以下、本技術の一実施形態に関して、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.二次電池用負極
1−1.構成
1−2.製造方法
1−3.作用および効果
2.二次電池
2−1.リチウムイオン二次電池(円筒型)
2−2.リチウムイオン二次電池(ラミネートフィルム型)
3.二次電池の用途
3−1.電池パック(単電池)
3−2.電池パック(組電池)
3−3.電動車両
3−4.電力貯蔵システム
3−5.電動工具
<1.二次電池用負極>
まず、本技術の一実施形態の二次電池用負極に関して説明する。
本技術の一実施形態の二次電池用負極(以下、単に「負極」と呼称する。)は、例えば、二次電池などの電気化学デバイスに用いられる。負極が適用される二次電池の種類は、特に限定されないが、例えば、電極反応物質を吸蔵および放出することにより電池容量が得られる二次電池などである。
電極反応物質とは、負極を用いた電極反応に関わる物質であり、その電極反応物質は、負極において吸蔵および放出される。二次電池の種類に関して具体的な例を挙げると、電極反応物質としてリチウム(またはリチウムイオン)を用いた二次電池は、いわゆるリチウムイオン二次電池である。
<1−1.構成>
負極は、以下で説明する構成を有している。
[全体構成]
図1は、負極の断面構成を表している。この負極は、例えば、図1に示したように、負極集電体1と、その負極集電体1の上に設けられた負極活物質層2とを含んでいる。
なお、負極活物質層2は、負極集電体1の片面だけに設けられていてもよいし、負極集電体1の両面に設けられていてもよい。図1では、例えば、負極活物質層2が負極集電体1の両面に設けられている場合を示している。
[負極集電体]
負極集電体1は、例えば、導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。導電性材料の種類は、特に限定されないが、例えば、銅、アルミニウム、ニッケルおよびステンレスなどの金属材料である。この金属材料は、金属の単体に限らず、合金でもよい。なお、負極集電体1は、単層でもよいし、多層でもよい。
負極集電体1の表面は、粗面化されていることが好ましい。いわゆるアンカー効果により、負極集電体1に対する負極活物質層2の密着性が向上するからである。この場合には、少なくとも負極活物質層2と対向する領域において、負極集電体1の表面が粗面化されていればよい。粗面化の方法は、例えば、電解処理を利用して微粒子を形成する方法などである。電解処理では、電解槽中において電解法により負極集電体1の表面に微粒子が形成されるため、その負極集電体1の表面に凹凸が設けられる。電解法により作製された銅箔は、一般的に、電解銅箔と呼ばれている。
[負極活物質層]
負極活物質層2は、2種類の負極活物質と、2種類の負極結着剤とを含んでいる。ただし、負極活物質層2は、さらに、負極導電剤などの他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
具体的には、負極活物質層2は、上記した2種類の負極活物質として、複数の粒子状の負極活物質(複数の第1負極活物質粒子)と、複数の粒子状の負極活物質(複数の第2負極活物質粒子)とを含んでいる。
また、負極活物質層2は、上記した2種類の負極結着剤として、第1負極結着剤および第2負極結着剤を含んでいる。
(複数の第1負極活物質粒子)
複数の第1負極活物質粒子は、上記したように、複数の粒子状の負極活物質であるため、負極活物質層2中において分散されている。
上記した「粒子(または粒子状)」とは、複数の第1負極活物質粒子のそれぞれが互いに物理的に分離された粒状であることを意味している。すなわち、電子顕微鏡などの顕微鏡を用いて、複数の第1負極活物質粒子を含む負極活物質層2の断面を観察すると、その複数の第1負極活物質粒子のそれぞれは、観察結果(顕微鏡写真)中において粒状の物体として視認される。
ただし、第1負極活物質粒子の形状は、特に限定されない。すなわち、複数の第1負極活物質粒子のそれぞれの形状は、球状でもよいし、略球状でもよいし、それ以外の形状でもよい。もちろん、複数の第1負極活物質粒子のそれぞれの形状は、互いに同じ形状でもよいし、互いに異なる形状でもよい。また、互いに異なる2種類の形状が併存していてもよい。
第1負極活物質粒子は、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能である負極材料として、炭素を構成元素として含む材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。以下では、炭素を構成元素として含む材料を「炭素系材料」と呼称する。
第1負極活物質粒子が炭素系材料を含んでいるのは、電極反応物質の吸蔵時および放出時において炭素系材料の結晶構造が非常に変化しにくいため、高いエネルギー密度が安定して得られるからである。また、炭素系材料は負極導電剤としても機能するため、負極活物質層2の導電性が向上するからである。
炭素系材料は、例えば、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素および黒鉛などの炭素材料である。ただし、難黒鉛化性炭素に関する(002)面の面間隔は、0.37nm以上であることが好ましいと共に、黒鉛に関する(002)面の面間隔は、0.34nm以下であることが好ましい。より具体的には、炭素材料は、例えば、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素繊維、有機高分子化合物焼成体、活性炭およびカーボンブラック類などである。このコークス類は、ピッチコークス、ニードルコークスおよび石油コークスなどを含む。有機高分子化合物焼成体は、適当な温度で焼成(炭素化)された高分子化合物であり、その高分子化合物は、例えば、フェノール樹脂およびフラン樹脂などである。この他、炭素材料は、約1000℃以下の温度で熱処理された低結晶性炭素でもよいし、非晶質炭素でもよい。なお、炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状および鱗片状のうちのいずれでもよい。
複数の第1負極活物質粒子は、所定の物性および寸法を有している。具体的には、複数の第1負極活物質粒子のR値は、0.35〜0.45である。また、複数の第1負極活物質粒子の平均粒径(メジアン径D50)は、5μm〜14.5μmである。
R値は、上記したように、ラマン分光法を用いて複数の第1負極活物質粒子を分析することにより測定される。このR値は、1570cm-1〜1630cm-1の範囲内に存在するラマンスペクトルピークの強度IGに対する、1350cm-1〜1370cm-1の範囲内に存在するラマンスペクトルピークの強度IDの比ID/IGである。言い替えれば、R値は、Gバンド幅に対するDバンド幅の強度比である。ただし、ラマン分光法に用いるレーザは、アルゴンレーザ(波長=514.5nm)とする。
メジアン径D50は、例えば、粒度分布計を用いて測定可能である。この粒度分布計は、例えば、株式会社堀場製作所製のレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置 LA−960などである。
また、複数の第1負極活物質粒子は、所定の混合比を有している。具体的には、複数の第1負極活物質粒子の重量と複数の第2負極活物質粒子の重量との総和に対する複数の第1負極活物質粒子の重量の割合は、10重量%〜50重量%である。この割合は、割合(重量%)=(複数の第1負極活物質粒子の重量/複数の第1負極活物質粒子の重量と複数の第2負極活物質粒子の重量との総和)×100により算出される。
(複数の第2負極活物質粒子)
複数の第2負極活物質粒子は、上記したように、複数の粒子状の負極活物質であるため、複数の第1負極活物質粒子と同様に、負極活物質層2中において分散されている。なお、「粒子(または粒子状)」に関する定義は、上記した通りである。
第2負極活物質粒子は、第1負極活物質粒子と同様に、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能である負極材料として、炭素系材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。第2負極活物質粒子が炭素系材料を含んでいる理由は、第1負極活物質粒子が炭素系材料を含んでいる理由と同様である。なお、炭素系材料に関する詳細は、上記した通りである。ただし、第2負極活物質粒子に含まれる炭素系材料の種類は、例えば、第1負極活物質粒子に含まれる炭素系材料の種類と同じでもよいし、第1負極活物質粒子に含まれる炭素系材料の種類と異なってもよい。
複数の第2負極活物質粒子は、所定の物性および寸法を有している。具体的には、複数の第2負極活物質粒子のR値は、0.1〜0.25である。ここで説明するR値の定義は、複数の第2負極活物質粒子を分析することにより測定されることを除いて、上記した通りである。また、複数の第2負極活物質粒子の平均粒径(メジアン径D50)は、15μm〜25μmである。R値の測定手順およびメジアン径D50の測定方法のそれぞれに関する詳細は、上記した通りである。なお、複数の第2負極活物質粒子は、所定の混合比を有している。具体的には、上記した複数の第1負極活物質粒子の混合比から明らかなように、複数の第1負極活物質粒子の重量と複数の第2負極活物質粒子の重量との総和に対する複数の第2負極活物質粒子の重量の割合は、50重量%〜90重量%である。この割合は、割合(重量%)=(複数の第2負極活物質粒子の重量/複数の第1負極活物質粒子の重量と複数の第2負極活物質粒子の重量との総和)×100により算出される。
ここで、上記した2種類の負極活物質(複数の第1負極活物質粒子および複数の第2負極活物質粒子)の黒鉛配向性は、特に限定されない。
この黒鉛配向性は、X線回折法により測定される2種類の負極活物質の(110)面に起因するピーク積分強度P1に対する、そのX線回折法により測定される2種類の負極活物質の(002)面に起因するピーク積分強度P2の比P(=P2/P1)である。ただし、(110)面に起因するピークの位置2θは76.3°であると共に、(002)面に起因するピークの位置は26.5°とする。
中でも、比Pは、36〜42であることが好ましい。2種類の負極活物質(複数の第1負極活物質粒子および複数の第2負極活物質粒子)の黒鉛配向性が適正化されるため、負極が電極反応物質を吸蔵および放出しやすくなるからである。
なお、二次電池に用いられている負極(2種類の負極活物質)に関して、上記した材質、R値、メジアン径D50(μm)および混合比(重量%)のそれぞれを特定する手順は、例えば、以下の通りである。
最初に、完全放電状態の二次電池を解体することにより、負極を回収したのち、負極活物質層2から負極集電体1を剥離させる。続いて、溶媒中に負極活物質層2を投入したのち、その溶媒を撹拌することにより、第1負極結着剤および第2負極結着剤などを溶解させる。これにより、2種類の負極活物質(複数の第1負極活物質粒子および複数の第2負極活物質粒子)が回収される。なお、溶媒の種類は、特に限定されないが、例えば、純水およびN−メチル−2−ピロリドンなどのうちのいずれか1種類または2種類以上である。続いて、遠心分離機などを用いた浮遊沈殿法を利用して、2種類の負極活物質を分離する。この浮遊沈殿法では、水などの溶媒中に2種類の負極活物質を分散させたのち、遠心分離機を用いて2種類の負極活物質を処理しながら、浮遊した軽量の負極活物質を選択的に採取することにより、粒度に応じて2種類の負極活物質を分離する。この場合には、遠心分離機を用いる際に、回転数および放置時間などの処理条件を変更する。また、動的光散乱法(DLS:Dynamic light scattering)などを用いて負極活物質の粒度を測定することにより、2種類の負極活物質の配合比を特定する。これにより、複数の第1負極活物質粒子が回収されると共に、複数の第2負極活物質粒子が回収される。
最後に、各種分析法および各種分析装置を用いて、複数の第1負極活物質粒子および複数の第2負極活物質粒子のそれぞれを分析する。
第1に、ラマン分光法などを用いて複数の第1負極活物質粒子を分析することにより、その複数の第1負極活物質粒子が炭素系材料を含んでいるかどうかを特定すると共に、ラマン分光法などを用いて複数の第2負極活物質粒子を分析することにより、その複数の第2負極活物質粒子が炭素系材料を含んでいるかどうかを特定する。特に、ラマン分光法を用いることにより、黒鉛を同定することができる。
第2に、ラマン分光法を用いて複数の第1負極活物質粒子を分析することにより、R値を求めると共に、粒度分布計を用いて複数の第1負極活物質粒子を分析することにより、メジアン径D50を求める。
第3に、ラマン分光法を用いて複数の第2負極活物質粒子を分析することにより、R値を求めると共に、粒度分布計を用いて複数の第2負極活物質粒子を分析することにより、メジアン径D50を求める。
第4に、複数の第1負極活物質粒子の重量および複数の第2負極活物質粒子の重量のそれぞれを測定することにより、混合比を求める。
(第1負極結着剤)
第1負極結着剤は、スチレンブタジエンゴムおよびその誘導体のうちの一方または双方を含んでいる。すなわち、第1負極結着剤は、スチレンブタジエンゴムだけを含んでいてもよいし、スチレンブタジエンゴムの誘導体だけを含んでいてもよいし、双方を含んでいてもよい。ただし、スチレンブタジエンゴムの誘導体の種類は、1種類だけでもよいし、2種類以上でもよい。
スチレンブタジエンゴムの誘導体は、スチレンブタジエンゴムに1種類または2種類以上の基(誘導基)が導入された化合物である。この誘導基の種類、数および導入場所などは、スチレンブタジエンゴムが本質的に有している物性などに大きな影響を与えない限り、特に限定されない。具体的には、誘導基は、例えば、飽和炭化水素基でもよいし、不飽和炭化水素基でもよいし、炭素および水素と共に酸素、窒素および硫黄などの非炭素元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を構成元素として含む基でもよいし、それ以外の基でもよい。
(第2負極結着剤)
第2負極結着剤は、ポリフッ化ビニリデンおよびその誘導体のうちの一方または双方を含んでいる。すなわち、第2負極結着剤は、ポリフッ化ビニリデンだけを含んでいてもよいし、ポリフッ化ビニリデンの誘導体だけを含んでいてもよいし、双方を含んでいてもよい。ただし、ポリフッ化ビニリデンの誘導体の種類は、1種類だけでもよいし、2種類以上でもよい。
ポリフッ化ビニリデンの誘導体に関する詳細は、スチレンブタジエンゴムに代えてポリフッ化ビニリデンに1種類または2種類以上の誘導基が導入されることを除いて、上記したスチレンブタジエンゴムの誘導体に関する詳細と同様である。
なお、二次電池に用いられている負極(2種類の負極結着剤)に関して、上記した材質を特定する手順は、例えば、以下の通りである。
最初に、完全放電状態の二次電池を解体することにより、負極を回収したのち、負極活物質層2から負極集電体1を剥離させる。こののち、赤外分光法などを用いて負極活物質層2の表面を分析することにより、その負極活物質層2に含まれている2種類の負極結着剤(第1負極結着剤および第2負極結着剤)の種類(材質)を特定する。
ここで、負極が2種類の負極活物質(複数の第1負極活物質粒子および複数の第2負極活物質粒子)および2種類の負極結着剤(第1負極結着剤および第2負極結着剤)を含んでいると共に、それらの材質、物性、寸法および混合比に関して上記した条件が満たされているのは、以下で説明する理由により、高いエネルギー密度が得られると共に、負極が電極反応物質を著しく吸蔵および放出しやすくなるからである。
詳細には、第1に、相対的に高いR値を有していると共に相対的に小さいメジアン径D50を有している複数の第1負極活物質粒子は、本質的に、電極反応物質を吸蔵および放出しやすい性質を有している。これにより、複数の第1負極活物質粒子を含んでいる負極は、電極反応物質を吸蔵および放出しやすくなる。しかも、複数の第1負極活物質粒子は、後述する負極の製造時(圧縮成形時)において、潰れにくい性質を有している。これにより、複数の第1負極活物質粒子では、炭素系材料の配向性が抑制されるため、負極が電極反応物質をより吸蔵および放出しやすくなると共に、複数の第1負極活物質粒子の間に隙間が形成されやすくなるため、負極に電解液が含浸しやすくなる。
第2に、相対的に低いR値を有していると共に相対的に大きいメジアン径D50を有している複数の第2負極活物質粒子では、炭素系材料の結晶性が高くなる。これにより、負極のエネルギー密度が向上する。一方、複数の第2負極活物質粒子は、上記した負極の製造時において、潰れやすい性質を有している。これにより、炭素系材料の配向性を抑制しにくくなるため、負極が電極反応物質を吸蔵および放出しにくくなると共に、複数の第1負極活物質粒子の間に隙間が形成されにくくなるため、負極に電解液が含浸しにくくなる。
第3に、第1負極結着剤(スチレンブタジエンゴム)と第2負極結着剤(ポリフッ化ビニリデン)とを併用することにより、複数の第1負極活物質粒子および複数の第2負極活物質粒子のそれぞれでは、炭素系材料の配向性が特異的に抑制されるため、負極が電極反応物質をより吸蔵および放出しやすくなる。スチレンブタジエンおよびポリフッ化ビニリデンのそれぞれに起因する被膜が炭素系材料の表面を均一に被覆するように形成されるからである。これにより、複数の第1負極活物質粒子および複数の第2負極活物質粒子のそれぞれの機械的強度が向上すると共に、上記した負極の製造時において複数の第1負極活物質粒子および複数の第2負極活物質粒子のそれぞれが潰れにくくなる。なお、ここで説明した利点は、第1負極結着剤(スチレンブタジエンゴムの誘導体)および第2負極結着剤(ポリフッ化ビニリデンの誘導体)を用いた場合においても同様に得られる。
これらのことから、上記した複数の第1負極活物質粒子、複数の第2負極活物質粒子、第1負極結着剤および第2負極結着剤を組み合わせた相乗作用により、炭素系材料の配向性が改善されると共に、負極に電解液が含浸しやすくなる。よって、高いエネルギー密度が得られると共に、負極が電極反応物質を著しく吸蔵および放出しやすくなる。この場合には、特に、複数の第2負極活物質粒子の混合比を増加させることにより、負極を用いた二次電池の電池容量が向上する。
(他の負極活物質)
なお、負極活物質層2は、上記した2種類の負極活物質(複数の第1負極活物質粒子および複数の第2負極活物質粒子)と共に、他の負極活物質のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
他の負極活物質は、例えば、金属元素および半金属元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を構成元素として含む材料である。高いエネルギー密度が得られるからである。以下では、金属元素および半金属元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を構成元素として含む材料を「金属系材料」と呼称する。
金属系材料は、単体、合金および化合物のうちのいずれでもよいし、それらのうちの2種類以上でもよいし、それらのうちの1種類または2種類以上の相を少なくとも一部に有する材料でもよい。ただし、合金には、2種類以上の金属元素からなる材料に加えて、1種類以上の金属元素と1種類以上の半金属元素とを含む材料も含まれる。また、合金は、非金属元素を含んでいてもよい。この金属系材料の組織は、例えば、固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物およびそれらの2種類以上の共存物などである。
上記した金属元素および半金属元素は、例えば、電極反応物質と合金を形成可能である金属元素および半金属元素のうちのいずれか1種類または2種類以上である。具体的には、例えば、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)および白金(Pt)などである。
中でも、ケイ素およびスズのうちの一方または双方が好ましい。電極反応物質を吸蔵放出する能力が優れているため、著しく高いエネルギー密度が得られるからである。
ケイ素およびスズのうちの一方または双方を構成元素として含む材料は、ケイ素の単体、合金および化合物のうちのいずれでもよいし、スズの単体、合金および化合物のうちのいずれでもよいし、それらのうちの2種類以上でもよいし、それらのうちの1種類または2種類以上の相を少なくとも一部に有する材料でもよい。ここで説明する単体とは、あくまで一般的な意味合いでの単体(微量の不純物を含んでいてもよい)を意味しており、必ずしも純度100%を意味しているわけではない。
ケイ素の合金は、例えば、ケイ素以外の構成元素として、スズ、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロムなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ケイ素の化合物は、例えば、ケイ素以外の構成元素として、炭素および酸素などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。なお、ケイ素の化合物は、例えば、ケイ素以外の構成元素として、ケイ素の合金に関して説明した一連の元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
ケイ素の合金およびケイ素の化合物のそれぞれの具体例は、SiB4 、SiB6 、Mg2 Si、Ni2 Si、TiSi2 、MoSi2 、CoSi2 、NiSi2 、CaSi2 、CrSi2 、Cu5 Si、FeSi2 、MnSi2 、NbSi2 、TaSi2 、VSi2 、WSi2 、ZnSi2 、SiC、Si3 N4 、Si2 N2 O、SiOv (0<v≦2)、およびLiSiOなどである。なお、SiOv におけるvは、0.2<v<1.4でもよい。
スズの合金は、例えば、スズ以外の構成元素として、ケイ素、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロムなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。スズの化合物は、例えば、スズ以外の構成元素として、炭素および酸素などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。なお、スズの化合物は、例えば、スズ以外の構成元素として、スズの合金に関して説明した一連の元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
スズの合金およびスズの化合物の具体例は、SnOw (0<w≦2)、SnSiO3 、LiSnOおよびMg2 Snなどである。
特に、スズを構成元素として含む材料は、例えば、第1構成元素であるスズと共に第2構成元素および第3構成元素を含む材料(Sn含有材料)であることが好ましい。第2構成元素は、例えば、コバルト、鉄、マグネシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、銀、インジウム、セシウム(Ce)、ハフニウム(Hf)、タンタル、タングステン、ビスマスおよびケイ素などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。第3構成元素は、例えば、ホウ素、炭素、アルミニウムおよびリンなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
中でも、Sn含有材料は、スズとコバルトと炭素とを構成元素として含む材料(SnCoC含有材料)であることが好ましい。このSnCoC含有材料では、例えば、炭素の含有量が9.9質量%〜29.7質量%、スズおよびコバルトの含有量の割合(Co/(Sn+Co))が20質量%〜70質量%である。高いエネルギー密度が得られるからである。
SnCoC含有材料は、スズとコバルトと炭素とを含む相を有しており、その相は、低結晶性または非晶質であることが好ましい。この相は、電極反応物質と反応可能な反応相であるため、その反応相の存在により優れた特性が得られる。この反応相のX線回折により得られる回折ピークの半値幅(回折角2θ)は、特定X線としてCuKα線を用いると共に挿引速度を1°/minとした場合において、1°以上であることが好ましい。電極反応物質がより円滑に吸蔵放出されると共に、電解液との反応性が低減するからである。なお、SnCoC含有材料は、低結晶性または非晶質の相に加えて、各構成元素の単体または一部が含まれている相を含んでいる場合もある。
X線回折により得られた回折ピークが電極反応物質と反応することが可能な反応相に対応するものであるか否かは、電極反応物質との電気化学的反応の前後におけるX線回折チャートを比較すれば容易に判断できる。例えば、電極反応物質との電気化学的反応の前後において回折ピークの位置が変化すれば、電極反応物質と反応可能な反応相に対応するものである。この場合には、例えば、低結晶性または非晶質の反応相の回折ピークが2θ=20°〜50°の間に見られる。このような反応相は、例えば、上記した各構成元素を含んでおり、主に、炭素の存在に起因して低結晶化または非晶質化しているものと考えられる。
SnCoC含有材料では、構成元素である炭素のうちの少なくとも一部が他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合していることが好ましい。スズなどの凝集または結晶化が抑制されるからである。元素の結合状態に関しては、例えば、X線光電子分光法(XPS)を用いて確認可能である。市販の装置では、例えば、軟X線としてAl−Kα線またはMg−Kα線などが用いられる。炭素のうちの少なくとも一部が金属元素または半金属元素などと結合している場合には、炭素の1s軌道(C1s)の合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる。なお、金原子の4f軌道(Au4f)のピークは、84.0eVに得られるようにエネルギー較正されているものとする。この際、通常、物質表面に表面汚染炭素が存在しているため、その表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとして、そのピークをエネルギー基準とする。XPS測定において、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークとSnCoC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形で得られる。このため、例えば、市販のソフトウエアを用いて解析することで、両者のピークを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
このSnCoC含有材料は、構成元素がスズ、コバルトおよび炭素だけである材料(SnCoC)に限られない。このSnCoC含有材料は、例えば、スズ、コバルトおよび炭素に加えて、さらにケイ素、鉄、ニッケル、クロム、インジウム、ニオブ、ゲルマニウム、チタン、モリブデン、アルミニウム、リン、ガリウムおよびビスマスなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を構成元素として含んでいてもよい。
SnCoC含有材料の他、スズとコバルトと鉄と炭素とを構成元素として含む材料(SnCoFeC含有材料)も好ましい。このSnCoFeC含有材料の組成は、任意である。一例を挙げると、鉄の含有量を少なめに設定する場合は、炭素の含有量が9.9質量%〜29.7質量%、鉄の含有量が0.3質量%〜5.9質量%、スズおよびコバルトの含有量の割合(Co/(Sn+Co))が30質量%〜70質量%である。また、鉄の含有量を多めに設定する場合は、炭素の含有量が11.9質量%〜29.7質量%、スズ、コバルトおよび鉄の含有量の割合((Co+Fe)/(Sn+Co+Fe))が26.4質量%〜48.5質量%、コバルトおよび鉄の含有量の割合(Co/(Co+Fe))が9.9質量%〜79.5質量%である。このような組成範囲において、高いエネルギー密度が得られるからである。なお、SnCoFeC含有材料の物性(半値幅など)は、上記したSnCoC含有材料の物性と同様である。
この他、負極材料は、例えば、金属酸化物および高分子化合物などのうちのいずれか1種類または2種類以上でもよい。金属酸化物は、例えば、酸化鉄、酸化ルテニウムおよび酸化モリブデンなどである。高分子化合物は、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリンおよびポリピロールなどである。
(他の負極結着剤)
なお、負極活物質層2は、上記した2種類の負極結着剤(第1負極結着剤および第2負極結着剤)と共に、他の負極結着剤のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
他の負極結着剤は、例えば、合成ゴムおよび高分子化合物などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。ただし、上記したスチレンブタジエンゴムおよびその誘導体は、ここで説明する合成ゴムから除かれると共に、上記したポリフッ化ビニリデンおよびその誘導体は、ここで説明する高分子化合物から除かれる。
合成ゴムは、例えば、フッ素系ゴムおよびエチレンプロピレンジエンなどである。高分子化合物は、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリアミドおよびポリイミドなどである。ポリメタクリル酸エステルは、例えば、ポリメタクリル酸メチルおよびポリメタクリル酸エチルなどである。
(負極導電剤)
負極導電剤は、例えば、炭素材料などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。この炭素材料は、例えば、黒鉛、カーボンブラックおよび繊維状炭素などであり、そのカーボンブラックは、例えば、アセチレンブラックおよびケチェンブラックなどである。ただし、負極導電剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料および導電性高分子などでもよい。
なお、負極活物質層2は、例えば、塗布法、気相法、液相法、溶射法および焼成法(焼結法)などのうちのいずれか1種類または2種類以上の方法により形成されている。
塗布法とは、例えば、複数の粒子状(粉末状)の負極活物質と負極結着剤などとの混合物が有機溶剤などにより分散または溶解された溶液を調製したのち、その溶液を負極集電体1に塗布する方法である。
気相法は、例えば、物理堆積法および化学堆積法などである。より具体的には、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、熱化学気相成長、化学気相成長(CVD)法およびプラズマ化学気相成長法などである。
液相法は、例えば、電解鍍金法および無電解鍍金法などである。溶射法とは、溶融状態または半溶融状態の負極活物質を負極集電体1の表面に噴き付ける方法である。
焼成法とは、例えば、塗布法を用いて溶液を負極集電体1に塗布したのち、負極結着剤などの融点よりも高い温度で塗膜を熱処理する方法である。この焼成法は、例えば、雰囲気焼成法、反応焼成法およびホットプレス焼成法などである。
<1−2.製造方法>
この負極は、例えば、以下で説明する手順により製造される。
なお、第1負極活物質粒子、第2負極活物質粒子、第1負極結着剤および第2負極結着剤のそれぞれの材質などに関しては既に詳細に説明したので、以下では、その説明を随時省略する。
負極を製造する場合には、最初に、2種類の負極活物質(複数の第1負極活物質粒子および複数の第2負極活物質粒子)と、2種類の負極結着剤(第1負極結着剤および第2負極結着剤)と、必要に応じて負極導電剤などとを混合することにより、負極合剤とする。続いて、溶媒中に負極合剤を溶解または分散させることにより、ペースト状の負極合剤スラリーとする。最後に、負極集電体1の両面に負極合剤スラリーを塗布したのち、その負極合剤スラリーを乾燥させることにより、負極活物質層2を形成する。こののち、必要に応じて、ロールプレス機などを用いて負極活物質層2を圧縮成型してもよい。この場合には、負極活物質層2を加熱しながら圧縮成型してもよいし、その圧縮成型を複数回繰り返してもよい。
これにより、負極集電体1の上に負極活物質層2が形成されるため、負極が完成する。
<1−3.作用および効果>
この負極によれば、2種類の負極活物質(複数の第1負極活物質粒子および複数の第2負極活物質粒子)および2種類の負極結着剤(第1負極結着剤および第2負極結着剤)を含んでおり、その2種類の負極活物質および2種類の負極結着剤のそれぞれの材質、物性、寸法および混合比に関して上記した条件が満たされている。この場合には、上記したように、高いエネルギー密度が得られると共に、電極反応物質が著しく吸蔵および放出されやすくなるため、優れた電池特性を得ることができる。
特に、2種類の負極活物質(複数の第1負極活物質粒子および複数の第2負極活物質粒子)の黒鉛配向性に関する比Pが36〜42以下であれば、その2種類の負極活物質の黒鉛配向性が適正化されるため、より高い効果を得ることができる。
<2.二次電池>
次に、上記した本技術の一実施形態の負極を用いた二次電池に関して説明する。
<2−1.リチウムイオン二次電池(円筒型)>
図2は、二次電池の断面構成を表している。図3は、図2に示した巻回電極体20のうちの一部の断面構成を表している。
ここで説明する二次電池は、例えば、電極反応物質であるリチウムの吸蔵および放出により負極22の容量が得られるリチウムイオン二次電池である。
[全体構成]
二次電池は、円筒型の電池構造を有している。この二次電池は、例えば、図2に示したように、中空円柱状の電池缶11の内部に、一対の絶縁板12,13と、電池素子である巻回電極体20とを備えている。巻回電極体20では、例えば、セパレータ23を介して積層された正極21および負極22が巻回されている。この巻回電極体20には、例えば、液状の電解質である電解液が含浸されている。
電池缶11は、例えば、一端部が閉鎖されると共に他端部が開放された中空構造を有しており、例えば、鉄、アルミニウムおよびそれらの合金などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。この電池缶11の表面には、ニッケルなどが鍍金されていてもよい。一対の絶縁板12,13は、巻回電極体20を挟んでいると共に、その巻回電極体20の巻回周面に対して垂直に延在している。
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、安全弁機構15と、熱感抵抗素子(PTC素子)16とがガスケット17を介してかしめられているため、その電池缶11は、密閉されている。ただし、熱感抵抗素子16は、省略されてもよい。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料を含んでいる。安全弁機構15および熱感抵抗素子16のそれぞれは、電池蓋14の内側に設けられており、その安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されている。この安全弁機構15では、内部短絡または外部からの加熱などに起因して内圧が一定以上になると、ディスク板15Aが反転するため、電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続が切断される。大電流に起因する異常な発熱を防止するために、熱感抵抗素子16の電気抵抗は、温度の上昇に応じて増加する。ガスケット17は、例えば、絶縁性材料を含んでおり、そのガスケット17の表面には、アスファルトなどが塗布されていてもよい。
巻回電極体20の巻回中心に生じた空間には、例えば、センターピン24が挿入されている。ただし、センターピン24は、省略されてもよい。正極21には、正極リード25が接続されていると共に、負極22には、負極リード26が接続されている。正極リード25は、例えば、アルミニウムなどの導電性材料を含んでいる。この正極リード25は、例えば、安全弁機構15に接続されていると共に、電池蓋14と電気的に導通している。負極リード26は、例えば、ニッケルなどの導電性材料を含んでいる。この負極リード26は、例えば、電池缶11に接続されており、その電池缶11と電気的に導通している。
(正極)
正極21は、例えば、図3に示したように、正極集電体21Aと、その正極集電体21Aの上に設けられた正極活物質層13Bとを含んでいる。
なお、正極活物質層21Bは、正極集電体21Aの片面だけに設けられていてもよいし、正極集電体21Aの両面に設けられていてもよい。図3では、例えば、正極活物質層21Bが正極集電体21Aの両面に設けられている場合を示している。
正極集電体21Aは、例えば、導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。導電性材料の種類は、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、ニッケルおよびステンレスなどの金属材料である。この金属材料は、金属の単体に限らず、合金でもよい。なお、負極集電体21Aは、単層でもよいし、多層でもよい。
正極活物質層21Bは、正極活物質として、リチウムを吸蔵放出することが可能である正極材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、正極活物質層21Bは、さらに、正極結着剤および正極導電剤などの他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
正極材料は、リチウム含有化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上であることが好ましい。このリチウム含有化合物の種類は、特に限定されないが、中でも、リチウム含有複合酸化物およびリチウム含有リン酸化合物が好ましい。高いエネルギー密度が得られるからである。
「リチウム含有複合酸化物」とは、リチウムと他元素のうちのいずれか1種類または2種類以上とを構成元素として含む酸化物である。この「他元素」とは、リチウム以外の元素である。このリチウム含有酸化物は、例えば、層状岩塩型およびスピネル型などのうちのいずれか1種類または2種類以上の結晶構造を有している。
「リチウム含有リン酸化合物」とは、リチウムと他元素のうちのいずれか1種類または2種類以上とを構成元素として含むリン酸化合物である。このリチウム含有リン酸化合物は、例えば、オリビン型などのうちのいずれか1種類または2種類以上の結晶構造を有している。
他元素の種類は、任意の元素(リチウムを除く。)のうちのいずれか1種類または2種類以上であれば、特に限定されない。中でも、他元素は、長周期型周期表における2族〜15族に属する元素のうちのいずれか1種類または2種類以上であることが好ましい。より具体的には、他元素は、ニッケル、コバルト、マンガンおよび鉄などのうちのいずれか1種類または2種類以上の金属元素であることがより好ましい。高い電圧が得られるからである。
層状岩塩型の結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物は、例えば、下記の式(1)〜式(3)のそれぞれで表される化合物などである。
Lia Mn(1-b-c) Nib M1c O(2-d) Fe ・・・(1)
(M1は、コバルト、マグネシウム、アルミニウム、ホウ素、チタン、バナジウム、クロム、鉄、銅、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、スズ、カルシウム、ストロンチウムおよびタングステンのうちの少なくとも1種である。a〜eは、0.8≦a≦1.2、0<b<0.5、0≦c≦0.5、(b+c)<1、−0.1≦d≦0.2および0≦e≦0.1を満たす。ただし、リチウムの組成は充放電状態に応じて異なり、aは完全放電状態の値である。)
Lia Ni(1-b) M2b O(2-c) Fd ・・・(2)
(M2は、コバルト、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、ホウ素、チタン、バナジウム、クロム、鉄、銅、亜鉛、モリブデン、スズ、カルシウム、ストロンチウムおよびタングステンのうちの少なくとも1種である。a〜dは、0.8≦a≦1.2、0.005≦b≦0.5、−0.1≦c≦0.2および0≦d≦0.1を満たす。ただし、リチウムの組成は充放電状態に応じて異なり、aは完全放電状態の値である。)
Lia Co(1-b) M3b O(2-c) Fd ・・・(3)
(M3は、ニッケル、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、ホウ素、チタン、バナジウム、クロム、鉄、銅、亜鉛、モリブデン、スズ、カルシウム、ストロンチウムおよびタングステンのうちの少なくとも1種である。a〜dは、0.8≦a≦1.2、0≦b<0.5、−0.1≦c≦0.2および0≦d≦0.1を満たす。ただし、リチウムの組成は充放電状態に応じて異なり、aは完全放電状態の値である。)
層状岩塩型の結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物は、例えば、LiNiO2 、LiCoO2 、LiCo0.98Al0.01Mg0.01O2 、LiNi0.5 Co0.2 Mn0.3 O2 、LiNi0.8 Co0.15Al0.05O2 、LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2 、Li1.2 Mn0.52Co0.175 Ni0.1 O2 およびLi1.15(Mn0.65Ni0.22Co0.13)O2 などである。
なお、層状岩塩型の結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物がニッケル、コバルト、マンガンおよびアルミニウムを構成元素として含む場合には、そのニッケルの原子比率は、50原子%以上であることが好ましい。高いエネルギー密度が得られるからである。
スピネル型の結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物は、例えば、下記の式(4)で表される化合物などである。
Lia Mn(2-b) M4b Oc Fd ・・・(4)
(M4は、コバルト、ニッケル、マグネシウム、アルミニウム、ホウ素、チタン、バナジウム、クロム、鉄、銅、亜鉛、モリブデン、スズ、カルシウム、ストロンチウムおよびタングステンのうちの少なくとも1種である。a〜dは、0.9≦a≦1.1、0≦b≦0.6、3.7≦c≦4.1および0≦d≦0.1を満たす。ただし、リチウムの組成は充放電状態に応じて異なり、aは完全放電状態の値である。)
スピネル型の結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物は、例えば、LiMn2 O4 などである。
オリビン型の結晶構造を有するリチウム含有リン酸化合物は、例えば、下記の式(5)で表される化合物などである。
Lia M5PO4 ・・・(5)
(M5は、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、マグネシウム、アルミニウム、ホウ素、チタン、バナジウム、ニオブ、銅、亜鉛、モリブデン、カルシウム、ストロンチウム、タングステンおよびジルコニウムのうちの少なくとも1種である。aは、0.9≦a≦1.1を満たす。ただし、リチウムの組成は充放電状態に応じて異なり、aは完全放電状態の値である。)
オリビン型の結晶構造を有するリチウム含有リン酸化合物は、例えば、LiFePO4 、LiMnPO4 、LiFe0.5 Mn0.5 PO4 およびLiFe0.3 Mn0.7 PO4 などである。
なお、リチウム含有複合酸化物は、下記の式(6)で表される化合物などでもよい。
(Li2 MnO3 )x (LiMnO2 )1-x ・・・(6)
(xは、0≦x≦1を満たす。)
この他、正極材料は、例えば、酸化物、二硫化物、カルコゲン化物および導電性高分子などでもよい。酸化物は、例えば、酸化チタン、酸化バナジウムおよび二酸化マンガンなどである。二硫化物は、例えば、二硫化チタンおよび硫化モリブデンなどである。カルコゲン化物は、例えば、セレン化ニオブなどである。導電性高分子は、例えば、硫黄、ポリアニリンおよびポリチオフェンなどである。
正極結着剤は、例えば、合成ゴムおよび高分子化合物などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。合成ゴムは、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムおよびエチレンプロピレンジエンなどである。高分子化合物は、例えば、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸およびポリイミドなどである。
正極導電剤に関するは、例えば、上記した負極導電剤に関する詳細と同様である。
(負極)
負極22は、例えば、上記した本技術の一実施形態の負極と同様の構成を有している。すなわち、負極22は、例えば、図3に示したように、負極集電体21Aと、その負極集電体21Aの上に設けられた負極活物質層21Bとを含んでいる。負極集電体21Aおよび負極活物質層21Bのそれぞれ構成は、負極集電体1および負極活物質層2のそれぞれの構成と同様である。
ただし、充電途中において意図せずにリチウムが負極22の表面に析出することを防止するために、負極活物質の充電可能な容量は正極21の放電容量よりも大きいことが好ましい。すなわち、リチウムを吸蔵および放出することが可能である負極活物質の電気化学当量は、正極21の電気化学当量よりも大きいことが好ましい。
例えば、上記したように、充電途中において負極22の表面にリチウムが意図せずに析出することを防止するために、そのリチウムを吸蔵および放出することが可能である負極活物質の電気化学当量は、正極21の電気化学当量よりも大きいことが好ましい。また、完全充電時の開回路電圧(すなわち電池電圧)が4.25V以上であると、4.20Vである場合と比較して、同じ正極活物質を用いても単位質量当たりのリチウムの放出量が多くなるため、それに応じて正極活物質と負極活物質との量が調整されていることが好ましい。これにより、高いエネルギー密度が得られる。
(セパレータ)
セパレータ23は、正極21と負極22との間に配置されている。これにより、セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離すると共に、その正極21と負極22との接触に起因する電流の短絡を防止しながらリチウムイオンを通過させる。
このセパレータ23は、例えば、合成樹脂およびセラミックなどの多孔質膜のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、2種類以上の多孔質膜の積層膜でもよい。合成樹脂は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンおよびポリエチレンなどである。
なお、セパレータ23は、例えば、上記した多孔質膜(基材層)と、その基材層の上に設けられた高分子化合物層とを含んでいてもよい。正極21および負極22のそれぞれに対するセパレータ23の密着性が向上するため、巻回電極体20が歪みにくくなるからである。これにより、電解液の分解反応が抑制されると共に、基材層に含浸された電解液の漏液も抑制されるため、充放電を繰り返しても電気抵抗が上昇しにくくなると共に二次電池が膨れにくくなる。
高分子化合物層は、基材層の片面だけに設けられていてもよいし、基材層の両面に設けられていてもよい。この高分子化合物層は、例えば、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ポリフッ化ビニリデンは、物理的強度に優れていると共に、電気化学的に安定だからである。高分子化合物層を形成する場合には、例えば、有機溶剤などにより高分子材料が溶解された溶液を基材層に塗布したのち、その基材層を乾燥させる。なお、溶液中に基材層を浸漬させたのち、その基材層を乾燥させてもよい。
(電解液)
電解液は、例えば、溶媒のうちのいずれか1種類または2種類以上と、電解質塩のうちのいずれか1種類または2種類以上とを含んでいる。なお、電解液は、さらに、添加剤などの各種材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
溶媒は、有機溶媒などの非水溶媒を含んでいる。非水溶媒を含む電解液は、いわゆる非水電解液である。
具体的には、溶媒は、例えば、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、ラクトン、鎖状カルボン酸エステルおよびニトリル(モノニトリル)などである。優れた電池容量、サイクル特性および保存特性などが得られるからである。
環状炭酸エステルは、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレンおよび炭酸ブチレンなどである。鎖状炭酸エステルは、例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチルおよび炭酸メチルプロピルなどである。ラクトンは、例えば、γ−ブチロラクトンおよびγ−バレロラクトンなどである。鎖状カルボン酸エステルは、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチルおよびトリメチル酢酸エチルなどである。ニトリルは、例えば、アセトニトリル、メトキシアセトニトリルおよび3−メトキシプロピオニトリルなどである。
この他、溶媒は、例えば、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、燐酸トリメチルおよびジメチルスルホキシドなどでもよい。同様の利点が得られるからである。
中でも、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルおよび炭酸エチルメチルなどの炭酸エステルのうちのいずれか1種類または2種類以上が好ましい。より優れた電池容量、サイクル特性および保存特性などが得られるからである。
この場合には、炭酸エチレンおよび炭酸プロピレンなどの環状炭酸エステルである高粘度(高誘電率)溶媒(例えば比誘電率ε≧30)と、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルおよび炭酸ジエチルなどの鎖状炭酸エステルである低粘度溶媒(例えば粘度≦1mPa・s)との組み合わせがより好ましい。電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上するからである。
また、溶媒は、不飽和環状炭酸エステル、ハロゲン化炭酸エステル、スルホン酸エステル、酸無水物、ジニトリル化合物およびジイソシアネート化合物などでもよい。電解液の化学的安定性が向上するため、その電解液の分解反応などが抑制されるからである。
不飽和環状炭酸エステルは、1または2以上の不飽和結合(炭素間二重結合)を有する環状炭酸エステルである。この不飽和環状炭酸エステルは、例えば、炭酸ビニレン(1,3−ジオキソール−2−オン)、炭酸ビニルエチレン(4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン)および炭酸メチレンエチレン(4−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オン)などである。溶媒中における不飽和環状炭酸エステルの含有量は、特に限定されないが、例えば、0.01重量%〜10重量%である。
ハロゲン化炭酸エステルは、1または2以上のハロゲンを構成元素として含む環状または鎖状の炭酸エステルである。ハロゲンの種類は、特に限定されないが、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。環状ハロゲン化炭酸エステルは、例えば、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンおよび4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンなどである。鎖状ハロゲン化炭酸エステルは、例えば、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)および炭酸ジフルオロメチルメチルなどである。溶媒中におけるハロゲン化炭酸エステルの含有量は、特に限定されないが、例えば、0.01重量%〜50重量%である。
スルホン酸エステルは、例えば、モノスルホン酸エステルおよびジスルホン酸エステルなどである。モノスルホン酸エステルは、環状モノスルホン酸エステルでもよいし、鎖状モノスルホン酸エステルでもよい。環状モノスルホン酸エステルは、例えば、1,3−プロパンスルトンおよび1,3−プロペンスルトンなどのスルトンである。鎖状モノスルホン酸エステルは、例えば、環状モノスルホン酸エステルが途中で切断された化合物などである。ジスルホン酸エステルは、環状ジスルホン酸エステルでもよいし、鎖状ジスルホン酸エステルでもよい。溶媒中におけるスルホン酸エステルの含有量は、特に限定されないが、例えば、0.5重量%〜5重量%である。
酸無水物は、例えば、カルボン酸無水物、ジスルホン酸無水物およびカルボン酸スルホン酸無水物などである。カルボン酸無水物は、例えば、無水コハク酸、無水グルタル酸および無水マレイン酸などである。ジスルホン酸無水物は、例えば、無水エタンジスルホン酸および無水プロパンジスルホン酸などである。カルボン酸スルホン酸無水物は、例えば、無水スルホ安息香酸、無水スルホプロピオン酸および無水スルホ酪酸などである。溶媒中における酸無水物の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.5重量%〜5重量%である。
ジニトリル化合物は、例えば、NC−Cm H2m−CN(mは、1以上の整数である。)で表される化合物である。このジニトリル化合物は、例えば、スクシノニトリル(NC−C2 H4 −CN)、グルタロニトリル(NC−C3 H6 −CN)、アジポニトリル(NC−C4 H8 −CN)およびフタロニトリル(NC−C6 H4 −CN)などである。溶媒中におけるジニトリル化合物の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.5重量%〜5重量%である。
ジイソシアネート化合物は、例えば、OCN−Cn H2n−NCO(nは、1以上の整数である。)で表される化合物である。このジイソシアネート化合物は、例えば、OCN−C6 H12−NCOなどである。溶媒中におけるジイソシアネート化合物の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.5重量%〜5重量%である。
電解質塩は、例えば、リチウム塩のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、電解質塩は、例えば、リチウム塩以外の塩を含んでいてもよい。このリチウム以外の塩は、例えば、リチウム以外の軽金属の塩などである。
リチウム塩は、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )、過塩素酸リチウム(LiClO4 )、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6 )、テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C6 H5 )4 )、メタンスルホン酸リチウム(LiCH3 SO3 )、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4 )、六フッ化ケイ酸二リチウム(Li2 SiF6 )、塩化リチウム(LiCl)および臭化リチウム(LiBr)などである。優れた電池容量、サイクル特性および保存特性などが得られるからである。
中でも、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウムおよび六フッ化ヒ酸リチウムのうちのいずれか1種類または2種類以上が好ましく、六フッ化リン酸リチウムがより好ましい。内部抵抗が低下するため、より高い効果が得られるからである。
電解質塩の含有量は、特に限定されないが、中でも、溶媒に対して0.3mol/kg〜3.0mol/kgであることが好ましい。高いイオン伝導性が得られるからである。
[動作]
この二次電池は、例えば、以下のように動作する。
充電時には、正極21からリチウムイオンが放出されると共に、そのリチウムイオンが電解液を介して負極22に吸蔵される。一方、放電時には、負極22からリチウムイオンが放出されると共に、そのリチウムイオンが電解液を介して正極21に吸蔵される。
[製造方法]
この二次電池は、例えば、以下の手順により製造される。
正極21を作製する場合には、最初に、正極活物質と、正極結着剤および正極導電剤などとを混合することにより、正極合剤とする。続いて、有機溶剤などに正極合剤を分散させることにより、ペースト状の正極合剤スラリーとする。最後に、正極集電体21Aの両面に正極合剤スラリーを塗布したのち、その正極合剤スラリーを乾燥させることにより、正極活物質層21Bを形成する。こののち、ロールプレス機などを用いて正極活物質層21Bを圧縮成形してもよい。この場合には、正極活物質層21Bを加熱してもよいし、圧縮成形を複数回繰り返してもよい。
負極22を作製する場合には、上記した負極の製造手順と同様の手順により、負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bを形成する。
二次電池を組み立てる場合には、溶接法などを用いて正極集電体21Aに正極リード25を接続させると共に、溶接法などを用いて負極集電体22Aに負極リード26を接続させる。続いて、セパレータ23を介して積層された正極21および負極22を巻回させることにより、巻回電極体20を形成する。続いて、巻回電極体20の巻回中心に形成された空間に、センターピン24を挿入する。
続いて、一対の絶縁板12,13により巻回電極体20を挟みながら、その巻回電極体20を電池缶11の内部に収納する。この場合には、溶接法などを用いて正極リード25を安全弁機構15に接続させると共に、溶接法などを用いて負極リード26を電池缶11に接続させる。続いて、電池缶11の内部に電解液を注入することにより、その電解液を巻回電極体20に含浸させる。最後に、ガスケット17を介して電池缶11の開口端部に電池蓋14、安全弁機構15および熱感抵抗素子16をかしめる。
これにより、円筒型の二次電池が完成する。
[作用および効果]
この円筒型の二次電池によれば、負極22が上記した本技術の一実施形態の負極と同様の構成を有しているので、高いエネルギー密度が得られると共に、負極22がリチウムイオンを著しく吸蔵および放出しやすくなる。よって、優れた電池特性を得ることができる。
これ以外の作用および効果は、上記した本技術の一実施形態の負極に関して説明した場合と同様である。
<2−2.リチウムイオン二次電池(ラミネートフィルム型)>
図4は、他の二次電池の斜視構成を表している。図5は、図4に示したV−V線に沿った巻回電極体30の断面構成を表している。なお、図4では、巻回電極体30と外装部材40とが離間された状態を示している。
以下の説明では、既に説明した円筒型の二次電池の構成要素を随時引用する。
[全体構成]
二次電池は、ラミネートフィルム型の電池構造を有するリチウムイオン二次電池である。この二次電池は、例えば、図4に示したように、柔軟性を有するフィルム状の外装部材40の内部に、電池素子である巻回電極体30を備えている。巻回電極体30では、例えば、セパレータ35および電解質層36を介して正極33および負極34が積層されていると共に、その積層物が巻回されている。正極33には、正極リード31が接続されていると共に、負極34には、負極リード32が接続されている。巻回電極体30の最外周部は、保護テープ37により保護されている。
正極リード31および負極リード32のそれぞれは、例えば、外装部材40の内部から外部に向かって同一方向に導出されている。正極リード31は、例えば、アルミニウムなどの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。負極リード32は、例えば、銅、ニッケルおよびステンレスなどの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。これらの導電性材料は、例えば、薄板状または網目状である。
外装部材40は、例えば、図4に示した矢印Rの方向に折り畳むことが可能である1枚のフィルムであり、その外装部材40の一部には、巻回電極体30を収納するための窪みが設けられている。この外装部材40は、例えば、融着層と、金属層と、表面保護層とがこの順に積層されたラミネートフィルムである。二次電池の製造工程では、融着層同士が巻回電極体30を介して対向するように外装部材40が折り畳まれると共に、その融着層の外周縁部同士が融着される。ただし、外装部材40は、接着剤などを介して貼り合わされた2枚のラミネートフィルムでもよい。融着層は、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのフィルムのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。金属層は、例えば、アルミニウム箔などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。表面保護層は、例えば、ナイロンおよびポリエチレンテレフタレートなどのフィルムのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
中でも、外装部材40は、ポリエチレンフィルムと、アルミニウム箔と、ナイロンフィルムとがこの順に積層されたアルミラミネートフィルムであることが好ましい。ただし、外装部材40は、他の積層構造を有するラミネートフィルムでもよいし、ポリプロピレンなどの高分子フィルムでもよいし、金属フィルムでもよい。
外装部材40と正極リード31との間には、例えば、外気の侵入を防止するために密着フィルム41が挿入されている。また、外装部材40と負極リード32との間には、例えば、上記した密着フィルム41が挿入されている。この密着フィルム41は、正極リード31および負極リード32の双方に対して密着性を有する材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。この密着性を有する材料は、例えば、ポリオレフィン樹脂などであり、より具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンおよび変性ポリプロピレンなどである。
[正極、負極、セパレータおよび電解液]
正極33は、例えば、正極集電体33Aおよび正極活物質層33Bを含んでいる。負極34は、負極集電体34Aおよび負極活物質層34Bを含んでいる。正極集電体33A、正極活物質層33B、負極集電体34Aおよび負極活物質層34Bのそれぞれの構成は、例えば、正極集電体21A、正極活物質層21B、負極集電体22Aおよび負極活物質層22Bのそれぞれの構成と同様である。セパレータ35の構成は、例えば、セパレータ23の構成と同様である。
電解質層36は、電解液と、高分子化合物とを含んでいる。この電解液は、上記した円筒型の二次電池に用いられる電解液と同様の構成を有している。ここで説明する電解質層36は、いわゆるゲル状の電解質であり、その電解質層36中では、高分子化合物により電解液が保持されている。高いイオン伝導率(例えば、室温で1mS/cm以上)が得られると共に、電解液の漏液が防止されるからである。なお、電解質層36は、さらに、添加剤などの他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
高分子化合物は、単独重合体および共重合体などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。単独重合体は、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリフッ化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレンおよびポリカーボネートなどである。共重合体は、例えば、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロピレンとの共重合体などである。中でも、単独重合体は、ポリフッ化ビニリデンであることが好ましいと共に、共重合体は、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロピレンとの共重合体であることが好ましい。電気化学的に安定だからである。
ゲル状の電解質である電解質層36において、電解液に含まれる「溶媒」とは、液状の材料だけでなく、電解質塩を解離させることが可能なイオン伝導性を有する材料まで含む広い概念である。このため、イオン伝導性を有する高分子化合物を用いる場合には、その高分子化合物も溶媒に含まれる。
なお、電解質層36に代えて、電解液をそのまま用いてもよい。この場合には、電解液が巻回電極体30に含浸される。
[動作]
この二次電池は、例えば、以下のように動作する。
充電時には、正極33からリチウムイオンが放出されると共に、そのリチウムイオンが電解質層36を介して負極34に吸蔵される。一方、放電時には、負極34からリチウムイオンが放出されると共に、そのリチウムイオンが電解質層36を介して正極33に吸蔵される。
[製造方法]
ゲル状の電解質層36を備えた二次電池は、例えば、以下の3種類の手順により製造される。
第1手順では、正極21および負極22と同様の作製手順により、正極33および負極34を作製する。具体的には、正極33を作製する場合には、正極集電体33Aの両面に正極活物質層33Bを形成すると共に、負極34を作製する場合には、負極集電体34Aの両面に負極活物質層34Bを形成する。
続いて、電解液と、高分子化合物と、有機溶剤などとを混合することにより、前駆溶液を調製する。続いて、正極33に前駆溶液を塗布したのち、その前駆溶液を乾燥させることにより、ゲル状の電解質層36を形成する。また、負極34に前駆溶液を塗布したのち、その前駆溶液を乾燥させることにより、ゲル状の電解質層36を形成する。
続いて、溶接法などを用いて正極集電体33Aに正極リード31を接続させると共に、溶接法などを用いて負極集電体34Aに負極リード32を接続させる。続いて、セパレータ35および電解質層36を介して積層された正極33および負極34を巻回させることにより、巻回電極体30を形成する。続いて、巻回電極体30の最外周部に、保護テープ37を貼り付ける。続いて、巻回電極体30を挟むように外装部材40を折り畳んだのち、熱融着法などを用いて外装部材40の外周縁部同士を接着させることにより、その外装部材40の内部に巻回電極体30を封入する。この場合には、正極リード31と外装部材40との間に密着フィルム41を挿入すると共に、負極リード32と外装部材40との間に密着フィルム41を挿入する。
第2手順では、溶接法などを用いて正極33に正極リード31を接続させると共に、溶接法などを用いて負極34に負極リード32を接続させる。続いて、セパレータ35を介して積層された正極33および負極34を巻回させることにより、巻回電極体30の前駆体である巻回体を作製する。続いて、巻回体の最外周部に保護テープ37を貼り付ける。続いて、巻回電極体30を挟むように外装部材40を折り畳んだのち、熱融着法などを用いて外装部材40のうちの一辺の外周縁部を除いた残りの外周縁部を接着させることにより、袋状の外装部材40の内部に巻回体を収納する。
続いて、電解液と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを混合することにより、電解質用組成物を調製する。続いて、袋状の外装部材40の内部に電解質用組成物を注入したのち、熱融着法などを用いて外装部材40を密封する。続いて、モノマーを熱重合させることにより、高分子化合物を形成する。これにより、高分子化合物により電解液が保持されるため、ゲル状の電解質層36が形成される。
第3手順では、多孔質膜(基材層)に高分子化合物層が形成されたセパレータ35を用いることを除き、上記した第2手順と同様の手順により、巻回体を作製したのち、袋状の外装部材40の内部に巻回体を収納する。続いて、外装部材40の内部に電解液を注入したのち、熱融着法などを用いて外装部材40の開口部を密封する。続いて、外装部材40に加重をかけながら、その外装部材40を加熱することにより、高分子化合物層を介してセパレータ35を正極33に密着させると共に、高分子化合物層を介してセパレータ35を負極34に密着させる。これにより、電解液が高分子化合物層に含浸すると共に、その高分子化合物層がゲル化するため、電解質層36が形成される。
この第3手順では、第1手順と比較して、二次電池が膨れにくくなる。また、第3手順では、第2手順と比較して、溶媒およびモノマー(高分子化合物の原料)などが電解質層36中にほとんど残存しないため、高分子化合物の形成工程が良好に制御される。このため、正極33、負極34およびセパレータ35のそれぞれが電解質層36に対して十分に密着する。
[作用および効果]
このラミネートフィルム型の二次電池によれば、負極34が上記した本技術の一実施形態の負極と同様の構成を有しているので、円筒型の二次電池と同様の理由により、優れた電池特性を得ることができる。
これ以外の作用および効果は、上記した円筒型の二次電池に関して説明した場合と同様である。
<3.二次電池の用途>
次に、上記した二次電池の適用例に関して説明する。
二次電池の用途は、その二次電池を駆動用の電源または電力蓄積用の電力貯蔵源などとして利用可能である機械、機器、器具、装置およびシステム(複数の機器などの集合体)などであれば、特に限定されない。電源として用いられる二次電池は、主電源でもよいし、補助電源でもよい。主電源とは、他の電源の有無に関係なく、優先的に用いられる電源である。補助電源は、例えば、主電源の代わりに用いられる電源でもよいし、必要に応じて主電源から切り替えられる電源でもよい。二次電池を補助電源として用いる場合には、主電源の種類は二次電池に限られない。
二次電池の用途は、例えば、以下の通りである。ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、携帯電話機、ノート型パソコン、コードレス電話機、ヘッドホンステレオ、携帯用ラジオ、携帯用テレビおよび携帯用情報端末などの電子機器(携帯用電子機器を含む)である。電気シェーバなどの携帯用生活器具である。バックアップ電源およびメモリーカードなどの記憶用装置である。電動ドリルおよび電動鋸などの電動工具である。着脱可能な電源としてノート型パソコンなどに搭載される電池パックである。ペースメーカおよび補聴器などの医療用電子機器である。電気自動車(ハイブリッド自動車を含む)などの電動車両である。非常時などに備えて電力を蓄積しておく家庭用バッテリシステムなどの電力貯蔵システムである。もちろん、二次電池の用途は、上記以外の用途でもよい。
中でも、二次電池は、電池パック、電動車両、電力貯蔵システム、電動工具および電子機器などに適用されることが有効である。これらの用途では優れた電池特性が要求されるため、本技術の二次電池を用いることにより、有効に性能向上を図ることができるからである。なお、電池パックは、二次電池を用いた電源である。この電池パックは、後述するように、単電池を用いてもよいし、組電池を用いてもよい。電動車両は、二次電池を駆動用電源として作動(走行)する車両であり、上記したように、二次電池以外の駆動源を併せて備えた自動車(ハイブリッド自動車など)でもよい。電力貯蔵システムは、二次電池を電力貯蔵源として用いるシステムである。例えば、家庭用の電力貯蔵システムでは、電力貯蔵源である二次電池に電力が蓄積されているため、その電力を利用して家庭用の電気製品などを使用することが可能である。電動工具は、二次電池を駆動用の電源として可動部(例えばドリルなど)が可動する工具である。電子機器は、二次電池を駆動用の電源(電力供給源)として各種機能を発揮する機器である。
ここで、二次電池のいくつかの適用例に関して具体的に説明する。なお、以下で説明する適用例の構成は、あくまで一例であるため、その適用例の構成は、適宜変更可能である。
<3−1.電池パック(単電池)>
図6は、単電池を用いた電池パックの斜視構成を表している。図7は、図6に示した電池パックのブロック構成を表している。なお、図6では、電池パックが分解された状態を示している。
ここで説明する電池パックは、1つの本技術の二次電池を用いた簡易型の電池パック(いわゆるソフトパック)であり、例えば、スマートフォンに代表される電子機器などに搭載される。この電池パックは、例えば、図6に示したように、ラミネートフィルム型の二次電池である電源111と、その電源111に接続される回路基板116とを備えている。この電源111には、正極リード112および負極リード113が取り付けられている。
電源111の両側面には、一対の粘着テープ118,119が貼り付けられている。回路基板116には、保護回路(PCM:Protection・Circuit・Module )が形成されている。この回路基板116は、タブ114を介して正極112に接続されていると共に、タブ115を介して負極リード113に接続されている。また、回路基板116は、外部接続用のコネクタ付きリード線117に接続されている。なお、回路基板116が電源111に接続された状態において、その回路基板116は、ラベル120および絶縁シート121により保護されている。このラベル120が貼り付けられることにより、回路基板116および絶縁シート121などは固定されている。
また、電池パックは、例えば、図7に示しているように、電源111と、回路基板116とを備えている。回路基板116は、例えば、制御部121と、スイッチ部122と、PTC素子123と、温度検出部124とを備えている。電源111は、正極端子125および負極端子127を介して外部と接続されることが可能であるため、その電源111は、正極端子125および負極端子127を介して充放電される。温度検出部124は、温度検出端子(いわゆるT端子)126を用いて温度を検出する。
制御部121は、電池パック全体の動作(電源111の使用状態を含む)を制御する。この制御部121は、例えば、中央演算処理装置(CPU)およびメモリなどを含んでいる。
この制御部121は、例えば、電池電圧が過充電検出電圧に到達すると、スイッチ部122を切断させることにより、電源111の電流経路に充電電流が流れないようにする。また、制御部121は、例えば、充電時において大電流が流れると、スイッチ部122を切断させることにより、充電電流を遮断する。
一方、制御部121は、例えば、電池電圧が過放電検出電圧に到達すると、スイッチ部122を切断させることにより、電源111の電流経路に放電電流が流れないようにする。また、制御部121は、例えば、放電時において大電流が流れると、スイッチ部122を切断させることにより、放電電流を遮断する。
なお、過充電検出電圧は、例えば、4.2V±0.05Vであると共に、過放電検出電圧は、例えば、2.4V±0.1Vである。
スイッチ部122は、制御部121の指示に応じて、電源111の使用状態、すなわち電源111と外部機器との接続の有無を切り換える。このスイッチ部122は、例えば、充電制御スイッチおよび放電制御スイッチなどを含んでいる。充電制御スイッチおよび放電制御スイッチのそれぞれは、例えば、金属酸化物半導体を用いた電界効果トランジスタ(MOSFET)などの半導体スイッチである。なお、充放電電流は、例えば、スイッチ部122のON抵抗に基づいて検出される。
温度検出部124は、電源111の温度を測定すると共に、その温度の測定結果を制御部121に出力する。この温度検出部124は、例えば、サーミスタなどの温度検出素子を含んでいる。なお、温度検出部124により測定される温度の測定結果は、異常発熱時において制御部121が充放電制御を行う場合、残容量の算出時において制御部121が補正処理を行う場合などに用いられる。
なお、回路基板116は、PTC素子123を備えていなくてもよい。この場合には、別途、回路基板116にPTC素子が付設されていてもよい。
<3−2.電池パック(組電池)>
図8は、組電池を用いた電池パックのブロック構成を表している。
この電池パックは、例えば、筐体60の内部に、制御部61と、電源62と、スイッチ部63と、電流測定部64と、温度検出部65と、電圧検出部66と、スイッチ制御部67と、メモリ68と、温度検出素子69と、電流検出抵抗70と、正極端子71および負極端子72とを備えている。この筐体60は、例えば、プラスチック材料などを含んでいる。
制御部61は、電池パック全体の動作(電源62の使用状態を含む)を制御する。この制御部61は、例えば、CPUなどを含んでいる。電源62は、2以上の本技術の二次電池を含む組電池であり、その2以上の二次電池の接続形式は、直列でもよいし、並列でもよいし、双方の混合型でもよい。一例を挙げると、電源62は、2並列3直列となるように接続された6つの二次電池を含んでいる。
スイッチ部63は、制御部61の指示に応じて、電源62の使用状態、すなわち電源62と外部機器との接続の有無を切り換える。このスイッチ部63は、例えば、充電制御スイッチ、放電制御スイッチ、充電用ダイオードおよび放電用ダイオードなどを含んでいる。充電制御スイッチおよび放電制御スイッチのそれぞれは、例えば、金属酸化物半導体を用いた電界効果トランジスタ(MOSFET)などの半導体スイッチである。
電流測定部64は、電流検出抵抗70を用いて電流を測定すると共に、その電流の測定結果を制御部61に出力する。温度検出部65は、温度検出素子69を用いて温度を測定すると共に、その温度の測定結果を制御部61に出力する。この温度の測定結果は、例えば、異常発熱時において制御部61が充放電制御を行う場合、残容量の算出時において制御部61が補正処理を行う場合などに用いられる。電圧検出部66は、電源62中における二次電池の電圧を測定すると共に、アナログ−デジタル変換された電圧の測定結果を制御部61に供給する。
スイッチ制御部67は、電流測定部64および電圧検出部66のそれぞれから入力される信号に応じて、スイッチ部63の動作を制御する。
このスイッチ制御部67は、例えば、電池電圧が過充電検出電圧に到達すると、スイッチ部63(充電制御スイッチ)を切断することにより、電源62の電流経路に充電電流が流れないようにする。これにより、電源62では、放電用ダイオードを介して放電だけが可能になる。なお、スイッチ制御部67は、例えば、充電時に大電流が流れると、充電電流を遮断する。
また、スイッチ制御部67は、例えば、電池電圧が過放電検出電圧に到達すると、スイッチ部63(放電制御スイッチ)を切断することにより、電源62の電流経路に放電電流が流れないようにする。これにより、電源62では、充電用ダイオードを介して充電だけが可能になる。なお、スイッチ制御部67は、例えば、放電時に大電流が流れると、放電電流を遮断する。
なお、過充電検出電圧は、例えば、4.2V±0.05Vであると共に、過放電検出電圧は、例えば、2.4V±0.1Vである。
メモリ68は、例えば、不揮発性メモリであるEEPROMなどを含んでいる。このメモリ68には、例えば、制御部61により演算された数値、製造工程段階において測定された二次電池の情報(例えば、初期状態の内部抵抗など)などが記憶されている。なお、メモリ68に二次電池の満充電容量を記憶させておけば、制御部61が残容量などの情報を把握できる。
温度検出素子69は、電源62の温度を測定すると共に、その温度の測定結果を制御部61に出力する。この温度検出素子69は、例えば、サーミスタなどを含んでいる。
正極端子71および負極端子72のそれぞれは、電池パックを用いて稼働される外部機器(例えばノート型のパーソナルコンピュータなど)、電池パックを充電するために用いられる外部機器(例えば充電器など)などに接続される端子である。電源62は、正極端子71および負極端子72を介して充放電される。
<3−3.電動車両>
図9は、電動車両の一例であるハイブリッド自動車のブロック構成を表している。
この電動車両は、例えば、金属製の筐体73の内部に、制御部74と、エンジン75と、電源76と、駆動用のモータ77と、差動装置78と、発電機79と、トランスミッション80およびクラッチ81と、インバータ82,83と、各種センサ84とを備えている。この他、電動車両は、例えば、差動装置78およびトランスミッション80に接続された前輪用駆動軸85および前輪86と、後輪用駆動軸87および後輪88とを備えている。
この電動車両は、例えば、エンジン75およびモータ77のうちのいずれか一方を駆動源として用いて走行することが可能である。エンジン75は、主要な動力源であり、例えば、ガソリンエンジンなどである。エンジン75を動力源とする場合には、例えば、駆動部である差動装置78、トランスミッション80およびクラッチ81を介して、エンジン75の駆動力(回転力)が前輪86および後輪88に伝達される。なお、エンジン75の回転力が発電機79に伝達されるため、その回転力を利用して発電機79が交流電力を発生すると共に、その交流電力がインバータ83を介して直流電力に変換されるため、その直流電力が電源76に蓄積される。一方、変換部であるモータ77を動力源とする場合には、電源76から供給された電力(直流電力)がインバータ82を介して交流電力に変換されるため、その交流電力を利用してモータ77が駆動する。このモータ77により電力から変換された駆動力(回転力)は、例えば、駆動部である差動装置78、トランスミッション80およびクラッチ81を介して前輪86および後輪88に伝達される。
なお、制動機構を介して電動車両が減速すると、その減速時の抵抗力がモータ77に回転力として伝達されるため、その回転力を利用してモータ77が交流電力を発生させるようにしてもよい。この交流電力はインバータ82を介して直流電力に変換されるため、その直流回生電力は電源76に蓄積されることが好ましい。
制御部74は、電動車両全体の動作を制御する。この制御部74は、例えば、CPUなどを含んでいる。電源76は、1または2以上の本技術の二次電池を含んでいる。この電源76は、外部電源と接続されていると共に、その外部電源から電力供給を受けることにより、電力を蓄積させてもよい。各種センサ84は、例えば、エンジン75の回転数を制御すると共に、スロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御するために用いられる。この各種センサ84は、例えば、速度センサ、加速度センサおよびエンジン回転数センサなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
なお、電動車両がハイブリッド自動車である場合を例に挙げたが、その電動車両は、エンジン75を用いずに電源76およびモータ77だけを用いて作動する車両(電気自動車)でもよい。
<3−4.電力貯蔵システム>
図10は、電力貯蔵システムのブロック構成を表している。
この電力貯蔵システムは、例えば、一般住宅および商業用ビルなどの家屋89の内部に、制御部90と、電源91と、スマートメータ92と、パワーハブ93とを備えている。
ここでは、電源91は、例えば、家屋89の内部に設置された電気機器94に接続されていると共に、家屋89の外部に停車された電動車両96に接続されることが可能である。また、電源91は、例えば、家屋89に設置された自家発電機95にパワーハブ93を介して接続されていると共に、スマートメータ92およびパワーハブ93を介して外部の集中型電力系統97に接続されることが可能である。
なお、電気機器94は、例えば、1または2以上の家電製品を含んでおり、その家電製品は、例えば、冷蔵庫、エアコン、テレビおよび給湯器などである。自家発電機95は、例えば、太陽光発電機および風力発電機などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。電動車両96は、例えば、電気自動車、電気バイクおよびハイブリッド自動車などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。集中型電力系統97は、例えば、火力発電所、原子力発電所、水力発電所および風力発電所などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
制御部90は、電力貯蔵システム全体の動作(電源91の使用状態を含む)を制御する。この制御部90は、例えば、CPUなどを含んでいる。電源91は、1または2以上の本技術の二次電池を含んでいる。スマートメータ92は、例えば、電力需要側の家屋89に設置されるネットワーク対応型の電力計であり、電力供給側と通信することが可能である。これに伴い、スマートメータ92は、例えば、外部と通信しながら、家屋89における電力の需要と供給とのバランスを制御することにより、高効率で安定したエネルギー供給を可能とする。
この電力貯蔵システムでは、例えば、外部電源である集中型電力系統97からスマートメータ92およびパワーハブ93を介して電源91に電力が蓄積されると共に、独立電源である自家発電機95からパワーハブ93を介して電源91に電力が蓄積される。この電源91に蓄積された電力は、制御部90の指示に応じて電気機器94および電動車両96に供給されるため、その電気機器94が稼働可能になると共に、その電動車両96が充電可能になる。すなわち、電力貯蔵システムは、電源91を用いて、家屋89内における電力の蓄積および供給を可能にするシステムである。
電源91に蓄積された電力は、必要に応じて使用することが可能である。このため、例えば、電気使用料が安い深夜において、集中型電力系統97から電源91に電力を蓄積しておき、電気使用料が高い日中において、その電源91に蓄積された電力を用いることができる。
なお、上記した電力貯蔵システムは、1戸(1世帯)ごとに設置されていてもよいし、複数戸(複数世帯)ごとに設置されていてもよい。
<3−5.電動工具>
図11は、電動工具のブロック構成を表している。
ここで説明する電動工具は、例えば、電動ドリルである。この電動工具は、例えば、工具本体98の内部に、制御部99と、電源100とを備えている。この工具本体98には、例えば、可動部であるドリル部101が稼働(回転)可能に取り付けられている。
工具本体98は、例えば、プラスチック材料などを含んでいる。制御部99は、電動工具全体の動作(電源100の使用状態を含む)を制御する。この制御部99は、例えば、CPUなどを含んでいる。電源100は、1または2以上の本技術の二次電池を含んでいる。この制御部99は、動作スイッチの操作に応じて、電源100からドリル部101に電力を供給する。
本技術の実施例に関して説明する。
(実験例1〜22)
以下の手順により、図4および図5に示したラミネートフィルム型のリチウムイオン二次電池を作製した。
正極33を作製する場合には、最初に、正極活物質(LiCoO2 )98質量部と、正極結着剤(ポリフッ化ビニリデン)1質量部と、正極導電剤(カーボンブラック)1質量部とを混合することにより、正極合剤とした。続いて、有機溶剤(N−メチル−2−ピロリドン)に正極合剤を投入したのち、その有機溶剤を撹拌することにより、ペースト状の正極合剤スラリーとした。続いて、コーティング装置を用いて正極集電体33A(20μm厚の帯状アルミニウム箔)の両面に正極合剤スラリーを塗布したのち、その正極合剤スラリーを乾燥させることにより、正極活物質層33Bを形成した。最後に、ロールプレス機を用いて正極活物質層33Bを圧縮成型した。
負極34を作製する場合には、最初に、複数の第1負極活物質粒子(黒鉛)と、複数の第2負極活物質粒子(黒鉛)と、第1負極結着剤(スチレンブタジエンゴム(SBR))と、第2負極結着剤(ポリフッ化ビニリデン(PVDF))と、増粘剤(カルボキシメチルセルロース)とを混合することにより、負極合剤とした。
複数の第1負極活物質粒子のR値およびメジアン系D50(μm)と、複数の第2負極活物質粒子のR値およびメジアン系D50(μm)と、複数の第1負極活物質粒子の混合比(重量%)および複数の第2負極活物質粒子の混合比(重量%)と、複数の第1負極活物質粒子および複数の第2負極活物質粒子の黒鉛配向性に関する比Pとは、表1および表2に示した通りである。R値の測定方法および比Pの測定方法のそれぞれは、上記した通りである。
この場合には、R値が互いに異なる複数種類の複数の第1負極活物質粒子を用いることにより、そのR値を変化させると共に、メジアン系D50が互いに異なる複数種類の複数の第1負極活物質粒子を用いることにより、そのメジアン系D50を変化させた。同様の手順により、複数の第2負極活物質粒子のR値およびメジアン系D50のそれぞれを変化させた。複数の第1負極活物質粒子の混合量および複数の第2負極活物質粒子の混合量のうちの一方または双方を変更することにより、混合比を変化させた。
複数の第1負極活物質粒子、複数の第2負極活物質粒子、第1負極結着剤、第2負極結着剤および増粘剤の混合比(重量比)は、(複数の第1負極活物質粒子+複数の第2負極活物質粒子):(第1負極結着剤+第2負極結着剤):増粘剤=9:2:1とした。第1負極結着剤の混合比(重量%)および第2負極結着剤の混合比(重量%)は、表1および表2に示した通りである。
なお、比較のために、第1負極結着剤および第2負極結着剤の双方を用いずに、第1負極結着剤および第2負極結着剤のうちの一方だけを用いた。
続いて、水性溶媒(純水)に負極合剤を投入したのち、その水性溶媒を撹拌することにより、ペースト状の負極合剤スラリーとした。続いて、コーティング装置を用いて負極集電体34A(15μm厚の帯状銅箔)の両面に負極合剤スラリーを塗布したのち、その負極合剤スラリーを乾燥させることにより、負極活物質層34Bを形成した。最後に、ロールプレス機を用いて負極活物質層34Bを圧縮成型した。
電解液を調製する場合には、非水溶媒(炭酸エチレンおよび炭酸プロピレン)に電解質塩(LiPF6 )を加えたのち、その非水溶媒を撹拌することにより、その非水溶媒中に電解質塩を溶解させた。この場合には、炭酸エチレンおよび炭酸プロピレンの混合比(重量比)を炭酸エチレン:炭酸プロピレン=50:50とした。電解質塩の含有量を非水溶媒に対して1mol/kgとした。
電解質層36を形成する場合には、最初に、電解液と、高分子化合物(ポリフッ化ビニリデン)と、希釈用の有機溶剤(炭酸ジエチル)とを混合することにより、前駆溶液を調製した。この場合には、電解液および高分子化合物の混合比(重量比)を電解液:高分子化合物=90:10とした。最後に、正極33の表面に前駆溶液を塗布したのち、その前駆溶液を乾燥させることにより、ゲル状の電解質層36を形成した。また、負極34の表面に前駆溶液を塗布したのち、その前駆溶液を乾燥させることにより、ゲル状の電解質層36を形成した。
二次電池を組み立てる場合には、最初に、正極集電体33Aにアルミニウム製の正極リード31を溶接すると共に、負極集電体34Aに銅製の負極リード32を溶接した。続いて、セパレータ35(20μm厚の微多孔性ポリエチレン延伸フィルム)を介して、電解質層36が形成された正極33と、電解質層36が形成された負極34とを積層させることにより、積層体を得た。続いて、積層体を長手方向に巻回させたのち、その積層体の最外周部に保護テープ37を貼り付けることにより、巻回電極体30を作製した。最後に、巻回電極体30を挟むように外装部材40を折り畳んだのち、その外装部材40の外周縁部同士を熱融着した。この外装部材40は、25μm厚のナイロンフィルムと、40μm厚のアルミニウム箔と、30μm厚のポリプロピレンフィルムとが外側からこの順に積層されたアルミラミネートフィルムである。この場合には、正極リード31と外装部材40との間に密着フィルム41を挿入すると共に、負極リード32と外装部材40との間に密着フィルム41を挿入した。
これにより、外装部材40の内部に巻回電極体30が封入されたため、ラミネートフィルム型のリチウムイオン二次電池が完成した。
二次電池の電池特性を評価するために、その二次電池の容量特性およびサイクル特性を調べたところ、表1および表2に示した結果が得られた。
容量特性を調べる場合には、最初に、二次電池の状態を安定化させるために、常温環境中(温度=25℃)において二次電池を充放電(1サイクル)させた。続いて、同環境中において二次電池を充放電(1サイクル)させることにより、放電容量(mAh)を測定した。最後に、上記した放電容量を2種類の負極活物質(複数の第1負極活物質粒子および複数の第2負極活物質粒子)の重量(g)で割ることにより、初回容量(mAh/g)を算出した。
なお、充電時には、1Cの電流で電圧が4.3Vに到達するまで定電流充電したのち、4.3Vの電圧で電流が0.05Cに到達するまで定電圧充電した。放電時には、1Cの電流で電圧が2.5Vに到達するまで定電流放電した。「1C」とは、電池容量(理論容量)を1時間で放電しきる電流値であると共に、「0.05C」とは、電池容量を20時間で放電しきる電流値である。
サイクル特性を調べる場合には、最初に、二次電池の状態を安定化させるために、常温環境中(温度=25℃)において二次電池を充放電(1サイクル)させた。続いて、同環境中において二次電池を充放電(1サイクル)させることにより、放電容量(2サイクル目の放電容量)を測定した。続いて、同環境中においてサイクル数の合計が100サイクルになるまで二次電池を繰り返して充放電させることにより、放電容量(100サイクル目の放電容量)を測定した。最後に、容量維持率(%)=(100サイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量)×100を算出した。
なお、充放電条件は、容量特性を調べた場合と同様にした。
初回容量および容量維持率のそれぞれは、複数の第1負極活物質粒子、複数の第2負極活物質粒子、第1負極結着剤および第2負極結着剤のそれぞれに関する条件に応じて変動した。
具体的には、複数の第1負極活物質粒子、複数の第2負極活物質粒子、第1負極結着剤および第2負極結着剤のそれぞれの材質、物性、寸法、混合比および有無に関する条件が適正化されている場合(実験例1〜10)には、それらの条件が適正化されていない場合(実験例11〜22)と比較して、高い初回容量を担保しつつ、容量維持率が増加した。
上記した材質、物性、寸法、混合比および有無に関する適正な条件は、以下の通りである。第1に、複数の第1負極活物質粒子のR値は、0.35〜0.45であると共に、その複数の第1負極活物質粒子のメジアン径D50は、5μm〜14.5μmである。第2に、複数の第2負極活物質粒子のR値は、0.1〜0.25であると共に、その複数の第2負極活物質粒子のメジアン径D50は、15μm〜25μmである。第3に、複数の第1負極活物質粒子の重量と第2負極活物質粒子の重量との総和に対する第1負極活物質粒子の重量の割合(混合比)は、10重量%〜50重量%である。第4に、負極34は、第1負極結着剤(スチレンブタジエンゴム)および第2負極結着剤(ポリフッ化ビニリデン)の双方を含んでいる。
特に、複数の第1負極活物質粒子、複数の第2負極活物質粒子、第1負極結着剤および第2負極結着剤のそれぞれの材質、物性、寸法、混合比および有無に関する条件が適正化されている場合(実験例1〜10)には、比Pが36〜42であると、十分な初回容量が得られると共に、十分な容量維持率も得られた。
表1および表2に示した結果から、負極34が複数の第1負極活物質粒子、複数の第2負極活物質粒子、第1負極結着剤および第2負極結着剤を含んでおり、それらの材質、物性、寸法、混合比および有無に関する条件が適正化されていると、容量特性を担保しつつサイクル特性が向上した。よって、二次電池において優れた電池特性が得られた。
以上、一実施形態および実施例を挙げながら本技術を説明したが、本技術は一実施形態および実施例において説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。
例えば、本技術の二次電池の構成を説明するために、電池構造が円筒型およびラミネートフィルム型であると共に、電池素子が巻回構造を有する場合を例に挙げた。しかしながら、本技術の二次電池は、角型、コイン型およびボタン型などの他の電池構造を有する場合に適用可能であると共に、電池素子が積層構造などの他の構造を有する場合にも適用可能である。
また、例えば、本技術の二次電池用負極は、二次電池に限定されず、他の電気化学デバイスに適用されてもよい。他の電気化学デバイスは、例えば、キャパシタなどである。
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
なお、本技術は、以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
正極および負極と共に電解液を備え、
前記負極は、複数の第1負極活物質粒子と、複数の第2負極活物質粒子と、第1負極結着剤と、第2負極結着剤とを含み、
前記複数の第1負極活物質粒子のそれぞれは、炭素を構成元素として含み、前記複数の第1負極活物質粒子のR値は、0.35以上0.45以下であり、前記複数の第1負極活物質粒子のメジアン径D50は、5μm以上14.5μm以下であり、
前記複数の第2負極活物質粒子のそれぞれは、炭素を構成元素として含み、前記複数の第2負極活物質粒子のR値は、0.1以上0.25以下であり、前記複数の第2負極活物質粒子のメジアン径D50は、15μm以上25μm以下であり、
前記複数の第1負極活物質粒子の重量と前記複数の第2負極活物質粒子の重量との総和に対する前記複数の第1負極活物質粒子の重量の割合は、10重量%以上50重量%以下であり、
前記第1負極結着剤は、スチレンブタジエンゴムおよびその誘導体のうちの少なくとも一方を含み、
前記第2負極結着剤は、ポリフッ化ビニリデンおよびその誘導体のうちの少なくとも一方を含む、
二次電池。
(2)
X線回折法により測定される前記複数の第1負極活物質粒子および前記複数の第2負極活物質粒子の(110)面に起因するピーク積分強度P1に対する、前記X線回折法により測定される前記複数の第1負極活物質粒子および前記複数の第2負極活物質粒子の(002)面に起因するピーク積分強度P2の比P(=P2/P1)は、36以上42以下である、
上記(1)に記載の二次電池。
(3)
リチウムイオン二次電池である、
上記(1)または(2)に記載の二次電池。
(4)
複数の第1負極活物質粒子と、複数の第2負極活物質粒子と、第1負極結着剤と、第2負極結着剤とを含み、
前記複数の第1負極活物質粒子のそれぞれは、炭素を構成元素として含み、前記複数の第1負極活物質粒子のR値は、0.35以上0.45以下であり、前記複数の第1負極活物質粒子のメジアン径D50は、5μm以上14.5μm以下であり、
前記複数の第2負極活物質粒子のそれぞれは、炭素を構成元素として含み、前記複数の第2負極活物質粒子のR値は、0.1以上0.25以下であり、前記複数の第2負極活物質粒子のメジアン径D50は、15μm以上25μm以下であり、
前記複数の第1負極活物質粒子の重量と前記複数の第2負極活物質粒子の重量との総和に対する前記複数の第1負極活物質粒子の重量の割合は、10重量%以上50重量%以下であり、
前記第1負極結着剤は、スチレンブタジエンゴムおよびその誘導体のうちの少なくとも一方を含み、
前記第2負極結着剤は、ポリフッ化ビニリデンおよびその誘導体のうちの少なくとも一方を含む、
二次電池用負極。
(5)
上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の二次電池と、
前記二次電池の動作を制御する制御部と、
前記制御部の指示に応じて前記二次電池の動作を切り換えるスイッチ部と
を備えた、電池パック。
(6)
上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の二次電池と、
前記二次電池から供給された電力を駆動力に変換する変換部と、
前記駆動力に応じて駆動する駆動部と、
前記二次電池の動作を制御する制御部と
を備えた、電動車両。
(7)
上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の二次電池と、
前記二次電池から電力を供給される1または2以上の電気機器と、
前記二次電池からの前記電気機器に対する電力供給を制御する制御部と
を備えた、電力貯蔵システム。
(8)
上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の二次電池と、
前記二次電池から電力を供給される可動部と
を備えた、電動工具。
(9)
上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の二次電池を電力供給源として備えた、電子機器。
本出願は、日本国特許庁において2017年1月31日に出願された日本特許出願番号第2017−015529号を基礎として優先権を主張するものであり、この出願のすべての内容を参照によって本出願に援用する。
当業者であれば、設計上の要件や他の要因に応じて、種々の修正、コンビネーション、サブコンビネーション、および変更を想到し得るが、それらは添付の請求の範囲の趣旨やその均等物の範囲に含まれるものであることが理解される。