル110の負極には、Si系材料とグラファイトとが負極材料として含まれる。Si系材料はグラファイトと比べて充放電にともなう体積変化が大きく、活物質割れや、導電ネットワークから活物質が孤立化するなど、機械的な劣化が進みやすい特性を有する。また、Si系材料とグラファイトとが負極材料として含まれる負極を備えるリチウムイオン電池のSOCとOCV(Open Circuit Voltage)との関係においては、低SOC領域において高SOC領域よりも顕著なヒステリシスが発生する場合がある。
図3は、Si系材料とグラファイトとを含む負極を備えるリチウムイオン電池におけるSOCとOSVとの関係を示す図である。図3の縦軸は、OCVを示す。図3の横軸は、SOCを示す。
図3の実線LN1は、完全放電状態から組電池100を充電した場合のOCVの変化を示す。図3の破線LN2は、満充電状態から組電池100を放電した場合のOCVの変化を示す。
図3においては、実線LN1と破線LN2とを比較した場合にSOCが0%となる付近を除き、低SOC領域では同一SOCに対するOCVの差が所定量以上存在することが示されている。すなわち、このようなSOC領域では所定期間の電池の使われ方(過去履歴:ΔSOC、電流、温度等)に応じて、SOCとOCVの関係が変化する。図3においては、説明の便宜上、SOC_thを境界として、SOCがしきい値SOC_thよりも大きい領域をヒステリシス小の領域とし、SOCがしきい値SOC_thよりも小さい領域をヒステリシス大の領域としている。SOC_thは、たとえば、同一のSOCにおけるOCVの差がしきい値以下となるSOC領域と、同一のSOCにおけるOCVの差がしきい値よりも大きくなるSOC領域とを区分するためのしきい値として設定される。
低SOC領域におけるヒステリシスが高SOC領域におけるヒステリシスよりも大きくなるのは、低SOC領域における充放電時の電池反応においてSi材料が主として反応しているためである。そのため、ヒステリシス大領域において充放電が継続する場合には、ヒステリシス小領域において充放電が継続する場合よりも組電池100の劣化が進みやすくなる。そして、上述のように、CDモードからCDモードに移行した場合には、SOCがヒステリシス大領域内のSOC(1)〜SOC(2)の所定範囲内で充放電が継続されることになるため組電池100の劣化が進みやすくなり得る。
そこで、本実施の形態においては、ECU300は、組電池100のSOCに対するOCVとの関係において充放電によるヒステリシスを有する第1SOC領域(ヒステリシス大領域)と、第1SOC領域よりもヒステリシスの小さい第2SOC領域(ヒステリシス小)とのうち第1SOC領域における充放電期間が長い場合には、充放電期間が短い場合よりも第1SOC領域における充放電の頻度を低下させるものとする。
本実施の形態においては、ECU300は、組電池100の満充電容量がしきい値よりも小さくなる場合に、CSモード時に用いられるΔSOCと制御中心を満充電容量がしきい値よりも大きい場合よりも高SOC側に変更させることによってヒステリシス大領域における充放電の頻度を低下させるものとする。
このようにするとヒステリシス大領域における充放電の頻度を低下させることができるため、組電池100の劣化が促進されることを抑制することができる。
以下、図4を用いてECU300で実行される制御処理について説明する。図4は、ECU300で実行される制御処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、所定の制御周期毎にメインルーチン(図示せず)から呼び出されて実行される。これらのフローチャートに含まれる各ステップは、基本的には、ECU300によるソフトウェア処理によって実現されるが、その一部または全部がECU300内に作製されたハードウェア(電気回路)によって実現されてもよい。
ステップ(以下、ステップを「S」と記載する)100にて、ECU300は、ヒステリシス小領域におけるセル110のOCVと電流積算量を取得する。ECU300は、複数のセル110毎のOCVと電流積算量を取得する。
具体的には、ECU300は、たとえば、電圧センサ210によって検出される電圧Vbから組電池100の内部抵抗Rbと電流Ibとを乗算した値、すなわち、過電圧や分極の影響などを考慮することによってOCVを算出する。ECU300は、たとえば、セル110の単位時間当たりの電圧Vbの変化に対する電流Ibの変化の傾きを内部抵抗として算出してもよいし、その他の周知の技術を用いて推定してもよい。
また、ECU300は、算出されたOCVがSOC_thに対応するOCVのしきい値よりも大きい場合(すなわち、ヒステリシス小領域)における所定OCV間の電流積算量を算出する。具体的には、ECU300は、たとえば、算出されたOCVが第1OCVになる時点から第2OCV(<第1OCV)になる時点までの電流積算量を算出する。ECU300は、電流センサ220によって検出される電流と前回の電流積算量の算出時点からの時間とを乗算した値を前回の電流積算量に加算することによって今回の電流積算量を算出する。ECU300は、たとえば、OCVが第1OCVになる時点で電流積算量を初期値(たとえば、ゼロ)にリセットして、電流積算量の算出を開始し、OCVが第2OCVになる時点に電流積算量の算出を終了する。
S102にて、ECU300は、満充電容量を算出する。ECU300は、たとえば、第1OCVと第2OCVとの差分に対応するSOCの差分と、電流積算量とを用いて満充電容量を算出する。ECU300は、たとえば、図3に示されるOCVとSOCとの関係と、第1OCVと第2OCVとの差分を用いて算出されるSOCの差分と、電流積算量に基づく充電量とに基づいて(たとえば、SOCの差分に対する充電量の比からSOC100%に対する充電量を算出して)満充電容量を算出する。なお、満充電容量の算出方法は、上述の方法に限らずその他の周知の技術を用いて算出してもよい。ECU300は、複数のセル110毎の満充電容量を算出する。
S104にて、ECU300は、算出された満充電容量がしきい値A以下であるか否かを判定する。しきい値Aは、セル110の劣化の程度が所定の程度以上であるか(すなわち、満充電容量が初期値から所定の劣化程度に対応する割合まで低下したか)を判定するためのしきい値である。算出された満充電容量がしきい値A以下であると判定される場合(S104にてYES)、処理はS106に移される。なお、算出された満充電容量がしきい値Aよりも大きいと判定される場合(S104にてNO)、処理はS100に戻される。ECU100は、たとえば、複数のセル110のうちの少なくとも1つの満充電容量がしきい値A以下である場合に、算出された満充電容量がしきい値A以下であると判定する。
S106にて、ECU300は、CSモード時の複数のセル110の使用範囲(ΔSOCおよび制御中心)を変更する。本実施の形態においては、ECU300は、制御下限値SOC(1)を所定量だけ増加させたSOC(3)とし、制御上限値SOC(2)を所定量だけ増加させたSOC(4)とするとともに制御中心SOC_cを所定量だけ増加させるものとする。なお、制御下限値、制御上限値および制御中心の増加量としては、本実施の形態においては一例として、それぞれ同量であるものとして説明する。
以上のような構造およびフローチャートに基づくECU300の動作について図5および図6を用いて説明する。図5は、満充電容量の時間変化を示すタイミングチャートである。図5の縦軸は、満充電容量を示し、図5の横軸は、通算使用時間を示す。また、図6は、変更前後におけるSOCの使用範囲を説明するための図である。図6の縦軸は、OCVを示し、図6の横軸は、SOCを示す。図6の実線LN1は、図3の実線LN1と同様に完全放電状態から組電池100を充電した場合の複数のセル110のうちのいずれかのセル110のOCVの変化を示す。図6の破線LN2は、図3の破線LN2と同様に満充電状態から組電池100を放電した場合の当該セル110のOCVの変化を示す。また、図6においても図3と同様にSOC_thを境界としてヒステリシス小領域とヒステリシス大領域とが設定されているものとする。
組電池100に対する外部充電が完了した後、図5に示すように、時間t(2)にて、車両1の運転が最初に開始されると、ヒステリシス小領域におけるセル110のOCVと電流積算量との取得が開始される(S100)。そして、取得されたセル110のOCVと電流積算量とを用いて満充電容量が算出される(S102)。算出された満充電容量がしきい値Aよりも大きいと判定される場合には(S104にてNO)、制御下限値SOC(1)と制御上限値SOC(2)と制御中心SOC_cとは変更されない。
図5に示すように、組電池100の通算使用時間が長くなるほどセル110の満充電容量は低下していく。そして、時間t(3)にて、算出された満充電容量がしきい値A以下になると判定される場合には(S104にてYES)、CSモードが選択された場合における複数のセル110の使用範囲が変更される(S106)。すなわち、制御下限値SOC(1)は、SOC(1)よりも高い値であるSOC(3)に設定され、制御上限値SOC(2)は、SOC(2)よりも高い値であるSOC(4)に設定され、制御中心は、SOC_cよりも高い値であるSOC_c’に設定される。
このように複数のセル110の使用範囲が変更されると、図6に示すように、ΔSOCおよび制御中心は、いずれも使用範囲の変更後にヒステリシス小領域側に変更され、使用範囲の一部がヒステリシス小領域に含まれることになる。その結果、CSモードが選択された場合には、変更後のΔSOCの範囲内で充放電が継続されることになるため、ヒステリシス大領域内で充放電が行なわれる頻度が低下されることになる。
以上のようにして、本実施の形態に係る二次電池の制御装置によると、負極がSi系材料を含む場合には、たとえば、CSモードの選択時等においてヒステリシス大領域内におけるリチウムイオン二次電池の充放電期間(電池の使用開始してからの通算時間)が長くなるほど電池の劣化が進行しやすくなり得る。そのため、ヒステリシス領域大における充放電期間が長くなるほど充放電期間が短い場合よりもヒステリシス大領域における充放電の頻度を低下させることにより、電池の劣化の進行を緩やかにすることができる。その結果、二次電池の寿命の悪化を抑制することができる。したがって、Si系材料と炭素材料とを含む負極を備える二次電池の劣化を抑制する二次電池の充放電制御装置を提供することができる。
以下、変形例について記載する。
上述の実施の形態では、組電池100は、複数のセルを直列に接続して構成される場合を一例として説明したが、特にこのような構成に限定されるものではない。組電池100は、たとえば、複数のセルを並列に接続して構成されるようにしてもよいし、あるいは、複数のセルを直列に接続して構成される組電池を複数個並列に接続して構成されるようにしてもよい。
さらに上述の実施の形態では、活物質の体積変化(膨張・収縮)が大きい負極の代表材料として、Si系材料を用いることを一例として説明したが、リチウムと合金化する他の材料(たとえば、Sn系材料、Ge系材料あるいはPb系材料)などを用いてもよい。ここで、体積変化の大きい材料は、グラファイトのような10%程度の体積変化よりも大きい膨張・収縮を示す材料と考えることができる。また、正極活物質の体積変化が大きい場合は、正極由来のヒステリシスを上述のSi系材料を用いた場合のヒステリシスと同様の観点で考慮してもよい。
さらに上述の実施の形態では、組電池100は、リチウムイオン電池であればよく、種々のリチウムイオン電池を用いることができる。組電池100は、たとえば、液状の電解質を用いるリチウムイオン電池であってもよいし、ゲル状のポリマーを電解質に用いるポリマー系のリチウムイオン電池であってもよいし、固体の電解質を用いる全固体系のリチウムイオン電池であってもよい。
さらに上述の実施の形態では、複数のセル110毎に電圧センサ210および温度センサ230を設けて電圧および温度を検出するものとして説明したが、たとえば、所定数のセル110を1グループとし、グループ単位で電圧および温度を検出してもよい。
さらに上述の実施の形態では、変更後のΔSOCは、変更前のΔSOCの大きさを維持しつつヒステリシス小領域側に変更するものとして説明したが、たとえば、ヒステリシス大領域内に設定されるΔSOCを変更前のΔSOCの大きさ(満充電容量がしきい値A以下になる前のΔSOCの大きさ)よりも小さくなるように設定されてもよい。
さらに上述の実施の形態では、満充電容量がしきい値A以下となる場合の組電池100の電力の入出力の許容値WinおよびWoutについて特に言及していないが、たとえば、満充電容量がしきい値A以下となる場合に組電池100の入力電力の許容値Winの大きさおよび組電池100の出力電力の許容値Woutの大きさのうちの少なくともいずれかを満充電容量がしきい値A以下になる前の大きさよりも小さくなるように設定されてもよい。
以下に、満充電容量がしきい値A以下となる場合にΔSOCの大きさおよび入出力電力の許容値を小さくする変形例においてECU300で実行される制御処理について図7を用いて説明する。図7は、変形例におけるECU300で実行される制御処理を示すフローチャートである。なお、図7に示すフローチャートのS100,S102およびS104の処理は、図4に示すフローチャートのS100,S102およびS104の処理と同様である。そのため、その詳細な説明は繰り返さない。
満充電容量がしきい値A以下であると判定される場合(S104にてYES)、S200にて、ECU300は、CSモード時に用いられるΔSOCを設定する。具体的には、ECU300は、制御中心を維持しつつ、計算時点における制御下限値に所定値だけ加算し、計算時点における制御上限値から所定値だけ減算することによって、ΔSOCを設定する。
S202にて、ECU300は、CSモード時に用いられる組電池100への入力電力の許容値Winの大きさと、組電池100からの出力電力の許容値Woutの大きさとを設定する。以下の説明において、たとえば、出力電力の許容値Woutを正値とし、入力電力の許容値Winを負値とする場合を一例として説明する。この場合ECU300は、計算時点における入力電力の許容値Winに所定値を加算することによって入力電力の許容値Winの大きさを小さくする。同様に、ECU300は、計算時点における出力電力の許容値Woutから所定値を減算することによって出力電力の許容値Woutの大きさを小さくする。
以下に、この変形例におけるECU300の動作について図8を用いて説明する。図8は、変形例における満充電容量とΔSOCと入力電力の許容値Winと出力電力の許容値Woutの変化を示すタイミングチャートである。図8の各グラフの縦軸は、上から満充電容量、ΔSOCおよび電力を示す。図8の各グラフの横軸は、いずれも通算使用時間を示す。
組電池100に対する外部充電が完了した後、図8に示すように、時間t(4)にて、車両1の運転が最初に開始されると、セル110のOCVと電流積算量との取得が開始される(S100)。そして、取得されたセル110のOCVと電流積算量とを用いて満充電容量が算出される(S102)。算出された満充電容量がしきい値Aよりも大きいと判定される場合には(S104にてNO)、ΔSOCと入力電力の許容値Winと出力電力の許容値Woutとは変更されない。
図8に示すように、組電池100の通算使用時間が長くなるほど満充電容量は低下していく。そして、時間t(5)にて、算出された満充電容量がしきい値A以下になると判定される場合には(S104にてYES)、CSモード時に用いられるΔSOCが設定されるとともに(S200)、CSモード時に用いられる入力電力の許容値および出力電力の許容値が設定される(S202)。
すなわち、時間t(5)における制御下限値SOC(1)に所定値が加算され、時間t(5)における制御上限値SOC(2)から所定値が減算されることによって縮小したΔSOCが設定される。これにより、ΔSOCの初期値がΔSOC_aとした場合に時間t(5)において初期値ΔSOC_aよりも小さい値がΔSOCとして設定される。
同様に、時間t(5)における入力電力の許容値Win_aに所定値が加算され、時間t(5)における出力電力の許容値Wout_aから所定値が減算される。これにより、入力電力の許容値Winと出力電力の許容値Woutとが初期値よりも大きさの小さい値に設定される。
時間t(5)以降においては、図7のフローチャートに示される処理が繰り返し実行されることによって、ΔSOC、入力電力の許容値Winの大きさおよび出力電力の許容値Woutの大きさは、それぞれの初期値から減少していく。
負極がSi系材料を含む場合には、たとえば、CSモードの選択時等においてヒステリシス大領域内におけるリチウムイオン二次電池の充放電期間が長くなるほど電池の劣化が進行しやすくなり得る。そのため、ヒステリシス大領域における充放電期間が長くなるほどΔSOC、入力電力の許容値Winの大きさおよび出力電力の許容値Woutの大きさを小さくすることにより、SOCの変化が緩やかになり電池の劣化の進行を緩やかにすることができる。その結果、二次電池の寿命の悪化を抑制することができる。
上述の変形例においては、満充電容量がしきい値A以下になる場合にはΔSOC、入力電力の許容値Winの大きさおよび出力電力の許容値Woutの大きさを小さくするものとして説明したが、ΔSOC、入力電力の許容値Winの大きさおよび出力電力の許容値Woutの大きさのうちの少なくともいずれかを小さくするようにすればよい。また、上述の変形例においては、満充電容量がしきい値A以下になる場合にはΔSOC、入力電力の許容値Winの大きさおよび出力電力の許容値Woutの大きさを小さくするものとして説明したが、ΔSOCの一部をヒステリシス小領域に重複するようにΔSOCをヒステリシス小領域側に移動させつつ、ΔSOC、入力電力の許容値Winの大きさおよび出力電力の許容値Woutの大きさのうちの少なくともいずれかを小さくするようにしてもよい。
なお、上記した変形例は、その全部または一部を組み合わせて実施してもよい。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 車両、10,12 モータジェネレータ、14 エンジン、16 動力分割機構、18 CHR、20 充電装置、22 インレット、24 プラグ、26 外部電源、28 駆動輪、40 PCU、50 SMR、100 組電池、110 セル、210 電圧センサ、220 電流センサ、230 温度センサ、300 ECU、301 CPU、302 メモリ。

Claims (2)

  1. Si系材料と炭素材料とを含む負極を備えるリチウムイオン二次電池の充放電を制御する二次電池の充放電制御装置であって、
    前記二次電池の充放電電流を検出する電流検出部と、
    前記充放電電流を制御する制御部とを備え、
    前記制御部は、前記二次電池のSOCに対するOCVとの関係において充放電によるヒステリシスを有する第1SOC領域と、前記第1SOC領域よりも前記ヒステリシスの小さい第2SOC領域とのうちの前記第1SOC領域における充放電期間が長い場合には、前記充放電期間が短い場合よりも前記第1SOC領域における充放電の頻度を低下させる、二次電池の充放電制御装置。
  2. Si系材料と炭素材料とを含む負極を備えるリチウムイオン二次電池の充放電を制御する二次電池の充放電制御装置であって、
    前記二次電池の充放電電流を検出する電流検出部と、
    前記充放電電流を制御する制御部とを備え、
    前記制御部は、前記二次電池のSOCに対するOCVとの関係において充放電によるヒステリシスを有する第1SOC領域と、前記第1SOC領域よりも前記ヒステリシスの小さい第2SOC領域とのうちの前記第1SOC領域における充放電期間が長い場合には、前記充放電期間が短い場合よりも前記第1SOC領域において前記SOCの制御上限値と制御下限値との差、前記二次電池の入力電力の許容値の大きさおよび前記二次電池の出力電力の許容値の大きさのうちの少なくともいずれかを小さくする、二次電池の充放電制御装置。
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