以下、本発明の実施形態に係る透明複合シートについて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る透明複合シートの模式断面図である。透明複合シート10は、脂環式エポキシ樹脂層2の表面にハードコート層1が形成された2層構造のシートであり、支持体を要さず単独で取り扱うことができる自立性を有する自立膜である。ここで「自立膜」とは、基板などの支持体によって支持されなくとも、それ自体を単独で取り扱うことができるフィルムを意味している。また、ここで使用する用語「フィルム」は、可撓性を有するシート形状体を意味する。
脂環式エポキシ樹脂層2は、脂環式エポキシ化合物(A)と酸発生剤(C)とを含むエポキシ樹脂組成物に、ガラスフィラー(F)を含有させた複合組成物からなっている。
[脂環式エポキシ化合物(A)]
脂環式エポキシ化合物(A)は、1分子内に脂環(脂肪族環)構造とエポキシ基とを含んだ化合物である。エポキシ基は、脂環において互いに隣り合った2つの炭素原子と酸素原子とで構成されていてもよく(以下、そのようなエポキシ基を「脂環エポキシ基」と称する)、脂環に単結合で直接結合していてもよい。
脂環式エポキシ化合物(A)が1分子内に含む脂環構造の数は、1であってもよく、2以上であってもよい。また、脂環式エポキシ化合物(A)が1分子内に含むエポキシ基の数は、1であってもよく、2以上であってもよい。一例によれば、脂環式エポキシ化合物(A)は、1分子内に、2つの脂環構造と2つのエポキシ基とを含み、それらエポキシ基は別々の脂環構造の炭素原子を含んだ脂環エポキシ基である。
脂環エポキシ基を有する化合物としては、公知のものの中から任意に選択して使用することができる。脂環エポキシ基を有する化合物は、シクロヘキサン環において互いに隣り合った2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基を有すること、即ち、シクロヘキセンオキシド基を有する化合物であることが好ましい。
脂環エポキシ基を有する化合物としては、特に透明性、耐熱性、及び耐光性の点で、下記化学構造式(1)〜(3)で表される脂環式エポキシ樹脂を含む脂環式エポキシ化合物
が好ましい。尚、化学構造式(2)で示される脂環式エポキシ樹脂は水添ビフェニル型エポキシ樹脂である。
一般に、エポキシ化合物は耐熱性に優れている。しかしながら、ビスフェノールA型エポキシ化合物等のベンゼン環を有するエポキシ化合物は、共役二重結合を有しているため、共役二重結合を有していないエポキシ化合物と比較して透明性の点で劣る。前記化学構造式(1)〜(3)で表される脂環式エポキシ化合物を使用した場合、特に高い透明性を達成できる。
上記化学構造式(1)〜(3)において、R1〜R18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。
有機基としては、炭化水素基であっても、炭素原子とハロゲン原子とからなる基であっても、炭素原子及び水素原子とともにハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子のようなヘテロ原子を含む基であってもよい。ハロゲン原子の例としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等が挙げられる。
有機基としては、炭化水素基と炭素原子、水素原子、酸素原子からなる基と、ハロゲン化炭化水素基と炭素原子、酸素原子、ハロゲン原子からなる基と、炭素原子、水素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる基とが好ましい。有機基が炭化水素基である場合、炭化水素基は芳香族炭化水素基でも、脂肪族炭化水素基でも、芳香族骨格と脂肪族骨格とを含む基でもよい。
炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、及びn−イコシル基等の鎖状アルキル基;ビニル基、1−プロペニル基、2−n−プロペニル基(アリル基)、1−n−ブテニル基、2−n−ブテニル基、及び3−n−ブテニル基等の鎖状アルケニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、ビフェニル−4−イル基、ビフェニル−3−イル基、ビフェニル−2−イル基、アントリル基、及びフェナントリル基等のアリール基;並びに、ベンジル基、フェネチル基、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、α−ナフチルエチル基、及びβ−ナフチルエチル基等のアラルキル基が挙げられる。
炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる基の具体例としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシ−n−プロピル基、及び4−ヒドロキシ−n−ブチル基等のヒドロキシ鎖状アルキル基;2−ヒドロキシシクロヘキシル基、3−ヒドロキシシクロヘキシル基、及び4−ヒドロキシシクロヘキシル基等のハロゲン化シクロアルキル基;2−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、2,3−ジヒドロキシフェニル基、2,4−ジヒドロキシフェニル基、2,5−ジヒドロキシフェニル基、2,6−ジヒドロキシフェニル基、3,4−ジヒドロキシフェニル基、及び3,5−ジヒドロキシフェニル基等のヒドロキシアリール基;2−ヒドロキシフェニルメチル基、3−ヒドロキシフェニルメチル基、及び4−ヒドロキシフェニルメチル基等のヒドロキシアラルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、及びn−イコシルオキシ基等の鎖状アルコキシ基;ビニルオキシ基、1−プロペニルオキシ基、2−n−プロペニルオキシ基(アリルオキシ基)、1−n−ブテニルオキシ基、2−n−ブテニルオキシ基、及び3−n−ブテニルオキシ基等の鎖状アルケニルオキシ基;フェノキシ基、o−トリルオキシ基、m−トリルオキシ基、p−トリルオキシ基、α−ナフチルオキシ基、β−ナフチルオキシ基、ビフェニル−4−イルオキシ基、ビフェニル−3−イルオキシ基、ビフェニル−2−イルオキシ基、アントリルオキシ基、及びフェナントリルオキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、α−ナフチルメチルオキシ基、β−ナフチルメチルオキシ基、α−ナフチルエチルオキシ基、及びβ−ナフチルエチルオキシ基等のアラルキルオキシ基;メトキシメチル基、エトキシメチル基、n−プロピルオキシメチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−n−プロピルオキシエチル基、3−メトキシ−n−プロピル基、3−エトキシ−n−プロピル基、3−n−プロピルオキシ−n−プロピル基、4−メトキシ−n−ブチル基、4−エトキシ−n−ブチル基、及び4−n−プロピルオキシ−n−プチル基等のアルコキシアルキル基;メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、n−プロピルオキシメトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基、2−n−プロピルオキシエトキシ基、3−メトキシ−n−プロピルオキシ基、3−エトキシ−n−プロピルオキシ基、3−n−プロピルオキシ−n−プロピルオキシ基、4−メトキシ−n−ブチルオキシ基、4−エトキシ−n−ブチルオキシ基、及び4−n−プロピルオキシ−n−ブチルオキシ基等のアルコキシアルコキシ基;2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、及び4−メトキシフェニル基等のアルコキシアリール基;2−メトキシフェノキシ基、3−メトキシフェノキシ基、及び4−メトキシフェノキシ基等のアルコキシアリールオキシ基;ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、及びデカノイル基等の脂肪族アシル基;ベンゾイル基、α−ナフトイル基、及びβ−ナフトイル基等の芳香族アシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、n−ノニルオキシカルボニル基、及びn−デシルオキシカルボニル基等の鎖状アルキルオキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、α−ナフトキシカルボニル基、及びβ−ナフトキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ヘプタノイルオキシ基、オクタノイルオキシ基、ノナノイルオキシ基、及びデカノイルオキシ基等の脂肪族アシルオキシ基;並びに、ベンゾイルオキシ基、α−ナフトイルオキシ基、及びβ−ナフトイルオキシ基等の芳香族アシルオキシ基が挙げられる。
ハロゲン化炭化水素基の具体例としては、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、及びパーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロノニル基、及びパーフルオロデシル基等のハロゲン化鎖状アルキル基;2−クロロシクロヘキシル基、3−クロロシクロヘキシル基、4−クロロシクロヘキシル基、2,4−ジクロロシクロヘキシル基、2−ブロモシクロヘキシル基、3−ブロモシクロヘキシル基、及び4−ブロモシクロヘキシル基等のハロゲン化シクロアルキル基;2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,3−ジクロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,5−ジクロロフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、3−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、及び4−フルオロフェニル基等のハロゲン化アリール基;並びに、2−クロロフェニルメチル基、3−クロロフェニルメチル基、4−クロロフェニルメチル基、2−ブロモフェニルメチル基、3−ブロモフェニルメチル基、4−ブロモフェニルメチル基、2−フルオロフェニルメチル基、3−フルオロフェニルメチル基、及び4−フルオロフェニルメチル基等のハロゲン化アラルキル基が挙げられる。
R1〜R18は、特に硬化性組成物を用いて得られる硬化物の硬度の観点から、全てが水素原子であることがより好ましい。
上記化学構造式(1)において、Xは単結合又は連結基(1以上の原子を有する2価の基)である。
上記連結基としては、例えば、2価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル基(エーテル結合)、チオエーテル基(チオエーテル結合)、エステル基(エステル結合)、カーボネート基(カーボネート結合)、アミド基(アミド結合)、及びこれらが複数個連結した基等が挙げられる。
上記2価の炭化水素基としては、例えば、炭素数が1〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、及び2価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。炭素数が1〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、及びトリメチレン基が挙げられる。2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基、及びシクロヘキシリデン基等の2価のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)が挙げられる。
上記連結基Xとしては、酸素原子を含有する連結基が好ましい。そのような連結基Xとしては、例えば、−CO−(カルボニル基)、−O−CO−O−(カーボネート基)、−COO−(エステル基)、−O−(エーテル基)、−CONH−(アミド基)、これらの基が複数個連結した基、及びこれらの基の1又は2以上と2価の炭化水素基の1又は2以上とが連結した基が挙げられる。2価の炭化水素基としては、例えば、前記で例示したものが挙げられる。
上記化学構造式(1)で表される脂環式エポキシ化合物としては、例えば、商品名「セロキサイド2021P」及び「セロキサイド2081」(何れも(株)ダイセル製)等の市販品を使用することもできる。また、化学構造式(1)で表される脂環式エポキシ化合物のうちXが単結合であるものとして、例えば、商品名「セロキサイド8000」((株)ダイセル製)などの市販品を用いることもできる。
脂環式エポキシ化合物(A)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。上記の中でも、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名「セロキサイド2021P」)と、ε−カプロラクトン変性3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートとの少なくとも一方を使用することが特に好ましい。
上記化学構造式(3)において、Yは−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CH2−、−CH(CH3)−、又は−C(CH3)2−を表す。
[ポリオール化合物(B)]
エポキシ樹脂組成物にポリオール化合物(B)を含めることにより、高い可撓性を有する硬化物を形成でき、また、エポキシ樹脂組成物の硬化物のみで自立することができるシート状フィルムの製造が可能となる。
脂環式エポキシ化合物(A)とポリオール化合物(B)との合計量100質量部に占める脂環式エポキシ化合物(A)の量の割合は、50〜80質量部の範囲内にあることが好ましく、70〜75質量部の範囲内にあることがより好ましい。この割合が小さすぎると、エポキシ樹脂組成物の硬化物において架橋密度が低くなり、高い耐熱性が得られない可能性がある。この割合が大きすぎると、エポキシ樹脂組成物の硬化物は硬く脆い性状となり、高い可撓性が得られない可能性がある。
ポリオール化合物(B)とは、1分子内に2個以上の水酸基を有し、数平均分子量が例えば200以上の重合体(オリゴマー又はポリマー)である。ポリオール化合物(B)には、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びポリカーボネートポリオールが含まれる。尚、ポリオール化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリオール化合物(B)が有する水酸基(2個以上の水酸基)は、アルコール性水酸基であってもよいし、フェノール性水酸基であってもよい。また、ポリオール化合物(B)が1分子内に有する水酸基の数は2以上であればよく、特に限定されない。
ポリオール化合物(B)における水酸基(2個以上の水酸基)の位置は、特に限定されないが、酸発生剤との反応性の観点で、ポリオール分子の少なくとも一方の末端(重合体主鎖の末端)に存在することが好ましく、ポリオール分子の両末端に存在することが特に好ましい。
ポリオール化合物(B)は、その他の成分と配合した後に液状の樹脂組成物を形成できればよく、それ自体は固体であってもよいし、液体であってもよい。
ポリオール化合物(B)の数平均分子量は200以上であり、200〜100000の範囲内にあることが好ましく、300〜1000の範囲内にあることがより好ましい。数平均分子量が小さすぎると、樹脂組成物を塗工する基材から樹脂組成物の硬化物であるフィルムを剥離する際に、フィルムに破断やクラックが発生する場合がある。一方、数平均分子量が大きすぎると、液状の樹脂組成物においてポリオール化合物が析出するか、又は、ポリオール化合物を他の成分中に溶解させることができない場合がある。尚、ポリオール化合物(B)の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される、標準ポリスチレン換算の数平均分子量を意味する。
ポリオール化合物(B)は、水酸基価が190〜550mgKOH/gの範囲内にあることが好ましい。水酸基価が小さすぎると、樹脂組成物の硬化物において架橋密度が低くなり、高い耐熱性が得られない可能性がある。水酸基価が大きすぎると、エポキシ基の量に対し、水酸基の量が過剰となり、反応に寄与しない浮遊モノマーが硬化物中に発生する可能性がある。その結果、熱重量変化が大きくなり、耐熱性の低下、さらには吸湿性の増加を生じる可能性がある。
ポリオール化合物(B)としては、例えば、分子内にエステル骨格(ポリエステル骨格
)を有するポリエステルポリオール(ポリエステルポリオールオリゴマーを含む)、分子内にエーテル骨格(ポリエーテル骨格)を有するポリエーテルポリオール(ポリエーテルポリオールオリゴマーを含む)、及び分子内にカーボネート骨格(ポリカーボネート骨格)を有するポリカーボネートポリオール(ポリカーボネートポリオールオリゴマーを含む)などが挙げられる。ポリオール化合物(B)には、その他化合物、例えば、フェノキシ樹脂、エポキシ当量が1000g/eq.を超えるビスフェノール型高分子エポキシ樹脂、水酸基を有するポリブタジエン類、及びアクリルポリオールも含まれる。
上記ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリオールとポリカルボン酸(多塩基酸)との又はヒドロキシカルボン酸の縮合重合(例えば、エステル交換反応)により得られるポリエステルポリオールや、ラクトン類の開環重合により得られるポリエステルポリオールなどが挙げられる。
上記ポリエステルポリオールを得るための縮合重合に使用するポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,3,5−トリメチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、2,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−ジメチロールシクロヘキサン、1,3−ジメチロールシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、1,12−ドデカンジオール、ポリブタジエンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−ジヒドロキシアセトン、ヘキシレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、ジトリメチロールプロパン、マンニトール、ソルビトール、及びペンタエリスリトールが挙げられる。
上記ポリエステルポリオールを得るための縮合重合に使用するポリカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アゼライン酸、クエン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シトラコン酸、1,10−デカンジカルボン酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、無水ピロメリット酸、及び無水トリメリット酸が挙げられる。
上記ポリエステルポリオールを得るための縮合重合に使用するヒドロキシカルボン酸としては、例えば、乳酸、りんご酸、グリコール酸、ジメチロールプロピオン酸、及びジメチロールブタン酸が挙げられる。
上記ポリエステルポリオールを得るための開環重合に使用するラクトン類としては、例えば、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、及びγ−ブチロラクトンが挙げられる。
上記ポリエステルポリオールとしては、例えば、商品名「プラクセル205」、「プラクセル205H」、「プラクセル205U」、「プラクセル205BA」、「プラクセル208」、「プラクセル210」、「プラクセル210CP」、「プラクセル210BA」、「プラクセル212」、「プラクセル212CP」、「プラクセル220」、「プラクセル220CPB」、「プラクセル220NP1」、「プラクセル220BA」、「プラクセル220ED」、「プラクセル220EB」、「プラクセル220EC」、「プラクセル230」、「プラクセル230CP」、「プラクセル240」、「プラクセル240CP」、「プラクセル210N」、「プラクセル220N」、「プラクセルL205AL」、「プラクセルL208AL」、「プラクセルL212AL」、「プラクセルL220AL」、「プラクセルL230AL」、「プラクセル305」、「プラクセル308」、「プラクセル312」、「プラクセルL312AL」、「プラクセル320」、「プラクセルL320AL」、「プラクセルL330AL」、「プラクセル410」、「プラクセル410D」、「プラクセル610」、「プラクセルP3403」、及び「プラクセルCDE9P」(何れも(株)ダイセル製)等の市販品を使用することができる。
上記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオール類への環状エーテル化合物の付加反応により得られるポリエーテルポリオール、及びアルキレンオキシドの開環重合により得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。
上記ポリエーテルポリオールとしては、より具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール(テトラメチレングリコール)、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,3,5−トリメチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、2,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−ジメチロールシクロヘキサン、1,3−ジメチロールシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、1,12−ドデカンジオール、ポリブタジエンジオール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−ジヒドロキシアセトン、ヘキシレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、ジトリメチロールプロパン、マンニトール、ソルビトール、及びペンタエリスリトールなどのポリオール類の多量体;上記ポリオール類と、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、及びエピクロロヒドリン等のアルキレンオキサイドとの付加物;並びにテトラヒドロフラン類などの環状エーテルの開環重合体(例えば、ポリテトラメチレングリコール)が挙げられる。
上記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、商品名「PEP−101」(フロイント産業(株)製)、商品名「アデカプルロニックL」、「アデカプルロニックP」、「アデカプルロニックF」、「アデカプルロニックR」、「アデカプルロニックTR」、及び「アデカPEG」(何れもアデカ(株)製);商品名「PEG#1000」、「PEG#1500」、及び「PEG#11000」(何れも日油(株)製);商品名「ニューポールPE−34」、「ニューポールPE−61」、「ニューポールPE−78」、「ニューポールPE−108」、「PEG−200」、「PEG−600」、「PEG−2000」、「PEG−6000」、「PEG−10000」、及び「PEG−20000」(何れも三洋化成工業(株)製);商品名「PTMG1000」、「PTMG1800」、及び「PTMG2000」(何れも三菱化学(株)製);並びに「PTMGプレポリマー」(三菱樹脂(株)製)等の市販品を使用することができる。
上記ポリカーボネートポリオールとは、分子内に2個以上の水酸基を有するポリカーボネートである。ポリカーボネートポリオールとしては、分子内に2個の末端水酸基を有するポリカーボネートジオールが特に好ましい。
上記ポリカーボネートポリオールは、通常のポリカーボネートポリオールを製造する方法と同じく、ホスゲン法、又は、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートのようなジアルキルカーボネート又はジフェニルカーボネートを用いるカーボネート交換反応(
特開昭62−187725号公報、特開平2−175721号公報、特開平2−49025号公報、特開平3−220233号公報、特開平3−252420号公報等)などにより合成される。上記ポリカーボネートポリオールにおけるカーボネート結合は熱分解を受けにくいため、ポリカーボネートポリオールを含む樹脂組成物の硬化物は高温高湿下でも優れた安定性を示す。
上記ジアルキルカーボネート又はジフェニルカーボネートと共にカーボネート交換反応で用いられるポリオールとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,12−ドデカンジオール、ブタジエンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、プロピレングリコール、及びプロピレングリコールが挙げられる。
上記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、商品名「プラクセルCD205PL」、「プラクセルCD205HL」、「プラクセルCD210PL」、「プラクセルCD210HL」、「プラクセルCD220PL」、及び「プラクセルCD220HL」(何れも(株)ダイセル製);商品名「UH−CARB50」、「UH−CARB100」、「UH−CARB300」、「UH−CARB90(1/3)」、「UH−CARB90(1/1)」、及び「UC−CARB100」(何れも宇部興産(株)製);並びに、商品名「PCDL T4671」、「PCDL T4672」、「PCDL T5650J」、「PCDL T5651」、及び「PCDL T5652」(何れも旭化成ケミカルズ(株)製)等の市販品を使用することができる。
上記ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びポリカーボネートポリオール以外のポリオールとしては、例えば、商品名「YP−50」、「YP−50S」、「YP−55U」、「YP−70」、「ZX−1356−2」、「YPB−43C」、「YPB−43M」、「FX−316」、「FX−310T40」、「FX−280S」、「FX−293」、「YPS−007A30」、及び「TX−1016」(何れも新日鐵化学(株)製)や、商品名「jER1256」、「jER4250」、及び「jER4275」(何れも三菱化学(株)製)などのフェノキシ樹脂;商品名「エポトートYD−014」、「エポトートYD−017」、「エポトートYD−019」、「エポトートYD−020G」、「エポトートYD−904」、「エポトートYD−907」、及び「エポトートYD−6020」(何れも新日鐵化学(株)製)や、商品名「jER1007」、「jER1009」、「jER1010」、「jER1005F」、「jER1009F」、「jER1006FS」、及び「jER1007FS」(何れも三菱化学(株)製)などのエポキシ当量が1000g/eq.を超えるビスフェノール型高分子エポキシ樹脂;商品名「Poly bd R−45HT」、「Poly bd R−15HT」、「Poly ip」、及び「KRASOL」(何れも出光興産(株)製)や、商品名「α−ωポリブタジエングリコール G−1000」、「α−ωポリブタジエングリコール G−2000」、及び「α−ωポリブタジエングリコール G−3000」(何れも日本曹達(株)製)などの水酸基を有するポリブタジエン類;並びに、商品名「ヒタロイド3903」、「ヒタロイド3904」、「ヒタロイド3905」、「ヒタロイド6500」、「ヒタロイド6500B」、及び「ヒタロイド3018X」(何れも日立化成工業(株)製)や、商品名「アクリディックDL−1537」、「アクリディックBL−616」、「アクリディックAL−1157」、「アクリディックA−322」、「アクリディックA−817」、「アクリディックA−870」、「アクリディックA−859−B」、「アクリディックA−829」、及び「アクリディックA−49−394−IM」(何れもDIC(株)製)、商品名「ダイヤナールSR−1346」、「ダイヤナールSR−1237」、及び「ダイヤナールAS−1139」(何れも三菱レイヨン(株)製)などのアクリルポリオール等の市販品を使用することができる。
尚、上記ポリオール化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。ポリオール化合物(B)は、ポリエステルポリオール、例えば商品名「プラクセル305」及び「プラクセル308」(何れも(株)ダイセル製)などのポリカプロラクトントリオールと、商品名「プラクセルCD205PL」((株)ダイセル製)などのポリカーボネートジオールとの少なくとも一方であることが特に好ましい。
[酸発生剤(C)]
酸発生剤(C)は、エポキシ樹脂組成物中のエポキシ基を有する化合物の重合を開始させる働きを有する。酸発生剤(C)としては、紫外線照射などの電離放射線照射又は加熱処理を施すことによりカチオン種を発生して、脂環式エポキシ化合物(A)の重合を開始させるカチオン系重合開始剤が好ましい。酸発生剤(C)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
酸発生剤(C)の量は、脂環式エポキシ化合物(A)とポリオール化合物(B)との合計量100質量部(エポキシ樹脂組成物にポリオール化合物(B)を含まないときは脂環式エポキシ化合物(A)100質量部)に対して、0.05〜0.5質量部の範囲内にあることが好ましく、0.05〜0.1質量部の範囲内にあることがより好ましい。酸発生剤(C)の量が少なすぎると、エポキシ樹脂組成物の硬化物において架橋密度が小さくなり、高い耐熱性が得られない可能性がある。酸発生剤(C)の量が多すぎると、高い透明性を有する硬化物を得られない可能性がある。
電離放射線は、エポキシ樹脂組成物が含む成分、具体的には酸発生剤を分解(電離)させて、エポキシ樹脂組成物中に酸を発生させ得る高エネルギーの放射線、例えば、X線又は紫外線を意味している。電離放射線としては、典型的には紫外線を利用する。
電離放射線照射によりカチオン種を発生するカチオン系重合開始剤としては、例えば、ヘキサフルオロアンチモネート塩、ペンタフルオロヒドロキシアンチモネート塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアルゼネート塩、トリアリルスルホニウム塩及びその誘導体、並びに、ジアリルヨウドニウム塩及びその誘導体を挙げることができる。
トリアリルスルホニウム塩及びその誘導体としては、例えば、トリアリルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート塩及びその誘導体、並びにトリアリルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩及びその誘導体が挙げられる。ジアリルヨウドニウム塩及びその誘導体としては、例えば、ジアリルヨウドニウムヘキサフルオロホスフェート塩及びその誘導体、並びに、ジアリルヨウドニウムテトラフルオロボレート塩及びその誘導体が挙げられる。これらのカチオン系重合開始剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
このようなカチオン系重合開始剤としては、例えば、商品名「UVACURE1590」(ダイセル・サイテック(株)製);商品名「CD−1010」、「CD−1011」、及び「CD−1012」(何れも米国サートマー社製);商品名「イルガキュア264」及び「イルガキュア250」(何れもチバ・ジャパン(株)製);商品名「CIT−1682」(日本曹達(株)製);商品名「CPI−101A」、「CPI−100P」、「CPI−210S」、及び「CPI−110A」(何れもサンアプロ(株)製);商品名「アデカオプトマーSP−170」、「アデカオプトマーSP−172」、及び「アデカオプトマーSP−150」(何れも(株)ADEKA製);並びに、商品名「シリコリース UV CATA211」(荒川化学工業(株)製)等の市販品を使用できる。好ましくは、商品名「SP−170」及び「SP−172」(何れも(株)ADEKA製)、並びに、商品名「CPI−210S」、「CPI−101A」及び「CPI−110A」(何れもサンアプロ(株)製)の1以上を使用できる。
耐熱性等の面からはカチオン系重合開始剤を用いることが好ましい。カチオン系重合開始剤としては、加熱によりカチオン重合を開始させる物質を放出する開始剤や電離放射線によってカチオン重合を開始させる物質を放出させる開始剤が挙げられるが、特には耐熱性が高い硬化物が得られることから加熱によりカチオン重合を開始する物質を放出する開始剤、すなわち熱カチオン系重合開始剤が好ましい。
加熱処理を施すことによりカチオン種を発生するカチオン系重合開始剤としては、例えば、アリールジアゾニウム塩、アリールヨードニウム塩、アリールスルホニウム塩、及びアレン−イオン錯体が挙げられる。
前記のようなカチオン系重合開始剤としては、例えば、商品名「PP−33」、「CP−66」、及び「CP−77」(何れもADEKA(株)製);商品名「FC−509」(スリーエム(株)製);商品名「UVE1014」(G.E.(株)製);商品名「サンエイド SI−60L」、「サンエイド SI−80L」、「サンエイド SI−100L」、「サンエイド SI−110L」、及び「サンエイド SI−150L」(何れも三新化学工業(株)製);並びに、商品名「CG−24−61」(チバ・ジャパン(株)製)等の市販品を使用できる。
さらに、アルミニウムやチタンなどの金属とアセト酢酸若しくはジケトン類とのキレート化合物とトリフェニルシラノール等のシラノールとの化合物、又は、アルミニウムやチタンなどの金属とアセト酢酸若しくはジケトン類とのキレート化合物とビスフェノールS等のフェノール類との化合物も、上記カチオン系重合開始剤として使用できる。アルミニウムキレートとしては、ダイセル化学工業製DAICAT EX−1などが挙げられる。
[カップリング剤(D)]
本発明の透明複合シートの可撓性と耐熱性をバランス良く両立させるために、エポキシ樹脂組成物にカップリング剤(D)を含めることが有効である。
本発明に用いるカップリング剤は、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基から選ばれた少なくとも一種の官能基と、アルコキシ基とを有するものであることが好ましい。
これらのカップリング剤(D)としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、アルミニウム/ジルコニウムカップリング剤等が挙げられるが、シランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤としては、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等が挙げられ、これらを例示すると、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどが挙げられる。これらのうちエポキシシランが好ましい。
カップリング剤(D)の配合量は、特に限定されないが、脂環式エポキシ化合物(A)
とカップリング剤(D)との配合の重量比が、99.99:0.01〜95.00:5.00であることが好ましく、99.95:0.05〜98.00:2.00であることがより好ましく、特に99.90:0.10〜99.00:1.00が好ましい。カップリング剤の配合量が下限値未満では、透明複合シートの可撓性が向上せず、上限値を超えると耐熱性の低下、及び靭性の低下がおこる可能性がある。
[ガラスフィラー(F)]
本発明に用いるガラスフィラーとしては、ガラス繊維、ガラスクロスやガラス不織布などのガラス繊維布、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスパウダー、ミルドガラスなどが挙げられ、中でも線膨張率の低減による効果(後述する)が高いことから、ガラス繊維、ガラスクロス、ガラス不織布などのガラス繊維布が好ましく、ガラスクロスが最も好ましい。
ガラスの種類としては、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、クオーツ、低誘電率ガラス、高誘電率ガラスなどが挙げられ、中でもアルカリ金属などのイオン性不純物がすくなく入手の容易なEガラス、Sガラス、Tガラス、NEガラスが好ましく、特に低熱膨張率のSガラス又はTガラスがより好ましい。これらは、例えば日東紡績(株)から販売されているガラス(商品名「Tガラス」)を好適に使用できる。
本発明に用いるガラスフィラーは、後述のように、30℃から250℃における平均線膨張率が5ppm以下であることが好ましい。
ガラスフィラーの含有量は、透明複合シート100質量部に対し1〜90質量部であることが好ましく、より好ましくは10〜80質量部、さらに好ましくは30〜70質量部である。ガラスフィラーの含有量が1〜90質量部の範囲であれば成形が容易で、複合化による線膨張の低下の効果が認められる。
[ハードコート層]
本発明のハードコート層には多官能アクリレート樹脂、多官能ウレタンアクリレート樹脂等の高い透明性を有するアクリル系材料を用いることができる。但し、硬化後の鉛筆硬度はH〜5Hとする。鉛筆硬度が低すぎると必要な耐擦傷性を得ることができず、鉛筆硬度が高すぎると靭性(じんせい)が不足する可能性がある。尚、靭性が低いと可撓性が低下する。
アクリル系材料の中でも、所望する分子量、分子構造を設計でき、形成されるハードコート層の物性のバランスを容易にとることが可能であるといった理由から、多官能ウレタンアクリレートを好適に用いることができる。ウレタンアクリレートは、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有アクリレートを反応させることによって得られる。具体的には、共栄社化学社製、UA−306H、UA−306T、UA−306I等、日本合成化学社製、UV−1700B、UV−6300B、UV−7600B、UV−7605B、UV−7640B、UV−7650B等、新中村化学社製、U−4HA、U−6HA、UA−100H、U−6LPA、U−15HA、UA−32P、U−324A等、ダイセルユーシービー社製、Ebecryl−1290、Ebecryl−1290K、Ebecryl−5129等、根上工業社製、UN−3220HA、UN−3220HB、UN−3220HC、UN−3220HS等を挙げることができるがこの限りではない。
またこれらの他にも、電離放射線硬化型材料であり、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセター
ル樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
また、ハードコート層形成用塗液に光重合開始剤を添加することもできる。光重合開始剤としては、紫外線が照射された際にラジカルを発生するものであれば良く、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類を用いることができる。また、光重合開始剤の添加量は、電離放射線硬化型材料100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下の範囲内であることが好ましく、さらには1質量部以上7質量部以下であることが好ましい。
[その他の成分]
本発明の透明複合シートには、必要に応じて、透明性、耐溶剤性、耐熱性等の特性を損なわない範囲で、熱可塑性又は熱硬化性のオリゴマーやポリマーを併用してよい。これら熱可塑性または熱硬化性のオリゴマーやポリマーを併用する場合は、全体の屈折率がガラスフィラーの屈折率に合うように組成比を調整することが好ましい。また、本発明の透明複合シート中には、必要に応じて、透明性、耐溶剤性、耐熱性等の特性を損なわない範囲で、少量の酸化防止剤、紫外線吸収剤、染顔料、他の無機フィラー等の充填剤等を含んでいてもよい。
本発明の透明複合シートを前記光学用途として用いる場合、30℃〜250℃における平均線膨張率が30ppm以下であることが好ましく、より好ましくは20ppm以下、最も好ましくは10ppm以下である。例えば、この透明複合シートをアクティブマトリックス表示素子用基板に用いた場合、この上限値を超えると、その製造工程において反りやアルミ配線の断線などの問題が生じる恐れがある。透明複合シートの平均線膨張率を上限値以下に抑えるために、ガラスフィラーの30℃〜250℃における平均線膨張率は5ppm以下であることが好ましい。
本発明の透明複合シートを、液晶表示素子用プラスチック基板、カラーフィルター用基板、有機EL表示素子用プラスチック基板、電子ペーパー用基板、太陽電池用基板、タッチパネル等の光学用途として用いる場合、厚みは好ましくは30〜1000μmであり、より好ましくは40〜200μmである。シートの厚みがこの範囲にあると平坦性に優れ、ガラス基板と比較して基板の軽量化を図ることができる。
本発明の透明複合シートを表示素子用プラスチック基板として用いる場合、波長400nmにおける光線透過率は80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上である。波長400nmにおける光線透過率が下限値未満であると表示性能が十分でない可能性がある。
<透明複合シートの製造>
脂環式エポキシ樹脂層2の作製方法には特に制限はなく、未硬化のエポキシ樹脂組成物とガラスフィラーとを直接混合した複合組成物からなる塗膜を支持体上に形成し、この塗膜に電離放射線を照射し、さらに塗膜をポストベークに供して塗膜を硬化させ、その後硬化した膜を支持体から剥離することにより得る方法、未硬化のエポキシ樹脂組成物をガラスクロスやガラス不織布に含浸させたのち架橋させてシートとする方法、必要な型に注型したのち架橋させてシートとする方法等が挙げられる。
ハードコート層1は、脂環式エポキシ樹脂層2の塗工後に順次積層しても良いし、ハードコート層1と脂環式エポキシ樹脂層2の二層を同時に重層しても良い。
<表示素子用基板>
本発明の別の実施形態として、本発明の透明複合シートを使用することにより、透明性、可撓性に加え耐擦傷性に優れた、液晶表示素子、有機EL表示素子、カラーフィルター、タッチパネル、電子ペーパー等の表示素子用基板が得られる。
以下、本発明の内容を実施例により詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り以下の例に限定されるものではない。
<実施例1>
図1に示す透明複合シート10を以下の手順で作製した。
(脂環式エポキシ樹脂層2の形成)
先ず、80質量部の脂環式エポキシ化合物(A)と、20質量部のポリオール化合物(B)と、0.05質量部の酸発生剤(C)を、遊星攪拌脱泡機(マゼルスターKK5000、KURABO製)を用いて15分間攪拌して、エポキシ樹脂組成物の塗液を調製した。
脂環式エポキシ化合物(A)としては、セロキサイド2021P((株)ダイセル製)を使用した。また、ポリオール化合物(B)としては、プラクセル305((株)ダイセル製)を使用した。酸発生剤(C)としては、アデカオプトマーSP−170((株)ADEKA製)を使用した。
一方、第4級アンモニウム塩構造を有するカチオン性シランカップリング剤で表面処理した坪量47g/m2の平織りのガラスクロスを用意し、これに前記エポキシ樹脂組成物をコーティングした後、紫外線照射して、厚さが100μmの脂環式エポキシ樹脂層2を作製した。ここでは、支持体として、厚さが250μmのポリエチレンテレフタレート(PET)製シート(メリネックスS、帝人(株)製)を使用した。電離放射線照射器の光源としては、高圧水銀ランプ(アイグラフィックス(株)製)を使用した。露光は、積算光量が500mJ/cm2となるように行った。また、ポストベークは、150℃にて180秒間行った。尚、支持体は、50N/mの張力で巻き取った。
(ハードコート層1の形成)
電離放射線硬化型材料としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)7.8質量部とペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETA)7.8質量部とウレタンアクリレートUA−306T(共栄社化学社製)23.3質量部を用意し、光重合開始剤としてイルガキュア184(チバ・ジャパン社製)2.0質量部を用意し、溶媒としてメチルエチルケトンと炭酸ジメチルとジアセトンアルコールを4:4:2の重量比で混合した混合溶媒57.2質量部を用意し、これらを混合することにより固形分40wt%のハードコート層形成用塗液を得た。
得られた塗液を脂環式エポキシ樹脂層2上にワイヤーバーコーターにより塗布し、塗膜を形成し、2〜5vol%の溶剤雰囲気下の半密閉空間にて30秒25℃で室温乾燥をおこなった(一次乾燥工程)。室温乾燥工程で透明基材上の塗膜中に含まれる溶媒が10wt%以下となるまでの時間は4秒であった。室温乾燥後、オーブンで80℃1分乾燥をおこない(二次乾燥工程)、乾燥後、コンベア式紫外線硬化装置で露光量400mJ/cm2で紫外線照射をおこなうことにより脂環式エポキシ樹脂層2上に厚さ5μmのハードコート層を形成し、透明複合シート10を作製した。
<実施例2>
前記脂環式エポキシ樹脂層2の形成に、ガラスクロスに代えて平均粒子径5μmのガラスビーズを40質量部添加した以外は、実施例1と同じ条件で透明複合シート10を作製
した。
<実施例3>
Tガラス系ガラスクロス(厚さ95μm、屈折率1.520、日東紡績製、WTX116F)に化学構造式(2)の構造を有する水添ビフェニル型脂環式エポキシ樹脂(E−BP、ダイセル化学工業製)99質量部、カップリング剤としてβ−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(KBM303、信越化学工業製)1質量部、芳香族スルホニウム系熱カチオン系重合開始剤(SI−100L、三新化学製)1質量部を混合したエポキシ樹脂組成物を含浸させ脱泡した。このガラスクロスを離型処理したガラス板に挟み込み80℃で2時間加熱後、250℃でさらに2時間加熱し厚み97μm(ガラスフィラー含有量:63質量部)の脂環式エポキシ樹脂層2を得た。この表面に、紫光UV−1700B(日本合成化学社製)95質量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン5質量部の混合物を塗布及び硬化し、厚さ5μmのハードコート層1を形成し、透明複合シート10を作製た。
<実施例4>
ハードコート層1の形成に、紫光UV−7640B(日本合成化学社製)95質量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン5質量部の混合物を塗布及び硬化し、厚さ5μmのハードコート層1を形成した以外は、実施例3と同じ条件で透明複合シート10を作製した。
<実施例5>
ハードコート層1の形成に、紫光UV−7650B(日本合成化学社製)95質量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン5質量部の混合物を塗布及び硬化し、厚さ5μmのハードコート層1を形成した以外は、実施例3と同じ条件で透明複合シート10を作製した。
<比較例1>
前記紫外線硬化型樹脂組成物にガラスクロスを添加しなかった以外は、実施例1と同じ条件で透明複合シートを作製した。
<比較例2>
ハードコート層を積層しなかった以外は、実施例1と同じ条件で透明シートを作製した。
<比較例3>
ハードコート層の形成に、紫光UV−7550B(日本合成化学社製)95質量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン5質量部の混合物を塗布及び硬化し、厚さ5μmのハードコート層を形成した以外は、実施例3と同じ条件で透明複合シートを作製した。
<比較例4>
ハードコート層の形成に、紫光UV−7510B(日本合成化学社製)95質量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン5質量部の混合物を塗布及び硬化し、厚さ5μmのハードコート層を形成した以外は、実施例3と同じ条件で透明複合シートを作製した。
<比較例5>
ハードコート層を積層しなかった以外は、実施例3と同じ条件で透明シートを作製した。
<評価>
[引張強度]
実施例1、2、及び比較例1、2の透明シートについて、テンシロンによる引張試験の10%延伸時の応力値を、JIS K7127に準拠し、300mm/分の条件で引張強度を測定した。尚、引張強度が低い場合、可撓性が低下する。
[鉛筆硬度]
実施例1〜5、及び比較例1〜4の透明シートについて、JIS K5600−5−4(1999)に準拠し、500g荷重でハードコート層表面の鉛筆硬度を測定した。
[耐擦傷性]
実施例3〜5、及び比較例3〜5における透明シートを塗工機の巻き出しにある基材に貼り、基材と共に巻き取りまで搬送させた。このとき、塗工機中のガイドロール1本を回転しないよう固定し、搬送時のエラーにより透明シート表面に傷が入る現象を模した。巻き取りに到達した透明シートの表面を目視にて観察し、傷の有無を確認した。
以上の評価結果を表1にまとめて示す。
表1の結果を踏まえると、ガラスフィラーを含まない比較例1では引張強度が大きく低下した。一方、実施例1及び実施例2では引張強度を十分確保できた。また、ハードコート層の無い比較例2では鉛筆硬度に劣る結果となった。
また、表1の結果を踏まえると、実施例3〜5では比較例3〜5に比べ、十分な鉛筆硬度を有するハードコート層を透明シート表面に設けたので、巻き出しから送り出された透明シートの表面に傷が入ることを回避できることを確認した。