本開示の一形態に係る細胞培養システムは、細胞を培養液中で培養するための培養槽を有する培養ユニットと、前記培養ユニットにおける細胞の培養を自動制御する自動細胞培養装置と、前記培養ユニットの輸送時に前記培養ユニットにおける細胞の培養を制御する輸送用細胞培養装置と、を有する細胞培養システムであって、前記培養ユニットは、水平断面積が上方に向かって増加する形状である前記培養槽と、前記培養槽内で前記培養液が上昇流を形成するように前記培養液を循環させるための循環経路と、を有し、前記自動細胞培養装置は、前記培養ユニットを収容可能な第1収容部と、前記第1収容部に収容された前記培養ユニットの前記培養槽に対して前記培養液を供給する第1培養液供給部と、前記培養槽内の細胞を回収する第1細胞回収部と、を含み、前記第1収容部に収容された前記培養ユニットの前記培養槽における培養環境を調整する第1培養環境調整部と、前記培養ユニットの前記循環経路に沿った前記培養液の循環を制御すると共に、前記第1培養環境調整部による前記培養環境の調整を制御する第1制御部と、を有し、前記輸送用細胞培養装置は、前記培養ユニットを収容可能な第2収容部と、前記第2収容部に収容された前記培養ユニットの前記循環経路に沿った前記培養液の循環を制御する第2制御部と、を有する。
また、本開示の一形態に係る培養ユニットは、上記の細胞培養システムに含まれる培養ユニットであって、水平断面積が上方に向かって増加する形状である前記培養槽と、前記培養槽内で前記培養液が上昇流を形成するように前記培養液を循環させるための循環経路と、を有し、前記自動細胞培養装置及び前記輸送用細胞培養装置に対して取り外し可能である。
また、本開示の一形態に係る自動細胞培養装置は、細胞を培養液中で培養するための培養槽を有する培養ユニットと、前記培養ユニットにおける細胞の培養を自動制御する自動細胞培養装置と、前記培養ユニットの輸送時に前記培養ユニットにおける細胞の培養を制御する輸送用細胞培養装置と、を有する細胞培養システムに含まれる自動細胞培養装置であって、水平断面積が上方に向かって増加する形状である前記培養槽と、前記培養槽内で前記培養液が上昇流を形成するように前記培養液を循環させるための循環経路と、を有する前記培養ユニットを収容可能な第1収容部と、前記第1収容部に収容された前記培養ユニットの前記培養槽に対して前記培養液を供給する第1培養液供給部と、前記培養槽内の細胞を回収する第1細胞回収部と、を含み、前記第1収容部に収容された前記培養ユニットの前記培養槽における培養環境を調整する第1培養環境調整部と、前記第1収容部に収容された前記培養ユニットの前記循環経路に沿った前記培養液の循環を制御すると共に、前記第1培養環境調整部による前記培養環境の調整を制御する第1制御部と、を有する。
また、本開示の一形態に係る輸送用細胞培養装置は、細胞を培養液中で培養するための培養槽を有する培養ユニットと、前記培養ユニットにおける細胞の培養を自動制御する自動細胞培養装置と、前記培養ユニットの輸送時に前記培養ユニットにおける細胞の培養を制御する輸送用細胞培養装置と、を有する細胞培養システムに含まれる輸送用細胞培養装置であって、水平断面積が上方に向かって増加する形状である前記培養槽と、前記培養槽内で前記培養液が上昇流を形成するように前記培養液を循環させるための循環経路と、を有する前記培養ユニットを収容可能な第2収容部と、前記第2収容部に収容された前記培養ユニットの前記循環経路に沿った前記培養液の循環を制御する第2制御部と、を有する。
上記の細胞培養システム及び当該細胞培養システムに含まれる培養ユニット、自動細胞培養装置及び輸送用細胞培養装置によれば、培養ユニットが自動細胞培養装置の第1収容部に収容された状態では、第1制御部によって培養ユニットにおける循環経路の培養液の循環が制御されることで、培養槽内で培養液の上昇流が形成された状態で、細胞の培養が行われる。このとき、第1培養環境調整部の第1培養液供給部から培養液が供給されると共に第1細胞回収部により培養された細胞が回収されることで、細胞培養を自動的に行うことが可能となる。一方、培養ユニットが輸送用細胞培養装置の第2収容部に収容された状態では、第2制御部によって培養ユニットにおける循環経路の培養液の循環が制御されることで、培養槽内で培養液の上昇流が形成された状態で、細胞の培養が行われる。このため、培養ユニットを輸送用細胞培養装置に取り付けた状態でも、培養液の循環が制御されて細胞の培養が継続される。したがって、自動細胞培養装置において細胞培養を効率良く実施することが可能であると共に、運搬時には輸送用細胞培養装置によって品質の劣化を抑制しつつ運搬することが可能となる。
ここで、前記培養ユニットは、個別に付与された当該培養ユニットを特定するための識別情報を有し、前記識別情報に対応付けられて、当該培養ユニットにおける細胞の培養に係る情報が記憶される記憶部をさらに有し、前記自動細胞培養装置の前記第1制御部及び前記輸送用細胞培養装置の前記第2制御部は、それぞれ、前記識別情報に基づいて前記培養ユニットにおける細胞培養に係る情報を前記記憶部から取得し、当該情報に基づいて、前記培養ユニットに係る制御を行う態様とすることができる。
上記の構成によれば、培養ユニットを特定するための識別情報が個別に付与されると共に、識別情報に対応付けて細胞培養に係る情報が記憶部に記憶される。したがって、自動細胞培養装置の第1制御部及び輸送用細胞培養装置の第2制御部では、識別情報を利用して培養ユニットにおける細胞の培養に係る情報を記憶部から取得可能となり、当該情報を利用した制御が可能となるため、培養ユニットに係る細胞培養に係る制御を、培養ユニット毎により適切に行うことが可能となる。
また、上記の培養ユニットは、培養槽の振動を抑制するための振動抑制部をさらに有する態様とすることができる。
上記のように培養ユニットの培養槽の振動を抑制するための振動抑制部を有する場合、培養ユニットを輸送用細胞培養装置に取り付けて運搬する際の振動が培養槽における細胞培養に影響を与えることを防ぐことができる。
また、上記の自動細胞培養装置は、前記第1収容部に収容された前記培養ユニットの前記培養槽内の前記細胞の分布を検出する第1細胞分布検出部をさらに有し、前記第1制御部は、前記第1細胞分布検出部により検出された前記培養槽内の細胞の分布に基づいて、前記第1培養液供給部による前記培養槽へ供給する前記培養液の単位時間あたりの供給量を制御する態様とすることができる。
上記のように、第1細胞分布検出部により検出された培養槽内の細胞の分布に基づいて、培養槽へ供給する培養液の単位時間あたりの供給量を制御する構成とすることで、培養槽内の細胞の分布が想定された状況から変化した場合、これを補正する方向に培養液の単位時間あたりの供給量を自動的に制御することが可能となる。したがって、培養槽内での培養液の流れを安定させながら、細胞の成長に応じた培養液の供給量の制御をより好適に行うことができる。
また、上記の自動細胞培養装置は、前記第1収容部に収容された前記培養ユニットの前記培養槽内の前記培養環境を検出する第1培養環境検出部をさらに有し、前記第1制御部は、前記第1培養環境検出部により検出された前記培養槽内の培養環境に基づいて、前記第1培養環境調整部による前記培養環境の調整を制御する態様とすることができる。
上記のように、第1培養環境検出部により検出された培養槽内の培養環境に基づいて、培養槽へ供給する培養液の調整を行う第1培養環境調整部における調整を制御する構成とすることで、培養槽内での培養環境をよくするための調整を自動的に制御することが可能となる。したがって、培養槽内での細胞の成長に応じて培養環境を好適に維持することができる。
また、上記の輸送用細胞培養装置は、前記第2収容部に収容された前記培養ユニットの前記培養槽に対して前記培養液を供給する第2培養液供給部と、前記培養槽内の細胞を回収する第2細胞回収部と、を含む第2培養環境調整部をさらに有し、前記第2制御部は、前記第2培養環境調整部を制御する態様とすることができる。
上記のように、輸送用細胞培養装置が第2培養液供給部と第2細胞回収部とを含む第2培養環境調整部を有している場合、輸送用細胞培養装置を用いて培養槽を含む培養ユニットの輸送が長期化した場合であっても、培養期間の長期化に伴う培養液の劣化を防ぐことが可能となると共に、培養された細胞の回収等を好適に行うことが可能となる。したがって、輸送用細胞培養装置を利用した培養ユニットの運搬を好適に行うことができる。
また、上記の輸送用細胞培養装置は、前記第2収容部に収容された前記培養ユニットの前記培養槽内の前記細胞の分布を検出する第2細胞分布検出部をさらに有し、前記第2制御部は、前記第2細胞分布検出部により検出された前記培養槽内の細胞の分布に基づいて、前記第2培養液供給部による前記培養槽へ供給する前記培養液の単位時間あたりの供給量を制御する態様とすることができる。
上記のように、第1細胞分布検出部により検出された培養槽内の細胞の分布に基づいて、培養槽へ供給する培養液の単位時間あたりの供給量を制御する構成とすることで、培養槽内の細胞の分布が想定された状況から変化した場合、これを補正する方向に培養液の単位時間あたりの供給量を自動的に制御することが可能となる。したがって、培養槽内での培養液の流れを安定させながら、細胞の成長に応じた培養液の供給量の制御をより好適に行うことができる。
また、上記の輸送用細胞培養装置は、前記第2収容部に収容された前記培養ユニットの前記培養槽内の前記培養環境を検出する第2培養環境検出部をさらに有し、前記第2制御部は、前記第2培養環境検出部により検出された前記培養槽内の培養環境に基づいて、前記第2培養環境調整部による前記培養環境の調整を制御する態様とすることができる。
上記のように、第2培養環境検出部により検出された培養槽内の培養環境に基づいて、培養槽へ供給する培養液の調整を行う第2培養環境調整部における調整を制御する構成とすることで、培養槽内での培養環境をよくするための調整を自動的に制御することが可能となる。したがって、培養槽内での細胞の成長に応じて培養環境を好適に維持することができる。
以下、添付図面を参照して、本開示を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1〜図5は、本開示の一形態に係る細胞培養システムを構成する各装置の概略構成を説明する図である。以下、細胞培養システムの概略構成を説明した後に、細胞培養システムに含まれる自動細胞培養装置、培養ユニット、及び、輸送用細胞培養装置について説明する。
(細胞培養システムの概略構成)
本実施形態に係る細胞培養システム1は、図1に示す培養ユニット10と、培養ユニットにおける細胞の培養を自動制御する自動細胞培養装置100と、図2に示す培養ユニットの輸送時に前記培養ユニットにおける細胞の培養を制御する輸送用細胞培養装置200とを含んで構成される。また、図3は、自動細胞培養装置100及び培養ユニット10の詳細な構成を説明する図であり、図4は、培養槽について説明する図である。また、図5は、輸送用細胞培養装置200の詳細な構成を説明する図である。
図1に示す自動細胞培養装置100は、1以上の培養ユニット10を収容するための1以上の収容部110(第1収容部)と、収容部110に取り付けられた1以上の培養ユニット10それぞれに対して接続される自動培養用タンクユニット120(第1培養環境調整部)と、制御部130(第1制御部)と、を有する。培養ユニット10の詳細については後述するが、培養ユニット10は、細胞を培養するための1つの培養槽と、培養槽内を循環する培養液を貯留する貯留槽と、を含んで構成される。培養槽は、水平方向での断面積が上方に向かって大きくなる形状を有していて、培養液による上昇流を内部で形成することで、細胞を培養槽内の所定領域に滞留させた状態で培養を行うことを特徴とする。
培養槽を含む培養ユニット10は、自動細胞培養装置100から取り外し可能なユニットとして構成されていて、取り外した培養ユニット10を図2に示す輸送用細胞培養装置200に対して取り付けることで培養槽内での細胞の培養を継続した状態での培養槽単位での運搬を可能としている。
図1に示す自動細胞培養装置100では、3つの収容部110それぞれに対して培養ユニット10が収容された例を示している。培養ユニット10には、それぞれ識別タグTが取り付けられている。識別タグTは、例えば、ICタグもしくはQRコード(登録商標)等により実現される。培養ユニット10は、上述したように、自動細胞培養装置100及び輸送用細胞培養装置200に対して取り外し可能である。したがって、識別タグT1には、培養ユニット10を特定する情報と共に、培養ユニット10が培養している細胞に関連する情報が対応付けられる。
自動細胞培養装置100の自動培養用タンクユニット120とは、自動細胞培養装置100において、培養ユニット10の培養槽での細胞の培養を行うためのタンク・ポンプ類を指している。詳細は後述するが、例えば、培養槽に対して供給する培養液に係るタンク、培養液に対して添加する薬剤に係るタンク、及び、これらを培養槽に対して供給するためのポンプ等が自動培養用タンクユニット120に含まれる。自動培養用タンクユニット120に含まれる各タンク等と培養ユニット10とはライン(配管又は管路)等により接続される。
制御部130は、収容部110に収容された培養ユニット10に含まれる各部、及び、自動培養用タンクユニット120に含まれる各部を制御し、自動細胞培養装置100に取り付けられた培養ユニット10に係る自動細胞培養の制御を行う機能を有する。詳細については、後述する。
図2に示す輸送用細胞培養装置200は、1つの培養ユニット10を収容するための収容部210(第2収容部)と、収容部210に取り付けられた培養ユニット10に対して接続される輸送時用タンクユニット220(第2培養環境調整部)と、制御部230(第2制御部)と、を有する。
輸送用細胞培養装置200の輸送時用タンクユニット220とは、輸送用細胞培養装置200において、培養ユニット10の培養槽での細胞の培養を行うためのタンク・ポンプ類を指している。詳細は後述するが、例えば、培養槽に対して供給する培養液に係るタンク及び培養液を培養槽に対して供給するためのポンプ等が輸送時用タンクユニット220に含まれる。なお、自動細胞培養装置100の自動培養用タンクユニット120と比較して、輸送用細胞培養装置200の輸送時用タンクユニット220においては、タンク等が小型化されると共に数も減らされている。これは、輸送用細胞培養装置200の輸送時用タンクユニット220では、細胞の培養を継続しながら培養槽を輸送することを達成するために必要なタンクを選択して設けているためである。
制御部230は、収容部210に収容された培養ユニット10に含まれる各部、及び、輸送時用タンクユニット220に含まれる各部を制御し、輸送用細胞培養装置200に取り付けられた培養ユニット10に係る細胞培養の制御を行う機能を有する。
自動細胞培養装置100の制御部130、及び、輸送用細胞培養装置200の制御部230は、それぞれCPU(Central Processing Unit)、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)、他の機器との間の通信を行う通信モジュール、並びにハードディスク等の補助記憶装置等のハードウェアを備えるコンピュータとして構成される。そして、これらの構成要素が動作することによりそれぞれの機能が発揮される。
(自動細胞培養装置及び培養ユニット)
次に、図3を参照しながら、自動細胞培養装置100及び培養ユニット10について説明する。図3には、自動細胞培養装置100の収容部110に対して培養ユニット10が収容されて、培養ユニット10と自動細胞培養装置100における自動培養用タンクユニット120の各部とがラインにより接続された状態を示している。また、図3では、自動細胞培養装置100の制御部130も併せて示している。すなわち、図3に示す自動細胞培養装置100に含まれる各部のうち、制御部130以外の各部が自動培養用タンクユニット120に含まれると共に、自動細胞培養装置100における第1培養環境調整部に対応する。
図3に示すように、培養ユニット10は、培養液F1中に懸濁した細胞の三次元培養を行う培養槽11と、培養槽内で培養液F1が周回上昇流を成すように培養液F1を循環させる循環用ポンプ12と、培養液F1の循環途中に設けられ、培養液F1に酸素を供給する酸素供給槽13と、を備えている。培養ユニット10では、培養槽11と、循環用ポンプ12と、酸素供給槽13と、これらを互いに接続するラインとにより、培養液の循環経路が構成されている。培養槽11と酸素供給槽13とは第1循環ラインL1により接続されており、培養槽11の上段部から抜き出された培養液F1が第1循環ラインL1を介して酸素供給槽13へ送液される。酸素供給槽13と循環用ポンプ12とは第2循環ラインL2により接続されており、酸素供給槽13内で必要に応じて酸素を供給された培養液F1が、第2循環ラインL2を介して循環用ポンプ12へ送液される。循環用ポンプ12と培養槽11とは第3循環ラインL3により接続されており、循環用ポンプ12から送液された培養液F1が第3循環ラインL3を介して培養槽11の下端へ供給される。第3循環ラインL3を介して供給された培養液F1は、培養槽11の下方から上方へ周回上昇流を成して移動し、第1循環ラインL1から培養槽11外へ送液される。
培養ユニット10に含まれる培養槽11について、図4を参照しながらさらに説明する。培養槽11は、水平方向での断面積が上方に向かって大きくなる形状を有している。このような形状として、例えば、培養槽11を逆円錐状とすることができるが、培養槽11の形状は逆円錐状には限定されない。培養槽11の内部には、培養液F1が満たされる。また、培養槽11内には、細胞もしくは細胞が付着した担体が所定の高さ範囲で浮遊する培養領域Aが形成される。以下、細胞もしくは細胞が付着した担体のことを培養細胞という。
培養槽11の容量は特に限定されないが、10mL〜10,000mL程度とすることができる。培養槽11の容量は、1つの培養槽11において培養したい細胞の量もしくは細胞塊の大きさ等に基づいて適宜選択することができる。また、培養槽11の取り扱い性等に応じて選択することもできる。例えば、培養槽2の容量が50mL〜500mL程度とした場合には、培養槽11単体もしくは培養ユニット10としての取り扱い性が向上する。
培養槽11の下端には、第3循環ラインL3が接続される。また、培養槽11の上端には第1循環ラインL1が接続される。
培養槽11内では、培養液F1による上昇流が形成される。図4(A)は、培養槽11内で生じる培養液F1の流れを説明する図であり、図4(B)は、培養槽11の水平方向の断面図であり、培養槽11に対する第3循環ラインL3の取り付け位置を説明する図である。
図4(B)に示すように、培養槽11において上下方向に延びる中心軸Xに対して、交差しない位置に第3循環ラインL3が取り付けられる。すなわち、中心軸Xと第3循環ラインL3とはねじれの関係となる。この状態で、第3循環ラインL3から培養槽2内に培養液を供給すると、培養液が培養槽11内の壁面と摩擦することで発生する旋回力によって、培養槽11の内壁に沿って回転しながら上昇する。すなわち、図4(A)に示すように、培養槽11の下方から上方へ向かう周回上昇流の一種である旋回上昇流S1が生じる。本実施形態において、周回上昇流とは、槽内の液体が槽の内壁に沿って流通しながら上昇することをいう。
培養槽11内での培養液による旋回上昇流S1は、上昇に伴い、培養槽11の壁面との摩擦による旋回力が減少することにより、図4(A)に示すように旋回よりも上昇が主となる上昇流S2となる。これにより、培養槽11の培養領域A(図3参照)付近においては、水平面において上昇方向に略一定の流速分布を有する流れ(プラグフロー)が形成される。
培養槽11は、上方に向かうにつれて水平断面積が大きくなる。したがって、プラグフローにおける上昇流S2の流速は、培養槽11の上方に向かうにつれて減少する。培養槽11の培養領域A付近では、培養細胞の沈降速度と上昇流S2の流速とがつり合った状態が形成される。この結果、培養細胞はそれぞれ所定の高さ位置で滞留する。また、培養細胞に対して上昇流S1によるせん断応力が作用することで、大きくなりすぎた細胞が破砕され、全体の細胞径を維持することができる。なお、上記で説明した第3循環ラインL3の取り付け位置の調整とは異なる方法でも培養槽内に周回上昇流を形成することができる。周回上昇流を形成する方法は、上記の例に限定されない。
このように、培養槽11では、第1循環ラインL1〜第3循環ラインL3を介して培養液F1が循環することで、細胞の培養が進行する。
なお、本実施形態に係る細胞培養システム1における培養ユニット10の培養槽11は、水平断面積が上方に向かって増加する形状であって、且つ、上昇流が形成された培養液中で細胞の培養を行う構成であれば、容器の形状や上昇流の形状等は上記で説明したものに限定されない。
図3に戻り、自動細胞培養装置100には、培養ユニット10における培養槽11内の培養液F1の濁度を鉛直方向の複数箇所で測定する濁度計15が設けられている。自動細胞培養装置100では、濁度計15によって、培養槽11内における培養液F1中の細胞分布が検出される。なお、自動細胞培養装置100は、第1細胞分布検出部として濁度計15を備えるが、第1細胞分布検出部はこれに限定されず、例えば、培養液F1の画像を取得するカメラ等を備えるものであってよい。
自動細胞培養装置100には、酸素供給槽13における培養液F1への酸素の供給を補助する補助手段として、マイクロバブルポンプ14が設けられている。マイクロバブルポンプ14は、第2循環ラインL2から分岐する第四循環ラインL4と、第1循環ラインL1に接続する第五循環ラインL5とを介して酸素供給槽13と接続されている。第2循環ラインL2を通過する培養液F1の一部は、第四循環ラインL4を介してマイクロバブルポンプ14へ送液され、マイクロバブルポンプ14から第五循環ラインL5及び第1循環ラインL1を介して酸素供給槽13へ返送される。マイクロバブルポンプ14は、培養液F1にマイクロバブルを発生させ、培養液F1への酸素の溶解を促進する。また、自動細胞培養装置100は、培養槽11内の培養液F1における溶存酸素量を検出する溶存酸素計16を備えている。溶存酸素計16は、培養開始前に溶存酸素量を検出してよく、培養途中に常時溶存酸素量を検出してよく、培養途中に所定の間隔で溶存酸素量を検出してもよい。
自動細胞培養装置100は、培養槽11内の培養液F1のpHを検出するpH計17をさらに備えている。pH計17は、培養開始前にpHを検出してよく、培養途中に常時pHを検出してよく、培養途中に所定の間隔でpHを検出してもよい。pH計によるpHの検出結果は培養液F1の交換時期の判断基準になり得る。
培養槽11を及び第1循環ラインL1〜第3循環ラインL3は、培養槽11内の培養環境を一定に保持するためのインキュベータ21内に配置されている。すなわち、自動細胞培養装置100では、インキュベータ21内に収容部110が設けられ、培養槽11を及び第1循環ラインL1〜第3循環ラインL3を含む培養ユニット10がインキュベータ21内に収容される。インキュベータ21は、内部を所定の培養環境(例えば、温度35〜38℃、二酸化炭素濃度5%)に調整及び維持しており、外的環境によって培養環境が変動することを防止している。自動細胞培養装置100では、酸素供給持の培養液F1の温度変化を避けるため、酸素供給槽13もインキュベータ21内に配置されている。自動細胞培養装置100は、培養槽11内の温度又は培養槽11内の培養液F1の温度を測定する温度計22を備えていてよく、この場合、温度計22によって培養槽11内が所定の培養環境に調整され、維持されていることが確認できる。なお、自動細胞培養装置100では、溶存酸素計16、pH計17、及び温度計22が培養環境を検出する第1培養環境検出部として機能するが、上記以外に培養環境を検出する手段を有していてもよい。
なお、培養槽11の培養液F1が循環する、第1循環ラインL1〜第3循環ラインL3はインキュベータ21内に配置される。これにより、培養槽11を循環する培養液F1が所定の培養温度に維持される。
自動細胞培養装置100は、培養液F1を保管する培養液保管タンク31と、培養液F1を加温する培養液加温タンク32と、培養液保管タンク31と培養液加温タンク32とを接続する培養液送液ラインL6とをさらに備えており、培養液送液ラインL6には培養液送液ポンプ33が設けられている。上記の各部は、自動細胞培養装置100における第1培養液供給部として機能する。培養液保管タンク31中に保管されている培養液F1は、必要に応じて培養液送液ラインL6を介して培養液加温タンク32に送液され、培養液加温タンク32内で培養に適した温度に加温される。培養液加温タンク32で加温された培養液F1は、培養液加温タンク32と培養槽11とを接続する加温済み培養液送液ラインL7を介して、培養液加温タンク32から培養槽11へ送液される。培養液保管タンク31と培養液送液ラインL6とは、無菌コネクタ34を介して接続されている。これにより、培養液保管タンク31の交換に際して、培養液送液ラインL6以降の無菌状態を容易に維持できる。培養液保管タンク31は、冷蔵ユニット35内に配置されている。冷蔵ユニット35は、培養液保管タンク31を、培養液F1の保管に適した温度(例えば、2〜6℃)下に保持している。培養液加温タンク32はインキュベータ21内に配置されており、インキュベータ21は、培養液加温タンク32内の培養液F1を培養に適した温度(例えば、35〜38℃)に加温する。
自動細胞培養装置100は、培養槽11内から培養した細胞を回収する回収経路となる細胞回収ラインL8をさらに備えており、細胞回収ラインL8には細胞回収ポンプ41が設けられている。細胞回収ラインL8の出口には無菌コネクタ42が設けられており、細胞回収バイアル43と無菌的に接続可能になっている。自動細胞培養装置100では、無菌コネクタ42に細胞回収バイアル43を接続後、細胞回収ポンプ41の作動によって培養槽11内から細胞回収ラインL8に細胞を流通させることで、培養した細胞を回収できる。上記の各部は、自動細胞培養装置100における第1細胞回収部として機能する。
自動細胞培養装置100は、洗浄液F2を保管する洗浄液保管タンク51と、洗浄液保管タンク51から洗浄液F2を培養槽11へ送液する洗浄液送液ポンプ52とをさらに備えている。洗浄液保管タンク51は洗浄液送液ラインL9を介して培養槽11と接続されており、洗浄液保管タンク51に保管されている洗浄液F2は、必要に応じて洗浄液送液ポンプ52により洗浄液送液ラインL9を介して培養槽11へ送液される。洗浄液送液ラインL9は、培養ユニットの循環経路である第3循環ラインL3に接続されており、洗浄液F2は洗浄液送液ラインL9及び第3循環ラインL3を経由して培養槽11に送液され、場合により培養ユニットの循環経路に流通した後、廃液として培養ユニットから排出される。洗浄液保管タンク51と洗浄液送液ラインL9とは、無菌コネクタ53を介して接続されている。これにより、洗浄液保管タンク51の交換に際して、洗浄液送液ラインL9以降の無菌状態を容易に維持できる。
洗浄液F2は特に限定されず、細胞培養に使用される公知の洗浄液であってよい。例えば洗浄液F2は、Phosphate Buffered Salin(PBS)であってよい。また、洗浄液F2は、培養する細胞に適切な基礎培地等であってもよい。例えば、DMEM、F−12、RPMI等が代表的な培地である。
自動細胞培養装置100は、培養ユニット10から回収された廃液F3を貯留する廃液貯留タンク61をさらに備えている。また、自動細胞培養装置100は、第1廃液経路として培養槽11と廃液貯留タンク61とを接続する第1廃液ラインL10、また、第2廃液経路として酸素供給槽13と廃液貯留タンク61とを接続する第2廃液ラインL11をそれぞれ備えている。第1廃液ラインL10には、培養槽11から排出される廃液を廃液貯留タンク61に送液する第1廃液ポンプ62が設けられており、第2廃液ラインL11には、酸素供給槽13から排出される廃液を廃液貯留タンク61に送液する第2廃液ポンプ63が設けられている。第1廃液ラインL10及び第2廃液ラインL11は、廃液貯留タンク61に到達する前に合流し、無菌コネクタ64を介して廃液貯留タンク61と接続されている。無菌コネクタ64により、第1廃液ラインL10及び第2廃液ラインL11の無菌状態を容易に維持しつつ、廃液貯留タンク61を交換できる。廃液貯留タンク61に貯留される廃液は、培養液又は洗浄液を含む廃液であってよく、例えば、培養液交換時の使用済み培養液、細胞回収又は継代前に廃棄される使用済み培養液、洗浄液による洗浄後に生じた廃液等であってよい。
自動細胞培養装置100は、酵素を含む酵素液F4を保管する酵素液保管タンク71と、酵素液保管タンク71から酵素液F4を培養槽11へ送液する酵素液送液ポンプ72とをさらに備えている。酵素液保管タンク71は酵素液送液ラインL12を介して培養槽11と接続されており、酵素液保管タンク71に保管されている酵素液F4は、必要に応じて酵素液送液ポンプ72により酵素液送液ラインL12を介して培養槽11へ送液される。酵素液保管タンク71と酵素液送液ラインL12とは無菌コネクタ73を介して接続されており、これにより酵素液保管タンク71の交換に際して、酵素液送液ラインL12以降の無菌状態を容易に維持できる。酵素液保管タンク71は、冷蔵ユニット35内に配置され、培養液保管タンク31と共に所定の温度(例えば、2〜6℃)下に保持されている。なお、酵素液F4の保管に適する温度が培養液F1の保管に適する温度と異なる場合、酵素液保管タンク71は、冷蔵ユニット35内で培養液保管タンク31とは異なる温度下に保持されていてよく、冷蔵ユニット35とは異なる他の冷蔵ユニット内に配置されていてもよい。酵素は細胞分散に用いられる既知の薬液であってよい。たとえば酵素としてはAccutase、Trypsin−EDTA、Dispase、Collagenaseがあげられる。また、一態様では、酵素に代えて、細胞分散の機能のある薬剤を用いてもよい。このような薬剤としては、EDTA溶液等があげられる。
自動細胞培養装置100は、Rhoキナーゼ阻害剤を保管する阻害剤保管タンク81と、阻害剤保管タンク81からRhoキナーゼ阻害剤を培養槽11へ送液する阻害剤送液ポンプ82とをさらに備えている。阻害剤保管タンク81は阻害剤送液ラインL13を介して培養槽11と接続されており、阻害剤保管タンク81に保管されているRhoキナーゼ阻害剤は、必要に応じて阻害剤送液ポンプ82により阻害剤送液ラインL13を介して培養槽11へ送液される。阻害剤保管タンク81と阻害剤送液ラインL13とは無菌コネクタ83を介して接続されており、これにより阻害剤保管タンク81の交換に際して、阻害剤送液ラインL13以降の無菌状態を容易に維持できる。阻害剤保管タンク81は、冷蔵ユニット35内に配置され、培養液保管タンク31と共に所定の温度(例えば2〜6℃)下に保持されている。なお、Rhoキナーゼ阻害剤の保管に適する温度が培養液F1の保管に適する温度と異なる場合、阻害剤保管タンク81は、冷蔵ユニット35内で培養液保管タンク31とは異なる温度下に保持されていてよく、冷蔵ユニット35とは異なる他の冷蔵ユニット内に配置されていてもよい。
自動細胞培養装置100は、薬液を保管する薬液保管タンク91と、薬液保管タンク91から薬液を培養槽11へ送液する薬液送液ポンプ92とをさらに備えている。薬液保管タンク91は薬液送液ラインL14を介して培養槽11と接続されており、薬液保管タンク91に保管されている薬液は、必要に応じて薬液送液ポンプ92により薬液送液ラインL14を介して培養槽11へ送液される。薬液保管タンク91と薬液送液ラインL14とは無菌コネクタ93を介して接続されており、これにより薬液保管タンク91の交換に際して、薬液送液ラインL14以降の無菌状態を容易に維持できる。薬液保管タンク91は、冷蔵ユニット35内に配置され、培養液保管タンク31と共に所定の温度(例えば2〜6℃)下に保持されている。なお、薬液の保管に適する温度が培養液F1の保管に適する温度と異なる場合、薬液保管タンク91は、冷蔵ユニット35内で培養液保管タンク31とは異なる温度下に保持されていてよく、冷蔵ユニット35とは異なる他の冷蔵ユニット内に配置されていてもよい。薬液は、細胞培養に使用される公知の薬液であってよい。例えば薬液は、サイトカイン等の未分化の維持、分化の促進、活性化に係る薬剤等であってよく、Activin、b−FGF、SCF、TGF−beta等が挙げられる。
自動細胞培養装置100は、撮影ユニット101と、細胞回収ラインL8から分岐して撮影ユニット101に接続される撮影用送液ラインL15とをさらに備えており、撮影用送液ラインL15には、撮影ユニット101に細胞を含有する測定サンプルを送液する撮影用送液ポンプ102が設けられている。また、撮影ユニット101には、撮影用バッファF5を保管するバッファタンク103が接続されている。撮影ユニット101は、撮影用送液ポンプ102により送液された測定サンプルを撮影し、測定サンプルに含まれる細胞の顕微鏡写真を取得する。顕微鏡写真取得後の測定サンプルは、撮影ユニット101から廃液として破棄されてよい。また、顕微鏡写真取得後の測定サンプルは、撮影用送液ラインL15を介して細胞回収ラインL8に送液され、細胞回収バイアル43に回収されてもよい。このとき、撮影用送液ポンプ102は、測定サンプルを撮影ユニット101から細胞回収ラインL8へ送液する役割を担っていてよい。撮影ユニット101及びバッファタンク103は、培養環境における細胞状態をより正確に観察するため、インキュベータ21内に配置され、所定の温度(例えば、35〜38℃)下に保持されている。
自動細胞培養装置100は、制御ユニットとしての制御部130をさらに備えている。制御部130は、図1に示す自動細胞培養装置100における制御部130と同じである。制御部130は、濁度計15により検出される濁度の情報を取得し、当該濁度の情報に基づいて循環用ポンプ12を制御し、培養液F1の循環速度の調整を実施する。
制御部130による循環速度制御の実行手順は特に限定されず、濁度計15による検出結果に基づいて循環用ポンプ12が制御される範囲で、培養環境等に応じて適宜変更される。また、制御部130は、濁度計15以外の計器から測定される情報をさらに取得してよく、循環用ポンプ12以外のポンプをさらに制御してもよい。
また、制御部130は、溶存酸素計16の検出結果を取得して、取得した検出結果に基づいてマイクロバブルポンプ14を制御してよい。制御部130は、溶存酸素量の既定値が維持されるように、溶存酸素計16により検出された溶存酸素量が既定値を超える場合はマイクロバブルポンプ14によるマイクロバブル発生量を減少させ、溶存酸素計16により検出された溶存酸素量が規定値未満である場合はマイクロバブルポンプ14によるマイクロバブル発生量を増加させてよい。
さらに、制御部130は、pH計17の検出結果を取得して、取得した検出結果に基づいて培養液F1の交換時期を判断し、ユーザへの通知又は培養液F1の交換を行ってよい。また、制御部130は、培養液送液ポンプ33、洗浄液送液ポンプ52、第1廃液ポンプ62、及び第2廃液ポンプ63をそれぞれ制御してよい。この場合、制御部130は、自身の判断又はユーザの指示によって、各ポンプの制御を行い、培養液の交換、継代等の作業を実行できる。また、自動細胞培養装置100は、培養槽11内の培養液F1の液量を検出する液量検出計(図示しない)をさらに備えていてよく、制御部130は、液量検出計の検出結果を取得して、取得した検出結果に基づいて培養液送液ポンプ33による培養液の送液量を制御してよい。
制御部130は、細胞回収ポンプ41を制御できる。この場合、例えば、制御部130は、事前に設定された培養時間経過後に自動で細胞回収ポンプ41(さらに、必要に応じて培養液送液ポンプ33、洗浄液送液ポンプ52、第1廃液ポンプ62、及び第2廃液ポンプ63)を制御して、細胞を自動回収できる。
制御部130は、酵素液送液ポンプ72を制御してよく、この場合、ユーザの指示又は事前の設定に基づいて酵素液F4を培養槽11に送液できる。また、制御部130は、阻害剤送液ポンプ82を制御してよく、この場合、ユーザの指示又は事前の設定に基づいてRhoキナーゼ阻害剤を培養槽11に送液できる。また、制御部130は、薬液送液ポンプ92を制御してよく、この場合、ユーザの指示又は事前の設定に基づいて薬液を培養槽11に送液できる。また、制御部130は、撮影用送液ポンプ102を制御していよく,この場合、この場合、ユーザの指示又は事前の設定に基づいて撮影ユニット101に測定サンプルを送液できる。さらに、制御部130は撮影ユニット101による顕微鏡写真の撮影を制御してよく、この場合、ユーザの指示又は事前の設定に基づいて自動的に細胞の顕微鏡写真を取得できる。
上記の自動細胞培養装置100では、細胞は培養液F1中に懸濁しており、培養液F1の上昇流(図4の上昇流S2)と自重との均衡によって培養液F1中に浮遊しながら培養される。制御部130は、循環用ポンプ12による培養液F1の循環速度を制御することで、培養液F1の上昇流と細胞の自重との均衡状態を調節し、培養槽11内における細胞分布を適切に保持できる。
また、自動細胞培養装置100では、濁度計15が培養槽11内の培養液F1の濁度を検出し、制御部130が上記実行手順で循環速度を制御する。これにより、培養過程で細胞のサイズの変化等により細胞分布が変化しても、制御部130の制御によって培養液F1の上昇流と細胞の自重との均衡状態を自動的に調節できる。このため、自動細胞培養装置100では、細胞分布を適切に維持して、均質な培養を実施できる。
また、自動細胞培養装置100では、濁度計15が培養槽11内の培養液F1の濁度を鉛直方向の複数箇所で測定している。ここで、培養槽11内で培養される細胞数が増加すると、培養液F1の濁度が増加する。また、培養される細胞のサイズ(又は細胞塊のサイズ)が大きくなると、自重により細胞分布が徐々に鉛直方向下側に移動する。上記の濁度計15によれば、これらの培養状態をモニターすることも可能となる。
また、自動細胞培養装置100では、溶存酸素計16により培養液F1の溶存酸素量が検出され、制御部130はその検出結果に基づいてマイクロバブルポンプ14を制御できる。このため、自動細胞培養装置100では、制御部130の制御により、一定の溶存酸素量を維持した細胞培養を容易に実施することができる。
また、自動細胞培養装置100では、pH計17により培養液F1のpHが検出され、制御部130はその検出結果に基づいて培養液F1の交換時期を判断し、ユーザへの通知又は培養液F1の交換を実行できる。このような自動細胞培養装置100では、制御部130によって自動的に培養液F1の交換時期が判断され、交換時期の徒過による培養細胞の品質低下等が防止される。
また、自動細胞培養装置100では、制御部130が培養液送液ポンプ33、洗浄液送液ポンプ52、第1廃液ポンプ62、及び第2廃液ポンプ63をそれぞれ制御できる。このため、自動細胞培養装置100では、制御部130の判断又はユーザの指示に応じて、培養液F1の交換、継代等の作業を自動的に実施できる。
また、自動細胞培養装置100では、制御部130が酵素液送液ポンプ72、阻害剤送液ポンプ82、及び薬液送液ポンプ92をそれぞれ制御できる。このため、自動細胞培養装置100では、制御部130の制御によって、事前に設定された量及びタイミングで酵素液、Rhoキナーゼ阻害剤及び薬液を培養槽11に自動で供給できる。
次に、培養ユニット10の詳細について説明する。上述したように、培養槽11と、循環用ポンプ12と、酸素供給槽13と、これらを互いに接続する第1循環ラインL1〜第3循環ラインL3とが、培養ユニット10に含まれる。また、培養ユニット10には、第1循環ラインL1と第2循環ラインL2との間を接続する中継ラインL16が設けられる。中継ラインL16は、後述の輸送用細胞培養装置200に対して培養ユニット10を取り付けた際に使用されるラインである。そのため、中継ラインL16は開閉弁を有し、培養ユニット10が自動細胞培養装置100に取り付けた状態では、開閉弁は閉状態とされる。
さらに、培養ユニット10には、培養液加温タンク32及び培養液加温タンク32と培養槽11とを接続する加温済み培養液送液ラインL7が含まれていてもよい。図3では、培養液加温タンク32が培養ユニット10に含まれていない場合について示している。
上記の培養ユニット10に含まれる各部は、他の各部とは区画される。すなわち、図3に示す培養ユニット10は、筐体等に収容されることになる。培養ユニット10の筐体がインキュベータ21と同様に恒温機能を有していても良い。ただし、図3に示すように、培養ユニット10に含まれる各槽・タンクと、自動細胞培養装置100側のタンク等とを接続するラインが存在する。したがって、培養ユニット10には、図3に示す各ラインに対応したラインが設けられて、コネクタ等を介して、培養ユニット10には含まれないタンク等から延びるラインと接続可能とされる。図1では、上記の培養ユニット10側と自動細胞培養装置100側とを接続するラインを模式的に示している。
このように、自動細胞培養装置100に対して取り外し可能な培養ユニット10は、培養槽11と、培養槽11に対して培養液を循環させるための循環用ポンプ12、酸素供給槽13、及び、これらを互いに接続する第1循環ラインL1〜第3循環ラインL3と、を有している。このため、培養ユニット10を自動細胞培養装置100から取り外した状態でも、培養槽11に対する培養液の循環経路が確保される。したがって、循環用ポンプ12を駆動可能な状態であれば、すなわち、動力を供給可能な状態であれば、培養槽11に対して培養液を循環させることが可能となる。
また、培養ユニット10において、培養槽11及び培養槽11に対する培養液の循環経路が確保された場合、培養ユニット10に含まれない各部、すなわち、自動培養用タンクユニット120に含まれる各部は、他の培養ユニット10と共用することが可能である。したがって、自動細胞培養装置100では、自動培養タンクユニット120に相当する部分は共用としている。従来の細胞培養装置では、培養液F1を保管する培養液保管タンク31、洗浄液F2を保管する洗浄液保管タンク51、培養ユニット10から回収された廃液F3を貯留する廃液貯留タンク61、及び、酵素液F4を保管する酵素液保管タンク71等の各タンクを培養槽11に対して個別に設けられていた。しかしながら、自動細胞培養装置100では、自動培養用タンクユニット120に含まれるタンク類を培養ユニット10毎に個別に設けない構成とすることで、培養ユニット10を利用した大量培養を実現することができる。
自動細胞培養装置100のように、自動培養用タンクユニット120に含まれるタンク類を複数の培養ユニット10と接続する場合、各タンクと培養ユニット10との間に設けられるポンプ類は、各タンクと各培養ユニット10とを接続するラインのうち、各培養ユニット10に対して個別に設けられるライン部分に個別に設けてもよい。そして、個別に設けられたポンプを制御部130により制御することで、培養ユニット10毎の個別の制御が可能となり、それぞれの培養ユニット10における細胞の培養状況に応じた適切な制御を行うことができる。ただし、ラインの設計やポンプの配置等は、上記の構成に限定されず、適宜変更することができる。
自動細胞培養装置100を用いて複数の培養ユニット10を用いて細胞を培養する場合、培養ユニット10(培養槽11)毎に細胞の培養状況が変化する。そのため、例えば、濁度計15、溶存酸素計16等で計測される結果が培養ユニット10毎に異なる状況となり、制御部130により、培養ユニット10毎に互いに異なる制御(例えば新しい培地との交換)を施すことが必要な場合が発生する。そのため、制御部130では、収容部110に収容された培養ユニット10毎に個別に細胞の培養に係る情報を取得すると共に当該情報に基づいて、種々の制御を行う。また、制御部130が取得した情報及び制御部130による培養環境の調整等に係る情報は、培養ユニット10それぞれに取り付けられた識別タグTと関連づけて記憶する態様とすることができる。これらの情報は、識別タグTに対して直接記憶させる構成としてもよい。この場合には、識別タグT自体が記憶部として機能することとなる。また、識別タグT自体には、培養ユニット10を特定する情報のみを保持する構成とし、制御部130が取得した情報及び制御部130による培養環境の調整等に係る情報等は、培養ユニット10を特定する情報と対応付けて外部の記憶装置等に記憶される構成としてもよい。この場合には、外部の記憶装置が本実施形態に係る記憶部になる。細胞の培養に係る情報を外部の記憶装置に記憶する構成とした場合、当該識別タグTに記憶される情報を利用して培養ユニット10を特定することができるため、外部の記憶装置に記憶された情報の中から当該培養ユニット10に係る情報を特定して取得することができる。なお、外部の記憶装置に代えて、自動細胞培養装置100もしくは輸送用細胞培養装置200に記憶部を設ける構成としてもよい。
(輸送用細胞培養装置)
次に、図5を参照しながら、輸送用細胞培養装置200について説明する。上述したように、培養ユニット10においては、自動細胞培養装置100から取り外した状態でも培養槽11に対する培養液の循環ラインが確保されるため、循環用ポンプ12を駆動可能な状態であれば、すなわち、動力を供給可能な状態であれば、培養槽11に対して培養液F1を循環させながら細胞の培養を継続することができる。したがって、輸送用細胞培養装置200は、少なくとも循環用ポンプ12を駆動させて培養槽11における培養液F1の循環を制御することが可能であればよい。
ただし、細胞の培養を継続した場合には、培養液F1中の酸素濃度の低下や、培養槽11の温度変化等により、好適な培養環境から変化することが考えられる。そこで、本実施形態に係る細胞培養システム1においては、培養ユニット10における細胞の培養を継続して行うことを可能とする輸送用細胞培養装置200を備える。
図5は、輸送用細胞培養装置200の収容部210に対して培養ユニット10が収容されて、培養ユニット10と輸送用細胞培養装置200における輸送時用タンクユニット220の各部とがラインにより接続された状態を示している。また、図5では、輸送用細胞培養装置200の制御部230も併せて示している。すなわち、図5に示す輸送用細胞培養装置200に含まれる各部のうち、制御部230以外の各部が輸送時用タンクユニット220に含まれると共に、輸送用細胞培養装置100における第2培養環境調整部に対応する。
図5に示すように、培養ユニット10は、輸送用細胞培養装置200の収容部210内に収容される。収容部210は、例えば、インキュベータとして機能してもよい。この場合、収容部210の内部は、所定の培養環境(例えば、温度35〜38℃、二酸化炭素濃度5%)に調整及び維持しており、外的環境によって培養環境が変動することを防止することができる。
収容部210内に収容される培養ユニット10は、図3に示した状態、すなわち、自動細胞培養装置100に取り付けられた状態と同様に、酸素供給槽13を経由する循環流路に沿って培養液を循環させる構成とすることもできる。ただし、輸送時間が長くなると、培養液F1中の溶存酸素量が低下するため、培養環境が悪化することが考えられる。そこで、図5では、培養ユニット10に含まれるラインを利用しながら、酸素供給槽13を培養液回収槽として利用する例を示している。図5に示す例では、酸素供給槽13を培養液回収槽として利用するため、循環用ポンプ12及び第2循環ラインL2は、酸素供給槽13から分離される。そして、酸素が高濃度に溶存した培養液が収容された高濃度酸素溶存培養液バッグ240を第2循環ラインL2に対して接続する。高濃度酸素溶存培養液バッグ240内には、培養ユニット10の輸送時間の間細胞が培養を継続した場合に、培養によって消費されると考えられる酸素量が溶存している培養液が収容されている。高濃度酸素溶存培養液バッグ240のバッグ部分は柔軟性の高いポリエチレン等の材料で構成されていると、バッグの小型化が可能であると共に変形が容易となるため、培養ユニット10の形状等に応じて高濃度酸素溶存培養液バッグ240の取り付け位置等を柔軟に変更することが可能となる。上記の構成では、高濃度酸素溶存培養液バッグ240が培養槽11に対して培養液を供給する第2培養液供給部として機能する。
また、輸送用細胞培養装置200に培養ユニット10を取り付けた状態では、培養ユニット10に設けられた第1循環ラインL1と第2循環ラインL2との間を接続する中継ラインL16の開閉弁を開状態とする。これにより、第1循環ラインL1、中継ラインL16及び第3循環ラインL3により培養液F1の循環経路が構成される。
この状態で、循環用ポンプ12を駆動させると、上記の循環経路を培養液F1が循環すると共に、細胞の培養によって酸素が消費された一部の培養液F1が培養液回収槽(酸素供給槽13)へ流入する。また、培養液回収槽(酸素供給槽13)へ流入した培養液に対応する量の培養液が高濃度酸素溶存培養液バッグ240から第2循環ラインL2を経由して供給される。この結果、循環経路を循環する培養液F1の溶存酸素量の低下を抑制した状態を維持することができる。
なお、上記のように、高濃度酸素溶存培養液バッグ240を接続する構成に代えて、輸送用細胞培養装置200が培養液タンク270を有している構成としてもよい。この場合、培養ユニット10の培養槽11に対して接続される加温済み培養液送液ラインL7の上段に、培養液送液ポンプ233及び培養液タンク270を接続することで、培養槽11に対して酸素が十分に溶存した状態の培養液を供給することが可能となる。この場合、培養液タンク270が培養槽11に対して培養液を供給する第2培養液供給部として機能する。
さらに、酸素供給槽13自体を、培養ユニット10の輸送時間を考慮して大型化しておく場合、輸送用細胞培養装置200に培養ユニット10を取り付けた後は、外部からの培養液の供給を不要とすることができる。ただし、輸送時間が長期化すると、輸送時間の経過に伴って溶存酸素の減少等培養環境の変化が生じる可能性は考えられる。酸素供給槽13を大型化することで、外部からの培養液の供給を不要としつつ、培養環境の変化をできるだけ小さくすることができる。
また、輸送用細胞培養装置200は、培養ユニット10の培養槽11内から培養した細胞を回収する回収経路となる細胞回収ラインL28を備える。また、細胞回収ラインL28上には図示しない細胞回収ポンプが設けられていても良い。細胞回収ラインL28の培養ユニット10との接続部分には無菌コネクタ242が設けられており、細胞回収バイアル243と無菌的に接続可能になっている。輸送用細胞培養装置200では、無菌コネクタ42に細胞回収バイアル243を接続後、細胞回収ポンプの駆動等によって培養槽11内から細胞回収ラインL28に細胞を流通させることで、培養した細胞を回収できる。上記の各部は、輸送用細胞培養装置200における第2細胞回収部として機能する。
また、収容部210がインキュベータとして機能しない場合には、収容部210内を所定の培養環境に調整及び維持するための温ガス発生部250及び圧力制御部260を有する。
温ガス発生部250は、収容部210内を所定の培養温度にするためのガスを収容部210内に供給する機能を有する。なお、ガスの成分については、培養環境に応じて適宜選択することができる。
また、圧力制御部260は、収容部210内に二酸化炭素を供給することで、所定の培養環境(例えば、二酸化炭素濃度5%)となるようにガス成分を調整する機能を有する。さらに、圧力制御部260は、収容部210内が外部環境に対して陽圧となるように加圧する機能を有していてもよい。収容部210内を外部環境に対して陽圧とすることで、外部から埃や細菌等が収容部210内に流入することを防ぐことができ、内部のクリーンレベルを維持することができる。なお、圧力制御部260が温ガス発生部250としても機能する構成としてもよい。この場合、温ガス発生部250を備えていなくてもよい。
輸送用細胞培養装置200には、自動細胞培養装置100と同様に、培養ユニット10における培養槽11内の培養液F1の濁度を鉛直方向の複数箇所で測定する濁度計215が設けられている。輸送用細胞培養装置200では、第2細胞分布検出部としての濁度計215によって、培養槽11内における培養液F1中の細胞分布が検出される。
また、輸送用細胞培養装置200は、培養槽11内の培養液F1における溶存酸素量を検出する溶存酸素計216を備えている。溶存酸素計216は、培養開始前に溶存酸素量を検出してよく、培養途中に常時溶存酸素量を検出してよく、培養途中に所定の間隔で溶存酸素量を検出してもよい。
さらに、輸送用細胞培養装置200は、培養槽11内の培養液F1のpHを検出するpH計217をさらに備えている。pH計217は、培養開始前にpHを検出してよく、培養途中に常時pHを検出してよく、培養途中に所定の間隔でpHを検出してもよい。
また、輸送用細胞培養装置200では、培養槽11内の温度又は培養槽11内の培養液F1の温度を測定する温度計222を備えていてよい。この場合、温度計222によって培養槽11内が所定の培養環境に調整され、維持されていることが確認できる。なお、輸送用細胞培養装置200は、溶存酸素計216、pH計217、及び温度計222が培養環境を検出する第2培養環境検出部として機能するが、上記以外に培養環境を検出する手段を有していてもよい。
上記の輸送用細胞培養装置200の制御部230は、上記の輸送用細胞培養装置200の各部を制御する。
具体的には、制御部230は、濁度計215により検出される濁度の情報を取得し、当該濁度の情報に基づいて循環用ポンプ12を制御し、培養液F1の循環速度の調整を実施する。また、制御部230は、溶存酸素計216の検出結果を取得して、溶存酸素量の既定値が維持されるように、高濃度酸素溶存培養液バッグ240から供給する培養液の供給量等を調整してもよい。また、制御部230は、pH計17の検出結果を取得して、取得した検出結果に基づいて培養液F1の交換時期を判断し、ユーザへの通知を行ってもよい。
制御部230は、温ガス発生部250及び圧力制御部260の制御を行ってもよい。これらの制御の際には、例えば温度計222で検出された温度情報を利用して、当該結果に基づいて制御を行うことができる。
制御部230は、細胞回収バイアル243の前段に細胞回収ポンプが設けられている場合には、細胞回収ポンプを制御できる。この場合、例えば、制御部230は、事前に設定された培養時間経過後に自動で細胞回収ポンプを制御して、細胞を自動回収できる。
なお、制御部230は、輸送用細胞培養装置200に取り付けられた培養ユニット10の識別タグTを利用して、当該培養ユニット10の培養環境を制御する構成としてもよい。上述したように、培養ユニット10を特定する情報が識別タグTに対応付けられて居ると共に、当該培養ユニット10に係る細胞培養に係る情報を取得することができる。したがって、輸送用細胞培養装置200の制御部130では、識別タグTを利用して、培養ユニット10に係る過去の培養環境等に係る情報を取得し、この情報に基づいて細胞の培養に係る制御を行うことができる。
上記の輸送用細胞培養装置200においても、細胞は培養槽11内の培養液F1中に懸濁しており、培養液F1の上昇流(図4の上昇流S2)と自重との均衡によって培養液F1中に浮遊しながら培養される。制御部230は、循環用ポンプ12による培養液F1の循環速度を制御することで、培養液F1の上昇流と細胞の自重との均衡状態を調節し、培養槽11内における細胞分布を適切に保持できる。したがって、培養ユニット10を輸送している間の細胞の培養を好適に行うことができる。
また、輸送用細胞培養装置200では、濁度計215が培養槽11内の培養液F1の濁度を検出し、制御部230が上記実行手順で循環速度を制御する。これにより、培養過程で細胞のサイズの変化等により細胞分布が変化しても、制御部230の制御によって培養液F1の上昇流と細胞の自重との均衡状態を自動的に調節できる。このため、輸送用細胞培養装置200においても、細胞分布を適切に維持して、均質な培養を実施できる。また、上記の濁度計215によれば、これらの培養状態をモニターすることも可能となる。この点は、自動細胞培養装置100と同じである。
また、輸送用細胞培養装置200では、溶存酸素計216、pH計217、及び温度計222等により培養液F1の培養環境に係る情報を検出することができる。そして、制御部230は、検出結果に基づいて培養環境が適切となるように制御を行うことができる。したがって、輸送用細胞培養装置200によれば、培養ユニット10の輸送中であっても、培養環境を適切に維持することができる。
さらに、輸送用細胞培養装置200においても、培養ユニット10に取り付けられた識別タグTを利用して、当該培養ユニット10での細胞培養に係る情報を取得することができると共に、これを利用して培養環境の制御等を行うことができる。このように、培養ユニット10に識別タグTが取り付けられることで、培養ユニット10における細胞培養に係る情報の収集及び蓄積が容易となるため、例えば、トレーサビリティの確保が容易となる。
なお、輸送用細胞培養装置200は、上述のように培養ユニット10の輸送に用いられる装置である。輸送用細胞培養装置200を輸送する際には、少なからず振動が発生する可能性がある。そのため、輸送用細胞培養装置200を輸送する際には、装置自体に振動が発生しないような状態とすることが望まれる。ただし、装置全体の振動を抑制することに代えて、特に振動が影響を与える可能性のある培養槽11の振動を抑制することも考えられる。以下、図6及び図7を参照しながら、輸送中の培養ユニット10のうち、特に培養槽11の振動を抑制することを目的とした変形例について説明する。なお、図6と図7とを比較すると、培養液の循環経路の形状が異なるが、上述したように循環経路は適宜変更できるものである。
図6は、第1の変形例に係る培養ユニット10Aを模式的に示した図である。培養ユニット10Aにおいては、運搬により培養槽11が振動することを抑制するために培養槽11に対して振動抑制部としてのバネ151、ダンパ152等が設けられている。バネ151及びダンパ152は、培養槽11の周囲に設けられる培養槽収納容器153と培養槽11との間を接続するように設けられる。培養ユニット10Aがこのような構成を有することで、培養ユニット10の運搬時だけでなく、培養ユニット10を自動細胞培養装置100から取り外す際又は取り付ける際等の振動もバネ151及びダンパ152により吸収することができるため、培養槽11が振動することを抑制することができる。
図7は、第2の変形例に係る培養ユニット10Bを模式的に示した図である。培養ユニット10Bにおいては、培養槽11A自体が他の培養槽11と異なる特徴を有する。具体的には、培養槽11Aの中央の容器部分が柔軟性を有するポリエチレン等の材料により構成されることで、外部の振動等を容器部分の変形により吸収する。培養槽11Aの上端及び下端は培養槽11と同様に強度の大きい材料を使用し、上端及び下端を循環ライン等と接続することで培養槽11Aとしての形状を維持する。なお、培養槽11Aの容器部分が自立可能な厚みを有していてもよい。培養ユニット10Bの培養槽11Aがこのような構成を有することで、培養槽11Aの振動等の容器部分で緩和することが可能となる。したがって、培養槽11内部の細胞が振動することを抑制することができる。
以上のように、本実施形態に係る細胞培養システム1及び細胞培養システム1に含まれる培養ユニット10,10A,10B、自動細胞培養装置100及び輸送用細胞培養装置200によれば、培養ユニット10が自動細胞培養装置100の収容部110に収容された状態では、制御部130によって、培養ユニット10における循環経路の培養液F1の循環が制御されることで、培養槽11内で培養液F1の上昇流が形成された状態で、細胞の培養が行われる。このとき、第1培養液供給部として機能する培養液タンク31から培養液が供給されると共に第1細胞回収部として機能する細胞回収バイアル43により培養された細胞が回収されることで、細胞培養を自動的に行うことが可能となる。一方、培養ユニット10が輸送用細胞培養装置200の収容部210に収容された状態では、制御部230により培養ユニット10における循環経路の培養液F1の循環が制御される。これにより、培養槽11内で培養液F1の上昇流が形成された状態で、細胞の培養が行われる。このため、培養ユニット10を輸送用細胞培養装置200に取り付けた状態でも、培養液F1の循環が制御されて細胞の培養が継続される。したがって、自動細胞培養装置100において細胞培養を効率良く実施することが可能であると共に、運搬時には輸送用細胞培養装置200によって品質の劣化を抑制しつつ運搬することが可能となる。
また、培養ユニット10を特定するための識別情報が個別に付与された識別タグTを有すると共に、識別情報に対応付けて細胞培養に係る情報を記憶部に記憶することができる。したがって、自動細胞培養装置100の制御部130及び輸送用細胞培養装置200の制御部230では、識別タグTの識別情報を利用して培養ユニット10における細胞の培養に係る情報を記憶部から取得可能となり、当該情報を利用した制御が可能となるため、培養ユニット10に係る細胞培養に係る制御を、培養ユニット10毎により適切に行うことが可能となる。
また、上記の培養ユニット10A,10Bのように、培養槽11の振動を抑制するための振動抑制部を有する場合、培養ユニット10A,10Bを輸送用細胞培養装置に取り付けて運搬する際の振動が培養槽における細胞培養に影響を与えることを防ぐことができる。
また、本実施形態に係る自動細胞培養装置100では、第1細胞分布検出部としての濁度計15により検出された培養槽11内の細胞の分布に基づいて、培養槽へ供給する培養液F1の単位時間あたりの供給量を制御する構成とする。これにより、培養槽F1内の細胞の分布が想定された状況から変化した場合、これを補正する方向に培養液F1の単位時間あたりの供給量を自動的に制御することが可能となる。したがって、培養槽11内での培養液の流れを安定させながら、細胞の成長に応じた培養液の供給量の制御をより好適に行うことができる。
また、本実施形態に係る自動細胞培養装置100では、第1培養環境検出部としての溶存酸素計16、pH計17及び温度計22により検出された培養槽11内の培養環境に基づいて、培養槽11へ供給する培養液の調整を制御する構成とすることで、培養槽11内での培養環境を向上するための調整を自動的に制御することが可能となる。したがって、培養槽11内での細胞の成長に応じて培養環境を好適に維持することができる。
また、本実施形態に係る輸送用細胞培養装置200にように、第2培養液供給部に相当する高濃度酸素溶存培養液バッグ240もしくは培養液タンク270と、第2細胞回収部に相当する細胞回収バイアル243と、を含む第2培養環境調整部を有している。この場合、輸送用細胞培養装置200による培養槽11を含む培養ユニット10の輸送が長期化した場合であっても、培養期間の長期化に伴う培養液F1の劣化を防ぐことが可能となると共に、培養された細胞の回収等を好適に行うことが可能となる。したがって、輸送用細胞培養装置200を利用した培養ユニット10の運搬を好適に行うことができる。
また、本実施形態に係る輸送用細胞培養装置200では、第2細胞分布検出部としての濁度計215により検出された培養槽11内の細胞の分布に基づいて、培養槽へ供給する培養液F1の単位時間あたりの供給量を制御する構成とする。これにより、培養槽F1内の細胞の分布が想定された状況から変化した場合、これを補正する方向に培養液F1の単位時間あたりの供給量を自動的に制御することが可能となる。したがって、培養槽11内での培養液F1の流れを安定させながら、細胞の成長に応じた培養液F1の供給量の制御をより好適に行うことができる。
また、本実施形態に係る輸送用細胞培養装置200では、第2培養環境検出部としての溶存酸素計216、pH計217及び温度計222により検出された培養槽11内の培養環境に基づいて、培養槽11へ供給する培養液の調整を制御する構成とすることで、培養槽11内での培養環境を向上するための調整を自動的に制御することが可能となる。したがって、培養槽11内での細胞の成長に応じて培養環境を好適に維持することができる。
以上で説明した実施形態は本開示の一例を示すものである。本開示に係る細胞培養システム、培養ユニット、自動細胞培養装置及び輸送用細胞培養装置は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
例えば、上記実施形態で説明した自動細胞培養装置100もしくは輸送用細胞培養装置200に含まれる一部の機能を培養ユニット10が有する構成としてもよい。例えば、自動細胞培養装置100はインキュベータ21を有している、輸送用細胞培養装置200は温ガス発生部250を有している。これに対して、培養ユニット10側に温度制御機能を設けることで、自動細胞培養装置100もしくは輸送用細胞培養装置200側の一部機能を省略する構成としてもよい。