JP6863151B2 - タッチパネルペン用筆記性部材の選別方法、タッチパネルシステム、タッチパネルペン用筆記性部材、タッチパネル及び表示装置 - Google Patents

タッチパネルペン用筆記性部材の選別方法、タッチパネルシステム、タッチパネルペン用筆記性部材、タッチパネル及び表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、タッチパネルペン用筆記性部材の選別方法、タッチパネルシステム、タッチパネルペン用筆記性部材、タッチパネル及び表示装置に関する。
近年、タッチパネルは多くの携帯情報端末に搭載されるようになったこともあり、流通量が増加している。タッチパネルの表面には、種々の目的のために表面保護シートが貼着される場合がある。
従来主流であった抵抗膜式タッチパネルは、指やペンで繰り返し打点するような操作を行うことから、表面保護シートには高度な耐擦傷性が求められていた。
一方、現在の主流である静電容量式タッチパネルの表面保護シートには、指で操作する際の滑り性が求められている。従来の抵抗膜式は、複数個所を同時に検知できないため、画面上で指を動かすことはなかったものの、静電容量式タッチパネルは、複数個所を同時に検知可能であり、画面上で指を動かす操作が多いためである。
また、抵抗膜式及び静電容量式に共通して、タッチパネル用の表面保護シートには、指で操作した際の指紋の付着を抑制したり、付着した指紋を拭取りやすくする性能が求められている。
上記のようなタッチパネル用の表面保護シートとしては、例えば、特許文献1〜2が提案されている。
特開2015−114939号公報 特開2014−109712号公報
静電容量式タッチパネルは、静電容量の変化を計測して触れた箇所を認識することから、接触物には一定の導電性が必要である。このため、静電容量式タッチパネルの出現当初は、指での操作性のみが検討されており、タッチパネルペンにより文字や絵を描くなどの筆記性は検討されていなかった。抵抗膜式タッチパネルにおいても、タッチパネルペンを用いた際の操作は打点が主流であり、文字や絵を描く際の筆記性は重視されていなかった。
しかし、近年、静電容量式タッチパネルや電磁誘導型タッチパネルに入力可能なタッチパネルペンが提案され始めたこと、タッチパネルペンによる文字入力や描画に対応したアプリケーションが増加してきたことから、タッチパネル用の表面保護シートには、タッチパネルペンでの良好な筆記感が求められている。
しかしながら、従来提案された特許文献1〜2のタッチパネル用の表面保護シートは、タッチパネルペンでの筆記感について何ら検討していない。
また、近年、小学校や学習塾等の教育現場でタッチパネルが導入され、タッチパネルは極めて幅広い年代で用いられているようになっている。このような状況において、タッチパネルの中心ユーザーである中学生〜会社員が筆記感が良好であると評価するものであっても、筆圧が弱い傾向にある小学校低学年以下の子供の筆記感を満足できない場合があった。
本発明は、筆圧が弱い傾向にある小学校低学年以下の子供の筆記感を良好にすることができるタッチパネルペン用筆記性部材の選別方法、タッチパネルシステム、タッチパネルペン用筆記性部材、タッチパネル及び表示装置を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、動摩擦力を離散フーリエ変換した際の特定の周波数のパワースペクトルが、筆記感に影響を与えることを見出し、上記課題を解決するに至った。
本発明は、以下[1]〜[5]のタッチパネルペン用筆記性部材の選別方法、タッチパネルシステム、タッチパネルペン用筆記性部材、タッチパネル及び表示装置を提供する。
[1]下記条件1−1を満たすものをタッチパネルペン用筆記性部材として選別する、タッチパネルペン用筆記性部材の選別方法。
<条件1−1>
タッチパネルペン用筆記性部材の表面に対してタッチパネルペンを60度の角度で接触させた状態で固定し、前記タッチパネルペンに垂直荷重100gfをかけながら、前記タッチパネルペン用筆記性部材を14mm/秒の速度で片道40mmの長さを移動させた際の前記タッチパネルペンにかかる前記移動方向の動摩擦力f[gf]を1m秒間隔で測定する。
前記タッチパネルペン用筆記性部材の移動が開始した後の1001〜2000m秒を125msごとの8区間に分割する。前記動摩擦力を、区間ごとに、窓関数をハニング窓として離散フーリエ変換して、周波数ごとのパワースペクトル密度[(gf)/HZ]を算出する。
区間ごとに8Hz超100Hz以下のパワースペクトル密度の積分値を算出し、8区間の前記積分値の平均値M8-100を算出した際に、前記M8-100が0.230[(gf)]超を示す。
[2]表面にタッチパネルペン用筆記性部材を有するタッチパネルと、タッチパネルペンとからなるタッチパネルシステムであって、上記条件1−1を満たすタッチパネルシステム。
[3]上記条件1−1を満たす表面を有するタッチパネルペン用筆記性部材。
[4]表面に筆記性部材を有するタッチパネルであって、前記筆記性部材として、上記[3]に記載のタッチパネルペン用筆記性部材の上記条件1−1を満たす側の面がタッチパネルの表面を向くように配置してなるタッチパネル。
[5]表示素子上にタッチパネルを有する表示装置であって、前記タッチパネルが上記[4]に記載のタッチパネルである、タッチパネル付きの表示装置。
本発明のタッチパネルペン用筆記性部材の選別方法は、タッチパネルペンによる筆記試験を行わなくても、筆圧が弱い傾向にある小学校低学年以下の子供の筆記感を良好にし得る筆記性部材を選別することができ、筆記性部材の製品設計、品質管理を効率よくすることができる。また、本発明のタッチパネルシステム、タッチパネルペン用筆記性部材、タッチパネル及び表示装置は、筆圧が弱い傾向にある小学校低学年以下の子供の筆記感を良好にすることができる。
本発明のタッチパネルペン用筆記性部材の一実施形態を示す断面図である。 本発明のタッチパネルペン用筆記性部材の他の実施形態を示す断面図である。 摩擦力の測定方法を説明する概略図である。 タッチパネルペンの直径Dの算出方法を説明する図である。 平均傾斜角θaの算出方法を説明する図である。 本発明のタッチパネルの一実施形態を示す断面図である。 本発明のタッチパネルの他の実施形態を示す断面図である。 実施例1のタッチパネルペン用筆記性部材にタッチパネルペンで筆記した際の1m秒ごとの摩擦力の変化の一例を示す図である。 実施例2のタッチパネルペン用筆記性部材にタッチパネルペンで筆記した際の1m秒ごとの摩擦力の変化の一例を示す図である。 比較例1のタッチパネルペン用筆記性部材にタッチパネルペンで筆記した際の1m秒ごとの摩擦力の変化の一例を示す図である。 比較例2のタッチパネルペン用筆記性部材にタッチパネルペンで筆記した際の1m秒ごとの摩擦力の変化の一例を示す図である。 比較例3のタッチパネルペン用筆記性部材にタッチパネルペンで筆記した際の1m秒ごとの摩擦力の変化の一例を示す図である。
以下、本発明のタッチパネルペン用筆記性部材の選別方法、タッチパネルシステム、タッチパネルペン用筆記性部材、タッチパネル及び表示装置の実施の形態を説明する。
[タッチパネルペン用筆記性部材の選別方法]
本発明のタッチパネルペン用筆記性部材の選別方法は、下記条件1−1を満たすものをタッチパネルペン用筆記性部材として選別するものである。
<条件1−1>
タッチパネルペン用筆記性部材の表面に対してタッチパネルペンを60度の角度で接触させた状態で固定し、前記タッチパネルペンに垂直荷重100gfをかけながら、前記タッチパネルペン用筆記性部材を14mm/秒の速度で片道40mmの長さを移動させた際の前記タッチパネルペンにかかる前記移動方向の動摩擦力f[gf]を1m秒間隔で測定する。
前記タッチパネルペン用筆記性部材の移動が開始した後の1001〜2000m秒を125msごとの8区間に分割する。前記動摩擦力を、区間ごとに、窓関数をハニング窓として離散フーリエ変換して、周波数ごとのパワースペクトル密度[(gf)/HZ]を算出する。
区間ごとに8Hz超100Hz以下のパワースペクトル密度の積分値を算出し、8区間の前記積分値の平均値M8-100を算出した際に、前記M8-100が0.230[(gf)]超を示す。
なお、60度とは、タッチパネルペン用筆記性部材の表面と平行な方向を0度として、表面に対して60度傾いていることを意味する。
また、離散フーリエ変換した後の横軸(周波数)の最小分解能は、8Hz(1/0.125)である。
図1及び図2は、本発明のタッチパネルペン用筆記性部材10の一実施形態を示す断面図である。図1及び図2のタッチパネルペン用筆記性部材10は、基材1の一方の面に樹脂層2を有している。なお、図2の樹脂層2は、第一樹脂層2a、第二樹脂層2bの二層構造となっている。
本発明のタッチパネルペン用筆記性部材は、一方の表面が条件1−1を満たしていてもよいし、両方の表面が条件1−1を満たしていてもよい。
以下、タッチパネルペン用筆記性部材のことを「筆記性部材」、条件1−1を満たす表面のことを「筆記面」と称する場合がある。
<条件1−1>
本発明のタッチパネルペン用筆記性部材の選別方法は、上記条件1−1を満たす表面を有するものをタッチパネルペン用筆記性部材として選別するものである。
本発明者らは、筆圧が弱い傾向にある小学校低学年以下の子供が、どのような場合に筆記感が良好であると感じるかを検討するために、様々なタッチパネルペンおよび筆記シートを用いて、様々な文字種を筆記して検証を行ったところ、良好な筆記感と動摩擦力の絶対値とは必ずしも相関しないことを見出した。そして、本発明者らは、動摩擦力の絶対値ではなく、動摩擦力の周波数に着目した。より具体的には、時間ごとの動摩擦力を離散フーリエ変換して得られる周波数ごとのパワースペクトル密度に着目した。
そして、本発明者らは、良好な筆記感とパワースペクトル密度との関係について検証を行ったところ、8Hz超100Hz以下のパワースペクトル密度の積分値が、良好な筆記感に関連する傾向にあることを見出した。また、本発明者らの検証では、前述した傾向は、筆記する文字種に関連しない傾向であった。
上述した傾向から、8Hz超100Hz以下のパワースペクトル密度の積分値は、筆記時に受ける力(筆記時の抵抗)の検知に関連していると考えられる。そして、8Hz超100Hz以下のパワースペクトル密度の積分値が大きい場合、筆圧が弱くても筆記時の抵抗を感じることができるため、小学校低学年以下の子供が筆記時が良好であると感じやすいものと考えられる。
なお、条件1−1において8Hz以下のデータを除いているのは、8Hzはハニング窓の周期成分であり、8Hz以下の周波数成分は本来の信号とは大きく異なったものになっていると考えられるためである。
条件1−1においてM8-100が0.230[(gf)]以下の場合、筆圧が弱い際に十分な抵抗を感じることができないため、小学校低学年以下の子供が筆記する際の筆記感を良好にすることができない。
なお、M8-100が大きすぎる場合、長時間筆記した際に手に疲労感を受けやすい傾向がある。このため、M8-100は0.230[(gf)]超2.000[(gf)]以下であることが好ましく、0.230[(gf)]超1.700[(gf)]以下であることがより好ましく、0.230[(gf)]超1.500[(gf)]以下であることがさらに好ましい。
なお、条件1−1及び後述する条件1−2において、筆記性部材の移動が開始してから1000m秒以下のデータを除いてM8-100及びM100-200を算出している理由は、筆記開始直後は数値が不安定になりやすいことを考慮したものである。
また、条件1−1及び後述する条件1−2において、複数の区間に分割して離散フーリエ変換している理由は、複数の区間に分割し、離散フーリエ変換した後に平均化した方がノイズの影響を受けにくいからである。
本発明の筆記性部材の選別方法は、下記条件1−2を満たすものを選別することが好ましい。条件1−2を満たすことにより、筆記感をより良好にすることができる。
<条件1−2>
前記条件1−1において算出した周波数ごとのパワースペクトル密度を用いて、区間ごとに100Hz超200Hz以下のパワースペクトル密度の積分値を算出する。8区間の前記積分値の平均値M100-200を算出した際に、前記M100-200が0.400[(gf)]超を示す。
本発明者らは、様々なタッチパネルペンおよび筆記シートを用いて、様々な文字種を筆記して検証を行ったところ、ストップ・アンド・ゴーの動作(加速する動作)が多い漢字等の文字種の筆記感と、100Hz超200Hz以下のパワースペクトル密度の積分値とに関連する傾向があることを見出した。一方、ストップ・アンド・ゴーの動作(加速する動作)が少ない文字種に関しては、前述した関連はそれほど認められなかった。
上述した傾向から、100Hz超200Hz以下のパワースペクトル密度の積分値は、ストップ・アンド・ゴーの加速感の検知に関連していると考えられる。
条件1−2においてM100-200を0.400[(gf)]超とすることにより、筆記速度が遅い傾向にある小学校低学年以下の子供が筆記時に加速感を受けやすくなり、筆記感をより良好にすることができる。
なお、M100-200が大きすぎる場合、長時間筆記した際に手に疲労感を受けやすい傾向がある。このため、M100-200は0.400[(gf)]超20.000[(gf)]以下であることがより好ましく、0.450[(gf)]以上15.000[(gf)]以下であることがさらにより好ましく、0.500[(gf)]以上12.000[(gf)]以下であることがよりさらに好ましい。
本発明の筆記性部材の選別方法は、下記条件1−3を満たすものを選別することが好ましい。
<条件1−3>
1m秒ごとの動摩擦力の平均が15.0gf以上。
動摩擦力の平均(以下、「F」と称する場合がある。)を15.0gf以上とすることにより、筆記時に滑る感覚を抑制し、筆記感をより良好にすることができる。
なお、動摩擦力の平均は、筆記性部材の移動が開始してから1001m秒〜2000m秒の動摩擦力を平均したものである。
が大きいと、タッチパネルペンのペン先が磨耗しやすくなる傾向がある。このため、Fは、20.0gf以上45.0gf以下であることがより好ましく、25.0gf以上40.0gf以下であることがさらに好ましい。
本発明の筆記性部材の選別方法は、下記条件1−4を満たすものを選別することが好ましい。
<条件1−4>
前記条件1−1において、タッチパネルペン用筆記性部材の片道40mmの長さの移動が完了した後に、前記タッチパネルペンにかかる垂直荷重100gfを保持し、前記タッチパネルペン用筆記性部材の表面に対して前記タッチパネルペンを60度の角度で接触させたままの状態とする。この状態において、前記タッチパネルペンにかかる前記移動方向の残留摩擦力を0.001秒間隔で測定し、0.001秒ごとの残留摩擦力の平均を算出した際に、前記残留摩擦力の平均が10.0gf以上を示す。
残留摩擦力の平均(以下、「Fre」と称する場合がある。)は、一瞬筆記を停止する際のペン先の止まりやすさ、及び、タッチパネルペンを再始動する際に要する臨界的な力を示していると考えられる。
reの平均を10.0gf以上とすることにより、一瞬筆記を停止する際にペン先を止まりやすくできるとともに、筆記を一瞬停止して再始動する際にペン先が滑ることを抑制し、思い通りの方向に筆記方向を転換することができ、筆記感をより良好にすることができる。
なお、Freの平均が大きいと、筆記を一瞬停止して再始動する際の負荷が大きくなり、長時間筆記した際に手が疲労しやすくなる傾向があるとともに、思い通りの方向に筆記方向を転換しにくくなる傾向がある。
このため、Freは、15.0gf以上45.0gf以下であることがより好ましく、20.0gf以上35.0gf以下であることがさらに好ましい。
残留摩擦力の測定時間は、筆記性部材の片道40mmの長さの移動が完了してから500m秒経過後を測定開始時間として、そこから400m秒後を測定終了時間とする。各時間の残留摩擦力から、残留摩擦力の平均(Fre)を算出する。
本明細書において、M8-100、M100-200、F及びFreは、15個のサンプルを各1回ずつ測定した際の平均値とする。
図3は、動摩擦力及び残留摩擦力の測定方法を説明する概略図である。
図3では、タッチパネルペン200は筆記性部材10に接触した状態で保持具84によって固定されている。また、保持具84の上部には重り83を乗せるための土台85が付属されている。土台85上には重り83が乗せられており、該重りによってタッチパネルペンに垂直荷重がかけられている。筆記性部材10は可動台82上に固定されている。
摩擦力の測定時には、タッチパネルペンが上記のように固定された状態で、筆記性部材10が固定された可動台82を、筆記性部材とタッチパネルペンとの成す角の鋭角方向側(図3の右側)に所定の速度で移動する。この際、タッチパネルペン200には、可動台82の移動方向に動摩擦力が生じ、各時間の動摩擦力を算出できる。また、筆記性部材10の移動を完了した後の摩擦力である残留摩擦力を測定できる。
図3に示す測定が可能な装置としては、新東科学社製の商品名HEIDON−18L、HEIDON−14DRが挙げられる。
なお、本発明において、F、Fre等の摩擦力に関するパラメータは、下記(A)〜(E)のように測定することが好ましい。
(A)0点補正
タッチパネルペンを図3に示す装置にセットし、バランスをとり(このとき垂直荷重0gf)、タッチパネルペンがタッチパネルペン用筆記性部材の表面に接触していない状態での摩擦力が0gfとなるよう、装置にて0点補正をする。後述の(C)〜(E)は0点補正した摩擦力に基づいて算出している。
(B)実測時間
装置のSTARTボタンを押して、筆記性部材の移動を開始し、計測を始めた時点を「実測開始」の時間とする。
(C)パワースペクトル密度
離散フーリエ変換される区間における測定点数をNとする。測定間隔をΔtとするとm番目(m=0,1,・・・,N−1)の時刻はmΔtと表され、そのときの動摩擦力fをf(mΔt)と表すことができる。離散フーリエ変換されたあとの周波数の最小分解能をΔhとし、離散フーリエ変換された関数をF(kΔh)とする。(k=0,1,・・・,N−1)
このときF(kΔh)は下記式(i)にて定義される。
Figure 0006863151

上記式(i)において、「Δh=1/(NΔt)」である。
また、上記式(i)において、「w(mΔt)」は窓関数である。本明細書において、窓関数はハニング窓であり、下記式(ii)にて定義される。
Figure 0006863151

そして、周波数ごとのパワースペクトル密度P(kΔh)は下記式(iii)にて定義される。
Figure 0006863151

さらに、A[Hz]超B[Hz]以下のパワースペクトル密度の積分値は下記式(iv)にて算出できる。
Figure 0006863151

上記式(iv)において、kはA<kΔh≦Bを満たす。
(D)動摩擦力
測定開始後、1001〜2000m秒の動摩擦力の平均値を動摩擦力の平均(Fk)とする。
(E)残留摩擦力
筆記性部材の片道40mmの長さの移動が完了した後に、タッチパネルペンにかかる垂直荷重100gfを保持し、タッチパネルペン用筆記性部材の表面に対してタッチパネルペンを60度の角度で接触させたままの状態とする。この状態において、タッチパネルペンにかかる鋭角方向の摩擦力(残留摩擦力)を測定する。残留摩擦力の測定時間は、筆記性部材の片道40mmの長さの移動が完了してから500m秒経過後を測定開始時間として、そこから400m秒後を測定終了時間とする。各時間の残留摩擦力から、残留摩擦力の平均(Fre)を算出する。
なお、筆記性部材の表面及びタッチパネルペンのペン先に油脂(例えば、人間の指から筆記性部材の表面に転写した指紋成分)が付着していると、摩擦力に影響を与える可能性がある。このため、摩擦力の測定は、筆記性部材の表面及びタッチパネルペンのペン先に油脂が付着しないようにして実施することが好ましい。また、筆記性部材の表面及びタッチパネルペンのペン先に油脂が付着した場合には、筆記性部材の表面及びタッチパネルペンのペン先の形状、物性に影響を与えない範囲で脱脂処理を行った後に摩擦力を測定することが好ましい。
条件1−1〜条件1〜4の判定に用いるタッチパネルペンは特に限定されず、市販のタッチパネルペンの中から適宜選択できる。
また、条件1−1〜条件1−4の判定に用いるタッチパネルペンは、ペン先の直径が0.3〜2.5mmであることが好ましく、0.5〜2.0mmであることがより好ましく、0.7〜1.7mmであることがさらに好ましい。
ペン先の直径Dは、ペン軸に対して垂直方向側からタッチパネルペンを撮像した写真を基準として算出する。図4は、ペン軸に対して垂直方向側からタッチパネルペンを撮像した際のタッチパネルペンの外形を点線で表示したものである。図4(a)に示すように、該写真に対して、該写真の頂点を通り、かつ該写真からはみ出ない円を重ね合わせた際に、最大となる円の直径をペン先の直径Dとする。ただし、図4(b)に示すように、該写真が斜面を有し、かつ該斜面のペン軸に対する角度が40〜90度であれば、該斜面をはみ出して該円を重ね合わせてもよい。
また、本発明の筆記性部材の選別方法は、下記条件2−1を満たすものをタッチパネルペン用筆記性部材として選別することが好ましい。
<条件2−1>
ヘイズが30.0%以下
ヘイズを30.0%以下とすることにより、表示素子の解像性の低下を抑制しやすくできる。ヘイズは25.0%以下であることがより好ましく、20.0%以下であることがさらに好ましく、15.0%以下であることがよりさらに好ましい。また、欠陥を見えにくくして歩留まりを向上する観点から、ヘイズは10.0%以上であることが好ましい。
ヘイズ及び後述の全光線透過率を測定する際は、筆記性部材の筆記面(上記条件1−1を満たす面)とは反対側の表面から光を入射するものとする。筆記性部材の両面が筆記面の場合、光入射面はどちらの面であってもよい。なお、本明細書において、ヘイズ及び全光線透過率は、15個のサンプルを各1回ずつ測定した際の平均値とする。
また、本発明の筆記性部材の選別方法は、下記条件2−2を満たすものをタッチパネルペン用筆記性部材として選別することが好ましい。
<条件2−2>
JIS K7361−1:1997の全光線透過率が87.0%以上
全光線透過率を87.0%以上とすることにより、表示素子の輝度の低下を抑制できる。
全光線透過率は88.0%以上であることがより好ましく、89.0%以上であることがさらに好ましい。
本発明のタッチパネルペン用筆記性部材の選別方法を応用すれば、任意の筆記性部材に適したタッチパネルペンを選定することもできる。
[タッチパネルペン用筆記性部材]
本発明のタッチパネル用筆記性部材は、下記条件1−1を満たす表面を有するものである。
<条件1−1>
タッチパネルペン用筆記性部材の表面に対してタッチパネルペンを60度の角度で接触させた状態で固定し、前記タッチパネルペンに垂直荷重100gfをかけながら、前記タッチパネルペン用筆記性部材を14mm/秒の速度で片道40mmの長さを移動させた際の前記タッチパネルペンにかかる前記移動方向の動摩擦力f[gf]を1m秒間隔で測定する。
前記タッチパネルペン用筆記性部材の移動が開始した後の1001〜2000m秒を125msごとの8区間に分割する。前記動摩擦力を、区間ごとに、窓関数をハニング窓として離散フーリエ変換して、周波数ごとのパワースペクトル密度[(gf)/HZ]を算出する。
区間ごとに8Hz超100Hz以下のパワースペクトル密度の積分値を算出し、8区間の前記積分値の平均値M8-100を算出した際に、前記M8-100が0.230[(gf)]超を示す。
本発明の筆記性部材は、筆記面に対してタッチパネルペンを60度以外の角度(例えば30〜75度の範囲の何れかの角度)で接触させた状態で固定した際にも、条件1−1〜条件1−4を満たすことが好ましい。また、条件1−1〜条件1−4は、移動速度を14mm/秒以外の速度(例えば0.1〜100mm/秒の範囲の何れかの速度)とした際にも、上記範囲であることが好ましい。
本発明の筆記性部材は、さらに下記条件1−2を満たすことが好ましい。
<条件1−2>
前記条件1−1において算出した周波数ごとのパワースペクトル密度を用いて、区間ごとに100Hz超200Hz以下のパワースペクトル密度の積分値を算出する。8区間の前記積分値の平均値M100-200を算出した際に、前記M100-200が0.400[(gf)]超を示す。
本発明の筆記性部材は、さらに下記条件1−3を満たすことが好ましい。
<条件1−3>
1m秒ごとの動摩擦力の平均が15.0gf以上。
本発明の筆記性部材は、さらに下記条件1−4を満たすことが好ましい。
<条件1−4>
前記条件1−1において、タッチパネルペン用筆記性部材の片道40mmの長さの移動が完了した後に、前記タッチパネルペンにかかる垂直荷重100gfを保持し、前記タッチパネルペン用筆記性部材の表面に対して前記タッチパネルペンを60度の角度で接触させたままの状態とする。この状態において、前記タッチパネルペンにかかる前記移動方向の残留摩擦力を0.001秒間隔で測定し、0.001秒ごとの残留摩擦力の平均を算出した際に、前記残留摩擦力の平均が10.0gf以上を示す。
本発明の筆記性部材の条件1−1〜1−4の好適な範囲は、上述したタッチパネルペン用筆記性部材の選別方法の条件1−1〜1−4の好適な範囲と同様である。
また、本発明の筆記性部材は、ペン先の直径が上述した範囲のタッチパネルペン用の筆記性部材として用いることが好ましい。
また、本発明の筆記性部材は、下記条件2−1を満たすことが好ましい。
<条件2−1>
筆記性部材のJIS K7136:2000のヘイズが30.0%以下
また、本発明の筆記性部材は、下記条件2−2を満たすことが好ましい。
<条件2−2>
JIS K7361−1:1997の全光線透過率が87.0%以上
本発明の筆記性部材の条件2−1及び2−2の好適な範囲は、上述したタッチパネルペン用筆記性部材の選別方法の条件2−1及び2−2の好適な範囲と同様である。
<筆記性部材全体の構成>
本発明のタッチパネルペン用筆記性部材は、少なくとも一方の表面が条件1−1を満たしていれば、その構成は特に限定されない。
例えば、本発明のタッチパネルペン用筆記性部材10の構成としては、図1及び図2のように、基材1上に樹脂層2を有し、該樹脂層2の一方の表面が条件1−1を満たすものが挙げられる。樹脂層2は、図2のように、第一樹脂層2a、第二樹脂層2bの多層構造であってもよい。
なお、図示しないが、本発明のタッチパネルペン用筆記性部材10の構成は、基材を有さない樹脂層単層であってもよく、あるいは、基材及び樹脂層以外の他の層を有し、該他の層の表面が条件1−1を満たしていてもよい。他の層としては、帯電防止層、防汚層等が挙げられる。
筆記面は、「エンボス、サンドブラスト、エッチング等の物理的又は化学的処理」、「型による成型」、「コーティング」等により形成することができる。これら方法の中では、表面形状の再現性の観点からは「型による成型」が好適であり、生産性及び多品種対応の観点からは「コーティング」が好適である。
筆記性部材が条件1−1〜条件1−4を満たすためには、筆記性部材の筆記面が以下の物性(a)〜(d)を満たすことが好ましい。
なお、後述するRt、θa、Raを測定する際のカットオフ値は何れも0.8mmである。カットオフの値は、想定するペン先の直径が、好ましくは0.3〜2.5mm、より好ましくは0.5〜2.0mm、さらに好ましくは0.7〜1.7mmであることに鑑み、JISに規定されているカットオフ値の中から、前記直径のサイズを網羅するカットオフ値を選択したものである。
なお、最大断面高さRtは、カットオフ値0.8mmのJISB0601:1994に基づき算出された粗さ曲線の、評価長さにおける山高さ(平均線から山頂(粗さ曲線の山における最も高い標高点)までの高さ)の最大値と、谷深さ(平均線から谷底(粗さ曲線の谷における最も低い標高点)までの深さ)の最大値との和を意味する。
(a)筆記面の最大断面高さRtが5.0μm以上15.0μm以下。
(b)筆記面の平均傾斜角θaが1.0度以上10.0度以下。
(c)平均傾斜角θaと算術平均粗さRaとの比である[平均傾斜角θa(度)/算術平均粗さRa(μm)]が、9.0未満。
(d)算術平均粗さRaが0.15μm以上2.00μm以下。
なお、本明細書において、上記(a)〜(d)は、15個の筆記性部材のサンプルから得られた値の平均値とする。
上記物性(a)〜(d)を満たすことは、筆記面の凹凸形状が、比較的なだらかな海の中に、比較的少ない数の標高の高い山が存在していることを意味している。筆記面が上記物性(a)〜(d)を満たすことにより、条件1−1及び条件1−2を満たしやすくすることができる。特に、上記物性(a)及び(c)を満たすことが、条件1−1及び条件1−2を満たすための重要なファクターであると考えられる。また、筆記面が上記物性(b)及び(d)を満たすことにより、動摩擦力及び残留摩擦力のバランスが適切となり、条件1−3及び条件1−4を満たしやすくすることができる。
上記(a)のRtは、5.5μm以上12.0μm以下であることがより好ましく、6.0μm以上10.0μm以下であることがさらに好ましい。
上記(b)のθaは、1.2度以上8.0度以下であることがより好ましく、1.5度以上5.0度以下であることがより好ましい。
上記(c)の[θa(度)/Ra(μm)]は、2.0以上8.5以下であることがより好ましく、2.5以上8.0以下であることがさらに好ましい。
上記(d)のRaは、0.17μm以上1.50μm以下であることがより好ましく、0.20μm以上1.25μm以下であることがさらに好ましい。
上記(b)の「平均傾斜角θa」は、小坂研究所社製の表面粗さ測定器(商品名:SE−3400)の取り扱い説明書(1995.07.20改訂)に定義されている値であり、図5に示すように、基準長さL内での高さ方向の変化量の総和(h+h+h+・・・+h)を基準長さLで割ったもののアークタンジェントθa=tan−1{(h+h+h+・・・+h)/L}で求めることができる。なお、本明細書では、基準長さを1500分割し、1500点の高さデータを得て、該1500点の高さデータを元に平均傾斜角θaを算出するものとする。
また、本発明の筆記性部材は、筆記面の耐擦傷性を向上しつつ、タッチパネルペンの摩耗を抑制する観点から、筆記面のJIS K5600−5−4:1999の鉛筆硬度が2H以上9H以下であることが好ましく、3H以上7H以下であることがより好ましく、5H以上6H以下であることがさらに好ましい。
コーティングによる樹脂層の形成は、樹脂成分、粒子及び溶剤を含有してなる樹脂層形成塗布液を、グラビアコーティング、バーコーティング等の公知の塗布方法により基材上に塗布、乾燥、硬化することにより形成できる。コーティングにより形成した樹脂層が条件1−1〜条件1−4を満たしやすくするためには、粒子の平均粒子径、粒子の含有量、及び樹脂層の厚み等を後述の範囲とすることが好ましい。
なお、図2のように、樹脂層が2層以上から形成される場合は、少なくとも何れかの樹脂層に粒子を含有していればよいが、条件1−1〜条件1−4を満たしやすくする観点からは、最表面の樹脂層に粒子を含むことが好ましい。また、最表面の樹脂層が粒子を含み、下層の樹脂層が粒子を含まない構成とすることにより、筆記面の鉛筆硬度を向上しやすくできる。
樹脂層の粒子は、有機粒子及び無機粒子の何れも用いることができる。有機粒子としては、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル−スチレン共重合体、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ベンゾグアナミン−メラミン−ホルムアルデヒド縮合物、シリコーン、フッ素系樹脂及びポリエステル系樹脂等からなる粒子が挙げられる。無機粒子としては、シリカ、アルミナ、アンチモン、ジルコニア及びチタニア等からなる粒子が挙げられる。
また、粒子は、タッチパネルペンのペン先の摩耗抑制の観点から、球形粒子であることが好ましい。
樹脂層中の粒子の平均粒子径は、樹脂層の厚みにより異なるため一概には言えないが、条件1−1〜条件1−4を満たしやすくする観点から、6.0〜30.0μmが好ましく、10.0〜27.0μmであることがより好ましく、12.0〜25.0μmであることがさらに好ましい。粒子が凝集している場合、凝集粒子の平均粒子径が前記範囲を満たすことが好ましい。
粒子の平均粒子径は、以下の(y1)〜(y3)の作業により算出できる。
(y1)本発明の筆記性部材を光学顕微鏡にて透過観察画像を撮像する。倍率は500〜2000倍が好ましい。
(y2)観察画像から任意の10個の粒子を抽出し、個々の粒子の粒子径を算出する。粒子径は、粒子の断面を任意の平行な2本の直線で挟んだとき、該2本の直線間距離が最大となるような2本の直線の組み合わせにおける直線間距離として測定される。
(y3)同じサンプルの別画面の観察画像において同様の作業を5回行って、合計50個分の粒子径の数平均から得られる値を 樹脂層中の粒子の平均粒子径とする。
粒子は、粒子径分布が広いもの(単一粒子で粒子径分布が広いもの、あるいは、粒子径分布が異なる2種類以上の粒子を混合した混合粒子の粒子径分布が広いもの)であってもよいが、ギラツキを抑制する観点から、粒子径分布が狭い方が好ましい。具体的には、粒子の粒子径分布の変動係数は、25%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましい。
樹脂層中の粒子の含有量は、条件1−1〜条件1−4を満たしやすくする観点から、樹脂成分100質量部に対して、10〜40質量部であることが好ましく、12〜35質量部であることがより好ましく、15〜30質量部であることがさらに好ましい。
樹脂層の膜厚の好適な範囲は、樹脂層の実施形態によって若干異なる。例えば、粒子を含む樹脂層の厚みは、条件1−1〜条件1−4を満たしやすくする観点、筆記面の鉛筆硬度を向上させる観点及びカールを抑制する観点から、2.0〜15.0μmが好ましく、3.0〜12.0μmがより好ましく、5.0〜10.0μmがさらに好ましい。
また、条件1−1〜条件1−4を満たしやすくする観点から、[粒子の平均粒子径]/[粒子を含む樹脂層の膜厚]の比は、1.1〜3.5であることが好ましく、1.5〜3.2であることがより好ましく、2.0〜3.0であることがさらに好ましい。
粒子を含まない樹脂層は、粒子を含む樹脂層よりも基材側に位置することが好ましく、その厚みは、筆記面の鉛筆硬度を向上させる観点及びカールを抑制する観点から、3.0〜15.0μmとすることが好ましく、6.0〜10.0μmとすることがより好ましい。
樹脂層の膜厚は、例えば、樹脂層の膜厚は、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて撮影した断面の画像から20箇所の厚みを測定し、20箇所の値の平均値から算出できる。STEMの加速電圧は10kv〜30kV、STEMの倍率は1000〜7000倍とすることが好ましい。
樹脂層の樹脂成分は、熱硬化性樹脂組成物又は電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましく、筆記面の鉛筆硬度を向上する観点から、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことがより好ましく、その中でも紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことがさらに好ましい。
熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂を含む組成物であり、加熱により、硬化する樹脂組成物である。
熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物には、これら硬化性樹脂に、必要に応じて硬化剤が添加される。
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性官能基を有する化合物(以下、「電離放射線硬化性化合物」ともいう)を含む組成物である。電離放射線硬化性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合基、及びエポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。電離放射線硬化性化合物としては、エチレン性不飽和結合基を有する化合物が好ましく、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する化合物がより好ましく、中でも、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する、多官能性(メタ)アクリレート系化合物が更に好ましい。多官能性(メタ)アクリレート系化合物としては、モノマー及びオリゴマーのいずれも用いることができる。
なお、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も使用可能である。
多官能性(メタ)アクリレート系化合物のうち、2官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエトキシジアクリレート、ビスフェノールAテトラプロポキシジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート等が挙げられる。
3官能以上の(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、上記(メタ)アクリレート系モノマーは、分子骨格の一部を変性しているものでもよく、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、カプロラクトン、イソシアヌル酸、アルキル、環状アルキル、芳香族、ビスフェノール等による変性がなされたものも使用することができる。
また、多官能性(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等のアクリレート系重合体等が挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、多価アルコール及び有機ジイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応によって得られる。
また、好ましいエポキシ(メタ)アクリレートは、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と多塩基酸と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、及び2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等とフェノール類と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレートである。
上記電離放射線硬化性化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
電離放射線硬化性化合物が紫外線硬化性化合物である場合には、電離放射線硬化性組成物は、光重合開始剤や光重合促進剤等の添加剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α−ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α−アシルオキシムエステル、チオキサンソン類等から選ばれる1種以上が挙げられる。
これら光重合開始剤は、融点が100℃以上であることが好ましい。光重合開始剤の融点を100℃以上とすることにより、筆記性部材の製造過程や、タッチパネルの透明導電膜の形成過程で、残留した光重合開始剤が昇華して、製造装置や透明導電膜の汚染を防止することができる。
また、光重合促進剤は、硬化時の空気による重合阻害を軽減させ硬化速度を速めることができるものであり、例えば、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
樹脂層形成塗布液には、通常、粘度を調節したり、各成分を溶解または分散可能とするために溶剤を用いる。溶剤の種類によって、塗布、乾燥過程した後の樹脂層の表面状態が異なるため、溶剤の飽和蒸気圧、透明基材への溶剤の浸透性等を考慮して溶剤を選定することが好ましい。具体的には、溶剤は、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン等)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタン等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、アルコール類(ブタノール、シクロヘキサノール等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)等が例示でき、これらの混合物であってもよい。
溶剤の乾燥が遅すぎる場合、塗膜の乾燥過程で粒子が凝集しやすくなることにより、条件1−1〜条件1−4を満たしやすい表面形状を形成しづらくなる。したがって、溶剤としては、蒸発速度(n−酢酸ブチルの蒸発速度を100としたときの相対蒸発速度)が180以上である溶剤を、全溶剤中の80質量%超含むことが好ましく、85質量%以上含むことがより好ましい。相対蒸発速度が180以上の溶剤としては、トルエンが挙げられる。トルエンの相対蒸発速度は195である。一方、相対蒸発速度が180未満の溶剤としては、メチルイソブチルケトン(MIBK)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)、イソプロピルアルコール(IPA)等が挙げられる。
また、表面形状を適度に滑らかにして、筆記性部材の表面形状を上述した範囲にしやすくする観点からは、樹脂層形成塗布液には、レベリング剤を含有させることが好ましい。レベリング剤は、フッ素系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、フッ素シリコーン共重合体系レベリング剤等が挙げられる。レベリング剤の添加量としては、樹脂層形成塗布液の全固形分に対して0.01〜0.50重量%が好ましく、0.05〜0.40重量%がより好ましく、0.07〜0.30質量%がさらに好ましい。
基材としては、光透過性を有する基材が好ましく、プラスチックフィルム、ガラス等が挙げられ、プラスチックフィルムが好適である。
プラスチックフィルムは、ポリエステル、トリアセチルセルロース(TAC)、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリウレタン及び非晶質オレフィン(Cyclo−Olefin−Polymer:COP)等の樹脂から形成することができる。
これらプラスチックフィルムの中でも、機械的強度、寸法安定性及び上記物性(f)を満たしやすくする観点からは、延伸加工、特に二軸延伸加工されたポリエステルフィルムが好ましい。ポリエステルフィルムの中では、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましい。
基材の厚みは、5〜200μmであることが好ましく、10〜150μmであることがより好ましい。
[タッチパネル]
本発明のタッチパネルは、表面に筆記性部材を有するタッチパネルであって、前記筆記性部材として、本発明のタッチパネルペン用筆記性部材の条件1−1を満たす側の面がタッチパネルの表面を向くように配置してなるものである。
タッチパネルとしては、抵抗膜式タッチパネル、静電容量式タッチパネル、インセルタッチパネル、光学式タッチパネル、超音波式タッチパネル及び電磁誘導式タッチパネル等が挙げられる。
抵抗膜式タッチパネル100は、図6に示すように、導電膜30を有する上下一対の透明基板20の導電膜30同士が対向するようにスペーサー40を介して配置されてなる基本構成に、図示しない回路が接続されてなるものである。
抵抗膜式タッチパネルの場合、例えば、上部透明基板20として本発明の筆記性部材10を用い、該筆記性部材10の条件1−1を満たす側の面がタッチパネル100の表面を向くようにして用いる構成が挙げられる。また、図示しないが、抵抗膜式タッチパネルは、上部透明基板上に、本発明の筆記性部材を、条件1−1を満たす側の面が表面を向くようにして貼り合わせた構成や、上部透明基板上に、本発明の筆記性部材を、条件1−1を満たす側の面が表面を向くようにして載置し、フレーム等で固定した構成であってもよい。
静電容量式タッチパネルは、表面型及び投影型等が挙げられ、投影型が多く用いられている。投影型の静電容量式タッチパネルは、X軸電極と、該X軸電極と直交するY軸電極とを絶縁体を介して配置した基本構成に、回路が接続されてなるものである。該基本構成をより具体的に説明すると、1枚の透明基板上の別々の面にX軸電極及びY軸電極を形成する態様、透明基板上にX軸電極、絶縁体層、Y軸電極をこの順で形成する態様、図7に示すように、透明基板20上にX軸電極50を形成し、別の透明基板20上にY軸電極60を形成し、接着剤層等の絶縁体層70を介して積層する態様等が挙げられる。また、これら基本態様に、さらに別の透明基板を積層する態様が挙げられる。
静電容量式タッチパネルの場合、例えば、表面側の透明基板20として本発明の筆記性部材10を用い、該筆記性部材10の条件1−1を満たす側の面がタッチパネル100の表面を向くようにして用いる構成が挙げられる。また、図示しないが、静電容量式タッチパネルは、表面側の透明基板上に、本発明の筆記性部材を、条件1−1を満たす側の面が表面を向くようにして貼り合わせた構成や、表面側の透明基板上に、本発明の筆記性部材を、条件1−1を満たす側の面が表面を向くようにして載置し、フレーム等で固定した構成であってもよい。
電磁誘導式タッチパネルは、磁界を発生する専用ペンを用いるタッチパネルである。電磁誘導式タッチパネルは、ペンから生じる電磁エネルギーを検出するセンサー部を少なくとも有し、さらにセンサー部上に透明基板を有する。該透明基板は多層構成であってもよい。
電磁誘導式タッチパネルの場合、例えば、センサー部上に位置する透明基板のうち、最表面の透明基板として、本発明の筆記性部材を用い、該筆記性部材の条件1−1を満たす側の面がタッチパネルの表面を向くようにして用いる構成が挙げられる。あるいは、電磁誘導式タッチパネルの場合、センサー部上に位置する透明基板のうち、最表面の透明基板上に、本発明の筆記性部材を、条件1−1を満たす側の面が表面を向くようにして貼り合わせた構成や、該最表面の透明基板上に、本発明の筆記性部材を、条件1−1を満たす側の面が表面を向くようにして載置し、フレーム等で固定した構成であってもよい。
インセルタッチパネルは、2枚のガラス基板に液晶を挟んでなる液晶素子の内部に、抵抗膜式、静電容量式、光学式等のタッチパネル機能を組み込んだものである。
インセルタッチパネルの場合、表面側のガラス基板上に、本発明の筆記性部材の条件1−1を満たす側の面がタッチパネルの表面を向くように配置して用いる。なお、インセルタッチパネルの表面側のガラス基板と、本発明の筆記性部材との間には、偏光板等の他の層を有していてもよい。
[タッチパネルシステム]
本発明のタッチパネルシステムは、表面にタッチパネルペン用筆記性部材を有するタッチパネルと、タッチパネルペンとからなるタッチパネルシステムであって、下記条件1−1を満たすものである。
<条件1−1>
タッチパネルペン用筆記性部材の表面に対してタッチパネルペンを60度の角度で接触させた状態で固定し、前記タッチパネルペンに垂直荷重100gfをかけながら、前記タッチパネルペン用筆記性部材を14mm/秒の速度で片道40mmの長さを移動させた際の前記タッチパネルペンにかかる前記移動方向の動摩擦力f[gf]を1m秒間隔で測定する。
前記タッチパネルペン用筆記性部材の移動が開始した後の1001〜2000m秒を125msごとの8区間に分割する。前記動摩擦力を、区間ごとに、窓関数をハニング窓として離散フーリエ変換して、周波数ごとのパワースペクトル密度[(gf)/HZ]を算出する。
区間ごとに8Hz超100Hz以下のパワースペクトル密度の積分値を算出し、8区間の前記積分値の平均値M8-100を算出した際に、前記M8-100が0.230[(gf)]超を示す。
本発明のタッチパネルシステムは、さらに、上記条件1−2〜1−4を満たすことが好ましい。
本発明のタッチパネルシステムにおける、タッチパネル、タッチパネルペン用筆記性部材、及びタッチパネルペンの実施の形態は、例えば、上述の本発明のタッチパネルペン用筆記性部材の選別方法、タッチパネルペン用筆記性部材、及びタッチパネルにおいて示した実施の形態と同様のものが挙げられる。
本発明のタッチパネルシステムによれば、筆圧が弱い傾向にある小学校低学年以下の子供の筆記感を良好にすることができる。
[タッチパネル付きの表示装置]
本発明のタッチパネル付きの表示装置は、表示素子上にタッチパネルを有する表示装置であって、前記タッチパネルが本発明のタッチパネルであるものである。
表示素子としては、液晶表示素子、EL表示素子、プラズマ表示素子、電子ペーパー素子等が挙げられる。表示素子が液晶表示素子、EL表示素子、プラズマ表示素子、電子ペーパー素子の場合、これらの表示素子上に本発明のタッチパネルを載置する。
本発明のタッチパネル付きの表示装置は、筆圧が弱い傾向にある小学校低学年以下の子供の筆記感を良好にすることができる。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
1.測定及び評価
実施例及び比較例のタッチパネルペン用筆記性部材について、以下の測定及び評価を行った。
1−1.摩擦力
測定装置として新東科学社製の商品名「HEIDON−18L」を用い、図3に示すように、実施例及び比較例のタッチパネルペン用筆記性部材の樹脂層側の表面に、下記のタッチパネルペン1を60度の角度で接触させ、保持具で固定した。保持具上部の土台に100gの重りを乗せ、タッチパネルペンに垂直荷重100gfがかかるようにした。荷重をかけたまま、筆記性部材を固定した可動台を、可動台とタッチパネルペンとの成す角の鋭角方向側(図3の右側)に14mm/秒の速度で移動させた。片道40mmの長さを移動した際の該ペンにかかる可動台の移動方向(ペンの鋭角方向)の摩擦力を測定した。さらに、可動台の移動終了後、筆記性部材の表面に対してタッチパネルペンを60度の角度で接触させたままで、タッチパネルペンにかかる垂直荷重を解除し、この状態においてタッチパネルペンにかかる可動台の移動方向(ペンの鋭角方向)の残留摩擦力Freを測定した。
サンプリング時間(測定間隔)は0.001秒とし、測定時の雰囲気は、温度は23℃±5℃、相対湿度40〜65%とした。なお、測定開始前に、各サンプルを23℃±5℃、相対湿度40〜65%の雰囲気に10分以上放置した。その他の解析条件等を以下に示す。
計測された結果を元に、上述した(A)〜(E)の手順に従い、条件1−1のM8-100、条件1−2のM100-200、条件1−3の動摩擦力の平均(F)、条件1−4の残留摩擦力の平均(Fre)を算出した。パワースペクトル密度の積分値の算出(特に離散フーリエ変換の計算)にはフリーソフトウェア「R」(version3.3.3)を用いた。
なお、各実施例及び比較例のM8-100、M100-200、F、Freは、15個のサンプルを各1回ずつ測定した際の平均値とした。結果を表1に示す。
<装置設定>
・RANGE:100%FS
・FILTER:PASS
・POLARITY:OFF
・ロードセルのキャリブレーション(ゼロとスパン値の入力):アナログダイヤル設定
<解析条件等>
・計測ソフト名:Surface Track Version 3,00D
・Load:100gf
・Scale:100%
・Sample Rate:1ms
・Samples:4000
・Max Inst Load:1000gf
<タッチパネルペン1>
・マイクロソフト社製の商品名「サーフェスプロ4」に付属のタッチパネルペン(ペン先:HB)
・ペン先の構成:ウレタン樹脂バインダーおよびポリエステル繊維との混合物と、空気孔とが混在した複合体
・ペン先の直径:1.2mm
1−2.筆記感
実施例及び比較例のタッチパネルペン用筆記性部材の樹脂層側の面と反対側の面を、東レ社製の光学透明粘着シート(厚み100μm)を介してガラス板に貼り合わせたサンプルAを作製した。上記タッチパネルペン1を用い、前記サンプルAの筆記性部材側の面に対して30秒間試し書きを行った。
筆記時の感触が良好なものを2点、どちらともいえないものを1点、筆記時の感触が好みではないものを0点として、7〜8歳の小学生の20人が評価を行った。20人の平均点が1.6点以上のものをA、1.2点以上1.6点未満のものをB、1.0点以上1.2点未満のものをC、1.0点未満のものをDとした。
評価時の雰囲気は、温度は23℃±5℃、湿度50%±10%とした。なお、評価開始前に、各サンプルを23℃±5℃、湿度50%±10%の雰囲気に10分以上放置した。
1−3.表面形状の測定
実施例及び比較例のタッチパネル用筆記性部材を10cm四方に切断した。切断箇所は、目視でゴミや傷などの異常点がない事を確認の上、ランダムな部位から選択した。切断した筆記性部材を東レ社製の光学透明粘着シート(屈折率:1.47、厚み100μm)を介して、縦10cm×横10cmの大きさの黒色板(クラレ社製、商品名:コモグラス 品番 :DFA502K、厚み2.0mm)を貼り合わせたサンプルBをそれぞれ15個準備した。
表面粗さ測定器(型番:SE−3400/小坂研究所株式会社製)を用いて、計測ステージにサンプルBが固定かつ密着した状態となるようにセットしたのち、下記の測定条件により、下記の測定項目について、サンプルBのタッチパネルペン用筆記性部材の樹脂層側の表面形状を測定した。そして、15個のサンプルBの平均値を、各実施例及び比較例のRa、Rt及びθaとした。測定時の雰囲気は、温度は23℃±5℃、相対湿度40〜65%とした。また、測定開始前に、各サンプルを23℃±5℃、相対湿度40〜65%の雰囲気に10分以上放置した。結果を表1に示す。
<測定条件>
[表面粗さ検出部の触針]
小坂研究所社製の商品名SE2555N(先端曲率半径:2μm、頂角:90度、材質:ダイヤモンド)
[表面粗さ測定器の測定条件]
・評価長さ:カットオフ値λcの5倍
・予備長さ:カットオフ値λcの0.5倍
・触針の送り速さ:0.5mm/s
・縦倍率:2000倍
・スキッド:用いない(測定面に接触なし)
・カットオフフィルタ種類:ガウシャン
・レベリング:オールデータ
・サンプリングモード:c=1500
・JISモード:JIS1994
・不感帯レベル:10%
・tp/PC曲線:ノーマル
<測定項目>
・カットオフ値0.8mmのJIS B0601:1994の算術平均粗さRa
・カットオフ値0.8mmのJISB0601:1994に基づき算出された粗さ曲線の、評価長さにおける山高さ(平均線から山頂(粗さ曲線の山における最も高い標高点)までの高さ)の最大値と、谷深さ(平均線から谷底(粗さ曲線の谷における最も低い標高点)までの深さ)の最大値との和(最大断面高さRt)
・カットオフ値0.8mmの平均傾斜角θa
1−4.ヘイズ、全光線透過率
実施例及び比較例のタッチパネル用筆記性部材を10cm四方に切断したサンプルを15個作製した。ヘイズメーター(HM−150、村上色彩技術研究所製)を用いて、ヘイズ(JIS K−7136:2000)、及び全光線透過率(JIS K7361−1:1997)を測定した。そして、15個のサンプルの平均値を、各実施例及び比較例のヘイズ及び全光線透過率とした。測定時の雰囲気は、温度は23℃±5℃、相対湿度40〜65%とした。また、測定開始前に、各サンプルを23℃±5℃、相対湿度40〜65%の雰囲気に10分以上放置した。光入射面は基材側とした。結果を表1に示す。
2.タッチパネルペン用筆記性部材の作製
[実施例1]
基材としてポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み100μm、東洋紡社製、商品名A4300)を用い、該基材上に、下記処方の樹脂層塗布液1を乾燥後の厚みが10μmとなるように塗布、乾燥、紫外線照射して、樹脂層を形成し、実施例1のタッチパネルペン用筆記性部材を得た。
<樹脂層塗布液1>
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 100部
・セルロース誘導体(酢酸プロピオン酸セルロース) 1部
・有機粒子 3部
(球状アクリル粒子、平均粒子径25μm)
・無機粒子 14部
(ゲル法不定形シリカ、疎水化処理、平均粒子径4.0μm)
・光重合開始剤 5部
(BASF社製、イルガキュア184)
・シリコーン系レベリング剤 0.1部
(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、TSF4460)
・溶剤1(トルエン) 170部
・溶剤2(メチルイソブチルケトン) 45部
[実施例2]
基材としてポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み100μm、東洋紡社製、商品名A4300)を用い、該基材上に、下記処方の樹脂層塗布液2を乾燥後の厚みが5μmとなるように塗布、乾燥、紫外線照射して、樹脂層を形成し、実施例2のタッチパネルペン用筆記性部材を得た。
<樹脂層塗布液2>
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 90部
・アクリル樹脂 10部
(PMMA;平均分子量75,000)
・有機粒子 30部
(球状アクリル、平均粒子径14.0μm)
・光重合開始剤 3部
(BASF社製、イルガキュア184)
・シリコーン系レベリング剤 0.2部
(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、TSF4460)
・溶剤1(トルエン) 173部
・溶剤2(シクロヘキサノン) 24部
[比較例1]
基材としてポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み100μm、東洋紡社製、商品名A4300)を用い、該基材上に、下記処方の樹脂層塗布液3を乾燥後の厚みが8μmとなるように塗布、乾燥、紫外線照射して、樹脂層を形成し、比較例1のタッチパネルペン用筆記性部材を得た。
<樹脂層塗布液3>
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 60部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 40部
・有機粒子 2部
(球状ポリスチレン粒子、平均粒子径5.0μm)
・無機粒子 15部
(ゲル法不定形シリカ、疎水化処理、平均粒子径4.0μm)
・光重合開始剤 3.5部
(BASF社製、イルガキュア184)
・シリコーン系レベリング剤 0.1部
(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、TSF4460)
・溶剤1(トルエン) 120部
・溶剤2(シクロヘキサノン) 50部
[比較例2]
基材としてポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み100μm、東洋紡社製、商品名A4300)を用い、該基材上に、下記処方の樹脂層塗布液4を乾燥後の厚みが5μmとなるように塗布、乾燥、紫外線照射して、樹脂層を形成し、比較例2のタッチパネルペン用筆記性部材を得た。
<樹脂層塗布液4>
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 38部
・イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート 22部
・光重合開始剤 4部
(BASF社製、イルガキュア184)
・シリコーン系レベリング剤 0.1部
(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、TSF4460)
・透光性粒子 10部
(球状ポリアクリル−スチレン共重合体(平均粒径5μm、屈折率1.525)
・フュームドシリカ 5部)
(平均一次粒子径12nm)
・溶剤1(トルエン) 80部
・溶剤2(シクロヘキサノン) 20部
[比較例3]
基材としてポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み100μm、東洋紡社製、商品名A4300)を用い、該基材上に、下記処方の樹脂層塗布液5を乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布、乾燥、紫外線照射して、樹脂層を形成し、比較例3のタッチパネルペン用筆記性部材を得た。
<樹脂層塗布液5>
・ポリエステルアクリレート 50部
・ウレタンアクリレート 110部
・光重合開始剤 5部
(BASF社製、イルガキュア184)
・フッ素シリコーン共重合系レベリング剤 0.2部
(信越化学工業社製、X−71−1203M)
・溶剤1(メチルエチルケトン) 50部
・溶剤2(メチルイソブチルケトン) 150部
Figure 0006863151
表1に示すように、条件1−1を満たす実施例の筆記性部材は、筆記感の評価が良好となっている。このことは、条件1−1を満たす筆記性部材を選択することは、筆圧が弱い傾向にある小学校低学年以下の子供の筆記感を良好にできる筆記性部材の選択につながることを示している。
3.タッチパネルの作製
実施例及び比較例のタッチパネルペン用筆記性部材の基材側の面に、厚み20nmのITOの導電性膜をスパッタリング法で形成し、上部電極板とした。次いで、厚み1mmの強化ガラス板の一方の面に、厚み約20nmのITOの導電性膜をスパッタリング法で形成し、下部電極板とした。次いで、下部電極板の導電性膜を有する面に、スペーサー用塗布液として電離放射線硬化型樹脂(Dot Cure TR5903:太陽インキ社)をスクリーン印刷法によりドット状に印刷した後、高圧水銀灯で紫外線を照射して、直径50μm、高さ8μmのスペーサーを1mmの間隔で配列させた。
次いで、上部電極板と下部電極板とを、導電性膜どうしを対向するように配置させ、厚み30μm、幅3mmの両面接着テープで縁を接着し、実施例1〜2及び比較例1〜3の抵抗膜式タッチパネルを作製した。
実施例1〜2及び比較例1〜3の抵抗膜式タッチパネルに上記タッチパネルペン1で筆記したところ、筆記感は表1の評価と同様であった。この結果は、タッチパネルと、タッチパネルペンとの組み合わせからなるタッチパネルシステムにおいて、条件1−1を満たすタッチパネルシステムは、筆圧が弱い傾向にある小学校低学年以下の子供が筆記する際に、良好な筆記感を付与できることを示している。
4.表示装置の作製
実施例1〜2及び比較例1〜3のタッチパネルペン用筆記性部材と、市販の超高精細液晶表示装置(シャープ製のスマートフォン、商品名:SH−03G、画素密度480ppi)とを、透明粘着剤を介して貼り合わせ、実施例1〜2及び比較例1〜3の表示装置を作製した。なお、貼り合わせの際は、タッチパネルペン用筆記性部材の基材側の面が表示素子側を向くようにした。
実施例1〜2及び比較例1〜3の表示装置に上記タッチパネルペン1で筆記したところ、各タッチパネルペンの筆記感は表1の評価と同様であった。
本発明のタッチパネルペン用筆記性部材の選別方法は、筆記性部材の製品設計、品質管理を効率良くできる点で有用である。また、本発明のタッチパネルペン用筆記性部材、タッチパネル、タッチパネルシステム及び表示装置は、筆圧が弱い傾向にある小学校低学年以下の子供の筆記感を良好にできる点で有用である。
1:基材
2:樹脂層
10:タッチパネルペン用筆記性部材
20:透明基板
30:導電膜
40:スペーサー
50:X軸電極
60:Y軸電極
70:絶縁体層
82:可動台
83:重り
84:保持具
85:土台
100:タッチパネル
200:タッチパネルペン

Claims (8)

  1. 下記条件1−1を満たすものをタッチパネルペン用筆記性部材として選別する、タッチパネルペン用筆記性部材の選別方法。
    <条件1−1>
    タッチパネルペン用筆記性部材の表面に対してタッチパネルペンを60度の角度で接触させた状態で固定し、前記タッチパネルペンに垂直荷重100gfをかけながら、前記タッチパネルペン用筆記性部材を14mm/秒の速度で片道40mmの長さを移動させた際の前記タッチパネルペンにかかる前記移動方向の動摩擦力f[gf]を1m秒間隔で測定する。
    前記タッチパネルペン用筆記性部材の移動が開始した後の1001〜2000m秒を125msごとの8区間に分割する。前記動摩擦力を、区間ごとに、窓関数をハニング窓として離散フーリエ変換して、周波数ごとのパワースペクトル密度[(gf)/HZ]を算出する。
    区間ごとに8Hz超100Hz以下のパワースペクトル密度の積分値を算出し、8区間の前記積分値の平均値M8-100を算出した際に、前記M8-100が0.230[(gf)]超を示す。
  2. さらに、下記条件1−2を満たすものをタッチパネルペン用筆記性部材として選別する、請求項1に記載のタッチパネルペン用筆記性部材の選別方法。
    <条件1−2>
    前記条件1−1において算出した周波数ごとのパワースペクトル密度を用いて、区間ごとに100Hz超200Hz以下のパワースペクトル密度の積分値を算出する。8区間の前記積分値の平均値M100-200を算出した際に、前記M100-200が0.400[(gf)]超を示す。
  3. さらに、下記条件1−3を満たすものをタッチパネルペン用筆記性部材として選別する、請求項1又は2に記載のタッチパネルペン用筆記性部材の選別方法。
    <条件1−3>
    1m秒ごとの動摩擦力の平均が15.0gf以上。
  4. さらに、下記条件1−4を満たすものをタッチパネルペン用筆記性部材として選別する、請求項1〜3の何れか1項に記載のタッチパネルペン用筆記性部材の選別方法。
    <条件1−4>
    前記条件1−1において、タッチパネルペン用筆記性部材の片道40mmの長さの移動が完了した後に、前記タッチパネルペンにかかる垂直荷重100gfを保持し、前記タッチパネルペン用筆記性部材の表面に対して前記タッチパネルペンを60度の角度で接触させたままの状態とする。この状態において、前記タッチパネルペンにかかる前記移動方向の残留摩擦力を0.001秒間隔で測定し、0.001秒ごとの残留摩擦力の平均を算出した際に、前記残留摩擦力の平均が10.0gf以上。
  5. 表面にタッチパネルペン用筆記性部材を有するタッチパネルと、タッチパネルペンとからなるタッチパネルシステムであって、下記条件1−1を満たすタッチパネルシステム。
    <条件1−1>
    タッチパネルペン用筆記性部材の表面に対してタッチパネルペンを60度の角度で接触させた状態で固定し、前記タッチパネルペンに垂直荷重100gfをかけながら、前記タッチパネルペン用筆記性部材を14mm/秒の速度で片道40mmの長さを移動させた際の前記タッチパネルペンにかかる前記移動方向の動摩擦力f[gf]を1m秒間隔で測定する。
    前記タッチパネルペン用筆記性部材の移動が開始した後の1001〜2000m秒を125msごとの8区間に分割する。前記動摩擦力を、区間ごとに、窓関数をハニング窓として離散フーリエ変換して、周波数ごとのパワースペクトル密度[(gf)/HZ]を算出する。
    区間ごとに8Hz超100Hz以下のパワースペクトル密度の積分値を算出し、8区間の前記積分値の平均値M8-100を算出した際に、前記M8-100が0.230[(gf)]超を示す。
  6. 下記条件1−1を満たす表面を有するタッチパネルペン用筆記性部材。
    <条件1−1>
    タッチパネルペン用筆記性部材の表面に対してタッチパネルペンを60度の角度で接触させた状態で固定し、前記タッチパネルペンに垂直荷重100gfをかけながら、前記タッチパネルペン用筆記性部材を14mm/秒の速度で片道40mmの長さを移動させた際の前記タッチパネルペンにかかる前記移動方向の動摩擦力f[gf]を1m秒間隔で測定する。
    前記タッチパネルペン用筆記性部材の移動が開始した後の1001〜2000m秒を125msごとの8区間に分割する。前記動摩擦力を、区間ごとに、窓関数をハニング窓として離散フーリエ変換して、周波数ごとのパワースペクトル密度[(gf)/HZ]を算出する。
    区間ごとに8Hz超100Hz以下のパワースペクトル密度の積分値を算出し、8区間の前記積分値の平均値M8-100を算出した際に、前記M8-100が0.230[(gf)]超を示す。
  7. 表面に筆記性部材を有するタッチパネルであって、前記筆記性部材として、請求項6に記載のタッチパネルペン用筆記性部材の前記条件1−1を満たす側の面がタッチパネルの表面を向くように配置してなるタッチパネル。
  8. 表示素子上にタッチパネルを有する表示装置であって、前記タッチパネルが請求項7に記載のタッチパネルである、タッチパネル付きの表示装置。
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