JP6870323B2 - 静電荷像現像用トナー - Google Patents
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Description
静電荷像現像用トナーとしては、通常、結着樹脂及び着色剤に、必要に応じて帯電制御剤、離型剤、磁性体等を乾式混合した後、押出機等で溶融混練し、次いで、粉砕、分級する、いわゆる溶融混練粉砕法により得られたトナー粒子に、流動性等の各種性能を付与することを目的として、例えばシリカ等の固体微粒子を外添剤として表面に付着させた形態のものが用いられている。
更には、近年における複写機やプリンター等の普及に伴い、画像品質への要求に加え、特に高速印刷及び低エネルギー定着性に優れたトナーが望まれるようになり、トナーの低温定着性の改善が試みられているが、該低温定着性と、耐ブロッキング性や耐高温オフセット性とは、通常は二律背反の関係にあり、両立を図ることが望まれている。これらの課題に対して、従来から種々の検討がなされている。
<1>
トナーの示差走査熱量計(DSC)で測定されるガラス転移温度(Tg)が38.5℃以上45.5℃以下であり、かつ、
トナーを外添剤剥離処理した後のBET比表面積を[比表面積BET]とし、トナーを外添剤剥離処理した後にフロー式粒子分析装置で測定される比表面積を[比表面積FPIA]としたとき、[比表面積BET]−[比表面積FPIA]が0.60m2/g以上1.60m2/g以下であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
<2>
レオメーターで40℃以上80℃以下に観測される1回目測定のtanδ極大値温度における貯蔵弾性率(G’)が1.10×107Pa以上2.95×107Pa以下である<1>に記載の静電荷像現像用トナー。
<3>
レオメーターで40℃以上80℃以下に観測されるtanδ極大値の1回目測定値を[tanδ1st]とし、40℃以上80℃以下に観測されるtanδ極大値の2回目測定値を[tanδ2nd]としたとき、[tanδ2nd]/[tanδ1st]が1.30以上2.36以下である<1>又は<2>に記載の静電荷像現像用トナー。
<4>
少なくとも結着樹脂と着色剤を含有するトナー母粒子、及び、外添剤を含む<1>ないし<3>の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
<5>
少なくとも結着樹脂と着色剤を含有する内部成分と、その周囲に存在する追添加粒子成分とを含有し、透過型電子顕微鏡で測定したときの、内部成分と追添加粒子成分に陰影差がない<4>に記載の静電荷像現像用トナー。
<6>
平均円形度が0.95〜0.99である<1>ないし<5>の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
<7>
体積平均粒径が5〜8μmである<1>ないし<6>の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
<8>
ワックスを含有する<1>ないし<7>の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
本発明においては、外添剤を有する前のものを「トナー母粒子」と称する。該トナー母粒子の表面に外添剤を有するものを「トナー」又は「静電荷像現像用トナー」と称する。
また、ガラス転移温度を単に「Tg」と言うことがある。
従来のトナーのトナー母粒子のコアシェル構造は、コアをシェルが全体的に覆っているか、トナー母粒子表面の凹凸に関係なく、コアを部分的にシェルが覆っている構造であり、シェルがコアとは独立した表皮(その場合、シェルが「かさぶた」のように見えることがある)としてコアの表面を覆っているような構造であった。
DSCによるTgの測定は、ティー・エイ・インスツルメント社のQ20を用い、以下の通り行う。
トナー3±1mgをアルミニウム製パンに入れて0.1mgの桁まで精秤し、酸化アルミニウム3mgを充填したアルミニウム製パンをリファレンスとして、窒素気流中、0℃から120℃まで10℃/分で昇温する。120℃にて10分間保持した後、10℃/分で0℃まで降温し、5分間保持した後に、10℃/分で再び120℃まで昇温する。
2回目昇温時の吸熱ピーク前のベースラインと、吸熱ピーク開始後、30〜55℃に現れる最初の変曲点における接線の交点の温度をガラス転移温度(Tg)とする。
[比表面積BET]−[比表面積FPIA]は、外添後に、NaOHを用いて外添剤を除去してトナー母粒子表面を出したのち比表面積を測定することによって求める。
トナーを外添剤剥離処理した後のBET比表面積である[比表面積BET]は、トナー母粒子の粒径と円形度と表面の凹凸の全てを捉えた数値である。
一方、フロー式粒子分析装置で測定する比表面積である[比表面積FPIA]は、その測定法や解像度から、主にトナー母粒子の粒径と円形度を捉えた数値と考えられる。
よって、[比表面積BET]−[比表面積FPIA]は、トナー母粒子表面の凹凸を表していると推定される。このトナー母粒子表面の凹凸は、耐ブロッキング性を得るために重要である。
500mLガラスビーカーにフィルター捕集物を回収して300mLのイオン交換水を加え、30mm回転子を投入してマグネティックスターラーにて捕集物が液中に分散するに十分な強度で3分間撹拌後、定量濾紙5Aを装着したビフネルロートで吸引濾過する。
サンプル約0.5gをガラスセルに入れ、0.1mgの桁まで精秤する。セルを装置に取り付け、窒素気流中40℃で20分脱気した後、セルを液体窒素に浸した状態で窒素をサンプルに吸着させ、次いで、室温にて吸着窒素を脱離させ、その吸脱着カーブとヘリウム/窒素混合ガスを用いたキャリブレーション及びサンプル重量に基づいて、BET法による比表面積を算出する。
100mLガラスビーカー中のトナー0.2gに、20質量%DBS水溶液を、粉体面を全て覆うように2.0g添加し、粉体が舞わないようにスパチュラーで均一になるまで練る。次いで、超音波分散機(AS ONE社製、型式:ULTRASONIC CLEANER VS−150)で、分散しながら3分間スパチュラーで更に練る。
密度を1とするので体積=質量となる。表面積及び質量の平均値を求める。平均表面積/平均質量をフロー式粒子分析装置で測定する[比表面積FPIA](m2/g)とする。
表面積:(4/R)π(D/2)2
質量 :(4/3)π(D/2)3
トナーのレオメーター測定は以下の手順で行う。
測定は、TA Instruments製レオメーターARES(測定制御ソフトウェアTA Orchestrator V7.2.0.2)を用い、以下の通り行う。
本発明における「1回目測定の測定値」及び「2回目測定の測定値」は、ペレット(成型体)の作製・態様、昇温条件等を以下のように設定して測定したものと定義される。「2回目測定の測定値」に影響を与える「1回目測定のトナーのペレット成型、昇温等」は、1回目測定において下記のようにしたものと定義される。
他の、ペレット成型態様、測定方法、昇温方法、熱履歴(加熱経験)等でトナーを測定したような場合であっても、トナー自体が、以下に記載の手順・測定方法で測定したときに、本発明の数値(パラメーター)範囲を有する(示す)ものであれば、本発明に含まれる。
サンプル約0.3gを、8mm径用の治具に入れ、50℃に加熱したプレス機(小平製作所 5トンプレス PE−5Y)によって型締力1.25トン(ゲージ25kg/cm2)で15分間加圧し、ペレットに成型する。本発明において、これを「成型体」と略記する場合がある。
測定に使用するアルミニウム製8mmディスポーザブルプレート表面には、格子状に縦横各12本、開口部の幅50〜100μm、深さ1〜10μm(平均3〜5μm)の傷を形成しておく。
プレート慣性 ‘Tool inertia’ 0
測定周波数 ‘Frequency’ 6.28rad/sec
初期温度 ‘Initial Temp.’ 40.0℃
最終温度 ‘Final Temp.’ 120.0℃
昇温速度 ‘Ramp Rate’ 4.0℃/min
昇温後保持時間 ‘Soak Time After Ramp’ 20s(秒)
測定サイクル時間 ‘Time Per Measure’ 10s(秒)
歪み ‘Strain’ 0.025%
初期温度到達後測定前保持時間 ‘Delay Before Test’ 非設定
自動テンション調整 ‘Auto Tension Adjustment’
自動テンション調整 ‘Auto Tension Adjustment’ 設定
自動テンション方向 ‘Auto Tension Direction’ Compression (圧縮)
初期フォース ‘Initial Static Force’ 204.0g
自動テンション感度 ‘Auto Tension Sensitivity’ 2.0g
自動テンション切り替え ‘Switch Auto Tension to Programmed Extension’
サンプル弾性率設定 ‘When Sample Modulus’ < 3.00e+05Pa
最大自動テンション速度 ‘Max Auto Tension Rate’ 0.01mm/s(mm毎秒)
自動歪み調整 ‘Auto Strain Adjustment’
自動歪み調整 ‘Auto Strain’ 設定
最大歪み ‘Max Applied Strain’ 40.0%
最大許容トルク ‘Max Allowed Torque’ 100.0gf・cm
最小許容トルク ‘Min Allowed Torque’ 0.2gf・cm
歪み調整 ‘Strain Adjustment’ 20.0%
温度制御オフ ‘Turn OFF Temp Controller’ No
測定終了後温度設定 ‘Set End of Test Temp’ Yes
測定終了後温度 ‘Set End of Test Temp to’ 40.0℃
モーターオフ ‘Turn OFF Motor’ No
ホールド ‘Turn Hold ON’ Yes
温度制御オフ ‘Turn OFF Temp Controller’ No
測定終了後温度設定 ‘Set End of Test Temp’ Yes
測定終了後温度 ‘Set End of Test Temp to’ 120.0℃
モーターオフ ‘Turn OFF Motor’ No
ホールド ‘Turn Hold ON’ No
1回目昇温測定で得られたG’とG”からtanδを求め、図1のように、40℃以上80℃以下に観測される極大値[tanδ1st]を求める。同様に、2回目測定の40℃以上80℃以下に観測される極大値[tanδ2nd]を求める。
次いで、それらの値から、[tanδ2nd]/[tanδ1st]を求める。
2.1.ガラス転移温度(Tg)
本発明のトナーのDSCで測定されるTgは、38.5℃以上45.5℃以下であり、トナーを外添剤剥離処理した後のBET比表面積とフロー式粒子分析装置で測定される[比表面積BET]−[比表面積FPIA]は、0.60m2/g以上1.60m2/g以下である。
Tgが高過ぎると低温定着性が不足する場合があり、Tgが低過ぎると耐ブロッキング性が不足する場合がある。
[比表面積BET]−[比表面積FPIA]は、外添前のトナー母粒子ではなく、外添後のトナーを外添剤剥離処理したトナー母粒子を用いて測定し、その差を制御することが重要であることがわかった。詳細は後述するが、本発明のトナーは、「少なくとも結着樹脂、着色剤を含有する内部成分」と、その周囲に存在する追添加粒子及び外添剤とからなる。
追添加粒子は、外添や外添操作によって形状が変化する。よって、外添後のトナー母粒子の表面構造がトナー性能に関係する、と推定している。
レオメーターで40℃以上80℃以下に観測される1回目測定のtanδ極大値温度におけるG’は、外添後に追添加粒子由来で形成される凸部の割合を表しており、この数値が1.10×107Pa以上2.95×107Pa以下の場合には、外添後に「追添加粒子由来で形成される凸部」Aの割合が適度であることを意味していると推測される。
つまり、2.95×107Paより大きい場合は、外添後に「追添加粒子由来で形成される凸部」Aの割合が過度な状態であり、1.10×107Pa未満であるときは、外添後に「追添加粒子由来で形成される凸部」Aの割合が過少な状態であると推定される。
また、上限は、2.95×107Pa以下が好ましく、2.85×107Pa以下がより好ましく、2.75×107Pa以下が特に好ましい。
本発明の静電荷像現像用トナーは、[tanδ1st]と[tanδ2nd]は同じ値にならない。これは、1回目の測定の加熱によってトナーの構造に変化が生じたことを示していると考えられ、その理由は以下のように推定している。
測定試料は、トナーを極力加熱せずにペレットに成型して作成するので、成型後もトナーの内部と表面の組成の差をそのまま維持し、その結果、図5に示すような、追添加粒子成分及び外添剤からなる構造体が全体に形成されている。以下、レオメーターでの測定のペレット(成型体)における「追添加粒子成分及び外添剤からなる構造体」を、単に「構造体」と略記する場合がある。
1回目の測定では、この構造体を有する試料を測定している。
[tanδ2nd]/[tanδ1st]が大きい場合は、追添加粒子と外添剤が存在し、[tanδ2nd]/[tanδ1st]が小さい場合は、追添加粒子と外添剤が形成する割合が少なく、その結果、図5のような構造体が形成されていないと推定される。
[tanδ2nd]/[tanδ1st]が大きいと、耐ブロッキング性が良化する傾向があり、[tanδ2nd]/[tanδ1st]が小さいと、低温定着性が良化する傾向がある。
例えば、内部成分と追添加粒子成分が全く異なる化学成分であったり、追添加粒子成分が塩等の極端にTgが高い成分であったりすると、レオメーターでの1回目の測定前後で、(例えば相溶しない等)構造変化が起こらないため、[tanδ2nd]/[tanδ1st]は1に近づく。
ここで、「陰影差がない」とは、内部成分と追添加粒子成分の染色度合い(白黒度合い)の差がなく、追添加粒子成分の縁(すなわち、内部成分と追添加粒子成分の境界)が見えないことを言う。ただし、上記「陰影差がない」は、陰影差が明瞭ではなく、殆ど陰影差が見えない態様まで除外するものではない。
すなわち、数値(パラメーター)を他の装置や他の設定で測定した場合であっても、トナー自体が、本願明細書の実施例等に記載の測定方法で測定したときに、該数値(パラメーター)を有するような(示すような)ものであれば、本発明に含まれる。
2.5.1.内部成分
トナー母粒子は、「少なくとも結着樹脂及び着色剤を含有する内部成分」と、その周囲に存在する追添加粒子とからなる。内部成分及び/又は追添加粒子には、その他必要に応じてワックス、帯電制御剤等を含有していてもよい。
本発明において、トナー母粒子やトナーを形成させたときに、該追添加粒子が「追添加の際の当初の粒子形状」を保っていないときを含め、「追添加粒子に含まれる成分」や「追添加粒子に起因する成分」を「追添加粒子成分」と言う。
また、トナー母粒子やトナーにおける「追添加粒子成分」は、粒子状、薄膜状、他の成分との混合状態・相溶状態等の形態があるが、「追添加粒子成分」を、単に「追添加粒子」と略記することもある。
結着樹脂を製造するために用いる単量体成分としては、一般的にトナーの結着樹脂を製造する際に用いられている単量体を適宜用いることができる。
例えば、酸性基を有する重合性単量体(以下、単に酸性単量体と称すことがある)、塩基性基を有する重合性単量体(以下、単に塩基性単量体と称することがある)、酸性基も塩基性基も有さない重合性単量体(以下、その他の単量体と称することがある)の何れの重合性単量体も使用することができる。
これら酸性単量体及び塩基性単量体は、トナー母粒子の分散安定化に寄与する。単独で用いても複数種類を混合して用いてもよく、また、対イオンを伴って塩として存在していてもよい。
中でも二官能性重合性単量体が好ましく、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレート等が特に好ましい。これら多官能性重合性単量体は、単独で用いても複数種類を混合して用いてもよい。
また、反応性基をペンダントグループに有する重合性単量体、例えば、グリシジルメタクリレート、メチロールアクリルアミド、アクロレイン等を用いることも可能である。
2価の酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、これらの酸の無水物若しくは低級アルキルエステル;n−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸等のアルケニルコハク酸類若しくはアルキルコハク酸類;その他の2価の有機酸が挙げられる。
3価以上の酸としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、これらの無水物、その他が挙げられる。
この倍数が大きいと、追添加粒子が内部成分に埋没し難いため、満足いく耐ブロッキング性が得られ、この倍数が小さいと、「コア(中心部)成分(内部成分)に比し水中で追添加粒子が安定化し過ぎる」ということがなく、追添加粒子が内部成分に好適に付着し易い。
結着樹脂としてポリエステル系樹脂を使用する場合のGPCにおける数平均分子量は、好ましくは2000〜20000、より好ましくは3000〜12000であることが望ましい。
本発明のトナーに用いられるワックスは、公知のワックスを任意に使用することができるが、具体的には、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス;パラフィンワックス;ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステル、ステアリン酸ステアリル等の長鎖脂肪族基を有するエステル系ワックス;水添ひまし油、カルナバワックス等の植物系ワックス;ジステアリルケトン等の長鎖アルキル基を有するケトン;アルキル基を有するシリコーン;ステアリン酸等の高級脂肪酸;長鎖脂肪酸(ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の)多価アルコールエステル若しくはその部分エステル体;オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド;等が例示される。
好ましくは、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素系ワックス;エステル系ワックス;シリコーン系ワックス;等が挙げられる。中でも、エステル系ワックスがより好ましく、C18及び/又はC22の炭化水素を主体的に含むモノエステルワックスを主に含むものが更に好ましく、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、ステアリン酸ベヘニル、それらを主に含むものが最も好ましい。ワックスは単独で用いても混合して用いてもよい。
また、ワックスのオンセット温度は、86℃以下が好ましく、76℃以下がより好ましく、71℃以下が更に好ましく、46℃以上が好ましく、56℃以上がより好ましく、61℃以上が更に好ましい。上記オンセット温度が低い場合、低温定着性が良化する傾向にあり、上記オンセット温度が高い場合、耐ブロッキング性が良化する傾向にある。
フルカラートナーの場合には、イエローは、ベンジジンイエロー系、モノアゾ系、縮合アゾ系の染顔料;マゼンタは、キナクリドン系、モノアゾ系の染顔料;シアンは、フタロシアニン系の染顔料;等をそれぞれ用いることが好ましい。
帯電制御剤の量は、トナー100質量部に対して、0.1〜25質量部が好ましく、1〜15質量部がより好ましい。
帯電制御剤はトナー母粒子内部に混合してもよく、またトナー母粒子表面に付着させた形で用いてもよい。
トナー母粒子は、前記内部成分と、その周囲に存在する追添加粒子成分とからなる。その他必要に応じて、内部成分及び/又は追添加粒子には、ワックス、帯電制御剤等を含有していてもよい。
追添加粒子の成分である「追添加粒子成分」の種類としては、トナーを製造する際に結着樹脂として用いられる前記樹脂が挙げられる。
樹脂の種類は、特に限定されないが、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂、これらの樹脂の混合物等が挙げられる。
本発明のトナーは公知の何れの方法で製造してもよく、特に限定されない。
3.1.1.トナー母粒子より小さい粒子を凝集してトナー母粒子を作製する方法
各原料をトナー母粒子サイズより小さい粒子として用意し、これらを混合・凝集することでトナー母粒子を得る方法を用いることができる。
結着樹脂をトナー母粒子サイズより小さい「重合体一次粒子」として調製し、該重合体一次粒子の分散液を得る方法を以下に述べる。
また、追添加粒子の作製にも、これと同様の方法を用いることができる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム、等の脂肪酸石けん、硫酸ドデシルナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートエーテル、モノデカノイルショ糖等が挙げられる。
また、ワックスをステアリルアクリレート等の長鎖重合性単量体と予め水系分散媒体中で分散し得られるワックス・長鎖重合性単量体分散液を調製し、ワックス・長鎖重合性単量体の存在下において重合性単量体を重合することもできる。
塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の方法で樹脂を得た後、水系媒体と混合し、樹脂の融点かガラス転移温度の何れかの高い温度以上に加熱して樹脂の粘性を下げて、剪断力を与えて乳化することで、重合体一次粒子が得られる。
乳化時の樹脂の粘度が高く所望の粒径まで小さくならない場合は、大気圧以上に加圧可能な乳化装置を用いて温度を上げ、樹脂粘度を下げた状態で乳化することで、所望の粒径の重合体一次粒子を得ることができる。
別の方法として、あらかじめ樹脂に有機溶剤を混合して樹脂の粘度を下げる方法を用いてもよい。使用される有機溶剤としては、樹脂を溶解させるものであれば特に限定はないが、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等のベンゼン系溶剤等を用いることができる。更に、水系媒体との親和性向上、及び、粒度分布制御の目的で、エタノールやイソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤を水若しくは樹脂に添加してもよい。有機溶剤を添加した場合は、乳化終了後、乳化液から有機溶剤を除去する必要がある。有機溶剤を除去する方法としては、常温若しくは加熱下で減圧しながら有機溶剤を揮発させる方法等がある。
上記乳化重合及び樹脂の乳化の何れの調製方法においても、得られる重合体一次粒子の体積平均粒径は、通常0.02μm以上であり、好ましくは0.05μm以上であり、特に好ましくは0.1μm以上であり、通常3μm以下であり、好ましくは2μm以下であり、特に好ましくは1μm以下である。
重合体一次粒子の体積平均粒径が前記範囲よりも小さいときは、凝集工程において凝集速度の制御が困難となる場合がある。一方で、前記範囲よりも大きいときは、凝集して得られるトナー母粒子の粒径が大きくなり易く、目的とする粒径のトナー母粒子を得ることが困難となる場合がある。
重合体一次粒子を撹拌下に凝集して目的とする大きさの粒子凝集体を得ようとする場合、粒子同士の凝集力と撹拌による剪断力とのバランスから粒子凝集体の粒径が制御されるが、加熱するか又は電解質を加えることによって凝集力を大きくすることができる。
これらのうち、2価以上の多価の金属カチオンを有する無機塩が好ましい。
添加量が少な過ぎると、凝集の進行が遅くなり凝集後も1μm以下の微粉が残ったり、得られた粒子凝集体の平均粒径が目的の粒径に達しない等の問題を生じたりする場合があり、一方、多過ぎると、急速な凝集になり易く粒径の制御が困難となり、得られた凝集粒子中に粗粉や不定形のものが含まれる等の問題を生じる場合がある。
電解質を加えて凝集を行う場合の凝集温度は、好ましくは20℃以上、特に好ましくは30℃以上であり、好ましくは70℃以下、特に好ましくは60℃以下である。
後述の作製方法も含め、水中及び/又は有機溶剤中のような湿式媒体中で、追添加粒子を付着させる場合は、内部成分の原料の組成が決まった後、追添加粒子を添加することが、より内部成分の表面に追添加粒子を配置させられる観点から好ましい。
更に、トナー母粒子より小さい粒子を凝集してトナー母粒子を作製する上記方法の場合には、内部成分の一部若しくは全てを凝集させた後に、追添加粒子を添加することが、より内部成分の表面に追添加粒子を配置させられる観点から好ましい。
熟成工程の温度は、好ましくは重合体一次粒子のTg以上、より好ましくは重合体一次粒子のTgより5℃高い温度以上であり、また、好ましくは追添加粒子のTg以下、より好ましくは追添加粒子のTgより5℃低い温度以下である。
また、熟成工程に要する時間は、目的とするトナー母粒子の形状により異なるが、重合体一次粒子のTg以上に到達した後、好ましくは0.1〜10時間、特に好ましくは0.5〜5時間保持することが望ましい。
ここで用いられる界面活性剤としては、重合体一次粒子を製造する際に用いることのできる乳化剤から1種以上を選択して用いることができるが、特に重合体一次粒子を製造した際に用いた乳化剤と同じものを用いることが好ましい。
界面活性剤を添加する場合の添加量は限定されないが、混合分散液の固形成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
凝集工程以降、熟成工程の完了前の間に界面活性剤を添加するか、pHを調整することにより、凝集工程で得られた粒子凝集体同士の凝集等を抑制することができ、熟成工程後の粗大粒子生成を抑制できる場合がある。
各原料を混合した後、該混合物をトナー母粒子のサイズに微粒化し、微粒化した後に追添加粒子を付着させることで、トナー母粒子を得る方法を用いることができる。
上述の単量体組成物と同様の「スチレン系又は(メタ)アクリル系単量体」(単量体組成物)中に、着色剤、重合開始剤、必要に応じて、ワックス、極性樹脂、帯電制御剤、架橋剤等の添加剤を加え、均一に溶解又は分散させた単量体組成物を調製する。
この単量体組成物を、必要に応じ懸濁安定剤等を含有する水系媒体中に分散させる。単量体組成物の液滴が所望のトナー母粒子のサイズを有するように撹拌速度・時間を調整し、造粒する。その後、分散安定剤の作用により、粒子状態が維持され、かつ粒子の沈降が防止される程度の撹拌を行い、重合を行うことによりトナー母粒子を得ることができる。
有機溶媒中に少なくとも結着樹脂と着色剤、必要に応じワックスや帯電制御剤等が溶解又は分散している油性分散液を作り、これを水系媒体中に分散させる。
追添加粒子を添加する時期は特に限定されないが、油性分散液を水系媒体中に分散させた後に追添加粒子を添加するのが好ましい。その後、分散液から有機溶剤を除去し、トナー母粒子を得ることができる。
追添加粒子の組成や調製方法としては、前述のものが挙げられる。追添加粒子の添加は、1回であってもよいし、複数回であってもよい。1回目の追添加粒子と、次回以降の追添加粒子とは、異なっていてもよく、いかなる組み合わせであってもよい。
必要に応じて、分散剤を用いることができる。分散剤を用いた方が、粒度分布がシャープになるとともに分散が安定するので好ましい。分散剤としては、上述の乳化重合に用いる乳化剤と同様のものが使用できる。また、水系媒体中で高分子系保護コロイドを形成する各種の親水性高分子物質を存在させることができる。
無機微粒子としては、水に不溶ないし難溶の従来公知の各種の無機化合物が用いられる。このようなものとしては、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト等が挙げられる。
分散剤として用いられるポリマー微粒子が、前記の追添加粒子の性質を兼ねていてもよい。すなわち、分散剤としてのポリマー微粒子を前記の追添加粒子としてもよい。
活性水素基含有化合物と反応可能なプレポリマーを用いて油性分散液を作製する場合は、油性分散液を水系媒体中に分散させたのち、活性水素基含有化合物を添加し、該水系媒体中で液滴表面から両者を伸長反応又は架橋反応させることにより、液滴表面に優先的に伸長又は架橋樹脂が生成する。その後有機溶剤を除去することによって、内部と表面で組成に差のあるトナー母粒子が得られる。
また、分散剤に用いるポリマー微粒子を、前記の追添加粒子とみなして、該追添加粒子の物性に調整することで、追添加粒子(ポリマー微粒子)がトナー母粒子表面に存在する構造を作ってもよい。
溶融混練粉砕法とは、結着樹脂及び着色剤に、必要に応じて帯電制御剤、離型剤、磁性体等を乾式混合した後、押出機等で溶融混練し、次いで粉砕、分級しトナー母粒子を得て、その後、外添剤を外添してトナーを得る方法である。
トナー母粒子を得た後、追添加粒子を添加し内部成分の表面に付着させてもよい。限定はされないが、追添加粒子を添加した後に、外添剤を外添することが好ましい。
前記した「トナー母粒子より小さい粒子を凝集してトナー母粒子を作製する方法」、「懸濁重合でトナー母粒子のサイズの粒子を作製する方法」、「溶解懸濁でトナー母粒子のサイズの粒子を作製する方法」等で作製されたトナー母粒子は、水系溶媒から分離され、洗浄、乾燥され、外添処理が施されて静電荷像現像用トナーに供される。
洗浄工程は、例えば、濾過、デカンテーション等することによって、トナー母粒子を濃厚スラリー又はウエットケーキ状とし、これに新たに洗浄するための液体を加えてトナー母粒子を分散する操作を繰り返すことが好ましい。洗浄後のトナー母粒子は、ウエットケーキ状で回収することが、引き続き行われる乾燥工程における取り扱いの面で好ましい。
湿式媒体中(水中及び/又は有機溶剤中)でトナー母粒子を作製する場合、内部成分と同時に追添加粒子(又はその原料である単なる樹脂)を追添加(溶解・分散・懸濁の如何なる状態であってもよい)し、熱力学的に、追添加粒子を、内部成分と湿式媒体の表面に配置させてもよいし、内部成分の組成及び/又は形状が決まった後に追添加粒子を追添加し、物理的に内部成分の表面を追添加粒子が連続的及び/又は非連続的に覆う形としてもよい。
トナーのTgが38.5℃以上45.5℃以下であり、かつ、[比表面積BET]−[比表面積FPIA]が、0.60m2/g以上1.60m2/g以下を満たすには、トナー母粒子表面近傍に追添加粒子成分を広く存在させ、その外側を外添剤で覆い、追添加粒子の粒径と量のバランスを調整し、更に、トナー母粒子全体の組成比を調整することが必要である。
追添加粒子の中位径(D50)は、実施例に記載の方法で測定され、そのように測定したものとして定義される。
あるいは、追添加粒子の粒径を250nmより大きくした分、追添加量を少なくして、[比表面積BET]−[比表面積FPIA]が、本発明の範囲(0.60m2/g以上1.60m2/g以下)を満たすように調整することでも達成できる。
追添加粒子の粒径が100nm以上のときは、外添操作で追添加粒子を衝撃によって押し広げることが好ましい。追添加粒子の粒径が100nmより小さいときは、外添操作で追添加粒子が押し広げられる変化が生じ難い傾向があるので、添加量を多くすることが好ましい。
追添加粒子の粒径が100nm以上のときは、被覆率は15%以上85%以下であることが好ましい。追添加粒子の粒径が100nmより小さいときは、被覆率は60%以上であることが好ましい。
重量平均分子量は、好ましくは2万以上、より好ましくは3万以上、好ましくは30万以下、より好ましくは20万以下であることが望ましい。
また、追添加粒子のTgは、結着樹脂のTgより高いことが必要で、20℃以上高いことが好ましく、30℃以上高いことがより好ましく、50℃以上高くないことが好ましく、40℃以上高くないことがより好ましい。
結着樹脂のGPCにおける重量平均分子量は、好ましくは2万以上、より好ましくは3万以上、好ましくは30万以下、より好ましくは20万以下であることが望ましい。
1回目測定では、結着樹脂と追添加粒子が溶融混合せずに接している状態で測定を開始する。1回目測定が終了すると、その間の加熱によって結着樹脂と追添加粒子が互いに溶融混合する。2回目測定では互いに溶融混合した状態で測定を開始する。この違いが、[tanδ2nd]/[tanδ1st]に現れる。
5.1.外添剤
本発明においては、本発明のトナーの物性を得るために、また、トナーの流動性向上や帯電制御性向上のために、外添剤を添加する。外添剤はトナー母粒子表面全体に付着するため、追添加粒子が存在しない部分も外添剤で被覆されることが好ましい。外添剤としては、各種無機又は有機微粒子の中から適宜選択して使用することができる。また、2種類以上の外添剤を併用してもよい。
一方、導電性微粒子の含有量の上限は、3質量部以下が好ましく、2質量部以下がより好ましく、特に好ましくは1質量部以下である。
外添剤の添加方法は、ヘンシェルミキサー等の高速撹拌機を用いる方法や、圧縮剪断応力を加えることのできる装置による方法等が挙げられる。
トナーは、トナー母粒子に全ての外添剤を同時添加して外添する一段外添法により作製できるが、外添剤毎に外添する分段外添法により作製することもできる。
外添中の温度上昇を防止するために、容器に冷却装置を設置する、分段外添する等が挙げられる。
例えば、ヘンシェルミキサーで3000回転で25分以上撹拌すると、この数値が0.60に近い値で0.60m2/g以上になる。同様の条件で5分以下撹拌すると、この数値が1.60に近い値で1.60m2/g以下になる。
本発明のトナーの体積平均粒径は、3μm以上が好ましく、更に5μm以上がより好ましい。また、15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、8μm以下が特に好ましい。
また、形状は、フロー式粒子像分析装置FPIA−3000を用いて測定した平均円形度が、好ましくは0.90以上、より好ましくは0.92以上、更に好ましくは0.94以上、特に好ましくは0.95以上であり、好ましくは0.99以下である。
平均円形度が大きいと、トナー母粒子への外添剤の付着が均一化し、画像濃度が安定化する傾向があり、平均円形度が小さいと、形状に起因するクリーニング良化の傾向がある。
二成分系現像剤として用いる場合、キャリアとしては、鉄粉、マグネタイト粉、フェライト粉等の磁性物質又はそれらの表面に樹脂コーティングを施したものや磁性キャリア等公知のものを用いることができる。樹脂コーティングキャリアの被覆樹脂としては一般的に知られているスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンアクリル共重合系樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、フッ素樹脂、又はこれらの混合物等が利用できる。
1ミクロン未満の中位径(D50)を有す粒子の中位径(D50)は、日機装株式会社製、型式MicrotracNanotrac150(以下ナノトラックと略す)及び同社解析ソフト、MicrotracParticle Analyzer Ver10.1.2−019EEを用い、電気伝導度が0.5μS/cmのイオン交換水を溶媒とし、溶媒屈折率:1.333、測定時間:120秒、測定回数:5回の測定条件で取り扱い説明書に記載された方法で測定し、その平均値を求めた。
その他の設定条件は、粒子屈折率:1.59、透過性:透過、形状:真球形、密度:1.04とした。
1ミクロン以上の体積中位粒径(Dv50)を有す粒子の体積中位粒径(Dv50)は、ベックマン・コールター社製、マルチサイザーIII(アパーチャー径100μm:以下、マルチサイザーと略す)を用い、同社アイソトンIIを分散媒として、分散質濃度0.03%になるように分散させて測定した。
平均円形度は、分散質を分散媒(セルシース:シスメックス社製)に、5720〜7140個/μLとなるように分散させ、フロー式粒子分析装置(FPIA3000:シスメックス社製)を用いて、HPF分析量0.35μL、HPF検出量2000〜2500個の条件下でHPFモードにより測定した。
重合体一次粒子分散液、追添加粒子分散液を凍結乾燥して水分を除去したのち、THF可溶成分を、以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
装置:東ソー株式会社製GPC装置 HLC−8320、カラム:TOSOH TSKgel SuperHM−H(直径6mmx長さ150mmx2本)、溶媒:THF、カラム温度:40℃、流量:0.5mL/分、試料濃度:0.1質量%、検量線:標準ポリスチレン使用
エマルション固形分濃度は、株式会社ケット科学研究所製、赤外線水分計FD−610を用い、2gの試料を195℃で90分加熱して水分を蒸発させることにより求めた。
トナーをエポキシ系樹脂に包埋して硬化させた後、四酸化ルテニウムで5分間ガス暴露することで、追添加粒子の成分(シェル)と内部成分(コア)を識別染色した。次に、ナイフで断面出して、ウルトラミクロトームを用いて、厚さが200nmのトナーの超薄切片を作製した。更に、TEM(透過型電子顕微鏡)H7500(日立ハイテク社製)を用いて、加速電圧100kVでトナーの超薄切片を観察し、陰影差を肉眼で確認した。
<ワックス分散液A1の調製>
ワックスとしてエステルワックス1(日油株式会社製、品名:WEP−3、DSC2回目測定融点ピーク:71.0℃、DSC2回目測定オンセット温度:68.6℃、DSC2回目測定変曲点:69.9℃、カタログ酸価0.1mgKOH/g、カタログ水酸基価3mgKOH/g以下)30.00部(1440g)、デカグリセリンデカベヘネート(三菱化学フーズ株式会社製、品名:B100D、水酸基価27、融点70℃)0.24部、20%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(以下、「20%DBS水溶液」と略す)1.93部、脱塩水67.83部を90℃に加熱して、45℃傾斜3段パドル翼を備えたCSTR型撹拌層内で20分混合した。
上記エステルワックス1を22.50部、エステルワックス2(日油株式会社製 品名:WEP−5、カタログ融点82℃、カタログ酸価0.1mgKOH/g、カタログ水酸基価3mgKOH/g以下)7.50部、(1080g)、デカグリセリンデカベヘネート0.24部、20%DBS水溶液1.93部、脱塩水67.83部を用いた以外は、ワックス分散液A1と同様の方法で、ワックス分散液A2(エマルション固形分濃度=31.4%)を作製した。
撹拌装置、加熱冷却装置、濃縮装置、及び、各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器にワックス分散液A1を34.7部、脱塩水252部、0.5%硫酸鉄(II)7水和物水溶液0.02部を仕込み、撹拌しながら窒素気流下で90℃に昇温した。
その後、撹拌を続けたまま下記のモノマー類・乳化剤溶液の混合物を240分かけて添加した。
このモノマー類・乳化剤水溶液の混合物を添加開始した時間を重合開始とし、下記の開始剤水溶液を重合開始0分から480分かけて添加した。重合開始240分に下記の硫酸鉄水溶液を添加した。重合開始300分に95℃に昇温した。重合開始540分まで加熱撹拌を継続した。
スチレン 70.9部
アクリル酸ブチル 29.1部
アクリル酸 0.85部
トリクロロブロモメタン 1.0部
ヘキサンジオールジアクリレート 0.95部
20%DBS水溶液 1.0部
脱塩水 66.9部
8%過酸化水素水溶液 28.0部
8%L−(+)アスコルビン酸水溶液 28.0部
0.5%硫酸鉄(II)7水和物水溶液 0.08部
撹拌装置、加熱冷却装置、濃縮装置、及び、各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器に、ワックス分散液A2を50.6部、20%DBS水溶液2.96部、脱塩水350部を仕込み、撹拌しながら窒素気流下で75℃に昇温した。
下記の開始剤水溶液1を添加して5分後、撹拌を続けたまま下記のモノマー類・乳化剤溶液の混合物を180分かけて添加した。このモノマー類・乳化剤水溶液の混合物の添加開始した時間を重合開始とし、重合開始180分に下記の硫酸鉄水溶液を添加した。重合開始180分に93℃に昇温した。下記の開始剤水溶液2を重合開始240分から60分かけて添加した。下記の開始剤水溶液3を重合開始240分から120分かけて添加した。重合開始480分まで加熱撹拌を継続した。
スチレン 97.9部
アクリル酸ブチル 2.1部
アクリル酸 1.5部
1−ドデカンチオール 1.0部
20%DBS水溶液 1.0部
脱塩水 66.7部
20%過硫酸アンモニウム水溶液 6.0部
[開始剤水溶液2]
8%過酸化水素水溶液 14.2部
[開始剤水溶液3]
8%L−(+)アスコルビン酸水溶液 21.3部
0.5%硫酸鉄(II)7水和物水溶液 0.05部
撹拌装置、加熱冷却装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器に、重合体一次粒子分散液B1を87部(固形分)、20%DBS水溶液0.07部(固形分)、脱イオン水74部、5%硫酸鉄(II)七水和物水溶液0.52部、シアン着色剤EP−700(大日精化(株)製)18部を撹拌しながら順に添加して均一に混合した後、0.5%硫酸アルミニウム水溶液0.10部(固形分)を15分かけて、脱イオン水41部を5分かけて添加した。
更に210分かけて内温44℃まで昇温した。ここでマルチサイザーを用いて体積中位粒径(Dv50)を測定したところ、5.2μmであった。重合体一次粒子分散液B1を9.7部(固形分)追加した。
トナー母粒子C1(100部)に対し、ポリマー/シリカ複合体粒子(ATLAS100:キャボット社製:シリカ/ポリマー比=70/30、真比重=1.7g/cm3、オクタヒドロペンタレン含有)を4部、チタニアとシリカ複合酸化物粒子(STX501:日本アエロジル株式会社製)を0.5部、小粒径シリカ(RY200L:日本アエロジル株式会社製)を0.4部添加し、ヘンシェルミキサーにて、3000rpmで15分間撹拌・混合して篩別することによりトナーD1を得た。
実施例1において、スチレン/ブチルアクリレート比率を表1に示す組成に変更したことを除いて、実施例1と同様にして、トナーD2ないしD6を製造した。
特開2006−145889号公報の実施例1と同様にして、比較例3のトナーを製造した。
特開2014−081614号公報の実施例4と同様にして、比較例4のトナーを製造した。
測定したトナー(サンプル)は、製造直後、すなわち外添直後のものであったが、経時したものであっても、既に現像層等に入っているものであっても、測定数値は殆ど変わらないことは技術常識である。また、50℃以上の環境下に置かれた外添後のトナーは、適切な値が得られないことがある。
トナー10gを内径3cm、高さ6cmの円筒形の容器に入れ、20gの荷重をのせ、温度50℃、湿度55%の環境下に48時間放置した後、トナーを容器から取り出し、上から荷重をかけることで凝集の程度を確認した。
◎:150g以下の荷重で崩れる
○:150gを超え300g以下の荷重で崩れる
△:300gを超え900g以下の荷重で崩れる
×:900gを超える荷重をかけないと崩れない
未定着のトナー像を担持した記録紙(坪量80g/m2紙)を用意し、熱ロール定着方式の定着機を用い、以下のように試験した。
定着画像にメンディングテープを貼り、その上を2kgの錘を通過させテープと定着画像を密着させた。メンディングテープを剥離し、定着画像がテープに移行する程度を目視で判定した。3回試験の平均値で以下の判定を行った。
◎:150℃未満で定着する
○:150℃で定着する
×:150℃を超えて定着する
表1から分かるように、実施例1〜4のトナーD1〜D4では、耐ブロッキング性と定着性の両立が達成されていたが、比較例1〜2のトナーD5〜D6及び比較例3、4のトナーでは、耐ブロッキング性と定着性との両立が達成されず、定着性と耐ブロッキング性の何れかが劣っていた。
2 レオメーターの2回目測定で得られたtanδのグラフ
3 追添加粒子と外添剤からなる構造体
4 少なくとも結着樹脂と着色剤を含有する内部成分
A 薄膜化した追添加粒子成分が多いトナー表面の凸部
B 薄膜化した追添加粒子成分が少ないトナー表面の凹部
Claims (8)
- トナーの示差走査熱量計(DSC)で測定されるガラス転移温度(Tg)が38.5℃以上45.5℃以下であり、かつ、
トナーを外添剤剥離処理した後のBET比表面積を[比表面積BET]とし、トナーを外添剤剥離処理した後にフロー式粒子分析装置で測定される比表面積を[比表面積FPIA]としたとき、[比表面積BET]−[比表面積FPIA]が0.60m2/g以上1.60m2/g以下であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。 - レオメーターで40℃以上80℃以下に観測される1回目測定のtanδ極大値温度における貯蔵弾性率(G’)が1.10×107Pa以上2.95×107Pa以下である請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
- レオメーターで40℃以上80℃以下に観測されるtanδ極大値の1回目測定値を[tanδ1st]とし、40℃以上80℃以下に観測されるtanδ極大値の2回目測定値を[tanδ2nd]としたとき、[tanδ2nd]/[tanδ1st]が1.30以上2.36以下である請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
- 少なくとも結着樹脂と着色剤を含有するトナー母粒子、及び、外添剤を含む請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記トナー母粒子は、少なくとも結着樹脂と着色剤を含有する内部成分と、その周囲に存在する追添加粒子成分とを含有し、静電荷像現像用トナーを透過型電子顕微鏡で測定したときの、内部成分と追添加粒子成分に陰影差がない請求項4に記載の静電荷像現像用トナー。
- 平均円形度が0.95〜0.99である請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
- 体積平均粒径が5〜8μmである請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
- ワックスを含有する請求項1ないし請求項7の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
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