JP6857051B2 - ガスセンサ素子およびガスセンサ - Google Patents

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Description

本発明は、固体電解質体および一対の電極を備えるガスセンサ素子、およびガスセンサ素子を備えるガスセンサに関する。
測定対象ガス(例えば排気ガス等)に含まれる特定ガス(例えば、酸素、NOx等)を検出するためのガスセンサ素子、およびそのようなガスセンサ素子を備えるガスセンサが知られている。ガスセンサ素子は、固体電解質体と、固体電解質体を挟み込むように配置された一対の電極と、を備える。
ところで、内燃機関の排気ガスにおけるエミッション(大気汚染物質など)の排出量低減の要求は年々高まっており、エミッション規制の強化が進んでいる。
排気ガスにおけるガス検出に用いられるガスセンサとしては、例えば、ガス検出を行うガスセンサ素子を備えるとともに、ガスセンサ素子を活性化状態にするためのヒータを備えるヒータ付きガスセンサがある。また、ガスセンサは、その用途によっては、低コストが強く求められることがあり、そのような要求に対しては、ヒータを備えていないヒータレスガスセンサを採用する場合がある。
このようなガスセンサは、ヒータおよび排気ガスのうち少なくとも一方の熱による加熱によってガスセンサ素子が活性化状態になることで、ガス検出が可能となる。このため、ガスセンサにおいては、ガスセンサ素子の特性として、ヒータおよび排気ガスのうち少なくとも一方からの熱を効率よくガスセンサ素子の活性化に活用できる特性(ガス受熱性)に優れていることが重要となる。
このようなガス受熱性の向上要求に対して、ガスセンサ素子の測定電極(測定対象ガスに接触する電極)を覆う保護層に助触媒としての材料(酸化セリウム、酸化ランタン、酸化カルシウム)が添加された構成のガスセンサ素子が提案されている(特許文献1)。このようなガスセンサ素子は、助触媒によって測定電極の触媒活性を向上でき、低温でのガスセンサ素子の特性が向上する。
特開平06−160332号公報
しかし、ガスセンサの用途によっては、より低い温度帯(例えば、300℃以下)でのガス検出が必要となる場合があり、そのようなより厳しい条件下では、上記の助触媒を備えるガスセンサ素子を用いる場合でも、測定電極の活性化が不十分となり、ガス検出ができない場合がある。
そこで、本発明は、低温(300℃以下)環境下でもガス検出が可能なガスセンサ素子、およびそのようなガスセンサ素子を備えるガスセンサを提供することを目的とする。
本発明の1つの局面におけるガスセンサ素子は、固体電解質体と、一対の電極と、保護層と、を備える。
一対の電極は、固体電解質体を挟み込むように配置されている。一対の電極は、測定対象ガスに接触する測定電極と、基準ガスに接触する基準電極と、を備える。
保護層は、測定電極を覆う多孔質状の材料で構成されている。保護層は、低熱伝導率層と、触媒含有層と、を少なくとも備えている。
低熱伝導率層は、多孔質状に形成されるとともに、熱伝導率が固体電解質体と同じか固体電解質体よりも低いものである。
触媒含有層は、多孔質状に形成されるとともに、測定対象ガスのガス平衡化反応を促進する触媒を含有して形成されている。
このガスセンサ素子においては、測定電極を覆う保護層が低熱伝導率層を備えることで、低熱伝導率層による保温効果が得られる。このため、固体電解質体のうち一対の電極が形成される部位に関して、熱量が保護層を介して外部に放出されることを低減でき、活性化状態の固体電解質体における温度低下を抑制できる。つまり、測定対象ガスからの熱量を受け取ることで活性化状態となった固体電解質体は、測定対象ガスの温度が低下した場合でも、低熱伝導率層による保温効果によって自身の温度低下を抑制できるため、活性化状態を維持できる。このため、このガスセンサ素子は、測定対象ガスからの熱を効率よく活用できるため、ガス受熱性を向上できる。
また、このガスセンサ素子においては、測定電極を覆う保護層が触媒含有層を備えることで、保護層を介して測定電極に到達する測定対象ガスのうち一部が触媒含有層でガス平衡化反応を起こすことになり、測定電極に到達したときにガス平衡化反応が発生しやすくなる。これにより、固体電解質体の活性化状態が低下した場合であっても、ガス検出が可能となるため、ガス検出精度を向上できる。
よって、このガスセンサ素子によれば、低温(300℃以下)環境下でもガス検出が可能となる。
次に、上述のガスセンサ素子においては、低熱伝導率層は、保護層において、触媒含有層よりも測定電極に近い位置に配置されてもよい。
このように、低熱伝導率層が触媒含有層よりも測定電極に近い位置に配置されることで、固体電解質体の温度低下をより一層抑制できる。
また、測定対象ガスが保護層を通過して測定電極に到達するにあたり、低熱伝導率層よりも先に触媒含有層を通過することで、測定対象ガスのガス平衡化反応を十分に促進させることができ、ガス検出精度を向上できる。
次に、上述のガスセンサ素子においては、固体電解質体は、有底筒型または板型に形成されてもよい。
つまり、ガスセンサ素子の具体的な形状としては、例えば、有底筒型または板型が挙げられる。
本発明の別の局面のガスセンサは、測定対象ガスに含まれる特定ガスを検出するガスセンサ素子を備えるガスセンサであって、ガスセンサ素子として、上述のいずれかのガスセンサ素子を備える。
このように、上述のいずれかのガスセンサ素子を備えるガスセンサは、低温(300℃以下)環境下でもガス検出が可能となる。
本発明のガスセンサ素子によれば、低温(300℃以下)環境下でもガス検出が可能となる。
また、本発明のガスセンサによれば、低温(300℃以下)環境下でもガス検出が可能となる。
ガスセンサを軸線O方向に破断した状態を示す説明図である。 ガスセンサ素子の外観を示す正面図である。 ガスセンサ素子の構成を示す断面図である。 図3に示すガスセンサ素子のうち点線で囲まれた領域D1を拡大した拡大断面図である。 ガスセンサ素子のガス受熱性を評価するための評価試験の試験結果である。 実施例1および比較例1のそれぞれについての、シミュレーションによる伝熱解析により得られる素子温度のシミュレーション結果である。 ガスセンサの低温作動性を評価するための評価試験の試験結果である。 板型ガスセンサ素子の斜視図である。 板型ガスセンサ素子の模式的な分解斜視図である。 板型ガスセンサ素子の先端側の部分拡大断面図である。
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
尚、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
[1.第1実施形態]
[1−1.全体構成]
第1実施形態として、内燃機関の排気管に対して先端部分を排気管内に突出させる形態で装着し、排気ガス中の酸素を検出する酸素センサ(以下、ガスセンサ1ともいう)を例に挙げて説明する。なお、ガスセンサ1は、例えば、自動車またはオートバイ等の車両の排気管に備えられる。
まず、本実施形態のガスセンサ1の構成について、図1を用いて説明する。
図1では、図面下方向がガスセンサの先端側であり、図面上方向がガスセンサの後端側である。
ガスセンサ1は、ガスセンサ素子3、セパレータ5、閉塞部材7、端子金具9、リード線11を備える。さらに、ガスセンサ1は、ガスセンサ素子3、セパレータ5、および閉塞部材7の周囲を覆う様に配置される主体金具13、プロテクタ15、外筒16を備えている。なお、外筒16は、内側外筒17および外側外筒19を備えている。
ガスセンサ1は、ガスセンサ素子3を加熱するためのヒータを備えていない、いわゆるヒータレスのセンサであり、排気ガスの熱を利用してガスセンサ素子3を活性化して酸素を検出するものである。
図2は、ガスセンサ素子3の外観を示す正面図である。
ガスセンサ素子3は、酸素イオン伝導性を有する固体電解質体を用いて形成されており、先端部25が閉塞された有底筒型形状であり、軸線O方向に延びる円筒状の素子本体21を有している。この素子本体21の外周には、径方向外向きに突出した素子鍔部23が周設されている。
なお、素子本体21を構成する固体電解質体は、ジルコニア(ZrO)に安定化剤としてイットリア(Y)又はカルシア(CaO)を添加してなる部分安定化ジルコニア焼結体を用いて構成されている。素子本体21を構成する固体電解質体は、これらに限られることはなく、「アルカリ土類金属の酸化物とZrOとの固溶体」、「希土類金属の酸化物とZrOとの固溶体」などを使用しても良い。さらには、これらにHfOが含有されたものを、素子本体21を構成する固体電解質体として用いても良い。
ガスセンサ素子3の先端部25には、素子本体21の外周面に外側電極27(後述する図3参照)が形成されている。外側電極27は、PtあるいはPt合金を多孔質に形成したものである。外側電極27は、多孔質状の保護層31で覆われている。このため、図2では、保護層31は図示されるが、外側電極27は図示されていない。
素子鍔部23の先端側(図2下方)には、Pt等で形成された環状の環状リード部28が形成されている。
素子本体21の外周面のうち外側電極27と環状リード部28との間には、Pt等で形成された縦リード部29が軸線方向に延びるように形成されている。縦リード部29は、外側電極27と環状リード部28とを電気的に接続している。
一方、ガスセンサ素子3の素子本体21の内周面には、内側電極30が形成されている。内側電極30は、PtあるいはPt合金を多孔質に形成したものである。ガスセンサ素子3の先端部25(検知部)において、保護層31を介して外側電極27が測定対象ガスに晒され、内側電極30が基準ガス(大気)に晒されることで、測定対象ガス中の酸素濃度を検出している。
セパレータ5は、電気絶縁性を有する材料(例えばアルミナ)で形成された円筒形状の部材である。セパレータ5は、その軸中心に、リード線11が貫挿される貫通孔35が形成されている。セパレータ5は、その外周側を覆う内側外筒17との間に空隙18が設けられるように配置されている。
閉塞部材7は、電気絶縁性を有する材料(例えばフッ素ゴム)で形成された円筒形状のシール部材である。閉塞部材7は、その後端に径方向外向きに突出する突出部36を備える。閉塞部材7は、その軸中心にリード線11が挿通されるリード線挿通孔37を備えている。閉塞部材7の先端面95は、セパレータ5の後端面97に密着し、閉塞部材7のうち突出部36よりも先端側の側方外周面98は、内側外筒17の内面に密着している。即ち、閉塞部材7は、外筒16の後端側を閉塞している。
閉塞部材7の後端向き面99は、外側外筒19の縮径部19gの先端向き面19aとの間で、リード線保護部材89の鍔部89bを挟持する。
このうち、縮径部19gは、閉塞部材7よりも後端側にて、径方向内側に延びており、縮径部19gの先端向き面19aは、ガスセンサ1の先端側に向く面として備えられている。縮径部19gの中央領域には、リード線11およびリード線保護部材89を挿通するためのリード線挿通部19cが形成されている。
リード線保護部材89は、リード線11を収容可能な内径寸法を有する筒状部材であり、可撓性、耐熱性および絶縁性を有する材料(例えば、ガラスチューブや樹脂チューブなど)で構成されている。リード線保護部材89は、リード線11を外部からの飛来物(石や水など)から保護するために備えられる。
リード線保護部材89は、先端側端部89aにおいて、軸線方向の垂直方向における外向きに突出する板状の鍔部89bを備える。鍔部89bは、リード線保護部材89の周方向の一部ではなく、全周にわたり形成されている。
リード線保護部材89の鍔部89bは、外筒16(詳細には、外側外筒19)の縮径部19gの先端向き面19aと閉塞部材7の後端向き面99との間に挟持される。
端子金具9は、導電性材料(例えばインコネル750(英インコネル社、商標名))で形成されており、センサ出力を外部に取り出すための導電性材料で構成される筒状部材である。端子金具9は、リード線11に電気的に接続されると共に、ガスセンサ素子3の内側電極30に電気的に接触するように配置されている。端子金具9は、その後端側に径方向(軸線方向と垂直の方向)の外向きに突出するフランジ部77を備えている。フランジ部77は、3枚の板状のフランジ片75を備えている。
リード線11は、芯線65と、その芯線65の外周を覆う被覆部67と、を備えて構成されている。
主体金具13は、金属材料(例えば鉄またはSUS430)で形成された円筒状の部材である。主体金具13には、内周面において径方向内側に向かって張り出した段部39が周設されている。段部39は、ガスセンサ素子3の素子鍔部23を支持するために備えられている。
主体金具13のうち先端側の外周面には、ガスセンサ1を排気管に取付けるためのネジ部41が形成されている。主体金具13のうちネジ部41の後端側には、ガスセンサ1を排気管に着脱する際に取付工具を係合させる六角部43が形成されている。更に、主体金具13のうち六角部43の後端側には、筒状部45が設けられている。
プロテクタ15は、金属材料(例えばSUS310S)で形成されており、ガスセンサ素子3の先端側を覆う保護部材である。プロテクタ15は、その後端縁が、パッキン88を介して、ガスセンサ素子3の素子鍔部23と主体金具13の段部39との間に挟まれるようにして固定されている。
ガスセンサ素子3のうち素子鍔部23の後端側領域においては、主体金具13とガスセンサ素子3との間に、先端側から後端側にかけて、滑石で形成されたセラミック粉末47と、アルミナで形成されたセラミックスリーブ49と、が配置されている。
更に、主体金具13の筒状部45の後端部51の内側には、金属材料(例えばSUS430)で形成された金属リング53と、金属材料(例えばSUS304L)で形成された内側外筒17の先端部55と、が配置されている。内側外筒17の先端部55は、径方向外向きに広がる形状に形成されている。つまり、筒状部45の後端部51が加締められることで、内側外筒17の先端部55が、金属リング53を介して筒状部45の後端部51とセラミックスリーブ49との間に挟持されて、内側外筒17が主体金具13に固定される。
また、内側外筒17の外周には、樹脂材料(例えばPTFE)で形成された筒状のフィルタ57が配置されると共に、フィルタ57の外周には、例えばSUS304Lで形成された外側外筒19が配置されている。フィルタ57は、通気は可能であるが水分の侵入は抑制できるものである。
そして、外側外筒19の加締め部19bが外周側から径方向内向きに加締められることにより、内側外筒17とフィルタ57と外側外筒19とが一体に固定される。また、外側外筒19の加締め部19hが外周側から径方向内向きに加締められることにより、内側外筒17と外側外筒19とが一体に固定され、閉塞部材7の側方外周面98が、内側外筒17の内面に密着することとなる。
なお、内側外筒17および外側外筒19は、それぞれ通気孔59、61を備えており、各通気孔59、61及びフィルタ57を介して、ガスセンサ1の内部と外部との通気が可能である。
[1−2.ガスセンサ素子]
ガスセンサ素子3の構成について説明する。特に、保護層31が備えられる先端部25の構成を中心に説明する。
ガスセンサ素子3は、上述の通り、素子本体21と、外側電極27と、環状リード部28と、縦リード部29、内側電極30と、保護層31と、を備えている。
図3は、ガスセンサ素子3の構成を示す断面図である。図4は、図3に示すガスセンサ素子3のうち点線で囲まれた領域D1を拡大した拡大断面図である。
ガスセンサ素子3の先端部25においては、外側電極27および内側電極30が素子本体21を挟み込むように配置されている。
保護層31は、外側電極27を覆うように形成されている。保護層31は、低熱伝導率層32と、触媒含有層33と、を備えている。保護層31においては、低熱伝導率層32が触媒含有層33に比べて外側電極27に近い位置に配置されている。
低熱伝導率層32は、5mol%のイットリアで安定化されたジルコニア(5YSZ)で形成されている。低熱伝導率層32は、気孔率が13%の多孔質状に形成されている。低熱伝導率層32は、厚さ寸法が80μmである。低熱伝導率層32は、熱伝導率が2.0[W/m・K]である。
なお、素子本体21は、熱伝導率が、2.5[W/m・K]である。このため、低熱伝導率層32は、素子本体21よりも熱伝導率が低い。
触媒含有層33は、スピネル(MgAl)およびチタニア(TiO)で形成されている。触媒含有層33は、貴金属(Pt,Pd,Rhのうち少なくとも1つ)が担持されている。この貴金属は、排気ガスに含まれる各種ガスのガス平衡化反応を促進するための触媒として機能する。触媒含有層33は、気孔率が52%の多孔質状に形成されている。触媒含有層33は、厚さ寸法が100μmである。
なお、素子本体21の厚さ寸法は、500μm(検知部領域)であり、外側電極27の厚さ寸法は、3μmであり、内側電極30の厚さ寸法は、3μmである。
[1−3.ガスセンサ素子の製造方法]
ガスセンサ素子3の製造方法について説明する。
まず、素子本体21の材料である固体電解質体の粉末として、ジルコニア(ZrO)に安定化剤としてイットリア(Y)を5mol%添加したもの(「5YSZ」ともいう)に対して、さらにアルミナ粉末を添加したものを用意する。素子本体21の材料粉末全体を100質量%としたとき、5YSZの含有量は99.6質量%であり、アルミナ粉末の含有量は0.4質量%である。この粉末をプレス加工した後、筒型形状となるように切削加工を実施することで、未焼結成形体を得る。
次に、未焼結成形体のうち、外側電極27、環状リード部28、縦リード部29、内側電極30のそれぞれの形成位置に対して、白金(Pt)およびジルコニアを含有するスラリーを塗布する。
このとき、外側電極27、環状リード部28、縦リード部29を形成するためのスラリーは、白金(Pt)に対して15質量%の単斜晶ジルコニアを添加したものを用いる。内側電極30を形成するためのスラリーは、白金(Pt)に対して、「99.6質量%の5YSZ/0.4質量%アルミナの混合粉末」(素子本体21と同じ組成)を15質量%添加したものを用いる。
次に、未焼結成形体のうち外側電極27の全体を覆うように、焼成後に低熱伝導率層32となるスラリーをディップ法により塗布することで、未焼成の低熱伝導率層32を形成する。このスラリーは、5YSZ/0.4質量%アルミナの混合粉末に対して、造孔材(気孔化材)としてカーボンを添加したものである。スラリー中における5YSZ/0.4質量%アルミナの混合粉末およびカーボンの割合は、5YSZ/0.4質量%アルミナの混合粉末が87体積%、カーボンが13体積%である。
次に、上記の各スラリーが塗布された未焼結成形体について、乾燥処理を施した後、1350℃で1時間かけて焼成した。
次に、未焼結成形体を焼成して得られた焼成体のうち、低熱伝導率層32の全体を覆うように、焼成後に触媒含有層33となるスラリーをディップ法により塗布することで、未焼成の触媒含有層33を形成する。このスラリーは、スピネル粉末およびチタニア粉末を含んで構成されている。
次に、上記のスラリーが塗布された焼成体について、乾燥処理を施した後、1000℃で1時間かけて焼成することで、触媒含有層33を形成した。このあと、焼成体のうち触媒含有層33の形成部分を、貴金属を含有する水溶液(塩化Pt酸溶液+硝酸Pd溶液+硝酸Rh溶液)に浸漬した後、乾燥処理を施し、さらに800℃で熱処理した。
このような製造工程を実施することで、ガスセンサ素子3が得られる。
このようにして製造されたガスセンサ素子3は、セパレータ5、閉塞部材7、端子金具9、リード線11などと組み付けられることで、ガスセンサ1の一部を構成する。
[1−4.ガスセンサ素子の評価試験]
本発明を適用したガスセンサ素子のガス受熱性を評価するために実施した評価試験の試験結果について説明する。
なお、ガス受熱性とは、ガスセンサ素子の特性のうち、測定対象ガス(排気ガスなど)からの熱を効率よくガスセンサ素子の活性化に活用できるか否かを示す特性である。
本評価試験では、ガスセンサ素子をガスセンサに組み付けた状態で、公知のバーナー測定装置に取り付けて、バーナー測定法によりガスセンサ素子の内部抵抗を測定し、ガスセンサ素子の活性化状態を判定することで、ガス受熱性を評価した。詳細には、ガス温度300℃で空燃比λ=0.9(リッチ)におけるセンサ出力を、抵抗値が異なる2つの抵抗素子(1MΩ、100kΩ)を用いてオシロスコープで検出し、その出力差に基づいてガスセンサ素子の内部抵抗を算出した。ガスセンサ素子は、活性化状態になるに従い内部抵抗が低下するため、内部抵抗に基づいて活性化状態であるか否かを判定できる。
なお、本評価試験では、実施例1として、上述の製造方法で製造した本発明のガスセンサ素子を用いており、比較例1として、上記の製造方法とは異なる製造方法で製造したガスセンサ素子を用いており、実施例1および比較例1のそれぞれの内部抵抗を測定することで評価試験を実施した。
比較例1のガスセンサ素子は、未焼結成形体と、焼成後に低熱伝導率層32となるスラリーと、を同時に焼成する製造方法ではなく、先に未焼結成形体を焼成し、その後にスピネル溶射により低熱伝導率層32を形成する製造方法により製造した。
なお、実施例1のガスセンサ素子の保護層31の厚さ寸法(低熱伝導率層32および触媒含有層33のそれぞれの厚さ寸法の合計寸法)、および比較例1のガスセンサ素子の保護層31の厚さ寸法(低熱伝導率層32および触媒含有層33のそれぞれの厚さ寸法の合計寸法)は、いずれも180μmとした。
また、本評価試験では、実施例1のガスセンサ素子として6個の試料を用い、また、比較例1のガスセンサ素子として6個の試料を用いて、ぞれぞれの内部抵抗を測定した。
図5は、ガスセンサ素子のガス受熱性を評価するための評価試験の試験結果である。
実施例1の内部抵抗は、80kΩ〜100kΩの範囲内に分布しており、比較例1の内部抵抗は、100kΩ〜140kΩの範囲内に分布している。
この試験結果によれば、実施例1の内部抵抗は、比較例1の内部抵抗に比べて、低い値を示しているため、より高い活性化状態であることがわかる。また、6個の各試料における内部抵抗のバラツキに関して、実施例1は、比較例1に比べて、バラツキが小さいため、個体差によるセンサ出力の誤差が生じ難いことがわかる。
ここで、実施例1および比較例1のそれぞれについて、シミュレーションによる伝熱解析により得られる素子温度のシミュレーション結果を、図6に示す。実施例1の素子温度のシミュレーション結果は、293℃であり、比較例1の素子温度のシミュレーション結果は、290℃であった。このことから、実施例1が、比較例1に比べて、内部抵抗が低い値を示した要因として、ガス受熱性の違いによる素子温度の差が挙げられる。なお、このシミュレーションでは、ガス温度が300℃の環境にセンサを晒したときの素子の温度を解析した。
実施例1のように未焼結成形体との同時焼成により形成した低熱伝導率層32は、比較例1のようにスピネル溶射で形成した低熱伝導率層32に比べて、熱伝導率が低くなるため、保温効果が高くなる。具体的には、実施例1の低熱伝導率層32の熱伝導率は2.0[W/m・K]であり、比較例1の低熱伝導率層32の熱伝導率は10[W/m・K]である。
なお、実施例1および比較例1の素子本体21の熱伝導率はいずれも2.5[W/m・K]である。このため、実施例1においては、低熱伝導率層32の熱伝導率は素子本体21の熱伝導率よりも低い値であり、比較例1においては、低熱伝導率層32の熱伝導率は素子本体21の熱伝導率よりも高い値である。
これにより、実施例1のガスセンサ素子は、比較例1のガスセンサ素子に比べて、測定対象ガスからの熱を効率よく活性化に活用できるため、ガス受熱性に優れたものとなる。このため、実施例1は、比較例1に比べて、測定対象ガスの温度が低い(300℃以下)条件下であっても、素子温度が高くなりガス検出が可能となるため、低温(300℃以下)での活性化性能(低温作動性)に優れたものである。
[1−5.ガスセンサの評価試験]
本発明を適用したガスセンサの低温作動性を評価するために実施した評価試験の試験結果について説明する。
なお、低温作動性とは、ガスセンサの特性のうち、低温(300℃以下)での活性化性能を示す特性である。
本評価試験では、ガスセンサを二輪車における排気管の最下流位置(詳細には、エンジンヘッドから300mm離れた位置)に組み付けた状態で、二輪車のエンジン始動時点から時間経過に伴うセンサ出力の波形を得ることで、ガスセンサの低温作動性を評価した。詳細には、エンジン始動後、アイドリング状態でのセンサ出力波形を検出した。排気管のうちガスセンサ取付位置の排気ガスの温度は、約250℃であった。
なお、本評価試験では、実施例2として、本発明のガスセンサ素子を備えるガスセンサを用いており、比較例2および3として、本発明とは異なるガスセンサ素子を備えるガスセンサを用いており、実施例2、比較例2および3のそれぞれのセンサ出力波形を検出した。
実施例2のガスセンサ素子は、上述の製造方法において、焼成後に低熱伝導率層32となるスラリーとして、5YSZ/0.4質量%アルミナの混合粉末に対して、造孔材としてカーボンを添加したものを用いて製造したガスセンサ素子である。スラリー中における5YSZ/0.4質量%アルミナの混合粉末およびカーボンの割合は、5YSZ/0.4質量%アルミナの混合粉末が87体積%、カーボンが13体積%である。つまり、実施例2のガスセンサ素子は、低熱伝導率層32の気孔率が13%であり、触媒含有層33にPt、Pd、Rhの貴金属触媒が担持されているガスセンサ素子である。
比較例2のガスセンサ素子は、上述の製造方法において、焼成後に低熱伝導率層32となるスラリーとして、5YSZ/0.4質量%アルミナの混合粉末に対して、造孔材としてカーボンを添加したものを用い、また、触媒含有層33を形成した後、貴金属を含有する水溶液への浸漬を実施せずに製造したガスセンサ素子である。スラリー中における5YSZ/0.4質量%アルミナの混合粉末およびカーボンの割合は、5YSZ/0.4質量%アルミナの混合粉末が87体積%、カーボンが13体積%である。つまり、比較例2のガスセンサ素子は、低熱伝導率層32の気孔率が13%であり、触媒含有層33に貴金属触媒が担持されていないガスセンサ素子である。
比較例3のガスセンサ素子は、上述の製造方法において、焼成後に低熱伝導率層32となるスラリーとして、5YSZ/0.4質量%アルミナの混合粉末に対して、造孔材としてカーボンを添加したものを用いて製造したガスセンサ素子である。スラリー中における5YSZ/0.4質量%アルミナの混合粉末およびカーボンの割合は、5YSZ/0.4質量%アルミナの混合粉末が75体積%、カーボンが25体積%である。つまり、比較例3のガスセンサ素子は、低熱伝導率層32の気孔率が25%であり、触媒含有層33にPt、Pd、Rhの貴金属触媒が担持されているガスセンサ素子である。
図7は、ガスセンサの低温作動性を評価するための評価試験の試験結果である。
この試験結果によれば、実施例2のガスセンサは、エンジン始動時点からの経過時間が118secを経過した後は、センサ出力が排気ガス中の酸素濃度に応じて変動しており、センサ出力波形が正常である。
比較例2のガスセンサは、エンジン始動時点からの経過時間が「0secから207sec」までの期間においては、センサ出力が排気ガス中の酸素濃度に応じて変動しておらず、センサ出力波形が正常ではない。つまり、比較例2においては、エンジン始動時点からの経過時間が「100secから207secまでの期間」は、ガスセンサが正常に作動せず故障と判定されるため、エンジン始動時点からの経過時間が207sec以上にならないと、正常なガス検出が実施できない。
比較例3のガスセンサは、エンジン始動時点からの経過時間が「100secから162secまでの期間」ではセンサ出力波形が正常となるが、「162secから222secまでの期間」ではセンサ出力波形が正常ではない。つまり、比較例3においては、エンジン始動時点からの経過時間が222sec以上にならないと、正常なガス検出が実施できない。
これらの試験結果のうち、実施例2と比較例2との対比によれば、触媒含有層33に貴金属触媒が担持されていることで、触媒含有層33に貴金属触媒が担持されていない場合に比べて、ガスセンサの低温作動性が向上することがわかる。つまり、貴金属触媒が担持された触媒含有層33を備えることで排気ガスのガス平衡化反応を促進できるため、保護層31を介して外側電極27に到達する排気ガスのうち一部が触媒含有層33でガス平衡化反応を起こすことになり、外側電極27に到達したときにガス平衡化反応が発生しやすくなる。これにより、素子本体21(固体電解質体)の活性化状態が低下した場合であっても、ガス検出が可能となるため、実施例2は比較例2に比べて、ガス検出精度を向上できる。
また、実施例2と比較例3との対比によれば、低熱伝導率層32の気孔率が相対的に小さい場合には、気孔率が相対的に大きい場合に比べて、ガスセンサの低温作動性が向上することがわかる。このように、低熱伝導率層32として相対的に緻密な層を形成することで、外側電極27に到達する排気ガスの量を制限できる。つまり、外側電極27で処理する排気ガスの量を制限することで、排気ガス中の酸素濃度に応じたセンサ出力を安定して得ることができる。
これらのことから、実施例2は、比較例2および3に比べて、低熱伝導率層32の気孔率が相対的に小さいか、または、触媒含有層33に貴金属触媒が担持されているため、ガス検出精度を向上できるとともに、安定したセンサ出力を実現できる。
[1−6.効果]
以上説明したように、本実施形態のガスセンサ1に備えられるガスセンサ素子3においては、保護層31は、低熱伝導率層32と触媒含有層33とを備えている。低熱伝導率層32は、熱伝導率が素子本体21よりも低い。触媒含有層33は、排気ガスのガス平衡化反応を促進する触媒を含有して形成されている。
ガスセンサ素子3においては、外側電極27を覆う保護層31が低熱伝導率層32を備えることで、低熱伝導率層32による保温効果が得られる。このため、素子本体21のうち一対の電極(外側電極27、内側電極30)が形成される部位に関して、熱量が保護層31を介して外部に放出されることを低減でき、活性化状態の素子本体21における温度低下を抑制できる。
つまり、排気ガスからの熱量を受け取ることで活性化状態となった素子本体21は、排気ガスの温度が低下した場合でも、低熱伝導率層32による保温効果によって自身の温度低下を抑制できるため、活性化状態を維持できる。このため、このガスセンサ素子3は、測定対象ガスからの熱を効率よく活用できるため、ガス受熱性を向上できる。
また、ガスセンサ素子3においては、外側電極27を覆う保護層31が触媒含有層33を備えることで、保護層31を介して外側電極27に到達する排気ガスのうち一部が触媒含有層33でガス平衡化反応を起こすことになり、外側電極27に到達したときにガス平衡化反応が発生しやすくなる。これにより、素子本体21の活性化状態が低下した場合であっても、ガス検出が可能となるため、ガス検出精度を向上できる。
よって、ガスセンサ素子3によれば、ヒータによる加熱を行うことなく、低温(300℃以下)環境下でもガス検出が可能となる。
次に、ガスセンサ素子3においては、低熱伝導率層32は、保護層31において、触媒含有層33よりも外側電極27に近い位置に配置されている。
このように、低熱伝導率層32が触媒含有層33よりも外側電極27に近い位置に配置されることで、素子本体21の温度変化をより一層抑制できる。
また、排気ガス(測定対象ガス)が保護層31を通過して外側電極27に到達するにあたり、低熱伝導率層32よりも先に触媒含有層33を通過することで、測定対象ガスのガス平衡化反応を十分に促進させることができ、ガス検出精度を向上できる。
[1−7.文言の対応関係]
ここで、本実施形態における文言の対応関係について説明する。
ガスセンサ1がガスセンサの一例に相当し、ガスセンサ素子3がガスセンサ素子の一例に相当し、素子本体21が固体電解質体の一例に相当し、外側電極27が測定電極の一例に相当し、内側電極30が基準電極の一例に相当する。
保護層31が保護層の一例に相当し、低熱伝導率層32が低熱伝導率層の一例に相当し、触媒含有層33が触媒含有層の一例に相当する。
[2.第2実施形態]
[2−1.板型ガスセンサ素子]
ガスセンサ素子の固体電解質体は、有底筒型に限られることはなく、板型であってもよい。そこで、第2実施形態として、板型ガスセンサ素子100について説明する。
図8は、板型ガスセンサ素子100の斜視図である。図9は、板型ガスセンサ素子の模式的な分解斜視図である。図10は、板型ガスセンサ素子の先端側の部分拡大断面図である。
板型ガスセンサ素子100は、素子本体101と、多孔質保護層120と、を備えて構成されている。
図9に示すように、素子本体101は、酸素濃度検出セル130と、補強保護層111と、大気導入孔層107と、下面層103と、を備える。なお、図9では多孔質保護層120の図示を省略している。
酸素濃度検出セル130は、固体電解質体105と、一対の電極(基準電極104、測定電極106)と、を備える。基準電極104および測定電極106は、固体電解質体105を挟み込むように配置されている。
基準電極104は、基準電極部104aと、基準リード部104Lと、を備える。基準リード部104Lは、基準電極部104aから固体電解質体105の長手方向に沿って延びるように形成されている。
測定電極106は、測定電極部106aと、検知リード部106Lと、を備える。検知リード部106Lは、測定電極部106aから固体電解質体105の長手方向に沿って延びるように形成されている。
補強保護層111は、補強部112と、電極保護部113aと、を備える。
補強部112は、固体電解質体105との間で検知リード部106Lを挟み込むようにして、固体電解質体105を保護するための板状の部材である。補強部112は、固体電解質体と同じ材料で形成されており、板の厚さ方向に貫通する保護部配置空間112aを備える。
電極保護部113aは、多孔質材料で形成されており、保護部配置空間112aに配置される。電極保護部113aは、固体電解質体105との間で測定電極部106aを挟み込むようにして測定電極部106aの昇華を抑制することで、測定電極部106aを保護する。
なお、本実施形態の板型ガスセンサ素子100は、酸素濃度検出セル130の電極間に生じる電圧(起電力)の値を用いて酸素濃度を検出することができる、いわゆる酸素濃淡起電力式のガスセンサ(λセンサ)を構成する。
下面層103および大気導入孔層107は、固体電解質体105との間で基準電極104を挟み込むようにして、基準電極104に積層されている。大気導入孔層107は、後端側が開口する略U字状に形成されている。固体電解質体105、大気導入孔層107および下面層103で囲まれた内部空間は、大気導入孔107hを構成している。基準電極104は、大気導入孔107hに導入される大気(基準ガス)に晒されるように配置されている。
このように、素子本体101は、下面層103、大気導入孔層107、基準電極104、固体電解質体105、測定電極106および補強保護層111が積層された積層体である。素子本体101は、板状に形成されている。
基準リード部104Lの端末は、固体電解質体105に設けられるスルーホール105aに形成される導体を介して、固体電解質体105上の検出素子側パッド121と電気的に接続されている。補強保護層111は、検知リード部106Lの端末よりも軸線方向(図9では左右方向)の寸法が短く形成されている。検出素子側パッド121および検知リード部106Lの端末は、補強保護層111の後端から外部に露出し、外部回路接続用の外部端子(図示せず)と電気的に接続される。
次に、多孔質保護層120について説明する。図8に示すように、多孔質保護層120は、板型ガスセンサ素子100(素子本体101)の先端側の全周を覆って設けられている。
図10に示すように、多孔質保護層120は、板型ガスセンサ素子100(素子本体101)の先端面を含み、軸線方向(図における左右方向)に沿って後端側に延びるように形成されている。また、多孔質保護層120は、図8に示すように、素子本体101の板状の4面(表面、裏面、右側面および左側面)を完全に囲んで形成されている。
さらに、多孔質保護層120は、軸線方向において、素子本体101のうち少なくとも基準電極部104aおよび測定電極部106aを包含する領域(この領域が検知部を構成する)を覆うように形成されている。本実施形態では、多孔質保護層120は、さらにこの領域より後端まで延びている。
板型ガスセンサ素子100には排気ガス中に含まれるシリコンやリンなどの被毒物質に晒されたり、排気ガス中の水滴が付着することがある。そこで、板型ガスセンサ素子100の外表面に多孔質保護層120を被覆することで、被毒物質を捕捉したり、水滴が板型ガスセンサ素子100に直接接触することを抑制できる。
次に、本発明の特徴部分である、固体電解質体、保護層、多孔質保護層などの成分組成について説明する。
固体電解質体105は、第1実施形態の素子本体21と同様に、ジルコニア(ZrO)に安定化剤としてイットリア(Y)又はカルシア(CaO)を添加してなる部分安定化ジルコニア焼結体から構成されている。固体電解質体105は、ジルコニアを主成分とし、該ジルコニアの50〜83.3質量%が正方晶ジルコニアである。
測定電極106はPtを主成分とし、かつ単斜晶ジルコニアを含む。なお、測定電極106は単斜晶ジルコニア以外の他のセラミック成分を含有してもよい。
なお、「主成分」とは、対象となる部位(固体電解質体105、測定電極106など)を構成する全成分に対し、50質量%を超える成分をいう。また、固体電解質体105の厚さ寸法は、200μmであり、測定電極106の厚さ寸法は、3μmであり、基準電極104の厚さ寸法は、3μmである。
多孔質保護層120のうち、少なくとも測定電極106を覆う部位は、第1実施形態の触媒含有層33と同様に、スピネル(MgAl)およびチタニア(TiO)で形成されているとともに、貴金属(Pt,Pd,Rhのうち少なくとも1つ)が担持されている。この貴金属は、排気ガスに含まれる各種ガスのガス平衡化反応を促進するための触媒として機能する。多孔質保護層120は、気孔率が52%の多孔質状に形成されている。多孔質保護層120のうち測定電極106を覆う部位は、厚さ寸法が100μmである。
なお、多孔質保護層120のうち、少なくとも測定電極106を覆う部位とは、素子本体101の積層方向において測定電極106と重なる部位をいう。多孔質保護層120のうち測定電極106を覆う部位は、厚さ寸法が100μmである。
電極保護部113aは、第1実施形態の低熱伝導率層32と同様に、5mol%のイットリアで安定化されたジルコニア(5YSZ)で形成されている。電極保護部113aは、気孔率が13%の多孔質状に形成されている。電極保護部113aは、厚さ寸法が80μmである。電極保護部113aは、熱伝導率が2.0[W/m・K]である。
なお、固体電解質体105は、熱伝導率が、2.5[W/m・K]である。このため、電極保護部113aは、固体電解質体105よりも熱伝導率が低い。
[2−2.効果]
以上説明したように、第2実施形態の板型ガスセンサ素子100は、電極保護部113aと、多孔質保護層120と、を備えている。
電極保護部113aは、熱伝導率が固体電解質体105よりも低い。多孔質保護層120は、排気ガスのガス平衡化反応を促進する触媒を含有して形成されている。
板型ガスセンサ素子100においては、測定電極106を覆う電極保護部113aを備えることで、電極保護部113aによる保温効果が得られる。このため、固体電解質体105のうち一対の電極(測定電極106、基準電極104)が形成される部位に関して、熱量が電極保護部113aを介して外部に放出されることを低減でき、活性化状態の素子本体101における温度低下を抑制できる。
つまり、排気ガスからの熱量を受け取ることで活性化状態となった素子本体101は、排気ガスの温度が低下した場合でも、電極保護部113aによる保温効果によって自身の温度低下を抑制できるため、活性化状態を維持できる。このため、板型ガスセンサ素子100は、測定対象ガスからの熱を効率よく活用できるため、ガス受熱性を向上できる。
また、板型ガスセンサ素子100においては、電極保護部113aを介して測定電極106を覆う多孔質保護層120を備えることで、多孔質保護層120を介して測定電極106に到達する排気ガスのうち一部が多孔質保護層120でガス平衡化反応を起こすことになり、測定電極106に到達したときにガス平衡化反応が発生しやすくなる。これにより、素子本体101の活性化状態が低下した場合であっても、ガス検出が可能となるため、ガス検出精度を向上できる。
よって、板型ガスセンサ素子100によれば、ヒータによる加熱を行うことなく、低温(300℃以下)環境下でもガス検出が可能となる。
[2−3.文言の対応関係]
ここで、本実施形態における文言の対応関係について説明する。
板型ガスセンサ素子100がガスセンサ素子の一例に相当し、素子本体101が固体電解質体の一例に相当し、測定電極106が測定電極の一例に相当し、基準電極104が基準電極の一例に相当する。
電極保護部113aおよび多孔質保護層120が保護層の一例に相当し、電極保護部113aが低熱伝導率層の一例に相当し、多孔質保護層120が触媒含有層の一例に相当する。
[3.他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
上記実施形態では、保護層および素子本体(固体電解質体)などにおける各種数値(熱伝導率、厚さ寸法、気孔率など)が特定されているが、これらの各種数値は、上記数値に限られることはなく、本発明の技術的範囲に含まれる限り、任意の値を採ることができる。例えば、低熱伝導率層の熱伝導率は、素子本体(固体電解質体)の熱伝導率よりも低い値に限られることはなく、素子本体(固体電解質体)と同じ値であってもよい。また、低熱伝導率層の気孔率は、5〜20%の範囲内で、任意の値を採ることができる。さらに、保護層の厚さ寸法(低熱伝導率層および触媒含有層のそれぞれの厚さ寸法の合計寸法)は、30〜300μmの範囲内で、任意の値を採ることができる。
次に、保護層における低熱伝導率層と触媒含有層の積層順序は、上記実施形態と同様の順序に限られることはない。例えば、低熱伝導率層と測定電極(外側電極27)との距離が、触媒含有層と測定電極(外側電極27)との距離よりも大きくなるように、触媒含有層が低熱伝導率層よりも測定電極に近い位置に保護層を構成してもよい。このような構成の保護層であっても、低熱伝導率層の保温効果によりガス受熱性を向上できるとともに、触媒含有層の触媒効果により測定対象ガスのガス平衡化反応を促進することでガス検出精度を向上できる。
次に、保護層は、低熱伝導率層および触媒含有層のみを備える構成に限られることはなく、さらに別の層を備えてもよい。例えば、第1実施形態の保護層31において、触媒含有層33の全体を覆うように形成される触媒保護層を備えてもよい。この触媒保護層を備えることで、触媒含有層における触媒成分(貴金属成分)の揮発を抑制することができ、触媒成分(貴金属成分)の揮発に伴うガス検出精度の低下を抑制できる。
次に、上記実施形態では、ガスセンサとして、筒型のガスセンサ素子を備えるガスセンサについて説明したが、本発明を適用するガスセンサは、板型ガスセンサ素子を備えるガスセンサであってもよい。なお、板型ガスセンサ素子を備えるガスセンサは公知であるため、詳細な構成についての説明は省略する。
次に、ガスセンサ素子の製造方法において、低熱伝導率層の製造にあたり、低熱伝導率層の原料として、素子本体(固体電解質体)の原料と比べて、比表面積が同じか比表面積が大きい原料を使用してもよい。比表面積がこのように規定された原料を用いることで、焼成時における焼結性が向上するため、焼成後に低熱伝導率層の内部に形成される気孔が、造孔材により形成される気孔のみとなる。これにより、低熱伝導率層の気孔率を、造孔材によって精度よく調整することができる。
次に、上記実施形態では、ガスセンサとしてヒータレスガスセンサについて説明したが、本発明を適用するガスセンサは、ガスセンサ素子を加熱するためのヒータを備えるヒータ付きガスセンサであってもよい。このようなガスセンサは、ヒータによる加熱に加えて排気ガスからの熱を効率よくガスセンサ素子の活性化に利用できるため、低温(300℃以下)環境下でもガス検出が可能となる。
なお、ヒータとしては、例えば、棒状に形成されて、有底筒型形状のガスセンサ素子のうち筒状内面に当接する棒状ヒータや、板型ガスセンサ素子に積層される板状ヒータなどが挙げられる。
1…ガスセンサ、3…ガスセンサ素子、5…セパレータ、7…閉塞部材、9…端子金具、11…リード線、13…主体金具、15…プロテクタ、16…外筒、21…素子本体、23…素子鍔部、25…先端部、27…外側電極、28…環状リード部、29…縦リード部、30…内側電極、31…保護層、32…低熱伝導率層、33…触媒含有層。

Claims (4)

  1. 固体電解質体と、前記固体電解質体を挟み込むように配置された一対の電極と、を備えるガスセンサ素子であって、
    前記一対の電極は、測定対象ガスに接触する測定電極と、基準ガスに接触する基準電極と、を備えており、
    前記測定電極を覆う多孔質状の保護層が備えられており、
    前記保護層は、低熱伝導率層と、触媒含有層と、を少なくとも備えており、
    前記低熱伝導率層は、多孔質状に形成されるとともに、熱伝導率が前記固体電解質体と同じか前記固体電解質体よりも低いものであり、
    前記触媒含有層は、多孔質状に形成されるとともに、前記測定対象ガスのガス平衡化反応を促進する触媒を含有して形成されており、
    前記低熱伝導率層の気孔率は、5〜20%である、
    ガスセンサ素子。
  2. 前記低熱伝導率層は、前記保護層において、前記触媒含有層よりも前記測定電極に近い位置に配置されている、
    請求項1に記載のガスセンサ素子。
  3. 前記固体電解質体は、有底筒型または板型に形成される、
    請求項1または請求項2に記載のガスセンサ素子。
  4. 測定対象ガスに含まれる特定ガスを検出するガスセンサ素子を備えるガスセンサであって、
    前記ガスセンサ素子として、請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載のガスセンサ素子を備える、
    ガスセンサ。
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