JP6853738B2 - ポリウレタン多層フィルム - Google Patents
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第1層の1つの主表面上に配置され、ポリエステル系熱可塑性ポリウレタン(B)を主成分として含む第2層と、を有し、
第1層の表面はショアD硬度が50以上であり、
第2層の表面硬度は、第1層の表面硬度よりも小さい、多層フィルム。
[2] 第1層と第2層との層厚比(第1層/第2層)が0.05〜0.6であり、第1層および第2層の合計層厚が30〜300μmである、[1]に記載の多層フィルム。
[3] 第1層の表面はショアD硬度が50〜60である、[1]または[2]に記載の多層フィルム。
[4] 第2層の表面はショアA硬度が70〜95である、[1]〜[3]のいずれかに記載の多層フィルム。
[5] 第1層と第2層とが積層一体化されている、[1]〜[4]のいずれかに記載の多層フィルム。
[6] 第1層と第2層とが共押出成形により積層されてなる、[1]〜[5]のいずれかに記載の多層フィルム。
[7] 第2層の第1層が配置される面とは反対側の面に粘着層を有する、[1]〜[6]のいずれかに記載の多層フィルム。
[8] 粘着層は感圧接着剤を含む、[7]に記載の多層フィルム。
[9] 第1層の第2層が配置される面とは反対側の面に自己修復層を有する、[1]〜[8]のいずれかに記載の多層フィルム
[10] 自己修復層は透明であるかまたは着色されている、[9]に記載の多層フィルム。
[11] 自己修復層はポリウレタン系樹脂、アクリル系透明ゴム状樹脂、シリコーン系ゴム状樹脂、オレフィン系エラストマー、および、スチレン系エラストマーから選択される軟質合成樹脂で構成される、で構成される、[9]または[10]に記載の多層フィルム。
[12] 第1層の層厚が、10〜100μmである、[1]〜[11]のいずれかに記載の多層フィルム。
[12−1] 第2層の層厚が、20〜200μmである、[1]〜[12]のいずれかに記載の多層フィルム。
[13] 塗装の保護に用いられる、[1]〜[12]のいずれかに記載の多層フィルム。
[14] [1]〜[13]のいずれかに記載の多層フィルムにより保護された塗膜を有する乗り物車体部分。
[15] 第1層を構成するポリエステル系熱可塑性ポリウレタン(A)を含む成形材料(A)と、第2層を構成するポリエステル系熱可塑性ポリウレタン(B)を含む成形材料(B)とを共押出することを含む、[1]〜[13]のいずれかに記載の多層フィルムの製造方法。
(1)十分な表面硬度と優れたハンドリング性を有するポリウレタン多層フィルムを得ることができる。
(2)優れた自己修復性を発現させ得る自己修復層を形成することが可能となる。
(3)ポリウレタン層間の界面不良が発生しにくく、良好な外観のポリウレタン多層フィルムを得ることができる。
なお、「主成分として含む」とは、ポリエステル系熱可塑性ポリウレタンの含有量が層全質量に対して50質量%を超えることを意味する。好ましくは、第1層および第2層は、ポリエステル系熱可塑性ポリウレタンの含有量がそれぞれの層の全質量に対して、75質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、第1層および第2層が実質的にポリエステル系熱可塑性ポリウレタンからなるのが特に好ましい。
これに対し、本発明者らは、高硬度および低硬度の2種のポリエステル系熱可塑性ポリウレタン層を積層させることにより、表面の高硬度化および柔軟性を両立できることを見出した。また、硬度の異なる複数の熱可塑性樹脂層を積層させると層間の界面不良が生じやすく、筋状やかすれ等の外観不良が発生する傾向にある。本発明者らは、同種の材料であるポリエステル系熱可塑性ポリウレタンを用いることで層間の界面不良を抑制できることをも見出した。本発明によれば、外観を損なうことなく、ハンドリング性に優れ、高硬度の表面を有するポリウレタン多層フィルムを得ることができる。
以下、各層の構成について具体的に説明する。
熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、一般にポリオール(長鎖ジオール成分)、ポリイソシアネートと、鎖伸長剤(短鎖ジオール成分)とを、反応させることにより得られる熱可塑性樹脂である。ポリオールとポリイソシアネートとは熱を与えることにより、ポリオールの水酸基とポリイソシアネートのイソシアネート基とがウレタン結合を形成して熱可塑性ポリウレタンを生成する。鎖伸長剤とポリイソシアネートとが反応してハードセグメントを形成し、ポリオールとポリイソシアネートとが反応してソフトセグメントを形成する。
ポリエステル系ポリウレタンの製造に用いられるポリオール(以下「ポリエステルポリオール」ともいう)は、エステル構造を有するポリオールである。ポリエステルポリオールとしては、縮合系ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオールが挙げられる。
第1層の表面は、ショアD硬度が50以上であり、好ましくは50〜60である。これにより、多層フィルムの表面硬度を高めることができる。このような高い表面硬度を有する第1層の表面には、自己修復層の形成が容易であり、しかも、自己修復機能を十分に発現させることが可能となる。
表面のショアD硬度は、JIS Z 2246の方法により測定することができる。
また、ポリウレタン(A)としては、例えば、ProGran(Huntman)、Elastollan(BASF)、Estane(Lubrizol)などの市販品を使用することができ、好ましくはProGran(Huntman)、Estane(Lubrizol)である。
ポリエステル系熱可塑性ポリウレタンの例は、例えば、特開2009−299026号公報等に開示されており、本発明においても当該開示されたポリエステル系熱可塑性ポリウレタンおよびこれを改変したものを使用することができる。
第2層は、第1層の1つの主表面上に配置される。
第2層は、第1層よりも小さい表面硬度を有する。これにより、多層フィルムの伸び性および/または柔軟性を損なうことなく、多層フィルムの表面(第1層の表面)を高硬度とすることができ、これにより、優れた自己修復性を発現しうる自己修復層の形成が可能となる。
表面のショアA硬度は、JIS Z 2246の方法により測定することができる。
できる。
多層フィルムは、第1層の第2層が配置される面とは反対側の面に自己修復層を有していてもよい。本明細書において、「自己修復層」とは、自己修復性(自己治癒性)を有する層を意味し、自己修復機能を発現させるために通常軟質樹脂で構成されている。「自己修復性」は、一度生じた傷が時間経過によって消失する性質を意味する。
多層フィルムは、第2層の第1層が配置される面とは反対側の面に粘着層を有していてもよい。粘着層を介して、多層フィルムを保護表面(例えば、塗面)に固定させることができる。
あるいは、粘着層は、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤などの粘着剤を含んでいてもよい。粘着層の厚さは特に制限されない。
多層フィルムは上記以外の他の層を有していてもよい。
例えば、自己修復層または第1層上に、反射防止層、防眩層、防汚層、防指紋層等の機能層を積層することができる。他の機能層の厚みは0.15μm未満が好ましく、0.1μm未満がより好ましく、特に0.08μm未満が好ましい。
例えば、多層フィルムは、各層の間(例えば、自己修復層と第1層の間、第1層と第2層との間、第2層と粘着層との間)に、ポリエステル樹脂フィルム、セルロース樹脂フィルム、ポリエチレン、ポリオレフィン樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、ポリエーテルイミド樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム等の他の樹脂フィルムを介在させてもよい。樹脂フィルムの厚みは、特に制限されないが10〜100μmの範囲が好ましい。
本発明の他の一形態は、多層フィルムの製造方法に関する。例えば、多層フィルムは、第1層の原料および第2層の原料をそれぞれ別の押出機にて溶融混練し、それぞれの溶融体をフィードブロックもしくはマルチマニホールドダイに誘導し、いずれかの装置内にて積層し、ダイスにてフィルム状に押出し、冷却ロールにて冷却固化し製膜することにより形成される。
例えば、溶融状態のポリウレタン(A)を含む成形材料(A)とポリエステル系ポリウレタン(B)を含む成形材料(B)とをそれぞれ昇温し、ダイから共押出し、冷却ロールで冷却することにより、ポリエステル系熱可塑性ポリウレタン(A)を含む第1層とポリエステル系熱可塑性ポリウレタン(B)を含む第2層とが積層一体化した多層フィルムを得ることができる。
押出機で加熱溶融する温度は、ポリウレタン(A)とポリウレタン(B)のそれぞれの樹脂温度のガラス転移温度(Tg)よりも80〜150℃高い温度であればよい。
2種類の溶融樹脂の共押出する方法としては、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式などの公知の方法を採用することができる。
例えば、フィードブロック方式の場合であれば、フィードブロックで積層した溶融樹脂をTダイなどのシート成形ダイに導き、シート状に成形した後、表面が鏡面処理された成形ロール(ポリッシングロール)に流入されてバンクを形成し、該成形ロール通過中にロール面をフィルムに転写させ冷却を行うようにすればよい。
マルチマニホールド方式の場合にはマルチマニホールドダイ内で積層した溶融樹脂を、ダイ内部でシート状に成形した後、成形ロールにて表面仕上げおよび冷却を行うようにすればよい。
好ましい態様では、第2層の第1層と反対側の主表面を事前にコロナ処理して、粘着層との結合を改善することができる。具体的には第2層の表面をコロナ処理等(例えば、空気または窒素コロナ処理)で表面処理し、かつ、粘着層に結合させる第2層主表面を熱ラミネート加工することが望ましい。具体的には、前記TPUフィルムの第2層主表面を露出させ且つ次にコロナ放電処理等によりフィルム表面のぬれ性を改質し、コーティング特性の向上を図る等である。
また、実施例および比較例における各物性の測定は、以下の方法により行った。
(物性:弾性率の評価)
JIS K 7161−1:2014に準拠し5号ダンベル型片を用いて引張試験機にて引張試験を実施した。その際、50%ひずみ(ひずみ=変位量/標線間距離×100)をサンプルに与えた際の弾性率を計測した。
弾性率が6N/mm以上10N/mm以下のものがハンドリング性の面から好ましく、特に7N/mm〜9N/mmの範囲が非常に好ましい。
ペイントプロテクションフィルムとしての施工性に関する評価を実施した。評価に際して特に「手触り感」「べたつき感」等に重視した。非常に良好なものを「◎」、良好なものを「○」、悪いものを「×」とした。
界面に生じる外観不良について目視にて評価を実施した。その際、スジ等の界面不良に由来すると思われる外観不良がほぼ見られない場合は「◎」、若干発生しているが気にならない程度の場合は「○」、多数発生している場合は「×」とした。
第1層としてショアD硬度52であるポリエステル系熱可塑性ポリウレタン(TPU1)(製品名:PN343−200 Huntsman製、第2層としてショアA硬度90であるポリエステル系熱可塑性ポリウレタン(TPU2)(製品名:PN3429−218 Huntsman製)が配置されるように別々の押出機にて溶融混練し、マルチマニホールドダイにて2種のTPU(TPU1およびTPU2)を2層に積層しフィルム状に共押出した。その後冷却ロールにて冷却固化し、総厚100μmのTPU1およびTPU2の2種から構成される2層フィルムを得た。
2層のTPU(TPU1およびTPU2)の厚みを変更したことを除き、実施例1と同製法にて2層フィルムを製造した。
第1層として実施例1と同材料を用い、第2層にはショアA硬度88を有するポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン(製品名:D91F88 Lubrizol製)を用いて実施例1と同製法にて100μm厚のフィルムを得た。その際層比は実施例1と同様とした。
第1層としてショアA硬度88を有したポリエステル系熱可塑性ポリウレタン(製品名:NY988 BASF製)を用い、第2層には比較例1と同材料を用いて、実施例1と同製法にて100μm厚のフィルムを得た。その際層比は実施例1と同様とした。
実施例1の第1層に用いた材料と同材料を用いて単層150μm厚のフィルムを得た。
実施例1の第2層に用いた材料と同材料を用いて単層150μm厚のフィルムを得た。
実施例および比較例より以下のことが確認される。
(1)ポリエステル系熱可塑性ポリウレタンからなる高硬度層(第1層)とポリエステル系熱可塑性ポリウレタンからなる低硬度層(第2層)とを積層させた実施例1〜4の2層フィルムは、ハンドリング性が良好であることが確認される。また、第1層および第2層にポリエステル系熱可塑性ポリウレタンを用いることで界面に発生する不良が発生しにくく、良外観の多層熱可塑性ポリウレタンフィルムが取得できることが分かった。
(2)高硬度層(第1層)/低硬度層(第2層)の層厚比が0.2〜0.54の範囲にある実施例1,3,4の2層フィルムは外観が特に良好であった。
(3)高硬度層(第1層)/低硬度層(第2層)の層厚比が0.18〜0.33の範囲にある実施例〜3の2層フィルムはハンドリング性が特に良好であった。
(4)ポリエステル系以外の熱可塑性ポリウレタンを用いて構成した比較例1、2の2層フィルムは、ハンドリング性は良好であったものの、第1層と第2層との間で界面不良が発生し、外観不良であった。
(5)ポリエステル系熱可塑性ポリウレタンの単層で構成した比較例3,4は、弾性率が所望の範囲(6〜10N/mm)外にあり、ハンドリング性が劣っていた。
11 第1層
12 第2層
13 自己修復層
14 粘着層
Claims (15)
- ポリエステル系熱可塑性ポリウレタン(A)を主成分として含む第1層と、
第1層の1つの主表面上に配置され、ポリエステル系熱可塑性ポリウレタン(B)を主成分として含む第2層と、を有し、
第1層の表面はショアD硬度が50以上であり、
第2層の表面硬度は、第1層の表面硬度よりも小さい、多層フィルム。 - 第1層と第2層との層厚比(第1層/第2層)が0.05〜0.6であり、第1層および第2層の合計層厚が30〜300μmである、請求項1に記載の多層フィルム。
- 第1層の表面はショアD硬度が50〜60である、請求項1または2に記載の多層フィルム。
- 第2層の表面はショアA硬度が70〜95である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の多層フィルム。
- 第1層と第2層とが積層一体化されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多層フィルム。
- 第1層と第2層とが共押出成形により積層されてなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多層フィルム。
- 第2層の第1層が配置される面とは反対側の面に粘着層を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の多層フィルム。
- 粘着層は感圧接着剤を含む、請求項7に記載の多層フィルム。
- 第1層の第2層が配置される面とは反対側の面に自己修復層を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の多層フィルム
- 自己修復層は透明であるかまたは着色されている、請求項9に記載の多層フィルム。
- 自己修復層は、ポリウレタン系樹脂、アクリル系透明ゴム状樹脂、シリコーン系ゴム状樹脂、オレフィン系エラストマー、およびスチレン系エラストマー、から選択される軟質合成樹脂で構成される、請求項10または11に記載の多層フィルム。
- 第1層の層厚が、10〜100μmである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の多層フィルム。
- 塗装の保護に用いられる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の多層フィルム。
- 請求項1〜13のいずれか一項に記載の多層フィルムにより保護された塗膜を有する乗り物車体部分。
- 第1層を構成するポリエステル系熱可塑性ポリウレタン(A)を含む成形材料(A)と、第2層を構成するポリエステル系熱可塑性ポリウレタン(B)を含む成形材料(B)とを共押出することを含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の多層フィルムの製造方法。
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