JP6860054B2 - 炭化珪素単結晶の製造方法 - Google Patents
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Description
まず、本開示の実施形態の概要について説明する。本明細書中の結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示している。また結晶学上の指数が負であることは、通常、”−”(バー)を数字の上に付すことによって表現されるが、本明細書中では数字の前に負の符号を付している。
以下、本開示の実施形態(以降、本実施形態と称する)の詳細について図に基づいて説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
まず、種結晶および原料を準備する工程(S10:図2)が実施される。たとえば昇華法により製造された炭化珪素インゴットをスライスすることにより種結晶1が切り出される。種結晶1は、たとえばポリタイプ4Hの六方晶炭化珪素により構成されている。種結晶1は、主面5を含む。主面5は、たとえば略円形状である。主面5の最大径は、たとえば100mm以上であり、好ましくは150mm以上である。種結晶1は、貫通転位8を有している場合がある。貫通転位8は、刃状転位であってもよいし、らせん転位であってもよいし、混合転位であってもよい。貫通転位8は、主面5と、主面5と反対側の面とに露出している。
まず、昇温工程が実施される。図5に示されるように、昇温工程において、第1誘導加熱コイル11に印加される電力および第2誘導加熱コイル12に印加される電力は、たとえば単調に増加する。昇温工程の間、第2誘導加熱コイル12に印加される電力は、第1誘導加熱コイル11に印加される電力よりも高く維持されてもよい。チャンバ内には、たとえばアルゴンガス、ヘリウムガスまたは窒素ガスなどの不活性ガスが導入される。昇温工程におけるチャンバ内の圧力(つまり坩堝10内の圧力)は、たとえば第1圧力A1で維持される。第1圧力A1は、たとえば大気圧である。図6に示されるように、昇温工程において、種結晶1の主面5の中央15および外周16の温度は、たとえば単調に増加する。昇温工程において、外周16の温度は、中央15の温度よりも高く維持されてもよい。昇温工程においては、炭化珪素単結晶は、ほとんど成長しない。
次に、降圧工程が実施される。図5に示されるように、降圧工程において、第1誘導加熱コイル11に印加される電力および第2誘導加熱コイル12に印加される電力は、ほぼ一定である。降圧工程の間、第2誘導加熱コイル12に印加される電力は、第1誘導加熱コイル11に印加される電力よりも高く維持されてもよい。降圧工程において、チャンバ内の圧力は、たとえば第1圧力A1から第2圧力A2に低減する。第2圧力A2は、たとえば0.5kPa以上2kPa以下である。図6に示されるように、降圧工程において、種結晶1の主面5の中央15および外周16の温度は、ほぼ一定であってもよい。降圧工程において、外周16の温度は、中央15の温度よりも高く維持されてもよい。時間T1と時間T2との間において、固体の原料2が実質的に昇華し始める。
次に、第1工程が実施される。図5に示されるように、第1工程において、第1誘導加熱コイル11に印加される電力は第1電力P11であり、第2誘導加熱コイル12に印加される電力は第2電力P21である。第1工程において、第1電力P11および第2電力P21は、ほぼ一定である。第1工程の間、第2電力P21は、第1電力P11よりも高く維持される。第1電力P11は、たとえば10.0kW以上15.0kW以下である。第2電力P21は、たとえば12.0kW以上18.0kW以下である。第2電力P21を第1電力P11で除した値は、たとえば1.2である。
次に、遷移工程が実施される。遷移工程は、第1工程と第2工程との間の工程であって、主面5の温度分布が変化する工程である。図5に示されるように、遷移工程において、第1誘導加熱コイル11に印加される電力は低減する。一方、第2誘導加熱コイル12に印加される電力は増加する。遷移工程の間、第2誘導加熱コイル12に印加される電力は、第1誘導加熱コイル11に印加される電力よりも高く維持される。遷移工程において、チャンバ内の圧力は、たとえば第2圧力A2で維持される。図6に示されるように、遷移工程において、外周16の温度は低減し、中央15の温度は増加する。遷移工程において、外周16の温度は、中央15の温度よりも高く維持される。図7および図8に示されるように、遷移工程においては、主面5の中央15から外周16に向かって温度が高い状態を維持しながら外周16と中央15との温度差が小さくなるように、主面5の温度分布が変化する。
次に、第2工程が実施される。第2工程は、第1工程後に実施される。図5に示されるように、第2工程において、第1誘導加熱コイル11に印加される電力は第3電力P12であり、第2誘導加熱コイル12に印加される電力は第4電力P22である。第2工程において、第3電力P12および第4電力P22は、ほぼ一定である。第2工程の間、第4電力P22は、第3電力P12よりも高く維持される。第3電力P12は、たとえば9.0kW以上13.0kW以下である。第4電力P22は、たとえば13.5kW以上19.5kW以下である。第4電力P22を第3電力P12で除した値は、たとえば1.5である。
次に、昇圧工程が実施される。図5に示されるように、昇圧工程において、第1誘導加熱コイル11に印加される電力および第2誘導加熱コイル12に印加される電力は、ほぼ一定である。昇圧工程の間、第2誘導加熱コイル12に印加される電力は、第1誘導加熱コイル11に印加される電力よりも高く維持されてもよい。昇圧工程において、チャンバ内の圧力は、たとえば第2圧力A2から第1圧力A1に増加する。図6に示されるように、昇圧工程において、種結晶1の主面5の中央15および外周16の温度は、ほぼ一定であってもよい。昇圧工程において、外周16の温度は、中央15の温度よりも高く維持されもよい。時間T5と時間T6との間において、固体の原料2の昇華が終了する。これにより、炭化珪素単結晶40の成長が終了する。
次に、降温工程が実施される。図5に示されるように、降温工程において、第1誘導加熱コイル11に印加される電力および第2誘導加熱コイル12に印加される電力は、たとえば単調に減少する。降温工程の間、第2誘導加熱コイル12に印加される電力は、第1誘導加熱コイル11に印加される電力よりも高く維持されてもよい。降温工程におけるチャンバ内の圧力は、たとえば第1圧力A1で維持される。図6に示されるように、降温工程において、種結晶1の主面5の中央15および外周16の温度は、単調に増加してもよい。降温工程において、外周16の温度は、中央15の温度よりも高く維持されてもよい。炭化珪素単結晶40の温度が室温程度になった後、炭化珪素単結晶40が坩堝10から取り出される。以上により、炭化珪素単結晶40の製造が完了する。
次に、本実施形態の変形例において使用される炭化珪素単結晶の製造装置100の構成について説明する。
まず、種結晶および原料を準備する工程(S10:図2)が実施される。この工程は、上述の方法と同様の方法により実施される。具体的には、種結晶1および原料2が、図9に示す坩堝10内に配置される。
まず、昇温工程が実施される。図12に示されるように、昇温工程において、第1抵抗ヒータ11に印加される電力と、第2抵抗ヒータ12に印加される電力と、第3抵抗ヒータ13に印加される電力とは、たとえば単調に増加する。昇温工程の間、第2抵抗ヒータ12に印加される電力は、第1抵抗ヒータ11に印加される電力よりも低く維持され、かつ第3抵抗ヒータ13に印加される電力よりも高く維持されてもよい。チャンバ内には、たとえばアルゴンガス、ヘリウムガスまたは窒素ガスなどの不活性ガスが導入される。昇温工程におけるチャンバ内の圧力は、たとえば第1圧力A1で維持される。第1圧力A1は、たとえば大気圧である。図6に示されるように、昇温工程において、種結晶1の主面5の中央15および外周16の温度は、たとえば単調に増加してもよい。昇温工程において、外周16の温度は、中央15の温度よりも高く維持されてもよい。昇温工程においては、炭化珪素単結晶は、ほとんど成長しない。
次に、降圧工程が実施される。図12に示されるように、降圧工程において、第1抵抗ヒータ11に印加される電力と、第2抵抗ヒータ12に印加される電力と、第3抵抗ヒータ13に印加される電力とは、ほぼ一定である。降圧工程の間、第2抵抗ヒータ12に印加される電力は、第1抵抗ヒータ11に印加される電力よりも低く維持され、かつ第3抵抗ヒータ13に印加される電力よりも高く維持されてもよい。降圧工程において、チャンバ内の圧力は、たとえば第1圧力A1から第2圧力A2に低減する。第2圧力A2は、たとえば0.5kPa以上2kPa以下である。図6に示されるように、降圧工程において、種結晶1の主面5の中央15および外周16の温度は、ほぼ一定であってもよい。降圧工程において、外周16の温度は、中央15の温度よりも高く維持されてもよい。時間T1と時間T2との間において、固体の原料2が実質的に昇華し始める。
次に、第1工程が実施される。図12に示されるように、第1工程において、第1抵抗ヒータ11に印加される電力は第5電力P31であり、第2抵抗ヒータ12に印加される電力は第6電力P41であり、第3抵抗ヒータ13に印加される電力は第7電力P51である。第1工程において、第5電力P31と、第6電力P41と、第7電力P51とは、ほぼ一定である。第1工程の間、第6電力P41は、第5電力P31よりも低く維持され、かつ第7電力P51よりも高く維持される。第5電力P31は、たとえば10kW以上15kW以下である。第6電力P41は、たとえば8kW以上12kW以下である。第7電力P51は、たとえば4kW以上6kW以下である。
次に、遷移工程が実施される。遷移工程は、第1工程と第2工程との間の工程であって、主面5の温度分布が変化する工程である。図12に示されるように、遷移工程において、第1抵抗ヒータ11に印加される電力は減少する。一方、第2抵抗ヒータ12および第3抵抗ヒータ13に印加される電力は増加する。遷移工程の間、第2抵抗ヒータ12に印加される電力は、第1抵抗ヒータ11に印加される電力よりも低く維持され、かつ第3抵抗ヒータ13に印加される電力よりも高く維持される。遷移工程において、チャンバ内の圧力は、たとえば第2圧力A2で維持される。図6に示されるように、遷移工程において、外周16の温度は低減し、中央15の温度は増加する。遷移工程において、外周16の温度は、中央15の温度よりも高く維持される。
次に、第2工程が実施される。第2工程と、第1工程後に実施される。図12に示されるように、第2工程において、第1抵抗ヒータ11に印加される電力は第8電力P32であり、第2抵抗ヒータ12に印加される電力は第9電力P42であり、第3抵抗ヒータ13に印加される電力は第10電力P52である。第2工程において、第8電力P32と、第9電力P42と、第10電力P52とは、ほぼ一定である。第2工程の間、第9電力P42は、第8電力P32よりも低く維持され、かつ第10電力P52よりも高く維持される。
次に、昇圧工程が実施される。図12に示されるように、昇圧工程において、第1抵抗ヒータ11に印加される電力と、第2抵抗ヒータ12に印加される電力と、第3抵抗ヒータ13に印加される電力とは、ほぼ一定である。昇圧工程の間、第2抵抗ヒータ12に印加される電力は、第1抵抗ヒータ11に印加される電力よりも低く維持され、かつ第3抵抗ヒータ13に印加される電力よりも高く維持されてもよい。昇圧工程において、チャンバ内の圧力は、たとえば第2圧力A2から第1圧力A1に増加する。図6に示されるように、昇圧工程において、種結晶1の主面5の中央15および外周16の温度は、ほぼ一定であってもよい。昇圧工程において、外周16の温度は、中央15の温度よりも高く維持されもよい。時間T5と時間T6との間において、固体の原料2の昇華が終了する。これにより、炭化珪素単結晶40の成長が終了する。
次に、降温工程が実施される。図12に示されるように、降温工程において、第1抵抗ヒータ11に印加される電力と、第2抵抗ヒータ12に印加される電力と、第3抵抗ヒータ13に印加される電力とは、たとえば単調に減少する。降温工程の間、第2抵抗ヒータ12に印加される電力は、第1抵抗ヒータ11に印加される電力よりも低く維持され、かつ第3抵抗ヒータ13に印加される電力よりも高く維持されてもよい。降温工程におけるチャンバ内は、たとえば第1圧力A1で維持される。図6に示されるように、降温工程において、種結晶1の主面5の中央15および外周16の温度は、単調に増加してもよい。降温工程において、外周16の温度は、中央15の温度よりも高く維持されてもよい。炭化珪素単結晶40の温度が室温程度になった後、炭化珪素単結晶40が坩堝10から取り出される。以上により、炭化珪素単結晶40の製造が完了する。
種結晶の主面の温度は、たとえば放射温度計により測定することができる。放射温度計として、たとえば株式会社チノー製のパイロメータ(型番:IR−CAH8TN6)が使用可能である。パイロメータの測定波長は、たとえば1.55μmおよび0.9μmである。パイロメータの放射率設定値は、たとえば0.9である。パイロメータの距離係数は、たとえば300である。パイロメータの測定径は、測定距離を距離係数で除することにより求められる。たとえば測定距離が900mmの場合、測定径は3mmである。主面5の中央15の温度は、中央15に対面する台座4の表面の部分の温度を放射温度計により測定することにより推定することができる。同様に、主面5の外周16の温度は、外周16に対面する台座4の表面の部分の温度を放射温度計により測定することにより推定することができる。
本実施形態に係る炭化珪素単結晶40の製造方法によれば、第1工程においては、主面5の中央15から主面の外周16に向かって温度が高くなるように構成され、外周16と中央15とは第1温度差を有する。第2工程においては、中央15から外周16に向かって温度が高くなるように構成され、外周16と中央15とは第1温度差よりも小さい第2温度差を有する。これにより、貫通転位が少なくかつ厚い炭化珪素単結晶を製造することができる。
2 原料3 接着剤
4 台座
5 主面
6 収容部
7 結晶ガイド壁
8 貫通転位
9 原料ガス
10 坩堝
11 第1加熱部(第1誘導加熱コイル、第1抵抗ヒータ)
12 第2加熱部(第2誘導加熱コイル、第2抵抗ヒータ)
13 第3抵抗ヒータ
15 中央
16 外周
21 第1電源
22 第2電源
23 第3電源
25 制御装置
30 平面
31 加熱装置
40 炭化珪素単結晶
41,42 部分
43,44,45 距離
46 成長面
51,52,53,54 厚み
55 幅
100 製造装置
Claims (5)
- 主面を有する種結晶と、固体の原料とを準備する工程と、
前記原料を昇華させ、前記主面上に再結晶化させることにより炭化珪素単結晶を成長させる工程とを備え、
前記炭化珪素単結晶を成長させる工程は、第1工程と、前記第1工程後に実施される第2工程とを含み、
前記第1工程においては、前記主面の中央から前記主面の外周に向かって温度が高くなるように構成され、前記外周と前記中央とは第1温度差を有し、
前記第2工程においては、前記中央から前記外周に向かって温度が高くなるように構成され、前記外周と前記中央とは前記第1温度差よりも小さい第2温度差を有し、
前記第1工程における前記主面の中央部の成長速度が、前記第2工程における前記主面の中央部の成長速度よりも高く、
前記種結晶は貫通転位を有しており、前記第1工程において、前記貫通転位は前記炭化珪素単結晶の側面に露出する、炭化珪素単結晶の製造方法。 - 前記第1工程においては、前記中央での前記炭化珪素単結晶の成長速度は、前記外周での前記炭化珪素単結晶の成長速度よりも高く、
前記第2工程においては、前記中央での前記炭化珪素単結晶の成長速度は、前記外周での前記炭化珪素単結晶の成長速度よりも低い、請求項1に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。 - 前記第1工程においては、前記原料に近づくにつれて前記炭化珪素単結晶の幅が小さくなる部分を有するように前記炭化珪素単結晶が成長し、
前記第2工程においては、前記中央での前記炭化珪素単結晶の厚みから前記外周での前記炭化珪素単結晶の厚みを引いた値が、前記第1工程の最後における前記中央での前記炭化珪素単結晶の厚みから前記外周での前記炭化珪素単結晶の厚みを引いた値よりも小さくなり、かつ前記中央での前記炭化珪素単結晶の厚みから前記外周での前記炭化珪素単結晶の厚みを引いた値が0よりも大きくなるように前記炭化珪素単結晶が成長し、
前記外周での前記炭化珪素単結晶の厚みは、前記外周を通りかつ前記主面に対して垂直な直線が前記炭化珪素単結晶の成長面と交差する位置と、前記外周との間の距離である、請求項1または請求項2に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。 - 前記炭化珪素単結晶を成長させる工程は、前記第1工程と前記第2工程との間の工程であって、前記主面の温度分布が変化する遷移工程をさらに含み、
前記第2工程の時間は、前記第1工程の時間よりも長い、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。 - 前記炭化珪素単結晶を成長させる工程は、加熱装置により前記種結晶および前記原料を加熱することにより行われる、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
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