JP6851426B2 - リチウムイオン電池 - Google Patents

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Description

本発明は、電池分野に関し、具体的に、電池に関する。
リチウムイオン電池は、高エネルギー密度、高出力、長サイクル寿命、低環境汚染などの利点を有するため、電気自動車及び消費類電子製品に広く応用されている。しかし、リチウムイオン電池が、押圧、衝突又は穿刺などの異常状況を受けた時、発火や爆発が発生しやすく、深刻な危害を引き起す。従って、リチウムイオン電池の安全問題は、リチウムイオン電池の応用および普及を大きく制限する。
多数の実験の結果は、電池の内部短絡が、リチウムイオン電池の安全上のリスクの原因であることを示している。電池の内部短絡の発生を避けるために、研究者らは、セパレータの構造、電池の機械構造などを改善しようと試みた。そのうち、一部の研究は、集電体の設計を改善することによってリチウムイオン電池の安全性を向上させることである。
衝突、押圧、穿刺などの異常状況の発生によって電池に内部短絡が発生したとき、電池の温度が上昇する。従来技術には、金属集電体の材料に低融点合金を添加する技術案があり、電池温度の上昇に伴って、その集電体における低融点合金が溶融して、極シートの開路を引き起こし、これにより、電流が遮断され、電池の安全性が改善される。または、樹脂層の両面に金属層が複合される多層構成を有する集電体を使用して、電池温度の上昇に伴って、樹脂層の材料の融点に達すると、その集電体にける樹脂層が溶融して、極シートを破損させ、これにより、電流が遮断され、電池の安全性の問題が改善される。
しかしながら、従来技術におけるこれらの方法は、いずれもリチウムイオン電池の内部短絡が発生することを効果的に防止することができず、異常状況の発生後に電池が引き続き動作できることを保証することもできない。上記これらの改良された方法では、電池に内部短絡が発生した後、電池の温度が依然として急激に上昇する。電池の温度が急激に上昇すると、安全部材が迅速にレスポンスできなければ、依然として異なる程度の危険が発生する。さらに、上記これらの改良された方法では、安全部材がレスポンスした後、電池の安全上のリスクが解消されるが、電池が引き続き動作できない。
よって、衝突、押圧、穿刺などの異常状況が発生した後、電池の内部短絡の発生による発火や爆発などの事故を効果的に防止できるとともに、電池の正常動作に影響を与えない電池の設計を提供する必要がある。
上記問題に鑑みて、本発明は、電池の安全性を向上させるとともに、良好な倍率性能を兼備するために、電池を提案する。
本発明に係る電池は、正極シートと負極シートと電解液とを備え、前記正極集電体は、絶縁層と導電層とを備え、前記絶縁層は前記導電層を載置し、前記導電層は前記正極活物質層を載置し、前記導電層は、前記絶縁層の少なくとも1つの表面に位置し、前記導電層の厚さをD2としたときに、D2は300nm≦D2≦2μmを満たし、前記導電層の少なくとも1つの表面に保護層が設けられ、前記負極集電体は、厚さ1μm〜5.9μmの銅箔集電体である。
本発明の解決手段は、少なくとも以下の有利な作用効果を有する。
まず、本発明に係る電池における正極集電体の絶縁層が導電しないため、その抵抗が大きく、電池に異常状況で短絡が発生した時の短絡抵抗を大きくし、短絡電流を大幅に低減することにより、短絡時の発熱量を大きく低減して、電池の安全性を改善することができる。なお、本発明に係る電池の正極集電体は、小さい厚さを有する金属層が設けられた絶縁層で従来の純金属箔集電体に代えることにより、電池の重量エネルギー密度を向上させることもできる。
次に、本発明に係る電池における正極集電体にさらに保護層が設けられているため、当該導電層は、集電体が電極活物質層に電子を提供可能であると保証することができ、即ち、導電と集電の機能を果たす。一方で、保護層により、全体的に集電体の機械的強度を向上させ、電池の安全性をさらに向上させるとともに、導電層が破壊され、又は酸化や腐食などの現象が生じることも効果的に防止して、集電体の動作安定性と使用寿命を著しく改善することができる。
最後に、本発明に係る電池における正極集電体により、電池の安全性を改善することができるが、その導電性が従来のアルミニウム箔集電体よりも劣るため、本発明に係る電池における負極集電体に、厚さ1μm〜5.9μmの銅箔集電体が用いられることにより、電池の倍率性能を保証することができるとともに、負極にリチウムが析出することを防止することができる。
本発明に係る電池は、電池の安全性を向上させることができるのみならず、良好な倍率性能も兼備し、電池の重量エネルギー密度を向上させることもできる。
本発明に係る1つの具体的な実施形態における正極集電体の構造模式図である。 本発明に係るもう1つの具体的な実施形態における正極集電体の構造模式図である。 本発明に係るもう1つの具体的な実施形態における正極集電体の構造模式図である。 本発明に係るもう1つの具体的な実施形態における正極集電体の構造模式図である。 本発明に係る1つの具体的な実施形態における正極シートの構造模式図である。 本発明に係るもう1つの具体的な実施形態における正極シートの構造模式図である。 本発明に係る1つの釘刺し実験を示す模式図である。 電池1と電池4の1回の釘刺し実験後の温度変化曲線である。 電池1と電池4の1回の釘刺し実験後の電圧変化曲線である。 裁断された負極シートである。
以下、具体的な実施例を参照しながら、本発明についてさらに説明する。これらの実施例は本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の保護範囲を限定するためのものではないと理解されるべきである。
以下、本発明の実施例に提案された電池の構造と性能をさらに詳しく説明する。
本発明の実施例は電池に関し、正極、セパレータ、負極及び電解液を備える。
正極シートでは、正極シートは正極集電体と正極活物質層とを備える。以下では、本発明の実施例に係る電池における正極集電体を詳しく説明する。
本発明の実施例に係る電池における正極集電体は、絶縁層と導電層とを備え、絶縁層は導電層を載置し、導電層は正極活物質層を載置し、導電層は、絶縁層の少なくとも1つの表面に位置し、導電層の厚さをD2としたときに、D2は300nm≦D2≦2μmを満たす。
本発明の実施例に用いられる正極集電体における導電層は、集電体が電極活物質層に電子を供給し、導電と集電の機能を果たす要求を満たし、全体的に集電体の機械的強度を向上させることができる。一方で、導電層の厚さをD2としたときに、D2は300nm≦D2≦2μmを満たす。
一般的に、電池の内部抵抗には、電池オーム内部抵抗と電池分極内部抵抗が含まれ、そのうち、活物質抵抗、集電体抵抗、界面抵抗、電解液組成などがいずれも電池の内部抵抗に大きな影響を与える。異常状況で短絡が発生した時、内部短絡が発生したため、電池の内部抵抗が大幅に低下する。よって、集電体の抵抗を大きくすることにより、電池の短絡後の内部抵抗を大きくすることができ、電池の安全性を改善することができる。従来のリチウムイオン電池では、異常状況で電池内部短絡が発生したとき、瞬間に大きい電流が生じ、それに伴い大量の短絡による熱が生じて、これらの熱は通常正極アルミニウム箔の集電体でのテルミット反応を引き起こして、電池に発火、爆発などを発生させる。
本発明に係る実施例において、絶縁層により支持された特定の厚さを有する導電層を有する特殊な集電体を用いることにより、上記技術的問題を解決する。本発明に係る実施例における正極集電体では、絶縁層が導電しないため、その抵抗が大きく、電池に異常状況で短絡が発生した時の短絡抵抗を大きくし、短絡電流を大幅に低減するため、短絡時の発熱量を大きく低減して、電池の安全性を改善することができる。
なお、本発明で特定の厚さを有することにより、当該集電体が大きい抵抗を有することをさらに保証することができる。導電層がアルミニウムであるとき、正極集電体のテルミット反応を著しく低下させ、電池に内部短絡が発生したときの電池の温度上昇を著しく低下させることにより、電池が良好な安全性を有すると保証することができる。
好ましくは、絶縁層の材料は有機ポリマー絶縁材料から選ばれる。有機ポリマーは金属よりも密度が小さく、重量が軽く、電池が高い重量エネルギー密度を有するとさらに保証することができる。また、金属層には、厚さの小さい金属層が用いられることにより、電池の重量エネルギー密度をさらに向上させることができる。なお、絶縁層はその表面に位置する導電層に対して良好な載置及び保護の作用を発揮することができるため、従来の集電体でよく発生する極シートの破断現象が発生し難しい。
ここで、有機ポリマー絶縁材料は、ポリアミド(Polyamide、PAと略称する)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthalate、PETと略称する)、ポリイミド(Polyimide、PIと略称する)、ポリエチレン(Polyethylene、PEと略称する)、ポリプロピレン(Polypropylene、PPと略称する)、ポリスチレン(Polystyrene、PSと略称する)、ポリ塩化ビニル(Polyvinyl chloride、PVCと略称する)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(Acrylonitrile butadiene styrene copolymers、ABSと略称する)、ポリブチレンテレフタレート(Polybutylene terephthalat、PBTと略称する)、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド(Poly−p−phenylene terephthamide、PPAと略称する)、エポキシ樹脂(epoxy resin)、エチレンプロピレンゴム(PPEと略称する)、ポリホルムアルデヒド(Polyformaldehyde、POMと略称する)、フェノール樹脂(Phenol−formaldehyde resin)、ポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene、PTFEと略称する)、シリコーンゴム(Silicone rubber)、ポリビニリデンフルオライド(Polyvinylidenefluoride、PVDFと略称する)、ポリカーボネート(Polycarbonate、PCと略称する)から選ばれる少なくとも1種である。
本発明に係る実施例における集電体では、絶縁層は主に導電層を支持・保護する作用を発揮し、その厚さをD1としたとき、D1は1μm≦D1≦20μmを満たす。絶縁層が薄すぎると、極シートの加工プロセスなどの過程で、破断が発生しやすく、絶縁層が厚すぎると、当該集電体が用いられた電池の体積エネルギー密度を低下させる。
ここで、絶縁層の厚さD1の上限は20μm、15μm、12μm、10μm、8μmであってもよく、導電層の厚さD1の下限は1μm、1.5μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μmであってもよく、絶縁層の厚さD1の範囲は上限又は下限の任意の数値で構成することができる。好ましくは、2μm≦D1≦10μmであり、より好ましくは、2μm≦D1≦6μmである。
導電層が薄すぎると、集電体の常温フィルム抵抗Rを大きくすることに寄与するが、極シートの加工プロセスなどの過程で、破損が発生しやすい。導電層が厚すぎると、電池の重量エネルギー密度に影響を与え、且つ導電層の常温フィルム抵抗Rを大きくすることに不利である。
ここで、導電層の厚さD2の上限は2μm、1.8μm、1.5μm、1.2μm、1μm、900nm、800nm、700nm、600nm、500nmであってもよく、導電層の厚さD2の下限は300nm、350nm、400nm、450nmであってもよい。導電層の厚さD2の範囲は上限又は下限の任意の数値で構成することができる。好ましくは、500nm≦D2≦1.5μmである。
好ましくは、導電層は、金属導電材料から選ばれ、金属導電材料は、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、銀、ニッケル-銅合金、アルミニウム-ジルコニウム合金から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
さらに、導電層は、金属アルミニウムであることが好ましい。通常の正極集電体におけるアルミニウムの含有量が高いため、電池異常時に短絡が発生した時、短絡が発生した箇所に生成する熱が激しいテルミット反応を引き起こし、大量の熱が生じて電池に爆発などの事故が発生する。本発明に係る電池が用いられる場合、正極集電体におけるアルミニウムの含有量が大きく減少したため、テルミット反応が起きることを回避して、電池の安全性を著しく改善することができる。
ここで、導電層は、機械ロール圧延、接着、気相成長法(vapor deposition)、無電解メッキ(Electroless plating)の少なくとも1種により絶縁層に形成されてもよい。気相成長法として、物理的気相成長法(Physical Vapor Deposition、PVD)が好ましい。物理的気相成長法として、蒸着法、スパッタ法の少なくとも1種が好ましい。蒸着法として、真空蒸着法(vacuum evaporating)、熱蒸着法(Thermal Evaporation Deposition)、電子ビーム蒸着法(electron beam evaporation method、EBEM)の少なくとも1種が好ましい。スパッタ法として、マグネトロンスパッタ法(Magnetron sputtering)が好ましい。
本発明に係る実施例では、正極集電体は導電層の少なくとも1つの表面に設けられた保護層をさらに備える。保護層により導電層の機械的強度を向上させることができ、電池の安全性をさらに向上させるとともに、導電層が破壊され、又は酸化、腐食などの現象が生じることを効果的に防止して、集電体の長期間にわたる信頼性と使用寿命を著しく改善することができる。
本発明に係る実施例では、保護層は金属酸化物から選ばれ、金属酸化物は、酸化アルミニウム、酸化コバルト、酸化クロム、酸化ニッケルから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
ここで、保護層の厚さをD3としたとき、D3は、D3≦1/10 D2、且つ、1nm≦D3≦200nmを満たし、10nm≦D3≦50nmを満たすことが好ましい。
ここで、保護層の厚さD3の上限は200nm、180nm、150nm、120nm、100nm、80nm、60nm、55nm、50nm、45nm、40nm、30nm、20nmであってもよく、保護層の厚さD3の下限は1nm、2nm、5nm、8nm、10nm、12nm、15nm、18nmであってもよい。保護層の厚さD3の範囲は上限又は下限の任意の数値で構成することができる。好ましくは、10nm≦D3≦50nmである。保護層が薄すぎると、導電層に対する保護作用が限られ、保護層が厚すぎると、電池の重量エネルギー密度と体積エネルギー密度を低下させる。
保護層が導電層全体を占める厚さについて、D3は1/2000 D2≦D3≦1/10 D2を満たし、即ち、厚さはD2の1/2000〜1/10であり、より好ましくは、D3は1/1000 D2≦D3≦1/10 D2を満たす。
好ましくは、保護層は、導電層の絶縁層から離間する面に設けられてもよい。本発明に係る実施例では、説明が便利になるために、保護層は、導電層の絶縁層から離間する面(即ち、導電層の上面)に設けられている場合、上保護層と称す。
ここで、上保護層の厚さをD3´としたとき、D3´はD3´≦1/10 D2、且つ、1nm≦D3´≦200nmを満たし、即ち、厚さは、厚さD2の1/10以下であり、且つ1nm〜200nmの範囲内にあることを満たす。
まず、上保護層に金属酸化物が用いられる場合、上保護層は大きい抵抗を有するため、このような保護層により、ある程度集電体の抵抗をさらに向上させることでき、電池に異常状況で短絡が発生した時の短絡抵抗をさらに大きくして、電池の安全性を改善することができる。そして、金属酸化物の延性が小さく、硬度が大きいため、当該上面保護層により、正極集電体の機械的強度をさらに大きくすることができる。また、保護層材料に金属を使用することに比べ、金属酸化物の比表面積がより大きいため、金属酸化物材料の保護層と導電層の結合力がより強く、導電層を保護する作用をより良く発揮することができ、なお、比表面積が大きくなった保護層と正極活物質層の結合力もさらに大きくなり、従って、保護層が設けられていない正極集電体、又は上保護層材料に金属が用いられた正極集電体に比べ、本発明に係る実施例における集電体は、正極活物質層との結合力をさらに大きくすることができ、電池の全体の強度を向上させることができる。
さらに、好ましくは、保護層は、導電層の絶縁層に向かう表面に設けられてもよい。保護層は、導電層の絶縁層に向かう表面(即ち、導電層の下面)に設けられている場合、下保護層と称す。
下保護層は完全な支持構造を構成して導電層を保護することができ、導電層に対して保護作用をより良く発揮して、導電層が酸化、腐食又は破壊されることを防止することができる。また、下保護層により、集電体の機械的強度をさらに向上させる。金属酸化物材料の下保護層が大きい抵抗を有するため、このような保護層により、ある程度正極集電体の抵抗をさらに大きくすることができ、電池に異常状況で短絡が発生した時の短絡抵抗をさらに大きくして、電池の安全性を改善することができる。なお、金属酸化物の比表面積がより大きいため、金属酸化物材料の保護層と絶縁層の結合力が強くなるとともに、金属酸化物の比表面積がより大きいため、保護層により、絶縁層表面の粗さを大きくして、導電層と絶縁層の結合力を大きくする作用を発揮して、集電体全体の強度を向上させる。
ここで、下保護層の厚さをD3´´としたとき、D3´´は、D3´´≦1/10D2、且つ、1nm≦D3´´≦200nmを満たし、即ち、厚さは厚さD2の1/10であり、且つ1nm〜200nm範囲内の範囲内にあることを満たす。
さらに好ましくは、保護層は、導電層における対向する2つの表面に設けられてもよく、即ち、同時に上保護層と下保護層が設けられている。
さらに好ましくは、同時に上保護層と下保護層が設けられている場合、下保護層の厚さD3´´と上保護層の厚さD3´との比率関係は1/2 D3´≦D3´´≦4/5 D3´である。即ち、上保護層の厚さは下保護層の厚さよりも大きい。下保護層の厚さが大きくなると、集電体の機械的強度、安全性などに対する改善作用が限られ、かえって電池の重量エネルギー密度に影響を与える。
本発明の実施例における電池に係る具体的な実施形態では、導電層の材料はアルミニウムであり、導電層の厚さは500nm≦D2≦1.5μmであり、保護層の材料は酸化ニッケル又は酸化アルミニウムであるとともに、導電層における対向する2つの表面に設けられている。
図1〜図4は本発明の実施例における正極集電体の構造模式図である。
図1では、正極集電体10は、正極絶縁層101と、正極絶縁層101の対向する2つの表面に設けられた正極導電層102とを備え、正極導電層102は、正極導電層102と、正極導電層102の上面(即ち、正極絶縁層101から離間する面)に設けられた正極保護層103(即ち、上保護層)とを備える。
図2では、正極集電体10は、正極絶縁層101と、正極絶縁層101の対向する2つの表面に設けられる正極導電層102とを備え、正極導電層102は、正極導電層102と、正極導電層102の対向する2つの表面に設けられる正極保護層103とを備える。
図3では、正極集電体10は、正極絶縁層101と、正極絶縁層101の1つの表面に設けられる正極導電層102とを備え、正極導電層102は、正極導電層102と、正極導電層102における正極絶縁層101から離間する面に設けられる正極保護層103(即ち、上保護層)とを備える。
図4では、正極集電体10は、正極絶縁層101と、正極絶縁層の1つの表面に設けられた正極導電層102とを備え、正極導電層102は、正極導電層102と、正極導電層102の対向する2つの表面に設けられた正極保護層103とを備える。
図5と図6は、本発明の実施例に係る正極シートの構造模式図であり、図5と図6に示すように、正極シート1は、正極集電体10と、正極集電体10の表面に形成された正極活物質層11とを備え、ここで、正極集電体10は、順に設けられた正極絶縁層101と、正極導電層102とを備え、ここで、正極導電層102は、正極導電層102と、正極導電層102の一方側又は両側に設けられた正極保護層103(図示せず)とを備える。
正極シートでは、正極活物質層は正極活物質、接着剤及び導電性添加剤を含む。正極集電体の導電性は従来のアルミニウム箔の集電体よりも劣るため、好ましくは、正極活物質層の総重量に基づき、導電性添加剤の質量百分率は0.8wt%以上である。これにより、正極シートの分極が小さいと保証することができ、電池の高倍率性能に与える影響が小さい。導電性添加剤の含有量が高いほど、分極が小さくなり、電池の倍率性能が良くなる。ただし、導電性添加剤の含有量が高すぎると、電池の充放電容量を低下させる。従って、導電性添加剤の質量百分率が0.8wt%〜2wt%であることが好ましい。この好適な範囲内では、導電性添加剤の添加の上限は2wt%、1.8wt%、1.5wt%、1.3wt%、1.2wt%であってもよく、導電性添加剤の添加の下限は0.8wt%、0.9wt%、0.95wt%、1.0wt%、1.1wt%であってもよい。
さらに好ましくは、導電性添加剤は、導電性カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブ、ケッチェンブラック、鱗片黒鉛などのよく用いられる極シート用導電剤から選ばれてもよい。
本発明の実施例に係る電池における負極シートでは、負極集電体と負極活物質層とを備える。以下、本発明の実施例に係る電池における負極集電体を詳しく説明する。
本発明の実施例に係る電池における負極集電体には、厚さ6μm〜12μmの銅箔集電体が用いられる。電池全体の重量エネルギー密度をさらに向上させるために、厚さ1.0μm〜5.9μmの銅箔集電体を用いることが好ましい。これは、本発明に係る電池における正極集電体により電池の安全性を改善可能であるが、その導電性が従来のアルミニウム箔の集電体より劣るからである。そのため、本発明の実施例では、特定の厚さを有する当該銅箔集電体を用いて当該正極集電体と組み合わせて使用し、本発明の実施例に係る負極集電体は良好な導電性を有し、極シートの分極が小さく、電池の倍率性能を保証するとともに、負極リチウムが析出することを防止することもできる。
小さい厚さを有する銅箔集電体を選択することは、電池の重量エネルギー密度を改善することに有利であるが、同時に電池が優れた電気化学性能と加工性能を有するようにするために、好ましくは、負極集電体は、厚さ2.0μm〜5.5μmの銅箔集電体であり、より好ましくは、負極集電体は、厚さ3.0μm〜5.5μmの銅箔集電体であり、さらに好ましくは、負極集電体は、厚さ4.5μm〜5.9μmの銅箔集電体である。
銅箔集電体が電池製品に適用された生産過程で、特に厚さの薄い銅箔集電体が電池製品に適用された生産過程で、破断伸び率が1%以上である銅箔集電体を用いることが好ましい。破断伸び率が1%未満であれば、銅箔集電体は、加工及び電池動作などの過程で亀裂又は破断が生じやすく、電池のコストと長期間にわたる信頼性に影響を与える。好ましくは、破断伸び率が2%以上である銅箔集電体を用いる。さらに好ましくは、破断伸び率が3%以上である銅箔集電体を用いる。
さらに、電池重量エネルギー密度を改善するとともに、銅箔集電体が一定の機械的強度を有するとより良く保証して、電池の作製中に銅箔が良好な加工性能を有し、そして電池に適用された後、電池が良好な電気化学性能と長期にわたる信頼性を有すると保証するために、銅箔集電体の、MD方向、TD方向における破断伸び率はいずれも1%以上である。好ましくは、MD方向とTD方向における破断伸び率が2%以上である銅箔集電体を用いる。さらに好ましくは、MD方向とTD方向における破断伸び率が3%以上である銅箔集電体を用いる。
破断伸び率の試験方法
集電体から長さ200mm、幅15mmのサンプルを2つ採取する。サンプルを引張機(型番:AI7000)に固定し、2回の試験の算術平均値が試験結果である。初期長さL0を記録し、引張機を起動し、サンプルが破断するまで試験を行い、引張機から破断時のサンプルの変位L1を読み取る。破断伸び率=(L1−L0)/L0*100%である。
本発明では、銅箔集電体の「長さ方向(MD方向)」と「幅方向(TD方向)」とは、それぞれ表面の2つの次元を指し、そのうち、長さ方向とは、主な次元方向(即ち、サイズが大きい方向)を指し、幅方向とは、サブ次元方向(即ち、サイズが小さい方向)を指す。一般的に、長さ方向は、極シートの加工過程において各材料層(例えば、電極活物質層)の塗布方向と一致し、電気化学装置(例えば、電池)の製造過程において極シートの巻き取り方向とも一致し、幅方向は長さ方向と垂直する。
本発明では、銅箔集電体は金属銅で作られた集電体であってもよいし、例えば銅ニッケル合金、銅クロム合金、銅亜鉛合金、タフピッチ銅、青銅などの銅合金集電体であってもよい。好ましくは、銅合金における銅元素の重量比率含有量は90wt%以上である。
さらに、本発明に係る電池では、下述の過電流耐量を有する負極シートを用いることが好ましく、即ち、単一のシートの幅が50mmである負極シートであって、10Aの電流の場合、溶断時間が10s以上である。これは、厚さの薄い銅箔集電体を集電体として用いる場合、負極シートも一定の過電流耐量を有する必要があり、そうでなければ、電池の動作中に、「焼断」しやすく、電池の電気化学性能及び正常動作に影響を与えるからである。
負極シートの過電流耐量の試験方法は以下の通りであり、即ち、負極シートを図10に示すサイズに裁断し、10Aの電流を印加し、溶断時間を観察測定する。溶断時間が短いほど、その過電流耐量が劣る。
ここで、説明しなければならないのは、銅箔集電体の破断伸び率が集電体における欠陥と関係があり、集電体の加工製造プロセス及び材料の組成なととも関係がある。一般的に、銅箔集電体の厚さが薄いほど、加工が難しくなり、欠陥が多くなる。これも銅箔集電体を含む負極シートの過電流耐量に直接影響を与える。従って、電池が高い重量エネルギー密度及び優れた電気化学性能を兼備するように、厚さが薄く、且つ破断伸び率が大きく、負極シートに良い過電流耐量を持たせる銅箔集電体を用いる必要がある。
本発明の実施例に係る電池では、電解液をさらに備える。本発明の実施例の1つの改良として、電池の高倍率性能をさらに向上させるために、電解液の常温導電率は6.0mS/cm〜9.0mS/cmであり、これによって、負極でリチウムが析出しないとさらに保証することができる。電解液の常温導電率が高いほど、電池の倍率性能が良くなる。ただし、単に常温導電率を向上させるために、ある種類の有機溶剤の含有量を増加すると、かえってある種類の有機溶剤の添加割合が大きすぎることによって、副反応が多くなり、かえってある程度電池のサイクル寿命などの性能に影響を与える。電解液の常温導電率が高すぎると、電解液の具体的な実施形態において、例えば、環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルの割合を調整することで電解液の常温導電率を調整することができる。常温導電率が高すぎると、環状炭酸エステルを多く添加することが必要であり、かえって副反応が多くなる。その以外に、カルボン酸エステルも添加することで常温導電率を改善することができるが、これに限定されない。
巻き取りの形式について、本発明の実施例に係る電池は巻き取り式のものであってもよいし、積層式のものであってもよい。電池の種類について、リチウムイオン二次電池、リチウム一次電池、ナトリウムイオン電池、マグネシウムイオン電池のうちの1種であってもよい。ただし、これらに限定されない。
本発明の実施例では、釘刺し実験で電池の異常状況をシミュレーションし、釘刺し後の電池の変化を確認した。図7は本発明の1回の釘刺し実験を示す模式図である。便宜上、図において、単に釘4が電池の1層の正極シート1、1層のセパレータ3及び1層の負極シート2を貫通することが示されている。説明しなければならないのは、実際の釘刺し実験では、釘4が通常複数層の正極シート1、複数層のセパレータ3及び複数層の負極シート2を備える電池全体を貫通する。電池に釘刺しによって短絡が発生した後、短絡電流が大幅に低下し、短絡発熱量を電池に完全に吸収される範囲に制御するため、内部短絡が発生した箇所で生じる熱が電池に完全に吸收され、電池の温度上昇も小さく、短絡による損壊が電池に与える影響が釘刺しの箇所に限られ、「点開路」のみが形成され、電池の短時間での正常動作に影響しない。
実施例
1.正極集電体の製造
一定の厚さを有する絶縁層を選択し、その表面において、真空蒸着、機械ロール圧延又は接着の方式で一定厚さを有する導電層を形成した。保護層は気相成長法、インサイチュ形成法または塗布法の方式で形成される。
1.1 導電層の形成
導電層の形成として、以下のようないくつかの方式がある。
(1)導電層の真空蒸着方式による形成条件は、以下の通りである。表面洗浄処理された絶縁層を真空蒸着チャンバ内に配置し、1600℃〜2000℃という高温で金属蒸発室内における高純度の金属ワイヤを溶融し蒸発させ、蒸発後の金属が真空蒸着チャンバ内の冷却システムを通過し、最後に絶縁層の表面に堆積して、導電層が形成される。
(2)導電層の機械ロール圧延方式による形成条件は、以下の通りである。導電層材料の箔片を機械ローラに配置し、20t〜40tの圧力を加えて、それを所定の厚さに圧延、そして、それを表面洗浄処理された絶縁層の表面に配置し、最後に、両者を機械ローラに配置し、30t〜50tの圧力を加えて両者を緊密に結合させる。
(3)導電層の接着方式による形成条件は、以下の通りである。導電層材料の箔片を機械ローラに配置し、20t〜40tの圧力を加えて、それを所定の厚さに圧延、そして、表面洗浄処理された絶縁層の表面にPVDFとNMPの混合溶液を塗布し、最後に上記所定の厚さを有する導電層を絶縁層の表面に接着し、100℃で乾燥させる。
1.2 保護層の形成
保護層の形成として、以下のようないくつかの方式がある。
(1)まず、気相成長法又は塗布法で絶縁層の表面に保護層を設置し、そして、真空蒸着、機械ロール圧延又は接着方式で、保護層を有する上記絶縁層の表面に一定の厚さを有する導電層を形成することで、下保護層を有する集電体(保護層が絶縁層と導電層の間に位置する)を製造する。また、これに加え、さらに導電層の絶縁層から離間する面において気相成長法、インサイチュ形成法又は塗布法で上保護層を形成することで、上保護層及び下保護層を有する集電体(保護層が導電層の対向する2つの表面に位置する)を製造する。
(2)まず、気相成長法、インサイチュ形成法又は塗布法で導電層の1つの表面に保護層を形成し、そして、機械ロール圧延又は接着の方式で、保護層を有する上記導電層を絶縁層の表面に設置し、且つ保護層を絶縁層と導電層との間に設置することで、下保護層を有する集電体(保護層が絶縁層と導電層との間に位置する)を製造する。また、これに加え、さらに導電層の絶縁層から離間する面において気相成長法、インサイチュ形成法又は塗布法で上保護層を形成することで、上保護層及び下保護層を有する集電体(保護層が導電層の対向する2つの表面に位置する)を製造する。
(3)まず、気相成長法、インサイチュ形成法又は塗布法で導電層の1つの表面に保護層を形成し、そして、機械ロール圧延又は接着の方式で、保護層を有する上記導電層を絶縁層の表面に設置し、且つ保護層を導電層の絶縁層から離間する面に設置することで、上保護層を有する集電体(保護層が導電層の絶縁層から離間する表面に位置する)を製造する。
(4)まず、気相成長法、インサイチュ形成法又は塗布法で導電層の2つの表面に保護層を形成し、そして、機械ロール圧延又は接着の方式で、保護層を有する上記導電層を絶縁層の表面に設置することで、上保護層及び下保護層を有する集電体(保護層が導電層の対向する2つの表面に位置する)を製造する。
(5)絶縁層の表面に導電層を形成し、そして、導電層の絶縁層から離間する方向における表面に気相成長法、インサイチュ形成法又は塗布法で上保護層を形成することで、上保護層を有する集電体(保護層が導電層の絶縁層から離間する表面に位置する)を製造する。
製造の実施例では、気相成長法として真空蒸着方式が用いられ、インサイチュ形成法としてインサイチュパッシベーション方式が用いられ、塗布法として、ナイフ塗布方式が用いられる。
真空蒸着方式の形成条件は以下の通りである。表面洗浄処理されたサンプルを真空蒸着チャンバ内に配置し、1600℃〜2000℃という高温で蒸発室内における保護層材料を溶融し蒸発させ、蒸発後の保護層材料が真空蒸着チャンバ内における冷却システムを通過し、最後にサンプルの表面に堆積して、保護層が形成される。
インサイチュパッシベーション法の形成条件は以下の通りである。導電層を高温酸化環境に配置し、温度を160℃〜250℃に制御するとともに、高温環境で酸素ガスの供給を維持し、処理時間を30minとすることにより、金属酸化物類の保護層が形成される。
グラビア塗布方式の形成条件は以下の通りである。保護層材料をNMPと撹拌・混合し、そして、サンプルの表面に上記保護層材料のスラリー(固形分の含有量が20〜75%)を塗布し、次に、ググラビアローラーで塗布の厚さを制御し、最後に100〜130℃で乾燥させる。
2.負極集電体
厚さ8μmの銅箔を負極集電体(即ち、負極シート1#)として選択する。
3.極シートの製造
通常の電池塗布プロセスにより、集電体の表面に正極スラリー又は負極スラリーを塗布し、100℃で乾燥させた後、正極シート又は負極シートを得る。ここで、正極活物質層の総重量に基づき、導電性添加剤(導電性カーボンブラック)の質量百分率は0.8wt%以上である。
製造して得た正極シートの具体的なパラメータは表1と表2に示す。表2では、正極シート1-1は、正極シート1において対応する保護層を製造して得た極シートを表し、他の正極シートについては、順次類推する。
ここで、通常の正極シートでは、集電体が厚さ12μmのAl箔片であり、正極活物質層が55μmの三元(NCM)材料層であり、導電性添加剤の質量百分率が1.5wt%である。
負極シートでは、負極集電体が一定の厚さを有するCu箔片であり、負極活物質層が厚さ55μmのグラファイト材料層である。
4、電解液の製造
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)を有機溶剤(ECとEMCとの体積比は、1:10〜10:1)として用いて、電解質がLiPFであり、濃度が1mol/Lである。
ECとEMCの体積比を調整することで、それぞれ常温導電率が6.5mS/cm、7.0mS/cm、7.3mS/cm、8.0mS/cm、8.5mS/cm、9.0mS/cmである電解液を製造して得て、電池の製造に用いる。
5.電池の製造
通常の電池製造プロセスにより、正極シート、PP/PE/PPセパレータ及び負極シートを一緒にベアセルに巻き取り、その後に電池ケースに入れ、電解液を注入してから、密封や、化成などの工程を行い、最後にリチウムイオン電池を得て、標準電池容量(25℃、1C/1C)はいずれも3.2Ahである。
本発明の実施例で製造されたリチウムイオン電池及び比較例のリチウムイオン電池の詳細構成は、表3に示す。
Figure 0006851426
Figure 0006851426
ここで、「/」とは、当該保護層が設けられていないことを表す。
Figure 0006851426
実験例
1.電池のテスト方法
リチウムイオン電池に対して、サイクル寿命テストを行い、具体的なテスト方法は以下の通りである。
リチウムイオン電池を25℃と45℃との2種類の温度でそれぞれ充放電し、即ち、1Cの電流で4.2Vに充電してから、1Cの電流で2.8Vに放電して、第1サイクルの放電容量を記録した。その後、電池を1000サイクルだけ1C/1Cの充放電循環させ、1000サイクル目の電池の放電容量を記録して、1000サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で除し、1000サイクル目の容量保持率を得た。
実験結果は表4に示す。
2.1回の釘刺し実験と連続する6回の釘刺し実験の実験方法及びテスト方法
(1)1回の釘刺し実験:電池を満充電した後に固定して、常温で直径8mmの鋼針を25mm/sの速度で電池を迅速に貫通し、鋼針を電池に残しておき、釘刺しが完了した。その後、確認及びテストを行った。
(2)6回の釘刺し実験:電池を満充電した後に固定して、常温で6本の直径8mmの鋼針を25mm/sの速度で順次に電池を貫通し、鋼針を電池に残しておき、釘刺しが完了した。その後、確認及びテストを行った。
(3)電池温度のテスト:マルチ温度計を使用して、釘刺す電池の釘刺し面と裏面の幾何学中心にそれぞれ感温線を付け、釘刺しが完了した後、5分間の電池温度追従テストを行って、5分間を経た時の電池温度を記録した。
(4)電池電圧のテスト:釘刺す電池の正極と負極を内部抵抗計の計測端に接続し、釘刺しが完了した後、5分間の電池電圧追従テストを行って、5分間を経た時の電池電圧を記録した。
記録された電池の温度と電圧のデータは、表5に示す。
3.倍率実験:
リチウムイオン電池に対して倍率テストを行い、具体的な試験方法は以下の通りである。
リチウムイオン電池を25℃で高倍率充放電を行い、即ち、まず、1Cの電流で4.2Vに充電してから、4Cの電流で2.8Vに放電して、1サイクル目の放電容量を記録し、この放電容量を25℃、1C/1Cで充放電した第1サイクルの放電容量で除し、電池の4C倍率性能を得た。
実験結果は表6に示す。
Figure 0006851426
Figure 0006851426
備考:「N/A」とは、鋼針が電池を貫通した瞬間に、熱暴走と破壊が発生することを表す。
Figure 0006851426
ここで、電池1#と電池4#の電池温度が時間の経過に伴い変化する曲線は図8に示し、電圧は時間の経過に伴い変化する曲線は図9に示す。
表5の結果からわかるように、通常の正極シートと通常の負極シートが用いられた電池1#に比べ、本発明の実施例に係る電池のサイクル寿命が良好であり、通常の電池のサイクル性能と同等である。これから判明できるように、本発明の実施例の集電体が、製造された極シートと電池に何の悪影響も与えない。保護層を有しない集電体に比べ、本発明の実施例に係る保護層を含む集電体で製造された電池は、容量保持率がさらに向上し、これは、電池の信頼性がより良いと表す。
また、本発明の実施例に係る電池は、良好な安全性を有することができる。表6及び図8と図9の結果からわかるように、電池1#(通常の電池)は、釘刺しの瞬間に、電池温度が数百度急に上昇し、電圧がゼロまで急に低下する。これから判明できるように、釘刺しの瞬間に、電池に内部短絡が発生し、大量の熱が生じ、電池に瞬間的に熱暴走と破壊が発生するため、引き続き動作できない。そして、1本目の鋼針が電池を貫通した瞬間に、電池に熱暴走と破壊が発生するため、このような電池に対して6本の鋼針で連続して釘刺し実験を行うことができない。
本発明の実施例に係る電池は、それに対して1回の釘刺し実験を行っても、6回連続して釘刺し実験を行っても、電池の温度上昇が基本的に6℃以下に制御され、電圧が基本的に安定に保たれ、セルが正常動作することができる。また、金属酸化物類の保護層を有する電池は、安全性がより良い。これによりわかるように、電池に内部短絡が発生した場合、本発明の実施例に係る電池は、短絡時の発熱量を大きく低減して、電池の安全性を改善することができる。なお、さらに短絡による損壊が電池に与える影響が釘刺しの箇所に限られ、「点開路」のみが形成され、電池の短時間での正常動作に影響しない。
表6の結果からわかるように、本発明の厚さ範囲内にある負極集電体、本発明の含有量範囲内にある導電性添加剤及び本発明のパラメータ範囲内にある電解液を用いると、良好な倍率性能を得ることができる。本発明の実施例に係る電池は、通常の電池と同等の良好な倍率性能を有する。
Figure 0006851426
(銅合金の成分:銅95wt%、ニッケル5wt%)
Figure 0006851426
Figure 0006851426
表9からわかるように、厚さの薄い銅箔を用いることで、リチウムイオン電池の重量エネルギー密度を著しく改善することができる。特に銅箔集電体の厚さが1μm〜5.9μmである場合、リチウムイオン電池の重量エネルギー密度がいずれも250wh/kg以上に達することができる。重量エネルギー密度が高いと保証することに加え、銅箔集電体の厚さが4.5μm〜5.9μmであるとき、それで構成された電池の電気化学性能も優れるため、良好な重量エネルギー密度と電気化学性能を兼備する電池を得ることができる。
本発明は、好適な実施例により以上のように開示されているが、特許請求の範囲を限定するためではなく、当業者が本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形や変更を実施可能であるので、本発明の保護範囲は、本発明の特許請求の範囲により規定される範囲に準ずるべきである。
1 正極シート
10 正極集電体
101 正極絶縁層
102 正極導電層
103 正極保護層
11 正極活物質層
2 負極シート
20 負極集電体
21 負極活物質層
3 セパレータ
4 釘

Claims (23)

  1. 正極シート、負極シート及び電解液を備える電池において、前記正極シートが正極集電体と正極活物質層とを備え、前記負極シートが負極集電体と負極活物質層とを備えるリチウムイオン電池であって、
    前記正極集電体は、絶縁層と導電層とを備え、前記絶縁層は、前記導電層を載置し、前記導電層は、前記正極活物質層を載置し、前記導電層は、前記絶縁層の少なくとも1つの表面に位置し、前記導電層の厚さをD2としたときに、D2は、300nm≦D2≦2μmを満たし、
    前記導電層の少なくとも1つの表面に保護層が設けられ、
    前記負極集電体は、厚さ1μm〜5.9μmの銅箔集電体であることを特徴とするリチウムイオン電池。
  2. 前記導電層は、金属導電材料から選ばれ、前記金属導電材料は、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、銀、ニッケル銅合金、アルミニウム-ジルコニウム合金から選ばれる少なくとも1種であり、
    前記保護層の材料は、金属酸化物から選ばれ、前記金属酸化物は、酸化アルミニウム、酸化コバルト、酸化クロム、酸化ニッケルから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池。
  3. 前記保護層は、前記導電層の前記絶縁層から離間する面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池。
  4. 前記保護層は、前記導電層の前記絶縁層に向かう面に設けられていることを特徴とする請求項1又は3に記載のリチウムイオン電池。
  5. 前記保護層の厚さをD3としたときに、D3はD3≦1/10 D2、且つ、1nm≦D3≦200nmを満たすことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池。
  6. D3は10nm≦D3≦50nmを満たすことを特徴とする請求項5に記載のリチウムイオン電池。
  7. 前記正極活物質層は、正極活物質、接着剤及び導電性添加剤を含み、前記正極活物質層における前記導電性添加剤の質量百分率は、0.8wt%以上であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池。
  8. 前記電解液の常温導電率は、6.0mS/cm〜9.0mS/cmであることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池。
  9. 前記導電層の材料は、アルミニウムであり、前記導電層の厚さは、500nm≦D2≦1.5μmであり、
    前記保護層は、材料が酸化ニッケル又は酸化アルミニウムであり、且つ、前記導電層の対向する2つの表面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池。
  10. 前記導電層の前記絶縁層から離間する面に設けられる保護層の厚さは、前記導電層の前記絶縁層に向かう面に設けられる保護層の厚さよりも大きいことを特徴とする請求項に記載のリチウムイオン電池。
  11. 前記絶縁層の厚さをD1としたときに、D1は1μm≦D1≦20μmを満たし
    記絶縁層は、有機ポリマー絶縁材料であり、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド、エチレンプロピレンゴム、ポリホルムアルデヒド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、シリコーンゴム、ポリカーボネートのうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池。
  12. D1は2μm≦D1≦10μmを満たすことを特徴とする請求項11に記載のリチウムイオン電池。
  13. D1は2μm≦D1≦6μmを満たすことを特徴とする請求項12に記載のリチウムイオン電池。
  14. 前記負極集電体は、厚さ2.0μm〜5.6μmの銅箔集電体であことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池。
  15. 前記負極集電体は、厚さ3.0μm〜5.6μmの銅箔集電体であることを特徴とする請求項14に記載のリチウムイオン電池。
  16. 前記負極集電体は、厚さ4.5μm〜5.9μmの銅箔集電体であることを特徴とする請求項14に記載のリチウムイオン電池。
  17. 前記銅箔集電体は、破断伸び率が1%以上であることを特徴とする請求項14〜16のいずれかに記載のリチウムイオン電池。
  18. 前記銅箔集電体は、破断伸び率が2%以上であることを特徴とする請求項17に記載のリチウムイオン電池。
  19. 前記銅箔集電体は、破断伸び率が3%以上であることを特徴とする請求項18に記載のリチウムイオン電池。
  20. 前記銅箔集電体のMD方向とTD方向とにおける破断伸び率はいずれも1%以上であることを特徴とする請求項14〜19のいずれかに記載のリチウムイオン電池。
  21. 前記銅箔集電体のMD方向とTD方向とにおける破断伸び率はいずれも2%以上であることを特徴とする請求項20に記載のリチウムイオン電池。
  22. 前記銅箔集電体のMD方向とTD方向とにおける破断伸び率はいずれも3%以上であることを特徴とする請求項21に記載のリチウムイオン電池。
  23. 負極シートの過電流耐量は、単一のシートの幅が50mmである負極シートについて、10Aの電流の場合、溶断時間が10s以上であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池。
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