(本開示の概要)
病原体には、空間の環境に応じて感染力の強弱がある。このため、調整機器が空間の環境の調整を行うことで、病原体の感染力を弱めることができる。例えば、空間の温度又は湿度を高くすることで、病原体の拡散を抑えることができ、感染力を弱めることができる。また、例えば、塩素濃度又はオゾン濃度を高くすることで、病原体を除去することができ、感染力を弱めることができる。
一方で、温度又は湿度を高くすることにより、人にとって快適な環境が損なわれる恐れがある。同様に、塩素濃度又はオゾン濃度を高くすることにより、塩素臭又はオゾン臭が強まるので、快適な環境が損なわれる恐れがある。
そこで、本開示の一態様に係る空間環境制御システムは、空間中に存在する病原体を検出する病原体センサと、前記空間の温度、湿度、塩素濃度及びオゾン濃度の少なくとも1つを示す環境値を検出する環境センサと、前記空間に存在する人を検知する人センサと、前記空間の環境の調整を行う調整機器と、前記調整機器を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記病原体センサによって検出された病原体の前記空間中の濃度である病原体濃度が所定の閾値より高い場合において、(a)前記人センサによって前記空間に人の存在が検知されているとき、前記環境値の許容範囲を第1の範囲に設定し、設定した第1の範囲内で前記環境値が収まるように前記調整機器を制御し、(b)前記人センサによって前記空間に人の存在が検知されていないとき、前記環境値の許容範囲を、前記第1の範囲より広い第2の範囲に設定し、設定した第2の範囲内で前記環境値が収まるように前記調整機器を制御する。
これにより、人の存在及び不在に基づいて環境値の許容範囲が変更される。人が存在するときには許容範囲を狭くし、人にとって快適な環境を維持することができる。一方で、人が存在しないときには許容範囲を広くし、浄化を優先して病原体の感染力を弱体化させる。このように、本態様に係る空間環境制御システムによれば、人にとっての快適性と病原体の感染力の弱体化とを両立させることができる。
また、例えば、前記第2の範囲は、無制限の範囲であってもよい。
これにより、人が存在しない場合には、環境値の許容範囲が無制限の範囲になるので、例えば、高温、高湿、臭気物質の増加などの人にとっては不快な環境になるまで、病原体の感染力の弱体化を優先させることができる。つまり、人が存在していない間に、空間に浮遊する病原体の感染力を徹底的に弱体化させることができる。これにより、人が存在している間には、病原体の感染力が弱体化された状態で、人にとっての快適な環境を維持することができる。
また、例えば、前記制御部は、前記(b)において、さらに、前記空間に人が入ってくる時刻を推定し、推定した時刻までに前記環境値が前記第1の範囲に収まるように前記調整機器を制御してもよい。
これにより、人が空間に入ってくる時刻には、空間の環境を人にとって快適な環境に戻すことができる。したがって、人が空間に入ってきたときに、高温、高湿又は臭い残りなどの不快さを感じさせることを抑制することができる。
また、例えば、前記制御部は、さらに、前記空間の使用予定、及び、前記人の行動予定の少なくとも一方を示すスケジュール情報を取得し、前記(b)において、取得したスケジュール情報に基づいて前記時刻を推定してもよい。
これにより、スケジュール情報に基づいて人が入ってくる目標時刻を推定するので、推定精度が高められる。推定精度が高まることにより、病原体の感染力の弱体化を行うための調整機器の制御、及び、病原体の感染力の弱体化を行ったために悪化した環境の回復を行うための調整機器の制御を目標時刻に合わせて行うことができる。したがって、人が入ってくるまでに病原体の感染力を十分に弱体化させることができ、かつ、人が空間に入ってきたときに、高温、高湿又は臭い残りなどの不快さを感じさせることを抑制することができる。
また、例えば、前記空間環境制御システムは、前記調整機器を少なくとも1つ備え、少なくとも1つの前記調整機器は、前記空間の温度を調整する温度調整機器、前記空間の湿度を調整する湿度調整機器、前記空間に次亜塩素酸を放出する次亜塩素酸発生器、及び、前記空間にオゾンを放出するオゾン発生器の少なくとも1つを含んでもよい。
これにより、例えば、空間の温度又は湿度を高くすることで、病原体の拡散を抑えることができ、感染力を弱めることができる。また、空間の温度又は湿度を所定の範囲内で保つことで、人にとって快適な環境を維持することができる。また、例えば、次亜塩素酸又はオゾンを空間に放出して空間の塩素濃度又はオゾン濃度を高くすることで、病原体を除去することができ、感染力を弱めることができる。また、次亜塩素酸又はオゾンの放出を停止することで、不快な臭いを抑制し、人にとって快適な環境を維持することができる。このように、本態様に係る空間環境制御システムは、温度、湿度、塩素濃度又はオゾン濃度を調整する調整機器を少なくとも1つ備えることで、人にとっての快適性と病原体の感染力の弱体化との両立を効果的に行うことができる。
また、例えば、本開示の一態様に係る空間環境制御装置は、空間の環境の調整を行う調整機器を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記空間中に存在する病原体を検出する病原体センサによって検出された病原体の前記空間中の濃度である病原体濃度が所定の閾値より高い場合において、(a)人センサによって前記空間に人の存在が検知されているとき、前記空間の温度、湿度、塩素濃度及びオゾン濃度の少なくとも1つを示す環境値の許容範囲を第1の範囲に設定し、設定した第1の範囲内で前記環境値が収まるように前記調整機器を制御し、(b)前記人センサによって前記空間に人の存在が検知されていないとき、前記環境値の許容範囲を、前記第1の範囲より広い第2の範囲に設定し、設定した第2の範囲内で前記環境値が収まるように前記調整機器を制御する。
これにより、上述した空間環境制御システムと同様に、人にとっての快適性と病原体の感染力の弱体化とを両立させることができる。
また、例えば、本開示の一態様に係る空間環境制御方法は、空間中に存在する病原体を検出する病原体センサによって検出された病原体の前記空間中の濃度である病原体濃度が所定の閾値より高い場合において、(a)人センサによって前記空間に人の存在が検知されているとき、前記空間の温度、湿度、塩素濃度及びオゾン濃度の少なくとも1つを示す環境値の許容範囲を第1の範囲に設定し、(b)前記人センサによって前記空間に人の存在が検知されていないとき、前記環境値の許容範囲を、前記第1の範囲より広い第2の範囲に設定し、設定した許容範囲内で前記環境値が収まるように、前記空間の環境の調整を行う調整機器を制御する。また、本開示の一態様に係るプログラムは、上記空間環境制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
これにより、上述した空間環境制御システムと同様に、人にとっての快適性と病原体の感染力の弱体化とを両立させることができる。
以下では、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
[制御対象になる空間]
まず、各実施の形態に係る空間環境制御システムによる環境の制御対象となる空間の一例について、図1を用いて説明する。図1は、各実施の形態に係る空間環境制御システムによる環境の制御対象になる空間10を示す図である。
図1に示されるように、空間10は、屋内の空間であり、例えば一軒家、マンション、オフィス、病院、介護施設などの建物の一部屋の内部空間である。空間10は、ドア53及び窓54などを開けることで、他の空間又は屋外と繋がり、人の出入り及び空気の入れ換えなどが可能である。
図1に示されるように、空間10には、病原体11が存在している。具体的には、病原体11は、空間10中を浮遊している。病原体11は、人に病気を引き起こす細菌などの微生物又はウイルスである。具体的には、病原体11には、結核菌若しくはMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などの細菌、又は、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、RSウイルス若しくは麻しんウイルスなどのウイルスが含まれる。
空間10には、病原体11を検出する病原体センサ20が配置されている。また、空間10には、温湿度センサ30及び空気質センサ31が配置されている。温湿度センサ30は、空間10の温度と湿度とを検出する環境センサの一例である。空気質センサ31は、空間10の塩素濃度又はオゾン濃度を検出する環境センサの一例である。
さらに、空間10には、空間10に存在する人を検出する人センサ40が設けられている。人センサ40は、例えば赤外線を利用した人感センサであるが、これに限らない。人センサ40は、可視光を電気信号に変換するイメージセンサを有するカメラでもよい。あるいは、人センサ40は、熱画像センサなどでもよい。
図1に示されるように、空間10には、空間10の環境の調整を行う調整機器の一例であるエアコン50及び浄化物質発生器51が配置されている。また、ドア53、窓54及びブラインド55がそれぞれ、調整機器の一例として設けられている。さらに、空間10には、これらの調整機器を制御する制御装置60が配置されている。
エアコン50は、例えば、空間10の温度を調整する温度調整機器の一例である。エアコン50は、空間10の湿度を調整する湿度調整機器の一例でもある。エアコン50は、制御装置60による制御に基づいて、空間10の温度及び湿度の少なくとも一方を調整する。
浄化物質発生器51は、浄化物質52を空間10に放出する。浄化物質52は、具体的には、霧状の液体又は気体であり、病原体11を分解するなどして除去することができる物質である。例えば、浄化物質52は、ミスト化された次亜塩素酸水又はオゾン水である。つまり、浄化物質発生器51は、空間10に次亜塩素酸を放出する次亜塩素酸発生器の一例、又は、空間10にオゾンを放出するオゾン発生器の一例である。浄化物質発生器51は、制御装置60による制御に基づいて次亜塩素酸又はオゾンの放出量を調整する。放出量に応じて、空間10の塩素濃度又はオゾン濃度が上昇し、又は、その上昇が抑制される。
ドア53、窓54及びブラインド55はそれぞれ、制御装置60によって開閉が制御される。ドア53及び窓54を開けることで、空間10の空気の入れ換えを行うことができる。空気の入れ換えによって、空間10中を浮遊する病原体11を屋外又は他の空間に放出させ、空間10中の病原体11の濃度を低くすることができる。また、空気の入れ換えによって、空間10中に放出した浄化物質52を屋外又は他の空間に放出させ、空間10中の浄化物質52の濃度を低くすることができる。
また、ブラインド55の開閉によって、太陽光の採光量を調整することができる。太陽光には紫外光が含まれているので、空間10内に採り込む紫外光の光量を調整することができる。採り込まれた紫外光が病原体11に照射されることで病原体11が分解され、空間10中の病原体11の濃度を低くすることができる。
制御装置60は、空間10の環境を調整する1以上の調整機器を制御する。制御装置60は、例えば、空間10の壁などに設置された端末機器である。制御装置60は、エアコン50、浄化物質発生器51、ドア53、窓54及びブラインド55の各々と有線又は無線で接続されており、それぞれの動作を制御する。
以下で説明する各実施の形態に係る空間環境制御システムは、空間10の環境を制御する。空間10の環境には、例えば、空間10の温度及び湿度、空間10を満たす空気に含まれる塩素濃度及びオゾン濃度、並びに、空間10内を照らす照明光又は太陽光の光量などが含まれる。
空間環境制御システムは、病原体センサ20、環境センサ及び人センサ40の検出結果に基づいて、複数の調整機器の少なくとも1つを制御する。これにより、空間環境制御システムは、空間10の環境を調整し、病原体11の感染力を弱体化させる。また、空間環境制御システムは、複数の調整機器の少なくとも1つを制御することで、空間10に存在する人にとっての快適な環境を形成する。詳細な動作については、各実施の形態で説明する。
なお、図1に示される空間10内の各センサ及び各機器の配置は一例にすぎない。例えば、エアコン50及び浄化物質発生器51の少なくとも一方は配置されていなくてもよい。あるいは、浄化物質発生器51として、次亜塩素酸発生器とオゾン発生器との両方が配置されていてもよい。
また、空間10には、ドア53及び窓54の少なくとも一方は設けられていなくてもよい。窓54には、ブラインド55が設けられていなくてもよい。病原体センサ20、温湿度センサ30、空気質センサ31及び人センサ40の少なくとも1つは、エアコン50及び浄化物質発生器51の少なくとも一方に設けられていてもよい。
空間10には、温湿度センサ30の代わりに、温度のみを検出する温度センサが配置されていてもよい。あるいは、空間10には、湿度のみを検出する湿度センサが配置されていてもよい。空間10には、塩素濃度センサのみが配置されていてもよく、オゾン濃度センサのみが配置されていてもよい。また、空間10には、空間10中を浮遊する粉塵の量を検出する粉塵量センサが配置されていてもよい。
また、図示しないが、空間10には、紫外光を発するUV光源が配置されていてもよい。空間10には、空間10内の空気と屋外又は他の空間の空気とを入れ換える換気装置が配置されていてもよい。
また、制御装置60は、空間10に配置されていなくてもよく、空間10の外側に設けられていてもよい。制御装置60と各センサ及び各調整機器とは、有線又は無線で通信可能であってもよい。
(実施の形態1)
続いて、実施の形態1について説明する。
[構成]
まず、本実施の形態に係る空間環境制御システムの構成について、図2を用いて説明する。
図2は、本実施の形態に係る空間環境制御システム100の構成を示すブロック図である。図2に示されるように、空間環境制御システム100は、病原体センサ120と、環境センサ群130と、人センサ140と、調整機器群150と、空間環境制御装置160とを備える。本実施の形態に係る空間環境制御システム100は、空間10の温度、湿度、塩素濃度、オゾン濃度及びUV照射量の少なくとも1つを制御する。
病原体センサ120は、空間10中に存在する病原体11を検出する。具体的には、病原体センサ120は、空間10中の空気を一定量捕集し、捕集した空気に含まれる病原体11の個体数をカウントする。病原体センサ120は、検出結果として、病原体濃度を示す病原体濃度情報を空間環境制御装置160に出力する。病原体濃度は、例えば、単位体積当たりの病原体11の個体数で表される。病原体センサ120は、例えば、図1に示される病原体センサ20に相当する。
環境センサ群130には、図2に示されるように、温度センサ131と、湿度センサ132と、塩素濃度センサ133と、オゾン濃度センサ134と、CO2濃度センサ135と、UV照度センサ136と、粉塵量センサ137とが含まれる。
温度センサ131は、空間10の温度を環境値の一例として検出する環境センサの一例である。温度センサ131は、検出した温度を示す温度情報を空間環境制御装置160に出力する。温度センサ131は、例えば、図1に示される温湿度センサ30に相当する。
湿度センサ132は、空間10の湿度を環境値の一例として検出する環境センサの一例である。湿度センサ132は、検出した湿度を示す湿度情報を空間環境制御装置160に出力する。湿度センサ132は、例えば、図1に示される温湿度センサ30に相当する。
塩素濃度センサ133は、空間10の塩素濃度を環境値の一例として検出する環境センサの一例である。塩素濃度センサ133は、検出した塩素濃度を示す塩素濃度情報を空間環境制御装置160に出力する。塩素濃度センサ133は、例えば、図1に示される空気質センサ31に相当する。
オゾン濃度センサ134は、空間10のオゾン濃度を環境値の一例として検出する環境センサの一例である。オゾン濃度センサ134は、検出したオゾン濃度を示すオゾン濃度情報を空間環境制御装置160に出力する。オゾン濃度センサ134は、例えば、図1に示される空気質センサ31に相当する。
CO2濃度センサ135は、空間10の二酸化炭素濃度を環境値の一例として検出する環境センサの一例である。CO2濃度センサ135は、検出した二酸化炭素濃度を示すCO2情報を空間環境制御装置160に出力する。CO2濃度センサ135は、例えば、図1に示される空気質センサ31に相当する。
UV照度センサ136は、空間10内に照射される紫外光の照射量を環境値の一例として検出する環境センサの一例である。UV照度センサ136は、検出した紫外光の照射量を示すUV情報を空間環境制御装置160に出力する。
粉塵量センサ137は、空間10内に浮遊する粉塵の量を環境値の一例として検出する環境値センサの一例である。粉塵量センサ137は、検出した粉塵量を示す粉塵量情報を空間環境制御装置160に出力する。
なお、環境センサ群130には、温度センサ131、湿度センサ132、塩素濃度センサ133及びオゾン濃度センサ134の少なくとも1つが含まれていればよい。環境センサ群130には、CO2濃度センサ135、UV照度センサ136及び粉塵量センサ137が含まれていなくてもよい。
人センサ140は、空間10に存在する人を検出する。人センサ140は、空間10に人が存在するか否かを示す存在情報を人情報として出力する。人情報は、空間10に存在する人に関する情報である。人センサ140は、例えば、図1に示される人センサ40に相当する。
調整機器群150は、空間環境制御装置160による制御に基づいて空間10の環境を調整する複数の調整機器からなる群である。図2に示されるように、調整機器群150には、温度調整機器151と、湿度調整機器152と、次亜塩素酸発生器153と、オゾン発生器154と、換気装置155と、UV光源156とが含まれる。
温度調整機器151は、空間10の温度を調整する機器である。具体的には、温度調整機器151は、空間10の暖房又は冷房を行うことで、空間10の温度を上昇させ、かつ/又は、低下させる。温度調整機器151は、例えば、図1に示されるエアコン50に相当する。なお、温度調整機器151は、ファンヒーター、ストーブ、ハロゲンヒーター、カーボンヒーターなどの暖房機器、及び、クーラー、冷風扇、冷風機などの冷房機器の少なくとも1つでもよい。
湿度調整機器152は、空間10の湿度を調整する機器である。具体的には、湿度調整機器152は、空間10の加湿又は除湿を行うことで、空間10の湿度を上昇させ、かつ/又は、低下させる。湿度調整機器152は、例えば、図1に示されるエアコン50に相当する。なお、湿度調整機器152は、加湿器及び除湿器の少なくとも1つでもよい。
次亜塩素酸発生器153は、空間10に次亜塩素酸を放出する機器である。例えば、次亜塩素酸発生器153は、次亜塩素酸水を生成し、生成した次亜塩素酸水をミスト化して放出する。次亜塩素酸発生器153は、次亜塩素酸水の放出量を調整することにより、空間10の塩素濃度を上昇させる。次亜塩素酸発生器153は、例えば図1に示される浄化物質発生器51に相当する。
オゾン発生器154は、空間10にオゾンを放出する機器である。例えば、オゾン発生器154は、オゾン水を生成し、生成したオゾン水をミスト化して放出する。オゾン発生器154は、オゾン水の放出量を調整することにより、空間10のオゾン濃度を上昇させる。オゾン発生器154は、例えば図1に示される浄化物質発生器51に相当する。
換気装置155は、空間10内の空気を屋外又はその他の空間と入れ換える装置である。例えば、換気装置155は、次亜塩素酸の濃度が高まった空気を外気と入れ換えることで、空間10中の塩素濃度を低下させる。
換気装置155は、図1に示されるドア53及び窓54などに相当する。あるいは、換気装置155は、換気扇又は専用の換気設備などであってもよい。また、空間環境制御システム100は、換気装置155の代わりに、空気清浄機を備えてもよい。
UV光源156は、空間10内に紫外光を照射するための光源である。UV光源156は、紫外光を発する放電ランプ又はLED(Light Emitting Diode)などである。UV光源156は、例えば、制御部164によって点灯及び消灯が制御される。
なお、UV光源156から発せられる紫外光の代わりに、太陽光を利用してもよい。例えば、制御部164は、図1に示されるブラインド55の開閉によって太陽光の採光量を調整してもよい。
空間環境制御装置160は、病原体センサ120、環境センサ群130及び人センサ140の検出結果に基づいて、調整機器群150に含まれる複数の調整機器の少なくとも1つを制御する。空間環境制御装置160は、例えば、図1に示される制御装置60に相当する。図2に示されるように、空間環境制御装置160は、病原体濃度情報取得部161と、環境情報取得部162と、人情報取得部163と、制御部164とを備える。
病原体濃度情報取得部161は、病原体センサ120から出力される病原体濃度情報を取得する。例えば、病原体濃度情報取得部161は、病原体センサ120と有線又は無線で接続された通信インタフェースで実現される。
環境情報取得部162は、環境センサ群130に含まれる複数の環境センサの各々から出力される環境情報を取得する。環境情報は、温度情報、湿度情報、塩素濃度情報、オゾン濃度情報、CO2濃度情報、UV情報及び粉塵量情報の少なくとも1つを含んでいる。例えば、環境情報取得部162は、複数の環境センサの各々と有線又は無線で接続された通信インタフェースで実現される。
人情報取得部163は、人センサ140から出力される人情報を取得する。例えば、人情報取得部163は、人センサ140と有線又は無線で接続された通信インタフェースで実現される。
制御部164は、病原体濃度情報、環境情報及び人情報に基づいて、調整機器群150に含まれる複数の調整機器の少なくとも1つを制御する。制御部164は、プログラムが格納された不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、入出力ポート、プログラムを実行するプロセッサなどで実現される。制御部164は、専用の電子回路で実現されてもよい。
具体的には、制御部164は、病原体濃度情報が示す病原体濃度と、人情報が示す人の在不在に基づいて環境値の許容範囲を設定し、設定した許容範囲内で環境値が収まるように、調整機器群150に含まれる複数の調整機器の少なくとも1つを制御する。本実施の形態では、制御部164は、病原体濃度が所定の閾値より高い場合であって、空間10に人の存在が検知されているとき、環境値の許容範囲を第1の範囲に設定し、設定した第1の範囲内で環境値が収まるように調整機器を制御する。また、制御部164は、病原体濃度が所定の閾値より高い場合であって、空間10に人の存在が検知されていないとき、環境値の許容範囲を第2の範囲に設定し、設定した第2の範囲内で環境値が収まるように調整機器を制御する。ここで、第2の範囲は、第1の範囲より広い範囲である。
制御部164は、複数の環境値の各々の許容範囲を設定する。複数の環境値には、上述したように、温度、湿度、塩素濃度、オゾン濃度、CO2濃度、UV照度、及び、粉塵量などが含まれる。許容範囲の具体例については、空間環境制御システム100の動作と合わせて、後で説明する。
ここで、病原体濃度の閾値は、例えば、病原体11の種別及びその感染力などに基づいて定められる値である。閾値は、例えば、病原体11による感染の危険性が発生するか否かの判定基準となる値である。病原体濃度が閾値を上回った場合に、病原体11による感染の危険性が発生する。病原体濃度が閾値より低い場合には、病原体11による感染はほぼ発生しない。
制御部164は、例えば、所定の期間が経過する度に、温度の許容範囲の設定を行う。本実施の形態では、所定の期間が経過する度に、病原体センサ120によって病原体11が検出され、病原体濃度情報が出力される。制御部164は、病原体濃度情報取得部161が濃度情報を取得する度に、取得した濃度情報に基づいて環境値の許容範囲の設定を行う。
制御部164は、例えば、浄化モード及び快適モードを含む複数の動作モードから選択された1つのモードで動作する。
浄化モードは、空間10中に存在する病原体11の感染力を弱体化させるための動作モードである。例えば、制御部164は、浄化モードで動作する場合に、許容範囲内の上限値に空間10の環境値が一致するように、調整機器群150を制御する。浄化モードにおける環境値の許容範囲は、例えば第2の範囲である。
快適モードは、空間10を人にとって快適な温度環境にするための動作モードである。例えば、制御部164は、快適モードで動作する場合に、許容範囲内の所定値に空間10の環境値が一致するように、調整機器群150を制御する。快適モードにおける環境値の許容範囲は、例えば第1の範囲である。
制御部164は、いずれのモードにおいても、設定された許容範囲内で環境値が収まるように、調整機器群150を制御する。例えば、制御部164は、調整機器群150に含まれる複数の調整機器の少なくとも1つに制御信号を出力する。
制御信号には、各調整機器の動作の開始及び停止、動作の内容、並びに、設定した許容範囲などの指示が含まれる。例えば、温度調整機器151に出力される制御信号には、暖房及び冷房、並びに、設定温度などの指示が動作の内容として含まれる。湿度調整機器152に出力される制御信号には、加湿及び除湿、並びに、設定湿度などの指示が動作の内容として含まれる。次亜塩素酸発生器153に出力される制御信号には、次亜塩素酸の放出量の指示が動作の内容として含まれる。オゾン発生器154に出力される制御信号には、オゾンの放出量の指示が動作の内容として含まれる。
換気装置155に出力される制御信号には、換気量の指示が動作の内容として含まれる。なお、換気装置155がドア53又は窓54である場合には、制御信号には、換気量の代わりに、ドア53又は窓54の開閉量の指示が含まれてもよい。UV光源156に出力される制御信号には、紫外光の光量の指示が動作の内容として含まれる。なお、UV光源156の代わりにブラインド55を利用する場合、ブラインド55に出力される制御信号には、ブラインド55の開閉量の指示が含まれてもよい。
[動作]
続いて、本実施の形態に係る空間環境制御システム100の動作について、図3を用いて説明する。図3は、本実施の形態に係る空間環境制御システム100の動作を示すフローチャートである。
図3に示されるように、まず、空間環境制御装置160は、病原体濃度を取得する(S110)。具体的には、病原体センサ120が空間10中に存在する病原体11を検出し、検出結果に基づいて生成した病原体濃度情報を空間環境制御装置160に出力する。病原体濃度情報取得部161は、出力された病原体濃度情報を取得し、制御部164に出力する。
次に、制御部164は、病原体濃度情報が示す病原体濃度が閾値より高いか否かを判定する(S112)。病原体濃度が閾値より高い場合(S112でYes)、制御部164は、人情報に基づいて空間10に人が存在するか否かを判定する(S114)。
空間10に人が存在する場合(S114でYes)、制御部164は、環境値の許容範囲を第1の範囲に設定する(S116)。制御部164は、環境値が第1の範囲に収まるように調整機器群150を制御することで、空間10を快適な環境で維持する(S118)。このように、病原体濃度が閾値より高く、かつ、空間10に人が存在する場合には、制御部164は、快適モードで動作する。病原体濃度が閾値より低い場合(S112でNo)も同様に、ステップS116とステップS118とが実行される。
空間10に人が存在しない場合(S114でNo)、制御部164は、環境値の許容範囲を第2の範囲に設定する(S120)。制御部164は、環境値が第2の範囲に収まるように調整機器群150を制御することで、空間10に存在する病原体11の感染力を弱体化させる(S122)。このように、病原体濃度が閾値より高く、かつ、空間10に人が存在しない場合には、制御部164は、浄化モードで動作する。
所定の期間が経過するまで(S124でNo)、状態が維持される。
所定の期間が経過した後(S124でYes)、ステップS110に戻り、病原体濃度の取得からの処理が繰り返される。所定の期間は、例えば10分以上1時間以内の範囲であるが、これに限らない。
[環境値の時間変化]
ここで、図3に示されるフローチャートに沿って空間環境制御システム100が動作したときの空間10の環境値の時間変化の具体例について説明する。以下では、環境値として、空間10の温度、湿度及び塩素濃度の各々の時間変化について説明する。
<温度の時間変化>
まず、温度の時間変化について、図4を用いて説明する。
図4は、本実施の形態に係る空間環境制御システム100の動作中の空間10の温度の時間変化を示す図である。図4では、横軸に時間を示しており、縦軸に空間10の温度を示している。
本実施の形態では、制御部164が設定する温度の許容範囲として、第1の温度範囲と、当該第1の温度範囲より広い第2の温度範囲とが候補として設けられている。
第1の温度範囲は、人にとって快適な環境として定められた温度の範囲である。第1の温度範囲は、例えばISO(国際標準化機構)規格、又は、PMV(予想平均温冷感申告)法に基づいて快適と定められる温度の範囲である。例えば、図4に示されるように、第1の温度範囲は、下限値T1minが22℃、上限値T1maxが27℃となる範囲である。あるいは、第1の温度範囲の下限値T1minは20℃でもよく、上限値T1maxは32℃でもよい。
第2の温度範囲は、病原体11の感染力を弱体化させることができる温度の範囲である。第2の温度範囲には、人にとって不快と感じられる範囲も含まれる。具体的には、第2の温度範囲には、快適な温度範囲よりも高温又は低温の範囲が含まれる。例えば、図4に示されるように、第2の温度範囲は、下限値T2minが22℃、上限値T2maxが31℃となる範囲である。なお、第2の温度範囲の下限値T2minと第1の温度範囲の下限値T1minとは等しくなくてもよい。例えば、第2の温度範囲の下限値T2minは15℃でもよい。また、第2の温度範囲の上限値T2maxは、35℃でもよい。
例えば、インフルエンザウイルスなどのウイルスは、高温環境下では生存率が低下する。このため、温度の許容範囲を広くし、空間10の温度を上昇させることで、病原体11の個体数を減らし、感染力を低下させることができる。
図4に示されるように、時刻t1〜t5の各々で、病原体センサ120が病原体11の検出を行っている。例えば、時刻t1から時刻t2までの期間が、図3に示されるステップS124の所定の期間に相当する。所定の期間は、常に一定の期間でなくてもよく、異なる期間を含んでもよい。例えば、時刻t1から時刻t2までの期間と時刻t2から時刻t3までの期間とは異なっていてもよい。
図4で示される例では、時刻t1から時刻t2までの期間の所定の時刻に人が空間10から出ていき、時刻t3から時刻t4までの期間の所定の時刻に人が空間10に戻ってきた場合を例に説明する。なお、時刻t1に至るまでの期間は、許容範囲が第1の温度範囲であり、空間10には快適な環境が形成されている。例えば、制御部164が温度調整機器151を制御することで、空間10の温度が23℃で保たれている。
時刻t1では、病原体濃度が閾値より高いと判定されているものの、空間10に人が存在するので、制御部164は、温度調整機器151を制御することで、快適な環境を維持する。時刻t2では、人が存在していないと判定されたため、制御部164は、許容範囲を第2の温度範囲に設定し、温度調整機器151を暖房で動作させる。
温度調整機器151が暖房動作を行うことで、時刻t2以降、空間10の温度が上昇する。許容範囲が第1の温度範囲から第2の温度範囲に変更されているので、第1の温度範囲の上限値T1maxである27℃を超えて、空間10の温度は上昇する。このとき、制御部164は、第2の温度範囲の上限値T2maxである31℃を超えないように、温度調整機器151を制御する。
時刻t3では、病原体濃度が閾値より高く、かつ、人が存在していないと判定されているので、制御部164は、許容範囲を第2の温度範囲のままで維持する。制御部164は、空間10の温度が31℃で保たれるように、温度調整機器151を制御する。
時刻t4では、人が存在すると判定されているので、制御部164は、許容範囲を第1の温度範囲に戻し、温度調整機器151を冷房で動作させる。温度調整機器151が冷房動作を行うことで、時刻t4以降、空間10の温度が低下する。空間10の温度が第1の温度範囲の上限値T1maxを下回り、第1の温度範囲に収まる範囲内で維持されるように、制御部164は、温度調整機器151を制御する。
時刻t2〜時刻t4にかけて、空間10の温度が高温になるので、病原体11の生存率が低下し、病原体濃度が次第に低下する。このため、時刻t5では、病原体濃度が閾値より低くなり、空間10における病原体11による感染の危険性が抑えられる。
<湿度の時間変化>
次に、湿度の時間変化について、図5を用いて説明する。
図5は、本実施の形態に係る空間環境制御システム100の動作中の空間10の湿度の時間変化を示す図である。図5では、横軸に時間を示しており、縦軸に空間10の湿度を示している。
本実施の形態では、制御部164が設定する湿度の許容範囲として、第1の湿度範囲と、当該第1の湿度範囲より広い第2の湿度範囲とが候補として設けられている。
第1の湿度範囲は、人にとって快適な環境として定められた湿度の範囲である。第1の湿度範囲は、例えば建築物衛生法に基づいて快適と定められる湿度の範囲である。例えば、図5に示されるように、第1の湿度範囲は、下限値H1minが50%、上限値H1maxが70%となる範囲である。あるいは、第1の湿度範囲の下限値H1minは40%でもよく、上限値H1maxは75%でもよい。
第2の湿度範囲は、病原体11の感染力を弱体化させることができる湿度の範囲である。第2の湿度範囲には、人にとって不快と感じられる範囲も含まれる。具体的には、第2の湿度範囲には、快適な湿度範囲よりも高湿又は低湿の範囲が含まれる。例えば、図5に示されるように、第2の湿度範囲は、下限値H2minが50%、上限値H2maxが90%となる範囲である。なお、第2の湿度範囲の下限値H2minと第1の湿度範囲の下限値H1minとは等しくなくてもよい。例えば、第2の湿度範囲は、下限値H2minは20%でもよい。
例えば、インフルエンザウイルスなどのウイルスは、高湿環境下では生存率が低下する。このため、湿度の許容範囲を広くし、空間10の湿度を上昇させることで、病原体11の個体数を減らし、感染力を低下させることができる。
また、湿度が高い状態にある場合、空間10内の壁及び窓54などには水分が付着しやすくなる。空間10内の水分量が多い場合、病原体11は、水分に捕えられて空気中に浮遊しにくくなる。したがって、病原体11が空間10内に存在している状態であっても、浮遊する病原体11の個体数を減らすことにより、感染力を低下させることができる。
図5で示される例では、時刻t1から時刻t2までの期間の所定の時刻に人が空間10から出ていき、時刻t3から時刻t4までの期間の所定の時刻に人が空間10に戻ってきた場合を例に説明する。なお、時刻t1に至るまでの期間は、許容範囲が第1の湿度範囲であり、空間10には快適な環境が形成されている。例えば、制御部164が湿度調整機器152を制御することで、空間10の湿度が55%で保たれている。
時刻t1では、病原体濃度が閾値より高いと判定されているものの、空間10に人が存在するので、制御部164は、湿度調整機器152を制御することで、快適な環境を維持する。時刻t2では、人が存在していないと判定されたため、制御部164は、許容範囲を第2の湿度範囲に設定し、湿度調整機器152を加湿で動作させる。
湿度調整機器152が加湿動作を行うことで、時刻t2以降、空間10の湿度が上昇する。許容範囲が第1の湿度範囲から第2の湿度範囲に変更されているので、第1の湿度範囲の上限値H1maxである70%を超えて、空間10の湿度は上昇する。このとき、制御部164は、第2の湿度範囲の上限値H2maxである90%を超えないように、湿度調整機器152を制御する。
時刻t3では、病原体濃度が閾値より高く、かつ、人が存在していないと判定されているので、制御部164は、許容範囲を第2の湿度範囲のままで維持する。制御部164は、空間10の湿度が90%で保たれるように、湿度調整機器152を制御する。
時刻t4では、人が存在すると判定されているので、制御部164は、許容範囲を第1の湿度範囲に戻し、湿度調整機器152を除湿で動作させる。湿度調整機器152が除湿動作を行うことで、時刻t4以降、空間10の湿度が低下する。空間10の湿度が第1の湿度範囲の上限値H1maxを下回り、第1の湿度範囲に収まる範囲内で維持されるように、制御部164は、湿度調整機器152を制御する。
時刻t2〜時刻t4にかけて、空間10の湿度が高湿になるので、病原体11の生存率が低下し、病原体濃度が低下する。このため、時刻t5では、病原体濃度が閾値より低くなり、空間10における病原体11による感染の危険性が抑えられる。
<塩素濃度の時間範囲>
次に、塩素濃度の時間変化について、図6を用いて説明する。なお、オゾン濃度の時間変化についても同様である。
図6は、本実施の形態に係る空間環境制御システム100の動作中の空間10の塩素濃度の時間変化を示す図である。図6では、横軸に時間を示しており、縦軸に空間10の塩素濃度を示している。
本実施の形態では、制御部164が設定する塩素濃度の許容範囲として、第1の濃度範囲と、当該第1の濃度範囲より広い第2の濃度範囲とが候補として設けられている。
第1の濃度範囲は、人にとって快適な環境として定められた塩素濃度の範囲である。第1の濃度範囲は、例えば作業環境評価基準に基づいて定められる塩素濃度の範囲である。例えば、図6に示されるように、第1の濃度範囲は、下限値C1minが0ppm、上限値C1maxが0.01ppmとなる範囲である。あるいは、第1の濃度範囲の上限値C1maxは0.03ppmでもよい。上限値C1maxが0.01ppmであることで、臭いに敏感な人にとっても塩素臭をほとんど感じなくすることができる。
なお、0ppmとは、塩素が全く存在しないことを意味するだけでなく、ppmレベルでは検出されない、つまり、検出限界以下であることも意味する。つまり、空間10には、pptレベルで塩素が存在していてもよい。なお、オゾン濃度についても同様である。
第2の濃度範囲は、病原体11の感染力を弱体化させることができる塩素濃度の範囲である。第2の濃度範囲には、人にとって塩素臭により不快と感じられる範囲も含まれる。具体的には、第2の濃度範囲には、快適な濃度範囲よりも濃度が高い範囲が含まれる。例えば、図6に示されるように、第2の濃度範囲は、下限値C2minが0ppm、上限値C2maxが0.5ppmとなる範囲である。0.5ppmは、塩素の管理許容濃度(TWA:Time-Weighted Average)であり、許容範囲が第2の濃度範囲に設定された場合においても、人体に与える悪影響を抑えることができる。あるいは、第2の濃度範囲の上限値C2maxは0.1ppmでもよい。
次亜塩素酸又はオゾンなどの酸化力を有する物質は、インフルエンザウイルスなどの病原体11を分解し、除去することができる。このため、空間10に次亜塩素酸を放出することで、病原体11の個体数を減らし、感染力を低下させることができる。
図6で示される例では、時刻t1から時刻t2までの期間の所定の時刻に人が空間10から出ていき、時刻t3から時刻t4までの期間の所定の時刻に人が空間10に戻ってきた場合を例に説明する。なお、時刻t1に至るまでの期間は、許容範囲が第1の濃度範囲であり、空間10には快適な環境が形成されている。例えば、制御部164が次亜塩素酸発生器153の動作を停止することで、空間10の塩素濃度が0ppmで保たれている。
時刻t1では、病原体濃度が閾値より高いと判定されているものの、空間10に人が存在するので、制御部164は、換気装置155を制御することで、快適な環境を維持する。時刻t2では、人が存在しないと判定されたため、制御部164は、許容範囲を第2の濃度範囲に設定し、次亜塩素酸発生器153の動作を開始し、次亜塩素酸を発生させる。
次亜塩素酸発生器153が次亜塩素酸を発生させることで、時刻t2以降、空間10の塩素濃度が上昇する。許容範囲が第1の濃度範囲から第2の濃度範囲に変更されているので、第1の濃度範囲の上限値C1maxである0.01ppmを超えて、空間10の塩素濃度は上昇する。このとき、制御部164は、第2の濃度範囲の上限値C2maxである90%を超えないように、次亜塩素酸発生器153及び換気装置155を制御する。
時刻t3では、病原体濃度が閾値より高く、かつ、人が存在していないと判定されているので、制御部164は、許容範囲を第2の濃度範囲のままで維持する。制御部164は、空間10の塩素濃度も0.5ppmで保たれるように、次亜塩素酸発生器153及び換気装置155を制御する。
時刻t4では、人が存在すると判定されているので、制御部164は、許容範囲を第1の濃度範囲に戻し、次亜塩素酸発生器153の動作を停止し、換気装置155に空間10の換気を行わせる。換気装置155が換気を行うことで、時刻t4以降、空間10の塩素濃度が低下する。空間10の塩素濃度が第1の濃度範囲の上限値C1maxを下回り、第1の濃度範囲に収まる範囲内で維持されるように、制御部164は、換気装置155を制御する。
時刻t2〜時刻t4にかけて、空間10には次亜塩素酸が存在しているので、病原体11の生存率が低下し、病原体濃度が低下する。このため、時刻t5では、病原体濃度が閾値より低くなり、空間10における病原体11による感染の危険性が抑えられる。
なお、図4〜図6の各々に示される例では、快適性を優先する場合に、制御部164は、環境値(具体的には、温度、湿度及び塩素濃度)が第1の範囲の中央寄りの値又は下限値になるように各調整機器を制御したが、これに限らない。例えば、制御部164は、環境値が第1の範囲の上限値で保たれるように調整機器を制御してもよい。
また、浄化を優先する場合に、制御部164は、環境値が第2の温度範囲の上限値で保たれるように調整機器を制御したが、これに限らない。例えば、制御部164は、第2の範囲に含まれ、かつ、第1の範囲に含まれない範囲、すなわち、第1の範囲の上限値以上、第2の範囲の上限値以下の範囲に環境値が収まるように、調整機器を制御してもよい。例えば、制御部164は、第1の範囲の上限値と第2の範囲の上限値との間の中央値に環境値が一致するように、調整機器を制御してもよい。
以上のように、本実施の形態に係る空間環境制御システム100によれば、病原体濃度が閾値より高い場合に、人の在不在に基づいて環境値の許容範囲が設定される。このため、例えば、病原体濃度が閾値より高くて感染の危険性が高い場合で、かつ、人が存在しない場合に、空間10を高温若しくは高湿にし、又は、空間10に次亜塩素酸若しくはオゾンを放出することで、病原体11の生存率を下げることができる。一方で、空間10に人が存在する場合には、空間10を人にとって快適な環境で保つことができる。
これにより、空間10に人が存在する場合には、快適な環境を維持し、空間10から人が居なくなった場合に、病原体11の感染力を弱体化させることができる。人が空間10に存在しない場合には、環境値がどのような値になったとしても、人に不快感を与えることはない。
このように、本実施の形態によれば、人にとっての快適な環境と、病原体11の感染力の弱体化とを両立させることができる。
なお、本実施の形態では、図3に示されるように、病原体濃度を取得した後に、人が存在するか否かを判定したが、これに限らない。制御部164は、人が存在するか否かを常時、判定していてもよい。
例えば、制御部164は、空間10に人が戻ってきた場合に直ちに、許容範囲を第1の範囲に戻し、環境値が第1の範囲に収まるように調整機器群150を制御してもよい。これにより、空間10を快適な環境に速やかに戻すことができ、人が不快に感じる期間を短くすることができる。
また、例えば、制御部164は、空間10から人が出ていった場合に直ちに、許容範囲を第2の範囲に設定し、環境値が第2の範囲に収まるように、調整機器群150を制御してもよい。これにより、空間10の浄化を速やかに行うことができ、短期間で病原体11の感染力を低下させることができる。
なお、環境値には、さらに、CO2濃度、UV量及び粉塵量の少なくとも1つが含まれてもよい。例えば、制御部164は、環境値毎に、病原体濃度が所定の閾値より高い場合であって、空間10に人の存在が検知されているとき、環境値の許容範囲を第1の範囲に設定し、病原体濃度が所定の閾値より高い場合であって、空間10に人の存在が検知されていないとき、環境値の許容範囲を、第1の範囲より広い第2の範囲に設定してもよい。
CO2濃度の第1の範囲は、例えば300ppm以上2000ppm以下である。UV量の第1の範囲は、例えば、波長380nm以下のUV光に対して、50mW/cm2以下である。粉塵量の第1の範囲は、例えば0.1mg/m3以下である。これらは、衛生管理基準などに基づき定められる。
CO2濃度の第2の範囲は、例えば300ppm以上4000ppm以下である。UV量の第1の範囲は、例えば、波長380nm以下のUV光に対して、100mW/cm2以下である。粉塵量の第1の範囲は、例えば0.2mg/m3以下である。
例えば、快適な環境を維持する場合において、制御部164は、CO2濃度及び粉塵量が許容範囲内で収まるように、換気装置155を制御する。具体的には、CO2濃度及び粉塵量の少なくとも一方が許容範囲の上限値を上回っている場合には、換気装置155を制御することで、空間10の空気の入れ換えを行う。これにより、CO2濃度及び粉塵量を低下させることができる。
なお、粉塵量は、換気の際、又は、浄化動作において風量を強めた場合などにも増加する恐れがある。これらに対して、空間10内に生成される気流が抑えられるように調整機器群150を制御することで、粉塵量を許容範囲内に抑えることができる。このように、本実施の形態に係る空間環境制御システム100によれば、温度、湿度、CO2濃度及び粉塵量などの様々な環境値を快適な範囲内に収めることで、人にとってより快適な環境を形成することができる。
[変形例1]
以下では、実施の形態1の変形例1について説明する。
実施の形態1では、許容範囲の候補である第2の範囲が有限の範囲である例について示したが、第2の範囲は、無制限の範囲であってもよい。本変形例では、空間10の温度を調整する場合について説明するが、湿度、塩素濃度、オゾン濃度又はUV光量を調整してもよく、これらの環境値のうち2つ以上の環境値を調整してもよい。
図7は、本変形例に係る空間環境制御システムの動作中の空間10の温度の時間変化を示す図である。図7では、横軸に時間を示しており、縦軸に空間10の温度を示している。
本実施の形態では、制御部164が設定する温度の許容範囲として、第1の温度範囲と、無制限の第2の温度範囲とが設けられている。第2の温度範囲は、上限値及び下限値のいずれも有さない。本変形例に係る第2の温度範囲は、言うまでもなく第1の範囲より広い範囲である。
図7に示される例では、時刻t1〜t7の各々で、病原体センサ120が病原体11の検出を行っている。また、時刻t1から時刻t2までの期間の所定の時刻に人が空間10から出ていき、時刻t3から時刻t4までの期間の所定の時刻に人が空間10に戻ってきた場合を例に示している。
時刻t1では、病原体濃度が閾値より高いと判定されているものの、空間10に人が存在するので、制御部164は、温度調整機器151を制御することで、快適な環境を維持する。時刻t2では、人が存在していないと判定されたため、制御部164は、許容範囲を第2の温度範囲に設定し、温度調整機器151を暖房で動作させる。言い換えると、制御部164は、許容範囲に制限を設けることなく、温度調整機器151を暖房で動作させる。例えば、制御部164は、温度調整機器151の暖房機能の最大出力で動作させる。
温度調整機器151が暖房動作を行うことで、時刻t2以降、空間10の温度が上昇する。許容範囲に制限がないので、例えば、空間10の温度は上昇し続ける。
時刻t3では、病原体濃度が閾値より高く、かつ、人が存在していないと判定されているので、制御部164は、温度調整機器151を最大出力で動作を継続させる。
時刻t4では、人が存在すると判定されているので、制御部164は、許容範囲を第1の温度範囲に戻し、温度調整機器151を冷房で動作させる。温度調整機器151が冷房動作を行うことで、時刻t4以降、空間10の温度が低下する。空間10の温度が第1の温度範囲の上限値T1maxを下回り、第1の温度範囲に収まる範囲内で維持されるように、制御部164は、温度調整機器151を制御する。
時刻t2〜時刻t4にかけて、空間10の温度が高温になるので、病原体11の生存率が低下し、病原体濃度が次第に低下する。このため、時刻t5では、病原体濃度が閾値より低くなり、空間10における病原体11による感染の危険性が抑えられる。
以上のように、本変形例に係る空間環境制御システムでは、病原体濃度が閾値より高く、かつ、空間10に人が存在しない場合に、環境値の制限を設けない。これにより、各調整機器を最大出力で動作させることが可能になる。
したがって、空間10に存在する病原体11の感染力を短期間で弱体化させることができる。また、高温又は高湿などの不快な環境が空間10に形成されたとしても、空間10には人が存在しないので人に悪影響を与えることはない。このように、本変形例に係る空間環境制御システムによれば、人にとって快適性と病原体の感染力の弱体化とを両立させることができる。
[変形例2]
次に、実施の形態1の変形例2について説明する。
実施の形態1では、病原体濃度が閾値より低い場合(S112でNo)と、病原体濃度が閾値より高く、かつ、人が存在する場合(S114でYes)とで、制御部164が同じ動作モードで動作する例を示したが、これに限らない。
図8は、本変形例に係る空間環境制御システムの動作を示すフローチャートである。ここでは、図3に示される動作との相違点を中心に説明する。
病原体濃度が閾値より高い場合(S112でYes)で、空間10に人が存在する場合(S114でYes)、制御部164は、環境値の許容範囲を第1の範囲に設定する(S116)。次に、制御部164は、混合モードで動作する(S119)。
混合モードは、快適性を維持した状態で、空間10の浄化を行う動作モードである。第1の範囲は、人にとって快適な範囲として定められた範囲であるので、環境値が第1の範囲内で収まっている限り、空間10は人にとって快適な環境で保たれる。このとき、制御部164は、環境値が第1の範囲の上限値に一致するように、調整機器を制御する。これにより、快適な環境を維持しつつ、病原体11の感染力を弱体化させることができる。
ここで、図8に示されるフローチャートに沿って本変形例に係る空間環境制御システムが動作したときの空間10の環境値の時間変化の具体例について説明する。以下では、環境値として、空間10の温度の時間変化について説明する。なお、説明を省略するが、湿度、塩素濃度及びオゾン濃度なども同様である。
図9は、本変形例に係る空間環境制御システムの動作中の空間10の温度の時間変化を示す図である。図9では、横軸に時間を示しており、縦軸に空間10の温度を示している。
図9に示される例では、時刻t1〜t7の各々で、病原体センサ120が病原体11の検出を行っている。また、時刻t1から時刻t2までの期間の所定の時刻に人が空間10から出ていき、時刻t3から時刻t4までの期間の所定の時刻に人が空間10に戻ってきた場合を例に示している。
時刻t1では、病原体濃度が閾値より低いと判定されているので、制御部164は、温度調整機器151を制御することで、空間10に快適な環境を維持する。例えば、図9に示されるように、制御部164は、空間10の温度が23℃で保たれるように、温度調整機器151を制御する。ここで、「23℃」は、例えば、第1の温度範囲に含まれる温度の中で、空間10に存在する人にとって最も快適な温度として予め設定された温度である。なお、このときの設定温度は、23℃に限らず、第1の温度範囲に含まれる温度であればよい。
時刻t2では、病原体濃度が閾値より高いと判定され、かつ、空間10に人が存在していないので、制御部164は、許容範囲を第2の温度範囲に設定し、温度調整機器151を暖房で動作させる。
その後、時刻t4では、病原体濃度が高いと判定されているものの、空間10に人が存在しているので、制御部164は、許容範囲を第1の温度範囲に戻し、温度調整機器151を冷房で動作させる。温度調整機器151が冷房動作を行うことで、時刻t4以降、空間10の温度が低下する。
空間10の温度が第1の温度範囲の上限値T1maxに到達した後、制御部164は、空間10の温度が上限値T1maxに一致するように、温度調整機器151を冷房で動作させる。時刻t5では、病原体濃度が高いと判定され、かつ、空間10に人が存在するので、制御部164は、空間10の温度が上限値T1maxに一致するように、温度調整機器151を制御する。
時刻t6で、病原体濃度が低いと判定されたので、制御部164は、温度調整機器151の冷房を強めることで、空間10の温度を最初の設定温度である23℃まで下げて、その後、23℃で維持する。
このように、本変形例に係る空間環境制御システムでは、病原体濃度が高いと判定された場合において、空間10に人が存在するとき、制御部164は、環境値の許容範囲の中で、病原体11の感染力の弱体化に最も適した環境値になるように、調整機器を維持する。これにより、快適な環境を維持しつつ、病原体11による感染の危険性を低減することができる。
(実施の形態2)
続いて、実施の形態2について説明する。
本実施の形態では、空間に対する人の出入り状況を推定し、推定結果に基づいて空間の環境を制御する。以下では、図1に示される空間10が、本実施の形態に係る空間環境制御システムによる環境の制御対象の空間である場合を例に説明する。なお、以下の説明において、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
[構成]
図10は、本実施の形態に係る空間環境制御システム200の構成を示すブロック図である。図10に示されるように、空間環境制御システム200は、実施の形態1に係る空間環境制御システム100と比較して、空間環境制御装置160の代わりに空間環境制御装置260を備える点と、新たに管理装置270を備える点とが相違する。
空間環境制御装置260は、実施の形態1に係る空間環境制御装置160と比較して、制御部164の代わりに制御部264を備える。さらに、空間環境制御装置260は、スケジュール情報取得部265を備える。
制御部264は、制御部164の動作に加えてさらに、浄化モードで動作する場合に、空間10に人が入ってくる時刻を推定し、推定した時刻までに空間10の環境値が第1の範囲に収まるように調整機器群150を制御する。具体的には、制御部264は、スケジュール情報取得部265が取得したスケジュール情報272に基づいて、人が入ってくる時刻を推定する。
人が入ってくる時刻とは、具体的には、空間10から出ていった人が再び戻ってくる時刻、又は、新たな人が空間10に入ってくる時刻である。人が入ってくる時刻は、環境値を第1の範囲内に収める目標時刻である。
スケジュール情報取得部265は、管理装置270からスケジュール情報272を取得する。スケジュール情報取得部265は、例えば、管理装置270と有線又は無線で通信する通信インタフェースである。
管理装置270は、スケジュール情報272の管理を行う装置である。管理装置270は、例えば、空間10の使用予定を管理するスケジュール管理サーバ装置などである。
図10に示されるように、管理装置270は、スケジュール情報272を記憶する記憶部271を備える。記憶部271は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性記憶メモリで実現されるが、これに限らない。
スケジュール情報272は、空間10の使用予定、及び、人の行動予定の少なくとも一方を示す情報である。図11は、本実施の形態に係る空間環境制御システム200が利用するスケジュール情報272を示す図である。スケジュール情報272は、例えば、オフィスの会議室の使用予約などのように、使用の開始時刻と終了時刻又は使用期間とで表される。図11に示されるスケジュール情報272は、13:00〜15:00、15:30〜16:30、及び、18:00以降の期間が、空間10が使用される期間であることを示している。
空間10が使用される期間は、空間10に人が存在する期間とみなすことができる。逆に、空間10が使用されない期間は、空間10に人が存在しない期間とみなすことができる。つまり、空間10の使用開始時刻は、人が空間10に入ってくる時刻であり、環境値を第1の範囲内に収める目標時刻である。したがって、例えば、制御部264は、13:00、15:30及び18:00の各々の時点で、環境値が第1の範囲に収まるように、調整機器群150を制御する。
[動作]
次に、本実施の形態に係る空間環境制御システム200の動作について説明する。
本実施の形態に係る空間環境制御システム200の動作は、浄化モードで動作する場合の動作、すなわち、病原体濃度が閾値より高く、かつ、人が存在していない場合の動作の動作が実施の形態1とは相違する。以下では、浄化モードでの動作について、図12を用いて説明する。
図12は、本実施の形態に係る空間環境制御システム200の動作を示すフローチャートである。
まず、図12に示されるように、スケジュール情報取得部265が管理装置270からスケジュール情報272を取得する(S210)。次に、制御部264は、スケジュール情報272に基づいて目標時刻を決定する(S212)。具体的には、制御部264は、現在時刻に最も近い目標時刻を決定する。例えば、図11に示されるスケジュール情報272を取得した場合に、現在時刻が15:00であるとき、目標時刻は15:30である。
次に、制御部264は、制御内容を決定する(S214)。具体的には、制御部264は、目標時刻までの時間と、病原体濃度と、環境値の許容範囲とに基づいて、設定温度、設定湿度、次亜塩素酸又はオゾンの放出量、及び、換気量などを決定する。
例えば、制御部264は、目標時刻までの半分の期間を利用して病原体11の浄化を行い、残りの半分の期間を利用して環境の回復を行う。制御部264は、前半の期間で病原体濃度が閾値より低くなるように、第2の範囲内で、設定温度、設定湿度、次亜塩素酸又はオゾンの放出量、及び、換気量などを決定する。また、制御部264は、後半の期間で、悪化した環境値が第1の範囲内に収まるように、設定温度、設定湿度、次亜塩素酸又はオゾンの放出量、及び、換気量などを決定する。なお、浄化を行う前半の期間と、環境の回復を行う後半の期間とは同じ長さでなくてもよく、一方が他方より長くてもよい。前半の期間と後半の期間とは、調整機器群150の動作能力などに基づいて決定されてもよい。
次に、制御部264は、決定された前半の期間で、調整機器群150を制御することで、空間10の浄化を行う(S216)。例えば、図13に示されるように、15:00から15:15までの15分間、空間10を暖房及び加湿し、かつ、次亜塩素酸又はオゾンを空間10に放出する。これにより、空間10に存在する病原体11の感染力を弱体化させる。なお、図13は、本実施の形態に係る空間環境制御システム200における期間毎の動作モードを示す図である。
次に、制御部264は、後半の期間で、調整機器群150を制御することで、空間10の環境の回復を行う(S218)。例えば、図13に示されるように、15:15から15:30までの15分間で、空間10を冷房及び除湿し、かつ、塩素濃度又はオゾン濃度を低下させるための換気などを行う。
以上のように、本実施の形態に係る空間環境制御システム200では、空間10に人が入ってくる前に、病原体11の感染力の弱体化を行うことができ、かつ、悪化した環境を回復させることができる。これにより、空間10に人が入ってきたときに、不快さを感じることが抑制され、人にとってより快適な環境が実現される。
なお、本実施の形態では、浄化の後、直ちに環境の回復を行ったが、これに限らない。例えば、人が空間10に入ってくる時刻までの期間が長い場合など、調整機器群150の動作を停止する期間が、浄化の後と環境の回復を始める前に含まれてもよい。また、人が空間10に入ってくるより前の時刻に、環境の回復が完了していてもよい。
また、本実施の形態では、スケジュール情報272に基づいて目標時刻を推定する例を示したが、目標時刻の推定方法は、これに限定されない。例えば、空間10を出入りする人に目標時刻を入力させてもよい。
図14は、本実施の形態に係る空間環境制御システム200における目標時刻の入力画面の一例を示す図である。図14に示されるように、空間環境制御装置260は、空間10に戻ってくる予定時刻を入力させる入力画面267をディスプレイ266に表示する。ディスプレイ266は、例えばタッチパネルディスプレイなどであり、ユーザから戻り予定時刻の入力を受け付ける。スケジュール情報取得部265は、受け付けられた戻り予定時刻を目標時刻として取得する。
これにより、例えば、空間10から一時的に出ていく人が、空間10に戻ってくる予定時刻を入力することで、人が不在である期間に空間10の浄化と環境の回復とを行うことができる。
(他の実施の形態)
以上、1つ又は複数の態様に係る空間環境制御システム、空間環境制御装置及び空間環境制御方法について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したもの、及び、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の範囲内に含まれる。
例えば、上記の実施の形態では、空間10中を浮遊する病原体11を検出したが、これに限らない。例えば、空間10を形成する壁、ドア53及び窓54、並びに、空間10内に配置されたテーブルなどの家具、エアコン50及び浄化物質発生器51などの機器の表面に付着した病原体11を検出してもよい。
また、例えば、空間10は、壁などで閉じられた空間でなくてもよい。また、空間10は、複数の領域に分割され、領域毎に環境値の検出及び病原体の検出などが行われてもよい。また、領域毎に、調整機器による環境の制御が行われてもよい。
また、例えば、病原体濃度の閾値、並びに、環境値の許容範囲の候補である第1の範囲及び第2の範囲は変更可能であってもよい。例えば、閾値及び許容範囲の候補の少なくとも1つは、時刻又は季節に基づいて変更可能であってもよい。あるいは、空間10に存在する人に応じて、閾値及び許容範囲の候補の少なくとも1つを変更してもよい。
具体的には、人センサ140が出力する人情報には、存在情報だけでなく、人を特定するための情報が含まれてもよい。例えば、人センサ140は、空間10を撮影した画像又は映像を人情報として出力してもよい。画像又は映像を解析することにより、人の存在又は不在を判定できるだけでなく、存在する人の判別を行うこともできる。
人の判別とは、空間10に存在する人が、予め登録された複数の人の誰(すなわち、特定人)に該当するか、又は、未登録の人であるかを判定することである。あるいは、人の判別には、空間10に存在する人が、予め設定された複数のカテゴリのいずれに該当するかを判定することであってもよい。複数のカテゴリは、例えば、年齢、性別などのカテゴリである。
また、画像又は映像を解析することにより、人の着衣量を判別してもよい。着衣量に応じて快適と感じる範囲が異なるので、着衣量に応じた許容範囲を設定してもよい。
また、例えば、病原体濃度の閾値、及び、環境値の許容範囲はそれぞれ、複数設けられていてもよい。
また、許容範囲は、機械学習などによって更新されてもよい。例えば、人毎に、機械学習による快適な環境値の許容範囲を設定してもよい。例えば、人が空間10に戻ってきた時にエアコン50の設定温度などを変更した場合、このときの空間10の温度と、変更後の設定値とを蓄積する。蓄積したデータを入力データとして、人が快適と思う温度を機械学習により判定してもよい。
また、人センサ140は、人から明示の指示を受け取ることで、空間10に人が存在するか否かを検知してもよい。例えば、人センサ140は、空間10内に配置された制御装置60に設けられた物理的なボタン、又は、タッチパネルディスプレイに表示されるGUI(Graphical User Interface)などで実現されてもよい。空間10に入った人にボタンなどを押下させることにより、人センサ140は、人が空間10に入ったことを検知してもよい。
また、上記実施の形態で説明した装置間の通信方法については特に限定されるものではない。装置間で無線通信が行われる場合、無線通信の方式(通信規格)は、例えば、Zigbee(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、又は、無線LAN(Local Area Network)などの近距離無線通信である。あるいは、無線通信の方式(通信規格)は、インターネットなどの広域通信ネットワークを介した通信でもよい。また、装置間においては、無線通信に代えて、有線通信が行われてもよい。有線通信は、具体的には、電力線搬送通信(PLC:Power Line Communication)又は有線LANを用いた通信などである。
また、上記実施の形態において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、複数の処理の順序が変更されてもよく、あるいは、複数の処理が並行して実行されてもよい。また、空間環境制御システムが備える構成要素の複数の装置への振り分けは、一例である。例えば、一の装置が備える構成要素を他の装置が備えてもよい。また、空間環境制御システムは、単一の装置として実現されてもよい。
例えば、上記実施の形態において説明した処理は、単一の装置(システム)を用いて集中処理することによって実現してもよく、又は、複数の装置を用いて分散処理することによって実現してもよい。また、上記プログラムを実行するプロセッサは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、又は分散処理を行ってもよい。
また、上記実施の形態において、制御部などの構成要素の全部又は一部は、専用のハードウェアで構成されてもよく、あるいは、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)又はプロセッサなどのプログラム実行部が、HDD(Hard Disk Drive)又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
また、制御部などの構成要素は、1つ又は複数の電子回路で構成されてもよい。1つ又は複数の電子回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
1つ又は複数の電子回路には、例えば、半導体装置、IC(Integrated Circuit)又はLSI(Large Scale Integration)などが含まれてもよい。IC又はLSIは、1つのチップに集積されてもよく、複数のチップに集積されてもよい。ここでは、IC又はLSIと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又は、ULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれるかもしれない。また、LSIの製造後にプログラムされるFPGA(Field Programmable Gate Array)も同じ目的で使うことができる。
また、本開示の全般的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路又はコンピュータプログラムで実現されてもよい。あるいは、当該コンピュータプログラムが記憶された光学ディスク、HDD若しくは半導体メモリなどのコンピュータ読み取り可能な非一時的記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
また、上記の各実施の形態は、請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。