JP6874984B2 - 酸性の低ホルムアルデヒド木酢液及び木酢液原液中のホルムアルデヒド低減方法 - Google Patents
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Description
さらに、原液状態の木酢液は、展着剤としての作用も有する芳香族化合物などの木タールを含む。この木タールは、塗布・散布対象への木酢液の付着を容易にするため、木酢液は高い抗菌性を発揮する。
このように多様な成分を含み抗菌性に優れる酸性の木酢液は、農業資材として土壌改良剤や植物活性剤などに、日用品の分野では防腐剤や消毒剤、制菌剤、殺菌剤などに用いられている。また、通常、酸性の木酢液は、使用者が必要に応じて希釈して使用しているものである。
また、塩基性の木酢液を酸性に戻すことにより抗菌性を得ることも可能であるが、この場合、大量の酸を添加する必要があり、木酢液が希釈されることになる。木酢液が希釈された場合、木タールといった展着成分まで希釈されるため、原液が有していた優れた抗菌性が損なわれる。従って、特許文献1の木酢液中のホルムアルデヒドを低減する方法で得られる木酢液に酸を添加し酸性に戻しても、すでに希釈されている木酢液は使用者が必要に応じて使用できる範囲が狭くなるおそれがあり、また、従来のように農業資材や日用品として使用しても木酢液に期待する効果を十分に得られないおそれがあった。
本発明の木酢液原液中のホルムアルデヒド低減方法は、木酢液原液にトリプトファンを溶解させるようにしたものである。
本発明の木酢液原液中のホルムアルデヒド低減方法によると、木酢液原液を希釈しないで毒性を低減した酸性の木酢液を得ることができる。この方法により得られる木酢液は、木酢液原液と同じように、農業資材や日用品として使用することができ、木酢液に期待する効果を十分に得ることができるものである。また、人体に害を与えないものである。
(試験例1)
市販の木酢液(合同会社ツリーワーク製)のホルムアルデヒド濃度を測定したところ、179ppm(W/V)(=6mmol/L)であった。この木酢液のpHは2.9であった。
上記木酢液の原液から20mLずつ3回取出し、それぞれ試験液A、試験液B及び試験液Cの試験液とした。試験液A〜Cのそれぞれに、L−トリプトファン(関東化学株式会社製)を終濃度が3mmol/L(試験液A)、6mmol/L(試験液B)、12mmol/L(試験液C)になるように添加した。添加後、各試験液を撹拌してトリプトファンを溶解し、20℃の恒温器に一定期間(7日間)放置した状態で、試験液中のホルムアルデヒド濃度の経時変化を測定した。
試験液中のホルムアルデヒド濃度は、以下のように測定した。まず、試験液から一定量採取し、不溶性ポリクラールAT(和光純薬工業株式会社製)を加えて撹拌した後、遠心分離し、分析を阻害するポリフェノールを不溶性ポリクラールATに吸着して沈殿除去した。ホルムアルデヒドを含む上清を、アセチルアセトン、酢酸アンモニウム及び酢酸から調整した発色液と混合し、60℃で15分間加温した。その後、発色した混合液の吸光度(波長412nm)を、上清に発色液の代わりに純水を同量加えた混合液を対照に分光光度計(日立製作所製、U−3410型)により測定した。
なお、上記測定では、事前に、試薬ホルムアルデヒド(関東化学株式会社製)を標準物質として、300ppm(W/V)から5ppm(W/V)までの検量線を作成しておき、この検量線を用いて吸光度からホルムアルデヒド濃度を算出した。また、5ppm(W/V)未満の濃度は0ppm(W/V)と表記することとした。従って、上記測定において、ホルムアルデヒド濃度0ppm(W/V)は、ホルムアルデヒド濃度5ppm(W/V)未満を意味するものである。
表1に、試験液A〜Cにトリプトファンを添加した後のホルムアルデヒド濃度の経時変化を示す。
また、ホルムアルデヒド濃度0ppm(W/V)の試験液C(本発明の低ホルムアルデヒド木酢液)は希釈されていないもの(木酢液原液の組成がほとんど変わることなく保持されている木酢液)であり、pHに変化はなく2.9の酸性の木酢液(抗菌性を有する木酢液)であった。
市販の竹酢液(アイリスオーヤマ株式会社製)を用いた試験を行った。竹酢液のホルムアルデヒド濃度を測定したところ34.7ppm(W/V)(=1.2mmol/L)であった。また、pHは2.7であった。
上記竹酢液の原液から20mL取出し、試験液とした。試験液に、L−トリプトファン(関東化学株式会社製)を終濃度が2.4mmol/Lになるように添加した。添加後、試験例1と同様に、試験液を撹拌してトリプトファンを溶解し、20℃の恒温器に放置した状態で、24時間後に試験液中のホルムアルデヒド濃度を測定したところ、試験液のホルムアルデヒド濃度は0ppm(W/V)であった。これにより、ホルムアルデヒド濃度(1.2mmol/L)の2倍に相当する終濃度2.4mmol/Lのトリプトファンを添加することにより、木酢液(竹酢液)中のホルムアルデヒドを除去でき、竹酢液を出発材料としても低ホルムアルデヒド木酢液(竹酢液)を調製できることが分かった。なお、本試験では、試験例1の試験液Cと同様に、試験液(竹酢液)のホルムアルデヒド濃度(1.2mmol/L)の2倍に相当する終濃度2.4mmol/Lのトリプトファンを添加した。
また、ホルムアルデヒド濃度0ppm(W/V)の試験液(本発明の低ホルムアルデヒド木酢液(竹酢液))は希釈されていないもの(竹酢液原液の組成がほとんど変わることなく保持されている竹酢液)であり、pHに変化はなく2.7の酸性の木酢液(抗菌性を有する竹酢液)であった。
本発明の酸性の低ホルムアルデヒド木酢液及び木酢液原液中のホルムアルデヒド低減方法により得られる木酢液は、ホルムアルデヒドが除かれる又は低減される以外は、トリプトファン添加前の木酢液原液の組成とほとんど変わりなく、pHにも変化がないものである。
従って、本発明の酸性の低ホルムアルデヒド木酢液及び木酢液原液中のホルムアルデヒド低減方法により得られる木酢液は、トリプトファン添加前の木酢液原液と同様、抗菌性を保持するものであり、使用に際してホルムアルデヒドが揮発しないものであるか、もしくは揮発しても人体に影響を及ぼすおそれがないものである。
また、本発明の酸性の低ホルムアルデヒド木酢液及び木酢液原液中のホルムアルデヒド低減方法により得られる木酢液は、木タールは変化しないため、木タールの展着性が維持され、高い抗菌性を有するものになる。また、木タール自体が持つ抗菌性も維持される。
Claims (2)
- 酸性の木酢液の原液にトリプトファンを溶解させたものであって、ホルムアルデヒド濃度が5ppm(W/V)未満であることを特徴とする酸性の低ホルムアルデヒド木酢液。
- 木酢液原液にトリプトファンを溶解させることを特徴とする木酢液原液中のホルムアルデヒド低減方法。
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