JP6860054B2 - 炭化珪素単結晶の製造方法 - Google Patents

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Description

本開示は、炭化珪素単結晶の製造方法に関する。
特開平9−268096号公報(特許文献1)には、昇華法により炭化珪素単結晶を製造する方法が記載されている。
特開平9−268096号公報
本開示の目的は、貫通転位が少なくかつ厚い炭化珪素単結晶の製造方法を提供することである。
本開示に係る炭化珪素単結晶の製造方法は以下の工程を備えている。主面を有する種結晶と、固体の原料とが準備される。原料を昇華させ、主面上に再結晶化させることにより炭化珪素単結晶を成長させる。炭化珪素単結晶を成長させる工程は、第1工程と、第1工程後に実施される第2工程とを含む。第1工程においては、主面の中央から主面の外周に向かって温度が高くなるように構成され、外周と中央とは第1温度差を有する。第2工程においては、中央から外周に向かって温度が高くなるように構成され、外周と中央とは第1温度差よりも小さい第2温度差を有する。
本開示によれば、貫通転位が少なくかつ厚い炭化珪素単結晶の製造方法を提供することができる。
本実施形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法の第1工程を示す断面模式図である。 本実施形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法を概略的に示すフロー図である。 本実施形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法の第2工程を示す断面模式図である。 本実施形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法の第3工程を示す断面模式図である。 加熱部に印加される電力およびチャンバ内の圧力と、時間との関係を示す図である。 種結晶の主面の温度、炭化珪素単結晶の厚みおよび炭化珪素単結晶の成長速度と、時間との関係を示す図である。 第1工程における種結晶の主面の温度分布を示す図である。 第2工程における種結晶の主面の温度分布を示す図である。 本実施形態の変形例に係る炭化珪素単結晶の製造方法の第1工程を示す断面模式図である。 本実施形態の変形例に係る炭化珪素単結晶の製造方法の第2工程を示す断面模式図である。 本実施形態の変形例に係る炭化珪素単結晶の製造方法の第3工程を示す断面模式図である。 加熱部に印加される電力およびチャンバ内の圧力と、時間との関係の変形例を示す図である。
[本開示の実施形態の概要]
まず、本開示の実施形態の概要について説明する。本明細書中の結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示している。また結晶学上の指数が負であることは、通常、”−”(バー)を数字の上に付すことによって表現されるが、本明細書中では数字の前に負の符号を付している。
(1)本開示に係る炭化珪素単結晶40の製造方法は以下の工程を備えている。主面5を有する種結晶1と、固体の原料2とが準備される。原料2を昇華させ、主面5上に再結晶化させることにより炭化珪素単結晶40を成長させる。炭化珪素単結晶40を成長させる工程は、第1工程と、第1工程後に実施される第2工程とを含む。第1工程においては、主面5の中央15から主面の外周16に向かって温度が高くなるように構成され、外周16と中央15とは第1温度差を有する。第2工程においては、中央15から外周16に向かって温度が高くなるように構成され、外周16と中央15とは第1温度差よりも小さい第2温度差を有する。
昇華法により炭化珪素単結晶を製造する際、固体の原料を昇華させることにより原料ガスを発生させ、原料ガスを種結晶の主面上に再結晶化させる。種結晶に貫通転位が含まれていると、当該貫通転位が当該主面上に成長する炭化珪素単結晶に引き継がれる。結果として、炭化珪素単結晶の貫通転位の数を、種結晶の貫通転位の数よりも低減することは困難である。
発明者らは、鋭意検討の結果、結晶成長の初期段階である第1工程において、種結晶1の主面5の中央15から主面の外周16に向かって温度が高くなり、かつ外周16と中央15とは第1温度差を有するようにし、その後の第2工程においては、中央15から外周16に向かって温度が高くなり、かつ外周16と中央15とは第1温度差よりも小さい第2温度差を有するようにすることで、貫通転位が少なくかつ厚い炭化珪素単結晶を製造することができることを見出した。詳細なメカニズムは後述する。
(2)上記(1)に係る炭化珪素単結晶40の製造方法において、第1工程においては、中央15での炭化珪素単結晶40の成長速度VC1は、外周16での炭化珪素単結晶40の成長速度VO1よりも高くてもよい。第2工程においては、中央15での炭化珪素単結晶40の成長速度VC2は、外周16での炭化珪素単結晶40の成長速度VO2よりも低くてもよい。
(3)上記(1)または(2)に係る炭化珪素単結晶40の製造方法において、第1工程においては、原料2に近づくにつれて炭化珪素単結晶40の幅が小さくなる部分42を有するように炭化珪素単結晶40が成長してもよい。第2工程においては、中央15での炭化珪素単結晶40の厚み54から外周16での炭化珪素単結晶40の厚み53を引いた値が、第1工程の最後における中央15での炭化珪素単結晶40の厚み52から外周16での炭化珪素単結晶40の厚み51を引いた値よりも小さくなり、かつ中央15での炭化珪素単結晶40の厚みから外周16での炭化珪素単結晶40の厚みを引いた値が0よりも大きくなるように炭化珪素単結晶40が成長してもよい。外周16での炭化珪素単結晶40の厚みは、外周16を通りかつ主面5に対して垂直な直線が炭化珪素単結晶40の成長面46と交差する位置と、外周16との間の距離である。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに係る炭化珪素単結晶40の製造方法において、炭化珪素単結晶を成長させる工程は、第1工程と第2工程との間の工程であって、主面5の温度分布が変化する遷移工程をさらに含んでもよい。第2工程の時間は、第1工程の時間よりも長くてもよい。これにより、貫通転位の少ない炭化珪素単結晶の部分の厚みを大きくすることができる。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに係る炭化珪素単結晶40の製造方法において、炭化珪素単結晶を成長させる工程は、加熱装置31により種結晶1および原料2を加熱することにより行われてもよい。
(6)上記(5)に係る炭化珪素単結晶40の製造方法において、加熱装置31は、第1加熱部11と、第2加熱部12とを含んでもよい。主面5に対して垂直な方向において、主面5を含む平面30と第1加熱部11との距離は、平面30と第2加熱部12との距離よりも短くてもよい。炭化珪素単結晶を成長させる工程においては、第2工程における第1加熱部11の電力を第2加熱部12の電力で除した値が、第1工程における第1加熱部11の電力を第2加熱部12の電力で除した値よりも小さくなるように、第1加熱部11の電力および第2加熱部12の電力が制御されてもよい。
(7)上記(6)に係る炭化珪素単結晶40の製造方法において、第1工程における第1加熱部11の電力を第2加熱部12の電力で除した値を、第2工程における第1加熱部11の電力を第2加熱部12の電力で除した値で除した値は、1.0よりも大きく1.5よりも小さくてもよい。
(8)上記(6)または(7)に係る炭化珪素単結晶40の製造方法において、第1工程における第1加熱部11の電力と第2加熱部12の電力とを合計した値を、第2工程における第1加熱部11の電力と第2加熱部12の電力とを合計した値で除した値は、0.95よりも大きく1.05よりも小さくてもよい。
(9)上記(5)に係る炭化珪素単結晶40の製造方法において、加熱装置31は、第1加熱部11と、残りの複数の加熱部12、13を含んでもよい。主面5に対して垂直な方向において、主面5を含む平面30と第1加熱部11との距離は、平面30と残りの複数の加熱部12、13の各々との距離よりも短くてもよい。炭化珪素単結晶40を成長させる工程においては、第2工程における第1加熱部11の電力を残りの複数の加熱部12、13の合計の電力で除した値が、第1工程における第1加熱部11の電力を残りの複数の加熱部12、13の合計の電力で除した値よりも小さくなるように、第1加熱部11の電力および残りの複数の加熱部12、13の各々の電力が制御されてもよい。
(10)上記(9)に係る炭化珪素単結晶40の製造方法において、第1工程における第1加熱部11の電力を残りの複数の加熱部12、13の合計の電力で除した値を、第2工程における第1加熱部11の電力を残りの複数の加熱部12、13の合計の電力で除した値で除した値は、1.0よりも大きく1.5よりも小さくてもよい。
(11)上記(9)または(10)に係る炭化珪素単結晶40の製造方法において、第1工程における第1加熱部11の電力と残りの複数の加熱部12、13の合計の電力とを合計した値を、第2工程における第1加熱部11の電力と残りの複数の加熱部12、13の合計の電力とを合計した値で除した値は、0.95よりも大きく1.05よりも小さくてもよい。
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態(以降、本実施形態と称する)の詳細について図に基づいて説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
まず、本実施形態において使用される炭化珪素単結晶の製造装置100の構成について説明する。
図1に示されるように、炭化珪素単結晶の製造装置100は、坩堝10と、加熱装置31と、第1電源21と、第2電源22と、制御装置25とを主に有している。加熱装置31は、第1加熱部(第1誘導加熱コイル11)と、第2加熱部(第2誘導加熱コイル12)とを含んでいる。第1電源21は、第1誘導加熱コイル11に対して電力を供給可能に構成されている。同様に、第2電源22は、第2誘導加熱コイル12に対して電力を供給可能に構成されている。制御装置25は、第1電源21が第1誘導加熱コイル11に印加する電力(出力)と、第2電源22が第2誘導加熱コイル12に印加する電力(出力)とを制御可能に構成されている。
坩堝10は、たとえばグラファイトにより構成されている。坩堝10は、台座4と、収容部6とを有している。坩堝10は、チャンバ(図示せず)の内部に配置されている。台座4は、種結晶1を保持可能に構成されており、収容部6の蓋として機能する。収容部6は、開口を有する容器であり、内部に固体の原料2を収容可能に構成されている。収容部6の側面は、たとえば筒状である。第1誘導加熱コイル11および第2誘導加熱コイル12の各々は、収容部6の側面を取り囲むように螺旋状に巻かれている。収容部6の内側には、結晶ガイド壁7が設けられている。結晶ガイド壁7は、たとえば筒状であり、台座4から収容部6の底に向かうにつれて内径が広がっている。
第1誘導加熱コイル11は、種結晶1を取り囲むように坩堝10の外部に配置されている。第1誘導加熱コイル11は、主に種結晶1を加熱する。第2誘導加熱コイル12は、原料2を取り囲むように坩堝10の外部に配置されている。第2誘導加熱コイル12は、主に原料2を加熱する。図1に示されるように、主面5に対して垂直な方向において、主面5を含む平面30と第1誘導加熱コイル11との距離は、平面30と第2誘導加熱コイル12との距離45よりも短い。平面30は、第1加熱部11と交差している。本実施形態によれば、主面5に対して垂直な方向において、平面30と第1加熱部11との距離は0である。本実施形態によれば、主面5と第1加熱部11との最短距離は、主面5と第2加熱部12との最短距離よりも短い。
次に、本実施形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法について説明する。
まず、種結晶および原料を準備する工程(S10:図2)が実施される。たとえば昇華法により製造された炭化珪素インゴットをスライスすることにより種結晶1が切り出される。種結晶1は、たとえばポリタイプ4Hの六方晶炭化珪素により構成されている。種結晶1は、主面5を含む。主面5は、たとえば略円形状である。主面5の最大径は、たとえば100mm以上であり、好ましくは150mm以上である。種結晶1は、貫通転位8を有している場合がある。貫通転位8は、刃状転位であってもよいし、らせん転位であってもよいし、混合転位であってもよい。貫通転位8は、主面5と、主面5と反対側の面とに露出している。
主面5は、たとえば{0001}面から4°以下程度オフした面または{0001}面である。主面5は、(0001)面から4°以下程度オフした面であってもよいし、(000−1)面から4°以下程度オフした面であってもよい。オフ方向は、<11−20>であってもよい。種結晶1は、接着剤3によって台座4に固定される。接着剤3は、種結晶1において主面5とは反対側の面に接している。原料2は、収容部6の内部に配置される。原料2は、たとえば多結晶炭化珪素の粉末などの固体である。種結晶1の主面5が原料2に対面するように、種結晶1および原料2が、図1に示す坩堝10内に配置される。以上により、主面5を有する種結晶1と、固体の原料2とが準備される。
次に、炭化珪素単結晶を成長させる工程(S20:図2)が実施される。炭化珪素単結晶を成長させる工程は、たとえば加熱装置31により種結晶1および原料2を加熱することにより行われる。加熱装置31は、第1誘導加熱コイル11および第2誘導加熱コイル12を有する。具体的には、第1電源21により第1誘導加熱コイル11に交流電流を印加することにより、第1誘導加熱コイル11の内部に誘導磁界を発生させる。同様に、第2電源22により第2誘導加熱コイル12に交流電流を印加することにより、第2誘導加熱コイル12の内部に誘導磁界を発生させる。これにより、坩堝10に渦電流が発生し、坩堝10が加熱される。
図3および図4に示されるように、主に第2誘導加熱コイル12によって原料2を昇華させることにより原料ガス9を発生させ、原料ガス9を主面5上に再結晶化させることにより炭化珪素単結晶40を成長させる。
図5および図6に示されるように、炭化珪素単結晶を成長させる工程は、昇温工程と、降圧工程と、第1工程と、遷移工程と、第2工程と、昇圧工程と、降温工程とを主に含む。昇温工程は、時間T0から時間T1までの工程である。降圧工程は、時間T1から時間T2までの工程である。第1工程は、時間T2から時間T3までの工程である。遷移工程は、時間T3から時間T4までの工程である。第2工程は、時間T4から時間T5までの工程である。昇圧工程は、時間T5から時間T6までの工程である。降温工程は、時間T6から時間T7までの工程である。
(昇温工程)
まず、昇温工程が実施される。図5に示されるように、昇温工程において、第1誘導加熱コイル11に印加される電力および第2誘導加熱コイル12に印加される電力は、たとえば単調に増加する。昇温工程の間、第2誘導加熱コイル12に印加される電力は、第1誘導加熱コイル11に印加される電力よりも高く維持されてもよい。チャンバ内には、たとえばアルゴンガス、ヘリウムガスまたは窒素ガスなどの不活性ガスが導入される。昇温工程におけるチャンバ内の圧力(つまり坩堝10内の圧力)は、たとえば第1圧力A1で維持される。第1圧力A1は、たとえば大気圧である。図6に示されるように、昇温工程において、種結晶1の主面5の中央15および外周16の温度は、たとえば単調に増加する。昇温工程において、外周16の温度は、中央15の温度よりも高く維持されてもよい。昇温工程においては、炭化珪素単結晶は、ほとんど成長しない。
(降圧工程)
次に、降圧工程が実施される。図5に示されるように、降圧工程において、第1誘導加熱コイル11に印加される電力および第2誘導加熱コイル12に印加される電力は、ほぼ一定である。降圧工程の間、第2誘導加熱コイル12に印加される電力は、第1誘導加熱コイル11に印加される電力よりも高く維持されてもよい。降圧工程において、チャンバ内の圧力は、たとえば第1圧力A1から第2圧力A2に低減する。第2圧力A2は、たとえば0.5kPa以上2kPa以下である。図6に示されるように、降圧工程において、種結晶1の主面5の中央15および外周16の温度は、ほぼ一定であってもよい。降圧工程において、外周16の温度は、中央15の温度よりも高く維持されてもよい。時間T1と時間T2との間において、固体の原料2が実質的に昇華し始める。
(第1工程)
次に、第1工程が実施される。図5に示されるように、第1工程において、第1誘導加熱コイル11に印加される電力は第1電力P11であり、第2誘導加熱コイル12に印加される電力は第2電力P21である。第1工程において、第1電力P11および第2電力P21は、ほぼ一定である。第1工程の間、第2電力P21は、第1電力P11よりも高く維持される。第1電力P11は、たとえば10.0kW以上15.0kW以下である。第2電力P21は、たとえば12.0kW以上18.0kW以下である。第2電力P21を第1電力P11で除した値は、たとえば1.2である。
第1工程において、チャンバ内の圧力は、たとえば第2圧力A2で維持される。第1工程において、主面5の中央15および外周16温度は、原料2の温度よりも低く維持される。これにより、原料2が昇華して発生した原料ガス9は、種結晶1の主面5上に再結晶化する。結果として、主面5上に炭化珪素単結晶40が成長する(図3参照)。
図7に示されるように、第1工程においては、主面5の中央15から主面の外周16に向かって温度が高くなるように構成されている。外周16と中央15とは第1温度差を有する。図6に示されるように、第1工程において、主面5の中央15の温度は第1中央温度BC1であり、主面5の外周16の温度は第1外周温度BO1である。第1工程において、第1中央温度BC1および第1外周温度BO1は、ほぼ一定である。第1工程において、第1外周温度BO1は、第1中央温度BC1よりも高く維持される。第1外周温度BO1と第1中央温度BC1との差(第1温度差)は、たとえば10℃以上である。主面5の外周16の温度は、エッジ(外周16)から中央15に向かって5mmの位置で測定される。温度が高い外周16においては、主面5に再結晶化した炭化珪素が再度昇華して主面5から離脱する確率が高い。そのため、外周16においては、炭化珪素単結晶40の成長速度が低い。一方、温度が低い中央15においては、主面5に再結晶化した炭化珪素が再度昇華して主面5から離脱する確率が低い。そのため、中央15においては、炭化珪素単結晶40の成長速度が高い。第1工程においては、中央15での炭化珪素単結晶40の成長速度VC1は、外周16での炭化珪素単結晶40の成長速度VO1よりも高い。結果として、炭化珪素単結晶40は、原料2に近づくにつれて幅55が小さくなる部分42を有するように成長する(図3参照)。
なお、炭化珪素単結晶40は、結晶成長の初期段階において、原料2に近づくにつれて幅が大きくなる部分41を有するように成長してもよい(図3参照)。時間T3において、中央15での炭化珪素単結晶40の厚み52は第1中央厚みCC1であり、外周16での炭化珪素単結晶40の厚み51は第1外周厚みCO1である。第1中央厚みCC1は、第1外周厚みCO1よりも大きい。第1中央厚みCC1は、第1外周厚みCO1との差は、たとえば5mm以上である。
中央15での炭化珪素単結晶40の厚みは、中央15を通りかつ主面5に対して垂直な直線が炭化珪素単結晶40の成長面46と交差する位置と、中央15との間の距離である。外周16での炭化珪素単結晶40の厚みは、外周16を通りかつ主面5に対して垂直な直線が炭化珪素単結晶40の成長面46と交差する位置と、外周16との間の距離である。より詳細には、外周16での炭化珪素単結晶40の厚みは、外周16上のある位置(第1位置)を通りかつ主面5に対して垂直な直線が炭化珪素単結晶40の成長面46と交差する位置(第2位置)と、第1位置との距離である。第1位置は、たとえば、外周16を4等分する0°の位置、90°の位置、180°の位置および270°の位置の4箇所としてもよい。当該4箇所の位置における炭化珪素単結晶40の厚みの平均値が、炭化珪素単結晶40の厚みとされ得る。
貫通転位8は、炭化珪素単結晶40内のある位置から炭化珪素単結晶40の表面までの距離が最短となるように成長する。図3に示すように、炭化珪素単結晶40の成長表面が、原料2に近づくにつれて幅55が小さくなる湾曲していると、貫通転位8が主面5から原料2に向かう方向(図3の下方向)に進展するよりも、炭化珪素単結晶40の径方向(図3の横方向)に進展しやすくなる。結果として、貫通転位8は、炭化珪素単結晶40の側面に露出する。
(遷移工程)
次に、遷移工程が実施される。遷移工程は、第1工程と第2工程との間の工程であって、主面5の温度分布が変化する工程である。図5に示されるように、遷移工程において、第1誘導加熱コイル11に印加される電力は低減する。一方、第2誘導加熱コイル12に印加される電力は増加する。遷移工程の間、第2誘導加熱コイル12に印加される電力は、第1誘導加熱コイル11に印加される電力よりも高く維持される。遷移工程において、チャンバ内の圧力は、たとえば第2圧力A2で維持される。図6に示されるように、遷移工程において、外周16の温度は低減し、中央15の温度は増加する。遷移工程において、外周16の温度は、中央15の温度よりも高く維持される。図7および図8に示されるように、遷移工程においては、主面5の中央15から外周16に向かって温度が高い状態を維持しながら外周16と中央15との温度差が小さくなるように、主面5の温度分布が変化する。
(第2工程)
次に、第2工程が実施される。第2工程は、第1工程後に実施される。図5に示されるように、第2工程において、第1誘導加熱コイル11に印加される電力は第3電力P12であり、第2誘導加熱コイル12に印加される電力は第4電力P22である。第2工程において、第3電力P12および第4電力P22は、ほぼ一定である。第2工程の間、第4電力P22は、第3電力P12よりも高く維持される。第3電力P12は、たとえば9.0kW以上13.0kW以下である。第4電力P22は、たとえば13.5kW以上19.5kW以下である。第4電力P22を第3電力P12で除した値は、たとえば1.5である。
具体的には、第2工程における第1誘導加熱コイル11の電力(つまり第3電力P12)を第2誘導加熱コイル12の電力(つまり第4電力P22)で除した値が、第1工程における第1誘導加熱コイル11の電力(つまり第1電力P11)を第2誘導加熱コイル12の電力(つまり第2電力P21)で除した値よりも小さくなるように、第1誘導加熱コイル11の電力および第2誘導加熱コイル12の電力が制御される。
第1工程における第1誘導加熱コイル11の電力(つまり第1電力P11)を第2誘導加熱コイル12の電力(つまり第2電力P21)で除した値を、第2工程における第1誘導加熱コイル11の電力(つまり第3電力P12)を第2誘導加熱コイル12の電力(つまり第4電力P22)で除した値で除した値は、たとえば1.0よりも大きく1.5よりも小さく、好ましくは1.1以上1.4以下であり、より好ましくは1.15以上1.25以下である。
第1工程における第1誘導加熱コイル11の電力(つまり第1電力P11)と第2誘導加熱コイル12の電力(つまり第2電力P21)とを合計した値を、第2工程における第1誘導加熱コイル11の電力(つまり第3電力P12)と第2誘導加熱コイル12の電力(つまり第4電力P22)とを合計した値で除した値は、たとえば0.95よりも大きく1.05よりも小さく、好ましくは0.97以上1.03以下であり、より好ましくは0.98以上1.02以下である。理想的には、第1工程における第1誘導加熱コイル11の電力と第2誘導加熱コイル12の電力とを合計した値(第1電力P11+第2電力P21)は、第2工程における第1誘導加熱コイル11の電力と第2誘導加熱コイル12の電力とを合計した値(第3電力P12+第4電力P22)と同じである。これにより、全体の熱量を一定にすることができる。第1工程と同様に、第2工程においても、チャンバ内の圧力は、たとえば第2圧力A2で維持される。
図8に示されるように、第2工程においては、中央15から外周16に向かって温度が高くなるように構成されている。外周16と中央15とは第1温度差よりも小さい第2温度差を有する。図6に示されるように、第2工程において、主面5の中央15の温度は第2中央温度BC2であり、主面5の外周16の温度は第2外周温度BO2である。第2工程において、第2中央温度BC2および第2外周温度BO2は、ほぼ一定である。第2工程において、第2外周温度BO2は、第2中央温度BC2よりも高く維持される。第2外周温度BO2と第2中央温度BC2との差(第2温度差)は、たとえば2℃以上5℃以下である。
第2工程においては、中央15での炭化珪素単結晶40の厚み54から外周16での炭化珪素単結晶40の厚み53を引いた値が、第1工程の最後(つまり時間T3)における中央15での炭化珪素単結晶40の厚み52から外周16での炭化珪素単結晶の厚み51を引いた値よりも小さくなり、かつ中央15での炭化珪素単結晶40の厚み54から外周16での炭化珪素単結晶40の厚み53を引いた値が0よりも大きくなるように炭化珪素単結晶40が成長する(図4参照)。
第2工程における外周16の温度と中央15の温度との差は、第1工程における外周16の温度と中央15の温度との差よりも小さい。炭化珪素単結晶40の成長面46は、中央部分が外周部分よりも原料に近い。そのため、成長面46の中央部分の温度は、成長面46の外周部分の温度よりも高くなる。よって、第2工程においては、中央15での炭化珪素単結晶40の成長速度VC2は、外周16での炭化珪素単結晶40の成長速度VO2よりも低い。そのため、成長面46は、原料2に対して突出した形状から、平坦な形状に近づく。第2工程における外周16での炭化珪素単結晶40の成長速度は、第1工程における外周16での炭化珪素単結晶40の成長速度よりも高くてもよい。第2工程における中央15での炭化珪素単結晶40の成長速度は、第1工程における中央15での炭化珪素単結晶40の成長速度よりも低くてもよい。第2工程の最後(時間T5)における中央15での炭化珪素単結晶40の厚み52と外周16での炭化珪素単結晶の厚み51との差は、第1工程の最後(時間T3)における中央15での炭化珪素単結晶40の厚み52と外周16での炭化珪素単結晶の厚み51との差よりも小さい。
なお、第1工程における外周16の温度とは、たとえば時間T2から時間T3までの間における外周16の温度の平均値である。同様に、第1工程における中央15の温度とは、たとえば時間T2から時間T3までの間における中央15の温度の平均値である。
時間T5において、中央15での炭化珪素単結晶40の厚み54は第2中央厚みCC2であり、外周16での炭化珪素単結晶40の厚み53は第2外周厚みCO2である。第2中央厚みCC2は、第2外周厚みCO2よりも大きい。第2中央厚みCC2と第2外周厚みCO2との差は、たとえば1mm以上3mm以下である。第1工程において、貫通転位8が炭化珪素単結晶40の側面に逃がされている。そのため、第2工程において成長する炭化珪素単結晶40の部分には、貫通転位8が引き継がれない。そのため、第2工程においては、貫通転位8が低減された炭化珪素単結晶40が成長する。
好ましくは、第2工程の時間(時間T4から時間T5までの時間)は、第1工程の時間(時間T2から時間T3までの時間)よりも長い。たとえば、第1工程の時間および第2工程の時間は、それぞれ15時間および35時間(第1プロファイル)であってもよいし、20時間および30時間(第2プロファイル)であってもよいし、25時間および25時間(第3プロファイル)であってもよい。
(昇圧工程)
次に、昇圧工程が実施される。図5に示されるように、昇圧工程において、第1誘導加熱コイル11に印加される電力および第2誘導加熱コイル12に印加される電力は、ほぼ一定である。昇圧工程の間、第2誘導加熱コイル12に印加される電力は、第1誘導加熱コイル11に印加される電力よりも高く維持されてもよい。昇圧工程において、チャンバ内の圧力は、たとえば第2圧力A2から第1圧力A1に増加する。図6に示されるように、昇圧工程において、種結晶1の主面5の中央15および外周16の温度は、ほぼ一定であってもよい。昇圧工程において、外周16の温度は、中央15の温度よりも高く維持されもよい。時間T5と時間T6との間において、固体の原料2の昇華が終了する。これにより、炭化珪素単結晶40の成長が終了する。
(降温工程)
次に、降温工程が実施される。図5に示されるように、降温工程において、第1誘導加熱コイル11に印加される電力および第2誘導加熱コイル12に印加される電力は、たとえば単調に減少する。降温工程の間、第2誘導加熱コイル12に印加される電力は、第1誘導加熱コイル11に印加される電力よりも高く維持されてもよい。降温工程におけるチャンバ内の圧力は、たとえば第1圧力A1で維持される。図6に示されるように、降温工程において、種結晶1の主面5の中央15および外周16の温度は、単調に増加してもよい。降温工程において、外周16の温度は、中央15の温度よりも高く維持されてもよい。炭化珪素単結晶40の温度が室温程度になった後、炭化珪素単結晶40が坩堝10から取り出される。以上により、炭化珪素単結晶40の製造が完了する。
なお上記においては、加熱部が誘導加熱コイルである場合について説明したが、加熱部は抵抗ヒータであってもよい。また上記においては、第2工程における第2誘導加熱コイル12の電力を、第1工程における第2誘導加熱コイル12の電力よりも高くし、かつ第2工程における第1誘導加熱コイル11の電力を、第1工程における第1誘導加熱コイル11の電力よりも低くする場合について説明したが、本実施形態はこの方法に限定されない。たとえば、第2工程における第2誘導加熱コイル12の電力を、第1工程における第2誘導加熱コイル12の電力と同程度に維持しつつ、第2工程における第1誘導加熱コイル11の電力を、第1工程における第1誘導加熱コイル11の電力よりも低くしてもよい。代替的に、第2工程における第2誘導加熱コイル12の電力を、第1工程における第2誘導加熱コイル12の電力よりも高くしつつ、かつ第2工程における第1誘導加熱コイル11の電力を、第1工程における第1誘導加熱コイル11の電力と同程度に維持してもよい。
(変形例)
次に、本実施形態の変形例において使用される炭化珪素単結晶の製造装置100の構成について説明する。
図9に示されるように、炭化珪素単結晶の製造装置100は、坩堝10と、加熱装置31と、第1電源21と、第2電源22と、第3電源23と、制御装置25とを主に有していてもよい。加熱装置31は、たとえば第1加熱部(第1抵抗ヒータ11)と、残りの複数の加熱部とを含んでいる。残りの複数の加熱部は、たとえば第2加熱部(第2抵抗ヒータ12)と、第3加熱部(第3抵抗ヒータ13)である。第1電源21は、第1抵抗ヒータ11に対して電力を供給可能に構成されている。同様に、第2電源22は、第2抵抗ヒータ12に対して電力を供給可能に構成されている。同様に、第3電源23は、第3抵抗ヒータ13に対して電力を供給可能に構成されている。制御装置25は、第1電源21の電力(出力)と、第2電源22の電力(出力)と、第3電源23の電力(出力)とを制御可能に構成されている。
第1抵抗ヒータ11は、種結晶1を取り囲むように坩堝10の外部に配置されている。第1抵抗ヒータ11は、自らの抵抗で発熱し、主に種結晶1を加熱する。第2抵抗ヒータ12は、原料2を取り囲むように坩堝10の外部に配置されている。第2抵抗ヒータ12は、自らの抵抗で発熱し、主に原料2を加熱する。第3抵抗ヒータ13は、収容部6の底面に対面して配置されている。第3抵抗ヒータ13は、自らの抵抗で発熱し、主に原料2を加熱する。
図9に示されるように、主面5に対して垂直な方向において、主面5を含む平面30と第1抵抗ヒータ11との距離は、平面30と残りの複数の加熱部の各々との距離よりも短い。具体的には、主面5に対して垂直な方向において、主面5を含む平面30と第1抵抗ヒータ11との距離は、平面30と第2抵抗ヒータ12との距離43よりも短い。同様に、主面5に対して垂直な方向において、平面30と第1抵抗ヒータ11との距離は、平面30と第3抵抗ヒータ13との距離44よりも短い。平面30は、第1抵抗ヒータ11と交差している。本実施形態によれば、主面5に対して垂直な方向において、平面30と第1抵抗ヒータ11との距離は0である。
次に、本実施形態の変形例に係る炭化珪素単結晶の製造方法について説明する。
まず、種結晶および原料を準備する工程(S10:図2)が実施される。この工程は、上述の方法と同様の方法により実施される。具体的には、種結晶1および原料2が、図9に示す坩堝10内に配置される。
次に、炭化珪素単結晶を成長させる工程(S20:図2)が実施される。炭化珪素単結晶を成長させる工程は、たとえば加熱装置31により種結晶1および原料2を加熱することにより行われる。加熱装置31は、第1抵抗ヒータ11と、第2抵抗ヒータ12と、第3抵抗ヒータ13とを有する。図10および図11に示されるように、主に第2抵抗ヒータ12および第3抵抗ヒータ13によって原料2を昇華させることにより原料ガス9を発生させ、原料ガス9を主面5上に再結晶化させることにより炭化珪素単結晶40を成長させる。
図12に示されるように、炭化珪素単結晶を成長させる工程は、昇温工程と、降圧工程と、第1工程と、遷移工程と、第2工程と、昇圧工程と、降温工程とを主に含む。昇温工程は、時間T0から時間T1までの工程である。降圧工程は、時間T1から時間T2までの工程である。第1工程は、時間T2から時間T3までの工程である。遷移工程は、時間T3から時間T4までの工程である。第2工程は、時間T4から時間T5までの工程である。昇圧工程は、時間T5から時間T6までの工程である。降温工程は、時間T6から時間T7までの工程である。
(昇温工程)
まず、昇温工程が実施される。図12に示されるように、昇温工程において、第1抵抗ヒータ11に印加される電力と、第2抵抗ヒータ12に印加される電力と、第3抵抗ヒータ13に印加される電力とは、たとえば単調に増加する。昇温工程の間、第2抵抗ヒータ12に印加される電力は、第1抵抗ヒータ11に印加される電力よりも低く維持され、かつ第3抵抗ヒータ13に印加される電力よりも高く維持されてもよい。チャンバ内には、たとえばアルゴンガス、ヘリウムガスまたは窒素ガスなどの不活性ガスが導入される。昇温工程におけるチャンバ内の圧力は、たとえば第1圧力A1で維持される。第1圧力A1は、たとえば大気圧である。図6に示されるように、昇温工程において、種結晶1の主面5の中央15および外周16の温度は、たとえば単調に増加してもよい。昇温工程において、外周16の温度は、中央15の温度よりも高く維持されてもよい。昇温工程においては、炭化珪素単結晶は、ほとんど成長しない。
(降圧工程)
次に、降圧工程が実施される。図12に示されるように、降圧工程において、第1抵抗ヒータ11に印加される電力と、第2抵抗ヒータ12に印加される電力と、第3抵抗ヒータ13に印加される電力とは、ほぼ一定である。降圧工程の間、第2抵抗ヒータ12に印加される電力は、第1抵抗ヒータ11に印加される電力よりも低く維持され、かつ第3抵抗ヒータ13に印加される電力よりも高く維持されてもよい。降圧工程において、チャンバ内の圧力は、たとえば第1圧力A1から第2圧力A2に低減する。第2圧力A2は、たとえば0.5kPa以上2kPa以下である。図6に示されるように、降圧工程において、種結晶1の主面5の中央15および外周16の温度は、ほぼ一定であってもよい。降圧工程において、外周16の温度は、中央15の温度よりも高く維持されてもよい。時間T1と時間T2との間において、固体の原料2が実質的に昇華し始める。
(第1工程)
次に、第1工程が実施される。図12に示されるように、第1工程において、第1抵抗ヒータ11に印加される電力は第5電力P31であり、第2抵抗ヒータ12に印加される電力は第6電力P41であり、第3抵抗ヒータ13に印加される電力は第7電力P51である。第1工程において、第5電力P31と、第6電力P41と、第7電力P51とは、ほぼ一定である。第1工程の間、第6電力P41は、第5電力P31よりも低く維持され、かつ第7電力P51よりも高く維持される。第5電力P31は、たとえば10kW以上15kW以下である。第6電力P41は、たとえば8kW以上12kW以下である。第7電力P51は、たとえば4kW以上6kW以下である。
第1工程において、チャンバ内の圧力は、たとえば第2圧力A2で維持される。第1工程において、主面5の中央15および外周16の温度は、原料2の温度よりも低く維持される。これにより、原料2が昇華して発生した原料ガス9は、種結晶1の主面5上に再結晶する。結果として、主面5上に炭化珪素単結晶40が成長する(図10参照)。
図7に示されるように、第1工程においては、主面5の中央15から主面の外周16に向かって温度が高くなるように構成されている。外周16と中央15とは第1温度差を有する。図6に示されるように、第1工程において、主面5の中央15の温度は第1中央温度BC1であり、主面5の外周16の温度は第1外周温度BO1である。第1工程において、第1中央温度BC1および第1外周温度BO1は、ほぼ一定である。第1工程において、第1外周温度BO1は、第1中央温度BC1よりも高く維持される。第1工程においては、中央15での炭化珪素単結晶40の成長速度VC1は、外周16での炭化珪素単結晶40の成長速度VO1よりも高い。炭化珪素単結晶40は、原料2に近づくにつれて幅55が小さくなる部分42を有するように成長する。
貫通転位8は、炭化珪素単結晶40内のある位置から炭化珪素単結晶40の表面までの距離が最短となるように成長する。図10に示すように、炭化珪素単結晶40の成長表面が、原料2に近づくにつれて幅55が小さくなる湾曲していると、貫通転位8が主面5から原料2に向かう方向(図10の下方向)に進展するよりも、炭化珪素単結晶40の径方向(図10の横方向)に進展しやすくなる。結果として、貫通転位8が、炭化珪素単結晶40の側面に露出する。
(遷移工程)
次に、遷移工程が実施される。遷移工程は、第1工程と第2工程との間の工程であって、主面5の温度分布が変化する工程である。図12に示されるように、遷移工程において、第1抵抗ヒータ11に印加される電力は減少する。一方、第2抵抗ヒータ12および第3抵抗ヒータ13に印加される電力は増加する。遷移工程の間、第2抵抗ヒータ12に印加される電力は、第1抵抗ヒータ11に印加される電力よりも低く維持され、かつ第3抵抗ヒータ13に印加される電力よりも高く維持される。遷移工程において、チャンバ内の圧力は、たとえば第2圧力A2で維持される。図6に示されるように、遷移工程において、外周16の温度は低減し、中央15の温度は増加する。遷移工程において、外周16の温度は、中央15の温度よりも高く維持される。
(第2工程)
次に、第2工程が実施される。第2工程と、第1工程後に実施される。図12に示されるように、第2工程において、第1抵抗ヒータ11に印加される電力は第8電力P32であり、第2抵抗ヒータ12に印加される電力は第9電力P42であり、第3抵抗ヒータ13に印加される電力は第10電力P52である。第2工程において、第8電力P32と、第9電力P42と、第10電力P52とは、ほぼ一定である。第2工程の間、第9電力P42は、第8電力P32よりも低く維持され、かつ第10電力P52よりも高く維持される。
第8電力P32は、たとえば9kW以上13kW以下である。第9電力P42は、たとえば8.5kW以上12.5kW以下である。第10電力P52は、たとえば5kW以上7kW以下である。
具体的には、第2工程における第1抵抗ヒータ11の電力(つまり第8電力P32)を残りの複数の抵抗加熱ヒータの合計の電力(つまり第9電力P42および第10電力P52の合計)で除した値が、第1工程における第1抵抗ヒータ11の電力(つまり第5電力P31)を残りの複数の抵抗加熱ヒータの合計の電力(つまり第6電力P41および第7電力P51の合計)で除した値よりも小さくなるように、第1抵抗ヒータ11の電力および残りの複数の加熱部(つまり第2抵抗ヒータ12および第3抵抗ヒータ13)の各々の電力が制御される。
第1工程における第1抵抗ヒータ11の電力(つまり第5電力P31)を残りの複数の抵抗加熱ヒータの合計の電力(つまり第6電力P41および第7電力P51の合計)で除した値を、第2工程における第1抵抗ヒータ11の電力(つまり第8電力P32)を残りの複数の抵抗加熱ヒータの合計の電力(つまり第9電力P42および第10電力P52の合計)で除した値で除した値は、たとえば1.0よりも大きく1.5よりも小さく、好ましくは1.1以上1.4以下であり、より好ましくは1.15以上1.25以下である。
第1工程における第1抵抗ヒータ11の電力(つまり第5電力P31)と残りの複数の抵抗加熱ヒータの合計の電力(つまり第6電力P41および第7電力P51の合計)とを合計した値を、第2工程における第1抵抗ヒータ11の電力(つまり第8電力P32)と残りの複数の抵抗加熱ヒータの合計の電力(つまり第9電力P42および第10電力P52の合計)とを合計した値で除した値は、0.95よりも大きく1.05よりも小さく、好ましくは0.97以上1.03以下であり、より好ましくは0.98以上1.02以下である。理想的には、第1工程における第1抵抗ヒータ11の電力と、第2抵抗ヒータ12の電力と、第3抵抗ヒータ13の電力とを合計した値(第5電力P31+第6電力P41+第7電力P51)は、第2工程における第1抵抗ヒータ11の電力と、第2抵抗ヒータ12の電力と、第3抵抗ヒータ13の電力とを合計した値(第8電力P32+第9電力P42+第10電力P52)と同じである。これにより、全体の熱量を一定にすることができる。第1工程と同様に、第2工程においても、チャンバ内の圧力は、たとえば第2圧力A2で維持される。
図8に示されるように、第2工程においては、中央15から外周16に向かって温度が高くなるように構成されている。外周16と中央15とは第1温度差よりも小さい第2温度差を有する。図6に示されるように、第2工程において、主面5の中央15の温度は第2中央温度BC2であり、主面5の外周16の温度は第2外周温度BO2である。第2工程において、第2中央温度BC2および第2外周温度BO2は、ほぼ一定である。第2工程において、第2外周温度BO2は、第2中央温度BC2よりも高く維持される。炭化珪素単結晶40の成長面46は、中央部分が外周部分よりも原料に近い。そのため、成長面46の中央部分の温度は、成長面46の外周部分の温度よりも高くなる。よって、第2工程においては、中央15での炭化珪素単結晶40の成長速度VC2は、外周16での炭化珪素単結晶40の成長速度VO2よりも低い。
第2工程においては、中央15での炭化珪素単結晶40の厚み54から外周16での炭化珪素単結晶40の厚み53を引いた値が、第1工程の最後(つまり時間T3)における中央15での炭化珪素単結晶40の厚み52から外周16での炭化珪素単結晶の厚み51を引いた値よりも小さくなり、かつ中央15での炭化珪素単結晶40の厚み54から外周16での炭化珪素単結晶40の厚み53を引いた値が0よりも大きくなるように炭化珪素単結晶40が成長する(図11参照)。
第2工程における外周16の温度と中央15の温度との差は、第1工程における外周16の温度と中央15の温度との差よりも小さい。第2工程における外周16での炭化珪素単結晶40の成長速度は、第1工程における外周16での炭化珪素単結晶40の成長速度よりも高くてもよい。第2工程における中央15での炭化珪素単結晶40の成長速度は、第1工程における中央15での炭化珪素単結晶40の成長速度よりも低くてもよい。第2工程の最後(時間T5)における中央15での炭化珪素単結晶40の厚み52と外周16での炭化珪素単結晶の厚み51との差は、第1工程の最後(時間T3)における中央15での炭化珪素単結晶40の厚み52と外周16での炭化珪素単結晶の厚み51との差よりも小さい。
時間T5において、中央15での炭化珪素単結晶40の厚み54は第2中央厚みCC2であり、外周16での炭化珪素単結晶40の厚み53は第2外周厚みCO2である。第2中央厚みCC2は、第2外周厚みCO2よりも大きい。第1工程において、貫通転位8が炭化珪素単結晶40の側面に逃がされている。そのため、第2工程において成長する炭化珪素単結晶40の部分には、貫通転位8が引き継がれない。そのため、第2工程においては、貫通転位8が低減された炭化珪素単結晶40が成長する。
好ましくは、第2工程の時間(時間T4から時間T5までの時間)は、第1工程の時間(時間T2から時間T3までの時間)よりも長い。たとえば、第1工程の時間および第2工程の時間は、それぞれ15時間および35時間(第4プロファイル)であってもよいし、20時間および30時間(第5プロファイル)であってもよいし、25時間および25時間(第6プロファイル)であってもよい。
(昇圧工程)
次に、昇圧工程が実施される。図12に示されるように、昇圧工程において、第1抵抗ヒータ11に印加される電力と、第2抵抗ヒータ12に印加される電力と、第3抵抗ヒータ13に印加される電力とは、ほぼ一定である。昇圧工程の間、第2抵抗ヒータ12に印加される電力は、第1抵抗ヒータ11に印加される電力よりも低く維持され、かつ第3抵抗ヒータ13に印加される電力よりも高く維持されてもよい。昇圧工程において、チャンバ内の圧力は、たとえば第2圧力A2から第1圧力A1に増加する。図6に示されるように、昇圧工程において、種結晶1の主面5の中央15および外周16の温度は、ほぼ一定であってもよい。昇圧工程において、外周16の温度は、中央15の温度よりも高く維持されもよい。時間T5と時間T6との間において、固体の原料2の昇華が終了する。これにより、炭化珪素単結晶40の成長が終了する。
(降温工程)
次に、降温工程が実施される。図12に示されるように、降温工程において、第1抵抗ヒータ11に印加される電力と、第2抵抗ヒータ12に印加される電力と、第3抵抗ヒータ13に印加される電力とは、たとえば単調に減少する。降温工程の間、第2抵抗ヒータ12に印加される電力は、第1抵抗ヒータ11に印加される電力よりも低く維持され、かつ第3抵抗ヒータ13に印加される電力よりも高く維持されてもよい。降温工程におけるチャンバ内は、たとえば第1圧力A1で維持される。図6に示されるように、降温工程において、種結晶1の主面5の中央15および外周16の温度は、単調に増加してもよい。降温工程において、外周16の温度は、中央15の温度よりも高く維持されてもよい。炭化珪素単結晶40の温度が室温程度になった後、炭化珪素単結晶40が坩堝10から取り出される。以上により、炭化珪素単結晶40の製造が完了する。
なお、上記においては、炭化珪素単結晶の製造装置100の加熱装置が、3個の加熱部を有する場合(図10参照)について説明したが、加熱部の数は4以上であってもよい。また上記においては、加熱部が抵抗ヒータである場合について説明したが、加熱部は誘導加熱コイルであってもよい。
次に、種結晶の主面の温度の測定方法について説明する。
種結晶の主面の温度は、たとえば放射温度計により測定することができる。放射温度計として、たとえば株式会社チノー製のパイロメータ(型番:IR−CAH8TN6)が使用可能である。パイロメータの測定波長は、たとえば1.55μmおよび0.9μmである。パイロメータの放射率設定値は、たとえば0.9である。パイロメータの距離係数は、たとえば300である。パイロメータの測定径は、測定距離を距離係数で除することにより求められる。たとえば測定距離が900mmの場合、測定径は3mmである。主面5の中央15の温度は、中央15に対面する台座4の表面の部分の温度を放射温度計により測定することにより推定することができる。同様に、主面5の外周16の温度は、外周16に対面する台座4の表面の部分の温度を放射温度計により測定することにより推定することができる。
次に、本実施形態に係る炭化珪素単結晶の製造方法の作用効果について説明する。
本実施形態に係る炭化珪素単結晶40の製造方法によれば、第1工程においては、主面5の中央15から主面の外周16に向かって温度が高くなるように構成され、外周16と中央15とは第1温度差を有する。第2工程においては、中央15から外周16に向かって温度が高くなるように構成され、外周16と中央15とは第1温度差よりも小さい第2温度差を有する。これにより、貫通転位が少なくかつ厚い炭化珪素単結晶を製造することができる。
また本実施形態に係る炭化珪素単結晶40の製造方法によれば、第2工程の時間は、第1工程の時間よりも長い場合がある。これにより、貫通転位の少ない炭化珪素単結晶40部分の厚みを大きくすることができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 種結晶
2 原料3 接着剤
4 台座
5 主面
6 収容部
7 結晶ガイド壁
8 貫通転位
9 原料ガス
10 坩堝
11 第1加熱部(第1誘導加熱コイル、第1抵抗ヒータ)
12 第2加熱部(第2誘導加熱コイル、第2抵抗ヒータ)
13 第3抵抗ヒータ
15 中央
16 外周
21 第1電源
22 第2電源
23 第3電源
25 制御装置
30 平面
31 加熱装置
40 炭化珪素単結晶
41,42 部分
43,44,45 距離
46 成長面
51,52,53,54 厚み
55 幅
100 製造装置

Claims (5)

  1. 主面を有する種結晶と、固体の原料とを準備する工程と、
    前記原料を昇華させ、前記主面上に再結晶化させることにより炭化珪素単結晶を成長させる工程とを備え、
    前記炭化珪素単結晶を成長させる工程は、第1工程と、前記第1工程後に実施される第2工程とを含み、
    前記第1工程においては、前記主面の中央から前記主面の外周に向かって温度が高くなるように構成され、前記外周と前記中央とは第1温度差を有し、
    前記第2工程においては、前記中央から前記外周に向かって温度が高くなるように構成され、前記外周と前記中央とは前記第1温度差よりも小さい第2温度差を有し、
    前記第1工程における前記主面の中央部の成長速度が、前記第2工程における前記主面の中央部の成長速度よりも高く、
    前記種結晶は貫通転位を有しており、前記第1工程において、前記貫通転位は前記炭化珪素単結晶の側面に露出する、炭化珪素単結晶の製造方法。
  2. 前記第1工程においては、前記中央での前記炭化珪素単結晶の成長速度は、前記外周での前記炭化珪素単結晶の成長速度よりも高く、
    前記第2工程においては、前記中央での前記炭化珪素単結晶の成長速度は、前記外周での前記炭化珪素単結晶の成長速度よりも低い、請求項1に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
  3. 前記第1工程においては、前記原料に近づくにつれて前記炭化珪素単結晶の幅が小さくなる部分を有するように前記炭化珪素単結晶が成長し、
    前記第2工程においては、前記中央での前記炭化珪素単結晶の厚みから前記外周での前記炭化珪素単結晶の厚みを引いた値が、前記第1工程の最後における前記中央での前記炭化珪素単結晶の厚みから前記外周での前記炭化珪素単結晶の厚みを引いた値よりも小さくなり、かつ前記中央での前記炭化珪素単結晶の厚みから前記外周での前記炭化珪素単結晶の厚みを引いた値が0よりも大きくなるように前記炭化珪素単結晶が成長し、
    前記外周での前記炭化珪素単結晶の厚みは、前記外周を通りかつ前記主面に対して垂直な直線が前記炭化珪素単結晶の成長面と交差する位置と、前記外周との間の距離である、請求項1または請求項2に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
  4. 前記炭化珪素単結晶を成長させる工程は、前記第1工程と前記第2工程との間の工程であって、前記主面の温度分布が変化する遷移工程をさらに含み、
    前記第2工程の時間は、前記第1工程の時間よりも長い、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
  5. 前記炭化珪素単結晶を成長させる工程は、加熱装置により前記種結晶および前記原料を加熱することにより行われる、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
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