以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、実施形態に係る衛生洗浄装置が設けられたトイレ装置を表す断面図である。
図1に表したように、トイレ装置200は、洋式腰掛便器(以下説明の便宜上、単に「便器」と称する)800と、その上に設けられた衛生洗浄装置100と、を備える。便器800は、トイレ室の床面に設置される「床置き式」でもよいし、トイレ室の壁面やライニングに設置される「壁掛け式」であってもよい。衛生洗浄装置100は、ケーシング400と、便座300と、便蓋(不図示)と、を有する。便座300と便蓋とは、ケーシング400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。
ケーシング400の内部には、便座300に座った使用者の「おしり」などの洗浄を実現する身体洗浄機能部などが内蔵されている。使用者は、例えばリモコンなどの操作部500(図2参照)を操作すると、洗浄ノズル(以下説明の便宜上、単に「ノズル」と称する)473を便器800のボウル801内に進出させ、吐水させることができる。なお、図1では、ノズル473がケーシング400からボウル801内に進出した状態を一点鎖線により表しており、ボウル801内から後退しケーシング400内に収納された状態を実線により表している。
ノズル473の先端部には、吐水口31が設けられている。ノズル473は、吐水口31から人体局部に向けて吐水し、人体局部の洗浄を行う。吐水口31は、複数設けられてもよい。例えば、吐水口31として、ビデ洗浄吐水口31a、おしり洗浄吐水口31bなどが設けられる。ノズル473は、その先端に設けられたビデ洗浄吐水口31aから水を噴射して、便座300に座った女性の女性局部を洗浄することができる。ノズル473は、その先端に設けられたおしり洗浄吐水口31bから水を噴射して、便座300に座った使用者の「おしり」を洗浄することができる。
なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
図2は、実施形態に係る衛生洗浄装置の構成を例示するブロック図である。
図2では、水路系と電気系の構成を併せて表している。
この例では、衛生洗浄装置100は、吐水部として、前述のノズル473(洗浄ノズル)に加え、ノズル洗浄室478、及び噴霧ノズル479を有する。なお、ノズル洗浄室478及び噴霧ノズル479は必ずしも設けられなくてもよい。
衛生洗浄装置100は、ケーシング400内に配置された給水路20を有する。給水路20は、水道や貯水タンクなどの給水源10から供給された水をノズル473、ノズル洗浄室478及び噴霧ノズル479等へ供給する。
給水路20には、以下に説明する給水制御部431、調圧部432、加熱部440、流路切替部472などの各部と、これら各部を接続する複数の配管と、が設けられている。この他、給水路20には、逆止弁、流量センサ、電解槽、バキュームブレーカ等が適宜設けられてもよい。
給水路20の上流側には、給水制御部431が設けられている。給水制御部431は、下流への給水、すなわちノズル473等への給水を制御する。給水制御部431は、例えば、開閉可能な電磁バルブ(ソレノイドバルブ)であり、ケーシング400の内部に設けられた制御部405からの指令に基づいて水の供給を制御する。換言すれば、給水制御部431は、給水路20を開閉する。給水制御部431を開状態にすることにより、給水源10から供給された水が、下流側へ流れる。給水制御部431を閉状態にすることにより、下流側への給水が停止する。例えば、給水制御部431は、制御部405の一部(第1機能部405a)からの指令に基づいて水の供給を制御する。ここで、第1機能部405aとは、制御部405のうち、衛生洗浄装置100の通常動作(後述する高温吐水回避および故障診断以外の動作)を制御する機能ブロックを表す。
給水制御部431の下流には、調圧部432が設けられている。調圧部432は、例えば、給水圧が高い場合に、給水路20内の圧力を予め定めた圧力範囲に調整する調圧弁である。
調圧部432の下流には、加熱部440(熱交換器ユニット)が設けられている。加熱部440は、ヒータを有し、給水制御部431及び調圧部432を介して供給された水を加熱して例えば規定の温度まで昇温する。すなわち、加熱部440は、温水を生成する。
加熱部440は、例えばセラミックヒータなどを用いた瞬間加熱式(瞬間式)の熱交換器であり、貯湯タンクを用いた貯湯加熱式熱交換器と比較すると、短い時間で水を規定の温度まで昇温させることができる。なお、加熱部440は、瞬間加熱式の熱交換器には限定されず、貯湯加熱式の熱交換器であってもよい。また、加熱部は、熱交換器に限ることなく、例えば、マイクロ波加熱を利用するものなど、他の加熱方式を用いたものでもよい。
加熱部440は、制御部405と接続されている。制御部405(第1機能部405a)は、例えば、使用者による操作部500の操作に応じて加熱部440を制御することにより、操作部500で設定された温度に水を昇温する。
加熱部440の下流には流路切替部472が設けられている。流路切替部472は、ノズル473やノズル洗浄室478への給水の開閉や切替を行う切替弁である。この例では、流路切替部472は、流量の調整を行う流量調整部としても機能する。ただし、流量調整部及び流路切替部は、別々のユニットであってもよい。流路切替部472は、制御部405に接続され、制御部405(第1機能部405a)によって制御される。
流路切替部472の下流には、洗浄流路21が設けられ、洗浄流路21の下流にノズル473が設けられている。洗浄流路21は、給水路20を介して給水源10から供給された水をノズル473の吐水口31へ導く。
また、流路切替部472の下流には、バイパス流路24が設けられ、バイパス流路24の下流にノズル洗浄室478が設けられている。バイパス流路24は、給水路20を介して給水源10から供給された水をノズル洗浄室478の吐水口32へ導く。
また、流路切替部472の下流には、噴霧用流路25が設けられ、噴霧用流路25の下流に噴霧ノズル479が設けられている。噴霧用流路25は、給水路20を介して給水源10から供給される水を噴霧ノズル479の吐水口33に導く。
流路切替部472は、流路切替部472の下流に設けられた流路(例えば、洗浄流路21、バイパス流路24、噴霧用流路25)から、水を供給する流路を選択的に切り替える。流路切替部472によって選択された流路に水が供給される。流路切替部472は、ノズル473(洗浄流路21)に水が供給される状態と、ノズル473以外に水が供給される状態と、を切り替えることができる。ノズル473以外とは、例えば、ノズル洗浄室478(バイパス流路24)や噴霧ノズル479(噴霧用流路25)、ボウル801へ水を流す流路である。また、流路切替部472は、その上流から供給された水を流路切替部472において止水してもよい。
ノズル473は、ノズルモータ476からの駆動力を受け、便器800のボウル801内に進出したり後退したりする。つまり、ノズルモータ476は、制御部405(第1機能部405a)からの指令に基づいてノズル473を進退させる。
ノズル473は、ケーシング400から前方へ進出した状態で、加熱部440により加熱され流路切替部472から供給された水を、人体局部に向けて吐水し、洗浄を行う。
ノズル洗浄室478は、流路切替部472から供給された水を、その内部に設けられた吐水口32から噴射することにより、ノズル473の外周表面(胴体)を洗浄する。噴霧ノズル479は、流路切替部472から供給された水を、その先端に設けられた吐水口33からミスト状にしてボウル801に噴霧する。
制御部405(第1機能部405a)は、流路切替部472を制御することにより、洗浄流路21、バイパス流路24、及び噴霧用流路25などの各流路の開閉を切り替える。
制御部405は、マイコンなどの制御回路を含む。制御部405は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部405は、電源回路401を介して供給電源30から電力を供給される。制御部405(第1機能部405a)は、操作部500などからの信号に基づいて、給水制御部431や、加熱部440や、流路切替部472や、ノズルモータ476などの動作を制御する。
また、ケーシング400には、便座300に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる「温風乾燥機能」や「脱臭機能」や「便座暖房機能」や「室内暖房機能」などが適宜設けられていてもよい。ただし、これらの付加機能部は必ずしも設けられなくてもよい。
図3は、実施形態に係る衛生洗浄装置の構成を例示するブロック図である。
図3では、水路系と電気系の構成を併せて表している。
図3に示すように、制御部405は、前述の第1機能部405aと、第2機能部405bと、を含む。第2機能部405bは、以下に説明する高温吐水回避や、衛生洗浄装置100の部品の故障診断に関する機能ブロックである。なお、第1機能部405a及び第2機能部405bは、説明の便宜上、制御部405の機能を表すものであり、必ずしもハードウェアの構成を表すものでなくてもよい。
衛生洗浄装置100は、第1温度センサ41を有する。第1温度センサ41は、加熱部440のヒータの下流に設けられ、加熱部440の下流側を流れる水の温度を検知可能である。第1温度センサ41には、例えばサーミスタが用いられる。
制御部405(第1機能部405a)は、第1温度センサ41と電気的に接続されており、第1温度センサ41が検知した温度の情報を取得する。制御部405(第1機能部405a)は、第1温度センサ41の検知結果に基づいて加熱部440を制御することにより、加熱部440の下流に供給される水の温度を調整する。
衛生洗浄装置100は、さらに、保護電子回路480を有する。保護電子回路480は、衛生洗浄装置100の部品が故障すると衛生洗浄装置100の少なくとも一部の動作を禁止する回路である。例えば、保護電子回路480は、衛生洗浄装置100の洗浄系に故障が生じると、加熱部440における加熱を禁止する。なお、洗浄系とは、ノズル473からの吐水に関連する各部材や各装置をいう。例えば、洗浄系とは、図2及び図3に示す給水路20に設けられた各部材や各装置である。より具体的には、洗浄系には、給水制御部431、調圧部432、加熱部440、流路切替部472、ノズル473、及び保護電子回路480等の部品が含まれる。洗浄系の故障という範囲は、高温吐水につながる故障を含む。
この例では、保護電子回路480は、ノズル473から高温の水が吐水されることを防ぐための回路である。保護電子回路480は、加熱部440によって加熱された高温の水がノズル473から吐水されることを回避する高温吐水回避部483を有する。例えば、高温吐水回避部483は、第2温度センサ42、第2機能部405bの一部等によって構成される。
第2温度センサ42は、第1温度センサ41の下流に設けられ、加熱部440の下流側を流れる水の温度を検知可能である。流路切替部472及びノズル473は、第2温度センサ42の下流に設けられている。第2温度センサ42には、例えばサーミスタが用いられる。
制御部405(第2機能部405b)は、第2温度センサ42と電気的に接続されており、第2温度センサ42が検知した温度の情報を取得する。制御部405(第2機能部405b)は、第2温度センサ42により検知された温度が予め定めた温度よりも高温であると、加熱部440における加熱及びノズル473からの吐水の少なくともいずれかを禁止する。これにより、ノズル473から高温の水が吐水されることを抑制することができる。なお、ある動作の「禁止」とは、当該動作の停止を維持することをいうものとする。言い換えれば、ある動作の「禁止」とは、当該動作が実行されている場合には当該動作を停止させ、当該動作が実行されていない場合には当該動作を開始しないことである。
例えば、制御部405(第2機能部405b)は、第2温度センサ42の検知結果が予め定めた温度を超えると、あるいは、予め定めた温度を一定時間以上継続して超えると加熱部440における加熱を禁止する。具体的には、加熱部440のヒータの通電の禁止して水の加熱を禁止する。これにより、ノズル473から水が吐水されても、高温の水が人体に掛かることを防ぐことができる。
また、制御部405(第2機能部405b)は、第2温度センサ42の検知結果が予め定めた温度を超えた場合、あるいは、予め定めた温度を一定時間以上継続して超えた場合、ノズル473による人体局部への吐水を禁止してもよい。例えば、制御部405は、ノズルモータ476を制御してノズル473を後退させ収納する。例えば、制御部405は、流路切替部472を制御して、ノズル473の吐水口31に水を供給する洗浄流路21を閉じる。このとき、高温の水は、ノズル473以外へ供給され排出される。または、高温の水は、流路切替部472で止水されてもよい。また、例えば、制御部405は、給水制御部431を制御して、給水制御部431の下流への給水を禁止する。また、例えば、制御部405は、後述する搬送部436を制御して、ノズル473への水の搬送を禁止する。さらに、上記の禁止の際に、衛生洗浄装置100の少なくとも一部への電力の供給を遮断してもよい。衛生洗浄装置100の少なくとも一部への電力の供給の遮断により、ノズル473による吐水を禁止してもよい。
このように、高温吐水回避部483は、加熱部440によって加熱された高温の水がノズル473から吐水されることを回避する。具体的には、高温吐水回避部483は、第2温度センサ42が検知した温度に基づき、加熱部440における加熱を禁止する。なお、本願明細書において、「高温」とは使用者が不快感を覚える温度以上の温度であり、「高温」の範囲は適宜定められる。「高温」とは、予め定めた温度よりも高温であることをいうものとする。この予め定めた温度は、例えば使用者が火傷しうる程度の温度とすることができる。これに応じて、吐水の禁止を行う第2温度センサ42の温度も適宜、予め定めることができる。加熱部440のヒータの通電を制御するトライアックに不具合が生じた場合などに、水の温度が高温となることがある。
また、図3に示すように、保護電子回路480は、故障診断部482(故障診断回路)をさらに有する。故障診断部482は、保護電子回路480の部品の故障を診断するための回路である。
故障診断部482を用いた診断により、保護電子回路480の部品の故障が検知されると、加熱部440における加熱が禁止される。例えば、故障が検知されると、図3に示すように第2機能部405bは、駆動部51によって加熱部440を制御する。これにより、加熱部440のヒータへの通電が禁止され、水の加熱が禁止される。
または、故障診断部482を用いた診断により、保護電子回路480の部品の故障が検知されると、給水制御部431や流路切替部472の制御によりノズル473への給水を禁止してもよいし、衛生洗浄装置100の少なくとも一部への電力の供給を遮断してもよい。電力の供給の遮断により、洗浄系の部品の少なくとも一部の動作を禁止し、給水源10からノズル473への給水を禁止することができる。例えば、図2に関して説明した電源回路401における接続をオフとし、供給電源30から電源回路401への電力の供給を遮断する。
図3に示す例では、故障診断部482は、高温吐水回避部483の故障を診断するための回路である。故障診断部482により、高温吐水回避部483の各部(例えば制御部405(第2機能部405b)、第2温度センサ42及び後述する高温検知部481のそれぞれ)に対して、故障の診断が行われる。そして、故障診断部482を用いた診断により高温吐水回避部483の部品の故障が検知されると、加熱部440における加熱が禁止される。
以上説明したように、故障診断部482を設けることにより、保護電子回路480の部品の故障(例えば高温吐水回避部の故障)を検知することができ、ノズル473から高温の水が人体に向けて吐水されることを抑制することができる。
また、従来、高温吐水を防止するためには、ノズル473への給水の開始後に、加熱された水の温度を測定し、その測定結果に応じて、給水が制御されていた。これに対して、実施形態においては、部品の故障により加熱部440における加熱が禁止される。これにより、吐水を開始する前に、異常の前兆(部品故障)を検知し、ノズル473から高温の水が吐水されることを未然に防ぐことが可能となる。
図4は、実施形態に係る衛生洗浄装置の別の構成を例示するブロック図である。
図4に示す例では、故障診断部482を用いた診断により、保護電子回路480の部品の故障が検知されると、給水制御部431が制御され、給水制御部431によるノズル473への給水が禁止される。すなわち、給水制御部431の閉状態が維持される。
例えば、故障診断部482を用いた診断により高温吐水回避部483の部品の故障が検知されると、制御部405(第2機能部405b)は、駆動部51を制御することにより、給水制御部431によるノズル473への給水を禁止する。これにより、ノズル473から高温の水が人体に向けて吐水されることを未然に防ぐことができる。
また、電磁弁を駆動する回路(例えば駆動部51)の構成は、比較的シンプルである。例えば、電磁弁を駆動する回路の部品点数は、流路切替部472を駆動する回路の部品点数や、ノズルモータ476を駆動する回路の部品点数よりも少ない。このため、給水制御部431に電磁弁を用い、電磁弁を駆動する回路の故障診断を行う場合には、診断にかかる時間が短くて済む。
また、加熱部440よりも上流側に位置する給水制御部431でノズル473への給水を禁止することにより、加熱部440への通水を禁止することができる。これにより、加熱部440に故障が生じて加熱部440による加熱が万一、継続しても、加熱部440において水が沸騰し続けるような事態を回避することができる。これにより、加熱部440のタンクの破損や漏水を回避することができる。
図5は、実施形態に係る衛生洗浄装置の別の構成を例示するブロック図である。
図5に示す例では、給水路20の経路上に開放式タンク434及び搬送部436が設けられている。
開放式タンク434(逆流防止機構)は、例えば図2に関して説明した調圧部432の下流に設けられる。開放式タンク434は、調圧部432を介して流入した水を内部に貯留する。また、開放式タンク434は、内部にエアギャップを形成することにより、給水路20において、開放式タンク434よりも下流側から上流側に向かう水の流れを物理的に遮断する。換言すれば、開放式タンク434は、給水路20の開放式タンク434よりも下流側の部分と上流側の部分とを縁切りする。これにより、開放式タンク434は、ノズル473内の洗浄水やボウル801内に溜まった汚水などが、給水源10(上水)側に逆流してしまうことを確実に抑制する。
開放式タンク434の下流には、搬送部436が設けられ、搬送部436の下流に加熱部440が設けられる。搬送部436は、例えばギアポンプである。搬送部436は、開放式タンク434に貯留された水を流出させる。搬送部436は、開放式タンク434に貯留された水を汲み出す。これにより、搬送部436は、開放式タンク434に貯留された水を、開放式タンク434よりも下流側のノズル473等へ搬送する。搬送部436は、制御部405(第1機能部405a)に接続されている。制御部405(第1機能部405a)は、搬送部436の駆動及び駆動の停止を制御することができる。搬送部436は、開放式タンク434に貯留された水を流出させることが可能な任意のポンプでよい。
この例では、故障診断部482を用いた診断により、保護電子回路480の部品の故障が検知されると、搬送部436が制御され、搬送部436によるノズル473への水の搬送が禁止される。すなわち、搬送部436は、動作を停止した状態、つまり開放式タンク434から水を汲みださない状態を維持する。
例えば、故障診断部482を用いた診断により高温吐水回避部483の部品の故障が検知されると、制御部405(第2機能部405b)は、駆動部51を制御して、搬送部436によるノズル473への水の搬送を禁止する。これにより、ノズル473から高温の水が人体に向けて吐水されることを未然に防ぐことができる。
故障が検知されたときに、給水制御部431を閉状態とすることにより、ノズル473への給水を禁止してもよい。ただし、給水制御部431が閉状態であっても、搬送部436が駆動していると、開放式タンク434内に残った水がノズル473へ供給される可能性がある。そこで、開放式タンク434及び搬送部436が設けられた場合には、故障が検知されたときに、搬送部436による水の搬送を禁止することが望ましい。これにより、開放式タンク434内に水が残っていても、ノズル473への給水を禁止することができる。
以上説明したように、故障診断部482により故障が検知されたときに給水制御部431、搬送部436、流路切替部472の少なくともいずれかを制御して、ノズル473への給水を禁止してもよい。
以下では、故障が検知されたときに、加熱部440による加熱を禁止する場合を例に挙げて説明する。ただし、以下に示す例においても、故障が検知されたときに、搬送部436や流路切替部472、給水制御部431を制御して、ノズル473への給水が禁止されてもよい。また、以下では、故障診断部482が高温吐水回避部483の故障を診断する回路である場合を例に挙げて説明する。
図3を再び参照して、保護電子回路480についてさらに説明する。
保護電子回路480は、給水制御部431を駆動する駆動部51を有する。駆動部51は、例えばトランジスタを含むスイッチ回路であり、駆動部51によって給水制御部431の動作(開閉)が制御される。なお、この例では、駆動部51は、加熱部440のヒータへの通電をオン/オフする回路であるが、給水制御部431、流路切替部472及び搬送部436のいずれかの動作を制御する回路であってもよい。例えば、駆動部51によって、給水制御部431の開閉や、流路切替部472の流路の切り替えや、搬送部の動作の開始/停止などが制御されてもよい。
保護電子回路480の故障診断部482は、第2機能部405bの一部と、監視部50と、を有する。監視部50は、例えばIC(Integrated Circuit)を含む回路であり、制御部405(第2機能部405b)や駆動部51と電気的に接続されている。監視部50は、制御部405の故障を診断し、制御部405が故障していると、加熱部440における加熱及びノズル473からの吐水の少なくともいずれかを禁止する。図3に示す例では、監視部50は、制御部405が故障していると判断すると、駆動部51を制御して、加熱部440のヒータの通電をオフに維持する。給水制御部431によるノズル473への給水を禁止したり、流路切替部472によるノズル473への給水を禁止したり、搬送部によるノズル473への給水(搬送)を禁止したりしてもよい。
また、制御部405(第2機能部405b)は、監視部50の故障を診断し、監視部50が故障していると、加熱部440における加熱及びノズル473からの吐水の少なくともいずれかを禁止する。図3に示す例では、制御部405(第2機能部405b)は、監視部50が故障していると判断すると、駆動部51を制御して、加熱部440のヒータの通電をオフに維持する。給水制御部431によるノズル473への給水を禁止したり、流路切替部472によるノズル473への給水を禁止したり、搬送部によるノズル473への給水(搬送)を禁止したりしてもよい。
このように、保護電子回路480の制御部405又は監視部50に故障が生じると、水の加熱及び吐水の少なくともいずれかが禁止される。これにより、高温の水がノズル473から人体へ向けて吐水されることを抑制することができる。例えば、加熱部440及び保護電子回路480の両方が故障するような多重故障が生じても、高温の水が吐水されることを抑制することができる。
また、制御部405(第2機能部405b)は、駆動部51の故障を診断し、駆動部51が故障していると判断すると、加熱部440における加熱を禁止する。具体的には、制御部405(第2機能部405b)は、駆動部51の一部が故障していると判断すると、駆動部51を制御して、加熱部440のヒータの通電をオフに維持する。これにより、高温の水が吐水されることをさらに抑制することができる。
図6及び図7は、実施形態に係る衛生洗浄装置の動作を例示するフローチャートである。
図6に示すように、例えば、使用者は、操作部500を操作して、ノズル473からの吐水を指示する信号(例えばおしり洗浄信号)を送信する。これに応じて、制御部405には、ノズル473への通水命令が入力される(ステップS101)。
ノズル473への通水命令が入力されると、ステップS103において、給水制御部431が開かれる。その後、流路切替部472において、水の流路が切り替えられて、ノズル473に給水する流路(洗浄流路21)が開かれる(ステップS104)。この際、加熱部440のヒータは、必要に応じて通電されている。そして、ノズル473の吐水口31から使用者の局部へ向けて吐水が行われる。
制御部405は、吐水中に、第1温度センサ41の検知結果及び第2温度センサ42の検知結果を取得する。第1温度センサ41及び第2温度センサ42により検知された温度が高温でなかった場合(ステップS105:なし)、ノズル473からの吐水が継続される(ステップS106)。
第1温度センサ41又は第2温度センサ42により検知された温度が高温であった場合(ステップS105:あり)、例えば加熱部440のヒータの故障が想定される。そこで、制御部405は、加熱部440のヒータの通電を禁止する(ステップS107)。また、制御部405又は高温検知部481は、給水制御部431を開状態から閉状態とする(ステップS108)。さらに、制御部405は、流路切替部472を制御して、ノズル473に給水する流路を閉じる(ステップS109)。
ステップS107〜S109により、加熱部440における加熱及びノズル473からの吐水が禁止される。そして、加熱部440における加熱及びノズル473から吐水を行うための回路がラッチされる(ステップS110)。すなわち、ステップS110の後に、使用者が操作部500を操作して、制御部405に通水命令が再び入力されても、ステップS103〜S110の処理は実行されず、加熱部440における加熱及びノズル473からの吐水は行われない。このラッチ状態は、例えば制御部405への電力の供給を停止し、再び開始すること(電源再投入)によって、解除される。つまり、第2温度センサ42により検知された温度が予め定めた温度よりも高温であることにより加熱部440による加熱及びノズル473からの吐水の少なくともいずれかが禁止された状態は、制御部405の電源再投入が行われるまで解除されない。これにより、高温の水が吐水されることをさらに抑制することができる。
なお、ステップS107〜S110においては、加熱部440における加熱のみを禁止し、ノズル473への給水は禁止しなくてもよい。この場合には、ノズル473は、加熱されていない水であれば、吐水することができるため、使い勝手を向上させることができる。
ステップS101において制御部405が信号を受け付けた後、保護電子回路480は、故障診断部482により、保護電子回路480の故障診断を行う(ステップS102)。ステップS102において、故障が検知された場合(ステップS102:あり)、加熱部440における加熱が禁止される(ステップS111)。ステップS102において、故障が検知されなかった場合(ステップS102:なし)、加熱部440における加熱が禁止されない状態(ヒータが通電可能な状態)が維持される(ステップS112)。
ステップS102における故障診断は、例えば、ステップS103において給水が開始される前や、ステップS103〜S110が実行されている間において、繰り返し周期的に行われる。これにより、ノズル473から高温の水が吐水されることを未然に防ぐことができる。
また、ステップS111の後には、ステップS110のように回路はラッチされない。すなわち、ステップS111の後においても、ステップS102が繰り返し周期的に実行される。例えば、監視部50は、再び制御部405の故障を診断し、制御部405は、再び監視部50の故障を診断する。制御部405の故障又は監視部50の故障によって加熱部440における加熱が禁止された状態は、監視部50による制御部405の故障の再診断により故障が検知されず、制御部405による監視部50の故障の再診断により故障が検知されない場合に、解除される。このように、故障診断部482を用いた診断により加熱部440による加熱やノズル473による吐水が禁止された状態は、故障診断部482の診断を再び行い、故障が検知されない場合には解除される。これにより、例えば外乱のノイズ等によって故障の誤検知が生じても、再び故障診断を行い、加熱や吐水を行うことができる。したがって、使い勝手を向上させることができる。また、ステップS111により吐水が禁止された場合でも、衛生洗浄装置100の吐水に関わらない機能(例えば温風乾燥、脱臭、便座暖房など)は有効のままとする。これにより、使い勝手を向上させることができる。
ステップS102の故障診断は、ステップS101の前においても、繰り返し周期的に実行されていてもよい。これにより、例えば加熱部440に貯湯式を用いた場合であっても、貯湯タンク内の水が高温になることを抑制し、ノズル473から高温の水が吐水されることを抑制することができる。
また、ステップS111において、加熱部440における加熱が禁止された場合、状態表示部によって、故障が検知されたことを使用者に報知してもよい。状態表示部には、例えばLED、液晶、有機ELなど任意の報知手段を用いることができる。状態表示部は、例えば操作部500又はケーシング400などに設けられる。
図6に示したステップS101、S102及びS111における処理の一例について図7を参照して説明する。
図7に示すように、制御部405にノズル473への通水命令が入力されると、保護電子回路480は、故障診断を開始する(ステップS201)。
故障診断においては、例えば、まず監視部50により、制御部405における故障の有無が判断される(ステップS202)。
制御部405の故障が検知された場合(ステップS203:N)、監視部50は、駆動部51を制御して、加熱部440のヒータの通電をオフに維持する(ステップS204)。これにより、加熱部440における加熱が禁止される(ステップS205)。
制御部405における故障が検知されなかった場合(ステップS203:Y)、制御部405により、監視部50における故障の有無が判断される(ステップS206)。
監視部50の故障が検知された場合(ステップS207:N)、制御部405は、駆動部51を制御して、加熱部440のヒータの通電をオフに維持する(ステップS208)。これにより、加熱部440における加熱が禁止される(ステップS205)。
監視部50の故障が検知されなかった場合(ステップS207:Y)、制御部405により、駆動部51における故障の有無が判断される(ステップS209)。
駆動部51の故障が検知された場合(ステップS210:N)、制御部405は、駆動部51を制御して、加熱部440のヒータの通電をオフに維持する(ステップS211)。これにより、加熱部440における加熱が禁止される(ステップS205)。
駆動部51の故障が検知されなかった場合(ステップS210:Y)、加熱部440のヒータの通電が許可される。(ステップS212)。
このように、制御部405と監視部50とは、相互に故障診断を行う。これにより、制御部405及び監視部50のいずれかに不具合が生じた場合には、直ちに加熱を禁止することができる。なお、監視部50による制御部405の故障診断(ステップS202)は、制御部405による監視部50の故障診断(ステップS206)の後に行われてもよい。
そして、制御部405による駆動部51の故障診断(ステップS209)は、監視部50による制御部405の故障診断(ステップS202)及び制御部405による監視部50の故障診断(ステップS206)の後に行われる。この順に各部の故障診断を行うことにより、制御部405に故障が無いことが確認された後に、制御部405が駆動部51の故障の診断を行うことができるため、駆動部51の故障の診断をより確実に実施することができ、効率的な故障診断を実施することができる。
図8を参照して、制御部405(第2機能部405b)及び監視部50の故障診断について説明する。
図8は、実施形態に係る衛生洗浄装置の保護電子回路の一部を例示するブロック図である。
図8に示すように、監視部50は、例えば、集積回路(ロジックIC)50aを含む。制御部405から監視部50に第1信号Sig1が出力される。第1信号Sig1は、例えばHigh及びLowのいずれかの信号である。例えば、監視部50は、第1信号Sig1がHighであれば制御部405が正常(故障なし)と診断し、第1信号Sig1がLowであれば制御部405が異常(故障あり)と診断する。監視部50は、第1信号Sig1を第2信号Sig2に変換し、駆動部51へ出力する。制御部405の異常時(故障時)には、第2信号Sig2に応じて、駆動部51が制御され、加熱部440のヒータの通電がオフとなる。
また、監視部50は、第1信号Sig1を、第2信号Sig2と同様に第3信号Sig3に変換し、制御部405へ出力する。これにより、監視部50の故障が診断される。このような構成によれば、制御部405に故障が生じ第1信号Sig1が異常時の信号になると、監視部50は、即座に駆動部51を制御して加熱部440における加熱を禁止することができる。
次に図9を参照して、駆動部51の構成、動作及び故障診断について説明する。
図9は、実施形態に係る衛生洗浄装置の保護電子回路の一部を例示するブロック図である。
図9に示すように、駆動部51は、第1スイッチ51a及び第2スイッチ51bを有する。第1スイッチ51a及び第2スイッチ51bのそれぞれには、トランジスタなどのスイッチング素子を用いることができる。交流電源、加熱部440のヒータ、第1スイッチ51a及び第2スイッチ51bは、直列に接続されている。
第1スイッチ51a及び第2スイッチ51bの少なくともいずれかがオフのとき、交流電源から電流が流れず、加熱部440のヒータの通電がオフとなる。すなわち、加熱部440における加熱が禁止される。このように直列接続された2つのスイッチを設けることにより、一方のスイッチが故障した場合でも、他方のスイッチをオフとすることで、加熱部440における加熱を禁止することができる。これにより、ノズル473から高温の水が吐水されることをより確実に防ぐことができる。
制御部405(第2機能部405b)は、第1スイッチ51a及び第2スイッチ51bのそれぞれと接続されている。これにより、制御部405(第2機能部405b)は、第1スイッチ51aのオンオフの切り替え、および、第2スイッチ51bのオンオフの切り替えを行うことができる。また、監視部50は、第2スイッチ51bと接続されている。監視部50は、第2スイッチ51bのオンオフの切り替えを行うことができる。なお、図9に示す例では監視部50は、第2スイッチ51bのオンオフを切り替えるが、実施形態において監視部50は、第1スイッチ51a及び第2スイッチ51bの少なくともいずれかのオンオフを切り替えることができればよい。
制御部405(第2機能部405b)は、故障診断により監視部50の故障が検知されると、少なくとも第1スイッチ51aをオフにする。これにより、第2スイッチ51bのオン/オフに関わらず、加熱部440のヒータの通電がオフとなる。
監視部50は、故障診断により制御部405(第2機能部405b)の故障が検知されると、第2スイッチ51bをオフにする。これにより、第1スイッチ51aのオン/オフに関わらず、給水制御部431は閉状態となる。なお、この際、制御部405(第2機能部405b)が第2スイッチ51bをオンとする信号を出力していても、監視部50による第2スイッチ51bをオフとする制御が優先される。
監視部50には、駆動部51に流れる電流に応じた信号SigBが入力される。制御部405(第2機能部405b)及び監視部50は、信号SigBに基づいて、駆動部51の故障を検知することができる。
例えば、加熱部440が水を加熱しないオフのときは、第1スイッチ51a及び第2スイッチ51bのそれぞれはオフである。この場合、駆動部51の故障診断において、制御部405(第2機能部405b)は、第1スイッチ51a及び第2スイッチ51bのそれぞれをオンオフさせる。スイッチのオンオフに伴い、駆動部51に電流が流れ、信号SigBが変化する。制御部405及び監視部50は、信号SigBに関する情報を取得し、故障を検知することができる。
加熱部440がオフのときには、例えば、制御部405のマイコンのクロック周期ごとに、上記の故障診断を行う。これにより、駆動部51の故障を即座に検出することができ、高温の水が吐水されることを未然に防ぐことができる。
なお、待機時(衛生洗浄装置100の不使用時)には、制御部405のマイコンは、低消費電力のスリープモードとなり、故障診断の機能を停止してもよい。例えば、スリープモード中に、駆動部51に故障が生じて信号SigBが変化すると、監視部50は、信号SigBに基づいた信号を制御部405へ送る。制御部405は、その信号をトリガとしてスリープモードを解除し、上記の故障診断を即座に行う。そして、駆動部51の故障が検知された場合には、加熱部440における加熱が禁止される。
一方、加熱部440がオンのときは、ヒータに電流を流すため、第1スイッチ51a及び第2スイッチ51bがオンとなる。第1スイッチ51a及び第2スイッチ51bが加熱のためにオンであるときには、第1スイッチ51a及び第2スイッチ51bをオンオフさせる故障診断を行うことができない。そこで、加熱部440がオンである場合は、例えば、加熱部440のヒータの出力に応じて故障診断を行う。これについて、図10を参照して説明する。
図10(a)〜図10(e)は、実施形態に係る衛生洗浄装置の動作を例示するグラフである。
図10(a)は、加熱部440のヒータと接続された交流電源の電位(V)を表す。交流電源は、例えば、50Hzまたは60Hzの電源が用いられる。
図10(b)は、加熱部440のヒータが第1出力で駆動される場合の、加熱部440のヒータの電力(W)を表す。
図10(c)は、図10(b)の場合における、故障の診断が実行されるタイミングを表す。
図10(d)は、加熱部440のヒータが第2出力で駆動される場合の、加熱部440のヒータの電力(W)を表す。なお、第2出力は、第1出力よりも大きい。
図10(e)は、図10(d)の場合における、故障の診断が実行されるタイミングを表す。
図10(b)及び図10(d)に示すように、加熱部440のヒータは、パターン制御により制御される。パターン制御は、交流電源の半波を1単位とした制御であり、半波単位でヒータの通電と非通電とを制御する。例えば、交流電源の16半波を1周期として1半波ごとにヒータのオンオフが制御される。
図10(b)においては、2半波のオンと2半波のオフとを交互に繰り返すパターン制御が実行されている。図10(d)においては、6半波のオンと2半波のオフとを交互に繰り返すパターン制御が実行されている。半波がオンのときは、第1スイッチ51a及び第2スイッチ51bは、オンであり、半波がオフのときは、第1スイッチ51a及び第2スイッチ51bは、オフである。
このように、加熱部440のヒータのパターン制御においては、第1スイッチ51a及び第2スイッチ51bがオフとなる期間が周期的に生じる。そこで、図10(c)及び図10(e)に示すように、第1スイッチ51a及び第2スイッチ51bがオフとなる期間に、上述の故障診断を実行する。すなわち、ヒータの出力に応じた半波がオフとなる周期で、故障診断を繰り返し実行する。
加熱部440のヒータの出力が大きくなると、半波がオフとなる頻度が低くなる。そのため、故障診断部482を用いた故障診断の周期Pが長くなる。ただし、周期Pは、加熱部440が、予め定めた通常温度Tnから予め定めた高温Thまで水を加熱するのに要する時間よりも短いことが望ましい。これにより、水が高温になる前に故障を検知しやすく、高温の水が吐水されることをより確実に防ぐことができる。
なお、通常温度Tnは、通常時(故障が生じていない時)において、加熱部440が加熱を開始する水の温度の最大値に基づいて適宜定められる。高温Thは、通常温度Tnよりも高い温度であり、使用者が不快感を覚える温度や火傷が生じる温度に基づいて適宜定められる。
例えば、加熱部440が貯湯式である場合、通常時の貯湯タンク内の水温の最大値は40℃程度であるため、通常温度Tnを40℃とする。また、例えば、高温Thを60℃、貯湯タンク内の水の量を600cc、加熱部440のヒータの出力を450Wとする。このとき、加熱部440が、貯湯タンク内の水を通常温度Tnから高温Thまで加熱するのに要する時間は、4.2×(貯湯タンク内の水の重さ(g))×(ΔT(℃))/(ヒータの出力(W))=4.2×600×20/450により、約112秒と算出される。従って、この場合には、故障診断の周期Pは、112秒よりも短いことが望ましい。なお、ΔTは、高温Thと通常温度Tnとの差(=60−40)であり、1カロリー(cal)=4.2ジュール(J)である。
加熱部440が通常温度Tnから高温Thまで水を加熱するのに要する時間が、パターン制御における半波がオフとなる周期よりも短い場合には、適宜、半波をオフとする期間を設けて、その期間に故障診断を実行することが望ましい。
また、図10(b)及び図10(d)に示す例では、時刻T1において、加熱部440がオフからオンとなりパターン制御が開始される。このとき、図10(c)及び図10(e)に示すように、時刻T1の直前において故障診断を実行し、故障が検知された場合には、加熱部440における加熱が禁止される。これにより、加熱部440において、水が高温になることをより確実に防ぐことができる。
図11は、実施形態に係る衛生洗浄装置の別の構成を例示するブロック図である。
図11では、水路系と電気系の構成を併せて表している。
図11に示す例では、図3に示した例と比べて、高温吐水回避部483に高温検知部481がさらに設けられている。なお、実施形態において、高温検知部481は必ずしも設けられなくてもよい。高温検知部481は、例えばコンパレータを含む回路であり、第2温度センサ42が検知した温度の情報を取得する。高温検知部481は、第2温度センサ42によって検知された温度が予め定めた温度よりも高温であると、加熱部440における加熱を禁止する。例えば、第2温度センサ42によって検知された温度が予め定めた温度を超えた場合、高温検知部481は、駆動部51を制御して、加熱部440のヒータの通電をオフに維持する。また、この際、制御部405(第2機能部405b)には、高温検知部481から、高温が検知されたことを示す信号が入力される。この信号に応じて、制御部405は、ノズル473を収納したり、流路切替部472によってノズル473への給水を禁止したり、給水制御部431によってノズル473への給水を禁止したりしてもよい。
また、保護電子回路480は、高温検知部481の故障を診断するためのテストモード切替回路(切替部)53を有する。図12を参照して、テストモード切替回路53による高温検知部481の故障診断について説明する。
図12は、実施形態に係る衛生洗浄装置の保護電子回路の一部を例示するブロック図である。
図12に示すように、第2温度センサ42の可変抵抗及び温度検出部(検出抵抗)R7が電源電圧VccとグラウンドGNDとの間において直列に接続されている。制御部405の第2機能部405bや高温検知部481には、第2温度センサ42の可変抵抗と温度検出部(検出抵抗)R7とによって構成された分圧回路の出力電圧V1が入力される。制御部405や高温検知部481は、出力電圧V1に基づいて、第2温度センサ42により検知された温度が高温であるか否かを判断する。
テストモード切替回路53は、例えばトランジスタ等のスイッチング素子を含む。スイッチング素子は、第2温度センサ42の可変抵抗と並列に接続されている。すなわち、スイッチング素子の一端は、電源電圧Vccと第2温度センサ42の可変抵抗との間に接続され、スイッチング素子の他端は、第2温度センサ42の可変抵抗と温度検出部(検出抵抗)R7との間に接続されている。
高温検知部481の故障診断において、制御部405(第2機能部405b)は、テストモード切替回路53のスイッチング素子をオンとして、出力電圧V1を実質的に電源電圧Vccと等しくする。これにより、疑似的に高温状態が作られる。すなわち、第2温度センサ42が高温を検知したときと同様の出力電圧V1が高温検知部481に入力される。制御部405(第2機能部405b)は、このときの高温検知部481からの出力に基づいて、高温検知部481の故障を診断することができる。
高温検知部481による加熱部440の制御は、制御部405による制御から独立している。高温検知部481を設けることにより、制御部405や監視部50の故障診断に万一、不具合が生じても、高温検知部481により、高温の水がノズル473から吐水されることを抑制することができる。また、例えば、ノズル473からの吐水を開始する前(例えば図7に関して説明したステップS207の後かつステップS212の前)に、制御部405(第2機能部405b)は、テストモード切替回路53により高温検知部481の故障を診断する。高温検知部481の故障が検知されると、制御部405(第2機能部405b)は、加熱部440における加熱を禁止する。これにより、より確実に、高温の水がノズル473から吐水されることを抑制することができる。
また、例えば、第2温度センサ42に故障が生じた場合には、正しい温度が測定できないため、水の温度が高温となっても、加熱部440における加熱の禁止が実行されない恐れがある。これに対して、実施形態においては、制御部405(第2機能部405b)は、第1温度センサ41の測定結果および第2温度センサ42の測定結果に基づいて、第2温度センサ42の異常を検知する。
具体的には、制御部405は、第1温度センサ41により検知された温度が変動しており、かつ、第2温度センサ42により検知された温度が変動していない場合、第2温度センサ42が異常であると判断する。これにより、第2温度センサ42が故障した恐れがあることを検知することができ、高温の水が吐水される可能性があることを検知することができる。
なお、本願明細書において、「温度が変動していない」という範囲には、測定ばらつき程度の範囲内で温度が変動している場合も含むものとする。言い換えれば、温度の変化が、予め定めた値以下である場合には、温度は変動していないとみなす。この値は、測定ばらつき等を考慮して適宜予め定められるが、例えば±1℃程度である。
制御部405(第2機能部405b)は、第2温度センサ42が異常であると判断すると、加熱部440における加熱を禁止する。例えば、制御部405は、加熱部440のヒータをオフに維持する。制御部405は、流路切替部472を制御して、ノズル473への給水を禁止してもよい。この場合、流路切替部472は、洗浄流路21以外の流路を選択した状態、または、上流からの水を流路切替部472において止水する状態のいずれかを維持する。あるいは、開放式タンク434及び搬送部436が設けられた場合、制御部405は、搬送部436の動作を停止した状態を維持することにより、搬送部436によるノズル473への給水を禁止してもよい。また、制御部405は、給水制御部431を閉状態に維持して、給水制御部431によるノズル473への給水を禁止してもよい。
図13を参照して、第2温度センサ42の異常の判定の例を説明する。
図13は、実施形態に係る衛生洗浄装置の動作を例示するフローチャートである。
制御部405は、例えば、まず衛生洗浄装置100の故障診断を行う(ステップS301)。この故障診断は、例えば、図7に示すステップS202、S206、S209などである。故障が検知されなかった場合、加熱部440のヒータの通電が許可される。
その後、制御部405は、第2温度センサ42の測定値を取得する(ステップS302)。ステップS302において第2温度センサ42によって測定された温度をAとする。
続いて、制御部405は、第1温度センサ41の測定値を取得する(ステップS303)。ステップS303において第1温度センサ41によって測定された温度をBとする。
その後、給水制御部431等が開状態とされ、ノズル473への給水が開始される(ステップS304)。これに伴い、制御部405は、タイマーにより予め定めた時間Tc1のカウントを開始する(ステップS305)。時間Tc1は、例えば1秒程度である。また、このとき、加熱部440による水の加熱が行われている。
続いて、制御部405は、再び第2温度センサ42の測定値を取得する(ステップS306)。ステップS306において第2温度センサ42によって測定された温度をCとする。
CとAとの差の絶対値が予め定めた値Tp1以上の場合(ステップS307:Yes)、制御部405は、第2温度センサ42が異常でないと判断する(ステップS308)。予め定めた値Tp1は、例えば1℃程度である。CとAとの差の絶対値が予め定めた値Tp1未満の場合(ステップS307:No)、時間Tc1のカウントが終了するまで、ステップS306及びステップS307が繰り返される(ステップS309:No)。時間Tc1のカウント中に、CとAとの差の絶対値が予め定めた値Tp1以上となれば(ステップS307:Yes)、制御部405は、第2温度センサ42が異常でないと判断する(ステップS308)。
CとAとの差の絶対値が予め定めた値Tp1未満のままであり、時間Tc1のカウントが終了すると(ステップS309:Yes)、制御部405は、第1温度センサ41の測定値を取得する(ステップS310)。ステップS310において第1温度センサ41によって測定された温度をDとする。
BとDとの差の絶対値が予め定めた値Tp2以下の場合(ステップS311:No)、制御部405は、時間Tc1のカウントを開始し(ステップS312)、第1温度センサ41の測定値を取得する(ステップS313)。Bの値は、ステップS313において第1温度センサ41によって測定された温度に更新される。なお、予め定めた値Tp2は、予め定めた値Tp1よりも大きく、例えば10℃程度である。
ステップS313の後に、ステップS306〜S311が繰り返される。この繰り返しの処理は、BとDとの差の絶対値が予め定めた値Tp2より大きくなるまで繰り返される。言い換えれば、第1温度センサ41の測定結果が、時間Tc1の間に予め定めた値Tp2よりも大きく変化するまで、ステップS306〜S311が繰り返される。なお、ステップS311では、絶対値ではなく、(D−B)>Tp2を判定してもよい。言い換えれば、温度の上昇を判定してもよい。
BとDとの差の絶対値が予め定めた値Tp2より大きくなると(ステップS311:Yes)、制御部405は、予め定めた時間Tc2のカウントを開始する(ステップS314)。時間Tc2は、例えば10秒程度である。
時間Tc2のカウントが終了していない場合(ステップS315:No)、制御部405は、第2温度センサ42の測定値を取得する(ステップS316)。ステップS316において第2温度センサ42によって測定された温度をEとする。
EとAとの差の絶対値が予め定めた値Tp1以上の場合(ステップS317:Yes)、制御部405は、第2温度センサ42が異常でないと判断する(ステップS318)。EとAとの差の絶対値が予め定めた値Tp1未満の場合(ステップS317:No)、時間Tc2のカウントが終了するまでステップS316及びS317が繰り返される。
EとAとの差の絶対値が予め定めた値Tp1未満のまま、時間Tc2のカウントが終了すると(ステップS315:Yes)、制御部405は、第2温度センサ42が異常であると判断し、加熱部440における加熱を禁止する(ステップS319)。例えば、制御部405は、給水制御部431を制御して、閉状態とする。
このように、制御部405は、第2温度センサ42により検知された温度の変化が値Tp1より大きいか否かを判定する第1判定(ステップS307)を実施し、第1判定の後に、第1温度センサ41により検知された温度の変化が値Tp2より大きいか否かを判定する第2判定(ステップS311)を実施し、第2判定の後に、第2温度センサ42により検知された温度の変化が値Tp1よりも小さいか否かを判定する第3判定(ステップS317)を実施する。すなわち、ステップS307において第2温度センサ42の温度が判定された後に、再びステップS317において第2温度センサ42の温度が判定される。この際、ステップS311の判定により、第1温度センサ41の温度は比較的大きく変動している。すなわち、ステップS317では、第1温度センサ41の温度が変動しているにも拘わらず、第2温度センサ42の温度が変動していない、という異常を検知できる。また、この際、予め定めた値Tp2が予め定めた値Tp1よりも大きいことにより、誤検知を減らすことができる。
このように、例えば、制御部405は、第1温度センサ41により検知された温度の変化が予め定めた第1値(値Tp2)より大きく、かつ、第2温度センサ42により検知された温度の変化が予め定めた第2値(値Tp1)より小さい場合、第2温度センサ42が異常であると判断する。これにより、高温の水が吐水される恐れがあることをより確実に検知することができる。
また、ステップS307、S308のように、制御部405は、第1温度センサ41により検知された温度の変化によらず、第2温度センサ42により検知された温度の変化が予め定めた第2値(値Tp1)以上の場合、第2温度センサ42が正常であると判断する。これにより、異常の判定に要する時間を短くしたり、制御部405の負担を小さくすることができる。例えば、制御部405は、第1温度センサ41の温度の変化を待たずに、判定を終了することができる。
ステップS317、S318においても、第2温度センサ42により検知された温度が変動すると、すぐに、第2温度センサ42の異常の判定が終了する。これにより、異常の判定に要する時間を短くしたり、制御部405の負担を小さくすることができる。
なお、制御部405は、第2温度センサ42の異常ではなく、第1温度センサ41の異常を検知してもよい。すなわち、例えば、制御部405は、第2温度センサ42により検知された温度が変動しており、かつ、第1温度センサ41により検知された温度が変動していない場合、第1温度センサ41が異常であると判断してもよい。
なお、ノズル473の通水開始後、洗浄の停止など給水制御部431を閉とする場合には、図12に示す異常の判定のフローは、途中であっても中止となる。
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、衛生洗浄装置100が備える各要素の形状、寸法、材質、配置、設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。