次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本開示の衛生洗浄装置10が取り付けられた便器1を示す斜視図であり、図2は、衛生洗浄装置10の概略構成図である。図1に示す便器1は、洋式腰掛便器であり、衛生洗浄装置10は、当該便器1の上面に固定される。衛生洗浄装置10は、図1に示すように、ケーシング11と、当該ケーシング11により回動自在に支持された便座12と、当該便座12と同様にケーシング11により回動自在に支持された便蓋13と、操作パネル14と、人体の局部に洗浄水(水または温水)を噴出する洗浄ノズル15とを含む。更に、衛生洗浄装置10は、図2に示すように、ウォーターバルブ16、熱交換ユニット17、流量センサ18、制御装置20等を含む。
洗浄ノズル15は、おしり洗浄用の第1噴出口、ビデ洗浄用の第2噴出口、および捨て水排出口を有するノズル本体と、当該ノズル本体をケーシング11内の収納位置と便器1の便鉢部側の洗浄位置との間で軸方向に進退移動させる駆動機構とを含む。ただし、衛生洗浄装置10には、おしり洗浄用の第1噴出口およびビデ洗浄用の第2噴出口を有する洗浄ノズル15の代わりに、おしり洗浄ノズルおよびビデノズルが設けられてもよい。また、衛生洗浄装置10には、捨て水を排出させるための専用の排出部が設けられてもよい。ウォーターバルブ16は、ケーシング11内に配置されており、分岐水栓や給水ホース等を介して水源としての水道配管に接続される。本実施形態において、ウォーターバルブ16は、交流電源または直流電源からの電力により駆動される開閉弁であり、水源から洗浄ノズル15への洗浄水の供給を許容すると共に当該洗浄ノズル15への洗浄水の供給を規制する。
熱交換ユニット17は、ウォーターバルブ16に接続される洗浄水入口と図示しないロータリーバルブを介して洗浄ノズル15に接続される洗浄水出口とを有する熱交換容器17aと、当該熱交換容器17aの内部に配置されるヒータ170とを含む。ヒータ170は、交流電源からの電力により駆動される電気式ヒータであり、洗浄水入口を介して熱交換容器17a内に流入して洗浄水出口から流出する洗浄水を瞬間的に加熱可能なものである。このような瞬間加熱式のヒータ170を用いることにより、衛生洗浄装置10の小型化を図りつつ、洗浄水の昇温に要する電力消費を低減化してエネルギー効率を向上させることが可能となる。
また、熱交換ユニット17は、それぞれ熱交換容器17a内の洗浄水の温度を検出可能な第1および第2温度検出子171,172を有する。本実施形態では、第1および第2温度検出子171,172として、温度上昇に伴って抵抗値が減少する抵抗を有し、熱交換容器17aから洗浄ノズル15に供給される洗浄水の温度に応じた電圧信号を出力する正特性サーミスタが用いられている。ただし、第1および第2温度検出子171,172は、負特性サーミスタであってもよい。また、本実施形態では、第1温度検出子171により検出される温度が熱交換ユニット17のヒータ170等の制御に用いられ、第2温度検出子172は、バックアップ用の温度検出子として用いられる。
流量センサ18は、ウォーターバルブ16と熱交換ユニット17の洗浄水入口との間で当該ウォーターバルブ16から洗浄ノズル15(熱交換ユニット17)に供給される洗浄水の流量を検出する。また、洗浄ノズル15と熱交換容器17aの洗浄水出口との間に設けられるロータリーバルブは、熱交換容器17aからの洗浄水の洗浄ノズル15における供給先をおしり洗浄用の第1噴出口、ビデ洗浄用の第2噴出口および捨て水排出口の何れかに選択的に切り替え可能なものである。
衛生洗浄装置10の制御装置20は、何れも図示しないCPU、ROM、RAM、入出力ポート等を有するマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」という)21や、熱交換ユニット17のヒータ170に接続されたヒータ制御回路22、流量センサ18に接続された流量センサ検知回路23、それぞれ便座12および便蓋13の開閉機構、洗浄ノズル15の駆動機構、ロータリーバルブ等の何れかに接続された複数の駆動回路(図示省略)等を含む電子制御ユニットである。また、制御装置20(マイコン21)は、操作パネル14や、図示しない人体センサ、着座センサ19(図1参照)、便座12の回動ヒンジ部に連動してオンする着座スイッチ(図示省略)、熱交換ユニット17の第1および第2温度検出子171,172、流量センサ18(流量センサ検知回路23)等からの信号を入力する。そして、制御装置20(マイコン21)は、操作パネル14や各種センサからの信号等に基づいて制御信号を生成し、上記駆動回路やヒータ制御回路22等を介して、便座12および便蓋13の開閉機構、洗浄ノズル15の駆動機構、ロータリーバルブ、熱交換ユニット17のヒータ170等を制御する。
更に、制御装置20は、熱交換ユニット17の熱交換容器17a内の洗浄水すなわち洗浄ノズル15に供給される洗浄水の温度に応じて当該洗浄ノズル15への洗浄水の供給が規制されるようにウォーターバルブ16の開弁を禁止可能な安全回路30を有する。安全回路30は、図2に示すように、反転型の第1および第2コンパレータ31,32と、第1、第2および第3オンオフ回路33,34,35とを含むハードウェア回路である。第1〜第3オンオフ回路33−35としては、ウォーターバルブ16が交流駆動式である場合、トライアックを含むものが用いられ、ウォーターバルブ16が直流駆動式である場合、トランジスタ(FET)を含むものが用いられる。
図2に示すように、第1コンパレータ31の反転入力端子には、熱交換ユニット17の第1温度検出子171の出力端子が接続されており、当該第1コンパレータ31の非反転入力端子には、基準電圧(基準信号)が印加されている。また、第2コンパレータ32の反転入力端子には、熱交換ユニット17の第2温度検出子172の出力端子が接続されており、当該第2コンパレータ32の非反転入力端子には、基準電圧(基準信号)が印加されている。これにより、第1および第2コンパレータ31,32は、第1または第2温度検出子171,172から反転入力端子に印加された電圧が基準電圧よりも高くなるまでの間、出力端子からハイレベルの信号を出力し、反転入力端子に印加された電圧が基準電圧よりも高くなると出力端子からローレベルの信号を出力する。
本実施形態において、第1および第2コンパレータ31,32に印加される基準電圧は、熱交換容器17a内の洗浄水の温度が洗浄ノズル15から出水されるべきではない洗浄水の温度として予め定められた基準温度Tref(例えば、45℃程度)であるときに第1および第2温度検出子171,172から出力される電圧と概ね同一に定められている。従って、熱交換容器17a内の洗浄水の温度が基準温度Tref以上になると、第1または第2温度検出子171,172から反転入力端子に印加される電圧が基準電圧よりも高くなることで、第1および第2コンパレータ31,32は、出力端子からローレベルの信号を出力する。
第1コンパレータ31の出力端子は、図2に示すように、第1オンオフ回路33に接続されている。第1オンオフ回路33は、第1コンパレータ31からの信号がハイレベルである間にオンされ、第1コンパレータ31からの信号がローレベルになるとオフされる。また、第2コンパレータ32の出力端子は、第2オンオフ回路34に接続されている。第2オンオフ回路34は、第2コンパレータ32からの信号がハイレベルである間にオンされ、第2コンパレータ32からの信号がローレベルになるとオフされる。更に、第3オンオフ回路35は、マイコン21に接続されており、当該マイコン21によりオンオフ制御される。
従って、第1および第2コンパレータ31,32からの信号がハイレベルである際にマイコン21により第3オンオフ回路35がオンされると、第1から第3オンオフ回路33−35のすべてがオンされ、第1から第3オンオフ回路33−35を介して電力が供給されることでウォーターバルブ16が開弁する。これにより、ウォーターバルブ16からの洗浄水を熱交換ユニット17を介して洗浄ノズル15に供給し、洗浄ノズル15から洗浄水を人体の局部へと噴出することが可能となる。また、第1および第2コンパレータ31,32の少なくとも何れか一方の信号がローレベルである際には、マイコン21により第3オンオフ回路35がオンされたとしても、第1および第2オンオフ回路33,34の少なくとも何れか一方がオフされることでウォーターバルブ16への電力供給が遮断され、当該ウォーターバルブ16の開弁が禁止されることになる。この結果、熱交換ユニット17の熱交換容器17a内の洗浄水が基準温度Tref以上になった際にウォーターバルブ16の開弁を禁止し、洗浄ノズル15への高温の洗浄水の供給すなわち洗浄ノズル15からの高温の洗浄水の噴出を規制することが可能となる。
このように、熱交換ユニット17に2つの温度検出子171,172を設けると共に、第1および第2コンパレータ31,32と第1から第3オンオフ回路33−35とにより安全回路30を構成することで、衛生洗浄装置10の冗長化を図ることが可能となる。ただし、安全回路30自体にも何らかの異常が発生するおそれもあり、安全回路30に異常が発生している状態でマイコン21が誤動作したような場合、洗浄ノズル15から高温の洗浄水が噴出されてしまうおそれもある。このため、衛生洗浄装置10では、制御装置20の異常診断部としてのマイコン21により安全回路30の異常診断が実行される。
図3は、制御装置20のマイコン21により実行される異常診断ルーチンの一例を示すフローチャートである。同図に示す異常診断ルーチンは、マイコン21により所定時間おきに実行されるものである。
図3の異常診断ルーチンの開始に際して、マイコン21(CPU)は、図示しない人体センサや、着座センサ19、着座スイッチ等からの信号に基づいて便器1の使用者の有無を判定する(ステップS100)。マイコン21は、便器1の使用者が存在すると判定した場合(ステップS110:NO)、本ルーチンを一旦終了させ、上記所定時間が経過した段階で再度本ルーチンを実行する。また、ステップS110にて便器1の使用者が存在していないと判定した場合(ステップS110:YES)、マイコン21は、第1温度検出子171により検出された洗浄水の温度Twを取得し(ステップS120)、取得した洗浄水の温度Twが上述の基準温度Tref未満であるか否かを判定する(ステップS130)。ステップS130にて洗浄水の温度Twが基準温度Tref以上であると判定した場合(ステップS130:NO)、マイコン21は、本ルーチンを一旦終了させ、上記所定時間が経過した段階で再度本ルーチンを実行する。
ステップS130にて洗浄水の温度Twが基準温度Tref未満であると判定した場合(ステップS130:YES)、マイコン21は、操作パネル14に設けられた少なくとも1つのランプを点滅させて異常診断処理の実行中であることを示すために、当該操作パネル14の図示しない制御部に対してランプ点滅指令を送信する(ステップS140)。操作パネル14の制御部は、マイコン21からランプ点滅指令を受信すると、該当するランプを点滅させると共に、当該操作パネル14の操作の受付を禁止する。ステップS140の処理の後、マイコン21は、ウォーターバルブ16の開弁指令すなわち上記第3オンオフ回路35をオンするためのオン信号を出力する(ステップS150)。また、ステップS150において、マイコン21は、熱交換容器17aからの洗浄水の供給先が洗浄ノズル15の捨て水排出口になるようにロータリーバルブを制御する。更に、マイコン21は、第3オンオフ回路35へのオン信号の出力から予め定められた時間(ウォーターバルブ16の開弁に要する時間)が経過した時点で、流量センサ18からの信号がオン状態となっているか否かを判定する(ステップS160)。
ステップS130にて洗浄水の温度Twが基準温度Tref未満であると判定された後にステップS150にてマイコン21から第3オンオフ回路35にオン信号が出力された際に、安全回路30の第1および第2コンパレータ31,32と第1から第3オンオフ回路33−35との少なくとも何れか1つに異常が発生していると、第1から第3オンオフ回路33−35の何れかがオンされないことになる。この場合、電力が供給されないことでウォーターバルブ16は開弁せず、当該ウォーターバルブ16から洗浄ノズル15(熱交換容器17a)に洗浄水が供給されない。すなわち、ステップS160にて流量センサ18からの信号がオン状態となっていないと判定された場合には(ステップS160:NO)、熱交換容器17a内の洗浄水の温度Twが基準温度Tref未満であって安全回路30(第1および第2コンパレータ31,32)がウォーターバルブ16の開弁を許容する状態であるにも拘わらず、マイコン21からのオン信号に応じてウォーターバルブ16が開弁していないことになる。
このため、ステップS160にて否定判断を行った場合(ステップS160:NO)、マイコン21は、安全回路30に異常が発生しているとみなし、操作パネル14の例えばすべてランプを点滅させて衛生洗浄装置10(安全回路30)に異常が発生していることを示すために、操作パネル14の制御部に対して異常状態表示指令を送信し(ステップS230)、本ルーチンを終了させる。マイコン21は、異常状態表示指令を送信した後、衛生洗浄装置10の動作を禁止する。また、操作パネル14の制御部は、マイコン21から異常状態表示指令を受信すると、該当するランプを点滅させると共に、当該操作パネル14の操作の受付を禁止する。
一方、ステップS160にて流量センサ18からの信号がオン状態となっていると判定された場合には(ステップS160:YES)、マイコン21からのオン信号の出力に応じてウォーターバルブ16が開弁して当該ウォーターバルブ16から洗浄ノズル15に洗浄水が供給され、洗浄ノズル15の捨て水排出口から便器1内に洗浄水が排出されている。すなわち、ステップS160にて肯定判断がなされた場合、熱交換容器17a内の洗浄水の温度Twが基準温度Tref未満であって安全回路30(第1および第2コンパレータ31,32)がウォーターバルブ16の開弁を許容する状態で、マイコン21により当該ウォーターバルブ16を開弁させられたことになる。
ステップS160に肯定判断を行った場合(ステップS160:YES)、マイコン21は、ウォーターバルブ16を閉弁させるべく、当該ウォーターバルブ16の閉弁指令すなわち上記第3オンオフ回路35をオフするためのオフ信号を出力する(ステップS170)。次いで、マイコン21は、熱交換容器17a内の洗浄水の温度Twが上記基準温度Tref以上になるように熱交換ユニット17のヒータ170を作動(オン)させた後、当該ヒータ170を停止させる(ステップS180)。更に、ステップS180の処理の後、マイコン21は、ウォーターバルブ16の開弁指令すなわち上記第3オンオフ回路35をオンするためのオン信号を出力する(ステップS190)。また、ステップS150において、マイコン21は、熱交換容器17aからの洗浄水の供給先が捨て水排出口になるようにロータリーバルブを制御する。そして、マイコン21は、第3オンオフ回路35へのオン信号の出力から予め定められた時間(ウォーターバルブ16の開弁に要する時間)が経過した時点で、流量センサ18からの信号がオフ状態となっているか否かを判定する(ステップS200)。
ステップS180にてヒータ170を作動させて洗浄水の温度Twを基準温度Tref以上に昇温させた後にステップS190にてマイコン21から第3オンオフ回路35にオン信号が出力された場合、第1および第2コンパレータ31,32が正常であれば、当該第1および第2コンパレータ31,32の出力端子からローレベルの信号が出力されることで第1および第2オンオフ回路33,34がオフされる。この場合、マイコン21から第3オンオフ回路35にオン信号が出力されても、第1および第2オンオフ回路33,34がオフされていることでウォーターバルブ16は開弁せず、当該ウォーターバルブ16から洗浄ノズル15(熱交換容器17a)に洗浄水が供給されない。すなわち、ステップS200にて流量センサ18からの信号がオフ状態になっていると判定された場合(ステップS200:YES)、熱交換容器17a内の洗浄水の温度上昇に応じて第1および第2コンパレータ31,32(安全回路30)がウォーターバルブ16の開弁を禁止したことで、ウォーターバルブ16が開弁していないことになる。
従って、ステップS200にて肯定判断を行った場合(ステップS200:YES)、マイコン21は、安全回路30に異常が発生していないとみなし、当該ウォーターバルブ16の閉弁指令すなわち上記第3オンオフ回路35をオフするためのオフ信号を出力する(ステップS210)。更に、マイコン21は、操作パネル14のランプの点滅表示を終了させるために、操作パネル14の制御部に対してランプ消灯指令を送信し(ステップS220)、本ルーチンを終了させる。
これに対して、ステップS200にて流量センサ18からの信号がオン状態になっていると判定された場合(ステップS200:NO)、マイコン21からのオン信号の出力に応じてウォーターバルブ16が開弁して当該ウォーターバルブ16から洗浄ノズル15に洗浄水が供給され、洗浄水が洗浄ノズル15の捨て水排出口から便器1内に排出されている。すなわち、ステップS200にて否定判断がなされた場合、熱交換容器17a内の洗浄水の温度Twが基準温度Tref以上であって第1および第2コンパレータ31,32(安全回路30)により本来ウォーターバルブ16の開弁が禁止されるべきであるにも拘わらず、マイコン21により当該ウォーターバルブ16を開弁させ得たことになる。
このため、ステップS200にて否定判断を行った場合(ステップS200:NO)、マイコン21は、安全回路30(第1および第2コンパレータ31,32)に異常が発生しているとみなし、操作パネル14の制御部に対して異常状態表示指令を送信し(ステップS230)、本ルーチンを終了させる。この場合も、マイコン21は、異常状態表示指令を送信した後、衛生洗浄装置10の動作を禁止する。また、操作パネル14の制御部は、マイコン21から異常状態表示指令を受信すると、該当するランプを点滅させると共に、当該操作パネル14の操作の受付を禁止する。
上述のように、衛生洗浄装置10の制御装置20は、洗浄ノズル15に供給される洗浄水の温度Twに応じて当該洗浄ノズル15への洗浄水の供給が規制されるようにウォーターバルブ16の開弁を禁止する安全回路30と、図3の異常診断ルーチンを実行して当該安全回路30の異常の有無を診断する異常診断部としてのマイコン21とを含む。そして、マイコン21は、第1および第2コンパレータ31,32の出力が反転するように熱交換ユニット17のヒータ170により熱交換容器17a内の洗浄水の温度Twを上昇させることで、安全回路30(第1および第2コンパレータ31,32)がウォーターバルブ16の開弁を禁止する状態をつくり出し、ウォーターバルブ16に開弁指令(第3オンオフ回路35へのオン信号)を与えた際の洗浄ノズル15側への洗浄水の供給状態に基づいて安全回路30の異常の有無を診断する(図3のステップS180−S200)。このように、安全回路30がウォーターバルブ16の開弁を禁止する状態をあえてつくり出して当該安全回路30の異常診断を行うことで、安全回路30の信頼性をより向上させることが可能となる。
また、マイコン21は、安全回路30がウォーターバルブ16の開弁を禁止する状態での異常診断(ステップS180−S200)に先立って、安全回路30がウォーターバルブ16の開弁を許容する状態をつくり出し(ステップS100−S130)、ウォーターバルブ16に開弁指令(第3オンオフ回路35へのオン信号)を与えた際の洗浄ノズル15側への洗浄水の供給状態に基づいて安全回路30の異常の有無を診断する(ステップS150,S160)。これにより、安全回路30の異常の有無をより精度よく診断することができるので、当該安全回路30の信頼性をより一層向上させることが可能となる。
更に、安全回路30は、第1または第2温度検出子171,172からの電圧信号と基準電圧との差に応じた信号を出力する第1および第2コンパレータ31,32と、第1または第2コンパレータ31,32からの信号に応じてウォーターバルブ16の開弁を許容または禁止する第1および第2オンオフ回路33,34とを含む。これにより、洗浄水が高温になった際にウォーターバルブ16の開弁を禁止して洗浄ノズル15への洗浄水の供給を規制する安全回路30を容易に構成することができる。
また、安全回路30がウォーターバルブ16の開弁を許容する状態でウォーターバルブ16に開弁指令(第3オンオフ回路35へのオン信号)を与えると共に(ステップS150)、安全回路30がウォーターバルブ16の開弁を禁止する状態でウォーターバルブ16に開弁指令を与えることで(ステップS190)、洗浄水の供給状態すなわち流量センサ18の検出値に基づいて第1および第2コンパレータ31,32並びに第1から第3オンオフ回路33−35の異常の有無を精度よく診断することが可能となる。そして、衛生洗浄装置10にウォーターバルブ16から洗浄ノズル15に供給される洗浄水の流量を検出する流量センサ18を設けることで、安全回路30の異常の有無を診断するためにウォーターバルブ16に開弁指令を与えた際に、洗浄ノズル15側への洗浄水の供給状態、すなわち洗浄ノズル15側に洗浄水が供給されたか否かを精度よく判別することが可能となる。
ただし、衛生洗浄装置10から流量センサ18が省略されてもよく、この場合には、図4に示す異常診断ルーチンのように、ウォーターバルブ16に開弁指令を与えた後に、例えば第1温度検出子171からの信号に基づいて洗浄水の温度勾配dTを取得し(ステップS150,S155,S190,S195)、取得した温度勾配dTに基づいて安全回路30の異常の有無を診断してもよい(S165,S205)。
図4に示す異常診断ルーチンが実行される場合、マイコン21は、ステップS140にて操作パネル14の制御部にランプ点滅指令を送信した後、熱交換容器17a内の洗浄水の温度Twがウォーターバルブ16に供給される洗浄水の温度Tw_inよりも高く、かつ上記基準温度Tref未満となるように熱交換ユニット17のヒータ170を作動(オン)させた後、当該ヒータ170を停止させる(ステップS145)。すなわち、ステップS145では、安全回路30(第1および第2コンパレータ31,32)がウォーターバルブ16の開弁を許容する状態を維持しつつ、熱交換容器17a内の洗浄水の温度Twが高められる。また、マイコン21は、ステップS150にてウォーターバルブ16に開弁指令(第3オンオフ回路35へのオン信号)を与えた後、第1温度検出子171の検出値の予め定められた時間内における変化量の絶対値を温度勾配dTとして取得する(ステップS155)。更に、マイコン21は、取得した温度勾配dTが予め定められた第1の閾値dT1(正の値)以上であるか否かを判定する(ステップS165)。
ステップS150におけるマイコン21からのオン信号の出力に応じてウォーターバルブ16が開弁した場合、当該ウォーターバルブ16から熱交換容器17a内に洗浄水が流入することで、当該熱交換容器17a内の洗浄水の温度Twは急激に低下し、第1温度検出子171の検出値から取得される温度勾配dTは、比較的大きな値となる。また、安全回路30がウォーターバルブ16の開弁を許容しているにも拘わらず、ステップS150におけるマイコン21からのオン信号の出力に応じてウォーターバルブ16が開弁しなかった場合、当該ウォーターバルブ16から熱交換容器17a内に洗浄水が流入しないので、第1温度検出子171により検出される洗浄水の温度Twは殆ど変化せず、温度勾配dTは、ゼロに近い値となる。このため、ステップS165にて温度勾配dTが第1の閾値dT1未満であると判定した場合(ステップS165:NO)、マイコン21は、安全回路30に異常が発生しているとみなし、ステップS230の処理を実行して図4のルーチンを終了させる。
一方、ステップS165にて温度勾配dTが第1の閾値dT1以上であると判定した場合(ステップS165:YES)、マイコン21は、上述のステップS170以降の処理を実行する。すなわち、マイコン21は、ステップS180にてヒータ170を作動させて洗浄水の温度Twを基準温度Tref以上に昇温させ、安全回路30がウォーターバルブ16の開弁を禁止する状態をつくり出す。更に、マイコン21は、ステップS190にてウォーターバルブ16に開弁指令(第3オンオフ回路35へのオン信号)を与えた後、第1温度検出子171の検出値の予め定められた時間内における変化量の絶対値を温度勾配dTとして取得する(ステップS195)。更に、マイコン21は、取得した温度勾配dTが例えば第1の閾値dT1よりも小さく定められた第2の閾値dT0(正の値)未満であるか否かを判定する(ステップS205)。
ステップS190におけるマイコン21からのオン信号の出力に応じてウォーターバルブ16が開弁しなかった場合、当該ウォーターバルブ16から熱交換容器17a内に洗浄水が流入しないので、第1温度検出子171により検出される洗浄水の温度Twは殆ど変化せず、温度勾配dTは、ゼロに近い値となる。また、安全回路30がウォーターバルブ16の開弁を禁止する状態であるにも拘わらず、ステップS190におけるマイコン21からのオン信号の出力に応じてウォーターバルブ16が開弁した場合、当該ウォーターバルブ16から熱交換容器17a内に洗浄水が流入することで、当該熱交換容器17a内の洗浄水の温度Twは急激に低下し、第1温度検出子171の検出値から取得される温度勾配dTは、比較的大きな値となる。
このため、ステップS205にて温度勾配dTが第2の閾値dT0以上であると判定した場合(ステップS205:NO)、マイコン21は、安全回路30(第1および第2コンパレータ31,32)に異常が発生しているとみなし、ステップS230の処理を実行して図4のルーチンを終了させる。また、ステップS205にて温度勾配dTが第2の閾値dT0未満であると判定した場合(ステップS205:YES)、マイコン21は、安全回路30に異常が発生していないとみなし、ステップS210およびS220の処理を実行して図4のルーチンを終了させる。このように、安全回路30の異常の有無を診断するためにウォーターバルブ16に開弁指令を与えた後の洗浄水の温度勾配dTを取得することで、当該温度勾配dTに基づいて、洗浄ノズル15側への洗浄水の供給状態、すなわち洗浄ノズル15側に洗浄水が供給されたか否かを精度よく判別することが可能となる。
図5は、衛生洗浄装置10の制御装置20に適用可能な他の安全回路30Bの要部拡大図である。同図に示す安全回路30Bは、正特性サーミスタである第1および第2温度検出子171,172と共に用いられるものであって、第1コンパレータ31に印加される基準電圧(基準信号)の電圧レベルを切り替える第1分圧回路310と、第2コンパレータ32に印加される基準電圧(基準信号)の電圧レベルを切り替える第2分圧回路320とを有する。第1および第2分圧回路310,320は、マイコン21によりオンオフ制御されるスイッチング素子を有し、当該スイッチング素子がオンされた際に接地側の抵抗値を低下させることで、第1または第2コンパレータ31、32に印加される基準電圧を抵抗分圧により低下させるものである。図5の例において、第1および第2分圧回路310,320は、スイッチング素子がオフされている際に、基準電圧を洗浄水の温度Twが上記基準温度Trefであるときに第1および第2温度検出子171,172から出力される電圧と概ね同一に設定する。また、第1および第2分圧回路310,320は、スイッチング素子がオンされている際に、基準電圧を洗浄水の温度Twが例えば0℃であるときに第1および第2温度検出子171,172から出力される電圧と概ね同一に設定するように構成されている。ただし、第1および第2温度検出子171,172として負特性サーミスタが用いられてもよく、この場合には、第1および第2分圧回路310,320として、スイッチング素子がオンされた際に第1または第2コンパレータ31、32に印加される基準電圧を抵抗分圧により低下させるものを用いればよい。
このような第1および第2分圧回路310,320を有する安全回路30Bが制御装置20に設けられた場合には、図6に示すように、ステップS170にてウォーターバルブ16に開弁指令(第3オンオフ回路35へのオン信号)を与えた後に、第1および第2分圧回路310,320のスイッチング素子をオンして第1および第2コンパレータ31,32に印加される基準電圧を低下させればよい(ステップS185)。これにより、第1および第2コンパレータ31,32が正常であれば、熱交換容器17a内の洗浄水の温度Twが基準温度Tref未満であっても、当該第1および第2コンパレータ31,32の出力を反転させることができるので、第1および第2オンオフ回路33,34をオフして安全回路30がウォーターバルブ16の開弁を禁止する状態をつくり出すことができる。この結果、熱交換ユニット17のヒータ170を作動させることなく、安全回路30(第1および第2コンパレータ31,32)の異常診断を実行することが可能となる。そして、図6に示すように、安全回路30の異常診断の完了後に、第1および第2分圧回路310,320のスイッチング素子をオフして第1および第2コンパレータ31,32に印加される基準電圧を復帰させればよい(ステップS215,S235)。
なお、図3、図4および図6の異常診断ルーチンでは、ステップS160、S165,S200,またはS205にて否定判断がなされた時点で安全回路30,30Bに異常が発生していると判定されるが、これらのステップS160、S165,S200,またはS205にて否定判断が複数回なされた時点で安全回路30,30Bに異常が発生していると確定させてもよい。また、衛生洗浄装置10では、制御装置20が熱交換ユニット17の第1および第2温度検出子171,172からの信号を入力することから、例えばステップS210,S215の処理の実行後等に第1および第2温度検出子171,172の検出値を比較することにより当該第1および第2温度検出子171,172の異常の有無を判定してもよい。この場合、第1および第2温度検出子171,172の検出値の差が一定値以上であれば、第1および第2温度検出子171,172の少なくとも何れか一方に異常が発生しているとみなし、操作パネル14に異常状態表示指令を送信してもよい。更に、図3、図4および図6の異常診断ルーチンは、制御装置に上述のような安全回路が設けられているのであれば、水道配管(水源)からの水を加熱するヒータや温度検出子等を有して当該ヒータにより加熱された温水を貯留可能な洗浄水タンクが設けられた貯水式の衛生洗浄装置において実行されてもよい。
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。