JP6849026B2 - シート、シートの製造方法、および積層体 - Google Patents

シート、シートの製造方法、および積層体 Download PDF

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Description

本発明は、シート、シートの製造方法、および積層体に関する。本発明のシートは、透明性が高い上に、湿潤状態での機械物性に優れており、透明性の要求される包装材料等の各種の用途に適する。
近年、石油資源の代替及び環境意識の高まりから、再生産可能な天然繊維を利用した材料が着目されている。天然繊維の中でも、繊維径が10〜50μmのセルロース繊維、とりわけ木材由来のセルロース繊維(パルプ)は主に紙製品としてこれまでにも幅広く使用されてきた。
また、セルロース繊維としては、繊維径が1μm以下の微細繊維状のセルロースも知られている。微細繊維状セルロースを含有するシートは、繊維同士の接点が著しく増加することから、引張強度が大きく向上する。また、繊維幅が可視光の波長より短くなることで、透明度が大きく向上する。微細繊維の製造方法として、繊維原料を微細化(解繊)しやくするため、静電的および/または立体的な官能性を持つ置換基を繊維原料に導入する方法が知られている(例えば、特許文献1〜4)。
一方、微細繊維状セルロースを含有するシートに関しては、ガスバリア性の向上等の面から、改良が検討されてきている。例えば、特許文献5は、水蒸気や酸素に対するバリア性の高い積層体の製造方法として、基材に、セルロースのカルボキシ基含有量が0.1〜3mmol/gの微細セルロース繊維を含む、第1液を塗布する第1塗布工程と、前記基材における前記第1液の被塗布部に、層状無機化合物、架橋剤、無機金属塩及び有機金属塩からなる群から選択される1種以上を含む、第2液を塗布する第2塗布工程とを有する、ガスバリア性積層体の製造方法を提案する。また特許文献6は、優れた耐水性を有する積層体として、基材上にセルロースナノファイバー及び金属塩を含有する塗工層を設けた積層体において、該セルロースナノファイバーがアニオン変性(カルボキシメチル化、あるいはカルボキシル化)セルロースナノファイバー、且つ金属塩が3価金属塩であることを特徴とする積層体を提案する。さらに特許文献7は、セルロースを用いた、高湿度条件下でも良好なガスバリア性を有するガスバリア性積層体として、基材1上に、カルボキシ基を有するセルロースナノファイバーを含む層(A)と、多価金属化合物を含む層(B)とを有し、前記層(A)と前記層(B)とが接しており、前記層(A)中の前記セルロースナノファイバーが、前記多価金属化合物に由来する多価金属イオンによりイオン架橋していることを特徴とするガスバリア性積層体を提案する。
特開2008−308802号公報 特開2010−254726号公報 特表2012−511596号公報 国際公開WO2013/073652 特開2011−224545号公報 特開2014−193580号公報 特開2014−223737号公報
置換基を導入した微細繊維を用いたシートは、高い透明性を有するものの、親水性置換基の存在により吸湿性が高く、多湿条件では膨潤・破断が生じ、強度に劣ることが懸念される。しかしながら、特許文献5〜7はいずれも、水蒸気バリア性や吸水性の面からのシートの性能の向上を目的とするものであり、透明性を維持しつつ多湿条件での強度を向上させることは、着眼すらしていない。置換基を導入した微細繊維を含有するシートであって、高い透明性と多湿条件での一定以上の強度を両立したものがあれば望ましい。
一方、本発明者らは、上記の問題を解決するために、シート化前のスラリーの段階での置換基の脱離、置換基の中和度の変更、シート化後の置換基の脱離等の方策を、鋭意検討してきた。そして今般、より工程への負荷が少ない方法として、二価以上の金属のイオンを置換基の封鎖剤として用いることを試みた。その結果、適切に制御された条件において、置換基を有する微細繊維含有シートを二価以上の金属イオンで処理することにより、高い透明性を維持しつつ、湿潤条件でも膨潤・破断せず、一定以上の強度を有するシートが得られることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、以下を提供する。
[1]イオン性置換基を有する微細繊維と、
二価以上の金属と、
を含み、
ヘーズが10.0%以下である、シート。
[2]二価以上の金属の含有量が0.10mmol/g以上である、1に記載のシート。
[3]微細繊維が、リン酸由来の基、カルボン酸由来の基、および硫酸由来の基からなる群より選択される一種または二種以上をイオン性置換基として有する微細繊維状セルロースである、1または2に記載のシート。
[4]湿潤条件における引張強度が、10.0MPa以上である、1〜3のいずれか一項に記載のシート。
[5]湿潤条件における引張弾性率が、0.7GPa以上である、1〜4のいずれか一項に記載のシート。
[6]イオン性置換基を有する微細繊維からシートを調製する工程、および
調製されたシートを、二価以上の金属の強酸由来の塩により処理する工程
を含む、シートの製造方法。
[7]微細繊維が、リン酸由来の基、カルボン酸由来の基、および硫酸由来の基からなる群より選択される一種または二種以上をイオン性置換基として有する微細繊維状セルロースである、6に記載のシートの製造方法。
[8]1〜5のいずれか一項に記載のシートの少なくとも一方の側に、無機層および/または有機層が形成されている、積層体。
本発明により得られるシートは、高い透明性を有し、湿潤条件での機械物性に優れる。
図1は、実施例において作成したアルミニウム導入量の検量線である。 図2は、実施例において作成したマグネシウム導入量の検量線である。 図3は、実施例において作成した硫黄の検量線である。
「部」および「%」は、特に記載した場合を除き、質量に基づく割合(質量部、質量%)を表す。セルロース等の繊維の質量に関する値は、特に記載した場合を除き、絶乾質量(固形分)に基づく。また数値範囲「X〜Y」は、特に記載した場合を除き、両端の値を含む。「Aおよび/またはB」は、特に記載した場合を除き、AとBの少なくとも一方であることを指し、Aのみであってもよく、Bのみであってもよく、AとBとの双方であってもよい意である。
本発明は、イオン性置換基を有する微細繊維と、二価以上の金属とを含むシートを提供する。このようなシートは、以下の工程を含む製造方法により、製造することができる。
(1)イオン性置換基を有する微細繊維からシートを調製する工程、および
(2)調製されたシートを、二価以上の金属の強酸由来の塩の溶液により処理する工程。
以下では、まずシートの製造方法を説明し、次いでその製造方法により得られるシートの、シート自体(物)としての構造および特性を説明する。
[シートの製造方法]
工程(1)の、イオン性置換基を有する微細繊維は、繊維原料にイオン性置換基を導入し、得られた置換基を有する繊維原料を微細化(解繊)処理することにより、得られる。
<繊維原料>
繊維原料としては特に限定されないが、例えば、有機繊維、無機繊維、合成繊維等、半合成繊維、再生繊維が挙げられる。有機繊維としては、例えば、セルロース、炭素繊維、パルプ、キチン、キトサン等の天然物由来の繊維等が挙げられるがこれらに限定されない。無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、岩石繊維、金属繊維等が挙げられるがこれらに限定されない。合成繊維としては、例えば、ナイロン、ビニロン、ビニリデン、ポリエステル、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリウレタン、アクリル、ポリ塩化ビニル、アラミド等が挙げられるがこれらに限定されない。半合成繊維としては、アセテート、トリアセテート、プロミックス等が挙げられるがこれらに限定されない。再生繊維としては、例えば、レーヨン、キュプラ、ポリノジックレーヨン、リヨセル、テンセル等が挙げられるがこれらに限定されない。
また、本発明で用いる繊維原料は特に限定されないが、後述する置換基導入が容易になることからヒドロキシル基またはアミノ基を含むことが望ましい。
繊維原料としては、入手しやすく安価である点から、パルプを用いることが好ましい。パルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプから選ばれる。木材パルプとしては例えば、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ等が挙げられる。また、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ、等が挙げられるが、特に限定されない。非木材パルプとしてはコットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、バガス等の非木材系パルプ、ホヤや海草等から単離されるセルロース、キチン、キトサン等が挙げられるが、特に限定されない。脱墨パルプとしては古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられるが、特に限定されない。本実施態様のパルプは上記1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。上記パルプの中で、入手のしやすさという点で、セルロースを含む木材パルプ、脱墨パルプが好ましい。木材パルプの中でも化学パルプはセルロース比率が大きいため、繊維微細化(解繊)時の微細セルロース繊維の収率が高く、また、パルプ中のセルロースの分解が小さく、軸比の大きい長繊維の微細セルロース繊維が得られる点で特に好ましいが、特に限定されない。中でもクラフトパルプ、サルファイトパルプが最も好ましく選択されるが、特に限定されない。なお、以下では、本発明、およびその実施態様または実施例について、セルロース繊維原料または微細繊維状セルロースを用いた場合を例に説明することがあるが、当業者であれば、その説明を他の繊維原料を用いた場合にも適宜適用して理解することができる。
<イオン性置換基の導入>
繊維原料には、イオン性置換基が導入される。繊維への置換基を導入する方法は、特に限定されないが、例えば、酸化処理、セルロース中の官能基と共有結合を形成し得る化合物による処理などが挙げられる。酸化処理とは、セルロース中のヒドロキシ基をアルデヒド基やカルボキシ基に変換する処理であり、例えばTEMPO酸化処理や各種酸化剤(亜塩素酸ナトリウム、オゾンなど)を用いた処理が挙げられる。
酸化処理の一例としては、Biomacromolecules 8、2485−2491、2007(Saitoら)に記載されている方法を挙げることができるが、特に限定されない。
セルロース中の官能基と共有結合を形成し得る化合物による処理は、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料に、該繊維原料と反応するような化合物を混合することにより、繊維原料に上記置換基を導入することにより実施できる。導入時の反応を促進するため、加熱する方法が特に有効である。置換基の導入における加熱処理温度は特に限定されないが、該繊維原料の熱分解や加水分解等が起こりにくい温度帯であることが好ましい。例えば、セルロースの熱分解温度の観点から、250℃以下であることが好ましく、セルロースの加水分解を抑える観点から、100〜170℃で加熱処理することが好ましい。
繊維原料と反応する化合物としては、微細繊維を得ることができ、かつイオン性置換基を導入するものである限り、特に限定されない。
アニオン性置換基を導入する場合、繊維原料と反応する化合物としては、例えば、リン酸由来の基を有する化合物、カルボン酸由来の基を有する化合物、硫酸由来の基を有する化合物、スルホン酸由来の基を有する化合物等が挙げられる。取扱いの容易さ、繊維との反応性から、リン酸由来の基、カルボン酸由来の基および硫酸由来の基からなる群より選択される少なくとも1種を有する化合物が好ましい。これらの化合物が繊維とエステルまたは/およびエーテルを形成することがより好ましいが、特に限定されない。
繊維原料と反応するような化合物として、リン酸由来の基を有する化合物を用いる場合、特に限定されないが、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ポリホスホン酸あるいはこれらの塩またはエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種である。これらの中でも、低コストであり、扱いやすく、また、繊維原料にリン酸基を導入して微細化(解繊)効率をより向上できることから、リン酸基を有する化合物が好ましいが、特に限定されない。
リン酸基を有する化合物としては特に限定されないが、リン酸、リン酸のリチウム塩であるリン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウム、ピロリン酸リチウム、ポリリン酸リチウムが挙げられる。更にリン酸のナトリウム塩であるリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウムが挙げられる。更にリン酸のカリウム塩であるリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、ポリリン酸カリウムが挙げられる。更にリン酸のアンモニウム塩であるリン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。
これらのうち、リン酸基導入の効率が高く、工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましく、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムがより好ましいが、特に限定されない。
また、反応の均一性およびリン酸由来の基の導入効率が高いことから化合物は水溶液として用いることが好ましいが、特に限定されない。化合物の水溶液のpHは特に限定されないが、リン酸基導入の効率が高いことから7以下であることが好ましい。繊維の加水分解を抑える観点からpH3〜7が特に好ましいが、特に限定されない。
繊維原料と反応するような化合物として、カルボン酸由来の基を有する化合物を用いる場合、特に限定されないが、カルボキシ基を有する化合物、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物およびそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
カルボキシ基を有する化合物としては特に限定されないが、マレイン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、イタコン酸等のジカルボン酸化合物やクエン酸、アコニット酸等トリカルボン酸化合物が挙げられる。
カルボキシ基を有する化合物の酸無水物としては特に限定されないが、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸化合物の酸無水物が挙げられる。
カルボキシ基を有する化合物の誘導体としては特に限定されないが、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物のイミド化物、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物の誘導体が挙げられる。カルボキシ基を有する化合物の酸無水物のイミド化物としては特に限定されないが、マレイミド、コハク酸イミド、フタル酸イミド等のジカルボン酸化合物のイミド化物が挙げられる。
カルボキシ基を有する化合物の酸無水物の誘導体としては特に限定されない。例えば、ジメチルマレイン酸無水物、ジエチルマレイン酸無水物、ジフェニルマレイン酸無水物等の、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物の少なくとも一部の水素原子が置換基(例えば、アルキル基、フェニル基等)で置換されたものが挙げられる。
上記カルボン酸由来の基を有する化合物のうち、工業的に適用しやすく、ガス化しやすいことから、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸が好ましいが、特に限定されない。
繊維原料と反応するような化合物として、硫酸由来の基を有する化合物を用いる場合、特に限定されないが、無水硫酸、硫酸ならびにこれらの塩およびエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種である。これらの中でも、低コストであり、また、繊維原料に硫酸基を導入して微細化(解繊)効率をより向上できることから、硫酸が好ましいが、特に限定されない。
繊維原料に置換基が導入されていることにより溶液中における繊維の分散性が向上し、微細化(解繊)効率を高めることができる。
イオン性置換基の導入量は、十分な微細化が行える限り特に限定されないが、後述するように、シートとしての二価以上の金属の含有量や、置換基導入量を考慮して、決定することができる。本発明のシートが、アニオン性置換基を有する微細繊維を含有する場合、置換基の導入量(滴定法による。)は、繊維1g(質量)あたり0.005α〜0.11αが好ましく、0.01α〜0.08αがより好ましい。置換基の導入量が0.005α以上であれば、繊維原料の微細化(解繊)が容易になり、置換基の導入量が0.11α以下であれば、繊維の溶解が抑制できる。ただし、αは繊維材料と反応する化合物が反応しうる官能基、例えばヒドロキシル基やアミノ基が繊維材料1gあたりに含まれる量(単位:mmol/g)である。
なお、繊維表面の置換基の導入量(滴定法)の測定は、特に記載した場合を除き、次の方法で行うことができる:
絶乾質量で0.04g程度の固形分を含む微細繊維含有スラリーを分取し、イオン交換水を用いて50g程度に希釈する。この溶液を撹拌しながら、0.01Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下した場合の電気伝導度の値の変化を測定し、その値が極小となる時の0.01N水酸化ナトリウム水溶液の滴下量を、滴定終点における滴下量とする。セルロース表面の置換基量XはX(mmol/g)=0.01(mol/l)×V(ml)/W(g)で表される。ここで、V:0.01N水酸化ナトリウム水溶液の滴下量(ml)、W:微細セルロース繊維含有スラリーが含む固形分(g)である。
導入されている置換基が、リン酸由来の基、カルボン酸由来の基および硫酸由来の基からなる群より選択される少なくとも1種である場合、置換基導入量は、特に限定されないが、0.001〜5.0mmol/gとすることができる。0.05〜4.0mmol/gとしてもよく、0.1〜2.0mmol/gとしてもよい。
<アルカリ処理>
必要に応じ、イオン性置換基を導入した後であって次に説明する微細化処理の前において、アルカリ処理を行ってもよい。アルカリ処理によって、繊維に導入されたアニオン性置換基に陽イオンを供給して、容易に塩にすることができる。また、アルカリ処理は、繊維の収率が向上するとの観点から、好ましい。
アルカリ処理の方法は、特に限定されない。例えば、アルカリ溶液中に、イオン性置基導入セルロース繊維を浸漬することにより、実施できる。
アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。無機アルカリ化合物の例は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の、水酸化物、炭酸塩、およびリン酸塩である。より具体的な例は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸リチウム、リン酸カリウム、リン酸3ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウムである。有機アルカリ化合物の例は、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、脂肪族アンモニウム、芳香族アンモニウム、複素環式化合物、およびそれらの水酸化物、炭酸塩、またはリン酸塩である。より具体的な例は、アンモニア、ヒドラジン、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、シクロヘキシルアミン、アニリン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウムである。
アルカリ溶液における溶媒は、特に限定されず、水および/または有機溶媒を用いることができる。極性のあるもの(水、アルコール等の極性有機溶媒)が好ましく、水を含む水系溶媒がより好ましい。アルカリ溶液の特に好ましい例は、水酸化ナトリウム水溶液、または水酸化カリウム水溶液である。
イオン性置換基導入セルロースを浸漬させたアルカリ溶液の25℃におけるpHは、適宜とすることができるが、9以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、11以上であることがさらに好ましい。セルロース繊維の収率がより高くなるからである。いずれの場合であっても、アルカリ溶液の25℃におけるpHは、14以下であることが好ましい。pHが14を超えると、アルカリ溶液の取り扱い性が低下するからである。
アルカリ溶液の使用量を減らすために、アルカリ処理工程の前に、イオン性置換基導入セルロース繊維を洗浄してもよい。洗浄には、水および/または有機溶媒を用いることができる。また、アルカリ処理後、次に述べる微細化処理の前に、取り扱い性を向上させるためにアルカリ処理済みイオン性置換基導入セルロース繊維を、水および/または有機溶媒で洗浄してもよい。
<微細化(解繊)処理>
微細化処理に際し、セルロース繊維は溶媒に分散される。溶媒の種類は、微細化(解繊ということもある。)処理が適切に行える限り特に限定されないが、水系溶媒(水、または水と有機溶媒を混合したもの)を使用することができる。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tブチルアルコール等のアルコール類が挙げられる。さらにアセトン、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF),ジメチルアセトアミド(DMAc)等が挙げられる。有機溶媒は、1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
分散濃度は、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましい。含有量が前記下限値以上であれば、処理の効率が向上し、前記上限値以下であれば、解繊処理装置内での閉塞を防止できるからである。
解繊処理装置としては特に限定されない。例えば、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、クレアミックス、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナーが挙げられる。また、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、ビーター等、湿式粉砕する装置等を適宜使用することができる。
微細化処理により得られる微細繊維状セルロース繊維の平均繊維幅は特に限定されないが、例えば1〜1000nmとすることができ、好ましくは2〜1000nm、より好ましくは2〜500nm、さらに好ましくは3〜100nmである。微細繊維の平均繊維幅が1nm以上であると、分子の水への溶解が抑えられるため、微細繊維としての物性(強度や剛性、寸法安定性)が十分に発現される。一方、平均繊維幅が1000nm以下であれば、微細繊維としての特長(高透明、高弾性率、低線膨張係数、フレキシブル性)が発揮されやすくなる。なお、得られた微細繊維状セルロース分散液は、繊維幅が1000nmを超えるセルロース繊維を含んでいてもよいが、繊維幅が1000nmを超えるセルロース繊維を含まないほうが好ましい。
微細繊維に比較的高い透明性が求められる用途においては、平均繊維幅が30nm以下であれば、可視光の波長の1/10に近づき、積層体とした場合には界面で可視光の屈折および散乱が生じにくく、透明性が高いものが得られる傾向がある。そのため、平均繊維幅は特に限定されないが、2nm〜30nmが好ましく、2〜20nmがより好ましい。前記のような微細繊維から得られる積層体は、一般的に緻密な構造体となるために強度が高く、可視光の散乱が少ないため高い透明性も得られる。
平均繊維幅の測定は以下のようにして行う。濃度0.05〜0.1質量%の微細繊維含有スラリーを調製し、該スラリーを親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストしてTEM観察用試料とする。幅広の繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面のSEM像を観察してもよい。構成する繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍、20000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。但し、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を目視で読み取る。こうして少なくとも重なっていない表面部分の画像を3組以上観察し、各々の画像に対して、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を読み取る。このように少なくとも20本×2×3=120本の繊維幅を読み取る。平均繊維幅とはこのように読み取った繊維幅の平均値である。
繊維長は特に限定されないが、0.1μm以上が好ましい。繊維長が0.1μm以上であれば、後述のシートを製造した際、シートの引裂強度が十分である点で好ましい。繊維長は、TEMやSEM、AFMの画像解析より求めることができる。上記繊維長は、微細繊維の30質量%以上を占める繊維長である。
繊維の軸比(繊維長/繊維幅)は特に限定されないが、20〜10000の範囲であることが好ましい。軸比が20以上であれば微細繊維含有シートを形成しやすい点で好ましい。軸比が10000以下であればスラリー粘度が低くなる点で好ましい。
微細化処理により、上述のような微細繊維状セルロースの分散液(スラリー)が得られる。ここでの微細繊維状セルロースの濃度は、例えば0.1〜20質量%であり、また0.5〜10質量%であり得る。
<シート化>
微細化処理により、得られた微細繊維状セルロース繊維の分散液(スラリー)から、シートを調製する。シートの調製方法は、特に限定されないが、典型的には下記の抄紙法、塗工法等に拠ることができる。
(抄紙法)
微細繊維含有スラリーを通常の抄紙で用いられる長網式、円網式、傾斜式等の連続抄紙機のほか、これらを組み合わせた多層抄き合わせ抄紙機、さらに手抄き等公知の抄紙方法で抄紙され、一般の紙と同様の方法でシート化することが可能である。つまり、微細繊維含有スラリーをワイヤー上で濾過、脱水して湿紙状態のシートを得た後、プレス、乾燥することでシートを得ることが可能である。スラリーの濃度は特に限定されないが、0.05〜5質量%が好ましく、濃度が低すぎると濾過に膨大な時間がかかり、逆に濃度が高すぎると均一なシートが得られないため好ましくない。スラリーを濾過、脱水する場合、濾過時の濾布としては特に限定されないが、微細繊維は通過せず、かつ濾過速度が遅くなりすぎないことが重要である。このような濾布としては特に限定されないが、有機ポリマーからなるシート、織物、多孔膜が好ましい。有機ポリマーとしては特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のような非セルロース系の有機ポリマーが好ましい。具体的には孔径0.1〜20μm、例えば1μmのポリテトラフルオロエチレンの多孔膜、孔径0.1〜20μm、例えば1μmのポリエチレンテレフタレートやポリエチレンの織物等が挙げられるが、特に限定されない。
(塗工法)
塗工法は、微細繊維含有スラリーを基材上に塗工し、これを乾燥して形成された微細繊維含有層を基材から剥離することにより、シートを得る方法である。塗工装置と長尺の基材を用いることで、シートを連続的に生産することができる。基材の質は、特に限定されないが、微細繊維含有スラリーに対する濡れ性が高いものの方が乾燥時のシートの収縮等を抑制することができて良いが、乾燥後に形成されたシートが容易に剥離できるものを選択することが好ましい。中でも樹脂板または金属板が好ましいが、特に限定されない。その中で、適当なものを単独、または積層して使用するのが好適である。例えばアクリル板、ポリエチレンテレフタレート板、塩化ビニル板、ポリスチレン板、ポリ塩化ビニリデン板等の樹脂板や、アルミ板、亜鉛版、銅版、鉄板等の金属板および、それらの表面を酸化処理したもの、ステンレス板、真ちゅう板等を用いることができるが、特に限定されない。微細繊維含有スラリーを基材上に塗工するには、上記基材に所定のスラリー量を塗工することが可能な各種コーターを使用すれば良い。特に限定されないが、例えば、ロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター等が使用できるが、中でもダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、エアドクターコーター等の塗工方式によるものが均一な塗工には有効である。なお後述するように、シートを積層体とする場合等においては、基材からの剥離は行わなくてもよい場合がある。
(スラリー量)
調製されるシートの厚みには特に限定されず、用途に応じて適宜とすることができ、シートの仕上がり坪量または厚さに基づき、スラリー量を計量して、抄紙または塗工等を行うことができる。
(脱水、乾燥)
抄紙または塗工等された後、必要に応じ、脱水および/または乾燥が行われ、シート化される。なお、脱水、乾燥は、続く工程で、二価以上の金属の強酸由来の塩の溶液での処理が行われることから、ある程度まで水分が除去されるまで行うことができ、通常の最終物としてのシートを得る場合のようにまで完全には行わなくてもよいと考えられる。脱水方法としては特に限定されないが、紙の製造で通常に使用している脱水方法が挙げられ、長網、円網、傾斜ワイヤーなどで脱水した後、ロールプレスで脱水する方法が好ましい。また、乾燥方法としては特に限定されないが、紙の製造で用いられている方法が挙げられ、例えば、シリンダードライヤー、ヤンキードライヤー、熱風乾燥、赤外線ヒーターなどの方法が好ましい。
乾燥方法としては、特に限定されないが、非接触の乾燥方法でも、シートを拘束しながら乾燥する方法の何れでもよく、これらを組み合わせてもよい。
非接触の乾燥方法としては、特に限定されないが、熱風、赤外線、遠赤外線または近赤外線により加熱して乾燥する方法(加熱乾燥法)、真空にして乾燥する方法(真空乾燥法)を適用することができる。加熱乾燥法と真空乾燥法を組み合わせてもよいが、通常は、加熱乾燥法が適用される。赤外線、遠赤外線または近赤外線による乾燥は、赤外線装置、遠赤外線装置または近赤外線装置を用いて行うことができるが、特に限定されない。加熱乾燥法における加熱温度は特に限定されないが、40〜120℃とすることが好ましく、40〜105℃とすることがより好ましい。加熱温度を前記下限値以上とすれば、分散媒を速やかに揮発させることができ、前記上限値以下であれば、加熱に要するコストの抑制および微細繊維の熱による変色を抑制できる。
(他の繊維)
シートの調製に際し、特に限定されないが、前記微細繊維と前記微細繊維以外の繊維(以下、「追加繊維」という)を少なくとも1種以上混合して調製することもできる。追加繊維としては、例えば、無機繊維、有機繊維、合成繊維等、半合成繊維、再生繊維が挙げられるが、特に限定されない。無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、岩石繊維、金属繊維等が挙げられるがこれらに限定されない。有機繊維としては、例えば、セルロース、炭素繊維、パルプ、キチン、キトサン等の天然物由来の繊維等が挙げられるがこれらに限定されない。合成繊維としては、例えば、ナイロン、ビニロン、ビニリデン、ポリエステル、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリウレタン、アクリル、ポリ塩化ビニル、アラミド等が挙げられるがこれらに限定されない。半合成繊維としては、アセテート、トリアセテート、プロミックス等が挙げられるがこれらに限定されない。再生繊維としては、例えば、レーヨン、キュプラ、ポリノジックレーヨン、リヨセル、テンセル等が挙げられるがこれらに限定されない。追加繊維は、必要に応じて化学的処理、解繊処理等の処理を施すことができる。
混合は、特に限定されないが、例えば抄紙、または塗工前において、微細繊維含有スラリーに他の繊維を添加することによって行うことができる。追加繊維に化学的処理、解繊処理等の処理を施す場合、微細繊維と混合してから化学的処理、解繊処理等の処理を施すこともできるし、追加繊維に化学的処理、解繊処理等の処理を施してから微細繊維と混合することもできる。同程度の平均繊維径を有するもの同士の混合は、均一に混合することがより容易となる点で好ましい。
追加繊維を混合する場合、微細繊維と追加繊維の合計量における追加繊維の添加量は特に限定されないが、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である。特に好ましくは20質量%以下である。
また、シートの調製に際し、親水性高分子を添加してもよい。親水性高分子としては、例えば、ポリエチレングリコール、セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース,カルボキシエチルセルロース,カルボキシメチルセルロース等)、カゼイン、デキストリン、澱粉、変性澱粉、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール(アセトアセチル化ポリビニルアルコール等)、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸塩類、ポリアクリルアミド、アクリル酸アルキルエステル共重合体、ウレタン系共重合体などを挙げることができるが、特に限定されない。
また親水性高分子の代わりに親水性の低分子化合物を用いることもできる。親水性の低分子化合物としては、グリセリン、エリトリトール、キシリトール、ソルビトール、ガラクチトール、マンニトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコールなどを挙げることができるが、特に限定されない。
親水性高分子、または親水性の低分子化合物の混合は、特に限定されないが、例えば抄紙、または塗工前において、微細繊維含有スラリーに親水性高分子、または親水性の低分子化合物を添加することによって行うことができる。 親水性高分子、または親水性の低分子化合物を添加する場合の添加量は、微細繊維の固形分100質量部に対し好ましくは1から200質量部、より好ましくは1から150質量部、さらに好ましくは2から120質量部、特に好ましくは3から100質量部であるが、特に限定されない。
<二価以上の金属を用いた処理>
本発明では、工程(2)において、イオン性置換基を有する微細繊維は、二価以上の金属の強酸由来の塩の溶液で処理される。金属は、特に記載した場合を除き、イオン、元素(原子)または化合物のいずれの状態であってもよい。また、シートが、ある金属を含むというとき、その金属は、シートにおいては、例えば、イオン、元素(原子)または化合物の状態で存在しており、蛍光X線分析により分析可能である。二価以上の金属は、二価の金属または三価の金属であることが好ましい。二価の金属原子の例は、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ニッケル(II)(Ni(II))、コバルト(II)(Co(II))、銅(II)(Cu(II))、マンガン(Mn)、鉄(II)(Fe(II))、リチウム(Li)、バナジウム(II)(V(II))、ジルコニウム(Zr)および亜鉛(Zn)である。三価の金属の例は、アルミニウム(Al)および鉄(III)(Fe(III))である。湿潤状態における強度を向上させる観点等からは、これらのうち、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、銅、鉄、および亜鉛がより好ましく、アルミニウム、マグネシウム、および亜鉛が特に好ましい。金属は、一種のみ用いてもよく、二種以上用いてもよい。
二価以上の金属は、水に溶解可能な強酸由来の塩の溶液として、シートの処理に用いられる。強酸由来の塩とは、硫酸、塩酸、または硝酸である強酸に由来する塩を指す。塩の水溶液は、弱酸性〜強酸性を示す。水への溶解度が高い塩が好ましく用いられ、このような金属塩の具体例として、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、塩化第二硫酸鉄を挙げることができ、好ましくは、硫酸アルミニウムおよび硫酸マグネシウムである。
処理の方法は、特に限定されない。例えば、上述の工程により得られたシートを、二価以上の金属の強酸由来の塩を適切な溶媒に溶解した溶液に、数分〜数時間浸漬することにより行うことができる。溶媒としては、用いる二価以上の金属の強酸由来の塩が溶解する限り、特に限定されないが、水または水を含む水系溶媒を用いることが好ましい。浸漬比は適宜とすることができるが、例えば、シート1質量部に対し、1〜100質量部、好ましくは1.5〜50質量部の溶液を用いることができる。
使用される金属塩の量は、シートに導入されているイオン性置換基の多くとイオン対を形成可能な量であることが好ましい。例えば、導入置換基が有するイオン性置換基の、少なくとも50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上がイオン対を形成可能な量を用いることができる。あるいは、イオン性置換基がリン酸基である場合、リン酸基1mmolに対して、三価の金属の塩であれば、0.3〜3.0mmol、好ましくは0.2〜2.0mmol、より好ましくは0.5〜1.5mmol用いるとよい。他の基または他の塩を用いる場合、当業者であれば、価数を考慮して、リン酸基および三価の金属塩についての上記の量に基づき、化学的等量として十分量を適宜決定できる。
二価以上の金属の強酸由来の塩の溶液の濃度は、用いる塩の水への溶解性にも拠るが、0.05%以上とすることができ、0.1%以上であることが好ましく、0.15%以上であることがより好ましい。上限値は、経済的な観点から定めてもよいが、シートの透明性を確保するとの観点からは、15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
金属塩による処理の後、必要に応じ、洗浄および/または脱水・乾燥を行い、最終物としてのシートを得ることができる。洗浄は、水または水系溶媒、好ましくは水で行うことができる。脱水・乾燥は、上述のシート化の項で説明した方法で行うことができる。
二価以上の金属の強酸由来の塩の溶液を用いた処理により、生じた二価以上の金属イオンとシート上の置換基のイオン性基とがイオン対を形成し、不溶性または難溶性(非親水性)の架橋構造が形成されると考えられる。それにより、シートの耐水性が増し、湿潤条件での強度が向上するものと考えられる。また、本発明においては、シート化した後に強酸由来の塩の溶液による処理をするが、シートに対して処理をすることで、高い透明性が得られる。本発明者らの検討によると、シート化前のスラリー状態の段階で、強酸由来の塩の溶液で処理し、その後にシート化した場合には、シート化する際に透明性が低下することが分かっている。
[シートの構造、特性]
上述の製造方法により得られるシートの、シート自体(物)としての構造および特性を次に述べる。
<全光線透過率>
シートの全光線透過率とは、JIS規格K7361に準拠し、ヘーズメータを用いて測定した値をいう。本発明により提供されるシートの全光線透過率は、80%以上であり、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
<ヘーズ値>
シートのヘーズ値とは、JIS規格K7136に準拠し、ヘーズメータを用いて測定した値をいう。本発明により提供されるシートのヘーズ値は、10.0%以下であり、8.0%以下であることが好ましく、6.0%以下であることがより好ましい。本発明により得られるシートにおいてこのように低いヘーズ値が達成できるのは次の要因によると考えられる。二価以上の金属の強酸由来の塩の溶液による処理を行い、かつスラリー状態ではなく、シート化した後に処理している(シート化前のスラリー状態の段階で強酸由来の塩の溶液で処理した場合に観られるシートの透明性の低下が防止できる)。また、繊維に導入される置換基の種類、場合によりその導入量、金属(または処理に用いる金属塩)の種類、場合によりその量が適切に選択されている。
<二価以上の金属の導入量>
シートにおける二価以上の金属の導入量(mmol/g)は、例えば蛍光X線分析法を用いて以下のように測定することができる。
まず、検量線作成用として、測定対象シートと組成および形態が類似しており(例えば、ろ紙を用いる。)、かつ分析元素の含有量(mmol)が既知である試料を調製し、蛍光X線分析により当該試料のX線強度を測定する。ここでは、二価以上の金属が分析元素となる。次いで、これにより得られたX線強度と、分析元素の既知の含有量に基づき、検量線を作成する。次いで、蛍光X線分析により、測定対象シートのX線強度を測定する。次いで、これにより得られたX線強度と上記検量線から、測定対象シート中の分析元素の含有量(mmol)を求める。次いで、得られた測定対象シート中の分析元素の含有量を、測定対象シートの質量(g)で割ることにより、測定対象シートへの二価以上の金属の導入量(mmol/g)を算出する。ここで、測定対象シートの質量Zは、Z(g)=W(cm)×X(g/cm)×Y(cm)で表される(W:蛍光X線分析に使用したシートの面積(cm)、X:シートの密度(g/cm)、Y:シートの厚み(cm))。
本発明により提供されるシートにおける二価以上の金属の導入量は、シートの湿潤条件における強度の向上上、有効な量である。有効量は、例えば0.10mmol/g(シートあたり)以上とすることができ、0.30mmol/g(シートあたり)以上であることがより好ましい。また、微細繊維が有するイオン性置換基がリン酸由来の基である場合、二価以上の金属の導入量は、例えば0.50mmol/g(シートあたり)以上であることがより好ましく、0.80mmol/g(シートあたり)以上であることが特に好ましい。さらに、微細繊維にリン酸由来の基が導入される場合であって二価以上の金属としてアルミニウムが導入される場合には、その導入量は、例えば1.0mmol/g(シートあたり)以上であることが特に好ましい。このような値であれば、湿潤条件においてもシートが膨潤・破断することなく、引張強度および弾性率の向上が認められるからである。一方で、二価以上の金属の導入量は、例えば3.0mmol/g(シートあたり)以下とすることができ、2.5mmol/g(シートあたり)以下であることがより好ましく、2.0mmol/g(シートあたり)以下であることが特に好ましい。これにより、透明性をより効果的に向上させることができる。
なお、本発明により提供されるシートは、製造工程において、二価以上の金属塩の強酸由来の塩を用いるため、使用した強酸(硫酸、塩酸、または硝酸)に由来する、硫黄、塩素または窒素からなる群より選択される少なくとも一種の元素を含むことがある。このような元素の量は、イオン性置換基の種類および量、ならびに用いた強酸由来の塩の量にも拠るが、例えば、0.01mmol/g(シートあたり)〜0.10mmol/g(シートあたり)である。ここで、シートにおける硫黄、塩素、および窒素の量は、例えば蛍光X線分析法を用いて測定することができる。本実施形態では、例えば上述した二価以上の金属の導入量の測定方法において分析対象を硫黄、塩素、または窒素とすることにより、シートにおける硫黄、塩素、および窒素の量を測定することが可能である。
<引張強度、引張弾性率>
シートの引張強度および引張弾性率とは、JIS P 8135に準拠し、引張試験機を用いて湿潤条件下で測定された値をいう。湿潤条件とは、対象のシートをイオン交換水に24時間浸漬したものを試験片とすることを指す。本発明により得られるシートは、高い透明性を有し、かつ二価以上の金属イオンで処理されていないシートに比較して、湿潤条件での引張強度、引張弾性率に優れる。具体的には、本発明により提供されるシートの湿潤条件での引張強度は、10.0MPa以上であり、15.0MPa以上であることが好ましい。この値以上であれは、包装材料としての使用に耐えるからである。上限値は、特に限定されないが、例えば200.0MPa以下であり、または100.0MPa以下である。また、本発明により提供されるシートの湿潤条件での弾性率は、0.7GPa以上であり、1.0GPa以上であることが好ましい。この値以上であれは、包装材料としての使用に耐えるからである。上限値は、特に限定されないが、例えば10.0GPa以下であり、または5.0GPa以下である。
<吸水率>
シートの吸水率とは、50mm角のシートを24時間イオン交換水に浸漬し、シートの絶乾質量に対する浸漬後のシート質量の比から求められる率(%)をいう。なお、絶乾質量は、対象を105℃で24時間乾燥した後の質量をいう。本発明により得られるシートは、高い透明性を有し、かつ二価以上の金属イオンで処理されていないシートに比較して、吸水率が低い。具体的には、本発明により提供されるシートの吸水率は、500%以下であり、350%以下であることが好ましく、200%以下であることがより好ましい。この値以下であれは、包装材料としての使用に耐えるからである。下限値は特に限定されないが、例えば10%以上であり、または50%以上である。
<密度>
シートの密度とは、50mm角のシートを23℃、50%RH条件下で24時間調湿した後、シートの厚みおよび質量から求められる値(g/cm)をいう。本発明により得られるシートの密度は、用途等に応じ、適宜とすることができるが、強度および/または透明性等を考慮して、0.1〜7g/cmとすることができ、0.5〜5g/cmであることが好ましく、1.0〜3g/cmであることがより好ましい。
[シートの積層化、用途、その他]
本発明により提供されるシートは、シート一層からなるものとして使用することもできるが、少なくとも一方の面に有機層および/または無機層を形成し、積層体として用いることもできる。積層化により、水に対する耐性(耐水性、耐湿性、撥水性)をさらに付与することができる。無機層と有機層とを積層する場合、順番は特に限定されないが、基材シートの表面にまず有機層を積層することは、無機層を形成するための面を平滑にし、形成される無機層をより欠陥の少ないものとすることができる点で好ましい。また、有機層および無機層以外の他の構成層、例えば、上層の接着を容易にするための易接着層を含んでいてもよい。積層化に際しては、透明性が特に重視される用途に用いる場合は、シートの黄変を促進するような加熱工程やUV照射工程を含まないことが好ましい。積層化によって得られる積層体は、微細繊維含有シートからなる基材シート層の少なくとも一方の側に形成された、少なくとも1層の無機層と少なくとも1層の有機層とを含むことが好ましい。無機層、有機層等の層数は特に限定されない。フレキシブル性や透明性を維持しつつ、耐湿性を十分にするとの観点からは、片側について、例えば、無機層と有機層とを交互に2層〜15層積層することが好ましく、3層〜7層積層することがより好ましい。
無機層を構成する物質としては、特に限定されないが、例えばアルミニウム、ケイ素、マグネシウム、亜鉛、錫、ニッケル、チタン;これらの酸化物、炭化物、窒化物、酸化炭化物、酸化窒化物、もしくは酸化炭化窒化物;またはこれらの混合物が挙げられる。高い防湿性が安定に維持できるとの観点からは、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化炭化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化炭化窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化炭化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、またはこれらの混合物が好ましい。
有機層の形成のために用いられる樹脂としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂、シルセスキオキサン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、珪素樹脂、ポリウレタン樹脂、シルセスキオキサン樹脂、またはジアリルフタレート樹脂等が挙げられる。低吸水性の積層体を得るためには、樹脂は、ヒドロキシ基、カルボキシル基、またはアミノ基などの親水性の官能基が少ないことが好ましい。
本発明により提供されるシートおよび積層体は、透明性に優れ、かつ多湿条件でも強度を有するため、軽量等の特性を生かして、食品、化粧品、医薬品、パソコン、家電等の包装材料として用いるのに適している。
さらに発明により提供されるシートおよび積層体は、光学特性に優れるため、表示素子、照明素子、太陽電池もしくは窓材、またはこれらのためのパネルもしくは基板として用いるのに適している。
より具体的には、シートおよび積層体(以下、積層体等という。)は、フレキシブルディスプレイ、タッチパネル、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイ、LED素子として用いるのに適している。また、積層体等は、シリコン系太陽電池、色素増感太陽電池などの太陽電池用基板として用いるのに適している。基板としての用途において、バリア膜、ITO、TFT等と積層してもよい。また、自動車、鉄道車両、航空機、住宅、オフィスビル、工場等の窓材として用いるのに適している。窓材としては、必要に応じてフッ素皮膜、ハードコート膜等の膜や耐衝撃性、耐光性の素材を積層してもよい。
積層体等は、低線膨張率、高弾性、高強度、軽量等の特性を生かして、透明材料用途以外の構造材としても用いることができる。特に、グレージング、内装材、外板、バンパー等の自動車、鉄道車両、航空機の材料、パソコンの筐体、家電部品、包装用資材、建築資材、土木資材、水産資材、その他工業用資材等として好適に用いることができる。
また積層体等は、種々の製品に用いることができる。製品の例としては、上述の表示素子またはディスプレイを用いたコンピュータ、タブレット端末、携帯電話機;照明素子を利用した、電球、照明(照明器具・照明装置)、誘導灯、液晶パネル用バックライト、懐中電灯、自転車用前照灯、自動車車内灯およびメーターランプ、交通信号機、建物内外の高所照明、家庭用照明、学校用照明、医療用照明、工場用照明、植物育成用ライト、映像ライティング用照明、コンビニエンスストア等の24時間または深夜営業店舗における照明、冷蔵・冷凍庫内の照明灯;窓材や構造材を用いた、家屋、ビル、自動車、鉄道車両、航空機、家電等、様々なものを挙げることができる。
以下、本発明を実施例によって説明するが、本発明の範囲は、実施例によって限定されない。
〔実施例1〕
<リン酸基導入セルロース繊維の作製>
針葉樹クラフトパルプとして、王子製紙製のパルプ(固形分93% 米坪208g/mシート状 離解してJIS P8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)700ml)を使用した。上記針葉樹クラフトパルプの絶乾質量として100質量部に、リン酸二水素アンモニウムと尿素の混合水溶液を含浸し、リン酸二水素アンモニウム49質量部、尿素130質量部となるように圧搾し、薬液含浸パルプを得た。得られた薬液含浸パルプを105℃の乾燥機で乾燥し、水分を蒸発させてプレ乾燥させた。その後、140℃に設定した送風乾燥機で、10分間加熱し、パルプ中のセルロースにリン酸基を導入し、リン酸化パルプを得た。得られたリン酸化パルプの絶乾質量として100質量部に対して10000質量部のイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返し、リン酸変性セルロース繊維を得た。得られたリン酸変性セルロース繊維は、リン酸基の導入量が0.98mmol/gであった。
<機械処理>
洗浄脱水後に得られたパルプにイオン交換水を添加して、1.0質量%のパルプ懸濁液にした。このパルプ懸濁液を、湿式微粒化装置(スギノマシン社製:アルティマイザー)で245MPaの圧力にて5回パスさせ、微細繊維状セルロース懸濁液を得た。
<シート化>
微細繊維状セルロース懸濁液にポリエチレングリコール(和光純薬社製:分子量400万)を微細繊維状セルロース100質量部に対し、20質量部になるように添加した。なお、固形分濃度が0.5質量%となるよう濃度調製を行った。シートの仕上がり坪量が45g/mになるように懸濁液を計量して、市販のアクリル板に展開し35℃、15%RHのチャンバーにて乾燥した。なお、所定の坪量となるようアクリル板上には堰止用の板を配置した。以上の手順により、シートが得られ、その厚みは30μmであった。
<微細繊維状セルロースの架橋>
前記微細繊維状セルロースシートを、硫酸アルミニウム14〜18水和物(関東化学製)を使用し調製した、硫酸アルミニウム純分が1%である水溶液に30分浸漬し、アルミニウムによる架橋処理を行った。このシートをイオン交換水に15分浸漬し、洗浄を行った。この洗浄を2回繰り返した後、シートをアクリル板に貼り付け、35℃、15%RHのチャンバーにて乾燥した。
〔実施例2〕
硫酸アルミニウム水溶液濃度を5%とする以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。
〔実施例3〕
硫酸アルミニウム水溶液濃度を10%とする以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。
〔実施例4〕
硫酸アルミニウム水溶液濃度を15%とする以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。
〔実施例5〕
針葉樹クラフトパルプとして、王子製紙製のパルプ(固形分93% 米坪208g/mシート状 離解してJIS P8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)700ml)を使用した。上記針葉樹クラフトパルプの絶乾質量として100質量部に、リン酸二水素アンモニウムと尿素の混合水溶液を含浸し、リン酸二水素アンモニウム49質量部、尿素130質量部となるように圧搾し、薬液含浸パルプを得た。得られた薬液含浸パルプを105℃の乾燥機で乾燥し、水分を蒸発させてプレ乾燥させた。その後、140℃に設定した送風乾燥機で、10分間加熱し、パルプ中のセルロースにリン酸基を導入し、リン酸化パルプを得た。得られたリン酸化パルプの絶乾質量として100質量部に対して10000質量部のイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返し、リン酸基導入量の高いリン酸変性セルロース繊維を得た。得られたリン酸変性セルロース繊維は、リン酸基の導入量が1.34mmol/gであった。これを原料として用いた以外は、実施例2と同様にしてシートを得た。
〔実施例6〕
硫酸マグネシウム7水和物(関東化学製)を使用し、調製した、硫酸マグネシウム純分が5%水溶液により微細繊維状セルロースの架橋を行う以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。
〔実施例7〕
乾燥質量100質量部相当の未乾燥の針葉樹晒クラフトパルプとTEMPO1.6質量部と、臭化ナトリウム10質量部とを水10000質量部に分散させた。次いで、13質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、1.0gのパルプに対して次亜塩素酸ナトリウムの量が3.5mmolになるように加えて反応を開始した。反応中は1.0Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10〜11に保ち、pHに変化が見られなくなった時点で反応終了と見なし、パルプにカルボキシ基を導入した。このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、5000質量部のイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返し、カルボキシ基変性セルロース繊維を得た。得られたカルボキシ基変性セルロース繊維は、カルボキシ基の導入量が1.01mmol/gであった。これを原料として用いた以外は、実施例2と同様にしてシートを得た。
〔実施例8〕
カルボキシ基導入工程において、加える次亜塩素酸ナトリウムの量を8.0mmolに変更する以外は実施例7と同様にしてシートを得た。このとき得られたカルボキシ基変性セルロース繊維は、カルボキシ基の導入量が1.48mmol/gであった。
〔比較例1〕
微細繊維状セルロースの架橋処理を行わない以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。
〔比較例2〕
リン酸基の導入量が1.34mmol/gのリン酸変性セルロース繊維を使用する以外は、比較例1と同様にしてシートを得た。
〔比較例3〕
微細繊維状セルロースの架橋処理を行わない以外は、実施例7と同様にしてシートを得た。
〔比較例4〕
カルボキシ基の導入量が1.48mmol/gのカルボキシ基変性セルロース繊維を使用する以外は、比較例3と同様にしてシートを得た。
〔評価〕
<方法>
実施例1〜8、および比較例1〜4で作製したシートについて以下の評価方法に従って評価を実施した。
(1)セルロース表面の置換基量測定(滴定法)
絶乾質量で0.04g程度の固形分を含む微細セルロース繊維含有スラリーを分取し、イオン交換水を用いて50g程度に希釈した。この溶液のマグネチックスターラーを用いて撹拌しながら、0.01Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えていったときの電気伝導度の値の変化を測定し、その値が極小となる時の0.01N水酸化ナトリウム水溶液の滴下量を滴定終点における滴下量とした。
この時、セルロース表面の置換基量XはX(mmol/g)=0.01(mol/l)×V(ml)/W(g)で表される。ここで、V:0.01N水酸化ナトリウム水溶液の滴下量(ml)、W:微細セルロース繊維含有スラリーが含む固形分(g)である。
(2)シートの全光線透過率
JIS規格K7361に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製「HM−150」)を用いて全光線透過率を測定した。
(3)シートのヘーズ
JIS規格K7136に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製「HM−150」)を用いてヘーズを測定した。
(4)シート中のアルミニウム導入量、マグネシウム導入量および硫黄導入量
蛍光X線分析により、シート中のアルミニウム、マグネシウムおよび硫黄原子濃度を測定した。すなわち、シートにX線を照射したときにアルミニウム、マグネシウムあるいは硫黄原子の内殻電子が励起されて生じた空孔に、外殻の電子が遷移する際に放出されるアルミニウム、マグネシウムあるいは硫黄原子の特性X線の強度を測定することによって、アルミニウム、マグネシウムあるいは硫黄原子の濃度を得た。
測定条件は以下の通りである。
・分析装置:スペクトリス社製 蛍光X線分析装置(XRF)PW-2404
・測定サンプル:直径27mmの円形サンプル
・X線管:Rh管
・対陰極:ロジウム
・分光結晶:PE (アルミニウム)、PX1 (マグネシウム)、Ge(硫黄)
・励起光エネルギー:32kV−125mA
・測定線:アルミニウム Al−Kα1、マグネシウム Mg―Kα1、硫黄 S-Kα1
・2θ角ピーク:145.003(アルミニウム)、23.100(マグネシウム)、110.734(硫黄)
・測定時間:58秒(アルミニウム)、50秒(マグネシウム)、54.6秒(硫黄)
アルミニウム導入量が既知であるろ紙を作製し、同様に蛍光X線分析を実施後、Al原子の特性X線強度とアルミニウム導入量の検量線を作成した(図1)。マグネシウムも同様に、マグネシウム導入量が既知であるろ紙を作製し、Mg原子の特性X線強度とマグネシウム導入量の検量線を作成した(図2)。硫黄も同様に、硫黄導入量が既知であるろ紙を作製し、S原子の特性X線強度と硫黄導入量の検量線を作成した(図3)。
そして、アルミニウム、マグネシウムあるいは硫黄原子の特性X線強度を検量線に当てはめることにより、シート中のアルミニウム、マグネシウムあるいは硫黄原子の濃度(mmol)を得た。得られたアルミニウム、マグネシウムあるいは硫黄原子の濃度を、蛍光X線分析に使用したシートの質量で割ることで、シートへの元素導入量(mmol/g)を求めた。
ここで、蛍光X線分析に使用したシートの質量Zは、Z(g)=W(cm)×X(g/cm)×Y(cm)で表される。ここで、W:蛍光X線分析に使用したシートの面積(cm)、X:シートの密度(g/cm)、Y:シートの厚み(cm)である。
なお、表中の「-」は、微量であることを表す。
(5)湿潤条件におけるシートの引張物性
JIS P 8135に準拠し、引張試験機テンシロン(エー・アンド・デイ社製)を用いて湿潤条件下での引張強度および引張弾性率を測定した。シートをイオン交換水に24時間浸漬したものを試験片とした。
なお、表中の「膨潤・破断」とは、上記条件でイオン交換水に浸漬した後のシートが膨潤することで形状を保持できず、引張物性の測定が不可能である状態を指す。
(6)シートの吸水率
50mm角のシートを24時間イオン交換水に浸漬し、シートの絶乾質量に対する浸漬後のシート質量の比から吸水率を求めた。絶乾質量はシートを105℃で24時間乾燥し、乾燥後の質量から求めた。
なお、表中の「膨潤・破断」とは、上記条件でイオン交換水に浸漬した後のシートが膨潤することで形状を保持できず、吸水後のシートの質量の測定が不可能である状態を指す。
(7)シートの密度
50mm角のシートを23℃、50%RH条件下で24時間調湿した後、シートの厚みおよび質量から、シートの密度(g/cm)を求めた。
<結果>
結果を下表に示す。
Figure 0006849026

Claims (7)

  1. イオン性置換基を有する微細繊維と、
    二価以上の金属と、
    を含み、
    ヘーズが8.0%以下であり、二価以上の金属の含有量が0.10mmol/g以上である、シート。
  2. 微細繊維が、リン酸由来の基、カルボン酸由来の基、および硫酸由来の基からなる群より選択される一種または二種以上をイオン性置換基として有する微細繊維状セルロースである、請求項1に記載のシート。
  3. 湿潤条件における引張強度が、10.0MPa以上である、請求項1又は2に記載のシート。
  4. 湿潤条件における引張弾性率が、0.7GPa以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシート。
  5. イオン性置換基を有する微細繊維と、二価以上の金属とを含み、ヘーズが10.0%以下であり、二価以上の金属の含有量が0.10mmol/g以上である、シートの製造方法であって、
    イオン性置換基を有する微細繊維からシートを調製する工程、および
    調製されたシートを、二価以上の金属の強酸由来の塩により処理する工程
    を含む、シートの製造方法。
  6. 微細繊維が、リン酸由来の基、カルボン酸由来の基、および硫酸由来の基からなる群より選択される一種または二種以上をイオン性置換基として有する微細繊維状セルロースである、請求項5に記載のシートの製造方法。
  7. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のシートの少なくとも一方の側に、無機層および/または有機層が形成されている、積層体。
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