JP6740655B2 - 複合フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、複合フィルムに関する。
エポキシ樹脂からなるフィルムは、優れた耐食性を有している。しかしながら、エポキシ樹脂からなるフィルムは、耐候性に難点があり、室外での長期間の使用には適さない。
これと類似の問題は、金属部品上にエポキシ樹脂からなる被膜を形成した場合にも生じる。このような応用については、エポキシ樹脂からなる被膜を、アクリル樹脂で被覆することにより、耐候性を確保することがある(特許文献1)。
特開平8−333528号公報
本発明者は、エポキシ樹脂からなる層とアクリル樹脂からなる層とを含んだ複合フィルムを製造する場合、以下の問題を生じ得ることを見出した。
エポキシ樹脂からなるフィルムを製造する場合、エポキシ樹脂をドラムロールやキャリアフィルムなどの基材上に塗工し、この塗膜を硬化させ、その後、硬化した膜を基材から剥離する。しかしながら、エポキシ樹脂の硬化物からなる層(以下、「エポキシ樹脂層」という)の上にアクリル樹脂層を形成した場合、それらの間で十分な密着性を達成できず、エポキシ樹脂層とアクリル樹脂層とからなる複合フィルムを基材から剥離する際に層間剥離を発生することがある。
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、エポキシ樹脂層とアクリル樹脂層とを備え、層間剥離を生じ難い複合フィルムを提供することを目的とする。
本発明者は、エポキシ樹脂層とアクリル樹脂層との層間剥離について検討した結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明の目的は、以下に記載する複合フィルムにより達成される。
[1]
自立膜としての複合フィルムであって、
エポキシ樹脂からなるエポキシ樹脂層と、
アクリル樹脂からなるアクリル樹脂層と、
前記エポキシ樹脂層と前記アクリル樹脂層との間に介在し、エポキシ樹脂とアクリル樹脂との混合物からなる中間層と
を備え、前記中間層の厚さt3は5μm以上である複合フィルム。
[2]
前記エポキシ樹脂層の厚さt1及び前記アクリル樹脂層の厚さt2の各々は5μm以上であり、前記厚さt1と前記厚さt2と前記厚さt3との合計は、30μm乃至300μmの範囲内にある[1]に記載の複合フィルム。
[3]
前記中間層において、エポキシ樹脂とアクリル樹脂との混合比率が膜厚方向で変化しており、前記アクリル樹脂層側と比較して、前記エポキシ樹脂層側でエポキシ樹脂比率がより高い[1]又は[2]に記載の複合フィルム。
本発明によると、エポキシ樹脂層とアクリル樹脂層とを備え、層間剥離を生じ難い複合フィルムが提供される。
本発明の実施形態に係る複合フィルムを概略的に示す断面図。 フィルム製造装置の一例を概略的に示す図。 図2のフィルム製造装置が含んでいるダイヘッドを概略的に示す断面図。 比較例に係る複合フィルムを概略的に示す断面図。
以下に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る複合フィルムを概略的に示す断面図である。
この複合フィルム1は、多層構造を有している自立膜である。一例によれば、複合フィルム1は透明である。複合フィルム1は、不透明であってもよい。
なお、ここで使用する用語「自立膜」とは、基板などの支持体によって支持されなくとも、それ自体を単独で取り扱うことができるフィルムを意味している。また、ここで使用する用語「フィルム」は、薄層形状及び可撓性を有している物品を意味し、厚さの概念は含まない。
複合フィルム1は、エポキシ樹脂層11と、アクリル樹脂層12と、中間層13とを含んでいる。
エポキシ樹脂層11の厚さt1と、アクリル樹脂層12の厚さt2と、中間層13の厚さt3との合計は、30μm乃至300μmの範囲内にあることが好ましく、50乃至250μmの範囲内にあることがより好ましい。この合計が大きすぎると、複合フィルム1の可撓性が不十分となることがある。また、この合計が小さすぎると、複合フィルム1の強度が不十分となることがある。
次に、エポキシ樹脂層11、アクリル樹脂層12、及び中間層13の各々について説明する。
<1>エポキシ樹脂層
エポキシ樹脂層11は、エポキシ樹脂の硬化物である。エポキシ樹脂層11は、複合フィルム1に高い耐食性を与える。
エポキシ樹脂層11の厚さt1は、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。また、厚さt1は、総厚−10μm以下であることが好ましく、総厚−20μm以下であることがより好ましい。厚さt1が小さすぎると、高い耐食性を得ることが難しい。厚さt1が大きすぎると、他の層を薄くしない限り、複合フィルム1が厚くなる。
エポキシ樹脂としては、例えば、脂環式エポキシ化合物(A)と、ポリオール化合物(B)と、酸発生剤(C)とを含んだ樹脂組成物を使用することができる。以下に、この樹脂組成物の各成分及び樹脂組成物の調製方法について説明する。
[脂環式エポキシ化合物(A)]
脂環式エポキシ化合物(A)は、1分子内に脂環(脂肪族環)構造とエポキシ基とを含んだ化合物である。エポキシ基は、脂環において互いに隣り合った2つの炭素原子と酸素原子とで構成されていてもよく(以下、そのようなエポキシ基を「脂環エポキシ基」と称する)、脂環に単結合で直接結合していてもよい。
脂環式エポキシ化合物(A)が1分子内に含む脂環構造の数は、1であってもよく、2以上であってもよい。また、脂環式エポキシ化合物(A)が1分子内に含むエポキシ基の数は、1であってもよく、2以上であってもよい。一例によれば、脂環式エポキシ化合物(A)は、1分子内に、2つの脂環構造と、2つのエポキシ基とを含み、それらエポキシ基は別々の脂環構造の炭素原子を含んだ脂環エポキシ基である。
脂環エポキシ基を有する化合物としては、公知乃至慣用のものの中から任意に選択して使用することができる。脂環エポキシ基を有する化合物は、シクロヘキサン環において互いに隣り合った2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基を有すること、即ち、シクロヘキセンオキシド基を有する化合物であることが好ましい。
脂環エポキシ基を有する化合物としては、特に、耐熱性、耐光性、及び透明性の点で、下記一般式(I)で表される脂環式エポキシ化合物(脂環式エポキシ樹脂)が好ましい。一般的に、エポキシ化合物は耐熱性に優れている。しかしながら、ビスフェノールA型エポキシ化合物等のベンゼン環を有するエポキシ化合物は、共役二重結合を有しているため、共役二重結合を有していないエポキシ化合物と比較して透明性の点で劣る。下記一般式(I)で表される脂環式エポキシ化合物を使用した場合、特に高い透明性を達成できる。
上記一般式(I)において、R乃至R18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。
有機基としては、例えば、炭化水素基であっても、炭素原子とハロゲン原子とからなる基であっても、炭素原子及び水素原子とともに、ハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、及びケイ素原子のようなヘテロ原子を含むような基であってもよい。ハロゲン原子の例としては、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子、及びフッ素原子等が挙げられる。
有機基としては、炭化水素基と、炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる基と、ハロゲン化炭化水素基と、炭素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる基と、炭素原子、水素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる基とが好ましい。有機基が炭化水素基である場合、炭化水素基は、芳香族炭化水素基でも、脂肪族炭化水素基でも、芳香族骨格と脂肪族骨格とを含む基でもよい。
炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、及びn−イコシル基等の鎖状アルキル基;ビニル基、1−プロペニル基、2−n−プロペニル基(アリル基)、1−n−ブテニル基、2−n−ブテニル基、及び3−n−ブテニル基等の鎖状アルケニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、ビフェニル−4−イル基、ビフェニル−3−イル基、ビフェニル−2−イル基、アントリル基、及びフェナントリル基等のアリール基;並びに、ベンジル基、フェネチル基、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、α−ナフチルエチル基、及びβ−ナフチルエチル基等のアラルキル基が挙げられる。
ハロゲン化炭化水素基の具体例としては、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、及びパーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロノニル基、及びパーフルオロデシル基等のハロゲン化鎖状アルキル基;2−クロロシクロヘキシル基、3−クロロシクロヘキシル基、4−クロロシクロヘキシル基、2,4−ジクロロシクロヘキシル基、2−ブロモシクロヘキシル基、3−ブロモシクロヘキシル基、及び4−ブロモシクロヘキシル基等のハロゲン化シクロアルキル基;2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,3−ジクロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,5−ジクロロフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、3−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、及び4−フルオロフェニル基等のハロゲン化アリール基;並びに、2−クロロフェニルメチル基、3−クロロフェニルメチル基、4−クロロフェニルメチル基、2−ブロモフェニルメチル基、3−ブロモフェニルメチル基、4−ブロモフェニルメチル基、2−フルオロフェニルメチル基、3−フルオロフェニルメチル基、及び4−フルオロフェニルメチル基等のハロゲン化アラルキル基が挙げられる。
炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる基の具体例としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシ−n−プロピル基、及び4−ヒドロキシ−n−ブチル基等のヒドロキシ鎖状アルキル基;2−ヒドロキシシクロヘキシル基、3−ヒドロキシシクロヘキシル基、及び4−ヒドロキシシクロヘキシル基等のハロゲン化シクロアルキル基;2−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、2,3−ジヒドロキシフェニル基、2,4−ジヒドロキシフェニル基、2,5−ジヒドロキシフェニル基、2,6−ジヒドロキシフェニル基、3,4−ジヒドロキシフェニル基、及び3,5−ジヒドロキシフェニル基等のヒドロキシアリール基;2−ヒドロキシフェニルメチル基、3−ヒドロキシフェニルメチル基、及び4−ヒドロキシフェニルメチル基等のヒドロキシアラルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、及びn−イコシルオキシ基等の鎖状アルコキシ基;ビニルオキシ基、1−プロペニルオキシ基、2−n−プロペニルオキシ基(アリルオキシ基)、1−n−ブテニルオキシ基、2−n−ブテニルオキシ基、及び3−n−ブテニルオキシ基等の鎖状アルケニルオキシ基;フェノキシ基、o−トリルオキシ基、m−トリルオキシ基、p−トリルオキシ基、α−ナフチルオキシ基、β−ナフチルオキシ基、ビフェニル−4−イルオキシ基、ビフェニル−3−イルオキシ基、ビフェニル−2−イルオキシ基、アントリルオキシ基、及びフェナントリルオキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、α−ナフチルメチルオキシ基、β−ナフチルメチルオキシ基、α−ナフチルエチルオキシ基、及びβ−ナフチルエチルオキシ基等のアラルキルオキシ基;メトキシメチル基、エトキシメチル基、n−プロピルオキシメチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−n−プロピルオキシエチル基、3−メトキシ−n−プロピル基、3−エトキシ−n−プロピル基、3−n−プロピルオキシ−n−プロピル基、4−メトキシ−n−ブチル基、4−エトキシ−n−ブチル基、及び4−n−プロピルオキシ−n−プチル基等のアルコキシアルキル基;メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、n−プロピルオキシメトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基、2−n−プロピルオキシエトキシ基、3−メトキシ−n−プロピルオキシ基、3−エトキシ−n−プロピルオキシ基、3−n−プロピルオキシ−n−プロピルオキシ基、4−メトキシ−n−ブチルオキシ基、4−エトキシ−n−ブチルオキシ基、及び4−n−プロピルオキシ−n−ブチルオキシ基等のアルコキシアルコキシ基;2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、及び4−メトキシフェニル基等のアルコキシアリール基;2−メトキシフェノキシ基、3−メトキシフェノキシ基、及び4−メトキシフェノキシ基等のアルコキシアリールオキシ基;ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、及びデカノイル基等の脂肪族アシル基;ベンゾイル基、α−ナフトイル基、及びβ−ナフトイル基等の芳香族アシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、n−ノニルオキシカルボニル基、及びn−デシルオキシカルボニル基等の鎖状アルキルオキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、α−ナフトキシカルボニル基、及びβ−ナフトキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ヘプタノイルオキシ基、オクタノイルオキシ基、ノナノイルオキシ基、及びデカノイルオキシ基等の脂肪族アシルオキシ基;並びに、ベンゾイルオキシ基、α−ナフトイルオキシ基、及びβ−ナフトイルオキシ基等の芳香族アシルオキシ基が挙げられる。
乃至R18は、特に硬化性組成物を用いて得られる硬化物の硬度の観点から、全てが水素原子であることがより好ましい。
また、上記一般式(I)において、Xは、単結合又は連結基(1以上の原子を有する2価の基)である。
上記連結基としては、例えば、2価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル基(エーテル結合)、チオエーテル基(チオエーテル結合)、エステル基(エステル結合)、カーボネート基(カーボネート結合)、アミド基(アミド結合)、及びこれらが複数個連結した基等が挙げられる。
上記2価の炭化水素基としては、例えば、炭素数が1乃至18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、及び、2価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。炭素数が1乃至18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、及びトリメチレン基が挙げられる。2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基、及びシクロヘキシリデン基等の2価のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)が挙げられる。
上記連結基Xとしては、酸素原子を含有する連結基が好ましい。そのような連結基Xとしては、例えば、−CO−(カルボニル基)、−O−CO−O−(カーボネート基)、−COO−(エステル基)、−O−(エーテル基)、−CONH−(アミド基)、これらの基が複数個連結した基、及びこれらの基の1又は2以上と2価の炭化水素基の1又は2以上とが連結した基が挙げられる。2価の炭化水素基としては、例えば、上記で例示したものが挙げられる。
上記一般式(I)で表される脂環式エポキシ化合物としては、例えば、商品名「セロキサイド2021P」及び「セロキサイド2081」(何れも(株)ダイセル製)等の市販品を使用することもできる。また、一般式(I)で表される脂環式エポキシ化合物のうちXが単結合であるものとして、例えば、商品名「セロキサイド8000」((株)ダイセル製)などの市販品を用いることもできる。
脂環式エポキシ化合物(A)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。上記の中でも、脂環式エポキシ化合物(A)としては、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名「セロキサイド2021P」)及びε−カプロラクトン変性3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートの少なくとも一方を使用することが特に好ましい。
脂環式エポキシ化合物(A)とポリオール化合物(B)との合計量に占める脂環式エポキシ化合物(A)の量の割合は、50乃至80質量%の範囲内にあることが好ましく、70乃至75質量%の範囲内にあることがより好ましい。この割合が小さすぎると、樹脂組成物の硬化物において架橋密度が小さくなり、高い耐熱性が得られない可能性がある。この割合が大きすぎると、樹脂組成物の硬化物は、硬く脆い性状となり、高い可撓性が得られない可能性がある。
[ポリオール化合物(B)]
樹脂組成物にポリオール化合物(B)を含めることにより、高い可撓性を有している硬化物を形成できる。
ポリオール化合物(B)とは、1分子内に2個以上の水酸基を有し、数平均分子量が例えば200以上の重合体(オリゴマー又はポリマー)である。ポリオール化合物(B)には、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリカーボネートポリオールが含まれる。なお、ポリオール化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリオール化合物(B)が有する水酸基(2個以上の水酸基)は、アルコール性水酸基であってもよいし、フェノール性水酸基であってもよい。また、ポリオール化合物(B)が1分子内に有する水酸基の数は、2以上であればよく、特に限定されない。
ポリオール化合物(B)における水酸基(2個以上の水酸基)の位置は、特に限定されないが、硬化剤との反応性の観点で、ポリオール分子の少なくとも一方の末端(重合体主鎖の末端)に存在することが好ましく、ポリオール分子の少なくとも両末端に存在することが特に好ましい。
ポリオール化合物(B)は、その他の成分と配合した後に液状の樹脂組成物を形成できればよく、それ自体は、固体であってもよいし、液体であってもよい。
ポリオール化合物(B)の数平均分子量は、特に限定されないが、例えば200以上であり、200乃至100000の範囲内にあることが好ましく、300乃至1000の範囲内にあることがより好ましい。数平均分子量が小さすぎると、この樹脂組成物を塗工する基材から樹脂組成物の硬化物などを含んだフィルムを剥離する際に、フィルムに破断やクラックが発生する場合がある。一方、数平均分子量が大きすぎると、液状の樹脂組成物においてポリオール化合物が析出するか、又は、ポリオール化合物を他の成分中に溶解させることができない場合がある。なお、ポリオール化合物(B)の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される、標準ポリスチレン換算の数平均分子量を意味する。
ポリオール化合物(B)は、水酸基価が190乃至550KOHmg/gの範囲内にあることが好ましい。水酸基価が小さすぎると、樹脂組成物の硬化物において架橋密度が低くなり、高い耐熱性が得られない可能性がある。水酸基価が大きすぎると、エポキシ基の量に対し、水酸基の量が過剰となり、反応に寄与しない浮遊モノマーが硬化物中に発生する可能性がある。その結果、熱重量変化が大きくなり、耐熱性の低下、更には吸湿性の増加を生じる可能性がある。
ポリオール化合物(B)としては、例えば、分子内にエステル骨格(ポリエステル骨格)を有するポリエステルポリオール(ポリエステルポリオールオリゴマーを含む)、分子内にエーテル骨格(ポリエーテル骨格)を有するポリエーテルポリオール(ポリエーテルポリオールオリゴマーを含む)、及び分子内にカーボネート骨格(ポリカーボネート骨格)を有するポリカーボネートポリオール(ポリカーボネートポリオールオリゴマーを含む)などが挙げられる。ポリオール化合物(B)には、その他化合物、例えば、フェノキシ樹脂、エポキシ当量が1000g/eq.を超えるビスフェノール型高分子エポキシ樹脂、水酸基を有するポリブタジエン類、及びアクリルポリオールも含まれる。
上記ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリオールとポリカルボン酸(多塩基酸)との又はヒドロキシカルボン酸の縮合重合(例えば、エステル交換反応)により得られるポリエステルポリオールや、ラクトン類の開環重合により得られるポリエステルポリオールなどが挙げられる。
上記ポリエステルポリオールを得るための縮合重合に使用するポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,3,5−トリメチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、2,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−ジメチロールシクロヘキサン、1,3−ジメチロールシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、1,12−ドデカンジオール、ポリブタジエンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−ジヒドロキシアセトン、ヘキシレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、ジトリメチロールプロパン、マンニトール、ソルビトール、及びペンタエリスリトールが挙げられる。
上記ポリエステルポリオールを得るための縮合重合に使用するポリカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アゼライン酸、クエン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シトラコン酸、1,10−デカンジカルボン酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、無水ピロメリット酸、及び無水トリメリット酸が挙げられる。
上記ポリエステルポリオールを得るための縮合重合に使用するヒドロキシカルボン酸としては、例えば、乳酸、りんご酸、グリコール酸、ジメチロールプロピオン酸、及びジメチロールブタン酸が挙げられる。
上記ポリエステルポリオールを得るための開環重合に使用するラクトン類としては、例えば、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、及びγ−ブチロラクトンが挙げられる。
上記ポリエステルポリオールとしては、例えば、商品名「プラクセル205」、「プラクセル205H」、「プラクセル205U」、「プラクセル205BA」、「プラクセル208」、「プラクセル210」、「プラクセル210CP」、「プラクセル210BA」、「プラクセル212」、「プラクセル212CP」、「プラクセル220」、「プラクセル220CPB」、「プラクセル220NP1」、「プラクセル220BA」、「プラクセル220ED」、「プラクセル220EB」、「プラクセル220EC」、「プラクセル230」、「プラクセル230CP」、「プラクセル240」、「プラクセル240CP」、「プラクセル210N」、「プラクセル220N」、「プラクセルL205AL」、「プラクセルL208AL」、「プラクセルL212AL」、「プラクセルL220AL」、「プラクセルL230AL」、「プラクセル305」、「プラクセル308」、「プラクセル312」、「プラクセルL312AL」、「プラクセル320」、「プラクセルL320AL」、「プラクセルL330AL」、「プラクセル410」、「プラクセル410D」、「プラクセル610」、「プラクセルP3403」、及び「プラクセルCDE9P」(何れも(株)ダイセル製)等の市販品を使用することができる。
上記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオール類への環状エーテル化合物の付加反応により得られるポリエーテルポリオール、及びアルキレンオキシドの開環重合により得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。
上記ポリエーテルポリオールとしては、より具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール(テトラメチレングリコール)、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,3,5−トリメチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、2,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−ジメチロールシクロヘキサン、1,3−ジメチロールシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、1,12−ドデカンジオール、ポリブタジエンジオール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−ジヒドロキシアセトン、ヘキシレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、ジトリメチロールプロパン、マンニトール、ソルビトール、及びペンタエリスリトールなどのポリオール類の多量体;上記ポリオール類と、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、及びエピクロロヒドリン等のアルキレンオキサイドとの付加物;並びにテトラヒドロフラン類などの環状エーテルの開環重合体(例えば、ポリテトラメチレングリコール)が挙げられる。
上記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、商品名「PEP−101」(フロイント産業(株)製)、商品名「アデカプルロニックL」、「アデカプルロニックP」、「アデカプルロニックF」、「アデカプルロニックR」、「アデカプルロニックTR」、及び「アデカPEG」(何れもアデカ(株)製);商品名「PEG#1000」、「PEG#1500」、及び「PEG#11000」(何れも日油(株)製);商品名「ニューポールPE−34」、「ニューポールPE−61」、「ニューポールPE−78」、「ニューポールPE−108」、「PEG−200」、「PEG−600」、「PEG−2000」、「PEG−6000」、「PEG−10000」、及び「PEG−20000」(何れも三洋化成工業(株)製);商品名「PTMG1000」、「PTMG1800」、及び「PTMG2000」(何れも三菱化学(株)製);並びに「PTMGプレポリマー」(三菱樹脂(株)製)等の市販品を使用することができる。
上記ポリカーボネートポリオールとは、分子内に2個以上の水酸基を有するポリカーボネートである。中でも、上記ポリカーボネートポリオールとしては、分子内に2個の末端水酸基を有するポリカーボネートジオールが好ましい。
上記ポリカーボネートポリオールは、通常のポリカーボネートポリオールを製造する方法と同じく、ホスゲン法、又は、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートのようなジアルキルカーボネート又はジフェニルカーボネートを用いるカーボネート交換反応(特開昭62−187725号公報、特開平2−175721号公報、特開平2−49025号公報、特開平3−220233号公報、特開平3−252420号公報等)などにより合成される。上記ポリカーボネートポリオールにおけるカーボネート結合は熱分解を受けにくいため、ポリカーボネートポリオールを含む樹脂組成物の硬化物は高温高湿下でも優れた安定性を示す。
上記ジアルキルカーボネート又はジフェニルカーボネートと共にカーボネート交換反応で用いられるポリオールとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,12−ドデカンジオール、ブタジエンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、プロピレングリコール、及びプロピレングリコールが挙げられる。
上記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、商品名「プラクセルCD205PL」、「プラクセルCD205HL」、「プラクセルCD210PL」、「プラクセルCD210HL」、「プラクセルCD220PL」、及び「プラクセルCD220HL」(何れも(株)ダイセル製);商品名「UH−CARB50」、「UH−CARB100」、「UH−CARB300」、「UH−CARB90(1/3)」、「UH−CARB90(1/1)」、及び「UC−CARB100」(何れも宇部興産(株)製);並びに、商品名「PCDL T4671」、「PCDL T4672」、「PCDL T5650J」、「PCDL T5651」、及び「PCDL T5652」(何れも旭化成ケミカルズ(株)製)等の市販品を使用することができる。
上記ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリカーボネートポリオール以外のポリオールとしては、例えば、商品名「YP−50」、「YP−50S」、「YP−55U」、「YP−70」、「ZX−1356−2」、「YPB−43C」、「YPB−43M」、「FX−316」、「FX−310T40」、「FX−280S」、「FX−293」、「YPS−007A30」、及び「TX−1016」(何れも新日鐵化学(株)製)や、商品名「jER1256」、「jER4250」、及び「jER4275」(何れも三菱化学(株)製)などのフェノキシ樹脂;商品名「エポトートYD−014」、「エポトートYD−017」、「エポトートYD−019」、「エポトートYD−020G」、「エポトートYD−904」、「エポトートYD−907」、及び「エポトートYD−6020」(何れも新日鐵化学(株)製)や、商品名「jER1007」、「jER1009」、「jER1010」、「jER1005F」、「jER1009F」、「jER1006FS」、及び「jER1007FS」(何れも三菱化学(株)製)などのエポキシ当量が1000g/eq.を超えるビスフェノール型高分子エポキシ樹脂;商品名「Poly bd R−45HT」、「Poly bd R−15HT」、「Poly ip」、及び「KRASOL」(何れも出光興産(株)製)や、商品名「α−ωポリブタジエングリコール G−1000」、「α−ωポリブタジエングリコール G−2000」、及び「α−ωポリブタジエングリコール G−3000」(何れも日本曹達(株)製)などの水酸基を有するポリブタジエン類;並びに、商品名「ヒタロイド3903」、「ヒタロイド3904」、「ヒタロイド3905」、「ヒタロイド6500」、「ヒタロイド6500B」、及び「ヒタロイド3018X」(何れも日立化成工業(株)製)や、商品名「アクリディックDL−1537」、「アクリディックBL−616」、「アクリディックAL−1157」、「アクリディックA−322」、「アクリディックA−817」、「アクリディックA−870」、「アクリディックA−859−B」、「アクリディックA−829」、及び「アクリディックA−49−394−IM」(何れもDIC(株)製)、商品名「ダイヤナールSR−1346」、「ダイヤナールSR−1237」、及び「ダイヤナールAS−1139」(何れも三菱レイヨン(株)製)などのアクリルポリオール等の市販品を使用することができる。
なお、上記ポリオール化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。ポリオール化合物(B)は、ポリエステルポリオール、例えば商品名「プラクセル305」及び「プラクセル308」(何れも(株)ダイセル製)などのポリカプロラクトントリオール、並びに、商品名「プラクセルCD205PL」((株)ダイセル製)などのカーボネートジオールの少なくとも一方であることが特に好ましい。
脂環式エポキシ化合物(A)とポリオール化合物(B)との合計量に占めるポリオール化合物(B)の量の割合は、20乃至50質量%の範囲内にあることが好ましく、25乃至30質量%の範囲内にあることがより好ましい。この割合が小さすぎると、樹脂組成物の硬化物は、硬く脆い性状となり、高い可撓性が得られない可能性がある。この割合が大きすぎると、樹脂組成物の硬化物において架橋密度が小さくなり、エポキシ基の量に対して水酸基の量が過剰となり、樹脂組成物を十分に硬化させることができない可能性がある。
[酸発生剤(C)]
酸発生剤(C)は、樹脂組成物中のエポキシ基を有する化合物の重合を開始させる働きを有する。酸発生剤(C)としては、紫外線照射などの電離放射線照射又は加熱処理を施すことによりカチオン種を発生して、脂環式エポキシ化合物(A)の重合を開始させるカチオン重合開始剤が好ましい。酸発生剤(C)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
電離放射線照射によりカチオン種を発生するカチオン重合開始剤としては、例えば、ヘキサフルオロアンチモネート塩、ペンタフルオロヒドロキシアンチモネート塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアルゼネート塩、トリアリルスルホニウム塩及びその誘導体、並びに、ジアリルヨウドニウム塩及びその誘導体を挙げることができる。
トリアリルスルホニウム塩及びその誘導体としては、例えば、トリアリルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート塩及びその誘導体、並びに、トリアリルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩及びその誘導体が挙げられる。
ジアリルヨウドニウム塩及びその誘導体としては、例えば、ジアリルヨウドニウムヘキサフルオロホスフェート塩及びその誘導体、並びに、ジアリルヨウドニウムテトラフルオロボレート塩及びその誘導体が挙げられる。
これらのカチオン重合開始剤(カチオン触媒)は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
このようなカチオン重合開始剤としては、例えば、商品名「UVACURE1590」(ダイセル・サイテック(株)製);商品名「CD−1010」、「CD−1011」、及び「CD−1012」(何れも米国サートマー社製);商品名「イルガキュア264」及び「イルガキュア250」(何れもチバ・ジャパン(株)製);商品名「CIT−1682」(日本曹達(株)製);商品名「CPI−101A」、「CPI−100P」、「CPI−210S」、及び「CPI−110A」(何れもサンアプロ(株)製);商品名「アデカオプトマーSP−170」、「アデカオプトマーSP−172」、及び「アデカオプトマーSP−150」(何れも(株)ADEKA製);並びに、商品名「シリコリース UV CATA211」(荒川化学工業(株)製)等の市販品を使用できる。好ましくは、商品名「SP−170」及び「SP−172」(何れも(株)ADEKA製)、並びに、商品名「CPI−210S」、「CPI−101A」及び「CPI−110A」(何れもサンアプロ(株)製)の1以上である。
加熱処理を施すことによりカチオン種を発生するカチオン重合開始剤としては、例えば、アリールジアゾニウム塩、アリールヨードニウム塩、アリールスルホニウム塩、及びアレン−イオン錯体が挙げられる。
このようなカチオン重合開始剤としては、例えば、商品名「PP−33」、「CP−66」、及び「CP−77」(何れもADEKA(株)製);商品名「FC−509」(スリーエム(株)製);商品名「UVE1014」(G.E.(株)製);商品名「サンエイド SI−60L」、「サンエイド SI−80L」、「サンエイド SI−100L」、「サンエイド SI−110L」、及び「サンエイド SI−150L」(何れも三新化学工業(株)製);並びに、商品名「CG−24−61」(チバ・ジャパン(株)製)等の市販品を使用できる。
更に、アルミニウムやチタンなどの金属とアセト酢酸若しくはジケトン類とのキレート化合物とトリフェニルシラノール等のシラノールとの化合物、又は、アルミニウムやチタンなどの金属とアセト酢酸若しくはジケトン類とのキレート化合物とビスフェノールS等のフェノール類との化合物も、上記カチオン重合開始剤として使用できる。
酸発生剤(C)の量は、脂環式エポキシ化合物(A)とポリオール化合物(B)との合計量100質量部に対して、0.05乃至0.5質量部の範囲内にあることが好ましく、0.05乃至0.1質量部の範囲内にあることがより好ましい。酸発生剤(C)の量が少なすぎると、樹脂組成物の硬化物において架橋密度が小さくなり、高い耐熱性が得られない可能性がある。酸発生剤(C)の量が多すぎると、高い透明性を有する硬化物を得られない可能性がある。
[その他の成分(D)]
樹脂組成物は、必要に応じて、他の成分(D)を更に含有することができる。
例えば、樹脂組成物は、硬化性調整のためにビニルエーテル化合物のようなカチオン反応性化合物を更に含有していてもよい。また、樹脂組成物は、その低粘度化や反応速度調整のためにオキセタン化合物を更に含有していてもよい。また、樹脂組成物は、基材と樹脂組成物を硬化してなる層との密着性調整のためにラジカル反応性化合物を更に含有していてもよい。
樹脂組成物は、その他の成分、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤(HALS等)、つや消し剤(シリカ、ガラス粉、金属酸化物等)、着色剤(染料、顔料等)、光拡散剤、低収縮剤、沈降防止剤、消泡剤、帯電防止剤、防曇剤、分散剤、増粘剤、タレ止め剤、乾燥剤、レベリング剤、カップリング剤、付着促進剤、防錆顔料、熱安定剤、皮膜物質改質剤、スリップ剤、スリキズ剤、可塑剤、防菌剤、防カビ剤、防汚剤、難燃剤、重合防止剤、光重合促進剤、増感剤、熱開始剤(熱カチオン重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤)、及び離型剤等の添加剤の1以上を更に含有していてもよい。
成分(D)の量は、脂環式エポキシ化合物(A)とポリオール化合物(B)との合計量100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましい。
[樹脂組成物の調製]
上記の樹脂組成物は、上述した成分を均一に混合することにより得る。この混合には、例えば、特に限定されないが、ディスパーミキサ、ウルトラミキサ、ホモジナイザ、及び遊星攪拌脱泡機等の攪拌機を用いることができる。この混合は、酸発生剤の活性化を防止するため、電離放射線が照射されない環境下で行うことが好ましい。
<2>アクリル樹脂層
アクリル樹脂層12は、アクリル樹脂からなる。アクリル樹脂層12は、複合フィルム1に高い耐候性を与える。
アクリル樹脂層12の厚さt2は、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。また、厚さt2は、総厚−10μm以下であることが好ましく、総厚−20μm以下であることがより好ましい。厚さt2が小さすぎると、高い耐候性を得ることが難しい。厚さt2が大きすぎると、他の層を薄くしない限り、複合フィルム1が厚くなる。
アクリル樹脂層12の原料としては、例えば、イソアミルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、エトキシ−ジエチレングリコールアクリレート、メトキシ−トリエチレングルコールアクリレート、2−エチルヘキシル−ジグルコールアクリレート、メトキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングルコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノールEO付加物アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチル−コハク酸、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−フタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、ネオペンチルグリコール−アクリル酸−安息香酸エステル、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、トリエチレングルコールジアクリレート、ポリエチレングリコール(PEG)200#ジアクリレート、PEG400#ジアクリレート、PEG600#ジアクリレート、ポリテトラメチレングルコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、3−メチル−1,5ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、2−メチル−1,8オクタンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールアクリル酸付加物、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、トリメチロルプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のアクリレートが挙げられる。アクリル樹脂は、ウレタンアクリレート等を用いて得られる共重合体であってもよい。
アクリル樹脂層12の原料は、ラジカル重合開始剤を更に含むことができる。ラジカル重合開始剤は、紫外線照射などの電離放射線照射又は加熱処理を施すことによりラジカルを発生して、ラジカル重合を開始させる。ラジカル重合開始剤を含んだ市販の樹脂としては、例えば、ビームセット575CB(荒川化学工業(株)製)が挙げられる。
<3>中間層
中間層13は、エポキシ樹脂層11とアクリル樹脂層12との間に介在している。中間層13の一方の面はエポキシ樹脂層11と接触し、中間層13の他方の面はアクリル樹脂層12と接触している。
中間層13は、エポキシ樹脂層11及びアクリル樹脂層12の双方に対して、高い密着性を示す。即ち、中間層13は、層間剥離を生じ難くする役割を果たす。
中間層13の厚さt3は、5μm以上であり、10μm以上であることが好ましい。また、厚さt3は、総厚−10μm以下であることが好ましく、総厚−20μm以下であることがより好ましい。厚さt3が小さすぎると、層間剥離を十分に抑制できない可能性がある。厚さt3が大きすぎると、他の層を薄くしない限り、複合フィルム1が厚くなる。
中間層13は、エポキシ樹脂とアクリル樹脂との混合物からなる。中間層13が含んでいるエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂層11が含んでいるエポキシ樹脂とは組成が異なっていてもよい。また、中間層13が含んでいるアクリル樹脂は、アクリル樹脂層12が含んでいるアクリル樹脂とは組成が異なっていてもよい。但し、好ましくは、中間層13が含んでいるエポキシ樹脂及びアクリル樹脂は、それぞれ、エポキシ樹脂層11が含んでいるエポキシ樹脂及びアクリル樹脂層12が含んでいるアクリル樹脂と組成が同一である。
中間層13において、エポキシ樹脂とアクリル樹脂との混合比率は、その膜厚方向で一定であってもよい。
この場合、中間層13において、エポキシ樹脂とアクリル樹脂との合計量に占めるエポキシ樹脂の量の割合は、10乃至90質量%の範囲内とすることが好ましく、20乃至80質量%の範囲内とすることがより好ましい。この割合が小さすぎると、中間層13とエポキシ樹脂層11との密着性が不十分となる可能性がある。また、この割合が大きすぎると、中間層13とアクリル樹脂層12との密着性が不十分となる可能性がある。
中間層13において、エポキシ樹脂とアクリル樹脂との混合比率が膜厚方向で変化しており、アクリル樹脂層12側と比較して、エポキシ樹脂層11側でエポキシ樹脂比率がより高くてもよい。この構造を採用した場合、中間層13におけるエポキシ樹脂とアクリル樹脂との混合比率が膜厚方向で一定である場合と比較して、中間層13は、エポキシ樹脂層11及びアクリル樹脂層12の双方に対してより高い密着性を示し得る。
なお、中間層13において、エポキシ樹脂とアクリル樹脂との混合比率が膜厚方向で変化している場合、中間層13のエポキシ樹脂層11との境界や、中間層13のアクリル樹脂層12との境界は、以下のように定める。
先ず、複合フィルム1の断面について、透過率T(%)の分布を、顕微分光ユニットシステムを用いて測定する。ここで、測定波長は、エポキシ樹脂とアクリル樹脂の吸光係数に差がある波長とする。次に、複合フィルム1のエポキシ樹脂層11側の表面近傍における透過率をT(%)とし、複合フィルム1のアクリル樹脂層12側の表面近傍における透過率をT(%)とする。なお、透過率Tと透過率Tとは異なっている。
そして、T<Tの場合、透過率Tが以下の条件:
0.95×T+0.05×T<T<0.05×T+0.95×T
を満たす領域を中間層13とする。
また、T>Tの場合、透過率Tが以下の条件:
0.95×T+0.05×T<T<0.05×T+0.95×T
を満たす領域を中間層13とする。
<4>複合フィルムの製造
複合フィルム1は、例えば、以下の方法により製造することができる。先ず、支持体上に、アクリル樹脂層12の原料を含んだ塗液を塗布して第1塗膜を形成し、この第1塗膜を硬化させる。これにより、アクリル樹脂層12を得る。次に、アクリル樹脂層12上に、中間層13の原料を含んだ塗液を塗布して第2塗膜を形成し、この第2塗膜を硬化させる。これにより、中間層13を得る。更に、中間層13上に、エポキシ樹脂層11の原料を含んだ塗液を塗布して第3塗膜を形成し、この第3塗膜を硬化させる。これにより、エポキシ樹脂層11を得る。その後、アクリル樹脂層12と中間層13とエポキシ樹脂層11との積層体を、基材から剥離する。以上のようにして、複合フィルム1を得る。
ここで、支持体は、樹脂組成物の硬化物を剥離可能に支持し得るものである。支持体としては、例えば、支持フィルムを使用する。支持フィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートフタレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム(CAPフィルム)、セルローストリアセテート及びセルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体からなるフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルム、及びポリアリレート系フィルムを挙げることができる。
塗液の塗工には、例えば、ダイコート法、ディッピング法、ワイヤーバーを使用する方法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、カーテン法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、及びグラビアオフセット法等の周知の方法を用いることができる。
また、塗膜の硬化は、塗液が電離放射線硬化性樹脂組成物である場合には、塗膜に電離放射線を照射し、次いで、塗膜をプリベークに供することにより行う。ここで、用語「電離放射線」は、樹脂組成物が含む成分、具体的には酸発生剤を分解(電離)させて、樹脂組成物中に酸を発生させ得る高エネルギーな放射線、例えば、X線又は紫外線を意味している。
電離放射線としては、典型的には、紫外線を利用する。その光源としては、酸発生剤やラジカル重合開始剤の分解に適した波長の光を放射するものを適宜選択する。この光源としては、400nm以下の波長を放射するランプが好ましい。そのようなランプとしては、例えば、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、及び可視光ハロゲンランプが挙げられる。
電離放射線照射は、空気中で行ってもよいし、窒素及びアルゴン等の不活性ガス中で行ってもよい。
電離放射線の積算光量は、10乃至3000mJ/cmの範囲内とすることが好ましく、100乃至1000mJ/cmの範囲内とすることがより好ましく、200乃至500mJ/cmの範囲内とすることが更に好ましい。
プリベークは、ヒータを用いて行う。ヒータによる加熱には、例えば、熱風乾燥、熱ロール乾燥、高周波照射、及び赤外線照射等の加熱方法を、単独で又は2種類以上組み合わせて用いることができる。加熱温度は、80乃至160℃の範囲内とすることが好ましい。加熱時間は、30乃至600秒の範囲内とすることが好ましい。
この方法によれば、中間層13におけるエポキシ樹脂とアクリル樹脂との混合比率が膜厚方向で一定である複合フィルム1を得ることができる。
中間層13におけるエポキシ樹脂とアクリル樹脂との混合比率が膜厚方向で変化している複合フィルム1は、例えば、ダイコータを用いた同時多層塗布法によって製造することができる。
図2は、フィルム製造装置の一例を概略的に示す図である。図3は、図2のフィルム製造装置が含んでいるダイヘッドを概略的に示す断面図である。
図2に示すフィルム製造装置100は、ロール・ツー・ロール式のダイコータである。このフィルム製造装置は、巻出ロール110と、キャリアフィルム120と、ガイドロール130a乃至130eと、バックアップロール140と、ダイヘッド150と、電離放射線照射機160と、ヒータ170と、剥離ロール180と、巻取ロール190a及び190bとを含んでいる。
巻出ロール110には、キャリアフィルム120が巻かれている。巻出ロール110は、キャリアフィルム120を巻き出す。
キャリアフィルム120は、ベルト形状を有している。キャリアフィルム120上には、上述した樹脂組成物を塗布し、このキャリアフィルム120上で樹脂組成物からなる塗膜の硬化を行う。
キャリアフィルム120は、樹脂組成物の硬化物を剥離可能に支持し得るものである。キャリアフィルム120としては、例えば、上述した支持フィルムを使用することができる。
キャリアフィルム120の厚さは、制限を設けるわけではないが、6乃至700μmの範囲内にあることが好ましく、40乃至250μmの範囲内にあることがより好ましく、50乃至150μmの範囲内にあることが更に好ましい。
ガイドロール130a乃至130eは、巻出ロール110から巻き出されたキャリアフィルム120を、ダイヘッド150とバックアップロール140との間の領域、電離放射線照射機160の正面の領域、ヒータ170、及び巻取ロール190aへと順次案内する。
バックアップロール140は、ダイヘッド150と向き合うように設置されている。バックアップロール140は、ダイヘッド150とバックアップロール140との間を通過するキャリアフィルム120の裏面上を転動して、キャリアフィルム120とダイヘッド150との距離を一定に保つ役割を果たす。
ダイヘッド150は、図3に示すように、2つのスロットが設けられている。ダイヘッド150は、一方のスロットから樹脂組成物R1を吐出し、他方のスロットから樹脂組成物R2を吐出する。ここで、樹脂組成物R1は、アクリル樹脂層12の原料を含んだ塗液であり、樹脂組成物R2は、エポキシ樹脂層11の原料を含んだ塗液である。
ダイヘッド150は、ダイヘッド150とバックアップロール140との間を通過するキャリアフィルム120の表面上に、樹脂組成物R1及びR2を順次供給する。これにより、キャリアフィルム120の表面上に、樹脂組成物R1からなる塗膜と樹脂組成物R2からなる塗膜との積層構造を形成する。
図2に示すように、電離放射線照射機160は、キャリアフィルム120の表面と向き合うように設置されている。キャリアフィルム120上の塗膜に対して、電離放射線を照射する。キャリアフィルム120が電離放射線を透過させるものである場合、電離放射線照射機160は、キャリアフィルム120の裏面と向き合うように設置してもよい。
ここで、用語「電離放射線」は、樹脂組成物が含む成分、具体的には酸発生剤やラジカル重合開始剤を分解させて、樹脂組成物中に酸やラジカルを発生させ得る高エネルギーな放射線、例えば、X線又は紫外線を意味している。電離放射線としては、典型的には、紫外線を利用する。
電離放射線照射機160は、塗膜に電離放射線を照射することにより、樹脂組成物が含んでいる酸発生剤やラジカル重合開始剤を活性化させる。即ち、酸発生剤やラジカル重合開始剤を分解させて、樹脂組成物中に酸やラジカルを発生させる。酸は、樹脂組成物中での重合や架橋を促進する触媒としての役割を果たす。ラジカルは、樹脂組成物中での重合や架橋を開始させる。従って、塗膜への電離放射線照射により、樹脂組成物では重合や架橋が進行し、その結果、塗膜は硬化する。
なお、樹脂組成物R1からなる塗膜と樹脂組成物R2からなる塗膜との積層構造を形成してから、この積層構造に電離放射線を照射するまでの時間を十分に長くすると、樹脂組成物R1からなる塗膜と樹脂組成物R2からなる塗膜との界面近傍において、樹脂組成物R1と樹脂組成物R2との混合を生じる。その結果、エポキシ樹脂層11とアクリル樹脂層12との間に、エポキシ樹脂とアクリル樹脂との混合比率が膜厚方向で変化し、アクリル樹脂層12側と比較して、エポキシ樹脂層11側でエポキシ樹脂比率がより高い中間層13を生じる。
電離放射線照射機160の光源としては、(C)酸発生剤の分解に適した波長の光を放射するものを適宜選択する。この光源としては、400nm以下の波長を放射するランプが好ましい。そのようなランプとしては、例えば、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、及び可視光ハロゲンランプが挙げられる。
電離放射線照射は、空気中で行ってもよいし、窒素及びアルゴン等の不活性ガス中で行ってもよい。
電離放射線の積算光量は、10乃至3000mJ/cmの範囲内とすることが好ましく、100乃至1000mJ/cmの範囲内とすることがより好ましく、200乃至500mJ/cmの範囲内とすることが更に好ましい。
ヒータ170は、電離放射線を照射した塗膜に対してポストベークを行う。ポストベークを行うことにより、樹脂組成物中での上記反応を完結させる。ポストベークを行うと、複合フィルム1における架橋密度を高めることができ、耐熱性が高まる。
ヒータ170による加熱には、例えば、熱風乾燥、熱ロール乾燥、高周波照射、及び赤外線照射等の加熱方法を、単独で又は2種類以上組み合わせて用いることができる。加熱温度は、80乃至160℃の範囲内とすることが好ましい。加熱時間は、30乃至600秒の範囲内とすることが好ましい。
剥離ロール180は、キャリアフィルム120に支持された複合フィルム1上を転動するように設置されている。剥離ロール180は、キャリアフィルム120の移動方向に対して、複合フィルム1の移動方向を急激且つ大きく異ならしめ、これにより、複合フィルム1をキャリアフィルム120から剥離する。
巻取ロール190aは、複合フィルム1を剥離したキャリアフィルム120を巻き取る。また、巻取ロール190bは、キャリアフィルム120から剥離した複合フィルム1を巻き取る。
巻取ロール190aは、キャリアフィルム120に張力を与える。巻取ロール190aがキャリアフィルム120に与える張力は、キャリアフィルム120の厚さや材質によって異なるが、10乃至500N/mの範囲内とすることが好ましい。
複合フィルム1は、例えば、以上のようにして製造する。
上記の通り、この複合フィルム1は、エポキシ樹脂層11とアクリル樹脂層12との間に、エポキシ樹脂とアクリル樹脂との混合物からなる中間層13が介在している。それ故、この複合フィルム1は、層間剥離を生じ難い。また、この複合フィルム1は、エポキシ樹脂層11とアクリル樹脂層12とを含んでいるため、耐食性及び耐候性の双方に優れている。
<5>複合フィルムの応用例
上記の通り、複合フィルム1は、耐食性及び耐候性の双方に優れている。それ故、複合フィルム1は、屋内での使用だけでなく、屋外での使用にも適している。従って、この複合フィルム1は、例えば、太陽電池、飼料や廃棄物を収納するための袋、テント、及びビニールハウスなどにおいて好適に使用することができる。
<実施例1>
図1に示す複合フィルム1を、以下の方法により製造した。
先ず、80質量部の脂環式エポキシ化合物(A)と、20質量部のポリオール化合物(B)と、0.05質量部の酸発生剤(C)とを、遊星攪拌脱泡機(マゼルスターKK5000、KURABO製)を用いて15分間攪拌して、第1塗液を調製した。ここで、脂環式エポキシ化合物(A)としては、セロキサイド2021P((株)ダイセル製)を使用した。また、ポリオール化合物(B)としては、プラクセル305((株)ダイセル製)を使用した。そして、酸発生剤(C)としては、アデカオプトマーSP−170((株)ADEKA)を使用した。
また、アクリル樹脂層12の原料を含んだ第2塗液として、ビームセット575CB(荒川化学工業(株)製)を準備した。
更に、第1塗液の一部と第2塗液の一部とを混合して、中間層13の原料としての第3塗液を調製した。第1塗液と第2塗液とは、エポキシ樹脂とアクリル樹脂との質量比が1:1となるように混合した。
次に、第1乃至第3塗液を用いて、ダイコート法により複合フィルム1を製造した。
具体的には、先ず、ポリエチレンテレフタレートからなるキャリアフィルム上に、第1塗液を塗布して第1塗膜を形成し、この第1塗膜への紫外線照射及びポストベークを順次行った。これにより、厚さt1が50μmのエポキシ樹脂層11を得た。
次に、エポキシ樹脂層11上に、第3塗液を塗布して第2塗膜を形成し、この第2塗膜への紫外線照射及びポストベークを順次行った。これにより、厚さt3が5μmの中間層13を得た。
更に、中間層13上に、第2塗液を塗布して第3塗膜を形成し、この第3塗膜への紫外線照射及びポストベークを順次行った。これにより、厚さt2が50μmのアクリル樹脂層12を得た。
その後、エポキシ樹脂層11と中間層13とアクリル樹脂層12との積層体を、キャリアフィルムから剥離した。以上のようにして、複合フィルム1を得た。なお、厚さt1乃至t3は、顕微分光ユニットシステムを用いて測定した。
次に、この複合フィルム1における層間密着性を評価するため、以下の試験を行った。即ち、先ず、エポキシ樹脂層11を切断することなしに、アクリル樹脂層12及び中間層13を正方格子状に切断して、縦横の長さが1mmの正方形状の断片を100個形成した。そして、これら断片への粘着テープの接着及びその剥離を一定回数繰り返した。以上の試験を複数の複合フィルム1に対して行った結果、剥離した断片の数は0乃至10個の範囲内でばらついていた。
<実施例2>
エポキシ樹脂層11の厚さt1を5μmとし、中間層13の厚さt3を50μmとしたこと以外は、実施例1と同様の方法により複合フィルム1を製造した。
この複合フィルム1についても、実施例1で行ったのと同様の方法により、層間密着性を評価した。その結果、剥離した断片の数は0乃至10個の範囲内でばらついていた。
<実施例3>
アクリル樹脂層12の厚さt2を5μmとし、中間層13の厚さt3を50μmとしたこと以外は、実施例1と同様の方法により複合フィルム1を製造した。
この複合フィルム1についても、実施例1で行ったのと同様の方法により、層間密着性を評価した。その結果、剥離した断片の数は0乃至10個の範囲内でばらついていた。
<実施例4>
図1に示す複合フィルム1を、図2及び図3を参照しながら説明した方法により製造した。具体的には、図3に示す樹脂組成物R1及びR2として、それぞれ、上記の第1及び第2塗液を使用した。そして、エポキシ樹脂とアクリル樹脂とを1:1の質量比で塗布し、100秒後に紫外線を照射した。
この複合フィルム1について、顕微分光ユニットシステムを用いて、厚さt1乃至t3を測定した。その結果、エポキシ樹脂層11の厚さt1は50μmであり、アクリル樹脂層12の厚さt2は50μmであり、中間層13の厚さt3は5μmであった。
この複合フィルム1についても、実施例1で行ったのと同様の方法により、層間密着性を評価した。その結果、断片の剥離を生じたものはなかった。
<実施例5>
以下の条件を採用したこと以外は、実施例4と同様の方法により、図1に示す複合フィルム1を製造した。即ち、本例では、エポキシ樹脂とアクリル樹脂とを2:5の質量比で塗布し、1000秒後に紫外線を照射した。
この複合フィルム1について、顕微分光ユニットシステムを用いて、厚さt1乃至t3を測定した。その結果、エポキシ樹脂層11の厚さt1は5μmであり、アクリル樹脂層12の厚さt2は50μmであり、中間層13の厚さt3は50μmであった。また、中間層13の透過率は、厚さ方向に連続的に変化しており、エポキシ樹脂層11側ではエポキシ樹脂層11の透過率とほぼ等しく、アクリル樹脂層12側ではアクリル樹脂層12の透過率とほぼ等しかった。以上から、中間層13では、エポキシ樹脂とアクリル樹脂との混合比率が膜厚方向で変化しており、アクリル樹脂層12側と比較して、エポキシ樹脂層11側でエポキシ樹脂比率がより高いことを確認できた。
この複合フィルム1についても、実施例1で行ったのと同様の方法により、層間密着性を評価した。その結果、断片の剥離を生じたものはなかった。
<実施例6>
以下の条件を採用したこと以外は、実施例4と同様の方法により、図1に示す複合フィルム1を製造した。即ち、本例では、エポキシ樹脂とアクリル樹脂とを2:5の質量比で塗布し、1000秒後に紫外線を照射した。
この複合フィルム1について、顕微分光ユニットシステムを用いて、厚さt1乃至t3を測定した。その結果、エポキシ樹脂層11の厚さt1は50μmであり、アクリル樹脂層12の厚さt2は5μmであり、中間層13の厚さt3は50μmであった。また、中間層13の透過率は、厚さ方向に連続的に変化しており、エポキシ樹脂層11側ではエポキシ樹脂層11の透過率とほぼ等しく、アクリル樹脂層12側ではアクリル樹脂層12の透過率とほぼ等しかった。以上から、中間層13では、エポキシ樹脂とアクリル樹脂との混合比率が膜厚方向で変化しており、アクリル樹脂層12側と比較して、エポキシ樹脂層11側でエポキシ樹脂比率がより高いことを確認できた。
この複合フィルム1についても、実施例1で行ったのと同様の方法により、層間密着性を評価した。その結果、断片の剥離を生じたものはなかった。
<比較例1>
図4は、比較例に係る複合フィルムを概略的に示す断面図である。図4に示す複合フィルム1’は、中間層13を含んでいないこと以外は、図1に示す複合フィルム1と同様の構造を有している。
本例では、図4に示す複合フィルム1’を、以下の製造を試みた。
先ず、実施例1で使用したのと同様の第1及び第2塗液を準備した。次に、第1及び第2塗液を用いて、ダイコート法により複合フィルム1の製造を試みた。
具体的には、先ず、ポリエチレンテレフタレートからなるキャリアフィルム上に、第1塗液を塗布して第1塗膜を形成し、この第1塗膜への紫外線照射及びポストベークを順次行った。これにより、厚さt1が10μmのエポキシ樹脂層11を得た。
次に、エポキシ樹脂層11上に、第2塗液を塗布して第2塗膜を形成し、この第2塗膜への紫外線照射及びポストベークを順次行った。これにより、厚さt2が10μmのアクリル樹脂層12を得た。
その後、エポキシ樹脂層11とアクリル樹脂層12との積層体を、キャリアフィルムから剥離しようとした。しかしながら、積層体の破断を生じ、連続した複合フィルム1’を得ることはできなかった。
<比較例2>
アクリル樹脂層12の厚さt2を15μmとし、エポキシ樹脂層11の厚さt1を15μmとしたこと以外は、比較例1と同様の方法による複合フィルム1’の製造を行った。本例では、積層体の破断を生じることなく、連続した複合フィルム1’を得ることができた。
次に、この複合フィルム1’における層間密着性を評価するため、実施例1と同様の試験を行った。その結果、剥離した断片の数は50個以上であった。
<比較例3>
アクリル樹脂層12の厚さt2を50μmとし、エポキシ樹脂層11の厚さt1を50μmとしたこと以外は、比較例1と同様の方法による複合フィルム1’の製造を行った。本例では、積層体の破断を生じることなく、連続した複合フィルム1’を得ることができた。
次に、この複合フィルム1’における層間密着性を評価するため、実施例1と同様の試験を行った。その結果、剥離した断片の数は50個以上であった。
<比較例4>
アクリル樹脂層12の厚さt2を100μmとし、エポキシ樹脂層11の厚さt1を100μmとしたこと以外は、比較例1と同様の方法による複合フィルム1’の製造を行った。本例では、積層体の破断を生じることなく、連続した複合フィルム1’を得ることができた。
次に、この複合フィルム1’における層間密着性を評価するため、実施例1と同様の試験を行った。その結果、剥離した断片の数は50個以上であった。
<比較例5>
アクリル樹脂層12の厚さt2を150μmとし、エポキシ樹脂層11の厚さt1を150μmとしたこと以外は、比較例1と同様の方法による複合フィルム1’の製造を行った。本例では、積層体の破断を生じることなく、連続した複合フィルム1’を得ることができた。
次に、この複合フィルム1’における層間密着性を評価するため、実施例1と同様の試験を行った。その結果、剥離した断片の数は50個以上であった。
<比較例6>
アクリル樹脂層12の厚さt2を200μmとし、エポキシ樹脂層11の厚さt1を200μmとしたこと以外は、比較例1と同様の方法による複合フィルム1’の製造を行った。本例では、積層体の破断を生じなかったものの、その厚さは不均一であった。
以下の表1に、評価結果を纏める。
表1において、「製造可否」と表記した列には、破断を生じたか又は均一な厚さの複合フィルムを製造できなかった例に「×」を表示し、破断を生じることなく均一な厚さの複合フィルムを製造できた例に「○」を表示している。また、「層間剥離」と表記した列には、剥離した断片の数が50個以上であった例に「×」を表示し、剥離した断片の数が0乃至10個の範囲内でばらついていた例に「△」を表示し、断片の剥離を生じたものはなかった例に「○」を表示している。なお、「製造可否」について「×」の評価をした例については、層間剥離の評価は行っていない。
表1に示すように、実施例1乃至6に係る複合フィルムは、層間剥離の発生が十分に抑制されていた。特に、実施例4乃至6に係る複合フィルムは、層間剥離を全く生じなかった。
なお、実施例4では、中間層13においては、エポキシ樹脂とアクリル樹脂との混合比率が膜厚方向で変化しており、アクリル樹脂層12側と比較して、エポキシ樹脂層11側でエポキシ樹脂比率がより高いことを確認できていない。しかしながら、実施例5の結果を踏まえると、実施例4の中間層13でも、エポキシ樹脂とアクリル樹脂との混合比率が膜厚方向で変化しており、アクリル樹脂層12側と比較して、エポキシ樹脂層11側でエポキシ樹脂比率がより高く、これにより、実施例1よりも層間剥離が抑制されたと推察される。
以下に、当初の特許請求の範囲に記載していた発明を付記する。
[1]
エポキシ樹脂からなるエポキシ樹脂層と、
アクリル樹脂からなるアクリル樹脂層と、
前記エポキシ樹脂層と前記アクリル樹脂層との間に介在し、エポキシ樹脂とアクリル樹脂との混合物からなる中間層と
を備え、前記中間層の厚さt3は5μm以上である複合フィルム。
[2]
前記エポキシ樹脂層の厚さt1及び前記アクリル樹脂層の厚さt2の各々は5μm以上であり、前記厚さt1と前記厚さt2と前記厚さt3との合計は、30μm乃至300μmの範囲内にある項1に記載の複合フィルム。
[3]
前記中間層において、エポキシ樹脂とアクリル樹脂との混合比率が膜厚方向で変化しており、前記アクリル樹脂層側と比較して、前記エポキシ樹脂層側でエポキシ樹脂比率がより高い項1又は2に記載の複合フィルム。
1…複合フィルム、1’…複合フィルム、11…エポキシ樹脂層、12…アクリル樹脂層、13…中間層、100…フィルム製造装置、110…巻出ロール、120…キャリアフィルム、130a乃至130e…ガイドロール、140…バックアップロール、150…ダイヘッド、160…電離放射線照射機、170…ヒータ、180…剥離ロール、190a及び190b…巻取ロール、R1及びR2…樹脂組成物。

Claims (3)

  1. 自立膜としての複合フィルムであって、
    エポキシ樹脂からなるエポキシ樹脂層と、
    アクリル樹脂からなるアクリル樹脂層と、
    前記エポキシ樹脂層と前記アクリル樹脂層との間に介在し、エポキシ樹脂とアクリル樹脂との混合物からなる中間層と
    を備え、前記中間層の厚さt3は5μm以上である複合フィルム。
  2. 前記エポキシ樹脂層の厚さt1及び前記アクリル樹脂層の厚さt2の各々は5μm以上であり、前記厚さt1と前記厚さt2と前記厚さt3との合計は、30μm乃至300μmの範囲内にある請求項1に記載の複合フィルム。
  3. 前記中間層において、エポキシ樹脂とアクリル樹脂との混合比率が膜厚方向で変化しており、前記アクリル樹脂層側と比較して、前記エポキシ樹脂層側でエポキシ樹脂比率がより高い請求項1又は2に記載の複合フィルム。
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