JP6865708B2 - 複合レンズの製造装置、製造方法、および製造プログラム - Google Patents

複合レンズの製造装置、製造方法、および製造プログラム Download PDF

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Description

本発明は、基材レンズおよび基材レンズの光学面に備えられた樹脂レンズを有する複合レンズの製造装置、方法、プログラムおよび複合レンズ製造用の金型に関する。
カメラ、ビデオカメラ、あるいはプロジェクタなどの光学レンズとして、基材レンズとその基材レンズの片側または両側の光学面に積層された樹脂層からなる樹脂レンズとを備えた複合レンズが用いられることがある。このような複合レンズを製造する製造装置が種々提案されている(例えば特許文献1〜3参照)。
特許文献1に記載された複合レンズの製造装置は、樹脂レンズ成形用の金型が胴型内で上下動可能に設置されており、基材レンズの球面と金型との距離によって樹脂層(樹脂レンズ)の厚みを規定するように構成されている。
特許文献2に記載された複合レンズの製造方法では、樹脂レンズ成形用の型部材の外側に型部材の外周面と嵌合する内周面を有する支持部材に備えられた支持面と、ガラス基材に備えられている高さ決め面とを当接させることにより樹脂層の厚みを規定している。また、支持部材の位置決め部の内周面にガラス基材の胴付き部外周面を嵌め合せることにより、光軸の位置決めを行っている。
特許文献3に記載された複合レンズの製造装置は、高さ調整ワッシャーを介して結合された上部および下部プレート内に金型が収容され、下部プレートに対する上部プレートの高さを高さ調整ワッシャーにより調整して、樹脂層(樹脂レンズ)の厚さを調整している。
特開平9−24522号公報 特開平5−318500号公報 特開2006−142722号公報
特許文献1の方式では、胴型と金型の位置制御精度次第で樹脂レンズに厚み誤差が生じる恐れがある。同様に、特許文献3の方式では、調整ワッシャーによる位置制御精度次第で樹脂レンズに厚み誤差が生じる恐れがある。
特許文献2の方式では、支持部材の支持面とガラス基材の高さ決め面の面精度並びに支持部材の位置決め部の内周およびガラス基材の胴付部外周の径精度次第で、樹脂レンズの厚み、および樹脂レンズとガラス基材の光軸のずれが生じてしまう恐れがある。
また、特許文献1〜3の方法では、金型と、胴型、支持部材あるいはプレートとが別体とであることから、装着あるいは脱着時に両者間に塵埃が付着してしまう恐れがある。樹脂中への塵埃の混入はレンズの精度低下およびレンズ製造の歩留りの低下につながり好ましくない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、基材レンズ上に樹脂レンズを積層させた複合レンズにおいて、基材レンズと樹脂レンズとの光軸を精度よく一致させ、樹脂レンズの厚みを高精度に制御し、歩留りを向上させることを目的とする。
本発明による複合レンズの製造装置は、
光学面が球面である基材レンズと、基材レンズの光学面に積層された樹脂レンズとを有する複合レンズの製造装置であって、
樹脂レンズの光学面の反転形状を有する転写面と、転写面の周囲に設けられた凸部であって、基材レンズの光学面の一部が突き当てられることにより転写面と基材レンズの前記光学面との間で樹脂レンズの厚みを規定する突き当て部とを備えた複合レンズ製造用の金型と、
金型を保持する金型保持部と、
金型保持部に設置された金型の転写面の光軸に垂直な平面を基準面として検出する第1の検出部と、
金型の突き当て部に基材レンズを載置する基材レンズ載置機構と、
基材レンズの位置を調整して基材レンズの光軸に垂直な平面を第1の検出部で検出された基準面に対して平行にする調整部とを備えた複合レンズの製造装置である。
「垂直」とは、厳密に垂直であることのみならず、例えば±1分、すなわち±1/60度程度のある程度の誤差を持って垂直であることをも含む。
「平行」とは、厳密に平行であることのみならず、例えば±1分、すなわち±1/60度程度のある程度の誤差を持って平行であることをも含む。
本発明の複合レンズの製造装置においては、調整部が、基材レンズの光軸に垂直な平面の基準面に対する傾きを検出する第2の検出部と、第2の検出部により検出された傾きに応じて基材レンズを移動させる移動部とを備えていることが好ましい。
本発明の複合レンズの製造装置においては、第2の検出部が、基材レンズ上に載置された平行平面ミラーに対して光を入反射させて基材レンズの光軸に垂直な面の基準面に対する傾きを検出することが好ましい。
「平行平面ミラー」とは、平行平面基板の一平面にミラーが形成されてなるものをいう。
本発明の複合レンズの製造装置においては、金型が、転写面の光軸に垂直な平面部を有していてもよい。
本発明の複合レンズの製造装置においては、第1の検出部が、金型の突き当て部に載置された平行平面ミラーに対して光を入反射させて金型の転写面の光軸に垂直な平面を検出するものであってもよい。
本発明の複合レンズの製造装置においては、金型が、平面部にミラー面を有し、第1の検出部が、ミラー面に対して光を入反射させて金型の転写面の光軸に垂直な平面を検出するものであってもよい。
本発明の複合レンズの製造装置においては、金型の転写面が非球面であってもよい。
本発明の複合レンズの製造方法は、光学面が球面である基材レンズと、基材レンズの光学面に備えられた樹脂レンズとを有する複合レンズの製造方法であって、
樹脂レンズの光学面の反転形状を有する転写面と、転写面の周囲に設けられた凸部であって、基材レンズの光学面の一部が突き当てられることにより転写面と基材レンズの光学面との間で樹脂レンズの厚みを規定する突き当て部とを備えた複合レンズ製造用の金型を用意し、
金型の転写面の光軸に垂直な平面を基準面として検出し、
金型の転写面に樹脂を供給し、
金型の突き当て部に基材レンズを載置し、
基材レンズの位置を調整して基材レンズの光軸に垂直な平面を基準面に対して平行にして樹脂レンズを成形する複合レンズの製造方法である。
本発明の複合レンズの製造方法は、基材レンズとして、樹脂レンズが備えられる面とは反対の面に、基材レンズの光軸に垂直な平面部を有する基材レンズを用いてもよい。
本発明の複合レンズの製造プログラムは、光学面が球面である基材レンズと、基材レンズの光学面に積層された樹脂レンズとを有する複合レンズの製造方法をコンピュータに実行させる製造プログラムをであって、
樹脂レンズの光学面の反転形状を有する転写面と、転写面の周囲に設けられた凸部であって、基材レンズの光学面の一部が突き当てられることにより転写面と基材レンズの光学面との間で樹脂レンズの厚みを規定する突き当て部とを備えた複合レンズ製造用の金型の転写面の光軸に垂直な平面を基準面として検出する手順と、
金型の転写面に樹脂を供給する手順と、
金型の突き当て部に基材レンズを載置する手順と、
基材レンズの位置を調整して基材レンズの光軸に垂直な平面を基準面に対して平行にする手順とをコンピュータに実行させる複合レンズの製造プログラムである。
本発明の複合レンズ製造用の金型は、光学面が球面である基材レンズと、基材レンズの光学面に積層された樹脂レンズとを有する複合レンズの製造用の金型であって、
樹脂レンズの光学面の反転形状を有する転写面と、転写面の周囲に設けられた凸部であって、基材レンズの光学面の一部が突き当てられることにより転写面と基材レンズの光学面との間で樹脂レンズの厚みを規定する突き当て部とを備えた複合レンズ製造用の金型である。
本発明の複合レンズ製造用の金型は、転写面の光軸に垂直な平面と平行な平面を有していてもよい。
この場合、平面にミラー面を有することが好ましい。
本発明の複合レンズの製造装置および製造方法では、樹脂レンズの光学面の反転形状を有する転写面と、転写面の周囲に設けられた凸部であって、基材レンズの光学面の一部が突き当てられることにより転写面と基材レンズの光学面との間で樹脂レンズの厚みを規定する突き当て部とを備えた複合レンズ製造用の金型を用いる。そのため、樹脂レンズの厚みを容易に一定なものとすることができ、樹脂厚みの製造ばらつきを抑制することができる。また、金型の転写面の光軸に垂直な平面を基準面として検出し、金型の転写面に樹脂を供給し、金型の突き当て部に基材レンズを載置し、基材レンズの位置を調整して基材レンズの光軸に垂直な平面を基準面に対して平行にすることにより、容易に基材レンズの光軸と金型の転写面の光軸とを一致させることができる。従って、樹脂レンズの製造ばらつきを抑制することができ、かつ、軸ズレ調整のためのコストおよび時間を低減させることができ、その結果、複合レンズの製造コストを低減することができる。
本発明の実施形態による複合レンズの製造装置の概略構成図 制御装置の構成を示す概略ブロック図 金型の上面図(a)および一部断面を含む側面図(b) 金型の光軸と基材レンズの光軸との関係を示す図 金型の光軸と基材レンズの光軸との関係を示す図 軸ズレおよび軸倒れを含む複合レンズの断面図 軸ズレおよび軸倒れのない複合レンズの断面図 本発明の実施形態において行われる処理を示すフローチャート 本発明の実施形態において行われる処理を示すフローチャート 本発明の実施形態において行われる処理を示すフローチャート 金型の基準面検出時の状態を示す模式図 レンズ平行調整処理を説明するための模式図 レンズ平行調整処理を説明するための模式図 樹脂レンズの成形を説明するための図 設計変更例の金型110についての傾き測定時の模式図 設計変更例の基材レンズL2についての傾き測定時の模式図 本実施形態の製造装置によって製造した複合レンズにおける樹脂レンズの膜厚ばらつきを示す図 従来の製造装置によって製造した複合レンズにおける樹脂レンズの膜厚ばらつきを示す図
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態による複合レンズの製造装置の概略構成図である。なお、図1においては、一部に断面を示している。
第1の実施形態による複合レンズの製造装置1(以下、単に製造装置1とする。)は、基材レンズLの凸側の光学面LSに樹脂レンズが積層されてなる複合レンズを製造するものである。そして、製造装置1は、光ラジカル重合開始剤および熱ラジカル重合開始剤を含む硬化性樹脂を用いて樹脂層からなる樹脂レンズを形成する。
基材レンズLは、光学面LSが球面である球面レンズである。基材レンズLとしては、上記の硬化性樹脂を硬化させるための光に対する透過性、および硬化性樹脂を硬化させるための照射光または加熱によって光学性能に影響するような変形が生じない安定性を考慮して、ガラスレンズを好適に用いることができる。なお、上記の光透過性および安定性を満足する限りにおいて、基材レンズLとして樹脂性レンズを用いることもできる。基材レンズLとしては、例えば、直径が25mm〜200mm程度のものを用いることができるが、限定されるものではない。
製造装置1は、基材レンズLに樹脂レンズを積層するための複合レンズ製造用の金型10、金型10を保持する金型保持部20、金型10の傾きおよび基材レンズLの傾きを検出する傾き検出部30、基材レンズLを保持する基材レンズ保持部40、基材レンズLを上下方向に移動させる第1の移動部50、金型10を上下方向に移動させる第2の移動部60、並びに傾き検出部30、基材レンズ保持部40、第1の移動部50および第2の移動部60を制御する制御装置70を備える。なお、金型10、金型保持部20、傾き検出部30、基材レンズ保持部40、第1の移動部50および第2の移動部60は、図示しないチャンバ内に収容されていてもよい。
なお、基材レンズ保持部40、第1の移動部50および第2の移動部60により、基材レンズを金型上に載置する基材レンズ載置機構が構成されている。
また、傾き検出部30は金型保持部20に設置された金型10の転写面MSの光軸MAに垂直な平面を基準面MPとして検出する第1の検出部であり、基材レンズLの光軸LAに垂直な平面の基準面MPに対する傾きを検出する第2の検出部である。
また、製造装置1は、硬化性樹脂を供給する樹脂供給部、硬化性樹脂に光を照射する光照射部、および硬化性樹脂を加熱する加熱部を備えるが、説明を簡単なものとするために、図1においてはこれらを省略している。なお、図1において、紙面の左右方向がX方向、紙面に直交する方向がY方向、紙面の上下方向をZ方向とする。なお、ここでは、XY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。
金型10は、形成する樹脂レンズの光学面の反転形状を有する転写面MSと、転写面MSの周囲に設けられた凸部12とを備えている。また、図1において、金型10の転写面MS付近は一部断面図となっている。金型10の詳細については後述する。
金型保持部20は、樹脂レンズ成形時に金型保持部20が載置される板状部材であり、金型保持部20は第1の移動部50により鉛直上下に移動可能とされている。
傾き検出部30は、例えば、レーザ光を測定光として対象面に入射させ、その反射光を受光して対象面の傾きを検出するものである。傾き検出部30としては、例えばオートコリメータが好適である。傾き検出部30は、測定光の光軸が略鉛直方向(すなわちZ方向)に一致するように調整されて製造装置1に設置されている。
なお、本製造装置1には、平行平面ミラー35および平行平面ミラー35を金型10上および基材レンズL上に載置するミラー載置機構38が備えられている。ミラー載置機構38は、平行平面ミラー35を把持自在な把持部を有し、平行平面ミラー35を把持した状態で金型10上あるいは、基材レンズL上に移動させ、平行平面金型10あるいは基材レンズL上に載置して把持を解除する。傾き検出部30は、平行平面ミラー35に対してレーザ光を入射させ、その反射光の光軸傾きを検出することにより、平行平面ミラーの傾き、すなわち、金型10あるいは基材レンズLの傾きを検出する。ミラー載置機構38は制御装置70により制御される。
本実施形態の製造装置1は平行平面ミラー35およびミラー載置機構38を備えるが、それらは製造装置に備えられていなくてもよく、平行平面ミラー35を操作者が手動で金型あるいは基材レンズ上に載置するようにしてもよい。
基材レンズ保持部40は、ベースプレート41および基材レンズLの保持枠42を備える。
ベースプレート41は水平に配置されており、その中央部には開口41aが形成されている。なお、図1において、ベースプレート41の開口41a付近は一部断面図となっている。ここで、開口41aの直径は、基材レンズLおよび金型10の直径よりも大きい。
保持枠42は、例えば、開口41aの縁に沿って間隔をあけて開口41aの周囲の3箇所に配置されており、公知の駆動機構により基材レンズLの縁部を周囲三方から挟持する。保持枠42により挟持された基材レンズLは、光学面LSを下方に向けて保持される。光学面LSは、開口11aを通して露呈する。なお、保持枠42は、基材レンズLを金型10上に載置した後には、基材レンズLの金型に対して平行となるように調整する際の移動部として機能する。保持枠42は、駆動部45により駆動されて基材レンズLの保持および位置調整を行う。駆動部45は制御装置70により制御される。
基材レンズ保持部40は、第2の移動部60により鉛直上下および水平方向に移動可能とされている。
なお、第1の移動部50および第2の移動部60としては、例えばボールネジおよびパルスモータによる機構等、公知の任意の機構を用いることができる。
制御装置70は、CPU(Central Processing Unit)、半導体メモリおよびハードディスク等を備えたコンピュータから構成される。そして、ハードディスクに本発明の製造プログラムがインストールされており、製造プログラムにより複合レンズの製造方法が実行される。
図2は制御装置の構成を示す概略ブロック図である。図2に示すように、制御装置70は、基準設定部71およびレンズ位置調整処理部72を備える。
基準設定部71は、傾き検出部30に対して指示を行って、金型10の転写面MSの光軸MAに垂直な平面MPを基準面として検出する。ここでは、傾き検出部30により平面MPの水平からの傾きを検出し、平面MPを基準面(以下において、基準面MPともいう。)として検出する。
レンズ位置調整処理部72は、傾き検出部30に対して指示を行って、基材レンズLの光軸に垂直な平面(以下において基材レンズLの平面LPという。)の、基準面MPからの傾きを検出する。そして、レンズ位置調整処理部72は、さらに保持枠42に対して支持を行って、検出された傾きに応じて、基材レンズLの平面LPが基準面MPと平行になるように基材レンズLを移動させる。
なお、基準面MP、基材レンズLの平面LPは、いずれも実体のある面ではなく、仮想的な面である。本明細書において「基材レンズを金型に平行にする」とは、基材レンズの平面LPを基準面MPと平行にすることを意味する。
ここで、金型10の詳細について説明する。図3に金型10の上面図(a)および一部断面とした側面図(b)を示す。なお、図3の(b)には、金型10上に基材レンズLが設置された状態を示している。
金型10は、円柱状の胴部14の一端(ここでは、上端)に転写面MSが形成されており、転写面MSの周囲に凸部12を備えている。ここで、転写面MSは樹脂レンズの光学面の光線有効領域EAに対応する領域とし、凸部12はこの転写面MSに対して凸となっている部分である。凸部12は転写面MSに対して立設された凸部に限らず、転写面MSに連続的に勾配が大きくなるように変化して形成された凸部であってもよい。
図3に示すように、金型10において、凸部12は転写面MSを囲むように円環状に設けられており、その内周の角部12Cが基材レンズLの光学面LSの一部LSPが突き当てられる突き当て部を構成している。なお、この突き当て部である角部12C(以下において、突き当て部12Cともいう。)同士を結ぶ直線は1つの平面内に位置し、その平面は、転写面MSの光軸MAに垂直である。すなわち、金型10において、突き当て部12Cは、平行平板が載置された場合に、この平行平板の平面が転写面MSの光軸MAに垂直となるように形成されている。
本例において、凸部12は転写面MSの円周に沿った円環状に設けられているが、金型10は、円環状の凸部に代えて、図3の(a)中において破線で示すように、孤立した複数の凸部12Aを備えていてもよい。
基材レンズLの光学面LSは突き当て部12Cで規制されて転写面MSと光学面LSとの間は予め定められた間隔で離隔される。この転写面MSと光学面LSとの間隔が樹脂レンズRLの厚みとなる。このように、金型10において突き当て部12Cは、基材レンズLの光学面LSの一部LSPが突き当てられることにより転写面MSと基材レンズLの光学面LSとの間で樹脂レンズLの厚みを規定するものとして機能する。なお、基材レンズLの光学面LSの突き当て部12Cに突き当てられる部分LSPは複合レンズにおいて、非光線有効領域となる周縁部の一部である。
このように、金型10が、転写面MSと基材レンズLの光学面LSとの間で樹脂レンズの厚みを規定する突き当て部12Cを備えているので、所定の厚みの樹脂レンズを精度よく得ることができる。したがって、従来の胴型中で金型を移動させ、胴型と金型の位置制御によって樹脂レンズの厚みを規定する場合と比較して、胴型を備えず、金型のみで厚み規定を可能とした本金型10を用いれば容易に樹脂レンズの厚み誤差を抑制することができる。また、胴型と金型とが別部材である場合には、両者の装着、脱着時に塵埃が生じる恐れがあるが、一体型であるので、塵埃の発生を抑制することができる。
また、この金型10を用いることにより、容易に、転写面MSの光軸MAと、基材レンズLの光軸RAとが一致するように基材レンズLを金型10上に設置することができる。この原理について説明する。なお、金型10の転写面MSの光軸MAとは、成形される樹脂レンズRLの光軸RAと一致する軸である。従って、金型10の転写面MSの光軸MAと基材レンズLの光軸LAとを一致させることは、すなわち、基材レンズLの光軸LAと樹脂レンズRLの光軸RAと一致させることと同義である。
図4は金型10の光軸MAと基材レンズLの光軸LAとが傾いた状態を示す図であり、図5は金型10の光軸MAと基材レンズLの光軸LAとが一致した状態を示す図である。
図4、図5に示されるように、基材レンズLは、その球面からなる光学面LSの一部が突き当て部12Cに突き当てられた状態で金型10上に設置される。図4に示すように、基材レンズLの光軸LAが、金型の転写面の光軸MAに対して傾きを持った状態で基材レンズLが金型上に設置された場合、当然ながら、基材レンズLの光軸LAに垂直な平面LPは光軸MAに垂直な平面MPに対して傾きを有する。そして、この状態で硬化性樹脂を硬化させると、図6に示すように、成形品としては、基材レンズと樹脂レンズとの間で軸ズレが生じ、同時に軸倒れが生じた複合レンズとなってしまう。ここで、軸倒れとは光軸LAと光軸LMとが平行でなく、傾きを有していることをいう。ここで、軸ズレとは光軸LAと光軸LMとが平行であった場合でも生じ得る軸の位置ズレである。
一方、図5に示すように、基材レンズLの光軸LAが光軸MAに対して、傾きがない状態であれば、光軸中心位置のズレも生じない。金型の突き当て部12Cに突き当てられる基材レンズLの光学面LSが球面であるので、光軸LAと光軸MAとの傾きを一致させれば軸ズレも同時に解消することができる。この状態で硬化性樹脂を硬化させると、図7に示すように、成形品として、基材レンズLと複合レンズとの間で軸ズレもなく、軸倒れもない複合レンズを得ることができる。
本発明の実施形態のように金型10は突き当て部12Cを有し、基材レンズLの球面からなる光学面LSの一部を受けるように構成されている。したがって、軸ズレと軸倒れとをそれぞれに調整する必要がなく、軸倒れの補正を行うのみで軸ズレも補正でき、容易に転写面MSの光軸MAと、基材レンズLの光軸RAとを一致させることができる。
以下、複合レンズ製造工程中における、金型の転写面の光軸と基材レンズLの光軸とを一致させる処理について詳細に説明する。図8は第1の実施形態において行われる処理を示すフローチャートである。
まず、操作者は所定の金型10を金型保持部20に載置する(ステップST1)。そして、操作者による操作開始の指示が行われると、まず、基準設定部71は、傾き検出部30により金型10の転写面MSの光軸MAに垂直な平面MPの水平からの傾きを検出し、金型10の転写面MSの光軸MAに垂直な平面MPを基準面(以下において、基準面MPともいう。)として検出する(ステップST2)。
次いで、制御装置70は、図示しない樹脂供給部を駆動して、金型の転写面に所定量の硬化性樹脂を供給する(ステップST3)。
その後、レンズ位置調整処理部72は、第1の移動部50および第2の移動部60を駆動して基材レンズLと金型10とを相対的に移動させて金型10上に基材レンズLを載置する(ステップST4)。この際、金型10および基材レンズLのいずれか一方のみを移動させてもよく、両方を移動させてもよい。基材レンズLを金型10上に載置した際、保持枠42による基材レンズLの挟持を一旦解除する。ここで挟持を解除するとは、保持枠42を基材レンズLに対して非接触状態にすることのみならず、基材レンズLに対して応力がかからない状態で基材レンズLに接触させた状態を含む。
次に、レンズ位置調整処理部72により、傾き検出部30を駆動させ、基材レンズLの光軸に垂直な平面LPの基準面MPに対する傾きを検出し、検出された傾きに応じて保持枠42に基材レンズLを移動させて、基材レンズLの光軸LAに垂直な平面LPを基準面MPに対して平行にする(ステップST5)。
上記工程における基準面設定の詳細について説明する。図9は基準面設定のステップST2における具体的な処理工程を示すフローチャートであり、図10は基準面検出時の状態を示す模式図である。
図10に示すように、金型保持部20に設置された金型10上に平行平面ミラー35を載置する(ステップST21)。このとき、金型10の突き当て部12Cを含む凸部12に平行平面ミラー35を載置する。平行平面ミラー35のミラー面35aは、金型10の光軸MAに垂直な平面MPである。
次に、傾き検出部30から平行平面ミラー35のミラー面35aに測定光101を入射させ、ミラー35で反射された反射光102の光軸の測定光光軸からの傾きθを検出する(ステップST22)。そして、この傾きθを基準値として設定する(ステップST23)。反射光光軸の傾きθを検出することは平行平面ミラー35のミラー面35aの測定光光軸に垂直な面からの傾きθを検出することと等価である(図10参照)。そして、反射光の傾きを基準値として設定することは、平面MPを基準面として設定することに相当する。
なお、この基準面設定の処理においては、反射光102の光軸の傾きを測定光101の光軸に一致するように、金型10の傾きを調整して基準面を設定してもよい。
次に、レンズ平行調整処理の詳細について説明する。図11はレンズ平行調整処理のステップST5における具体的な処理工程を示すフローチャートであり、図12および図13は、レンズ平行調整処理を説明するための模式図である。
図12に示すように、金型10上に載置された基材レンズL上に平行平面ミラー35を載置する(ステップST51)。そして、傾き検出部30から平行平面ミラー35のミラー面35aに測定光101を入射して、ミラー35で反射された反射光102の光軸の測定光光軸からの傾きθを検出する(ステップST52)。この傾きθと先に検出した傾きθとの差が、基材レンズLの平面LPの基準面MPからの傾きに等しい。
そして、レンズ位置調整処理部72においては、平面LPと基準面MPとが平行であるか否かを判定する。図13のように、θ=θであるとき、平面LPと基準面MPは平行であり、このように両者が平行である場合(ステップST53:YES)、調整処理は終了する。他方、両者が平行でない場合(ステップST53:NO)、レンズ位置調整処理部72は、両者間の傾きに応じて基材レンズLを移動すべき距離および方向を求め、保持枠42の駆動部45に指示を行って基材レンズLの移動調整を行う(ステップST54)。その後、両者が平行となるまで、ステップST52〜ST54の処理を繰り返す。
以上の処理により、基材レンズLの光軸LAと、金型10の転写面MSの光軸MAを一致させることができる。
なお、このように光軸を一致させた状態で、金型の転写面と基材レンズの光学面との間で展延された硬化性樹脂を硬化させる。
図14は樹脂レンズの成形を説明するための図である。
基準面の設定がなされた金型10の転写面MSに、硬化性樹脂Rを供給する(図14の(a))。その後、基材レンズLを金型10上に載置すると、転写面MSに供給された硬化性樹脂Rが転写面MSと光学面LSとの間に展延される(図14の(b))。ここで、硬化性樹脂Rを硬化させる前に、基材レンズLの光軸と金型10の転写面との光軸を一致させる上記処理を行う。その後、図14の(c)に示すように、不図示の光源から硬化性樹脂Rに基材レンズLを透過した紫外線UVを照射して、硬化性樹脂Rを半硬化させる。さらに、図14の(d)に示すように、半硬化状態にある硬化性樹脂Rを、転写面MSと第1光学面LSとの間で加圧した状態で、不図示の加熱手段により加熱して完全に硬化させる。その後、離型させることにより、図14(e)に示すような、基材レンズLの光学面LSに樹脂レンズRLが積層形成された複合レンズCLが作製される。
なお、基材レンズLを金型10上に載置する前に、基材レンズLの光学面LSには、カップリング剤を塗布しておくことが好ましい。
このように、本実施形態においては、基材レンズLを金型10と平行にすれば、基材レンズLの光軸と金型10の転写面の光軸とを一致させることができ、かつ軸倒れも同時に解消させることができる。転写面の周囲に設けられた、転写面よりも凸に形成された突き当て部を備えた金型を用いているので、基材レンズの球面を突き当て部に突き当てて、基材レンズと金型とを互いに平行にすれば、基材レンズの光軸と金型の転写面の光軸とを一致させることができる。従って、容易に、基材レンズの光軸と金型の転写面の光軸とを一致させることができる。また、同時に、基材の光学面と金型の転写面との間の距離が規定されるため、樹脂レンズの厚みを高い精度で成形することができる。これにより、複合レンズの製造において樹脂レンズの厚み、軸ズレ調整のためのコストおよび時間を低減させることができ、その結果、複合レンズの製造コストを低減することができる。
なお、基材レンズ保持部40は、基材レンズLの光学面LSを金型の転写面に向けて、かつ光学面LSを露呈させて基材レンズLを保持可能であればよい。本実施形態においては、基材レンズLの縁部を外周側から押圧して挟持するものであるが基材レンズLを吸着して保持するものであってもよい。基材レンズ保持部40が基材レンズLを吸着して保持するものである場合、基材レンズ保持部40とは別途に基材レンズの位置調整用の基材レンズ移動部を備えればよい。
なお、上記実施形態においては、金型あるいは基材レンズの傾きを検出する際に、平行平板ミラーを用いたが、平行平板ミラーを用いず、金型の一部、基材レンズの一部に設けられたミラー面を用いてもよい。
図15は、設計変更例の金型110についての傾き測定時の模式図を示す。
金型110は、凸部12は転写面MSの光軸MAに対して垂直に交わる平面部12Sを有しており、この金型110の平面部12Sに、ミラー面16備えている。このミラー面16備えた金型110を用いれば、平行平板ミラーを用いることなく、そのミラー面16利用して金型110の傾きを検出することができる。
図16は、設計変更例の基材レンズL2についての傾き測定時の模式図を示す。
基材レンズL2は、樹脂レンズが積層される光学面MSとは反対の面に、基材レンズL2の光軸に垂直な平面部LS2を有しており、この基材レンズL2の平面部LS2にミラー面18を有している。このミラー面18を備えた基材レンズL2を用いれば、平行平板ミラーを用いることなく、そのミラー面18を利用して基材レンズL2の傾きを検出することができる。
以下、本発明の実施形態の製造装置を用いて作製した複合レンズについて膜厚ばらつきについて検証した結果を説明する。
図3に示した金型を用い、上記実施形態において説明した製造装置および方法により複合レンズを作製した。複合レンズにおける樹脂レンズの中心厚みの設計値を290μmとした。基材レンズとして曲率113.22mmの球面ガラスレンズを用いた。
また、比較のため、従来の胴型に対して金型をスライドさせることにより、膜厚を制御する製造装置を用いて複合レンズを作製した。基材レンズおよび樹脂レンズの設計値は上記と同一とした。
図17は、本実施形態の製造装置で作製した複合レンズのn数、縦軸に設計値290μmからの差を示すグラフである。図18は、従来の製造装置で作製した複合レンズのn数、縦軸に樹脂レンズの中心厚みを示すグラフである。なお、従来の製造装置としては、すでに設計値290μmに対して調整済みの装置を用いているため、設計値を挟んでばらつきが生じている。一方、本実施形態の製造装置では、設計値に対する最終調整前であるために、ばらつきの中心が設計値からずれている。実際の製造に当たっては、ばらつきの中心付近に設計値がくるように金型等の調整がなされるので厚みの成形精度はばらつきの大きさで評価することができる。
図18に示すように、従来の製造装置で作製した複合レンズは、厚みばらつきが6μm程度生じていた。一方、図17に示すように、本実施形態の製造装置で作製した複合レンズは厚みばらつきが2μm以下に抑えられており、厚みの成形精度が大幅に改善したことが明らかである。
1 製造装置
10、110 金型
12、12A 金型の凸部
12C 突き当て部(凸部の角部)
12S 平面部
14 胴部
16 ミラー面
18 ミラー面
20 金型保持部
30 傾き検出部
35 平行平板ミラー
35a ミラー面
38 ミラー載置機構
40 基材レンズ保持部
41 ベースプレート
41a 開口
42 保持枠
45 駆動部
50 第1の移動部
60 第2の移動部
70 制御装置
71 基準設定部
72 レンズ位置調整処理部
101 測定光
102 反射光
CL 複合レンズ
L、L2 基材レンズ
LA 基材レンズの光軸
LS 基材レンズの光学面
LS2 基材レンズの平面部
MA 金型の転写面の光軸
MS 金型の転写面
R 硬化性樹脂
RA 樹脂レンズの光軸
RL 樹脂レンズ

Claims (10)

  1. 光学面が球面である基材レンズと、該基材レンズの前記光学面に積層された樹脂レンズとを有する複合レンズの製造装置であって、
    前記樹脂レンズの光学面の反転形状を有する転写面と、該転写面の周囲に設けられた凸部であって、前記基材レンズの前記光学面の一部が突き当てられることにより前記転写面と前記基材レンズの前記光学面との間で前記樹脂レンズの厚みを規定する突き当て部とを備えた複合レンズ製造用の金型と、
    前記金型を保持する金型保持部と、
    前記金型保持部に設置された前記金型の前記転写面の光軸に垂直な平面を基準面として検出する第1の検出部と、
    前記金型の前記突き当て部に前記基材レンズを載置する基材レンズ載置機構と、
    前記基材レンズの位置を調整して該基材レンズの光軸に垂直な平面を前記第1の検出部で検出された前記基準面に対して平行にする調整部とを備えた複合レンズの製造装置。
  2. 前記調整部が、前記基材レンズの光軸に垂直な平面の前記基準面に対する傾きを検出する第2の検出部と、該第2の検出部により検出された傾きに応じて前記基材レンズを移動させる移動部とを備えた請求項1に記載の複合レンズの製造装置。
  3. 前記第2の検出部が、前記基材レンズ上に載置された平行平面ミラーに対して光を入反射させて前記基材レンズの光軸に垂直な面の前記基準面に対する傾きを検出する請求項2に記載の複合レンズの製造装置。
  4. 前記金型が、前記転写面の光軸に垂直な平面部を有する請求項1から3のいずれか1項に記載の複合レンズの製造装置。
  5. 前記第1の検出部が、前記金型の前記突き当て部に載置された平行平面ミラーに対して光を入反射させて前記金型の前記転写面の光軸に垂直な平面を検出する請求項1から4のいずれか1項に記載の複合レンズの製造装置。
  6. 前記金型が、前記平面部にミラー面を有し、
    前記第1の検出部が、前記ミラー面に対して光を入反射させて前記金型の前記転写面の光軸に垂直な平面を検出する請求項4に記載の複合レンズの製造装置。
  7. 前記金型の転写面が非球面である請求項1から6のいずれか1項に記載の複合レンズの製造装置。
  8. 光学面が球面である基材レンズと、該基材レンズの前記光学面に備えられた樹脂レンズとを有する複合レンズの製造方法であって、
    前記樹脂レンズの光学面の反転形状を有する転写面と、該転写面の周囲に設けられた凸部であって、前記基材レンズの前記光学面の一部が突き当てられることにより前記転写面と前記基材レンズの前記光学面との間で前記樹脂レンズの厚みを規定する突き当て部とを備えた複合レンズ製造用の金型を用意し、
    前記金型の前記転写面の光軸に垂直な平面を基準面として検出し、
    前記金型の前記転写面に樹脂を供給し、
    前記金型の前記突き当て部に前記基材レンズを載置し、
    前記基材レンズの位置を調整して該基材レンズの光軸に垂直な平面を前記基準面に対して平行にして樹脂レンズを成形する複合レンズの製造方法。
  9. 前記基材レンズとして、前記樹脂レンズが積層される面とは反対の面に、該基材レンズの光軸に垂直な平面部を有する基材レンズを用いる請求項8に記載の複合レンズの製造方法。
  10. 光学面が球面である基材レンズと、該基材レンズの前記光学面に積層された樹脂レンズとを有する複合レンズの製造方法をコンピュータに実行させる製造プログラムをであって、
    前記樹脂レンズの光学面の反転形状を有する転写面と、該転写面の周囲に設けられた凸部であって、前記基材レンズの前記光学面の一部が突き当てられることにより前記転写面と前記基材レンズの前記光学面との間で前記樹脂レンズの厚みを規定する突き当て部とを備えた複合レンズ製造用の金型の前記転写面の光軸に垂直な平面を基準面として検出する手順と、
    前記金型の前記転写面に樹脂を供給する手順と、
    前記金型の前記突き当て部に前記基材レンズを載置する手順と、
    前記基材レンズの位置を調整して該基材レンズの光軸に垂直な平面を前記基準面に対して平行にする手順とをコンピュータに実行させる複合レンズの製造プログラム。
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