本発明にかかる実施形態について図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
図1は本発明にかかる光走査装置を用いた画像表示装置の概略図である。図1に示す画像表示装置Pjは、被投影面であるスクリーンScを光ビームで走査し、映像(静止画、動画)を表示する、いわゆる、プロジェクタ装置である。図1に示すように、光走査装置Aは光ビームをスクリーンScの横方向(主走査方向とする)に移動させつつ、1ラインごとに縦方向(副走査方向とする)に移動させることで、スクリーンScを走査(ラスタスキャン)する。光走査装置Aは、光源部100と、光スキャナ部200とを備えている。
光源部100は、光源11と、レンズ12と、ビームスプリッタ13と、モニタ用受光素子14とを含む。光源11は予め決められた波長の光を出射できるものであり、例えば、半導体発光素子を挙げることができる。また、放電を用いるもの等であってもよい。光源としては安定した光を出射することができるものを広く採用することができる。なお、本実施形態では、レーザ光を発光するレーザ発光素子(LD:Laser Diode)を採用している。なお、画像表示装置Pjがカラー映像を表示する装置である場合、光源11は、R(赤)の光、G(緑)の光、B(青)の光を混合した光を出射することができる構成となっている。
光源11は点光源であり出射された光は発散光である。そのため、光源部100は、光源11から出射された光をレンズ12に透過させて平行光又は略平行光に変換して、光ビーム化している。なお、レンズ12は、ここでは、コリメータレンズであるが、これに限定されず、発散光を平行光に変換する光学素子を広く採用することができる。
レンズ12から出射された光ビームは、ビームスプリッタ13に入射する。ビームスプリッタ13は光ビームに最適化されたものであり、入射した光ビームのうち一部を反射して、残りを透過させる。ビームスプリッタ13で反射された光ビームは、モニタ用受光部14に入射する。モニタ用受光部14は入射した光ビームに基づいて、光ビームの強度を示すモニタ信号を出力する。モニタ信号は、後述する制御部31の光源制御部311に受け渡される。
ビームスプリッタ13を透過した光ビームは、光走査部200に入射する。光走査部200は、光ビームを反射しつつ走査する光走査素子20を備えている。光走査素子の詳細について図面を参照して説明する。図2は本発明にかかる光走査素子の平面図である。図2に示す光走査素子20は、ミラー21と、固定枠22と、可動枠23と、第1弾性支持部24と、第2弾性支持部25と、主駆動部26と、副駆動部27とを備えている。なお、光走査素子20の形状の説明では、光走査素子20が停止した状態、すなわち、図2に示している状態を基準として説明する。
光走査素子20は、ミラー21で光ビームを反射しつつミラー21を直交する軸C1と軸C2周りに所定角度、往復回動(揺動)する。なお、軸C1周りにミラー21を回動することで光ビームを主走査方向に走査することができるものであり、以下の説明では、軸C1を主走査軸C1として説明する。同様に、軸C2は軸C1と直交する軸であり、軸C2周りにミラー21を回動することで光ビームを副走査方向に走査することができるので、以下の説明では、軸C2を副走査軸C2として説明する。
図2に示すように、固定枠22は、主軸C1に沿う長辺を有する長方形の板状部材であり、中央に長方形状に貫通した窓部220を備えている。窓部220は、中心が主走査軸C1と副走査軸C2とが交差する点に重なるように設けられている。そして、窓部220の内側に、可動枠23が配置される。可動枠23は、中心が窓部220の中心と重なるように設けられている。
可動枠23の短手方向(副走査軸C2方向)の端部の中央部と、窓部220の対向する部分の中央部とが副走査軸C2方向に延びる第1弾性支持部24で連結されている。第1弾性支持部24は、可動枠23の2つの長辺それぞれの中央部に対をなすように設けられている。つまり、可動枠23は、長辺の中央部分を第1弾性支持部24を介して、固定枠22に連結されている。第1弾性支持部24は、棒状の部材であり、副走査軸C2周りに弾性的にねじれる。すなわち、可動枠23は、固定部22に対して副走査軸C2周りに回動(揺動)可能に支持されている。
また、可動枠23は主走査軸C1に沿う方向の両端が窓部220の短辺をなす部分と対向している。この可動枠23と窓部220の主走査軸C1方向に対向する部分に、可動枠23に副走査軸C2周りに回動するための力を付与する副駆動部27が設けられている。副駆動部27は、副走査軸C2を挟んで対をなすように設けられている。
副駆動部27は、固定枠22の窓部220の内周部より主走査軸C1と平行に内側に突出した複数個の固定側電極271と、可動枠23の主走査軸C1方向の端部より外側に突出した複数個の可動側電極272とを備えている。なお、以下の説明において、必要に応じ、一対の副駆動部27のうち、一方を第1副駆動部27A、他方を第2副駆動部27Bとして説明する場合がある。
複数個の固定側電極271及び複数個の可動側電極272は、それぞれの先端が自由端になっているとともに、副走査軸C2方向に等間隔に配列されている。そして、固定側電極271と可動側電極272とが副走査軸C2方向に交互に並ぶように配置される。副駆動部27は非共振型の静電アクチュエータであり、固定側電極271と可動側電極272の間の電圧(電位差)で、固定側電極271と可動側電極272の間に引力を発生させている。一対の副駆動部27のそれぞれで上述の引力を交互に発生させて、可動枠23に副走査軸C2周りに揺動する駆動力を付与する。
可動枠23は長方形の板状部材であり、中央に貫通したスリット230を備えている。スリット230は、短手方向(ここでは、副走査軸C2方向)の中央に設けられており、長手方向(ここでは、主走査軸C1方向)に延びている。そして、スリット230の内側には、ミラー21が配置される。ミラー21は円板形状を有しており、スリット230の中央部分の内周面は、ミラー21の形状に合わせて円弧状に形成されている。可動枠23とミラー21とは中心が一致するように配置される。そして、ミラー21は主走査軸C1方向の両端部から、主走査軸C1方向に延びる第2弾性支持部25を介して可動枠23と連結されている。
第2弾性支持部25は、棒状の部材であり、主走査軸C1周りに弾性的にねじれる。このことから、ミラー21は、可動枠23に対して主走査軸C1周りに回動(揺動)可能に支持されている。ミラー21の表面は、光源部100から出射された光ビームを反射することができるように鏡面となっている。ミラー21の鏡面としては、例えば、反射率が高い金属の薄膜を形成するものであってもよいし、ミラー21の反射率が高い場合、表面の凹凸を小さくする鏡面仕上げとしてもよい。
そして、第2弾性支持部25と可動枠23との間には、第2弾性支持部25に駆動力を付与する主駆動部26が設けられている。主駆動部26は、可動枠23のスリット部230の副走査軸C2方向の両方の内周面から内側に向けて突出した複数個の固定側電極261と、第2弾性支持部25の副走査軸C2方向の両側部から突出した複数個の可動側電極262とを備えている。
複数個の固定側電極261は主走査軸C1に沿う方向に、等間隔に配列されている。また、複数個の可動側電極262も主走査軸C1に沿う方向に、等間隔に配列されている。そして、固定側電極261と可動側電極262のそれぞれ対向して配置されているもの同士は、主走査軸C1方向に隣合うように交互に配置される。
図2に示すように、主駆動部26は、副走査軸C2を挟んで対称となるように2個、対をなすように設けられている。また、それぞれの主駆動部26、26では、固定側電極261及び可動側電極262が主走査軸C1を軸として線対称となるように設けられている。
主駆動部26は、固定側電極261と可動側電極262との間に電圧を印加することで固定側電極261と可動側電極262との間に引力を発生させ、その引力で第2弾性支持部25がねじる。これにより、第2弾性支持部25に支持されているミラー21を主走査軸C1周りに回動する。
主駆動部26の固定側電極261と可動側電極262との間に発生する力は弱く、ミラー21の回動角度が小さい。すなわち、直流的な電圧を印加することでは、ミラー21を十分な角度で回動させることが困難である。そこで、ミラー21、第2弾性支持部25、主駆動部26の形状、重量等によって決まる共振周波数に基づいて共振振動が発生するように、パルス波形やサイン波形の電圧を印加する。このように共振周波数に合わせて電圧を印加によって発振現象を発生させて、ミラー21を大きく揺動する。このように、共振振動を利用して、ミラー21を回動させるため、主駆動部26は、共振型の静電アクチュエータである。
光走査素子20は、固定枠22、第1弾性支持部24、可動枠23、第2弾性支持部25及びミラー21は、一体で形成される。そして、光走査素子20自体は、小型軽量な素子であり、微細加工技術を利用した、いわゆるMEMSデバイスである。また、光走査素子20の表面には、配線パターン28が形成されており、固定枠22の四隅及び各辺の中央部分には、端子S1〜S8が設けられている。配線パターン28、端子S1〜S8は、例えば、銅、アルミニウム等の導電率が高い金属薄膜で形成されたプリント配線を挙げることができるが、これに限定されない。端子S1〜S8は、後述するドライバ29が接続され、端子S1〜S8を介して、主駆動部26、副駆動部27を駆動するための信号(駆動信号)を供給するようになっている。
図2に示すように、固定枠22の両短辺の中央部分には、端子S1、S2が設けられている。端子S1、S2は副駆動部27の固定側電極271と配線パターン28を介して接続されている。固定枠22の右側の角部には、端子S3、S4が設けられている。端子S3、S4は副駆動部27(それぞれ、第1副駆動部27A、第2副駆動部27B)の可動側電極272と配線パターン28を介して接続されている。また、固定枠22の両長辺の中央部分には、端子S5、S6が設けられている。端子S5、S6は主駆動部26の固定側電極261と配線パターン28を介して接続されている。そして、固定枠22の左側の角部には、端子S7、S8が設けられている。端子S7、S8は主駆動部26の可動側電極262と配線パターン28を介して接続されている。
光走査素子20は以上に示したような構成を有している。光走査部200では、固定枠22は不動の部材に固定されており、副駆動部27が可動部23を固定部に対して、副走査軸C2周りに回動(揺動)する。また、主駆動部26がミラー21を可動枠23に対して主走査軸C1周りに回動(揺動)する。このような走査を行うことで、光走査素子20はミラー21を主走査軸C1及び副走査軸C2周りに揺動させる。
光走査装置Aを用いてスクリーンに映像を表示する場合について説明する。図3は主走査及び副走査を模式的に示す図である。光走査部200は光走査素子20を上述のように駆動させた状態で、タイミングを合わせた光ビームをミラー21で反射することで、スクリーンScに映像を表示する。
光走査素子20は、上段から下段に(あるいは逆に)1段ずつ描画を行い(走査し)、最下段に到達すると、最上段に戻る。すなわち、主走査方向の走査線でスクリーンを埋める2次元走査(ラスタスキャン)を行う。光走査素子20では、光スポットの横方向の動きを主走査部26による主走査によって行っており、上下方向の走査線の移動を副走査部27による副走査で行っている。スクリーン等に映像を表示する場合、1秒間に複数枚の映像を表示しており、1回の映像の描画にかかる期間が1フレームである。
光走査素子20において、副駆動部27は1フレームで光ビーム(可動枠23或いはミラー21)を1回往復動させる。一方、主駆動部26は1フレームでスクリーンに表示する走査線の数に比例した回数、光ビーム(ミラー21)を往復動させる。そのため、光走査素子20では、主走査に比べて副走査はゆっくり行われる。なお、光走査素子20の主走査軸周りの揺動の周波数と副走査軸周りの揺動の周波数として、たとえば、主走査方向の周波数が24kHz、副走査方向の周波数が30Hz等を挙げることができる。
スクリーンScに映像を映す場合、1フレームには、映像を描画する期間である描画期間と、光スポットを終点から起点に戻すための帰線期間とを含んでいる。描画期間が映像を描画する期間であり、帰線期間が映像を描画しない期間である。そして、映像の連続性を保持するためには、帰線期間を短くするのが好ましい。そのため、光走査装置Aでは、図3に示すように、1フレーム中に短い帰線期間と長い描画期間を有している。そして、光走査素子20において、副駆動部27は可動枠23(ミラー21)を描画期間に上限から下限に回動させ、帰線期間に下限から上限に回動させている。そのため、可動枠23の回動速度(角速度)は、描画期間で遅く、帰線期間で速くなる。
次に、光源部100及び光走査部200を備えた光走査装置Aの電気的な接続について図面を参照して説明する。図4は本発明にかかる光走査装置のブロック図である。
光走査装置Aは、上述した光源部100、光走査部200に加えて、処理部300及び記憶部400を備えている。なお、図4に示すように、光源部100には、上述の構成に加えて、光源11に駆動信号を与えるドライバ15を備えている。また、光走査部200には、主駆動部26及び副駆動部27に駆動信号を与えるドライバ29が設けられている。
処理部300は、CPU、MPU等の演算処理回路を含む構成であり、図4に示すように、同期部30、制御部31、共振振動検出部32、異常検出部33、振動補正部34、外部接続部35及び電流検出部36を備えている。
処理部300は、光走査装置Aの各種処理を行う。各種処理には、外部機器からの映像データに基づいて、光源部100及び光走査部200を駆動するための出光制御情報及び光走査制御情報を生成する処理も含まれる。そのため、処理部300は、外部接続部35を介してPC、DVD、BD等の外部機器と接続される。なお、外部接続部35はこれに限定されるものではない。例えば、アンテナを接続して放送波を受信し、放送波から映像データを抽出することができる構成であってもよい。処理部300の各部は、同期部30からの同期信号に基づいて動作している。同期信号は各部の動作を同期させるための信号を出力する発振回路を備えており、描画期間と帰線期間とを決定するフレーム同期信号を出力している。なお、フレーム同期信号以外の同期信号を出力していてもよい。
記憶部400は、呼び出し可能なROMや読書き可能なRAM等を備えている。記憶部400は光走査装置Aでの処理に必要なデータ、テーブル、パラメータ等の情報を備えるものである。また、処理部300で処理したデータを記憶するものである。処理部300は記憶部400に随時アクセスすることができるようになっている。
制御部31は、光源部100からの光ビームの出射制御及び光走査部200による光ビームの走査速度、走査角度(走査範囲)等の走査制御する制御部である。走査光源制御部31は、光源制御部311と、走査制御部312と、共振振動検出部32と、異常検出部33と、振動補正部34とを備えている。そして、光源制御部311、走査制御部312、共振振動検出部32、異常検出部33及び振動補正部34は、制御部31で動作するプログラムであってもよいし、独立した回路として制御部31内に構成されていてもよい。
光源制御部311は、光源部100の駆動を制御する。光源制御部311はモニタ用受光部14からモニタ信号を受信している。光源制御部311は映像情報に基づいて光ビームの出光を決める出光制御情報を生成する。また、光源制御部311は必要に応じてモニタ信号に基づいて出光制御情報を補正する。光源制御部311は、出光制御情報をドライバ15に送信している。ドライバ15は出光制御情報に基づいて生成された駆動信号(例えば、駆動電圧)を光源11に送信する。光源11は、駆動信号に基づいて光を出光する。
走査制御部312は、光走査素子20の駆動を制御する。走査制御部312は映像情報に基づいて、光走査素子20による光ビームの走査角度、走査周波数等の情報を含む光走査情報を生成する。また、走査制御部312は、振動補正部34から後述する補正パラメータを受け取っており、必要に応じて光走査情報を補正パラメータに基づいて補正する。そして、光走査情報をドライバ29に送信する。ドライバ29は光走査情報に基づいて、駆動信号を生成し、主駆動部26及び副駆動部27に送信する。主駆動部26及び副駆動部27は駆動信号に基づいてミラー21及び可動枠23をそれぞれ揺動させる。
電流検出部36は主駆動部26及び(又は)副駆動部27の固定側電極と可動側電極との間で発生する電流を検出する検出部である。本発明にかかる光走査装置Aでは、副駆動部27の容量変化による電流を検出している。電流検出部36は、検出した電流の情報を電流情報として、共振振動検出部32と異常検出部33とに送信している。なお、電流検出部36の詳細については、後述する。
上述したとおり、光走査素子20において、ミラー21(可動枠23)の副走査方向の揺動は、非共振で行われている。しかしながら、可動枠23を揺動するときに共振周波数に基づく共振振動が発生する場合があり、共振振動が発生するとスクリーンScに投影される映像に副走査方向に明暗が発生する。そのため、共振振動検出部32は、電流検出部36からの電流情報に基づいて、光走査素子20のミラー21の副走査軸C2周りの揺動に含まれる共振振動を検出する。そして、共振振動を検出すると、共振振動検出部32は共振振動の情報(振幅/位相)を振動補正部34に送信する。
振動補正部34は、共振振動の情報に基づいて、共振振動を抑制するように光走査情報を補正するための補正パラメータを生成し、補正パラメータを走査制御部312に送信する。なお、振動補正部34は、補正が必要なときに補正パラメータを生成/送信する。
電流検出部36は、検出した電流情報を、異常検出部33にも受け渡している。異常検出部33は、電流情報に基づいて、光走査素子20の可動枠23の停止等の異常を検出する。以下の説明において、可動枠23の異常の1つとして、停止について説明する。また、停止以外の異常についても適宜説明する。可動枠23の停止は、例えば、配線の一部の断線や短絡(ショート)等の回路の故障や異物が可動枠23に当接したことで発生する。また、これら以外の原因で停止する場合もある。異常検出部33は、原因に関係なく、可動枠23の停止等の異常を検出する。異常検出部33は電流情報から可動枠23の動作の異常を検出すると、異常発生情報を光源制御部311に送信する。なお、異常検出部33は停止以外の可動枠23の異常、例えば、回動速度の低下、回動角度の減少等を検出し、異常発生情報として光源制御部311に送信することもできる。異常発生情報と停止情報とを区別して、光源制御部311に送信するようにしてもよい。
光源制御部311は、異常発生情報を取得すると、出光制御情報として光源11からの光の出射を制限する出射制限情報をドライバ15に送信する。ドライバ15は、出射制限情報を取得すると光源11を光の出射を制限する駆動信号を光源11に送信する。
ここで、可動枠23の停止等の異常の検出について新たな図面を参照して説明する。まず、駆動信号による可動枠23の動作について説明する。図5は図2に示す副駆動部を含む可動枠及び固定枠の概略構造を示す断面図であり、図6は固定枠及び可動枠に取り付けられた副駆動部の電気的に等価な回路図である。
なお、図5では固定枠22、可動枠23及び副駆動部27を副走査軸C2に垂直な面で切断した断面図となっている。また、図5では可動枠23の内側に設けられている、ミラー21、第2弾性支持部25と主駆動部26は図示を省略している。また、以下の説明では、可動枠23の長手方向の端部に設けられる1対の副駆動部27を必要に応じて、第1副駆動部27A、第2副駆動部27Bと区別して説明する場合もある。
図5に示すように、固定枠22と可動枠23とは厚み方向にずれて配置されている。そして、図6に示すように、第1副駆動部27Aと第2副駆動部27Bとは、それぞれの、固定側電極271と可動側電極272とがコンデンサCp1、Cp2を構成している。それぞれの固定側電極271は、ドライバ29と接続されている。ドライバ29は第1副駆動部27Aの固定側電極271に第1駆動信号Sg1を、また、第2副駆動部27Bの固定側電極271に第2駆動信号Sg2を与えている。
第1駆動信号Sg1及び第2駆動信号Sg2は電圧信号である。例えば、第1駆動信号Sg1が第1副駆動部27Aの固定側電極271に付与されると、固定側電極271と可動側電極272との間の電位差が発生し、固定側電極271と可動側電極272との間に引力が発生する。固定側電極271は固定枠22に設けられ、可動側電極272が可動枠23に設けられているため、引力によって可動側電極272が固定側電極272に引っ張られ、可動枠23が副走査軸C2回りに回動する。
そして、第1副駆動部27Aと第2副駆動部27Bとに交互に上述の引力が作用するように、駆動信号を供給することで、可動枠23を副走査軸C2周りに回動(揺動)する。可動枠23が副走査軸C2周りに揺動するとき、第1副駆動部27A及び第2副駆動部27Bの固定側電極271と可動側電極272の副走査軸C2方向に重なる面積が変動する。第1副駆動部27Aの固定側電極271と可動側電極272の副走査軸C2方向に重なる面積が増加(減少)すると、第2副駆動部27Bの固定側電極271と可動側電極272の副走査軸C2方向に重なる面積が減少(増加)する。
上述のとおり、第1副駆動部27A及び第2副駆動部27Bは、それぞれ、固定側電極271と可動側電極272とでコンデンサCp1、Cp2を形成している。通常、コンデンサは対向する電極の面積が変動すると静電容量が変化する。そして、第1副駆動部27A及び第2副駆動部27Bにおいて、固定側電極271と可動側電極272とが副走査軸C2方向に対向する(重なる)面積は、可動枠23の回動によって変動している。すなわち、コンデンサCp1、Cp2は静電容量可変のコンデンサである。
第1副駆動部27A及び第2副駆動部27Bの固定側電極271と可動側電極272の副走査軸C2方向に重なる面積は、可動枠23の回動(揺動)によって、一方が大きくなると他方が小さくなり、一方が小さくなると他方が大きくなる。つまり、コンデンサCp1、Cp2の容量は、可動枠23の回動(揺動)によって、一方が多くなると他方が少なくなり、一方が少なくなると他方が多くなる。
このように静電容量が変化するコンデンサCp1、Cp2の可動側電極272同士を電気的に接続することで、可動側電極272、272の間に図6に示す電流が発生する。この電流は可動枠23の動作に基づいて流れる、すなわち、動作に関連づいた電流である。本発明にかかる光走査装置Aでは、この可動側電極272、272間に発生する電流を電流検出部36で検出する。そして、検出した電流の特徴(波形、代表値、振幅、位相等)を確認することで、可動枠23の回動状態を検出することができる。
なお、光走査素子20は、図2に示すような構成である。そのため、図6に示す等価回路を構成するためには、ドライバ29の出力端子を、端子S1、S2に接続し、端子S3と端子S4とを接続して電流検出部36と接続することで達成することができる。
駆動信号について説明する。図7は図5に示す構成の駆動機構の駆動信号電圧と回動角度の関係を示すグラフである。可動枠23は副駆動部27の固定側電極271に電圧(駆動信号)を印加することで回動する。図7において、横軸は回動角度であり縦軸は駆動信号電圧(すなわち、固定側電極271に印加される電圧)である。図7に示すように、固定側電極271に印加される電圧と可動枠23の回動角度は、リニアな特性にはならない。なお、図7は一例であり、実際には、個体によってばらつきがある。そのため、実際の光走査素子20では、製造時に駆動信号電圧と回動角度の特性を測定し、その特性データをテーブル化してメモリ400に記憶させている。
光走査部200において、主走査と副走査は同期して行われるものであり、可動枠23(副走査)は等角速度で回動されることが好ましい。図7に示すような、駆動信号電圧と回動角度の特性を考慮して、駆動信号が設定される。次に駆動信号について説明する。図8は図5に示す構成の可動枠を駆動する副駆動部に供給する駆動信号電圧と可動枠の回動角度の関係を示す図である。
図8において、縦軸は駆動信号電圧であり、横軸は可動枠23の回動角度である。なお、図8において、横軸の中央を回動角度が0°すなわち、可動枠23と固定枠22とが平行な状態(以下、ニュートラル位置とする場合もある)である。そして、横軸中央より左側は第1副駆動部27Aの可動側電極272が固定側電極271と副走査軸C2方向に重なる面積が大きくなる方向に傾いたときである。また、右側は第2副駆動部27Bの可動側電極272が固定側電極271と副走査軸C2方向に重なる面積が大きくなる方向に傾いたときの角度を示している。図8の横軸は、可動枠23が、第1副駆動部27Aの可動側電極272が固定側電極271と副走査軸C2方向に重なる面積が最大の状態から第2副駆動部27Bの可動側電極272が固定側電極271と副走査軸C2方向に重なる面積が最大になる角度である。また、可動枠23は等角速度で回動するように制御されるため、横軸の回動角度を時間に置き換えることも可能である。
図8は、第1副駆動部27Aに付与する第1駆動信号Sg1(実線)と、第2副駆動部27Bに付与する第2駆動信号Sg2(破線)とを示している。図8に示す第1駆動信号Sg1及び第2駆動信号Sg2を第1副駆動部27A及び第2副駆動部27Bに付与することで、可動枠23は副駆動軸C2周りに等角速度で回動される。図8に示す第1駆動信号Sg1、第2駆動信号Sg2は、図7に示す駆動信号電圧と回動角の特性及び図5に示す構成に基づいて決定されている。
図8に示すように、第1駆動信号Sg1は、第1副駆動部27Aの固定側電極271及び可動側電極272の副走査軸C2方向に重なる面積が最大のとき電圧が最大になっている。そして、第1駆動信号Sg1は、第1副駆動部27Aの固定側電極271及び可動側電極272の副走査軸C2方向に重なる面積が小さくなるにつれて、すなわち、可動枠23が回動するにつれて電圧が低くなっている。そして、第2駆動信号Sg2は、第2副駆動部27Bの固定側電極271及び可動側電極272の副走査軸C2方向に重なる面積が大きくなるにつれて、すなわち、可動枠23の回動につれて電圧が高くなっている。その後、第2副駆動部27Bの固定側電極271及び可動側電極272の副走査軸C2方向に重なる面積が最大となったときに電圧が最大になっている。
次に可動枠23の回動によるコンデンサの容量の変化について説明する。図9は可動枠の回転角度とコンデンサの静電容量の関係を示す図である。図9の横軸は、図8の横軸と同じであり中央が角度0°(ニュートラル位置)の可動枠23の角度である。また、縦軸はコンデンサの静電容量である。図9の横軸は図8の横軸に対応するものであり、時間変化に置き換えることができる。
図9は、コンデンサCp1の静電容量Cs1(実線)と、コンデンサCp2の静電容量Cs2(破線)とを示している。コンデンサの静電容量は、対向している電極の面積が大きいほど大きい。コンデンサCp1において、静電容量Cs1は、第1副駆動部27Aの固定側電極271及び可動側電極272の副走査軸C2方向に重なる面積が最も大きいとき、すなわち、図9中左端が最大となる。同様に、コンデンサCp2において、静電容量Cs2は、第2副駆動部27Bの固定側電極271及び可動側電極272の軸C2方向に重なる面積が最も大きいとき、すなわち、図9中右端が最大となる。
次に、第1副駆動部27Aの可動側電極272と第2副駆動部27Bの可動側電極272間に発生する電流について説明する。可動枠23を等角速度で回動(揺動)させる場合、第1副駆動部27A及び第2副駆動部27Bのそれぞれに付与される駆動信号の電圧値及びそれぞれの静電容量が可動枠23の角度(時間)とともに変動する。
コンデンサでは容量が変化に伴って電流が発生する。コンデンサに溜まっている電荷を電荷Qとすると、コンデンサに流れる電流Iは、電荷Qの単位時間当たりの変化量で示されるため、時間tとすると次の式で表される。
I=dQ/dt
そして、電荷Qは、印加電圧Vコンデンサの静電容量Cとすると、Q=CVとなる。上述したように、第1副駆動部27A(コンデンサCp1)及び第2副駆動部27B(コンデンサCp2)は、印加電圧(駆動信号電圧)及び静電容量の両方が時間とともに変化する。そのため、電流の式は、
I=C(dV/dt)+V(dC/dt)
となる。C(dV/dt)は駆動信号電圧の変化による成分(駆動信号電圧の変化率成分)である。V(dC/dt)容量変化による成分(容量の変化率成分)である。つまり、可動側電極272同士を接続した配線に流れる電流は、C(dV/dt)とV(dC/dt)との和になっている。
次に、第1副駆動部27A及び第2副駆動部27Bそれぞれの可動側電極272間に流れる電流について説明する。図10は駆動信号電圧の変化に基づく可動枠の回転角度と電流値との関係を示すグラフであり、図11は静電容量の変化に基づく可動枠の回転角度と電流値との関係を示すグラフである。また、図12は駆動信号電圧の変化に基づく電流と静電容量の変化に基づく電流とを合成した電流値と可動枠の回転角度との関係を示す図である。なお、図10、図11、図12の横軸は、図8、図9と対応するものであり、可動枠23の回動角度は、動作時間と置き換えることが可能である。
上述したとおり、可動側電極272間に発生する電流は、駆動信号電圧の変化率成分と静電容量の変化率成分の合成(和)である。そして、電流の駆動信号電圧の変化率成分は、第1副駆動部27Aで発生する電流と第2副駆動部27Bで発生する電流の合成となる。
そこで、第1副駆動部27A及び第2副駆動部27Bに図8に示すような駆動信号が付与されている場合、駆動信号電圧に基づく電流は、電圧の時間変化に比例する。可動枠23の回動角度に応じて発生する電流は、図10に示すようになる。
図10に示す電流Is1(実線)は駆動信号電圧の変化によって発生する第1副駆動部27Aの可動側電極272で発生する電流であり、電流Is2(破線)は第2副駆動部27Bで発生する可動側電極272で発生する電流である。電流Is1及び電流Is2は駆動信号電圧の時間変化に比例するものであるため、電圧が急激に変化している部分で多くの電流が流れる。そのため、電流Is1、電流Is2は、図10に示すように変化する。電流Is1及び電流Is2は、図8の駆動信号のグラフにおいて、電圧変化が大きい部分で電流が大きくなっている。
そして、電流Is1及び電流Is2を合成することで、可動枠23の揺動によって第1副駆動部27Aの可動側電極272と第2副駆動部27Bの可動側電極272との間に発生する電流の駆動信号電圧の変化率成分Is(太線)を得ることができる。
同様に、第1副駆動部27A及び第2副駆動部27Bのそれぞれで構成されるコンデンサの静電容量が図9に示すように変化している場合、静電容量の変化に基づく電流は、静電容量の時間変化に比例する。そのため、静電容量が変化したことによる発生する電流は、図11に示すようになる。
図11に示す電流Ic1(実線)はコンデンサCp1の静電容量の変化によって第1副駆動部27Aの可動側電極272で発生する電流である。また、図11に示す電流Ic2(破線)はコンデンサCp2の静電容量の変化によって第2副駆動部27Bで発生する可動側電極272で発生する電流である。電流Ic1及び電流Ic2は静電容量の時間変化に比例するものである。そのため、電流Ic1、電流Ic2は、可動枠23の回動角度によって、図11に示すように変化する。
そして、電流Ic1及び電流Ic2を合成することで、可動枠23の揺動によって第1副駆動部27Aの可動側電極272と第2副駆動部27Bの可動側電極272との間に発生する電流の静電容量の変化率成分Ic(太線)を得ることができる。
上述しているように、可動枠23の回動によって発生する電流Iは、駆動信号電圧の変化率成分(電流)Isと、静電容量の変化率成分(電流)Icとの和である。図12は、可動枠23の回動によって第1副駆動部27Aの可動側電極272と第2副駆動部27Bの可動側電力272との間に流れる電流であり、図10に示す電流Isと図11に示す電流Icとを合成したものである。
図12に示すように、可動枠23が回動したときに副駆動部27で発生する電流は、一方の固定側電極271と可動側電極272とが近接しているときに振幅が大きい、すなわち、大きな電流が流れている。そして、可動枠23が固定枠22と平行(水平)となったときに、電流が0となり、反対側に触れるときには、流れる方向が逆であるが電流値は増える。つまり、可動枠23が固定枠22と平行のときに電流値が0であり、水平からの角度が大きく、固定側電極271と可動側電極272とが近接するほど、電流値が大きくなる。つまり、副駆動部27で検出される電流値は、符号は逆転する(電流の流れ方向が反対になる)が、水平からの角度によって対称となるような挙動を示す。
上述のとおり、図12の横軸は、可動枠23の回動角度であるとともに、時間とすることもできる。そのため、光走査素子20において、第1副駆動部27Aと第2副駆動部27Bの可動側電極272、272の間に合流れる電流から可動枠23の回動(揺動)状態(振幅、周波数等)を検出することができる。
光走査装置Aでは、可動枠23の固定枠22に対する回動によって副駆動部27で発生する電流を電流検出部36で検出している。電流検出部36は検出した電流から電流情報を出力する。次に電流検出部36の詳細について図面を参照して説明する。
図13は本発明にかかる光走査装置に用いられる電流検出部の一例の回路図である。図13に示す回路では、便宜上、一対の副駆動部27の等価回路図(コンデンサCp1、Cp2を並列に接続した図)も一緒に示している。図13に示すように、電流検出部36は、I/V変換部360、第1経路361、第2経路362、抽出部363、第1増幅部364及び第2増幅部365を備えている。
第1副駆動部27A及び第2副駆動部27Bそれぞれの可動側電極272に接続された配線は、I/V変換部360の入力部と接続している。I/V変換部360は検出した電流を電圧に変換する素子である。すなわち、可動枠23の固定枠22に対して回動したときに発生する電流はI/V変換部360で対応する電圧に変換される。なお、I/V変換部360は、電流を電圧に変換するものであるが、電流の特性、例えば、周波数等は電圧に変換されても保存される。また、振幅については、記憶部400に備えられている電流を電圧に変換するときの対応テーブルに基づいて、電圧信号から演算により取得できる。
第1経路361には、抽出部363と第1増幅部364が設けられている。また、第2経路362には、第2増幅部365が設けられている。I/V変換部360から出力された電圧は、第1経路361の抽出部363及び第2経路362の第2増幅部365に入力する。
抽出部363は入力された電圧に含まれる共振周波数成分を抽出する。そのため、抽出部363は共振周波数の信号を透過するバンドパスフィルタを含む構成である。そして、抽出部363で抽出された共振周波数成分の信号を第1増幅部364で増幅する。抽出部363では可動枠23の回動時に発生した共振周波数成分を抽出しており、第1増幅部364で増幅された信号は共振振動検出部32に送られる。
一方、第2経路362では、I/V変換部360から出力した電圧をそのまま、第2増幅部365で増幅する。そして、その増幅した電圧を電流情報として異常検出部33に供給する。上述のように、可動枠23の回動によって副駆動部27で発生した電流を検出し、I/V変換部360は、その電流を電圧に変換している。そのため、異常検出部33に供給される電圧は、副駆動部27で発生した電流の特性を有している。
次に異常検出部33による可動部23の停止等の異常の検出の動作について説明する。
異常検出部33は、光走査装置AでスクリーンScへの映像の描画が開始されると、描画期間において、任意のサンプリング点数(例えば、100点)で電流検出部36の第2増幅部365からの出力を検出電流として取得する。異常検出部33は、各サンプリング点での検出電流より検出電流の電流波形を取得し、検出電流の電流波形と記憶部400に記憶されている基準電流波形とを比較して、可動部23が停止等の異常状態にあるか否かの判断を行う。
図14は可動部の異常を検出するときに用いられる基準電流波形を示す図である。光走査装置Aにおいて、光走査素子20には、個体差があることが多く、光ビームの走査にばらつきが発生する。一定の条件(例えば、走査角度)で光ビームを走査する場合であっても、検出される電流が異なる場合がほとんどである。そのため、光走査装置Aでは、製造時に光走査素子20を通常運転させて、電流検出を行い、電流検出部36からの電流情報から電流波形を形成する。そして、その電流波形を基準電流波形として、記憶部400に記憶する。なお、図14に示す電流波形はI/V変換部360で反転されているため、図12の波形に対して上下反転しているが、それ以外は図12と対応する形状(特性)となっている。
異常検出部33は、各サンプリング点でサンプリングした電流値から得られた電流波形を取得する。そして、異常検出部33は電流波形と基準電流波形とを比較して、その差異が一定範囲に収まっているときは、通常運転している、と判断する。また、異常検出部33は、検出電流からの電流波形と基準電流波形との差が一定以上開いていると、可動枠23の停止(異常)を検出する。異常検出部33が可動枠23の停止を検出すると、光源制御部311はドライバ15に対して、光出射を強制的に停止する又は使用者に照射されても健康被害が出ない程度に出力を落とす旨の出射制限情報を送る。
このようにすることで、可動枠23が停止して光ビームの走査が行われなくなっても、光ビームが一定の場所に照射されて、照射場所が昇温したり劣化したりするのを抑制することができる。また、光ビームが使用者の目等に照射され続けて、視力低下や失明等の健康被害が発生するのを抑制することもできる。なお、ここでは、異常検出部33がサンプリング点数を決めて、そのサンプリング点に合わせて電流検出部36からの出力をサンプリングする構成としているが、これに限定されるものではない。例えば、電流検出部36がサンプリング点数を決め、サンプリング点に対応する出力を異常検出部33に受け渡す構成であってもよい。
次に、異常検出部33による可動枠23の停止等の異常の検出について説明する。本発明にかかる光走査装置Aでは、可動枠23の揺動に基づいて副走査部27に発生する電流を電流検出部36で検出し、異常検出部33がその電流の変化に基づいて可動枠23の異常を検出している。副走査部27で発生する電流は、駆動信号電圧の変化率成分と静電容量の変化率成分とを有している。
そのため、駆動信号に異常(例えば、駆動信号が供給されない)が発生すると、副走査部27で発生する電流の駆動信号電圧の変化率成分が通常動作に対して変化する。例えば、駆動信号が供給されなくなる場合が考えられる。そのため、駆動信号電圧が0になったとすると、駆動信号が変化しないので、副走査部27で発生する電流の駆動信号電圧の変化率成分も0となる。また、静電容量の変化率成分は、V(dC/dt)であるため、電圧Vが0であると、静電容量の変化率成分も0となる。以上のことから、副走査部27に発生する電流を電流検出部36で検出することで、異常検出部33は、駆動信号の異常による可動枠23の異常を検出することができる。すなわち、異常検出部33は、回路の断線や抵抗の増加等の配線の不良による可動枠23の動作の異常(たとえば、停止)を検出することが可能である。
また、異物の混入等で可動枠23が強制的に停止される場合もある。この場合、副駆動部27には通常動作時と同じ駆動信号が供給される。可動枠23が停止しているため、コンデンサCp1、Cp2の静電容量が変化しなくなる。つまり、副駆動部27で発生する電流の、静電容量の変化率成分が0となる。また、副駆動部27に発生する電流の駆動信号電圧の変化率成分はC(dV/dt)であり、コンデンサCp1、コンデンサCp2の静電容量が一定であることから、駆動信号電圧の変化率成分も変化する。そのため、副走査部27に発生する電流を電流検出部36で検出することで、異常検出部33は、可動枠23が強制的に停止されたことを検出することができる。なお、可動枠23が強制的に停止された位置によって、コンデンサCp1、Cp2の静電容量が異なるため、電流検出部36で検出された電流の波形は、可動枠23の停止位置によって異なる。以下に、可動枠23の停止位置ごとに、電流検出部36で検出される電流の波形について説明する。
まず、可動枠23が固定枠22と平行(可動枠23の回動のニュートラル位置とする)で停止した場合について説明する。可動枠23が停止しているため、副駆動部27で発生する電流は、駆動信号電圧の変化率成分のみとなる。さらに、上述のとおり、駆動信号電圧の変化率成分は、コンデンサの容量に比例する。
可動枠23がニュートラル位置のとき、コンデンサCp1とコンデンサCp2の静電容量は、図11に示すニュートラル位置の値で固定となる。ニュートラル位置でのコンデンサCp1及びコンデンサCp2の静電容量はほぼ同じである。そのため、駆動信号電圧の変化率成分は、図10の駆動信号電圧の変化率成分Isから、静電容量の変化による影響を取り除いたものとなる。
図15は可動枠が固定枠と平行な状態で停止したときの描画期間における電流値の変化を示すグラフである。副駆動部27で発生する電流は、静電容量の変化率成分が0である。つまり、副駆動部27で発生する電流は、駆動信号電圧の変化率成分だけである。そして、駆動信号電圧の変化率成分もコンデンサCp1及びCp2の静電容量が変化しない影響を受ける。すなわち、可動枠23がニュートラル位置で停止しているときの副駆動部27で発生する電流の電流波形は、図15に示すような波形となる。図15の波形は、図14に示す基準電流波形に対して、全体として振幅が小さい。そして、可動枠23の揺動の両端で振幅が小さくなっている。なお、コンデンサCp1とコンデンサCp2の静電容量が同じ又は略同じであるため、副駆動部27で発生する電流の電流波形は、符号は逆転する(電流の流れ方向が反対になる)が、水平からの角度によって対称である。
図16は可動枠が固定枠に対して最大傾斜した状態で停止しているときの描画期間における電流値の変化を示すグラフである。可動枠23が第1副駆動部27A又は第2副駆動部27Bのどちらか一方が他方に比べて固定側電極271と可動側電極272との副走査軸C2方向に重なる面積が大きい状態で停止する場合がある。ここでは、第2副駆動部27B側の固定側電極271と可動側電極272との副走査軸C2方向に重なる面積が、第1副駆動部27A側よりも大きいものとする。
この場合も可動枠23は停止しているため、副駆動部27で発生する電流の静電容量の変化率成分は0になる。また、コンデンサCp2の静電容量は上述のニュートラル位置で停止したときよりも大きく、コンデンサCp1の静電容量は上述のニュートラル位置で停止したときよりも小さい。
コンデンサCp1の静電容量が可動枠23がニュートラル位置にあるときよりも小さいため、ニュートラル位置よりも右側の部分では、ニュートラル位置で停止しているとき、すなわち、図15に示す電流波形のニュートラル位置より左側、の波形に比べて振幅が小さい。逆にニュートラル位置よりも左側の部分では、ニュートラル位置で停止しているとき、すなわち、図15に示す電流波形のニュートラル位置より右側、の波形に比べて振幅が大きい。図16に示すように、可動枠23がニュートラル位置に対して、どちらかに傾いて停止しているときには、副駆動部27で発生する電流値は、ニュートラル位置を挟んで対称とはならない。なお、図16に示す電流波形でも、図15と同様に、両端側の振幅が減少する形状となっている。
可動枠23が強制的に停止されると、電流検出部36で検出した副駆動部27で発生する電流の電流波形は、通常運転時の基準電流波形とは異なる形状となる。そして、異常検出部33は、検出電流情報からの電流波形と基準電流波形に対する変化を検出することで、駆動信号の異常による可動枠23の停止(異常)及び可動枠23の強制停止を検出している。より具体的には、異常検出部33は、記憶部400に予め記憶されている基準電流波形を呼び出し、基準電流波形と検出電流の電流波形とを比較して、その差異が一定の範囲を超えている場合に可動枠23の停止(異常)を検出する。
また、上述では、可動枠23の固定枠22に対する回動(揺動)が停止された場合について説明しているが、これに限定されない。例えば、何らかの部材に接触して、回動角度が抑制されたり、回動速度の変化(遅くなる又は速くなる)したりする場合でも、電流波形が変化する。そのため、異常検出部33は、検出した電流波形と基準電流波形と比較することで可動枠23が予め決められた動作以外の動作を行っていること、すなわち、可動枠23の異常を検出することもできる。上述しているように、異常検出部33は、可動枠23の停止以外の異常を検出した場合でも、異常を検出した旨の情報を光源制御部311に送信する。この情報は、停止情報と同じものであってもよいし、停止情報とは別の情報であってもよい。
このため、光走査装置Aでは、ミラー21(可動枠23)或いは光ビームの走査を検出するためのセンサを別途取り付けなくても通常運転の駆動信号が与えられている状態で発生する停止等の異常を検出することができる。
なお、電流検出部36において、第1増幅部364は抽出部363で抽出された周波数領域(共振周波数)の信号のみが入力するものである。第1増幅部364で増幅された信号は、共振振動検出部32に送られ、共振振動の検出に用いられる。共振振動によって発生する電流は小さいため、高い増幅率が必要である。一方、第2増幅部365で増幅された信号は、異常検出部33に送られ、可動枠23の異常(停止)の検出に用いられる。可動枠23の異常(停止)が発生した場合、副駆動部27で発生する電流の通常時との電流の変化量は、共振振動によって発生する電流よりも大きい。第2増幅部365は、I/V変換部360で変換された信号をそのまま増幅するものである。そのため、第2増幅部365として、第1増幅部364よりも増幅率が低いものを用いることが可能である。
本実施形態では、描画期間の可動枠23の動作によって、副駆動部27に発生する電流検出し、その電流を利用して、可動枠23の停止(異常)の検出を行っている。上述のとおり、描画期間では帰線期間に比べて、可動枠23はゆっくり動くために検出する電流値は小さくなるが、期間が長いため、低いサンプリング周波数でも正確な電流波形を取得することが可能である。
上述したとおり、本発明にかかる光走査装置Aでは、副走査の動作中発生する電流値に基づいて、可動枠23の停止(異常)を検出しているため、光走査素子20の停止(異常)を迅速かつ正確に検出することができる。そして、可動枠23の停止(異常)の検出後すぐに、光源11の停止又は出力を低下する動作を行うため、高出力の光ビームが目に照射されるのを抑制し、視力低下や失明等の健康被害を抑制することができる。また、出力が高い光ビームを一点に照射し続けることも抑制することができるので、光ビームの照射による過熱や物体の劣化等を抑制することも可能である。
(第2実施形態)
本発明にかかる光走査装置の他の例について説明する。本実施形態にかかる光走査装置は、第1実施形態にかかる光走査装置と同じ構成を有している。そのため、実質上同じ部分には、同じ符号を付すとともに、同じ部分の詳細な説明は省略する。
第1実施形態にかかる光走査装置の異常検出部33では、多数のサンプリング点(例えば、100点)で電流情報を取得し、そのサンプリング点での電流情報に基づいて電流波形を取得して基準電流波形と比較して可動枠23の停止(異常)を検出している。サンプリング点数が多いと、電流波形の精度は上昇するが、処理に要求される能力が高くなる。
図17は電流波形と特徴点とを示す図である。描画期間中に検出される電流の波形は、上述しているように、可動枠23の動作(揺動)状態に依存している。このことから、図17に示すように、電流波形の形状変化(電流値の変化)が大きい数点(ここでは4点)をサンプリング点として電流情報を検出する。ここでは、サンプリング点として、帰線期間から描画期間に切り替わった後の第1測定点Ms1、可動枠23がニュートラル位置に移動する前の第2測定点Ms2を設定している。また、可動枠23がニュートラル位置を越えた後の第3測定点Ms3、描画期間から帰線期間に切り替わる前の第4測定点Ms4を設定している。なお、第1測定点Ms1、第2測定点Ms2、第3測定点Ms3及び第4測定点Ms4は、安定した電流値を検出することができる点としている。
走査制御部312は、可動枠23の動作を制御するときに、帰線期間及び描画期間の開始/終了時刻を取得している。そのため、走査制御部312は、第1測定点Ms1、第2測定点Ms2、第3測定点Ms3及び第4測定点Ms4のタイミングを正確に異常検出部33又は電流検出部36に受け渡すことができる。これにより、異常検出部33は、正確に第1測定点Ms1、第2測定点Ms2、第3測定点Ms3及び第4測定点Ms4での電流値(電流波形)を取得することができる。
可動枠23が正常に動作しているときは、電流検出部36からの第1測定点Ms1、第2測定点Ms2、第3測定点Ms3及び第4測定点Ms4での電流値と、基準電流波形の対応する点の電流値は一致する又は略一致する(差が一定の範囲に入る)。
一方、上述したように、可動枠23が強制的に停止されると、各測定点で検出される電流値が基準電流波形から得られる電流値に対して変化する。そのため、異常検出部33は、各測定点で検出される電流値と基準電流波形の対応する点での電流値を比較して、その差が一定以上であれば、可動枠23の停止を検出する。
また、図16に示すように、可動枠23が停止すると、検出電流の電流波形自体が、これまで検出してきた波形と異なる場合がある。すなわち、可動枠23がニュートラル位置を越える前と超えた後とで変化が異なる場合がある。このような場合、検出電流の電流値を比較することで、可動枠23の停止を検出することが可能である。例えば、光走査素子20が通常運転状態のとき、電流波形は可動枠23がニュートラル位置を越える前後で、対称又は略対称な挙動(波形)となる。可動枠23の停止している場合、電流波形の対称性が崩れる場合があり、この対称性が崩れることを利用して、可動枠23の停止を検出することも可能である。
具体的に説明すると、通常運転時には、第1測定点Ms1と第4測定点Ms4では、符号が異なるが(流れる方向が異なるが)、同じ又は略同じ大きさの電流が流れる。また、第2測定点と第3測定点でも同様である。つまり、可動枠23が停止すると、第1測定点Ms1の電流値と第4測定点Ms4の電流値の大きさ、第2測定点の電流値と第3測定点の電流値の大きさとにずれ(電流波形のバランスのずれ)が生じる。異常検出部33はこの各測定点の電流値の大きさの差が一定以上になっているときに、可動枠23の停止を検出する。
さらには、可動枠23の回動(揺動)時におけるニュートラル位置の前又は後の一方で、位置が制限されたり、移動速度が制限されたりする場合がある。このような場合、電流波形のニュートラル位置の前の部分又は後ろの部分のバランスが変化する。そこで、異常検出部33は、第1測定点Ms1と第2測定点Ms2との比較及び(又は)第3測定点Ms3と第4測定点Ms4との比較を行う。そして、異常検出部33はその差が一定値よりも大きい場合に、可動枠23の回動に異常が発生していることを検出する。
また、可動枠23のニュートラル位置の前後で、波形自体が変化する場合もあり、第1測定点Ms1と第2測定点Ms2の電流値の差と第3測定点Ms3と第4測定点Ms4の電流値の差を比較して、それぞれの差に一定上の開きがあると可動枠23の回動に異常があるとすることもできる。
以上のように、電流波形の特徴を示す数点の電流値と、予め記憶されている基準電流波形の対応する点の電流値との比較或いは特徴点の電流値同士を比較するため、停止(異常)検出の処理量を大幅に減らすことができる。そのため、可動枠23の停止(異常発生)後から検知までの時間を短くすることが可能である。
これ以外の特徴は、第1実施形態と同じである。また、第1実施形態及び第2実施形態において、電流検出部36は描画期間の副駆動部27に発生する電流値を検出しているが、これに限定されるものではなく、帰線期間の副駆動部27に発生する電流値を検出してもよい。
(第3実施形態)
本発明にかかる光走査装置の他の例について図面を参照して説明する。図18は本発明にかかる光走査装置の他の例のブロック図であり、図19は図18に示す光走査装置に用いられる電流検出部を示す回路図である。図18に示すように、光走査装置A2は、処理部300の電流検出部37と、計測部38とが異なる以外は、図2に示す光走査装置Aと同じ構成である。そのため、光走査装置A2では、光走査装置Aと実質上同じ部分には、同じ符号を付すとともに、同じ部分の詳細な説明は省略する。
図18に示すように、光走査装置A2の処理部300では、共振振動検出部32と異常検出部33とを一つにまとめた計測部38を備えている。計測部38は、電流検出部37からの電流情報に基づいて、共振振動周波数の取得及び可動枠23の停止(異常)の検出を行っている。動作自体は、光走査装置Aの共振振動検出部32及び異常検出部33と同じであるので詳細は省略する。
電流検出部37は、I/V変換部370、第1経路371、第2経路372、スイッチ373、抽出部374及び増幅部375を備えている。I/V変換部370はI/V変換部360と同じである。第1経路371は、抽出部374を備えており、抽出部374は抽出部363と同じであり、入力された電圧のうち共振周波数の波長成分だけを抽出するフィルタである。抽出部374は増幅部375の入力に接続されている。
第2経路372は抽出部374をバイパスする経路であり、増幅部375の入力に接続されている。そして、スイッチ373は、同期部30からのフレーム同期信号に基づいて、I/V変換部370の出力端子と、第1経路371又は第2経路372のいずれかを択一的に接続する。
上述のとおり、非共振駆動される、可動枠23に共振振動が発生するとスクリーンScに投影される映像に副走査方向に明暗が発生する。この共振振動による映像の明暗を抑制するために、共振振動の検出は、描画期間であることが好ましい。また、可動枠23の回動速度が速いほうが、電流値が大きくなる。そのため、帰線期間に発生する電流を検出することで、可動枠23の異常の検出精度を高めることができる。
このことから、可動枠23の共振振動の検出は描画期間で発生した電流を利用する。また、停止(異常)の検出は基線期間で発生した電流を利用する。そのため、スイッチ373は、描画期間は第1経路371と、帰線期間は第2経路372と接続する。
そして、第1経路371及び第2経路372を通った電圧(信号)は、いずれも、増幅部375で増幅され、計測部38に入力する。計測部38はスイッチ373と同様に、走査制御部312から帰線期間と描画期間の情報を取得しており、描画期間には共振振動検出部として、帰線期間には異常検出部として作動する。なお、計測部38は、入力される信号に応じて、異なる処理、すなわち、共振振動検出又は可動枠23の停止(異常)検出を行うようにしてもよい。
以上示したように、I/V変換部370から出力された電圧は、スイッチ373で、描画期間には、第1経路371に送られ、帰線期間には、第2経路372に送られる構成である。そのため、共振の検出と異常の検出とで増幅部375を共用できるため、電流検出部を簡略化することが可能である。なお、増幅部375は、一定の増幅率のものであってもよいし、増幅率を変更可能なものであってもよい。たとえば、可動枠23がゆっくり回動する描画期間では、発生する電流値が小さい。そのため、描画期間の増幅率を高くすることで、共振により発生する電流を正確に検出できる。逆に、可動枠23が描画期間に比べて速く回動する帰線期間では、発生する電流値が大きい。そのため、発生電流値が高い帰線期間の増幅率を低くしても、電流の変化を精度よく検出できる。また、帰線期間は、描画期間に比べて、期間(時間)が短いため、増幅率を低くすることで、周波数帯域を広くする必要がある。この点からも、帰線期間の増幅率を、描画期間よりも低くすることで、帰線期間の電流の変化を精度よく検出できる。
これ以外の特徴は、第1実施形態及び第2実施形態と同じである。
(第4実施形態)
本発明にかかる光走査装置のさらに他の例について図面を参照して説明する。図20はフレーム同期信号と電流検出部で検出した電流の電流波形とを示す図である。図20は上段がフレーム同期信号であり、下段が電流波形である。また、横軸は時間である。本発明にかかる光走査装置は、第1実施形態の光走査装置Aと同様の構成を有しており、詳細な説明は省略するとともに、光走査装置Aを参照しつつ説明する。
図20に示すように、フレーム同期信号は、帰線期間はL(Low)であり、描画期間はH(High)の信号である。帰線期間と描画期間との1セットで1フレームを構成している。電流検出部36で帰線期間の電流も検出したとすると、帰線期間及び描画期間に検出される電流の電流波形は図20に示すようになる。すなわち、帰線期間の電流波形の最大振幅は、描画期間の電流波形の最大振幅よりも大きい。
上述したように、可動枠23は、描画期間はゆっくり回動し、帰線期間は速く回動するように動作制御されているためである。このことから、副駆動部27を駆動する駆動信号の電圧は、帰線期間のときに描画期間のときに比べて大きくなっている。そのため、帰線期間では描画期間に比べて電圧の変化率(時間変化)が大きくなり、可動枠23の揺動時に発生する電流の駆動信号電圧の変化率成分が大きくなる。また、静電容量の変化率は可動枠23の速度が速いほど大きくなるため、副駆動部27に発生する電流の静電容量の変化率成分も大きくなる。
そのため、帰線期間の電流波形の最大振幅は、描画期間の電流波形の最大振幅よりも大きくなる。そこで、本実施形態にかかる光走査装置では、帰線期間に発生する電流を検出する。これにより、検出電流値は、描画期間で検出していた電流値よりも大きくなる。なお、電流検出部36の構成は第1実施形態と同じであり、帰線期間に検出した電流に基づく電流情報を異常検出部33に対して送信する。帰線期間で可動枠23の回動によって発生する電流値を検出し、可動枠23の停止(異常)の検出を行っている。帰線期間では、発生する電流値が大きく、期間も短いため、増幅率を低くし、周波数帯域を上げる必要がある。そのため、第2増幅部365は、第1増幅部364に比べて低い増幅率となっている。
異常検出部33における可動枠23の停止(異常)の検出方法は、第1実施形態と同様である。すなわち、帰線期間内に複数個(例えば100個)のサンプリング点を設定し、そのサンプリング点での電流値から電流波形を生成し、予め記憶されている基準電流波形と比較する。実際には、サンプリング点の電流値と、サンプリング点に対応する基準電流波形から得た電流値とを比較する。すなわち、検出した電流の電流波形と基準電流波形とを比較している。そして、異常検出部33は、検出した電流の電流波形と基準電流波形とのずれが大きい場合、可動枠23が停止している(異常である)ことを検出する。
帰線期間は描画期間に比べて検出される電流値が大きいため、検出精度を高めることができる(例えば、増幅後のSN比を高くすることができる)。そのため、検出した電流の電流波形と基準電流波形との波形情報を比較するとき、波形情報に差が発生しやすく、可動枠23の停止(異常)を正確に検出することが可能である。
(第5実施形態)
第4実施形態では、検出した電流の電流波形と基準電流波形とを直接比較している。このような波形を直接比較する以外にも、可動枠23の停止(異常)により検出した電流の電流波形に変化が出やすい特徴部分の比較を行うことで、可動枠23の停止(異常)を検出できる場合もある。本実施形態では、特徴部分として、電流波形の極大値と極小値に着目した。
本実施形態にかかる異常検出部33による停止(異常)検出の具体的な方法について説明する。図21は停止検出の判定を行うときの条件を示す図である。図21は帰線期間に検出された電流の電流波形と通常運転時に検出された電流値より生成された基準電流波形とを示している。本実施形態では、帰線期間は予め決められているものであるとともに、可動枠23の動作が通常運転と同様に動作する場合、検出した電流の電流波形でも、極大値及び極小値を有する正弦波形となる。
そして、可動枠23が停止したときの電流波形に現れる挙動は、描画期間に検出した電流の電流波形と同じである。つまり、可動枠23が回動範囲のニュートラル位置の近傍で停止すると、振幅が小さくなり、傾いた位置で停止すると、極大値又は極小値のいずれか一方の絶対値が小さくなる。また、回動速度が変化するような構成である場合、電流波形が上下に移動する場合もある。なお、検出される電流値が描画期間よりも大きいため、電流波形の変化は描画期間の電流波形よりも大きくなる。
以上のような電流波形の特性を利用し、異常検出部33は、検出した電流の電流波形と基準電流波形との比較を行うときに、極大値同士及び極小値同士を比較することで、可動枠23の停止(異常)が発生したと判定する。より具体的には次のとおりである。異常検出部33は、複数個のサンプリング点で検出した電流の電流波形より極大値及び極小値を求める。そして、異常検出部33は、基準電流波形の極大値及び極小値を取得する。異常検出部33は、検出した電流の電流波形及び基準電流波形それぞれの極大値同士、極小値同士の差を求め、その差が一定の範囲を超えると、可動枠23の停止(異常)を検出する。
なお、検出した電流値は、回路上の誤差、光走査素子20の変化による誤差、周囲環境による誤差等が発生しており、ばらつきが生じるため、異常検出部33は極大値同士の差及び極小値同士の差が一定の範囲を超えたときに可動枠23が停止している(異常が発生している)と判断している。
以上示したように、帰線期間の可動枠23の回動時に副駆動部27に発生する電流値は、描画期間に比べて大きいため、電流値の検出精度が高くなる。このことから、可動枠23の停止(異常)の検出精度、すなわち、可動枠23の停止していない(異常が発生していない)状態のときに停止した(異常が発生した)と判断する誤検出を減らすことができる。これにより、誤検出による映像の中断を抑制することができるため、視聴者が不快感を覚えにくい。
また、帰線期間の電流を検出し、その電流情報に基づいて可動枠23の停止(異常)を検出する場合、電流値の特徴部分(極大値及び極小値)を容易に設定することができる。また、比較を行う点として2点で済み、比較処理を少なくすることができる。これにより、正確に停止(異常)を検出することができるとともに、可動枠23の停止(異常の発生)後、検出までに要する時間を減らすことが可能である。
これ以外の特徴については、第1実施形態から第4実施形態に示すものと同じである。
(第6実施形態)
本発明にかかる光走査装置のさらに他の例について図面を参照して説明する。本実施形態の光走査装置では、異常検出部33の代わりに異常検出部39を用いているが、それ以外の点については、第4実施形態(第1実施形態)の光走査装置と同じ構成を有している。そのため、異常検出部39以外の部分の詳細な説明は省略する。
第4実施形態の光走査装置では、電流情報を取得した異常検出部33は、電流情報から得た電流値をA/Dコンバータ(不図示)で数値化(デジタル化)している。このように、A/Dコンバータを用いると、回路構成が複雑になるとともに、処理に時間がかかる場合が多い。
そこで、本実施形態の異常検出部39は、電流値を2値化することで、異常の検出を行っている。ここで、異常検出部39の異常検出方法について図面を参照して説明する。図22は基準電流波形を示す図である。図22に示すように、基準電流波形の極大値は、第1閾値Sk1と第3閾値Sk3の間にあり、極小値は第2閾値Sk2と第4閾値Sk4の間にある。
異常検出部39は、電流検出部36からの電流情報に基づいた極大値が第1閾値Sk1と第3閾値Sk3の間にあるとともに、極小値が第2閾値Sk2と第4閾値Sk4の間にあるときは、(異常)を検出しない、すなわち、通常運転状態と判断する。この閾値は、光走査装置の誤差を許容するためのものであり、この閾値を適切に決めるとともに、電流値を各閾値を用いて2値化することで、簡単且つ正確に可動枠23の異常を検出することができる。また、閾値を変更することで、異常の種類(停止、回動の偏り等)を変更することも可能である。
次に本実施形態の異常検出部39の詳細について説明する。図23は本発明にかかる光走査装置に用いられる異常検出部の論理回路を示すブロック図である。図23に示すように、異常検出部39は、以下の構成を有している。第1〜第4比較回路391、392、393、394、第1〜第4保持回路395、396、397、398、リセット信号生成回路3910、AND回路3911、OR回路3912、NOT回路3913、保持回路3914及び判定回路3915を備えている。
異常検出部39は、電流検出部36の第2増幅部365で増幅された電流値に対応する電圧信号が、入力するように第1〜第4比較回路391、392、393、394が配置されている。上述しているように、実際の入力信号は電圧信号であるが、その電圧信号は検出した電流値を示しているものであるため、以下の説明では便宜上、電流値との比較を行っているものとして説明する。各比較回路はそれぞれ異なる閾値が設定されている。すなわち、第1比較回路391には第1閾値Sk1、第2比較回路392には第2閾値Sk2、第3比較回路393には第3閾値Sk3及び第4比較回路394には第4閾値Sk4が設定されている。
そして、第1比較回路391及び第3比較回路393は電流値がそれぞれ第1閾値Sk1及び第3閾値Sk3よりも大きいときにH(High)を出力する。また、第2比較回路392及び第4比較回路394は入力信号がそれぞれ第2閾値Sk2及び第4閾値Sk4よりも小さいときにH(High)を出力する。すなわち、第1比較回路391と第3比較回路393は極大値の範囲を、第2比較回路392と第4比較回路394は極小値の範囲をそれぞれ規定している。
第1〜第4比較回路391〜394の出力は、第1〜第4保持回路395〜398のそれぞれに入力する。第1〜第4保持回路395〜398にはリセット信号生成回路3910が接続されており、一旦、入力Hがあると、リセット信号生成回路3910からのリセット信号が入力されるまで、Hを出力し続ける(出力を保持する)。
第1比較回路391は極大値が第1閾値Sk1よりも大きいときに出力がHになり、第1保持回路395は出力Hを保持する。第2比較回路392は極小値が第2閾値Sk2よりも小さいときに出力がHになり、第2保持回路396は出力Hを保持する。上述の可動枠23の異常発生の判断の条件では、可動枠23に異常が発生している場合、極大値が第1閾値Sk1よりも小さくなるか又は極小値が第2閾値Sk2よりも大きくなる。
すなわち、可動枠23に異常が発生していない場合、極大値が第1閾値よりも大きくなり、且つ、極小値が第2閾値Sk2よりも小さくなる。このことから、可動枠23に異常が発生していないと判断するためには、第1保持回路395及び第2保持回路396の出力の論理積が出力Hである必要がある。そのため、第1保持回路395の出力と第2保持回路396の出力は、AND回路3911に入力される。
第3比較回路393は極大値が第3閾値Sk3よりも大きいときに出力Hであり、第3保持回路397が出力Hを保持する。また、第4比較回路394は極小値が第4閾値Sk4よりも小さいときに出力Hであり、第4保持回路398は出力Hを保持する。上述の可動枠23の停止の判断条件では、可動枠23の停止の場合、極大値が第3閾値よりも大きくなる又は極小値が第4閾値よりも小さくなる。このことから、第3保持回路397の出力と第4保持回路398の出力とはOR回路3912に入力される。第3保持回路397及び第4保持回路398の少なくとも一方が出力Hのとき、OR回路3912は出力Hである。
上述のとおり、OR回路3912は第3比較回路393又は第4比較回路394のどちらかが出力Hであるときに出力Hとなるため、可動枠23に異常が発生しているときOR回路3912は出力Hとなる。AND回路3911は、可動枠23に異常が発生していないときに第1保持回路395及び第2保持回路396からの入力がHである必要があり、OR回路3912の出力はNOT回路3913で反転されて、AND回路3911に入力する。
つまり、AND回路3911には、第1保持回路395、第2保持回路396及びNOT回路3913からの出力が入力している。AND回路3911の出力は保持回路3914に入力している。保持回路3914は同期信号生成部30からのフレーム同期信号が入力されている。フレーム同期信号は、描画期間はHであり帰線期間はLである。そして、保持回路3914は、フレーム同期信号がHのときは現在の入力を出力し、フレーム同期信号がLのときは直前の値を保持して、判定回路3915に受け渡す。
詳細は後述するが、保持回路3914は可動枠23に異常が発生していないときに出力Hであり、可動枠23に異常が発生しているときに出力Lとなる。そのため、判定回路3915は、保持回路3914が出力Hのときは可動枠23に異常が発生していないと判定し、出力Lのときは可動枠23に異常が発生していると判定する。判定回路3915は可動枠23に異常が発生していると判定したときに、光源制御部311に対して、可動枠23に異常が発生していることを示す停止情報を送信する。なお、異常発生情報としては、High又はLowの2値信号であってもよい。
次に、異常検出部39の動作について新たな図面を参照して説明する。図24は可動枠23に異常が発生していないときの信号を示すタイミングチャートである。図24は、最も上に、検出した電流の電流波形を示している。そして、上から、第1比較回路391、第1保持回路395、第2比較回路392、第2保持回路396、第3比較回路393、第3保持回路397、第4比較回路394及び第4保持回路398の出力を示している。そして、その下に、OR回路3912、NOT回路3913、AND回路3911の出力を示している。さらにその下には、フレーム同期信号、リセット信号及び保持回路3914の出力を示している。また、異常発生情報を2値(可動枠23に異常が発生しているときに出力H、可動枠23に異常が発生していないとき出力L)で示している。
本実施形態の異常検出部39では、描画期間の電流値の検出を行わない。そのため、第1〜第4比較回路391〜394は出力Lである。描画期間はフレーム同期信号がHである。そして、帰線期間に入るとフレーム同期信号がLに変わるとともに電流値の検出、すなわち、電流情報が入力され始める。
電流値は第3閾値Sk3より大きくなっていないので第3比較回路393は出力Lであり、第3保持回路397は出力Lである。同様に、電流値は第4閾値Sk4よりも小さくなることはないので、第4比較回路394は出力Lである。そのため、第3保持回路397、第4保持回路398は出力Lのままであるため、OR回路3912は出力Lであり、NOT回路3913は反転された出力HをAND回路に入力する。すなわち、検出された電流値が第3閾値Sk3よりも大きくなるか又は第4閾値Sk4よりも小さくなったときに、NOT回路3913は出力Lになる。
一定時間経過すると、検出された電流値が第1閾値Sk1(図22参照)を超える。このとき、第1比較回路391は出力Hであり第1保持回路395に送るとともに、第1保持回路395は出力Hを保持する。なお、各保持回路はリセット信号によってリセットされると出力Lになるものとする。リセット信号については後述する。
そして、電流値は極大値に到達した後減少し、第1閾値Sk1よりも小さくなる。このとき、第1比較回路391は出力Lになるが、第1保持回路395の出力は保持されるため、出力Hとなる。
図22に示すように時間とともに電流値が減少していき、あるタイミングでは電流値は第2閾値Sk2よりも小さくなる。そのとき、第2比較回路392はH信号を第2保持回路396に送るとともに、第2保持回路396は出力Hを保持する。そして、電流値は極大値に到達した後増加し、第3閾値Sk2よりも大きくなる。このとき、第2比較回路392は出力Lになるが、第2保持回路396は出力Hを保持する。
図24に示す状態では、帰線期間においてNOT回路3913は出力Hであり、第1保持回路391の出力、第2保持回路392の出力及びNOT回路3913の出力の論理積であるAND回路3911は出力Hである。そのため、第2比較回路392が出力Hになった後、すなわち、極小値が第2閾値Sk2よりも小さいことを確認した後、保持回路3914は出力Hを保持する。これにより、判定回路3915は可動枠23に異常が発生していないと判定する。
また、図24に示す例では、電流波形の極大値が第3閾値Sk3よりも小さく、極小値が第4閾値Sk4よりも大きい状態である。第3比較回路393及び第4比較回路394が出力Hになることはなく、保持回路3914が出力Lにはならない。
本実施形態では、帰線期間の電流値を検出するものであり、帰線期間の間にAND回路3911は出力Hになる。そして、AND回路3911に入力される信号は、帰線期間が終了すると保持される。すなわち、AND回路3911の出力は描画期間で反転しない。保持回路3914では、描画期間は入力信号をそのまま出力信号として出力するものであり、AND回路3911は出力Hである。また、帰線期間の保持回路3914の出力は、前値を保持するため、描画期間に出力Hを保持している状態では、出力Hを保持する。
以上ようにして、異常検出部39は、可動枠23に異常が発生していないときに、可動枠23に異常が発生していないことを判定することができる。リセット信号は、第1〜第4保持回路395〜398を次の電流値の検出に備える状態とするためにリセットしている。そして、保持回路3914が帰線期間において前値を保持する特性を有するため、帰線期間になった直後に第1〜第4保持回路395〜398をリセットすると、AND回路3911が出力Lとなってしまい、前値保持ができなくなる場合がある。その前値保持を行うために、リセット信号は、フレーム同期信号がHからLに変わった直後から一定時間経過した後にパルス状に出力されるものとしている。
次に、可動枠23の異常発生を検出するときについて説明する。図25は極大値が第1閾値よりも小さい及び極小値が第2閾値よりも大きいときの可動枠の異常の発生を示すタイミングチャートである。図25では3フレーム表示しているうちの2番目フレームで可動枠23の停止が検出されているものである。図25に示すように、最初のフレームは図24と同じで可動枠23の異常の発生は検出されない。そして、2フレーム目に、電流波形の極大値が第1閾値Sk1よりも大きくならず、帰線期間が終了するまでに第1比較回路391が出力Hにならず、2フレーム目の帰線期間終了後に、第1保持回路395は出力Lを保持する。
また、同様に極小値が第2閾値Sk2よりも小さくならないため、帰線期間が終了するまでに第2比較回路392が出力Hにならず、3フレーム目の帰線期間終了後に、第2保持回路396は出力Lを保持する。このため、3フレーム目の帰線期間終了時には、AND回路3911の入力の少なくとも一つが入力Lとなるため、AND回路3911は出力Lとなる。帰線期間終了時にAND回路3911が出力Lの場合、描画期間に現在の入力を出力する保持回路3914は出力Lとなり、判定回路3915は、可動枠23に異常が発生していると判定する。
なお、ここでは、極大値が第1閾値Sk1よりも小さく、且つ、極小値が第2閾値Sk2よりも大きい状態のときについて説明しているが、これに限定されない。たとえば、極大値が第1閾値Sk1よりも小さい又は極小値が第2閾値Sk2よりも大きい、どちらかの条件が成立すると第1保持回路391又は第2保持回路392のいずれかが出力Lとなるため、保持回路3914が出力Lとなる。
すなわち、帰線期間で可動枠23に異常が発生していると判断される挙動(極大値が第1閾値Sk1よりも小さい又は極小値が第2閾値Sk2よりも大きい)が検出された後、帰線期間の終了とともに、保持回路3914が出力Lになる。そのため、異常検出部39は、帰線期間終了直後に可動枠23の停止を検出し、停止情報を光源制御部311に送信する。
さらに、可動枠23に異常が発生したときの電流波形の挙動として、極大値が第3閾値Sk3よりも大きくなる又は極小値が第4閾値Sk4よりも小さくなる場合がある。このような場合の異常検出部39の動作について図面を参照して説明する。図26は極大値が第3閾値よりも大きい及び極小値が第4値よりも小さいときの異常の発生を示すタイミングチャートである。
図26は図25と同様、3フレーム表示しているうちの最終フレーム終了後、可動枠23の異常が発生しているものである。図26に示すように、前半2フレームは図24と同じで可動枠23の異常の発生は検出されない。そして、3フレーム目に、電流波形の極大値が第3閾値Sk3よりも大きくなると、第3比較回路393が出力Hとなる。そして、第3保持回路397は出力Hを保持する。また、3フレーム目に、電流波形の極小値が第4閾値Sk4よりも小さくなると、第4比較回路394が出力Hとなる。そして、第4保持回路398は出力Hを保持する。
第3保持回路397及び第4保持回路398はOR回路3912に入力しており、少なくとも一方が出力Hの場合、OR回路3912は出力Hとなり、NOT回路3913で反転されてAND回路3911に入力される。そのため、第3比較回路393が出力H又は第4比較回路394が出力Hになると、NOT回路3913が出力Lとなり、AND回路3911が出力Lになる。そして、帰線期間が終了したときにも第3保持回路397が出力Hを保持する及び(又は)第4保持回路398が出力Hを保持するため、AND回路3911も出力Lとなる。
そのため、3フレーム目の帰線期間終了時には、AND回路3911の入力の少なくとも一つが入力Lとなるため、AND回路3911は出力Lとなる。帰線期間終了時にAND回路3911が出力Lの場合、描画期間に現在の入力を出力する保持回路3914は出力Lとなり、判定回路3915は可動枠23に異常が発生していると判定する。
なお、ここでは、極大値が第3閾値Sk3よりも大きく、且つ、極小値が第4閾値Sk4よりも小さい状態のときについて説明しているが、これに限定されない。たとえば、極大値が第3閾値Sk3よりも大きい又は極小値が第4閾値Sk4よりも小さいの、どちらかの条件が成立すると第3保持回路393又は第4保持回路394のいずれかが出力Lとなるため、保持回路3914が出力Lとなる。
すなわち、帰線期間で可動枠23が停止していると判断される挙動(極大値が第3閾値Sk3よりも大きい又は極小値が第4閾値Sk4よりも小さい)が検出された後、帰線期間の終了とともに、保持回路3914が出力Lになる。そのため、異常検出部39は、帰線期間終了直後に可動枠23の異常の発生を検出し、異常発生情報を光源制御部311に送信する。
本実施形態に示すような異常検出部39を用いることで、電流値を数値化するA/Dコンバータを用いないので、構成が簡単なる。また、電流情報を2値化して処理を行うため、処理が簡単であり、短時間で、正確に可動枠23に異常が発生したことを検出することが可能である。
これ以外の特徴は、第4実施形態及び第5実施形態と同じである。
(第7実施形態)
第4実施形態、第5実施形態では、電流波形の変化を極大値又は極小値の電流値、すなわち、振幅の変化に注目し、振幅の変化で停止を検出していた。可動枠23に異常が発生すると、振幅だけでなく、位相が変化することがあり、位相の変化を検出することで可動枠23の異常の発生を検出することも可能である。以下に本実施形態にかかる光走査装置の可動枠23の異常検出について説明する。
図27は本発明にかかる光走査装置の可動枠の異常検出を行うときの電流波形を示す図である。図27では、基準電流波形と、可動枠23に異常が発生しているときの検出した電流の電流波形を示している。なお、実線は、振幅が変化した例の電流波形を示しており、破線は、振幅および位相が変化した例の電流波形を示している。
図27では、極大値よりも小さい第1閾値Sk1と、極小値よりも大きい第2閾値Sk2とを設定している。なお、第1閾値Sk1と第2閾値Sk2は、図22に示す第1閾値Sk1と第2閾値Sk2と同じ値である。
図27に示すように、基準電流波形の第1閾値Sk1と最初に交差する点を第1点P1、次に交差する点を第2点P2、第2閾値Sk2と最初に交差する点を第3点P3、次に交差する点を第4点P4とする。
検出した電流の電流波形が基準電流波形よりも振幅が小さい場合、第1点P11と第2点P21との間の時間が短くなるとともに、第3点P31と第4点P41との間の時間が短くなる。また、基準電流波形の第1点P1に比べて第1点P11の位置が帰線期間内で遅れる。また、極大値又は極小値の一方が大きくなったり小さくなったりした場合でも、第1点と第2点の間の時間、第3点と第4点の間の時間が変化する。
また、検出した電流の電流波形が時間方向にずれる(位相がずれる)場合もある。図27に位相がずれた電流波形を点線で示している。このような場合、上述の第1点P11が第1点P12に、第2点P21が第2点P22に、第3点P31が第3点P32に、第4点P41が第4点P42にそれぞれ、時間方向にずれる。すなわち、第1点から第4点を検出することで、振幅の変化及び位相のずれを検出することができる。
このように、検出した電流の電流波形が所定の値となるときの時間を検出し、基準電流波形に対する変化に基づいて、可動枠23に異常が発生していることを検出することができる。さらに、振幅だけでなく位相の変化も検出することができるため、可動枠23に発生した異常の内容(場合によっては原因)を取得することができる。すなわち、異常検出部33は、検出した電流の電流波形の位相情報を基準情報の位相情報と比較することで、可動枠23の異常およびその内容を検出することも可能である。
このような位相情報を利用して可動枠23の停止を検出する方法として、数値化した電流情報から位相情報を取得して比較してもよいが、処理量が多くなりやすい。
そこで、予め基準電流波形を第1閾値Sk1及び第2閾値Sk2で2値化したパルス波形のエッジを取得して記憶しておく。そして、検出した電流の電流波形を第1閾値Sk1及び第2閾値Sk2で2値化して、パルス波形に変換し、そのパルス波形のエッジを検出する。そして、基準電流波形のパルス波形のエッジ部と、検出した電流の電流波形からのエッジを比較して、その比較結果から可動枠23の異常を検出する。
このように、2値化したパルス波形のエッジを検出しそれを比較するため、処理を簡略化することが可能である。また、位相から変化を取得する構成であるため、閾値が少なく、それだけ、回路構成を小さくすることも可能である。特に、A/Dコンバータを用いるものに比べて処理速度を上げることも可能である。
これ以外の特徴については、第4実施形態〜第6実施形態と同じである。
(第8実施形態)
本発明にかかる光走査装置のさらに他の例について図面を参照して説明する。図28は本発明にかかる光走査装置のブロック図であり、図29は図28に示す光走査装置に用いられる電流検出部の概略回路図である。図28に示す光走査装置A3は、処理部300に電流検出部36Bが増幅率可変の第2増幅部367を備えているとともに、温度を測定する温度測定部50を備えている以外、光走査装置Aと同じである。そのため、光走査装置A3において、光走査装置Aと同じ部分には、同じ符号を付すとともに同じ部分の詳細な説明は省略する。
図29に示すように、光走査装置A3において、処理部300の電流検出部36Bには、増幅率を変更できる(すなわち、増幅率可変の)第2増幅部367を備えている。第2増幅部367は制御部31からの制御信号で増幅率を変更することができる構成となっている。
本実施形態の光走査装置A3では、帰線期間で可動枠23の回動によって発生する電流値を検出し、停止等の異常の検出を行っている。帰線期間では、発生する電流値が大きく、期間も短いため、増幅率を低くし、周波数帯域を上げる必要がある。また、可動枠23の回動角度によっても発生する電流値が異なるため、第2増幅部367は増幅率を可変としている。
増幅率可変の第2増幅部367を用いることで、可動枠23の要求される回動角度が変化して、電流値が変化した場合であっても、その回動角度の変化に対応したで増幅率とすることで、検出した電流の電流波形と基準電流波形とを比較することができる。例えば、可動枠23の角度と増幅率とを対応させた角度補正テーブル401を記憶部400に記憶しておき、制御部31は可動枠23の回動角度に基づいて増幅率を算出し、第2増幅部367の増幅率を調整するようにしてもよい。なお、角度補正テーブル401としては、角度と増幅率とを対応させた表やグラフを挙げることができるがこれに限定されない。また、角度補正テーブル401に替えて或いはこれとともに角度と増幅率との関係の演算式を記憶しておき、演算式を利用して増幅率を算出するようにしてもよい。
このように、増幅率を変更することで、検出した電流の電流波形と基準電流波形との比較を容易に行うことが可能であり、それだけ、処理量を減らすことができる。なお、検出した電流の電流波形と基準電流波形との比較は、第4実施形態から第7実施形態のいずれかに示した方法であってもよいし、別の方法であってもよい。
また、本発明にかかる光走査装置A3では、処理部300に高い処理能力を要求される。処理部300の処理能力が高くなると、動作時の発熱量が多くなる。電流検出部36Bの回路は熱の影響で特性が変化したり性能が低下したりして、電流検出部36Bから出力される電流情報がばらつく。また、第1弾性支持部24も熱によって弾性係数が変化する場合もあり、同じ駆動信号が供給されている場合でも、回動角度が変化する場合もある。
このような熱による回路の変化、光走査素子20の物理特性の変化等のばらつきを補正するため、温度測定部50で周囲の温度を測定している。そして、制御部31は温度測定部50で測定された温度情報に基づいて、第2増幅部367の増幅率を調整している。
記憶部400には、例えば、可動枠23の回動角度、検出温度及び増幅率を関連付けた温度補正テーブル402或いは演算式が記憶されている。そして、制御部31は、記憶部400から温度補正テーブル402を呼び出し、検出温度及び(又は)回動角度から増幅率を算出する。そして、算出した増幅率に基づいて、第2増幅部367の増幅率を調整する。
このように、可動枠23の異常検出に用いる増幅部(第2増幅部367)の増幅率を調整(補正)することで、可動部23の回動角度による検出電流の変化や、環境温度による検出電流の変化を補正することができるため、可動枠23の異常の発生を正確に検出することが可能である。また、増幅率を補正するだけの簡単な制御であるため、電流値自体を補正する場合に比べて処理量を減らすことが可能である。
これ以外の特徴については、第4実施形態〜第7実施形態と同じである。
(第9実施形態)
本発明にかかる光走査装置のさらに他の例について図面を参照して説明する。図30は本発明にかかる光走査装置の他の例のブロック図であり、図31は図30に示す光走査装置に用いられる電流検出部を示す回路図である。図30に示すように、光走査装置A4は、電流検出部37Bが異なる以外、図18に示す光走査装置A2と同じである。そのため、光走査装置A4では、光走査装置A2と実質上同じ部分には、同じ符号を付すとともに、同じ部分の詳細な説明は省略する。
図30に示すように、光走査装置A4の処理部300において、計測部38は、電流検出部37Bからの電流情報に基づいて、共振振動周波数の取得及び停止の検出を行っている。
電流検出部37Bは、I/V変換部370、第1経路371、第2経路372、抽出部374、第1増幅部376、第2増幅部377及びスイッチ378を備えている。電流検出部37Bは、図19に示す電流検出部37からスイッチ373及び増幅部375を省くとともに、第1増幅部376、第2増幅部377及びスイッチ378を追加した構成である。そのため、実質的に同じ部分については、詳細な説明を省略する。
I/V変換部370の出力は、第1経路371及び第2経路372の両方と接続されている。第1経路371は、抽出部374で入力された電流情報(電圧)のうち共振周波数の波長成分だけを抽出する。抽出部374は第1増幅部376の入力に接続されている。
第2経路372は第2増幅部377を備えている。第2経路372に入力された電圧は第2増幅部377で増幅される。なお、第2増幅部377は、第8実施形態で示した第2増幅部367と同じく増幅率が可変であり、制御部31からの制御信号に基づいて増幅率が調整される。
スイッチ378は、第1経路371(第1増幅部376の出力)又は第2経路372(第2増幅部377の出力)と計測部38とを択一的に接続する。そして、スイッチ378は、同期部30からのフレーム同期信号に基づいて駆動している。なお、可動枠23の異常の検出は帰線期間の電流波形を利用するものであるため、スイッチ378は、描画期間は第1経路371と帰線期間は第2経路372と接続する。
計測部38はスイッチ378と同様に、フレーム同期信号から帰線期間と描画期間の情報を取得しており、描画期間には共振振動検出部として、帰線期間には異常検出部として作動する。なお、計測部38は、入力される信号に応じて、異なる処理(共振振動検出又は異常検出)を行うようにしてもよい。
このような構成とすることで、増幅部の個数を減らすことができるため、電流検出部を小型化することが可能である。
これ以外の特徴は、上述の各実施形態と同じである。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの内容に限定されるものではない。また本発明の実施形態は、発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の改変を加えることが可能である。また、上記各実施形態は適宜組み合わせて実施することも可能である。