図1〜13は本発明に係る車両用シートアジャスタのブレーキ装置を実施するためのより具体的な第1の形態を示していて、特に図1はシートアジャスタを備えた車両用シートの一例を示している。
図1に示した車両用シート1では、シートアジャスタとして、車両用シート1の前後位置調整のためのシートスライド機構2と、座面となるシートクッション3の高さ位置調整のためのシートリフタ機構と、背もたれ部となるシートバック4の角度調整のためのリクライニング機構と、を備えている。そのため、シートクッション3の側部には、シートリフタ機構の操作部材としての操作レバー5とリクライニング機構の操作部材としての操作レバー6とが並べて設けられている。
そして、図1に示した車両用シート1では、シートリフタ機構に着目した場合、シートリフタ機構の操作レバー5を例えば中立位置(以下の説明では、操作レバー5が中立位置にある状態を中立状態とも言う。)から上方へ引き上げ操作する毎に少しずつシートクッション3の位置が高くなる一方で、逆に操作レバー5を中立位置から下方へ押し下げ操作する毎に少しずつシートクッション3の位置が低くなる。これによって、車両用シート1の座面の高さ位置調整機能が発揮されることになる。
図2は図1に示した車両用シート1のシートリフタ機構に適用されるブレーキ装置7の車載状態での正面図を、図3は図2の左側面図をそれぞれ示している。また、図4は図3におけるレバーブラケット24を取り外した状態での左側面図を、図5は図3のA−A線に沿った断面図をそれぞれ示している。さらに、図6は図3のB−B線に沿った断面図を、図7は図2に示したブレーキ装置7の分解斜視図をそれぞれ示している。
図2のほか図7の分解斜視図に示すように、ブレーキ装置7は、半割り状のハウジング本体11とカバー部材であるカバー23とを突き合わせることで略円筒状のブレーキハウジング8が形成されている。このブレーキハウジング8内に後述する図7のブレーキ機構部9と駆動機構部10とが収容されている。また、ブレーキハウジング8を有するブレーキ装置7の中心部に、ブレーキ機構部9と駆動機構部10とが共有する出力軸12が軸心方向に貫通して配置されている。出力軸12の一端には、図1に示した操作レバー5と共に操作部材として機能するレバーブラケット24が連結されていると共に、出力軸12の他端には外部に露出する駆動側ギヤとして機能するピニオンギヤ12dが一体に形成されている。
なお、レバーブラケット24は中立位置から正転方向および逆転方向のいずれの方向にも回転操作可能となっている。また、レバーブラケット24には、図1に示した操作レバー5がレバーブラケット24側のねじ孔24b(図3参照)を用いてねじ締め固定される。
そして、ブレーキ装置7は、カバー23側のフランジ部29に形成された取付孔29aを用いて、図1の車両用シート1のうち図示を省略したサイドブラケットに固定され、ピニオンギヤ12dが図示を省略したシートリフタ機構側の従動側ギヤに噛み合うことになる。
このブレーキ装置7では、レバーブラケット24が中立位置にある時には、出力軸12への逆入力によっては当該出力軸12が回転しないように制動状態を保持する。その一方、レバーブラケット24を中立位置から正転方向および逆転方向のうちいずれか一方に回転操作した時には、出力軸12の制動状態を解除して、レバーブラケット24の回転操作に伴う出力軸12の回転を許容することになる。この出力軸12の回転は、ピニオンギヤ12dを介して図示を省略したシートリフタ機構の従動側ギヤの回転変位に変換され、さらにはリンク機構を介して車両用シート1のシートクッション3の上下方向変位に変換されることになる。
なお、このタイプのブレーキ装置7では、レバーブラケット24のストロークが比較的小さいために、多くの場合には特定の方向へのレバーブラケット24の回転操作を複数回繰り返すことで所期の目的を達成することができる。
図2,7に示すように、ブレーキ機構部9側のハウジング本体11と駆動機構部10側のカバー23とで形成されるブレーキハウジング8内に、ブレーキ機構部9と駆動機構部10とが互いに同軸上に位置するように隣接配置されている。なお、以降の説明では、各構成要素の三次元形状や配置等が理解しやすい図7を中心としてその構造を説明するものとし、必要に応じて図7以外の図を適宜参照するものとする。
図7に示すように、ブレーキ機構部9は、ブレーキハウジング8の一部として機能するハウジング本体11と、駆動機構部10と共用化されている出力軸12と、ハウジング本体11内に圧入されるドラム部材としての環状(リング状)のブレーキドラム13と、ブレーキドラム13内に互いに対向配置される二つで一組の略半円形状で且つプレート状の一組のクランプ部材14と、これらの一組のクランプ部材14同士が共有している複合ばね15と、同じくブレーキドラム13内の一組のクランプ部材14の上に重ねて配置される同形状のもう一組のクランプ部材16と、これらの一組のクランプ部材16同士が共有している複合ばね17と、から形成されている。ハウジング本体11内にブレーキドラム13が圧入されることで、ブレーキドラム13もハウジング本体11と共にブレーキハウジング8の一部を形成している。
また、図7に示した駆動機構部10は、ブレーキ機構部9側の一組のクランプ部材16の上に重ねて配置される浅皿状の駆動ホイール18と、駆動ホイール18の上に重ねて配置される保持プレート19と、ツースプレート20と、入力レバー21と、ばね部材としてのねじりコイルばね22と、ブレーキ機構部9側のハウジング本体11と突き合わされるカバー23と、カバー23の外側に配置される操作部材としてのレバーブラケット24と、から構成される。駆動ホイール18は、後述するように、ブレーキ機構部9の制動状態を解除するための駆動部材として機能する。
図7に示したブレーキ機構部9のハウジング本体11は、例えば薄板状の板金部材を用いて略深皿状に絞りプレス成形したものであり、そのハウジング本体11の周壁部とブレーキドラム13の外周面は共に多角形のものとして形成されている。ブレーキドラム13はハウジング本体11の内周に相対回転不能に圧入固定される。そして、ブレーキドラム13の内周面が円筒状の制動面13aとなっている。また、ブレーキドラム13の肉厚はハウジング本体11のそれに比べて大きいものとなっている。
ハウジング本体11の底部には、出力軸12のピニオンギヤ12dの基部が挿入される軸孔11aが形成されている。また、ハウジング本体11の開口縁部にはフランジ部11bが形成されていると共に、フランジ部11bの例えば三箇所に係止凹部11cが形成されている。これら三つの係止凹部11cは後述するカバー23との結合固定部として機能する。
図7に示したブレーキ機構部9の出力軸12は、小径軸部12aと、中径軸部12bと、二面幅部12eを有する略矩形軸状の異形軸部12cと、ハウジング本体11の内底面に当接して出力軸12の軸方向への移動を規制するフランジ部12fと、ハウジング本体11の内底面に形成した軸孔11aに回動可能に支持される大径軸部12gと、駆動側ギヤとしてのピニオンギヤ12dと、が一体に形成されたいわゆる多段の段付き軸状のものである。この出力軸12は、後述するようにブレーキ機構部9と駆動機構部10とに共用化されている。また、出力軸12における異形軸部12cの二面幅部12eは、ブレーキ機構部9側の二組のクランプ部材14,16に対し外力を及ぼす作用部として機能する。
図7に示したブレーキ機構部9の一組のクランプ部材14は、ブレーキドラム13が圧入されたハウジング本体11の内底面に着座しつつ両端部の外周面がブレーキドラム13の制動面13aに接するように左右対称に対向配置される。さらに、一組のクランプ部材14の上にもう一組のクランプ部材16が左右対称となるように重ねて対向配置される。これら二組の各クランプ部材14,16の外周面のうち凹部25をはさんで図7に示す上下方向で離間した両端部には、ブレーキドラム13の制動面13aと接触可能な円弧状のクランプ面26がそれぞれに形成されている。
そして、一組のクランプ部材14のうち図7に示す双方の下端部同士の間に付勢手段としての複合ばね15が介装される。この複合ばね15により、一組のクランプ部材14のの下端部同士が互いに離間する方向に付勢されている。同様に、もう一組のクランプ部材16のうち図7に示す双方の上端部同士の間に付勢手段としての複合ばね17が介装される。この複合ばね17により、一組のクランプ部材16の上端部同士が互いに離間する方向に付勢されている。なお、図7に示す複合ばね15,17は、略M字状に折り曲げた板ばね17aと、その板ばね17aの双方の脚部の端部同士の間にコイルばね17bを挟み込んだもので、コイルばね17bは板ばね17aの両脚部が広がる方向に付勢している。
図7に示した駆動機構部10の駆動ホイール18は、環状のリング部18aの内周面にその全周にわたって内歯18bが形成されたいわゆる内歯車状のものである。駆動ホイール18の中心部には、出力軸12の異形軸部12cと一体的に回転可能なように、その異形軸部12cが嵌め合わされる角孔18cが形成されている。さらに、駆動ホイール18の背面側には、ブレーキ機構部9側の二組のクランプ部材14,16側に向かって突出する左右一対の円弧状の解除爪部18dが一体に形成されている。
なお、駆動ホイール18の角孔18cと出力軸12の異形軸部12cとの間には所定の遊びを有している。また、駆動ホイール18は、例えば金属製の円板をプレス成形により半抜きして内歯18bを有するリング部18aを形成し(図5,6参照)、リング部18aの内底面および解除爪部18dをいわゆるインサート成形法等の手法により樹脂材料にて一体に形成している。
図7に示した出力軸12は、図5,6にも示すように、ピニオンギヤ12dの根元部分に形成された大径軸部12gがハウジング本体11の軸孔11aに回転可能に挿入支持される。その一方、異形軸部12cの二面幅部12eが二組のクランプ部材14,14同士および16,16同士の対向間隙内にそれぞれ位置するように挿通される。さらに、その異形軸部12cが駆動ホイール18の角孔18cに遊嵌的に且つ微少角度だけ回転可能に嵌め合わされることになる。
その際に、駆動ホイール18側の一対の解除爪部18dが、二組のクランプ部材14,16の外周側において、各クランプ部材14,16の凹部25に出力軸12の回転方向に隙間を有して嵌め合わされる。そして、それら一対の解除爪部18dの円弧状の外周面は、ブレーキドラム13の制動面13aに対して、各解除爪部18d自体の弾性力により圧接している。なお、このようなブレーキ機構部9における出力軸12の異形軸部12cと、ブレーキドラム13内の二組のクランプ部材14,16のうち駆動ホイール18側に位置する一組のクランプ部材16、および駆動ホイール18側の解除爪部18dとの詳細な相対位置関係を図8に示している。
すなわち、図8は図7に示したブレーキ機構部9の中立状態での説明図である。図8に示すように、出力軸12の異形軸部12cの両側に位置する一組のクランプ部材16,16同士の対向端面Pのうち、異形軸部12cの二面幅部12eと対峙する部分には、異形軸部12cの回転中心の上下二箇所に相当する位置に円弧状の凸部16a,16bが形成されている。そして、一組のクランプ部材16の上端部同士の間に複合ばね17が介装されていて、それら上端部同士が互いに離間する方向に付勢されている。そのため、一組のクランプ部材16はブレーキドラム13の制動面13aに沿って所定量だけ回転移動し、それによってクランプ部材16の上端部同士のなす距離よりも下端部同士のなす距離の方が小さいものとなっている。その結果として、一組のクランプ部材16の対向端面Pに形成された一対の凸部16a,16bのうち下側の凸部16bが異形軸部12cの二面幅部12eの下部側に接触し、上側の凸部16aは異形軸部12cの二面幅部12eから離間している。
これらの関係は、図7に示したもう一組のクランプ部材14についても同様であり、一組のクランプ部材14の下端部同士の間に複合ばね15が介装されていて、それら下端部同士が互いに離間する方向に付勢されている。そのため、一組のクランプ部材14の下端部同士のなす距離よりも上端部同士のなす距離の方が小さいものとなっている。これにより、一組のクランプ部材14の端面に形成された一対の凸部14a,14bのうち上側の凸部14aが異形軸部12cの二面幅部12eの上部側に接触し、下側の凸部14bは異形軸部12cの二面幅部12eから離間していることになる。それ故に、後述するように、異形軸部12cの作用部として機能する二面幅部12eは、二組のクランプ部材14,16に対して回転方向に隙間なく当接することになる。
図9は図8のQ部の拡大図を示している。同図に示すように、一組のクランプ部材16の外周面におけるクランプ面26には、対向端面Pに近い位置にあって最も直径が大きく、且つブレーキドラム13の制動面13aに対する円周方向での接触長が長い大径クランプ面26aと、凹部25に近い位置に形成された極小円弧状の制動突起部26bと、大径クランプ面26aと制動突起部26bとを互いに離間させるべく両者の間に形成された逃げ凹部26cと、が含まれている。なお、このクランプ面26の形状は、もう一組のクランプ部材14についても同様である。
そして、図8にも示すように、通常時において、各クランプ部材16の上下の大径クランプ面26aがブレーキドラム13の制動面13aに接触している状態では、制動突起部26bがブレーキドラム13の制動面13aに接触することがないように、制動面13aと制動突起部26bとのなす隙間aおよび制動面13aからの逃げ凹部26cの深さbがa<bの関係を満たすようにそれぞれ設定されている。
図7に示した駆動機構部10の保持プレート19は、出力軸12の軸心方向でばね特性を発揮する板ばね状のものである。この保持プレート19は、出力軸12の中径軸部12bに挿入される軸孔19bが形成されたボス部19aと、ボス部19aから半径方向に延び、一体に折り曲げ形成されて駆動ホイール18の内底面に着座することになる一対のばね脚片部19cと、同じくボス部19aから半径方向に延び、一体に折り曲げ形成されたアーム部19dと、を備えている。そして、アーム部19dにはツースプレート20側に向かって突出する軸部19eが形成されている。また、一対のばね脚片部19cが突出形成された保持プレート19のボス部19aとアーム部19dとの間には段差があり、アーム部19dはボス部19aよりも駆動ホイール18側に位置している。
図7に示したツースプレート20は、保持プレート19のアーム部19dの上から重ねて駆動ホイール18内に配置される略半円弧状のものである。このツースプレート20の中央部には、略D字状をなす異形の軸孔20aとともに、出力軸12を中心とする径方向において軸孔20aから外側にオフセットした位置に円形の軸孔20bが形成されている。さらに、ツースプレート20の両端部には、駆動ホイール18側の内歯18bと対向するようにリム部20cが形成されている。このリム部20cの外周面には駆動ホイール18側の内歯18bと噛み合う外歯20dが形成されている。
図7に示した入力レバー21は、駆動機構部10での入力部材として機能するものである。入力レバー21の中央部には、出力軸12の中径軸部12bに回転可能に支持される軸孔21aが形成されている。また、その軸孔21aから外側にオフセットした位置にツースプレート20側に向かって突出する略半円状をなす異形の軸部21b(図5参照)が形成されている。なお、この異形の軸部21bはいわゆる押し抜きによって形成したものであるため、図7では略半円状に窪んだ押し抜き痕が図示されている。さらに、入力レバー21の周縁部には、端部が二股状をなす二つの折り曲げ係止片21cと、これらの折り曲げ係止片21cよりも突出長の小さな折り曲げ係止片21dとがカバー23側に向かって突出形成されている。
そして、保持プレート19および入力レバー21がそれらの軸孔19b,21aを介して出力軸12の中径軸部12bに回転可能に挿入支持される。同時に、入力レバー21側の異形の軸部21bがツースプレート20側の同じく異形の軸孔20aに所定の角度だけ回転可能に係合している。これにより入力レバー21とツースプレート20とが相対回転可能に連結される。また、ツースプレート20側の軸孔20bが保持プレート19側の軸部19eに係合して、ツースプレート20と保持プレート19とが相対回転可能に連結される。
図7に示したねじりコイルばね22は、後述するカバー23の内側に収容されて、入力レバー21を中立位置に保持するためのものである。ねじりコイルばね22の両端部にはフック部22a,22bが内向きに折り曲げ形成されている。そして、ねじりコイルばね22自体を巻き締まり状態とした上で、それら一対のフック部22a,22bが、入力レバー21側の折り曲げ係止片21dおよびそれに近接することになる後述のカバー23側のばね係止片28を両側から挟み込むように、その折り曲げ係止片21dおよびばね係止片28に係止される。これにより、図1に示した操作レバー5を正転方向および逆転方向のいずれの方向に回転操作した場合であっても、その操作力を解除するならば、ねじりコイルばね22の付勢力により、入力レバー21がレバーブラケット24および操作レバー5と共に中立位置に復帰することになる。
図7に示したカバー23は、例えばプレスによる深絞り成形にてカップ状に一体成形したものである。このカバー23は、図2,5に示すように、ブレーキ機構部9側のハウジング本体11と突き合わされることで、ハウジング本体11と共にブレーキ装置7のブレーキハウジング8を形成することになる。そして、先にも述べたように、このブレーキハウジング8の内部空間にブレーキ機構部9と駆動機構部10のそれぞれの構成要素が収容配置されることになる。その上で、保持プレート19がツースプレート20と共に駆動ホイール18と入力レバー21との間に挟まれて撓み変形することで、保持プレート19が両者に圧接することになる。また、保持プレート19におけるばね脚片部19cの端部が駆動ホイール18の底壁部の樹脂モールドされた部分に圧接することで、保持プレート19は少なくとも駆動ホイール18との間で相対回転方向での摺動抵抗を付与している。
カバー23の側壁部には中央部の軸孔23aと共にその周囲に二つで一組の長孔23bと別の一つの長孔23cが形成されている。カバー23がブレーキ機構部9側のハウジング本体11と突き合わされる際に、軸孔23aが出力軸12の小径軸部12aに嵌め合わされることで、出力軸12はハウジング本体11とカバー23とで回転可能に両持ち支持される。二つで一組の長孔23bには、図4に示すように、入力レバー21側の二股状をなす二つの折り曲げ係止片21cがレバーブラケット24側に向かって突出するように挿入される。二つの折り曲げ係止片21cの幅寸法に対して各長孔23bの長さ(周長)は十分に大きく設定されていて、これにより正転方向および逆転方向に回転可能なレバーブラケット24の回転範囲が長孔23bの長さの範囲内に規制される。つまり、一組の長孔23bにおける長手方向両端部の内周面は、レバーブラケット24の回転範囲を規制するストッパー面として機能することになる。
カバー23に形成された一組の長孔23bの周縁部からは内側にむけてそれぞれにガイド突起部27が折り曲げ形成されている。これらのガイド突起部27は、図6,7に示すように駆動機構部10の内部空間に臨んでいて、後述するようにツースプレート20の動きをガイドする役目をする。また、残された一つの長孔23cの周縁部からは内側に向けてばね係止片28が折り曲げ形成されている。このばね係止片28は、図5に示すように、入力レバー21側の折り曲げ係止片21dと重なり合うようになっていて、折り曲げ係止片21dと共にねじりコイルばね22の双方のフック部22a,22bが係止される。
また、図7に示すカバー23のうちハウジング本体11と対面する側の開口縁部には、図4にも示すように、例えば円周方向の三箇所に、取付孔29aを有するフランジ部29が折り曲げにより突出形成されている。さらに、各フランジ部29と干渉しない円周方向の三箇所に、フランジ部29よりも突出長の小さな略コ字状または二股状をなす係止フランジ部30が突出形成されている。これらの係止フランジ部30は、図2にも示すように、ハウジング本体11とカバー23とでブレーキハウジング8を形成するべく両者を突き合わせた際に、ハウジング本体11側の係止凹部11cに嵌め合わされる。その上で、係止フランジ部30の素片同士を互いに離間する方向に押し広げることで、ハウジング本体11とカバー23とが不離一体に結合固定される。なお、カバー23のフランジ部29は、図1に示した車両用シート1に対するブレーキ装置7の取付部として機能する。
図7に示したレバーブラケット24は、カバー23の側壁部の外側に配置され、中央部に形成された軸孔24aが出力軸12の小径軸部12aに回転可能に支持される。また、図3に示すように、レバーブラケット24には複数のねじ孔24bが形成されているほか、図7に示した入力レバー21側の二つの折り曲げ係止片21cにおける二股状の各分割片121cが係合しつつ突出する小さな角孔24cが形成されている。そして、カバー23の軸孔23aを出力軸12の小径軸部12aに挿入する際に、入力レバー21側の二つの折り曲げ係止片21cにおける各分割片121cが角孔24cに係合しつつ突出するかたちとなる。
ここで、角孔24cから突出する一対の分割片121cを互いに接近する方向に曲げることでレバーブラケット24と入力レバー21が互いに固定される。なお、一対の分割片121cを互いに離れる方向に曲げるようにしてもよい。これにより、レバーブラケット24と入力レバー21との相対回転が阻止され、レバーブラケット24は入力レバー21と共に正転方向および逆転方向に一体的に回転可能となっている。
また、図3のほか図7に示したレバーブラケット24には、図1に示した操作レバー5が装着される。操作レバー5は三つのねじ孔24bを用いてレバーブラケット24に固定される。これにより、レバーブラケット24は操作レバー5と共に駆動機構部10における操作部材として機能することになる。
ここで、図7に示したブレーキ機構部9の構成要素である出力軸12や二組のクランプ部材14,16、ならびに駆動機構部10の構成要素である駆動ホイール18のリング部18a、ツースプレート20等はいずれも金属材料で形成されている。その上で、各構成要素は、各々の機能よりして予め焼き入れ処理が施されて硬質化が図られている。これに対して、同様に金属材料で形成されるブレーキドラム13は、後述するように、二組のクランプ部材14,16との摺動抵抗を確保しつつ、それらのクランプ部材14,16の大径クランプ面26aや制動突起部26bが食い込み易いようにするために焼き入れ処理は施されておらず、クランプ部材14,16よりも軟質の金属材料で形成されている。
このように構成されたブレーキ装置7では、図1に示した操作レバー5を図3,5に示したレバーブラケット24と共に回転操作しないかぎりは、レバーブラケット24は入力レバー21と共にねじりコイルばね22の付勢力により中立状態に保持されている。そして、図10は図7に示した駆動機構部10の中立状態を示している。
すなわち、図10に示す中立状態においては、駆動機構部10におけるツースプレート20も中立状態にあって、ツースプレート20の両側の外歯20dは共に駆動ホイール18の内歯18bに隙間を持って対向する状態となっている。同時に、図7に示すブレーキ機構部9では、図8にも示すように、それぞれに複合ばね15,17で付勢された二組の各クランプ部材14,16の凸部14a,14aおよび16b,16bが出力軸12の二面幅部12eに圧接していると共に、両端部のクランプ面26がブレーキドラム13の制動面13aに圧接している。これにより、出力軸12は、正転方向と逆転方向の両回転方向において回転を阻止され、両者の摩擦力をもってその制動状態を自己保持している。
より詳しくは、図11は図8に示したブレーキ機構部9を簡略化した説明図である。操作レバー5がレバーブラケット24と共に中立状態にある時にも、通常時には乗員の着座によるシートリフタ機構側からのブレーキ装置7への逆入力が作用している。乗員の着座による逆入力は、図7に示したピニオンギヤ12dを入力部として例えば出力軸12を図11の矢印R1方向に回転させようとする力として作用する。
そして、図11に示した出力軸12の二面幅部12eが一方(左側)のクランプ部材16に及ぼす力F1は、クランプ面26がブレーキドラム13の制動面13aを面直角方向に押す力と、クランプ面26を制動面13aに沿って回転移動させようとする力として作用する。その一方、クランプ面26を制動面13aに沿って回転移動させようとする力が、ブレーキドラム13の制動面13aと一方のクランプ部材16との間の摩擦力よりも小さくなるように、両者の材質や接触面積およびブレーキドラム13の制動面13aの面粗度等が予め設定されている。そのため、ブレーキドラム13の制動面13aと一組のクランプ部材16との間に滑りが生じることはなく、両者の摩擦力をもってその制動状態を自己保持している。
なお、図11では図7に示した複合ばね17を含む一組のクランプ部材16のみ図示しているが、その一組のクランプ部材16の裏側に重なり合っているもう一組のクランプ部材14(複合ばね15を含む)も一組のクランプ部材16に対して上下逆の関係にあるだけで、これらのもう一組のクランプ部材14も同様の挙動をしていることになる。したがって、図11に示した制動状態は、図7に示した左側の一つのクランプ部材16と同じく右側の一つのクランプ部材14にて維持されていることになる。
このようなブレーキ機構部9による制動状態において、例えば車両の衝突その他の事情により、シートリフタ機構側からブレーキ装置7に対し、出力軸12のピニオンギヤ12dを入力側として通常時以上の過大な荷重入力が作用した場合の挙動を図12に示している。
すなわち、図12は図11に示したブレーキ機構部9での過大入力時の挙動を示す説明図である。図12に示すように、ピニオンギヤ12dを入力部として出力軸12を矢印R11方向に回転させようとする過大入力(外力)が作用した場合、出力軸12の二面幅部12eからの荷重入力F11により、同図の左側のクランプ部材16のクランプ面26がより一層強くブレーキドラム13の制動面13aに押し付けられるようになる。
そして、図12に示した荷重入力F11の増加に伴い、ブレーキドラム13のほか、図12に示した一組のクランプ部材16,16のうち左側の一つのものと、それら一組のクランプ部材16,16の下側に重ねて配置されているもう一組のクランプ部材14,14のうち右側の一つのものがそれぞれ弾性変形する。そのため、図12のほか図9の拡大図に示すように、左側のクランプ部材16のクランプ面26のうち大径クランプ面26aがより一層強く制動面13aに押し付けられて、大径クランプ面26aの逃げ凹部26c側の角部が制動面13aを圧壊して食い込むと共に、その大径クランプ面26aから逃げ凹部26cを隔てて離間している制動突起部26bも制動面13aに押し付けられるようになる。この制動突起部26bは大径クランプ面26aに比べてその接触面積が小さい極小径のものであるので、大径クランプ面26aを制動面13aに沿って回転移動させようとする力が大きくなるのを防止しつつ、極小径の制動突起部26bもまた、やがては制動面13aに食い込むようになる。
このようなクランプ面26における大径クランプ面26aと制動突起部26bとの制動面13aに対する圧接と食い込みとによって、逆方向からの過大な荷重入力F11に対して対抗することができる。これにより、ブレーキドラム13の制動面13aと一方のクランプ部材16との間の滑りを抑制して、逆方向からの過大な荷重入力F11に対してもその制動状態を自己保持することができる。なお、図12では一組のクランプ部材16のみ図示しているが、その一組のクランプ部材16の裏側に重なり合っているもう一組のクランプ部材14(図7参照)も同様の挙動をするものであることは先に述べた通りである。
その一方、先に述べたシートリフタ機構での高さ位置調整に際して、ブレーキ装置7におけるブレーキ機構部9の制動状態を解除するには、図7に示した駆動機構部10のレバーブラケット24を図1に示した操作レバー5と共に正転方向または逆転方向に回転操作するものとする。
図10は、先に述べたように、ブレーキ装置7における駆動機構部10の中立状態を示している。この状態では、ツースプレート20の両端部の外歯20dがそれぞれ駆動ホイール18の内歯18bに対し隙間を有して対向している。そして、ツースプレート20のうち外歯20dが形成されたリム部20cはカバー23側から突出形成されたガイド突起部27から離間している。
図10に示した駆動機構部10の中立状態から操作レバー5と共にレバーブラケット24を正転方向および逆転方向のいずれか一方の方向、例えば図10の状態から図13の矢印R2方向に回転操作した場合を想定してみる。操作レバー5と共にレバーブラケット24を図13の矢印R2方向に回転操作すると、駆動機構部10の入力レバー21も同方向に一体的に回転し、さらにツースプレート20は入力レバー21側の異形の軸部21bにより軸孔20aの位置で矢印R2方向に押されることになる。
ツースプレート20は軸孔20bで保持プレート19の軸部19eに支持され、保持プレート19は矢印R2方向の回転に対し駆動ホイール18の内底面との圧接による回転抵抗を有している。そのため、ツースプレート20は軸部19eを中心として図13の反時計回り方向(矢印R2方向とは反対方向)に回転する。この時、図10に示したツースプレート20における下側のリム部20cはカバー23側から突出形成された一方のガイド突起部27から外れた位置にあり、ツースプレート20の軸部19eを中心とする回転を阻止することができない。そのため、上側のリム部20cの外歯20dが駆動ホイール18の内歯18bと噛み合うことになる。そして、この状態からさらに入力レバー21を図13の矢印R2方向へ回転することで、入力レバー21、ツースプレート20、保持プレート19および駆動ホイール18が一体となって回動することになる。
入力レバー21が中立位置から回動した状態では、図13に示すように、上側のリム部20cの内周側に一方のガイド突起部27が対向するように位置している。そのため、ツースプレート20のうち下側の外歯20dが駆動ホイール18側の内歯18bに噛み合おうとしても、上側のリム部20cと同じく上側のガイド突起部27との干渉によって、下側の外歯20dと内歯18bとの噛み合いが阻止される。したがって、図13に示す状態から入力レバー21を中立位置に戻す際には、下側の外歯20dは内歯18bと噛み合わないため、入力レバー21とツースプレート20と保持プレート19とが一体となって中立状態まで回動することになる。
なお、図4に示したように、操作レバー5と共に回転する入力レバー21の一対の折り曲げ係止片21cがカバー23側の二つの長孔23bに挿通しているので、操作レバー5の操作ストロークは各折り曲げ係止片21cがカバー23側の長孔23bにおける長手方向のいずれか一方の端部内周面に当接することで規制される。
ツースプレート20により押された駆動ホイール18は、最初に二組のクランプ部材14,16による出力軸12の回転規制を解除する。図8に示すように、二組のクランプ部材14,16の凹部25に駆動ホイール18側の解除爪部18dがそれぞれに入り込んでいるため、駆動ホイール18の矢印R2方向の回転に伴い、解除爪部18dが図8の左側のクランプ部材16および右側のクランプ部材14とを同じ方向に回転させることになる。これにより、二組のクランプ部材14,16による出力軸12の二面幅部12eの挟み込みが解除された状態となり、実質的にそれまでのブレーキ機構部9の制動状態が解除される。この制動状態の解除により、出力軸12は一方のクランプ部材16と共にブレーキドラム13に対して回転可能になる。
次に、ツースプレート20より押された駆動ホイール18による出力軸12の回転は、図7に示した角孔18cと出力軸12側の異形軸部12cの二面幅部12eとの間に設けた所定の遊び分だけ回転した後に行われる。角孔18cと異形軸部12cの二面幅部12eとが当接することで出力軸12を図13の矢印R2方向に回転させる。なお、図8の右側のクランプ部材16も出力軸12の動きに追従して同じ方向に回転する。この出力軸12の回転は図7に示したピニオンギヤ12dの回転にほかならず、このピニオンギヤ12dの回転によって当該ピニオンギヤ12dと噛み合っているシートシフタ機構の従動側ギヤが回転して車両用シート1の高さ位置が例えば低位側に変位することになる。
このような図8に示した一組のクランプ部材16の動きを中心とした制動状態解除時の挙動は、その一組のクランプ部材16と重ねて配置されているもう一組のクランプ部材14についても全く同様であって、二組のクランプ部材14,16の挙動が同時進行するかたちで制動状態の解除が行われることになる。また、先の説明から明らかなように、操作レバー5の回転操作量の割には、シートリフタ機構の機能に基づく図1の車両用シート1の上下方向の変位量は小さいので、多くの場合には操作レバー5の回転操作を複数回繰り返すものとする。
図7に示したレバーブラケット24に装着される図1の操作レバー5には、同じく図7に示したねじりコイルばね22の復帰力が入力レバー21を介して作用している。そのため、操作レバー5の操作力を解除すると、ねじりコイルばね22の復帰力で、操作レバー5のほか、駆動機構部10の入力レバー21と保持プレート19およびツースプレート20のそれぞれが図13の状態から図10に示した中立位置である初期状態に回転復帰することになる。
この初期状態への回転復帰に際して、入力レバー21を初期位置に復帰させるために、図13の状態から反時計回り方向(矢印R2方向とは反対方向)に回動すると、ツースプレート20が保持プレート19側の軸部19eを中心として時計回り方向へ回動する。このツースプレート20の時計回り方向の回動に伴い、上側の外歯20dが駆動ホイール18の内歯18bから外れると共に、下側の外歯20dが内歯18bと噛み合おうとする。
この時には、カバー23側の一方(上側)のガイド突起部27により、上側のリム部20cが中立位置以上に回動するのを規制されている。そのため、上下双方の外歯20dが内歯18bに噛み合うことがなく、駆動ホイール18を先に回転した位置に残したままで、駆動ホイール18および出力軸12の回転を伴うことなく、入力レバー21、ツースプレート20および保持プレート19が図10の初期状態に回転復帰する。そして、図10に示すように、ツースプレート20が初期状態まで回転復帰すると、上側のリム部20cが、カバー23側の一方のガイド突起部27による拘束から解除され、ツースプレート20の上下双方の外歯20dが共に駆動ホイール18の内歯18bとの噛み合い可能な図10の状態となる。
そして、図8,10から明らかなように、ブレーキ機構部9および駆動機構部10共に、その内部構造が左右対称または上下対称な配置構成となっている。そのため、以上のような一連の動作は、操作レバー5を上記とは逆方向(図8,13の矢印R2方向とは反対方向)に回転操作した場合であっても、駆動機構部10およびブレーキ機構部9の回転要素の回転方向が逆になるだけで、上記と同様な動作をすることになる。
このように、本実施の形態のブレーキ装置7によれば、駆動機構部10の構成要素である駆動ホイール18、保持プレート19、ツースプレート20、入力レバー21およびねじりコイルばね22のそれぞれが全てカバー23内に収容配置されているため、ブレーキ機構部9を含む装置全体の小型化を図ることができる。また、操作レバー5の一部を形成することなるレバーブラケット24以外の駆動要素が外部に露出していないため、駆動要素と車両用シート1におけるシートクッション3のクッションカバーとの干渉のおそれがなく、ブレーキ装置7の作動安定性の面でも有利となる。
さらに、駆動機構部10の初期状態である中立位置または中立状態への復帰に際して、ツースプレート20の噛み合い規制をカバー23から折り曲げ形成したガイド突起部27によって行うようにしているため、例えばツースプレート20側に別途突起部等を設ける必要がなく、部品点数の削減とコスト低減の上で有利となる。
その上、駆動機構部10での作動に必要な三つの折り曲げ係止片21c,21dが入力レバー21に形成されていると共に、ねじりコイルばね22のためのばね係止片28がカバー23側から折り曲げ形成されているため、これによってもまた部品点数を削減して構造のコンパクト化に寄与することができる。
ここで、先に図9に示したブレーキドラム13の制動面13aと一方のクランプ部材16のクランプ面26との関係に着目してみる。
特許文献1に代表される従来の構造では、先にも述べたように、例えば車両衝突時等の過大な荷重負荷に対して、ブレーキハウジングの制動面が圧壊しつつ外形が変形することになるため、駆動側ギヤであるピニオンギヤに逆入力として作用する負荷に対して、そのピニオンギヤの変形量(回転角の変異)が大きくなるという不具合がある。
これに対して、本実施の形態では、クランプ部材16のクランプ面26のうち大径クランプ面26aがブレーキドラム13の制動面13aに食い込んだ後に、さらに微小な制動突起部26bが制動面13aに食い込むかたちとなる。そのため、ピニオンギヤ12dに作用する逆入力の荷重負荷に対して、ピニオンギヤ12d自体の弾性的な変形量(回転角の変位)を小さくすることができると共に、それによって制動強度が向上することになる。このことは、通常使用時におけるピニオンギヤ12dへの荷重入力に対しても同様に言い得ることである。また、上記クランプ部材16のクランプ面26での挙動は、もう一方のクランプ部材14のクランプ面26においても同様である。
また、上記のブレーキ装置7では、ブレーキハウジング8の変形を前提としていないため、制動面13aを厚肉のブレーキドラム13に設定することができ、制動面13aの変形を低減できる。これにより、ピニオンギヤ12dに逆入力として作用する負荷に対して、そのピニオンギヤ12dの変形量(回転角の変位)をさらに小さくできる。
図14〜24は本発明に係る車両用シートアジャスタのブレーキ装置を実施するための第2の形態を示している。この第2の実施の形態のうち、図14〜18は、先に説明した第1の実施の形態の図2〜5および図7にそれぞれ対応している。
より詳しくは、図14は図1に示した車両用シートのシートリフタ機構に用いられるブレーキ装置7の車載状態での正面図であり、図15は図14に示したブレーキ装置7の左側面図を、図16は図15に示したブレーキ装置7のレバーブラケット124を取り外した状態での左側面図をそれぞれ示している。また、図17は図15のC−C線に沿った断面図を示し、図18は図14に示したブレーキ装置7の分解斜視図、すなわちブレーキ装置7におけるブレーキ機構部9および駆動機構部10のそれぞれの構成要素の分解斜視図を示している。なお、これらの図14〜18において、第1の実施の形態と共通する部分には同一符号を付して、重複する説明は省略するものとする。
図18と第1の実施の形態の図7とを比較すると明らかなように、図18では、(1)図7に示したブレーキドラム13が廃止されている点、(2)出力軸12の二面幅部12eと、二組のクランプ部材14,16、および駆動ホイール18の向き(位相)が図7のものに対してそれぞれ90度異なっている点、(3)ハウジング本体111と保持プレート119、入力レバー121、カバー123およびレバーブラケット124の形状が図7のものに比べてわずかに異なっている点、等で両者は相違している。
以降の説明では、図18を参照しながらそれに対応する図7との相違点を中心として説明するものとし、必要に応じて適宜、図14〜17を参照するものとする。
図18に示したブレーキ機構部9のハウジング本体111は、例えば所定厚みの板金素材を用いて円形で且つ段付きの略深皿状に深絞り成形したものである。ハウジング本体111は、後述するカバー123と共にブレーキハウジング8として機能するだけでなく、図7に示したブレーキドラム13としての機能も併せ持っている。そのため、図7に示したハウジング本体11の肉厚寸法とブレーキドラム13の肉厚寸法との総和寸法ほどではないものの、図18に示したハウジング本体111の肉厚寸法は、少なくとも図7に示したハウジング本体11の肉厚寸法よりも大きいものとなっている。そして、ハウジング本体111の内周面が二組のクランプ部材14,16に対する制動面113aとなっている。なお、二組のクランプ部材14,16におけるクランプ面26の詳細は図9に示したものと基本的に同様である。
図18に示したハウジング本体111の底部には、出力軸12の大径軸部12gが挿入される軸孔11aが形成されている。また、ハウジング本体111の開口縁部にはフランジ部111bが形成されていると共に、フランジ部111bの例えば三等分位置に外側に向かって係止突起部111cが形成されている。これら三つの係止突起部111cは後述するカバー123との結合固定部として機能するものであり、各係止突起部111cはそれぞれに凹溝111dとその両側の爪部111eとを有している。
図18に示した駆動機構部10の保持プレート119は、図7に示したものと同様に、出力軸12の軸心方向でばね特性を発揮する板ばね状のものである、保持プレート119は、軸孔19bが形成されたボス部19aと、ボス部19aから一体に折り曲げ形成されて駆動ホイール18の内底面に着座するとことになる一対のばね脚片部19cと、同じくボス部19aから一体に折り曲げ形成されてツースプレート20と重なり合うアーム部19dのほか、ボス部19aのうちアーム部19dの根元部の両側から外側に向かって突出する一対のレバー部19fと、を備えている。
一対のレバー部19fが突出形成された保持プレート119のボス部19aとアーム部19dとの間には段差があり、アーム部19dはボス部19aよりも駆動ホイール18側に位置している。図19は、図18に示した保持プレート119のうちボス部19aの軸心とアーム部19d側の軸部19eの軸心とに共に直交する軸線に沿った拡大断面図である。図18のほか図19に示すように、保持プレート119のうち一対のレバー部19fの先端部はツースプレート20側に向かって折り曲げられ、さらに略U字状に折り返されることでフック部19gが形成されている。これらのフック部19gは、図16に示すように後述するカバー123側の長孔延長部23dの一部に当接可能となっている。
したがって、図18に示した保持プレート119とツースプレート20との相対位置関係は、アーム部19d側の軸部19eにツースプレート20の軸孔20bが挿入されることから、保持プレート119のボス部19aとアーム部19dとの段差の範囲内に納まるように、すなわちボス部19aとアーム部19dとの間にツースプレート20が挟まれるように配置される。そのため、ツースプレート20を揺動可能に支持することになる保持プレート119のうち、先端のフック部19gを含む一対のレバー部19fは、ツースプレート20よりも入力レバー121側に位置していることになる。
図18に示した駆動機構部10の入力レバー121は、図7に示したものと同様に、先端部が二股状をなす同形状の二つの折り曲げ係止片21cが形成されている。さらに、それらの二つの折り曲げ係止片21cとは形状がわずかに異なるもう一つの折り曲げ係止片121dが形成されている。これらの二つの折り曲げ係止片21cも単一の折り曲げ係止片121dも互いに平行となるようにカバー123側に向かって突出形成されていて、その先端面は共に同じ高さ位置となるように突出長が揃えられている。その一方、単一の折り曲げ係止片121dについてのみ、その根元部が一旦ツースプレート20側に折り曲げられた上で、さらにカバー123側に向かって折り返されることで形成されている。これにより、単一の折り曲げ係止片121dの根元部には、図17にも示すように、円弧状の湾曲部121eが形成されている。
図18に示した駆動機構部10のカバー123は、ブレーキ機構部9側のハウジング本体111と突き合わされることでブレーキハウジング8を形成するものである。そして、それらのカバー123とハウジング本体111とのなす内部空間にブレーキ機構部9の構成要素と駆動機構部10の構成要素が収容配置される点では第1の実施の形態のものと共通している。
図18に示したカバー123のうちハウジング本体111と対面する側の開口縁部には、取付孔29aが形成されたフランジ部29と共に、円周方向の三箇所に、フランジ部29よりも突出長の小さな係止フランジ部31が突出形成されている。これらの係止フランジ部31は、図18のほか図14,15にも示すように、ハウジング本体111とカバー123とでブレーキハウジング8を形成するべく両者を突き合わせた際に、ハウジング本体111側の係止突起部111cの凹溝111dに嵌め合わされる。その上で、図14に示すように、係止フランジ部31の先端両側の角隅部を押し潰すことで、ハウジング本体111とカバー123とが不離一体に結合固定される。
また、図18に示したカバー123では、図16にも示すように、その側壁部に軸孔23aと共に形成された二つで一組の長孔23bともう一つの長孔23cの形状が図4,7に示したものと異なっている。特に、二つで一組の長孔23cのそれぞれには、各長孔23cに連続しつつ外側に拡大化されるかたちで、各長孔23cよりも周長の小さな長孔延長部23dが形成されている。そして、各長孔延長部23dの周長方向での一方の内側面には保持プレート119側のフック部19gがその自己弾性力で当接している。
二つで一組の長孔23bには、入力レバー121側の折り曲げ係止片21cがレバーブラケット124側に向かって突出するようにそれぞれに挿入される。同様に、単一の長孔23cには、入力レバー121側の折り曲げ係止片121dがレバーブラケット124側に向かって突出するように挿入される。なお、長孔23cに挿入された折り曲げ係止片121dは、その長孔23cの内周縁から入力レバー121側に向かって折り曲げ形成されたばね係止片28に近接することになる。
図18に示したレバーブラケット124は、図15にも示すように、入力レバー121との結合部となる二つで一組の角孔24cが三箇所に形成されている点で、図3,7に示したものと相違している。図18に示したカバー123にレバーブラケット124を重ね合わせると、軸孔24aに出力軸12の小径軸部12aが挿入されると共に、三箇所の二つで一組の角孔24cに対して、入力レバー121側の三つの折り曲げ係止片21c,121dのうち図15に示した二つで一組の二股状の各分割片121cがそれぞれに挿入される。その上で、図18のほか図14,15に示すように、二つで一組の二股状の各分割片121cを外側に押し広げるように折り曲げることで、入力レバー121とレバーブラケット124とが不離一体に結合固定される。
図20〜22は図8,10,11にそれぞれ相当するブレーキ機構部9または駆動機構部10の中立状態を示している。図20,22は図8,11に比べてブレーキ機構部9の向き(位相)が90度異なっているだけであり、図8,11のものと実質的に同一である。
ただし、図20,22では、先にも述べたように、図8,11でのブレーキドラム13が廃止されているため、ハウジング本体111の内周面が二組のクランプ部材14,16に対する制動面113aとして機能する。また、図20,22では、図8,11に比べて、二組のクランプ部材14,16のクランプ面26のうち、逃げ凹部26cの拡大化が図られている。その結果として、図20,22では、図8,11に比べて、わずかながら、制動面113aに対する大径クランプ面26aの接触面積が縮小化されている。
また、駆動機構部10の中立状態を示す図21では、保持プレート119側のフック部19gを含む一対のレバー部19fがツースプレート20よりも入力レバー121側に突出していて、双方のフック部19gは図16にも示すようにカバー123側の長孔延長部23dの一方の内側面に自己弾性力で圧接している。その他の各構成要素の相対位置関係は図10と同様である。
図23は図12と同様の過大荷重入力時のブレーキ機構部9の挙動を示していて、図24は図13と同様の駆動機構部10での回転操作時の状態を示している。図23は図12に比べてブレーキ機構部9の向き(位相)が90度異なっているだけであり、図12のものと実質的に同一である。
過大荷重入力時の状態を示している図23では、図12でのブレーキドラム13が廃止されていることにより、実質的にハウジング本体111がブレーキドラムとしての機能を併せ持っている。過大荷重の入力時に、クランプ部材14,16におけるクランプ面26の大径クランプ面26aと制動突起部26bとが、相手側となる制動面113aに食い込むことは第1の実施の形態と同様である。この場合に、ブレーキドラムを兼ねているハウジング本体111の変形が危惧される。しかしながら、ハウジング本体111そのものの肉厚が第1の実施の形態のハウジング本体11よりも厚肉化されていることもあり、過大荷重入力時の早い段階で、クランプ部材14,16におけるクランプ面26の大径クランプ面26aと制動突起部26bとを制動面113aに食い込ませることで、機能上問題とならないレベルまでハウジング本体111の変形は抑制することができる。
駆動機構部10の回転操作時の状態を示している図24では、入力レバー121のR2方向への回転操作に伴い、ツースプレート20および保持プレート119が連れ回りするかたちでR2方向に所定量だけ回転変位している。この状態では、保持プレート119側の双方のフック部19gは、図21の状態から図24の状態への変化している。すなわち、保持プレート119側の一方(図24の上側)のフック部19gは、それまで係止されていたカバー123側の長孔延長部23dの内側面から離間する一方、他方(図24の下側)のフック部19gは、それまで係止されていたカバー123側の長孔延長部23dの内側面から離間すると共に、それ自体の弾性力で弾性変形してカバー123の側壁部の内側に引き込まれて隠れることになる。
そして、図24の状態から図21の中立状態に復帰する際には、中立位置近くになると、保持プレート119側の一方(図21の上側)のフック部19gは、再びカバー123側の長孔延長部23dの内側面に圧接するようになる。その一方、それまでカバー123の側壁部の内側に隠れていた他方(図21の下側)のフック部19gは、図21に示した下側の長孔延長部23dの一方の内側面の近くに達すると、自己弾性力で長孔延長部23d側に突出して、元の一方の内側面に再び圧接するかたちとなる。このような保持プレート119におけるフック部19gの挙動(動き)は、入力レバー121が操作レバー5(図1)と共に図21の中立位置に戻る際に、保持プレート119までも確実に中立位置に復帰させる役目をする。このような一連の動作は、図21の駆動機構部10の構造が上下対称形状のものであるために、例えば入力レバー121を図24のR2方向とは反対方向に回転操作した場合であっても同様である。
この第2の実施の形態では、第1の実施の形態のものと大きく異なる部分を中心に説明した。したがって、その他の部分の構造および動作等については、第1の実施の形態のものと同様である。
このように、第2の実施の形態によれば、図18と図7とを比較すると明らかなように、ハウジング本体111の厚み寸法を図7のものより厚肉化しつつ同図のブレーキドラム13を廃止しているので、第1の実施の形態のものと同等の機能を発揮しつつ、部品点数を削減できる利点がある。加えて、第1の実施の形態のブレーキドラム13に起因する効果を除いて、第1の実施の形態と同様の効果が得られることになる。
また、図21に示した駆動機構部10の中立状態では、保持プレート119側の一対のフック部19gがカバー123側の長孔延長部23dの内側面に自己弾性力でそれぞれ圧接するようになっている。そのため、入力レバー121およびツースプレート20と共に保持プレート119を確実に中立位置まで復帰させることができ、一段と作動安定性に優れる利点がある。
なお、上記各実施の形態では、シートリフタ機構のブレーキ装置7を例にとって説明したが、本発明は必ずしもシートリフタ機構のブレーキ装置に限定されるものではなく、他のシートアジャスタのブレーキ装置としても用いることができる。例えば、必要に応じて、図1に示した車両用シート1の背もたれ部となるシートバック4の角度位置調整のためのリクライニング機構のブレーキ装置としても本発明を適用することができる。