本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当する部分については、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
図1は、この発明の実施の形態に従う温水装置の構成を示す概略図である。本実施の形態に従う温水装置は、温水端末を循環する熱媒(水)と燃焼ガスとの間で熱交換を行なうように構成される。温水端末は、高温端末20および低温端末21(図4参照)を含んでいる。高温端末20はたとえば浴室暖房装置であり、低温端末21はたとえば床暖房装置である。
図1を参照して、温水装置は、熱媒循環回路1と、一次熱交換器2と、二次熱交換器3と、循環ポンプ4と、熱媒タンク5と、バーナ(燃焼装置)6と、ファン(送風装置)7と、弁8,9と、制御装置10と、低温サーミスタ11と、高温サーミスタ12とを備える。
熱媒循環回路1は熱媒が循環するためのものである。一次熱交換器2および二次熱交換器3は熱媒循環回路1に接続されている。一次熱交換器2および二次熱交換器3は、熱媒と燃焼ガスとの間で熱交換する。一次熱交換器2は燃焼ガスの顕熱を吸収可能に構成されており、二次熱交換器3は燃焼ガスの潜熱を吸収可能に構成されている。一次熱交換器2と二次熱交換器3とは互いに接続されている。一次熱交換器2はバーナ6の上方に位置し、二次熱交換器3は一次熱交換器2の上方に位置している。
循環ポンプ4は、熱媒循環回路1に熱媒を循環させる。循環ポンプ4は、一次熱交換器2よりも熱媒循環回路1の上流側に配置されている。熱媒タンク5は、熱媒の温度変化に起因した堆積の膨張に伴う圧力上昇または収縮に伴う圧力低下を吸収し緩和する。また、熱媒タンク5は、熱媒を補水可能に構成されている。熱媒タンク5は、循環ポンプ4よりも熱媒循環回路1の上流側に配置されている。
バーナ6は、燃焼ガスを生成する。ファン7は、バーナ6に燃焼用の空気を供給する。ファン7は、バーナ6よりも下方に配置されている。弁8は、低温往き回路1aから低温端末21(図4)への熱媒の流れを許容するように構成されている。弁9は、高温往き回路1bから高温端末20への熱媒の流れを許容するように構成されている。弁8は、高温往き回路1bから高温端末20へ熱媒が流れているときには閉止可能に構成されている。弁9は、低温往き回路1aから低温端末21へ熱媒が流れているときには閉止可能に構成されている。
低温サーミスタ11は、熱媒タンク5に接続されている。低温サーミスタ11は低温往き回路1aの温度ThLを検出し、検出値を示す信号を制御装置10に与える。高温サーミスタ12は、一次熱交換器2よりも下流側の熱媒循環回路1に接続されている。高温サーミスタ12は高温往き回路1bの温度ThHを検出し、検出値を示す信号を制御装置10に与える。
熱媒循環回路1は、高温往き回路1bと、低温往き回路1aと、バイパス回路1cとを有する。低温往き回路1aは、温水端末(高温端末20および低温端末21)から戻ってきた熱媒を二次熱交換器3で加熱して低温端末21へ供給するように構成されている。高温往き回路1bは、温水端末から戻ってきた熱媒を二次熱交換器3で加熱した後に一次熱交換器2で加熱して高温端末20に供給するように構成されている。バイパス回路1cは、高温往き回路1bを分岐し、高温端末20に供給する熱媒の一部を熱媒タンク5よりも上流側の熱媒循環回路1に合流させるように構成されている。
次に、本実施の形態に従う温水装置の高温暖房時の動作について説明する。
図1を参照して、高温端末20から戻ってきた熱媒が熱媒循環回路1を通って二次熱交換器3に流入し、二次熱交換器3で加熱される。高温端末20から戻ってきた熱媒の温度はたとえば60℃であり、二次熱交換器3で加熱された後の熱媒の温度は約62℃である。二次熱交換器3で加熱された熱媒は熱媒タンク5に流入した後、熱媒タンク5から循環ポンプ4に流入する。そして、循環ポンプ4が熱媒を送り出すことで、熱媒が一次熱交換器2に流入する。一次熱交換器2で加熱された熱媒は、高温往き回路1bを通って高温端末20に供給される。高温端末20に供給される熱媒の温度はたとえば80℃である。すなわち、高温サーミスタ12の検出値ThHは80℃となる。この場合、高温往き回路1bに接続されたバイパス回路1cに流入する熱媒の温度も同じく80℃である。
なお、バイパス回路1cが熱媒タンク5に接続されているため、一次熱交換器2で加熱された高温の熱媒が熱媒タンク5に流入する。この結果、熱媒タンク5の温度は約70℃となる。
高温暖房時には、制御装置10は、高温サーミスタ12の検出値ThHに基づいて、高温往き回路1bから高温端末20に供給される熱媒の温度が設定温度Thsになるように、バーナ6およびファン7を制御する。図1の例では、設定温度Thsが80℃である場合が示されている。
暖房運転中、二次熱交換器3では、燃焼ガスの潜熱を回収する際に、燃焼ガス中の水蒸気が冷却および凝縮されることにより、強酸性の凝結水であるドレンが発生する。発生したドレンは、中和器15を通すことにより中和処理が施されて、温水装置の外部に排出される。
具体的には、ドレンを中和処理するための構成として、温水装置は、トレイ13、排水管14、および中和器15をさらに備える。トレイ13は、二次熱交換器3の下方に配置されており、二次熱交換器3から滴下したドレンを集水するように構成される。トレイ13は、排水管14を介して中和器15に接続されている。したがって、トレイ13に集められたドレンは、排水管14を介して中和器15に回収される。
中和器15は、回収されたドレンに対して中和処理を施す。具体的には、中和器15には、炭酸カルシウム等の公知の中和剤16が充填されている。ドレンは中和剤16と接触することで中和される。
中和剤16はドレンを中和することによって消費される。ドレンの中和性能を維持するためには、中和器15の寿命を判定して、中和器15の交換または中和剤16の補充などのメンテナンスを行なう必要がある。
そこで、本実施の形態に従う温水装置では、以下に述べる手法を用いて中和器15の寿命を判定し、中和器15の寿命が到来したことを報知する。これにより、ユーザに対して中和器15のメンテナンスの必要性を注意喚起することができる。
図2は、図1に示した制御装置10の構成を説明するための機能ブロック図である。
図2を参照して、制御装置10は、循環ポンプ4、バーナ6、ファン7、弁8,9、低温サーミスタ11および高温サーミスタ12の各々と電気的に接続されている。制御装置10は、さらに、設定部38および報知部40の各々と電気的に接続されている。
設定部38は、温水装置の高温暖房および低温暖房時の各々における設定温度Thsを制御部30に与える。高温暖房時の設定温度Thsはたとえば80℃〜70℃であり、低温暖房時の設定温度Thsはたとえば60℃〜50℃である。
報知部40は、温水装置の運転に関する情報を報知するように構成される。報知部40は、後述する中和器15の寿命判定において、中和器15の寿命が到来したことを報知するために用いられる。設定部38および報知部40の少なくとも一方は、たとえば温水装置を遠隔操作するためのリモートコントローラによって実現することができる。
制御装置10は、制御部30、計測部32、判定部34、およびテーブル36を含む。制御部30は、設定温度Ths、低温サーミスタ11の検出値ThL、および高温サーミスタ12の検出値ThHに基づいて、温水装置の暖房運転を制御する。具体的には、高温暖房時には、制御部30は、弁8を閉止するとともに、循環ポンプ4を駆動させて高温往き回路1bに熱媒を循環させる。制御部30は、さらに、高温サーミスタ12により検出される高温往き回路1bの温度ThHが設定温度Thsになるように、バーナ6の燃焼熱量およびファン7の回転速度を制御する。
また、低温暖房時には、弁9を閉止するとともに、循環ポンプ4を駆動させて低温往き回路1aに熱媒を循環させる。制御部30は、さらに、低温サーミスタ11により検出される低温往き回路1aの温度ThLが設定温度Thsになるように、バーナ6の燃焼熱量およびファン7の回転速度を制御する。
計測部32は、温水装置の使用時間を計測する。温水装置の使用時間とは、温水装置の暖房運転時間に相当し、実質的にバーナ6の燃焼時間に相当する。計測部32は、使用時間の計測結果を判定部34に与える。
判定部34は、計測部32により計測された使用時間を積算することにより、温水装置の累積使用時間を算出する。なお、累積使用時間は、出荷時等の初期状態において0に設定されている。また、累積使用時間は、中和器15の交換または中和剤16の補充などのメンテナンスが行なわれ、温水装置に設けられた図示しないリセットスイッチが押されると、0にリセットされる。累積使用時間は、制御装置10内のメモリ(図示せず)に記憶することができる。
判定部34は、設定温度Ths、高温サーミスタ12の検出値ThH、および温水装置の累積使用時間に基づいて、中和器15の寿命を判定する。具体的には、判定部34は、設定温度Thsおよび高温サーミスタ12の検出値ThHに基づいて、二次熱交換器3でのドレン発生量を推定する。そして、判定部34は、推定されたドレン発生量を用いて、中和器15の寿命を判定する。
(ドレン発生量の推定処理)
最初に、二次熱交換器3でのドレン発生量を推定する処理について説明する。
図3は、本実施の形態に従う温水装置の高温暖房時の動作について説明する図であって、図1と対比される図である。図3を参照して、図1とは、設定温度Thsが同じであるが(Ths=80℃)、高温端末20から戻ってきた熱媒の温度、高温端末20に供給される熱媒の温度が異なっている。
図3では、高温端末20から戻ってきた熱媒の温度はたとえば30℃であり、高温端末20に供給される熱媒の温度はたとえば50℃である。すなわち、高温サーミスタ12の検出値ThHは50℃となる。
また、一次熱交換器2で加熱された熱媒が熱媒タンク5に流入することにより、熱媒タンク5の温度は約40℃となる。
ここで、図1と図3とで二次熱交換器3で発生するドレンの量を比較すると、図1でのドレン発生量(単位は1分当たりのドレン発生量)はD1であるのに対し、図3でのドレン発生量はD1よりも多いD2である。D1は約10cc/minであり、D2は約20cc/minである。このドレン発生量を、設定温度Thsおよび高温サーミスタ12の検出値ThHに注目して考察する。
二次熱交換器3では、一次熱交換器2の排気中の潜熱を高温端末20から戻ってきた熱媒へ回収させる。その際に二次熱交換器3の表面にドレンが生成される。二次熱交換器3の熱媒温度よりも一次熱交換器2の排気温度が高い場合には、二次熱交換器3で吸熱が発生するため、一次熱交換器2の排気中の潜熱が回収され、ドレンが生成される。
さらに、二次熱交換器3の熱媒温度よりも一次熱交換器2の排気温度が高い場合においては、二次熱交換器3の熱媒温度と一次熱交換器2の排気温度との差が大きくなるほど、二次熱交換器3でより多くの潜熱が回収されるため、ドレン発生量が多くなると考えられる。
ここで、二次熱交換器3の熱媒温度は、高温端末20から戻ってきた熱媒の温度に依存する。一方、一次熱交換器2の排気温度は、バーナ6の燃焼熱量に依存する。バーナ6の燃熱焼量は、設定温度Thsに応じたフィードフォワード熱量と、設定温度Thsに対する高温サーミスタ12の検出値ThHの偏差に応じたフィードバック熱量との和で表わされる。
図1では、設定温度Thsと高温サーミスタ12の検出値ThHとがほとんど等しいため、設定温度Thsに対する検出値ThHの偏差がほぼ零となっている。したがって、バーナ6の燃焼熱量の制御においては、フィードバック熱量を減少させることとなる。これにより、バーナ6の燃焼熱量が減少するため、一次熱交換器2の排気温度が低下する傾向となる。一方、二次熱交換器3の熱媒温度が60℃と高いため、二次熱交換器3の熱媒温度と一次熱交換器2の排気温度との差が小さくなる傾向となる。その結果、ドレン発生量は少なくなる傾向にあると考えられる。
これに対して、図3では、設定温度Thsが高温サーミスタ12の検出値ThHよりも高いため、設定温度Thsに対する検出値ThHの偏差は図1よりも大きい。したがって、バーナ6の燃焼熱量の制御においてはフィードバック熱量を増加させるため、バーナ6の燃焼熱量が増加する傾向にある。一方、二次熱交換器3の熱媒温度は30℃であり、図1の二次熱交換器3の熱媒温度よりも低くなっている。その結果、二次熱交換器3の熱媒温度と一次熱交換器2の排気温度との差が大きくなる傾向となる。その結果、図1に比べて、ドレン発生量が多くなっていると考えられる。
次に、図4から図6を用いて、本実施の形態に従う温水装置の低温暖房時の動作およびドレン発生量について説明する。
図4を参照して、低温端末21から戻ってきた熱媒が熱媒循環回路1を通って二次熱交換器3に流入し、二次熱交換器3で加熱される。低温暖房時においては、低温端末21から戻ってきた熱媒の温度はたとえば40℃であり、二次熱交換器3で加熱された後の熱媒はたとえば約42℃である。二次熱交換器3で加熱された熱媒は熱媒タンク5に流入する。また、熱媒タンク5よりも上流側の熱媒循環回路1にバイパス回路1cから流入した熱媒も熱媒タンク5に流入する。このバイパス回路1cを流れる熱媒の温度はたとえば80℃である。すなわち、高温サーミスタ12の検出値ThHは80℃である。
この結果、熱媒タンク5内の熱媒の温度はたとえば60℃となる。すなわち、低温サーミスタ11の検出値ThLは60℃となる。そして、循環ポンプ4が熱媒を送り出すことで、熱媒は低温往き回路1aを通って低温端末21に供給される。低温端末21に供給される熱媒の温度はたとえば60℃となる。図4でのドレン発生量はD2(約20cc/min)である。
図5を参照して、図4とは、設定温度Ths、低温端末21から戻ってきた熱媒の温度、および低温端末21に供給される熱媒の温度が異なっている。
温水装置では、運転開始から一定時間、通常よりも高い温度の熱媒を流してすばやく温水端末を温める運転(いわゆる、ホットダッシュ運転)が行なわれる。図5では、ホットダッシュ運転時の設定温度Thsが80℃に設定されている。ホットダッシュ運転では、制御部30は、高温サーミスタ12の検出値ThHが設定温度80℃になるように、バーナ6の燃焼熱量およびファン7の回転速度を制御する。
図5では、低温端末21から戻ってきた熱媒の温度はたとえば30℃であり、二次熱交換器3で加熱された後の熱媒はたとえば約32℃である。バイパス回路1cを流れる熱媒の温度はたとえば60℃である。すなわち、高温サーミスタ12の検出値ThHは60℃である。この結果、熱媒タンク5内の熱媒の温度はたとえば50℃となる。すなわち、低温サーミスタ11の検出値ThLは50℃となる。低温端末21に供給される熱媒の温度も同じく50℃となる。図5でのドレン発生量はD2(約20cc/min)である。
図6を参照して、図4および図5とは、設定温度Ths、低温端末21から戻ってきた熱媒の温度、および低温端末21に供給される熱媒の温度が異なっている。
図6では、設定温度Thsは35℃である。低温端末21から戻ってきた熱媒の温度はたとえば16℃であり、二次熱交換器3で加熱された後の熱媒はたとえば約18℃である。バイパス回路1cを流れる熱媒の温度はたとえば80℃である。すなわち、高温サーミスタ12の検出値ThHは80℃である。この結果、熱媒タンク5内の熱媒の温度はたとえば35℃となる。すなわち、低温サーミスタ11の検出値ThLは35℃となる。低温端末21に供給される熱媒の温度も同じく35℃となる。図6でのドレン発生量はD2よりも多いD3である。D3は約30cc/minである。
ここで、図4から図6について二次熱交換器3で発生するドレンの量を比較すると、図4および図5でのドレン発生量はD2(約20cc/min)であるのに対し、図6でのドレン発生量はD2よりも多いD3(約30cc/min)となっている。高温暖房時と同様に、低温暖房時においても、ドレン発生量を、設定温度Thsおよび高温サーミスタ12の検出値ThHに注目して考察する。
図4において、低温サーミスタ11の検出値ThLは一次熱交換器2に流入する熱媒の温度に相当し、設定温度Thsは一次熱交換器2に流入する熱媒の温度の目標温度に相当する。また、高温サーミスタ12の検出値ThHは、一次熱交換器2で加熱され、バイパス回路1cを通って熱媒タンク5に流入する熱媒の温度に相当する。
低温暖房時には、制御部30は、低温サーミスタ11の検出値ThLが設定温度Thsになるように、バーナ6の燃焼熱量を制御する。すなわち、設定温度Thsに対する一次熱交換器2に流入する熱媒の温度の偏差に応じてバーナ6の燃焼熱量が制御され、この燃焼熱量によって加熱された熱媒の温度が高温サーミスタ12によって検出される。
図4では、図1に比べて、設定温度Thsが低いため、二次熱交換器3の熱媒温度は図1よりも低くなっている。また、バーナ6の燃焼熱量の制御によって、設定温度Thsよりも高温サーミスタ12の検出値ThHが高くなっている。なお、二次熱交換器3の熱媒温度が低くなるほど、設定温度Thsに対する低温サーミスタ11の検出値ThLの偏差が大きくなるため、燃焼熱量が増加する。その結果、高温サーミスタ12の検出値ThHは高くなると考えられる。
したがって、図4では、図1に比べて、二次熱交換器3の熱媒温度が低く、かつ、一次熱交換器2の排気温度が高いため、二次熱交換器3の熱媒温度と一次熱交換器2の排気温度との差が大きくなる傾向となる。これにより、図4では、図1よりもドレン発生量が多くなる傾向になると考えられる。
一方、図5では、ホットダッシュ運転であるため、設定温度Thsに対する高温サーミスタ12の検出値ThHの偏差に応じてバーナ6の燃焼熱量(フィードバック熱量)が制御される。図5では、設定温度Thsが高温サーミスタ12の検出値ThHよりも高いため、フィードバック熱量を増加させることにより、バーナ6の燃焼熱量が増加する傾向にある。一方、二次熱交換器3の熱媒温度は30℃と低い。その結果、図4と同様、図1に比べて、二次熱交換器3の熱媒温度と一次熱交換器2の排気温度との差が大きくなる傾向となるため、ドレン発生量が多くなっていると考えられる。
また、図6では、図4に比べて、設定温度Thsが低いため、二次熱交換器3の熱媒温度が図4よりも低くなっている。これにより、一次熱交換器2に流入する熱媒の温度も低くなる。一方で、図6と図4とでは、高温サーミスタ12の検出値ThHが等しいことから、図6のバーナ6の燃焼熱量は図4のバーナ6の燃焼熱量よりも多いと考えられる。よって、図6では、図4に比べて、一次熱交換器2の排気温度がより高いと考えられる。この結果、図6では、図4に比べて、二次熱交換器3の熱媒温度が低く、かつ、一次熱交換器2の排気温度が高いため、二次熱交換器3の熱媒温度と一次熱交換器2の排気温度との差が大きくなる傾向となる。そのため、図4よりもドレン発生量は更に多くなる傾向になると考えられる。
本発明者は、高温暖房時および低温暖房時の各々について、設定温度Thsおよび高温サーミスタ12の検出値ThHとドレン発生量とに相関があるかを評価した。相関を調べた結果を図7に示す。
図7は、設定温度Thsおよび高温サーミスタ12の検出値ThHとドレン発生量との関係を示している。図7には、図1および図3で示した高温暖房時のドレン発生量と、図4から図6で示した低温暖房時のドレン発生量とが含まれている。
図7に示すように、高温暖房時および低温暖房時のいずれにおいても、設定温度Thsおよび高温サーミスタ12の検出値ThHがともに高い場合にはドレン発生量がD1である。これに対して、高温サーミスタ12の検出値ThHが低くなると、ドレン発生量がD1から増える傾向が見られた。また、設定温度Thsが低くなると、ドレン発生量がD1から増える傾向が見られた。
設定温度Thsおよび高温サーミスタ12の検出値ThHがともに高い場合には、図1で説明したように、二次熱交換器3の熱媒温度が相対的に高く、かつ、一次熱交換器2の排気温度が低下傾向にあるため、二次熱交換器3の熱媒温度と一次熱交換器2の排気温度との差が小さくなり、結果的にドレン発生量が少なくなると考えられる。
これに対して、高温サーミスタ12の検出値ThHが低くなると、バーナ6の燃焼熱量の増加により一次熱交換器2の排気温度が上昇傾向となるため、二次熱交換器3の熱媒温度と一次熱交換器2の排気温度との差が大きくなり、結果的にドレン発生量が多くなると考えられる。
また、設定温度Thsが低くなると、二次熱交換器3の熱媒温度も低くなるため、バーナ6の燃焼熱量が増加し、結果的に一次熱交換器2の排気温度が上昇傾向となる。その結果、二次熱交換器3の熱媒温度と一次熱交換器2の排気温度との差が大きくなり、結果的にドレン発生量が多くなると考えられる。
判定部34は、高温暖房時および低温暖房時の各々において、図7に示す相関を参照することにより、設定温度Thsおよび高温サーミスタ12の検出値ThHに基づいて、二次熱交換器3でのドレン発生量を推定する。具体的には、制御装置10は、図7の相関を示すテーブル36(図2参照)を有している。テーブル36は、図示しないメモリに予め記憶しておくことができる。判定部34は、テーブル36を参照することにより、設定温度Thsおよび高温サーミスタ12の検出値ThHに基づいてドレン発生量を推定することができる。
このように、本実施の形態に従う温水装置によれば、バーナ6の燃焼熱量の制御に用いられる高温サーミスタ12の検出値ThHおよび設定温度Thsをドレン発生量の推定に用いることで、ドレン発生量を簡易かつ精度良く推定することができる。また、温水装置が高温暖房時であっても低温暖房時であっても、図7に示す相関を参照してドレン発生量を精度良く推定することができる。この結果、簡易な構成でドレン発生量を精度良く推定することができる。
(中和器の寿命の判定処理)
次に、上記ドレン発生量の推定処理により推定されたドレン発生量を用いて中和器15の寿命を判定する処理について説明する。
図2に示したように、計測部32は、温水装置の使用時間を計測し、計測結果を判定部34に与える。温水装置の使用時間とは、温水装置の暖房運転時間に相当し、実質的にバーナ6の燃焼時間に相当する。
判定部34は、推定されたドレン発生量を用いて、計測部32により計測された使用時間を補正する。判定部34は、ドレン発生量が少なくなるに従って使用時間を短くする補正を行なう。
具体的には、判定部34は、図7に示す相関における最大ドレン発生量D3を基準量とし、推定されたドレン発生量が基準量よりも少ない場合には、使用時間を補正するための係数kを設定する。この係数kは、基準量(最大ドレン発生量D3)に対する推定されたドレン発生量の比率に基づいている。すなわち、推定ドレン発生量をDeとすると、係数kは式(1)で与えられる。
k=De/D3 …(1)
判定部34は、計測部32により計測された使用時間に係数kを乗じることにより、使用時間を補正する。計測部32により計測された使用時間をTuとし、補正された使用時間をTu♯とすると、補正後の使用時間Tu♯は式(2)により算出される。
Tu♯=k×Tu …(2)
上記式(2)によれば、推定されたドレン発生量がD1の場合、使用時間Tu♯は、実際の使用時間TuのD1/D3に短縮されることとなる。また、推定されたドレン発生量がD2の場合には、使用時間Tu#は、実際の使用時間TuのD2/D3に短縮されることとなる。すなわち、使用時間Tu♯はドレン発生量が少なくなるに従って短くなる。
判定部34は、補正後の使用時間Tu♯を、制御装置10内のメモリに記憶されている累積使用時間(上記使用時間Tu経過前の値)に加算することにより、累積使用時間を更新する。累積使用時間をTauとすると、使用時間Tuが経過した時点で、TauはTau+Tu♯に更新されることとなる。メモリには更新された累積使用時間Tauが記憶される。
判定部34は、メモリに記憶された累積使用時間Tauが、中和器15の寿命時間TLに到達したか否かを判定する。中和器15の寿命時間TLは、ドレン発生量が基準量(最大ドレン発生量D3)である場合に中和器15内の中和剤16が消費し尽くされるまでの時間に設定されている。換言すると、ドレン発生量が基準量となる条件で温水装置が使用される場合を想定し、この条件下で寿命時間に亘って温水装置が使用されると、消費し尽くされるだけの量の中和剤16が中和器15に充填されている。
累積使用時間Tauが中和器15の寿命時間TLに達すると、判定部34は、報知部40を用いて、中和器15の寿命が到来したことを報知する。なお、判定部34は、累積使用時間Tauが中和器15の寿命時間TLに近付いた場合に、ユーザに注意を促すための報知を行なうようにしてもよい。
判定部34は、さらに、累積使用時間Tauが寿命時間TLを一定時間以上経過した場合には、報知部40から警報を発するとともに、温水装置を強制的に停止する。
なお、中和器15の交換または中和剤16の補充などのメンテナンスが行なわれ、温水装置に設けられたリセットスイッチ(図示せず)が押されると、判定部34は、報知部40による報知を停止するとともに、メモリに記憶された累積使用時間Tauを0に戻す。
以上説明したように、判定部34は、設定温度Thsおよび高温サーミスタ12の検出値ThHに基づいてドレン発生量を推定し、推定されたドレン発生量が少なくなるに従って温水装置の使用時間Tuを短くする補正を行なう。これによれば、ドレン発生量が少なくなるほど累積使用時間Tauが短くなる。換言すれば、ドレン発生量が少なくなるほど中和器15の寿命時間TLが長くなる。これにより、中和器15の寿命の到来を精度良く判定することができる。
上述したドレン発生量の推定処理および中和器の寿命判定処理は、図8に示すようなフローチャートにまとめることができる。図8のフローチャートは、制御装置10によって実行することができる。
図8を参照して、制御装置10は、ステップS01により、温水装置が暖房運転中であるか否かを判定する。温水装置が運転停止状態である場合(S01にてNO)、制御装置10は、以降のステップをスキップして処理を終了する。
一方、温水装置が暖房運転中である場合(S01にてYES)、制御装置10は、ステップS02により、設定温度Thsを取得する。制御装置10は、さらにステップS03により、高温サーミスタ12の検出値ThHを取得する。
制御装置10は、ステップS04により図7の相関を示すテーブル36を参照すると、ステップS05により、設定温度Thsおよび高温サーミスタ12の検出値ThHに基づいて、ドレン発生量を推定する。
制御装置10は、ステップS06に進み、ステップS05で推定したドレン発生量を用いて、計測部32により計測された使用時間Tuを補正する。具体的には、制御装置10は、推定したドレン発生量を式(1)に代入することにより係数kを算出する。そして、算出した係数kを用いて、式(2)により使用時間Tuを補正する。
制御装置10は、ステップS07により、補正後の使用時間Tu♯を累積使用時間Tauに加算することにより、累積使用時間Tauを更新する。
制御装置10は、ステップS08により、累積使用時間Tauと中和器15の寿命時間TLとを比較する。Tau≧TLである場合(S08にてYES)、制御装置10は、中和器15の寿命が到来したと判定する。制御装置10は、ステップS09により、報知部40(図2)を用いて、中和器15の寿命が到来したことを報知する。一方、Tau<TLである場合(S08にてNO)、制御装置10は、処理を終了する。
なお、上述した実施の形態に従う温水装置では、温水装置の使用時間Tuの補正、および中和器15の寿命時間TLの設定を、図7の相関における最大ドレン発生量D3を基準量として行なう構成について説明したが、図7の相関における最小ドレン発生量D1またはD2を基準量として行なう構成としてもよい。
たとえば、最小ドレン発生量D1を基準量とした場合、使用時間Tuを補正するための係数kはDe/D1となる。したがって、推定されたドレン発生量Deが多くなるに従って使用時間Tuを長くする補正が行なわれることとなる。この場合においても、ドレン発生量が少なくなるほど累積使用時間Tauが短くなる。よって、ドレン発生量に応じて累積使用時間Tauを長くしたり短くしたりすることができるため、中和器15の寿命の到来を精度良く判定することができる。
また、上述したドレン発生量の推定処理および中和器の寿命判定処理は、公衆浴場、ホテル、レストラン等で使用される業務用の温水装置にも適用することが可能である。すなわち、業務用の温水装置においても、図7に示す相関を参照することにより、設定温度Thsおよび高温サーミスタ12の検出値ThHに基づいて、ドレン発生量を推定することができ、かつ、推定されたドレン発生量を用いて中和器15の寿命を判定することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。