JP6878944B2 - エポキシ樹脂硬化剤、エポキシ樹脂組成物、繊維強化複合材 - Google Patents
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Description
例えば風力発電ブレードは、インフュージョン成形、Va−RTM法(Vacuum Assist Resin Transfer Molding)又はLight−RTM法にて成形されるようになってきた。これらの方法では、例えば、フィルムやFRPを使用した上型と、下型とからなる型内に予め強化繊維を配置し、この金型内を真空引きし、マトリクス樹脂となるエポキシ樹脂組成物を常圧で充填して強化繊維へ含浸させ、次いで、該エポキシ樹脂を硬化させて成形する。
インフュージョン成形やVa−RTM法、Light−RTM法による成形では、その成形法の特徴上、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤とを混合したエポキシ樹脂組成物を金型内へ充填するのに、通常は数十分程度かかる。そのため、これらの成形法に使用されるエポキシ樹脂組成物には低粘度でかつポットライフが長いことが要求される。エポキシ樹脂硬化剤としては、イソホロンジアミン、ポリエーテル骨格のポリアミン化合物等が使用されている。
従来のRTM法は上下一対の金型を使用した密閉型成形の一つであり、該金型内に繊維強化プリフォームを配置し、金型をクランプして密閉した後、注入孔からエポキシ樹脂組成物等の樹脂を金型内に注入して繊維強化プリフォームに含浸させ、次いで該樹脂を硬化させた後、離型するという方法である。しかしながら従来のRTM法では、成形時間(プリフォームの配置、樹脂含浸、樹脂硬化、及び離型まで)に数時間を要するため、自動車構造材用途のFRPの製造では、より生産性の高いハイサイクルRTM法が用いられている。
特許文献4には、(b1)液体エポキシ樹脂、(b2)1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを含む硬化剤、及び(b3)スルホン酸及びスルホン酸イミダゾリウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含む促進剤を含有する樹脂組成物を用いた、繊維強化複合体の製造方法が開示されている。
通常、エポキシ樹脂硬化剤への促進剤の添加量を増やすことで硬化促進効果も向上するが、p−トルエンスルホン酸はポリアミンへの溶解性が低いことから添加量を増やすことができない。そこで例えば特許文献4の実施例(表7)に示されているように、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを基準としたp−トルエンスルホン酸一水和物の配合量が10.0質量%を超える場合は、少量の水を添加してp−トルエンスルホン酸一水和物を溶解させる方法も知られている。
しかしながら強酸性を示す有機スルホン酸系化合物は水の存在下で腐食性を発現することから、有機スルホン酸系化合物と水とを含有するエポキシ樹脂硬化剤を用いると、ハイサイクルRTM法において製造ラインや金型などを腐食するおそれがある。またハイサイクルRTM法などで、エポキシ樹脂硬化剤及びエポキシ樹脂組成物中の水分に起因してアウトガスが発生すると金型が汚染され、汚染された金型の形状がFRP表面に転写されるなどして、得られるFRPの外観が悪化するおそれもある。特に外観が重要視される自動車構造材や建材等の用途においては、上記のような金型汚染による外観性の悪化や生産性の低下も問題となる。また、アウトガスはFRPのボイドや欠陥の要因ともなり得る。
[1]環構造を有するポリアミン(A)及びアルカンスルホン酸(B)を含有するエポキシ樹脂硬化剤であって、前記ポリアミン(A)100質量部に対する前記アルカンスルホン酸(B)の含有量が1〜25質量部であるエポキシ樹脂硬化剤。
[2]前記ポリアミン(A)が下記一般式(1)で示されるジアミンである、上記[1]に記載のエポキシ樹脂硬化剤。
R1HN−(H2C)a−A−(CH2)b−NHR2 (1)
(式(1)中、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜6のアミノアルキル基である。a、bはそれぞれ独立に0又は1の数である。Aは炭素数5〜20の2価の環状脂肪族基又は炭素数6〜20のアリーレン基である。)
[3]前記一般式(1)において、R1及びR2が共に水素原子である、上記[2]に記載のエポキシ樹脂硬化剤。
[4]前記一般式(1)において、a=b=1であり、Aがシクロヘキシレン基である、上記[2]又は[3]に記載のエポキシ樹脂硬化剤。
[5]前記アルカンスルホン酸(B)が炭素数1〜18のアルカンスルホン酸である、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂硬化剤。
[6]前記アルカンスルホン酸(B)がメタンスルホン酸である、上記[5]に記載のエポキシ樹脂硬化剤。
[7]水の含有量が0.8質量%以下である、上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂硬化剤。
[8]上記[1]〜[7]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂硬化剤と、エポキシ樹脂とを含有するエポキシ樹脂組成物。
[9]前記エポキシ樹脂が分子内に芳香環又は脂環式構造を含むエポキシ樹脂である、上記[8]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[10]前記エポキシ樹脂が下記一般式(2)で示されるエポキシ樹脂である、上記[9]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[11]温度40℃における粘度が750mPa・s以下である、上記[8]〜[10]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
[12]繊維強化複合材用である、上記[8]〜[11]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
[13]上記[8]〜[12]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物と、強化繊維とを含む繊維強化複合材。
[14]強化繊維が炭素繊維である、上記[13]に記載の繊維強化複合材。
[15]自動車用構造材である、上記[13]又は[14]に記載の繊維強化複合材。
[16]低圧RTM法、中圧RTM法、高圧RTM法、コンプレッションRTM法、リキッドコンプレッションモールディング法、リキッドレイダウン法、スプレーレイダウン法、サーフェイスRTM法、プリプレグコンプレッションモールディング法又はリキッドキャストモールディング法により成形する工程を有する、上記[13]〜[15]のいずれか1項に記載の繊維強化複合材の製造方法。
本発明のエポキシ樹脂硬化剤は、環構造を有するポリアミン(A)及びアルカンスルホン酸(B)を含有するエポキシ樹脂硬化剤であって、前記ポリアミン(A)100質量部に対する前記アルカンスルホン酸(B)の含有量が1〜25質量部であることを特徴とする。
硬化剤成分である環構造を有するポリアミン(A)に上記所定量のアルカンスルホン酸(B)を配合したエポキシ樹脂硬化剤は、低粘度を維持しつつ優れた速硬化性を発現する。またアルカンスルホン酸は環構造を有するポリアミンに対しても溶解性が比較的高いことから、水を添加せずにその配合量を多くすることも可能である。そのため本発明のエポキシ樹脂硬化剤はハイサイクルRTM法などに使用した場合にも製造ラインや金型などを腐食するおそれもなく、成形過程でのアウトガス発生に起因するボイドや欠陥の発生、外観悪化のおそれもない。
環構造を有するポリアミン(A)(以下、単に「ポリアミン(A)」ともいう)は、分子内に少なくとも1つの環構造と少なくとも2つのアミノ基とを有する化合物である。
環構造の環員炭素数は、ポリアミン(A)が室温で液体であることが望ましいという点で、好ましくは5〜20、より好ましくは5〜12、さらに好ましくは5〜10、よりさらに好ましくは5〜8である。
環構造としては、脂環構造及び芳香環を挙げることができる。
脂環構造とは脂環式炭化水素から誘導される環構造を意味する。当該脂環構造は飽和であっても不飽和であってもよく、単環であっても多環であってもよい。また、当該脂環構造は置換基を有していてもよい。当該置換基としては例えば、炭素数1〜8のアルキル基、水酸基、炭素数1〜8のアルコキシ基等が挙げられる。
当該脂環構造としては、シクロアルカン環、シクロアルケン環、ビシクロアルカン環、ビシクロアルケン環、及びトリシクロアルカン環等が例示されるが、これらに限定されるわけではない。これらの中でも、好ましくはシクロアルカン環、より好ましくは炭素数5〜8のシクロアルカン環、さらに好ましくはシクロヘキサン環である。
芳香環は単環でも縮合環でもよく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、及びテトラセン環が例示されるが、これらに限定されるわけではない。これらの中でも、好ましくはベンゼン環及びナフタレン環からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはベンゼン環である。
R1HN−(H2C)a−A−(CH2)b−NHR2 (1)
(式(1)中、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜6のアミノアルキル基である。a、bはそれぞれ独立に0又は1の数である。Aは炭素数5〜20の2価の環状脂肪族基又は炭素数6〜20のアリーレン基である。)
a、bはそれぞれ独立に0又は1の数であり、a=b=1であることが好ましい。
炭素数5〜20の2価の環状脂肪族基は飽和又は不飽和のいずれでもよいが、飽和環状脂肪族基であることが好ましい。2価の環状脂肪族基の炭素数は、好ましくは5〜12、より好ましくは5〜10、さらに好ましくは5〜8、よりさらに好ましくは6である。
炭素数5〜20の2価の環状脂肪族基としては例えば、シクロペンチレン基、シクロペンテニレン基、シクロへキシレン基、シクロへキセニレン基、シクロへプチレン基、シクロへプテニレン基、シクロオクチレン基、シクロオクテニレン基、シクロデカニレン基、シクロデセニレン基、シクロドデカニレン基、シクロドデセニレン基、メチルシクロへキシレン基、ジメチルシクロへキシレン基、トリメチルシクロへキシレン基、tert−ブチルシクロヘキシレン基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチレン基、ビシクロ[2.2.1]ヘプテニレン基、アダマンチレン基、及びトリシクロ[5.2.1.02,6]デカニレン基等が挙げられる。これらの中でも、シクロへキシレン基、トリメチルシクロへキシレン基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチレン基、ビシクロ[2.2.1]ヘプテニレン基、アダマンチレン基、及びトリシクロ[5.2.1.02,6]デカニレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、シクロへキシレン基がより好ましい。
なお本明細書におけるシクロヘキシレン基には、シス体、トランス体のいずれも含まれる。Aがシクロヘキシレン基である場合、シス体、トランス体の含有比率は任意であるが、シス体及びトランス体の両方を含む場合、凝固点降下により、冬場などの低温環境下でも液体として取り扱うことができることから、シス体/トランス体の含有比率は、好ましくは99/1〜1/99、より好ましくは95/5〜30/70、さらに好ましくは90/10〜50/50、よりさらに好ましくは85/15〜60/40である。
上記の中でも、ポリアミン(A)としては、1,2−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、o−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン(MXDA)、p−キシリレンジアミン(PXDA)、前記一般式(1−1)で示される化合物、及び前記一般式(1−2)で示される化合物からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、1,2−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、o−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、及びp−キシリレンジアミンからなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、耐熱性及び耐候性の観点からは1,2−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、及び1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンからなる群から選ばれる1種以上がさらに好ましく、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンがよりさらに好ましい。ポリアミン(A)は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のエポキシ樹脂硬化剤は、所定量のアルカンスルホン酸(B)を含有する。これにより、低粘度と速硬化性とを両立したエポキシ樹脂硬化剤及びエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
前記(A)成分単独でもエポキシ樹脂硬化剤として機能するが、アルカンスルホン酸(B)は前記(A)成分の硬化促進剤として作用するため、アルカンスルホン酸(B)を配合することでより速硬化性を有するエポキシ樹脂硬化剤が得られる。またアルカンスルホン酸は(A)成分に対しても溶解性が比較的高いことから、水を添加せずにその配合量を多くすることも可能である。そのため本発明のエポキシ樹脂硬化剤はハイサイクルRTM法などに使用した場合にも製造ラインや金型などを腐食するおそれもなく、成形過程でのアウトガス発生に起因するボイドや欠陥の発生、外観悪化のおそれもない。
アルカンスルホン酸(B)は速硬化性を発現する観点から炭素数1〜18のアルカンスルホン酸が好ましく、その炭素数は、より好ましくは1〜12、さらに好ましくは1〜8、よりさらに好ましくは1〜4、よりさらに好ましくは1又は2である。
アルカンスルホン酸(B)としては例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、オクタンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸、テトラデカンスルホン酸、ヘキサデカンスルホン酸、及びオクタデカンスルホン酸からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中でも、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、オクタンスルホン酸、デカンスルホン酸、及びドデカンスルホン酸からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、及びオクタンスルホン酸からなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、及びブタンスルホン酸からなる群から選ばれる1種以上がさらに好ましく、メタンスルホン酸及びエタンスルホン酸からなる群から選ばれる1種以上がよりさらに好ましく、メタンスルホン酸がよりさらに好ましい。
アルカンスルホン酸(B)は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
エポキシ樹脂硬化剤中のアルカンスルホン酸(B)の含有量は、速硬化性の観点から、前記(A)成分100質量部に対し、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは8質量部以上である。また、得られるエポキシ樹脂組成物の硬化物の耐熱性低下を抑制する観点からは、好ましくは22質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下である。
当該水の含有量は、より好ましくは2.0質量%未満、さらに好ましくは1.0質量%未満、よりさらに好ましくは0.8質量%以下、よりさらに好ましくは0.7質量%以下、よりさらに好ましくは0.6質量%以下、よりさらに好ましくは0.5質量%以下、よりさらに好ましくは0.4質量%以下、よりさらに好ましくは0.3質量%以下、よりさらに好ましくは0.2質量%以下、よりさらに好ましくは0.15質量%以下、よりさらに好ましくは0.1質量%以下である。当該水の含有量の下限値は0質量%であり、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、さらに好ましくは0.03質量%以上、よりさらに好ましくは0.04質量%以上、よりさらに好ましくは0.05質量%以上である。エポキシ樹脂硬化剤中の水の含有量は、実施例に記載の方法で求めることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂硬化剤とエポキシ樹脂とを含有するものである。
エポキシ樹脂としては、本発明のエポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素と反応するグリシジル基を持つエポキシ樹脂であればいずれも使用することができるが、硬化物の機械的強度に優れる観点からは、分子内に芳香環又は脂環式構造を含むエポキシ樹脂であることが好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂がさらに好ましい。中でも、低粘度でかつ硬化物の機械的強度を確保できる観点から下記一般式(2)で示されるエポキシ樹脂が特に好ましい。
R21〜R24は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、及びt−ブチル基からなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
p、q、r、及びsはいずれも0〜2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、すべて0であることがさらに好ましい。
Y1及びY2は−CH2−、又は−C(CH3)2−であることが好ましく、−C(CH3)2−であることがより好ましい。
また、低粘度でかつ硬化物の機械的強度を確保できる観点から、mは0〜0.15であることが好ましく、0.01〜0.1であることがより好ましい。
エポキシ樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物の温度40℃における粘度は、好ましくは750mPa・s以下、より好ましくは600mPa・s以下、さらに好ましくは500mPa・s以下、よりさらに好ましくは350mPa・s以下、よりさらに好ましくは300mPa・s以下である。温度40℃における粘度が750mPa・s以下であると、FRP用途に用いた際には生産性が向上する。エポキシ樹脂組成物の温度40℃における粘度の下限値には特に制限はないが、FRPの成形において、レイノルズ数の上昇により金型内で乱流が生じて強化繊維に乱れが生じることを抑制する点から、好ましくは150mPa・s以上である。
上記ゲル化時間はレオメーターを用いて、実施例に記載の方法で測定できる。具体的には、レオメーターを用いて温度80℃、周波数1Hz、プレート間距離0.5mmでエポキシ樹脂組成物の貯蔵弾性率G’、損失弾性率G’’を測定し、G’とG’’とが交差する点をゲル化時間とする。
本発明の繊維強化複合材(FRP)は、前記エポキシ樹脂組成物の硬化物と、強化繊維とを含むものであり、強化繊維に前記エポキシ樹脂組成物を含浸させた後、該組成物を硬化させることにより得ることができる。
強化繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維及び金属繊維などが挙げられる。強化繊維は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、得られる複合材の強度及び軽量性の観点からは炭素繊維が好ましい。すなわち本発明の繊維強化複合材は、好ましくは前記エポキシ樹脂組成物の硬化物と、炭素繊維とを含む炭素繊維強化複合材(CFRP)である。
本発明の繊維強化複合材の製造方法には特に制限はないが、本発明のエポキシ樹脂硬化剤及びエポキシ樹脂組成物は速硬化性であるため、エポキシ樹脂硬化剤と、エポキシ樹脂とを成形の直前に混合した後、好ましくは10分以内、より好ましくは5分以内に、強化繊維への含浸及び硬化を行うことが好ましい。
この観点から、本発明の繊維強化複合材の製造方法は、低圧RTM法、中圧RTM法、高圧RTM法、コンプレッションRTM法、リキッドコンプレッションモールディング法、リキッドレイダウン法、スプレーレイダウン法、サーフェイスRTM法、プリプレグコンプレッションモールディング法又はリキッドキャストモールディング法により成形する工程を有することが好ましい。これらの成形法の中でも、ハイサイクルRTM法に適用する観点から、低圧RTM法、中圧RTM法、又は高圧RTM法が好ましく、中圧RTM法又は高圧RTM法がより好ましく、成形速度の観点からは高圧RTM法がさらに好ましい。
なお本明細書において、低圧RTM法における「低圧」とは、エポキシ樹脂組成物の主剤であるエポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤とを圧送して混合する際の圧送時の圧力が0.5MPa未満であることをいう。同様に、中圧RTM法における「中圧」とは上記圧力が0.5MPa以上、7MPa未満、高圧RTM法における「高圧」とは上記圧力が7MPa以上、20MPa以下であるものを指す。
上記成形法では、本発明のエポキシ樹脂硬化剤と、エポキシ樹脂とを成形の直前に混合して使用することが可能であるため、該エポキシ樹脂組成物のポットライフはそれほど必要とされない。また、当該エポキシ樹脂組成物は速硬化性でかつ低粘度であるため、金型内への充填及び強化繊維への含浸が速く、速やかに硬化するため、成形時間を大幅に短縮できる。したがって本発明のエポキシ樹脂硬化剤及びエポキシ樹脂組成物は、上記成形法に特に好適である。また、上記成形法を用いることにより、本発明のエポキシ樹脂硬化剤及びエポキシ樹脂組成物を適用して、自動車用構造材や建材用などの中〜大型のFRPを生産性よく製造することができる。
中圧RTM法では、エポキシ樹脂組成物の主剤であるエポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤とを混合する装置としてスタティックミキサーを使用することが好ましい。スタティックミキサーは、多数のミキシングエレメントからなる静止型混合器を1個以上組み込んだ管型反応器である。例えば、エポキシ樹脂組成物の主剤であるエポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤とを別々のタンクに充填し、それぞれをスタティックミキサーに送液する。スタティックミキサーのねじれたエレメントに主剤と硬化剤の2液を通すことで、分割・転換・反転等の作用より2液が混合される。このようにして調製したエポキシ樹脂組成物を金型内に注入して強化繊維に含浸させ、次いで、エポキシ樹脂を硬化させる。中圧RTM法は、金型内にエポキシ樹脂組成物を圧送できること、及び、装置コストの観点で有利である。
エポキシ樹脂組成物の強化繊維への含浸時間は、成形性及び生産性の観点から、好ましくは0.1〜15分、より好ましくは0.2〜10分、さらに好ましくは0.5〜5分である。
カールフィッシャー水分計「MKH−700」(京都電子工業株式会社製)を用いて各例のエポキシ樹脂硬化剤の原料として用いたポリアミン及び硬化促進剤中の水の含有量を測定した。当該測定値からエポキシ硬化剤中の水の含有量を算出した。
E型粘度計「TVE−22H型粘度計 コーンプレートタイプ」(東機産業(株)製)を用いて、エポキシ樹脂硬化剤及びエポキシ樹脂組成物の粘度を測定した。エポキシ樹脂硬化剤は25℃、エポキシ樹脂組成物は40℃にてそれぞれ測定を実施した。粘度が低いほど、成形時の充填性が高く成形性が良好であることを示す。
エポキシ樹脂硬化剤を目視観察して、硬化促進剤の溶解性を評価した。硬化促進剤の溶け残りなどがなく、エポキシ樹脂硬化剤が透明であるものを「良好」、硬化促進剤の溶け残りがあり、エポキシ樹脂硬化剤に曇りが見られるものを「不良」と判定した。
レオメーター「ARES−G2」(TAインスツルメント製)を用いて評価を行った。80℃に加温したアルミプレート間にエポキシ樹脂組成物を充填し、温度80℃、周波数1Hz、プレート間距離0.5mmで貯蔵弾性率G’、損失弾性率G’’を測定して、G’とG’’とが交差する点をゲル化時間とした。ゲル化時間が短いほど速硬化性であることを示す。
ポリアミン(A)である1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3−BAC、三菱瓦斯化学(株)製、シス/トランス比=77/23、水分含有量0.017質量%)100gに対し、アルカンスルホン酸(B)としてメタンスルホン酸(関東化学(株)製、水分含有量0.60質量%)を3g配合して混合し、エポキシ樹脂硬化剤を得た。
さらに、このエポキシ樹脂硬化剤と、主剤であるビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(「jER825」、三菱化学(株)製)とを、エポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数と、主剤であるエポキシ樹脂中のエポキシ基数とが等モルとなるよう配合して混合し、エポキシ樹脂組成物を調製した。
得られたエポキシ樹脂硬化剤及びエポキシ樹脂組成物について、前述の方法で評価を行った。結果を表1に示す。なお、エポキシ樹脂jER825は下記構造式で示され、エポキシ当量は175g/当量、m=0.035である。
実施例1においてエポキシ樹脂硬化剤中のメタンスルホン酸の含有量を表1に示す量に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂硬化剤及びエポキシ樹脂組成物を調製し、前述の方法で評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1においてメタンスルホン酸を配合しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂組成物を調製し、前述の方法で評価を行った。結果を表1に示す。
実施例3においてメタンスルホン酸をp−トルエンスルホン酸一水和物(関東化学(株)製、水分含有量10.1質量%(水和水分を含む))に変更したこと以外は、実施例3と同様の方法でエポキシ樹脂硬化剤及びエポキシ樹脂組成物を調製し、前述の方法で評価を行った。結果を表1に示す。
これに対し、ポリアミン(A)に対しアルカンスルホン酸を配合しなかった比較例1のエポキシ樹脂硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物はゲル化時間が長く、硬化速度が低下した。アルカンスルホン酸に代えてp−トルエンスルホン酸一水和物を配合した比較例2のエポキシ樹脂硬化剤は、同量のメタンスルホン酸を配合した実施例3の硬化剤と比較して硬化速度が遅く、さらに、p−トルエンスルホン酸一水和物の溶解性が低く溶け残りが生じた。また、比較例2のエポキシ樹脂硬化剤は必然的に水和水を含むため、実施例のエポキシ樹脂硬化剤と比較して、製造ラインや金型などを腐食するおそれや、アウトガス発生によるボイドや欠陥の発生、外観不良が生じるおそれがある。
Claims (14)
- 環構造を有するポリアミン(A)及びアルカンスルホン酸(B)を含有するエポキシ樹脂硬化剤であって、前記ポリアミン(A)が下記一般式(1)で示されるジアミンであり、前記ポリアミン(A)100質量部に対する前記アルカンスルホン酸(B)の含有量が1〜25質量部であるエポキシ樹脂硬化剤。
R 1 HN−(H 2 C) a −A−(CH 2 ) b −NHR 2 (1)
(式(1)中、R 1 及びR 2 は共に水素原子である。a、bはそれぞれ独立に0又は1の数である。Aは炭素数5〜20の2価の環状脂肪族基又は炭素数6〜20のアリーレン基である。) - 前記一般式(1)において、a=b=1であり、Aがシクロヘキシレン基である、請求項1に記載のエポキシ樹脂硬化剤。
- 前記アルカンスルホン酸(B)が炭素数1〜18のアルカンスルホン酸である、請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂硬化剤。
- 前記アルカンスルホン酸(B)がメタンスルホン酸である、請求項3に記載のエポキシ樹脂硬化剤。
- 水の含有量が0.8質量%以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂硬化剤。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂硬化剤と、エポキシ樹脂とを含有するエポキシ樹脂組成物。
- 前記エポキシ樹脂が分子内に芳香環又は脂環式構造を含むエポキシ樹脂である、請求項6に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 温度40℃における粘度が750mPa・s以下である、請求項6〜8のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 繊維強化複合材用である、請求項6〜9のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 請求項6〜10のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物と、強化繊維とを含む繊維強化複合材。
- 強化繊維が炭素繊維である、請求項11に記載の繊維強化複合材。
- 自動車用構造材である、請求項11又は12に記載の繊維強化複合材。
- 低圧RTM法、中圧RTM法、高圧RTM法、コンプレッションRTM法、リキッドコンプレッションモールディング法、リキッドレイダウン法、スプレーレイダウン法、サーフェイスRTM法、プリプレグコンプレッションモールディング法又はリキッドキャストモールディング法により成形する工程を有する、請求項11〜13のいずれか1項に記載の繊維強化複合材の製造方法。
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