JP6848194B2 - 多孔質膜 - Google Patents

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Description

本発明は、多孔質膜に関する。
近年、種々の分離特性を持つ多孔質膜が開発されている。分離特性を持つ多孔質膜は、例えば、分離する分子や粒子の大きさにより、逆浸透膜、限外ろ過膜および精密ろ過膜に分類され、電子工業、製薬および医療分野における超純水の製造や、食品分野における果汁の濃縮等の種々の用途に使用されている。かかる膜の製造技術の進歩に伴い、有機溶媒中や高温度条件下等の過酷な条件下においても所定の分離性能を発揮する膜が要望されている。
従来から、多孔質膜の材料としては、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロポレン、酢酸セルロース系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコン系樹脂、及びポリアミド系樹脂等が使用されている。これらのうち、ポリスルホン系及びポリエーテルスルホン系樹脂は、耐熱性に優れ、特に精密ろ過膜および限外ろ過膜の製造が比較的容易であるため、耐熱用の限外ろ過膜等として幅広く用いられている。
しかしながら、ポリスルホン系及びポリエーテルスルホン系樹脂等の熱可塑性樹脂は、耐熱性に優れているが、耐溶剤性および耐薬品性が不十分である。
特許文献1には、多孔質膜をエポキシ系樹脂溶液に浸漬させた後、エポキシ系樹脂を硬化させて多孔質膜の一部にエポキシ系樹脂の被覆層を設けることで、多孔質膜に耐溶剤性および耐薬品性を与える方法が記載されている。しかしながら、この方法では、被覆層で膜全体を均一に被覆することができないため、十分な耐溶剤性を達成できない。
特許文献2には、フッ素樹脂からなる多孔質体に親水性モノマーを含浸させ、紫外線照射により架橋させることで、多孔質体に耐溶剤性および耐薬品性を与える方法が記載されている。しかしながら、この方法では、紫外線の照射により多孔質体が劣化し、機械的強度が低下するという問題がある。
なお、多孔質膜は、分離特性が要求されない用途でも利用され得る。例えば、特許文献3には、透明性多孔質樹脂層を用いた熱転写記録シートが記載されている。
特開平1−171604号公報 特開平5−131124号公報 特開平3−159791号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、耐溶剤性に優れた多孔質膜を提供することを目的とする。
本発明の一側面によると、脂環式エポキシ化合物(A)と、ポリオール化合物(B)と、酸発生剤(C)とを含んだ樹脂組成物の硬化物からなり、前記脂環式エポキシ化合物(A)と前記ポリオール化合物(B)との合計量に占める前記脂環式エポキシ化合物(A)の量の割合は55乃至85質量%の範囲内にあり、前記酸発生剤(C)の量は、前記脂環式エポキシ化合物(A)と前記ポリオール化合物(B)との合計量100質量部に対して0.05乃至0.1質量部の範囲内にある多孔質膜が提供される。
前記脂環式エポキシ化合物(A)は、分子内に2以上のエポキシ基を有していてもよい。
前記脂環式エポキシ化合物(A)は、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート及びε−カプロラクトン変性3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートの少なくとも一方であってもよい。
前記ポリオール化合物(B)は、ポリカプロラクトントリオール及びポリカーボネートジオールの少なくとも一方であってもよい。
前記酸発生剤(C)はスルホニウム塩を含んでいてもよい
細孔の平均孔径は0.01乃至1μmの範囲内にあり、最大孔径は2μm以下であってもよい。
波長400nmにおける光線透過率が30乃至95%の範囲内にあってもよい。
膜厚が1乃至100μmの範囲内にあってもよい。
また、本発明の他の側面によると、多層構造を構成している2以上の層を備え、それら層の少なくとも1つは、上記多孔質膜である多層膜が提供される。
本発明によると、耐溶剤性に優れた多孔質膜が提供される。
本発明の一実施形態に係る多孔質膜を概略的に示す断面図。 本発明の一実施形態に係る多層膜を概略的に示す断面図。
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同様又は類似した機能を有する要素については、同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
<多孔質膜>
図1は、本発明の一実施形態に係る多孔質膜を概略的に示す断面図である。
この多孔質膜1は、単層構造を有している自立膜である。ここで使用する用語「自立膜」とは、基板などの支持体によって支持されなくとも、それ自体を単独で取り扱うことができる膜を意味している。
多孔質膜1は、多数の細孔を有している。これら細孔は、多孔質膜1の一方の主面に隣接した領域と他方の主面に隣接した領域とを繋いでいる。
多孔質膜1は、膜分離を含む様々な用途に使用することができる。多孔質膜1を膜分離に使用する場合、多孔質膜1を単独で使用してもよいが、多孔質膜1と他の1以上の層とを含んだ多層フィルムの形態で使用することもできる。この多層フィルムについては、後で説明する。
多孔質膜1の細孔は、最大孔径が2μm以下であることが好ましい。また、多孔質膜1の細孔は、平均孔径が0.01乃至1μmの範囲内にあることが好ましく、0.015乃至0.9μmの範囲内にあることがより好ましく、0.02乃至0.8μmの範囲内にあることが更に好ましい。細孔がそのような平均孔径を有している多孔質膜1は、例えば、精密ろ過膜や限外ろ過膜における中間層としての利用に適している。
多孔質膜1の空孔率は、40乃至80体積%の範囲内にあることが好ましく、50乃至80体積%の範囲内にあることがより好ましく、60乃至80体積%の範囲内にあることが更に好ましい。多孔質膜1を例えば膜分離に利用する場合、空孔率が大きいほど、より効率的に分離を行うことができる。しかしながら、空孔率が過剰に大きくなると、多孔質膜1の損傷を生じ易くなる。
多孔質膜1は、例えば、高い光線透過率を有している。一例によれば、多孔質膜1は透明である。多孔質膜1の波長400nmにおける光線透過率は、30乃至95%の範囲内にあることが好ましく、40乃至95%の範囲内にあることがより好ましく、50乃至95%の範囲内にあることが更に好ましく、70乃至95%の範囲内にあることが特に好ましい。
多孔質膜1の膜厚は、1乃至100μmの範囲内にあることが好ましく、5乃至80μmの範囲内にあることがより好ましく、10乃至60μmの範囲内にあることが更に好ましい。膜厚が小さすぎると、多孔質膜1の強度が不十分となる可能性がある。膜厚が大きすぎると、膜分離が困難になるか、又は、多孔質膜1から透明性が失われる可能性がある。
多孔質膜1のガラス転移点又は軟化点は、60乃至120℃の範囲内にあることが好ましく、70乃至110℃の範囲内にあることがより好ましく、80乃至100℃の範囲内にあることが更に好ましい。ガラス転移点又は軟化点が低すぎると、多孔質膜1の使用環境によっては、その塑性変形を生じる可能性がある。
多孔質膜1は、以下に説明する樹脂組成物の硬化物からなる。
<樹脂組成物>
樹脂組成物は、脂環式エポキシ化合物(A)と、ポリオール化合物(B)と、酸発生剤(C)とを含んでいる。以下に、各成分について説明する。
[脂環式エポキシ化合物(A)]
脂環式エポキシ化合物(A)は、1分子内に脂環(脂肪族環)構造とエポキシ基とを含んだ化合物である。エポキシ基は、脂環において互いに隣り合った2つの炭素原子と酸素原子とで構成されていてもよく(以下、そのようなエポキシ基を「脂環エポキシ基」と称する)、脂環に単結合で直接結合していてもよい。
脂環式エポキシ化合物(A)が1分子内に含む脂環構造の数は、1であってもよく、2以上であってもよい。また、脂環式エポキシ化合物(A)が1分子内に含むエポキシ基の数は、1であってもよく、2以上であってもよい。一例によれば、脂環式エポキシ化合物(A)は、1分子内に、2つの脂環構造と、2つのエポキシ基とを含み、それらエポキシ基は別々の脂環構造の炭素原子を含んだ脂環エポキシ基である。
脂環エポキシ基を有する化合物としては、公知乃至慣用のものの中から任意に選択して使用することができる。脂環エポキシ基を有する化合物は、シクロヘキサン環において互いに隣り合った2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基を有すること、即ち、シクロヘキセンオキシド基を有する化合物であることが好ましい。
脂環エポキシ基を有する化合物としては、特に、耐熱性、耐光性、及び透明性の点で、下記一般式(I)で表される脂環式エポキシ化合物(脂環式エポキシ樹脂)が好ましい。一般的に、エポキシ化合物は耐熱性に優れている。しかしながら、ビスフェノールA型エポキシ化合物等のベンゼン環を有するエポキシ化合物は、共役二重結合を有しているため、共役二重結合を有していないエポキシ化合物と比較して透明性の点で劣る。下記一般式(I)で表される脂環式エポキシ化合物を使用した場合、特に高い透明性を達成できる。
Figure 0006848194
上記一般式(I)において、R乃至R18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。
有機基としては、例えば、炭化水素基であっても、炭素原子とハロゲン原子とからなる基であっても、炭素原子及び水素原子とともに、ハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、及びケイ素原子のようなヘテロ原子を含むような基であってもよい。ハロゲン原子の例としては、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子、及びフッ素原子等が挙げられる。
有機基としては、炭化水素基と、炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる基と、ハロゲン化炭化水素基と、炭素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる基と、炭素原子、水素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる基とが好ましい。有機基が炭化水素基である場合、炭化水素基は、芳香族炭化水素基でも、脂肪族炭化水素基でも、芳香族骨格と脂肪族骨格とを含む基でもよい。
炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、及びn−イコシル基等の鎖状アルキル基;ビニル基、1−プロペニル基、2−n−プロペニル基(アリル基)、1−n−ブテニル基、2−n−ブテニル基、及び3−n−ブテニル基等の鎖状アルケニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、ビフェニル−4−イル基、ビフェニル−3−イル基、ビフェニル−2−イル基、アントリル基、及びフェナントリル基等のアリール基;並びに、ベンジル基、フェネチル基、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、α−ナフチルエチル基、及びβ−ナフチルエチル基等のアラルキル基が挙げられる。
ハロゲン化炭化水素基の具体例としては、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、及びパーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロノニル基、及びパーフルオロデシル基等のハロゲン化鎖状アルキル基;2−クロロシクロヘキシル基、3−クロロシクロヘキシル基、4−クロロシクロヘキシル基、2,4−ジクロロシクロヘキシル基、2−ブロモシクロヘキシル基、3−ブロモシクロヘキシル基、及び4−ブロモシクロヘキシル基等のハロゲン化シクロアルキル基;2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,3−ジクロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,5−ジクロロフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、3−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、及び4−フルオロフェニル基等のハロゲン化アリール基;並びに、2−クロロフェニルメチル基、3−クロロフェニルメチル基、4−クロロフェニルメチル基、2−ブロモフェニルメチル基、3−ブロモフェニルメチル基、4−ブロモフェニルメチル基、2−フルオロフェニルメチル基、3−フルオロフェニルメチル基、及び4−フルオロフェニルメチル基等のハロゲン化アラルキル基が挙げられる。
炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる基の具体例としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシ−n−プロピル基、及び4−ヒドロキシ−n−ブチル基等のヒドロキシ鎖状アルキル基;2−ヒドロキシシクロヘキシル基、3−ヒドロキシシクロヘキシル基、及び4−ヒドロキシシクロヘキシル基等のハロゲン化シクロアルキル基;2−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、2,3−ジヒドロキシフェニル基、2,4−ジヒドロキシフェニル基、2,5−ジヒドロキシフェニル基、2,6−ジヒドロキシフェニル基、3,4−ジヒドロキシフェニル基、及び3,5−ジヒドロキシフェニル基等のヒドロキシアリール基;2−ヒドロキシフェニルメチル基、3−ヒドロキシフェニルメチル基、及び4−ヒドロキシフェニルメチル基等のヒドロキシアラルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、及びn−イコシルオキシ基等の鎖状アルコキシ基;ビニルオキシ基、1−プロペニルオキシ基、2−n−プロペニルオキシ基(アリルオキシ基)、1−n−ブテニルオキシ基、2−n−ブテニルオキシ基、及び3−n−ブテニルオキシ基等の鎖状アルケニルオキシ基;フェノキシ基、o−トリルオキシ基、m−トリルオキシ基、p−トリルオキシ基、α−ナフチルオキシ基、β−ナフチルオキシ基、ビフェニル−4−イルオキシ基、ビフェニル−3−イルオキシ基、ビフェニル−2−イルオキシ基、アントリルオキシ基、及びフェナントリルオキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、α−ナフチルメチルオキシ基、β−ナフチルメチルオキシ基、α−ナフチルエチルオキシ基、及びβ−ナフチルエチルオキシ基等のアラルキルオキシ基;メトキシメチル基、エトキシメチル基、n−プロピルオキシメチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−n−プロピルオキシエチル基、3−メトキシ−n−プロピル基、3−エトキシ−n−プロピル基、3−n−プロピルオキシ−n−プロピル基、4−メトキシ−n−ブチル基、4−エトキシ−n−ブチル基、及び4−n−プロピルオキシ−n−プチル基等のアルコキシアルキル基;メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、n−プロピルオキシメトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基、2−n−プロピルオキシエトキシ基、3−メトキシ−n−プロピルオキシ基、3−エトキシ−n−プロピルオキシ基、3−n−プロピルオキシ−n−プロピルオキシ基、4−メトキシ−n−ブチルオキシ基、4−エトキシ−n−ブチルオキシ基、及び4−n−プロピルオキシ−n−ブチルオキシ基等のアルコキシアルコキシ基;2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、及び4−メトキシフェニル基等のアルコキシアリール基;2−メトキシフェノキシ基、3−メトキシフェノキシ基、及び4−メトキシフェノキシ基等のアルコキシアリールオキシ基;ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、及びデカノイル基等の脂肪族アシル基;ベンゾイル基、α−ナフトイル基、及びβ−ナフトイル基等の芳香族アシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、n−ノニルオキシカルボニル基、及びn−デシルオキシカルボニル基等の鎖状アルキルオキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、α−ナフトキシカルボニル基、及びβ−ナフトキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ヘプタノイルオキシ基、オクタノイルオキシ基、ノナノイルオキシ基、及びデカノイルオキシ基等の脂肪族アシルオキシ基;並びに、ベンゾイルオキシ基、α−ナフトイルオキシ基、及びβ−ナフトイルオキシ基等の芳香族アシルオキシ基が挙げられる。
乃至R18は、特に硬化性組成物を用いて得られる硬化物の硬度の観点から、全てが水素原子であることがより好ましい。
また、上記一般式(I)において、Xは、単結合又は連結基(1以上の原子を有する2価の基)である。
上記連結基としては、例えば、2価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル基(エーテル結合)、チオエーテル基(チオエーテル結合)、エステル基(エステル結合)、カーボネート基(カーボネート結合)、アミド基(アミド結合)、及びこれらが複数個連結した基等が挙げられる。
上記2価の炭化水素基としては、例えば、炭素数が1乃至18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、及び、2価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。炭素数が1乃至18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、及びトリメチレン基が挙げられる。2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基、及びシクロヘキシリデン基等の2価のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)が挙げられる。
上記連結基Xとしては、酸素原子を含有する連結基が好ましい。そのような連結基Xとしては、例えば、−CO−(カルボニル基)、−O−CO−O−(カーボネート基)、−COO−(エステル基)、−O−(エーテル基)、−CONH−(アミド基)、これらの基が複数個連結した基、及びこれらの基の1又は2以上と2価の炭化水素基の1又は2以上とが連結した基が挙げられる。2価の炭化水素基としては、例えば、上記で例示したものが挙げられる。
上記一般式(I)で表される脂環式エポキシ化合物としては、例えば、商品名「セロキサイド2021P」及び「セロキサイド2081」(何れも(株)ダイセル製)等の市販品を使用することもできる。また、一般式(I)で表される脂環式エポキシ化合物のうちXが単結合であるものとして、例えば、商品名「セロキサイド8000」((株)ダイセル製)などの市販品を用いることもできる。
脂環エポキシ基を含んだ脂環式エポキシ化合物は、シクロヘキセンオキサイド骨格を含んだ化合物に限られない。例えば、脂環式エポキシ化合物は、シクロペンテンオキサイド骨格を含んでいてもよい。
シクロヘキセンオキサイド骨格及びシクロペンテンオキサイド骨格などのシクロアルケンオキサイド骨格を有する脂環式エポキシ化合物は、例えば、シクロヘキセン及びシクロペンテン骨格などのシクロアルキル骨格を有する化合物を、過酸化水素や過酸などの適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる。
脂環式エポキシ化合物(A)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。上記の中でも、脂環式エポキシ化合物(A)としては、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名「セロキサイド2021P」)及びε−カプロラクトン変性3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートの少なくとも一方を使用することが特に好ましい。
脂環式エポキシ化合物(A)とポリオール化合物(B)との合計量に占める脂環式エポキシ化合物(A)の量の割合は、55乃至85質量%の範囲内にある。この割合は、60乃至80質量%の範囲内にあることが好ましい。この割合が小さすぎると、樹脂組成物の硬化物において架橋密度が小さくなり、高い耐熱性が得られない可能性がある。この割合が大きすぎると、樹脂組成物の硬化物は、硬く脆い性状となり、高い可撓性が得られない可能性がある。
[ポリオール化合物(B)]
樹脂組成物にポリオール化合物(B)を含めることにより、高い可撓性を有している硬化物を形成できる。
ポリオール化合物(B)とは、分子内に2個以上の水酸基を有し、数平均分子量が例えば200以上の重合体(オリゴマー又はポリマー)である。ポリオール化合物(B)には、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリカーボネートポリオールが含まれる。なお、ポリオール化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリオール化合物(B)が有する水酸基(2個以上の水酸基)は、アルコール性水酸基であってもよいし、フェノール性水酸基であってもよい。また、ポリオール化合物(B)が1分子内に有する水酸基の数は、2以上であればよく、特に限定されない。
ポリオール化合物(B)における水酸基(2個以上の水酸基)の位置は、特に限定されないが、硬化剤との反応性の観点で、ポリオール分子の少なくとも一方の末端(重合体主鎖の末端)に存在することが好ましく、ポリオール分子の少なくとも両末端に存在することが特に好ましい。
ポリオール化合物(B)は、その他の成分と配合した後に液状の樹脂組成物を形成できればよく、それ自体は、固体であってもよいし、液体であってもよい。
ポリオール化合物(B)の数平均分子量は、特に限定されないが、例えば200以上であり、200乃至100000の範囲内にあることが好ましく、300乃至50000の範囲内にあることがより好ましく、400乃至40000の範囲内にあることが更に好ましい。数平均分子量が小さすぎると、樹脂組成物を塗工する基材から樹脂組成物の硬化物である多孔質膜を剥離する際に、多孔質膜に破断やクラックが発生する場合がある。一方、数平均分子量が大きすぎると、液状の樹脂組成物においてポリオール化合物が析出するか、又は、ポリオール化合物を他の成分中に溶解させることができない場合がある。なお、ポリオール化合物(B)の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される、標準ポリスチレン換算の数平均分子量を意味する。
ポリオール化合物(B)は、水酸基価が190乃至550KOHmg/gの範囲内にあることが好ましい。水酸基価が小さすぎると、樹脂組成物の硬化物において架橋密度が低くなり、高い耐熱性が得られない可能性がある。水酸基価が大きすぎると、エポキシ基の量に対し、水酸基の量が過剰となり、反応に寄与しない浮遊モノマーが硬化物中に発生する可能性がある。その結果、熱重量変化が大きくなり、耐熱性の低下、更には吸湿性の増加を生じる可能性がある。
ポリオール化合物(B)としては、例えば、分子内にエステル骨格(ポリエステル骨格)を有するポリエステルポリオール(ポリエステルポリオールオリゴマーを含む)、分子内にエーテル骨格(ポリエーテル骨格)を有するポリエーテルポリオール(ポリエーテルポリオールオリゴマーを含む)、及び分子内にカーボネート骨格(ポリカーボネート骨格)を有するポリカーボネートポリオール(ポリカーボネートポリオールオリゴマーを含む)などが挙げられる。ポリオール化合物(B)には、その他の化合物、例えば、フェノキシ樹脂、エポキシ当量が1000g/eq.を超えるビスフェノール型高分子エポキシ樹脂、水酸基を有するポリブタジエン類、及びアクリルポリオールも含まれる。
上記ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリオールとポリカルボン酸(多塩基酸)との又はヒドロキシカルボン酸の縮合重合(例えば、エステル交換反応)により得られるポリエステルポリオールや、ラクトン類の開環重合により得られるポリエステルポリオールなどが挙げられる。
上記ポリエステルポリオールを得るための縮合重合に使用するポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,3,5−トリメチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、2,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−ジメチロールシクロヘキサン、1,3−ジメチロールシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、1,12−ドデカンジオール、ポリブタジエンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−ジヒドロキシアセトン、ヘキシレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、ジトリメチロールプロパン、マンニトール、ソルビトール、及びペンタエリスリトールが挙げられる。
上記ポリエステルポリオールを得るための縮合重合に使用するポリカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アゼライン酸、クエン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シトラコン酸、1,10−デカンジカルボン酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、無水ピロメリット酸、及び無水トリメリット酸が挙げられる。
上記ポリエステルポリオールを得るための縮合重合に使用するヒドロキシカルボン酸としては、例えば、乳酸、りんご酸、グリコール酸、ジメチロールプロピオン酸、及びジメチロールブタン酸が挙げられる。
上記ポリエステルポリオールを得るための開環重合に使用するラクトン類としては、例えば、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、及びγ−ブチロラクトンが挙げられる。
上記ポリエステルポリオールとしては、例えば、商品名「プラクセル205」、「プラクセル205H」、「プラクセル205U」、「プラクセル205BA」、「プラクセル208」、「プラクセル210」、「プラクセル210CP」、「プラクセル210BA」、「プラクセル212」、「プラクセル212CP」、「プラクセル220」、「プラクセル220CPB」、「プラクセル220NP1」、「プラクセル220BA」、「プラクセル220ED」、「プラクセル220EB」、「プラクセル220EC」、「プラクセル230」、「プラクセル230CP」、「プラクセル240」、「プラクセル240CP」、「プラクセル210N」、「プラクセル220N」、「プラクセルL205AL」、「プラクセルL208AL」、「プラクセルL212AL」、「プラクセルL220AL」、「プラクセルL230AL」、「プラクセル305」、「プラクセル308」、「プラクセル312」、「プラクセルL312AL」、「プラクセル320」、「プラクセルL320AL」、「プラクセルL330AL」、「プラクセル410」、「プラクセル410D」、「プラクセル610」、「プラクセルP3403」、及び「プラクセルCDE9P」(何れも(株)ダイセル製)等の市販品を使用することができる。
上記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオール類への環状エーテル化合物の付加反応により得られるポリエーテルポリオール、及びアルキレンオキシドの開環重合により得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。
上記ポリエーテルポリオールとしては、より具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール(テトラメチレングリコール)、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,3,5−トリメチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、2,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−ジメチロールシクロヘキサン、1,3−ジメチロールシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、1,12−ドデカンジオール、ポリブタジエンジオール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−ジヒドロキシアセトン、ヘキシレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、ジトリメチロールプロパン、マンニトール、ソルビトール、及びペンタエリスリトールなどのポリオール類の多量体;上記ポリオール類と、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、及びエピクロロヒドリン等のアルキレンオキサイドとの付加物;並びにテトラヒドロフラン類などの環状エーテルの開環重合体(例えば、ポリテトラメチレングリコール)が挙げられる。
上記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、商品名「PEP−101」(フロイント産業(株)製)、商品名「アデカプルロニックL」、「アデカプルロニックP」、「アデカプルロニックF」、「アデカプルロニックR」、「アデカプルロニックTR」、及び「アデカPEG」(何れもアデカ(株)製);商品名「PEG#1000」、「PEG#1500」、及び「PEG#11000」(何れも日油(株)製);商品名「ニューポールPE−34」、「ニューポールPE−61」、「ニューポールPE−78」、「ニューポールPE−108」、「PEG−200」、「PEG−600」、「PEG−2000」、「PEG−6000」、「PEG−10000」、及び「PEG−20000」(何れも三洋化成工業(株)製);商品名「PTMG1000」、「PTMG1800」、及び「PTMG2000」(何れも三菱化学(株)製);並びに「PTMGプレポリマー」(三菱樹脂(株)製)等の市販品を使用することができる。
上記ポリカーボネートポリオールとは、分子内に2個以上の水酸基を有するポリカーボネートである。中でも、上記ポリカーボネートポリオールとしては、分子内に2個の末端水酸基を有するポリカーボネートジオールが好ましい。
上記ポリカーボネートポリオールは、通常のポリカーボネートポリオールを製造する方法と同じく、ホスゲン法、又は、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートのようなジアルキルカーボネート又はジフェニルカーボネートを用いるカーボネート交換反応(特開昭62−187725号公報、特開平2−175721号公報、特開平2−49025号公報、特開平3−220233号公報、特開平3−252420号公報等)などにより合成される。上記ポリカーボネートポリオールにおけるカーボネート結合は熱分解を受けにくいため、ポリカーボネートポリオールを含む樹脂組成物の硬化物は高温高湿下でも優れた安定性を示す。
上記ジアルキルカーボネート又はジフェニルカーボネートと共にカーボネート交換反応で用いられるポリオールとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,12−ドデカンジオール、ブタジエンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、プロピレングリコール、及びプロピレングリコールが挙げられる。
上記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、商品名「プラクセルCD205PL」、「プラクセルCD205HL」、「プラクセルCD210PL」、「プラクセルCD210HL」、「プラクセルCD220PL」、及び「プラクセルCD220HL」(何れも(株)ダイセル製);商品名「UH−CARB50」、「UH−CARB100」、「UH−CARB300」、「UH−CARB90(1/3)」、「UH−CARB90(1/1)」、及び「UC−CARB100」(何れも宇部興産(株)製);並びに、商品名「PCDL T4671」、「PCDL T4672」、「PCDL T5650J」、「PCDL T5651」、及び「PCDL T5652」(何れも旭化成ケミカルズ(株)製)等の市販品を使用することができる。
上記ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリカーボネートポリオール以外のポリオールとしては、例えば、商品名「YP−50」、「YP−50S」、「YP−55U」、「YP−70」、「ZX−1356−2」、「YPB−43C」、「YPB−43M」、「FX−316」、「FX−310T40」、「FX−280S」、「FX−293」、「YPS−007A30」、及び「TX−1016」(何れも新日鐵化学(株)製)や、商品名「jER1256」、「jER4250」、及び「jER4275」(何れも三菱化学(株)製)などのフェノキシ樹脂;商品名「エポトートYD−014」、「エポトートYD−017」、「エポトートYD−019」、「エポトートYD−020G」、「エポトートYD−904」、「エポトートYD−907」、及び「エポトートYD−6020」(何れも新日鐵化学(株)製)や、商品名「jER1007」、「jER1009」、「jER1010」、「jER1005F」、「jER1009F」、「jER1006FS」、及び「jER1007FS」(何れも三菱化学(株)製)などのエポキシ当量が1000g/eq.を超えるビスフェノール型高分子エポキシ樹脂;商品名「Poly bd R−45HT」、「Poly bd R−15HT」、「Poly ip」、及び「KRASOL」(何れも出光興産(株)製)や、商品名「α−ωポリブタジエングリコール G−1000」、「α−ωポリブタジエングリコール G−2000」、及び「α−ωポリブタジエングリコール G−3000」(何れも日本曹達(株)製)などの水酸基を有するポリブタジエン類;並びに、商品名「ヒタロイド3903」、「ヒタロイド3904」、「ヒタロイド3905」、「ヒタロイド6500」、「ヒタロイド6500B」、及び「ヒタロイド3018X」(何れも日立化成工業(株)製)や、商品名「アクリディックDL−1537」、「アクリディックBL−616」、「アクリディックAL−1157」、「アクリディックA−322」、「アクリディックA−817」、「アクリディックA−870」、「アクリディックA−859−B」、「アクリディックA−829」、及び「アクリディックA−49−394−IM」(何れもDIC(株)製)、商品名「ダイヤナールSR−1346」、「ダイヤナールSR−1237」、及び「ダイヤナールAS−1139」(何れも三菱レイヨン(株)製)などのアクリルポリオール等の市販品を使用することができる。
なお、上記ポリオール化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。ポリオール化合物(B)は、ポリエステルポリオール、例えば商品名「プラクセル305」及び「プラクセル308」(何れも(株)ダイセル製)などのポリカプロラクトントリオール、並びに、商品名「プラクセルCD205PL」((株)ダイセル製)などのカーボネートジオールの少なくとも一方であることが特に好ましい。
脂環式エポキシ化合物(A)とポリオール化合物(B)との合計量に占めるポリオール化合物(B)の量の割合は、15乃至45質量%の範囲内にある。この割合は、20乃至40質量%の範囲内にあることが好ましい。この割合が小さすぎると、樹脂組成物の硬化物は、硬く脆い性状となり、高い可撓性が得られない可能性がある。この割合が大きすぎると、樹脂組成物の硬化物において架橋密度が小さくなり、エポキシ基の量に対して水酸基の量が過剰となり、樹脂組成物を十分に硬化させることができない可能性がある。
[酸発生剤(C)]
酸発生剤(C)は、樹脂組成物中のエポキシ基を有する化合物の重合を開始させる働きを有する。酸発生剤(C)としては、紫外線照射などの電離放射線照射又は加熱処理を施すことによりカチオン種を発生して、脂環式エポキシ化合物(A)の重合を開始させるカチオン重合開始剤が好ましい。酸発生剤(C)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
電離放射線照射によりカチオン種を発生するカチオン重合開始剤としては、例えば、ヘキサフルオロアンチモネート塩、ペンタフルオロヒドロキシアンチモネート塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアルゼネート塩、トリアリルスルホニウム塩及びその誘導体、並びに、ジアリルヨウドニウム塩及びその誘導体を挙げることができる。
トリアリルスルホニウム塩及びその誘導体としては、例えば、トリアリルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート塩及びその誘導体、並びに、トリアリルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩及びその誘導体が挙げられる。
ジアリルヨウドニウム塩及びその誘導体としては、例えば、ジアリルヨウドニウムヘキサフルオロホスフェート塩及びその誘導体、並びに、ジアリルヨウドニウムテトラフルオロボレート塩及びその誘導体が挙げられる。
これらのカチオン重合開始剤(カチオン触媒)は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
このようなカチオン重合開始剤としては、例えば、商品名「UVACURE1590」(ダイセル・サイテック(株)製);商品名「CD−1010」、「CD−1011」、及び「CD−1012」(何れも米国サートマー社製);商品名「イルガキュア264」及び「イルガキュア250」(何れもチバ・ジャパン(株)製);商品名「CIT−1682」(日本曹達(株)製);商品名「CPI−101A」、「CPI−100P」、「CPI−210S」、及び「CPI−110A」(何れもサンアプロ(株)製);商品名「アデカオプトマーSP−170」、「アデカオプトマーSP−172」、及び「アデカオプトマーSP−150」(何れも(株)ADEKA製);並びに、商品名「シリコリース UV CATA211」(荒川化学工業(株)製)等の市販品を使用できる。好ましくは、商品名「SP−170」及び「SP−172」(何れも(株)ADEKA製)、並びに、商品名「CPI−210S」、「CPI−101A」及び「CPI−110A」(何れもサンアプロ(株)製)の1以上である。
加熱処理を施すことによりカチオン種を発生するカチオン重合開始剤としては、例えば、アリールジアゾニウム塩、アリールヨードニウム塩、アリールスルホニウム塩、及びアレン−イオン錯体が挙げられる。
このようなカチオン重合開始剤としては、例えば、商品名「PP−33」、「CP−66」、及び「CP−77」(何れもADEKA(株)製);商品名「FC−509」(スリーエム(株)製);商品名「UVE1014」(G.E.(株)製);商品名「サンエイド SI−60L」、「サンエイド SI−80L」、「サンエイド SI−100L」、「サンエイド SI−110L」、及び「サンエイド SI−150L」(何れも三新化学工業(株)製);並びに、商品名「CG−24−61」(チバ・ジャパン(株)製)等の市販品を使用できる。
更に、アルミニウムやチタンなどの金属とアセト酢酸若しくはジケトン類とのキレート化合物とトリフェニルシラノール等のシラノールとの化合物、又は、アルミニウムやチタンなどの金属とアセト酢酸若しくはジケトン類とのキレート化合物とビスフェノールS等のフェノール類との化合物も、上記カチオン重合開始剤として使用できる。
酸発生剤(C)の量は、脂環式エポキシ化合物(A)とポリオール化合物(B)との合計量100質量部に対して、0.01乃至10質量部の範囲内にあることが好ましく、0.05乃至5質量部の範囲内にあることがより好ましく、0.05乃至1質量部の範囲内にあることが更に好ましく、0.05乃至0.5質量部の範囲内にあることが更に好ましく、0.05乃至0.1質量部の範囲内にあることが特に好ましい。酸発生剤(C)の量が少なすぎると、樹脂組成物の硬化物において架橋密度が小さくなり、高い耐熱性が得られない可能性がある。酸発生剤(C)の量が多すぎると、硬化物が着色するか、又は、高い透明性を有する硬化物を得られない可能性がある。
[その他の成分(D)]
樹脂組成物は、必要に応じて、他の成分(D)を更に含有することができる。
例えば、樹脂組成物は、硬化性調整のためにビニルエーテル化合物のようなカチオン反応性化合物を更に含有していてもよい。また、樹脂組成物は、その低粘度化や反応速度調整のためにオキセタン化合物を更に含有していてもよい。また、樹脂組成物は、基材と樹脂組成物を硬化してなる層との密着性調整のためにラジカル反応性化合物を更に含有していてもよい。
樹脂組成物は、その他の成分、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤(HALS等)、つや消し剤(シリカ、ガラス粉、金属酸化物等)、着色剤(染料、顔料等)、光拡散剤、低収縮剤、沈降防止剤、消泡剤、帯電防止剤、防曇剤、分散剤、増粘剤、タレ止め剤、乾燥剤、レベリング剤、カップリング剤、付着促進剤、防錆顔料、熱安定剤、皮膜物質改質剤、スリップ剤、スリキズ剤、可塑剤、防菌剤、防カビ剤、防汚剤、難燃剤、重合防止剤、光重合促進剤、増感剤、熱開始剤(熱カチオン重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤)、及び離型剤等の添加剤の1以上を更に含有していてもよい。
成分(D)の量は、脂環式エポキシ化合物(A)とポリオール化合物(B)との合計量100質量部に対して、1質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以下であることがより好ましい。
<樹脂組成物の調製>
上記の樹脂組成物は、上述した成分を均一に混合することにより得る。この混合には、例えば、特に限定されないが、ディスパーミキサ、ウルトラミキサ、ホモジナイザ、及び遊星攪拌脱泡機等の攪拌機を用いることができる。この混合は、酸発生剤の活性化を防止するため、電離放射線が照射されない環境下で行うことが好ましい。
<多孔質膜の製造>
図1に示す多孔質膜1の製造方法に特に制限はない。一例によれば、多孔質膜1は、貧溶媒誘起相分離法などの相分離法により製造する。
貧溶媒誘起相分離法には、湿式法と乾式法とがある。
湿式法では、先ず、上記の樹脂組成物を溶媒(良溶媒)に溶解させる。この溶液を基材上に塗工し、次いで、この塗膜を、樹脂組成物の溶解度が良溶媒と比較して十分に低い貧溶媒中に浸漬させる。これにより、貧溶媒を塗膜中に拡散させ、塗膜を、樹脂組成物と良溶媒との混合物を主体とした相と、貧溶媒を主体とした相とに相分離させる。次いで、塗膜への電離放射線への照射及びポストベークを行う。或いは、塗膜に加熱処理を施す。これにより、塗膜を硬化させるとともに、良溶媒及び貧溶媒を塗膜から除去する。その後、塗膜を基材から剥離する。以上のようにして、多孔質膜1を得る。
乾式法では、先ず、上記の樹脂組成物と、これを高い溶解度で溶解させる良溶媒と、樹脂組成物の溶解度が良溶媒と比較して十分に低い貧溶媒とを含んだ液を調製する。ここでは、貧溶媒として、良溶媒よりも沸点が十分に高いものを使用する。次に、先の液を基材上に塗工して、塗膜を形成する。次いで、塗膜へ電離放射線を照射して、樹脂組成物の重合を進行させる。更に、この塗膜を加熱処理に供する。良溶媒は、貧溶媒よりも沸点が低いので、貧溶媒に先んじて蒸発する。その結果、塗膜は、先ず、樹脂組成物を主体とした相と、貧溶媒を主体とした相とへ相分離する。そして、塗膜から貧溶媒が除去され、塗膜が硬化する。その後、塗膜を基材から剥離する。以上のようにして、多孔質膜1を得る。
多孔質膜の孔径を制御し、高い透明性を得るには、乾式法を用いることが好ましい。乾式法について、以下に、更に詳しく説明する。
乾式法では、良溶媒及び貧溶媒の選定が重要である。
良溶媒としては、上記の樹脂組成物を容易に溶解させるものが好ましく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジアルキルケトン、及びシクロヘキサノンなどのケトン類;ギ酸エチル、アルキルエステル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アルキルエステル、プロピオン酸エチル、及び乳酸エチルなどのエステル類;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、及びジメトキシエタンなどのエーテル類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、及びアルキル−セロソルブなどのセロソルブ類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、及びアルキル−セロソルブアセテートなどのセロソルブアセテート類;ベンゼン、トルエン、及びキシレンなどの芳香族炭化水素類;塩化メチレン及び塩化エチレンなどのハロゲン化炭化水素類;アシルアミド、例えば、ホルムアミド又はアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、及びN,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ジメチルスルホキシド及びアルキルスルホキシドなどのスルホキシド類;アセトニトリル、クロロアセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、アルキルニトリル、及びベンゾニトリルなどのニトリル類;ギ酸、酢酸、及びプロピオン酸などの有機酸類;無水マレイン酸及び無水酢酸などの有機酸無水物;並びに、これらの混合物から選択できる。
良溶媒は、ニトロメタン、ニトロエタン、及びニトロプロパンなどのニトロ化合物;並びに、C1−4アルコール、例えば、メタノール又はエタノール、及び、ジアセトンアルコールなどの低級アルコール類の1以上を含んでいてもよい。
貧溶媒とは、上記の樹脂組成物を溶解させないか又は低い溶解度で溶解させる溶媒を意味する。乾式法で使用する貧溶媒は、この条件を満たしており且つ良溶媒よりも沸点が高いものであればよい。そのため、貧溶媒の種類は、特に制限されない。貧溶媒としては、水又はアルコール類が好ましい。
良溶媒と貧溶媒との割合は、樹脂組成物の均一溶液が得られる限り特に制限されない。貧溶媒の量は、良溶媒100質量部に対して、好ましくは1乃至50質量部、より好ましくは2乃至40質量部、更に好ましくは3乃至35質量部、特に好ましくは3乃至30質量部である。
塗液には、多孔質膜1の特性を損なわない範囲で、慣用の添加剤、例えば、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、滑剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、及び熱安定剤など)、帯電防止剤、並びにアンチブロッキング剤の1以上を添加してもよい。
塗液は、例えば、ロールコータ、エアナイフコータ、ブレードコータ、ロッドコータ、バーコータ、コンマコータ、グラビアコータ、又はシルクスクリーンコータ法により、基材の少なくとも一方の面に塗工する。
基材としては、例えば、紙、塗工紙、不織布、プラスチックフィルム、ガラス板、セラミックス板、及び金属板などが挙げられる。好ましい基材は、離型紙、及び、プラスチックフィルムで構成された単層又は複合フィルムである。基材は、不透明及び半透明の何れであってもよい。なお、後述する多層膜において、この基材を構成要素として利用する場合であって、多層膜に光透過性が要求される場合は、透明な基材を使用することが好ましい。
プラスチックフィルムを構成するポリマーとしては、例えば、酢酸セルロースなどのセルロース誘導体;ポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィン;ポリスチレン;ポリ塩化ビニル;ポリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリアルキレンテレフタレート、例えば、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレート、及び、ポリアルキレンナフタレート、例えば、ポリエチレンナフタレート又はポリブチレンナフタレートなどのポリエステル;ポリアミド6、ポリアミド6/6、ポリアミド6/10、及びポリアミド6/12などのポリアミド;ポリビニルアルコール;ポリカーボネート;ポリエステルアミド;ポリエーテル;ポリイミド;ポリアミドイミド;ポリエーテルエステル;エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−ビニルアルコール共重合体などのこれらの共重合体;これらのブレンド物;並びに、これらの架橋物が挙げられる。
これらのフィルムのうち、ポリオレフィン、特にポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、又はポリアミドからなるフィルムを用いる場合が多い。
プラスチックフィルムには、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、滑剤、及び顔料などの慣用の添加剤を添加してもよい。また、後述する多層膜において、このプラスチックフィルムを構成要素として利用する場合、多孔質膜との接着性を向上させるため、プラスチックフィルムには、コロナ放電処理やアンダーコート処理などを行ってもよい。
乾式法では、基材上に形成した塗膜に対して、紫外線などの電離放射線を照射する。これにより、塗膜内の酸発生剤が分解して、酸が発生する。この酸は、重合を促進する。紫外線の照射は、例えば200乃至600nm、好ましくは300乃至390nmの波長範囲における積算エネルギーが、例えば10乃至3000mJ/cm、好ましくは100乃至2000mJ/cmの範囲内となるように行うことが適当である。
乾式法では、次いで、塗膜を加熱する。この加熱の初期段階では、沸点の低い良溶媒が優先的に蒸発する。この良溶媒の蒸発の進行に伴い、塗膜中の樹脂組成物の溶解性が低下し、樹脂組成物はミセル(ゲル相)を形成して、貧溶媒相から相分離する。更に乾燥が進むと、ミセルが互いに接触して網目構造が形成され、貧溶媒の蒸発が完了する。これと同時に、熱により樹脂組成物の重合が進み、塗膜は硬化する。以上のようにして、多孔質膜1を得る。
このように、乾式法では、加熱によって、良溶媒の蒸発、相分離、並びに、貧溶媒の蒸発及び樹脂組成物の重合を順次進行させる。従って、この加熱は、先ず低温で加熱して、沸点の低い良溶媒を蒸発させて、相分離を生じさせる第1加熱工程と、より高温に加熱して、貧溶媒を蒸発させるとともに、樹脂組成物を重合させる第2加熱工程とを順次行うことが好ましい。第1及び第2加熱工程の条件は使用する良溶媒及び貧溶媒の種類に応じて選択できる。第1加熱工程では、好ましくは10乃至100℃、より好ましくは20乃至80℃の温度で、好ましくは30秒乃至60分、より好ましくは1乃至〜60分間にわたって塗膜を加熱する。また、第2加熱工程では、第1加熱工程で行う熱処理温度よりも高い温度、好ましくは40乃至200℃、より好ましくは60乃至150℃の温度で、好ましくは2秒乃至30分間にわたって塗膜を加熱する。第2加熱工程で行う熱処理温度は、第1加熱工程で行う熱処理温度よりも20℃以上高い温度で行うことが好ましい。
図1に示す多孔質膜1は、以上のようにして硬化させた塗膜を基材から剥離することにより得られる。
この多孔質膜1は、上述した樹脂組成物の硬化物からなる。この硬化物は、耐溶剤性に優れている。従って、この多孔質膜1は、耐溶剤性に優れている。また、この多孔質膜1は、優れた耐熱性及び透明性を有し得る。更に、この多孔質膜1は、優れた可撓性も有し得る。従って、この多孔質膜1は、様々な用途に利用することが可能である。
<多層膜>
上述した多孔質膜1は、多層構造を構成している2以上の層を含んだ多層膜において、1以上の層として使用することができる。
図2は、本発明の一実施形態に係る多層膜を概略的に示す断面図である。
図2に示す多層膜10は、多孔質膜1と、層2とを含んでいる。多孔質膜1と層2とは、多層構造を形成している。
層2は、例えば、上述した基材である。この場合、多層膜10は、塗膜を基材から剥離することを省略したこと以外は、多孔質膜1の製造方法と同様の方法により製造することができる。
図2に示す多層膜10は、二層構造を有しているが、多層膜が含んでいる多層構造は、3層以上の層で構成してもよい。例えば、多層膜には、一対の基材間に多孔質膜1を介在させた構造を採用してもよい。このような多層膜は、例えば、基材上に多孔質膜1を形成し、その上に、必要に応じて接着剤層を介して、別の基材を積層することにより得ることができる。
このような多層膜の多孔質膜1には、液晶分子、イオン導電体、及び二色性色素などの機能材料を含浸又は分散させ、液晶性フィルム、導電性フィルム及び多色偏光板などの機能フィルムとして利用することができる。
多孔質膜1を含んだ多層膜は、他の用途に利用することができる。
例えば、反射性金属体上に透明な多孔質膜1を積層してなる多層膜は、光の干渉により着色する光学干渉フィルムとして利用することができる。また、多孔質膜1と、多孔質膜1は細孔の径が異なる1以上の層とを含んだ多層膜は、膜分離のための膜、例えば、逆浸透膜、限外ろ過膜および精密ろ過膜として利用することができる。
以上の通り、多孔質膜1は、耐溶剤性に優れているため、これを含んだ多層膜は、様々な用途に利用することができる。また、多孔質膜1自体も、様々な用途に利用することができる。多孔質膜1や多層膜は、透明性が要求される用途に利用してもよく、透明性が要求されない用途に利用してもよい。多孔質膜1や多層膜は、例えば、結晶光学素子、記録用シート、機能フィルム材料、分離膜、及び酵素などを含浸させた分析素子などで利用できる。例えば、多孔質膜を、インクジェット法などによって記録を行う記録用シートのインク受像層に適用すると、インク吸収性を高めることができる。
以下に、本発明の実施例を記載する。但し、本発明は、以下に記載する事項に限定されるわけではない。
<実施例1>
多孔質膜を、乾式の貧溶媒誘起相分離法により製造した。
具体的には、先ず、以下の組成を有する樹脂組成物を調製した。
脂環式エポキシ化合物(A):セロキサイド2021P 80質量部
ポリオール化合物(B): プラクセルCD205PL 20質量部
酸発生剤(C): SP−170 0.05質量部。
次に、以下の組成を有する塗液を調製した。
樹脂組成物 100質量部
良溶媒:アセトン 20質量部
貧溶媒:水 5質量部。
この塗液を、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルム上に、乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布した。続いて、この塗膜に、積算光量が500mJ/cmとなるよう紫外線を照射した。更に、この塗膜に、第1加熱工程として40℃で2分間の加熱処理と、第2加熱工程として150℃で3分間の加熱処理とを順次行った。以上のようにして、多孔質膜を得た。なお、この多孔質膜の空孔率は、60乃至80%の範囲内であった。
<実施例2>
以下の組成を有する樹脂組成物を調製した。
脂環式エポキシ化合物(A):セロキサイド2021P 70質量部
ポリオール化合物(B): プラクセルCD205PL 30質量部
酸発生剤(C): SP−170 0.07質量部
この樹脂組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、多孔質膜を製造した。なお、この多孔質膜の空孔率は、60乃至80%の範囲内であった。
<実施例3>
以下の組成を有する樹脂組成物を調製した。
脂環式エポキシ化合物(A):セロキサイド2021P 60質量部
ポリオール化合物(B): プラクセルCD205PL 40質量部
酸発生剤(C): SP−170 0.08質量部
この樹脂組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、多孔質膜を製造した。なお、この多孔質膜の空孔率は、60乃至80%の範囲内であった。
<実施例4>
第1加熱工程として25℃で10分間の加熱処理を行い、第2加熱工程として150℃で5分間の加熱処理を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法により、多孔質膜を製造した。なお、この多孔質膜の空孔率は、50%以上60%未満の範囲内であった。
<実施例5>
第1加熱工程として60℃で2分間の加熱処理を行い、第2加熱工程として120℃で3分間の加熱処理を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法により、多孔質膜を製造した。なお、この多孔質膜の空孔率は、60乃至80%の範囲内であった。
<実施例6>
積算光量を1000mJ/cmとしたこと以外は、実施例1と同様の方法により、多孔質膜を製造した。なお、この多孔質膜の空孔率は、60乃至80%の範囲内であった。
<実施例7>
積算光量を2000mJ/cmとしたこと以外は、実施例1と同様の方法により、多孔質膜を製造した。なお、この多孔質膜の空孔率は、50%以上60%未満の範囲内であった。
<実施例8>
以下の組成を有する樹脂組成物を調製した。
脂環式エポキシ化合物(A):セロキサイド2021P 80質量部
ポリオール化合物(B): プラクセルCD205PL 20質量部
酸発生剤(C): SP−170 2.0質量部
この樹脂組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、多孔質膜を製造した。なお、この多孔質膜の空孔率は、60乃至80%の範囲内であった。
<実施例9>
第1加熱工程として100℃で2分間の加熱処理を行い、第2加熱工程として220℃で3分間の加熱処理を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法により、多孔質膜を製造した。なお、この多孔質膜の空孔率は、50%以上60%未満の範囲内であった。
<比較例1>
以下の組成を有する樹脂組成物を調製した。
脂環式エポキシ化合物(A):セロキサイド2021P 50質量部
ポリオール化合物(B): プラクセルCD205PL 50質量部
酸発生剤(C): SP−170 0.05質量部
この樹脂組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、多孔質膜の製造を試みた。しかしながら、本例では、塗膜を硬化させることはできなかった。
<比較例2>
以下の組成を有する樹脂組成物を調製した。
脂環式エポキシ化合物(A):セロキサイド2021P 90質量部
ポリオール化合物(B): プラクセルCD205PL 10質量部
酸発生剤(C): SP−170 0.05質量部
この樹脂組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、多孔質膜を製造した。
<比較例3>
積算光量を2500mJ/cmとしたこと以外は、実施例1と同様の方法により、多孔質膜の製造を試みた。しかしながら、本例で得られた膜は、後述する評価の結果、多孔質ではないことが判明した。
<評価>
上述した方法により製造した多孔質膜の各々について、平均孔径、膜面の状態、及び透明性の評価を、以下の方法で行った。
[透明性]
分光光度計[(株)島津作所製、分光光度計UV−2450]を用い、波長400nmにおける多孔質膜の光線透過率を測定し、これを透明性の指標とした。
[平均孔径]
電子顕微鏡を用いて、多孔質膜の表面を5000倍の倍率で撮影した。そして、この電子顕微鏡写真の3箇所の所定領域(2cm×2cm)について画像処理を行って各細孔の面積を求めた。そして、この面積と等しい面積を有する円の直径をその細孔の孔径とみなし、これら孔径を算術平均することにより平均孔径を求めた。
[膜面の状態]
多孔質膜の表面の状態を目視で確認し、以下の基準で評価した。
○:正常
△:割れ、ひびがある
×:未硬化
評価結果を、以下の表1に纏める。
Figure 0006848194
実施例1乃至8に係る多孔質膜は、上記の樹脂組成物の硬化物からなるため、耐溶剤性に優れていた。また、表1に示すように、実施例1乃至8に係る多孔質膜は、膜面の状態も優れていた。特に、実施例1乃至に係る多孔質膜は、光線透過率も高かった。
以下に、当初の特許請求の範囲に記載していた発明を付記する。
[1]
脂環式エポキシ化合物(A)と、ポリオール化合物(B)と、酸発生剤(C)とを含んだ樹脂組成物の硬化物からなり、前記脂環式エポキシ化合物(A)と前記ポリオール化合物(B)との合計量に占める前記脂環式エポキシ化合物(A)の量の割合は55乃至85質量%の範囲内にある多孔質膜。
[2]
前記脂環式エポキシ化合物(A)は、分子内に2以上のエポキシ基を有している項1に記載の多孔質膜。
[3]
前記脂環式エポキシ化合物(A)は、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート及びε−カプロラクトン変性3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートの少なくとも一方である項1に記載の多孔質膜。
[4]
前記ポリオール化合物(B)は、ポリカプロラクトントリオール及びポリカーボネートジオールの少なくとも一方である項1乃至3の何れか1項に記載の多孔質膜。
[5]
前記酸発生剤(C)はスルホニウム塩を含んだ項1乃至4の何れか1項に記載の多孔質膜。
[6]
前記酸発生剤(C)の量は、前記脂環式エポキシ化合物(A)と前記ポリオール化合物(B)との合計量100質量部に対して0.01乃至10質量部の範囲内にある項1乃至5の何れか1項に記載の多孔質膜。
[7]
細孔の平均孔径は0.01乃至1μmの範囲内にあり、最大孔径は2μm以下である項1乃至6の何れか1項に記載の多孔質膜。
[8]
波長400nmにおける光線透過率が30乃至95%の範囲内にある項1乃至7の何れか1項に記載の多孔質膜。
[9]
膜厚が1乃至100μmの範囲内にある項1乃至8の何れか1項に記載の多孔質膜。
[10]
多層構造を構成している2以上の層を備え、それら層の少なくとも1つは、項1乃至9の何れか1項に記載の多孔質膜である多層膜。
1…多孔質膜、2…層、10…多層膜。

Claims (9)

  1. 脂環式エポキシ化合物(A)と、ポリオール化合物(B)と、酸発生剤(C)とを含んだ樹脂組成物の硬化物からなり、前記脂環式エポキシ化合物(A)と前記ポリオール化合物(B)との合計量に占める前記脂環式エポキシ化合物(A)の量の割合は55乃至85質量%の範囲内にあり、前記酸発生剤(C)の量は、前記脂環式エポキシ化合物(A)と前記ポリオール化合物(B)との合計量100質量部に対して0.05乃至0.1質量部の範囲内にある多孔質膜。
  2. 前記脂環式エポキシ化合物(A)は、分子内に2以上のエポキシ基を有している請求項1に記載の多孔質膜。
  3. 前記脂環式エポキシ化合物(A)は、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート及びε−カプロラクトン変性3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートの少なくとも一方である請求項1に記載の多孔質膜。
  4. 前記ポリオール化合物(B)は、ポリカプロラクトントリオール及びポリカーボネートジオールの少なくとも一方である請求項1乃至3の何れか1項に記載の多孔質膜。
  5. 前記酸発生剤(C)はスルホニウム塩を含んだ請求項1乃至4の何れか1項に記載の多孔質膜。
  6. 細孔の平均孔径は0.01乃至1μmの範囲内にあり、最大孔径は2μm以下である請求項1乃至の何れか1項に記載の多孔質膜。
  7. 波長400nmにおける光線透過率が30乃至95%の範囲内にある請求項1乃至の何れか1項に記載の多孔質膜。
  8. 膜厚が1乃至100μmの範囲内にある請求項1乃至の何れか1項に記載の多孔質膜。
  9. 多層構造を構成している2以上の層を備え、それら層の少なくとも1つは、請求項1乃至の何れか1項に記載の多孔質膜である多層膜。
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