JP6870356B2 - 異方性ボンド磁石の成形用金型及びこれを用いた製造方法 - Google Patents

異方性ボンド磁石の成形用金型及びこれを用いた製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、異方性ボンド磁石の成形用金型及びこれを用いた製造方法に関する。
一般に、ボンド磁石は、磁石粉末、有機樹脂等のバインダ成分、及び強化剤、可塑剤、滑剤等の添加剤等から成る複合ペレットを、射出成形、圧縮成形又は押出成形することにより製造される。特に、ポリアミド樹脂やポリフェニレンサルファイド樹脂等の熱可塑性樹脂をバインダとし、さらに射出成形法を用いて製造される磁石は、寸法精度が高い、後加工が必要ない、複雑な形状が簡単に得られる、金属や樹脂等との一体成形により接着の必要がない、など焼結磁石にはない多くの利点があり、エアコン室外機ファンモータなどの動力用や車載バルブの回転角度検出センサなどのセンサ用など幅広い用途で使われている。近年は、車両の軽量化や電動化に伴いモータ、センサの車両搭載数は年々増加傾向にあり、磁力が強い希土類ボンド磁石の使用も増えている。
ボンド磁石には、粒子内で磁化方向がランダムな方向の等方性磁石粉を用いた等方性ボンド磁石と、粒子内で磁化方向が揃った異方性磁石粉を用いた異方性ボンド磁石とがある。 等方性ボンド磁石は、形状作成時に磁化方向を揃える必要がなく簡易に形状を成形でき、表面磁束密度等の所望の磁束密度波形は形状や着磁ヨークの工夫で得られる。しかし、異方性ボンド磁石に比べて磁力が低く、モータでは小型化、高トルク化、高効率化など、センサでは小型化、高ギャップ化、高精度化等の阻害要因となっていた。
前記阻害要因を解決する手段として、等方性ボンド磁石よりも磁力の強い異方性ボンド磁石の使用が検討される。しかし、異方性ボンド磁石は、形状成形時に磁化方向を揃える必要がある。
異方性ボンド磁石の磁化方向を揃えるには、強い配向磁場が要求される。強い配向磁場を実現する手段としては例えば特許文献1〜3が既に知られている。
特許文献1には、成形する磁石の1極に対して磁化方向が対称の一対、すなわち2個の永久磁石からなる配向用磁石を環状に配置したプラスチック極配向磁石の成形用金型が開示されている。
特許文献2には、成形する希土類異方性ボンド磁石の1極に対して2個の配向用磁石とこれらの配向用磁石間に1個の磁性材からなる配向ヨークとを環状に配置した異方性ボンド磁石の成形用金型が開示されている。
特許文献3には、成形すべき極異方性円筒状磁石の材料を含むコンパウンドが充填される円筒状キャビティと、円筒状キャビティの内周側又は外周側に設けられ、磁石材料を磁気的に配向させる配向用磁界発生部と、円筒状キャビティの外周側又は内周側に設けられ、円筒状キャビティ内の磁束を調整する強磁性体より成る円筒状補助ヨークと、円筒状補助ヨークの円筒状キャビティ側の内周面又は外周面に設けられ、円筒状キャビティ内の磁束を調整する非磁性材料より成るスペーサと、を備えるモータ用極異方性円筒状磁石成形用金型が開示されている。
この種の成形用金型では、成形すべき異方性ボンド磁石に対して強い配向磁場を与えることとその配向方向を制御することが要求される。
特に、モータでは更なる小型・高トルク・高効率・高精度と静音化が要求されている。
モータが発生する音は、ベアリングなどで生じる機械的な振動による音、高周波の電磁変動による電磁音およびコギングトルクなどのトルク脈動により生じる振動が原因の音がある。
小型・高トルク・高効率を実現する手段としては、使用する磁石の表面磁束密度を大きくすること、更には表面磁束密度の波形面積ができるだけ大きくなることが求められる。しかし、磁石の表面磁束密度の波形面積を単に大きくすると高次の波形成分により生じるコギングトルクが大きくなる。このため、静音化、特にコギングトルクを低減する手段としては、磁石の表面磁束密度の波形形状をより正弦波に近づけることが更に求められる。
特許第4087609号公報(発明の実施の形態,図2) 特開2014−192980号公報(発明を実施するための形態,図5A) 特許第4556439号公報(発明を実施するための最良の形態,図1)
しかしながら、特許文献1,2に記載の成形用金型にあっては、強い配向磁場とその配向方向を制御するのは難しい。
特許文献1は、成形する磁石の1極に対して2個の配向用磁石を使用し、当該配向用磁石の磁化の方向が互いに向かい合う方向に傾くように設定することで極配向の理想的な磁束密度波形を得ることが示されている。
成形するボンド磁石の磁石粉がフェライト磁石粉の場合は飽和磁化が0.2T程度と低く、金型内でボンド磁石の形状を形成する空間(キャビティ)に溶融したボンド磁石材料が充填されてもキャビティの磁束密度分布は充填前と大差はない。
一方、成形するボンド磁石の磁石粉が希土類磁石粉の場合、飽和磁化は異方性Sm−Fe−N微粉末が0.7T以上、異方性Nd−Fe−B微粉末が0.8T以上と高い。飽和磁化が高いとキャビティ内のボンド磁石材料に磁束が集中するためキャビティの磁束密度分布はボンド磁石材料を充填する前と異なってくる。したがって、特許文献1に記載の配向構成では極配向の理想的な磁束密度波形を得ることができない場合が生じる懸念がある。
特許文献2は、成形する磁石の1極に対して2個の対向する配向用磁石と、当該配向用磁石の間に磁性材(配向ヨーク)を配置した希土類異方性ボンド磁石の配向金型が示されている。特許文献2の配向構成は、配向磁場を強くするためには有効である。しかし、特許文献2の図5Cと図6Cとではキャビティの両端部で磁束の方向が異なり、キャビティ内の磁化の配向方向を制御できているとは言えない。
これに対し、特許文献3に記載の成形用金型の配向構成は、強い配向磁場とその配向方向を制御する上では有用で、特に磁力の強いNd−Fe−B系ボンド磁石材料やSm−Fe−N系ボンド磁石材料においては優れた配向構成である。しかし、前記Nd−Fe−B系ボンド磁石材料やSm−Fe−N系ボンド磁石材料はフェライト系材料に比べて高価で比重が大きいことから、できるだけ使用量を減らし重量とコストを削減する要求が高く、例えば環状磁石では薄肉化が求められる。磁石が薄肉になると、より磁化配向を制御することが難しくなる。例えば正弦波状の表面磁束密度波形を目的とした場合、成形する磁石の1極の極幅に対する磁石の肉厚の比が0.2より小さいと特許文献3の配向構成でも所望とする波形制御が難しい。
また、射出成形金型においては、材料の流路となるランナをできるだけ短くする要望や、キャビティをできるだけ多くする要望などから、キャビティ間隔は極力小さくすることが望まれる。特許文献2及び3において、配向ヨークを挟んで対向する一対の配向用磁石から生じる磁束は、配向ヨークに集中してキャビティに導かれるが、一部は外周側の空間を通って還流され、キャビティの配向磁場を強くすることに十分に寄与できていない懸念がある。
本発明が解決しようとする技術的課題は、異方性ボンド磁石を成形するに際し、成形すべき異方性ボンド磁石の各磁極に対応する配向磁場を大きくすることができ、異方性ボンド磁石に対して強い配向磁場で表面磁束密度波形を所望の形状に調整可能な成形用金型及びこれを用いた製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記技術的課題を解決すべく更に鋭意研究し、試行錯誤の結果、以下に示す構成にてより強い配向磁場とその配向方向を制御するための磁化配向用を備えた成形用金型構成を見出し、高い磁化配向度と磁化方向が制御された異方性ボンド磁石の成形を実現した。
すなわち、本発明の第1の技術的特徴は、成形すべき異方性ボンド磁石の材料を含む組成物が充填可能な空洞部を区画する金型枠材と、前記空洞部に充填された組成物に面した部位に設けられ、成形すべきボンド磁石の複数の各磁極に対向して配置され、前記空洞部内の組成物の磁石材料を磁気的に配向させる配向用磁石と、を備え、前記配向用磁石は、成形すべき異方性ボンド磁石の各磁極に対向して配置される強磁性材からなる配向磁性体と、前記各磁極に予め決められた表面磁束密度波形を形成するための磁場を与えるように前記配向磁性体を囲んで配置される少なくとも3以上の複数の永久磁石とを有し、前記複数の永久磁石は、対応する磁極の中心位置に対向して前記配向磁性体を挟んで配置され、当該中心位置を含む領域に対して磁場を作用させる主永久磁石と、前記配向磁性体及び前記主永久磁石を挟むように配置され、前記主永久磁石の磁場方向に対して予め決められた角度傾斜した方向の磁場を作用させる対構成の副永久磁石とを有し、前記配向磁性体、前記主永久磁石及び前記対構成の副永久磁石は前記磁極毎に別個に設けられることを特徴とする異方性ボンド磁石の成形用金型である。
本発明の第の技術的特徴は、第の技術的特徴を備えた異方性ボンド磁石の成形用金型において、前記配向磁性体の対応する磁極に面する側の面積をA、当該配向磁性体の対応する主永久磁石に面する側の面積とした場合には、A≦Aを満たすことを特徴とする異方性ボンド磁石の成形用金型である。
本発明の第の技術的特徴は、第1の技術的特徴を備えた異方性ボンド磁石の成形用金型において、前記空洞部内の組成物と前記配向用磁石とを仕切る仕切り部材を備えることを特徴とする異方性ボンド磁石の成形用金型である。
本発明の第4の技術的特徴は、第3の技術的特徴を備えた異方性ボンド磁石において、前記配向磁性体及び前記対構成の副永久磁石は前記仕切り部材に接触して配置されることを特徴とする異方性ボンド磁石の成形用金型である。
本発明の第5の技術的特徴は、第1の技術的特徴を備えた異方性ボンド磁石の成形用金型において、前記金型枠材は円環状空洞部を区画し、当該円環状空洞部の外周側又は内周側に前記配向用磁石を設置することを特徴とする異方性ボンド磁石の成形用金型である。
本発明の第6の技術的特徴は、第1又は第2の技術的特徴を備えた異方性ボンド磁石の成形用金型において、成形すべきボンド磁石は、1種類以上の希土類異方性磁石粉体と樹脂との混合物からなるボンド磁石であることを特徴とする異方性ボンド磁石の成形用金型である。
本発明の第7の技術的特徴は、第1の技術的特徴を備えた異方性ボンド磁石の成形用金型において、成形すべきボンド磁石は、1種類以上の希土類異方性磁石粉体と熱可塑性樹脂との混合物からなり、射出成形若しくは押出成形にて成形されることを特徴とする異方性ボンド磁石の成形用金型である。
本発明の第8の技術的特徴は、第5の技術的特徴を備えた異方性ボンド磁石の成形用金型において、成形すべき円環状の異方性ボンド磁石は、着磁後の表面磁束密度波形のフーリエ変換による一次成分が90%以上の正弦波状であり、前記配向用磁石は、成形すべき円環状の異方性ボンド磁石の中心と前記各磁極中心とを結ぶ基準線に対して±20度の角度範囲内の磁場方向を有する主永久磁石と、前記基準線に対して各磁極中心間の角度以上の角度で交差し、かつ、前記基準線に対して線対称になる磁場方向を有する対構成の副永久磁石と、を含むことを特徴とする異方性ボンド磁石の成形用金型である。
本発明の第9の技術的特徴は、第1の技術的特徴を備えた異方性ボンド磁石の成形用金型において、前記配向用磁石及び前記配向用磁石を保持する保持部材からなる配向ホルダを有し、当該配向ホルダは前記金型枠材に着脱可能に装着されることを特徴とする異方性ボンド磁石の成形用金型である。
本発明の第10の技術的特徴は、第1乃至第9のいずれかの技術的特徴を備えた異方性ボンド磁石の成形用金型を用いて異方性ボンド磁石を製造するに際し、前記成形用金型の空洞部に成形すべき異方性ボンド磁石の材料を含む組成物を充填する充填工程と、前記充填工程後において前記成形用金型の配向用磁石にて前記空洞部に充填された組成物を磁気的に配向させると共に所定の形状に成形する配向・成形工程と、前記配向・成形工程にて成形された異方性ボンド磁石を冷却して前記成形用金型から取り出す取出工程と、を含むことを特徴とする異方性ボンド磁石の製造方法である。
本発明の第1の技術的特徴によれば、異方性ボンド磁石を成形するに際し、成形すべき異方性ボンド磁石の各磁極に対応する配向磁場を大きくすることができ、異方性ボンド磁石に対して強い配向磁場で表面磁束密度波形を所望の形状に調整可能な成形用金型を提供することができる。
本発明の第の技術的特徴によれば、成形すべき異方性ボンド磁石の各磁極中心付近に配向磁場を集中的に作用させることができる。
本発明の第の技術的特徴によれば、仕切り部材を用いない態様に比べて、成形された異方性ボンド磁石の外観を良好に保ち、かつ、成形品を金型から取り出し易くすることができる。
本発明の第4の技術的特徴によれば、仕切り部材に対する配向用磁石の相対位置関係を保つことができる。
本発明の第5の技術的特徴によれば、円環状の異方性ボンド磁石を成形するに際し、異方性ボンド磁石に対して強い配向磁場で表面磁束密度波形を所望の形状に調整可能な成形用金型を提供することができる。
本発明の第6の技術的特徴によれば、磁力が高く、かつ保磁力の高い異方性ボンド磁石を成形することができる。
本発明の第7の技術的特徴によれば、磁力、保磁力が高く、かつ複雑形状で寸法精度の良い異方性ボンド磁石を成形することができる。
本発明の第8の技術的特徴によれば、主永久磁石、副永久磁石の磁場方向を工夫することで、成形すべき円環状の異方性ボンド磁石の表面磁束密度波形を所望のものに調整することができる。
本発明の第9の技術的特徴によれば、配向用磁石を簡単に組み込むことが可能な異方性ボンド磁石の成形用金型を提供することができる。
本発明の第10の技術的特徴によれば、異方性ボンド磁石に対して強い配向磁場で表面磁束密度波形を所望の形状に調整可能な成形用金型を利用し、磁力が高い高品質の異方性ボンド磁石を容易に製造することができる。
(a)は本発明が適用された異方性ボンド磁石の成形用金型の実施の形態の概要を示す説明図、(b)は(a)の成形用金型を用いた異方性ボンド磁石の製造方法を示す説明図である。 実施の形態1に係る異方性ボンド磁石の製造装置を示す説明図である。 (a)は図2中III−III線で切断した異方性ボンド磁石の成形用金型の断面説明図、(b)はその要部を示す説明図である。 (a)は変形の形態1に係る異方性ボンド磁石の成形用金型を示す説明図、(b)は変形の形態2に係る異方性ボンド磁石の成形用金型を示す説明図である。 (a)は比較例1に係る異方性ボンド磁石の成形用金型を示す説明図、(b)は比較例2に係る異方性ボンド磁石の成形用金型を示す説明図である。 実施例1及び比較例1,2に係る成形用金型で成形した異方性ボンド磁石の表面磁束密度波形を示す説明図である。
◎実施の形態の概要
図1(a)は本発明が適用された異方性ボンド磁石の成形用金型の実施の形態の概要を示す。
同図において、異方性ボンド磁石の成形用金型1は、成形すべき異方性ボンド磁石の材料を含む組成物Cmが充填可能な空洞部3を区画する金型枠材2と、空洞部3に充填された組成物Cmに面した部位に設けられ、成形すべきボンド磁石の複数の各磁極Mpに対向して配置され、空洞部3内の組成物Cmの磁石材料を磁気的に配向させる配向用磁石4と、を備え、配向用磁石4は、成形すべき異方性ボンド磁石の各磁極Mpに対向して配置される強磁性材からなる配向磁性体6と、各磁極Mpに予め決められた表面磁束密度波形を形成するための磁場を与えるように配向磁性体6を囲んで配置される少なくとも3以上の複数の永久磁石5とを有し、複数の永久磁石5は、対応する磁極Mpの中心位置に対向して配向磁性体6を挟んで配置され、当該中心位置を含む領域に対して磁場を作用させる主永久磁石5aと、配向磁性体6及び主永久磁石5aを挟むように配置され、主永久磁石5aの磁場方向に対して予め決められた角度傾斜した方向の磁場を作用させる対構成の副永久磁石5b,5cとを有し、配向磁性体6、主永久磁石5a及び対構成の副永久磁石5b,5cは磁極Mp毎に別個に設けられるものである。
このような技術的手段において、本発明の成形用金型1は各種形状の異方性ボンド磁石を成形するのに適用できるが、モータ等で広く用いられる円環状の異方性ボンド磁石の配向用金型において特に有効な技術である。
本例において、成形用金型1としては、金型枠材2と配向用磁石4とを少なくとも備えていればよい。
金型枠材2は、成形すべき異方性ボンド磁石の形状に対応した空洞部3を区画するものであればよく、空洞部3としては円環状、円柱状、板状など適宜選定して差し支えない。ここで、金型枠材2としては、例えば異方性ボンド磁石が円環状である場合には、円環状の空洞部3を内側、外側から区画する内枠材と外枠材(例えば図1(a)中の保持部材9に相当)とが用いられ、また、異方性ボンド磁石の形状が円柱状の場合には、円柱状の空洞部3を外側から区画する外枠材が用いられ、内側から区画する内枠材は不要であり、また、金型内に別の部品を挿入して成形する、いわゆるインサート成形や一体成形と呼ばれる成形の場合も内枠材が不要となることがある。
また、配向用磁石4としては、成形すべき異方性ボンド磁石の複数の各磁極Mpに対向して配置され、各磁極Mpに対して磁場を作用させるために、複数の永久磁石5と強磁性材からなる配向磁性体6とを組み合わせた態様が用いられる。本例では、永久磁石5は、主永久磁石5aと対構成の副永久磁石5b,5c)とを少なくとも含んでいればよい。このとき、主永久磁石5a、対構成の副永久磁石5b,5cは夫々単一のものを用いてもよいが、これに限られず、複数に分割したものを用いるようにしてもよい。
そして、主永久磁石5aは各磁極Mpに作用させる基本的な配向磁場を与えるものであり、副永久磁石5b,5cは主永久磁石5aの配向磁場を補強すると共に、成形すべき異方性ボンド磁石の表面磁束密度波形を正弦波状に調整する。更に、配向磁性体6は強磁性材からなり、主永久磁石5a、副永久磁石5b,5cによる配向磁場を集中させて各磁極Mpに与えるものである。
次に、本実施の形態に係る異方性ボンド磁石の成形用金型1の代表的態様又は好ましい態様について説明する。
先ず、副永久磁石5b,5cの好ましい態様としては、配向磁性体6を挟むように配置される態様が挙げられる。本例は、各磁極Mp中心を含む領域を除いて配向磁性体6を主永久磁石5a及び対構成の副永久磁石5b,5cで取り囲む態様であり、各磁極Mpに対応する配向磁場を大きくする上で有効である。
また、配向磁性体6の好ましい態様としては、配向磁性体6の対応する磁極Mpに面する側の面積をA、当該配向磁性体6の対応する主永久磁石5aに面する側の面積とした場合には、A≦Aを満たす態様が挙げられる。本例は、成形すべき異方性ボンド磁石の各磁極Mp中心付近に配向磁場を集中的に作用させる上で有効であり、例えば円環状の異方性ボンド磁石の外周面に各磁極Mpを配列する態様の成形用金型1が代表的であるが、これに限られるものではなく、円環状の異方性ボンド磁石以外にも適用可能である。
更に、成形用金型1の好ましい態様としては、空洞部3内の組成物Cmと配向用磁石4とを仕切る仕切り部材8を備える態様が挙げられる。本例の仕切り部材8は、空洞部3内の組成物Cmと配向用磁石4とを仕切る機能部材である。このような仕切り部材8を用いると、配向用磁石4が組成物Cmと直接触れないため、成形された磁石の外観が良くなるほか、成形された磁石が取り出しやすく、配向用磁石4等の摩耗を防ぎ金型のメンテナンスを容易にする等の効果を奏する。また、仕切り部材8は磁性材、非磁性材のいずれでもよいが、配向用磁石4による配向磁場を不必要に弱めないように厚さの選定に留意する必要がある。特に磁性材を用いる場合には配向用磁石4による配向磁場に大きく影響するため、材質の選定に留意する必要がある。
また、円環状の異方性ボンド磁石を成形する場合に用いられる成形用金型1の代表的態様としては、金型枠材2は円環状空洞部3を区画し、当該円環状空洞部3の外周側又は内周側に配向用磁石4を設置する態様が挙げられる。本例は、円環状の異方性ボンド磁石の外周面又は内周面に複数の磁極Mpを具備するように当該ボンド磁石を成形する上で必要な金型構成を示す。
また、ボンド磁石の代表的態様としては、1種類以上の希土類異方性磁石粉体と樹脂との混合物からなるボンド磁石である態様が挙げられる。本例は、異方性Sm−Fe−N微粉末や異方性Nd−Fe−B微粉末等の希土類異方性磁石粉体を1種類以上と樹脂との混合物からなる。希土類異方性磁石粉体は、磁石の保磁力及び磁力を高める上で有効であり、配向磁場を強くでき、しかも、その配向方向を制御することで所望のボンド磁石が得られる。更に、例えば円環状の異方性ボンド磁石を用いたモータは、希土類異方性磁石粉体を用いない態様に比べて、低振動・小型・高トルク・高効率のモータとして広い用途で使われる。
更に、本例の異方性ボンド磁石の成形用金型1は、成形する磁石粉体に流動性があればその成形方法を問わず適用可能な構成であるが、成形されるボンド磁石の好ましい態様としては、1種類以上の希土類異方性磁石粉体と熱可塑性樹脂との混合物からなり、射出成形若しくは押出成形にて成形される態様が挙げられる。本例は、異方性ボンド磁石を製造する上で、成形精度の高い射出成形若しくは押出成形にて異方性ボンド磁石を成形することができる。
また、モータ等に適用される円環状の異方性ボンド磁石としては、着磁後の表面磁束密度波形は要求されるモータ特性に対して適宜設計されるが、特に、着磁後の表面磁束密度波形のフーリエ変換による一次成分が90%以上の正弦波状の異方性ボンド磁石は振動の少ない小型・高トルク・高効率のモータ用磁石となる。
これを実現する上で、円環状の異方性ボンド磁石の成形用金型1の好ましい態様としては、成形すべき円環状の異方性ボンド磁石は、着磁後の表面磁束密度波形のフーリエ変換による一次成分が90%以上の正弦波状であり、配向用磁石4は、複数の永久磁石5として、成形すべき円環状の異方性ボンド磁石の中心と各磁極Mp中心とを結ぶ基準線mに対して±20度の角度範囲内の磁場方向を有する主永久磁石5aと、基準線mに対して各磁極Mp中心間の角度以上の角度で交差し、かつ、基準線mに対して線対称になる磁場方向を有する対構成の副永久磁石5b,5cと、を含む態様が挙げられる。
更に、異方性ボンド磁石の成形用金型1の好ましい態様としては、配向用磁石4及び配向用磁石4を保持する保持部材9(本例では仕切り部材8を含む)からなる配向ホルダ7を有し、当該配向ホルダ7は金型枠材2(本例では円環状の空洞部3の内側を区画する内枠材に相当)に着脱可能に装着される態様が挙げられる。本例は、保持部材9に配向用磁石4(複数の永久磁石5<主永久磁石5a+副永久磁石5b,5c>と配向磁性体6との組み合わせ態様)が予め組み込まれた配向ホルダ7を、金型枠材2に着脱可能に装着する態様である。
ここで、保持部材9は配向用磁石4を保持するものを広く含むものであり、図1(a)に示す態様では、配向用磁石4の外周側を保持するものを指し示しているが、これだけではなく、配向用磁石4の内周側を保持する仕切り部材8も保持部材9として機能するものである。また、本例では、保持部材9は金型枠材2の外枠材としても機能するものであるが、保持部材9は金型枠材2の外枠材とは別部材のものであってもよい。
また、異方性ボンド磁石の製造方法としては、図1(a)(b)に示すように、前述した異方性ボンド磁石の成形用金型1を用いて異方性ボンド磁石を製造するに際し、成形用金型1の空洞部3に成形すべき異方性ボンド磁石の材料を含む組成物Cmを充填する充填工程と、充填工程において成形用金型1の配向用磁石4にて空洞部3に充填された組成物Cmを磁気的に配向させると共に所定の形状に成形する配向・成形工程と、配向・成形工程にて成形された異方性ボンド磁石を冷却して成形用金型1から取り出す取出工程と、を含むものが挙げられる。本例は、成形材料の充填工程、配向・成形工程及び取出工程を有するものであればよく、配向・成形工程としては、射出成形、押出成形などが含まれる。
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
◎実施の形態1
−異方性ボンド磁石の製造装置−
図2は実施の形態1に係る異方性ボンド磁石の製造装置の全体構成を示す。
同図において、異方性ボンド磁石の製造装置は、射出成形にて異方性ボンド磁石を製造する射出成形機であって、異方性ボンド磁石を成形する成形用金型(以下金型と略記する)30と、異方性ボンド磁石の材料を含む組成物Cmを金型30内に射出注入する射出ユニット20とを備えている。
ここで、磁石の材料としては、フェライト系、Sm−Co系、Sm−Fe−N系、Nd−Fe−B系等及び/若しくはそれらの混合系から適宜選択することが可能であるが、各材料の飽和磁化に留意することが必要である。すなわち、例えばフェライト系材料で成形した磁石は所望の表面磁束密度波形が得られても、同じ金型で例えばSm−Fe−N系材料で成形した磁石は表面磁束密度波形が異なる場合がある。本例では、磁石の材料を含む組成物Cmとして、例えば異方性Sm−Fe−N微粉末や異方性Nd−Fe−B微粉末等の希土類異方性磁石粉体を1種類以上と熱可塑性樹脂との混合物を使用したものとする。
<射出ユニット>
本例では、射出ユニット20は、磁石材料を含む組成物Cmをホッパ22からシリンダ21内に投入し、シリンダ21内に投入された組成物Cmをヒータ23にて加熱溶融すると共に、シリンダ21内で進退可能なスクリューロッド24で溶融した組成物Cmをシリンダ21の射出口25側に所定量貯めた後、金型30内に射出するものである。
<金型>
本例では、金型30は、図2及び図3(a)に示すように、固定金型31と可動金型32とを有し、両者間に成形すべき異方性ボンド磁石の形状に対応した空洞部(本例では円環状空洞部)41を確保するようにしたものである。
ここで、固定金型31は所定箇所に固定側取付板33で射出成形機に取り付けられ、射出ユニット20の射出口25に連通し且つ空洞部41に通じる供給経路26を有している。
また、可動金型32は図示外の型締めユニットにて矢印方向に進退可能な可動側取付板34に取り付けられており、型締めユニットの進退で固定金型31と可動金型32とは図示外の位置合わせ機構により、位置合わせされるようになっている。尚、本例では、固定金型31と可動金型32との境界面が金型分割面PLとして機能するようになっている。
そして、可動金型32は、可動側取付板34に固定された可動側型板35の円柱状凹所35a内に各種金型部品を組み込んで構成されている。本例では、円柱状凹所35aの中央には円環状空洞部41の内側を区画する金型枠材としての内枠コア40が設けられると共に、円柱状凹所35aの内枠コア40の外側には環状の配向ホルダ50が着脱可能に装着され、内枠コア40と配向ホルダ50との間に円環状空洞部41が確保されるようになっている。
−配向ホルダ−
本実施の形態において、配向ホルダ50は、図3(a)(b)に示すように、円環状空洞部41の外周に沿って設置される複数の配向用磁石42と、これら複数の配向用磁石42の内周側を保持して円環状空洞部41との間を仕切る仕切り部材としての円環状スリーブ43と、円柱状凹所35aの周面に沿って設けられ、複数の配向用磁石42の外周側を保持する円環状の保持外枠44と、を備えている。
本例では、成形すべき円環状の異方性ボンド磁石は外周部に予め決められた間隔毎に複数(n個:図3ではn=10)の磁極Mpを具備するものであり、配向用磁石42は、形成すべき円環状の異方性ボンド磁石のn個の各磁極Mpに対向してn個(具体的には42(1)〜42(n))設置されている。ここで、配向用磁石42は、成形すべき異方性ボンド磁石の各磁極Mpに所定の表面磁束密度波形を形成するための磁場を与えるように、複数の永久磁石45と強磁性材(例えばFe)からなる配向磁性体としての配向ヨーク46とを組み合わせて構成されている。
配向用磁石42の構成例としては例えば以下のものが挙げられる。
複数の永久磁石45は、対応する磁極Mpの中心位置に対向して配置され、当該中心位置を含む領域に対して磁場を作用させる主永久磁石45aと、主永久磁石45aを挟むように配置されて主永久磁石45aの磁場方向に対して予め決められた角度傾斜した方向の磁場を作用させる対構成の副永久磁石45b,45cとを有している。
また、配向ヨーク46は対応する磁極Mpと主永久磁石45aとの間に配置されており、更に、副永久磁石45b,45cとの間に挟まれて配置されている。
ここで、永久磁石45(主永久磁石45a、副永久磁石45b,45c)は、特に材質を問わないが、少なくとも3つ使用するため、例えばSm−Co焼結磁石に比べて強度が高く、ワイヤカット等で精度良い加工が可能な例えばNd−Fe−B焼結磁石を用いることが好ましい。この種のNd−Fe−B焼結磁石は、短辺が1mm程度であれば加工、着磁後の組立が割れ・欠けなく行えることから、各磁極Mpあたり3個より多くの数に分割して配置することは磁石の表面磁束密度の波形を所望の波形にする上で有用である。よって、主永久磁石45a、副永久磁石45b,45cは夫々単数で使用することが一般的であるが、主永久磁石45a及び副永久磁石45b,45cの全部若しくは一部を複数に分割して使用することも可能である。但し、各磁極Mpあたりの磁石数が増加すると、その分、コストアップにつながるので、留意することが必要である。
更に、本例では、主永久磁石45aは、内枠コア40の中心と成形すべき異方性ボンド磁石の各磁極Mpとを結んだ基準線mに対して±20°の角度範囲内の磁場方向のN又はSの磁力を有している。また、一方の副永久磁石45bは、基準線mに対して予め決められた角度で交差する磁場方向の磁力を有しており、他方の副永久磁石45cは、基準線mに対して一方の副永久磁石45bの磁場方向と線対称となる磁場方向の磁力を有している。ここで、副永久磁石45b,45cの磁場方向については、各磁極Mp間の角度よりも大きい角度で基準線mに交差するものであればよく、例えば磁極Mp数nが10個である場合には、磁極Mp間の角度が360°/10=36°であるから、36°よりも大きい角度で交差するように選定すればよい。図3(a)(b)では略90°付近に設定されている。
そして、副永久磁石45b,45cの磁場方向としては、主永久磁石45aが磁極Mpに向かう磁場方向のNの磁力を有する場合には、主永久磁石45aに向かう磁場方向の磁力を有するようにすればよく、逆に、主永久磁石45aが磁極Mpから離れる磁場方向のSの磁力を有する場合には、主永久磁石45aから離れる磁場方向の磁力を有するようにすればよい。
また、本例では、配向ヨーク46は、図3(b)に示すように、当該配向ヨーク46の対応する磁極Mpに面する側の面積をA、当該配向ヨーク46の対応する主永久磁石45aに面する側の面積とした場合には、A<Aを満たす態様に構成されている。
特に、本実施の形態では、成形すべきボンド磁石が円環状であることから、円環状に配列される各配向用磁石42は部分円環を構成することになる。このとき、部分円環の内周長が外周長よりも短い寸法関係になることから、各配向用磁石42を構成する各要素(永久磁石45<主永久磁石45a、副永久磁石45b,45c>、配向ヨーク46)も夫々内周長が外周長よりも短い部分円環を構成することで相互に接触配置されている。
そして、本例では、各配向用磁石42の配向ヨーク46及び副永久磁石45b,45cはスリーブ43の外周面に接触配置されている。このとき、配向ヨーク46、副永久磁石45b,45cの周方向長さが略同等であると仮定すれば、各配向用磁石42の設置角度は約36°であることから、配向ヨーク46はスリーブ43の外周面のうち略12°の角度範囲に対向して設置されているものと言える。
尚、本例では、配向ヨーク46はA<Aを満たすように構成されているが、例えば主永久磁石45a、配向ヨーク46を略直方体状に構成し、副永久磁石45b,45cを部分円環形状とすることで、配向ヨーク46の寸法関係がA=Aを満たすようにしてもよい。
次に、本実施の形態で用いられる配向用磁石42による配向磁場について説明する。
図3(a)(b)に示すように、成形すべき異方性ボンド磁石の各磁極Mpには、複数の永久磁石45のうち、主永久磁石45aからの配向磁場が配向ヨーク46を経て作用し、副永久磁石45b,45cからの配向磁場が主永久磁石45aの配向磁場を補強すると共に、補強された磁場が主永久磁石45a及び配向ヨーク46を経て作用し、更に、副永久磁石45b,45cからの配向磁場が配向ヨーク46を挟む位置から直接配向ヨーク46を経て作用する。このため、円環状空洞部41に充填された組成物Cmの各磁極Mpには主永久磁石45a及び副永久磁石45b,45cからの配向磁場Hが配向ヨーク46に集中した状態で作用することになり、各磁極Mpには強い配向磁場Hがその配向方向を制御した状態で与えられる。
尚、特許文献3には、成形すべき異方性ボンド磁石の各磁極に対向した配向用磁石の面が円環状空洞部とは同心でない曲面を有しており、円環状空洞部と配向用磁石との間の距離が変化することから、配向用磁石による配向磁場の配向を制御することは可能かも知れないが、スリーブの肉厚に加えて、スリーブと配向用磁石との間に隙間が形成されてしまう分、円環状空洞部への配向磁場の強度が低下してしまい、成形する異方性ボンド磁石の配向度の低下につながる懸念がある。配向度が低下した磁石では、材料の特性を十分に発揮することができず、特に、強い配向磁場が必要な希土類異方性ボンド磁石ではこの問題が顕著に現れる傾向が見られる。
更に、本例では、円環状空洞部41と配向用磁石42との間にスリーブ43が設置されている。仮に、スリーブ43を設置しない場合には、円環状空洞部41の外周面に沿って配向用磁石42の面が配置されることから、配向用磁石42の摩耗や成形するボンド磁石の寸法精度の低下を招く虞れがある。
この点、本例では、スリーブ43の存在により円環状空洞部41に充填される組成物Cmが配向用磁石42に直接接触する事態は防止される。
このとき、スリーブ43の厚さや材質の選定は、円環状空洞部41内に生ずる成形圧力条件や配向用磁石42による配向磁場等を考慮して決めるようにすればよい。また、スリーブ43としては、非磁性材若しくは磁性材のいずれをも使用することが可能であるが、スリーブ43の厚さが厚くなると、配向用磁石42と成形すべきボンド磁石との距離が大きくなり、その分、配向用磁石42による配向磁場が低下する。
このため、本例では、スリーブ43として、厚さが0.3〜1.5mm程度の薄い非磁性材若しくは磁性材で作製されたものが用いられる。スリーブ43の厚さが1.5mm以下の薄さであれば、配向用磁石42からの磁場が円環状空洞部41内の組成物Cmに作用し易く、スリーブ43の剛性を確保するという観点からすれば、厚さが0.3mm以上であることが好ましい。
ここで、スリーブ43の材質としては非磁性材で作製する態様では、硬度、強度、加工性を考慮して、例えば非磁性鋼材、セラミックス、超硬合金等の中から適宜選定するようにすればよく、また、磁性材で作製する態様では、配向用磁石42による配向磁場が各磁極Mpに作用する上で部材が持つ磁気特性は大きく影響を及ぼすため、スリーブ43の材質の選定には十分に注意を払う必要があり、例えば飽和磁束密度が1.35(T)以下で、ロックウェル硬さが50以上である材料が好ましい。尚、飽和磁束密度の測定法としては、例えば東栄工業株式会社製のB−H(J−H)カーブトレーサや振動試料型磁力計(VSM)で測定する方法が挙げられる。
また、保持外枠44の材質は配向用磁石42の外周側を保持するものであれば、スリーブ43ほど硬度を必要としないので、金型枠材として一般的に使用される材料が選定されている。このとき、保持外枠44として、非磁性材若しくは磁性材のいずれを用いてもよいが、磁性材を用いる場合には、配向用磁石42の外周側からの磁場漏れを有効に防止することができ、保持外枠44において磁気回路が形成されることから、配向用磁石42をより有効に機能させることが可能である。
次に、本実施の形態に係る異方性ボンド磁石の製造方法について説明する。
先ず、図示外の型締めユニットにより金型30を締めた状態にセットし、この後、射出ユニット20により異方性ボンド磁石の材料を含む組成物Cmを金型30の空洞部41に射出注入して保圧する。この状態で、金型30の空洞部41に充填された組成物Cmには配向用磁石42による配向磁場が作用し、空洞部41内では異方性ボンド磁石の各磁極Mpの配向が揃えられ、異方性ボンド磁石が成形される。この後、異方性ボンド磁石を冷却、固化させた後、図示外の型締めユニットにて金型30を開き、金型30から異方性ボンド磁石の成形品を取り出すようにすればよい。
このような製造過程で得られた異方性ボンド磁石の成形品については、後述する実施例で示すように、表面磁束密度波形を安定的に形成でき、かつ、金型30から異方性ボンド磁石を取り出す際に成形品の表面性は良好に保たれる。
尚、成形頻度が増すと、成形時に発生するバリ等により、内枠コア40やスリーブ43の表面に傷が付き、成形されたボンド磁石の外観に影響を及ぼすため、これらの部材は一般的には消耗品として定期的に交換される。
また、フェライト系異方性ボンド磁石では金型30から取り出した成形品を別途着磁することなく、そのまま使用されることがあるが、希土類異方性磁石粉体を用いたボンド磁石(希土類異方性ボンド磁石)では、取り出し後の成形品を着磁装置にて別途着磁した方がばらつきが少ない、強い磁力の磁石を得ることができる。
本実施の形態では、円環状の異方性ボンド磁石の外周面に多数の磁極を配列したものを例に挙げているが、これに限られるものではなく、例えば円環状の異方性ボンド磁石の内周面に多数の磁極を配列する態様や、板状の異方性ボンド磁石に多数の磁極を配列する態様については、例えば以下の変形の形態1,2に示すような金型30を構築するようにすればよい。
◎変形の形態1
本例に係る金型30は、円環状の異方性ボンド磁石の内周面に多数の磁極を配列する態様に適用されるものであり、図4(a)に示すように、異方性ボンド磁石の材料を含む組成物Cmが充填される円環状空洞部41を有し、円環状空洞部41の外周面に沿って外枠49を設けると共に、円環状空洞部41の内周面に沿って複数の配向用磁石42(複数の永久磁石45<主永久磁石45a、副永久磁石45b,45c>、配向ヨーク46)を配設し、円環状空洞部41と配向用磁石42との間には、実施の形態1と同様なスリーブ43を設置し、更に、配向用磁石42の内側には例えば非磁性材からなる円柱状のコア48を設置したものである。尚、本例では、外枠49は磁性材で構成してもよく、目的とする表面磁束密度波形の形状や成形する磁石の形状等により適宜選択されるが、特に磁気回路を形成する必要がないため、非磁性材で構成することが好ましい。
◎変形の形態2
本例に係る金型30は、板状の異方性ボンド磁石に多数の磁極を配列する態様に適用されるものであり、図4(b)に示すように、異方性ボンド磁石の材料を含む組成物Cmが充填される直線状の空洞部51を有し、空洞部51の長手方向に沿う一側には複数の配向用磁石52(複数の永久磁石55<主永久磁石55a、副永久磁石55b,55c>、配向ヨーク56)を配設し、この空洞部51と配向用磁石52(例えば52(1)〜52(3))との間には仕切り部材としての仕切りプレート53を設置し、更に、空洞部51の長手方向に沿う他側には例えば非磁性材からなる対向部材54を設置したものである。
◎実施例1
本実施例は実施の形態1に係る金型30を具現化したものである。
本実施例は、図3(a)に示すように、異方性ボンド磁石の磁化配向用の成形用金型であって、特に外周面に10極の磁極Mpを有する異方性ボンド磁石を成形するものである。成形する磁石はモータ用で、要求される表面磁束密度波形は正弦波である。
本例において、配向用磁石42は3つの永久磁石45(主永久磁石45a、副永久磁石45b,45c)を有している。
永久磁石45の材質は、室温での保磁力が2T以上が良く、本実施例では日立金属株式会社製NEOMAX(登録商標)−41CHを用いた。ここで、主永久磁石45aの基準線mに対する磁場の配向角度は0°、副永久磁石45bの磁場の配向角度は基準線mに対して+90°、副永久磁石45cの磁場の配向角度は基準線mに対して−90°である。また、スリーブ43は肉厚を1.5mmとし、材質は磁性材で比較的高い硬度のNAK55を用いた。保持外枠44の材質はスリーブ43ほど硬度を必要としないので、一般的な金型材で用いられているS45Cとした。内枠コア40の材質はスリーブ43と同じNAK55とした。
成形する異方性ボンド磁石は、射出成形法による成形とし、材料には住友金属鉱山株式会社製Sm−Fe−N系ボンド磁石成形用ペレット(商品名:Wellmax(登録商標)−S3A14M)を選択した。射出成形法の条件を、シリンダ温度が210〜260℃、金型温度が60〜80℃とし、外径54mm、内径36mm、高さ55mmで外周10極の異方性ボンド磁石を作成した。得られた磁石を着磁後、磁石の高さ方向中央部の外周面の磁束密度をガウスメータのプローブを磁石外周面に接触し、磁石を回転して測定した。尚、ガウスメータのプローブの磁力感磁部は0.2mmの樹脂モールドが施されている。
◎比較例1
比較例1は、図5(a)に示すように、実施例1と異なる配向用磁石42’を備えた異方性ボンド磁石の成形用金型30’を示す。
同図において、配向用磁石42’は、実施例1の主永久磁石45aと配向ヨーク46とを一つの主永久磁石45a’(主永久磁石45aと同じ材質、同じ磁場の配向角度を具備)に置き換え、これを挟むように実施例1と同様な構成の対構成の副永久磁石45b,45cを設置したものである。尚、図5(a)中、実施の形態1と同様の構成要素については実施の形態1と同様な符号を付し、ここではその説明を省略する。
そして、比較例1に係る異方性ボンド磁石の成形用金型30’を用い、実施例1と同じ条件で外周10極の異方性ボンド磁石を作成した。得られた磁石を着磁後、磁石の高さ方向中央部の外周面の磁束密度をガウスメータのプローブを磁石外周面に接触し、磁石を回転して測定した。
◎比較例2
比較例2は、図5(b)に示すように、実施例1と異なる配向用磁石42”を備えた異方性ボンド磁石の成形用金型30”を示す。
同図において、配向用磁石42”は、実施例1の主永久磁石45aと配向ヨーク46とを一つの配向ヨーク46’に置き換え、この配向ヨーク46’を挟むように実施例1と同様な構成の対構成の副永久磁石45b,45cを設置したものである。尚、図5(b)中、実施の形態1と同様の構成要素については実施の形態1と同様な符号を付し、ここではその説明を省略する。
そして、比較例2に係る異方性ボンド磁石の成形用金型30”を用い、実施例1と同じ条件で外周10極の異方性ボンド磁石を作成した。得られた磁石を着磁後、磁石の高さ方向中央部の外周面の磁束密度をガウスメータのプローブを磁石外周面に接触し、磁石を回転して測定した。
実施例1及び比較例1,2の結果を図6に示す。
実施例1によれば、成形した異方性ボンド磁石の表面磁束密度は、図6に実線で示すように、ピークが430mT、波形のフーリエ変換による一次成分が95%の正弦波状波形を得た。
比較例1によれば、成形した異方性ボンド磁石の表面磁束密度は、図6に点線で示すように、ピークが410mT、波形のフーリエ変換による一次成分が91%の正弦波状波形であったが、実施例1に比べてピーク、波形のフーリエ変換による一次成分とも低い結果であった。
比較例2によれば、成形した異方性ボンド磁石の表面磁束密度は、図6に一点鎖線で示すように、ピークが405mT、波形のフーリエ変換による一次成分が93%の正弦波状波形であったが、実施例1に比べてピーク、波形のフーリエ変換による一次成分とも低い結果であった。
本発明の異方性ボンド磁石の成形用金型は、高い磁力を有するSm−Fe−N系磁石材料やNd−Fe−B系磁石材料を用いて成形するボンド磁石においても、強い配向磁場で表面磁束密度を所望の波形形状に調整することができる。当該ボンド磁石を用いたモータは、従前のボンド磁石を用いたモータに比べて振動が少ない、高トルクで軽量かつ効率が高いモータの製造に有用である。このモータを、例えば年々増加する車載用途で用いることでエネルギー削減にもつながる。
1 成形用金型
2 金型枠材
3 空洞部
4 配向用磁石
5 永久磁石
5a 主永久磁石
5b 副永久磁石
5c 副永久磁石
6 配向磁性体
7 配向ホルダ
8 仕切り部材
9 保持部材
Cm 組成物
Mp 磁極
m 基準線
20 射出ユニット
21 シリンダ
22 ホッパ
23 ヒータ
24 スクリューロッド
25 射出口
26 供給経路
30,30’,30” 金型
31 固定金型
32 可動金型
33 固定側取付板
34 可動側取付板
35 可動側型板
35a 円柱状凹所
40 内枠コア
41 空洞部
42(42(1)〜42(n)),42’,42” 配向用磁石
43 スリーブ
44 保持外枠
45 永久磁石
45a,45a’ 主永久磁石
45b,45c 副永久磁石
46,46’ 配向ヨーク
48 コア
49 外枠
50 配向ホルダ
51 空洞部
52(52(1)〜52(3)) 配向用磁石
53 仕切りプレート
54 対向部材
55 永久磁石
55a 主永久磁石
55b,55c 副永久磁石
56 配向ヨーク
H 配向磁場
PL 金型分割面

Claims (10)

  1. 成形すべき異方性ボンド磁石の材料を含む組成物が充填可能な空洞部を区画する金型枠材と、
    前記空洞部に充填された組成物に面した部位に設けられ、成形すべきボンド磁石の複数の各磁極に対向して配置され、前記空洞部内の組成物の磁石材料を磁気的に配向させる配向用磁石と、を備え、
    前記配向用磁石は、成形すべき異方性ボンド磁石の各磁極に対向して配置される強磁性材からなる配向磁性体と、前記各磁極に予め決められた表面磁束密度波形を形成するための磁場を与えるように前記配向磁性体を囲んで配置される少なくとも3以上の複数の永久磁石とを有し、
    前記複数の永久磁石は、対応する磁極の中心位置に対向して前記配向磁性体を挟んで配置され、当該中心位置を含む領域に対して磁場を作用させる主永久磁石と、前記配向磁性体及び前記主永久磁石を挟むように配置され、前記主永久磁石の磁場方向に対して予め決められた角度傾斜した方向の磁場を作用させる対構成の副永久磁石とを有し、
    前記配向磁性体、前記主永久磁石及び前記対構成の副永久磁石は前記磁極毎に別個に設けられることを特徴とする異方性ボンド磁石の成形用金型。
  2. 請求項に記載の異方性ボンド磁石の成形用金型において、
    前記配向磁性体の対応する磁極に面する側の面積をA、当該配向磁性体の対応する主永久磁石に面する側の面積とした場合には、A≦Aを満たすことを特徴とする異方性ボンド磁石の成形用金型。
  3. 請求項1に記載の異方性ボンド磁石の成形用金型において、
    前記空洞部内の組成物と前記配向用磁石とを仕切る仕切り部材を備えることを特徴とする異方性ボンド磁石の成形用金型。
  4. 請求項3に記載の異方性ボンド磁石の成形用金型において、
    前記配向磁性体及び前記対構成の副永久磁石は前記仕切り部材に接触して配置されることを特徴とする異方性ボンド磁石の成形用金型。
  5. 請求項1に記載の異方性ボンド磁石の成形用金型において、
    前記金型枠材は円環状空洞部を区画し、当該円環状空洞部の外周側又は内周側に前記配向用磁石を設置することを特徴とする異方性ボンド磁石の成形用金型。
  6. 請求項1又は2に記載の異方性ボンド磁石の成形用金型において、
    成形すべきボンド磁石は、1種類以上の希土類異方性磁石粉体と樹脂との混合物からなるボンド磁石であることを特徴とする異方性ボンド磁石の成形用金型。
  7. 請求項1に記載の異方性ボンド磁石の成形用金型において、
    成形すべきボンド磁石は、1種類以上の希土類異方性磁石粉体と熱可塑性樹脂との混合物からなり、射出成形若しくは押出成形にて成形されることを特徴とする異方性ボンド磁石の成形用金型。
  8. 請求項5に記載の異方性ボンド磁石の成形用金型において、
    成形すべき円環状の異方性ボンド磁石は、着磁後の表面磁束密度波形のフーリエ変換による一次成分が90%以上の正弦波状であり、
    前記配向用磁石は、成形すべき円環状の異方性ボンド磁石の中心と前記各磁極中心とを結ぶ基準線に対して±20度の角度範囲内の磁場方向を有する主永久磁石と、
    前記基準線に対して各磁極中心間の角度以上の角度で交差し、かつ、前記基準線に対して線対称になる磁場方向を有する対構成の副永久磁石と、を含むことを特徴とする異方性ボンド磁石の成形用金型。
  9. 請求項1に記載の異方性ボンド磁石の成形用金型において、
    前記配向用磁石及び前記配向用磁石を保持する保持部材からなる配向ホルダを有し、当該配向ホルダは前記金型枠材に着脱可能に装着されることを特徴とする異方性ボンド磁石の成形用金型。
  10. 請求項1乃至9のいずれかに記載の異方性ボンド磁石の成形用金型を用いて異方性ボンド磁石を製造するに際し、
    前記成形用金型の空洞部に成形すべき異方性ボンド磁石の材料を含む組成物を充填する充填工程と、
    前記充填工程後において前記成形用金型の配向用磁石にて前記空洞部に充填された組成物を磁気的に配向させると共に所定の形状に成形する配向・成形工程と、
    前記配向・成形工程にて成形された異方性ボンド磁石を冷却して前記成形用金型から取り出す取出工程と、を含むことを特徴とする異方性ボンド磁石の製造方法。
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