JP6627376B2 - シートおよび積層体 - Google Patents

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Description

本発明は、微細繊維を含むシートおよび積層体に関する。
近年、石油資源の代替および環境意識の高まりから、再生産可能な天然繊維を利用した材料が着目されている。天然繊維の中でも、繊維径が10〜50μmのセルロース繊維、とりわけ木材由来のセルロース繊維(パルプ)は主に紙製品としてこれまでにも幅広く使用されてきた。
また、セルロース繊維としては、繊維径が1μm以下の微細繊維状セルロースも知られている。微細繊維状セルロースを含有するシートや複合体は、繊維同士の接点が著しく増加することから、引張強度が大きく向上する。また、繊維幅が可視光の波長より短くなることで、透明度が大きく向上する。微細繊維の製造方法としては、繊維原料を微細化(解繊)しやくするため、静電的または立体的な官能性を持つ置換基を繊維原料に導入する方法が知られている(例えば、特許文献1〜4)。
官能性を持つ置換基が導入された微細繊維に関しては、種々の観点から検討がなされている。例えば特許文献5では、カルボン酸基を有するセルロースナノファイバーを複合化するために複合化対象材料と同一の有機溶媒に投入すると凝集―沈殿してしまうことに鑑み、広範な有機溶剤に可溶なセルロースナノファイバーを提供するとの観点から検討されている。ここでは具体的には、カルボン酸塩型の基を、有機基を有するアミンのカルボン酸アミン塩型に置換した後、有機溶媒に分散させることが試みられている。また特許文献6では、均一に有機溶剤や樹脂に分散可能であり、かつシート化された際の耐水性や強度を保つために金属イオンを含まない微細セルロース繊維を含む分散液を提供するとの観点から、微細セルロース繊維とアンモニアまたは有機アルカリとを含むことを特徴とする微細セルロース繊維分散液が提案されている。さらに特許文献7では、高い収率で製造でき、スラリー化した分散液の安定性を酸性側でも確保し、かつ分散液の粘度を低くすることを課題として検討されている。ここでは、陽イオン、アンモニウムイオン、脂肪族アンモニウムイオン、芳香族アンモニウムイオンよりなる群から選ばれる少なくとも1種との塩型である2種の官能基を導入した微細繊維状セルロースが提案されている。
特開2008−308802号公報 特開2010−254726号公報 特表2012−511596号公報 国際公開WO2013/073652 特開2012−21081号公報 国際公開WO2011/111612 特開2013−253200号公報
本発明者らの検討によると、親水性の官能基が導入された微細繊維をシート化するために乾燥する際、水素結合の形成により微細繊維の凝集が起こり、実用的な乾燥条件ではシートのシワ・割れが発生し、シートの歩留まりが低くなる傾向があった。一方、導入された官能基に対し、水素結合を封鎖すべく対イオンを付与することを検討したが、歩留まりが良好となる一方でシートの機械的物性の低下が懸念された。微細繊維含有シートに関しては、シワ・割れを抑制しつつ、強度を向上させることが求められていたが、これらを両立する技術についてはこれまで十分な検討が行われていなかった。
本発明者らは、シートのシワ・割れの抑制と強度の向上とを両立させることについて鋭意検討した。その結果、シートにおける対イオンの含有量を適切に調整することによって、意図した効果が得られることを新たに知見し、本発明を完成した。
本発明は、以下を提供する。
[1] イオン性置換基を有する微細繊維と、
前記イオン性置換基の対イオンである有機イオンと、
を含み、
前記有機イオンの含有量が0.40mmol/g以下であるシート。
[2] ヘーズが40%以下である、1に記載のシート。
[3] 密度が1.0g/cm3以上である、1または2に記載のシート。
[4] 前記有機イオンの炭素数が4以上である、1〜3のいずれか一項に記載のシート。
[5] 前記イオン性置換基の含有量が、前記微細繊維に対して0.5mmol/g以下である、1〜4いずれか一項に記載のシート。
[6] 温度23℃、相対湿度50%における引張弾性率が4.0GPa以上である、1〜5いずれか一項に記載のシート。
[7] 1〜6のいずれか一項に記載のシートと、
前記シートの少なくとも一方の側に積層された無機層および有機層の少なくとも一方と
を含む、積層体。
本発明により得られるイオン性置換基を有する微細繊維は、シート化の際のシワ・割れが抑制され、かつ得られるシートの機械的強度が優れている。
図1は伝導度滴定法による置換基含有量測定における、3つの領域を示したものである。
セルロース等の繊維の質量に関する値は、特に記載した場合を除き、絶乾質量(固形分)に基づく。数値範囲「X〜Y」は、特に記載した場合を除き、両端の値XおよびYを含む。
本発明は、イオン性置換基を有する微細繊維と、前記イオン性置換基の対イオンである有機イオンとを含み、前記有機イオンの含有量が一定値以下であるシート、それを用いた積層体、およびそれらの製造方法を提供する。
1.微細繊維および有機イオンを含むシート
[イオン性置換基を有する微細繊維]
<微細繊維>
本発明のシートは、イオン性置換基を有する微細繊維を含有する。イオン性置換基を有する微細繊維は、繊維原料にイオン性置換基を導入し、微細化処理をすることにより得られる。本発明で微細繊維とは、例えば繊維幅が1000nm以下である繊維であり、特に天然繊維であることが好ましい。天然繊維は、豊富に入手可能であることから多糖類であることが好ましく、シート化した際に強度が期待できることからセルロース、キチンまたはキトサンであることがより好ましい。天然繊維の特に好ましい例として、セルロース繊維が挙げられる。以下では、本発明、その実施態様および実施例を、微細繊維状セルロースを用いた場合を例に説明することがあるが、当業者であれば、その説明を適宜他の種類の繊維を用いた場合にも当てはめて理解することができる。
本発明のシートに含まれる微細繊維の平均繊維幅は、1000nm以下である限り特に限定されないが、例えば1nm以上とすることができ、好ましくは2〜1000nm、より好ましくは2〜500nm、さらに好ましくは3〜100nmである。微細繊維の平均繊維幅が1000nm以下であれば、微細繊維としての特長(高透明、高弾性率、低線膨張係数、フレキシブル性)が発揮されやすくなる。一方、平均繊維幅が1nm以上であると、分子の水への溶解が抑えられるため、微細繊維としての物性(強度や剛性、寸法安定性)が十分に発現される。
シートに比較的高い透明性が求められる用途においては、平均繊維幅が30nm以下であれば、可視光の波長の1/10に近づき、積層体とした場合には界面で可視光の屈折および散乱が生じにくく、透明性が高いものが得られる傾向がある。そのため、平均繊維幅は特に限定されないが、2〜30nmが好ましく、2〜20nmがより好ましい。このような微細繊維から得られる積層体は、一般的に緻密な構造体となるために強度が高く、可視光の散乱が少ないため透明性が高い。
平均繊維幅の測定は以下のようにして行う。濃度0.05〜0.1質量%の微細繊維含有スラリーを調製し、該スラリーを親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストしてTEM観察用試料とする。幅広の繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面のSEM像を観察してもよい。構成する繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍、20000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。但し、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を目視で読み取る。こうして少なくとも重なっていない表面部分の画像を3組以上観察し、各々の画像に対して、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を読み取る。このように少なくとも20本×2×3=120本の繊維幅を読み取る。平均繊維幅とはこのように読み取った繊維幅の平均値である。
微細繊維の繊維長は特に限定されないが、0.1μm以上が好ましい。繊維長が0.1μm以上であれば、後述のシートを製造した際、シートの引裂強度が十分である点で好ましい。繊維長は、TEMやSEM、AFMの画像解析より求めることができる。上記繊維長は、微細繊維の30質量%以上を占める繊維長である。
繊維の軸比(繊維長/繊維幅)は特に限定されないが、20〜10000の範囲であることが好ましい。軸比が20以上の場合、製造の際、微細繊維含有シートを形成しやすくなる点で好ましい。軸比が10000以下の場合、シート製造の際のスラリー粘度が低くなる点で好ましい。
<イオン性置換基>
本発明のシートに含まれる微細繊維は、イオン性置換基を有する。イオン性置換基は、微細繊維含有シートの製造において、繊維原料の微細化(解繊)を容易にする。イオン性置換基は、アニオン性であってもカチオン性であってもよい。
アニオン性置換基の例として、リン酸基またはリン酸基に由来する置換基(以下、リン酸基およびリン酸基に由来する置換基を、リン酸由来の基ともいう。)、カルボキシ基またはカルボキシ基に由来する置換基(以下、カルボキシ基およびカルボキシ基に由来する置換基を、カルボン酸由来の基ともいう。)、硫酸基または硫酸基に由来する置換基(以下、硫酸基および硫酸基に由来する置換基を、硫酸由来の基ともいう。)、スルホン酸基またはスルホン酸基に由来する置換基(以下、スルホン酸基およびスルホン酸基に由来する置換基を、スルホン酸由来の基ともいう。)が挙げられる。リン酸基はリン酸からヒドロキシル基を取り除いたものにあたる、2価の官能基である。具体的には−PO32で表される基である。リン酸基に由来する置換基には、リン酸基が縮重合した基、リン酸基の塩、リン酸エステル基などの置換基が含まれる。また、リン酸基またはリン酸基に由来する置換基は、下記式(1)で表されるものであってもよい。
Figure 0006627376
式(1)中、a、b、mおよびnはそれぞれ独立に整数を表す(ただし、a=b×mである);αn(n=1〜nの整数)およびα’はそれぞれ独立にRまたはORを表す。Rは、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、またはこれらの誘導基である;βは有機物または無機物からなる1価以上の陽イオンである。
アニオン性置換基は、取扱いの容易さ、製造の際の繊維との反応性から、リン酸由来の基、カルボン酸由来の基および硫酸由来の基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの基は、繊維とエステルまたはエーテルを形成していることがより好ましいが、特に限定されない。
カチオン性置換基の例として、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩などのオニウム塩由来の基が挙げられる。具体的には一級アンモニウム塩、二級アンモニウム塩、三級アンモニウム塩、4級アンモニウム塩などのアンモニウム、ホスホニウム、スルホニウムを含む基が挙げられる。カチオン性置換基は、取扱いの容易さ、製造の際の繊維との反応性から、4級アンモニウム塩由来の基、およびホスホニウム塩由来の基の少なくとも一方であることが好ましい。
本発明の好ましい態様においては、後述するようにシート含有される有機イオンを低減するに際してイオン性置換基ごと脱離する方法が採用される。この場合シートのイオン性置換基の含有量は、シートが意図した特性を有する限り特に限定されないが、シートまたは微細繊維に対して0.5mmol/g以下であることが好ましく、0.1mmol/g以下であることがより好ましく、0.05mmol/g以下であることがより好ましい。0.5mmol/g以下であれば、有機イオンが十分に低減されているといえるからである。イオン性置換基の含有量の下限値は特に限定されないが、上限値がいずれの場合であっても、シートまたは微細繊維に対して0.001mmol/g以上である。シート強度への影響が懸念される有機イオンが少ないという観点からは、シートのイオン性置換基の含有量は、少ないほうが好ましいと考えられる。
シートのイオン性置換基の含有量(mmol/g)は、蛍光X線分析法を用いて以下のように測定することができる。
まず、検量線作成用として、測定対象シートに用いられているのと同じ微細繊維であってイオン性置換基含有量(mmol/g)が既知であるシートを調製し、蛍光X線分析により当該試料のX線強度を測定する。測定元素は、イオン性置換基には含まれるが微細繊維には含まれない元素(例えば、イオン性置換基がリン酸由来の基である場合、リン原子)、あるいはイオン性置換基の対イオンには含まれるが微細繊維には含まれない元素である。必要に応じ、測定対象シートは、イオン性置換基の対イオンを微細繊維には含まれない元素を含む他の対イオンに交換してから、測定に供することができる。例えば、イオン性置換基がカルボン酸由来の基である場合、対イオンをナトリウムイオンに交換してから測定に供することができ、この場合、測定元素は、ナトリウムイオンである。次いで、これにより得られたX線強度と、既知のイオン性置換基含有量に基づき、検量線を作成する。
他方、蛍光X線分析により、測定対象シートのX線強度を測定する。次いで、これにより得られたX線強度と上記検量線から、測定対象シートのイオン性置換基の含有量(mmol/g)を求める。求めた値は、シートまたは微細繊維に対するイオン性置換基の含有量として表すことができる。
対イオンの除去に際し、イオン性置換基を脱離しない方法を採用する場合、シートにおけるイオン性置換基の含有量は、製造の際にシートに導入されたイオン性置換基の量に相当する。導入されている置換基が、リン酸由来の基、カルボン酸由来の基および硫酸由来の基からなる群より選択される少なくとも1種である場合、置換基導入量は、特に限定されないが、0.001〜5.0mmol/gとすることができる。0.05〜4.0mmol/gとしてもよく、0.1〜2.0mmol/gとしてもよい。
[有機イオン]
本発明のシートは、有機イオンを含む。有機イオンとは、繊維の有するイオン性置換基とイオン対を形成可能なイオンであって、有機基を有するものを指す。有機基とは、有機化合物(炭素原子を含む化合物)から誘導される基を指す。有機イオンは、イオン性置換基を有する微細繊維からのシート化の際の乾燥工程において、イオン性置換基間の水素結合形成を抑制し、シートのシワ・割れの発生を抑えることができる。従来、繊維上のカルボキシ基をアミン塩型とするもの(前掲特許文献5)、繊維上のカルボキシ基をオニウム塩型とするもの(前掲特許文献6)、繊維上のカルボキシ基およびリン酸基をアンモニウム塩型等とするものがあったが、いずれも目的は有機溶媒中での分散性の向上、複合化の対象とする樹脂との相溶性確保にあった。微細繊維をシート化する際の、シワ・割れの抑制という新規な課題に着目し、イオン性置換基を有する微細繊維含有シートにおいて有機イオンを用いるのは、本発明が初めてである。
<有機イオンの種類>
微細繊維がアニオン性置換基を有する場合の有機イオンの種類、および微細繊維がカチオン性置換基を有する場合の有機イオンの種類は、目的の効果が発揮されるものである限り特に限定されない。アニオン性置換基である場合、有機イオンは下記式(2)で表される有機オニウムイオンであることが好ましい。
Figure 0006627376
式中:
Mは、窒素原子またはリン原子であり;
1〜R4の少なくとも一つは、ヘテロ原子を含んでいてもよい有機基であり、残りは水素原子である。有機基の炭素数(複数の有機基を有する場合は、合計の炭素数)は、1以上であり、目的の効果が発揮される限り特に限定されないが、4以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、16以上であることがさらに好ましい。炭素数が大きく、ある程度嵩高いものが効果が大きいからである。R1〜R4は同一でもよく、それぞれ異なっていてもよいが、同一であるかまたは同程度の大きさの基であることが好ましい。直鎖状であるより、球状に近いほうが効果が大きいと考えられるからである。
このような有機オニウムイオンは、例えばテトラアルキルオニウムイオンであることが好ましく、テトラアルキルアンモニウムイオンおよびテトラアルキルホスホニウムイオンの少なくとも一方を含むことがより好ましい。テトラアルキルアンモニウムイオンとしては、例えばテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、テトラヘキシルアンモニウムイオン、テトラヘプチルアンモニウムイオン、トリブチルメチルアンモニウムイオン、ラウリルトリメチルアンモニウムイオン、セチルトリメチルアンモニウムイオン、ステアリルトリメチルアンモニウムイオン、オクチルジメチルエチルアンモニウムイオン、ラウリルジメチルエチルアンモニウムイオン、ジデシルジメチルアンモニウムイオン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムイオン、トリブチルベンジルアンモニウムイオンが挙げられる。テトラアルキルホスホニウムイオンとしては、例えばテトラメチルホスホニウムイオン、テトラエチルホスホニウムイオン、テトラプロピルホスホニウムイオン、テトラブチルホスホニウムイオン、およびラウリルトリメチルホスホニウムイオンが挙げられる。なお、テトラプロピルオニウムイオン、テトラブチルオニウムイオンとしては、それぞれテトラn−プロピルオニウムイオン、テトラn−ブチルオニウムイオンを用いることがとくに好ましい。
<有機イオンの含有量>
本発明のシートは有機イオンを含むが、その含有量は、シートに対して0.40mmol/g以下である。有機イオンは、シート化前にイオン性置換基に付加された後、シート化の後に0.40mmol/g以下まで含有量が低減される。有機イオン含有量の低減により、シートの機械的強度を増すことができる。シートにおける有機イオンの含有量は、機械的強度をより向上させるとの観点からは、好ましくは0.20mmol/g以下であり、より好ましくは0.10mmol/g以下であり、さらに好ましくは0.05mmol/g以下である。一方で、シートにおける有機イオンの含有量の下限値は、とくに限定されず、シートに対して0mmol/gとすることができ、たとえば0.005mmol/gであってもよい。なお、本発明で繊維またはシートに関し、有機イオンの含有量というときは、特に記載した場合を除き、シート上でイオン性置換基とイオン対を形成しているかどうかを問わず、次に述べる測定法により測定した値をいう。
シートにおける有機イオンの含有量(mmol/g)は、例えば化学発光法、赤外分光法、飛行時間型質量分析法、または蛍光X線分析法などを用いて測定することができる。
また、有機イオンに窒素が含まれる場合、例えば化学発光法による微量窒素分析装置により、シート中の窒素原子濃度を測定することもできる。このとき、有機イオンによる処理を行っていない微細繊維含有シートの窒素原子濃度も測定し、測定対象の微細繊維含有シートの窒素原子濃度からその値を減ずることで、有機イオン由来の窒素原子濃度を求め、有機イオン含有量を算出することができる。なお、例えばイオン性置換基としてリン酸由来の基を含む場合には、後述する多価アルコール煮沸法により、グリセリン使用下、180℃、2時間の処理を行うことで有機イオンを付与していない微細繊維含有シートと同様に扱うことができると考えられる。リン酸由来の基以外のイオン性置換基を含む場合には、後述する対イオン交換において、アニオン性置換基の場合はpH1の処理液に、カチオン性置換基の場合はpH14の処理液にそれぞれ2時間浸漬することで、有機イオンを付与していない微細繊維含有シートと同様に扱うことができると考えられる。
有機イオンにリン原子が含まれる場合、例えば蛍光X線分析法を用いて次のようにシート中の有機イオンに由来するリン原子濃度を算出することが可能である。まず、測定対象であるシートに対して蛍光X線分析を実施し、あらかじめ作成していたリン原子の特性X線強度とリン導入量の検量線に基づいて、測定対象シート中のリン原子濃度を算出する。次いで、有機イオンを含まない微細繊維含有シートのリン原子濃度も測定し、測定対象の微細繊維含有シートのリン原子濃度からその値を減ずることで、有機イオン由来のリン原子濃度を求め、有機イオン含有量を算出することができる。なお、有機イオンを含まない微細繊維含有シートは、例えば測定対象のシートに対して、後述する対イオン交換において、アニオン性置換基の場合はpH1の処理液に、カチオン性置換基の場合はpH14の処理液にそれぞれ2時間浸漬することで、有機イオンを付与していない微細繊維含有シートと同様に扱うことができると考えられる。
有機イオンに、窒素以外の元素であって、微細繊維含有シートには存在しないと考えられる元素が含まれる場合、シートにおける有機イオンの含有量は、蛍光X線分析法を用いて次のように測定することができる。
まず、検量線作成用として、測定対象シートと組成および形態が類似しており(例えば、ろ紙を用いる。)、かつ分析元素の含有量(mmol/g)が既知である試料を調製し、蛍光X線分析により当該試料のX線強度を測定する。ここでは、有機イオンには含まれるが、微細繊維含有シートには存在しないと考えられる元素が分析元素となる。そしてこれにより得られたX線強度と、分析元素の既知の含有量に基づき、検量線を作成する。次いで、蛍光X線分析により、測定対象シートのX線強度を測定する。そしてこれにより得られたX線強度と上記検量線から、測定対象シート中の分析元素の含有量(mmol/g)を算出する。
[シートの特性]
本発明のシートは、以下の特性を有する。
<密度>
シートの密度とは、100mm角のシートを23℃、相対湿度50%の条件下で24時間調湿した後、シートの厚みおよび質量から求められる値(g/cm3)をいう。本発明のシートの密度は、用途等に応じ、適宜とすることができるが、強度と透明性の観点から、0.1〜7.0g/cm3とすることができ、0.5〜5.0g/cm3であることが好ましく、1.0〜3.0g/cm3であることがより好ましい。
<シワ・割れ>
シートを製造する際のシワ・割れは、次の方法により評価できる。微細繊維の分散液をシート化する際、180mm各の堰止用金枠のサイズに合わせ、アクリル板の裏面に2cm角のマスを縦9×横9の合計81マスを記載する。微細繊維含有シートが該アクリル板に張り付いた状態で上方から観察し、シワ・割れが発生したマスを計数する。次いでシワ・割れが発生したマスが全マス数の何%を占めるかを計算する。
本発明のシートは、この方法で評価した場合に、シワ・割れが発生したマスの割合が20%未満である。
<全光線透過率>
シートの全光線透過率とは、JIS規格K7361に準拠し、ヘーズメータを用いて測定した値をいう。本発明のシートは透明性が高く、その全光線透過率は80%以上であり、85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましい。
<ヘーズ値>
シートのヘーズ値とは、JIS規格K7136に準拠し、ヘーズメータを用いて測定した値をいう。本発明のシートは透明性が高く、そのヘーズ値は、40.0%以下であり、35.0%以下であることが好ましく、20.0%以下であることがより好ましい。
<引張強度、引張弾性率>
シートの引張強度および引張弾性率とは、JIS K 7127に準拠し、引張試験機を用いて、温度23℃、相対湿度50%において測定された値をいう。本発明により得られるシートは、製造の際のシワ・割れの発生が抑えられており、かつイオン性置換基に対して有機イオンを用いないシートに比較して、引張強度および引張弾性率に優れる。具体的には、本発明のシートの引張強度は、60.0MPa以上であり、70.0MPa以上であることが好ましく、80.0MPa以上であることがより好ましい。この値以上であれは、光学材料としての使用に耐えるからである。上限値は、特に限定されないが、例えば400.0MPa以下であり、または300.0MPa以下である。
また、本発明のシートの引張弾性率は、4.0GPa以上であり、5.0GPa以上であることが好ましく、6.5GPa以上であることがより好ましい。この値以上であれは、光学材料としての使用に耐えるからである。上限値は、特に限定されないが、例えば25.0GPa以下であり、または20.0GPa以下である。
本発明のシートにおいてこのように、製造の際のシワ・割れの発生が抑えられており、かつ引張特性に優れるのは、次の要因によると考えられる。シート化の際には、イオン性置換基に対して適切な有機イオンを対イオンとして付与した上で(シート化の際の乾燥工程において観られるイオン性置換基による微細繊維の凝集が防止できる)、シート化後にはシートの強度に影響を与える懸念がある有機イオンを適切な程度にまで低減している。
また、本発明者らによれば、微細繊維の製造条件や、微細繊維上のイオン性置換基の種類、場合によりその量、シートに含有される有機イオンの種類、場合によりその量などをそれぞれ適切に選択されていることも、シワ・割れを抑制しつつ引張特性を向上させることに寄与しているものと推定されている。これらは、シートの密度、全光線透過率、ヘーズ、黄色度変化などにも影響を与えるものであると考えられている。
<黄色度変化>
シートの黄変度変化(ΔYI)は、次式で表される
ΔYI = YI2−YI1
但し、YI1は200℃で4時間の真空乾燥前の黄色度、YI2は200℃で4時間の真空乾燥後の黄色度を示す。黄色度は、JIS規格K7373に準拠して測定した値をいう。本発明のシートは、黄変度変化(ΔYI)が抑えられている。本発明のシートの黄変度変化(ΔYI)は、例えば75.0以下である。
好ましい態様においては、後述するようにシート含有される有機イオンを低減するに際してイオン性置換基ごと脱離する方法が採用される。この場合、黄色度変化(ΔYI)は、50.0以下であり、より好ましくは7.0以下であり、さらに好ましくは5.0以下である。好ましい態様においてこのように黄色度変化が抑制されているのは、有機イオンやイオン性置換基の脱離により、シートの加熱による黄変がより抑制されるからである。またイオン性置換基がリン酸由来の基である場合、有機イオンの低減をリン酸由来の基ごと脱離することで達成すると、リン酸由来の基による高温下でのチャー形成が低減されるからである。
2.シートの製造方法
本発明のシートの製造方法は、
(1)繊維原料にイオン性置換基を導入して、イオン性置換基導入繊維を得る工程と、
(2)イオン性置換基導入繊維を微細化処理して、イオン性置換基導入微細繊維を得る工程とを含み、さらに
工程(2)の前または後に、
・イオン性置換基を有機イオンで処理する工程と
を含み、さらに
(3)有機イオンで処理されたイオン性置換基導入微細繊維から、シートを調製する工程と、
(4)シートに含有される有機イオンを低減する工程と
を含む。
[工程(1):繊維原料にイオン性置換基を導入して、イオン性置換基導入繊維を得る工程]
<繊維原料>
イオン性置換基を有する微細繊維は、繊維原料にイオン性置換基を導入し、微細化処理をすることにより得られる。工程(1)で用いられる繊維原料は、豊富に入手可能な天然繊維であり、好ましくはセルロース、キチンまたはキトサンであり、より好ましくはセルロースである。繊維原料としては、入手しやすく安価である点から、パルプを用いることが好ましい。パルプの中では、入手のしやすさという点で、セルロースを含む木材パルプが好ましい。木材パルプの中でも化学パルプはセルロース比率が大きいため、繊維微細化時の微細セルロース繊維の収率が高く、また、パルプ中のセルロースの分解が小さく、軸比の大きい長繊維の微細セルロース繊維が得られる点で好ましいが、特に限定されない。中でもクラフトパルプ、サルファイトパルプが最も好ましく選択されるが、特に限定されない。
<イオン性置換基の導入>
繊維原料には、イオン性置換基が導入される。繊維への置換基を導入する方法は、特に限定されないが、例えば、酸化処理、繊維中の官能基と共有結合を形成し得る化合物による処理などが挙げられる。酸化処理とは、繊維中のヒドロキシ基をアルデヒド基やカルボキシ基に変換する処理であり、例えばTEMPO酸化処理や各種酸化剤(亜塩素酸ナトリウム、オゾンなど)を用いた処理が挙げられる。
酸化処理の一例としては、Biomacromolecules 8、2485−2491、2007(Saitoら)に記載されている方法を挙げることができるが、特に限定されない。
繊維中の官能基と共有結合を形成し得る化合物による処理は、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料に、該繊維原料と反応するような化合物を混合することにより、繊維原料に上記置換基を導入することにより実施できる。導入時の反応を促進するため、加熱する方法が特に有効である。置換基の導入における加熱処理温度は特に限定されないが、該繊維原料の熱分解や加水分解等が起こりにくい温度帯であることが好ましい。例えば、繊維の熱分解温度の観点から、250℃以下であることが好ましく、繊維の加水分解を抑える観点から、100〜170℃で加熱処理することが好ましい。
繊維原料と反応する化合物としては、微細繊維を得ることができ、かつイオン性置換基を導入するものである限り、特に限定されない。
繊維原料と反応するような化合物として、リン酸由来の基を有する化合物を用いる場合、特に限定されないが、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ポリホスホン酸あるいはこれらの塩またはエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種である。これらの中でも、低コストであり、扱いやすく、また、繊維原料にリン酸由来の基を導入して微細化(解繊)効率をより向上できることから、リン酸由来の基を有する化合物が好ましいが、特に限定されない。
リン酸由来の基を有する化合物としては特に限定されないが、リン酸、リン酸のリチウム塩であるリン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウム、ピロリン酸リチウム、ポリリン酸リチウムが挙げられる。更にリン酸のナトリウム塩であるリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウムが挙げられる。更にリン酸のカリウム塩であるリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、ポリリン酸カリウムが挙げられる。更にリン酸のアンモニウム塩であるリン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。
これらのうち、リン酸由来の基の導入の効率が高く、工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましく、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムがより好ましいが、特に限定されない。
また、反応の均一性およびリン酸由来の基の導入効率が高いことから化合物は水溶液として用いることが好ましいが、特に限定されない。化合物の水溶液のpHは特に限定されないが、リン酸由来の基の導入の効率が高いことから7以下であることが好ましい。繊維の加水分解を抑える観点からpH3〜7がより好ましいが、特に限定されない。
本実施形態においては、例えばリン酸由来の基を有する化合物を、尿素、チオ尿素、ビウレット、フェニル尿素、ベンジル尿素、ジメチル尿素、ジエチル尿素、テトラメチル尿素、ベンゾレイン尿素、およびヒダントインなどから選択される少なくとも一種とともに繊維原料と反応させることが好ましい態様として挙げられる。
繊維原料と反応するような化合物として、カルボン酸由来の基を有する化合物を用いる場合、特に限定されないが、カルボン酸由来の基を有する化合物、カルボン酸由来の基を有する化合物の酸無水物およびそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
カルボン酸由来の基を有する化合物としては特に限定されないが、マレイン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、イタコン酸等のジカルボン酸化合物やクエン酸、アコニット酸等トリカルボン酸化合物が挙げられる。
カルボン酸由来の基を有する化合物の酸無水物としては特に限定されないが、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸化合物の酸無水物が挙げられる。
カルボン酸由来の基を有する化合物の誘導体としては特に限定されないが、カルボン酸由来の基を有する化合物の酸無水物のイミド化物、カルボン酸由来の基を有する化合物の酸無水物の誘導体が挙げられる。カルボン酸由来の基を有する化合物の酸無水物のイミド化物としては特に限定されないが、マレイミド、コハク酸イミド、フタル酸イミド等のジカルボン酸化合物のイミド化物が挙げられる。
カルボン酸由来の基を有する化合物の酸無水物の誘導体としては特に限定されない。例えば、ジメチルマレイン酸無水物、ジエチルマレイン酸無水物、ジフェニルマレイン酸無水物等の、カルボン酸由来の基を有する化合物の酸無水物の少なくとも一部の水素原子が置換基(例えば、アルキル基、フェニル基等)で置換されたものが挙げられる。
上記カルボン酸由来の基を有する化合物のうち、工業的に適用しやすく、ガス化しやすいことから、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸が好ましいが、特に限定されない。
繊維原料と反応するような化合物として、硫酸由来の基を有する化合物を用いる場合、特に限定されないが、無水硫酸、硫酸ならびにこれらの塩およびエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種である。これらの中でも、低コストであり、また、繊維原料に硫酸基を導入して微細化(解繊)効率をより向上できることから、硫酸が好ましいが、特に限定されない。
繊維原料に置換基が導入されていることにより溶液中における繊維の分散性が向上し、微細化(解繊)効率を高めることができる。
イオン性置換基の導入量は、十分な微細化が行える限り特に限定されないが、後述するように、シートとしての置換基導入量を考慮して、決定することができる。本発明のシートが、アニオン性置換基を有する微細繊維を含有する場合、置換基の導入量(滴定法による。)は、繊維1g(質量)あたり0.005α〜0.11αが好ましく、0.01α〜0.08αがより好ましい。置換基の導入量が0.005α以上であれば、繊維原料の微細化(解繊)が容易になり、置換基の導入量が0.11α以下であれば、繊維の溶解が抑制できる。ただし、αは繊維材料と反応する化合物が反応しうる官能基、例えばヒドロキシ基やアミノ基が繊維材料1gあたりに含まれる量(単位:mmol/g)である。
なお、繊維表面の置換基の導入量(滴定法)の測定は、特に記載した場合を除き、次の方法で行うことができる:
絶乾質量で0.04g程度の固形分を含む微細繊維含有スラリーを分取し、イオン交換水を用いて50g程度に希釈する。この溶液を撹拌しながら、0.01Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下した場合の電気伝導度の値の変化を測定し、その値が極小となる時の0.01N水酸化ナトリウム水溶液の滴下量を、滴定終点における滴下量とする。セルロース表面の置換基の含有量XはX(mmol/g)=0.01(mol/l)×V(ml)/W(g)で表される。ここで、V:0.01N水酸化ナトリウム水溶液の滴下量(ml)、W:微細セルロース繊維含有スラリーが含む固形分(g)である。
導入されている置換基が、リン酸由来の基、カルボン酸由来の基および硫酸由来の基からなる群より選択される少なくとも1種である場合、置換基導入量は、特に限定されないが、0.001〜5.0mmol/gとすることができる。0.05〜4.0mmol/gとしてもよく、0.1〜2.0mmol/gとしてもよい。
カチオン性置換基は、例えば繊維原料にカチオン化剤およびアルカリ化合物を添加して反応させることにより、繊維原料に導入することができる。カチオン化剤としては、4級アンモニウム基と、セルロースのヒドロキシ基と反応する基とを有するものを用いることができる。セルロースのヒドロキシ基と反応する基としては、エポキシ基、ハロヒドリンの構造を有する官能基、ビニル基、ハロゲン基等が挙げられる。
カチオン化剤の具体例としては、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドなどのグリシジルトリアルキルアンモニウムハライド或いはそのハロヒドリン型の化合物が挙げられる。
カチオン化工程に使用するアルカリ化合物は、カチオン化反応の促進に寄与するものである。アルカリ化合物は、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。
無機アルカリ化合物としては、アルカリ金属の水酸化物またはアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩またはアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属のリン酸塩またはアルカリ土類金属のリン酸塩が挙げられる。
アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。アルカリ土類金属の水酸化物としては、水酸化カルシウムが挙げられる。
アルカリ金属の炭酸塩としては炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムが挙げられる。アルカリ土類金属の炭酸塩としては、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
アルカリ金属のリン酸塩としては、リン酸リチウム、リン酸カリウム、リン酸3ナトリウム、リン酸水素2ナトリウムなどが挙げられる。アルカリ土類金属のリン酸塩としては、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウムなどが挙げられる。
有機アルカリ化合物としては、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、脂肪族アンモニウム、芳香族アンモニウム、複素環式化合物およびその水酸化物、炭酸塩、リン酸塩等が挙げられる。例えば、アンモニア、ヒドラジン、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、シクロヘキシルアミン、アニリン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム等が挙げられる。
上記アルカリ化合物は1種単独でもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
上記アルカリ化合物の中でも、カチオン化反応がより起こりやすくなり、且つ、低コストであることから、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。アルカリ化合物の量はアルカリ化合物の種類に応じて異なるが、例えば、パルプ絶乾質量に対して1〜10質量%の範囲内とされる。
カチオン化剤およびアルカリ化合物は、パルプに容易に添加できることから、溶液化することが好ましい。溶液化する場合に使用する溶媒としては水または有機溶媒のいずれであってもよいが、極性溶媒(水、アルコール等の極性有機溶媒)が好ましく、少なくとも水を含む水系溶媒がより好ましい。
本製造方法では、カチオン化反応開始時のパルプ絶乾質量1gあたりの溶媒物質量を5〜150mmolにすることが好ましい。該溶媒の物質量は、5〜80mmolにすることがより好ましく、5〜60mmolにすることがさらに好ましい。カチオン化反応時のパルプの含有量を前記範囲にするためには、例えば、含有量が高い(すなわち、水分が少ない)パルプを用いればよい。また、カチオン化剤およびアルカリ化合物の溶液に含まれる溶媒量を少なくすることが好ましい。
カチオン化工程における反応温度は、20〜200℃の範囲内であることが好ましく、40〜100℃の範囲内であることがより好ましい。反応温度が前記下限値以上であれば、充分な反応性が得られ、前記上限値以下であれば、反応を容易に制御できる。また、反応後のパルプの着色を抑える効果もある。カチオン化反応の時間は、パルプやカチオン化剤の種類、パルプ含有量、反応温度等によって異なるが、通常、0.5〜3時間の範囲内である。
カチオン化反応は密閉系で行ってもよいし、開放系で行っても構わない。また、反応中に溶媒を蒸散させ、反応終了時のパルプ絶乾質量1gあたりの溶媒物質量が反応開始時に比べて低くなっても構わない。
繊維原料に置換基を導入することにより溶液中における繊維の分散性が向上し、解繊効率を高めることができる。
<酸処理または塩基処理>
必要に応じ、繊維原料にイオン性置換基を導入して、イオン性置換基導入繊維を得る工程の後であって、イオン性置換基を有機イオンで処理する工程の前に、アニオン性置換基を有する繊維に対しては酸処理を、カチオン性置換基を有する繊維に対しては塩基処理を行うことができる。酸処理に用いられる酸は、導入されたアニオン性置換基以上の電離度を有する酸を用いることが好ましいが、特に限定されない。酸処理は、例えば、塩酸、硝酸および硫酸からなる群より選択される1種または2種以上を用いて行うことができる。また塩基処理に用いられる塩基は、導入されたカチオン性置換基以上の電離度を有する塩基を用いることが好ましいが、特に限定されない。塩基処理は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウムおよび水酸化カルシウムからなる群より選択される1種または2種以上を用いて行うことができる。このような処理より、導入されたイオン性置換基が十分にH型またはOH型となり、有機イオンを、イオン性置換基に対してより容易に付加させることが可能となる。
酸処理または塩基処理の方法は、例えば、酸溶液または塩基溶液中に、イオン性置換基導入繊維を浸漬することにより実施できる。酸溶液または塩基溶液における溶媒は、水および有機溶媒の少なくとも一方を用いることができる。極性のあるもの(水、アルコール等の極性有機溶剤)が好ましく、水を含む水系溶媒がより好ましい。酸溶液の特に好ましい例は塩酸であり、塩基溶液の特に好ましい例は水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液である。
酸処理の場合、酸溶液の25℃におけるpHは、適宜とすることができるが、4以下であることが好ましく、3.5以下であることがより好ましく、3以下であることがさらに好ましい。塩基処理の場合、塩基溶液の25℃におけるpHは、適宜とすることができるが、9以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、11以上であることがさらに好ましい。
酸または塩基の使用量を減らすために、酸処理または塩基処理工程の前に、イオン性置換基を有する繊維を洗浄してもよい。洗浄には、水および有機溶剤の少なくとも一方を用いることができる。また、酸処理または塩基処理後に、処理済みのイオン性置換基を有する繊維を、水および有機溶剤の少なくとも一方で洗浄してもよい。いずれの場合も、洗浄操作は繰り返し行うことができる。
[工程(2):イオン性置換基導入繊維を微細化処理して、イオン性置換基導入微細繊維を得る工程]
微細化(解繊)処理に際し、繊維は溶媒に分散される。溶媒の種類は、微細化(解繊ということもある。)処理が適切に行える限り特に限定されないが、水系溶媒(水、または水と有機溶媒を混合したもの)を使用することができる。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tブチルアルコール等のアルコール類が挙げられる。さらにアセトン、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF),ジメチルアセトアミド(DMAc)等が挙げられる。有機溶媒は、1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
分散濃度は、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましい。含有量が前記下限値以上であれば、処理の効率が向上し、前記上限値以下であれば、解繊処理装置内での閉塞を防止できるからである。
解繊処理装置としては特に限定されない。例えば、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、クレアミックス、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナーが挙げられる。また、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、ビーター等、湿式粉砕する装置等を適宜使用することができる。
微細化処理は、所望の平均繊維径の繊維が得られるまで行う。微細化処理により、微細繊維の分散液(スラリー)が得られる。得られた微細繊維の分散液は、繊維幅が1000nmを超える繊維を含んでいてもよいが、繊維幅が1000nmを超える繊維を含まないほうが好ましい。ここでの微細繊維の濃度は、例えば0.1〜20質量%であり、また0.5〜10質量%であり得る。
[イオン性置換基を有機イオンで処理する工程]
本発明では、工程(3)の前に、イオン性置換基を有機イオンで処理する。
この工程は、工程(2)の微細化処理の前に行ってもよい。具体的には、微細化処理前の繊維の分散液に、有機イオンを投入する。この態様は、有機イオンの洗浄負荷が低く、洗浄により余剰の有機イオンを十分に除去できるという利点がある。また、余剰の有機イオンが十分に除去できることから、得られるシートの透明性がより高くなるというメリットがある。
この工程は、工程(2)の微細化処理の後に行うこともできる。具体的には微細化処理後の微細繊維の分散液に、有機イオンを投入する。この態様により、多種類の微細有機イオンを導入することができる。
有機イオンによる処理の方法は、繊維のイオン性置換基と有機イオンとがイオン対を形成可能であれば、特に限定されない。典型的には、微細化処理前の繊維または微細繊維の分散液に、有機イオン源である化合物の水溶液を添加することにより行われる。用いる水溶液の濃度は、化合物の水への溶解性にも拠るが、0.1質量%以上とすることができ、1.0質量%以上であることが好ましく、5.0質量%以上であることがより好ましい。上限値は、経済的な観点から定めてもよいが、シートの透明性を確保するとの観点からは、40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましい。使用される有機イオンの量は、シートに導入されているイオン性置換基の多くとイオン対を形成可能な量であることが好ましい。例えば、導入置換基が有するイオン性置換基の、少なくとも50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上がイオン対を形成可能な量で、用いることができる。
有機イオンによる処理の後、必要に応じ、洗浄を行うことができる。洗浄は、水または水系溶媒、好ましくは水で行うことができる。
有機イオンでの処理により、有機イオンと繊維上のイオン性置換基とがイオン対を形成し、シート形成時の微細繊維の凝集が抑制されると考えられる。それにより、シートのシワ・割れの発生が抑えられると考えられる。さらに、シートの乾燥を、より高温・短時間で行うことができると考えられる。
[工程(3):有機イオンで処理されたイオン性置換基導入微細繊維からシートを調製する工程]
微細化処理により得られた微細繊維の分散液(スラリー)から、シートを調製する。シートの調製方法は、特に限定されないが、典型的には下記の抄紙法、塗工法等に拠ることができる。
<抄紙法>
微細繊維含有スラリーを通常の抄紙で用いられる長網式、円網式、傾斜式等の連続抄紙機のほか、これらを組み合わせた多層抄き合わせ抄紙機、さらに手抄き等公知の抄紙方法で抄紙され、一般の紙と同様の方法でシート化することが可能である。つまり、微細繊維含有スラリーをワイヤー上で濾過、脱水して湿紙状態のシートを得た後、プレス、乾燥することでシートを得ることが可能である。スラリーの濃度は特に限定されないが、0.05〜5質量%が好ましく、濃度が低すぎると濾過に膨大な時間がかかり、逆に濃度が高すぎると均一なシートが得られないため好ましくない。スラリーを濾過、脱水する場合、濾過時の濾布としては特に限定されないが、微細繊維は通過せず、かつ濾過速度が遅くなりすぎないことが重要である。このような濾布としては特に限定されないが、有機ポリマーからなるシート、織物、多孔膜が好ましい。有機ポリマーとしては特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のような非セルロース系の有機ポリマーが好ましい。具体的には孔径0.1〜20μm、例えば1μmのポリテトラフルオロエチレンの多孔膜、孔径0.1〜20μm、例えば1μmのポリエチレンテレフタレートやポリエチレンの織物等が挙げられるが、特に限定されない。
<塗工法>
塗工法は、微細繊維含有スラリーを基材上に塗工し、これを乾燥して形成された微細繊維含有層を基材から剥離することにより、シートを得る方法である。塗工装置と長尺の基材を用いることで、シートを連続的に生産することができる。基材の質は、特に限定されないが、微細繊維含有スラリーに対する濡れ性が高いものの方が乾燥時のシートの収縮等を抑制することができて良いが、乾燥後に形成されたシートが容易に剥離できるものを選択することが好ましい。中でも樹脂板または金属板が好ましいが、特に限定されない。その中で、適当なものを単独、または積層して使用するのが好適である。例えばアクリル板、ポリエチレンテレフタレート板、塩化ビニル板、ポリスチレン板、ポリ塩化ビニリデン板等の樹脂板や、アルミ板、亜鉛版、銅版、鉄板等の金属板および、それらの表面を酸化処理したもの、ステンレス板、真ちゅう板等を用いることができるが、特に限定されない。微細繊維含有スラリーを基材上に塗工するには、上記基材に所定のスラリー量を塗工することが可能な各種コーターを使用すれば良い。特に限定されないが、例えば、ロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター等が使用できるが、中でもダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、エアドクターコーター等の塗工方式によるものが均一な塗工には有効である。なお後述するように、シートを積層体とする場合等においては、基材からの剥離は行わなくてもよい場合がある。
<シート厚み>
調製されるシートの厚みには特に限定されず、用途に応じて適宜とすることができ、シートの仕上がり坪量または厚さに基づき、スラリー量を計量して、抄紙または塗工等を行うことができる。
<脱水、乾燥>
抄紙または塗工等された後、必要に応じ、脱水および乾燥の少なくとも一方が行われ、シート化される。なお、脱水、乾燥は、後の工程(4)で、有機イオンを低減するために、所定の水溶液での処理が行われることから、ある程度まで水分が除去されるまで行うことができ、通常の最終物としてのシートを得る場合のようにまで完全には行わなくてもよいと考えられる。脱水方法としては特に限定されないが、紙の製造で通常に使用している脱水方法が挙げられ、長網、円網、傾斜ワイヤーなどで脱水した後、ロールプレスで脱水する方法が好ましい。また、乾燥方法としては特に限定されないが、紙の製造で用いられている方法が挙げられ、例えば、シリンダードライヤー、ヤンキードライヤー、熱風乾燥、赤外線ヒーターなどの方法が好ましい。
乾燥方法としては、特に限定されないが、非接触の乾燥方法でも、シートを拘束しながら乾燥する方法の何れでもよく、これらを組み合わせてもよい。
非接触の乾燥方法としては、特に限定されないが、熱風、赤外線、遠赤外線または近赤外線により加熱して乾燥する方法(加熱乾燥法)、真空にして乾燥する方法(真空乾燥法)を適用することができる。加熱乾燥法と真空乾燥法を組み合わせてもよいが、通常は、加熱乾燥法が適用される。赤外線、遠赤外線または近赤外線による乾燥は、赤外線装置、遠赤外線装置または近赤外線装置を用いて行うことができるが、特に限定されない。加熱乾燥法における加熱温度は特に限定されないが、40〜120℃とすることが好ましく、40〜105℃とすることがより好ましい。加熱温度を前記下限値以上とすれば、分散媒を速やかに揮発させることができ、前記上限値以下であれば、加熱に要するコストの抑制および微細繊維の熱による変色を抑制できる。
(他の繊維)
シートの調製に際し、特に限定されないが、前記微細繊維と前記微細繊維以外の繊維(以下、「追加繊維」という)を少なくとも1種以上混合して調製することもできる。追加繊維としては、例えば、無機繊維、有機繊維、合成繊維等、半合成繊維、再生繊維が挙げられるが、特に限定されない。無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、岩石繊維、金属繊維等が挙げられるがこれらに限定されない。有機繊維としては、例えば、セルロース、炭素繊維、パルプ、キチン、キトサン等の天然物由来の繊維等が挙げられるがこれらに限定されない。合成繊維としては、例えば、ナイロン、ビニロン、ビニリデン、ポリエステル、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリウレタン、アクリル、ポリ塩化ビニル、アラミド等が挙げられるがこれらに限定されない。半合成繊維としては、アセテート、トリアセテート、プロミックス等が挙げられるがこれらに限定されない。再生繊維としては、例えば、レーヨン、キュプラ、ポリノジックレーヨン、リヨセル、テンセル等が挙げられるがこれらに限定されない。追加繊維は、必要に応じて化学的処理、解繊処理等の処理を施すことができる。
混合は、特に限定されないが、例えば抄紙、または塗工前において、微細繊維含有スラリーに他の繊維を添加することによって行うことができる。追加繊維に化学的処理、解繊処理等の処理を施す場合、微細繊維と混合してから化学的処理、解繊処理等の処理を施すこともできるし、追加繊維に化学的処理、解繊処理等の処理を施してから微細繊維と混合することもできる。同程度の平均繊維径を有するもの同士の混合は、均一に混合することがより容易となる点で好ましい。
追加繊維を混合する場合、微細繊維と追加繊維の合計量における追加繊維の添加量は特に限定されないが、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である。特に好ましくは20質量%以下である。
また、シートの調製に際し、親水性高分子を添加してもよい。親水性高分子としては、例えば、ポリエチレングリコール、セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース,カルボキシエチルセルロース,カルボキシメチルセルロース等)、カゼイン、デキストリン、澱粉、変性澱粉、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール(アセトアセチル化ポリビニルアルコール等)、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸塩類、ポリアクリルアミド、アクリル酸アルキルエステル共重合体、ウレタン系共重合体などを挙げることができるが、特に限定されない。
また親水性高分子の代わりに親水性の低分子化合物を用いることもできる。親水性の低分子化合物としては、グリセリン、エリトリトール、キシリトール、ソルビトール、ガラクチトール、マンニトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコールなどを挙げることができるが、特に限定されない。
親水性高分子、または親水性の低分子化合物の混合は、特に限定されないが、例えば抄紙、または塗工前において、微細繊維含有スラリーに親水性高分子、または親水性の低分子化合物を添加することによって行うことができる。親水性高分子、または親水性の低分子化合物を添加する場合の添加量は、微細繊維の固形分100質量部に対し好ましくは1から200質量部、より好ましくは1から150質量部、さらに好ましくは2から120質量部、特に好ましくは3から100質量部であるが、特に限定されない。
[工程(4):シートに含有される有機イオンを低減する工程]
本発明においては、工程(3)の後に、シートに含有される有機イオンを低減する工程を含む。有機イオンを低減する方法は、所望の程度まで有機イオンを低減できる限り、特に限定されない。例えば、有機イオンとイオン対を形成しているイオン性置換基ごと脱離させる方法(イオン性置換基の脱離)により、または有機イオンを別のイオンに交換する方法(対イオン交換)により、行うことができる。
<イオン性置換基の脱離>
導入されたイオン性置換基の全部または一部を脱離させることにより、シートから有機イオンを除去することができる。脱離は、工程(3)で得られたシートを水およびアルコールの少なくとも一方で処理することにより行うことができる。アルコールには、多価アルコールが含まれ、多価アルコールを用いる場合、脱離は、シートを多価アルコールで煮沸することで達成でき、またシートを多価アルコールの蒸気で処理することでも達成できる。水および沸点の低いアルコールの少なくとも一方を用いる場合、脱離は、シートを多価アルコール蒸気で処理することで達成できる。
(多価アルコール煮沸法)
本発明の好ましい態様の一つにおいては、工程(4)で置換基を脱離させるに際しては、シートを多価アルコールにより煮沸処理する。多価アルコールとは、アルコールのうち2以上のOH基を有するものをいう。多価アルコールを用いる場合、OH/C比率が0.15以上のものを用いることが好ましい。より好ましくは0.2以上であるものを用いる。「OH/C比率」とは、分子に含まれる炭素(C)原子あたりのOH基の個数をいい、例えば、エチレングリコール(C262)のOH/C比率は1であり、ジエチレングリコール(C4103)のOH/C比率は0.67である。
多価アルコールであってOH/C比率が0.2以上であるものの例は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、グリセリン(グリセロール、1,2,3−プロパントリオール)、ペンタンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、糖アルコール(例えば、ソルビトール、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、キシリトール)が挙げられる。
多価アルコールにより煮沸処理する場合の工程(4)における多価アルコールの使用量は、置換基の脱離を十分に行うことができる限り特に限定されないが、シート質量に基づき、適宜決定することができる。いずれのアルコールを用いる場合も、例えば、シート1質量部に対し、アルコール1〜100質量部を用いることができる。シート1質量部に対するアルコールの使用量が1質量部より少ないと、脱離を十分に行うことができない場合がある。
煮沸処理の温度は、置換基の脱離を十分に行うことができる限り特に限定されないが、140℃以上とすることができ、160℃以上が好ましく、170℃以上がより好ましい。ただし、繊維原料の分解が抑えられる温度を選択することが好ましく、特に限定されないが、例えば繊維原料としてセルロースを用いた場合は250℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。また、加熱の際には適宜、酸または塩基などの添加剤を加えてもよい。
煮沸処理の時間は、置換基の脱離を十分に行うことができる限り特に限定されないが、例えばアルコールとしてOH/C比率が1の多価アルコールであるグリセリンを用い、180℃で実施する場合は、10〜120分とすることができ、15〜90分が好ましく、15〜60分がより好ましい。他のアルコールを用いた場合も同様とすることができる。
(蒸気法)
工程(4)で置換基を脱離させるに際しては、蒸気を使用してもよい。蒸気の種類は、特に限定されず、OH基を有する物質の蒸気であれは、導入した置換基の脱離を行うことができると考えられる。置換基を脱離する能力が高いという観点からは、蒸気は、水蒸気およびアルコール蒸気の少なくとも一方であることが好ましい。アルコールの例として、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、およびt−ブタノール、ならびに上述の多価アルコールを挙げることができる。特に好ましい蒸気の例の一つは、水蒸気である。水蒸気は、水やメタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコール、好ましくは炭素数1以上6以下、より好ましくは炭素数1以上3以下のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の炭素数3以上6以下のケトン;直鎖または分岐状の炭素数1以上6以下の飽和炭化水素または不飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素を含んでいてもよい。
工程(4)における蒸気による処理は、特に限定されないが、シートを、加圧蒸気(加圧された飽和蒸気)または過熱蒸気に接触させることにより、実施することができる。
加圧蒸気による処理は、例えば従来技術のオートクレーブを使用することができる。一般的なオートクレーブは、例えば円筒状の容器と該容器の上面開口を開閉する蓋とを有し、蓋には排気口、温度計、圧力計が設置され、容器の底部には排水バルブが設置されている。そして、このオートクレーブを使用するときは、先ず、排水バルブを閉めた状態で、容器内に水を入れ、さらに、容器内の水の上方にシートを設置し、蓋を閉める。その後、排気口を開け、容器を加熱していくと、当初は排気口から容器内の空気が出てくるが、次第に湯気が噴き出すようになる。容器内に水蒸気が充満した段階で、排気口を閉じ、その後、温度と圧力を調整しながら加熱を続ける。所定時間が経過した段階で、加熱を止め、冷却後、容器内のシートを取り出す。
工程(4)における加圧蒸気による処理は、例えば100℃〜250℃の温度範囲内で実施することができる。処理効率の観点から、100℃以上とすることができ、好ましくは120℃以上であり、より好ましくは140℃以上である。また、シートの着色防止の観点から、250℃以下とすることができ、好ましくは200℃以下であり、より好ましくは180℃以下である。
工程(4)における加圧蒸気による処理圧力は、好ましくは0.1MPa以上であり、より好ましくは0.5MPa以上であり、さらに好ましくは0.8MPa以上である。いずれの場合も、好ましくは30MPa以下であり、より好ましくは25MPa以下であり、さらに好ましくは20MPa以下であり、さらに好ましくは18MPa以下である。
工程(4)における加圧蒸気による処理時間は、温度および圧力にも拠るが、所望の脱離が達成できるまで行うことができる。例えば、5分以上であり、好ましくは10分以上であり、より好ましくは30分以上である。いずれの場合も、処理時間は24時間以下とすることができ、好ましくは10時間以下とすることができ、さらに好ましくは3時間以下とすることができる。なお、処理時間とは、加熱温度に到達した時刻を0時間として、当該加熱温度を維持している時間を表すこととする。
過熱蒸気による処理は、例えばシートに過熱蒸気を吹きつけることにより行うことができる。過熱蒸気は、例えば、供給量が500g/m3〜600g/m3の範囲でノズルからシートに吹き付けられる。過熱蒸気の温度は、例えば1気圧で100℃〜160℃に制御することができる。この場合、過熱蒸気の供給時間は、4秒〜120秒とすることができ
る。
<対イオン交換>
有機イオンは、適切な他のイオンとの対イオン交換により、シートから有機イオンを除去することができる。イオン性置換基がアニオン性である場合、交換される対イオンは、特に限定されないが、例えば水素イオン、アルカリ金属イオン、またはアルカリ土類金属イオンである。より具体的には、水素イオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、ユウロピウムイオン、タリウムイオンまたはグアニジンイオンである。好ましい例は、ナトリウムイオン、カリウムイオンまたはカルシウムイオンである。イオン性置換基がカチオン性である場合、交換される対イオンは、特に限定されないが、例えばハロゲン化物イオン、またはアニオン性の多原子イオンである。より具体的には、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ素化物イオン、水酸化物イオン、シアン化物イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、リン酸二水素イオン、炭酸水素イオンである。好ましい例は、フッ化物イオン、塩化物イオンである。
対イオン交換を行う前に、アニオン性置換基を有する繊維に対しては酸処理を、カチオン性置換基を有する繊維に対しては塩基処理を行うことができる。酸処理に用いられる酸は、アニオン性置換基以上の電離度を有する酸を用いることが好ましいが、特に限定されない。酸処理は、例えば、塩酸、硝酸および硫酸からなる群より選択される1種または2種以上を用いて行うことができる。また塩基処理に用いられる塩基は、カチオン性置換基以上の電離度を有する塩基を用いることが好ましいが、特に限定されない。塩基処理は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウムおよび水酸化カルシウムからなる群より選択される1種または2種以上を用いて行うことができる。このような処理より、イオン性置換基が十分にH型またはOH型となり、有機イオンに替わる対イオンを、イオン性置換基に対してより容易に付加させることが可能となる。酸処理または塩基処理の方法および条件は、上述の工程(1)における酸処理または塩基処理を参考にすることができる。
<シート化>
工程(4)は、所望の程度にまで有機イオンが低減されるまで行うことができる。イオン交換による処理の後、必要に応じ、洗浄、脱水・乾燥を行い、最終物としてのシートを得ることができる。洗浄は、水または水系溶媒、好ましくは水で行うことができる。脱水・乾燥は、工程(3)の項で説明した方法および条件で行うことができる。
本発明においては有機イオンによるシート化の際のシートのシワ・割れの発生を抑制できるとの利点を維持しつつ、シート化後にシートの強度に影響を与えるうる有機イオンを適切な程度にまで低減するので、強度においても優れたシートが製造できる。また、有機イオンが低減されていることにより、高温処理による着色が抑制される。
3.シートの積層化、用途、その他
本発明のシートは、シート一層からなるものとして使用することもできるが、少なくとも一方の面に、有機層および無機層の少なくとも一方を形成し、積層体として用いることもできる。積層化により、水に対する耐性(耐水性、耐湿性、撥水性)をさらに付与することができる。無機層と有機層とを積層する場合、順番は特に限定されないが、基材シートの表面にまず有機層を積層することは、無機層を形成するための面を平滑にし、形成される無機層をより欠陥の少ないものとすることができる点で好ましい。また、有機層および無機層以外の他の構成層、例えば、上層の接着を容易にするための易接着層を含んでいてもよい。積層化に際しては、透明性が特に重視される用途に用いる場合は、シートの黄変を促進するような加熱工程やUV照射工程を含まないことが好ましい。積層化によって得られる積層体は、微細繊維含有シートからなる基材シート層の少なくとも一方の側に形成された、少なくとも1層の無機層と少なくとも1層の有機層とを含むことが好ましい。無機層、有機層等の層数は特に限定されない。フレキシブル性や透明性を維持しつつ、耐湿性を十分にするとの観点からは、片側について、例えば、無機層と有機層とを交互に2層〜15層積層することが好ましく、3層〜7層積層することがより好ましい。
無機層を構成する物質としては、特に限定されないが、例えばアルミニウム、ケイ素、マグネシウム、亜鉛、錫、ニッケル、チタン;これらの酸化物、炭化物、窒化物、酸化炭化物、酸化窒化物、もしくは酸化炭化窒化物;またはこれらの混合物が挙げられる。高い防湿性が安定に維持できるとの観点からは、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化炭化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化炭化窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化炭化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、またはこれらの混合物が好ましい。
有機層の形成のために用いられる樹脂としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂、シルセスキオキサン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、珪素樹脂、ポリウレタン樹脂、シルセスキオキサン樹脂、またはジアリルフタレート樹脂等が挙げられる。低吸水性の積層体を得るためには、樹脂は、ヒドロキシ基、カルボキシル基、またはアミノ基などの親水性の官能基が少ないことが好ましい。
本発明のシートおよび積層体は、透明性に優れ、かつ強度を有するため、軽量等の特性を生かして、食品、化粧品、医薬品、パソコン、家電等の包装材料として用いるのに適している。
また好ましい態様により提供されるシートおよび積層体は、黄変が抑えられ、光学特性に優れるため、表示素子、照明素子、太陽電池もしくは窓材、またはこれらのためのパネルもしくは基板として用いるのに適している。より具体的には、シートおよび積層体は、フレキシブルディスプレイ、タッチパネル、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイ、LED素子として用いるのに適している。
さらにシートおよび積層体は、シリコン系太陽電池、色素増感太陽電池などの太陽電池用基板として用いるのに適している。基板としての用途において、バリア膜、ITO、TFT等と積層してもよい。また、自動車、鉄道車両、航空機、住宅、オフィスビル、工場等の窓材として用いるのに適している。窓材としては、必要に応じてフッ素皮膜、ハードコート膜等の膜や耐衝撃性、耐光性の素材を積層してもよい。
シートおよび積層体は、低線膨張率、高弾性、高強度、軽量等の特性を生かして、透明材料用途以外の構造材としても用いることができる。特に、グレージング、内装材、外板、バンパー等の自動車、鉄道車両、航空機の材料、パソコンの筐体、家電部品、包装用資材、建築資材、土木資材、水産資材、その他工業用資材等として好適に用いることができる。
シートおよび積層体は、種々の製品に用いることができる。製品の例としては、上述の表示素子またはディスプレイを用いたコンピュータ、タブレット端末、携帯電話機;照明素子を利用した、電球、照明(照明器具・照明装置)、誘導灯、液晶パネル用バックライト、懐中電灯、自転車用前照灯、自動車車内灯およびメーターランプ、交通信号機、建物内外の高所照明、家庭用照明、学校用照明、医療用照明、工場用照明、植物育成用ライト、映像ライティング用照明、コンビニエンスストア等の24時間または深夜営業店舗における照明、冷蔵・冷凍庫内の照明灯;窓材や構造材を用いた、家屋、ビル、自動車、鉄道車両、航空機、家電等、様々なものを挙げることができる。
以下、本発明を実施例によって説明するが、本発明の範囲は、実施例によって限定されない。
<実施例1>
[リン酸化パルプの製造]
針葉樹クラフトパルプとして、王子製紙社製のパルプ(固形分93質量% 米坪208g/m2シート状 離解してJIS P8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)700ml)を使用した。上記針葉樹クラフトパルプの絶乾質量として100質量部に、リン酸二水素アンモニウムと尿素の混合水溶液を含浸し、リン酸二水素アンモニウム49質量部、尿素130質量部となるように圧搾し、薬液含浸パルプを得た。得られた薬液含浸パルプを105℃の乾燥機で乾燥し、水分を蒸発させてプレ乾燥させた。その後、140℃に設定した送風乾燥機で、10分間加熱し、パルプ中のセルロースにリン酸由来の基を導入し、リン酸化パルプを得た。
[リン酸化パルプの洗浄]
得られたリン酸化パルプの絶乾質量として100質量部に対して10000質量部のイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返し、リン酸化パルプの脱水シートAを得た。
[複数回リン酸化]
得られたリン酸化パルプの脱水シートAを原料にし、先と同様にして、リン酸由来の基を導入する工程、濾過脱水する工程をさらに2回繰り返して(リン酸化および濾過脱水の合計回数は3回)、リン酸化パルプの脱水シートBを得た。
[導入された置換基の含有量]
該リン酸化パルプの脱水シートBは、次に示す滴定法で求められるリン酸由来の基の導入量が1.4mmol/gであった。
[置換基導入量(リン酸由来の基の導入量)の測定]
置換基導入量は、繊維原料へのリン酸由来の基の導入量であり、この値が大きいほど、多くのリン酸由来の基が導入されている。置換基導入量は、対象となる微細繊維状セルロースをイオン交換水で含有量が0.2質量%となるように希釈した後、イオン交換樹脂による処理、アルカリを用いた滴定によって測定した。イオン交換樹脂による処理では、0.2質量%セルロース繊維含有スラリーに体積で1/10の強酸性イオン交換樹脂(アンバージェット1024;オルガノ株式会社、コンディショニング済)を加え、1時間振とう処理を行った。その後、目開き90μmのメッシュ上に注ぎ、樹脂とスラリーを分離した。アルカリを用いた滴定では、イオン交換後のセルロース繊維含有スラリーに、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えながら、スラリーが示す電気伝導度の値の変化を計測した。すなわち、図1に示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して、置換基導入量(mmol/g)とした。
[リン酸化パルプの対イオン変換(H型)]
リン酸化パルプの脱水シートBの絶乾質量として100質量部に5000質量部のイオン交換水を加え、希釈した。次いで、攪拌しながら、1N塩酸を少しずつ添加し、pHが2〜3のパルプスラリーを得た。その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、再びイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた。次いで、濾過脱水して脱水シートを得る操作を繰り返すことにより、余剰の塩酸を十分に洗い流した。上記の手順により、リン酸由来の基の対イオンが水素(H)イオンとなった、リン酸化パルプ(H型)を得た。
[リン酸化パルプへの有機対イオン付与]
該リン酸化パルプ(H型)の絶乾質量として100質量部に5000質量部のイオン交換水を加え、希釈した。次いで、攪拌しながら、10質量%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を少しずつ添加し、pHが10〜12のパルプスラリーを得た。その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、再びイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた。次いで、濾過脱水して脱水シートを得る操作を繰り返すことにより、余剰のテトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を十分に洗い流した。上記の手順により、リン酸由来の基の対イオンがテトラブチルアンモニウム(TBA)イオンとなった、リン酸化パルプ(TBA型)を得た。
[機械処理]
該リン酸化パルプ(TBA型)にイオン交換水を添加して、1.0質量%のパルプ懸濁液とした。このパルプ懸濁液を、湿式微粒化装置(スギノマシン社製:アルティマイザー)で245MPaの圧力にて5回パスさせ、微細繊維状セルロース懸濁液(TBA型)を得た。
[シート化]
微細繊維状セルロース懸濁液(TBA型)の固形分濃度が0.5質量%となるよう濃度調製を行った。シートの仕上がり坪量が75g/m2になるように懸濁液を計量して、市販のアクリル板に展開し35℃、15%RHの恒温恒湿器にて乾燥した。なお、所定の坪量となるようアクリル板上には堰止用の金枠(180mm角)を配置した。以上の手順により、微細繊維状セルロースシート(TBA型)を得た。
[脱リン酸(リン酸由来の基、および対イオンの除去)]
ステンレス板の上にスペーサーとして耐熱性ゴムシート(信越化学製、X−30−4084−U)に150mm角の空隙をあけたものを載せ、穴の中にグリセリン50mLを展開した。そこに120mm角に切り出した微細繊維状セルロースシート(TBA型)を浸漬し、その上にステンレス板を重ねて、180℃に加熱した熱プレス機(井元製作所製:手動油圧真空加熱プレス)に設置した。該微細繊維状セルロースシート(TBA型)を180℃で30分間処理した後、500mLの水に浸漬して洗浄を行った。洗浄を3回繰り返し、該微細繊維状セルロースシートをガラス板に貼り付け、100℃で15分間加熱乾燥させ、リン酸由来の基、および対イオンが除去された微細繊維状セルロースシートを得た。
<実施例2>
[リン酸化パルプの対イオン変換(Na型)]
実施例1のリン酸化パルプの対イオン変換(TBA型)の際、10質量%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液の代わりに、1N NaOH水溶液を用いることで、リン酸由来の基の対イオンがナトリウム(Na)イオンとなったリン酸化パルプ(Na型)を得た。
[機械処理]
該リン酸化パルプ(Na型)にイオン交換水を添加して、1.0質量%のパルプ懸濁液にした。このパルプ懸濁液を、湿式微粒化装置(スギノマシン社製:アルティマイザー)で245MPaの圧力にて5回パスさせ、微細繊維状セルロース懸濁液(Na型)を得た。
[微細繊維状セルロース懸濁液(Na型)の対イオン変換(H型)]
該微細繊維状セルロース懸濁液(Na型)をイオン交換水で0.5質量%に希釈し、体積で1/10の強酸性イオン交換樹脂(アンバージェット1024;オルガノ株式会社、コンディショニング済)を加え、1時間攪拌処理を行った。その後、目開き51μmのメッシュ上に注いで減圧ろ過し、樹脂とスラリーを分離した。上記の手順により、リン酸由来の基の対イオンが水素(H)イオンとなった微細繊維状セルロース懸濁液(H型)を得た。
[微細繊維状セルロース懸濁液(H型)への有機対イオン付与]
10質量%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を、リン酸由来の基の含有量(1.5mmol/g)とテトラブチルアンモニウムイオンが等量となるよう計量し、該微細繊維状セルロース懸濁液(H型)に加えた。その後1時間攪拌処理を行い、リン酸由来の基の対イオンがテトラブチルアンモニウム(TBA)イオンとなった、微細繊維状セルロース懸濁液(TBA型)を得た。
その後の手順は実施例1と同様にし、リン酸由来の基、および有機対イオンが除去された微細繊維状セルロースシートを得た。
<実施例3>
[対イオン交換(有機対イオンの除去)]
実施例2で得られた微細繊維状セルロースシート(TBA型)を、pHを2に調整した塩酸に30分間浸漬することで、微細繊維状セルロースシート(TBA型)からテトラブチルアンモニウムイオンを除去し、リン酸由来の基の対イオンを水素(H)イオンとした。その後、pHを12に調整した水酸化ナトリウム水溶液に5分間浸漬し、リン酸由来の基の対イオンをナトリウム(Na)イオンとした。該微細繊維状セルロースシートをガラス板に貼り付け、100℃で15分間加熱乾燥させた。上記の手順により、有機対イオンが除去された微細繊維状セルロースシートを得た。
<実施例4>
実施例2における微細繊維状セルロース懸濁液(H型)への有機対イオン付与の際、10質量%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液の代わりに、10質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いた以外は実施例2と同様にして、リン酸由来の基、および有機対イオンが除去された微細繊維状セルロースシートを得た。
<実施例5>
実施例2における微細繊維状セルロース懸濁液(H型)への有機対イオン付与の際、10質量%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液の代わりに、10質量%テトラブチルホスホニウムヒドロキシド水溶液を用いた以外は実施例2と同様にして、リン酸由来の基、および有機対イオンが除去された微細繊維状セルロースシートを得た。
<実施例6>
実施例2における微細繊維状セルロース懸濁液(H型)への有機対イオン付与の際、10質量%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液の代わりに、30質量%ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド水溶液(第一工業製薬社製「カチオーゲンTML」)を用いた以外は実施例2と同様にして、リン酸由来の基、および有機対イオンが除去された微細繊維状セルロースシートを得た。
<実施例7>
[TEMPO酸化パルプの製造(TEMPO酸化反応)]
乾燥質量100質量部相当の未乾燥の王子製紙社製針葉樹晒クラフトパルプとTEMPO1.25質量部と、臭化ナトリウム12.5質量部とを水10000質量部に分散させた。次いで、13質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、1.0gのパルプに対して次亜塩素酸ナトリウムの量が8.0mmolになるように加えて反応を開始した。反応中は0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10〜11に保ち、pHに変化が見られなくなった時点で反応終了と見なした。
[TEMPO酸化パルプの洗浄]
その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、5000質量部のイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返した。滴定法により測定される置換基(カルボン酸由来の基)の導入量は1.5mmol/gであった。
[TEMPO酸化パルプの対イオン交換]
さらに、得られた脱水シートに、5000質量部のイオン交換水を加えて希釈した。次いで、攪拌しながら、1N塩酸を少しずつ添加し、pHが2〜3のパルプスラリーを得た。その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、再びイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた。次いで、濾過脱水して脱水シートを得る操作を繰り返すことにより、余剰の塩酸を十分に洗い流した。上記の手順により、カルボン酸由来の基の対イオンが水素(H)イオンとなった、TEMPO酸化パルプ(H型)を得た。
[TEMPO酸化パルプへの有機対イオン付与]
得られたTEMPO酸化パルプ(H型)の絶乾質量として100質量部に5000質量部のイオン交換水を加え、希釈した。次いで、攪拌しながら、10% テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を少しずつ添加し、pHが10〜12のパルプスラリーを得た。その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、再びイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた。次いで、濾過脱水して脱水シートを得る操作を繰り返すことにより、余剰のテトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を十分に洗い流した。上記の手順により、カルボン酸由来の基の対イオンがテトラブチルアンモニウム(TBA)イオンとなった、TEMPO酸化パルプ(TBA型)を得た。
その後の手順は、リン酸化パルプ(TBA型)の代わりに、上記TEMPO酸化パルプ(TBA型)を用いた以外は実施例3と同様とし、有機対イオンが除去された微細繊維状セルロースシートを得た。
<参考例1>
実施例1において、リン酸化パルプへの有機対イオン付与を行わずに機械処理、シート化を行った。なお、シート化の際に顕著な割れが発生し、微細繊維状セルロースシートは得られなかった。
<参考例2>
対イオンの除去(リン酸由来の基、および対イオンの除去)を行わない以外は実施例1と同様にして、有機対イオンとしてテトラブチルアンモニウムイオンが付与された微細繊維状セルロースシートを得た。
<参考例3>
対イオンの除去(リン酸由来の基、および対イオンの除去)を行わない以外は実施例2と同様にして、有機対イオンとしてテトラブチルアンモニウムイオンが付与された微細繊維状セルロースシートを得た。
<参考例4>
対イオンの除去(リン酸由来の基、および対イオンの除去)を行わない以外は実施例4と同様にして、有機対イオンとしてテトラエチルアンモニウムイオンが付与された微細繊維状セルロースシートを得た。
<参考例5>
対イオンの除去(リン酸由来の基、および対イオンの除去)を行わない以外は実施例5と同様にして、有機対イオンとしてテトラブチルホスホニウムヒドロキシドが付与された微細繊維状セルロースシートを得た。
<参考例6>
対イオンの除去(リン酸由来の基、および対イオンの除去)を行わない以外は実施例6と同様にして、有機対イオンとしてラウリルトリメチルアンモニウムイオンが付与された微細繊維状セルロースシートを得た。
<参考例7>
対イオンの除去を行わない以外は実施例7と同様にして、有機対イオンとしてテトラブチルアンモニウムイオンが付与された微細繊維状セルロースシートを得た。
<評価>
[方法]
実施例1〜7、および参考例2〜7で作製した微細繊維状セルロースシートについて、以下の評価方法に従って評価を実施した。参考例1では微細繊維状セルロースシートが得られなかったため、評価は行わなかった。
(1)微細繊維状セルロースシート中のイオン性置換基の含有量
蛍光X線分析装置(スペクトリス社製「PW2404」)により、微細繊維状セルロースシート中のリンおよびナトリウム原子濃度を測定した。すなわち、微細繊維状セルロースシートにX線を照射したときにリンあるいはナトリウム原子の内殻電子が励起されて生じた空孔に、外殻の電子が遷移する際に放出されるリンあるいはナトリウム原子の特性X線の強度を測定することによって、リンあるいはナトリウム原子の濃度を得た。なお、イオン性置換基としてカルボン酸由来の基を含有する実施例7、参考例7においては、蛍光X線分析装置による分析の前に、微細繊維状セルロースシートをpHを12に調整した水酸化ナトリウム水溶液に5分間浸漬し、カルボン酸由来の基の対イオンをナトリウム(Na)イオンとした。
原子濃度からイオン性置換基の含有量の算出に当たっては、下記の方法で作成した検量線より算出を行った。リン酸由来の基の含有量が既知である微細繊維状セルロースシートを作製し、蛍光X線分析を実施後、リン原子の特性X線強度とリン酸由来の基の含有量の検量線を作成した。カルボン酸由来の基の場合も同様に、カルボン酸由来の基の含有量が既知、かつナトリウム塩型である微細繊維状セルロースシートを作製し、ナトリウム原子の特性X線強度とカルボン酸由来の基の含有量の検量線を作成した。
なお、実施例5、および参考例5においては、後述するテトラブチルホスホニウムヒドロキシドに由来するリン原子濃度を差し引くことで、微細繊維状セルロースシート中のリン酸由来の基の含有量とした。
表1においては、このようにして算出された微細繊維状セルロースに対するリン酸由来の基またはカルボン酸由来の基の含有量が示されている。
(2)有機対イオンの含有量
実施例1〜4、6、および7、参考例2〜4、6、および7については、微量窒素分析装置(三菱化学アナリテック社製「TN−110」)により、シート中の窒素原子濃度を測定した。すなわち、有機対イオンを付与していない微細繊維状セルロースシートの窒素原子濃度を基準値とし、実施例1〜6、および参考例2〜6で得られた微細繊維状セルロースシートの窒素原子濃度から基準値を減ずることで、有機対イオン由来の窒素原子濃度とし、有機対イオン含有量を算出した。
実施例5、および参考例5については、蛍光X線分析装置(スペクトリス社製「PW2404」)により、シート中のリン原子濃度を測定した。すなわち、シートにX線を照射したときにリン原子の内殻電子が励起されて生じた空孔に、外殻の電子が遷移する際に放出されるリン原子の特性X線の強度を測定することによって、リン原子の濃度を得た。なお、リン導入量が既知であるろ紙を作製し、微細繊維状セルロースシートと同様に蛍光X線分析を実施後、リン原子の特性X線強度とリン導入量の検量線を作成した。検量線より算出されたリン原子濃度から、基準値とした有機対イオンを付与していない微細繊維状セルロースシートのリン原子濃度を減ずることで、有機対イオン由来のリン原子濃度とし、有機対イオン含有量を算出した。
表1においては、このようにして算出されたシートに対する有機対イオンの含有量が示されている。
(3)密度
100mm角のシート100mm角に裁断した微細繊維状を23℃、相対湿度50%の条件下で24時間調湿した後、重量を測定して米坪(g/m2)を算出し、さらに微細繊維状セルロースシートの厚みで除することで、微細繊維状セルロースシートの密度を算出した。
(4)シワ・割れ
微細繊維状セルロース懸濁液をシート化する際、180mm各の堰止用金枠のサイズに合わせ、アクリル板の裏面に2cm角のマスを縦9×横9の合計81マス記載した。微細繊維状セルロースシートが該アクリル板に張り付いた状態で上方から観察し、微細繊維状セルロースシートにシワ・割れが発生したマスを計数した。シワ・割れが発生したマスが全マス数の20%未満のものを○、20%以上のものを×と評価した。
(5)全光線透過率
JIS規格K7361に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製「HM−150」)を用いて全光線透過率を測定した。
(6)ヘーズ
JIS規格K7136に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製「HM−150」)を用いてヘーズを測定した。
(7)引張特性
JIS規格K7127に準拠し、引張試験機(エー・アンド・デイ社製「テンシロン」)を用いて、温度23℃、相対湿度50%における引張強度および引張弾性率を測定した。
(8)加熱前後の黄色度
JIS規格K7373に準拠し、測色計(スガ試験機社製「Colour Cute i」)を用いてシート加熱前後の黄色度(YI)を測定した。また、加熱前後のYIの差分をΔYIとして評価した。なお、加熱条件は、200℃で4時間の真空乾燥とした。
[結果]
評価の結果を表1に示す。
表1から明らかなように、有機対イオンの除去を行った実施例1〜7では、対応する参考例2〜7と比較してシート密度が向上し、結果として引張弾性率が向上した。また、引張強度も向上する結果となった。さらに、シート化後に有機対イオンの除去を行った実施例1〜7では、加熱着色の原因となる有機対イオンを除去したことで、対応する参考例2〜7と比較して加熱後YI、ΔYIも低減した。
Figure 0006627376
<実施例8(積層体の製造例1)>
実施例1〜7のいずれかで得られたシートを用い、下記の手順で積層体が得られる。
シートを、SUNALE R-100B(Picosun社製)で、酸化アルミニウム成膜を行う。アルミニウム原料として、トリメチルアルミニウム(TMA)、TMAの酸化にはH2Oを用いる。チャンバー温度を150℃に設定し、TMAのパルス時間を0.1秒、パージ時間を4秒とし、H2Oのパルス時間を0.1秒、パージ時間を4秒とする。このサイクルを405サイクル繰り返すことで、シート両面に膜厚30nmの酸化アルミニウム膜が積層された積層体が得られる。
<実施例9(積層体の製造例2)>
実施例1〜7のいずれかで得られたシートを用い、下記の手順で積層体が得られる。
シルセスキオキサン系樹脂(荒川化学工業社製「コンポセランSQ107」)10重量部、硬化剤(荒川化学工業社製「HBSQ202」)30重量部、イソプロピルアルコール60重量部を混合し、塗工液を得る。次いで、基材の片面に塗工液をメイヤーバーにて塗工する。その後、100℃で3分間乾燥した後、UVコンベア装置(アイグラフィックス社製「ECS−4011GX」)を用いて300mJ/cm2の紫外線を照射して、塗工液を硬化し、厚さ5μmの樹脂層を成膜する。さらに、反対側の面にも同様の手順で厚さ5μmの樹脂層を成膜する。
<実施例10(積層体の製造例3)>
実施例1〜7のいずれかで得られたシート、または実施例8で得られたシートを用い、下記の手順で積層体が得られる。
ウレタンアクリレート樹脂組成物(荒川化学工業社製「ビームセット575CB」)50重量部、およびメチルエチルケトン50重量部を混合して、硬化性樹脂前駆体溶液を得る。上記の硬化性樹脂前駆体溶液をメイヤーバーを用いてシート上に塗工する。次いで80℃で3分間乾燥した後、UVコンベア装置(アイグラフィックス社製「ECS−4011GX」)を用いて300mJ/cm2の紫外線を照射して、硬化性樹脂前駆体溶液を硬化し、厚さ5μmの樹脂層を成膜する。さらに、反対側の面にも同様の手順で厚さ5μmの樹脂層を成膜を行うことで、酸化アルミニウム膜を積層した両面に、樹脂層が積層されたシートを得る。
<実施例11(積層体の製造例4)>
実施例1〜7のいずれかで得られたシート、または実施例9で得られたシートを用い、下記の手順で積層体が得られる。
シートに、ICP−CVDロールtoロール装置(セルバック社製)でシリコン酸窒化膜を成膜する。キャリアフィルム(PETフィルム)の上面に、樹脂積層シートを両面テープで貼合して真空チャンバー内に設置する。真空チャンバー内の温度は50℃に設定し、流入ガスはシラン、アンモニア、酸素、窒素とした。プラズマ放電を発生させて45分間の成膜を行い、樹脂積層シートの片面に膜厚500nmのシリコン酸窒化膜が積層されたシートを得る。さらに、反対側の面にも同様の手順で成膜を行うことで、シート両面に膜厚500nmのシリコン酸窒化膜が積層されたシートを得る。

Claims (13)

  1. イオン性置換基を有する微細繊維と、
    前記イオン性置換基の対イオンである有機イオンと、
    を含み、
    前記有機イオンの含有量が0.05mmol/g以下であるシート。
  2. ヘーズが40%以下である、請求項1に記載のシート。
  3. 密度が1.0g/cm以上である、請求項1または2に記載のシート。
  4. 前記有機イオンの炭素数が4以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシート。
  5. 前記イオン性置換基の含有量が、前記微細繊維に対して0.5mmol/g以下である、請求項1〜4いずれか一項に記載のシート。
  6. 温度23℃、相対湿度50%における引張弾性率が4.0GPa以上である請求項1〜5いずれか一項に記載のシート。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載のシートと、
    前記シートの少なくとも一方の側に形成された無機層および有機層の少なくとも一方と、
    を含む、積層体。
  8. イオン性置換基を有する微細繊維と、前記イオン性置換基の対イオンである有機イオンと、
    を含み、前記有機イオンの含有量が0.40mmol/g以下であるシートの製造方法であって、
    (1)繊維原料にイオン性置換基を導入して、イオン性置換基導入繊維を得る工程と、
    (2)イオン性置換基導入繊維を微細化処理して、イオン性置換基導入微細繊維を得る工程とを含み、さらに
    工程(2)の前または後に、イオン性置換基を有機イオンで処理する工程と
    を含み、さらに
    (3)有機イオンで処理されたイオン性置換基導入微細繊維から、シートを調製する工程と、
    (4)シートに含有される有機イオンを低減する工程と
    を含む方法。
  9. シートのヘーズが40%以下である、請求項8に記載の方法。
  10. シートの密度が1.0g/cm 以上である、請求項8または9に記載の方法。
  11. 前記有機イオンの炭素数が4以上である、請求項8〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記イオン性置換基の含有量が、前記微細繊維に対して0.5mmol/g以下である、請求項8〜11のいずれか一項に記載の方法。
  13. シートの温度23℃、相対湿度50%における引張弾性率が4.0GPa以上である請求項8〜12のいずれか一項に記載の方法。
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