JP6878784B2 - 高分子アクチュエータ素子および高分子アクチュエータ装置並びにそれらの製造方法 - Google Patents

高分子アクチュエータ素子および高分子アクチュエータ装置並びにそれらの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、絶縁膜を備える高分子アクチュエータ素子およびその製造方法に関する。
従来、ポリマーおよびイオン液体を含む電解質層と、電解質層を挟んで互いに対向する2つの電極層とを備える高分子アクチュエータ素子が提案されている。2つの電極層の間に電位差が発生すると、イオン液体に含まれる陽イオンがマイナス側の電極層に移動し、陰イオンがプラス側の電極層に移動する。そして、各電極層は、入り込んだイオンの量に応じて膨張する。これにより、高分子アクチュエータ素子が変形させられる。
ここで、高分子アクチュエータ素子には、電解質として水を用いているタイプとそうでないタイプのものがある。水を用いたタイプの高分子アクチュエータ素子では、電解質の水が蒸発すると動作しなくなるため、水分の蒸発を防ぐために高分子アクチュエータ素子全体を被覆した封止構造をとる必要がある。また、電解質として水を用いていないタイプの高分子アクチュエータ素子では、結露や高湿度などによる悪影響を低減するために、上記と同様の封止構造を必要とする場合があった。このような封止構造を有する高分子アクチュエータ素子の例としては、例えば特許文献1に記載のものが挙げられる。
特許文献1の高分子アクチュエータ素子は、電解質層と、電解質層を挟んで互いに対向する2つの電極層と、電解質層および2つの電極層を被覆する封止樹脂層と、封止樹脂層を被覆する酸化シリコン膜とを有する。封止樹脂層を酸化シリコン膜で被覆する封止構造とすることにより、電解質として水を用いた場合には、この水が蒸発することを防ぐことができる一方、電解質として水を用いない場合であっても、結露等の外気による水分の影響を低減できる。すなわち、酸化シリコン膜を含んだ封止構造をとることにより、水分による悪影響の低い高分子アクチュエータ素子となる。
特開2015−226402号公報
ここで、高分子アクチュエータ素子は、2つの電極層に給電するための電極取出部を有する固定治具で固定され、2つの電極層に電位差を発生させることにより、高分子アクチュエータ素子を駆動するのが一般的である。つまり、高分子アクチュエータ素子には、固定治具より変形が制限された領域と自由に変形できる領域の2つの領域が存在し、これらの領域の間に境界部が存在する。
しかしながら、特許文献1の高分子アクチュエータ素子に用いられる酸化シリコン膜等の薄膜は、柔軟性に乏しく割れやすい。そのため、連続的に屈曲と伸展を繰り返し行うと、変形が制限された領域と自由に変形できる領域の境界部においては、酸化シリコン膜のような硬い膜にクラックが生じ得る。クラックが生じた場合には、混入した異物との接触や動作中における他の素子との接触などによって、短絡の不具合が発生する。加えて、固定治具と高分子アクチュエータとの間には異物が混入しやすく、この箇所では異物混入による短絡が発生しやすい。
また、封止樹脂層を厚くすることで高分子アクチュエータの変位量を抑えると絶縁膜のクラックは抑制されるが、封止樹脂層の厚みが高分子アクチュエータ素子の屈曲動作の妨げとなり、十分な屈曲性能を発揮することが難しくなる。
本発明は、上記の点を鑑みてなされたものであり、クラックを抑制しつつ、屈曲性能を高くできる高分子アクチュエータ素子およびその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、クラックを抑制しつつ、屈曲性能を高くできる高分子アクチュエータ素子を複数備える高分子アクチュエータ装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の高分子アクチュエータ素子は、イオン性液体(10a)とポリマー(10b)とを含み、一面と他面とが裏表の関係にある板状の電解質層(10)と、一面に配置された第1電極層(11)と、他面に配置された第2電極層(12)と、を含む高分子アクチュエータ(20)と、高分子アクチュエータの端部であって、第1電極層と第2電極層とが向き合う方向に沿って設けられ、第1電極層の上および第2電極層の上にそれぞれ配置された2つの電極取出部(30)と、2つの電極取出部を介して高分子アクチュエータの端部を挟むように配置された固定治具(31)と、第1電極層、第2電極層および固定治具の少なくとも一部を覆うように配置された絶縁性粒子(40a)のみからなる絶縁膜(40)と、を備える。このような構成において、固定治具は、電極取出部のうち高分子アクチュエータと反対側の面を覆っており、絶縁膜は、高分子アクチュエータのうち固定治具により挟まれた部分と前固定治具からはみ出す部分との境界を境界部(20a)として、第1電極層、第2電極層および固定治具のうち少なくとも前記境界部を含む領域を覆っている。
このように、高分子アクチュエータを粒子からなる絶縁膜で第1電極層、第2電極層および固定治具のうち少なくとも境界部を含む領域を覆うことで、屈曲動作による絶縁膜のクラック発生およびこれによる動作中の短絡発生を抑制できる。また、粒子からなる絶縁膜であることから、屈曲および伸展の動作において絶縁膜がその妨げとなりにくい。そのため、クラックを抑制しつつ、屈曲性能の高い高分子アクチュエータとできる。
請求項に記載の高分子アクチュエータ装置は、請求項1ないしのいずれか1つの高分子アクチュエータ素子と、高分子アクチュエータ素子に給電するための給電配線(32)と、を備える。このような構成において、高分子アクチュエータ素子を駆動部として複数有し、給電配線は、高分子アクチュエータ素子のうち電極取出部(30)に接続されている。
このように、複数の高分子アクチュエータ素子を駆動部として複数配置し、給電配線により複数の高分子アクチュエータ素子を駆動することで、高分子アクチュエータを所望の変形をさせることで、風量制御や光反射制御などに使用できる高分子アクチュエータ装置とすることができる。
請求項7に記載の高分子アクチュエータ素子の製造方法は、イオン性液体(10a)とポリマー(10b)とを含み、一面と他面とが裏表の関係にある板状の電解質層(10)と、一面に配置された第1電極層(11)と、他面に配置された第2電極層(12)と、を含む高分子アクチュエータ(20)を用意することと、電極取出部(30)を介して固定治具(31)により高分子アクチュエータを挟むことと、高分子アクチュエータおよび固定治具に絶縁性粒子(40a)のみからなる絶縁膜(40)を形成することと、を含む。そして、絶縁膜を形成することにおいては、高分子アクチュエータのうち固定治具に挟まれた部分と固定治具からはみ出す部分との境界を境界部(20a)とし、高分子アクチュエータおよび固定治具のうち、少なくとも境界部を含む領域に絶縁膜を形成する。
このように、電解質層、2つの電極層を備える高分子アクチュエータを用意し、治具に挟み、絶縁性粒子からなる絶縁膜で覆う工程とすることにより、より簡便に必要な部位へ絶縁膜を形成することができる。このような製造方法により、クラックを抑制しつつ、屈曲性能の高い高分子アクチュエータ素子を製造することができる。
請求項8に記載の高分子アクチュエータ装置の製造方法は、イオン性液体(10a)とポリマー(10b)とを含み、一面と他面とが裏表の関係にある板状の電解質層(10)と、一面に配置された第1電極層(11)と、他面に配置された第2電極層(12)と、を含む高分子アクチュエータ(20)を用意することと、高分子アクチュエータを複数配置することと、電極取出部(30)と給電配線(32)とを介して固定治具(31)により複数の高分子アクチュエータを挟むことと、複数の高分子アクチュエータおよび固定治具に絶縁性粒子(40a)のみからなる絶縁膜(40)を形成することと、を含む。そして、絶縁膜を形成することにおいては、高分子アクチュエータのうち固定治具に挟まれた部分と固定治具からはみ出す部分との境界を境界部(20a)とし、複数の高分子アクチュエータおよび固定治具のうち、少なくとも境界部を含む領域に絶縁膜を形成する。
このように、高分子アクチュエータの電解質層、2つの電極層を形成し、治具に挟み込んだ後に粒子からなる絶縁膜で覆う工程とすることにより、より簡便に必要な部位へ絶縁膜を形成することができる。このような製造方法により、クラックを抑制しつつ、屈曲性能の高い高分子アクチュエータを製造することができる。
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の一例を示すものである。
第1実施形態の高分子アクチュエータ素子の断面図である。 高分子アクチュエータの内部構成の断面図である。 電解質層の内部構成の断面図である。 第1実施形態の高分子アクチュエータ素子の動作を示す図である。 第1実施形態の高分子アクチュエータ素子の屈曲動作を示す図である。 第1実施形態の高分子アクチュエータ素子の固定治具の断面図である。 第2実施形態の風量制御装置を示す斜視図である。 第2実施形態の風量制御装置を分解した場合における各構成部材を示した斜視図である。 第2実施形態の上部固定治具および下部固定治具における電極取出部と給電配線の配置例を示した斜視図である。 第2実施形態の風量制御装置の一部を拡大した斜視図である。 第2実施形態の風量制御装置の水平方向における断面図である。 第2実施形態の風量制御装置の垂直方向における断面図である。 隣り合う高分子アクチュエータ素子の動作中の短絡を示す図である。 第2実施形態の風量制御装置の製造工程を示す図である。 第3実施形態の光反射制御装置を示す斜視図である。 第3実施形態の光反射制御装置の光反射部を示す斜視図である。 第3実施形態の光反射制御装置の光反射部が変形した様子を示す斜視図である。 第3実施形態の光反射制御装置の光反射部に別途反射シートを設けた例を示す斜視図である。 第3実施形態の光反射制御装置の変形例を示す斜視図である。 光反射制御装置の変形例の電極引出部の断面図である。
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
(第1実施形態)
第1実施形態の高分子アクチュエータ素子S1について、図1〜図3を参照して述べる。図2では、図1で示した破線領域Rにおける高分子アクチュエータ20の断面を示している。本実施形態の高分子アクチュエータ素子S1は、例えば小型エアコンの風の流路における風量制御の駆動部などに適用されるものである。
図1に示すように、本実施形態にかかる高分子アクチュエータ素子S1は、電解質層10と、第1電極層11と、第2電極層12とを備える高分子アクチュエータ20と、2つの電極取出部30と、固定治具31と、絶縁膜40とを備えている。
まず、本実施形態の高分子アクチュエータ素子S1の構成要素である高分子アクチュエータ20について説明する。高分子アクチュエータ20は、例えば一面と他面が表裏の関係にある板状に形成され、一面側に第1電極層11が設けられ、他面側に第2電極層12が設けられている。そして、第1電極層11と第2電極層12との間には、電解質層10が設けられている。また、第1電極層11、第2電極層12および電解質層10の厚みについては、例えば200〜300μmであり、高分子アクチュエータ20の厚みについては、例えば1mm程度である。そして、この高分子アクチュエータ20は、第1電極層11と第2電極層12との間に所望の電位差を発生させることで使用される。
図2に示すように、第1電極層11および第2電極層12は、金属微粒子11a、12aが集まって構成されている。具体的には、第1電極層11および第2電極層12は、それぞれ、後述するイオン液体10aとポリマー10bとの混合体10c中に、金属微粒子11a、12aを混合することで構成されている。
金属微粒子11a、12aは、例えば金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)などの金属で構成されている。なお、金属微粒子11a、12aは、導電性があれば、金属酸化物や金属窒化物などの金属化合物で構成されていてもよい。
図2に示すように、金属微粒子11a、12aは、周囲が樹脂層11b、12bによってコーティングされている。樹脂層11b、12bは、例えばポリビニルピロリドンなどの樹脂材料で構成されている。金属微粒子11a、12aが樹脂層11b、12bでコーティングされているため、金属微粒子11a、12aは、凝集することなく、単に互いに近接して集まっている。なお、樹脂層11b、12bは、金属微粒子11a、12aを完全には覆っていない。そのため、金属微粒子11a、12aの電極の構成材料としての機能が維持されている。
また、図2に示すように、第1電極層11および第2電極層12には、金属微粒子11a、12aに加えて、添加剤11c、12cが添加されている。添加剤11c、12cは、本実施形態では、モンモリロナイトで構成されている。添加剤11c、12cを添加することにより、高分子アクチュエータ20の発生力を変えることなく、第1電極層11および第2電極層12のヤング率を高めることが可能となる。これにより、高分子アクチュエータ20に電圧が印加されていないときの剛性を高めることができる。
前述したように、金属微粒子11a、12aは、互いに単に近接した状態で配置されている。このため、金属微粒子11a、12aの間の隙間に混合体10cが形成され、この混合体10c中に後述するイオン液体10aが入り込める状態となっている。
なお、金属微粒子11a、12aの粒径については任意であるが、イオン液体10aがより多く入り込めるように、金属微粒子11a、12aの粒径が1μm以下であることが好ましい。また、第1電極層11および第2電極層12が構成する電極の厚みを効果的に厚くできるように、金属微粒子11a、12aの粒径を20nm以上にすると好ましい。
図3に示すように、電解質層10は、イオン液体10aおよびポリマー10bの混合体10c中に添加剤10dが含まれた構成とされている。
イオン液体10aは、高分子アクチュエータ20の駆動に用いられる物質であり、第1電極層11と第2電極層12との間に電位差が発生したときにポリマー10bと添加剤10dとの間の隙間を移動する移動媒体である。本実施形態では、電解質層10におけるイオン液体10aの体積占有率は、40%以上70%以下とされている。
イオン液体10aとしては、例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアン酸を用いることができる。このようなイオン液体10aは、混合体10c中においてイオン分解された状態で存在し、化学式1で示されるような1−エチル−3−メチルイミダゾリウムにて構成される陽イオンと、化学式2で示されるようなチオシアン酸にて構成される陰イオンとなっている。本実施形態では、イオン液体10aとして1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアン酸を挙げたが、揮発することがない液体であれば材質は問わない。
Figure 0006878784
Figure 0006878784
ポリマー10bは、イオン液体10aの移動を可能とする媒体である。また、ポリマー10bの表面は、負に帯電している。そして、ポリマー10bは、例えば、ポリテトラフルオロエチレンパーフルオロスルホン酸、ポリビリニデンジフルオライド(PVDF)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などのポリマーで構成される。
これらのうち、ポリテトラフルオロエチレンパーフルオロスルホン酸はSO を含むため表面が負に帯電している。一方、PVDF、PMMAは負に帯電していない。しかし、ポリマー10bをPVDF、PMMAで構成した場合であっても、ポリテトラフルオロエチレンパーフルオロスルホン酸のSO に相当する構成をポリマー10bに加えることにより、ポリマー10bの表面を負に帯電させることができる。
添加剤10dは、等電点が7以下の絶縁物であり、本実施形態では、シリカにより構成されている。シリカの等電点が4程度であって、イオン液体10aのpHが7程度であるため、添加剤10dは、電解質層10において負に帯電している。また、添加剤10dは、直径が1μm以上かつ電解質層10の厚み以下とされている。
添加剤10dは、イオン液体10aが移動する経路壁面の負の帯電量を増加させて、陽イオンと陰イオンの両方がマイナス側の電極層に移動する電気浸透流を促進する役割を果たすとともに、第1電極層11と第2電極層12との間の絶縁を保つ役割を果たす。なお、添加剤10dを、等電点がイオン液体10aのpH以下の他の絶縁物で構成してもよい。
イオン液体10a中では、ポリマー10bと添加剤10dとの間に隙間が存在している。そのため、イオン液体10aがポリマー10bと添加剤10dとの間の隙間を通って、マイナス側の電極層へ移動することが可能となっている。
ここで、高分子アクチュエータ20の動作原理について、図4を参照して説明する。図4では、高分子アクチュエータ20のうち第1電極層11や第2電極層12に所定の電圧を印加した場合における高分子アクチュエータ20の動きを示している。
図4に示すように、第1電極層11および第2電極層12に対して電圧を印加していない状態においては、高分子アクチュエータ20は変形することなく平坦な状態となる。
そして、第1電極層11に対して正電圧を印加すると共に第2電極層12を接地電位にすると、ポリマー10bと添加剤10dとの間の隙間を移動経路としてイオン液体10aがマイナス側、すなわち第2電極層12側に移動して、金属微粒子12aの間に入り込む。
イオン液体10aが入り込んだ分、金属微粒子12aの間が広がって第2電極層12が膨張するため、第2電極12側が凸形状、第1電極11側が凹形状となるように高分子アクチュエータ20が変形する。
同様に、第2電極層12に対して正電圧を印加すると共に第1電極層11を接地電位にすると、ポリマー10bと添加剤10dとの間の隙間を移動経路としてイオン液体10aがマイナス側、すなわち第1電極層11側に移動して、金属微粒子11aの間に入り込む。
イオン液体10aが入り込んだ分、金属微粒子11aの間が広がって第1電極層11が膨張するため、第1電極11側が凸形状、第2電極12側が凹形状となるように高分子アクチュエータ20が変形する。このように高分子アクチュエータ20に電圧を印加することにより、高分子アクチュエータ素子S1が屈曲と伸展の動作をする。
次に、電極取出部30および固定治具31について説明する。電極取出部30は、図1に示すように、高分子アクチュエータ20のうち第1電極層11および第2電極層12に接して設けられ、第1電極層11および第2電極層12が向き合う方向に沿って、高分子アクチュエータ20を挟むように対向して配置されている。電極取出部30は、例えばAu、Ag、Cuなどの金属材料で構成されている。
なお、電極取出部30は、導電性の材料であれば他の材料であってもよい。電極取出部30には、図示しない給電用の配線が接続されている。この配線材料は、例えばAu、Ag、Cuなどの金属材料で構成されるが、導電性の材料であれば他の材料により構成されていてもよい。
電極取出部30の面積については、特に制限はないが、後述する固定治具31からはみ出さない程度の大きさに留めることが好ましい。また、電極取出部30は、高分子アクチュエータ20のうち固定治具31により挟まれた部分と高分子アクチュエータ20のうち固定治具31からはみ出す部分との境界を境界部20aとした場合、境界部20aから固定治具31側に向かって離れて配置されるとより好ましい。高分子アクチュエータ20が屈曲の動作を行う際、上記の配置とすることで高分子アクチュエータ20に電極取出部30による余計な負荷がかからなくなり、動作が安定するためである。
具体的には、例えば第1電極層11に正電圧を印加して高分子アクチュエータ20を屈曲させる場合に、電極取出部30が高分子アクチュエータ20の境界部20aを覆うように配置されていると、電極取出部30が第1電極層11に食い込むような形となる。このような負荷がかかる状態で屈曲・伸展の動作が繰り返されると、第1電極層11にクラックなどの欠陥が生じ、第1電極層11に給電できなくなるなどの不具合が発生するおそれがある。しかし、電極取出部30を高分子アクチュエータ20の境界部20aよりも固定治具31側に離れて配置すると、高分子アクチュエータ20が屈曲した状態であっても、第1電極層11は電極取出部30に食い込む前に固定治具31に接触する。つまり、固定治具31によって高分子アクチュエータ20の屈曲が制限される結果、第1電極層11が電極取出部30に食い込まなくなり、上記の不具合を防ぐことでその動作が安定する。これは、第2電極層12についても同様である。
固定治具31は、電極取出部30を介して高分子アクチュエータ20の一部を固定するものであり、例えば絶縁性の樹脂材料などにより構成されている。
次に、絶縁膜40について説明する。絶縁膜40は、絶縁性粒子40aを含み、高分子アクチュエータ20の少なくとも境界部20aおよびこれに近接する部分を覆うように形成されている。高分子アクチュエータ20の第1電極層11および第2電極層12が異物や他の素子などに接触して短絡することを防ぐためである。
具体的には、高分子アクチュエータ20の動作説明で説明したように、高分子アクチュエータ20が屈曲と伸展の動作を繰り返すと、高分子アクチュエータ20のうち自由に屈曲できる領域と固定治具31により屈曲が制限された領域との境界線が生じる。固定治具31のうち高分子アクチュエータ20の自由端部20c側の2つの端面を繋ぐ平面を境界面として、境界面と電解質層10、第1電極層11および第2電極層12とが交差する部分が、図1中に一点鎖線で示した境界部20aとなる。この境界部20a付近の第1電極層11および第2電極層12の屈曲動作による伸縮の差が最も大きく、クラック等の欠陥が生じやすい。このような欠陥が生じた場所に導電性の異物が混入して接触すると、短絡の不具合が発生する。そこで、あらかじめ欠陥が生じやすい場所に絶縁膜40を形成し、導電性の異物などの接触を防ぐことで、上記のような短絡の不具合を抑制できる。
また、絶縁膜40を高分子アクチュエータ素子S1の全面を覆うように形成する場合には、高分子アクチュエータ20の屈曲と伸展の動作に追従できる絶縁膜40を形成する必要がある。具体的には、絶縁膜40の伸縮率が、高分子アクチュエータ20の変位率より高いことが好ましく、特に7.9%以上であるとより好ましい。このような伸縮率の絶縁膜40とすることで、高分子アクチュエータ20の動作による絶縁膜40のクラックを抑制でき、高分子アクチュエータ20の短絡をより効果的に抑制できる。
ここで、絶縁膜40の伸縮率について、図5(a)、(b)を参照して説明する。図5(a)では、第2電極層12に正電圧を印加した際における高分子アクチュエータ20の屈曲と、電位差を発生させていない伸展とを示している。図5(b)では、第1電極層11に正電圧を印加した際における高分子アクチュエータ20の屈曲と、電位差を発生させていない伸展とを示している。また、図5(a)、(b)では、いずれも、屈曲した状態を実線で示し、伸展した状態を破線で示しており、高分子アクチュエータ素子S1のうち高分子アクチュエータ20以外の部分については省略している。
高分子アクチュエータ20において、固定治具31a、31bで挟まれた側の端部20b(以下「固定端部20b」という。)から固定部20bの反対側の端部20c(以下「自由端部20c」という。)までの電位を印加した際の変形を考える。この場合において、電解質層10、第1電極層11および第2電極層12全ての厚みがほぼ同じ高分子アクチュエータ20であるとき、固定端部20bから自由端部20cまでの曲率は、およそ一定のまま変形する。この状態において、固定端部20bにおける端面を含む平面と、自由端部20cにおける端面を含む平面とのなす角が90度になる程度まで変位(以下「90度変位」という。)することが好ましい。変位が小さすぎると、高分子アクチュエータ素子S1の駆動における屈曲の制御範囲が狭くなり、変位が大きすぎると、高分子アクチュエータ20が固定治具31により食い込むことで負荷が大きくなり、高分子アクチュエータ素子S1の消耗が早くなりかねないためである。
ここで、伸縮率とは、動作させていない状態、すなわち伸展状態における第1電極層11の長さL1とし、動作させた状態、すなわち屈曲状態において伸びた第1電極層11の長さL2として、L2がL1に対して伸びた長さのL1に対する割合をいう。なお、以下においては、第1電極層11が伸縮する場合を例に説明するが、第2電極層12についても第1電極層11の考え方と同様である。
具体的には、伸展状態におけるL1を10mm、屈曲状態におけるL2を11mmとした場合、伸びた長さが1mmであるため、伸縮率については(11−10)÷10×100=10%となる。
より具体的に説明すると、伸展した状態における高分子アクチュエータ20の固定端部20bから自由端部20cまでの第1電極層11の長さL1を10mm、高分子アクチュエータ20の厚みを1mmとする。そして、図5(a)のように、第1電極層11に正電圧を印加して曲率一定で90度変位した状態を考える。
この場合、固定端部20bの厚み方向の中心部と自由端部20cの厚み方向の中心部とを、高分子アクチュエータ20の変形に沿って曲率一定の状態で繋げた線の長さL3が10mmとなる。このとき、曲率が一定であることからL3の部分は、半径R1の円の円周の1/4と考えることができる。また、この際の伸びた第1電極層11の長さL2は、半径R1に高分子アクチュエータ20の厚みの半分である0.5mmを足した半径R2、すなわち半径R2=R1+0.5mmの円の円周の1/4と考えることができる。これを計算すると、R1が6.36mm、R2が6.86mm、L3が10.79mmとなる。つまり、この場合の第1電極層11の伸縮率は、(10.79−10)÷10×100=7.9%となる。これは、図5(b)に示すように、高分子アクチュエータ20を90度変位した場合における第2電極層12の伸縮率についても同様である。
よって、高分子アクチュエータ素子S1を曲率一定で90度変位させた場合には、7.9%以上の伸縮率の絶縁膜40であれば、高分子アクチュエータ20の屈曲と伸展によるクラックを抑えることができることになる。特に、高分子アクチュエータ素子S1の全面に絶縁膜40を形成する場合に、このように絶縁膜40の伸縮率を調整するとよい。
なお、絶縁膜40を高分子アクチュエータ20と電極取出部30との接触部位以外の全面に形成してもよいが、図1に示すように、例えば絶縁膜40を高分子アクチュエータ20、固定治具31のうち境界部20a付近の領域に部分的に形成するほうが好ましい。短絡を抑制できる効果の高い位置に絶縁膜40が形成されていればよく、絶縁膜40を形成する部位が少ないほど屈曲性能の高い高分子アクチュエータ20となり、動作時の消費電力を少なくできるからである。また、境界部20a付近に絶縁膜40を形成したほうがよい理由については、混入したゴミ等の異物が最も溜まりやすく、これによる短絡が最も発生しやすい位置が境界部20a付近であり、境界部20a付近に絶縁膜40を形成することが最も短絡抑制に効果が高いからである。
絶縁膜40を後述する絶縁性粒子40aにより構成するのは、粒子によって構成された膜では粒子同士の境界が存在することにより、高分子アクチュエータ20の動作に追従しやすく、クラックが発生しにくいためである。
なお、ここでの絶縁膜40とは、絶縁性粒子40aを含み、絶縁性粒子40a同士の境界を有するように形成された絶縁膜を意味する。すなわち、絶縁膜40における絶縁性粒子40aについては、下地が露出しないように被覆した状態であってもよく、下地が部分的に露出するように点在する状態であってもよい。また、絶縁膜40は、絶縁性粒子40a以外の樹脂材料や金属酸化物などの絶縁性材料を含んで構成されていてもよいし、絶縁性粒子40aのみで構成されていてもよい。
絶縁性粒子40aは、例えばシリカ、絶縁性樹脂などの公知の絶縁性材料により構成されている。絶縁性粒子40aの粒径については、特に制限はないが、10〜1000μmであることが好ましい。粒径10μm未満の絶縁性粒子40aを使用すると、高分子アクチュエータ20の一面または他面に対して垂直な面、すなわち側面に導電性の異物が付着した場合、絶縁性粒子40aが小さすぎて第1電極層11と第2電極層12との短絡を防ぐことができなくなる。一方、粒径1000μmを超える絶縁性粒子40aを使用すると、このような絶縁性粒子40aの大きさや重さが高分子アクチュエータ20の動きを阻害してしまい、高分子アクチュエータ20の屈曲性能を低下させてしまう。
絶縁性粒子40aは、形状に特に制限はなく、例えば球状、四角柱状や三角錐状など様々な形状であってもよい。電解質層10で説明したようにイオン液体10aを揮発しない液体を使用することで、絶縁性粒子40aを高分子アクチュエータ20からのイオン液体10aの揮発を抑制しやすい絶縁膜40が形成しやすい形状に限定する必要がなくなるからである。
次に、高分子アクチュエータ素子S1の製造方法について説明する。
このように構成される高分子アクチュエータ20は、例えば次のようにして製造される。
まず、イオン液体10aおよびポリマー10bの混合体10cに金属微粒子11aを混合した液体を平坦面の上にキャストし、平坦な膜状となるようにする。そして、例えば60℃程度の温度で溶媒を揮発させる。これにより第1電極層11が形成される。
次に、第1電極層11の上に、混合体10cを含む液体をキャストし、平坦な膜状となるようにする。本実施形態では、第1電極層11の上に、イオン液体10aおよびポリマー10bの混合体10c中に添加剤10dを混合した液体をキャストする。そして、例えば60℃程度の温度で、第1電極層11の上にキャストされた液体の溶媒を揮発させる。これにより、第1電極層11と電解質層10が積層された構造が形成される。
このとき、電解質層10におけるイオン液体10aの体積占有率が40%以上70%以下となるように、混合するイオン液体10aの量を調整する。また、ポリマー10bと添加剤10dとの間にイオン液体10aの移動経路を形成するために、第1電極層11の上にキャストされた液体を攪拌する。このとき、超音波分散機を用いた攪拌や、長時間の攪拌を行わず、例えば回転式の攪拌機を用いた5分程度の攪拌にとどめ、添加剤10dとイオン液体10aとが、例えば顕微鏡観察で識別できる程度に分けられた状態を保つ。
さらに、電解質層10の上に、イオン液体10aおよびポリマー10bの混合体10cに金属微粒子12aを混合した液体をキャストし、平坦な膜状となるようにする。そして、例えば60℃程度の温度で、電解質層10の上にキャストされた液体の溶媒を揮発させる。これにより、第1電極層11と電解質層10の上に第2電極層12が積層された構造が形成される。このようにして、本実施形態の高分子アクチュエータ素子S1の構成要素である高分子アクチュエータ20が製造される。
次に、電極取出部30を備える固定治具31を用意する。電極取出部30については、例えば金属ワイヤや金属テープなどによりなる配線を固定治具31に取り付けることで形成することができる。取り付けについては、例えば固定治具31に図示しない溝を形成し、この溝に金属ワイヤなどをはめ込む方法などが挙げられる。
また、電解質層10のうち電極取出部30で挟まれる部分については、電解質層10の他の部分よりも厚くしてもよい。これにより、電極取出部30により挟まれた後であっても、当該挟まれる部分における第1電極層11と第2電極層12との間を広くすることができ、当該挟まれる部分における短絡の発生を抑制できる。
なお、電極取出部30を固定治具31に形成する方法については、特に制限はなく、上記以外にも蒸着やスパッタなどにより薄膜として形成するなどの他の方法であってもよい。
固定治具31については、樹脂材料を用いて成形する場合には、例えば射出成形などにより所望の形とすることができる。また、固定治具31には、既に所望の形に成形された樹脂部材を用いてもよい。さらに、固定治具31は、図1の上下方向の上側と下側でそれぞれ分離された2部材で構成されていてもよいし、上下が一体として構成されていてもよい。
固定治具31に設けられる電極取出部30や給電配線などについては、上記のように形成してもよいし、射出成型等で電極取出部30等と一体的に形成してもよい。また、既に電極取出部30や給電配線などを備えた固定治具31を用いてもよい。
次に、高分子アクチュエータ20の一部を電極取出部30を備えた固定治具31で挟んで固定する。具体的には、例えば固定治具31に上側と下側の2つを有するものを用いる場合、高分子アクチュエータ20、固定治具31を固定して挟むための第1型と第2型からなる成形型を用意する。そして、例えば上側の固定治具31を第1型、下側の固定治具31および高分子アクチュエータ20を第2型に配置する(以下、それぞれ「上部固定治具31a」、「下部固定治具31b」という。)。そして、第1型と第2型とを押圧することで高分子アクチュエータ20を固定治具31に固定する。上部固定治具31aと下部固定治具31bとの固定については、高分子アクチュエータ20が外れないように固定される方法であれば特に制限はなく、様々な方法を取ることができる。例えばピンやクリップなどの留め具となる部位を設けてこれらをかみ合わせるも方法であってもよいし、熱で固定治具31を部分的に溶融して接合する方法であってもよいし、接合剤を用いる方法であってもよい。
次に、固定治具31および高分子アクチュエータ20に絶縁膜40を形成する。具体的には、固定治具31に固定された高分子アクチュエータ20に、例えば絶縁性粒子40aを含んだ溶液をスプレー塗布により成膜し、乾燥させて絶縁膜40を形成する。この際、境界部20aを含む領域の高分子アクチュエータ20、固定治具31に絶縁膜40を形成するが、境界部20aを含んだ領域であれば一部または全部に絶縁膜40を形成してもよい。
なお、絶縁膜40の形成方法については、特に制限はなく、スプレー塗布以外にディップ法や蒸着法などの他の方法を用いることもできるが、特にスプレー塗布による方法が好ましい。ディップ法や蒸着法などの方法であっても絶縁膜40を形成できるものの、高分子アクチュエータ素子S1の形状や大きさにより形成条件の制約が大きい一方、スプレー塗布ではそのような制約が少なく、より簡便に絶縁膜40を形成できるからである。
このように高分子アクチュエータ20のうち屈曲と伸展の動作による変形量が大きい境界部20aを含む領域に、絶縁性粒子40aにより構成される絶縁膜40を形成する。絶縁性粒子40aにより構成されている絶縁膜40は、高分子アクチュエータ20の変形に追従しやすいため、クラックが発生しにくい。このような構成とすることで、クラックを抑制しつつ、屈曲性能の高い高分子アクチュエータ素子S1とすることができる。
なお、絶縁膜40のクラック発生を抑制することにより、導電性の異物混入などによる短絡発生が抑制され、電極取出部30の配置を適宜調整することにより、さらに短絡発生を抑制できる。
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態の変形例について、図6を参照して説明する。図6では、固定治具31の端部のうち高分子アクチュエータ20側であって、高分子アクチュエータ20が屈曲した際に高分子アクチュエータ20と接触しうる部分が面取りされている例を示している。固定治具31をこのような形状とすることで、高分子アクチュエータ20の動作を安定させることができる。
具体的には、電極取出部30の配置の説明と同様に、高分子アクチュエータ20が屈曲する際に固定治具31に接触すると、固定治具31が高分子アクチュエータ20の第1電極層11または第2電極層12に食い込む形となる。このような場合に、固定治具31の端部の先端が尖った角の形状であるとき、第1電極層11または第2電極層12に負荷がかかりやすく、クラック等の不具合が生じやすくなる。そこで、固定治具31の端部のうち高分子アクチュエータ20と接触しうる部分を面取りすることで、第1電極層11および第2電極層12の負荷を低減して不具合発生を抑制し、高分子アクチュエータ20の動作を安定化できる。
なお、ここでいう面取りとは、図6に示すように固定治具31の端部に曲面を形成するR加工だけでなく、固定治具31の端部が尖った形状とならないように加工することを指す。例えば固定治具31のうち高分子アクチュエータ20の自由端部20c側の端部の角の尖った部分を切り落としてテーパ面を形成するような加工をしてもよい。このように、固定治具31の端部が尖った形状とならないのであれば、他の面取り加工をしてもよい。
(第2実施形態)
第2実施形態の風量制御装置S2について、図7を参照して述べる。図7では、図7における上下方向として、風量制御装置S2を構成する下部固定治具31bのうち高分子アクチュエータ20により隠されている部分を破線で示している。
本実施形態の風量制御装置S2は、第1実施形態の高分子アクチュエータ素子S1を駆動部とし、例えば自動車等の車両に設けられる小型エアコンにおいて風の流路に設置され、風量制御部として適用されるものである。具体的には、風量制御装置S2を駆動させていないときには、図7のように風の流路を遮断するように高分子アクチュエータ素子S1が風の流路を塞いでいる。一方、風量制御装置S2を駆動させたときには、高分子アクチュエータ素子S1が屈曲することで、風が流動できる隙間が形成される。つまり、高分子アクチュエータ素子S1を駆動させた際の変形量を制御することで風が流動できる隙間を制御でき、当該隙間を通過する風量を制御できる風量制御部となる。なお、風は、図7の紙面の裏側から風量制御装置S2を通じて流れる。
本実施形態の風量制御装置S2は、第1実施形態の高分子アクチュエータ素子S1を複数個並べて配置されて1つの装置を構成する点が該高分子アクチュエータ素子S1と相違する。本実施形態の風量制御装置S2については、この相違点を主に説明する。
本実施形態の風量制御装置S2は、1枚の平板状の高分子アクチュエータ板21が分割され、図7では図示しない電極取出部30および給電配線32を備える格子形状の上部固定治具31aおよび下部固定治具31bにより、挟まれることで構成されている。そして、高分子アクチュエータ板21が固定治具31a、31bにより挟まれた後に、例えばレーザーカットなどにより後述する複数の高分子アクチュエータ211、212、213に分割される。このように分割された高分子アクチュエータ211、212、213とこれを挟む固定治具31a、31bとにより、高分子アクチュエータ素子S1を複数個構成することとなる。その結果、風量制御装置S2は、複数の高分子アクチュエータ素子S1が並ぶように配置されて構成されている。なお、給電配線32は、例えば銅などの電気伝導率の高い金属材料などであり、電極取出部30と同様にワイヤやテープ状などのものを使用してもよく、スパッタや蒸着などにより形成される薄膜としてもよい。
次に、風量制御装置S2の構成部材である固定治具31a、31b、高分子アクチュエータ20A、電極取出部30および給電配線32について、図8、図9を参照して説明する。図9(a)では、上部固定治具31aを示し、図9(b)では、下部固定治具31bを示し、これらの固定治具31a、31bのうち電極取出部30および給電配線32については破線で示している。なお、図9では、固定治具31a、31bの一部を示しており、繰り返しとなる構造の部分については省略している。
上部固定治具31aは、図8(a)に示すように梯子状の枠体である。高分子アクチュエータ板21は、図8(b)に示すように、切断された結果、複数の高分子アクチュエータ211、212、213に分割されている。下部固定治具31bは、図8(c)に示すように格子状の枠体である。これらの固定治具31a、31bは、高分子アクチュエータ板21の一部を挟んで固定するものである。
上部固定治具31aについては梯子状の格子をなしており、下部固定治具31bについては網目状の格子をなしており、それぞれ縦横の格子によりなる。ここで、図8の紙面左右方向を横方向として、固定治具のなす平面上であって横方向と垂直な方向を縦方向とする。このとき、固定治具31a、31bのうち縦方向に沿って配置されている格子を縦格子、横方向に沿って配置されている格子を横格子とする。
上部固定治具31aは、本実施形態では、縦格子31aaと横格子31abにより構成された枠体である。縦格子31aaが横方向に沿って互いに距離を空けて複数個並んでおり、2つの横格子31abがこれら複数個の縦格子31aaの縦方向の両端をつなぐように設けられている。
上部固定治具31aには、図9(a)に示すように、電極取出部30と給電配線32が高分子アクチュエータ板21側に設けられている。電極取出部30については、縦格子31aaに沿って設けられ、給電配線32については横格子31abに沿って設けられ、電極取出部30に接続されている。
下部固定治具31bは、本実施形態では、上部固定治具31aと同様に、縦格子31baと横格子31bbにより構成された枠体である。縦格子31baが横方向に沿って互いに距離を空けて複数個並んで配置されており、横格子31bbが縦格子31baのうち縦方向の両端をつなぐように2つ設けられている。また、縦方向の両端に配置された該2つの横格子31bbの間に、別の横格子31bbが複数個並んで配置され、これら全ての横格子31bbが縦方向に沿って互いに距離を空けて配置されている。さらに横格子31bbのうち縦格子31ba同士の間に、図8(c)に示すように突起部31bcが複数個設けられている。この突起部31bcは、固定治具31aの縦格子31aaの間から突き出るように配置された半円形の部材である。これにより、固定治具31a、31bに挟まれた高分子アクチュエータ板21は、下部固定治具31bの突起部31bcにより押し上げられることとなり、複数のアーチを有する形状となる。
下部固定治具31bには、図9(b)に示すように、電極取出部30と給電配線32が高分子アクチュエータ板21側に設けられている。電極取出部30については、横格子31bbのうち縦方向の両端に位置する2つの横格子31bbに沿って設けられるとともに、突起部31bcのうち高分子アクチュエータ板21と接する部分に設けられている。そして、下部固定治具31bには、これらの電極取出部30をつなぐように給電配線32が当該2つの横格子31bbに沿って設けられている。
なお、固定治具31a、31bに設けられた電極取出部30、給電配線32については、高分子アクチュエータ板21に給電して駆動させることができるのであれば、上記の配置のほか、他の配置とすることもできる。また、電極取出部30と給電配線32とが一体的に形成されたものであってもよい。
風量制御装置S2における高分子アクチュエータ板21が、上記のように、突起部31bcにより部分的に押し上げられているため、当該押し上げられた部分については、押し上げられた方向へ弓形に曲がってアーチを描くような形状となっている。そして、高分子アクチュエータ20が、上記の高分子アクチュエータ板21の分割により、アーチ形状の山の頂点の部分で分断されている。その結果、高分子アクチュエータ板21は、3種の異なる形状を有する高分子アクチュエータ211、212、213に分割されている。そして、風量制御装置S2は、これらの高分子アクチュエータ211、212、213が横方向に並んで配置されている。
高分子アクチュエータ211は、アーチの左半分の形状をなしており、横方向の左端に配置されている(以後、「分割アクチュエータ211」という。)。高分子アクチュエータ212は、アーチの右半分の形状をなしており、横方向の右端に配置されている(以後、「分割アクチュエータ212」という。)。高分子アクチュエータ213は、分割アクチュエータ211に相当するアーチの左半分の形状と、分割アクチュエータ212に相当するアーチの右半分の形状とが連結された形状をなしている(以後、「連結アクチュエータ213」という。)。また、連結アクチュエータ213は、分割アクチュエータ211に相当する部位が右半分、分割アクチュエータ212に相当する部位が左半分となるように連結されている。連結アクチュエータ213は、分割アクチュエータ211、212の間において横方向に複数個並んで配置されている。そして、風量制御装置S2は、縦方向については、同じ高分子アクチュエータ同士、すなわち分割アクチュエータ211同士、分割アクチュエータ212同士、連結アクチュエータ213同士が複数個並んで配置されている。
つまり、電極取出部30および給電配線32を備えた固定治具31a、31bにより挟まれた高分子アクチュエータ板21が分割された結果、複数の高分子アクチュエータ素子S1が縦横方向に並んで配置される。このように複数の高分子アクチュエータ素子S1が並んで配置されることにより、全体として風量制御装置S2が構成されている。
次に、風量制御装置S2を構成する高分子アクチュエータ素子S1について、より詳細に図10、図11、図12を参照して説明する。図10では、図7に示した破線領域Rを拡大したものを示している。図11では、図10における一点鎖線XI−XIの断面を示しており、図12では、図10における一点鎖線XII−XIIの断面を示している。
図9、図11に示すように、例えば上部固定治具31aの縦格子31aaのうち横方向の両端に位置する縦格子31aaには、縦格子31aaに沿って連続した電極取出部30が1つ設けられている。そして、その他の縦格子31aaには縦格子31aaに沿って連続した電極取出部30が2つ並んで設けられている。
連結アクチュエータ213のうち第1電極層11は、図11で示すように、2つ設けられた電極取出部30の間であらかじめ分割された分割部11aが設けられている。これにより、連結アクチュエータ213のアーチ部分の右半分および左半分を構成する領域の第1電極層11にそれぞれ異なる電位を印加でき、連結アクチュエータ213のアーチ部分について左右を別個に変形させることが可能となる。なお、分割部11aについては、固定治具31a、31bに対して固定する前に、例えばトムソン刃などによる切れ込みを入れたり、レーザーで部分的にカットしたりするなどの方法など様々な方法により設けられる。ただし、連結アクチュエータ213をアーチ部分について左右を別個に変形させる必要がない場合には、分割部11aを設けなくてもよい。さらに、連結アクチュエータ213の左半分に相当する寸法に合わせた高分子アクチュエータ、連結アクチュエータ213の右半分に相当する寸法に合わせた高分子アクチュエータを別個作製し、これらを連結アクチュエータ213の代わりに用いてもよい。
図11に示すように、固定治具31a、31bおよび分割アクチュエータ212、連結アクチュエータ213のうち境界部20a付近の領域については、絶縁性粒子40aを含む絶縁膜40が形成されている。さらに、絶縁膜40は、図11に示すように境界部20a付近の領域および高分子アクチュエータ板21が切断された端部の領域を含む領域に部分的に形成されることがより好ましい。隣り合う高分子アクチュエータ素子S1同士のうち一方の第1電極層11と他方の第2電極層12とが、後述する図13のように接触することによる短絡を抑制しつつ、屈曲性能の高い高分子アクチュエータ装置S2となるからである。なお、絶縁膜40は、高分子アクチュエータ板21および固定治具31a、31bの全面に形成されていてもよい。
図12に示すように、例えば下部固定治具31bの横格子31bbのうち縦方向の両端に位置する横格子31bbに沿って連続した電極取出部30が1つ設けられている。そして、横方向に並べられた分割アクチュエータ211、212、連結アクチュエータ213のうち切断された端部を含む領域に、絶縁膜40が形成されている。
次に、図13では、隣り合う高分子アクチュエータ素子S1同士のうちの一方の第1電極層11と他方の第2電極層12とが接触した短絡を示している。高分子アクチュエータ20同士の隙間が十分にあるときにはこのような短絡は発生しないが、隙間を広げすぎると風を高分子アクチュエータ20により完全に遮断できないため、風量を低く制御しづらい。そのため、隣り合う高分子アクチュエータ20同士の隙間を狭くする必要がある。この際、隣り合う一方の第1電極層11と他方の第2電極層12が図13のように接触して短絡するおそれがある。そこで、このような短絡を抑制するために図11、12に示したように、高分子アクチュエータ板21のうち切断により生じた端部を含む領域にも絶縁膜40を形成することが好ましい。
次に、本実施形態の風量制御装置S2の製造方法について、図14を参照して説明する。
まず、図14(a)に示すように、例えば図示しない電極取出部30および給電配線32を備えた固定治具31a、31bおよび高分子アクチュエータ板21を用意する。また、必要に応じて、高分子アクチュエータ板21に、例えばトムソン刃などにより切れ込みを入れて、第1電極層11に分割部11aを設けてもよい。
次に、上記第1実施形態で述べたように、例えば固定治具31を固定して挟むための第1型と第2型からなる成形型を用いた方法などにより、図14(b)に示すように高分子アクチュエータ板21を固定治具31a、31bに挟んで固定する。
次に、例えばレーザーカットなどにより固定された高分子アクチュエータ板21を任意の大きさに分割して、図14(c)に示すように複数の高分子アクチュエータ20とする。その後、絶縁性粒子40aを含む絶縁材料を、例えばスプレー塗布により塗布して乾燥することにより絶縁膜40を形成する。
このような製造方法とすることにより、高分子アクチュエータ素子S1を並べて複数配置しつつ、複数の高分子アクチュエータ素子S1および固定治具31a、31bにまとめて簡便な方法で風量制御装置S2を製造することができる。また、高分子アクチュエータ20を固定治具31a、31bに固定した後に、絶縁膜40を形成することにより、固定する際の位置合わせなどを考慮する必要がなくなる。そして、高分子アクチュエータ20の変形による絶縁膜40のクラックを抑制しつつ、屈曲性能の高い風量制御装置S2とすることができる。
また、従来の風量制御装置では、剛直な平面板をモータ等で駆動して当該平面板を開閉して通風孔の面積を制御することで風量を制御している。そのため、当該平面板の開閉動作のための空間を確保するために広くせざるを得ず、従来の風量制御装置を用いてエアコン等を小型化することが難しかった。これに対して、板の形状が直接変形する本実施形態の風量制御装置S2を用いることにより、平面板による通風孔の面積制御では必要であった開閉動作のための空間が不要となるため、エアコン等を小型化することが可能となる。
(第3実施形態)
第3実施形態の光反射制御装置S3について、上記第1実施形態との相違点を中心に図15〜図18を参照して述べる。光反射制御装置S3は、後述する複数の高分子アクチュエータ22a〜22dが形成された高分子アクチュエータパネル22を2枚重ね合わせて1枚の板状の装置とする点が第1実施形態とは異なる。本実施形態の光反射制御装置S3は、例えばヘッドアップディスプレイ(以下「HUD」という。)における光反射部材などに適用されるものである。
図16〜図18では、図15に示した光反射制御装置S3のうち2つの高分子アクチュエータパネル22により構成された光を反射する光反射部50を示している。また、図15では、電極取出部30、給電配線32の構成を省略し、図16〜図18では、これらに加えて固定治具31などの他の構成要素を省略している。
本実施形態の光反射制御装置S3は、図15に示すように、光反射部50と、光反射部50から延設されている後述する電極引出部22eと、図示しない電極取出部30および給電配線32を備える固定治具31により構成されている。
光反射部50は、図16、図17に示すように、複数の高分子アクチュエータ22a〜22dを備える高分子アクチュエータパネル22を2枚用いて構成されている。そして、2枚の高分子アクチュエータパネル22は、2枚の高分子アクチュエータパネル22のうち一方に備えられる第1電極層11と他方に備えられる第2電極層12とが向かい合うように重ね合わせられることで1枚の板状とされている。
第1電極層11は、複数本の第1電極層11a〜11dによって構成されている。第1電極層11a〜11dは、電解質層10の一面側において形成された短冊状のものであり、複数本が所定の間隔で互いに離れて設けられることでストライプ状に配置されている。本実施形態の場合、複数本の第1電極層11a〜11dが所定間隔を空けて平行に配置されており、各第1電極層11a〜11dの幅も等しくされている。
第2電極層12は、電解質層10の他面側の全面に渡って形成されている。第2電極層12については、全面に形成することでパターニングが必要なくなるため、製造工程の簡略化を図ることが可能となる。また、第2電極層12をパターニングする場合、第1電極層11とのアライメントずれが発生し得るが、第2電極層12を電解質層10の他面側の全面に形成することで、アライメントずれを防止することも可能となる。
ここで、高分子アクチュエータ22a〜22dは、高分子アクチュエータパネル22のうち複数の第1電極層11a〜11dと第2電極層12とが対向配置させられた部分に構成されている。具体的には、第1電極層11aと第2電極層12とが対向配置された部分と、それらの間に配置された電解質層10によって高分子アクチュエータ22aが構成されている。第1電極層11bと第2電極層12とが対向配置された部分と、それらの間に配置された電解質層10によって高分子アクチュエータ22bが構成されている。第1電極層11cと第2電極層12とが対向配置された部分と、それらの間に配置された電解質層10によって高分子アクチュエータ22cが構成されている。第1電極層11dと第2電極層12とが対向配置された部分と、それらの間に配置された電解質層10によって高分子アクチュエータ22dが構成されている。
本実施形態の光反射制御装置S3を構成する高分子アクチュエータパネル22は、図16に示すように、四角形状、より詳しくは上面形状が2組の相対する平行な二辺を有する正方形状もしくは長方形板状とされている。各高分子アクチュエータパネル22は、相対する二組の平行な辺のうちの一組については直線状を保ちつつ、他方の組を湾曲させる機能を有している。このような高分子アクチュエータパネル22を2枚用意しつつ、互いの湾曲する辺が直交するように重ねることで、図17に示すように、その中心を固定点Oとして四隅が持ち上がるように湾曲させられ、凹面鏡が構成される。
具体的には、本実施形態の高分子アクチュエータパネル22は、上記のように複数の高分子アクチュエータ22a〜22dを備えている。この複数の高分子アクチュエータ22a〜22dを独立して変形させることで、凹面鏡の曲率半径、すなわち湾曲度合を調整する。
本実施形態の場合、図17に示すように、第2電極層12側を鏡面として用いており、重ね合わせた2枚の高分子アクチュエータパネル22のうちの少なくとも一方について、第2電極層12を反射膜として反射率が高い金属膜によって構成している。これにより、高分子アクチュエータパネル22が変形させられ、反射膜とされた第2電極層12側が凹まされたときに、第2電極層12によって凹面鏡を構成することが可能となる。また、第2電極層12を反射膜としなくても、図18に示すように、反射率の高い反射シート23などを光反射部50の凹面部に張り付けることでこれを反射膜としてもよい。
なお、図示しないが、光反射制御装置S3を備えたHUDには制御部が備えられており、制御部が各高分子アクチュエータパネル22の第1電極層11と第2電極層12との間の電位差を制御する電位信号を出力することで、凹面鏡の曲率調整が行われる。
また、2枚の高分子アクチュエータパネル22のうち第1電極層11a〜11dが交差している部分を1画素として、各画素における第1電極層11と第2電極層12との間に所定の電位差を発生させることで、複数の画素をそれぞれ任意の変形量に調整できる。これにより、凹面鏡の形状を所望の任意の形状に調整することができ、凹面鏡に入射する光の反射を制御することができる。
2つの高分子アクチュエータパネル22には、図15に示すように、電極引出部22eが延設されており、電極引出部22eが図示しない電極取出部30および給電配線32を備える固定治具31により固定されている。ここで、上記第1実施形態で説明したのと同様に、固定治具31のうち光反射部50側の端面を結ぶ平面と電極引出部が交差する部分を境界部22fとする。光反射制御装置S3のうち境界部22fを含む領域に、絶縁性粒子40aを含む絶縁膜40が形成されている。なお、上記第1実施形態、第2実施形態と同様に、光反射制御装置S3全体に絶縁膜40を形成してもよいが、少なくとも境界部22fを含む領域に絶縁膜40を形成すればよい。
また、次に説明するように光反射制御装置S3の製造工程の最後に絶縁膜40を形成することが好ましいため、光反射部50のうち2つの高分子アクチュエータパネル22が重なり合う界面には絶縁膜40が設けられていなくてもよい。
すなわち、あらかじめ絶縁膜40を設けた高分子アクチュエータパネル22を2枚重ね合わせて、光反射制御装置S3を製造した場合であっても光反射部50を駆動できる。しかし、高分子アクチュエータパネル22の駆動により、高分子アクチュエータパネル22同士の界面に存在する一方に備えられた絶縁膜40と他方に備えられた絶縁膜40とが互いに擦り合わせられ、擦り切れるなどの損傷につながるおそれがある。そこで、このような不具合の発生を防ぐため、光反射部50のうち2つの高分子アクチュエータパネル22が重なり合う界面には、絶縁膜40をあえて設けなくてもよい。
次に、本実施形態の光反射制御装置S3の製造方法について説明する。
2つの高分子アクチュエータパネル22を用意する。これらの高分子アクチュエータパネル22には、他方の高分子アクチュエータパネル22と重なり合う領域からはみ出るように電極引出部22eが延設されている。そして、これら2つの高分子アクチュエータパネル22のうち一方の第1電極層11と他方の第2電極層12とが直交するように重ね合わせ、1枚の凹面鏡となる光反射部50を形成する。
次に、第2実施形態の高分子アクチュエータ板21の固定と同様の手順により、2つの電極引出部22eを電極取出部30および給電配線32を備える固定治具31a、31bにより挟んで固定する。そして、第2実施形態の絶縁膜40の形成と同様の手順により、絶縁性粒子40aを含む絶縁材料を例えばスプレー塗布して、固定治具31a、31b、高分子アクチュエータパネル22のうち境界部22fを含む領域に絶縁膜40を形成する。
なお、絶縁膜40の形成については、2つの高分子アクチュエータパネル22を固定治具31により固定した後にスプレー塗布により行うことが好ましい。高分子アクチュエータパネル22を固定して最終的な形にした後に絶縁膜40を形成することにより、絶縁膜40を考慮した位置合わせなどの余分な工程をとることなく、より簡便に、光反射部50や境界部22fの変形に追従しやすい絶縁膜40を形成できるためである。
このようにして、直交するように重ね合わせられた2つの高分子アクチュエータパネル22を備える光反射制御装置S3を製造できる。これにより、高分子アクチュエータパネル22の変形による絶縁膜40のクラックを抑制しつつ、屈曲性能の高い光反射制御装置S3となる。また、上記第1実施形態、第2実施形態と同様に、境界部22fを含む領域に絶縁膜40を形成することにより、高分子アクチュエータパネル22と固定治具31との間への異物混入による短絡が発生しにくい光反射制御装置S3となる。
(第3実施形態の変形例)
第3実施形態の変形例である光反射制御装置S4について、上記の第3実施形態との相違点を中心に、図19、図20を参照して説明する。図19では、光反射部50の構成については図16で示したものと同様であり、高分子アクチュエータパネル22やこれを構成する複数の高分子アクチュエータ22a〜22dを省略している。図20では、図19に示した一点鎖線XX−XXにおける断面を示している。
図19に示すように、光反射制御装置S4を構成する2つの高分子アクチュエータパネル22のうち互いの高分子アクチュエータパネル22が重なり合う領域からはみ出るように電極引出部22gが形成されている。そして、2つの高分子アクチュエータパネル22が直交させられている光反射部50の外縁部を固定枠60に取り付け、光反射部50を凹面鏡として用いる。そして、高分子アクチュエータパネル22を構成する複数の高分子アクチュエータ22a〜22dの変位量を調整することで、光反射部50が構成する凹面鏡の曲率半径を制御する。
このような構成において、図19に示すように、光反射部50の外側まで延設され、短冊形状とされた電極引出部22gは、光反射部50を構成する高分子アクチュエータ22a〜22dにそれぞれ個別に接続されている。つまり、電極引出部22gについては、高分子アクチュエータ22a〜22dの電解質層10および第2電極層12と一体的とはしていない。
具体的には、図20に示すように、電極引出部22gの間に分離溝22hを形成することで固定治具31側の電極引出部22gを分割している。つまり、3次元形状を構成する光反射部50以外の部分となる電極引出部22gにおいて、複数の高分子アクチュエータ22a〜22dを分割する。これにより、複数の高分子アクチュエータ22a〜22dのうち隣り合う高分子アクチュエータ同士で動きの干渉や制約が加えられないようにできる。
このように光反射制御装置S3と同様、高分子アクチュエータパネル22の変形による絶縁膜40のクラックを抑制しつつ、屈曲性能の高い光反射制御装置S4とできる。また、少なくとも境界部22fを含む領域に絶縁膜40を形成することにより、光反射制御装置S4においても、導電性の異物混入による短絡発生を抑制できる。
(他の実施形態)
なお、上記した各実施形態に示した半導体装置は、本発明の半導体装置の一例を示したものであり、上記の各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
例えば、第1実施形態ないし第3実施形態に用いた高分子アクチュエータ20、高分子アクチュエータ板21、高分子アクチュエータパネル22には、第1実施形態で説明した材料から構成された高分子アクチュエータを一例として示した。しかし、これらの高分子アクチュエータについては、イオン性液体10aとして不揮発性の液体を用いるものであればよく、第1実施形態に示した高分子アクチュエータの材料構成に限られず、他の公知の高分子アクチュエータを用いてもよい。
第2実施形態の風量制御装置S2については、図7では、固定治具31a、31bが横方向と縦方向のなす平面に沿って伸びる格子状をなしており、装置全体として平面的に伸びる構造の例を挙げた。しかし、固定治具31a、31bに例えば曲面など他の形状であるものを使用してもよく、平面的に伸びる固定治具31a、31bにより高分子アクチュエータ20を固定した後に装置全体を曲げる加工をしてもよい。
第2実施形態の風量制御装置S2における高分子アクチュエータ板21については、あらかじめ製造した分割アクチュエータ211、212、連結アクチュエータ213に相当する高分子アクチュエータを代わりに用いてもよい。また、第1実施形態で述べたように高分子アクチュエータを製造し、これを高分子アクチュエータ板21として使用してもよいし、他の方法で製造されたものを用意して高分子アクチュエータ板21として使用もよい。
固定治具31は、必ずしも四角形状でなくともよく、例えば円形状や楕円形状多角形状などの他の形状とすることもできる。
10 電解質層
11 第1電極層
12 第2電極層
20 高分子アクチュエータ
30 電極取出部
31 固定治具
40a 絶縁性粒子
40 絶縁膜

Claims (8)

  1. イオン性液体(10a)とポリマー(10b)とを含み、一面と他面とが裏表の関係にある板状の電解質層(10)と、前記一面に配置された第1電極層(11)と、前記他面に配置された第2電極層(12)と、を含む高分子アクチュエータ(20)と、
    前記高分子アクチュエータの端部であって、前記第1電極層と前記第2電極層とが向き合う方向に沿って設けられ、前記第1電極層の上および前記第2電極層の上にそれぞれ配置された2つの電極取出部(30)と、
    2つの前記電極取出部を介して前記高分子アクチュエータの端部を挟むように配置された固定治具(31)と、
    前記第1電極層、前記第2電極層および前記固定治具の少なくとも一部を覆うように配置された絶縁性粒子(40a)のみからなる絶縁膜(40)と、を備え、
    前記固定治具は、前記電極取出部のうち前記高分子アクチュエータと反対側の面を覆っており、
    前記絶縁膜は、前記高分子アクチュエータのうち前記固定治具により挟まれた部分と前記固定治具からはみ出す部分との境界を境界部(20a)として、前記第1電極層、前記第2電極層および前記固定治具のうち少なくとも前記境界部を含む領域を覆っている高分子アクチュエータ素子。
  2. イオン性液体(10a)とポリマー(10b)とを含み、一面と他面とが裏表の関係にある板状の電解質層(10)と、前記一面に配置された第1電極層(11)と、前記他面に配置された第2電極層(12)と、を含む高分子アクチュエータ(20)と、
    前記高分子アクチュエータの端部であって、前記第1電極層と前記第2電極層とが向き合う方向に沿って設けられ、前記第1電極層の上および前記第2電極層の上にそれぞれ配置された2つの電極取出部(30)と、
    2つの前記電極取出部を介して前記高分子アクチュエータの端部を挟むように配置された固定治具(31)と、
    前記第1電極層、前記第2電極層および前記固定治具の少なくとも一部を覆うように配置された絶縁性粒子(40a)を含む絶縁膜(40)と、を備え、
    前記固定治具は、前記電極取出部のうち前記高分子アクチュエータと反対側の面を覆っており、
    前記絶縁膜は、前記高分子アクチュエータのうち前記固定治具により挟まれた部分と前記固定治具からはみ出す部分との境界を境界部(20a)として、前記第1電極層、前記第2電極層および前記固定治具のうち少なくとも前記境界部を含む領域を覆っており、
    前記電極取出部は、前記高分子アクチュエータが前記固定治具からはみ出す方向と逆方向に向かって、前記境界部から離れて配置されている高分子アクチュエータ素子。
  3. イオン性液体(10a)とポリマー(10b)とを含み、一面と他面とが裏表の関係にある板状の電解質層(10)と、前記一面に配置された第1電極層(11)と、前記他面に配置された第2電極層(12)と、を含む高分子アクチュエータ(20)と、
    前記高分子アクチュエータの端部であって、前記第1電極層と前記第2電極層とが向き合う方向に沿って設けられ、前記第1電極層の上および前記第2電極層の上にそれぞれ配置された2つの電極取出部(30)と、
    2つの前記電極取出部を介して前記高分子アクチュエータの端部を挟むように配置された固定治具(31)と、
    前記第1電極層、前記第2電極層および前記固定治具の少なくとも一部を覆うように配置された絶縁性粒子(40a)を含む絶縁膜(40)と、を備え、
    前記固定治具は、前記電極取出部のうち前記高分子アクチュエータと反対側の面を覆っており、
    前記絶縁膜は、前記高分子アクチュエータのうち前記固定治具により挟まれた部分と前記固定治具からはみ出す部分との境界を境界部(20a)として、前記第1電極層、前記第2電極層および前記固定治具のうち少なくとも前記境界部を含む領域を覆っており、
    前記固定治具のうち前記境界部側の端部のうちの前記高分子アクチュエータ側は、曲面となっている高分子アクチュエータ素子。
  4. 前記電極取出部は、前記高分子アクチュエータが前記固定治具からはみ出す方向と逆方向に向かって、前記境界部から離れて配置されている請求項1またはに記載の高分子アクチュエータ素子。
  5. 前記固定治具のうち前記境界部側の端部のうちの前記高分子アクチュエータ側は、曲面となっている請求項1または請求項2に記載の高分子アクチュエータ素子。
  6. 請求項1ないしのいずれか1つの高分子アクチュエータ素子と、
    前記高分子アクチュエータ素子に給電するための給電配線(32)と、を備え、
    前記高分子アクチュエータ素子を駆動部として複数有し、
    前記給電配線は、前記高分子アクチュエータ素子のうち前記電極取出部接続されている高分子アクチュエータ装置。
  7. イオン性液体(10a)とポリマー(10b)とを含み、一面と他面とが裏表の関係にある板状の電解質層(10)と、前記一面に配置された第1電極層(11)と、前記他面に配置された第2電極層(12)と、を含む高分子アクチュエータ(20)を用意することと、
    電極取出部(30)を介して固定治具(31)により前記高分子アクチュエータを挟むことと、
    前記高分子アクチュエータおよび前記固定治具に絶縁性粒子(40a)のみからなる絶縁膜(40)を形成することと、を含み、
    前記絶縁膜を形成することにおいては、前記高分子アクチュエータのうち前記固定治具に挟まれた部分と前記固定治具からはみ出す部分との境界を境界部(20a)とし、前記高分子アクチュエータおよび前記固定治具のうち、少なくとも前記境界部を含む領域に前記絶縁膜を形成する高分子アクチュエータ素子の製造方法。
  8. イオン性液体(10a)とポリマー(10b)とを含み、一面と他面とが裏表の関係にある板状の電解質層(10)と、前記一面に配置された第1電極層(11)と、前記他面に配置された第2電極層(12)と、を含む高分子アクチュエータ(20)を用意することと、
    前記高分子アクチュエータを複数配置することと、
    電極取出部(30)と給電配線(32)とを介して固定治具(31)により複数の前記高分子アクチュエータを挟むことと、
    複数の前記高分子アクチュエータおよび前記固定治具に絶縁性粒子(40a)のみからなる絶縁膜(40)を形成することと、を含み、
    前記絶縁膜を形成することにおいては、前記高分子アクチュエータのうち前記固定治具に挟まれた部分と前記固定治具からはみ出す部分との境界を境界部(20a)とし、複数の前記高分子アクチュエータおよび前記固定治具のうち、少なくとも前記境界部を含む領域に前記絶縁膜を形成する高分子アクチュエータ装置の製造方法。
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